明 細 書
ゴム補強用コードとそれを用いたゴムベルト
技術分野
[0001] 本発明は、ゴムベルト、タイヤなどのゴム製品の補強に用いられ、当該ゴム製品の 耐屈曲性などを向上させるゴム補強用コードと、それを用いたゴムベルトとに関する。 背景技術
[0002] ゴムベルト、タイヤなど、屈曲応力を繰り返し受けるゴム製品の補強材として、ガラス 繊維などの補強用繊維を備えたゴム補強用コードが広く用いられている。補強用コ ードには、弾性率および強度が高ぐ伸びや屈曲疲労が生じにくいことが求められる 。また補強用コードは、所定の形状を有するマトリクスゴムに埋め込まれた状態で使 用されるため、マトリクスゴムに対する接着性に優れ、使用中にマトリクスゴム力 剥離 しにくいことが求められる。
[0003] ゴムベルトの 1種に、 自動車用エンジンなど、内燃機関のカムシャフト駆動に用いら れる歯付きベルトがある。歯付きベルトはタイミングベルトとも呼ばれ、カムとクランクと の間のタイミングを正確に同期させるために、その寸法安定性が特に重要となる。歯 付きベルトは、近年、カムシャフトの駆動だけではなくインジェクションポンプなどの補 機類の駆動に用いられたり、エンジンの小型化に伴う細幅化が要求されたりしてきて おり、従来よりも負荷が大きくなることによるベルトの強度低下や伸びなどの問題が指 摘されている。
[0004] このような状況において、補強用コードに用いられるガラス繊維として、従来多く用 いられている無アルカリガラス、例えば Eガラス、の繊維以外にも、いわゆる「高強度 ガラス」の繊維の使用が進められて 、る。
[0005] 実公平 5(1993)-44607号公報には、直径 6〜8 μ mの高強度ガラスフィラメントを束 ねてストランドを形成し、所定本数の上記ストランドを下撚りして 500〜800本のフイラ メントを含むロープを形成し、 9〜 12本の当該ロープを上記下撚りとは逆方向に上撚 りした補強用コードを備える歯付きベルトが開示されている。
[0006] 特公平 5(1993)-67651号公報には、直径 8 μ m以下の高強度ガラス繊維からなる心
線の表面に、レゾルシン ホルムアルデヒド縮合物およびゴムラテックスを含む第 1層 と、イソシァネート、ハロゲン含有ポリマー、加硫剤、および、メタクリル酸塩またはァク リル酸塩を含む第 2層とが順に形成された補強用コードが開示されている。
[0007] 特開平 11(1999)-158744号公報には、直径が 3〜6 μ mの高強度ガラスフィラメント 2 00〜2000本を集束剤により束ねたストランドを形成し、 1〜10本の上記ストランドか ら、 500〜5000本のフィラメントを含む線径 50〜150テックスの糸を形成し、当該糸 の表面に所定の材料を含む被覆層を形成した後に、下撚り、合糸、上撚りの各工程 を経た補強用コードが開示されている。所定の材料としては、レゾルシン—ホルムァ ルデヒド縮合物、ビュルピリジン スチレン ブタジエンターポリマーラテックス、クロ ロスルホンィ匕ポリエチレンラテックス、二トリル基含有高飽和重合体ラテックスなどが示 されている。
[0008] 特開平 11(1999)-217739号公報には、直径が 8〜10 μ mの高強度ガラスフィラメント を束ねたストランドの表面にレゾルシン ホルムアルデヒド縮合物およびゴムラテック スを含む被覆層を形成した糸を 2以上撚り合わせた、直径 0. 8〜1. 1mmの補強用 コードが開示されている。当該補強用コードでは、上記糸を 2以上撚り合わせた後に 、上記被覆層とは異なる被覆層がさらに形成されていてもよい。
[0009] 特開平 11(1999)-241275号公報には、繊維に、レゾルシン ホルムアルデヒド縮合 物およびゴムラテックスを含む処理剤を塗布した後に乾燥、硬化させて第 1被覆層を 形成し、当該第 1被覆層の表面に、ゴム前駆体、加硫剤およびマレイミド系加硫助剤 を含む処理剤を塗布し、乾燥および硬化させて第 2の被覆層をさらに形成した補強 用コードが開示されている。
[0010] し力しながら、高強度ガラスフィラメントを用いた場合においても、近年求められてい るような高負荷での使用時に、ベルトの伸びが生じたり、ベルトの強度が低下するな どの問題が発生している。
[0011] そこで本発明は、 Eガラス繊維や高強度ガラス繊維を備える従来のゴム補強用コー ドに比べて、高負荷での使用により耐えうるゴム補強用コードと、それを用いたゴムべ ルトとを提供することを目的とする。
発明の開示
[0012] 本発明のゴム補強用コードは、ガラスフィラメントを束ねたストランドを備えたゴム補 強用コードであって、前記フィラメントを構成するガラス組成物力 重量%で表示して
SiO 10〜40%
2
AI O 10〜30%
2 3
MgO 0〜 5%
CaO 0〜 5%
SrO 0〜 5%
BaO 0〜 5%
MgO hCaO + SrO + BaO
ZnO 0〜 5%
B O 0〜 5%
2 3
Y O 0〜50%
2 3
La O 0〜60%
2 3
Y O斗 La O 20〜60%
2 3 2 3
TiO 0〜10%
2
ZrO 0〜10%
を含んでいる。
[0013] 本発明のゴムベルトは、上記本発明のゴム補強用コードを備え、前記ゴム補強用コ ードが、所定の形状を有するマトリクスゴムに埋め込まれた構造を有して 、る。
