明 細 書
フィルムコーティング組成物、その皮膜および錠剤
技術分野
[0001] 本発明は、錠剤のフィルムコーティングに用いられるフィルムコーティング組成物、 該フィルムコーティング組成物カゝらなる皮膜、および該皮膜を有する錠剤に関する。 背景技術
[0002] 錠剤には、苦みの緩和、臭いの遮蔽、酸素の遮蔽、防湿等を目的として、通常、高 分子化合物を用いたフィルムコーティングが施されて 、る。この高分子化合物として は、酸素遮蔽性、防湿性に優れたポリビュルアルコールが注目されている。しかし、
、ため、その水溶液を用いたスプレーコーティン グが困難である。
また、ポリビュルアルコールは粘着性が強いため、錠剤同士が付着するという問題も ある。
[0003] フィルムコーティング性に優れ、粘着性が抑えられたフィルムコーティング組成物と しては、ポリビュルアルコールと水溶性ポリオキシエチレン類(ポリエチレングリコール 等)とを含有するフィルムコーティング組成物(特開平 8— 59512号公報参照)、ポリ ビュルアルコールと、可塑剤(ポリエチレングリコールまたはグリセリン)と、組成物中 9 〜45質量0 /0のタルクとを含有するフィルムコーティング組成物(特表 2003— 50933 9号公報参照)が知られて ヽる。
[0004] しかし、前記特開平 8— 59512号公報に記載のフィルムコーティング組成物は、ポ リエチレングリコール等を含有する。このため、錠剤に含まれる臭気成分が透過しや すい傾向にあり、臭気成分の遮蔽効果に乏しぐまた、錠剤に含まれる薬剤または食 品との相互作用が懸念され、使用できる錠剤に制限がある。前記特表 2003— 5093 39号公報に記載のフィルムコーティング組成物は、可塑剤を含有する。このため、臭 気成分の遮蔽効果に乏しぐまた、錠剤に含まれる薬剤または食品との相互作用が 懸念され、使用できる錠剤に制限がある。
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0005] 本発明の目的は、可塑剤を用いなくても、粘着性が改善され、フィルムコーティング 性が良好となり、かつ錠剤の臭気成分を充分に遮蔽でき、酸素遮蔽効果にも優れる 、フィルムコーティング組成物、その皮膜、および該皮膜を有する錠剤を提供すること にある。
課題を解決するための手段
[0006] 本発明のフィルムコーティング組成物は、ポリビュルアルコールとタルクとを含有し、 100質量%のフィルムコーティング組成物固形分中、タルクの含有量が 50〜86質量 %であることを特徴とする。
また、本発明のフィルムコーティング組成物は、可塑剤を含有しないことが望ましい 本発明のフィルムコーティング組成物は、重合度の異なるポリビュルアルコールを 2種以上含有し、ポリビニルアルコールのうち少なくとも 1種力 重合度が 1000以下 のポリビュルアルコールであり、重合度が 1000以下のポリビュルアルコールの割合 力 全ポリビュルアルコール(100質量0 /0)のうち 50質量0 /0以下であることが好ましい 本発明のフィルムコーティング組成物は、脂肪酸エステル類をさらに含有し、脂肪 酸エステル類の含有量が、フィルムコーティング組成物固形分(100質量%)中 25質 量%以下であることが好まし!/、。
本発明の皮膜は、本発明のフィルムコーティング組成物からなる。
本発明の錠剤は、本発明の皮膜を有する。
発明の効果
[0007] 本発明のフィルムコーティング組成物、およびその皮膜は、可塑剤を用いなくても、 粘着性が改善され、フィルムコーティング性が良好となり、かつ錠剤の臭気成分を充 分に遮蔽でき、酸素遮蔽効果にも優れる。
発明を実施するための最良の形態
[0008] 本発明に使用されうるポリビュルアルコールとしては、医薬品のフィルムコーティン
グに用いられるポリビニルアルコールが挙げられ、医薬品添加物規格で規定された ポリビュルアルコール(完全けん化物)および zまたはポリビュルアルコール(部分け ん化物)が好ましい。また、ポリビュルアルコールとしては、平均重合度 300〜2, 400 、けん化度 78〜96モル%の部分けん化物がさらに好ましい。ポリビュルアルコール の市販品としては、(株)クラレ製のポバール各種、 日本合成化学工業 (株)のゴーセノ ール各種等が挙げられる。本発明で用いるポリビニルアルコールは単独で用いても 2 種類以上を組み合わせて用いても良 、。
