新規カルボニル還元酵素、その遺伝子、およびその利用法
技術分野
[0001] 本発明は、下記式(1) :
[0002] [化 9]
[0003] で表される 3 ォキソ 3 フエ-ルプロパン-トリルを不斉的に還元して、下記式 (2) [0004] [化 10]
[0005] で表される (R)—3—ヒドロキシ— 3—フエ-ルプロパン-トリルを生成する活性を有 する微生物より単離された、該活性を有するポリペプチド (カルボニル還元酵素)、該 ポリペプチドをコードする DNA、該 DNAを含むベクター、および該ベクターで形質 転換された形質転換体に関する。
[0006] 本発明はまた、該ポリペプチド、または、該形質転換体を用いた、光学活性アルコ ール類、とりわけ前記式 (2)で表される(R)—3 ヒドロキシ一 3 フエ-ルプロパン- トリルの製造法に関する。
[0007] (R)— 3 ヒドロキシ— 3 フエ-ルプロパン-トリルは、 j8—アドレナリン受容体遮 断薬等の医薬品の中間体として有用な化合物である。 関連出願の相互参照
[0008] 曰本国特許 2004— 312365号(2004年 10月 27曰出願)の明細書、請求の範囲 、図面および要約を含む全開示内容は、これら全開示内容を参照することによって 本出願に合体される。
背景技術
[0009] 光学活性 3 ヒドロキシ 3—フエ-ルプロパン-トリルの製造法としては、 1)光学 活性な前駆物質から誘導する方法 (特許文献 1、特許文献 2)、 2)リパーゼ等の加水 分解酵素を用いて、 3—ヒドロキシ— 3—フエ-ルプロパン-トリルのラセミ体を光学分 割する方法 (特許文献 3、非特許文献 2)、 3)不斉配位子の存在下、金属触媒を用い てべンズアルデヒドとァセトニトリルを縮合する方法 (非特許文献 3)、 4)不斉配位子 または不斉触媒の存在下、 3—ォキソ—3—フエ-ルプロパン-トリルのカルボ-ル基 を還元する方法 (特許文献 4、非特許文献 4)、 5)微生物を用いて 3—ォキソ 3—フ ェニルプロパン二トリルのカルボ二ル基を還元する方法 (非特許文献 5、非特許文献 6)等が知られている。
非特許文献 1 : Bulletin of the Korean Chemical Society, 23, 1693 (2002)
非特許文献 2 : Advanced Synthesis & Catalysis, 344, 947 (2002)
非特許文献 3 : Organic Letters, 5, 3147 (2003)
非特許文献 4 : Tetrahedron:Asymmetry, 3, 677 (1992)
非特許文献 5 : Tetrahedron:Asymmetry, 11, 3693 (2000)
非特許文献 6 : Organic Letters, 1, 1879 (1999)
特許文献 1:米国特許出願公開第 2004Z110985号公報
特許文献 2:特開平 5— 92946号公報
特許文献 3:特表 2004— 520039号公報
特許文献 4:特開 2003 - 201269号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0010] 上記文献に開示されている方法のうち、上記 1)は高価な前駆物質を必要とする、 2 )は理論収率が 50%であるため原料の半分が無駄となる、 3)および 4)は高価な不 斉配位子あるいは不斉触媒を必要とする、 5)は反応容積あたりの生産性が低い、な
どの欠点をそれぞれ有し、 V、ずれも経済的な製造方法とは言 、難!/、。
[0011] 上記に鑑み、本発明は、(R)— 3 ヒドロキシ— 3 フエ-ルプロパン-トリルの製造 において有用なポリペプチド、該ポリペプチドをコードする DNA、該 DNAを含むベ クタ一、および該ベクターで形質転換された形質転換体を提供することを課題とする
[0012] また、本発明は、該ポリペプチド、または、該形質転換体を用いた、 (R) 3 ヒドロ キシー3—フエ-ルプロパン-トリルを始めとする種々の光学活性アルコールの効率 的な製造方法を提供することを課題とする。
課題を解決するための手段
[0013] 本発明者らは、 3—ォキソ—3 フエ-ルプロパン-トリルを不斉的に還元し、 (R)
3—ヒドロキシ 3 フエ-ルプロパン-トリルを生成する活性を有する微生物より 該活性を有するポリペプチドを単離した。さらに、該ポリペプチドをコードする DNAを 単離し、これを利用して、該ポリペプチドを高生産する形質転換体を創製することに 成功した。そして、該ポリペプチドまたは該形質転換体を利用することにより、 (R)—3 -ヒドロキシ - 3—フエ-ルプロパン-トリルを始めとする種々の有用な光学活性アル コールを効率良く製造することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至つ た。
[0014] 即ち、本発明の一つの特徴は、 3—ォキソ—3 フエ-ルプロパン-トリルを不斉的 に還元して、(R)— 3—ヒドロキシ 3—フエ-ルプロパン-トリルを生成する活性を有 するポリペプチドである。また、本発明の別の特徴は、該ポリペプチドをコードする D NAである。また、本発明の別の特徴は、該 DNAを含むベクターである。また、本発 明の別の特徴は、該ベクターを含む形質転換体である。さら〖こ、本発明の別の特徴 は、該ポリペプチドまたは該形質転換体を用いた、(R)—3—ヒドロキシー3—フエ- ルプロパン-トリルを始めとする光学活性アルコール類の製造方法である。 発明の効果
[0015] 本発明により、 (R)—3 ヒドロキシ一 3—フエ-ルプロパン-トリルを始めとする、有 用な光学活性アルコール類の実用的な製造方法が提供される。
図面の簡単な説明
[0016] [図 1]組換えベクター pNTCMGlの作製法および構造を示す
発明を実施するための最良の形態
[0017] 以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書において記述されている、 DNAの単離、ベクターの調製、形質転換等の 遺伝子操作は、特に明記しない限り、 Molecular Cloning 2nd Edition (Cold Spring Ha rbor Laboratory Press,1989)等の成書に記載されている方法により実施できる。また 、本明細書の記述に用いられる%は、特に断りのない限り、%(wZv)を意味する。
[0018] 1.ポリペプチド及びその起源
