明 細 書
継目無管の製造方法及び清掃設備
技術分野
[0001] 本発明は、継目無管の製造方法及び清掃設備に関する。具体的には、本発明は、 操業に支障を来すことなぐ延伸圧延される管の内面に生じる浸炭を効果的に抑制 できる継目無管の製造方法及び清掃設備に関する。
背景技術
[0002] マンネスマン マンドレルミル方式による継目無管の製造では、はじめに、丸ビレツ ト又は角ビレットを加熱炉により 1200〜 1260°Cに加熱した後、ピアサにより穿孔圧 延して中空の素管を製造する。次に、この素管の内面にマンドレルバを挿入し、マン ドレルミルにより延伸圧延することにより、所定の肉厚まで減肉して管とする。その後、 減肉された管力 マンドレルバを引き抜いた後、この管を定径圧延機により所定の外 径まで成形圧延して、製品である継目無管を製造する。
[0003] 延伸圧延時のマンドレルバと素管とは焼き付き易い。そこで、マンドレルバの表面に 潤滑剤が塗布される。潤滑剤として、主に、耐摩耗特性ゃ耐焼き付き特性に優れた 黒鉛を混合した黒鉛系潤滑剤が用いられる。本来、マンドレルバは、その表面に塗 布された潤滑剤が乾燥してから、例えば搬送ローラ等の搬送装置に当接しながらマ ンドレルミルまで搬送されて、延伸圧延に供される。しかし、実際の製造工程では潤 滑剤が完全に乾燥する時間を確保できないことが多い。このため、マンドレルバの搬 送時に乾燥していない潤滑剤が滴り落ち、マンドレルバの下方の搬送装置に付着す る。また、たとえ潤滑剤が完全に乾燥して力 搬送する場合でも、搬送中の振動等に よって潤滑剤の被膜が脱落又は剥げ落ち、搬送装置に付着する。このため、マンドレ ルバの搬送装置は、常に、付着した潤滑剤に含まれる黒鉛によって汚染される。この ようにマンドレルバの搬送装置は黒鉛によって汚染されるので、この搬送装置に当接 しながら搬送されるマンドレルバも黒鉛によって汚染される。
[0004] このようにして黒鉛によって汚染されたマンドレルバを用いて、例えば SUS304L等 の炭素含有量が 0. 04%以下 (本明細書では特にことわりがない限り「%」は「質量%
」を意味する)の低炭素鋼からなる素管に延伸圧延を行うと、延伸圧延された管材の 内面が不可避的に浸炭される。
[0005] この浸炭を防止するには、如何なる鋼種に対しても黒鉛系潤滑剤を一切用いな 、 こと、非黒鉛系潤滑剤のみを用いる製造工程を設けること、又は、黒鉛系潤滑剤を用 V、る製造工程により低炭素ステンレス鋼の継目無管を製造する際にはマンドレルバ の搬送装置を十分洗浄すること等の対策が考えられる。
[0006] しかし、一般的に非黒鉛系潤滑剤は黒鉛系潤滑剤に比較して高価であり、また新 たな製造工程を設けるためには新たな設備投資を要し、 V、ずれにしても経済性の点 で実施することが難しい。このため、主に、マンドレルバの搬送装置を洗浄する対策 が行われる。
[0007] 例えば、特許文献 1には、搬送装置の洗浄性を高めるために非耐水性の黒鉛系潤 滑剤を用いる発明が開示されている。また、特許文献 2には、高圧の蒸気や水を吹き 付けてマンドレルバやマンドレルバの搬送装置を洗浄することによって、マンドレルバ の表面における黒鉛の付着量を lOOmgZm2以下に抑制する発明が開示されてい る。
特許文献 1:特開 2002— 28705号公報
特許文献 2:特開 2000— 24706号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0008] しかし、特許文献 1により開示された発明に基づ!/、て非耐水性の潤滑剤を使用する と、マンドレルミルの圧延ロールに吹き付けられる冷却水によってマンドレルバの表面 に塗布された潤滑剤まで流れ落ちる。このため、延伸圧延時にマンドレルバと素管と が焼き付くおそれがある。これを防ぐために、特許文献 1には圧延ロールに対する冷 却水の供給及び停止を厳密に行うことが開示される。しかし、延伸圧延の開始の直 前まで吹き付けられる冷却水の滴りや、圧延ロール力 落下する水滴を完全に無く すことは現実には不可能である。したがって、特許文献 1により開示された発明に基 づいても、延伸圧延時にマンドレルバと素管とが焼き付くおそれがあり、操業の安定 '性を確保できない。
[0009] また、たとえ特許文献 2により開示されるように未使用のマンドレルバを用いても、黒 鉛系潤滑剤を使用した直後にマンドレルバの表面における黒鉛の付着量が lOOmg Zm2以下になるように搬送装置を洗浄することも、現実には難しい。したがって、特 許文献 2により開示された発明に基づいても、延伸圧延時にマンドレルバと素管とが 焼き付くおそれがあり、操業の安定性を確保できない。
[0010] したがって、特許文献 1、 2により開示された発明に基づいても、マンドレルバの製 造工程において、特に低炭素ステンレス鋼力もなる継目無管に生じる浸炭を効果的 に抑制することは、困難である。
