明 細 書
キヤブマウント制御装置、キヤブマウント制御方法、建設機械
技術分野
[0001] 本発明は、キヤブマウント制御装置、キヤブマウント制御方法、およびそのようなキヤ ブマウント制御装置を備えた建設機械に関する。
背景技術
[0002] 従来、不整地で作業するブルドーザやパワーショベル等の建設機械は、走行装置 が取り付けられる車体フレーム上に運転 ·操作用のキヤブが設けられて 、る。このキヤ ブは、一般の車両に比べて車体フレーム側から伝搬する外力が大きぐそれに伴う振 動が激 、ので、制振装置として機能するキヤブマウントを介在させて車体フレーム に装着されている。
[0003] そして、キヤブを支持するキヤブマウントとしては、いわゆる液体封入マウントと呼ば れるものが知られている。液体封入マウントは、例えば、シリコーンオイル等の粘性流 体が封入された容器内に摺動自在に可動体を設け、この可動体の往復動に伴って 変形するコイルパネ等の弾性体を一体ィ匕した構成を有している。また、液体封入マウ ントは、建設機械の車体フレーム側にマウント本体が装着され、可動体がキヤブ側に 取り付けられ、車体フレームに作用した振動は、弾性体で吸収されるとともに、可動 体の往復動によって粘性流体が攪拌されることにより、弾性体の復元力により生じる キヤブの振動を速やかに減衰することができる。
[0004] ところで、近年、液体封入マウントとして粘性流体に磁性流体や電気粘性流体を用 いた減衰力可変式のものが提案されている(例えば、特許文献 1、特許文献 2参照) 磁性流体および電気粘性流体は、その近傍で磁気や電気を流すと粘性が変化す るという特性を有し、容器内の粘性流体の粘性を振動の程度に応じて変化させること により、減衰力を可変にして制振特性を制御できると ヽぅ利点を有する。
[0005] 特許文献 1 :特開平 7— 164877号公報
特許文献 2:特開 2002— 372095号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0006] 一方、建設機械のキヤブは、その多くの場合、 4つのキヤブマウントによる 4点支持 構造が採用されている。具体的には、キヤブ前方の左右 2点、およびキヤブ後方の左 右 2点の合計 4点で支持されている。また、これらのキヤブマウントは基本的に、キヤ ブの上下方向の振動を専ら吸収するのである力 着座用のシートが比較的キヤブの 後方に配置されている建設機械では、前方側の 2つのキヤブマウントを、比較的剛性 の大き 、ゴムブッシュ等を介して車体フレームやキヤブに取り付けることとし、後方側 の 2つのキヤブマウントを、剛性の小さいマウント等を介して取り付けることとし、後方 側での上下の振動を柔ら力べ吸収して乗り心地を損なわないようにすることもある。
[0007] し力しながら、前方のマウントの剛性を大きくすると、前マウントからの振動を拾うこと になり、振動吸収性能を悪化させることになる。また、前マウントを柔くすると、キヤブ が前後方向に揺れるピッチングが生じることになり、オペレータが着座して 、る付近 は、上下方向に揺れるのではなぐ前後方向に揺さぶられる。着座位置での前後方 向の揺さぶりは、作業機レバーや各種ペダル類の操作性を著しく阻害することになる このような問題は、ピッチングが生じた場合のキヤブの回転中心がオペレータの足 下に位置する力 であり、ピッチング時にこの回転中心を足下力もずらすことができ れば、そのような問題を解決することが可能であり、近年の減衰力可変式のキヤブマ ゥントを用いてこれらの背反する問題を解決することが望まれて 、る。
[0008] 本発明の目的は、キヤブにピッチングが生じた場合でも、操作性を良好に維持でき るキヤブマウント制御装置、キヤブマウント制御方法、および建設機械を提供すること にある。
課題を解決するための手段
[0009] 第 1発明に係るキヤブマウント制御装置は、
キヤブを少なくとも 3点で支持する可変減衰キヤブマウントを制御するためのキヤブ マウント制御装置であって、
前記キヤブの状態変化を検出する状態変化検出手段と、
前記状態変化検出手段での検出結果に基づいて前記キヤブの揺れを推定する状 態量推定手段と、
前記状態変化検出手段の検出結果に基づいて、前記キヤブマウントで生じさせる 減衰力を演算する減衰力演算手段と、
前記状態量推定手段で推定された状態量、及び前記減衰力演算手段で演算され た減衰力に基づいて、前記可変減衰キヤブマウントに対する制御指令を生成し、該 可変減衰キヤブマウントに出力伝達する指令出力伝達手段とを備え、
前記減衰力演算手段は、少なくとも前記キヤブがピッチング方向に振られる時に、 当該キヤブの前方側を支持するキヤブマウントの減衰力を、後方側を支持するキヤブ マウントの減衰力よりも大きくなるように演算する
ことを特徴とする。
[0010] 第 2発明に係るキヤブマウント装置は、第 1発明において、
前記状態量推定手段は、前記キヤブの揺れとして当該キヤブのピッチング、ローリ ング、および上下方向の状態量を推定することを特徴とする。
[0011] 第 3発明に係るキヤブマウントの制御方法は、
キヤブを少なくとも 3点支持する可変減衰キヤブマウントを制御するためのキヤブマ ゥント制御方法であって、
前記キヤブの状態変化を検出するステップと、
この検出結果に基づいて、前記キヤブの揺れを推定するステップと、
前記検出結果に基づいて、少なくとも前記キヤブがピッチング方向に振られる時に
、当該キヤブの前方側を支持する減衰力を、後方側を支持するキヤブマウントの減衰 力よりも大きくなるように、前記キヤブマウントで生じさせる減衰力を演算するステップ と、