本発明のポリペプチドは、 3—ォキソー3—フエ-ルプロパン-トリルを不斉的に還 元し、 (R) 3—ヒドロキシー 3—フエ-ルプロパン-トリルを生成する活性を有するポ リペプチドである。このようなポリペプチドは、当該活性を有する微生物から単離する ことができる。本発明のポリペプチドの起源となる微生物は、特に限定されないが、例 えばキャンディダ (Candida)属に属する酵母が挙げられ、特に好ましいものとしてはキ ヤンデイダ'マグノリエ(Candida magnoliae) NBRC0661株を挙げることができる。当 該微生物は、独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部 生物 遺伝資源部門(NBRC : τ 292-0818 千葉県木更津巿かずさ鎌足 2-5-8)より入手す ることがでさる。
[0019] 本発明のポリペプチドの起源となる微生物を培養するための培地としては、その微 生物が増殖する限り、通常の、炭素源、窒素源、無機塩類、有機栄養素などを含む 液体栄養培地を用いることができる。
[0020] 2.ポリペプチドの単離
本発明のポリペプチドの起源となる微生物力もの該ポリペプチドの単離は、通常公 知の蛋白質精製法を適当に組み合わせて用いることにより実施できる。例えば、以下 のように実施できる。まず、当該微生物を適当な培地で培養し、培養液から遠心分離 、あるいは、濾過により菌体を集める。得られた菌体を、超音波破砕機、あるいは、グ ラスビーズ等を用いた物理的手法で破砕した後、遠心分離にて菌体残さを除き、無 細胞抽出液を得る。そして、塩析 (硫酸アンモ-ゥム沈殿、リン酸ナトリウム沈殿など) 、溶媒沈殿 (アセトンまたはエタノールなどによる蛋白質分画沈殿法)、透析、ゲル濾
過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、限外濾 過等の手法を単独で、または組み合わせて用いることにより、該無細胞抽出液から本 発明のポリペプチドを単離する。
[0021] 3.還元反応
3—ォキソ—3—フエ-ルプロパン-トリルを還元する活性は、例えば、 0. 33% (V /v)のジメチルスルホキシドを含む lOOmMリン酸緩衝液(pH6. 5)〖こ、 0. 5mMの 基質 3—ォキソ—3—フエ-ルプロパン-トリル、 0. 25mMの補酵素 NADPH、およ び粗酵素を添加し、 30°Cで 1分間反応させた際の、波長 340nmにおける吸光度の 減少速度力 算出できる。
[0022] また、上記反応において生成した、 3—ヒドロキシ— 3—フエ-ルプロパン-トリルの 光学純度の測定は、キヤビラリーガスクロマトグラフィー(カラム: CHIRALDEX G— ΤΑ ( Ο. 25mm X 20m;東京化成工業株式会社製)、カラム温度: 130°C、キャリア ガス:ヘリウム( 150kPa)、検出: FID)を用 、て実施できる。
[0023] 4. DNA
本発明の DNAは、上述の本発明のポリペプチドをコードする DNAであり、後述す る方法に従って導入された宿主細胞内で該ポリペプチドを発現し得るものであれば いかなるものでもよぐ任意の非翻訳領域を含んでいてもよい。該ポリペプチドが取得 できれば、該ポリペプチドの起源となる微生物より、当業者であれば公知の方法で、 このような DNAを取得できる。例えば、以下に示した方法で取得できる。
[0024] まず、単離された本発明のポリペプチドを適当なエンドべプチダーゼを用いて消化 し、生じたペプチド断片を逆相 HPLCにより分取する。そして、例えば、 ABI492型プ 口ティンシークェンサ一(Applied Biosystems社製)により、これらのペプチド断片 のアミノ酸配列の一部または全部を決定する。
[0025] このようにして得られたアミノ酸配列情報をもとにして、該ポリペプチドをコードする D NAの一部を増幅するための PCR (Polymerase Chain Reaction)プライマーを合成す る。次に、通常の DNA単離法、例えば、 Visser等の方法(Appl. Microbiol. Biotechn ol., 53, 415 (2000))により、該ポリペプチドの起源となる微生物の染色体 DNAを調製 する。この染色体 DNAを铸型として、先述の PCRプライマーを用いて PCRを行い、
該ポリペプチドをコードする DNAの一部を増幅し、その塩基配列を決定する。塩基 配列の決定は、例えば、 ABI373A型 DNA Sequencer (Applied Biosystem s社製)等を用いて行うことができる。
[0026] 該ポリペプチドをコードする DNAの一部の塩基配列が明らかになれば、例えば、 i — PCR法(Nucl. Acids Res., 16, 8186 (1988))によりその全体の配列を決定すること ができる。
[0027] このようにして得られる本発明の DNAの例としては、配列表の配列番号 1に示す塩 基配列を含む DNAを挙げることができる。また、配列表の配列番号 1に示す塩基配 列と相補的な塩基配列力もなる DNAと、ストリンジェントな条件下でノヽイブリダィズす る DNAであって、かつ、 3—ォキソ—3—フエ-ルプロパン-トリルを不斉的に還元し 、 (R) 3—ヒドロキシー3—フエ-ルプロパン-トリルを生成する活性を有するポリべ プチドをコードする DNAも本発明の DNAに包含される。
[0028] 配列表の配列番号 1に示す塩基配列と相補的な塩基配列からなる DNAと、ストリン ジェントな条件下でハイブリダィズする DNAとは、コ口-一'ハイブリダィゼーシヨン法 、プラーク 'ハイブリダィゼーシヨン法、あるいはサザンノヽイブリダィゼーシヨン法等を 実施した際、配列表の配列番号 1に示す塩基配列と相補的な塩基配列からなる DN A力 特異的にハイブリッドを形成する DNAを言う。
[0029] ここで、ストリンジェントな条件とは、例えば、 75mMクェン酸三ナトリウム、 750mM 塩化ナトリウム、 0. 5%ドデシル硫酸ナトリウム、 0. 1%ゥシ血清アルブミン、 0. 1%ポ リビュルピロリドン、および、 0. l%Ficoll 400 (アマシャムバイオサイエンス株式会 社製)の組成からなる水溶液中、 65°Cでハイブリダィズさせた後に、 15mMクェン酸 三ナトリウム、 150mM塩化ナトリウム、および 0. 1%ドデシル硫酸ナトリウムの組成か らなる水溶液を用いて、 60°Cで洗浄が行われる条件を言う。好ましくは、上記条件で ハイブリダィズさせた後に、 15mMクェン酸三ナトリウム、 150mM塩化ナトリウム、お よび 0. 1%ドデシル硫酸ナトリウムの組成力もなる水溶液を用いて、 65°Cで洗浄が 行われる条件であり、より好ましくは、 1. 5mMクェン酸三ナトリウム、 15mM塩ィ匕ナト リウム、および 0. 1%ドデシル硫酸ナトリウムの組成力もなる水溶液を用いて、 65°Cで 洗浄が行われる条件である。
[0030] 5.ポリペプチド
本発明のポリペプチドの例としては、配列表の配列番号 1に示す塩基配列によって コードされる、配列表の配列番号 2に示すアミノ酸配列力 なるポリペプチドを挙げる ことができる。