課題を解決するための手段
[0011] 本発明は、少なくともマンドレルバの搬送工程に設置される潤滑剤塗布装置力ゝらマ ンドレルミルの入側までの間に配置される搬送装置を洗浄する工程と、この潤滑剤塗 布装置の上流側で延伸圧延に供されたマンドレルバを洗浄する工程と、この潤滑剤 塗布装置によってマンドレルバに潤滑剤、特に非黒鉛系潤滑剤を塗布する工程とを 含み、延伸圧延に供される前のマンドレルバの表面に付着する黒鉛量 C2 (g/m2)と 、潤滑剤の有機バインダに含有される炭素の含有量 CI (g/m2)とが下記(1)式及 び (2)式を満足するように、搬送装置及びマンドレルバそれぞれの洗浄を行うことを 特徴とする継目無管の製造方法である。
[0012] 0. 08 X C1 + 0. 05 X C2≤3 (1)
3≤C1 + C2≤50 (2)
また、本発明は、少なくともマンドレルバの搬送工程に設置される潤滑剤塗布装置 力 マンドレルミルの入側までの間に配置される搬送装置を洗浄し、この潤滑剤塗布 装置によってこの搬送装置により搬送されるマンドレルバに潤滑剤、特に非黒鉛系潤 滑剤を塗布してから、このマンドレルバを素管の延伸圧延に用い、延伸圧延に用いら れたマンドレルバを潤滑剤塗布装置の上流側で洗浄することを繰り返すマンドレルバ の循環使用を行いながら、継目無管を製造する際に、延伸圧延に供される前のマン ドレルバの表面に付着する黒鉛量 C2 (g/m2)と、潤滑剤の有機バインダに含有され る炭素の含有量 CI (g/m2)とが上記(1)式及び (2)式を満足するように、搬送装置 及びマンドレルバそれぞれの洗浄を行うことを特徴とする継目無管の製造方法である
[0013] これらの本発明に係る継目無管の製造方法では、搬送装置及びマンドレルバの洗 浄が、 30〜 150MPaの水圧の高圧水を搬送装置及びマンドレルバに噴射すること によって行われることが望まし 、。
[0014] これらの本発明に係る継目無管の製造方法では、搬送装置の洗浄が、少なくとも、 搬送装置のうちでマンドレルバと接触する部分に、回転するパフを当接させることに よって行われることが望まし 、。
[0015] 別の観点カゝらは、本発明は、マンドレルバの搬送工程に設置される潤滑剤塗布装 置、特に非黒鉛系潤滑剤塗布装置カゝらマンドレルミルの入側までの間に配置される 搬送装置を洗浄する第 1の洗浄手段と、潤滑剤塗布装置の上流側で延伸圧延に供 されたマンドレルバの外面に 30〜150MPaの水圧の高圧水を噴射してマンドレルバ を洗浄する第 2の洗浄手段とを備えることを特徴とする清掃設備である。この清掃設 備を用いることにより、上述した本発明に係る継目無管の製造方法を実施することが できる。
[0016] この本発明に係る清掃設備では、さらに、パフと、このパフを回転させる回転駆動機 構と、搬送されるマンドレルバに干渉しない位置、及びマンドレルバの搬送装置のう ちでマンドレルバと接触する位置の間でこのパフを移動させるための移動機構とから なる拭き取り手段を備えることが望ましい。
[0017] これらの本発明では、継目無管が、延伸圧延後の管の内面における浸炭が問題で あった低炭素ステンレス鋼力もなる継目無管であることが例示される。
発明の効果
[0018] 本発明に係る継目無管の製造方法及び清掃設備によれば、非黒鉛系潤滑剤を用 いても、黒鉛系潤滑剤をも用いる汎用の普通鋼を主体とする製造工程によって低炭 素ステンレス鋼力もなる継目無管を製造した場合における管の内面における浸炭を 解決できるとともに、延伸圧延時における焼き付きの発生を抑制できる。
[0019] このため、本発明によれば、操業に支障を来すことなぐ延伸圧延の際に管の内面 に生じる浸炭を効果的に抑制することができる。
図面の簡単な説明
[0020] [図 1]継目無管の製造工程を模式的に示す説明図である。
[図 2]搬送装置である搬送ローラを清掃するために用いられる清掃設備の第 1の洗浄 手段 (洗浄装置)を示す説明図である。
[図 3]マンドレルバの表面を清掃するために用いられる清掃設備の第 2の洗浄手段( 洗浄装置)の構成を示す説明図であって、図 3 (a)は第 2の洗浄装置の正面図であり 、図 3 (b)は第 2の洗浄装置の配置を示す説明図である。
[図 4]拭き取り手段の構成を示す説明図であり、図 4 (a)は拭き取り手段の側面図であ り、図 4 (b)は図 4 (a)における A— A矢視断面図である。
[図 5]拭き取り手段の最適な設定条件を見出す試験を行った結果を示すグラフであり 、図 5 (a)はパフの支持部への押し付け力と必要な清掃時間との関係を示し、図 5 (b) はパフの回転速度と必要な清掃時間との関係を示す。
[図 6]マンドレルバのオフライン清掃に用いられる清掃設備の構成を示す説明図であ り、図 6 (a)は高圧水をマンドレルバの表面に噴出して洗浄する洗浄手段を示し、図 6 (b)はマンドレルバの表面に回転ブラシを当接させて清掃する擦過手段を示す。 符号の説明