前記キヤブの揺れの推定結果、及び演算された減衰力に基づいて、前記可変減衰 キヤブマウントに対する制御指令を生成し、該可変減衰キヤブマウントに出力伝達す るステップと
を備えて 、ることを特徴とする。
[0012] 第 4発明に係るキヤブマウントの制御方法は、第 3発明にお 、て、
前記キヤブの揺れを推定するステップでは、前記キヤブの揺れとして当該キヤブの ピッチング、ローリング、および上下方向の状態量を推定することを特徴とする。 第 5発明に係る建設機械は、第 1発明または第 2発明に記載のキヤブマウント制御 装置が搭載されて 、ることを特徴とする。
発明の効果
[0013] 以上において、第 1発明ないし第 3発明によれば、キヤブが前後方向に振られてピ ツチングが生じた場合には、キヤブ前方を支持する可変減衰キヤブマウントに対して
、後方側のキヤブマウントよりも大きな減衰力を付与するので、キヤブの回転中心は オペレータの足下力 前方側に移動することになり、オペレータの着座位置の揺れ は、従来の前後方向の揺れから、操作性にさほど影響しない上下方向への揺れへと 変化し、操作性が良好に維持されるようになる。
また、可変減衰キヤブマウントを用いているため、前方側のキヤブマウントへの振動 を、例えばスカイフック制御を用いることにより効果的に抑制することができる。
[0014] 特にキヤブのピッチング、ローリング、および上下方向の状態量を推定することによ り、減衰力を演算する際には、バウンス方向の減衰力を表す等式、ピッチ方向のモー メントを表す等式、ロール方向のモーメントを表す等式、および拘束条件式からなる 連立方程式の解を求めればよぐ演算が容易である。
[0015] なお、本発明では、キヤブが前後方向に振られた時にのみ、前方側のキヤブマウン トの減衰力を大きくしてもょ 、が、常時大きく演算するようにしてもょ 、。
図面の簡単な説明
[0016] [図 1]図 1は、本発明の第 1実施形態に係る建設機械を示す外観側面図。
[図 2]図 2は、前記建設機械に設けられたキヤブぉよびこれを支持するキヤブマウント を模式的に示す側面図。
[図 3]図 3は、図 2でのキヤブおよびキヤブマウントを模式的に示す平面図。
[図 4]図 4は、第 1実施形態でのキヤブマウント制御手段 (装置)を示すブロック図。
[図 5]図 5は、第 1実施形態でのフローチャート。
[図 6]図 6は、第 1実施形態での加速度モード分離を説明するための模式図。
[図 7]図 7は、第 1実施形態での座標を示す模式図。
[図 8]図 8は、第 1実施形態での減衰力モード結合を説明するための模式図。
[図 9]図 9は、第 1実施形態での制御系設計用 2次元キヤブモデルを説明するための 模式図。
[図 10]図 10は、第 1実施形態での傾斜支持を説明するための模式図。
[図 11]図 11は、第 1実施形態での制御系設計用ロールモデルを説明するための模 式図。
[図 12]図 12は、第 1実施形態での制御系を示すブロック図。
[図 13]図 13は、第 2実施形態での減衰ゲインを説明するための模式図。
[図 14]図 14は、第 2実施形態でのフローチャート。
[図 15]図 15は、第 3実施形態での減衰ゲインを説明するための模式図。
[図 16]図 16は、第 3実施形態でのフローチャート。
符号の説明
[0017] 1…ブルドーザ(建設機械)、 3· · ·キヤブ、 30· · ·キヤブマウント、 50…キヤブマウント 制御装置、 51…加速度センサ (状態変化検出手段)、 56, 56' …状態量推定手段 、 57· · ·減衰力演算手段、 , Ϊ2' , f3, f4…減衰力、 ω ρ· · ·ピッチ方向の相対角 速度 (状態量)、 co r…ロール方向の相対角速度 (状態量)、 Ζ…バウンス方向の相対 速度 (状態量)。
発明を実施するための最良の形態
[0018] 以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
1.第 1実施形態
〔1〕建設機械 1の概略構成
図 1は、本実施形態に係るブルドーザ (建設機械) 1の概略外観を示す側面図、図 2 、図 3は、ブルドーザ 1に設けられたキヤブ 3およびこれを支持するキヤブマウント 30を 模式的に示す側面図、平面図である。図 4は、キヤブマウント 30を制御するためのキ ャブマウント制御装置(以下、単に制御装置と称する) 50を示すブロック図である。
[0019] ブルドーザ 1は、掘削、運土、散土、盛土等の作業を行う建設機械であり、車体 2、 および車体 2上に設けられたキヤブ 3を備えて構成されている。車体 2は、車体フレー ム 4、走行装置 5、作業機 6を備えている。キヤブ 3は、 4つのキヤブマウント 30を介し
て車体フレーム 4に 4点支持されて!、る。
なお、キヤブ 3の支持点数は 3点以上あればよぐ 4点支持に限定されない。
[0020] 車体フレーム 4は、図示しないエンジンが搭載される部分であり、このエンジンの後 方側にキヤブ 3が設けられている。走行装置 5は、車体フレーム 4の下部の両側に設 けられたクローラ式である。作業機 6は、掘削、盛土等の作業を行う部分であり、フレ ーム 7、ブレード 8、リフトシリンダ 9、およびチルトシリンダ 10を備えている。
[0021] フレーム 7は、走行装置 5の両側力 走行方向前方に延びるアーム状部材であり、 揺動自在に設けられている。ブレード 8は、ブルドーザ 1を走行させた際、土砂等が 当たる部分であり、フレーム 7の先端部分に設けられている。リフトシリンダ 9は、ブレ ード 8を上下させるための油圧ァクチユエータであり、チルトシリンダ 10は、ブレード 8 の幅方向の傾斜を変化させる油圧ァクチユエータである。