[0009] ポリビュルアルコールの含有量は、フィルムコーティング組成物固形分(100質量 %)中、 14〜50質量%が好ましぐ 25〜50質量%がより好ましぐ 29〜49質量%が さらに好ましぐ 33〜49質量%が特に好ましい。ポリビニルアルコールの含有量を 14 質量%以上とすることにより、臭気成分の遮蔽効果が充分に発揮される。ポリビニル アルコールの含有量を 50質量%以下とすることにより、粘着性が改善され、フィルム コーティング性が良好となる。本発明におけるフィルムコーティング組成物固形分とは 、皮膜形成の際に揮発する水等の揮発分を除く成分を意味する。
[0010] ポリビュルアルコールとして、重合度の異なるポリビュルアルコールを 2種以上含有し ていてもよい。この場合、ポリビュルアルコールのうち少なくとも 1種力 重合度が 100 0以下のポリビュルアルコールであることが好ましい。重合度が 1000以下のポリビ- ルアルコールを含有することにより、重合度 1000を超えるポリビュルアルコールのみ を含有する場合に比べ、フィルムコーティング性がさらに良好となる。重合度が 1000 以下のポリビュルアルコールの割合は、全ポリビュルアルコール(100質量%)のうち 50質量%以下が好ましぐ 10〜50質量%がより好ましい。重合度が 1000以下のポ リビュルアルコールの割合を 50質量%以下とすることにより、得られる皮膜の臭気成 分の遮蔽効果および酸素遮蔽効果を充分に確保しつつ、フィルムコーティング性が さら〖こ良好となる。
[0011] 本発明に使用されうるタルクとしては、医薬品または食品の添加剤として用いられる タルクが挙げられ、 日本薬局方で規定されたタルクが好まし 、。
タルクの含有量は、フィルムコーティング組成物固形分(100質量%)中、 50〜86 質量%であり、 50〜75質量%が好ましぐ 51〜71質量%がより好ましぐ 51〜67質
量%が特に好ましい。タルクの含有量を 50質量%以上とすることにより、粘着性が改 善され、フィルムコーティング性が良好となる。タルクの含有量を 86質量%以下とする ことにより、臭気成分の遮蔽効果が充分に発揮される。
また、ポリビュルアルコールに対するタルクの相対的比率については、ポリビュルァ ノレコーノレ 100質量咅に対し、タノレク 100〜600質量咅カ S好ましく、 100〜300質量咅 力 り好ましぐ 102〜250質量部がさらに好ましぐ 105〜200質量部が特に好まし い。ポリビュルアルコールに対するタルクの比率が上記範囲内であれば、フィルムコ 一ティング性が良好となり、かつ臭気成分の遮蔽効果が充分に発揮される。
[0012] 粘着性を抑制する無機化合物としては、タルクの他に、無水ケィ酸、含水二酸化ケ ィ素、沈降炭酸カルシウム等の無機化合物が挙げられるが、粘着性の抑制にはタル クが最良である。タルクを除く無機化合物は、フィルムコーティング組成物における含 有量を多くすれば、粘着性の抑制効果を発揮する。しかし、タルクを除く無機化合物 をフィルムコーティング組成物に過剰に添加すると、得られる皮膜の表面状態が粗雑 になる。そのため、皮膜の平滑さが損なわれ、皮膜の上に印刷を施す際、明瞭な印 字ができない等の問題が生じる。タルクを除く無機化合物は、タルクの作用を妨げな い範囲であれば、タルクと併用してもよい。
[0013] 本発明のフィルムコーティング組成物は、皮膜の外観を損なうことなぐさらにフィル ムコーティング性を向上させるために、脂肪酸エステル類を含有してもよい。脂肪酸 エステル類を含有することにより、粘着性が改善され、フィルムコーティング性がさら に良好となる。また、得られる皮膜は、臭気成分の遮蔽効果および酸素遮蔽効果を 充分に有し、かつ表面状態は平滑である。
脂肪酸エステル類の含有量は、フィルムコーティング組成物固形分(100質量%) 中、 25質量%以下が好ましぐ 0. 5〜25質量%がより好ましい。