[0021] 0 製造工程
la, lb, lc 洗浄ノズル
2 洗浄装置
3 拭き取り手段
31 パフ
32 回転駆動機構
33 移動機構
4 回転ブラシ
5 水冷装置
6 搬入テーブル
7 潤滑剤塗布装置
8 マンドレルミル
9 リターンライン
10 搬送ロール
11、 12 高圧水
13 再加熱炉
14 ストレツチレデューサ
15 洗浄装置
16 擦過装置
17 搬送ロール
18 スキューローノレ
19 高圧水
発明を実施するための最良の形態
[0022] 本発明を実施するための最良の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する 。なお、以降の説明では、潤滑剤が非黒鉛系潤滑剤であるとともに、低炭素ステンレ ス鋼力 なる継目無管を製造する場合を例にとる。
[0023] はじめに、本発明の原理を説明する。
非黒鉛系潤滑剤には、潤滑剤の付着性や貯蔵安定性を確保するために、必要最 低限の有機バインダが添加される。この有機ノ インダには炭素が含有される。このた め、黒鉛系潤滑剤を用いた際にマンドレルバやマンドレルバの搬送装置に付着した 黒鉛を完全に洗浄して除去したと仮定しても、有機バインダに含有される炭素が、依 然として浸炭の原因となる。そこで、有機バインダに含まれる炭素と潤滑剤中の黒鉛 との両者が搬送装置にどの程度まで付着しても管の内面の浸炭を生じないかを、説 明する。
[0024] 有機バインダに含まれる炭素と黒鉛とは、管の内面の浸炭の原因になる炭素の供 給源としては同様に作用するものの、浸炭に及ぼす影響の程度が異なる。
表 1には、塗布する潤滑剤の成分を種々変更することによって、表面に付着する非 黒鉛系潤滑剤の有機バインダに含まれる炭素含有量 CI (g/m2)及び黒鉛量 C2 (g /m2)を変化させた 4種のマンドレルバを用いて、素管を延伸圧延しただけで熱処理 等を施さない圧延直後における管の内面における炭素の付着量 C (gZm2)を測定し た結果を示す。表 1において、管の内面における炭素付着量 Cは、管の内面の予め
定められた一定面積 (測定面積)の領域を削り取り、肖 ijり取られた粉末の炭素量を力 ントバック (発光分光分析)によって測定し、測定炭素量 (質量) Z測定面積として、求 めた。
[0025] [表 1]
[0026] 表 1に示す結果から、 C、 C1及び C2の間には、(3)式: C = 0. 0008 X C1 + 0. 00 05 X C2の関係が成立する。
さらに、後述するように炭素濃度の増加量を 0. 01%以下に抑制することが望ましく 、そのために(3)式により求められる管の内面の炭素付着量 Cを 0. 03gZm2以下に 抑制するので、
0. 08 X C1 + 0. 05 X C2≤3 (1)
の関係が成り立つ。
[0027] 図 1は、継目無管の製造工程を模式的に示す説明図である。この図 1を参照しなが ら、マンドレルバ Bを搬送しながら延伸圧延に供する際に、効果的にマンドレルバ Bの 表面における黒鉛の汚染を抑制するために洗浄すべき搬送工程を説明する。
[0028] 図 1に示すように、この製造工程 0では、延伸圧延に供されて搬送されたマンドレル ノ Bを、水冷装置 5により水冷して搬入テーブル 6に搭載する。次に、マンドレルバ B に潤滑剤塗布装置 7により黒鉛系潤滑剤を塗布する。次に、ピアサ(図示しない)によ り穿孔圧延された素管 Sにマンドレルバ Bを挿入し、マンドレルミル 8により通常の操 業条件で素管 Sを延伸圧延して管 S1とする。そして、マンドレルバ Bを管 S1から引き 抜いてリターンライン 9を介して水冷装置 5へ戻す。マンドレルバ Bは、以上の循環使 用により延伸圧延に供される。この循環使用により、マンドレルバ Bの搬送装置(図示 しない)は、非黒鉛系潤滑剤に含有される有機バインダと、搬送装置に既に付着して いる黒鉛とにより、汚染される。
[0029] この後、条件 1〜4により示される範囲に配置された搬送装置を洗浄する。
条件 1:図 1に示す潤滑剤塗布装置 7〜マンドレルミル 8の入側
条件 2:図 1に示すマンドレルミル 8の出側〜水冷装置 5
条件 3 :図 1に示す潤滑剤塗布装置 7〜マンドレルミル 8の入側、並びに、マンドレル ミル 8の出側〜水冷装置 5
条件 4 :洗浄無し
そして、条件 1〜4により示される範囲に配置された搬送装置を洗浄した後、潤滑剤 塗布装置 7を用いて非黒鉛系潤滑剤を表面に 5gZm2の炭素付着量で塗布した新 品のマンドレルバ Bの搬送のみ(サーキュレーションと 、う)を行 、、各マンドレルバ B の表面における炭素付着量を測定した。このサーキュレーションを終了したマンドレ ルバ Bを用いて実際に素管 Sを延伸圧延し、延伸圧延を行った後の管 S1の内面に おける浸炭状況を測定した。