[0031] また、配列表の配列番号 2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドと一定値以上 の相同性を有し、かつ、 3—ォキソ—3—フエ-ルプロパン-トリルを不斉的に還元し 、 (R) 3—ヒドロキシー3—フエ-ルプロパン-トリルを生成する活性を有するポリべ プチドは、当該ポリペプチドと機能的に同等であり、本発明に含まれる。
[0032] ここで配列の相同性は、例えば、相同性検索プログラム FASTA (W.R. Pearson & D.J. Lipman P.N.A.S. (1988) 85:2444-2448)を用いて 2つのアミノ酸配列を比較解析 した場合に、配列全体に対する Identityの値で表される。配列表の配列番号 2に示 すアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等なポリペプチドとしては、当該ポリペプチド との相同性が 70%以上、好ましくは 80%以上、より好ましくは 90%以上であるポリべ プチドを挙げることができる。
[0033] このようなポリペプチドは、例えば、先述の、配列表の配列番号 1に示す塩基配列と 相補的な塩基配列力 なる DNAとストリンジヱントな条件下でハイブリダィズする DN Aを、適当なベクターに連結した後、適当な宿主細胞に導入して発現させることにより 得りれ 。また、例 ば、し urrent Protocols in Molecular Biology (John Wiley and Son s, Inc., 1989)等に記載の公知の方法に従い、配列表の配列番号 2に示すアミノ酸配 列からなるポリペプチドに、アミノ酸の置換、挿入、欠失または付加を生じさせることに よっても取得できる。 3—ォキソ—3—フエ-ルプロパン-トリルを不斉的に還元し、 ( R)— 3—ヒドロキシ— 3—フエ-ルプロパン-トリルを生成する活性が顕著に失われ ない限り、上記ポリペプチドにおいて、置換、挿入、欠失または付加するアミノ酸の個 数は限定されないが、例えば 20アミノ酸以下、好ましくは、 5個以下、さらに好ましく は 2または 1個である。
[0034] 6.ベクター及び形質転換体
本発明の DNAを宿主微生物内に導入し、導入された宿主微生物内で発現させる ために用いられるベクターは、適当な宿主微生物内で当該 DNAがコードする遺伝
子を発現できるものであれば、特に限定されない。このようなベクターとしては、例え ば、プラスミドベクター、ファージベクター、コスミドベクターなどが挙げられ、さらに、 他の宿主株との間での遺伝子交換が可能なシャトルベクターも使用できる。
[0035] このようなベクターは、通常、 lacUV5プロモーター、 trpプロモーター、 trcプロモー ター、 tacプロモーター、 lppプロモーター、 tufBプロモーター、 recAプロモーター、 p Lプロモーター等の制御因子を含み、本発明の DNAと作動可能に連結された発現 単位を含む発現ベクターとして好適に使用できる。例えば、 pUCNT (国際公開第 W O94Z03613号公報)が好適に使用できる。
[0036] 本明細書で用いる用語「制御因子」は、機能的プロモーター及び、任意の関連する 転写要素(例えばェンハンサー、 CCAATボックス、 TATAボックス、 SPI部位など) を有する塩基配列をいう。
[0037] 本明細書で用いる用語「作動可能に連結」は、遺伝子の発現を調節するプロモー ター、ェンノヽンサ一等の種々の調節エレメントと遺伝子力 宿主細胞中で作動し得る 状態で連結されることをいう。制御因子のタイプ及び種類力 宿主に応じて変わり得 ることは、当業者に周知の事項である。
[0038] 本発明の発現ベクターの例としては、 pUCNTに配列番号 1に示す DNAを導入し た、後述する pNTCMを挙げることができる。
[0039] 本発明の DNAを含むベクターを導入する宿主細胞としては、細菌、酵母、糸状菌 、植物細胞、動物細胞などが挙げられるが、導入及び発現効率から細菌が好ましぐ 大腸菌が特に好ましい。本発明の DNAを含むベクターは、公知の方法により宿主細 胞に導入できる。宿主細胞として大腸菌を用いる場合、例えば、市販の E. coli HB 101コンビテントセル (タカラバイオ社製)を用いることにより、当該ベクターを宿主細 胞に導入できる。
[0040] 本発明の形質転換体の例としては、後述する E. coli HBlOl (pNTCM) FERM
BP— 10418が挙げられる。この形質転換体は、前記の受託番号にて、 2005年 9 月 26日付けで独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(干 305-8 566 茨城県つくば巿東 1 1 1 中央第 6)に寄託されている。(原寄託日 2003年 10月 23日の国内寄託株を、ブダペスト条約に基づく国際寄託に移管)。
[0041] 7.補酵素再生能を有するポリペプチド
本発明のポリペプチド、カルボ二ル基を有する化合物、および、 NADPH等の補酵 素を接触せしめ、反応させること〖こより、当該カルボ-ル基を有する化合物を不斉的 に還元し、光学活性アルコール類を製造することができる。この時、当該反応の進行 に伴い、 NADPH等の補酵素は酸ィ匕型に変換される。しかし、この酸化型の補酵素 を還元型に変換する能力(以後、補酵素再生能と呼ぶ)を有するポリペプチド、およ び、当該ポリペプチドの基質となる化合物を、本発明のポリペプチドと共存させて当 該反応を行うことにより、高価な補酵素の使用量を大幅に削減できる。補酵素再生能 を有するポリペプチドとしては、例えば、ヒドロゲナーゼ、ギ酸脱水素酵素、アルコー ル脱水素酵素、アルデヒド脱水素酵素、グルコース 6—リン酸脱水素酵素およびグ ルコース脱水素酵素などを使用できる。好適には、グルコース脱水素酵素が使用さ れる。
[0042] 8.形質転換体の使用
本発明のポリペプチドのかわりに、該ポリペプチドをコードする DNAを含む形質転 換体を使用しても、同様に光学活性アルコール類を製造することができる。また、本 発明のポリペプチドをコードする DNA、および、補酵素再生能を有するポリペプチド をコードする DNAの両者を含む形質転換体を使用しても、同様に光学活性アルコ 一ル類を製造することができる。とりわけ、本発明のポリペプチドをコードする DNA、 および、補酵素再生能を有するポリペプチドをコードする DNAの両者を含む形質転 換体を使用した場合には、補酵素を再生するための酵素を別途調製 ·添加する必要 力 ぐ光学活性アルコール類の製造をより効率良く行うことができる。
[0043] なお、本発明のポリペプチドをコードする DNAを含む形質転換体、若しくは、本発 明のポリペプチドをコードする DNAおよび補酵素再生能を有するポリペプチドをコー ドする DNAの両者を含む形質転換体は、培養菌体は言うまでもなぐその形質転換 体の処理物としても光学活性アルコール類の製造に使用することができる。ここで言 う「形質転換体の処理物」とは、例えば、界面活性剤や有機溶媒で処理した細胞、乾 燥細胞、破砕処理した細胞、細胞の粗抽出液、またはそれらの混合物等のほか、公 知の手段 (例えば、架橋法、物理的吸着法、包括法など)でそれらを固定ィ匕した固定
