明 細 書
測位装置および測位装置の位置特定方法
技術分野
[0001] 本発明は、 RFID (Radio Frequency IDentification)タグ等の電波源から発射された 電波を RFIDリーダ等の複数の基地局で受信し、各基地局での電波受信時刻差から 電波源の位置を特定する時間差測位方式に関するものである。
背景技術
[0002] 複数の基地局により受信された直接波の受信時刻から、その直接波の送信元であ る電波源の位置を求めることのできる時間差測位方法がある(例えば、特許文献 1参 照)。基準となる基地局における直接波受信時刻と、各基地局自身における直接波 受信時刻との差から、それぞれの基地局から電波の送信元である電波源までの距離 を求め、複数の基地局力 の距離が一致する場所を特定することにより電波源の位 置を推定するものである。
[0003] 特許文献 1 :特開 2004— 532314号公報 (第 1頁、図 3)
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0004] し力しながら、従来技術には次のような課題がある。従来の方式では、各基地局で 受信される電波が既知であることが前提であり、未知電波を用いる場合には時間計 測を行うことができな 、と 、う問題がある。
[0005] 本発明は上述のような課題を解決するためになされたもので、未知電波を用いる場 合にも、各基地局での直接波受信時刻の計測に基づく電波源の位置の時間差測位 を行うことができる測位装置および測位装置の位置特定方法を得ることを目的とする 課題を解決するための手段
[0006] 本発明に係る測位装置は、電波源から発信された電波を受信し、参照信号と受信 電波との相関から電波受信時刻を計測する複数の受信時刻算出基地局と、複数の 受信時刻算出基地局からのそれぞれの電波受信時刻に基づいて電波源の位置を
特定する時間差測位器とを備えた測位装置にぉ 、て、電波源から発信された未知 電波を推定して基準時刻における参照信号を生成する特定基地局をさらに備え、複 数の受信時刻算出基地局は、特定基地局からの参照信号と受信した未知電波との 相関から電波受信時刻を計測するものである。
[0007] 本発明に係る測位装置の位置特定方法は、特定基地局で、電波源から発信された 未知電波を推定して基準時刻における参照信号を生成するステップと、複数の受信 時刻算出基地局で、特定基地局からの参照信号と受信した未知電波との相関から 電波受信時刻を計測するステップと、時間差測位器で、複数の受信時刻算出基地 局からのそれぞれの電波受信時刻に基づ!/、て電波源の位置を特定するステップとを 備えたものである。
[0008] さらに、本発明に係る測位装置の位置特定方法は、複数の RFIDリーダ Zライタあ るいは特定 RFIDリーダ Zライタの何れかから RFIDタグに電波を送信するステップと 、 RFIDタグで、電波の受信電力を検知することにより未知電波を発信するステップと 、特定 RFIDリーダ Zライタで、 RFIDタグから発信された未知電波を推定して基準時 刻における参照信号を生成するステップと、複数の RFIDリーダ Zライタで、特定 RFI Dリーダ Zライタ力 の参照信号と受信した未知電波との相関から電波受信時刻を計 測するステップと、時間差測位器で、複数の複数の RFIDリーダ Zライタからのそれ ぞれの電波受信時刻に基づ 、て RFIDタグの位置を特定するステップとを備えたも のである。
発明の効果
[0009] 本発明によれば、特定基地局にお 、て未知電波の推定を行!、、それぞれの基地 局は特定基地局による推定結果に基づいて直接波受信時刻を計測することにより、 未知電波を用いる場合にも、各基地局での直接波受信時刻の計測に基づく電波源 の位置の時間差測位を可能とした測位装置および測位装置の位置特定方法を得る ことができる。
図面の簡単な説明
[0010] [図 1]本発明の実施の形態 1における測位装置の構成図である。
[図 2]本発明の実施の形態 1の特定基地局における未知電波の推定を行う構成を示
した図である。
[図 3]本発明の実施の形態 1における参照信号生成器の構成図である。
[図 4]本発明の実施の形態 1における未知電波の推定結果を用いて直接波受信時 刻を計測する基地局の構成図である。
[図 5]本発明の実施の形態 2における未知電波の推定結果を用いて直接波の受信時 刻を計測する基地局の構成図である。
[図 6]本発明の実施の形態 2におけるフィルタバンクの構成図である。
[図 7]本発明の実施の形態 3において時間差測位器が電波源の位置を特定するため に行う処理手順を示したフローチャートである。
[図 8]時間差測位により電波源の位置を特定する測位装置の基本構成を示した図で ある。
[図 9]直接波受信時刻の計測を行うための基本構成を示す図である。
[図 10]k番目の基地局力 電波源までの距離を r と仮定したときに特定される各基
0 k0
地局から電波源までの距離の関係を示す図である。
[図 11]ある値の r において、それぞれの円周がある 1点で交わった状態を示す図で k0
ある。
発明を実施するための最良の形態
[0011] 以下、本発明の測位装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
本発明の測位装置は、未知電波を用いて電波源の位置を測位するものであり、特 定基地局により未知電波の推定を行って基準時刻の参照信号を生成し、この参照信 号に基づ 、てそれぞれの基地局が直接波受信時刻を求めることを特徴として 、る。
[0012] 実施の形態 1.
