明細書 単結晶の育成方法及び繊維成形体 技術分野
本発明は、 C Z法による単結晶の育成方法に関するものであり、 特に 1つ の石英ルツポを継続使用して複数本の単結晶ィンゴットを育成する C Z法に よる単結晶の育成方法に関するものである。
背景技術
半導体集積回路の製造に用いられる半導体単結晶ゥエー八、 特にシリコン 単結晶ゥエーハは、 主に C Z法 (チヨクラルスキー法) を用いて育成した単 結晶を用いて製造される。 C Z法においては、 石英ルツポ内に所定量の原料 多結晶を装入して溶融し、 この融液から単結晶インゴットを育成することに よって単結晶を製造する。 1本の単結晶インゴットの育成を完了した後、 石 英ルツポ内には融液の一部が残存する。
石英ルツポは非常に高価であり、 単結晶インゴットを 1本引き上げる毎に 1個の石英ルツポを消費したのでは、 単結晶育成コストを増大させる原因と なる。 単結晶育成コストを低減させるには、 石英ルツポの寿命が続く限り、 1つの石英ルツポを用いてできるだけ多くの単結晶ィンゴットを引き上げる ことが有効である。
阿部孝夫著「シリコン 結晶成長とゥエーハ加工」 1 9 9 4年 5月 2 0日、 株式会社培風館発行、 第 5 3〜 5 4ページ (文献 1 ) には、 多数インゴット 法が記載されている。 1本の単結晶インゴットの引き上げが完了した後、 原 料とドーパン卜を追加し、 成長を繰り返す。 1個のルツポから多数本引き上 げる。 単結晶あたりのルツポコストが低減することに加え、 インゴットの本
数が多くなるほど収率は向上する。 またホットゾーンの解体、 清掃などの作 業時間を大幅に短縮でき、 生産性を向上させる。
原料多結晶融液中に含まれる有害不純物、 例えば炭素や重金属などは、 凝 固時の分配係数が非常に小さい値であることから、 凝固時にこれら不純物の 大部分は固液界面の液相側に排除され、 融液中に残存し、 凝固の進行ととも に融液内不純物濃度が濃縮する。 そのため、 上記多数インゴット法において 同一の石英ルツポでの単結晶ィンゴット引き上げ本数が増大するとともに、 残存融液中の不純物濃度が増大し、 それとともに凝固単結晶中に取り込まれ る不純物濃度も増大し、 ついには単結晶の品質上許容できないレベルまで不 純物濃度が増大し、 たとえ石英ルツポが健全であってもその時点で単結晶の 育成を中止せざるを得なくなる。
1本の単結晶インゴット育成が完了し、 石英ルツポの残存融液中に次の単 結晶インゴット育成のための多結晶を装入するに先立ち、 残存融液の一部を 排除することができれば、 残存融液中に濃縮した不純物の総量を低減するこ とができるので、 品質上許容できる範囲で引き上げる単結晶の本数を増大す ることが可能となる。
特開平 6— 7 2 7 9 2号公報 (文献 2 ) においては、 チャンバ一内に揷入 したレセプ夕クルを用いてルツポ中の融液を吸引する方法が記載されている。 レセプタクルの下部にインレツト手段としてチューブ状部材を配置し、 チュ ーブ状部材の下部先端を融液中に浸漬しつつレセプ夕クル内部の圧力をチヤ ンバー内圧に比較して負圧とすることによって残存融液をレセプタクル内に 吸引する。 文献 2においては、 残存融液の少なくとも 5 0容量%を吸引した 場合に、 ルツポを交換することなく少なくとも 6つの結晶を成長させられる としている。
石英ルツポを継続使用して複数本の単結晶インゴットを引き上げるのでは なく、 一度使用した石英ルツポを回収して繰り返し使用する方法が特開 2 0
0 1—2 2 6 1 9 0号公報 (文献 3 ) に記載されている。 引上げ装置の成形 断熱材等として使用されている低密度炭素繊維成形体、 とりわけ使用済の低 密度炭素繊維成形体を廃材利用という形で石英ルツポ内の残液中に浸漬させ、 これに残液を吸収させることにより、 残液の全量を効率よく除去する。 その 後石英ルツポをメインチヤンバ内で徐々に冷却すると、 石英ルツポ内の残液 が除去されているため、 石英ルツポの割れが防止され、 再使用が可能な状態 で石英ルツポが回収されるとしている。 発明の開示
1つの石英ルツポを継続して使用しつつ複数本の単結晶ィンゴットを育成 する場合においては、 1本の単結晶インゴット育成が完了した後、 残存融液 に多結晶原料を追加して溶融し、 次の単結晶インゴット育成を開始する。 こ の方法では、 残存融液が少しでも残っている限り、 残存融液中の不純物は薄 められて次の育成単結晶中に取り込まれていく。 そのため、 例えば 1つの石 英ルツポを継続して使用しつつド一パント種の異なる単結晶ィンゴットを育 成しようとすると、 ドーパント種変更後の融液中には異なったドーパントが 共存することとなり、 これでは石英ルツポを継続使用しつつド一パント種の 変更を行うことが困難である。 また、 同じドーパント種の品種であっても、 前に育成した単結晶が低抵抗品 (ドーパン卜濃度が高い) であって次に育成 する単結晶が高抵抗品 (ドーパント濃度が低い) である場合には、 前の単結 晶を育成した後の残存融液中のド一パント濃度が高く、 新たに原料多結晶を 追加溶融しても低抵抗品を育成するに十分な程度にドーパント濃度を低下で きないことがある。 このような場合を、 継続育成を困難にする第 1の場合と 呼ぶ。
