明細書 ステンフォン (s t emp h o n e) 類およびそれらの製造方法
技術分野
本発明は、 抗菌剤として利用されている; S—ラクタ厶抗生物質と併用すること によりその効果を増強せしめ得る新規ステンフォン (s t emp h on e) 類お よびそれらの製造方法に関する。 背景技術
近年、 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) は、 院内感染の主な原因菌 として社会的問題となっている。 この病原菌は、 —ラクタム抗生物質など種々 の薬剤に対する耐性を有しており、 一般にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MR
SA) 感染症の治療には、 現時点ではほとんど耐性化が報告されていないグリコ ぺプチド系のバンコマイシンゃァミノグリコシド系のアルべカシンといった抗生 物質が使用されている。 またこの他に、 )8—ラクタム抗生物質同士、 もしくは、 yS -ラクタム抗生物質と他の作用点の異なる抗生物質の併用療法が行われている (長谷川裕美ら、 抗菌薬投与の科学、 2 6 4— 273、 1 9 9 8年) 。
バンコマイシンやアルべカシンについてもすでにこれらの薬剤に対する耐性菌 が出現している。 またこれらの薬剤については、 第 8脳神経障害による聴力障害 などの副作用を有することが知られており問題となている。 現在までに、 このよ うな状況に対処すベく、 ^-ラクタム抗生物質の効力を回復させる作用を有する 物質が報告されている。 例えば、 S—ラクタム抗生物質を含む抗菌剤と組み合せ て使用することで相乗的効果を示す茶エキスまたはその活性フラクシヨンがこれ に相当する (特表平 9— 5 0 9 6 77号) 。 新規ステンフォン類は、 S—ラクタ ム抗生物質のうち力ルバぺネム系に属するイミぺネムの抗菌活性を増強する作用 を有するとともに、 ペナム系であるクロキサシリンゃセフエム系であるセファゾ リンの抗菌活性を増強する作用を有しているため、 ^一ラクタム抗生物質を含む 抗菌剤との併用療法へも応用できることが期待される。 新規ステンフォン類は、 茶エキスまたはその活性フラクションの有する活性成分であるポリフエノール化
合物とは、 分子式および化学構造が明確に区別される。 発明の開示
^ーラクタム抗生物質の活性を増強する薬剤は、 ^ーラクタム抗生物質の投与 量を減量させ、 投与期間を短縮させることにより耐性菌出現の頻度を低減させる ことが期待される。 また同時に、 作用の異なる 2つの薬剤を併用することにより 、 —ラクタム抗生物質に対する耐性を克服することも期待される。
かかる実情において、 メチシリン耐性黄色プドウ球菌 (MR S A) に対する —ラクタム抗生物質の活性増強作用を有する物質を提供することは、 メチシリン 耐性黄色ブドウ球菌 (MR S A) 感染症や^ -ラクタム抗生物質耐性を含む多剤 耐性菌を起因とする感染症の新しい治療薬を提供するものであり有用なことであ 。
本発明者らは微生物の生産す.る代謝産物を対象に ^ーラクタム抗生物質力ルバ ぺネム系であるイミぺネムの活性増強作用物質を探索した結果、 新たに土壌から 分離した糸状菌 F K I - 2 1 3 6株の培養物中にイミぺネム活性増強作用を有す る物質が産生されていることを見出した。 次いで、 該培養物から 2種のイミベネ ム活性増強物質を分離、 精製した結果、 このような化学構造を有する物質は従来 まったく知られていないことから、 本物質をそれぞれステンフォン B物質および ステンフォン C物質と称し、 それらの物質を総称してステンフォン類とした。 本発明は、 かかる知見に基づいて完成されたものであって、 下記の式 [ I ]
で表されるステンフォン B物質および/または下記式 [II]