まず始めに、時間差測位の基本原理について説明する。図 8は、時間差測位により 電波源の位置を特定する測位装置の基本構成を示した図であり、電波源 1、 K個の 基地局 15 (1)— 15 (K) (ただし、 Kは 2以上の整数)、および時間差測位器 3で構成 される。図 8は、 3個の基地局を示しており、 K= 3の場合に相当する。
[0013] 電波源 1は、各基地局 15 (1)— 15 (Κ)に対して電波を発信する。これに対して、各 基地局 15 (1)— 15 (Κ)は、電波源 1から発信されそれぞれの基地局に直接到達す
る直接波と、マルチパスにより直接波と異なる経路を経由して到達する間接波とを含 む電波を受信し、その受信した電波から直接波受信時刻を計測する。
[0014] 時間差測位器 3は、それぞれの基地局 15 (1)— 15 (K)により計測された直接波受 信時刻を受け取り、それぞれの基地局の位置および直接波受信時刻を基に電波源 1の位置を時間差測位処理により特定する。
[0015] また、図 9は、直接波受信時刻の計測を行うための基地局の基本構成を示す図で あり、中原他" FFT - MUSIC法と FFT演算型相関法の多重伝播遅延時間分解能の 比較検討"、信学総大、 B— 27、 1995に示されたものである。それぞれの基地局 15 ( 1)一 15 (K)は、図 9に示す基本構成を有しており、自らが受信した電波に基づいて 直接波受信時刻を求めることができる。
[0016] この基地局は、ノッシブアンテナ 4、受信機 5、 AZD変翻 6、 FFT処理器 7a、 7b 、参照信号生成器 16、相関処理器 12、 MUSIC処理器 13で構成される。ここで、 F FT処理器 7a、 7bは周波数成分算出手段に、相関処理器 12は相関信号生成手段 に、 MUSIC処理器 13は電波受信時刻推定手段にそれぞれ相当している。
[0017] 電波源 1から発信された電波は、ノッシブアンテナ 4により受信される。そして、パッ シブアンテナ 4で受信された電波は、受信機 5により帯域制限、位相検波等が行われ た後に、 A/D変翻 5によりアナログ信号カゝらディジタル信号に変換される。
[0018] このようにして得られたディジタル信号は、さらに、 FFT処理器 7aにより FFT(Fast Fourier transform)処理が行われ、時間領域の信号力 周波数領域の信号に変換さ れる。一方、参照信号生成器 16で生成された参照信号も、同様に、 FFT処理器 7b により FFT (Fast Fourier transform)処理が行われ、時間領域の信号から周波数領 域の信号に変換される。
[0019] FFT処理器 7a、 7bから出力されるそれぞれの周波数領域の信号は、相関処理器 12により相関演算が行われる。さらに、相関演算後の信号は、 MUSIC処理器 13に より MUSIC (Multiple Signal classification)処理が施され、高分解能に計測した直接 波受信時刻が求められる。このようにして計測された直接波受信時刻は、それぞれの 基地局 15 (1)— 15 (K)力も時間差測位器 3に伝達され、時間差測位器 3は、それぞ れの直接波受信時刻に基づ!/、て電波源の位置を特定することとなる。
[0020] 次に、測位装置の一連の動作、および測位のための具体的な演算式にっ 、て説 明する。それぞれの基地局 15 (1)— 15 (K)は、電波源 1から発信された電波が直接 到達する直接波と、マルチパスにより直接波と異なる経路を経由して到達する間接波 とを含む電波を、パッシブアンテナ 4で受信する。受信時刻は、全ての基地局共通の あら力じめ設定された基準時刻を零として計られる。
[0021] ここで、ある k番目(ただし、 kは l≤k≤Kの整数)の基地局を例にして、その処理内 容を説明する。 k番目の基地局が直接波を受信した時刻を τ とし、間接波を受信し l,k
た時刻をて とする。ノッシブアンテナ 4で受信された電波は、受信機 5に伝達され、
2,k
帯域制限、位相検波が行われる。さらに、受信機 5からの出力信号は、 AZD変換器 6に伝達される。
[0022] AZD変換器 6は、受信電波をサンプルしてディジタル信号に変換する。ここで、 A ZD変換器 6において、サンプル周期を T 、サンプル数を N (ただし、 Nは 1以上の samp
整数)としてディジタル化された受信信号を z · · · ζ とする。次に、 FFT処理器 7aは l,k N,k