C Z法にて単結晶を育成中にチャンパ一内のカーボン製品が剥離して融液 中に落下したり、 融液上に存在する金属部材の一部が融液中に落下すること
がある。 力一ボン製品が落下すると融液中の炭素濃度が増大し、 金属製品が 落下すると融液中の重金属不純物濃度が増大し、 このままでは単結晶成を継 続することが不可能となる。 このような場合を、 継続育成を困難にする第 2 の場合と呼ぶ。
C Z法による単結晶育成においては、 融液表面から蒸発する S i〇とヒー 夕一を形成する高温のカーボン部材とが反応し、 これにより発生した C Oや C〇2ガスが融液中に取り込まれ、 融液中の炭素濃度が徐々に増大する。 1 つの石英ルツポを継続使用しつつ長時間かけて多数本の単結晶ィンゴットの 育成を行っていくと、 ついには継続した単結晶育成が困難になるレベルまで 炭素濃度が上昇することとなる。 このような場合を、 継続育成を困難にする 第 3の場合と呼ぶ。
以上第 1〜第 3の場合において、 継続した単結晶育成を困難にしている不 純物は、 いずれも残存融液中に含まれている。 従って、 1つの単結晶インゴ ット育成が完了した後の残存融液の全量を取り除くことができ、 併せて融液 取り除き操作そのものによる石英ルツポの汚染を防止することができれば、 上記のような場合にも石英ルツポの使用を継続して単結晶の引上げを行うこ とが可能となる。
前記文献 2に記載の方法では、 チューブ状部材の下部先端を融液中に浸漬 しつつ残存融液をレセプ夕クル内に吸引する方法を採用しているため、 石英 ルツポ内の残存融液全量を吸引することが困難であった。 従って、 文献 2の 方法を用いたのでは、 上記第 1〜第 3の場合いずれも、 残存融液吸引後に単 結晶の育成を継続することは困難であった。
前記文献 3に記載の方法では、 石英ルツボ内の残存融液の全量を吸引して 取り除くことは可能であるが、 残存融液を取り除いた後に引き続き新たな多 結晶原料を装入して溶融すると、 融液中の炭素濃度が異常に高くなることが あり、 これでは単結晶を継続して育成することが困難となる。 一方、 文献 3
に記載の方法において、 残存融液を取り除いた後に石英ルツポを回収し、 洗 浄して再度新たに使用するので、 このような場合には融液中の炭素濃度が異 常に増大する事態は発生しない。
本発明は、 石英ルツポ内の残存融液の実質的に全部を取り除き、 続いて当 該石英ルツポ内に原料を装入して単結晶の育成継続を可能にする C Z法によ る単結晶の育成方法を提供することを目的とする。
文献 3に記載の方法において、 石英ルツポ内の残存融液を除去した後に引 き続き石英ルツポ使用を継続した際には、 上記のとおり炭素濃度の異常上昇 が発生していた。 その理由について解明したところ、 残液中に浸漬させる低 密度炭素繊維成形体の表面近傍から炭素繊維の粉が離脱し、 これが石英ルツ ポの内表面に付着し、 その後に装入する原料融液中に混入して炭素濃度の異 常上昇原因となっていることが判明した。
これに対し、 石英ルツポ内に残存する融液を繊維成形体に吸い取らせるに 際し、 繊維成形体における残存融液吸い取り面を除く外面の一部又は全部を 固化処理し、 あるいは非繊維材料で被覆しておきさえすれば、 繊維成形体表 面近傍から離脱する炭素繊維粉が石英ルツポ内表面に付着することを防止で きることがわかった。 その結果、 石英ルツポ内の残存融液の実質的に全部を 取り除き、 その後継続して同一石英ルツポを使用しつつ単結晶の育成を行う ことが可能になった。
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、 その第 1は、 C Z法に よる単結晶の育成方法であって、 1の単結晶インゴット 2の育成を終了した 後、 石英ルツポ 4内に残存する融液を繊維成形体 7に吸い取らせることによ つて残存融液 8の実質的に全部を取り除き、 続いて石英ルツポ 4内に原料を 装入して別の単結晶インゴットの育成を行い、 繊維成形体 7は残存融液吸い 取り面 1 6を除く外面の一部又は全部を固化処理し、 あるいは非繊維材料で 被覆してなることを特徴とする単結晶の育成方法である。
ここにおいて、 繊維成形体 7の残存融液吸い取り面 1 6の形状は、 下に凸 の曲面をなしていると好ましい。 また、 繊維成形体 7の長さは、 C Z法引き 上げ装置のヒータ一 9の長さの 1 · 6倍以内であると好ましい。 さらに、 繊 維成形体 7に残存融液を吸い取らせる際の残存融液温度は、 残存融液の融点 + 1 5 から融点 + 4 5 °Cの範囲に調整することとすると好ましい。さらに、 繊維成形体 7の残存融液吸い取り面 1 6の直径は繊維成形体上部の直径より 小さく、 残存融液吸い取り時において C Z引き上げ装置の観察窓から残存融 液吸い取り面の外縁が視認可能であることとすると好ましい。