で表されるステンフォン C物質からなるステンフォン類を提供するものである。 本発明は、 ァスペルギルス属に属し、 前述の式 [I] および [II] で表される ステンフォン類を生産する能力,を有する微生物を培地に培養し、 培養物中にステ ンフォン類を蓄積せしめ、 該培養物からステンフォン類を採取するステンフォン 類の製造方法を提供するものである。
本発明は、 ァスペルギルス属に属し、 前述の式 [I] および [Π] で表される ステンフォン類を生産する能力を有するァスペルギルス エスピー (As p e r g i l l u s s p. ) FK I - 2136 (N I TE ABP—83) またはそ の変異株であるステンフォン類の製造方法を提供するものである。
本発明はァスペルギルス エスピー (A s p e r g i 1 1 u s s p. ) FK 1 -21 36 (N I TE ABP—83)を提供するものである。
前記の式 [I]および [II] で表される新規ステンフォン類を生産する能力を 有する微生物 (以下 「FK I— 2136物質生産菌」 と称する) はァスペルギル スに属するが、 本発明のステンフォン類生産能を有するものであればよく、 特に 制限されることはない。 本発明のステンフォン類を生産するために使用される菌 株の好適な一例としては、 本発明者らによつて沖鏞県石垣島の土壌より新たに分 離されたァスペルギルス エスピー (A s p e r g i 1 1 u s s p. ) FK I -21 36株が挙げられる。 本菌株の菌学的性状を示すと以下のとおりである。
1. 形態的特徴
本菌株は、 ッァペック ·イーストエキス寒天培地、 麦芽汁寒天培地、 ショ糖 2 0 %入りッァペック ·イーストエキス寒天培地などで良好に生育し、 各寒天培地 での分生子の着生は良好であつた。
ッァペック ·ィーストエキス寒天培地に生育したコロニーを顕微鏡で観察する と、 菌糸は無色で隔壁を有していた。 分生子柄は基底菌糸より直生し、 その長さ は、 1 75〜7 3 0 /zmで基部には逆 T字型の足細胞を生じる。 分生子柄の先端 は、 球形から亜球形に肥大し、 直径 1 5〜6 0 mの頂囊を形成する。 ァスペル ギラは、 複列性で、 メ トレ (6〜1 2 x 3〜6〃m) とアンプル型のフィアラィ ド (5〜1 0 x 2〜3〃m) からなる。 ァスペルギラは頂囊のほぼ全体を覆う。 フィアラィドの先端からは分生子が形成され、 培養時間の経過とともに連鎖状と なる。 分生子は、 球形から亜球形、 薄い黄土色、 大きさ 2〜4 mで表面は滑面
^めつ こ。
2. 各種培地上での培養性状
本菌株を各種寒天培地上で、 2 5°C、 7日間培養した場合の肉眼的観察結果を 下記に示す。 培地 培地上の生育状態 コロニー表面 コロニー裏面 可溶性 (コロニーの直径) の色調 の色調 色素 ッァペック ·ィーストエキス寒天培地
良好 (6 0〜6 5mm) 白色〜クリーム色 灰黄色 なし 羊毛状〜ビロード状
しわ状
周辺平滑 麦芽汁寒天培地
良好 (4 0〜4 5mm) クリーム色〜 灰色 なし
ビロード状 薄い黄土色
20%ショ糖ッァぺック ■ィーストエキス寒天培地
良好 (65〜70mm) 白色〜クリーム色
羊毛状〜ビロード状
しわ状
周辺平滑 なお、 本菌株はッァペック ·イーストエキス寒天培地で、 5°Cおよび 37でで 1 4日間培養したが、 生育しなかった。
3. 生理的性状
1 )最適生育条件
本菌株の最適生育条件は pH4〜 8、 温度 1 1. 5〜29°Cである。
2)生育の範囲
本菌株の生育範囲は pH3〜l 0、 温度 1 0〜30. 5°Cである。
3)好気性、 嫌気性の区別
好気性
4. 微生物の国際寄託