、ディジタル化された受信信号 z - - - z に FFT処理を施して受信信号の周波数成 l,k N,k
分 y - - -y
l,k N,kを算出する。
[0023] ここで、受信信号の周波数成分 y - - -y
l,k N,kに含まれる電波源 1から発信された直接 波成分と間接波成分とを加えた周波数成分 l,k… N,kは、次式 (1)、(2)により表さ れる。この式(1)、(2)において、 Γ は参照信号 (詳細は後述)の周波数成分を表し ている。また、 C は直接波の振幅値、 C は間接波の振幅値をそれぞれ表している。
l,k 2,k
[0024] [数 1]
Υ i, k =ci,k Γ it ^χρ ( j2 π f i τ li k) +c2 k Γ ^xp ( j2 π f t τ 2> k) ( 1 )
[0025] 参照信号生成器 16は、各基地局で受信される電波が既知であることを前提として、 電波源 1から発信された電波が時刻零で受信されたことを想定して参照信号 ζθ , · · ·
,ζθを生成する。参照信号 ζθ ,· · ·,ζΟは、 FFT処理器 7bにより FFT処理が施され、
N 1 N
参照信号の周波数成分 Γ ,···,Γ が生成される。相関処理器 12は、次式 (3)を
1,1 Ν,Ν
用いて、参照信号の周波数成分 Γ ,···,Γ と受信信号の周波数成分 y ··· y
1,1 Ν,Ν l,k N,k との相関演算を行い、周波数領域における相関信号 x · χ
l,k N,kを生成する。
[0026] [数 2]
X = yi>k/ri;i (l≤i≤N) (3)
[0027] 周波数領域における相関信号 x に含まれる直接波成分と間接波成分とを加えた
i,k
相関信号 x' は、具体的には次式 (4)により表される。
i,k
[0028] [数 3]
χ'- = y, i'kZr
= ο1Λβχρ(」2π^ τ L +C expGS fi T 2,k) (4)
[0029] 実際に相関処理器 12から出力される相関信号 x は、直接波成分と間接波成分と
i,k
をカロえた相関信号 x' を用いて、次式(5)のように表される。式(5)において、 n は、
,k ,k
MUSIC処理入力時において式 (4)の相関信号 x' に重畳している受信機雑音成分
i,k
を表している。
[0030] 画
xi,k = X i,k+ n k (5)
[0031] MUSIC処理器 13は、相関信号 x (ただし、 iは l≤i≤Nとなる整数)を入力信号と
i,k
して取り込む。ベクトル Xを x = [x X · χ ]Τとして定義するとき、ベクトル Xは
i i i,k, i+l,k i+M-l,k i
、次式(6)のように表される。 MUSIC処理器 13は、 a( τ )をステアリングベクトルとし
て MUSIC処理を行 ヽ、直接波の観測時刻の計測値に相当する直接波受信時刻の 推定値て (チルダ)を算出し、時間差測位器 3に伝達する。なお、 二で用いた Mは
、ステアリングベクトルの次数であり、サンプル数 Nよりも小さい整数である。
[0032] [数 5]
X: = [a( r 1>k a( r 2ik)]Si + ^ (6) a (τ) = [1 βχρ02πί2 τ ) - · - exp (j2 π fM τ ) ]Τ (7) s i = [c1>k exp(j2 fi T l k) c2,k exp(j2 fiて 2 )]T (8) ni = [ni,k ni+1,k · · · n^.1(k]T (9)
[0033] ここで、 MUSIC処理を行った際に、直接波と間接波の 2種類の受信時刻が計測さ れることとなるが、直接波は、間接波に比較して速く到達するので、小さい受信時刻 の方を直接波の到達時刻として計測値て (チルダ)を推定する。
[0034] 時間差測位器 3は、各基地局から伝達されたて (チルダ)に基づき、電波源 1の位 置を時間差測位する。時間差測位器 3は、特定基地局 (k番目の基地局)を設定し、
0
その k番目の基地局から電波源 1までの距離を!: として仮定する。このとき、時間差
0 k0
測位器 3は、 k番目の基地局における直接波受信時刻と、他の基地局における直接
0
波受信時刻との差から、次式(10)により、一意的に、 k番目の基地局以外の各基地
0
局から電波源 1までの距離を特定できる。ここで、 cは、光速を表している。
[0035] [数 6]
Γ1 — rk0 C \ て k 一 て 1, k0 ) (10)