[0022] 〔2〕キヤブマウント 30の構成
キヤブマウント 30は、図 3に示すように、ブルドーザ 1の走行方向の前方両側(左右 両側)に 2箇所、走行方向の後方両側 (左右両側)に 2箇所、合計 4箇所に設けられ ている。前方側に設けられたキヤブマウント 30は、互いに左右方向に大きく離れた位 置で、車体フレーム 4およびキヤブ 3の補助フレーム 3Aに対してゴムブッシュを介し て固定され、後方側に設けられたキヤブマウント 30は、前方側よりも高い位置 (ハイマ ゥント)で、例えば、両端がゴムブッシュを介して固定されている。
[0023] また、キヤブマウント 30は減衰力を変化させることができる減衰力可変式であり、本 実施形態では、構成の詳細な説明を省略するが、磁性流体を用いたタイプである。 すなわち、図 2に基づいて簡略ィ匕して説明すると、キヤブマウント 30は、車体フレーム 4側に支承されたシリンダ 31と、シリンダ 31に対して進退自在に設けられ、かつ上端 力キヤブ 3に固定された可動部材 32とを備え、可動部材 32の下端側が振動吸収用 のコイルパネ 33で受けられて!/、る。
[0024] シリンダ 31内のヘッド側およびボトム側の空間内には前述した磁性流体が封入さ れており、各空間を行き来するための連通路で磁性流体に磁界をかけると、磁性流 体の剪断力が変化し、ダンバとして機能する際の減衰力を変えることが可能である。 シリンダ 31の外周側に模式的に図示した励磁コイル 34は、後述する制御装置 50か
らの電流信号によって磁界を生じさせるものである。
[0025] ただし、本発明に用いられる減衰力可変式のキヤブマウントとしては、本実施形態 のような磁性流体を用いたものに限定されず、電気粘性流体を用いるタイプ、ヘッド 側およびボトム側の空間を連通させる連通路の断面積を可変にし、よって減衰力を 変化させる可変オリフィスタイプなど、任意の構造のものを採用できる。
[0026] 〔3〕制御装置 50の構成
制御装置 50は、図 4に示すように、加速度センサ (状態変化検出手段) 51と、入出 力部 52と、演算部 53とを備え、入出力部 52および演算部 53が MPU等の素子で構 成されている。さらに、入出力部 52は、加速度信号入力手段 54、減衰力指令出力伝 達手段 58を備え、演算部 53が、モード分離手段 55、状態量推定手段 56、および減 衰カ演算手段 57を備えて 、る。
[0027] 加速度センサ 51は、図 2、図 3にも示すように、キヤブ 3内の前方中央、左後方、お よび右後方の 3箇所にそれぞれ設けられ、キヤブ 3に揺れが生じた際に、各部位での 上下方向の加速度を検出する。なお、本発明での状態変化検出手段としては、加速 度センサ 51の代わりにストロークセンサでもよいし、加速度センサ 51にさらにストロー クセンサをカ卩えてもょ 、し、加速度センサやストロークセンサに代えてジャイロを用い てもよい。しかし、これらを使用することで、演算部 53での演算を簡略ィ匕することがで きるが、耐久性およびコストの面では加速度センサ 51のみの方がよぐ制御上の面で も実用に足りる。
[0028] 加速度信号入力手段 54は、加速度センサ 51から出力された検出信号を入力し、 所定の変換を行って演算部 53に出力する機能を有している。
モード分離手段 55、状態量推定手段 56、減衰力演算手段 57、及び減衰力指令 伝達手段 58は、図 5のフローチャートに示される処理を分担して実行する。
[0029] 具体的には、まず、モード分離手段 55は、制御入力となる 3箇所の上下加速度情 報力 ピッチ加速度、ロール加速度、バウンス加速度を算出する。
次に、キヤブモデルを (a)2次元モデルと (b)l次元ロールモデルに分けて,各モデル に対する入力を算出する。
(a)2次元モデルとしてはピッチ加速度とバウンス加速度力も前及び後マウントの入力
を、モード結合手段を用いて、算出しなおすことになる。
(b)l次元ロールモデルに対してはロール加速度をそのまま用いる。
[0030] そして、状態量推定手段 56は、(a)2次元モデルでのカルマンフィルタにより前側、 後側の相対変位、及び相対速度を、(b)l次元ロールモデルではロールの相対変位 及び相対速度を推定する。
[0031] そして、減衰力演算手段 57は、まず、 LQG制御等により、(a)前側、後側の制御力 、(b)ロールモーメント制御力を算出する。その後、モード結合により各マウントに対す る制御力を算出する。
最後に、減衰力指令出力伝達手段 58は、算出された制御力に基づいて、予め求 めてぉ ヽた各キヤブマウント 30の相対速度力も制御電流を生成し、各キヤブマウント 30に出力伝達して減衰力制御を行う。
以下、前述した各機能的手段で実行される処理につ!ヽて詳述する。
[0032] (3-1)モード分離手段 55の構成
モード分離手段 55は、 3点力 の上下方向の加速度信号力 ピッチ、ロール、バウ ンスの成分にモード分離する。尚、ここでは簡単のため変位に関するモード分離で説 明するが、速度でも加速度でも同様のやり方でモード分離可能である。
具体的には、図 6に示されるように、キヤブの挙動は、ピッチ、ロール、ノ ゥンスの 3 自由度の挙動力もなるという仮定の基に、各モードの足し合わせで表現されるとし、こ こでは 3箇所に取り付けられたセンサからの変位信号 Zl、 Z2、 Z3から各モードの量 を算出するとする。