上記 FK 1 -2 1 36株の形態的特徴、 培養性状および生理的性状に基づき、 既知菌種との比較を試みた結果、 本菌株はァスペルギルス (As p e r g i 1 1 u s)属に属するー菌株と同定し、 ァスペルギルス■エスピー FK 1 -21 36 と命名した。 本菌株は、 ァスペルギルス 'エスピー FK I— 2 1 36 (As p e r g i 1 1 u s s p. FK I— 21 36) として、 特許手続上の微生物の寄託 の国際的承認に関するブタぺスト条約に基づき、 日本国千葉県木更津巿かずさ鎌 足 2丁目 5番 8号 (郵便番号 292 - 08 1 8 ) に所在する独立行政法人製品評 価技術基盤機構 特許微生物寄託センター (Na t i on a l I n s t i t u
t e o f Te c hno l o gy and Eva l u a t i on N I T E Pa t en t Mi c r o o r gan i sms De p o s i t a r y) に寄 託してある。 受領日は 2005年 3月 3日、 受領番号は N I TE ABP- 83 である。 本発明で使用される FK 1 - 21 36物質生産菌としては、 前述のァスペルギ ルス ·エスピー FK 1 -21 36菌株が好ましい例として挙げられるが、 菌の一 般的性状として菌学上の性状は極めて変異し易く、 一定したものではなく、 自然 的にあるいは通常行われる紫外線照射、 X線照射または変異誘導体剤、 例えば N 一メチル一 N' —ニトロ一 N—ニトロソグァ二ジン、 2—ァミノプリンなどを用 いる人工的変異処理により取得できる人工的変異株は勿論、 細胞融合株、 遺伝子 操作株、 自然変異株も含め、 ァスペルギルス 'エスピー (A s p e r g i 1 1 υ s s p. ) に属し、 前記の式 [I] および [II] で表されるステンフォン類を 生産する能力を有する菌株はすべて本発明に使用することができる。
本発明を実施するに当たっては、 先ずァスペルギルス ·エスピーに属する FK 1 -2 1 36物質生産菌を培地に培養することにより行われる。 上記ステンフォ ン類の生産に適した栄養源としては、 微生物が同化し得る炭素源、 消化し得る窒 素源、 さらに必要に応じて無機塩、 ビタミン等を含有させた栄養培地が使用され る。 上記の同化し得る炭素源としては、 グルコース、 フラクトース、 マルト一ス 、 ラクトース、 ガラクト一ス、 デキストリン、 澱粉等の糖類、 大豆油等の植物性 油脂類が単独または組み合わせて用いられる。
消化し得る窒素源としては、 ペプトン、 酵母エキス、 肉エキス、 大豆粉、 綿実 粉、 コーン ·スティープ' リカー、. 麦芽エキス、 カゼイン、 アミノ酸、 尿素、 ァ ンモニゥム塩類、 硝酸塩類が単独または組み合わせて用いられる。 その他必要に 応じてリン酸塩、 マグネシウム塩、 カルシウム塩、 ナトリウム塩、 カリウム塩な どの塩類、 鉄塩、 マンガン塩、 銅塩、 コバルト塩、 亜鉛塩等の重金属塩類ゃビ夕 ミン類、 その他本ステンフォン類の生産に好適なものが適宜添加される。
培養するに当たり、 発泡が激しいときには、 必要に応じて液体パラフィン、 動 物油、 植物油、 シリコン等、 界面活性剤等の消泡剤を添加してもよい。 上記の培
養は、 上記栄養源を含有すれば、 培地は液体でも固体でもよいが、 通常は液体培 地を用い、 培養するのがよい。 少量生産の場合にはフラスコを用いる培養が好適 である。 目的物質を大量に工業生産するには、 他の発酵生産物と同様に、 通気攪 拌培養するのが好ましい。
培養を大きなタンクで行う場合は、 生産工程において、 菌の生育遅延を防止す るため、 はじめに比較的少量の培地に生産菌を接種培養した後、 次に培養物を大 きなタンクに移して、 そこで生産培養するのが好ましい。 この場合、 前培養に使 用する培地および生産培養に使用する培地の組成は、 両者とも同一であってもよ いし、 必要があれば両者を変えてもよい。
培養を通気攪拌条件で行う場合は、 例えばプロペラやその他機械による攪拌、 ファメーターの回転または振とう、 ポンプ処理、 空気の吹き込み等、 既知の方法 が適宜使用される。 通気用の空気は滅菌したものを使用する。