[0036] 図 10は、 k番目の基地局力 電波源 1までの距離を r と仮定したときに特定される k0
各基地局から電波源 1までの距離の関係を示す図である。 r の仮定のもとに、ある k k0
番目の基地局の位置を中心として半径 rの円をそれぞれ描 、た状態を示して 、
もし、距離 の位置に電波源 1が存在するとき、半径 rの円周上のいずれかの地点に k k
電波源 1が存在することとなる。
[0037] そこで、最初に仮定した r を変えていき、そのときのそれぞれの半径 rを求めると、 r k0 k
がある値となったときに、それぞれの円周がある 1点で交わる状態が発生することと k0
なる。図 11は、ある値の r において、それぞれの円周がある 1点で交わった状態を示 k0
す図である。従って、時間差測位器 3は、各基地局における直接波受信時刻に基づ いて、図 11のような状態となる r を求めることにより、電波源 1の位置を測位すること k0
力でさることとなる。
[0038] 実際には、直接波受信時刻の計測誤差等により、各基地局の位置を中心とするそ れぞれの円周は、ある 1点で完全には交わらない。そこで、時間差測位器 3は、最小 二乗法等を用いて距離の二乗誤差が最小となるような位置を算出することにより、電 波源 1の位置を推定することとなる。
[0039] 上述した方式では、各基地局で受信される電波が既知であることを前提とし、既知 電波に基づいて参照信号を生成し、直接波受信時刻を計測している。これに対して 、本発明は、未知電波を受信した際にも時間計測に基づく測位を行うことができる点 を特徴としており、その詳細について、次に説明する。
[0040] 図 1は、本発明の実施の形態 1における測位装置の構成図であり、電波源 1、 K個 の未知電波対応型基地局 2 (1)— 2 (K)、および時間差測位器 3で構成される。電波 源 1および時間差測位器 3は、図 8の基本構成で示したものと同一であり、未知電波 対応型基地局 2 (1)— 2 (K)を中心に説明する。
[0041] 未知電波対応型基地局 2 (k ) (ただし、 kは 1≤k≤Kの整数)は、未知電波を推
0 0 0
定して、その推定結果として基準時刻の参照信号を生成して他の未知電波対応型 基地局 2 (1)、 2 (2)、 2 (Κ)に対して送信する特定基地局である。
[0042] 一方、未知電波対応型基地局 2 (1)、 2 (2)、 2 (Κ)は、未知電波対応型基地局 2 (k
)からの参照信号を用いて、電波源 1から発信された直接波の受信時刻を計測する
0
受信時刻算出基地局である。
[0043] このように、本発明の測位装置は、ある特定基地局 (未知電波対応型基地局 2 (k )
0 に相当)により未知電波の推定を行って基準時刻の参照信号を生成するとともに、他
の基地局 (未知電波対応型基地局 2 (1)、 2 (2)、 2 (K)に相当)において、この参照 信号に基づ!ヽて直接波受信時刻を計測し、電波源の測位を行う。
[0044] 図 2は、本発明の実施の形態 1の特定基地局における未知電波の推定を行う構成 を示した図であり、特定基地局である未知電波対応型基地局 2 (k )の構成を示すも
0
のである。図 2におけるパッシブアンテナ 4、受信機 5、 AZD変換器 6、 FFT処理器 7 は、図 9で示したものと同一である。
[0045] 参照信号生成手段である参照信号生成器 8は、 FFT処理された未知電波の周波 数成分の信号を推定し、直接波受信時刻を算出するための参照信号を生成する。 図 3は、本発明の実施の形態 1における参照信号生成器 8の構成図である。この参 照信号生成器 8は、間接波受信時刻推定器 9、振幅比推定器 10、初期位相推定器 11で構成される。
[0046] 間接波受信時刻推定器 9は、 FFT処理された未知電波の周波数成分の信号から 間接波の受信時刻を推定する。振幅比推定器 10は、時刻ゼロで受信される直接波 の振幅と、推定された間接波の受信時刻における間接波の振幅との振幅比を推定 する。さらに、初期位相推定器 11は、電波源力も発信された電波の初期位相を推定 する。
[0047] 図 4は、本発明の実施の形態 1における未知電波の推定結果を用いて直接波受信 時刻を計測する基地局の構成図であり、受信時刻算出基地局である未知電波対応 型基地局 2 (1)、 2 (2)、 2 (K)の構成を示すものである。図 4におけるパッシブアンテ ナ 4、受信機 5、 AZD変換器 6、 FFT処理器 7、相関処理器 12、 MUSIC処理器 13 は、図 9で示したものと同一である。