本発明は第 2に、 吊り下げ可能な繊維成形体 7であって、 繊維成形体 7は 炭素繊維を成形してなり、 繊維成形体 7は吊り下げ時に下端となる面を除く 外面の一部又は全部-を固化処理し、 あるいは非繊維材料で被覆してなること を特徴とする繊維成形体である。 ここにおいて、 繊維成形体 7の下端となる 面の形状は、 下に凸の曲面をなしていると好ましい。 図面の簡単な説明
第 1図は、 本発明の繊維成形体を配置した C Z引き上げ装置の全体を示す 図である。
第 2図は、 本発明の繊維成形体を配置した C Z引き上げ装置の全体を示す 図である。
第 3図は、 本発明の繊維成形体を配置した C Z引き上げ装置の全体を示す 図である。 '
第 4図は、 本発明の繊維成形体を示す図である。
第 5図は、 本発明の繊維成形体を示す図である。
第 6図は、 本発明の繊維成形体を示す図である。
第 7図は、 本発明法と従来法での単結晶中抵抗率の推移を示す図である。 第 8図は、 吸い取り前インゴットと吸い取り後インゴットでの単結晶炭素
濃度の推移を示す図である。
第 9図は、本発明法と従来法での単結晶中炭素濃度の推移を示す図である。 発明を実施するための最良の形態
本発明の単結晶の育成方法を適用する C Z引上げ装置としては、 通常に用 いられている C Z引上げ装置を用いることができる。 その 1例として第 1図 に示す単結晶シリコン c Z引上げ装置を例に挙げて説明する。
第 1図に示す C Z引上げ装置は、 引上げチヤンバ一 3およびメインチヤン バ一 1を有する。 引上げチャンバ一 3とメインチャンバ一 1との間にはゲー トバルブ 1 3が設けられ、 ゲートバルブ 1 3を閉とすることにより、 メイン チヤンバー内の真空を保持したままで引上げチャンバ一 3をメインチヤンパ 一 1から切り離すことができる。
メインチャンバ一内には原料を溶融するための石英ルツポ 4が配置され、 石英ルッポ 4はその外側を黒鉛ルッポ 5によつて支持されている。 黒鉛ルッ ポ 5は、 下方のルツポ軸 1 0によって支持され、 ルツポ軸 1 0の回転に伴つ て石英ルツポ 4が回転する。 黒鉛ルツポ 5の外周を囲むように黒鉛製のヒ一 夕一 9が配置され、さらにその外側を黒鉛製の断熱材 1 1が取り囲んでいる。 石英ルツポ 4内に原料多結晶シリコンを装入した後にチャンバ一内を真空 に排気し、 ヒーター 9による加熱で原料多結晶を溶融する。 引上げチャンバ —頂部から引上げワイヤー 3 2によって吊り下げられた種結晶を石英ルツポ 内の融液に接触し、 種結晶を融液からゆっくりと引上げ、 単結晶インゴット 2を育成する。
1本の単結晶ィンゴット 2の育成が完了すると、 単結晶ィンゴット 2は第 1図に示すように引上げチャンパ一 3内に引き上げられ、 ゲートバルブ 1 3 を閉とし、 育成が完了した単結晶インゴット 2を第 2図 (b ) に示すように 系外に取り出す。 メインチャンパ一内の石英ルツポ中には第 2図 (a ) に示
すように融液 8が残存している。 この石英ルツポ 4をそのまま用いて継続し て単結晶インゴット 2の育成を行う場合には、 追加の原料多結晶シリコンを 石英ルツポ内に装入する。 このとき前記文献 1に記載のように、 引上げチヤ ンバーから多結晶ロッドを降下させて溶融する方法を採用しても良い。 その 後、 単結晶インゴットの育成を行う。 このようにして、 連続して多数本の単 結晶を育成することができる。
本発明においては、 1本の単結晶インゴット育成が完了し、 次の単結晶ィ ンゴット育成を開始する前に石英ルツポ内に残存する融液 8の実質的に全部 を取り除く必要が生じたとき、 融液 8を第 4図〜第 6図に示すような繊維成 形体 7に吸い取らせる。 この繊維成形体 7は、 残存融液吸い取り面 1 6を除 く外面の一部又は全部を固化処理し、 あるいは非繊維材料で被覆してなるこ とを特徴としている。
本発明で用いる繊維成形体 7としては、 融液の融点以上でもその形状を保 ち、 融液を毛細管現象で吸い上げられかつ融液との反応性の弱い物質であれ ば特に限定するものではない。 繊維成形体 7として低密度の炭素繊維成形体 を用いることにより、 この条件を満足することができる。 低密度の炭素繊維 成形体は、 C Z引上げ装置の黒鉛製の断熱材 1 1として用いられているもの と同様の材質のものをそのまま用いることができる。 新たに炭素繊維材を用 いて成形加工したもの、 あるいはすでに C Z引上げ装置の断熱材として使用 したものを加工して用いてもいずれでも良い。 新たに炭素繊維成形体を用い て成形加工したものについては、 シリコンの融点以上の温度で焼成すること により、 繊維中に残存する不純物ガスを十分に排除しておくと好ましい。 繊 維成形体 7の嵩密度としては、 0 . 1〜0 . 6 g Z c m3とすると融液の吸 い上げを良好に行うことができる。 繊維成形体 7の形状としては、 円筒状、 円錐、 角柱、 角錐、 球など特に問わない。