化菌体を意味する。
[0044] 本発明のポリペプチドをコードする DNA、および、補酵素再生能を有するポリぺプ チドをコードする DNAの両者を含む形質転換体は、本発明のポリペプチドをコード する DNA、および、補酵素再生能を有するポリペプチドをコードする DNAの両者を 、同一のベクターに組み込み、これを宿主細胞に導入することにより得られるほ力、こ れら 2種の DNAを不和合性グループの異なる 2種のベクターにそれぞれ組み込み、 それら 2種のベクターを同一の宿主細胞に導入することによつても得られる。
[0045] 本発明のポリペプチドをコードする DNA及び補酵素再生能を有するポリペプチド をコードする DNAの両者が組込まれたベクターの例としては、前記発現ベクター pN TCMにバシラス ·メガテリゥム由来のダルコース脱水素酵素遺伝子を導入した、後述 する pNTCMGlが挙げられる。また、本発明のポリペプチドをコードする DNA、およ び、補酵素再生能を有するポリペプチドをコードする DNAの両者を含む形質転換体 の例としては、当該ベクターで E. coli HB101を形質転換して得られる、後述する E . coli HBlOl (pNTCMGl)が挙げられる。
[0046] 本発明のポリペプチドをコードする DNAを含む形質転換体の培養、および、本発 明のポリペプチドをコードする DNAと補酵素再生能を有するポリペプチドをコードす る DNAの両者を含む形質転換体の培養は、それらが増殖する限り、通常の、炭素源 、窒素源、無機塩類、有機栄養素などを含む液体栄養培地を用いて実施できる。
[0047] 形質転換体中の補酵素再生能を有するポリペプチドの活性は、常法により測定す ることができる。例えば、グルコース脱水素酵素の活性は、 1Mのトリス塩酸緩衝液 (p H8. 0)に、 lOOmMのグルコース、 2mMの補酵素 NADPまたは NAD、および酵素 を添加し、 25°Cで 1分間反応させた際の、波長 340nmにおける吸光度の増加速度 から算出できる。
[0048] 9.光学活性アルコール類の製造
本発明のポリペプチド、又は、該ポリペプチドをコードする DNAを含む形質転換体 のいずれかを用いた光学活性アルコール類の製造は、適当な溶媒中に、基質となる カルボ二ル基を有する化合物、 NADPH等の補酵素、及び、本発明のポリペプチド 又は該ポリペプチドをコードする DNAを含む形質転換体を添加し、 pH調整下、攪拌
すること〖こより実施できる。
[0049] 一方、本発明のポリペプチドと補酵素再生能を有するポリペプチドを組み合わせて 反応を行う場合は、上記反応組成に、補酵素再生能を有するポリペプチド (例えば、 グルコース脱水素酵素)と、その基質となる化合物(例えば、グルコース)をさらに添 加する。なお、後者の場合においても、本発明のポリペプチドをコードする DNAと補 酵素再生能を有するポリペプチド (例えば、グルコース脱水素酵素)をコードする DN Aの両者を含む形質転換体、または、その処理物を用いる場合は、補酵素再生能を 有するポリペプチド (例えば、グルコース脱水素酵素)を別途添加する必要はな 、。
[0050] 反応には水系溶媒を用いてもよいし、水系と有機系の溶媒を混合して用いてもよい 。有機系溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸ェチル、酢酸 n—ブチル、へキサン、 イソプロパノール、ジイソプロピルエーテル、メタノール、アセトン、ジメチルスルホキシ ド等が挙げられる。反応は 10°C〜70°Cの温度で行われ、反応液の pHは 4〜10に維 持する。反応は、バッチ方式あるいは連続方式で実施できる。バッチ方式の場合、反 応基質は 0. 1%から 70% (w/v)の仕込み濃度で添加される。
[0051] 10.基質及び生成物
基質となるカルボ二ル基を有する化合物としては、例えば、下記式(1):
[0052] [化 11]
[0053] で表される 3—ォキソー3—フエ-ルプロパン-トリル、下記式(3):
[0054] [化 12]
(3 )
[0055] で表される 4 クロロー 3 ォキソ酪酸ェチル、下記式(5):
[0056] [化 13]
[0059] で表される (S) 6 ベンゾィルォキシ 5 ヒドロキシ 3—ォキソへキサン酸 tert ブチル等が挙げられる力 上述の反応条件において還元され、光学活性アルコー ルに変換されるものであれば、特に限定されない。
[0060] 上述の反応条件において、前記式(1)で表される 3 ォキソ 3 フ ニルプロパ ン-トリルを基質とした場合、下記式 (2):
[0061] [化 15]
[0062] で表される (R)—3—ヒドロキシ— 3—フエ-ルプロパン-トリルが得られる。前記式(3
)で表される 4 クロロー 3—ォキソ酪酸ェチルを基質とした場合、下記式 (4):
[0063] [化 16]
(4)
[0064] で表される (S) 4 クロロー 3—ヒドロキシ酪酸ェチルが得られる。前記式(5)で表 される 2 クロ口一 1— (3'—クロ口フエ-ル)エタノンを基質とした場合、下記式 (6): [0065] [化 17]
[0066] で表される(R)—2—クロ口一 1— (3'—クロ口フエ-ル)エタノールが得られる。また、 前記式(7)で表される(S)— 6—ベンゾィルォキシ 5—ヒドロキシ 3—ォキソへキ サン酸 tert ブチルを基質とした場合、下記式 (8):
[0067] [化 18]
[0068] で表される(3R, 5S)— 6 ベンゾィルォキシ 3, 5 ジヒドロキシへキサン酸 tert— ブチルが得られる。
[0069] 11.精製および分析
反応で生じた光学活性アルコール類は、常法により精製できる。例えば、反応で生 じた光学活性アルコール類を含む反応液を、酢酸ェチル、トルエン等の有機溶媒で 抽出し、有機溶媒を減圧下で留去した後、蒸留、再結晶、または、クロマトグラフィー 等の処理を行うことにより、精製できる。
[0070] 3—ォキソ 3—フエ-ルプロパン-トリル、および、(R)—3—ヒドロキシ一 3—フエ -ルプロパン-トリルの定量、さらに、(R)— 3—ヒドロキシ 3—フエ-ルプロパン-ト リルの光学純度の測定は、キヤビラリーガスクロマトグラフィー(カラム: CHIRALDEX
G— TA(IDO. 25mm X 20m;東京化成工業株式会社製)、カラム温度: 130°C、 キャリアガス:ヘリウム(150kPa)、検出: FID)を用いて行うことができる。