[0048] 図 4の構成を有する受信時刻算出基地局は、図 9で示した基地局の構成と比較す ると、参照信号生成器 16および FFT処理器 7bが不要となっており、その代わりに参 照信号を特定基地局から取り込む構成となって ヽる。
[0049] 次に、一連の動作、および測位のための具体的な演算式にっ 、て説明する。それ ぞれの未知電波対応型基地局 2 (1)、 2 (2)、 2 (K)、 2 (k )は、電波源 1から発信さ
0
れた電波が直接到達する直接波と、マルチパスにより直接波と異なる経路を経由し て到達する間接波とを含む電波をパッシブアンテナ 4で受信する。
[0050] まず始めに、特定基地局である未知電波対応型基地局 2 (k )は、受信した電波に
0
基づいて、直接波の受信時刻をゼロとした基準時刻における参照信号を生成する。 その後、受信時刻算出基地局である未知電波対応型基地局 2(1)、 2(2)、 2(K)は 、未知電波対応型基地局 2 (k )で生成された参照信号と、自らが生成した FFT処理
0
後の受信信号の周波数成分との相関演算を行うことにより、直接波受信時刻の計測 を行う。
[0051] 未知電波対応型基地局 2 (k )は、先の図 2に示したような未知電波の推定を行うた
0
めの構成を有している。電波源 1から発信された電波は、マルチパスを発生する。そ して、ノッシブアンテナ 4は、直接波と間接波とを含む電波を受信することとなる。そ の後、受信機 5、 AZD変換器 6、 FFT処理器 7での処理は、図 9で説明したものと同 一であり、 FFT処理器 7から受信信号の周波数成分 y ■y
l,k0 が出力される。
[0052] 受信信号の周波数成分 y は、参照信号生成器 8に伝達される。
l,k0
参照信号生成器 8は、図 3に示す処理構成となっている。参照信号生成器 8に入力し た受信信号の周波数成分 y ■y は、間接波受信時刻推定器 9に伝達される c
l,k0 N,k0
間接波受信時刻推定器 9は、最初に、次式 (11) (12)により受信信号周波数成分の 電力値 Py(i)を算出する。
[0053] [数 7]
Pydノ = I Yi,k0 Yi.kO*
C— M ) + c2 k0r Ck0 exp (」2π^ )
e ( - J'2 π f£ τ2,ω ) + nPyi-k0 (1 1)
'k0 Υ i,k0 + I nYi, kO (12)
[0054] さらに、次式(13)により信号ベクトル Py. を設定する
,k0
[0055] [数 8]
[0056] このとき、信号ベクトル Py は、次式(14)一(16)により表すことができる。
i,k0
[0057] [数 9]
ΡΥί,ω
= [ a (—て
2,
k0 ) 1 a( T
2,
k0) ] Sj + n
; (14) a ' ( て ) = [ 1 exp( j2 f
2 τ ) · • · exp(j2 f
M て ) ; Γ (15) s i
て
Lk0 ) ]
T
(16)
[0058] さらに、間接波受信時刻推定器 9は、次式(17)により信号ベクトル Py の相関行
i,k0
列 Rp を算出し、 MUSIC処理により、直接波の受信時刻をゼロとしたときの間接波 k0
の受信時刻の推定値て (チルダ)を高分解能で算出する。
[0059] [数 10]
N-M+1
¾ο = ∑ Pyilk0 PyH ilko (17)
i =1
[0060] 間接波受信時刻推定器 9から出力される受信時刻の推定値 τ (チルダ)は、振
2,k0
幅比推定器 10に伝達される。振幅比推定器 10は、受信時刻の推定値 τ (チルダ
2,k0
)に基づいて直接波と間接波との振幅比を推定する。最初に、次式(18)により振幅 比 C (i)の推定値 C (i) (チルダ)を算出する。
k0 k0
[0061] [数 11]
C k0 (i) =
—2 (cos (2 π f i τ 2,k0) -Pyu ;) ± (ΡΥι, lCos (2 π f t τ 2, k0) -Pyx, j) 2- (ΡΥι> rPyi> t) 2
Py - Py
(18)
[0062] 次に、 C (i) (チルダ)を平均して、次式(19)により直接波と間接波との振幅比の推
k0
定値 C (チルダ)を算出する。
k0
[0063] [数 12]
〜 1 N 〜
C k0 =— ∑ C k0 (i) ( 1 9 )
i—1