本発明の繊維成形体 7は、単結晶引き上げ装置で吊り下げて使用するので、
吊り下げ可能な形状としている。 繊維成形体 7をケース 6内に格納する場合 には、 第 4図 (a ) に示すようにケース 6が吊り下げ可能な形状となってい る。 そして、 繊維成形体 7の残存融液吸い取り面 1 6は吊り下げ時に下端と なる面に該当する。
本発明の繊維成形体 8は、 残存融液吸い取り面 1 6を除く外面の一部又は 全部を固化処理し、あるいは非繊維材料で被覆する。繊維成形体の下端部は、 石英ルツポ内の残存融液に接触させて融液を吸い取る機能を有するため、 通 常は固化処理も被覆も行わない。 この面を残存融液吸い取り面 1 6という。 それ以外の外面部分については、 その全部を固化処理し、 あるいは被覆する と好ましい。 なお、 固化処理によっては、 融液吸い取り能力を有する処理も 可能である。 このような場合には、 残存融液吸い取り面 1 6に固化処理がな されていても良い。 繊維成形体の上面側については、 吸い取り時においても 温度がさほど上昇せず繊維の粉化も少ないので、 固化処理も被覆も行わない こととしても良い。
固化処理とは、 繊維成形体 8の外表面に現れた部分について、 繊維の粉が 飛散しないように固化する処理をいう。 第 4図 (b ) ( c ) においては、 繊 維成形体 7の残存融液吸い取り面 1 6を除くすべての面について固化処理が なされ、 固化処理層 1 7が形成されている。 固化処理層とは具体的には、 繊 維成形体とほぼ同じ成分で表面のコ一ティングを行ない高温熱処理を行ない 固化したものあるいは、 繊維成形体と似た成分のクロスを貼ったものとする ことができる。
非繊維材料での被覆とは、 第 4図 (a ) に示すように黒鉛製ケース 6、 あ るいは S i Cやカーボンでコーティングした材料を用いたケース 6の中に繊 維成形体 7を収納したり、 さらには繊維成形体の外側を黒鉛シートで取り囲 む処理をいう。 所定の強度を有するケース 6の中に繊維成形体 7を収納して 吸い取り治具 1 5とすれば、 融液を吸い取って重量が増加した繊維成形体 7
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10 を安定して保持することができるので好ましい。 また、 たとえ繊維成形体 7 が割れてもケース 6の中に収納されているので問題が生じることがない。 第 4図 (a ) に示す事例では、 繊維成形体 7をケース 6の中に収納すると ともに、 ケース 6から外方に突き出た繊維成形体の下端部分については、 残 存融液吸い取り面 1 6を除く外面についてさらに固化処理層 1 7で覆われて いる。
文献 3に記載の方法で石英ルツポ内の残存融液の全量を吸引して取り除く 場合、 残存融液を取り除いた後に引き続き新たな多結晶原料を装入して溶融 すると、 融液中の炭素濃度が異常に高くなることがあり、 単結晶を継続して 育成することが困難であった。 炭素濃度の異常上昇が発生する原因は、 炭素 繊維と炭素繊維の中に存在するごく微量の水分などが反応して炭素繊維が燃 焼し、 その結果成形体の表面近傍から炭素繊維の粉が離脱し、 これが石英ル ッポの内表面に付着し、 その後に装入する原料融液中に混入するためであつ た。
本発明においては、 繊維成形体 7における残存融液吸い取り面 1 6を除く 外面の一部又は全部を固化処理し、あるいは非繊維材料で被覆しているので、 融液吸い取り中においても炭素繊維の粉の離脱を防止することができ、 結果 としてその後継続して単結晶の育成を行っても単結晶中の炭素濃度が上昇す るトラブルが生じることがない。
1つの石英ルツポ 4を継続使用しつつ多数の単結晶ィンゴット 2を育成す るに際し、 途中でド一パント種を変更したり、 低抵抗品から高抵抗品に品種 変更を行う場合には、 残存融液の実質的に全部を取り除かない限り次の単結 晶を育成することができない。 また、 融液中に引上げ装置内のカーボン製品 や金属製品が落下した場合にも、 残存融液の実質的に全部を取り除かない限 り次の単結晶インゴットを育成することができない。 さらには、 長時間にわ たる単結晶インゴット引上げによって融液中の炭素濃度が上昇した場合にも、
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11 残存融液の実質的に全部を取り除かない限り次の単結晶インゴットを育成す ることができない。
本発明は石英ルツポ内に残存する融液 δを繊維成形体 7に吸い取らせるこ とによって残存融液 8の実質的に全部を取り除くことができ、 さらに吸い取 り作業に起因して石英ルツポ内を汚染することがないので、 上記いずれの場 合においても単結晶の育成をさらに継続することが可能となる。
ここにおいて、 残存融液の実質的に全部とは、 吸い取り前の残存融液質量 の 9 9 %以上を意味する。 この程度の量を吸い取り除去することにより、 残 存融液中の不純物の悪影響を取り除くことができるからである。 9 9 . 9 % 以上を取り除けばより好ましい。