[0030] 測定結果を表 2に示す。なお、表 2に示す数値の単位は全て gZm2である。また、 浸炭状況は、延伸圧延の前の素管の炭素濃度に対して同等以下 (浸炭無し)である 場合を◎とし、炭素濃度の増加量が 0. 001〜0. 01%を許容できる範囲の〇とし、 それ以上に炭素濃度が増カロした場合を Xとして、評価した。なお、炭素濃度は、延伸 圧延後の管の内面カゝら分析用サンプルを切り出し、カントバック (発光分光分析)で 測定することによって、測定した。
[0031] [表 2]
[0032] 表 2の条件 1、 3に示すように、少なくとも潤滑剤塗布装置 7からマンドレルミル 8の入 側までにおける搬送装置を洗浄することにより、浸炭を十分に抑制できる。また、表 2 の条件 2、 4に示すように、サーキュレーションを終了した後のマンドレルバ B、すなわ ち延伸圧延に供される直前のマンドレルバ Bの表面の炭素付着量が 50gZm2よりも
多いと、管 SIの内面に浸炭が発生する。
[0033] 延伸圧延に供されるマンドレルバ Bの表面における炭素付着量 {洗浄後の残存炭 素付着量と、マンドレルバ Bの搬送装置力ゝらの炭素付着量と、塗布する潤滑剤に含ま れる炭素含有量 (有機バインダの炭素含有量又は黒鉛量)との総和 }を 50gZm2以 下に抑制すれば、管 S1の内面の浸炭を抑制できる。しかし、この炭素付着量が 3gZ m2未満であると、延伸圧延時に焼付きを生じるので、炭素付着量は防止の観点より 3 gZm2以上であることが望ま U、。
[0034] さらに、マンドレルバ Bの表面の付着物を分析することにより、下記 (A)及び (B)の 事項が判明した。
(A)黒鉛系潤滑剤を塗布して通常の延伸圧延に使用されたままのマンドレルバ Bの 表面の付着物を分析すると、すなわち、延伸圧延に使用した直後のマンドレルバ Bを マンドレルバ搬送装置で搬送せずに抜き取って分析すると、 50〜: LOOgZm2程度の 炭素が付着して 、ることが多 、。
(B)マンドレルバ Bの洗浄を事前にオフラインで行った後にマンドレルバ Bの表面の 付着物を分析すると、すなわち、延伸圧延に使用した直後のマンドレルバ Bをマンド レルバ搬送装置で搬送せずに抜き取ってオフラインで洗浄して分析すると、マンドレ ルバ Bの表面における炭素付着量は 5gZm2以下に抑制される。
[0035] これらの事項 (A)及び (B)、並びに、炭素付着量が 50gZm2を超えると浸炭が生じ ること (表 2参照)から、延伸圧延に供される直前で、すなわち非黒鉛系潤滑剤を塗布 する潤滑剤塗布装置 7の前段にぉ ヽてマンドレルバ Bを洗浄することが好ま 、。
[0036] また、延伸圧延に供される回数が増加するに伴って、マンドレルバ Bの表面に付着 する炭素量が増加する可能性があるので、マンドレルバ Bの洗浄は毎回の延伸圧延 に供される毎に行うことが好まし 、。
[0037] 本発明は、これらの事項に基づいて完成されたものであり、図 1を参照しながら説明 すると、少なくともマンドレルバ Bの搬送工程に設置される潤滑剤塗布装置 7からマン ドレルミル 8の入側までの間に配置される搬送装置を洗浄する工程と、この潤滑剤塗 布装置 7の上流側で延伸圧延に供されたマンドレルバ Bを洗浄する工程と、この潤滑 剤塗布装置 7によってマンドレルバ Bに潤滑剤、特に非黒鉛系潤滑剤を塗布するェ
程とを含み、延伸圧延に供される前のマンドレルバ Bの表面に付着する黒鉛量 C2 (g Zm2)と、潤滑剤の有機バインダに含有される炭素の含有量 Cl (gZm2)とが、 (1) 式: 0. 08 X C1 + 0. 05 X C2≤3、及び(2)式: 3≤C1 + C2≤50を満足するように 、搬送装置及びマンドレルバ Bそれぞれの洗浄を行うことを特徴とする継目無管の製 造方法である。
[0038] 本発明によれば、上述したように、継目無管に生じる浸炭を効果的に抑制すること ができるとともに、後述するようにマンドレルバ Bの搬送装置を操業を阻害することなく 洗净することができる。
[0039] 次に、上述した式(1)及び式(2)を満足するように、マンドレルバ B及び搬送装置を 洗浄するための洗浄条件を説明する。
マンドレルバ Bの搬送装置である搬送ロールに高圧水を噴出する試験用洗浄ノズ ルを備える搬送ロールの洗浄装置 1を、搬送ロール一本当たり 2個設置し、マンドレ ルバ Bに黒船系潤滑剤を塗布して、通常の操業条件で素管 Sを延伸圧延することに より、十分にマンドレルバ Bの搬送装置を黒鉛及び有機バインダにより汚染した後に 、搬送ロールを回転させながら洗浄ノズルから高圧水を噴出させて搬送ロールの表 面を洗浄する。