[0064] 振幅比推定器 10は、間接波受信時刻の推定値 τ (チルダ)、および直接波と間
2,k0
接波との振幅比の推定値 C (チルダ)を初期位相推定器 11に伝達する。次に、初期 k0
位相推定器 11は、次式 (20)で表される位相検出用信号 Hをまず始めに算出する。
[0065] [数 13]
Hi = —— ; ~ ( 2 0 )
1 + C k0 exp U 2 fi て 2,k0 )
[0066] 上式 (20)で算出した位相検出用信号 Hの実部と虚部から参照信号の周波数成分
Γ の初期位相の推定値 φ (チルダ)を算出する。さらに、次式 (21)により、参照信 号の周波数成分の推定値 Γ (チルダ)を算出する。
[0067] [数 14]
= exp ( j ) ( 2 1 )
[0068] 初期位相推定器 11は、このようにして算出された参照信号の周波数成分の推定値
Γ (チルダ)を各未知電波対応型基地局 2 (1)、 2 (2)、 2 (K)に伝達する。各未知電 波対応型基地局 2 (1)、 2 (2)、 2 (K)は、式 (3)における参照信号の周波数成分 Γ に換えて、未知電波対応型基地局 2 (k )から送られてきた参照信号の周波数成分の
0
推定値 Γ (チルダ)を用いて周波数領域での相関信号 X を算出する。
,k
[0069] さらに、 MUSIC処理器 13は、各基地局で受信される電波が既知であることを前提 としてすでに図 9を用いて説明したものと同一の手順により、直接波の観測時刻の計 測値として直接波受信時刻の推定値て (チルダ)を算出する。
l,k
[0070] なお、電波源 1から発信する未知電波として、周波数成分の絶対値が周波数に依
らずに一定となるものを採用することにより、より高精度な測位が可能となる。すなわ ち、特定基地局は、周波数領域の信号の振幅 (絶対値)が一定のものを用いれば、 未知パラメータが位相だけとなるため、初期位相の検出を確実に行うことができる。
[0071] また、直接波と間接波の受信時刻の差に応じて高分解能の処理が必要な場合に は、上述したような MUSIC処理が用いられる。この場合にも、周波数成分の絶対値 が周波数に依らずに一定となる電波を未知電波として採用することにより、より高精度 な測位が可能となる。
[0072] 実施の形態 1によれば、特定基地局は、受信した未知電波に基づいて直接波の受 信時刻をゼロとした基準時刻における参照信号を生成することができる。さらに、受 信時刻算出基地局は、特定基地局により生成された参照信号に基づいて、自らが受 信した未知電波力 直接波受信時刻を計測することができる。これにより、未知電波 を用いた場合にも直接波受信時刻の計測が可能となり、電波源の位置の時間差測 位を行うことができる。
[0073] 実施の形態 2.
本実施の形態 2では、未知電波の推定結果を用いて直接波の受信時刻を計測す る別の方法を説明する。図 5は、本発明の実施の形態 2における未知電波の推定結 果を用いて直接波の受信時刻を計測する基地局の構成図であり、受信時刻算出基 地局である未知電波対応型基地局 2 (1)、 2 (2)、 2 (K)の構成を示すものである。
[0074] 図 5におけるパッシブアンテナ 4、受信機 5、 AZD変換器 6、相関処理器 12、 MU SIC処理器 13は、実施の形態 1における図 4と同じである。本実施の形態 2では、 FF T処理器 7の代わりにフィルタバンク 14を用いており、このフィルタバンク 14の機能を 中心に説明する。
[0075] 図 6は、本発明の実施の形態 2におけるフィルタバンク 14の構成図である。フィルタ バンク 14は、 N個(ただし、 Nは 2以上の整数であり、サンプル数 Nと同じ数)の FIR ( Finite Impulse Response)型帯域通過フィルタ 14 (1)一 14 (N)で構成される。帯域通 過フィルタ 14 (1)一 14 (N)は、入力電波の周波数成分の存在範囲 Wpに対して、そ れぞれ異なる通過帯域を有して!/、る。
[0076] 次に、一連の動作、および測位のための具体的な演算式について説明する。それ
ぞれの未知電波対応型基地局 2(1)、 2(2)、 2 (K)、 2 (k)は、電波源 1から発信さ
0
れた電波が直接到達する直接波と、マルチパスにより直接波と異なる経路を経由し て到達する間接波とを含む電波をパッシブアンテナ 4で受信する。
[0077] まず始めに、特定基地局である未知電波対応型基地局 2 (k )は、受信した電波に
0