図面の簡単な説明
[0014] [図 1]図 1は、本発明のゴムベルトの一例を模式的に示す分解斜視図である。
発明を実施するための最良の形態
[0015] 本発明のゴム補強用コード (以下、単に「コード」ともいう)では、ガラスフィラメントを 構成するガラス糸且成物の糸且成を上記のように規定することにより、従来のコードに比 ベて、引張強度を同等以上に保持しながら伸びを低減できるなど、高負荷での使用 により耐えうるコードとすることができる。このため、本発明のコードを備えるゴムベルト は、従来のコードを備えるゴムベルトに比べて強度に優れており、使用時のベルトの
伸びや強度の低下が抑制された、耐屈曲疲労特性に優れるゴムベルトとすることが できる。
[0016] 本発明のコードが備えるガラスフィラメントの引張弾性率 (以下、単に「弾性率」)は、 通常 98GPa (10000kgf/mm2)以上であり、ガラス組成物の組成を最適化することによ り 109GPa以上とすることができる。弾性率の上限は特に限定されないが、およそ 12 3GPa (12500kgf/mm2)程度にまですることができる。一般的な高強度ガラスフィラメン トの弾性率は約 92GPa程度であり、 Eガラス力もなるフィラメント (Eガラスフィラメント) の弾性率は約 86GPa程度である。本発明のコードでは、このような従来より高い弾性 率を有するガラスフィラメントを備えることにより、高負荷での使用に対する耐性をより 向上できると考えられる。
[0017] 以下の表 1に、上記ガラス組成物 (ガラス組成物 A)の組成を、一般的な高強度ガラ スおよび Eガラスの糸且成と共に示す。
[0018] [表 1]
ガラス m%)
成分
ガラス組成物 A 高 ¾Jgガラス Eガラス
Si02 1 0〜40 58〜70 52~56
Alz03 1 0〜30 1 7〜27 1 2~1 6
MgO 0〜5 7~1 7 0~6
CaO 0~5 0~1 0 1 2~25
SrO 0〜5
BaO 0~5
MgO+CaO+SrO+BaO 0~5
ZnO 0~5
Na20 0〜2 0〜0. 8
K20 0〜2 0~0. 8
Na20+K20 0~0. 8
B203 0〜5 0~2 0~1 3
YA 0~50
La203 0~60
Y203+La203 20~60
Ti02 0〜1 0
Zr02 0〜1 0
[0019] ガラス組成物 Aは、ガラスフィラメントとしての弾性率が著しく低下しない限り、表 1に 示した成分以外の各種成分、例えば、工業ガラス起源の不純物、熔解時の脱泡を目 的とした清澄剤などを含んでいてもよい。工業ガラス起源の不純物としては、例えば、 酸ィ匕鉄などが挙げられる。ガラス組成物 Aにおけるこれら成分の含有率は、各々 0.5 重量%未満であることが好ましぐこの場合、フィラメントを構成するガラス組成物 Aは 、実質的に表 1に示した成分力もなるといえる。即ち、「実質的に」という表記は、 0.5 重量%未満の範囲で含まれる微量成分を許容する趣旨である。
[0020] ガラス組成物 Aは、実質的にアルカリ金属酸ィ匕物を含まない、即ち、アルカリ金属 酸化物の含有率が 0.5重量%未満であることが好まし 、。
[0021] ガラス組成物 Aにおける組成の限定理由を説明する。以下の記述にぉ 、て、組成 を示す%表示は、すべて重量%である。
[0022] (SiO )
2
SiO (二酸ィ匕ケィ素)は、ガラス骨格を形成するための必須成分であり、フィラメント
2
としての化学的耐久性を向上させる作用も有する。 SiOの含有率が 10%未満になる
2
と、ガラスの化学的耐久性が低下する。 SiOの含有率が 40%を超えると、ガラスの熔
2
解温度が高くなり、ガラス原料を均一に熔解することが困難となる。 SiOの含有率は
2
、 25%〜35%の範囲が好ましい。
[0023] (Al O )
2 3
Al O (酸ィ匕アルミニウム)は、ガラス形成時の失透温度および熔融粘度を調整する
2 3
作用を有する必須成分である。 Al Oは、また、フィラメントの耐水性を向上させる作
2 3
用を有する。 Al Oの含有率が 10%未満になると、これらの効果を十分に得ることが
2 3
難しくなる。 Al Oの含有率が 30%を超えると、ガラスの熔解温度が高くなり、ガラス
2 3
原料を均一に熔解することが困難となる。 Al Oの含有率は、 15%〜25%の範囲が
2 3
好ましい。
[0024] (MgO、 CaO、 SrO、 BaO)
これらの成分は、ガラス形成時の失透温度および熔融粘度を調整する作用を有し、 ガラス組成物 Aでは 5%以下含まれて 、てもよ 、。各々の成分の含有率の合計 (Mg O + CaO + SrO + BaO)力 を超えると、失透温度が上昇してガラスフィラメントの 紡糸が難しくなるため、当該合計は 5%以下とする。
[0025] これらの成分の含有率は、各々、 1%〜4%の範囲が好ましい。また、上記含有率 の合計は、 1%〜4%の範囲が好ましい。
[0026] ガラス組成物 Aがこれらの成分を含む場合、ガラスフィラメントの紡糸性を向上でき る。即ち、ガラス組成物 A力 MgO、 CaO、 SrOおよび BaO力も選ばれる少なくとも 1 種を含むことが好ましい。また、この効果は、ガラス組成物 Aがこれらの成分のいずれ 力 1種を単独で含むよりも、 2以上の種類含むことでより向上できる。上記含有率の合 計が大きくなることによる失透温度の上昇を抑制するためにも、ガラス組成物 Aがこれ らの成分を含む場合、 MgO、 CaO、 SrOおよび BaO力も選ばれる少なくとも 2種を含 むことが好ましい。