[0040] そして、目視により、搬送ロールの表面が完全に金属光沢を有するようになった時 点で、黒鉛及び有機バインダによる汚染が無くなつたと判断し、洗浄を終了する。こ の試験結果の評価として、洗浄を開始して力 終了するまでの洗浄時間を概算する 。そして、一つの搬送ロールについて概算した洗浄時間を、潤滑剤塗布装置 7からマ ンドレルミル 8の入側までの搬送装置全体を洗浄するのに必要な時間とする。
[0041] 以上の試験を、洗浄ノズルから噴出する高圧水の水圧を順次変更して繰り返して、 行った。なお、設ける洗浄ノズルの個数を 3個以上に増加すれば、増力!]した分だけマ ンドレルバ Bの搬送工程を洗浄するのに必要な時間が短縮されることは、いうまでも ない。
[0042] 次に、マンドレルバ Bの表面を洗浄するための最適な洗浄条件を見出す試験を説 明する。
潤滑剤塗布装置 7の前段に、洗浄ノズルを 8個環状に配設する。そして、黒鉛系潤
滑剤を塗布して通常の延伸圧延に供されて十分に汚染されたマンドレルバ Bを、通 常の送り速度で送りながら洗浄する。洗浄後のマンドレルバ Bの表面の付着物を分析 することにより、マンドレルバ Bの表面の炭素付着量 (gZm2)を求める。
[0043] さらに、洗浄ノズルから噴出する高圧水の水圧を適宜変更する。なお、本試験で用 いるマンドレルバ Bの表面には、通常通り、焼き付きの防止を目的として設けられた酸 化皮膜が存在しており、この洗浄によってこの酸ィ匕皮膜が剥離していないことを、表 面のミクロ観察により、確認する。
[0044] 以上説明した洗浄試験により、マンドレルバ B及びその搬送装置の表面を洗浄した 結果を表 3に示す。
[0045] [表 3]
[0046] 表 3に示すように、 30MPa以上、好ましくは、 40MPa以上の水圧で高圧水を噴射 することにより、操業に支障を来すことがない洗浄時間で、マンドレルバ Bの搬送装置 を洗净することができる。
[0047] 上述したように、この表 3に示す結果は、洗浄ノズルを搬送ロール一本当たり 2個設 置した場合であり、潤滑剤塗布装置 7からマンドレルミル 8の入側までの範囲に配置 された搬送装置全体を洗浄するのに必要となる時間を概算した結果を示す。このた め、例えば洗浄ノズルを搬送ロール一本当り 4個設置する場合には、増加する洗浄ノ ズル数に応じて洗浄時間が半減する。
[0048] 一方、 30MPa以上の水圧で高圧水を噴射してマンドレルバ Bの表面を洗浄するこ とにより、表面の炭素付着量を 50gZm2以下にできる。すなわち、洗浄後のマンドレ
ルバ Bに潤滑剤塗布装置 7によって所定量の非黒鉛系潤滑剤を塗布し、さらに、潤 滑剤塗布装置 7からマンドレルミル 8の入側までの全ての搬送装置により搬送した後 のマンドレルバ Bの表面の炭素付着量を 50gZm2以下として、上述した(2)式を満足 することができる。し力し、 150MPaより高い水圧の高圧水を噴出すると、マンドレル ノ Bの表面に形成された酸ィ匕皮膜が剥離して焼付き等の圧延不良が生じる。
[0049] なお、表 3には示していないが、 30MPa以上の水圧で高圧水を噴射すれば、(1) 式の関係が満足される。この際、上述したのと同様に、洗浄、潤滑剤塗布さらには搬 送後のマンドレルバ Bの表面における潤滑剤付着量 (膜厚)を測定し、この測定値と 予め分力つている潤滑剤の成分比率とに基づいて、有機ノインダに含まれる炭素含 有量 C1及び黒鉛量 C2を算出した。
[0050] 以上の理由により、マンドレルバ B及びその搬送装置の表面を洗浄するための高圧 水の水圧は、 30〜150MPaに設定することが好ましい。したがって、少なくともマンド レルバ Bの搬送工程に設置される潤滑剤塗布装置 7からマンドレルミル 8の入側まで の間に配置される搬送装置を洗浄する工程と、この潤滑剤塗布装置 7の上流側で延 伸圧延に供されたマンドレルバ Bを洗浄する工程とにおいては、 30〜150MPaの水 圧で高圧水を噴射することにより洗浄を行うことが好ましい。
[0051] マンドレルバ Bの搬送装置として、一般的には、搬送ロールが多用される。しかし、 例えばチ ーンコンベア等のように、外部に露出してマンドレルバに当接する搬送要 素を備える搬送装置を、搬送ロールとともに併用することもある。このような搬送装置 の搬送要素も、マンドレルバ Bの搬送に伴って黒鉛等で汚染される。この搬送要素に 上述した高圧水を噴射して洗浄すると、例えばチェーンコンベアの場合にはチェーン の潤滑を目的に塗布した潤滑剤まで黒鉛等とともに洗い流すことになり、チェーンの 磨耗が進行してその寿命が著しく低下し、最悪の場合には破断に至る。このため、マ ンドレルバ Bに当接する搬送要素が外部に露出した搬送装置に対しては、上述した 高圧水の噴射による洗浄を行わな!/、ことが望ま 、。
[0052] つまり、例えばチェーンコンベアのように高圧水を噴射することによる洗浄を行うこと が望ましくない搬送装置に対しては、そのマンドレルバ Bとの接触面に、回転するバ フを当接させて拭き取る拭き取り装置を用いて、洗浄を行うことが望ましい。