本発明の繊維成形体の残存融液吸い取り面の形状は、 下に凸の曲面をなし ていることとすると好ましい。
繊維成形体 7の残存融液吸い取り面 1 6の形状がフラットでかつ広い面を 有する場合、石英ルツポの底部形状が湾曲していることに起因し、第 5図( c ) に示すように残存融液の吸い残しが発生する場合がある。本発明においては、 第 5図 (a ) に示すように繊維成形体の残存融液吸い取り面 1 6の形状を下 に凸の曲面とすることにより、 第 5図 (b ) に示すように残存融液の吸い残 しを防止することが可能となる。 吸い取り面の形状としては、 石英ルツポの 底面形状に沿うように湾曲させると最も好ましい。
—方、 残存融液吸い取り面の形状がフラットであっても、 その面がさほど 広い面でない場合には、 第 4図に示すように吸い残しは実際上問題のないレ ベルとすることが可能である。 使用するルツポ直径の 5 0 %以下の直径を有 する繊維成形体であれば、 吸い取り面の形状がフラットであっても実質上は 問題にならない。 通常用いられる直径の石英ルツポを用いる場合であれば、 吸い取り面の形状が直径 4 0 0 mm以下の円形、 あるいは短辺長さが 4 0 0 mm以下の矩形である場合には、 吸い取り面の形状がフラットであっても実
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12 質上は問題にならない。
繊維成形体 7の大きさとしては、 残存融液 8の全量を吸い取ることのでき る容積を有していればよい。 さらに、 本発明の繊維成形体 7の長さは、 C Z 法引き上げ装置のヒ一ターの長さの 1 . 6倍以内であることとすると好まし い。
石英ルツポ内の残存融液 8を毛細管現象を利用して繊維成形体 7に吸い取 るためには、 繊維成形体 7の温度が融液の融点以上の温度に保持される必要 がある。その温度が融点以下になると融液は固化するので吸い取れなくなる。 繊維成形体 7の温度を融点以上に保っためには、 C Z引上げ装置のヒー夕一 9の発熱を利用すると好ましい。 この場合、 繊維成形体 7の長さを C Z法引 き上げ装置のヒーター 9の長さの 1 . 6倍以内とすれば、 繊維成形体 7の全 長にわたって融点以上の温度を確保することができ、 好ましい。
繊維成形体 7に融液を吸い取らせるときの石英ルツポ 4とヒーター 9の位 置関係については、 融液位置をヒータ一 9の下端より低い位置とすると、 残 存融液 8が凝固し吸い取れなくなるため好ましくない。 そこで、 石英ルツボ 中の融液 8の位置をヒーター 9の下端位置付近とする。 繊維成形体 7の長さ がヒーター長さの 1 . 6倍以内であれば、 繊維成形体 7の吸い取り面 1 6を 融液中に浸漬した位置において繊維成形体 7の上端がややヒーター上端より も上方に位置する関係となり、 これであれば繊維成形体 7の温度を融液の融 点以上の温度に保持することが可能である。
例えば直径 4 6 0〜8 1 O mm程度の石英ルツポ 4を用いる場合であれば、 ヒーター 9の長さはおおむね 5 0 O mmから 6 0 O mm程度となるので、 繊 維成形体の長さを 8 0 O mm以下とすれば好ましい結果を得ることができる。 石英ルツポ中の残存融液の実質的に全部を吸い取るためには、 融液の温度 を十分に高く保つことが必要である。 融液温度が低いと融液が固まり、 吸い 取ることができない。 一方、 融液温度が高くなり過ぎると石英ルツポ内で融
液が沸騰し、 石英ルツポの側面に液滴が飛び散って付着するため、 残存融液 の実質的に全部を取り除くことが困難となる。
本発明においては、 繊維成形体 7に残存融液 8を吸い取らせる際の残存融 液温度は、 残存融液 8の融点 + 1 5 °Cから融点 + 4 5 °Cの範囲に調整するこ ととすると好ましい。 シリコン融液の場合、 シリコンの融点は 1 4 1 5 °C前 後であるため、 吸い取り開始時の融液温度を 1 4 3 0 °C〜 1 4 6 0 Cの間に 制御すると良い。
石英ルツボ内の残存融液の実質的に全部を取り除くためには、 吸い取りを 行いながら吸い取り状況を確認することが重要である。 繊維成形体を吊り下 げるワイヤ一にかかる重量を測定し、 重量の変化から概略の吸い取り量を計 測することは可能である。 しかし、 当初残存融液量と吸い取り量とを正確に 評価できない限り吸い取り完了を正確に把握することは困難であり、 この方 法は実用的とは言えない。
最も正確に融液の残存状況を把握する方法は、 石英ルツポ内の残存融液の 有無を目視で確認することである。 本発明においては、 第 6図に示すように 繊維成形体 7の残存融液吸い取り面 1 6の直径は繊維成形体上部の直径より 小さく、 残存融液吸い取り時において C Z引き上げ装置の観察窓 3 3から残 存融液吸い取り面の外縁が視認可能であることとすると好ましい。 これによ り、 引上げ装置の観察窓 3 3を通じて残存融液の実質的に全部が吸い取られ たことを確認することができ、確実に吸い取りを完了することが可能となる。 次に、 本発明の繊維成形体を用いた残存融液の吸い取り方法について、 第 1図〜第 3図に基づいてより具体的に説明を行う。