[0027] (ZnO)
ZnO (酸化亜鉛)は、ガラスの熔解性およびィ匕学的耐久性を向上させる作用を有し 、ガラス組成物 Aでは 5%以下含まれていてもよい。 ZnOの含有率が 5%を超えると、 ガラスが失透しやすくなつたり、ガラスの熔解性が低下したりする。 ZnOの含有率は、 1%〜4%の範囲が好まし 、。
[0028] ガラス組成物 A力 ηθを含む場合、ガラスフィラメントの紡糸性を向上できる。即ち 、ガラス組成物 A力 ZnOを含むことが好ましい。
[0029] (B O )
2 3
B O (三酸ィ匕ニホウ素)は、ガラスの熔解性を向上させる作用を有し、ガラス組成物
2 3
Aでは 5%以下含まれていてもよい。 B Oの含有率が 5%を超えると、ガラスの耐アル
2 3
カリ性が低下する。 B Oの含有率は、 2%〜5%の範囲が好ましい。
2 3
[0030] ガラス組成物 Aが B Oを含む場合、ガラスフィラメントの紡糸性を向上できる。即ち
2 3
、ガラス組成物 A力 B Oを含むことが好ましい。
2 3
[0031] (Y O、La O )
2 3 2 3
Y O (酸化イットリウム)および La O (酸ィ匕ランタン)は、ガラスの弾性率を高める作
2 3 2 3
用を有する成分であり、ガラス組成物 Aでは、両者カゝら選ばれる少なくとも 1種を含ま せることとする。また、 Y Oおよび La Oは、ガラスの耐アルカリ性を向上させる作用
2 3 2 3
も有する。
[0032] Y Oの含有率は、 0%〜50%の範囲であり、 15%〜40%の範囲が好ましい。 La
2 3 2
Oの含有率は、 0%〜60%の範囲であり、 10%〜50%の範囲が好ましい。 Y Oお
3 2 3 よび La Oの含有率の合計 (Y O +La O )が 20%未満になると、十分な弾性率を
2 3 2 3 2 3
有するフィラメントを得ることが困難となる。 Y O +La Oが 60%を超えると、ガラスの
2 3 2 3
熔解温度が高くなり、ガラス原料を均一に熔解することが困難となる。 Y O +La O
2 3 2 3 は、 36重量%以下であることが好ましい。
[0033] ガラス組成物 Aが Y Oおよび La Oの双方を含む場合、ガラスの熔解温度の上昇
2 3 2 3
を抑制しながら、フィラメントの弾性率をより向上できることから、単位体積あたりの解 離エネルギーが相対的に大きい Y Oの含有率力 当該エネルギーが相対的に小さ
2 3
い La Oの含有率に比べて大きいことが好ましい。
2 3
[0034] (TiO、 ZrO )
TiO (酸ィ匕チタン)および ZrO (酸ィ匕ジルコニウム)は、ガラスの熔解性およびィ匕学
2 2
的耐久性を向上させる作用を有する成分であり、ガラス組成物 Aでは、各々 10%以 下含まれていてもよい。 TiOおよび ZrOの各々の含有率が 10%を超えると、ガラス
2 2
の熔解性が逆に悪ィ匕する他、ガラスが失透しやすくなりフィラメントの紡糸が困難とな る。
[0035] 本発明のコードが備えるガラスフィラメントの直径 (フィラメント径)は、 3 m〜: L 1 mの範囲であればよい。フィラメント径が 3 m未満になると、コードとして十分な初期 強度を得るために、より多くのフィラメントを束ねて 1本のストランドとしたり、より多くの ストランドを束ねる、あるいは、撚り合わせて糸を形成したりする必要が生じる。このと き、フィラメントあるいはストランドの配列にムラが生じやすくなるため、コードとしての 耐屈曲疲労特性が低下したり、場合によっては、十分な初期強度が得られないことが ある。逆にフィラメント径が 11 mを超えると、コードが曲がりにくくなり、十分な耐屈 曲疲労特性の確保が困難となる。
[0036] 本発明のコードでは、 1本のストランド力 上述したガラスフィラメントを 100本〜 200 0本、好ましくは 200本〜 600本含んでもよい。このようなストランドは、上記フィラメン トを紡糸する際に、ストランドの形成に一般的に用いられる集束剤、例えば、エラスト マー系集束剤により、紡糸した所定数のフィラメントを束ねることにより形成できる。形 成したストランドは、コレットなどに巻き取り、乾燥などの所定の処理を行えばよい。
[0037] 本発明のコードでは、 2以上のこのようなストランドが束ねられて、ストランド集合体 が形成されていてもよい。この場合、当該集合体が 200本〜 5000本の上記ガラスフ イラメントを含むことが好ましぐ 800本〜 2000本の上記ガラスフィラメントを含むこと 力 り好ましい。また、当該集合体の線径が 50テックス (tex)〜150テックスの範囲が 好ましぐ 50テックス〜 100テックスの範囲がより好ましい。集合体を形成するために 束ねられるストランドの数は特に限定されないが、束ねるストランドの数が多くなると集 合体におけるフィラメントの配列が不均一になりやすぐコードとした場合の強度など が低下する傾向にあるため、当該数は 10本以下とすることが好ましぐ 6本以下がより 好ましい。
