明 細 書
潜在型 TGF- βの活性化抑制剤
技術分野
[0001] 本発明は、潜在型トランスフォーミング ·グロース ·ファクタ 13 (transforming growth factor- β、以下「TGF- β」と ヽぅ。)の活性化抑制剤、 TGF- β活性化抑制物 質のスクリーニング方法、および TGF- |8が関与する疾患の治療薬に関する。
背景技術
[0002] TGF- βは、細胞増殖'分化、細胞外マトリックス合成、アポトーシス、免疫機能など の制御等、多彩な生理活性を有するサイト力インとして知られており、その機能不全 は、ヒトの病態、例えば癌、糸且織の線維化、自己免疫疾患等に関連していることが知 られて ヽる (非特許文献 1参照)。
[0003] TGF- βは不活性の潜在型分子として分泌されるため、生理作用を発揮するために は細胞から分泌された後に活性化を受ける必要がある (非特許文献 2参照)。潜在型 TGF- βの活性ィ匕段階を制御することは TGF- βの活性を制御することにつながるこ とから、その活性化機構が精力的に研究されている。これまでに、プロテアーゼによ る潜在型 TGF- j8の限定分解を介した機構、細胞表面分子への結合に伴う構造変化 を介した機構、またはその両者を組み合わせた機構等が報告されている。例えば、 潜在型 TGF- を限定分解するプロテアーゼとして、プラスミン (非特許文献 3参照)、 マトリックスメタ口プロテアーゼ (非特許文献 4参照)等が報告されて ヽる。潜在型 TGF- 18力結合し、その構造を変化させる細胞表面分子として、トロンボスボンジン 1 (非特許文献 5参照)、インテグリン α V j8 6 (非特許文献 6参照)等が報告されて ヽる 。インテグリン α ν 8への結合とそれに伴う構造変化により、マトリックスメタ口プロテア ーゼによる限定分解が生じるという機構も報告されている (非特許文献 7参照)。
[0004] 一方、潜在型 TGF- βを構成するタンパク質であるラテンシー ·ァソシエイテッド ·ぺ プチド(Latency Associated Peptide, 以下「LAP」 t 、う。)の部分断片が、潜在型 TGF- |8の活性化を促進すること、該部分断片が血管内皮細胞の表面に結合するこ とが報告されて ヽる (非特許文献 8参照)。
[0005] ビメンチンは、多くの種類の細胞に存在する中間径フィラメントのサブユニットタンパ ク質であり、ビメンチン繊維として細胞質に網目状構造で存在する。ビメンチンに結 合する物質としては、抗ビメンチンモノクローナル抗体が知られている。抗ビメンチン モノクローナル抗体 VIM3B4は、げっ歯類以外の哺乳動物のビメンチンに結合し、そ の認識部位はビメンチンの第二ロッド領域であることが報告されて 、る(非特許文献 9 参照)。また、抗ビメンチンモノクローナル抗体 V9 (非特許文献 9参照)は、ヒトマクロフ ァージの活性ィ匕に伴い細胞表面または細胞外に分泌されるビメンチンに結合し得る ことが報告されて ヽる (非特許文献 10参照)。
[0006] 非特許文献 1:「-ュ一'イングランド 'ジャーナル'ォブ 'メデイシン(New England Journal of Medicine)」、 2000年、第 342卷、 p. 1350—1358
非特許文献 2:「ジャーナル ·ォブ ·セル ·サイエンス (Journal of Cell Science)」、 2003 年、第 116卷、 p. 217- 224
非特許文献 3:「ジャーナル ·ォブ ·セル ·バイオロジー(Journal of Cell Biology)」、19 89年、第 109卷、 p. 309 - 315
非特許文献 4 :「ジーンズ'アンド'デベロップメント(Genes and Development)」、 2000 年、第 14卷、 p. 163 - 176
非特許文献 5 :「サイト力イン 'アンド'グロース'ファクタ一'レビュー(Cytokine and
Growth Factor Review) 11, 59—69 (2000)」、 2000年、第 11卷、 p. 59— 69 非特許文献 6 :「セル(Cell)」、 1999年、第 96卷、 p. 319 - 328
非特許文献 7 :「ジャーナル'ォブ 'セル'バイオロジー(Journal of Cell Biology)」、 20
02年、第 157卷、 p. 493 - 507
非特許文献 8 :「エンドセリウム(Endothelium)」、 2002年、第 9卷、 p. 25— 36 非特許文献 9 :「ェタスペリメンタル'セル'リサーチ(Experimental Cell Research)」、 1
992年、第 201卷、 p. 1 - 7
非特許文献 10 :「ネイチヤ^ ~ ·セル'バイオロジー(Nature Cell Biology)」、 2003年、 第 5卷、 p. 59 - 63
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0007] 本発明は、潜在型 TGF- βの活性化抑制剤、 TGF- β活性ィ匕抑制物質のスクリー- ング方法、または TGF- βが関与する疾患の治療薬を提供することを目的とする。 課題を解決するための手段
[0008] 本発明は、以下の(1)〜(10)に関する。
(1) ビメンチンと LAPの部分断片との結合を阻害する物質を有効成分として含有す る潜在型 TGF- βの活性化抑制剤。
(2) ビメンチンと LAPの部分断片との結合を阻害する物質力 ビメンチンと LAPの部 分断片との結合を阻害する活性を有する抗ビメンチン抗体または該抗体断片である 、上記(1)の TGF- β活性化抑制剤。
(3) LAPの部分断片が配列番号 1〜16のいずれかで表されるアミノ酸配列を有す るペプチドである、上記(1)または(2)の 、ずれか 1つの TGF- β活性化抑制剤。
(4) (i) LAPの部分断片を、ビメンチンおよび TGF- |8を発現する細胞に添加して、該 細胞に結合する該部分断片量を測定すること、
(ii) LAPの部分断片およびスクリーニングの対象となる物質を、ビメンチンおよび TGF- |8を発現する細胞に添加して、該細胞に結合する該部分断片量を測定するこ と、
(iii) (i)および (ii)の測定量から、該物質の、 LAPの部分断片と TGF- を発現する細 胞との結合阻害活性を評価すること、
(iv)該結合阻害活性を有する物質を TGF- β活性化抑制物質として選択すること、 力もなる TGF- β活性ィ匕抑制物質のスクリーニング方法。
(5) ビメンチンと LAPの部分断片との結合を阻害する物質を有効成分として含有す る、 TGF- |8が関与する疾患の治療薬。
(6) TGF- βが関与する疾患が動脈硬化症、癌、炎症、線維症である、上記(5)の 治療薬。
(7) ビメンチンと LAPの部分断片との結合を阻害する物質を被験体に投与する工程 を包含する TGF- β活性化抑制方法。
(8) ビメンチンと LAPの部分断片との結合を阻害する物質を被験体に投与する工程 を包含する TGF- |8が関与する疾患の治療方法。
(9) TGF- β活性化抑制剤の製造のための、ビメンチンと LAPの部分断片との結合 を阻害する物質の使用。
(10) TGF- |8が関与する疾患の治療薬の製造のための、ビメンチンと LAPの部分断 片との結合を阻害する物質の使用。
発明の効果
[0009] 本発明により、ビメンチンと LAPの部分断片との結合を阻害する物質を有効成分と して含有する潜在型 TGF- βの活性化抑制剤、または TGF- β活性化抑制物質のス クリーニング方法が提供される。本発明の TGF- |8の活性ィ匕抑制剤は、 TGF- 力 S関 与する疾患の治療薬として利用することができる。
図面の簡単な説明
[0010] [図 1]図 1は、 BAECに対する潜在型 TGF- β活性化ペプチドの結合度 (RLU/ゥエル) を示す図である。「Peptide- 25」のカラムは 100 /z g/mlの Peptide- 25、「Peptide- 25 + AbJのカラムは 100 μ g/mlの Peptide- 25および 5 μ g/mlの抗ビメンチン抗体 VIM3B4、「 Peptide-25NJのカラムは 100 μ g/mlの Peptide-25N、「Peptide-25N+Ab」のカラムは 100 μ g/mlの Peptide- 25Νおよび 5 μ g/mlの VIM3B4をそれぞれ添カ卩した場合の結合 度を示す。 * *は、スチューデントの t検定において、危険率 1%未満で有意差があ ることを示す。
[図 2]図 2は、 BAECを剃刀で剥離した後、剥離部分に遊走してきた観察視野当たり の細胞数(個/ HPF)を示す図である。「Control+NI」のカラムは 5 μ g/mlの非免疫マ ウス IgG、 rpeptide-21 +NIJのカラムは 100 μ g/mlの Peptide- 21および 5 μ g/mlの IgG 、「Peptide- 21 +Ab」のカラムは 100 μ g/mlの Peptide- 21および 5 μ g/mlの抗ビメンチ ン抗体 V9、「Peptide- 25+NIJのカラムは 100 μ g/mlの Peptide- 25および 5 μ g/mlの IgG, rpeptide-25+AbJのカラムは 100 μ g/mlの Peptide- 25および 5 μ g/mlの V9をそ れぞれ添加した場合の細胞数を示す。 *および * *は、スチューデントの t検定にお いて、それぞれ危険率 5%および 1%未満で有意差があることを示す。
[図 3]図 3は、 BAECに対する潜在型 TGF- β活性化ペプチドの結合度 (RLU/well)を 示す図である。「Peptide- 25+KM511」のカラムは 100 μ g/mlの Peptide- 25および 5 μ g/mlの抗 G- CSF変異体抗体 KM511、「Peptide- 25 + ΚΜ3565」のカラムは 100 g/ml
の Peptide- 25および 5 μ g/mlの抗ビメンチン抗体 ΚΜ3565、「Peptide- 25N+KM511Jの カラムは 100 μ g/mlの Peptide- 25Νおよび 5 μ g/mlの KM511、「Peptide- 25Ν+ KM3565Jのカラムは 100 μ g/mlの Peptide- 25Νおよび 5 μ g/mlの ΚΜ3565をそれぞれ 添加した場合の結合度を示す。 * *は、スチューデントの t検定において、危険率 1% 未満で有意差があることを示す。
[図 4]図 4は、酵素免疫測定法により測定した、モノクローナル抗体 KM3565のヒトビメ ンチン部分ペプチドに対する反応性を示す図である。上段が化合物 1を、下段が化 合物 2を、それぞれ固層化したプレートを用いた測定結果を示す。 X軸は添加した KM3565の濃度を、 Y軸は抗体の結合度を表す吸光度をそれぞれ示す。
[図 5]図 5は、酵素免疫測定法により測定した、モノクローナル抗体 KM3565のヒトビメ ンチン蛋白に対する反応性を示す図である。上段がビメンチン蛋白を、下段が大腸 菌由来夾雑蛋白を、それぞれ固層化したプレートを用いた測定結果を示す。 X軸は 添加した KM3565の濃度を、 Y軸は抗体の結合度を表す吸光度をそれぞれ示す。
[図 6]図 6は、酵素免疫測定法により測定した、市販抗ビメンチン抗体 (▲; VIM3B4, 國; V9)の化合物 1およびビメンチン蛋白に対する反応性を示す図である。上段が化 合物 1を、下段がビメンチン蛋白を、それぞれ固層化したプレートを用いた測定結果 を示す。
発明を実施するための最良の形態
本発明において、ビメンチンと LAPの部分断片との結合を阻害する物質としては、 該阻害活性を有する物質であれば、合成化合物でも天然物質でも特に制限なく用 いることができるが、好ましくは、ビメンチンと LAPの部分断片との結合を阻害する活 性を有する抗ビメンチン抗体もしくは該抗体断片またはそれらの誘導体が用いられる 抗ビメンチン抗体もしくは該抗体断片またはそれらの誘導体のうち、ビメンチンと LAPの部分断片との結合を阻害する活性を有するものの選択方法としては、後述の 、本発明の TGF- |8の活性ィ匕を抑制する物質のスクリーニング方法を用いることがで きる。
本発明に用いる抗ビメンチン抗体は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗
体を包含する。
[0012] モノクローナル抗体としては、ノ、イブリドーマが産生する抗体、ヒト化抗体およびヒト 抗体等があげられる。
ノ、イブリドーマとは、ヒト以外の哺乳動物に抗原を免疫して取得された B細胞と、マ ウス等に由来するミエローマ細胞とを細胞融合させて得られる、所望の抗原特異性を 有したモノクローナル抗体を産生する細胞である。