ここで説明する実施の形態では、 ゲートバルブ 1 3と引上げチャンパ一 3 との間に支持装置 2 0が配置されている。 引上げチャンバ一 3が単結晶イン ゴット 2の引上げと回収の役割を担い、 支持装置 2 0が繊維成形体 7の吊り 下げ、 融液の吸い取り、 繊維成形体の回収の役割を担う。 支持装置 2 0は、
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14 支持チャンバ一 2 1、格納部 2 2、移動式プーリエ 2 3、巻き取り装置 2 6、 プーリエ移動機構 2 4、 ワイヤー 2 5から成り立つている。
吸い取りを実施する直前の結晶育成にあたっては、 石英ルツポ内の残存融 液量を極力少なくすべく育成を行う。 直径 5 6 0 mmの石英ルツポ 4を用い た C Zシリコン引上げの場合であれば、 引上げ完了後の融液残存量を 1 0 k gまで低減しておくと好ましい。
引上げを完了した単結晶ィンゴット 2を第 1図に示すように引上げチヤン パー 3内に引き抜き、 第 2図に示すようにゲートバルブ 1 3を閉じて引上げ チャンバ一 3と支持装置 2 0とを橫移動する。 この実施の形態では、 引上げ チャンバ一 3を第 2図 (b ) の位置に移動してその位置で引き上げた単結晶 インゴット 2を回収し、 支持装置 2 0は第 2図 (c ) の位置に移動する。
この実施の形態で使用する繊維成形体 7は、 炭素繊維を成形したものであ り、 上部は円筒形をなし、 残存融液吸い取り面 1 6を含む部分は直径がやや 小さい円筒形である。 残存融液吸い取り面 1 6の形状は平面としている。 こ のような形状の繊維成形体 7を、 第 4図 (a ) に示すように黒鉛製のケース 6に収納し、 残存融液吸い取り面 1 6を含む部分のみをケース 6の底部から 下方に突き出させている。 残存融液吸い取り面 1 6は炭素繊維がそのまま現 れており、 残存融液吸い取り面を含む円筒形の外周部については繊維成形体 と同じような成分で特殊コ一ティングによって被覆している。 繊維成形体の 全体長さはヒーター長さよりもやや長い形状としている。 また、 繊維成形体 の残存融液吸い取り面の直径は繊維成形体上部の直径より小さく、 残存融液 吸い取り時において C Z引き上げ装置の観察窓から残存融液吸い取り面の外 縁が視認可能である。
支持装置 2 0の格納部 2 2の中に格納されている移動式プーリエ 2 3がプ 一リエ移動機構 2 4によって移動し、 プーリエ先端のワイヤー 2 5が支持チ ヤンバー 2 1の中心に位置するようにセットされる。 ワイヤー 2 5はタンダ
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15 ステン製のワイヤ一を用いている。
ケース 6に収納した繊維成形体 7をワイヤー 2 5に取り付けて支持装置 2 0に吊り下げ、 そのまま支持装置 2 0を移動して第 3図に示すようにゲート バルブ 1 3の上部に配置する。 同様に単結晶インゴット 2の回収を終了した 引上げチャンバ一 3を移動して支持装置 2 0の上部に配置する。
メインチヤンバ一内のヒ一ター 9と石英ルツボ 4の位置関係については、 石英ルツポ内の残存融液 8がヒー夕一 9の下端付近に位置するように調整し ておく。 残存融液 8の温度を 1 4 3 0 °Cから 1 4 6 0 °Cの間に制御する。 融 液の温度制御は放射温度計 1 4によつて温度を計測して行うことができる。 アルゴンガスによって支持装置 2 0と引上げチャンバ一 3内を十分に置換 した後にゲートバルブ 1 3を開とし、 支持装置 2 0の巻き取り装置 2 6を操 作してワイヤ一 2 5を繰り出し、 繊維成形体 7を下降させる。 繊維成形体 7 が融液 8に接触する直前の位置で停止し、 ヒーター加熱によって繊維成形体 7の温度を高温に保持する。 少なくとも 1 0分以上保持することにより、 繊 維成形体 7の温度を必要な温度に上昇させることができる。 繊維成形体 7の 温度が十分に高くなつていないと、 融液 8を吸い取り始めた際に融液が固ま つてしまい、 残存融液 8の実質的に全部を吸い取ることが困難となる。
繊維成形体 7の温度を十分に高い温度とした後、 繊維成形体 7をさらに下 降させて繊維成形体 7を融液 8に浸漬させる。 数分で融液の実質的に全部を 吸い取ることができる。 メインチャンバ一に設置された観察窓から残存融液 の吸い取り状況を確認することができるので、 完全に吸い取つたことを目視 で確認する。
融液を吸い取つた繊維成形体 7を巻き取り装置 2 6を用いて支持チヤンパ 一 2 1の位置まで巻き上げ、 ゲートバルブ 1 3を閉とする。 その後支持装置 2 0をメインチャンバ一 1の横位置まで移動させ、繊維成形体 7を取り出す。 その後、 引上げチャンバ一 3のワイヤー 3 2を利用して次の単結晶育成の