[0033] 座標系は、図 7に示されるように、 X—Y—Zからなる直交座標系で定義され、 X軸 回りの回転をロール、 Y軸回りの回転をピッチとし、各センサの重心に対する座標を それぞれ (X ,y )、(X ,y )、(X ,y )とする。重心回りのバウンス変位を Z、ピッチ変位
1 1 2 2 3 3 b
を Θ 、ピッチ変位を Θ とすると、各センサ点での上下変位は、次の式(1)〜式(3 pitcn roll
)で与えられる。
[0034] [数 1]
2j =Zb—x^ h + yfiroll…
z2 = zb -x2epitch + ,
+ y
[0035] この(1)〜(3)式がすなわちモード結合の計算式であり、式(1)〜式(3)から 0 pitch
Θ 、及び Zを求めると、次の式 (4)〜式(6)となる。
roll b
[0036] [数 2]
θ _ ( -Z2)(y2 -y3)-(Z2 - Z3)fa -y2)
' -x2)(y2 -y3)-(x2 -xi){y1 -y2) ... (4 )
-22){x2 -xi)-{Z2 -Z3)(Xl -x2)
( Ί -y
2)(¾ -Xi)-(yi
-.. ( 5 ) ^\
+ Χβ 6 )
[0037] すなわち、各加速度センサ 51で検出される 3点の変位 (加速度)と座標に基づいて 、式 (4) (6)を用いることにより、ピッチ,ロール,バウンスの変位 (加速度)を算出す ることが可能となり、式 (4)〜式 (6)がモード分離の計算式として定義される。
[0038] 一方、減衰力に関するモード分離、結合手段は加速度、速度、変位とは異なる。こ の手段は、後述する減衰力演算手段 57にて演算されたピッチ、ロール、バウンスの 成分の減衰力から、図 8に示されるように、互いに減衰力が等価になるように、 4箇所 のマウントの制御力に変換する減衰力モード結合手段として用いられる。
[0039] ここではピッチ、ロールの制御モーメント力 M M 、バウンスの減衰力 f 力 pitch roll bounce
、各マウントの減衰力 f f f f に変換する。マウント座標をそれぞれ (X , y )
1 2 3 4 1 1 (X ,
2 y ) (X ,y ) (X ,y )とすると、それぞれの減衰力のモード分離式は、以下の式(7)
2 3 3 4 4
〜式(9)のようになる。
[0040] [数 3] = Λ + Λ + Λ
= + Λ + + Λ ( 8)
= 一 一 Λ 一 9 )
[0041] 式(7)〜(9)だけでは各マウントの減衰力は求まらな!、ため、下記式(10)の拘束式 を追加する。
[0042] [数 4]
Λ - /2-/3 +ム=0. (10) 式 (7)〜(10)を解くと下記式(11)〜式(14)のモード結合式が算出される。但し、 X =x—Xゝ X =x—Xゝ =x +x +x +xゝ Y =y— yゝ =y— yゝ Y =y -
1 1 4 2 2 3 3 1 2 3 4 1 1 4 2 2 3 3 1 y +y +yである。
{X^ -Y3Xl + - X2Yl)
f2 4
''. (12)
, 一 f 一 , f 一 ,
3~ 2 .(丄 3) 4 2 1- (14)
[0045] (3-2)状態量推定手段 56の構成
状態量推定手段 56であるカルマンフィルタ、減衰力演算手段 57である LQG制御 を設計する場合、制御系設計のためのモデルが必要になる。ここでは、図 9のような ピッチング、バウンシングを考慮した 2次元剛体モデルを制御系設計モデルとする。 但し、モデルは線形なものと仮定し,幾何学的大変形やマウントの非線形性は考慮し ないものとする。
キヤブのフレームに対する相対的な変形 (Δχ, Δζ, Δ θ )に伴うマウントの変形量は 以下の式(15)及び式(16)のようになる。但し、 (Δχ,Δζ,Δ θ)=(χ-χ , ζ— ζ , θ
2 2 θ
2 )であり、各変数にドットが付されたものは、変形の時間微分値となる相対速度 である。
Axf = -lzfA0 Axr 厶^
… (16)
[0047] 従って、上記式(15)及び式(16)より、以下の式(17)〜式(19)の関係が成立する [0048] [数 7]
rotlf
[0049] ここでは、傾斜支持におけるマウント変位を考える。図 9のようにマウントが角度 aで 傾斜支持されていると、図 10のようにマウントのパネ剛性は (χ',ζ')の局所座標系で の変形に対して力を発生させることになる。
絶対座標系でのマウント変形が(Δχ, Δζ)の場合、新しい座標系(χ',ζ')に対す る局所座標系での変形(Δχ ',Δζ ')を考えると,それぞれの関係は以下の式(20) のようになる。
[0051] ここで、傾斜支持に対する座標変換マトリクスを rot2として、次の式(21)のように定 義する。
[0052] [数 9]
cosa sin a
rot 2:
- sin cos (2 1)
[0053] 局所座標系でのマゥント変位( ',厶2')と変形に伴ぅ並進バネカ( ')の関係
X z は、変数 Δχ'、 Δζ'にドットが付されたものを、マウント変位の時間微分値とすると、 次の式(22)及び式(23)のようになる。
[0054] [数 10]
'/ ) 0 j| 'Axf 'C4 0 ·
, 0 Azt 0
ノ c Δέ,
(22)
(LA kxr 01/ 'axr'
'广 0 zr ^ Δζ, 0 M '
(23)
[0055] 絶対座標系の並進パネ力(f ,f )、係数 K、 Κ、 C、 Cを式(24)のように定義すると
X y f r f r
、次の式(25)、式(26)のように表現される。
[0056] [数 11] ο xf 0
κ c 0
K.