ヒト化抗体としては、ヒト型キメラ抗体、ヒト型相同性決定領域 (complementarity determining region,以下「CDR」という。)移植抗体等があげられる。
[0013] ヒト型キメラ抗体は、ヒト以外の動物の抗体重鎖可変領域 (以下、重鎖は H鎖として、 可変領域は V領域として「HV」または「VH」とも ヽぅ。)および抗体軽鎖可変領域 (以 下、軽鎖は L鎖として「LV」または「VL」ともいう。)とヒト抗体の重鎖定常領域 (以下、 定常領域は C領域として「CH」とも 、う。)およびヒト抗体の軽鎖定常領域 (以下「CL」 ともいう。)とからなる抗体を意味する。ヒト以外の動物としては、マウス、ラット、ハムス ター、ラビット等、ハイプリドーマを作製することが可能であれば、いかなるものも用い ることがでさる。
[0014] 本発明に用いるヒト型キメラ抗体は、ビメンチンに特異的に反応するモノクローナル 抗体を生産するハイブリドーマより、 VHおよび VLをコードする cDNAを取得し、ヒト抗 体 CHおよびヒト抗体 CLをコードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターにそれ ぞれ挿入してヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより 発現させ、製造することができる。
ヒト型キメラ抗体の CHとしては、ヒトイムノグロブリン (以下「hlg」という。)に属すれば いかなるものでもよいが、 hlgGクラスのものが好適であり、更に hlgGクラスに属する hIgGl、 hIgG2、 hIgG3、 hIgG4といったサブクラスのいずれも用いることができる。また、 ヒト型キメラ抗体の CLとしては、 hlgに属すればいかなるものでもよぐ κクラスまたは λクラスのちのを用いることがでさる。
[0015] ヒト型キメラ L鎖とは、ヒト以外の動物の VLとヒト抗体の CLとからなる抗体 L鎖を意味 する。ヒト以外の動物としては、マウス、ラット、ノ、ムスター、ラビット等、ハイプリドーマ を作製することが可能であれば、いかなるものも用いることができる。
本発明に用いるヒト型キメラ L鎖は、ビメンチンに特異的に反応するモノクローナル 抗体を生産するハイブリドーマより、 VLをコードする cDNAを取得し、ヒト抗体 CLをコ ードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターに挿入してヒト型キメラ L鎖発現べ クタ一を構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。 ヒト型キメラ L鎖の CLとしては、 hlgに属すればいかなるものでもよぐ κクラスまたは λクラスのちのを用いることがでさる。
[0016] ヒト型キメラ Η鎖とは、ヒト以外の動物の VHとヒト抗体の CHとからなる抗体 Η鎖を意味 する。ヒト以外の動物としては、マウス、ラット、ノ、ムスター、ラビット等、ハイプリドーマ を作製することが可能であれば、いかなるものも用いることができる。
[0017] 本発明に用いるヒト型キメラ Η鎖は、ビメンチンに特異的に反応するモノクローナル 抗体を生産するハイブリドーマより、 VHをコードする cDNAを取得し、ヒト抗体 CHをコ ードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターに挿入してヒト型キメラ H鎖発現べ クタ一を構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。 ヒト型キメラ H鎖の CHとしては、 hlgに属すればいかなるものでもよいが、 hlgGクラス のものが好適であり、更に hlgGクラスに属する hIgGl、 hIgG2、 hIgG3、 hIgG4といった サブクラスの 、ずれも用いることができる。
[0018] ヒト型 CDR移植抗体は、ヒト以外の動物の抗体の VHおよび VLの CDRのアミノ酸配 列をヒト抗体の VHおよび VLの適切な位置に移植した抗体を意味する。
本発明に用いるヒト型 CDR移植抗体は、ビメンチンに特異的に反応するヒト以外の 動物の抗体の VHおよび VLの CDR配列を任意のヒト抗体の VHおよび VLの CDR配列 に移植した V領域をコードする cDNAを構築し、ヒト抗体の CHおよびヒト抗体の CLをコ ードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型 CDR移 植抗体発現ベクターを構築し、該発現ベクターを動物細胞へ導入することによりヒト 型 CDR移植抗体を発現させ、製造することができる。
ヒト型 CDR移植抗体の CHとしては、 hlgに属すればいかなるものでもよいが、 hlgGク ラスのものが好適であり、更に hlgGクラスに属する hIgGl、 hIgG2、 hIgG3、 hIgG4といつ たサブクラスのいずれも用いることができる。また、ヒト型 CDR移植抗体の CLとしては 、 hlgに属すればいかなるものでもよぐ κクラスまたは λクラスのものを用いることがで
きる。
[0019] 本発明に用いるヒト型 CDR移植キメラ L鎖は、ビメンチンに特異的に反応するヒト以 外の動物の抗体の VLの CDR配列を任意のヒト抗体の VLの CDR配列に移植した V領 域をコードする cDNAを構築し、ヒト抗体の CLをコードする遺伝子を有する動物細胞 用発現ベクターに挿入してヒト型 CDR移植キメラ L鎖発現ベクターを構築し、該発現 ベクターを動物細胞へ導入することによりヒト型 CDR移植キメラ L鎖を発現させ、製造 することができる。
ヒト型 CDR移植キメラ L鎖の CLとしては、 hlgに属すればいかなるものでもよぐ κクラ スまたはえクラスのものを用いることができる。
[0020] 本発明に用いるヒト型 CDR移植キメラ H鎖は、ビメンチンに特異的に反応するヒト以 外の動物の抗体の VHの CDR配列を任意のヒト抗体の VHの CDR配列に移植した H領 域をコードする cDNAを構築し、ヒト抗体の CHをコードする遺伝子を有する動物細胞 用発現ベクターに挿入してヒト型 CDR移植キメラ H鎖発現ベクターを構築し、該発現 ベクターを動物細胞へ導入することによりヒト型 CDR移植キメラ H鎖を発現させ、製造 することができる。
ヒト型 CDR移植抗体の CHとしては、 hlgに属すればいかなるものでもよいが、 hlgGク ラスのものが好適であり、更に hlgGクラスに属する hIgGl、 hIgG2、 hIgG3、 hIgG4といつ たサブクラスの 、ずれも用いることができる。
[0021] ヒト抗体は、元来、ヒト体内に天然に存在する抗体を意味するが、最近の遺伝子ェ 学的、細胞工学的、発生工学的な技術の進歩により作製されたヒト抗体ファージライ ブラリーおよびヒト抗体産生トランスジエニック動物力も得られる抗体等も含まれる。 ヒト体内に存在する抗体は、例えば、ヒト末梢血リンパ球を単離し、 EBウィルス等を 感染させ不死化、クローニングすることにより、該抗体を産生するリンパ球を培養でき 、培養物中より該抗体を精製することができる。
[0022] ヒト抗体ファージライブラリ一は、ヒト B細胞力も調製した抗体遺伝子をファージ遺伝 子に挿入することにより Fab (fragment of antigen indingの略)、一本鎖抗体等の抗体 断片をファージ表面に発現させたライブラリーである。該ライブラリーより、抗原を固定 化した基質に対する結合活性を指標として所望の抗原結合活性を有する抗体断片
を発現しているファージを回収することができる。該抗体断片は、更に遺伝子工学的 手法により、 2本の完全な H鎖および 2本の完全な L鎖力 なるヒト抗体分子へも変換 することができる。
[0023] ヒト抗体産生トランスジヱニック動物は、ヒト抗体遺伝子が細胞内に組込まれた動物 を意味する。具体的には、マウス ES細胞ヘヒト抗体遺伝子を導入し、該 ES細胞を他 のマウスの初期胚へ移植後、発生させることによりヒト抗体産生トランスジエニック動物 を作製することができる。ヒト抗体産生トランスジエニック動物力ものヒト抗体の作製方 法は、通常のヒト以外の哺乳動物で行われているハイプリドーマ作製方法によりヒト抗 体産生ハイプリドーマを得、培養することで培養物中にヒト抗体を産生蓄積させること ができる。
[0024] 本発明に用いる抗体または抗体の L鎖もしくは H鎖の部分断片としては、 Fab、 Fab' 、 F(ab')、一本鎖抗体(single chain Fv、以下「scFv」という。)、ジスルフイド安定化抗
2
体(disulfide stabilized Fv、以下「dsFv」という。)、 CDRを含むペプチド等があげられ る。
[0025] Fabは、 IgGを蛋白質分解酵素パパインで処理して得られる断片のうち(H鎖の 224 番目のアミノ酸残基で切断される)、 H鎖の N末端側約半分のアミノ酸と L鎖全体がジ スルフイド結合で結合した分子量約 5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。 本発明に用いる Fabは、ビメンチンに特異的に反応する抗体を蛋白質分解酵素パ パインで処理して得ることができる。または、該抗体の Fabをコードする DNAを原核生 物用発現ベクターもしくは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生 物もしくは真核生物へ導入することにより発現させ、 Fabを製造することができる。
[0026] F(ab')は、 IgGを蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得られる断片のうち(H鎖の 2
2
34番目のアミノ酸残基で切断される)、 Fabがヒンジ領域のジスルフイド結合を介して 結合されたものよりやや大きい、分子量約 10万の抗原結合活性を有する抗体断片 である。
本発明に用いる F(ab')は、ビメンチンに特異的に反応する抗体を蛋白質分解酵素
2
ペプシンで処理して得ることができる。または、下記の Fab'をチォエーテル結合もしく はジスルフイド結合させ、作製することができる。
Fab'は、上記 F(ab')のヒンジ領域のジスルフイド結合を切断した分子量約 5万の抗
2
原結合活性を有する抗体断片である。
本発明に用いる Fab'は、ビメンチンに特異的に反応する F(ab')を還元剤ジチオスレ
2
ィトール処理して得ることができる。または、該抗体の Fab'断片をコードする DNAを原 核生物用発現ベクターもしくは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原 核生物もしくは真核生物へ導入することにより Fab'を発現させ、製造することができる
[0027] scFvは、一本の VHと一本の VLとを適当なペプチドリンカ一(以下「P」という。)を用 いて連結した、 VH- P-VLまたは VL-P-VHポリペプチドを示す。本発明に用いる scFv に含まれる VHおよび VLは、ハイプリドーマが産生する抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体の V、ずれをも用いることができる。
本発明に用いる scFvは、ビメンチンに特異的に反応する抗体の VHおよび VLをコー ドする cDNAを取得し、 scFvをコードする DNAを構築し、該 DNAを原核生物用発現べ クタ一または真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物または 真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。
[0028] dsFvは、 VHおよび VL中のそれぞれ 1アミノ酸残基をシスティン残基に置換したポリ ペプチドを該システィン残基間のジスルフイド結合を介して結合させたものを ヽぅ。シ スティン残基に置換するアミノ酸残基は Reiterらにより示された方法 [Protein
Engineering, 7, 697 (1994)]に従って、抗体の立体構造予測に基づいて選択すること ができる。本発明に用いる dsFvに含まれる VHおよび VLは、ハイプリドーマが産生す る抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体のいずれをも用いることができる。
[0029] 本発明に用いる dsFvは、ビメンチンに特異的に反応する抗体の VHおよび VLをコー ドする cDNAを取得し、 dsFvをコードする DNAを構築し、該 DNAを原核生物用発現べ クタ一または真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物または 真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。