培養温度は、 本 F K I— 2 1 3 6物質生産菌が本ステンフォン類を生産する範 囲内で適宜変更し得るが、 通常は 2 0〜3 0 °C、 好ましくは 2 7 °C前後で培養す るのがよい。 培養 p Hは通常 5〜8、 好ましくは 7前後で培養するのがよい。 培 養時間は培養条件によっても異なるが、 通常は 4〜7日程度である。 このように して得られたステンフォン類は、 培養菌体および培養濾液に存在する。 培養物か ら目的とするステンフォン類を採取するには、 全培養物をァセトンなどの水混和 性有機溶媒で抽出し、 抽出液を減圧下有機溶媒で留去後、 続いて残渣を酢酸ェチ ル等の水不混和性有機溶媒で抽出することによって行われる。
上記の抽出法に加え、 脂溶性物質の採取に用いられる公知の方法、 例えば吸着 クロマトグラフィー、 ゲル濾過クロマトグラフィー、 薄層クロマトグラフィー、 遠心向流分配クロマトグラフィー、 高速液体クロマトグラフィ一等を適宜組み合 わせ、 あるいは繰り返すことにより、 本ステンフォン類を分離、 精製することが できる。 理化学的性状
本発明のステンフォン類の理化学的性状について説明する。
1 . ステンフォン B物質
( 1 ) 性状 :黄色針状、
(2) 分子式 : C3QH4209 、
HRE I -MS (m/z) [M + ] 計算値 5 4 6. 2 8 3 5、 実測値 5 4 6. 2 8 2 9、
( 3 ) 分子量 : 5 4 6、
E I一 MS (m/z) で [M + ] 5 4 6を観測、
(4) 紫外部吸収スぺクトル: メタノール溶液中で測定した紫外部吸収スぺク トルは第 1図に示すとおりであり、 ; Ima X (Me〇Η, ε) : 2 0 6 nm ( 7 7 4 8) 、 2 6 7 nm ( 5 1 5 4 ) , 3 8 3 nm ( 5 0 5 ) 付近に特徴的な吸収 極大を示す、
( 5 ) 赤外部吸収スぺク トル:臭化力リゥム錠剤法で測定した赤外部吸収スぺ クトルは、 第 2図に示すとおりであり、 リ ma x 3 4 4 0、 2 9 3 5、 1 7 2 7 、 1 6 4 4、 1 6 0 2 cm— 1に特徴的な吸収極大を示す、
( 6) 比旋光度: [ひ] 。 26 + 1 4 4. 0° (c = 0. 1、 メタノール) 、
( 7) 溶剤に対する溶解性: メタノールやクロ口ホルムに可溶、 水に不溶、
(8) プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重クロ口ホルム中で、 バ リアン社製 3 0 0 MHz核磁気共鳴スぺクトロメータで測定した水素の化学シフ ト (p pm) 及び炭素の化学シフト (p pm) は下記に示すとおりである。
• 0 • 9 8 (3 Η) 、 1, 0 4 (3 H) 、 1. 1 4 ( 3 H) 、 1 • 2 0
( 3 H) 、 1 3 2 ( 3 Η) 、 1. 5 8 ( 1 H) 、 1. 6 0 ( 1 H) 、 1 6 1
( 3 H) 、 1 6 2 ( 3 Η) 、 1. 8 6 ( 1 H) 、 1. 8 8 ( 1 H) 、 1 9 4
( 3 H)ヽ 1 9 6 ( 1 Η) 、 2. 0 8 ( 1 H:) 、 2. 2 3 ( 1 H) 、 3 3 0
( 1 H) 、 3 4 4 ( 1 Η) 、 3. 5 7 ( 1 H) 、 3. 6 8 ( 1 H) 、 4 1 0
( 1 H) 、 4 • 1 5 ( 1 Η) 、 4. 9 0 ( 1 H) 、 5. 1 5 ( 1 H) 、 5 • 5 6
( 1 H) 、 6 • 4 7 ( 1 Η) P m 、
δ c • 1 1 . 6 、 1 3. 1、 1 3 . 2、 1 6. 9、 2 1 . 2, 2 1 . 3 、 2
3. 8、 2 5 • 0 、 2 6 . 4 、 2 8 . 2 、 3 4. 2 、 3 7 • 4 0. 8 、 4 5
4、 6 2 . 3 、 7 0. 7、 7 1. 7 7 6. 2、 7 9 6 、 8 1. 4 、 8 3 .
