JP3002654B2 - 微生物の生物学的に純粋な培養物、およびそれを用いるジオール製造方法 - Google Patents

微生物の生物学的に純粋な培養物、およびそれを用いるジオール製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は新規微生物及びそれを用
いる香料関連化合物の製造に関する。
【0002】
【従来の技術】式、
【化4】 のスクラレオライドは、それ自体芳香性を有するが香料
に用いられる重要な物質である式、
【化5】 のエーテル化合物製造における価値ある中間体として見
出された。
【0003】米国特許第4,798,799号は、本願に関連す
る化合物について、式、
【化6】 のジオールは、前記スクラレオライド生成における中間
体として、また前記エーテル化合物のプレカーサとして
有用であると記載している。
【0004】また、式、
【化7】 の環状エーテルは前記ジオール生成における中間体とし
て有用である旨記載されている。
【0005】この米国特許は、微生物Hyphozyma roseon
iger ATCC 20604が、式、
【化8】 のスクラレオールならびに前記環状エーテルを包含する
化合物を前記ジオールに変換する能力があること、およ
び、この微生物の培養物の利用を開示している。
【0006】しかしながらこの先行技術には、式、
【化9】 の反応をBensingtonia ciliata, ATCC 20919を用いる特
徴的方法を通じて行うことについては何らの教示も暗示
もない。
【0007】しかも本発明の微生物は新規なものであ
る。
【0008】
【発明の要旨】本発明は、下記微生物の生物学的に純粋
な培養に関するものである。 Bensingtonia ciliata, ATCC 20919
【0009】他の実施例に於いて本発明は、下記微生物
に関する培養物についてのものである。 Bensingtonia ciliata, ATCC 20919
【0010】この培養物は、水性養分培地における通気
条件下で、次の構造のジオール
【化10】 を次のようにして生産することができる。
【0011】すなわち、Bensingtonia ciliata, ATCC 2
0919は、次の構造のスクラレオール[sclareol]と、
【化11】 次の構造のエピスクラレオール[episclareol]から
【化12】 次の構造のジオール
【化13】 を生産することができるものである。
【0012】さらに別の実施例では本発明は、水性養分
培地における通気条件下で、次の微生物を(個々に)培
養することによって産生される混合物にも関する。 ATCC 20919、Bensingtonia ciliata
【0013】さらに別の実施例では発明は、次の構造の
ジオールの生産方法の過程に関し、
【化14】 Bensingtonia ciliata, ATCC 20919を、 (1) 次の構造の
スクラレオール
【化15】 および、(2) 次の構造のエピスクラレオール
【化16】 から成る群から選択される化合物の1または2以上を有
する水性養分培地で通気条件下に培養することを特徴と
するものである。
【0014】ATCC 20919のBensingtonia ciliataを使用
して反応をさせると次の反応を起こすことができる。
【化17】 及び/又は
【化18】
【0015】使用される微生物の形態[form]は重要でな
い。微生物は、細胞およびその細胞に好適な養分溶液を
含む培養物(懸濁液)としてか、または緩衝液中に懸濁
した細胞という形態で使用することができる。細胞また
はその抽出された酵素は適当な固形支持体上に固定する
ことができ、そうすれば、これらは化合物の変換に用い
ることができる。
【0016】懸濁状の培養物混合物は適当な水性養分培
地への微生物の接種によって調製される。適当な養分培
地とは窒素源、無機塩、成長要素、好適な基質、および
任意的にその他の炭素源を包含するものをいう。本発明
方法の実施に好適な種類の炭素源としては、例えばグル
コース、ガラクトース、L−ソルボース、マルトース、
スクロース、セロビオース、トレハロース、L-アラビ
ノース、L−ラムノース、エタノール、グリセロール、
L−エリトリトール、D−マンニトール、ラクトース、
メリビオース、ラフィノース、メレチトース、デンプ
ン、D−キシロース、D−ソルビトール、α−メチル−
D−グルコシド、乳酸、クエン酸、およびコハク酸があ
る。好適な窒素源には、例えばペプトン、肉抽出物、抽
出酵母、コーンスティープリカー、カゼイン、尿素、ア
ミノ酸のような窒素含有の有機物質、または硝酸塩、亜
硝酸塩、無機アンモニア塩のような窒素含有の無機化合
物がある。好適な無機塩には例えば、マグネシウム、カ
リウム、カルシウム、またはナトリウムのリン酸塩があ
る。上記の培地の養分は、所望により例えばビタミンB
群の1または2以上、及び/又はFe,Mo,Cu,M