基づいて基準時刻における参照信号を生成する。その後、受信時刻算出基地局で ある未知電波対応型基地局 2(1)、 2(2)、 2 (K)は、未知電波対応型基地局 2 (k)
0 で生成された参照信号と、自らが生成したフィルタバンクによる処理後の受信信号の 周波数成分との相関演算を行うことにより、直接波受信時刻の計測を行う。
[0078] 未知電波対応型基地局 2 (k )は、先の図 2に示したような未知電波の推定を行うた
0
めの構成を有している。電波源 1から発信された電波は、マルチパスを発生する。そ して、ノッシブアンテナ 4は、直接波と間接波とを含む電波を受信することとなる。そ の後、受信機 5、 AZD変換器 6、での処理は、図 9で説明したものと同一であり、 / D変 6からディジタル化された受信信号 z ---z が出力される。
l,k N,k
[0079] ディジタル化された受信信号 ζ ·'·ζ は、フィルタバンク 14に伝達される。フィルタ
l,k N,k
バンク 14は、 N個の帯域通過フィルタ 14(1)一 14 (N)から構成されており、 i番目(た だし、 iは l≤i≤Nの整数)の帯域通過フィルタ 14(i)は、次式(22)により受信信号の i番目の周波数成分の信号 y を出力する。
i,k
[0080] [数 15]
N
y i>k = ∑ Zi,,k exp Η2π (i-l)/( N(i'-l)) (2 2) i'=l
[0081] その後、相関処理器 12および MUSIC処理器 13は、実施の形態 1と同様に動作し て直接波受信時刻の推定値て (チルダ)を計測する。
l,k
[0082] 実施の形態 2によれば、基地局のいずれか 1つを特定して未知電波の推定を行うと ともに、他の基地局において、この推定結果に基づいて直接波の受信時刻を計測す ることにより、各基地局で未知電波を受信した場合にも直接波受信時刻が計測でき、 電波源の位置の時間差測位を行うことができる。さらに、受信時刻算出基地局である
他の基地局においては、 FFT処理器の代わりに複数の帯域通過フィルタを有するフ ィルタバンクを用いることによつても、直接波受信時刻を計測することが可能となる。
[0083] 実施の形態 3.
実施の形態 1および 2では、 1台の未知電波対応型基地局 2 (k )を未知電波の推
0
定を行う基地局として特定することにより直接波受信時刻の計測を行い、電波源 1の 位置を推定する場合について説明した。本実施の形態 3では、直接波受信時刻の計 測および電波源の位置の算出を、異なる基地局を未知電波の推定を行う基地局とし て特定した場合についてそれぞれ個別に行うことにより複数の推定結果を求め、それ らの推定結果力 最終的に電波源 1の位置を特定する場合について説明する。実施 の形態 3における測位装置の構成は、図 1と同様である。
[0084] 本実施の形態 3におけるそれぞれの未知電波対応型基地局 2 (1)、 2 (2)、 2 (k )、
0
2 (K)は、それぞれが未知電波を推定して参照信号を生成し、その参照信号を他の 未知電波対応型基地局に対して送信する機能を有している。さらに、それぞれの未 知電波対応型基地局 2 (1)、 2 (2)、 2 (k )、 2 (Κ)は、それぞれの参照信号に基づい
0
て、直接波受信時刻を求め、時間差測位器 3に送信する機能も兼ね備えている。
[0085] 図 7は、本発明の実施の形態 3において時間差測位器 3が電波源 1の位置を特定 するために行う処理手順を示したフローチャートである。ステップ S 701において、時 間差測位器 3は、未知電波を推定する特定基地局の番号を k = 1とする。ステップ S
0
702において、時間差測位器 3は、特定基地局を k = 1としたときにそれぞれの未知
0
電波対応型基地局で算出された直接波受信時刻に基づいて、実施の形態 1と同様 の手順で電波源 1の位置 pi (チルダ)を測位する。
[0086] そして、ステップ S703にお 、て、時間差測位器 3は、特定基地局の番号 kが基地
0 局の台数 Kよりも小さいかを判断する。時間差測位器 3は、 kく Kであると判断した場
0
合には、ステップ S704において、特定基地局の番号 kに 1を加算して kを更新する
0 0
。そして、時間差測位器 3は、ステップ S702、 S703の処理を繰り返すことにより、 K 台全ての基地局のそれぞれを特定基地局とした場合における電波源 1の位置 pk (た
0 だし、 kは l≤k≤κの整数)を算出する。
0 0