[0038] 本発明のコードでは、ストランドが、レゾルシン ホルムアルデヒド縮合物およびカロ
硫剤から選ばれる少なくとも 1種と、ラテックスとを含む処理液 Aの塗布により形成され た第 1の被覆層により被覆されていてもよい。ストランドを第 1の被覆層で被覆すること により、本発明のコードと、コードを埋め込むマトリクスゴムとの接着性を向上できる。 第 1の被覆層は、 1本のストランドを被覆していてもよいし、 2以上のストランドが束ねら れたストランド集合体を被覆して!/、てもよ!、。
[0039] ラテックスの種類は特に限定されないが、例えば、ビュルピリジン スチレンーブタ ジエンターポリマー(VP)ラテックス、クロロスルホン化ポリスチレン(CSM)ラテックス 、アクリロニトリル—ブタジエンコポリマー(NBR)ラテックス、および、二トリル基含有高 飽和重合体ラテックス力 選ばれる少なくとも 1種であればよ 、。これらの材料を用い ることにより、コードとしての耐熱性や耐水性を向上できる。なお、二トリル基含有高飽 和重合体としては、 NBRを水素化した材料 (H— NBR)など、アクリロニトリルを構成 単位として含むコポリマーやターポリマーを水素化した材料、あるいは、ブタジエン エチレン一アクリロニトリルターポリマーなど、アクリロニトリルと飽和炭化水素とを構成 単位として含む材料などが挙げられる。
[0040] レゾルシン一ホルムアルデヒド縮合物(RF)は特に限定されず、ノボラックタイプ、レ ゾールタイプ、あるいは、これらの混合タイプなどを用いればよい。 RFにおけるレゾル シノール (R)とホルムアルデヒド(F)とのモル比は、 R:F= 1: 1〜3が好ましい。 RFは 一般に固形分を含む液体として市販されている力 固形分の含有率が 5重量%〜10 重量%程度の範囲のものを好適に使用できる。
[0041] 加硫剤は特に限定されず、例えば、マレイミド化合物および有機ジイソシァネート化 合物から選ばれる少なくとも 1種であればよい。処理液 Aが加硫剤を含む場合、処理 液 Aにおける加硫剤の含有量は、ラテックスの固形分 100重量部に対して、 5〜100 重量部の範囲であればよぐ好ましくは 20〜75重量部の範囲である。この場合、コー ドの屈曲性と、マトリクスゴムに対する接着性とのバランスをより良好にできる。
[0042] 有機ジイソシァネートイ匕合物としては特に限定されな 、が、例えば、へキサメチレン ジイソシァネート、イソホロンジイソシァネート、メチレンビス(4ーシクロへキシルイソシ ァネート)、トルエンジイソシァネート、キシレンジイソシァネート、ナフタレンジイソシァ ネート、メチレンビス(フエ二ルイソシァネート)などを用いればよ!ヽ。
[0043] 処理液 Aは、これら有機ジイソシァネートイ匕合物を 1または 2以上の種類含んでいて もよぐトルエンジイソシァネートゃメチレンビス(フエ-ルイソシァネート)のように、置 換基に関する異性体が存在する物質については、当該異性体同士の混合物であつ てもよい。また、有機ジイソシァネートイ匕合物は、そのイソシァネート基をフエノール類 あるいはラタタム類により保護した状態で用いてもょ 、。
[0044] マレイミド化合物としては特に限定されな 、が、例えば、ビスマレイミド、フエニルマ レイミド、ジフエ-ルメタン一 4, 4,一ビスマレイミドなどを用いればよい。
[0045] 処理液 Aにおける固形分の含有率 (濃度)は、 10重量%〜40重量%の範囲が好ま しぐ 25重量%〜35重量%の範囲がより好ましい。当該含有率が過小になると、第 1 の被覆層の形成が難しくなり、過大になると、処理液 Aのストランドへの塗布量の制御 が難しぐ第 1の被覆層の厚さが不均一になりやすくなる。
[0046] 処理液 Aは、必要に応じ、 pHを調整するための塩基類、例えばアンモニアなどを 含んでいてもよぐその他、安定剤、老化防止剤などを含んでいてもよい。処理液 A はカーボンブラックなどの充填剤を含んでいてもよぐこの場合、マトリクスゴムへの接 着性により優れるコードとすることができる。
[0047] ストランドへの第 1の被覆の形成には、コードの製造に一般的に用いられる方法を 応用すればよい。例えば、ストランド (集合体を含む)を、処理液 Aが収容された被覆 浴に連続的に浸漬させ、被覆浴からストランドを引き上げた後に過剰な処理液を除 去し、必要により乾燥すればよい。第 1の被覆が形成されたストランドは、そのままコ ードとしてもよいし、必要に応じて、後述する撚り、第 2の被覆層形成などの各処理を カロえてちよい。
[0048] 第 1の被覆層は、ストランドの重量に対して、 10重量%〜30重量%程度に相当す る量形成されて ヽればよ ヽ。
[0049] 本発明のコードは、第 1の被覆層により被覆されたストランドを下撚りして形成した糸 を、 2以上束ねて、さらに上撚りした構造を有していてもよい。この場合、強度がより向 上し、耐屈曲疲労特性により優れるコードとすることができる。下撚りの回数は、長さ 方向に 2. 54cm (1インチ)あたり 0. 5回〜 4回程度、好ましくは 1. 2回〜 3回程度で あればよい。下撚りにより形成した糸は、 2本〜 20本程度、好ましくは 6本〜 15本程
度束ねた後に、長さ方向に 2. 54cmあたり 0. 5回〜 3回、好ましくは 1回〜 2. 8回程 度上撚りされていればよい。