n及びBのような1または2以上の微量鉱物で補足する
ことができる。ビタミンや微量鉱物は、酵母エキスの少
量が培地に追加されるときには不要である。細菌汚染が
問題になるときは、クロロアンフェニコル[chloroamphe
nicol]またはクロロテトラサイクリンのような抗生物質
を添加することが好ましい。
【0017】微生物の培養は、静置培養としてでも、あ
るいは通気条件下で深部培養(例えば、撹拌培養、発酵
器[fermentor]を用いた培養)としてでも行うことがで
きる。ものによってはpH約2.5〜9.0の範囲で行な
うことができるが、好ましくは約3.0〜7.5、最適に
は約3.0〜6.5の範囲である。pH値は、塩酸、酢
酸、シュウ酸等の無機酸または有機酸を添加することに
よって調整することができ、あるいは水酸化ナトリウ
ム、水酸化アンモニウムのような塩基を添加することに
より、またはリン酸塩またはフタル酸塩のような緩衝剤
を添加することにより調整することができる。インキュ
ベーション温度は約12℃〜約33℃に維持されていな
ければならず、より好ましくは約15℃〜30℃、最適
には約18℃〜28℃である。
【0018】本発明に係る方法は、下記構造の化合物
【化19】 の1つ又は混合物を単一炭素源として培養着手時に養分
培地に添加することによって好適に行われる。別法とし
て、培養中か、または炭素源が枯渇されたときに、デキ
ストロースのような別の炭素源と組み合わせて基質を加
えてもよい。培地における基質濃度に対する唯一の制限
は培養物を効果的に空気にさらすことができることにあ
る。しかし基質濃度は好ましくは約0.1g/l〜約13
0g/l、より好ましくは約0.5g/l〜120g/l、最
適には約2.5g/l〜約100g/lの範囲がよい。化合
物の変換は、上記のいかなる環境下でも最適に行なわれ
得る。
【0019】化合物の変換の全時間(初期培養期後の)
は養分培地の組成および基質濃度に依って変ってくる。
一般に振盪フラスコを用いた培養は約12時間〜約26
4時間を要する。しかし、発酵器が使用されるときは培
養時間は約48時間またはそれ以下に短縮される。
【0020】化合物の変換は培養物から単離された微生
物の細胞、または従来技術として周知の方法で細胞から
単離された抽出酵素を用いて行われる。この場合には化
合物の変換は、例えば緩衝溶液中、生理食塩溶液中、新
鮮な養分培地中、または水中といった様々な水性養分培
地で便宜的に行われる。単離された細胞または抽出され
た酵素は固形支持体上に固定されて所望の化合物の変換
が達成される。また基質の化合物の変換は、この有機体
(微生物)の突然変異体によって影響される。このよう
な突然変異体は、例えば細胞を紫外線またはX線、ある
いは例えばアクリジンオレンジのような公知の突然変異
誘発物質にさらすという周知の方法によって簡単に得る
ことができる。
【0021】基質は粉末として、あるいはTWEEN 80(商
標)(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸塩)
のような乳化剤中スラリーとして、あるいは乳化剤中の
溶液として、あるいは例えばアセトン、メタノール、エ
タノール、エチレングリコール、あるいはジオキサンの
ような親水性溶媒中の溶液として培地に添加することが
できる。表面活性剤または分散剤も基質の水性懸濁液に
添加することができるし、あるいは基質は超音波を用い
て乳化することができる。
【0022】シリコーン油(例えばUCON)、ポリアルキ
レングリコール誘導体、とうもろこし油、または大豆油
のような入手容易な消泡剤が発泡を抑制するのに使用で
きる。
【0023】基質の変換は、気−液クロマトグラフィ(G
LC), 薄層クロマトグラフィ(TLC),高圧液体クロマトグ
ラフィ(HPLC), 赤外スペクトル(IR)、および核磁気共鳴
(NMR)のような標準的な分析法を用いてモニターするこ
とができる。もし基質の急速な消失が観察されるときに
は、微生物の化合物変換能力を最大限にするため、もっ
とたくさんの基質をそのとき追加することができる。一
般にこの過程は、基質の大部分が培地から消失したとき
に終りにされる。
【0024】次いで、下記構造の化合物を水性養分培地
から回収できる。
【化20】 下記構造の化合物は、
【化21】 米国特許第4,798,799号明細書の第8欄、第52行、第53行に
記載されているように(この言及により本明細書の一部
に組み入れるものとする)下記構造の化合物に環化され
る。
【化22】
【0025】次の構造の化合物の生成は
【化23】 次の構造のジオールを再閉環することにより行われる。
【化24】
【0026】これは次の反応による。
【化25】
【0027】この再閉環反応は、好ましくは、例えば水
性水酸化カリウム、あるいは水性水酸化ナトリウムのよ
うな水性水酸化アルカリ金属という塩基性条件で行われ
る。その詳細については後述の実施例3に記載する。