8、 1 1 7 8 、 1 2 5 . 3 、 1 3 1 7, 1 3 2 . 6 、 1 4 8. 8、 1 5 1
5、 1 69. 7、 1 8 1. 0、 1 88. 5 ppm、
以上のように、 ステンフォン B物質の各種理化学的性状やスぺクトルデータを 詳細に検討した結果、 ステンフォン B物質は下記の式 [I] で表される化学構造 であることが決定された。
2. ステンフォン C物質
( 1 ) 性状 :黄色針状、
(2)分子式 : C3。H4207 、
HRE I -MS (m/z) [M + ] 計算値 5 14. 2926、 実測値 5 14. 293 1、
( 3 ) 分子量 : 5 1 4、
E I -MS (m/z) で + ] 5 1 4を観測、
(4)紫外部吸収スぺクトル: メタノール溶液中で測定した紫外部吸収スぺク トルは第 5図に示すとおりであり、 ;imax (MeOH, ε) : 207 nm (7 604) 、 265 nm ( 7239 ) , 398 nm (6 1 6) 付近に特徴的な吸収 極大を不す、
( 5 ) 赤外部吸収スぺクトル:臭化力リゥム錠剤法で測定した赤外部吸収スぺ クトルは、 第 6図に示すとおりであり、 max 3444、 2944、 1 739 、 1 643、 1 604 cm 1等に特徵的な吸収極大を示す、
(6)比旋光度: [ ] 。 26 + 94. 6 ° (c = 0. 1、 メタノール) 、
(7) 溶剤に対する溶解性: メタノールやクロ口ホルムに可溶、 水に不溶、
(8) プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重クロ口ホルム中で、 バ リアン社製 3 0 0 MHz核磁気共鳴スぺクトロメータで測定した水素の化学シフ ト (p pm) 及び炭素の化学シフト (p pm) は下記に示すとおりである。
: 0 8 8 (3H) 1 . 0 2 (3 H) 、 1, 1 6 (3H) 、 1 • 1 8
(3 Η) 、 1 2 1 ( 1 H) 、 1 . 2 8 ( 3 H) 、 1. 4 3 ( 1 H) . 1 4 8
( 1 H) 、 1 5 9 (3H) 、 1 . 6 2 (3 H) 、 1. 6 3 ( 1 H) . 1 6 6
( 1 H) 、 1 7 9 ( 1 H) 、 1 . 8 0 ( 1 H) 、 1. 8 6 ( 1 H) 、 1 9 3
(3Η) 、 2 1 1 ( 1 H) 、 2 . 1 8 ( 1 H) 、 2. 5 2 ( 1 H) 、 3 1 2
( 1 Η) 、 3 2 1 ( 1 H) 、 3 . 3 4 ( 1 H)、 5. 1 4 ( 1 H) 、 5 5 3
( 1 H) 、 6 4 8 ( 1 H) P P m、
δ c '· 1 1 • 6 、 1 2. 2 、 1 3 • 1、 1 6. 4、 1 7 . 0, 2 0 . 8 2
1. 1、 2 1 . 3 、 2 3. 8ヽ 2 5. 2 、 2 6. 1 、 3 3 - 5, 3 5. 5 、 3 6
8、 3 7 . 2 、 4 6. 6、 7 1 . 8 、 8 0 . 5、 8 1 5 、 84. 0ヽ 8 4
9、 1 1 7 • 8 、 1 24. 9 、 1 3 2 1、 1 3 2 . 4 、 1 4 8. 0、 1 5 2 •
3、 1 6 9 8 、 1 8 1. 3ヽ 1 8 7 1 P pm、
以上のように、 ステンフォン c物質の各種理化学的性状やスぺクトルデータを 詳細に検討した結果、 ステンフォン C物質は下記の式 [II] で表される化学構造 であることが決定された。
次に、 本発明のステンフォン類の生物学的性状について詳細に述べる。
1. ペーパーディスク法によるィミぺネム活性増強作用の評価方法