0 k 0
(24)
[0057] キヤブへ働く力は、式(25)、式(26)のパネ力、減衰力と上下方向へ働く制御力(f( , f )が存在する。このときキヤブに発生するモーメント (N, N)は、以下の式(27)、 cr f r
式(28)のようになり、これをマトリクスで表現すると、式(29)、式(30)のようになる。
[0058] [数 12]
/ 4 J 14 xf J f ... (2 7)
N r = -l zr J f xr +1 xr J f zr +1 xr J f
(2 8)
[0059] キヤブに関する運動方程式は、変位 χ、 ζ、 Θの加速度を各変数にドットを 2つ付し て表現すると、以下の式(31)のようになり、これをマトリクス表現すると、式(32)、式 ( 33)のようになる。
[0060] [数 13] n
vc = / mi = f
z; Ιθ=Ν ... (3
s r 0 Azf
-rot ■rot3
0 , rotl'^K.rotl Axr 02x2 rot2~xCrrotl r
Azr
Kf 02x2
: ~rot3
0,„, rotT^Krotl 02x2 rotlT1 Crrot2
(3 2)
但し、
を変形することを考える。そのとき以下の式(34)、式(35)の関係が存在する。
[0063] このとき、式(32)の運動方程式は以下の式(36)、式(37)のように表現できる。
[0064] [数 15]
[0065] このように、相対座標系の自由度で運動方程式を考えると、外乱 wはパネ下加速度 としてまとめることができる。
[0066] 運動方程式をベースに制御系設計を行うため、状態方程式表現でモデリングを行 状態変数 X、入力 u、外乱 wを次の式(38)、式(39)、式 (40)のようにとる。
[0067] [数 16]
このとき状態方程式は以下の式 (41)、式 (42)のようになる。
[0069] [数 17]
X =AX +B + Gw ... (4 i)
(42)
[0070] 次に、状態量推定手段 56であるカルマンフィルタについて説明する。カルマンフィ ルタを構成するために、カルマンフィルタ出力に関する出力方程式が必要になる。こ の出力方程式を以下の式 (43)のようにおく。ここでは観測出力を前後各パネ上加速 度の 2点とする。
[0071] [数 18] yv = CVX +Dvu +Hvw
(43)
[0072] このとき、出力変数 v は次の式 (44)のようになる。
[0073] [数 19]
(44)
[0074] 従って、パネ上変位量 z、 zのダブルドットで与えられるパネ上加速度は、以下の式
f r
(45)の形になる。
1 0 0 0 0 0
{Ax + Bu)
0 1 0 0 0 0
(45)
[0076] 従って、式 (45)の各係数は以下の式 (46)、式 (47)、式 (48)のようになる。
[0077] [数 21]
1 0 0 0 0 0
A
0 1 0 0 0 0 (46)
1 0 0 0 0 0
A. B
0 1 0 0 0 0 (47)
0 0 0
H. =
0 0 0 (48)
[0078] 変数 Xの上部に記号 'を付した状態推定を以下の式 (49)のカルマンフィルタによつ て構成する。
[0079] [数 22]
X =AX +Bu+L(yv -CvX-Dvu) (49)
[0080] ノイズ共分散データを次の式(50)のように仮定する。
[0081] [数 23]
E{wwT) = Qe E(vvT) = RE E(wvT) = Ne,., (5 Q)
[0082] すると、リツカチ方程式を解くことによりカルマンフィルタゲイン Lを算出することがで きる。実際の設計においては、以下の式(51)のようにおく。
[0084] 式 (49)のカルマンフィルタは以下の式(52)のように状態方程式に変形できる
[0085] [数 25]
X = (A-LC )X+[B-LDV L] I
VJ... (52)
[0086] すなわち、制御入力 u、測定量 yvを合わせた {u yv}Tを入力とする状態方程式で記 述でき、コントローラに組み込むことができる。カルマンフィルタによって推定される X の上部に'を付した変数は、下記の式(53)の状態変数である。
[0087] [数 26]
X = {Azf Azr Ax Azf zr ί χ}τ . ( 5 3 )
[0088] 従って、前マウントの相対変位、相対速度、及びマウントの相対変位、相対速度を カルマンフィルタにより推定することができる。
[0089] (3-3)減衰力演算手段 57の構成
次に減衰力演算手段 57である LQG制御について説明する。出力方程式を次の式
(54)のようにおく。
[0090] [数 27]
[0091] 例えば LQG制御における評価関数を次の式(55)とするような出力方程式を考える [0092] [数 28]
J =fa {ye TQye + uTRu)dt
[0093] 種々の評価関数の取り方が考えられる力 ここでの評価変数は乗り心地の指標とし てバウンス加速度及びピッチ加速度を採用し、バウンス加速度をバウンス変位 zのダ ブルドット、ピッチ加速度をピッチ変位 Θのダブルドットで表現する。また、キヤブ摇れ の指標として前マウント相対速度及び後マウント相対速度を採用し、前マウント相対 速度を前マウント相対変位 Δ ζのドット、後マウント相対速度を後マウント相対変位 Δ
f
zのドットで表現する。このとき、出力変数 yを以下の式(56)ととる。
r e
[0094] [数 29] ye = {ζ θ Mf Air}r... ( 5 6 ) [0095] バウンス加速度及びピッチ加速度は次の式(57)のような形になる。
[0097] また、前マウント相対速度、後マウント相対速度は次の式(58)のようになる。
[0099] これをまとめると、式(54)の係数は以下の式(59)、式(60)のようになる c
[0100] [数 32]
0 1 0
T~1M-1Df
0 0 1
D
0 0
0 0 H =0 .. (60)
[0101] ここでの評価変数は乗り心地の指標としてバウンス加速度及びピッチ加速度、キヤ ブ揺れの指標として前マウント相対速度及び後マウント相対速度として 、る。ここで前 マウント相対速度の重みを、後マウント相対速度より κ倍大きくすることより、前マウン トにかかる減衰力を後マウントより K倍大きくすることができる。
例えば,式(55)に関する重み係数を以下の式 (61)のようにすれば、前マウントに 力かる減衰力を後マウントの 2倍にするようなゲインを算出することができる。
[0102] [数 33]
Q = ciflg(300,l,2xl04,104) R = 7 ,10 -7) ... ( 6 ェ)
[0103] この状態方程式、評価関数を用いて、リツカチ方程式を解くことによりフィードバック
ゲイン Kを算出することができる。
g
フィードバックゲインは u=— K Xの状態フィードバックゲイン Kとして求まる。
g g
[0104] ロール制御に対しては 1自由度系のカルマンフィルタ、 LQG制御を設計することに なる。ここでは、図 11のようなロールを対象にした 1自由度剛体モデルを制御系設計 モデルとする。また、前後、左右方向の剛性は考慮しないこととする。