[0030] CDRを含むペプチドは、 H鎖または L鎖 CDRの少なくとも 1領域以上を含んで構成さ れる。複数の CDRは、直接または適当なペプチドリンカ一を介して結合させることが できる。
本発明に用いる CDRを含むペプチドは、ビメンチンに特異的に反応する抗体の VH および VLをコードする cDNAを取得した後、 CDRをコードする DNAを構築し、該 DNA を原核生物用発現ベクターまたは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現べクタ 一を原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる また、 CDRを含むペプチドは、 Fmoc法(フルォレ-ルメチルォキシカルボ-ル法)、 tBoc法 (t_プチルォキシカルボ-ル法)等の化学合成法によって製造することもでき る。
[0031] 本発明に用いる抗体の誘導体としては、ハイプリドーマが産生する抗体、ヒト化抗体
、ヒト抗体またはそれらの抗体断片に放射性同位元素、蛋白質または低分子の化合 物等を結合させた抗体の誘導体等があげられる。
本発明に用いる抗体の誘導体は、ビメンチンに特異的に反応する抗体または抗体 断片の H鎖もしくは L鎖の N末端側もしくは C末端側、抗体または抗体断片中の適当 な置換基もしくは側鎖、さらには抗体または抗体断片中の糖鎖に放射性同位元素、 蛋白質もしくは低分子の化合物等をィ匕学的手法 [抗体工学入門 (金光修著 1994 年 (株)地人書館) ]により結合させることにより製造することができる。
[0032] または、ビメンチンに特異的に反応する抗体もしくは抗体断片をコードする DNAと、 結合させたい蛋白質をコードする DNAを連結させて発現ベクターに挿入し、該発現 ベクターを宿主細胞へ導入する、遺伝子工学的手法によっても製造することができる 放射性同位元素としては、 32P、 3H、 14C、 mI、 125I等があげられ、例えば、クロラミン T 法等により、抗体に結合させることができる。
[0033] 低分子の薬剤としては、ハイド口コーチゾン、プレドニゾン等のステロイド剤、ァスピリ ン、インドメタシン等の非ステロイド剤、金チォマレート、ぺ-シラミン等の免疫調節剤 、アドリアマイシン、ダウノマイシン等の免疫抑制作用を有する抗癌剤、サイクロスポリ ン、 FK506、サイクロフォスフアミド、ァザチォプリン等の免疫抑制剤、マレイン酸クロル フ 二ラミン、クレマシチンのような抗ヒスタミン剤等の抗炎症剤 [炎症と抗炎症療法 昭和 57年 医歯薬出版株式会社]等があげられる。
[0034] 例えば、ダウノマイシンと抗体とを結合させる方法としては、ダルタールアルデヒドを 介してダウノマイシンと抗体のアミノ基間を結合させる方法、水溶性カルポジイミドを 介してダウノマイシンのァミノ基と抗体のカルボキシル基を結合させる方法等があげら れる。
[0035] 蛋白質としては、 j8—ガラクトシダーゼ、グルコースォキシダーゼ、ペルォキシダー ゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースー6—リン酸脱水素酵素等があげられる。 蛋白質と抗体とを結合させる方法としては、抗体または抗体断片をコードする cDNA に蛋白質をコードする cDNAを連結させ、融合抗体をコードする DNAを構築し、該 DNAを原核生物または真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生 物または真核生物へ導入することにより蛋白質と抗体が融合した融合抗体を発現さ せる方法等があげられる。
[0036] 以下、ビメンチンに反応するポリクローナル抗体の作製方法について記す。
ビメンチンをコードする cDNAを含む発現ベクターを大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物 細胞等に導入して形質転換株を作製し、該形質転換株を培養'精製することにより、 リコンビナントビメンチンを得る。または、ヒト血管内皮細胞、例えば臍帯静脈血管内 皮細胞 (HUVEC、クラボウ社製)等を培養 '精製することによりビメンチンを得る。これ らのビメンチン、ビメンチンの部分断片ポリペプチドの精製標品、またはビメンチンの 一部のアミノ酸配列を有するペプチドを抗原に用いる。
[0037] これら抗原はそのまま、またはキーホールリンペットへモシァニン(KLH)、牛血清ァ ルブミン(BSA)、メチル化牛血清アルブミン(メチル化 BSA)、牛チログロブリン(THY) 等の分子量の大き 、キャリアタンパク質と結合させて投与する。
免疫に用いる動物としては、マウス、ラット、ノ、ムスター、ラビット等ハイプリドーマを 作製することが可能であれば、いかなるものでもよい。下記に、マウスおよびラットを用 いる例について説明する。
[0038] 3〜20週令のマウスまたはラットに、上記方法で調製した抗原を免疫し、その動物の 脾臓、リンパ節、末梢血より抗体産生細胞を採取する。免疫は、動物の皮下、静脈内 または腹腔内に、適当なアジュバントとともに抗原を数回投与することにより行う。アジ ュバンドとしては、フロインドの完全アジュバント (Complete Freund's Adjuvant)または
、水酸ィ匕アルミニウムゲルと百日咳菌ワクチン等があげられる。各投与後 3〜7日目に 免疫動物の眼底静脈叢または尾静脈より採血し、免疫に用いた抗原に対しての反応 性について、酵素免疫測定法〔酵素免疫測定法 (ELISA法):医学書院刊(1976年) 、 Antibodies— A Laboratory Manual, し old Spring Harbor Laboratory (1988)〕等で確 認する。
[0039] 免疫に用いた抗原に対し、その血清が充分な抗体価を示した非ヒト哺乳動物より血 清を取得し、該血清よりポリクローナル抗体を分離、精製する。
ポリクローナル抗体を分離、精製する方法としては、遠心分離、 40〜50%飽和硫酸 アンモ-ゥムによる塩析、力プリル酸沈殿 [Antibodies, A Laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory, (1988)〕、または DEAE—セファロースカラム、陰イオン交 換カラム、プロテイン Aもしくは G—カラム、ゲル濾過カラム等を用いるクロマトグラフィ 一等を、単独または組み合わせて処理する方法があげられる。
[0040] 以下、ビメンチンに反応するモノクローナル抗体の作製方法について記す。
1.抗ビメンチンモノクローナル抗体の作製
(1)抗体産生細胞の調製
免疫に用いた抗原に対し、その血清が十分な抗体価を示したマウスまたはラットを 抗体産生細胞の供給源とする。抗原物質の最終投与後 3〜7日目に、免疫したマウ スまたはラットより公知の方法 [アンティボディズ 'ァ'ラボラトリ一'マニュアル、コール ド 'スプリングノヽーノ ー 'ラボラトリー (Antibodies— A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)、以下「アンチボディズ 'ァ'ラボラトリ^ ~ ·マ-ユアノレ」という 。 ]に準じて脾臓を摘出し、脾細胞と骨髄腫細胞とを融合させる。
[0041] (2)骨髄腫細胞の調製
骨髄腫細胞としては、マウス力も得られた株化細胞である、 8-ァザグァニン耐性マ ウス(BALB/c由来)骨髄腫細胞株 Ρ3- X63Ag8- U1(P3- Ul)[Euro. J. Immunol, 6, 511 (1976)]、 SP2/0-Agl4(SP-2) [Nature, 276, 269 (1978)]、 P3— X63— Ag8653(653)[ J. Immunol, 12^ 1548 (1979)]、 P3-X63-Ag8(X63) [Nature, 25^ 495 (1975)]等、ィ ン'ビトロ(in vitro)で増殖可能な骨髄腫細胞であればいかなるものでもよい。これら の細胞株の培養および継代にっ ヽては公知の方法 (アンチボディズ'ァ ·ラボラトリー
'マ-ユアル)に従い、細胞融合時までに 2 X 107個以上の細胞数を確保する。
[0042] (3)細胞融合
上記で得られた抗体産生細胞と骨髄腫細胞とを洗浄したのち、ポリエチレングライ コール 1000(PEG-1000)などの細胞凝集性媒体をカ卩え、細胞を融合させ、培地中 に懸濁させる。細胞の洗浄には MEM培地または PBS (リン酸ニナトリウム 1.83g、リン酸 一カリウム 0.21g、塩ィ匕ナトリウム 7.65g、蒸留水 1リットル、 pH7.2)等を用いる。また、融 合細胞を懸濁させる培地としては、 目的の融合細胞のみを選択的に得られるように、 HAT培地 {正常培地 [RPMI-1640培地にグルタミン (1.5mmol/l)、 2-メルカプトエタノー ル(5 X 10"5mol/l)、ジェンタマイシン (10 μ g/ml)および牛胎児血清 (FCS) (CSL社製、 10%)をカ卩えた培地]にヒポキサンチン(10— 4mol/l)、チミジン(1.5 X 10— 5mol/l)およびァ ミノプテリン (4 X 10— 7mol/l)をカ卩えた培地 }を用いる。
培養後、培養上清の一部をとり、酵素免疫測定法により、抗原蛋白質に反応し、非 抗原蛋白質に反応しないサンプルを選択する。ついで、限界希釈法によりクローニン グを行い、酵素免疫測定法により安定して高い抗体価の認められたものをモノクロ一 ナル抗体産生ハイプリドーマ株として選択する。
[0043] (4)抗ビメンチンモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの選択
抗ビメンチンモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの選択は、アンチボディ ズ ·ァ ·ラボラトリー'マニュアルに述べられて 、る方法等に従 、、以下に述べる測定 法により行う。これらの方法により、後述する抗ビメンチンヒト化抗体、該抗体断片を産 生する形質転換株の培養上清中に含まれる抗ビメンチン抗体またはすベての精製 抗ビメンチン抗体の結合活性を測定することができる。
[0044] 酵 沏 I 法
抗原または抗原を発現した細胞等を 96ゥエルプレートにコートし、ノ、イブリドーマ培 養上清または上述の方法で得られる精製抗体を第一抗体として反応させる。
第一抗体反応後、プレートを洗浄して第二抗体を添加する。
第二抗体とは、第一抗体のィムノグロブリンを認識できる抗体を、ピオチン、酵素、 化学発光物質または放射線化合物等で標識した抗体である。具体的にはハイブリド 一マ作製の際にマウスを用いたのであれば、第二抗体としては、マウスィムノグロプリ
ンを認識できる抗体を用いる。
反応後、第二抗体を標識した物質に応じた反応を行ない、抗原に特異的に反応す るモノクローナル抗体を生産するハイプリドーマとして選択する。
[0045] (5)モノクローナル抗体の精製
プリスタン処理〔2,6,10,14-テトラメチルぺンタデカン(?1^ &^)0.51^を腹腔内投与 し、 2週間飼育する〕した 8〜10週令のマウスまたはヌードマウスに、 1 (3)で得られた 抗ビメンチンモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞 2 X 107〜5 X 106細胞/匹を 腹腔内に注射する。 10〜21日間でハイプリドーマは腹水癌化する。該マウスまたは ヌードマウス力 腹水を採取し、遠心分離、 40〜50%飽和硫酸アンモ-ゥムによる塩 析、力プリル酸沈殿法、 DEAE-セファロースカラム、プロテイン A-カラムまたはセル口 ファイン GSL2000 (生化学工業社製)のカラムなどを用いて、 IgGまたは IgM画分を回 収し、精製モノクローナル抗体とする。
精製モノクローナル抗体のサブクラスの決定は、マウスモノクローナル抗体タイピン グキットまたはラットモノクローナル抗体タイピングキット等を用いて行うことができる。 蛋白質量は、ローリー法または 280應での吸光度より算出することができる。
抗体のサブクラスとは、クラス内のアイソタイプのことで、マウスでは、 IgGl、 IgG2a、 IgG2b、 IgG3、ヒトでは、 IgGl、 IgG2、 IgG3、 IgG4があげられる。
[0046] (6)抗ビメンチンモノクローナル抗体の反応性
抗ビメンチンモノクローナル抗体の反応性を調べる方法として、インヒピション ELISA があげられる。
まず、 1 (4)に記したように抗原を固相化したプレートを準備し、第一抗体として抗ビ メンチンモノクローナル抗体を反応させる。同時に適当に希釈したビメンチンを加え プレートに固相化したビメンチンと競合させる。その後は 1 (4)に示した方法と同様に 検出することができる。抗ビメンチンモノクローナル抗体がビメンチンと反応する場合 には、液相系で加えたビメンチン濃度依存的に固相化ビメンチンへの結合が阻害さ れ、 OD値が低下する。