[0050] 本発明のコードは、ゴムを含む第 2の被覆層により被覆されていてもよい。この場合 、マトリクスゴムとの接着性がより向上したコードとすることができる。
[0051] ゴムの種類は特に限定されず、マトリクスゴムの種類などに応じて適宜選択すれば よぐ例えば、マトリクスゴムが-トリル基含有高飽和重合体である場合、接着性により 優れることから、第 2の被覆層が上記ゴムとして CSMを含むことが好ましい。また例え ば、マトリクスゴムが-トリル基含有高飽和重合体にポリメタクリル酸亜鉛 (ZDMA)を 分散させた混合ゴムである場合、接着性により優れることから、第 2の被覆層が上記 ゴムとして、二トリル基含有高飽和共重合体、あるいは、マトリクスゴムと同じ組成の混 合ゴムを含むことが好まし 、。
[0052] 第 2の被覆層は、例えば、ストランド (集合体を含む)、第 1の被覆層により被覆され たストランド (集合体を含む)、あるいは、ストランドにさらに撚りが加えられた糸を、ゴ ムあるいはゴム前駆体が溶解した処理液 Bに含浸した後、乾燥して形成すればよ!、。 CSMや-トリル基含有高飽和重合体は、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族 炭化水素、トリクロロエチレンなどのハロゲンィ匕炭化水素、メチルェチルケトンなどの ケトン類、酢酸ェチルなどのエステル類に溶解するため、処理液 Bはこれらの有機物 質を溶媒として含めばよい。
[0053] 処理液 Bは加硫剤を含んで ヽてもよく、加硫剤としては、例えば、上述したマレイミド 化合物、有機ジイソシァネートイ匕合物の他に、硫黄、あるいは、ジクミルペルォキシド 、 1,3—ビス(t—ブチルパーォキシ—m—イソプロピル)ベンゼンなどの有機過酸化物 、 p—ジニトロナフタレン、 p—ジニトロソベンゼンなどの芳香族-トロソ化合物などを用 いればよい。処理液 Bは、必要に応じて、無機充填剤、老化防止剤、加硫助剤、可 塑剤などを含んで 、てもよ 、。
[0054] 処理液 Bにおける溶媒以外の物質の含有率 (ゴム、加硫剤など)は、当該物質の種 類により適宜設定すればよいが、 3重量%〜25重量%程度の範囲、好ましくは 5重 量%〜15重量%程度の範囲であれば、第 2の被覆層の形成が良好となる。上記溶 媒以外の物質におけるゴムまたはゴム前駆体の含有率は 20重量%〜60重量%程
度が好ましぐ処理液 Bが加硫剤を含む場合、上記溶媒以外の物質における加硫剤 の含有率は 0. 5重量%〜30重量%程度の範囲が好ま 、。
[0055] 第 2の被覆層を形成する際には、例えば、ストランド (集合体を含む)あるいは撚りが 加えられた糸の表面に、ストランドの重量に対して、溶媒以外の物質の量に換算して 1重量%〜15重量%程度、好ましくは 2重量%〜6重量%程度、処理液 Bを付着さ せればよい。
[0056] 本発明のコードの線径は、コードの用途により適宜設定すればよい。例えば、本発 明のコードを自動車用エンジンのタイミングベルトに用いる場合、コードの線径は、通 常、 0. 8mm〜l . 45mmの範囲であり、ストランドが含むフィラメントの本数、あるい は、糸が含むストランドの本数を調節することによりコードの線径を設定できる。 自動 車用エンジンのタイミングベルトの場合、コードの線径が 0. 8mm未満になると、高負 荷での使用時に、その強度、代表的には引張強度、が不十分となることがある。一方 、コードの線径が 1. 45mmを超えると、コードの強度は十分となるものの、屈曲応力 に対する耐性 (耐屈曲疲労特性)が逆に低下することがある。
[0057] 本発明のコードは、これら内燃機関のタイミングベルトの他、例えば、プリンター用タ イミングベルトなどにも用いることができる。
[0058] 本発明のコードの構造および構成は、上記ガラスフィラメントを束ねたストランドを備 える限り特に限定されない。
[0059] 図 1に、本発明のゴムベルトの一例を示す。図 1に示すゴムベルト 1は、本発明のゴ ム補強用コード 2を備え、コード 2が、歯付きベルトの形状を有するマトリクスゴム 3に 埋め込まれた構造を有している。図 1に示すベルト 1では、各コード 2の伸張方向が ベルト 1の周方向と一致し、各コード 2がベルト 1の幅方向に互いに平行になるように 配置されている。マトリクスゴム 3における歯 4が形成されている面には、当該面の摩 耗を抑制するなどの目的で、ゴムを含浸させた歯布 5が配置されている。
[0060] 本発明のゴムベルトの構造および構成は、本発明のゴム補強用コードを備え、かつ 、当該コードが所定の形状を有するマトリクスゴムに埋め込まれている限り特に限定さ れない。マトリクスゴムの形状は、ゴムベルトとして必要な用途および特性に応じて適 宜設定すればよい。
[0061] 本発明のゴムベルトの製造方法は、補強用コードを備える一般的なゴムベルトの製 造方法を応用すればよい。
実施例
[0062] 以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限 定されない。
[0063] (実施例 1)
最初に、以下の表 2に示す組成 (重量%)となるようにガラス原料を熔解して融液を 形成し、プッシングのノズル穴より紡糸して、ガラスフィラメント(直径 7 μ m)を形成し た。このとき、従来の高強度ガラス用の紡糸装置に比べてさらなる高温熔融が可能な ように、白金(Pt) 80—ロジウム (Rh) 20合金力もなるプッシングを用いた。