原料を石英ルツポ内に装入する。 原料としてはロッド状の多結晶シリコンや 粒状多結晶シリコン、 ナゲット状多結晶シリコンを用いることができる。 大 きな塊を引上げチャンバ一から直接投入すると石英ルツポが破損するので、 石英ルツポに衝撃を与えないように原料を装入することが重要である。
同一の石英ルツポを用いた多数インゴット引き上げを行うに際し、 従来は 品種制約があり、 少量多品種の製造を 1つの石英ルツポで行う上で種々の制 約があった。 これに対し、 本発明の融液吸い取りを行うことにより、 新たに 石英ルツポを準備して別ルツポで引き上げを開始しなくても良いため、 結晶 成長ェ期を短縮することができ、 石英ルツポの寿命限度までルツポを使用す ることができるのでルツポコストを安くすることができる。 また、 p型から n型へ、 あるいは低抵抗率材から高抵抗率材への品種変更等、 急な注文変更 にもコスト ·生産性を犠牲にせずに対応することが可能となる。
同一石英ルツポで多数ィンゴットを引き上げるに際し、 何らかのトラブル によって石英ルツポ中の融液が汚染された場合において、 従来であればその 時点で引き上げを中止せざるを得なかったが、 本発明を適.用することによつ て汚染融液を取り除いて引き上げを継続することが可能となり、 その効果は 大きい。
(実施例 1 )
直径 5 6 0 mmの石英ルツポに多結晶シリコン原料を 1 0 0 k g装入して、 直径 2 0 0 mmゥエーハ用の単結晶シリコンインゴット (以下 「8インチイ ンゴット」 ともいう。 ) を引上げ可能な C Z引上げ装置を用い、 本発明を適 用した。
繊維成形体 7としては、 密度 0 . 4 5 g Z c m3の炭素繊維を成形し、 第 4図 (b ) に示すような円筒形の形状としたものを用いた。 繊維成形体 7の 容積は 6 3 6 0 c m3である。 繊維成形体 7の上部は直径 1 2 0 mmの円筒 形をなし、 残存融液吸い取り面 1 6を含む部分は直径 6 0 mmの円筒形であ
る。 残存融液吸い取り面 1 6の形状は平面としている。 繊維成形体の外周部 は、 残存融液吸い取り面 1 6を除いて固化処理を行い、 固化処理層 1 7で被 覆されている。 固化処理は、 繊維成形体と同じような成分で特殊コ一ティン グし熱処理したものとした。 繊維成形体 7の全体長さは 6 0 0 mmであり、 ヒータ一長さ ( 5 0 0 mm) よりもやや長い形状としている。 また、 繊維成 形体の残存融液吸い取り面 1 6の直径は繊維成形体上部の直径より小さく、 第 6図 (b ) に示すように残存融液吸い取り時において C Z引き上げ装置の 観察窓 3 3から残存融液吸い取り面 1 6の外縁が視認可能である。
繊維成形体 7を炉内に挿入して吸い取りを行わせるため、 第 1図に示すよ うな支持装置 2 0を準備した。 支持装置 2 0は、 支持チャンパ一 2 1、 格納 部 2 2、 移動式プーリエ 2 3、 巻き取り装置 2 6、 プーリエ移動機構 2 4、 ワイヤー 2 5から成り立っている。
まず、 直径 5 6 0 mmの石英ルツポ 4に多結晶シリコン原料を 1 0 0 k g 装入して、 抵抗率 1 Ω c mの低抵抗率シリコン 8インチインゴットであって 質量 9 0 k gのものを引上げ、 次いで多結晶シリコン原料を 9 0 k g装入し て 1本目と同様のインゴットを引き上げた。 2本目インゴットの結晶長さ毎 の抵抗率は、 第 7図に 「2本目」 として記載されている抵抗率分布を示して いる。 石英ルツポ中には 1 0 k gの融液 8が残存している。
3本目に引き上げる単結晶は 2 5 Ω c mの高抵抗品である。 2本目に引き 上げた単結晶が低抵抗品であるため残存融液中には高濃度でドーパントが残 存している。 従って残存融液 8の実質的に全部を取り除かないと 3本目の高 抵抗単結晶を製造することができない。 そこで、 本発明を適用して残存融液 8を吸い取ることとした。
残存融液吸い取りのための事前準備として、ゲートバルブ 1 3を閉とし(第 2図 (a ) ) 、 引上げチャンバ一 3と支持装置 2 0とをメインチャンバ一位 置から横移動した (第 2図 (b ) ( c ) ) 。 第 2図 (d ) に示すように、 支
持装置 2 0の格納部 2 2の中に格納されている移動式プーリエ 2 3をプーリ ェ移動機構 2 4によって移動し、 支持チャンバ一 2 1の中心位置にセッ卜し た。 この状態で支持装置 2 0のワイヤー 2 5に繊維成形体 7を取り付け、 巻 き取り装置 2 6で吊り下げて繊維成形体 7を支持チャンバ一内に格納した。 支持装置 2 0と引上げチャンバ一 3とを第 3図に示すようにゲートバルブ 1 3の上の元の位置に戻し、 支持チャンパ一 3と引上げチャンバ一 2 1の内 部をアルゴンガスで 1 0分間置換した後にゲートバルブ 1 3を開けた。 次に 支持装置 2 0のワイヤ 2 5に結合されている繊維成形体 7を下降させ、 融液 8に接触する直前で止めて 2 0分間保持した。 このとき、 石英ルツポ内の残 存融液 8がヒーターの下端付近に位置するように調整し、 残存融液 8の温度 が 1 4 5 0 °Cになるように、 放射温度計 1 4で融液温度を測温しながら温度 調整を実施した。