粘着性を抑制する有機化合物としては、脂肪酸エステル類の他に、レシチンを用い ることができるが、特有の色、味、臭いを有するため添加量は少量に限られる。
[0014] 本発明のフィルムコーティング組成物には、上述の添加剤の他に、必要に応じてフ イルムコーティングに通常用いられる他の添加剤をカ卩えてもよい。他の添加剤として は、植物抽出色素等の着色剤、酸化チタン、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素等の隠
蔽剤等が挙げられる。
他の添加剤の含有量は、フィルムコーティング組成物固形分(100質量%)中、 20 質量%以下が好ましぐ 10質量%以下がより好ましぐ 5質量%以下が特に好ましい
[0015] 本発明のフィルムコーティング組成物には、可塑剤が実質的に含まれないことが好 ましぐ可塑剤が全く含まれないことが特に好ましい。「可塑剤が実質的に含まれない 」とは、可塑剤の含有量が、臭気成分の透過を助長しない範囲の量であり、かつ錠剤 に含まれる薬剤または食品と相互作用を起こさない範囲の量であることを意味し、具 体的には、フィルムコーティング組成物固形分(100質量%)中、 5質量%未満である
[0016] ポリビュルアルコールと相溶性のある可塑剤としては、ポリエチレングリコール、ポリ ォキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコーノレエーテル、プ ロピレンダリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
[0017] 本発明の皮膜は、本発明のフィルムコーティング組成物を水に加えてコーティング 液とし、コーティング装置を用いて基剤上にコーティングして形成されうる。
コーティング液中のフィルムコーティング組成物固形分の濃度は、 3〜40質量0 /0が 好ましぐ 5〜30質量%がより好ましい。
コーティング装置としては、連続通気式コーティング装置、流動層コーティング装置 、パンコーター等が挙げられる。
[0018] 本発明の錠剤は、本発明の皮膜を有するものである。なお、本発明の錠剤は、腸 溶性の高分子化合物等力 なる皮膜を有する錠剤の表面に、本発明の皮膜を有す るものでもよい。また、本発明の皮膜を有する錠剤の表面に、腸溶性の高分子化合 物等力もなる皮膜を形成してもよ 、。
錠剤のベースとなる素錠としては、薬剤または食品と、必要に応じて添加される添 加剤とを含むものが挙げられる。本発明は、素錠が臭気を伴う成分を含む場合に特 に有効である。臭気を伴う成分の例としては、にんにくオイル、桂皮油(シナモン油)、 エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、ドコサへキサェン酸(DH A)、メントール、マスタードオイル、わさびフレーバー、塩酸ェチルシスティン等が挙
げられる。
[0019] 本発明は、素錠が酸化劣化を伴う成分を含む場合にも有効である。酸化劣化を伴 う成分としては、ドコサへキサェン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、リノール 酸、リノレン酸等の油脂類;リコピン、カロチン、チアミン塩酸塩、リボフラビン、シァノコ ノ ラミン、ァスコノレビン酸等のビタミン類;ノ リン、ァノレギニン、ロイシン、イソロイシン等 のアミノ酸類が挙げられる。
フィルムコーティング組成物力もなる皮膜の量は、通常、素錠 100質量部に対して、 約 2〜30質量部である。
以上説明した本発明のフィルムコーティング組成物は、タルクの含有量力 フィルム コーティング組成物固形分(100質量%)中 50質量%以上である。このため、ポリビ -ルアルコールの曳糸性が抑えられ、結果、可塑剤を用いなくても、フィルムコーティ ング組成物力もなるコーティング液を用いたコーティングが可能となる。また、タルクの 含有量が、フィルムコーティング組成物固形分(100質量%)中 50質量%以上である ため、得られる皮膜の粘着性が抑えられ、該皮膜を有する錠剤同士が付着すること がない。