[0105] ここでロール制御に用いた 1自由度系のカルマンフィルタはバウンスとピッチングの モードについてもそれぞれ単独でも用いることができ、第 3実施形態ではピッチング、 バウンス、ロールのそれぞれのモードに対して 1自由度系のカルマンフィルタを用い て状態量を推定している。
[0106] 図 11におけるキヤブのフレームに対する相対的なロール変形 Δ 0 = 0 — 0 に伴
r r r2 うマウントの上下方向の変形量は以下の式(62)のようになる。
[0107] [数 34]
^fl = - ΛΘΓ ^fr = = = l ,
… ( 6 2 )
[0108] 同様に、マウントの上下方向の相対速度は以下の式(63)のようになる。
[0109] [数 35]
^fl = -ly = Δέ,, = -l AZrr = ly …
[0110] 左前、右前、左後、右後に発生するマウント力を f 、 f 、 f 、 f とすると,ロールモーメ
fl fr rl rr
ント Nは以下の式(64)のようになる。
[0111] [数 36] … (
[0112] また、マウント力はマウントの上下方向ばね剛性を k ,上下方向減衰係数を cとす
Z Z
ると以下の式(65)、式(66)のようになる。
[0113] [数 37]
=—
ζΔζ c
zAi , f
fr =-k
zAz
fr -c
zM
fr ^
{ & 5) frl = ~
k rl
…(
66)
[0114] また、ロール制御モーメント N として、ロールモーメント Nとマウントのロール変位 Δ cr r
Θの関係は式(64)、式(65)、式(66)を用いて以下の式(67)のようになる。
[0115] [数 38]
[0116] キヤブのロール運動に関する運動方程式はロールに対するイナ一シャを Iとして以 下の式(68)のようになる。
[0117] [数 39] =Ν'·.· (68)
[0118] 式 (68)に式 (67)を代入すると以下の式 (69)となる。
[0119] [数 40] i,A = _ Qy 2 i +ly 2 2 + 3 +lv 2 4 -cz(l;, +/ 2 +/ 3 +' 4)Δ +Ncr
… (69)
[0120] 運動方程式の自由度をロール相対角度 Δ 0 、ばね下ロール絶対角度 0 とする。
r r2 このとき、式 (69)の運動方程式は以下の式(70)のように表現できる。
[0121] [数 41]
i +cz(ly 2 l +/ 2 +/;3 +ly 2 4 +kz(ly 2 l +ly 2 2 +/ 3 +, 4)Δ =N„ -IrA§r2
… (70)
[0122] 状態変数 X、入力 u、外乱 wを次の式(71)のようにとる。
[0123] [数 42]
X ^{A9r Mr}T u =NC. w = Ir2... ( 7 1 )
[0124] このとき状態方程式は以下の式(72)、式(73)のようになる
[0125] [数 43]
A (2, +2 ) +1
[0126] 出力方程式を以下の式(74)とおく。
[0127] [数 44] ye = CeX +De +Hew ... (7 /i)
[0128] 例えば LQG制御における評価関数を以下の式(75)とするような出力方程式を考 える。
[0129] [数 45]
[0130] ここでの評価変数は、乗り心地の指標としてロール加速度、キヤブ揺れの指標とし てロール相対速度とおく。このとき、出力変数 yを以下の式(76)ととる。
e
[0132] 式(74)の係数は以下の式(77)、(78)のようになる。
[0133] [数 47]
(78)
[0134] 基本的に、ロールの絶対加速度を低くしょうとするとロール相対速度は大きくなる。 また、ロール相対速度を小さくしょうとするとロールの絶対加速度が大きくなるというト レードォフを持っている。そこで、ロールの押さえ具合を調整できるように、絶対加速 度、相対速度に関して重みをつける。
例えば、 Q = diag(ql,q2)、 ql = 5、 q2 =
R= 10—
7とおき, qlを大きくすれば相対 的に絶対加速度を低く抑えようとし、小さくすればロール変位を低く抑えるようになる。 全体の制御出力のゲイン調整は Rに関する重みで行うことになる。
フィードバックゲインは u=—KXの状態フィードバックゲイン Kとして求まる。
[0135] カルマンフィルタを構成するために、カルマンフィルタの出力に関する出力方程式 が必要になる。この出力方程式を以下の式(79)のようにおく。ここでは観測出力を口 ール加速度とする。
[0136] [数 48] yv =CVX +Dvu +Hvw
(7 9)
[0137] このとき,出力変数 y は以下の式 (80)となる c
[0138] [数 49]
(80)
[0139] よって、式(79)は以下の式(81)の形になる c
[0141] 従って、式(79)の各係数は以下の式(82)のようになる。
[0142] [数 51] !» 30 - ^ + + + ) D'. (82)
[0143] ここでは次の式(83)のカルマンフィルタによって構成する。
[0144] [数 52]
X =(A-LCV)X +[B-LDV L\
(83)
[0145] 例えば Qe = l、 Re = 0.1とおく。すなわち、制御入力 u、測定量顔を合わせた
{u y }τを入力とする状態方程式で記述でき、コントローラに組み込むことができる。
[0146] セミアクティブ制御の場合、マウント相対速度に対して負の減衰力を発生することは できない。また、ダンバの減衰力 f (i=l〜4)は最大減衰力 f 以上の力を発生させる
1 max
ことができない。すなわち、式(52)の 2次元用カルマンフィルタの入力 u={f f }τについ cf cr ては、以下の式(84)、式(85)の制約が存在する。
[0147] [数 53]
■ f {-fa 'sign f ≥ f
[1 -sign f)≥0)
0 ■ sign(Az f) < 0)
(84)
f (-ん
ん [ φ: (/m,, >-ΛΓ ·^«(Δΐ,)≥ο)
0 -sign(Air)<0)
(85)
[0148] そこで、カルマンフィルタの入力 uに対して、以下の式(86)、式(87)、式(88)のよ うなセミアクティブ補正をかける。
[0149] [数 54] ^AX+Bu+ L(yv -CVX - Dvuc') ... ( 8 g )
[1 0]KX-sign(Aif)≥fm!ai)
":(1 -[1 o]Kgx (/mai >[i 。 )≥o)
0 ([1 0]d"'sg"(A ,) <0)
":(2): [0
カルマンフィルタと LQG制御と式(75)のセミアクティブ補正を組み合わせた 2次元 モデルとしての制御系をブロック線図で示したものが図 12である。
[0151] (3-4)減衰力指令出力伝達手段 58の構成
減衰力指令出力伝達手段 58は、状態量推定手段 56によって算出されたダンバ相 対速度 Vと、減衰力演算手段 57で算出されたダンバ減衰力 fから出力電流 iを算出し
、ダンバに電流を出力する機能を有する.