2 0分間の保温後、 繊維成形体 7をさらに下降させて残存融液吸い取り面 1 6を融液中に浸漬させた。 約 2分間で残存融液 8の実質的に全部を吸い取 ることができた。 完全に吸い取つたことを第 6図 (b ) に示すようにメイン チャンパ一の観察窓 3 3から目視で確認し、 繊維成形体 7を巻き取り装置 2 6を用いて巻き上げ、 ゲートバルブ 1 3を閉とした。 その後支持装置 2 0を 横移動し、 繊維成形体 7を取り出し、 再度支持装置 2 0と引上げチャンバ一 3とをゲートバルブ 1 3の上に配置した。
その後、 引上げチャンバ一 3のワイヤーを利用して新たに 1 0 0 k gの原 料多結晶シリコンとドーパントとを石英ルツポ内に装入し、 8ィンチインゴ ットの引上げを行った。 石英ルツポ内の残存融液がゼロの状態で新たな原料 を装入したので、 ィンゴットトップ部で抵抗率が 2 5 Ω c mという高抵抗に もかかわらず、目標どおりの品質を有する単結晶を引き上げることができた。 残存融液を吸い取らずに 3本目の単結晶引上げを行う従来方法では、 第 7 図に 「従来法 3本目」 と記載したグラフのように、 インゴットトップ部の抵
抗率を 8 Ω c mよりも高い値とすることができなかったが、 本発明を適用す ることにより、 第 7図に 「本発明法 3本目」 と記載したグラフのように、 2 5 Ω c mという高抵抗のインゴットを引き上げることができた。
1本目のインゴットを引き上げた後に上記と同様の方法を用いて融液の吸 い取りを行い、 2本目のインゴット引上げを行った。 この 2本のインゴット の直胴部最ポトムについて I C P— M Sを用いて不純物分析を行い、 不純物 濃度の比較を行った。 結果を表 1に示す。 この結果から明らかなように、 残 存融液吸い取りの前後でインゴット中の不純物濃度に差は見られず、 残存融 液吸い取りに起因する不純物汚染が発生していないことが明らかである。
1 ]
(実施例 2 )
上記実施例 1と同様の引上げ装置を用いて同様に質量 9 0 k gの 8インチ インゴット引上げを行った。 石英ルツポ中の残存融液 (1 0 k g ) 中に新た な原料多結晶シリコンを装入した上で、 2本目のインゴット引き上げを行お うとしている。
1本目の引き上げが完了したとき、 当該 1本目のインゴットについて固化 率 8 0 %位置の炭素迅速分析を行ったところ、 炭素濃度が高すぎることが判 明した。 このまま、 2本目のインゴット引き上げを行うと、 残存融液中の炭 素が高濃度であるため、 2本目インゴットについても炭素濃度が高めに外れ ることが予想される。
そこで、 ただちに上記実施例 1と同様の方法によって残存融液の吸い取り
を行った。 その後新たに原料多結晶シリコンを 1 0 0 k g装入して 2本目の ィンゴットを引き上げた。
1本目と 2本目インゴットそれぞれについて、 ィンゴットの固化率を横軸 にとつて炭素濃度を評価したところ、 第 8図に示すように 2本目インゴット の炭素濃度は正常な値を示し、 残存融液吸い取りの効果が得られていること がわかった。
(実施例 3 )
上記実施例 1と同様の引上げ装置を用いて同様に質量 9 0 k gの 8インチ インゴット引上げを行った。 本発明例では第 4図 (a ) に示すように繊維成 形体 7を黒鉛製のケース 6に格納したものを用い、 比較例では繊維成形体 7 の外面を固化処理もせずケースにも収納していないものを用いた。
本発明例、 比較例それぞれ、 残存融液を繊維成形体で吸い取つ,た後に単結 晶インゴットを引き上げ、 それぞれの単結晶インゴットについて固化率を横 軸に単結晶中の炭素濃度を評価した。 結果を第 9図に示す。 比較例 (♦) は 単結晶中の炭素濃度が高かったのに対し、 本発明例 (園) は単結晶中の濃度 を低く抑えることができた。 比較例においては、 繊維成形体の外面を固化処 理もせずケースにも格納しなかったため、 融液吸い取り中に繊維成形体の外 周部が粉化して石英ルツポ内に落下し、 次に引き上げる単結晶インゴットの 炭素濃度増大の原因になったものと考えられる。 産業上の利用可能性
育成する品種が変更になる場合、 カーボン製品や金属製品がルツポ内融液 に落下した場合、 長時間の育成によって融液中の炭素濃度が増大した場合に おいても、 本発明により、 石英ルツポ内の残存融液の実質的に全部を取り除 き、 その後継続して同一石英ルツポを使用しつつ単結晶の育成を行うことが 可能になるので、 石英ルツポコストを低減し、 原料歩留りを向上し、 併せて
生産性を向上することが可能となる。