[0053] これによれば、例えばチェーンコンベアにおけるマンドレルバ Bとの接触面に付着し た黒船等を、回転するパフによって拭き取ることができるので、高圧水を噴射すること によるチ ーンコンベア等の搬送装置の寿命の低下を来すことなぐ搬送装置を清掃 することができる。
[0054] この拭き取り装置は、パフと、このパフを回転させる回転駆動機構と、搬送されるマ ンドレルバに干渉しな 、位置、及びマンドレルバの搬送装置のうちでマンドレルバと 接触する位置の間でこのパフを移動させるための移動機構とからなることが、望まし い。
[0055] これによれば、マンドレルバ Bの搬送装置のうち、例えばチェーンを用いた搬送装 置といった高圧水を噴射することによる洗浄を行うことができない搬送装置に対して は、マンドレルバ Bを搬送する際には、移動機構によってマンドレルバ Bに干渉しない 位置にパフを移動させる。そして、マンドレルバ Bを搬送せずに清掃する際には、移 動機構によって搬送装置のマンドレルバ Bとの接触面に接触する位置にパフを移動 させ、回転駆動機構によってパフを回転させる。このようにして、搬送装置の接触面 に付着した黒鉛等を搬送装置の寿命の低下を来すことなく拭き取ることができる。
[0056] 次に、本発明を実施するための最良の形態を、説明する。
本実施の形態においても、図 1に示すように、少なくともマンドレルバ Bの搬送工程 に設置される潤滑剤塗布装置 7からマンドレルミル 8の入側までの間に配置される搬 送装置を洗浄する。また、この潤滑剤塗布装置 7の上流側で延伸圧延に供されたマ ンドレルバ Bを洗浄する。さらに、この潤滑剤塗布装置 7によってマンドレルバ Bに潤 滑剤、特に非黒鉛系潤滑剤を塗布する。
[0057] この際、延伸圧延に供される前のマンドレルバ Bの表面に付着する黒鉛量 C2 (gZ m2)と、潤滑剤の有機バインダに含有される炭素の含有量 Cl (gZm2)とが、(1)式: 0. 08 X C1 + 0. 05 X C2≤3、及び(2)式: 3≤C1 + C2≤50を満足するように、搬 送装置及びマンドレルバ Bそれぞれの洗浄を行って、継目無管を製造する。
[0058] 図 2は、搬送装置である搬送ローラを清掃するために用いられる清掃設備の第 1の 洗浄手段である洗浄装置 1を示す説明図である。
本例では、搬送装置が搬送ロール 10である場合を示す。図 2に示すように、搬送口
ール 10の表面から数 100mm上方に離間した位置に 2個の洗浄ノズル la、 lbを配 置し、搬送ロール 10を回転しながら、洗浄ノズル la、 lbから搬送ロール 10へ向けて 高圧水 11を噴出することにより、搬送ロール 10を洗浄する。
[0059] 図 3は、マンドレルバ Bの表面を清掃するために用いられる清掃設備の第 2の洗浄 手段である洗浄装置 2の構成を示す説明図であって、図 3 (a)は第 2の洗浄装置 2の 正面図であり、図 3 (b)は第 2の洗浄装置 2の配置を示す説明図である。
[0060] 図 3に示すように、図 1に示す潤滑剤塗布装置 7の上流側に配置する第 2の洗浄装 置 2により、延伸圧延を終了したマンドレルバ Bを洗浄する。この第 2の洗浄装置 2は 、潤滑剤塗布装置 7の前段に、マンドレルバ Bとの距離が最大で数 100mmとなるよう に計 8個の洗浄ノズル lcを環状に配設されて、配置される。各洗浄ノズル lcから高 圧水 12を、延伸圧延を終了したマンドレルバ Bへ向けて噴出することによりマンドレ ルバ Bの表面が洗浄される。
[0061] なお、本実施の形態では、各洗浄ノズル la〜lcから噴出する高圧水 12の水圧は 、 lOOMPaに設定される。また、噴出する高圧水の拡がり角は 10° 〜20° に設定さ れる。これにより、およそ 15分程度 (表 3参照)の洗浄時間でマンドレルバ Bの洗浄を 完了できる。
[0062] 継目無管の製造に際しては、まず上述した洗浄ノズル la、 lbを有する第 1の洗浄 装置 1を用いて、マンドレルバ Bの搬送工程に配置された搬送ローラを洗浄する。次 に、図 1に示す搬入テーブル 6からマンドレルバ Bを搬送工程に搬入する。続いて、 潤滑剤塗布装置 7によってマンドレルバ Bの表面に非黒鉛系潤滑剤を塗布した後、 マンドレルミル 8の入側までの搬送工程の途中で素管 Sにマンドレルバ Bを挿入し、マ ンドレルミル 8で延伸圧延する。マンドレルバ Bは、マンドレルミル 8での延伸圧延が 終了した後に管 S 1から引き抜かれ、リターンライン 9で搬送して水冷装置 5で冷却す る。この後、第 2の洗浄装置 2によりマンドレルバ Bを洗浄し、再び潤滑剤塗布装置 7 によってマンドレルバ Bの表面に非黒鉛系潤滑剤を塗布して、前述した工程と同様の 工程で 2パス目以降の延伸圧延に供される。