【0028】下記構造の化合物の発酵ブイヨンからの単
離および精製は、
【化26】 ろ過、遠心、溶媒抽出、蒸留、結晶化等の従来技術によ
って行うことができる。
【0029】下記構造の化合物は、
【化27】 米国特許第4,798,799号の第8欄、第58〜68行、 米国特許
第4,798,799号の第9欄、第1〜2行に記載されている当業
者に周知のよく使われる環化法により、下記構造の化合
物に変換することができる。
【化28】
【0030】本発明に使用される微生物は、様々な地理
的箇所から入手された土壌サンプルから単離された。こ
の菌株は次の受託番号下にアメリカン タイプ カルチャ
ーコレクション[ATCC]に寄託した。 Bensingtonia ciliata, ATCC 20919
【0031】Bensingtonia ciliataは、セントラルビュ
ーロー ヴォー シメール カルチャーズ(CBS)で調べら
れ、CBSは当該微生物に次の名前を与えた。 Lecythophere hoffmannii (van Beijma) なぜならCBSによればこれは糸状菌だからである。
【0032】Bensingtonia ciliata, ATCC 20919につい
ては次のように記述されている。形態学: 酵母維持ブ
イヨン(ATCC 培地 #200)上で細胞は1細胞当り1〜3芽
を持つ球形である。固形培地で細胞は、産生された射出
胞子を有する糸状のものとなる。コロニーは、サーモン
黄褐色で、平たくて、どんよりしていているが、はっき
りした境界を持っている。コーンミール寒天(ATCC 培地
#307)上で、3週間後に真の菌糸体が観察された。
【0033】
【表1】 生理学: 炭素固定: グルコース + D−リボース − ガラクトース + L−ラムノース + L−ソルボース + D−グルコサミン + マルトース + エタノール 弱 スクロース + エリトリトール + セロビオース + グリセロール + トレハロース + アドニトール(リビトール) 弱 ラクトース − ズルシトール(ガラクチトール) 弱 メリビオース + D−マンニトール 弱 ラフィノース + D−ソルビトール(グルシトール) 弱 メレチトース + α−メチル−D−グルコシド 弱 イヌリン − サリシン 弱 可溶性デンプン + イノシトール − D−キシロース + 乳酸 − L−アラビノース + クエン酸 − D−アラビノース − コハク酸 弱 ビタミンなしの成長 − 窒素同化: NH4NO3 弱 高温における増殖: 30℃ 弱/− 37℃ −
【0034】分類学上の説明: Bensingtonia ciliata C.T. Ingold (後記の参考文献参
照) 線菌綱(不完全菌類)[Fungi Imperfecti] 射出胞子の菌類(勢いよくはじき飛ばされる胞子)
【0035】この射出胞子は無色で、液体培地中で2×
5μ、ほとんど8×5μの卵形で、尖端が尖り基部が平
らである。射出胞子は酵母のような出芽型胞子を形成し
て発芽する。そして上記出芽型胞子は反復的に胞子形成
を繰り返しながら典型的な酵母コロニーを形成する。
【0036】ある種の射出胞子は、射出胞子を産生する
短い菌糸の形成や反復的な胞子の放出を伴って発芽し、
全体的に菌糸型のコロニーとなる。
【0037】下記培地からの評価: ATCC培地 #307 コーンミール寒天 (Difco 0386)及び半力のコーンミール寒天 #200 酵母モルト寒天 (Difco 0712) #331 アカパンカビ[Neurospora]寒天(Difco0321) #1245 YEPD #324 モルトエキス寒天 (Difco 0024) #336 ポテトデキストロース寒天 #343 V−8ジュース寒天
【0038】参考文献1. Ingold, C.T. (1986) Bensing
tonia ciliata Gen. et. sp. nov.,Ballistoporic Fung
us. Trans. Br. Mycol.Soc. 86(2): 325−328 参考文献2. Ingold, C.T. (1988) Bensingtonia ciliat
aに関するさらなる観察Trans. Br. Mycol. Soc. 91(1):
162−166
【0039】
【実施例】以下実施例は、現時点で好適な本発明の具体
例を示すために記載されるものであって、いかなる意味
においても本発明の範囲を限定するものではない。特に
断っていない限り重量はグラム、温度は摂氏、圧力はmm
/Hgの単位で示す。
【0040】実施例1: ジオール中間体の生成 反応:
【化29】 および
【化30】
【0041】ニュージャージー州、バーネガットタウン
シップ、グリーンウッドフォレストから持ち込まれた1
0個の土壌サンプルをスクリーニングしている間に、数
個のフラスコは薄層クロマトグラフィに下記構造の化合
物に対応するスポットを示した。
【化31】