[0064] [表 2]
形成したフィラメントの引張弾性率を測定したところ、 109. 8GPaであった。弾性率 の測定は、オートグラフ(島津製作所製、 AGS— 500G型)を用いて行った。具体的 には、当該オートグラフに上記形成したフィラメントをセットして、引張速度 250mmZ 分で引っ張り、その際にフィラメントにカ卩えた荷重と、フィラメントの伸びとの関係から
算出した。
[0066] 次に、形成したフィラメントを、エラストマ一系集束剤により 200本集束させて乾燥さ せ、線径 22. 5テックスのストランドを形成した。続いて、このストランドを 3本合糸し、 6 00本のフィラメントを含む 70テックスのストランド集合体とした。この集合体に、以下の 表 3に示す組成を有する処理液 A— 1を塗布した後に乾燥させ、第 1の被覆層により 被覆されたストランド集合体を得た。処理液 A—1の塗布は、集合体 100重量部に対 して、処理液 Aにおける固形分が 20重量部となるように行い、乾燥は 280°Cの雰囲 気下において 2分間保持することにより行った。
[0067] [表 3] 処理液 A誠
RF液: R/F=1/1. 5 (モル比)、 固开^有率 8 SS%
VPラテックス:日本ゼオン 製 Nipo l 2518FS, 固形分含有率 40重量%
CSMラテックス:住友精 ί匕社製 CSMラテックス 200、 固形 率 40重置%
H~NBRラテックス:日本ゼ才ン ¾ Zetpo l、 固形分含有率 40重量%
ブタジエンラテックス: J S R¾製 T700、 固形分含有率 57重置%
アンモニア水: S度 25重 S%
[0068] 次に、第 1の被覆層が形成された集合体を、長さ方向に 2. 54cmあたり 2. 1回下撚 りして糸を形成し、形成した糸を 11本合糸して、長さ方向に 2. 54cmあたり 2. 1回さ らに上撚りした。なお、下撚りと上撚りの方向は互いに逆方向とした。
[0069] 次に、撚りをカ卩えた糸に、以下の表 4に示す組成を有する処理液 B— 1を塗布した 後に乾燥させて、第 2の被覆層により被覆された線径 0. 95mmのゴム補強用コード(
サンプル 1)を作製した。処理液 B—1の塗布にあたっては、処理液 B— 1における溶 媒以外の物質の量が上記糸の重量の 3重量%となるように行った。乾燥は、自然乾 燥とした。
[0070] [表 4] 処理液 B - 1誠
キシレン-卜リクロロエチレン混合«:混合比 (MMit) =1.5:1
csM: M TS-3 O. 驟置 43重量%、 ι . i重量%
[0071] このように作製したサンプル 1の引張強度および破断伸びを測定したところ、それぞ れ 1078Nおよび 3. 6%であった。なお、サンプル 1に対する引張強度および破断伸 びの測定は、それぞれ、オートグラフ(島津製作所製、 AG—10KNI型)にサンプル 1 をセットして引張速度 250mmZ分で引つ張り、サンプル 1が破断した時の荷重およ び伸びを測定することにより求めた。上記荷重が引張強度に、上記伸びが破断伸び に対応する。引張強度および破断伸びの測定方法は、以降の実施例、比較例にお いても同様である。
[0072] (実施例 2)
第 1の被覆層を形成するための処理液 Aとして表 3に示す処理液 A— 2を用い、第 2の被覆層を形成しなカゝつた以外は、実施例 1と同様にして、第 1の被覆層により被 覆された線径 0. 9mmのゴム補強用コード (サンプル 2)を作製した。
[0073] このように作製したサンプル 2の引張強度および破断伸びを測定したところ、それぞ
れ 1000Nおよび 3. 8%であった。
[0074] (実施例 3)
第 1の被覆層を形成するための処理液 Aとして表 3に示す処理液 A— 2を用い、第
2の被覆層を形成するための処理液 Bとして以下の表 5に示す処理液 B— 2を用いた 以外は、実施例 1と同様にして、第 2の被覆層により被覆された線径 0. 95mmのゴム 補強用コード (サンプル 3)を作製した。
[0075] [表 5] 処理液 B— 2誠
[0076] このように作製したサンプル 3の引張強度および破断伸びを測定したところ、それぞ れ 1029Nおよび 3. 7%であった。
[0077] (比較例 1)
ガラス原料として Uガラス(日本板硝子社製)を用い、実施例 1と同様にして、高強 度ガラスフィラメント (直径 7 μ m)を形成した。形成したフィラメントの弾性率を実施例
1と同様に測定したところ、 91. 8GPaであった。
[0078] 次に、形成した高強度ガラスフィラメントを用いた以外は、実施例 1と同様にして、線 径 0. 95mmのゴム補強用コード (サンプル A)を作製した。
[0079] このように作製したサンプル Aの引張強度および破断伸びを測定したところ、それ ぞれ 1029Nおよび 4. 4%であった。
[0080] (比較例 2)
比較例 1で形成した高強度ガラスフィラメントを用いた以外は、実施例 2と同様にし
て、線径 0. 9mmのゴム補強用コード (サンプル B)を作製した。