[0071] 4 クロロー 3 ォキソ酪酸ェチル、および、(S)— 4 クロロー 3 ヒドロキシ酪酸ェ チルの定量は、ガスクロマトグラフィー(カラム: PEG— 20M Chromosorb WAW DMCS 10% 80/100 mesh (ID3mm X lm;ジーエルサイエンス株式会社 製)、カラム温度: 150°C、キャリアガス:窒素、検出: FID)を用いて行うことができる。 また、(S)— 4 クロロー 3—ヒドロキシ酪酸ェチルの光学純度の測定は、高速液体ク 口マトグラフィー(カラム: Chiralcel OB (ID4. 6mm X 250mm;ダイセル化学工業 社製)、溶離液: n—へキサン Zイソプロパノール = 9Zl、流速: 0. 8mlZmin、検 出: 215nm、カラム温度:室温)を用いて行うことができる。
[0072] 2 クロ口一 1— (3,一クロ口フエ-ル)エタノン、および、(R)— 2 クロ口一 1— (3, クロ口フエ-ル)エタノールの定量は、高速液体クロマトクロマトグラフィー(カラム: 株式会社ヮイエムシィ製 YMC— Pack ODS A— 303 (ID4. 6mm X 250mm) , 溶離液:水 Zァセトニトリル = 1Z1、流速: lmlZmin、検出: 210nm、カラム温度: 室温)を用いて行うことができる。また、(R)—2—クロ口一 1— (3,一クロ口フエ-ル) エタノールの光学純度の測定は、高速液体クロマトクロマトグラフィー(カラム:ダイセ ル化学工業株式会社製 Chiralcel OJ (ID4. 6mm X 250mm)、溶離液: n—へキ サン Zイソプロパノール = 39Zl、流速: lmlZmin、検出: 254nm、カラム温度:室 温)を用いて行うことができる。
[0073] (S) 6 ベンゾィルォキシ 5 ヒドロキシ 3—ォキソへキサン酸 tert ブチル 、および、(3R, 5S)— 6—ベンゾィルォキシ 3, 5—ジヒドロキシへキサン酸 tert— ブチルの定量、さらに、(3R, 5S)— 6—ベンゾィルォキシ 3, 5—ジヒドロキシへキ サン酸 tert ブチルのジァステレオマー過剰率の測定は、高速液体クロマトグラフィ 一(カラム: YMC— Pack ODS— A303 (ID4. 6mm X 250mm; YMC社製)、溶 離液:水 Zァセトニトリル = 1Z1、流速: lmlZmin、検出: 210nm、カラム温度:室
温)を用いて行うことができる。
[0074] 以上のように、本発明に従えば、本発明のポリぺフチドの効率的生産が可能であり 、それを利用することにより、(R)— 3—ヒドロキシ— 3—フエ-ルプロパン-トリルを始 めとする、有用な光学活性アルコール類の優れた製造法が提供される。
実施例
[0075] 以下、実施例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるもの ではない。なお、以下の実施例において用いた組み換え DNA技術に関する詳細な 操作方法などは、次の成書に記載されている:
Molecularし loning 2nd Edition (し old Spring Harbor Laboratory Press, 1989 J、 Current Protocols in Molecular Biology (Greene Publishing Associates and Wiley— Int erscience) 0
[0076] 施 ί列 i)ポリペプチド、の
以下の方法に従って、キャンディダ 'マグノリエ(Candida magnoliae) NBRC0661株 より、 3—ォキソ—3—フエ-ルプロパン-トリルを不斉的に還元して (R)— 3—ヒドロ キシー3—フエ-ルプロパン-トリルを生成する活性を有するポリペプチドを分離し、 単一に精製した。特に断りのない限り、精製操作は 4°Cで行った。
[0077] 3—ォキソ—3—フエ-ルプロパン-トリルに対する還元活性は、 0. 33% (vZv)の ジメチルスルホキシドを含む lOOmMリン酸緩衝液(pH6. 5)に、基質 3—ォキソ—3 ーフヱ-ルプロパン-トリルを終濃度 0. 5mM、補酵素 NADPHを終濃度 0. 25mM となるよう溶解し、さらに粗酵素液を添加して 30°Cで 1分間反応を行った際の、当該 反応液の波長 340nmにおける吸光度の減少速度力も算出した。本反応条件におい て、 1分間に: molの NADPHを NADPに酸化する活性を、 lunitと定義した。
[0078] (微生物の培養)
30Lジャーフアーメンター(丸菱バイオェンジ社製)に、グルコース 4%、イーストェ キス 0. 3%、リン酸-水素カリウム 0. 7%、リン酸水素-アンモ -ゥム 1. 3%、塩化ナ トリウム 0. 1%、硫酸マグネシウム '七水和物 0. 08%、硫酸亜鉛'七水和物 0. 006 %、硫酸第一鉄'七水和物 0. 009%、硫酸銅'五水和物 0. 0005%、硫酸マンガン •四〜六水和物 0. 001%、アデ力ノール LG— 109 (日本油脂株式会社製) 0. 01%
力もなる液体培地 18Lを調製し、 120°Cで 20分間蒸気殺菌をおこなった。
この培地に、予め同培地にて前培養しておいたキャンディダ.マグノリエ(Candida ma gnoliae) NBRC0661株の培養液を 180ml接種し、攪拌回転数 250rpm、通気量 5. ONL/min, 30°Cで、 30% (wZw)水酸化ナトリウム水溶液の滴下により下限 pHを 5. 5に調整しながら培養した。培養開始から 18時間後、 22時間後、 26時間後にそ れぞれ 55% (wZw)グルコース水溶液 655gを添カロし、 30時間培養を行った。
[0079] (無細胞抽出液の調整)
上記の培養液から遠心分離により菌体を集め、 0. 8%塩ィ匕ナトリウム水溶液を用い て菌体を洗浄した。この菌体を、 5mMの 13 メルカプトエタノールおよび 0. ImMの フッ化フエ-ルメタンスルホ -ルを含む lOOmMリン酸緩衝液(pH7. 0)に懸濁し、ダ イノミル(Willy A. Bachofen社製)で破砕した後、破砕物力も遠心分離にて菌体 残渣を除き、無細胞抽出液 1900mlを得た。
[0080] (核酸の除去)
上記で得た無細胞抽出液に、 5%硫酸プロタミン水溶液を 100ml添加し、 1夜攪拌 後、遠心分離により沈殿を除去した。
[0081] (硫酸アンモニゥム分画)
上記で得た核酸除去後の粗酵素液の pHを、アンモニア水を用いて 7. 0に調整し た後、同 pHを維持しながら、 50%飽和となるように硫酸アンモ-ゥムを添加'溶解し 、生じた沈殿を遠心分離により除いた。先と同様に pH7. 0を維持しながら、この遠心 上清に 60%飽和となるよう、さらに硫酸アンモ-ゥムを添加'溶解し、生じた沈殿を遠 心分離により集めた。この沈殿を 10mMリン酸緩衝液 (pH7. 0)に溶解した後、同一 緩衝液で 1夜透析し、活性画分を得た。
[0082] (DEAE— TO YOPEARLカラムクロマトグラフィー)