[0152] ダンバ減衰力 fとダンバ相対速度 v、出力電流 iの関係は、一般的にせん断係数 Fr を用いて以下の式(89)のようになる.
[0153] [数 55]
/,· = -cv, - Fr/, ... ( 8 9 )
[0154] 従ってダンバに出力する電流 iは式(90)として決定される.
[0155] [数 56] ( 9 0 )
[0156] また、出力可能な電流の最大値 imaxは通常決められており、かつ OA以下の電流 は流すことができないため、 i > imaxの場合は i = imax, i. < 0の場合は i =0とする。
[0157] 2.第 2実施形態
以下には、図 4、図 13及び図 14に基づき、本発明の第 2実施形態に係るキヤブマ ゥント制御装置 50について説明する。なお、各図において、第 1実施形態と同じ機能 部分には同一符合を付し、それら機能部分の説明を省略する。
[0158] モード分離手段 55は、加速度信号入力手段 54からの検出信号に基づき、キヤブ 3 の重心位置(回転中心とは異なる)でのピッチ方向の角加速度( ω pt)、ロール方向の 角加速度(co rt)、およびバウンス方向の加速度 (abt)を求める。各方向の加速度は、 キヤブ 3の重心回りの運動方程式力も導き出すことが可能である。
[0159] 状態量推定手段 56は、例えば、スカイフック制御を行う場合には、前記 3種の加速 度(co pt, co rt, abt)を積分して状態量としての絶対速度(ω ρ, co r, Z)を算出して推 定する。
[0160] 減衰力演算手段 57は、以下の式 (91)〜(94)の連立方程式を解くことで、それぞ れのキヤブマウント 30に付与する減衰力を算出する。減衰力 fl、 f2、 f3、 f4はそれぞ
れ、図 3に示すように、左前方、右前方、左後方、右後方の各キヤブマウント 30の減 衰カである。
[0161] [数 57] f 1'+ f 2'+ f 3+ f 4=-Cv*Z - (9 1)
— (f 1'+ f 2')Lf+(f 3+ f4)Lr Cp*Lp*c p (92)
- f l'*Lyl+ f 2'* Ly2- f 3*Ly3+ f4* Ly4
= -Cr* Lr* ωτ ■·· (93)
f 1'- f 2'=(f 3-f 4) (94)
[0162] ここで、 (91)式はバウンス方向の減衰力を表す等式、(92)式はピッチ方向のモー メントを表す等式、(93)式はロール方向のモーメントを表す等式で、(94)式は方程 式を解くための拘束条件式である。 Lf、 Lr、 Lyl、 Ly2、 Ly3、 Ly4は、図 2に示すよう に、各キヤブマウント 30と重心位置との平面座標形での位置関係を表す長さである。 また、 Cv、 Cp、 Crはそれぞれ、各方向での減衰ゲイン (減衰力 Z速度)である。さら に、減衰ゲイン Cv、 Cp、 Crを有する仮想ダンパを想定した時、各仮想ダンパは、スカ ィフックの理論によれば、図 13に示す通り、長さ Lp、 Lrを有した位置関係にある。
[0163] そして、本実施形態では、前方側のキヤブマウント 30の減衰力 fl' 、f2' に係数「 K」を掛け算して新しい減衰力 fl、 f 2を算出している。この係数「K」の値をチューニン グパラメータとして「1」よりも大きく設定することより、連立方程式の解として求められる 減衰力においては、前方側の減衰力 fl、 f2が後方側の減衰力 f3、 f4よりも K倍大きい 値として算出されることになる。
[0164] 減衰力指令出力伝達手段 58は、減衰力演算手段 57で算出された減衰力 fl、 f2、 f 3、 f4に応じた電流信号を生成し、各キヤブマウント 30の励磁コイル 34に出力するの であり、本実施形態では、前方のキヤブマウント 30に対して、後方のキヤブマウント 3 0よりも K倍の減衰ゲインを付与するようにしている。つまり、キヤブ 3の前方側のダン パ特性を硬めに設定し、後方側のダンバ特性を柔ら力べ設定して 、るのである。
[0165] 以上のような制御においては、仮に係数 Kを「1」に設定した場合、前方側の減衰力 fl, f2と後方側の減衰力 f3, f4との比率に違いが無いことになり、従来と同様に、キヤ ブ 3の回転中心が着座したオペレータの足下 (前方側の支持位置の高さ付近:図 2中 に点線丸印で図示)となる。これに対して本実施形態のように、係数 Kを 1よりも大き
い値に設定すれば、前方側でのダンバ特性が硬くなるので、回転中心は前方側にず れる(図 2中に黒丸印で図示)。こうなることで、ピッチングが生じた場合の着座位置で の動きは、点線矢印で示した前後方向の挙動が大きい動きから、実線矢印で示した 上下方向の挙動が大き 、動きに変化することになる。
[0166] 以上のような第 2実施形態を総括すると、図 14のフローチャートに示されるように、 まず、モード分離手段 55により上下加速度信号は、バウンス加速度、ピッチ加速度、 及びロール加速度に分離される。
状態量推定手段 56は、バウンス加速度及びピッチ加速度のモード結合を行い、二 次元モデル用カルマンフィルタを生成する一方、ロール加速度はロールモデル用力 ルマンフィルタを生成する。次に、状態量推定手段 56は、二次元モデル用カルマン フィルタに基づいて、上下相対速度及び前後相対速度を算出した後、速度モード分 離を行ってバウンス相対速度、ピッチ相対速度を算出する。最後に別途算出された ロール相対速度とともに、速度モードの結合を行って、前後左右の相対速度を算出 する。
[0167] 減衰力演算手段 57は、分離された各加速度に基づいて、積分によりバウンス、ピッ チ、ロールの絶対速度を算出し、さらにスカイフック制御によりバウンス力、ピッチモー メント力、ロールモーメント力を算出する。そして、減衰力演算手段 57は、これらの力 をモード結合して、前後左右の制御力 fl〜f4を算出する。