[0020] また、タルクの含有量力 フィルムコーティング組成物固形分(100質量%)中 50〜 86質量%であるため、錠剤の臭気成分を充分に遮蔽できる。また、 口腔内で速やか に崩壊、溶解するチユアブル錠において、素錠中に揮発性の矯味矯臭効果の成分 を配合した場合、保管中の成分の減少が抑えられ、 口腔内における効果を長時間持 続できる。さらに、本発明の皮膜は、ポリビニルアルコール力もなる皮膜であるので、 酸素遮蔽性、防湿性に優れ、錠剤の長期保存が可能となる。
実施例
実施例 1
[0021] 水 94. 0質量部に、重合度 1700、けん化度 87〜89モル0 /0のポリビュルアルコー ル (以下、 PVA— 1700と記す) 3. 0質量部(固形分中 50質量%)、タルク((株)勝光 山工業所製、ビクトリライト) 3. 0質量部(固形分中 50質量%)を加え、 60°Cに加温し ながら撹拌して、コーティング液を調製した。
[0022] 臭気成分の遮蔽性を評価するために、以下の臭気のある素錠 (以下、臭気錠と記
す。)を用意した。
臭気錠:にんにくオイル (食品添加物)をニ酸ィ匕ケィ素に吸着させ、これを、乳糖、コ ーンスターチ、結晶セルロース、およびステアリン酸マグネシウム力もなる混合粉とと もに直接打錠した錠剤 (9mm φ、 10R)。
連続通気式コーティング装置 (フロイント産業 (株)製、ハイコーターラボ)に、臭気錠 330gを仕込み、乾燥皮膜中のポリビュルアルコール力 素錠 100質量部に対して 3 質量部となるように、素錠にコーティング液をスプレーした。コーティングの可否、スプ レー速度、作業時間および得られた皮膜を有する臭気錠にっ 、ての臭気成分の遮 蔽効果を表 1に示す。
実施例 2
[0023] 水 91. 0質量部に、 PVA— 1700 3. 0質量部(固形分中 33質量%)、タルク 6. 0 質量部(固形分中 67質量%)を加え、 60°Cに加温しながら撹拌して、コーティング液 を調製した。
実施例 2のコーティング液について、実施例 1と同様にしてコーティングを実施した 。コーティングの可否、スプレー速度、作業時間、および得られた皮膜を有する臭気 錠につ 1、ての臭気成分の遮蔽効果を表 1に示す。
実施例 3
[0024] 水 85. 0質量部に、 PVA— 1700 3. 0質量部(固形分中 20質量%)、タルク 12.
0質量部(固形分中 80質量%)を加え、 60°Cに加温しながら撹拌して、コーティング 液を調製した。
実施例 3のコーティング液について、実施例 1と同様にしてコーティングを実施した 。コーティングの可否、スプレー速度、作業時間、および得られた皮膜を有する臭気 錠につ 1、ての臭気成分の遮蔽効果を表 1に示す。
実施例 4
[0025] 水 79. 0質量部に、 PVA— 1700 3. 0質量部(固形分中 14質量%)、タルク 18.
0質量部(固形分中 86質量%)を加え、 60°Cに加温しながら撹拌して、コーティング 液を調製した。
実施例 4のコーティング液について、実施例 1と同様にしてコーティングを実施した
。コーティングの可否、スプレー速度、作業時間、および得られた皮膜を有する臭気 錠につ 1、ての臭気成分の遮蔽効果を表 1に示す。
実施例 5
[0026] 水 85. 0質量部に、 PVA— 1700 2. 0質量部、重合度 500、けん化度 87〜89モ ル0 /0のポリビュルアルコール(以下、 PVA— 500と記す。) 1. 0質量部(全ポリビュル アルコールの含有量:固形分中 20質量%、 PVA— 500の割合:全ポリビュルアルコ ールのうち 33質量%)、タルク 12. 0質量部(固形分中 80質量%)を加え、 60°Cに加 温しながら撹拌して、コーティング液を調製した。
実施例 5のコーティング液について、実施例 1と同様にしてコーティングを実施した 。コーティングの可否、スプレー速度、作業時間、および得られた皮膜を有する臭気 錠につ 1、ての臭気成分の遮蔽効果を表 1に示す。
実施例 6
[0027] 水 85. 0質量部に、 PVA— 1700 1. 5質量部、 PVA— 500 1. 5質量部(全ポリ ビュルアルコールの含有量:固形分中 20質量%、 PVA— 500の割合:全ポリビュル アルコールのうち 50質量0 /0)、タルク 12. 0質量部(固形分中 80質量0 /0)を加え、 60 °Cに加温しながら撹拌して、コーティング液を調製した。