硫酸アンモ-ゥム分画により得られた活性画分を、 10mMリン酸緩衝液 (pH7. 0) で予め平衡化した DEAE—TOYOPEARL 650M (東ソ一株式会社製)カラム(40 Oml)に供し、活性画分を吸着させた。同一緩衝液でカラムを洗浄した後、 NaClのリ 二アグラジェント(OM力も 0. 5Mまで)により活性画分を溶出させた。活性画分^^ め、 10mMリン酸緩衝液 (pH7. 0)にて 1夜透析を行った。
[0083] (Blue sepharoseカラムクロマトグラフィー)
DEAE—TOYOPEARLカラムクロマトグラフィーにより得られた活性画分を、 10m Mリン酸緩衝液(pH7. 0)で予め平衡化した Blue sepharose CL— 6B (アマシャ ムノィォサイエンス株式会社製)カラム(50ml)に供し、活性画分を吸着させた。同一 緩衝液でカラムを洗浄した後、 NaClのリニアグラジェント(0Mから 1Mまで)により活 性画分を溶出させた。活性画分を集め、 10mMリン酸緩衝液 (pH7. 0)にて 1夜透 析を行った。
[0084] (2' , 5' -ADP sepharoseカラムクロマトグラフィー)
Blue sepharoseカラムクロマトグラフィーにより得られた活性画分を、 10mMリン 酸緩衝液(PH7. 0)で予め平衡化した 2,, 5,— ADP sepharose (アマシャムバイ ォサイエンス株式会社製)カラム(20ml)に供し、活性画分を吸着させた。同一緩衝 液でカラムを洗浄した後、 NaClのリニアグラジェント(0Mから 1Mまで)により活性画 分を溶出させた。活性画分を集め、 10mMリン酸緩衝液 (pH7. 0)にて 1夜透析を行 つた o
[0085] (HiTrap Phenyl HPカラムクロマトグラフィー)
2' , 5'— ADP sepharoseカラムクロマトグラフィーにより得られた活性画分に、終 濃度が 35%となるよう硫酸アンモ-ゥムを溶解し、 35%の硫酸アンモ-ゥムを含む 1 OmMリン酸緩衝液(pH7. 0)にて予め平衡化した HiTrap Phenyl HPカラム(ァ マシャムノィォサイエンス株式会社製)に供し、活性画分を吸着させた。同一緩衝液 でカラムを洗浄した後、硫酸アンモ-ゥムのリニアグラジェント(35%から 0%まで)に より活性画分を溶出させた。活性画分^^め、 10mMリン酸緩衝液 (pH7. 0)にて 1 夜透析を行い、ポリペプチドの精製標品を得た。
[0086] (実施例 2) 遣伝子のクローニング
(PCRプライマーの作成)
実施例 1で得られた精製ポリペプチドを 8M尿素存在下で変性した後、ァクロモバク ター由来のリシルエンドべプチダーゼ (和光純薬工業株式会社製)で消化し、得られ たペプチド断片のアミノ酸配列を ABI492型プロテインシーケンサー(パーキンエル マー社製)により決定した。このアミノ酸配列から予想される DNA配列に基づき、該
ポリペプチドをコードする遺伝子の一部を PCRにより増幅するためのプライマー 1 : 5 ' - cargarcaytaygtntggcc - 3 ' (配列表の配列番号 3)、および、プライマー 2 : 5,一 aty gcrtcnggrtadatcca- 3 ' (配列表の配列番号 4)を合成した。
[0087] (PCRによる遺伝子の増幅)
実施例 1と同様に培養したキャンディダ ·マグノリエ(Candida magnoliae) NBRC066 1株の菌体から Visser等の方法(Appl. Microbiol. BiotechnoL, 53, 415 (2000))に従 つて染色体 DNAを抽出した。次に、上記で調製した DNAプライマー 1および 2を用 い、得られた染色体 DNAを铸型として PCRを行ったところ、 目的遺伝子の一部と考 えられる約 0. 5kbpの DNA断片が増幅された。 PCRは、 DNAポリメラ一ゼとして Ta KaRa Ex Taq (タカラバイオ社製)を用いて行い、反応条件はその取り扱い説明書 に従った。この DNA断片を、プラスミド pT7Blue T— Vector (Novagen社製)にク ローニングし、 ABI PRISM Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit (Perkin Elmer社製)および ABI 373A DNA Sequencer (Pe rkin Elmer社製)を用 ヽてその塩基配列を解析した。その結果判明した塩基配列 を、配列表の配列番号 5に示した。
[0088] (i PCR法による目的遺伝子の全長配列の決定)
上記で調製したキャンディダ ·マグノリエ(Candida magnoliae) NBRC0661株の染 色体 DNAを、制限酵素 Pstlで完全消化し、得られた DNA断片の混合物を T4リガ ーゼにより分子内環化させた。これを铸型として用い、 i—PCR法 (Nucl. Acids Res., 16, 8186 (1988))により、上述の配列番号 5に示す塩基配列を含む遺伝子の全塩基 配列を決定した。その結果を配列表の配列番号 1に示した。 i PCRは、 DNAポリメ ラ一ゼとして TaKaRa LA Taq (タカラノィォ社製)を用いて行い、反応条件はその 取り扱い説明書に従った。また、配列番号 1に示した塩基配列がコードするアミノ酸 配列を配列番号 2に示した。
[0089] (実施例 3) 発現ベクターの構築
プライマー 3 : 5, - gtgcatatgtcttctcttcacgctcttg - 3 ' (配列表の配列番号 6)と、プラ イマ一 4 : 5 ― ggcgaattcttattaaacggtagagccattgtcg― 3 (目 il列表の目 ti列番号 7 Jを用 い、実施例 2で得たキャンディダ 'マグノリエ(Candida magnoliae) NBRC0661株の染
色体 DNAを铸型として PCRを行った。その結果、配列表の配列番号 1 に示す塩基配列からなる遺伝子の開始コドン部分に Ndel認識部位が付加され、か つ終始コドンの直後に EcoRI認識部位が付加された二本鎖 DNAを得た。 PCRは、 DNAポリメラ一ゼとして TaKaRa LA Taq (タカラバイオ社製)を用いて行い、反応 条件はその取り扱い説明書に従った。この DNAを Ndel及び EcoRIで消化し、プラス ミド pUCNT (国際公開第 WO94Z03613号公報)の lacプロモーターの下流の Nde I認識部位と EcoRI認識部位の間に挿入し、組換えベクター pNTCMを構築した。
[0090] (実施例 4) ダルコース脱水素酵素遣伝子をさらに含む発現ベクターの構築