減衰力指令出力伝達手段 58は、状態量推定手段 56で算出された前後左右の相 対速度と、減衰力演算手段 57で算出された前後左右の制御力とに基づいて、各マ ゥントの電流出力信号を生成し、出力する。
[0168] 3.第 3実施形態
以下には、図 4、図 15及び図 16に基づき、本発明の第 3実施形態に係るキヤブマ ゥント制御装置 50について説明する。なお、各図において、第 1実施形態と同じ機能 部分には同一符合を付し、それら機能部分の説明を省略する。
[0169] また、本実施形態での減衰力演算手段 57は、例えば、各軸独立したスカイフック制 御を行う場合には、図 15に示すように、加速度信号入力手段 54からの検出信号に 基づいて 4軸の絶対加速度 (al, a2, a3, a4)を算出した上で積分し、状態量としての
絶対速度 (VI , V2, V3, V4)を演算して推定する。図 15において、 Cは各軸での減 衰ゲイン (減衰力 Z速度)である。この時、減衰力 Π' , Ϊ2' , f3, f4は以下の(95)〜 (98)式で算出される。
f 3= - C * V3 ( 9 7 )
f 4= - C * V4 ( 9 8 )
[0171] そして、本実施形態でも第 2実施形態と同様に、前方側のキヤブマウント 30の減衰 力 、f2' に、「1」よりも大きい係数「K」を掛け算して新しい前方側の減衰力 fl、f 2を算出し、これらの減衰力 fl、 f2を後方側の減衰力 f3、 f4よりも K倍大きい値として 算出する。
[0172] 以上のような第 3実施形態を総括すると、図 16のフローチャートに示されるように、 まず第 2実施形態と同様に、加速度信号はモード分離手段 55によりバウンス加速度 、ピッチ加速度、及びロール加速度に分離される。
状態量推定手段 56は、分離された各加速度に基づいて、それぞれのカルマンフィ ルタを生成し、それぞれの相対速度を算出した後、モード結合を行って前後左右の 相対速度を算出する。
減衰力演算手段 57は、モード分離手段 55で分離された各加速度の結合を行って 、前後左右の相対加速度を算出した後、スカイフック制御により前後左右の制御力 fl 〜f 4を算出する。
減衰力指令出力伝達手段 58は、状態量推定手段 56で算出された前後左右の相 対速度と、減衰力演算手段 57で算出された前後左右の制御力とに基づいて、各マ ゥントの電流出力信号を生成し、出力する。
[0173] このような本実施形態によれば、以下の効果がある。
すなわち、ブルドーザ 1では、キヤブ 3が前後方向に振られてピッチングを生じた場 合、制御装置 50は、キヤブ 3前方を支持するキヤブマウント 30に対して、後方側のキ ャブマウント 30よりも大きな減衰力 fl, f2を付与するため、キヤブ 3の回転中心をオペ
レータの足下力も前方側に移動させることができる。このことにより、オペレータの着 座位置の揺れを、従来の前後方向の揺れから、操作性にさほど影響しない上下方向 への揺れへと変化させることができ、操作性を良好に維持できる。
[0174] また、キヤブ 3内において、シート 3Bが後方寄りに配置されている本実施形態では 、キヤブ 3のフロント剛性よりも、リア剛性を小さくして後方側での乗り心地を向上させ ているが、ピッチングにより着座位置にて生じる上下方向の揺れをも、リア剛性の低さ で柔らかく吸収することができ、乗り心地を損なう心配がない。
[0175] 4.実施形態の変形
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなぐ本発明の目的を達 成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記各実施形態では、加速度センサ 51での検出信号に基づき、ピッチン グ、ローリング、バウンス速度を推定し、(91)〜(94)式力もなる連立方程式を解くこと で減衰力 fl〜f4を算出したり (第 2実施形態)、各軸の絶対速度を推定し、(95)〜( 98)式力 なる連立方程式を解くことで減衰力 fl〜f4を算出したが(第 3実施形態)、 減衰力 fl〜f4の算出の仕方は、これらに限定されるものではなぐその実施にあたつ て任意に決められてよい。
[0176] また、前記第 2実施形態では、前方のキヤブマウント 30において、左右の間隔を示 す長さ Ly2が Lyはりも大きぐ支持位置が重心位置を通る軸線に対して線対称とは なっていなかつたが、このような支持位置も任意であり、線対称の位置で支持されて も勿論よい。また、後方側の支持位置に関しても同様であり、線対称にするか否かは 、建設機械のキヤブの構造や車体フレームの構造等を勘案して任意に決められてよ い。
[0177] 前記各実施形態では、キヤブ 3に揺れが生じた際に検出される加速度に基づいて 減衰力 fl〜f4, , f2' を算出し、よって前方側のキヤブマウント 30を硬くしていた 。しかし、例えば、建設機械の走行開始時、ステアリング操作時、停止時、急減速時、 急加速時などにおいても、キヤブの前後の揺れが生じる可能性がある。ところが、この 場合には、走行レバー、ステアリング、アクセルペダル、ブレーキペダル、デクセルべ ダル等の操作を検出することで、揺れが生じることを予め予測できる。従って、前記各
実施形態での制御に加え、そのような操作検出がなされた時には、予め所定の減衰 力で前方側のキヤブマウント 30を硬くするといつた制御を行ってもよぐこうすることに より、ピッチングそのものを抑制できるという効果がある。
産業上の利用可能性
本発明は、ブルドーザやパワーショベルといった建設機械の他、キヤブが可変減衰 キヤブマウントにより支持されている輸送用トラック等にも適用できる。