[0047] 2.ヒト化抗体の作製方法 (I)ー抗ビメンチンヒト化抗体の作製方法
(1)ヒト化抗体発現用ベクターの構築
ヒト以外の動物の抗体からヒト化抗体を作製するために必要なヒト化抗体発現用べ クタ一を構築する。ヒト化抗体発現用ベクターとは、ヒト抗体の C領域である CHおよび CLをコードする遺伝子が組み込まれた動物細胞用発現ベクターであり、動物細胞用 発現ベクターにヒト抗体の CHおよび CLをコードする遺伝子をそれぞれ挿入すること により構築されたものである。
[0048] ヒト抗体の C領域としては、例えば、ヒト抗体 H鎖では C y 1や C y 4、ヒト抗体 L鎖では C κ等の任意のヒト抗体の C領域を用いることができる。ヒト抗体の C領域をコードする 遺伝子としてはェキソンとイントロンより成る染色体 DNAを用いることができ、また、 cDNAを用いることもできる。動物細胞用発現ベクターとしては、ヒト抗体 C領域をコー ドする遺伝子を組込み発現できるものであれば 、かなるものでも用いることができる。
[0049] 例えば、 pAGE107 [Cytotechnology, 3, 133 (1990) ]、 pAGE103 [J. Biochem., 101, 1307 (1987)] , pHSG274 [Gene, 27, 223 (1984)]、 pKCR[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78, 1527 (1981)] , pSGl β d2-4 [Cytotechnology, 4, 173 (1990) ]等があげられる。 動物細胞用発現ベクターに用いるプロモーターとェンハンサ一としては、 SV40の初 期プロモーターとェンハンサー [J. Biochem. , 101, 1307 (1987)]、モロ-一マウス白 血病ウィルスの LTRプロモーターとェンハンサー [Biochem. Biophys. Res. Comun. , 149. 960 (1987)]、および免疫グロブリン H鎖のプロモーター [Cell, 41, 479 (1985)]と ェンハンサー [Cell, 33, 717 (1983)]等があげられる。
[0050] ヒト化抗体発現用ベクターは、抗体 H鎖、 L鎖が別々のベクター上に存在するタイプ または同一のベクター上に存在するタイプ (タンデム型)のどちらでも用いることがで きるが、ヒト化抗体発現ベクターの構築のしゃすさ、動物細胞への導入のし易さ、動 物細胞内での抗体 H鎖および L鎖の発現量のバランスがとれる等の点でタンデム型 のヒト化抗体発現用ベクターの方が好ましい [J. Immunol. Methods, 167, 271 (1994)]
[0051] (2)ヒト以外の動物の抗体の VHおよび VLをコードする cDNAの取得
ヒト以外の動物の抗体、例えば、マウス抗ビメンチンモノクローナル抗体の VHおよ び VLをコードする cDNAは以下のようにして取得する。
抗ビメンチンモノクローナル抗体を産生する細胞、例えば、マウスビメンチン抗体産
生ハイブリドーマ等より mRNAを抽出し、 cDNAを合成する。合成した cDNAを、ファー ジまたはプラスミドなどのベクターに挿入し、 cDNAライブラリーを作製する。該ライブ ラリーより、ヒト以外の動物の抗体、例えば、マウス抗体の C領域部分または V領域部 分をプローブとして用い、 VHをコードする cDNAを有する組換えファージまたは組換 えプラスミド、および VLをコードする cDNAを有する組換えファージまたは組換えブラ スミドをそれぞれ単離する。組換えファージまたは組換えプラスミド上の目的とする抗 体の VHおよび VLの全塩基配列を決定し、塩基配列より VHおよび VLの全アミノ酸配 列を推定する。
[0052] (3)ヒト型キメラ抗体発現ベクターの構築
前記 2 (1)で構築したヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体の CHおよび CLをコード する遺伝子の上流に、ヒト以外の動物の抗体の VHおよび VLをコードする cDNAを揷 入し、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。例えば、キメラ抗体発現 用ベクターのヒト抗体の CHおよび CLをコードする遺伝子の上流にあら力じめヒト以外 の動物の抗体の VHおよび VLをコードする cDNAをクローユングするための制限酵素 の認識配列を設けておき、このクローユングサイトにヒト以外の動物の抗体の V領域を コードする cDNAを下記に述べる合成 DNAを介して挿入することにより、ヒト型キメラ抗 体発現ベクターを製造することができる。合成 DNAは、ヒト以外の動物の抗体の V領 域の 3'末端側の塩基配列とヒト抗体の C領域の 5'末端側の塩基配列とからなるもので あり、両端に適当な制限酵素部位を有するように DNA合成機を用いて製造する。
[0053] (4)ヒト以外の動物の抗体の CDR配列の同定
抗体の抗原結合部位を形成する VHおよび VLは、配列の比較的保存された 4個の フレームワーク領域 (以下、 FR領域と称す)とそれらを連結する配列の変化に富んだ 3個の相補性決定領域 (CDR)力も成って 、る [シーケンシズ'ォブ'プロテインズ 'ォ ブ 'ィムノロンカノレ'インタレスト (Sequences of Proteins of Immunological Interest), Ub Dept. Health and Human Services,(1991)、以下「シーケンシズ'ォブ ·プロテインズ •ォブ'ィムノロジカル'インタレスト」という。 ]。そして各 CDRアミノ酸配列(CDR配 列)は、既知の抗体の V領域のアミノ酸配列(シーケンシズ 'ォブ 'プロテインズ'ォブ' ィムノロジカル 'インタレスト)と比較することにより同定することができる。
[0054] (5)ヒト型 CDR移植抗体の V領域をコードする cDNAの構築
ヒト型 CDR移植抗体の VHおよび VLをコードする cDNAは以下のようにして取得する ことができる。
まず、 目的のヒト以外の動物の抗体の V領域の CDRを移植するためのヒト抗体の V 領域の FRのアミノ酸配列を VH、 VLそれぞれについて選択する。ヒト抗体の V領域の FRのアミノ酸配列としては、ヒト抗体由来の V領域の FRのアミノ酸配列であれば!/、か なるものでも用いることができる。
[0055] 例えば、 Protein Data Bankに登録されて!、るヒト抗体の V領域の FRのアミノ酸配列 、ヒト抗体の V領域の FRの各サブグループの共通アミノ酸配列(シーケンシズ'ォブ' プロテインズ.ォブ.ィムノロジカル.インタレスト)があげられるが、充分な活性を有す るヒト型 CDR移植抗体を創製するためには、 目的のヒト以外の動物の抗体の V領域 のアミノ酸配列と高 、相同性、好ましくは 60%以上の相同性を有することが望ま 、。 次に、選択したヒト抗体の V領域の FRのアミノ酸配列をコードする DNA配列と目的のヒ ト以外の動物の抗体の V領域の CDRのアミノ酸配列をコードする DNA配列を連結させ て、 VH、 VLそれぞれのアミノ酸配列をコードする DNA配列を設計する。 CDR移植抗 体可変領域遺伝子を構築するために設計した DNA配列を得るためには、全 DNA配 列をカバーするように各鎖につ ヽて数本の合成 DNAを設計し、それらを用いてポリメ ラーゼ'チェイン'リアクション(Polymerase Chain Reaction,以下「PCR」という。)を行う 。 PCRでの反応効率および合成可能な DNAの長さ力 各鎖について、好ましくは、 6 本の合成 DNAを設計する。反応後、増幅断片を適当なベクターにサブクローユング し、その塩基配列を決定し、 目的のヒト型 CDR移植抗体の各鎖の V領域のアミノ酸配 列をコードする cDNAを含むプラスミドを取得する。また、約 100塩基よりなる合成 DNA を用いてセンス、アンチセンスともに全配列を合成し、それらをアニーリング、連結す ることで、 目的のヒト型 CDR移植抗体の各鎖の V領域のアミノ酸配列をコードする cDNAを構築することもできる。
[0056] (6)ヒト型 CDR移植抗体の V領域のアミノ酸配列の改変
ヒト型 CDR移植抗体は目的のヒト以外の動物の抗体の V領域の CDRのみをヒト抗体 の V領域の FR間に、単純に移植しただけでは、その活性はもとのヒト以外の動物の抗
体の活性に比べて低下してしまうことが知られている [BIO/TECHNOLOGY, 9, 266 (1991) ]。そこでヒト抗体の V領域の FRのアミノ酸配列のうち、直接抗原との結合に関 与しているアミノ酸残基、 CDRのアミノ酸残基と相互作用をしているアミノ酸残基、ま たは抗体の立体構造の維持に関与している等の可能性を有するアミノ酸残基をもと のヒト以外の動物の抗体に見出されるアミノ酸残基に改変し、活性を上昇させること が行われている。そして、それらのアミノ酸残基を効率よく同定するため、 X線結晶解 析あるいはコンピューターモデリング等を用いた抗体の立体構造の構築および解析 を行っている。しかし、いかなる抗体にも適応可能なヒト型 CDR移植抗体の製造法は 未だ確立されておらず、現状では個々の抗体によって種々の試行錯誤が必要である
[0057] 選択したヒト抗体の V領域の FRのアミノ酸配列の改変は各種の変異導入プライマー を用いて前記 2 (5)に記載の PCRを行うことにより達成できる。 PCR後の増幅断片を 適当なベクターにサブクロー-ング後、その塩基配列を決定し、 目的の変異が導入さ れた cDNAを含むベクター(以下「アミノ酸配列改変ベクター」と!、う。)を取得する。 また、狭い領域のアミノ酸配列の改変であれば、 20〜35塩基力 なる変異導入ブラ イマ一を用いた PCR変異導入法により行うことができる。具体的には、改変後のアミノ 酸残基をコードする DNA配列を含む 20〜35塩基力 なるセンス変異プライマーおよ びアンチセンス変異プライマーを合成し、改変すべき V領域のアミノ酸配列をコード する cDNAを含むプラスミドを铸型として 2段階の PCRを行う。最終増幅断片を適当な ベクターにサブクロー-ング後、その塩基配列を決定し、 目的の変異が導入された cDNAを含むアミノ酸配列改変ベクターを取得する。
[0058] (7)ヒト型 CDR移植抗体発現ベクターの構築
前記 2 (1)のヒトイ匕抗体発現用ベクターのヒト抗体の CH及び CLをコードする遺伝子 の上流に、前記 2 (5)および 2 (6)で取得したヒト型 CDR移植抗体の VHおよび VLをコ ードする cDNAを挿入し、ヒト型 CDR移植抗体発現ベクターを構築することができる。 例えば、ヒト型 CDR移植抗体の VHおよび VLのアミノ酸配列をコードする cDNAを構築 するための PCRの際に 5'末端および 3'末端の合成 DNAの末端に適当な制限酵素の 認識配列を導入することで、所望のヒト抗体の C領域をコードする遺伝子の上流にそ
れらが適切な形で発現するように挿入することができる。
[0059] (8)ヒト化抗体の一過性 (トランジ ント)発現および活性評価
多種類のヒト化抗体の活性を効率的に評価するために、前記 2 (3)のヒト型キメラ抗 体発現ベクター、および前記 2 (7)のヒト型 CDR移植抗体発現ベクターまたはそれら の改変ベクターを COS-7細胞(ATCC CRL1651)に導入してヒト化抗体の一過性発 現 [Methods in Nucleic Acids Res., CRC Press, pp283 (1991)]を行い、その活性を 柳』定することができる。
COS-7細胞への発現ベクターの導入法としては、 DEAE-デキストラン法 [Methods in Nucleic Acids Res., CRC Press, pp283 (1991)]、リポフエクシヨン法 [Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 (1987) ]等があげられる。
ベクターの導入後、培養上清中のヒト化抗体の活性は前記 1 (5)に記載の酵素免 疫測定法 (ELISA法)等により測定することができる。
[0060] (9)ヒト化抗体の安定 (ステーブル)発現および活性評価
前記 2 (3)のヒト型キメラ抗体発現ベクターおよび前記 2 (7)のヒト型 CDR移植抗体 発現ベクターを適当な宿主細胞に導入することによりヒト化抗体を安定に生産する形 質転赚を得ることができる。
[0061] 宿主細胞への発現ベクターの導入法としては、エレクト口ポレーシヨン法 [特開平 2-257891; Cytotechnology, 3, 133 (1990) ]等があげられる。