[0063] マンドレルミル 8で延伸圧延された管 S1は、再力卩熱炉 13で約 940°C〜1060°Cで 約 20〜35分間再加熱され、ストレツチレデューサ 14で製品寸法に仕上げられて、継
目無管が製造される。
[0064] 表 4には、以上に説明した本実施の形態に係る製造方法によって製造された低炭 素ステンレス鋼力 なる継目無管の内面における浸炭の状況、及び、比較例に係る 製造方法によって製造された低炭素ステンレス鋼力 なる継目無管の内面における 浸炭の状況を評価した結果を示す。
[0065] なお、浸炭の状況の評価では、 1、 5、 10パス目に圧延した継目無管の内面から分 析用サンプルを切り出し、カントバック (発光分光分析)によって炭素濃度を測定した 。そして、管の素材の炭素濃度に対して同等以下 (浸炭無し)である場合を◎とし、炭 素濃度の増加量が 0. 001〜0. 01%である場合 (許容できる範囲)を〇とし、それ以 上に炭素濃度が増カロした場合を Xとして、それぞれ評価した。
[0066] [表 4]
[0067] 表 4に示すように、比較例に係る製造方法によって製造した継目無管では浸炭が 生じたのに対し、本実施形態に係る製造方法によって製造した継目無管では、 1、 5 、 10パス目の全てについて浸炭を、実用上問題ない程度に抑制できた。
[0068] なお、本実施の形態では、洗浄ノズル la、 lbから搬送ロール 10に向けて高圧水を 噴出することによりマンドレルバ Bの搬送装置を洗浄する態様を説明したが、マンドレ ルバ Bの搬送装置として、搬送ロールの他に、例えば、チェーンコンベア等のチェ一 ンを用いた装置が設置されることがある。この搬送装置に対して、チェーンの寿命の 低下を来すことがないように高圧水を噴出することによる洗浄ではなぐパフを用いた 拭き取り手段を用いて清掃することが好ましい。
[0069] 図 4は、この拭き取り手段 3の構成を示す説明図であり、図 4 (a)は拭き取り手段 3の 側面図であり、図 4 (b)は図 4 (a)における A— A矢視断面図である。
図 4に示すように、拭き取り手段 3は、例えば、無限軌道となるように巻き掛けられた チェーン C1の適宜の複数箇所に設けられたマンドレルバ支持部 C2を具備するチェ 一ンコンベア Cに適用される。マンドレルバ Bは、マンドレルバ支持部 C2の上に載置 され、チェーン C1の矢符 X方向への移動に伴って搬送される。
[0070] 拭き取り手段 3は、パフ 31と、パフ 31を回転させる回転駆動機構 32と、チェーンコ ンベア Cで搬送中のマンドレルバ Bに干渉しな!、位置(図 4の実線で示す位置)とチ エーンコンベア Cにおけるマンドレルバ Bとの接触面、すなわち支持部 C2の上面に 接触する位置(図 4の破線で示す位置)との間でパフ 31を、図 4に示す例では矢符 Θ 1の方向へ、移動させる移動機構 33とを備える。
[0071] パフ 31は、ドラム 311の周方向へ、例えば、綿、麻、ウール等の布材の他、ウレタン 、スポンジ、フェルト、皮さらにはゴム等の適宜の材料が卷回されることによって、構成 される。
[0072] 回転駆動機構 32は、モータ 321と、モータ 321の軸とドラム 311の軸との間に巻き 掛けられたベルト 322とを備える。モータ 321の回転動力をベルト 322を介してドラム 311に伝達することによって、パフ 31を回転させる。
[0073] 移動機構 33は、パフ 31及び回転駆動機構 32を取り付けるためのアーム 331と、一 端が搬送ラインに設けられた適宜の梁 Hに固定される一方、他端でアーム 331を回 動可能に支持する支持部材 332と、一端が支持部材 332に回動可能に取り付けら れ、他端がアーム 331に回動可能に取り付けられたシリンダ装置 333とを備える。そ して、アーム 331が図 4の実線で示す状態であるときにシリンダ装置 333のピストン口 ッドを後退させて上方に引くことにより、アーム 331が支持部材 332の他端部周りに 回動(図 4の破線で示す状態に遷移)し、アーム 331に取り付けられたパフ 31が支持 部 C2の上面に接触する位置に遷移する。逆に、アーム 331が図 4の破線で示す状 態であるときにシリンダ装置 333のピストンロッドを前進させて下方に押し出すことによ り、アーム 331が支持部材 332の他端部周りに回動(図 4の実線で示す状態に遷移) し、アーム 331に取り付けられたパフ 31が搬送中のマンドレルバ Bに干渉しない位置 に遷移する。
[0074] このように構成された拭き取り手段 3によってチェーンコンベア Cの支持部 C2の上
面を清掃する際には、移動機構 33によってチェーンコンベア Cの支持部 C2に接触 する位置にパフ 31を移動させ、マンドレルバ Bを搬送せずにチェーン Cを矢符 Xの方 向に移動させながら、回転駆動機構 32によってパフ 31を矢符 0 2の方向に回転させ ることにより、各支持部 C2の上面に付着した黒鉛等を順次拭き取る。