プフ マ一 5 : 5 ― gccgaattctaaggaggttaacaatgtataaa— 3 (目己歹 U表の目 ΰ歹 U番号 8)と 、プライマー 6 : 3' - gcggtcgacttatccgcgtcctgcttgg- 5 ' (配列表の配列番号 9)を用い 、プラスミド pGDKl (Eur. J. Biochem., 186, 389 (1989))を铸型として PCRを行い、 バシラス'メガテリゥム(Bacillus megaterium) IAM1030株由来のグルコース脱水素 酵素(以後、 GDHと呼ぶ)遺伝子の開始コドンから 5塩基上流に大腸菌のリボゾーム 結合配列が、さらにその直前に EcoRI切断点が付加され、かつ、終止コドンの直後 に Sail切断点が付加された、二本鎖 DNAを取得した。得られた DNA断片を EcoRI および Sailで消化し、プラスミド pUCNT (国際公開第 WO94Z03613号公報)の la cプロモーターの下流の EcoRI認識部位と Sail認識部位の間に挿入し、組換えべク ター pNTGlを構築した。
[0091] 次に、配列表の配列番号 1に示す塩基配列からなる遺伝子の開始コドン部分に Nd el認識部位が付加され、かつ終始コドンの直後に EcoRI認識部位が付加された二本 鎖 DNAを、実施例 3と同様に調製し、これを上記の組換えベクター pNTGlの Ndel 認識部位と EcoRI認識部位の間に挿入して、組み換えプラスミド pNTCMG 1を構築 した。 pNTCMG 1の作製法および構造を図 1に示す。
[0092] (実施例 5) 形皙転椽体の作製
実施例 3で構築した組換えベクター pNTCMを用いて、 E. coli HB101コンビテ ントセル (タカラバイオ社製)を形質転換し、 E. coli HBlOl (pNTCM)を得た。こ の形質転換体は、 FERM BP— 10418の受託番号にて、 2005年 9月 26日付けで 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター ( τ 305-8566 茨城県つ
くば巿東 1 - 1 - 1 中央第 6)に寄託されて 、る。(原寄託日 2003年 10月 23日の国 内寄託株を、ブダペスト条約に基づく国際寄託に移管)。
[0093] また、同様に、実施例 4で構築した組換えベクター pNTCMGlを用いて、 E. coli HB101コンビテントセル(タカラバイオ社製)を形質転換し、 E. coli HB101 (pNT CMG1)を得た。
[0094] (実施例 6) 形皙転椽体における遣伝早の 現
実施例 5で得た 2種の形質転換体、および、ベクタープラスミド pUCNTを含む形質 転換体である E. coli HBlOl (pUCNT)のそれぞれを、 200 /z g/mlのアンピシリ ンを含む 2 XYT培地(トリプトン 1. 6%、イーストエキス 1. 0%, NaClO. 5%、 pH7. 0) 50mlに接種し、 37°Cで 24時間振盪培養した。遠心分離により菌体を集め、 50ml の lOOmMリン酸緩衝液 (pH6. 5)に懸濁した。これを、 UH— 50型超音波ホモゲナ ィザー(SMT社製)を用いて破砕した後、遠心分離により菌体残渣を除去し、無細胞 抽出液を得た。この無細胞抽出液の 3—ォキソ— 3—フエニルプロパン-トリル還元 活性、および、 GDH活性を測定し、比活性として表したものを、表 1に示した。実施 例 5で得られた 2種の形質転換体の!/、ずれにお 、ても、 3 ォキソ 3 フヱ -ルプ 口パン-トリル還元活性の発現が認められた。また、 GDH遺伝子を含む E. coli HB lOl (pNTCMGl)では、 GDH活性の発現も認められた。 3—ォキソ—3—フエ-ル プロパン-トリル還元活性は、実施例 1に記載の方法で測定した。 GDH活性は、 1M トリス塩酸緩衝液(PH8. 0)に、グルコース 0. 1M、補酵素 NADP2mM、および粗 酵素液を添加して 25°Cで 1分間反応を行 、、波長 340nmにおける吸光度の増加速 度より算出した。この反応条件において、 1分間に: molの NADPを NADPHに還 元する酵素活性を lunitと定義した。また、無細胞抽出液中の蛋白質濃度は、プロテ インアツセィキット(BIO— RAD社製)を用いて測定した。
[0095] [表 1] 菌株名 RRG比活性 (U/mg) GDH比活性 (U/mg)
£ coli HB101 (pUCNT) <0. 01 <0. 01
£ coli HB101 (pNTCM) 0. 22 <0. 01
£ coli HB101 (pNTCMGD 0. 13 269
[0096] (実施例 7) 形質転換体を用いた (R)—3 ヒドロキシ一 3 フエニルプロパン二トリ ルの製造
実施例 6と同様に調製した E. coli HBlOl (pNTCM)の無細胞抽出液 50mlに、 グルコース脱水素酵素(天野ェンザィム社製) 2000U、グルコース 3g、 NADP6mg 、 3—ォキソ—3 フエ-ルプロパン-トリル 2gを添カ卩し、 5Mの水酸化ナトリウムの滴 下により pH6. 5に調整しつつ、 30°Cで 22時間攪拌した。反応終了後、酢酸ェチル で抽出し、脱溶剤した後、抽出物を分析した。その結果、収率 86. 3%で光学純度 9 7. 3%e. e.の(R)—3—ヒドロキシ一 3—フエ-ルプロパン-トリルが得られた。
[0097] 3—ォキソ 3—フエ-ルプロパン-トリル、および、(R)—3—ヒドロキシ一 3—フエ -ルプロパン-トリルの定量、さらに、(R)— 3—ヒドロキシ 3—フエ-ルプロパン-ト リルの光学純度の測定は、キヤビラリーガスクロマトグラフィー(カラム: CHIRALDEX
G— ΤΑ( φ Ο. 25mm X 20m;東京化成工業株式会社製)、カラム温度: 130°C、 キャリアガス:ヘリウム(150kPa)、検出: FID)を用いて行った。
[0098] 施例 8) 形皙転橼体 用いた (R)—3 ヒドロキシ— 3—フ ニルプロパン二トリ ルの製诰
実施例 6と同様に調製した E. coli HBlOl (pNTCMGl)の無細胞抽出液 50ml に、グルコース 3g、 NADP6mg、 3—ォキソ 3 フエ-ルプロパン-トリル 2gを添カロ し、 5Mの水酸ィ匕ナトリウムの滴下により pH6. 5に調整しつつ、 30°Cで 22時間攪拌 した。反応終了後、酢酸ェチルで抽出し、脱溶剤した後、抽出物を分析した。その結 果、収率 92. 1%で光学純度 97. 4%e. e.の(R)— 3 ヒドロキシ 3—フ ニルプ 口パン-トリルが得られた。
[0099] 3—ォキソ 3 フエ-ルプロパン-トリル、および、(R)—3 ヒドロキシ一 3 フエ -ルプロパン-トリルの定量、さらに、(R)— 3—ヒドロキシ 3—フエ-ルプロパン-ト リルの光学純度の測定は、実施例 7と同様に行った。
[0100] (実施例 9) 形質転換体を用いた (R)—2—クロ口一 1— (3'—クロ口フエニル)エタ ノールの製造
実施例 6と同様に培養した E. coli HBlOl (pNTCMGl)の培養液 50mlに、グル コース 5g、 NADP6mg、 2 クロ口一 1— (3,一クロ口フエ-ル)エタノン 4g、および、