ヒト化抗体発現ベクターを導入する宿主細胞としては、ヒト化抗体を発現させること ができる宿主細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができる。例えば、マウス SP2/0- Agl4細胞(ATCC CRL1581)、マウス P3X63- Ag8.653細胞(ATCC CRL1580 )、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(以下「DHFR遺伝子」という。)が欠損した CHO細胞 [Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 4216 (1980) ]、ラット YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細 胞 (ATCC CRL1662、以下「YB2/0細胞」という。)等があげられる。
[0062] ベクターの導入後、ヒト化抗体を安定に生産する形質転換株は、特開平 2-257891 に開示されている方法に従い、 G418および FCSを含む RPMI1640培地により選択す る。得られた形質転 ·を培地中で培養することで培養液中にヒト化抗体を生産蓄 積させることができる。培養液中のヒト化抗体の活性は前記 1 (5)に記載の方法等に
より測定する。また、形質転換株は、特開平 2-257891に開示されている方法に従い、 DHFR遺伝子増幅系等を利用してヒト化抗体の生産量を上昇させることができる。
[0063] ヒト化抗体は、形質転赚の培養上清よりプロテイン Aカラムを用いて精製すること ができる(アンチボディズ 'ァ'ラボラトリー'マニュアル 第 8章)。また、その他に、通 常の蛋白質で用いられる精製方法を使用することができる。例えば、ゲル濾過、ィォ ン交換クロマトグラフィーおよび限外濾過等を組合せて行 ヽ、精製することができる。 精製したヒト化抗体の H鎖、 L鎖または抗体分子全体の分子量は、ポリアクリルアミド ゲル電気泳動(SDS-PAGE) [Nature, 227, 680 (1970) ]やウェスタンブロッテイング法 (アンチボディズ 'ァ ·ラボラトリー ·マニュアル 第 12章)等で測定する。
精製したヒト化抗体の反応性、また、ヒト化抗体のビメンチンに対する結合活性の測 定は前記 1 (4)に記載の方法などにより測定することができる。
[0064] 3.抗体断片の作製
抗体断片は、上記 2に記載のヒト化抗体を元に遺伝子工学的手法または蛋白質ィ匕 学的手法により、作製することができる。抗体断片としては、 Fab、 F(ab' )、 Fab\ scFv
2
、 Diabody, dsFv、 CDRを含むペプチド等があげられる。
[0065] (1) Fabの作製
Fabは、 IgGを蛋白質分解酵素パパインで処理することにより、作製することができる 。パパインの処理後は、元の抗体がプロテイン A結合性を有する IgGサブクラスであれ ば、プロテイン Aカラムに通すことで、 IgG分子や Fc断片と分離し、均一な Fabとして回 収すること力 21 (?さる (Monoclonal Antioodies: Principles and Practice, third edition, 1995)。プロテイン A結合性を持たない IgGサブクラスの抗体の場合は、イオン交換ク 口マトグラフィ一により、 Fabは低塩濃度で溶出される画分中に回収することができる( Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, third edition, 1995)。ま 7こ、 Fabi;、 大腸菌を用いて遺伝子工学的に作製することもできる。例えば、上記 2の(2)および( 3)に記載の抗体の V領域をコードする DNAを、 Fab発現用ベクターにクローユングし 、 Fab発現ベクターを作製することができる。 Fab発現用ベクターとしては、 Fab用の DNAを組み込み発現できるものであれば 、かなるものも用いることができる。例えば、 pIT106[Science, 240, 1041, (1988)]等があげられる。 Fab発現ベクターを適当な大腸
菌に導入し、封入体またはペリプラズマ層に Fabを生成蓄積させることができる。封入 体からは、通常蛋白質で用いられるリフォールデイング法により、活性のある Fabとす ることができ、また、ペリプラズマ層に発現させた場合は、培養上清中に活性を持った Fabが漏出する。リフォールデイング後または培養上清からは、抗原を結合させたカラ ムを用いることにより、均一な Fabを精製することができる(Antibody Engineering, A Practical uuide, W. H. Freeman and company, 1992)。
[0066] (2) F(a )の作製
2
F(ab' )は、 IgGを蛋白質分解酵素ペプシンで処理することにより、作製することがで
2
きる。ペプシンの処理後は、 Fabと同様の精製操作により、均一な F(a )として回収
2
すること; 0でさる (Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, third edition, Academic Press, 1995)。また、上記 2 (3)に記載の Fa を。- PDMやビスマレイミドへ キサン等のようなマレイミドで処理し、チォエーテル結合させる方法や、 DTNBで処理 し、 S-S結合させる方法によっても作製することができる(Ant¾ody Engineering, A Practical Approach, IRL PRESS, 1996)。
[0067] (3) Fa の作製
Fa は、大腸菌を用いて遺伝子工学的に作製することができる。例えば、上記 2 (2 )および(3)に記載の抗体の V領域をコードする DNAを、 Fa 発現用ベクターにクロ 一ユングし、 Fa 発現ベクターを作製することができる。 Fa 発現用ベクターとしては 、 Fa 用の DNAを^ &み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができ る。例えば、 pAK19[Bio/Technology, 10, 163, (1992)]等があげられる。 Fa 発現べク ターを適当な大腸菌に導入し、封入体またはペリプラズマ層に Fa を生成蓄積させ ることができる。封入体からは、通常蛋白質で用いられるリフォールデイング法により、 活性のある Fa とすることができ、また、ペリプラズマ層に発現させた場合は、リゾチ ームによる部分消化、浸透圧ショック、ソ-ケーシヨン等の処理により菌を破砕し、菌 体外へ回収させることができる。リフォールデイング後または菌の破碎液からは、プロ ティン Gカラム等を用いることにより、均一な Fa を精製することができる (Antibody Engineering, A Practical Approach, IRL PRESS, 1996)。
[0068] (4) scFvの作製
scFvは遺伝子工学的には、ファージまたは大腸菌を用いて作製することができる。 例えば、上記 2 (2)および(3)に記載の抗体の VHおよび VLをコードする DNAを、 12 残基以上のアミノ酸配列力 なるポリペプチドリンカ一をコードする DNAを介して連結 し、 scFvをコードする DNAを作製する。作製した DNAを scFv発現用ベクターにクロー ユングし、 scFv発現ベクターを作製することができる。 scFv発現用ベクターとしては、 scFvの DNAを組み込み発現できるものであれば!/、力なるものも用いることができる。 例えば、 pCANTAB5E (Pharmacia社製)、 Phfa[Hum. Antibody Hybridoma, 5, 48 (1994)]等があげられる。 scFv発現ベクターを適当な大腸菌に導入し、ヘルパーファ ージを感染させることで、ファージ表面に scFvがファージ表面蛋白質と融合した形で 発現するファージを得ることができる。また、 scFv発現ベクターを導入した大腸菌の封 入体またはペリプラズマ層に scFvを生成蓄積させることができる。封入体からは、通 常蛋白質で用いられるリフォールデイング法により、活性のある scFvとすることができ 、また、ペリプラズマ層に発現させた場合は、リゾチームによる部分消ィ匕、浸透圧ショ ック、ソ-ケーシヨン等の処理により菌を破砕し、菌体外へ回収することができる。リフ オールデイング後または菌の破砕液からは、陽イオン交換クロマトグラフィー等を用い ることにより、均一な scFvを精製することができる(Antibody Engineering, A Practical Approach, IRL PRESS, 1996)。
[0069] (5) Diabodyの作製
Diabodyは、上記の scFvを作製する際のポリペプチドリンカ一を 3〜10残基程度に することで、作製することができる。 1種類の抗体の VHおよび VLを用いた場合には、 2価の Diabodyを、 2種類の抗体の VHおよび VLを用いた場合は、 2特異性を有する Diabodyを作製することができる [FEBS Letters, 453, 164 (1999)、 Int. J. Cancer, 77, 763 (1998)]。
[0070] (6) dsFvの作製
dsFvは、大腸菌を用いて遺伝子工学的に作製することができる。まず、上記 2 (2) および(3)に記載の抗体の VHおよび VLをコードする DNAの適当な位置に変異を導 入し、コードするアミノ酸残基がシスティンに置換された DNAを作製する。作製した各 DNAを dsFv発現用ベクターにクローユングし、 VHおよび VLの発現ベクターを作製す
ることができる。 dsFv発現用ベクターとしては、 dsFv用の DNAを組み込み発現できる ものであればいかなるものも用いることができる。例えば、 pULI9[Protein Engineering, 7, 697 (1994)]等があげられる。 VHおよび VLの発現ベクターを適当な大腸菌に導入 し、封入体またはペリプラズマ層に VHおよび VLを生成蓄積させることができる。封入 体またはペリプラズマ層から VHおよび VLを得、混合し、通常蛋白質で用いられるリフ オールデイング法により、活性のある dsFvとすることができる。リフォールディング後は 、イオン交換クロマトグラフィーおよびゲル濾過等により、さらに精製することができる [Protein Engineering, 7, 697 (1994)]。
[0071] (7) CDRペプチドの作製
CDRを含むペプチドは、 Fmoc法または tBoc法等の化学合成法によって作製するこ とができる。また、 CDRを含むペプチドをコードする DNAを作製し、作製した DNAを適 当な発現用ベクターにクローユングし、 CDRペプチド発現ベクターを作製することが できる。発現用ベクターとしては、 CDRを含むペプチドをコードする DNAを組み込み 発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、 pLEX (
Invitrogen社製)、 pAX4a+ (Invitrogen社製)等があげられる。発現ベクターを適当な 大腸菌に導入し、封入体またはペリプラズマ層に CDRを含むペプチドを生成蓄積さ せることができる。封入体またはペリプラズマ層カゝら CDRを含むペプチドを得、イオン 交換クロマトグラフィーおよびゲル濾過等により、精製することができる [Protein Engineering, 7, 697 (1994)]。
[0072] 4.融合抗体および融合ペプチドの作製方法
本発明で使用される抗体またはペプチドに、放射性同位元素、毒素、サイト力イン または酵素等の蛋白質、低分子の薬剤等を、化学的または遺伝子工学的に結合さ せた融合抗体または融合ペプチドも抗体の誘導体として使用することができる。
[0073] 抗体またはペプチドと毒素蛋白質とを化学的に結合させた融合抗体または融合べ プチドは、文献 [Anticancer Research, 11, 2003 (1991); Nature Medicine, 3, 350 (1996)]記載の方法等に従って作製することができる。
抗体またはペプチドと、毒素、サイト力インまたは酵素等の蛋白質とを遺伝子工学 的に結合させた融合抗体または融合ペプチドは、文献 [Proc. Natl. Acad. Sci. USA,
93, 974 (1996); Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93, 7826 (1996)]記載の方法等に従つ て作製することができる。
[0074] 抗体またはペプチドと低分子抗癌剤を化学的に結合させた融合抗体または融合べ プチドは、文献 [Science, 261, 212 (1993)]記載の方法等に従って作製することがで きる。