試験菌として、 臨床分離されたメチシリン耐性 S t a p y l o c o c c u s a u r e u s K 24株 用いた。 S t a p y l o c o c c u s a u r e u s は、 Mu e 1 1 e r— H i n t o n b r o t h (2. 1 %w/v) (D I FC 〇) 3 7°C. 20時間培養後、 同培地で 0. 5Mc FARLAND (約 1 08 C FU ZmL) 相当に懸濁し、 MHA培地 (Mu e l l e r— H i n t o n b r o t h 2. 1 % (w/v) . Ag a r 1. 5 %) および同組成の培地にイミぺネ ム (日本国、 萬有製薬株式会社チェナム筋注用力価 0. 5) を試験菌の生育に影 響を与えない濃度、 すなわち最終濃度 1 0 /gZmLとなるように添加した培地 に塗沫した。 塗沫は米国臨床検査標準化委員会 (Na t i on a l C omm i t t e e f o r L a b o r a t o r y S t a n d a r d, NCCLS) 法 に従い、 滅菌綿棒 (川本産業株式会社、 日本国) を用いて行った。 試験菌に対す る各培地上での抗菌活性は、 ペーパーディスク法 (薄手、 6mm: ADVANT EC社製) にて、 37 °Cで 2 0時間後の阻止円径の直径を単位 mmで表記した。 その結果、 5〃 gディスク条件下にて、 ステンフォン B物質およびステンフォン C物質ともに、 それ自身では阻止円が測定されなかったのに対して、 イミぺネム 存在下では、 それぞれ、 1 5mmおよび 2 Ommの阻止円が測定され、 イミぺネ ム活性増強作用が確認された。
2. 微量液体希釈法による各種抗菌剤に対する活性増強作用の評価方法
ペーパーディスク法による評価で強いィミぺネム活性増強作用を示したステン フォン C物質に関しては、 微量液体希釈法に従いイミぺネムに加えその他抗菌剤 を含む活性増強を評価した。 その他薬剤としては、 クロキサシリン ( I CN B i om e d c i c a 1 s社) 、 セファゾリン (和光純薬、 日本国) 、 バンコマイ シン (和光純薬、 日本国) 、 ストレプトマイシン (明治製菓、 日本国) 、 テトラ サイクリン (和光純薬、 日本国) 、 エリスロマイシン (日本国、 北里大学北里生 命科学研究所保存) およびシプロフロキサシン (和光純薬、 日本国) を使用した 。 評価は、 日本化学療法学会標準法 (CHEMOTHERAPY 3 8巻、 1 0
3〜1 05頁、 1 9 9 0年) を一部改変して行った。
9 6 we 1 1 p l a t e (C o r n i n g社、 米国) の各 w e l 1に、 M u e l l e r -H i n t o n b r o t h (2. 1 %w/ v ) を 8 5 / 1 添加した 後、 予め滅菌水で段階希釈しておいたイミぺネムを最終濃度 4. 8 X 1 0_4から 2 5 6 fi g/m 1 となるように各 we 1 1に 5〃1 添加した。 さらに、 これら各 we 1 1にステンフォン C物質自身では生育に影響を与えない最終濃度 1 6 g Zm 1 となるようにメタノール溶液 5 1 を添加した。 よく混合した後、 試験菌 MRSAを上記同様に 0. 5Mc FARLAND (約 1 08 CFUZmL) 相当に懸 濁し、 これを同培地で 1 0倍に希釈した接種菌液を各 we 1 1に 接種した 。 3 7°C、 20時間培養後、 菌の発育が肉眼的に認められない we 1 1の中、 最 小の薬剤濃度をもって M l。とした。 各種抗菌剤単独時の M I Cおよび各種抗菌 剤とステンフォン C物質併用時の M I Cは下記の第 1表に示すとおりであつた。 第 1表
M I C g/mL) 割合
一 +ステンフォン C (一 Z +ステンフォン C) ィミぺネム 1 6 0. 0 3 5 1 2
クロキサシリン 5 1 2 1 5 1 2
セファゾリン 64 4 1 6
ノくンコマイシン 0. 5 0. 5 1
ストレプトマイシン 2 0. 5 4
テトラサイクリン 32 3 2 1
エリスロマイシン > 2 5 6 > 2 5 6 1
シプロフロキサシン 64 3 2 2 以上のように、 ィミぺネムでは、 単独で M I C 1 6〃gZmLからステンフォ ン。物質 (1 6〃 g/mL) 存在下ではその M I Cは 0. 0 3〃 gZmLまで低 下させ、 イミぺネムの活性を 5 1 2倍に増強することが確認された。 また、 クロ
キサシリンゃセファゾリンにおいても、 それぞれ、 5 1 2および 1 6倍の活性増 強が確認され、 ステンフォン類は広く 3-ラクタム抗生物質の活性増強作用を有 していた。
3. 各種試験菌に対する抗菌作用