[0087] ステップ S703で k <Kでな 、と判断した場合には、 Κ台のそれぞれを特定基地局
としたときの電波源 1の位置 pkがそろつたこととなり、時間差測位器 3は、ステップ S7
0
05において、 pk (チルダ)の平均値 p (チルダ)を算出する。このようにして、複数の
0
基地局を未知電波推定のための特定基地局として設定し、電波源 1の測位結果を複 数求め、複数の測位結果を平均化することにより電波源 1の位置を 1つに特定するこ とがでさる。
[0088] なお、図 7の説明においては、 K台全てを特定基地局とした場合の K通りの電波源 1の位置を求めたが、これに限定されない。必ずしも K台全てではなぐ 2台以上の複 数の基地局を特定基地局とする場合にも、複数の測定結果力も電波源 1の位置を 1 つに特定することができる。
[0089] また、単純に全ての測位結果を平均化せずに、例えば、最大値および最小値を削 除して平均化することも可能であり、種々の統計的な手法により、複数の測位結果か ら 1つの測位結果を求めることができる。
[0090] また、実施の形態 3においては、複数の特定基地局が、参照信号を生成する本来 の機能と、電波受信時刻を計測する機能 (すなわち、本来は受信時刻算出基地局が 有している機能)とを兼ね備えている場合について説明した力 これに限定されない
。参照信号を生成する本来の機能のみを有する基地局を複数の特定基地局として 用いることも可能である。
[0091] 実施の形態 3によれば、複数の基地局を未知電波推定のための特定基地局として 設定し、複数の測位結果に基づいて電波源の位置を特定することが可能となる。こ れにより、 1台の基地局のみを未知電波推定のための特定基地局として設定して求 めた測位結果と比較して、測位誤差を抑えた測位結果を得ることができ、測定精度 の向上を図ることができる。
[0092] 実施の形態 4.
本実施の形態 4では、電波源として RFIDタグを用い、基地局として RFIDリーダ Z ライタを用いる場合について説明する。基本的な構成及び動作は、実施の形態 1一 3 で記載したものと同一である。
[0093] RFIDタグは、耐環境性に優れており、水、油、薬品等の汚れ、あるいは外乱光によ る影響を受けない。さらに、 RFIDリーダ Zライタ側力もの非接触電力伝送を行うこと
により、 RFIDタグは、電池を持たずに半永久的に利用可能とすることができる。
[0094] 実施の形態 1一 3で説明した電波源 1は、自らが電池 (電源)を有しており、自ら能 動的に電波を発信するものであり、 RFIDタグも同じように使用可能である。さらに、 電波源 1として RFIDタグを用いる場合には、上述の非接触電力伝送技術を活用す ることにより、 RFID自身は、電池を持っておらず、自ら能動的に電波を発信はしない 代わりに、 RFIDリーダ Zライタから送信された電波(あるいは電磁波)の受信電力を 検知することにより、 RFIDリーダ Zライタに対して電波(ある 、は電磁波)を送信する ことができる。
[0095] 従って、 RFIDタグは、任意の RFIDリーダ Zライタ力 電波を受信することにより、 測位装置内の複数の RFIDリーダ Zライタに対して電波を送信することができる。一 方、複数の RFIDリーダ Zライタの中の特定の RFIDリーダ Zライタは、実施の形態 1 一 3で説明した特定基地局として機能し、 RFIDタグ力もの電波を未知電波として受 信し、この未知電波を推定して基準時刻における参照信号を生成することができる。
[0096] さらに、特定の RFIDリーダ Zライタ以外の複数の RFIDリーダ Zライタは、実施の 形態 1一 3で説明した受信時刻算出基地局として機能し、特定の RFIDリーダ Zライ タカ 受信した基準信号と、 RFIDタグ力 受信した未知電波との相関力 電波受信 時刻を計測する。そして、時間差測位器 3は、特定の RFIDリーダ Zライタ以外の複 数の RFIDリーダ Zライタで計測されたそれぞれの電波受信時刻荷基づ 、て、 RFID タグの位置を特定する。
[0097] 実施の形態 4によれば、電波源および基地局として、 RFIDタグおよび RFIDリーダ Zライタを用 V、た場合にも、 RFIDタグ力もの未知電波に基づ 、て RFIDタグの位置 を特定できる測位装置を得ることができる。さらに、 RFIDリーダ Zライタ側力もの非接 触電力伝送技術を用いれば、 RFIDタグは、電池レス化され、耐環境性に優れるとと もに、半永久的に利用可能となる。