抗体またはペプチドと放射性同位元素をィ匕学的に結合させた融合抗体または融合 へプチ rは、文献 [Antibody Immunoconjugates and Radiopharmaceuticals , 3, 60 (1990); Anticancer Research, 11, 2003 (1991)]記載の方法等に従って作製すること ができる。
[0075] これらの誘導体は、抗体分子の特異性に従って放射性同位元素、毒素、サイトカイ ンまたは酵素等の蛋白質、低分子の薬剤等を標的組織周辺に集積させることで、より 効果的で副作用の少ない診断または治療を可能にすることが期待されている。
[0076] 5.ヒト化抗体または抗体断片の活性評価
精製したヒト化抗体の抗原との結合性、ビメンチンに対する結合活性は ELISA法お よび蛍光抗体法 [Cancer Immunol. Immunother., 36, 373(1993)]、 BIAcore™等を用い た表面プラズモン共鳴等により測定できる。
[0077] 6.本発明に用いる抗体を用いたビメンチンの定量および検出方法
本発明に用いる抗ビメンチン抗体またはその抗体断片を用いる、ビメンチンを免疫 学的に定量または検出する方法としては、蛍光抗体法、免疫酵素抗体法 (ELISA)、 放射性物質標識免疫抗体法 (RIA)、免疫組織染色法、免疫細胞染色法などの免疫 組織化学染色法 (ABC法、 CSA法等)、ウェスタンブロッテイング法、免疫沈降法、上 記に記した酵素免疫測定法、サンドイッチ ELISA法 [単クローン抗体実験マニュアル ( 講談社サイエンティフィック、 1987年)、続生化学実験講座 5免疫生化学研究法 (東 京化学同人、 1986年) ]等を用いることができる。
[0078」 光饥体法は、文献 [Monoclonal Antibodies: Principles and practice, Third
edition (Academic Press, 1996),単クローン抗体実験マニュアル(講談社サイェンティ フィック、 1987) ]等に記載された方法を用いて行うことができる。具体的には、生体内 カゝら分離された細胞またはその破砕液、組織またはその破砕液、細胞培養上清、血
清等に、本発明に用いられるモノクローナル抗体またはその抗体断片を反応させ、さ らにフルォレシン'イソチオシァネート(FITC)またはフィコエリスリンなどの蛍光物質 でラベルした抗ィムノグロブリン抗体または結合断片を反応させた後、蛍光色素をフ ローサイトメーターで測定する方法である。
[0079] 免疫細胞染色法、免疫組織染色法等の免疫組織化学染色法 (ABC法、 CSA法等) ίま、文献 [Monoclonal Antibodies: Principles and practice, Third edition (Academic Press, 1996),単クローン抗体実験マニュアル (講談社サイエンティフィック, 1987) ]等 に記載された方法を用いて行うことができる。
免疫酵素抗体法 (ELISA)は、生体内から分離された細胞またはその破砕液、組織 またはその破砕液、細胞培養上清、血清等に、本発明に用いるモノクローナル抗体 またはその抗体断片を反応させ、さらにペルォキシダーゼ、ピオチン等の酵素標識 等を施した抗ィムノグロブリン抗体または結合断片を反応させた後、発色色素を吸光 光度計で測定する方法である。
[0080] 放射性物質標識免疫抗体法 (RIA)は、生体内力ゝら分離された細胞またはその破砕 液、組織またはその破砕液、細胞培養上清、血清等に、本発明に用いるモノクロ一 ナル抗体またはその抗体断片を反応させ、さらに放射線標識を施した抗ィムノグロブ リン抗体または結合断片を反応させた後、シンチレーシヨンカウンタ一等で測定する 方法である。
免疫細胞染色法、免疫組織染色法は、生体内から分離された細胞または組織等に 、本発明に用いるモノクローナル抗体またはその抗体断片を反応させ、さらにフルォ レシン'イソチオシァネート(FITC)等の蛍光物質、ペルォキシダーゼ、ピオチン等の 酵素標識を施した抗ィムノグロブリン抗体または結合断片を反応させた後、顕微鏡を 用いて観察する方法である。
[0081] ウェスタンブロッテイング法は、生体内から分離された細胞またはその破砕液、組織 またはその破砕液、細胞培養上清、血清等を SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動 [ Antibodies— A Laboratory Manual, Cola Spring Harbor Laooratory, 1988」で分曲した 後、該ゲルを PVDF膜またはニトロセルロース膜にブロッテイングし、該膜に本発明に 用いるモノクローナル抗体またはその抗体断片を反応させ、さらに FITC等の蛍光物
質、ペルォキシダーゼ、ピオチン等の酵素標識を施した抗マウス IgG抗体または結合 断片を反応させた後、確認する。
[0082] 免疫沈降法とは、生体内から分離された細胞またはその破砕液、組織またはその 破砕液、細胞培養上清、血清等を本発明に用いるモノクローナル抗体またはその抗 体断片と反応させた後、プロテイン G—セファロース等のィムノグロブリンに特異的な 結合能を有する担体を加えて抗原抗体複合体を沈降させるものである。
サンドイッチ ELISA法とは、本発明に用いるモノクローナル抗体またはその抗体断 片で、抗原認識部位の異なる 2種類のモノクローナル抗体のうち、あら力じめ一方の モノクローナル抗体または抗体断片はプレートに吸着させ、もう一方のモノクローナ ル抗体または抗体断片は FITC等の蛍光物質、ペルォキシダーゼ、ピオチン等の酵 素で標識しておく。抗体吸着プレートに、生体内から分離された細胞またはその破砕 液、組織またはその破砕液、細胞培養上清、血清等を反応後、標識したモノクローナ ル抗体またはその抗体断片を反応させ、標識物質に応じた反応を行う方法である。
[0083] 本発明でいう LAPの部分断片としては、細胞表面または細胞外に分泌されるビメン チンに結合し得る LAPの部分断片であればいずれのものも用いることができ、例えば 、国際公開第 98/51704号の第 2表に記載されたィ匕合物 1〜16等を使用することがで きるが、化合物 15が好ましく使用される。化合物 1〜16のアミノ酸配列を配列番号 1 〜 16に示す。
[0084] 以下、本発明の TGF- βの活性ィ匕抑制物質のスクリーニング方法について記す。
本発明のスクリーニング方法の対象となる物質は、合成化合物でも天然物質でも特 に制限なく用いることができる。
本発明の方法に使用する LAPの部分断片としては、上記の LAPの部分断片を用い ることがでさる。
[0085] 本発明の方法に使用するビメンチンおよび TGF- βを発現する細胞としては、例え ば、血管内皮細胞、マクロファージ等があげられる。細胞は、ヒト、ゥシ、ブタ、ネズミ 等の動物から、単離'精製したもの、またはそれら細胞由来の培養細胞を用いること ができる。単離 '精製方法としては、例えば、オカダ(Okada)らの方法 [ジャーナル 'ォ ブ 'バイオケミストリー(Journal of Biochemistry) . 106, 304 (1989) ]等があげられる。
[0086] 細胞への LAPの部分断片の結合は、例えば細胞を培地で培養し該部分断片を添 加しインキュベートした後、細胞を洗浄し、細胞に結合している該部分断片を測定す ること〖こより行うことができる。
LAPの部分断片は、例えばクロラミン T法 [モレキュラー ·アンド ·セルラー ·バイオ口 ジー(Molecular & Cellular Biology) , 2, 599 (1982) ]により1251標識したもの、フルォレ セインイソチオシァネート、 AMCA、ローダミン 6G、ローダミンレッド- X、 Cy3、テキサス レッド等の蛍光色素で標識をしたもの等を用いるのが好ましい。これにより、細胞に結 合した LAPの部分断片は、それぞれ、放射活性、発光強度等を測定することにより検 出および定量することができる。
[0087] また、細胞表面上に発現するビメンチンに LAPの部分断片が結合することにより潜 在型 TGF- が活性ィ匕されるので、細胞に結合する LAPの部分断片量の測定は、活 性型 TGF- β量を測定することにより行うこともできる。活性型 TGF- βの定量法は特 に限定されないが、直接抗 TGF- |8抗体を用いた酵素免疫測定方法 [メソッヅ,イン' ェンザィモロジ一(Methods in Enzymology) , 198, 303 (1991) ]または安部らのルシフ エラーゼ ·アツセィ ·システム [アナリティカル ·バイオケミストリ一 (Analytical
Biochemistry) , 216, 276 (1994) ]等で測定することができる。また、血管内皮細胞の 遊走度 [ジャーナル ·ォブ ·セル ·バイオロジー(Journal of Cell Biology) , 123, 1249 ( 1993) ]、血管平滑筋細胞の増殖 [トウホク ·ジャーナル ·ォブ ·ェクスペリメンタル ·メデ イスン(Tohoku Journal of Experimental Medicine) , Γ79, 23 (1996) ]、各種癌細胞の 増殖阻害 [ジャーナル'ォブ'タリ-カル'インべスティゲーシヨン(Journal of Clinical Investigation) , 87, 277 (1991) ,エンドクリノロジー(Endocrinology) ,這, 1981 (1991 ) ]、ミンク肺上皮細胞の増殖阻害 [メソッヅ'イン'ェンザィモロジ一(Methods in Enzymology) , 198, 317 (1991) ]等の方法で測定することができる。
[0088] スクリーニングの対象となる物質を添加しないときの、細胞に結合する LAPの部分断 片量または活性型 TGF- |8量と、該物質を添加したときの、細胞に結合する LAPの部 分断片量または活性型 TGF- |8量とを比較し、その差異から、該化合物の、 LAPの部 分断片と TGF- |8を発現する細胞との結合阻害活性を評価することができる。該結合 阻害活性を有する物質を TGF- βの活性化を抑制する目的物質として選択する。目
的物質の選択は、例えば、添加濃度 lmmol/1で、対象となる化合物を添加しない場 合の活性型 TGF- β量に対し、添加した場合の活性型 TGF- β量が 10%以上減少の 認められる物質を選択することにより行うことができる。
[0089] 本発明のビメンチンと LAPの部分断片との結合を阻害する物質は潜在型 TGF- βの 活性ィ匕を抑制することから、潜在型 TGF- |8の活性ィ匕抑制剤として用いることができ、 TGF- βが関与する各種疾患の治療薬として用いることができる。
TGF- |8が関与する疾患としては、例えば、癌、 IgA腎症、巣状および分節性糸球体 腎炎、ループス腎炎、糖尿病性腎症、 HIV腎症、 C型肝炎、アルコール性および自己 免疫性肝線維症、ブレオマイシン誘発性および突発性肺線維症、全身性硬化症、 骨髄線維症、増殖性硝子体網膜症、クローン病、好酸球増多筋肉痛症候群、肝硬 変、梗塞後心線維症、手術後腹内癒着、血行再建術後再狭窄、高血圧性血管障害 、移植腎拒絶、ケロイド、肥厚性火傷瘢痕、眼内線維症、リウマチ性関節炎、鼻ポリ ープ等があげられる。本発明のビメンチンと LAPの部分断片との結合を阻害する物質 は、上記の TGF- |8が関与するいずれの疾患の治療にも用いることができる力 好ま しくは、動脈硬化症、癌、炎症、線維症の治療に用いることができる。
[0090] 本発明のビメンチンと LAPの部分断片との結合を阻害する物質は、治療薬として単 独で投与することも可能ではあるが、通常は薬理学的に許容される一つまたはそれ 以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野にお!、てよく知られる任意の方法に より製造した医薬製剤として提供するのが望ましい。
投与経路は、治療に際して最も効果的なものを使用するのが望ましぐ経口投与、 または口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内および静脈内等の非経口投与をあげ ることができ、抗体またはペプチド製剤の場合、望ましくは静脈内投与をあげることが できる。
[0091] 投与形態としては、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、 注射剤、軟膏、テープ剤等があげられる。
経口投与に適当な製剤としては、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒 剤等があげられる。