[0075] 図 5は、この拭き取り手段 3の最適な設定条件を見出す試験を行った結果を示すグ ラフであり、図 5 (a)にはパフ 31の支持部 C2への押し付け力と必要な清掃時間との 関係を示し、図 5 (b)はパフ 31の回転速度と必要な清掃時間との関係を示す。
[0076] マンドレルバ Bに黒鉛系潤滑剤を塗布して、通常の操業条件で素管を圧延し、十 分にチェーンコンベア Cを黒鉛及び有機バインダで汚染させた後、新品又は洗浄し たパフ 31を用いて種々の押し付け力や回転速度の条件下で清掃を開始して力も清 掃を終了するまでの経過時間である清掃時間を評価した。
[0077] なお、清掃を開始してから、目視によって各支持部 C2の上面が完全に金属光沢を 有するようになった時点で、黒鉛及び有機バインダーによる汚染が無くなつたと判断 し、清掃を終了する。
[0078] 図 5 (a)に示すように、パフ 31の回転速度を 60rpmdで一定として支持部 C2への 押し付け力を種々変更した場合、操業に支障を来すことのない、例えば 25分以内の 清掃時間とするには、およそ 50N以上の押し付け力に設定する。一方、図 5 (b)に示 すように、パフ 31の支持部 C2への押し付け力を 75Nで一定としてパフ 31の回転速 度を種々変更した場合、操業に支障を来すことのない、例えば 25分以内の清掃時 間とするには、およそ 17rpm以上の回転速度に設定する。ただし、回転速度を速め 過ぎると、パフ 31によって支持部 C2から拭き取られた黒鉛及び有機バインダーが周 辺設備に飛散するため、およそ l lOrpm以下の回転速度に設定することが好ましい
[0079] なお、以上の説明では、継目無管の製造工程におけるマンドレルバ Bの搬送工程 に配置された、いわばオンラインの洗浄装置 2によって、マンドレルバ Bの表面の洗 浄を行う(以下、「オンライン洗浄」という)場合を例にとった。しかし、搬送工程に搬入 する前のマンドレルバ Bの表面の清掃を行う(以下、「オフライン清掃」と!、う)ことをこ のオンライン洗浄と併用することも可能である。そこで、このオフライン清掃についても
説明する。
[0080] 黒鉛系潤滑剤を塗布して延伸圧延に供された後のマンドレルバ Bを搬送工程から 抜き取り、再び搬入テーブル 6から搬送工程へ搬入して、非黒鉛系潤滑剤を塗布し て延伸圧延に供する場合、再び搬送工程に搬入した直後のマンドレルバ Bの表面に は、黒鉛系潤滑剤が付着する。この搬入直後のマンドレルバ Bは、洗浄装置 2に搬送 されて洗浄されるものの、表面に付着した黒鉛系潤滑剤が完全に洗浄されずに残存 すると、管 S1の内面に浸炭が生じる。こレースウェイを防ぐには、搬送工程に搬入す る前に、黒鉛系潤滑剤が付着したマンドレルバ Bの表面を予めオフライン清掃するこ とが好ましい。
[0081] 図 6は、マンドレルバ Bのオフライン清掃に用いられる清掃設備 15, 16を示す説明 図であり、図 6 (a)は高圧水をマンドレルバの表面に噴出して洗浄する洗浄装置 15を 示し、図 6 (b)はマンドレルバの表面に回転ブラシを当接させて清掃する擦過装置 16 を示す。
[0082] 図 6に例示した清掃設備 15、 16は、例えば、継目無管の製造ライン力も離間した、 マンドレルバ Bを保管するためのバー保管庫に設置することが例示される。
図 6 (a)に示す洗浄装置 15は、マンドレルバ Bを支持する搬送ロール 17及びスキュ 一ロール 18と、下方に配置された 2個の洗浄ノズル Idとを備える。洗浄ノズル Idを下 方に配置することにより、マンドレルバ Bの外径に関わらず洗浄ノズル Idとマンドレル バ Bの表面との距離を一定に保つことができる。そして、 2個の洗浄ノズル Idからマン ドレルバ Bに高圧水 19を噴出しながら、スキューロール 18を回転させてマンドレルバ Bを周方向へ回転させ、搬送ロール 17を回転させてマンドレルバ Bを軸方向に搬送 する。これにより、マンドレルバ Bの表面全体を洗浄できる。
[0083] 図 6 (b)に示す擦過装置 16は、マンドレルバ Bを支持する搬送ロール 17及びスキュ 一ロール 18と、マンドレルバ Bに接触するように配置された回転ブラシ 4とを備える。 回転ブラシ 4を回転させながら、スキューロール 18を回転させてマンドレルバ Bを周 方向に回転させ、搬送ロール 17を回転させてマンドレルバ Bを軸方向に搬送する。こ れにより、マンドレルバ Bの表面全体に回転ブラシ 4が擦過して清掃できる。
[0084] なお、マンドレルバ Bのオフライン清掃は、図 6に例示した清掃設備を用いて自動
的に行うことが効率面で好ましいが、たわし等の清掃道具を用いて作業者が手作業 で行うようにしてもよい。