実施例 6のコーティング液について、実施例 1と同様にしてコーティングを実施した 。コーティングの可否、スプレー速度、作業時間、および得られた皮膜を有する臭気 錠につ 1、ての臭気成分の遮蔽効果を表 1に示す。
実施例 7
[0028] 水 83. 5質量咅に、 PVA— 1700 2. 0質量咅、 PVA— 500 1. 0質量咅 (全ポジ ビュルアルコールの含有量:固形分中 18質量%、 PVA— 500の割合:全ポリビュル アルコールのうち 33質量%)、タルク 12. 0質量部(固形分中 73質量%)、ショ糖脂肪 酸エステル (第一工業製薬 (株)製、 DKエステル F- 70) l. 5質量部(固形分中 9 質量%)を加え、 60°Cに加温しながら撹拌して、コーティング液を調製した。
実施例 7のコーティング液について、実施例 1と同様にしてコーティングを実施した 。コーティングの可否、スプレー速度、作業時間、および得られた皮膜を有する臭気 錠につ 1、ての臭気成分の遮蔽効果を表 1に示す。
比較例 1
[0029] 水 94. 9質量部に、 PVA— 1700 3. 0質量部(固形分中 59質量%)、タルク 2. 1 質量部(固形分中 41質量%)を加え、 60°Cに加温しながら撹拌して、コーティング液 を調製した。
比較例 1のコーティング液について、実施例 1と同様にしてコーティングを実施した 。コーティングの可否、スプレー速度、作業時間、および得られた皮膜を有する臭気 錠につ 1、ての臭気成分の遮蔽効果を表 1に示す。
比較例 2
[0030] 水 94. 9質量部に、 PVA— 1700 1. 0質量部、 PVA— 500 2. 0質量部(全ポリ ビュルアルコールの含有量:固形分中 59質量%、 PVA— 500の割合:全ポリビュル アルコールのうち 67質量%)、タルク 2. 1質量部(固形分中 41質量%)を加え、 60°C に加温しながら撹拌して、コーティング液を調製した。
比較例 2のコーティング液について、実施例 1と同様にしてコーティングを実施した 。コーティングの可否、スプレー速度、作業時間、および得られた皮膜を有する臭気 錠につ 1、ての臭気成分の遮蔽効果を表 1に示す。
比較例 3
[0031] 水 93. 7質量部に、 PVA— 1700 3. 0質量部(固形分中 47. 6質量%)、タルク 2 . 7質量部(固形分中 42. 9質量%)、ポリエチレングリコール 6000 (三洋化成工業( 株)製、マクロゴール 6000) (以下、 PEG6000と記す。 ) 0. 6質量部(固形分中 9. 5 質量%)を加え、 60°Cに加温しながら撹拌して、コーティング液を調製した。
比較例 3のコーティング液について、実施例 1と同様にしてコーティングを実施した コーティングの可否、スプレー速度、作業時間、および得られた皮膜を有する臭気錠 につ 、ての臭気成分の遮蔽効果を表 1に示す。
比較例 4
[0032] ポリビュルアルコール以外の高分子化合物として、ヒドロキシプロピルメチルセル口 ース (信越ィ匕学工業 (株)製、 TC— 5 (RW) ) (以下、 HPMCと記す。)を用意した。水
94. 0質量部に、 HPMC6. 0質量部を加え、攪拌してコーティング液を調製した。 比較例 4のコーティング液について、実施例 1と同様にしてコーティングを実施し、 乾燥皮膜中の HPMCが、素錠 100質量部に対して 3質量部となるように、素錠にス プレーした。コーティングの可否、スプレー速度、作業時間、および得られた皮膜を 有する臭気錠につ!、ての臭気成分の遮蔽効果を表 1に示す。
[表 1]
[0034] 表中、コーティングの可否については、スプレー速度を最低条件(lgZmin)にした にもかかわらず、作業中に錠剤のピッキングおよびブロッキングが発生する好ましくな い場合を Xと評価し、そうでない好ましいものを〇と評価した。臭気成分の遮蔽効果 については、ボランティア 6名による官能試験を行い、臭気を感じた人数が 1人以下 の場合を〇、 5人以上の場合を Xと評価した。
[0035] (1)フィルムコーティング性:
ポリビュルアルコ一ルを用 ヽた場合、フィルムコ一ティング組成物固形分中のタルク の含有量が 41質量%である比較例 1ではコーティングができな力つた。タルクの含有 量が固形分中 50〜86質量%である実施例 1〜7では、コーティングは可能であった
[0036] (2)臭気成分の遮蔽効果:
実施例 1〜7のコーティング液の皮膜を有する臭気錠については、臭気を感じると
評価した人はいな力つた。それに対し、比較例 2〜4のコーティング液の皮膜を有す る臭気錠、および皮膜のない臭気錠は、臭気を感じると評価した人が 5人以上いた。
[0037] (3)生産機におけるフィルムコーティング性:
連続通気式コーティング装置 (フロイント産業 (株)製、ハイコーター 100N)に、乳糖 、コーンスターチ、およびステアリン酸マグネシウムカゝらなる混合粉を打錠した錠剤(8 πιπι φ、 10R)を 50kg仕込み、乾燥皮膜中のポリビュルアルコール力 素錠 100質 量部に対して 3質量部になるように、素錠に実施例 3、実施例 5、実施例 7のコーティ ング液をスプレーした。スプレー速度、および作業時間を表 2に示す。
[0039] 実施例 5のように、重合度が 1000以下のポリビュルアルコールを用いること、また、 実施例 7のように、さらにショ糖脂肪酸エステルを添加することで、フィルムコーティン グ'性が、さらに向上した。
[0040] (4)酸素遮蔽効果:
酸素遮蔽効果を評価するため、以下の酸ィ匕劣化が起こる素錠 (以下、酸化劣化錠 と記す。)を用意した。
酸ィ匕劣化錠:リノール酸をデキストリンに吸着させ、これを、ソルビトール、結晶セル ロース、二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウム力もなる混合粉とともに直接 打錠した錠剤 (8mm φ、 10R)。
[0041] 連続通気式コーティング装置 (フロイント産業 (株)製、ハイコーターラボ)に、酸ィ匕劣 化錠を 330g仕込み、乾燥皮膜中のポリビュルアルコールが、素錠 100質量部に対 して 3質量部になるように、素錠に実施例 3、実施例 5、比較例 2、比較例 3のコーティ ング液をスプレーした。スプレー速度、および作業時間は表 1と同様の結果となった。
[0042] 実施例 3、実施例 5、比較例 2および比較例 3で得られた皮膜を有する酸化劣化錠 、および皮膜のない酸ィ匕劣化錠を、 40°Cに設定した恒温器内に開封状態で保存し た。そして、酸ィ匕劣化錠中のリノール酸の過酸ィ匕物価を経時的に測定し、過酸化物
価が 20を超えるまでの期間を評価した。結果を表 3に示す。過酸化物価測定法は、 衛生試験法 ·注解(日本薬学会編)に準拠して行った。
[0044] 実施例 3、実施例 5では、過酸化物価の増加が認められず、酸素の遮蔽効果が良 好であった。それに対し、比較例 2および素錠では 6日目に過酸化物価が 20を超え る結果となった。また、 PEG6000を添カ卩した比較例 3では、素錠より速い 4日目に過 酸化物価が 20を超え、 PEG6000とリノール酸との相互作用が確認された。
[0045] 以上のように、本発明のフィルムコーティング組成物は、医薬品、健康食品、食品 等の錠剤の皮膜として有用であり、特に、臭気成分を含む錠剤、および可塑剤との 相互作用が懸念される成分を含む錠剤の皮膜として有用である。
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定される ことはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびそ の他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなぐ添 付のクレームの範囲によってのみ限定される。
産業上の利用可能性
[0046] 本発明によれば、可塑剤を用いなくても、粘着性が改善され、フィルムコーティング性 が良好となり、かつ錠剤の臭気を充分に遮蔽でき、酸素遮蔽効果にも優れるフィルム コーティング組成物、その皮膜、および錠剤同士が付着することなぐ臭いが少なぐ 長期保存可能な安定な錠剤が提供できる。