以下に示した 1 5種の試験菌に対する抗菌活性に関しては、 ペーパーディスク 法に従い阻止円径 (mm) を測定した。 培養温度は、 M.smegmatis、 X. campestr is pv. oryzae、 P. oryzae、 A.niger、 M. racemosus、 C. albicansおよび S. cerevi siaeについては、 27°Cとし、 他の試験菌は 37でとした。 培養時間は M. smegma tis、 P.oryzaeおよび A.niger は 48時間とし、 他の試験菌については 24時間 とした。 各試験菌に対する 5 g/直径 6 mmディスクの薬剤濃度条件下の薬剤 濃度条件下における阻止円径 (mm) は、 下記の第 2表に示すとおりであった。 第 2表
Inhibition zone (mm;
Test strain Stemphone B Stemphone C
Bacillus subtilis B27 (PCI 219) 9
Stapylococcus aureus KB210 (ATCC6538p) 8
Micrococcus luteus B40 (ATCC9341) 14
Mycobacterium smegmatis KB42 (ATCC607)
Escherichia coli KB218 (匪 J)
Escherichia coli KB176 (画 J Jc -2)
Pseudomonas aeruginosa KB105 (P-3)
Xanthomonas campestris pv. oryzae KB88
Bacteroides fragilis KB169 (ATCC23745)
Acholeplasma laidlawii KB 174
Pyricularia oryzae B180
Aspergillus niger KF103 (ATCC6275)
Mucor racemosus KF223 (IF04581)
Candida albi cans KF1
Saccharomyces cerevisiae KF26 (ATCC9763)
図面の簡単な説明
第 1図は本発明のステンフォン B物質の紫外部吸収スぺクトル (メタノール溶 液中) を示したものである。
第 2図は本発明のステンフォン B物質の赤外部吸収スぺクトル (臭化力リウム 法) を示したものである。
第 3図は本発明のステンフォン B物質のプロトン核磁気共鳴スぺクトル (重ク ロロホルム中) を示したものである。
第 4図は本発明のステンフォン B物質の力一ボン核磁気共鳴スぺクトル (重ク ロロホルム中) を示したものである。
第 5図は本発明のステンフォン C物質の紫外部吸収スぺクトル (メタノール溶 液中) を示したものである。
第 6図は本発明のステンフォン C物質の赤外部吸収スぺクトル (臭化カリウム 法) を示したものである。
第 7図は本発明のステンフォン C物質のプロトン核磁気共鳴スぺクトル (重ク ロロホルム中) を示したものである。
第 8図は本発明のステンフォン C物質のカーボン核磁気共鳴スぺクトル (重ク ロロホルム中) を示したものである。 発明を実施するための最良の形態
次に、 実施例を挙げて本発明を説明するが、 本発明はこれのみに限定されるも のでない。
実施例
寒天斜面培地 (グリセロール 0 . 1 % (関東化学、 日本国) 、 K H 2 P〇4 0 . 0 8 % (関東化学) 、 K 2 H P 04 0 . 0 2 % (関東化学) 、 M g S 0 4 - 7
H2 0 0. 0 2 % (和光純薬、 日本国) 、 KC 1 0. 0 2%( 関東化学) 、 NaNOs 0. 2 % (和光純薬、 日本国) 、 酵母エキス 0. 0 2% (オリエン夕 ル酵母、 日本国) 、 寒天し 5 % (清水食品、 日本国) 、 PH 6. 0に調製) で 培養した FK I— 2 1 3 6株 (N I TE A B P - 8 3 ) を、 種培地 (グルコ一 ス 2% (和光純薬) 、 ポリべトン 0. 5% (和光純薬) 、 MgS04 · 7H2 0 0. 05% (和光純薬) 、 酵母エキス 0. 2 % (オリエンタル酵母) 、 KH2 P 04 0. 1 % (関東化学) 、 寒天 0. 1 % (清水食品) 、 pH 6. 0に調製)