[0081] このように作製したサンプル Bの引張強度および破断伸びを測定したところ、それ ぞれ 960Nおよび 4. 4%であった。
[0082] (比較例 3)
比較例 1で形成した高強度ガラスフィラメントを用いた以外は、実施例 3と同様にし て、線径 0. 95mmのゴム補強用コード (サンプル C)を作製した。
[0083] このように作製したサンプル Cの引張強度および破断伸びを測定したところ、それ ぞれ 980Nおよび 4. 3%であった。
[0084] (比較例 4)
ガラス原料として Uガラス(日本板硝子社製)を用い、実施例 1と同様にして、高強 度ガラスフィラメント (直径 6. 5 m)を形成した。形成したフィラメントの弾性率を実施 例 1と同様に測定したところ、 91. 8GPaであった。
[0085] 次に、形成した高強度ガラスフィラメントを用い、第 1の被覆剤を形成する処理液 A として表 3に示す処理液 A— 3を用いた以外は、実施例 1と同様にして、線径 0. 95m mのゴム補強用コード (サンプル D)を作製した。
[0086] このように作製したサンプル Dの引張強度および破断伸びを測定したところ、それ ぞれ 1039Nおよび 4. 4%であった。
[0087] (比較例 5)
ガラス原料として汎用の無アルカリガラスである Eガラスを用 、、実施例 1と同様にし て、 Eガラスフィラメント(直径 7 μ m)を形成した。形成したフィラメントの弾性率を実施 例 1と同様に測定したところ、 86. lGPaであった。
[0088] 次に、形成した Eガラスフィラメントを用いた以外は、実施例 1と同様にして、線径 0.
95mmのゴム補強用コード(サンプル E)を作製した。
[0089] このように作製したサンプル Eの引張強度および破断伸びを測定したところ、それ ぞれ 666Nおよび 3. 9%であった。
[0090] サンプル 1〜3およびサンプル A〜Eにおける引張強度および破断伸びの測定結 果を、以下の表 6にまとめて示す。
[0091] [表 6]
フィラメント フィラメント
引職度 伸び サンプル フィラメント種 直径 弾性率 処職 A 処職 B
(N) (%) (Aim) (GPa)
1 ― 7 109.8 A- 1 B— 1 1078 3.6
2 —— 7 109.8 A— 2 なし 1000 3.8
3 —— 7 109.8 A— 2 B-2 1029 3.7
A 高強度 7 91.8 A- 1 B— 1 1029 4.4
B 高強度 7 91.8 A 2 なし 960 4.4
C 高^ JS 7 91.8 A— 2 B-2 980 4.3
D 6.5 91.8 A— 3 B— 1 1039 4.4
E Eガラス 7 86.1 A- 1 B- 1 666 3.9
[0092] 表 6に示すように、サンプル 1〜3の引張強度は、 Eガラスフィラメントを用いたサンプ ル Eに比べて大幅に大きくなり、高強度ガラスフィラメントを用いたサンプル A〜Dと同 程度以上となった。また、サンプル 1〜3の破断伸びは、サンプル A〜E、特に高強度 ガラスフィラメントを用いたサンプル A〜D、に比べて大きく低減できた。
[0093] (実施例 4)
実施例 1〜3において作製したサンプル 1〜3を、それぞれ長さ 40mmに切断した 後、以下の表 7に示す糸且成を有するシート状(サイズ 30mm X40mm、厚さ lmm)の マトリクスゴム前駆体 C 1の表面に、各サンプルの長さ方向と前駆体の長辺方向と がー致するように、それぞれ配置した。各サンプルは、前駆体の表面における短辺方 向の幅 25mmの範囲に、隣り合うサンプルが互いに平行になるように隙間なく配置し た。
[0094] [表 7]
マトリクスゴム前馬区 !^
H-NBR:日本ゼ才ン tt¾J、 Zetpol 2020
H-NBR/ZDMA:日本ゼ才ン 、 Zeoforte ZSC2295
カーボンブラック: HAFゲレ-ド (繊-本' m ' "スト 3)
1, 3-ビス(t -プチルパー才キシイソプロピル)ベンゼン:ハーキュレス社製、 Vu l-kup40KE 次に、各サンプルを表面に配置した前駆体 C—1を、その両面から 150°Cで 30分 間熱プレスした。前駆体 C 1は、その成分として加硫剤を含むため、熱プレスにより 加硫されたマトリクスゴムとなり、補強用コードが埋め込まれたゴムサンプルを作製で
きた。
[0096] 次に、上記のように作製したゴムサンプルについて、マトリクスゴムの端部と、マトリク スゴムにおける当該端部とは反対側の端部力も露出しているコードの端部とを、それ ぞれ別個のクリップに固定し、当該クリップを互いに逆方向に引っ張ることで、コード とマトリクスゴムとを機械的に分離させ、破壊する試験 (破壊試験)を行った。破壊試 験の結果を以下の表 8に示す。
[0097] なお、この試験における破壊形態の評価は、以下の 3つのカテゴリーに分類するこ とにより行った。カテゴリー 3からカテゴリー 1の順に、補強用コードとマトリクスゴムとの 接着性がより良好であることを示す。
[0098] カテゴリー 1「ゴム破壊」一補強用コードとマトリクスゴムとの接着界面に変化がなぐ マトリクスゴムの内部で破壊が生じている。補強用コードとマトリクスゴムとの接着性が 良好であることを示す。