【0042】次の組成の培地が調製された。 NH4NO3 0.2% KH2PO4 0.1% MgSO4・7H2O 0.05% 酵母エキス 0.2% デキストロース 1.0%
【0043】500mlフラスコ中に、100mlの培地
と、スクラレオール粉末:TWEEN 80(商標)が50:50
の混合物1gと、が入れられた。このフラスコに、Bensi
ngtonia ciliata, ATCC 20919の分離株400マイクロ
リットルが接種された。25℃、150rpmで1週間後
に、生成した生成物が、330mlの酢酸エチルで抽出さ
れ、抽出物は無水硫酸ナトリウム上に乾燥された。溶媒
は回転蒸発器で除去された。残渣は温めたヘキサンと酢
酸エチル中に溶解された。その抽出物は24時間かけて
自然蒸発されたが、そのとき下記構造の化合物の純結晶
(350mg)が得られた。
【化32】
【0044】図1は下記構造の化合物の核磁気共鳴スペ
クトルである。
【化33】
【0045】実施例2: Bensingtonia ciliata, ATCC
20919を用いたスクラレオライドからのジオール中間体
の生成 実施例1と同一方法による実験が、次の条件で行われ
た。 微生物:Bensingtonia ciliata, ATCC 20919
【0046】培地: NH4NO3 40.0g 抽出酵母 40.0g KH2PO4 20.0g MgSO4・7H2O 10.0g スクラレオール 160.0g TWEEN 80 80.0g d−H2O 19.0l
【0047】発酵器パラメータ: 温度: 25℃ 通気: 2l/分 撹拌: 300rpm pH: 25%のNaOHで6.0に制御 期間: 15日間
【0048】上記培地を有する発酵器が121℃で30
分間滅菌され、25℃に冷やされた。この発酵器に48
時間増殖されたBensingtonia ciliata, ATCC 20919の
培養物1lが接種された。15日間のインキュベーショ
ン後に基質は生成物になっていた。発酵器の内容物は4
00メッシュのふるいにかけられてろ過された。このよ
うにして得られた粗固形生成物は風乾された。101.
7gの生成物が得られた。
【0049】実施例3: デカヒドロ−3a,6,6,9
a−テトラメチルナフト[2−1−b]フランの調製
【化34】 上記構造を有する化合物1.5gが、30ml水中の水酸化
カリウム12.0gの溶液に混合された。この混合物がヒ
ーター、撹拌装置、および還流冷却器で装備されたフラ
スコ中に入れられ3時間のあいだ80℃で還流された。
3時間後に、生成物が蒸気温度162〜164℃、気圧
15mm/Hg.で分別蒸留され、下記構造のかなり純粋な
化合物を得た。
【化35】
【0050】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実施例1の反応生成物の核磁気共鳴[NM
R]スペクトルである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C12R 1:01) (C12P 41/00 C12R 1:01) (72)発明者 ジェームス エイ モーリス アメリカ合衆国、ニュージャージー州 07719、ウォール、ウェスト コート 1406 (72)発明者 アーサー イー ダウニィ アメリカ合衆国、ニュージャージー州 07036、リンデン、モーリスタウン ロ ード 135 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12P 41/00 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記構造の化合物 【化1】 及び 【化2】 の1または2を含む水性養分培地中で通気条件下に、上
    記化合物の少なくとも1を変換して下記のジオール 【化3】 を回収可能な量で生産できるBensingtonia ciliata, AT
    CC 20919の生物学的に純粋な培養物。
  2. 【請求項2】 下記構造の化合物 【化4】 及び 【化5】 の1または2を含む水性養分培地中で通気条件下に、Be
    nsingtonia ciliata, ATCC 20919を培養し、上記化合物
    の少なくとも1を変換して下記のジオール 【化6】 を回収可能な量で生産することを特徴とする前記ジオー
    ルの製造方法。
  3. 【請求項3】 培養を、追加の炭素源を含む水性養分
    培地中で (i) pH:約2.5〜約9.0 (ii) 温度:約12℃〜約33℃ (iii) 化合物濃度:約0.1g/l〜約130g/l の条件の下で行う請求項2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 追加の炭素源がデキストロースである
    請求項3に記載の方法。
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