1 OmLを分注した大試験管に一白金耳ずつ接種し、 27 °Cで 2日間口一タリ一 シエイカー ( 3 0 0 r pm) で培養した後、 生産培地 (グルコース 1. 0 % (和 光純薬) 、 可溶性スターチ 2. 0% (関東化学) 、 大豆油 2. 0% (和光純薬) 、 ファーマメディア 1. 0 % (イワキ社、 日本国) 、 肉エキス 0. 5 % (極東製 薬、 日本国) 、 MgS04 · 7H2 0 0. 1 % (和光純薬) 、 C a C〇3 0. 3 % (関東化学) 、 トレース塩溶液 1. 0 % (F e S〇4 · 7 H2 〇 0. 1 %
(関東化学) 、 MnC 12 · 4 H2 0 0. \ % (関東化学) 、 Zn S04 ■ 7 H2 0 0. 1 % (関東化学) 、 Cu S04 ■ 5 H2 0 0. 1 % (関東化学) 、 C o C l 2 , 6 H2 〇 0. 1 % (和光純薬) 、 寒天 0. 1 % (清水食品) 、 pH 6. 0に調製) 1 0 OmLを分注した 5 0 OmL容三角フラスコ (3 0本) に植菌し、 27°C、 2 1 0 r pmで 3日間振とう培養した後、 さらに 5 0 OmL ルー氏フラスコ (3 0本) にそれぞれ移し、 2 7°Cで 1 0日間静置培養した。 培養終了後、 この培養液 (3 L) を遠心分離し、 上清と菌体を得た。 菌体にァ セトン ( 1. 5 L) を加え、 3 0分攪拌後菌体を濾別して菌体抽出液を得た。 菌 体抽出液を減圧下でアセトンを留去して得られた水残查より、 酢酸ェチル (9 L ) で活性成分を抽出し、 酢酸ェチル層を濃縮乾固し活性粗物質 (4. 4 g) を得 た。 この粗物質をシリカゲルカラム (シリカゲル 60、 メルク社製、 4 0 g) に て粗精製を行った。 へキサン—酢酸ェチル (2 : 1) の溶媒で洗浄した後、 クロ 口ホルム一メタノール ( 1 0 0 : 0、 1 0 0 : 1、 5 0 : 1、 1 0 : 1、 5 : 1 、 1 : 1 ) の各混合溶媒を展開溶媒とするクロマトグラフィーを行い、 溶出液を 各条件で 1 2 OmLに分画した。 活性画分 ( 1 0 : 1) を濃縮乾固することで、 褐色油状物質 7 8 6 mgを得た。 再度、 この粗物質をシリカゲルカラム (シリカ
ゲル 60、 メルク社製、 50 g) にて精製を行った。 クロ口ホルム一メタノール (1 00 : 1、 50 : 1、 20 : 1、 1 0 : 1、 5 : 1) の各混合溶媒を展開溶 媒とするクロマトグラフィーを行い、 溶出液を各条件で 1 2mlずつ 1 0本に分 画した。 活性画分 ( 1 00 : 1フラクション番号 2から 50 : 1フラクション番 号 3) を濃縮乾固することで、 褐色油状物質 274 mgを得た。
これを少量のメタノールに溶解し、 分取 HPLC (カラム: PEGAS I L 〇DS、 200 X 250 mm. センシユウ一科学、 日本国) により最終精製を行 つた。 70 %ァセトニトリル水溶液を移動相とし、 6 mLZm i nの流速におい て、 UV2 1 0 nmの吸収をモニターした。 保持時間 28分に活性を示すピーク を観察し、 このピークを分取して分取液を減圧下濃縮し、 残渣水溶液を凍結乾燥 することによりステンフォン C物質を収量 1 74 mgで単離した。 また、 活性画 分 (50 : 1フラクション番号 4から 20 : 1フラクション番号 3) を濃縮乾固 することで得られた粗物質 262 mgを少量のメタノールに溶解し、 分取 HPL C (カラム: PEGAS I L ODS 200 x 250 mm) により最終精製を 行った。 55%ァセトニトリル水溶液を移動相とし、 9mL/mi n. の流速に おいて、 UV2 1 0 nmの吸収をモニタ一した。 保持時間 20分のピークを分取 して分取液を減圧下濃縮し、 残渣水溶液を凍結乾燥することによりステンフォン B物質を収量 58 mgで単離した。 産業上の利用分野
以上のことから、 新規ステンフォン類を生産する能力を有するァスペルギルス 属に属する FK 1— 21 36株を代表とする微生物を培地に培養して、 その培養 液中から採取したステンフォン類は、 抗菌剤として利用されている S—ラクタム 抗生物質と併用することによりその効果を増強する作用を有することから、 メチ シリン耐性黄色ブドウ球菌 (MR S A)感染症や /3—ラクタム抗生物質耐性を含 む多剤耐性菌を起因とする感染症の治療薬として有用であると期待される。