[0099] カテゴリー 2「部分ゴム破壊」—補強用コードとマトリクスゴムとの接着界面部分で剥 離が生じており、マトリクスゴムの内部にも破壊が見られる。補強用コードとマトリクスゴ ムとの接着性が、上記「ゴム破壊」と以下の「界面剥離」との中間であることを示す。
[0100] カテゴリー 3「界面剥離」—補強用コードとマトリクスゴムとの接着界面部分で剥離が 生じている力 マトリクスゴムの内部に目立った破壊は見られない。補強用コードとマ トリタスゴムとの接着性が劣ることを示す。
[0101] 破壊形態の評価は、以降の実施例および比較例においても同様に行った。
[0102] (実施例 5)
マトリクスゴム前駆体として、表 7に示す組成を有する前駆体 C— 2を用い、熱プレス の条件を 160°C、 30分間とした以外は、実施例 4と同様にして、補強用コードが埋め 込まれたゴムサンプルを作製した。
[0103] 上記のように作製したゴムサンプルについて、実施例 4と同様に破壊試験を行った
。その結果を以下の表 8に示す。
[0104] (比較例 6)
補強用コードとして、サンプル A〜Eを用いた以外は、実施例 4と同様にして、補強 用コードが埋め込まれたゴムサンプルを作製した。
[0105] 上記のように作製したゴムサンプルにつ ヽて、実施例 4と同様に、破壊試験を行つ た。結果を以下の表 8に示す。
[0106] (比較例 7)
補強用コードとして、サンプル A〜Eを用いた以外は、実施例 5と同様にして、補強 用コードが埋め込まれたゴムサンプルを作製した。
[0107] 上記のように作製したゴムサンプルにつ ヽて、実施例 4と同様に、破壊試験を行つ た。結果を以下の表 8に示す。
[0108] (実施例 6)
実施例 1〜3において作製したサンプル 1〜3を、それぞれ長さ 200mmに切断した 後、表 7に示す組成を有するシート状(サイズ 200mm X 10mm,厚さ lmm)のマトリ タスゴム前駆体 C 1の表面に、各サンプルの長さ方向と前駆体の長辺方向とがー 致するように、それぞれ配置した。各サンプルは、前駆体の表面における短辺方向の 幅 10mmの範囲に、隣り合うサンプルが互いに平行になるように 2本配置した 次に、実施例 4と同様に熱プレスを行い、補強用コードが埋め込まれたゴムサンプ ルを作製した。
[0109] 上記のように作製したゴムサンプルにつ 、て、負荷を 5kgとした屈曲試験を実施し、 試験の前後における各ゴムサンプルの強度を各々測定して、ゴムサンプルの強度保 持率を評価した。強度保持率は、ゴムサンプルの耐屈曲疲労特性を反映すると考え られる。屈曲試験は、直径 10mmのローラーを移動距離 100mmおよび周期 20Hz で往復運動させることによりゴムサンプルを屈曲させて行い、試験条件は、 120°C環 境下 24時間とした。強度保持率は、試験前の各ゴムサンプルの強度を Sa、試験後 の各ゴムサンプルの強度を Sbとして、強度保持率 = (Sa - Sb) /Sa X 100 (%) (D 式により求めた。
[0110] 強度保持率の結果を以下の表 8に示す。
[0111] (実施例 7)
マトリクスゴム前駆体として、表 7に示す組成を有する前駆体 C— 2を用い、熱プレス の条件を 160°C、 30分間とした以外は、実施例 6と同様にして、補強用コードが埋め 込まれたゴムサンプルを作製した。
[0112] 上記のように作製したゴムサンプルについて、実施例 6と同様に、強度保持率を求 めることにより耐屈曲疲労特性を評価した。結果を以下の表 8に示す。
[0113] (比較例 8)
補強用コードとして、サンプル A〜Eを用いた以外は、実施例 6と同様にして、補強 用コードが埋め込まれたゴムサンプルを作製した。
[0114] 上記のように作製したゴムサンプルについて、実施例 6と同様に、強度保持率を求 めることにより耐屈曲疲労特性を評価した。結果を以下の表 8に示す。
[0115] (比較例 9)
補強用コードとして、サンプル A〜Eを用いた以外は、実施例 7と同様にして、補強 用コードが埋め込まれたゴムサンプルを作製した。
[0116] 上記のように作製したゴムサンプルについて、実施例 6と同様に、強度保持率を求 めることにより耐屈曲疲労特性を評価した。結果を以下の表 8に示す。
[0117] [表 8]
表 8に示すように、サンプル 1とマトリクスゴム C 2との組み合わせでは、破壊試験 において界面剥離が確認された。しかし、この組み合わせと同様の被覆層を有する
サンプル Aとマトリクスゴム C— 2との組み合わせに比べると、その強度保持率を向上 できた。
[0119] 同様に全ての組み合わせにおいて、サンプル A〜Eを用いた場合に比べて、サン プル 1〜3を用いたゴムサンプルの強度保持率を向上できた。
[0120] 本発明は、その意図および本質的な特徴力 逸脱しない限り、他の実施形態に適 用しうる。この明細書に開示されている実施形態は、あらゆる点で説明的なものであ つてこれに限定されない。本発明の範囲は、上記説明ではなく添付したクレームによ つて示されており、クレームと均等な意味および範囲にあるすベての変更はそれに含 まれる。
産業上の利用可能性
[0121] 本発明によれば、 Eガラス繊維や高強度ガラス繊維を備える従来のゴム補強用コー ドに比べて、高負荷での使用により耐えうるゴム補強用コードと、それを用いたゴムべ ルトとを提供できる。