乳剤およびシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール、果糖等の
糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のダリコール類、ごま油、オリ ーブ油、大豆油等の油類、 P—ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、スト口ベリ 一フレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を添加剤として用いて製造できる。
[0092] カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等は、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マン-トール等の 賦形剤、デンプン、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タル ク等の滑沢剤、ポリビュルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の 結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を添加剤として 用いて製造できる。
[0093] 非経口投与に適当な製剤としては、注射剤、座剤、噴霧剤等があげられる。
注射剤は、塩溶液、ブドウ糖溶液、または両者の混合物カゝらなる担体等を用いて調 製される。
座剤はカカオ脂、水素化脂肪またはカルボン酸等の担体を用いて調製される。 また、噴霧剤は本発明のビメンチンと LAPの部分断片との結合を阻害する物質その もの、ないしは受容者の口腔および気道粘膜を刺激せず、かつ該物質を微細な粒子 として分散させ吸収を容易にさせる担体等を用いて調製される。
[0094] 担体として具体的には乳糖、グリセリン等が例示される。該物質および用いる担体 の性質により、エアロゾル、ドライパウダー等の製剤が可能である。また、これらの非 経口剤にぉ 、ても経口剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。 投与量または投与回数は、 目的とする治療の効果、投与方法、治療期間、年齢、 体重等により異なるが、ビメンチンと LAPの部分断片との結合を阻害する物質が抗ビ メンチン抗体もしくは該抗体断片またはそれらの誘導体である場合、通常成人 1日当 たり 10 /z g/kg〜8mg/kgである。
以下に本発明の実施例を示す。
実施例 1
[0095] 抗ビメンチン抗体によるビメンチンと LAPの部分断片との結合阻害(1)
本試験は安部(Abe)らの方法 [エンドセリウム(Endothelium) 9, 25-36 (2002)]に従 つて行った。また、本実験で使用したペプチドのピオチン化は国際公開第 98/51704 号に記載の方法に従った。
すなわち、 10%FBS、 4mmol/lの L-グルタミン、 10 g/mlのカナマイシン(明治製菓社 製)を含む DMEM培地に懸濁したゥシ血管内皮細胞(以下、 BAECという。)を 96穴黒 色プレート(コ一-ング 'コースター社製)に、 1穴あたり 2.0 X 104個ずつ播種し、 5%CO 条件下 37°Cで 1日間培養した後に、以下の実験に供した。
2
[0096] 細胞を PBSで 3回洗浄した後、 5 μ g/mlの抗ビメンチン抗体 (VIM3B4、 PROGEN社 製)で 37°C30分間インキュベートし、その後、配列番号 15で表されるペプチド(
Peptide-25)または配列番号 17で表されるピオチン化ペプチド(Peptide -25N)およ び 0.1%BSAを含む DMEM培地を、各ペプチドの最終濃度が 100 g/mlとなるように添 加し、 37°Cで 60分間インキュベートした。次に PBSで 1回洗浄し、 PBSで 500倍希釈し た HRP- conjugated streptavidin (アマシャム社製)を 1穴あたり 100 μ 1加えて、 37°Cで
30分間インキュベートした。その後 PBSで 3回洗浄し、 100 μ 1の ECL western blotting detection reagent (アマシャム社製)を加えて、ルミネセンサー JNR (アト一社製)により 各ゥエルの発光強度を測定した。
[0097] 結果を図 1に示す。図 1から明らかなように、 Peptide_25Nは細胞表面に結合し、その 結合は抗ビメンチン抗体により抑制された。
実施例 2
[0098] 抗ビメンチン抗体による TGF- β活性化抑制
本試験は安部(Abe)らの方法 [エンドセリウム(Endothelium) 9, 25-36 (2002)]に従 つて行った。
すなわち、 BAECを 35mmディッシュに播種し、コンフルェントになるまで培養した。 配列番号 15で表されるペプチド (Peptide-25)または配列番号 18で表されるペプチド (Peptide-21)を 0.1%BSA含有 DMEM培地中に最終濃度 100 /z g/mlとなるように調製し 、細胞に添カ卩して 37°Cで 6時間プレインキュペートした。その後、剃刀で一部の細胞 を剥ぎ取り、 PBSで洗浄して力もプレインキュペート時と同組成の培地で 24時間インキ ュペートした。プレインキュベート時および剥ぎ取り後のインキュベート時には、各ぺ プチドに加えて 5 μ g/mlの抗ビメンチン抗体 (V9、 Neo Markers社製)またはマウス IgGl抗体 (Ancell社製)をそれぞれ添加し、剥ぎ取った領域に遊走してくる細胞数に 対する各抗体の影響を調べた。該細胞数は、剥ぎ取り後 24時間に位相差顕微鏡下
で計数した。
[0099] 結果を図 2に示す。図 2から明らかなように、 Peptide-25を添加することにより遊走細 胞数が減少した。これは Peptide-25が潜在型 TGF- |8の活性ィ匕を促進したことにより 、 TGF- |8による細胞遊走阻害作用が増強されたためである。一方、 Peptide-25にカロ えて抗ビメンチン抗体を添加した場合、遊走細胞数が有意に増カロしたことから、抗ビ メンチン抗体が Peptide-25の潜在型 TGF- βの活性ィ匕を抑制することが明ら力となつ た。なお、潜在型 TGF- |8活性ィ匕能を有さない Peptide-21を添加した場合は、細胞遊 走数に変化は見られず、そこに抗ビメンチン抗体を添加しても何ら変化は見られなか つた o
実施例 3
[0100] 抗ビメンチン抗体によるビメンチンと LAPの部分断片との結合阻害(2)
実施例 1と同様の方法で、参考例で作製した抗ヒトビメンチンモノクローナル抗体 KM3565のビメンチンと LAPの部分断片との結合阻害活性を評価した。本実施例にお いては、実施例 1における VIM3B4の代りに、 5 /z g/mlの KM3565または陰性対照とし て同濃度の抗 G- CSF変異体抗体 KM511 (Agric. Biol. Chem., 53(4), 1095-1101, 1989)の!、ずれかを添カ卩した。
結果を図 3に示す。図 3から明らかなように、 KM3565は Peptide-25Nの細胞表面への 結合を抑制した。
[0101] 参考例
抗ヒトビメンチンモノクローナル抗体の作製
(1)抗原ペプチドの調製
(1-1)化合物 1 (ヒトビメンチン部分ペプチド:配列番号 19)の合成
本発明において使用したアミノ酸およびその保護基に関する略号は、生化学命名 に関する IUPAC-IUB委員会(IUPAC-IUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature)の勧告〔ョ一口ビアン 'ジャーナル'ォブ 'バイオケミストリー(European Journal of Biochemistry) , 138卷, 9頁(1984年)〕に従った。
[0102] 以下の略号は、特に断わらない限り対応する下記のアミノ酸を表す。
Ala: L-ァラニン
Arg: L-ァノレギニン
Asn: L-ァスパラギン
Asp: L-ァスパラギン酸
Asx: L -ァスパラギン酸または L-ァスパラギン
Cys: L -システィン
Gin : L-グルタミン
Glu: L-グルタミン酸
Glx: L-グルタミン酸または L-グルタミン
Gly:グリシン
lie: L—イソロイシン
Leu: L—ロイシン
Lys: L-リジン
Met: L -メチォニン
Pro : L-プロリン
Ser: L-セリン
Thr: L-スレオニン
Tyr: L-チロシン
以下の略号は、対応する下記のアミノ酸の保護基または側鎖保護アミノ酸を表す。 Fmoc: 9-フノレオレニルメチノレオキシカルボニル
t-Bu: t-ブチル
Trt:トリチノレ
Pmc: 2,2,5,7,8-ペンタメチノレクロマン- 6-スノレホニノレ
Boc: t-プチ/レオキシカノレボニノレ
Fmoc-Ser(t-Bu)-OH: Να- 9-フルォレ -ルメチルォキシカルボ-ル- o-t-ブチル -L- セリン
Fmoc- Thr(t- Bu)- OH: Να- 9 -フルォレニルメチルォキシカルボ-ル- o-t-ブチル -L- スレ才ニン
Fmoc— Lys(Boc)— OH: Να— 9—フ/レオレニノレメチゾレオキシ力/レポ二/レ— Ν ε—t一プチ/レオ
キシカルボニル- L-リジン
Fmoc- Asn(Trt)- OH: Να- 9-フルォレニルメチルォキシカルボニル- Νγ -トリチル- L- ァスノ ラギン
Fmoc-Asp(0-t-Bu)-OH: Να- 9-フルォレ -ルメチルォキシカルボ-ル- L-ァスパラ ギン酸- 13 -t-ブチルエステル
Fmoc-Glu(0-t-Bu)-OH: Να 9 フルォレ -ルメチルォキシカルボ-ル- L-グルタミ ン酸- γ -t-ブチルエステル
Fmoc- Gln(Trt)- OH: Να- 9-フルォレ -ルメチルォキシカルボ-ル- Νγ -トリチル- L-グ ルタミン
Fmoc- Arg(Pmc)- OH: Να- 9-フルォレ -ルメチルォキシカルボ-ル -Ng- 2,2,5,7,8-ぺ ンタメチルクロマン- 6-スルホ -ル- L-アルギニン
Fmoc-Tyr(t-Bu)-OH: Να- 9-フルォレ -ルメチルォキシカルボ-ル- O-t-ブチル -L- チロシン
Fmoc- Cys(Trt)- OH: N a -9-フルォレ -ルメチルォキシカルボ-ル- S-トリチル- L-シ スティン
[0104] 以下の略号は、対応する下記の反応溶媒、反応試薬等を表す。
HBTU: 2- (1H-ベンゾトリアゾール -1-ィル) -1 , 1 ,3,3-テトラメチルゥ口-ゥム ·へキサフ ノレ才ロホスフェート
HOBt: N-ヒドロキシベンゾトリアゾール
DMF: Ν,Ν-ジメチルホルムアミド
TFA:トリフルォロ酢酸
DIEA:ジイソプロピルェチルァミン
[0105] アミドリンカ一 16.5 μ molが結合した担体榭脂 (Rink-Amide MBHA榭脂、 Nova
Biochem社製) 30mgを自動合成機(島津製作所 PSSM-8)の反応容器に入れ、島津 製作所の合成プログラムに従 、次の操作を行った。
(a)担体榭脂を 500 1の DMFで 1分間洗浄し、該溶液を排出した。
(b) 30%ピぺリジン- DMF溶液 858 1を加えて混合物を 4分間攪拌し、該溶液を排 出し、この操作をもう 1回繰り返した。
(c)担体榭脂を 500 1の DMFで 1分間洗浄し、該溶液を排出し、この操作を 5回 繰り返した。
(d) Fmoc-Glu(0-t-Bu)-OH (165 μ mol)、 HBTU (165 μ mol)、 HOBt 1水和物(165 μ mol)および DIEA(330 μ mol)を DMF (858 μ 1)中で 3分間攪拌し、得られた溶液を 榭脂に加えて混合物を 30分間攪拌し、溶液を排出した。
(e)担体榭脂を 858 1の DMFで 1分間洗浄し、これを 5回繰り返した。こうして、 Fmoc- Glu(0- 1- Bu)-アミドを担体上に合成した。
[0106] 次に (b)、(c)の Fmoc基脱保護工程および洗浄工程を行い、 Fmoc基を除去した H- Glu(0- 1- Bu)-アミドの結合した担体榭脂を得た。
次に、(d)の工程で Fmoc-Glu(O-t-Bu)- OHを用いて縮合反応を行い、(e)の洗浄 工程、次いで (b)、(c)の脱保護、洗浄工程を経て、 H-Glu(O-t-Bu)- Glu(0- 1- Bu)-ァ ミドを担体上に合成した。以下、工程 (d)において、 Fmoc-Lys(Boc)- OH、
Fmoc— Met— OH、 Fmoc— Asn(Trt)— OH、 Fmoc— Gln(Trt)— OH、 Fmoc— lie— OH、 Fmoc— Glu(0— t— Bu)— OH、 Fmoc— Asp(0— t— Bu)— OH、 Fmoc— Gln(Trt)— OH、