トルエン 4gを添加し、 5Mの水酸化ナトリウムの滴下により pH6. 5に調整しつつ、 30 °Cで 24時間攪拌した。反応終了後、反応液をトルエンで抽出し脱溶剤した後、抽出 物を分析した。その結果、収率 90. 5%で光学純度 82. 0%e. e.の (R)— 2 クロ口 —1— (3,一クロ口フエ-ル)エタノールが得られた。
[0101] 2 クロ口一 1— (3,一クロ口フエ-ル)エタノン、および、(R)— 2 クロ口一 1— (3, クロ口フエ-ル)エタノールの定量は、高速液体クロマトクロマトグラフィー(カラム: 株式会社ヮイエムシィ製 YMC— Pack ODS A— 303 (ID4. 6mm X 250mm) , 溶離液:水 Zァセトニトリル = 1Z1、流速: lmlZmin、検出: 210nm、カラム温度: 室温)を用いて行った。また、(R)—2—クロ口一 1— (3,一クロ口フエ-ル)エタノール の光学純度の測定は、高速液体クロマトクロマトグラフィー (カラム:ダイセルィ匕学工業 株式会社製 Chiralcel OJ (ID4. 6mm X 250mm)、溶離液: n—へキサン Zイソプ ロパノール = 39Zl、流速: lmlZmin、検出: 254nm、カラム温度:室温)を用いて 行った。
[0102] ( 施例 ίθ) 形皙転橼体 用いた (S)—4 クロ口 3 ヒドロキシ 酸ェチルの 製诰
実施例 6と同様に培養した E. coli HBlOl (pNTCMGl)の培養液 50mlに、グル コース 6g、 NADP4mgを添カ卩した。この反応液を 30°Cで攪拌し、 5Mの水酸化ナトリ ゥムの滴下により pH6. 5に調整しつつ、 1時間に 0. 5gの割合で、合計 5gの 4 クロ 口— 3—ォキソ酪酸ェチルを添加した後、さらに 5時間攪拌を続けた。反応終了後、 反応液を酢酸ェチルで抽出し脱溶剤した後、抽出物を分析した。その結果、収率 93 . 1%で、光学純度 80. 5%e. e.の(S)— 4 クロロー 3 ヒドロキシ酪酸ェチルが得 られた。
[0103] 4 クロロー 3 ォキソ酪酸ェチル、および、(S)— 4 クロロー 3 ヒドロキシ酪酸ェ チルの定量は、ガスクロマトグラフィー(カラム: PEG— 20M Chromosorb WAW DMCS 10% 80/100 mesh (3mmID X lm;ジーエルサイエンス株式会社 製)、カラム温度: 150°C、キャリアガス:窒素、検出: FID)を用いて行った。また、 (S) 4 クロロー 3—ヒドロキシ酪酸ェチルの光学純度の測定は、高速液体クロマトダラ フィー(カラム: Chiralcel OB (4. 6mmID X 250mm;ダイセル化学工業社製)、溶
離液: n—へキサン Zイソプロパノール = 9Zl、流速: 0. 8mlZmin、検出: 215nm 、カラム温度:室温)を用いて行った。
[0104] (実施例 11) 形質転換体を用いた 6 ベンゾィルォキシ 3. 5 ジヒドロキシへキ サン酸 tert ブチルの製造
実施例 6と同様に培養した E. coli HBlOl (pNTCMGl)の培養液 40mlに、グル コース 3g、 NADP6mgゝ (S)—6—ベンゾィルォキシ 5—ヒドロキシ一 3—ォキソへ キサン酸 tert—ブチル 4g、および、トルエン 1. 6gを添加し、 5Mの水酸化ナトリウム の滴下により PH6. 5に調整しつつ、 30°Cで 24時間攪拌した。反応終了後、反応液 をトルエンで抽出し脱溶剤した後、抽出物を分析した。その結果、収率 92. 3%でジ ァステレオマー過剰率 99. 7%d. e.の(3R, 5S)—6—ベンゾィルォキシ—3, 5— ジヒドロキシへキサン酸 tert ブチルが得られた。
[0105] (S) 6 ベンゾィルォキシ 5 ヒドロキシ 3—ォキソへキサン酸 tert ブチル 、および、(3R, 5S)— 6—ベンゾィルォキシ 3, 5—ジヒドロキシへキサン酸 tert— ブチルの定量、さらに、(3R, 5S)— 6—ベンゾィルォキシ 3, 5—ジヒドロキシへキ サン酸 tert ブチルのジァステレオマー過剰率の測定は、高速液体クロマトグラフィ 一(カラム: YMC— Pack ODS— A303 (4. 6mmID X 250mm;YMC社製)、溶 離液:水 Zァセトニトリル = 1Z1、流速: lmlZmin、検出: 210nm、カラム温度:室 温)を用いて行った。
0. 33% (vZv)のジメチルスルフォキシドを含む lOOmMリン酸緩衝液(pH6. 5) に、基質となるカルボ-ルイ匕合物を終濃度 lmM、補酵素 NADPHを終濃度 0. 25m Mとなるようそれぞれ溶解した。これに、実施例 1で調製した精製ポリペプチドを適当 量添加し、 30°Cで 1分間反応を行った。当該反応液の波長 340nmにおける吸光度 の減少速度から、各カルボ二ルイ匕合物に対する還元活性を算出し、これを 3—ォキソ —3—フエニルプロパン-トリルに対する活性を 100%とした場合の相対値で表し、 表 2に示した。表 2から明らかなように本発明のポリペプチドは、広範なカルボ二ルイ匕 合物に対して還元活性を示した。
[0107] [表 2]
ポリペプチドの基質特異性
活性比 反応基質 (%)
3-0X0-3 -phenylpropanenitrile 100
2-acetylpyndine 1926
3-acetvipyridine 2107
4-acetvlpyndine 15710 acetophenone 1023 m-nitroacetophenone 5056 p-chloroacetophenone 2347 p-fluoroacetophenone 722
3 ,4-dimethoxyacetophenone 2889 p-methylacetophenone 542
2-hydroxyacetophenone 1806
2-chloro- 1 -(3'-cnlorophenyl)ethanone 10473
1 -phenyl-2-butanone 1 144 propiophenone 3010 benzylacetone 241 ethyl benzoylacetate 7704
2-butanone 181
2-hexanone 602
2-heptanone 782 chloroacetone 2468 hydroxyacetone 361
4-hydroxy-2-butanone 301
4-methyl-2-pentanone 60 cyclopropyl methyl ketone 181 methyl pyruvate 9450 ethyl acetoacetate 903 benzyl acetoacetate 4936 ethyl 4-chloroacetoacetate 8547
2-keto-n-butyric acid 1866 oxalacetic acid 12Γ―