Fmoc- Leu- OH、 Fmoc- Arg(Pmc)- OH、 Fmoc- Gly- OH、 Fmoc- lie- OH、
Fmoc— Thr(t— Bu)— OH、 Fmoc— Asp(0— t— Bu)— OH、 Fmoc— Gln(Trt)— OH、
Fmoc- Tyr(t- Bu)- OHゝ Fmoc- Asn(Trt)- OHゝ Fmoc- Ala- OHを順次用いて、(d)、(e)、 (b)、(c)の順に工程を繰り返した。最後に Fmoc- Cys(Trt)- OHを用いて (d)、(e)の操作 を 2度繰り返した後に、(a)、(b)の操作を行った。
[0107] 得られた榭脂をメタノール、ブチルエーテルで順次洗浄し、減圧下 12時間乾燥して 、側鎖保護ペプチドの結合した担体榭脂を得た。これに、 TFA (82.5%)、チオア-ソ ール(5%)、水(5%)、ェチルメチルスルフイド(3%)、 1,2-エタンジチオール(2.5%)およ びチオフェノール (2%)力 なる混合溶液 600 1をカ卩えて室温で 8時間放置し、側鎖 保護基を除去するとともに樹脂よりペプチドを切り出した。榭脂を濾別後、得られた溶 液にエーテル約 10mlを加え、生成した沈澱を遠心分離およびデカンテーシヨンによ り回収し、粗ペプチド 42.7mgを取得した。この粗ペプチドを酢酸水溶液に溶解後、逆 相カラム(資生堂製、 CAPCELL PAK C18 30mmI.D. X 25mm)を用いた HPLCで精 製した。 0.1% TFA水溶液に、 TFA 0.1%を含む 90%ァセトニトリル水溶液を加えてい
く直線濃度勾配法で溶出し、 220nmで検出し、化合物 1を含む画分を得た。この画分 を凍結乾燥して、化合物 1を 8.4mg得た。化合物 1の物理ィ匕学的性質は以下の通りで ある。
質量分析 [TOF- MS]; m/z = 2497.25 (M+H+)
アミノ酸分析; Glx 6.0(6), Asx 3.7 (4), Arg 1.1(1), Thr 1.0(1), Ala 1.0(1), He 1.9 (2), Leu 1.1(1), Lys 0.9(1), Tyr 0.9(1), Met 0.9 (1), Gly 1.3 (1), Cys 1.4(1) [0108] (1-2)化合物 2 (対照ペプチド:配列番号 20)の合成
アミドリンカ一 16.5 μ molが結合した担体榭脂 (Rink-Amide MBHA榭脂、 Nova
Biochem社製) 30mgを出発物質とし、(1-1)と同様にして、 Fmoc- Pro- OH、
Fmoc- Leu- OH、 Fmoc- Pro- OH、 Fmoc- Leu-〇H、 Fmoc- ¾er(t- Bu)- OH、
Fmoc— lie— OH、 Fmoc— Arg(Pmc)— OH、 Fmoc— Ser(t— Bu)— OH、
Fmoc— Glu(0— t— Bu)— OH、 Fmoc— Glu(0— t— Bu)— OH、 Fmoc— Gly— OH、
Fmoc— Glu(0— t— Bu)— OH、 Fmoc— Leu— OH、 Fmoc— Leu— OH、 Fmoc— Lys(Boc)— OH、
Fmoc— Arg(Pmc)— OH、 Fmoc— Tyr(t— Bu)— OH、 Fmoc— Thr(t— Bu)— OH、
Fmoc- Cys(Trt)- OHを順次縮合した後に、洗浄、乾燥を経て、側鎖保護ペプチドの 結合した担体榭脂を得た。(1-1)と同様にして側鎖保護基の切断および榭脂からの切 り出しを行い、粗ペプチド 38.7mgを取得した。これを (1-1)と同様に精製し、化合物 2 を 4.7 mg得た。化合物 2の物理化学的性質は以下の通りである。
質量分析(TOF-MS); m/z = 2203.19(M+H+)
アミノ酸分析:アミノ酸分析; Glx 3.1 (3), Arg 1.9(2), Thr 0.9(1), Ser 1.9(2), He 1.0(1), Leu 4.1(4), Lys 0.9(1), Tyr 0.9(1), Gly 1.1 (1), Pro 2.2(2), Cys 1.1(1) [0109] (2)免疫原の調製
上記(1)で得られたヒトビメンチン部分ペプチドは、免疫原性を高める目的で以下 の方法で KLH (カルビオケム社)とのコンジュゲートを作製し、免疫原とした。すなわち 、 KLHを PBSに溶解して 10mg/mlに調整し、 1/10容量の 25mg/ml MBS (ナカライテス ク社)を滴下して 30分間撹拌反応させた。あら力じめ PBSで平衡ィ匕したセフアデックス G- 25カラムでフリーの MBSを除 、て得られた KLH- MBS 2.5mgを 0.1Mりん酸ナトリウム ノ ッファー (PH7.0)に溶解したペプチド lmgと混合し、室温で 3時間、攪拌反応させた
。反応後、反応物を PBSで透析し、ヒトビメンチン部分ペプチド- KLHコンジュゲートを 得た。
[0110] (3)動物の免疫と抗体産生細胞の調製
上記(2)で調製したヒトビメンチン部分ペプチド- KLHコンジュゲート 100 μ gをアルミ -ゥムゲル 2mgおよび百日咳ワクチン (千葉県血清研究所製) 1 X 109細胞とともに 5週 令雌マウス(Balb/c)に投与し、 2週間後より 100 gの該コンジュゲートを 1週間に 1回 、計 4回投与した。眼底静脈叢より採血し、血清抗体価を下記 (4)に示す酵素免疫測 定法で調べ、十分な抗体価を示したマウスカゝら最終免疫 3日後に脾臓を摘出した。 脾臓を MEM培地(日水製薬社製)中で細断し、ピンセットでほぐし、 1200rpmで 5分 間遠心分離した。上清を捨て、トリス—塩ィ匕アンモ-ゥム緩衝液 (PH7.65)で 1〜2分 間処理し赤血球を除去し、 MEM培地で 3回洗浄したものを細胞融合に用いた。
[0111] (4)酵素免疫測定法
アツセィ用の抗原には上記(1)で得られたヒトビメンチン部分ペプチドとサイログロ ブリン (以下、 THYと略す)とのコンジュゲートを用いた。該コンジュゲートは、架橋剤と して MBSの代わりに SMCC (シグマ社)を用いた以外、上記(2)と同様の方法により作 製した。
96穴の EIA用プレート(グライナ一社)に、上記コンジュゲートを 10 μ g/ml、 50 μ 1/穴で 分注し、 4°Cでー晚放置して吸着させた。洗浄後、 1%BSA (ゥシ血清アルブミン) -PBS を 100 1Z穴でカ卩え、室温 1時間反応させて残っている活性基をブロックした。
1%BSA- PBSを捨て、被免疫マウス抗血清、抗ビメンチンモノクローナル抗体の培養上 清または精製モノクローナル抗体を 50 μ 1Z穴で分注し 2時間反応させた。
0.05%tween-PBSで洗浄後、ペルォキシダーゼ標識ゥサギ抗マウスィムノグロブリン( ダコ社)を 50 /z lZ穴で加えて室温、 1時間反応させ、 0.05%tween-PBSで洗浄後 ABTS基質液 [2.2-アジノビス(3-ェチルベンゾチアゾール -6-スルホン酸)アンモ-ゥ ム]を用いて発色させ、 OD415nmの吸光度をプレートリーダー(Emax;Molecular Devices社)にて測定した。
[0112] (5)マウス骨髄腫細胞の調製
8—ァザグァニン耐性マウス骨髄腫細胞株 P3-U1を正常培地で培養し、細胞融合
時に 2 X 107以上の細胞を確保し、細胞融合に親株として供した。
(6)ハイプリドーマの作製
上記(3)で得られたマウス脾細胞と上記(5)で得られた骨髄腫細胞とを 10:1になる よう混合し、 l,200rpmで 5分間遠心分離した。上清を捨て、沈澱した細胞群をよくほぐ した後、ポリエチレングライコール -1,000 (PEG-1, 000) 2g、 MEM培地 2mlおよびジメチ ルスルホキシド 0.7mlの混液を 0.2〜lml/108マウス脾細胞となるように加えて 37°Cで攪 拌した。 1〜2分間毎に MEM培地 l〜2mlを数回加えた後、 MEM培地を加えて全量が 50mlになるようにした。 900rpmで 5分遠心分離した後、上清を捨て、ゆるやかに細胞 をほぐした後、メスピペットによる吸込み ·吸出しを繰り返し、細胞を HAT培地 100ml中 に懸濁した。
[0113] この懸濁液を 96穴培養用プレートに 100 μ 1Ζ穴ずつ分注し、 5%COインキュベータ
2
一中、 37°Cで 10〜14日間、 CO 5%条件下で培養した。この培養上清を上記 (4)に記
2
載した酵素免疫測定法で調べ、ヒトビメンチン部分ペプチド (化合物 1)に反応して対 照ペプチド (化合物 2)に反応しない穴を選び、 HAT培地を正常培地に換えて 2回ク ローニングを繰り返し、抗ヒトビメンチンモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを確立 した。
以上の結果、化合物 1に特異的な反応性を示すモノクローナル抗体 KM3565を産 生するハイブリドーマ株 KM3565を取得した。なお、ハイプリドーマ株 KM3565は KM3565の株名で、平成 17年 4月 19日付けで独立行政法人産業技術総合研究所特 許生物寄託センター (日本国茨城県つくば巿東 1丁目 1番地 1中央第 6)に FERM ABP- 10324として寄託されて!、る。
また、モノクローナル抗体 KM3565の抗体クラスは抗体クラス特異的な標識ィ匕抗体を 用いた酵素免疫測定法により IgG3と決定された。
[0114] (7)モノクローナル抗体の精製
プリスタン処理した 8週令ヌード雌マウス(Balb/c )に上記(6)で得られたハイブリド 一マ株を 5〜20 X 106細胞 Z匹で腹腔内注射した。 10〜21日後に、ノ、イブリドーマは 腹水癌化した。腹水のたまったマウスから、腹水を採取(l〜8mlZ匹)し、 3,000rpmで 5分遠心分離して固形分を除去した。得られた上清を力プリル酸沈殿法 [Antibodies
- A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988〕により精製し、精製モ ノクローナル抗体を得た。
[0115] (8)モノクローナル抗体 KM3565のヒトビメンチン部分ペプチドとの反応性(酵素免疫 測定法)
上記(6)で選択された抗ヒトビメンチンモノクローナル抗体 KM3565のヒトビメンチン 部分ペプチドとの反応性を、上記 (4)の酵素免疫測定法にて調べた。図 4に示すよう に、モノクローナル抗体 KM3565は化合物 1特異的に抗体濃度依存的な反応性を示 した。
(9)モノクローナル抗体 KM3565のヒトビメンチン蛋白との反応性 (酵素免疫測定法) 上記(6)で選択された抗ヒトビメンチンモノクローナル抗体 KM3565のヒトビメンチン蛋 白との反応性を上記 (4)の酵素免疫測定法にて調べた。大腸菌で発現させたヒトビメ ンチン蛋白(PROGEN社)を添付のデータシート記載の方法に従って蒸留水にて溶 解後、 PBSで 2 /z g/mlに希釈してプレートに固層化した。陰性対照抗原として大腸菌 由来夾雑蛋白を PBSで 10 g/mlに希釈してプレートに固層化したものを用いた。図 5 に示すように、モノクローナル抗体 KM3565はビメンチン特異的に抗体濃度依存的な 反応性を示した。
[0116] (10)ウェスタンブロッテイング
上記(6)で選択された抗ヒトビメンチンモノクローナル抗体 KM3565のヒトビメンチン 蛋白との反応性をウェスタンブロッテイングにて調べた。
大腸菌で発現させたヒトビメンチン蛋白、または大腸菌由来夾雑蛋白を 0.1 μ gZレー ンで SDS-ポリアクリルアミド電気泳動〔Ant¾odies - A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988〕にて分画後、 PVDF膜にブロッテイングした。 1%BSA 一 PBSでブロッキング後、 1次抗体として KM3565のハイブリドーマ培養上清原液、巿 販の抗ビメンチン抗体 2種(PROGEN社製 VIM3B4および Santa Cruz Biotechnology社 製 V9、いずれも精製抗体 5 μ g/ml)、および陰性対照抗体として KM511 (抗 G-CSF変 異体抗体、 Agric. Biol. Chem., 53(4), 1095-1101, 1989、 5 g/ml)を室温で 2時間反 応させた。 0.05%tween— PBSでよく洗浄した後、第二抗体としてペルォキシダーゼ標 識抗マウスィムノグロブリン抗体 (DAKO社製)を室温で 1時間反応させた。
0.05%tween— PBSでよく洗浄した後、 ECL- detection kit (アマシャム社)による反応を 行った。
その結果、モノクローナル抗体 KM3565は、巿販抗体と同様、ビメンチン蛋白に特異 的な反応性を示した。
[0117] (11)モノクローナル抗体 KM3565と巿販抗ビメンチン抗体との認識ェピトープの異同 巿販抗ビメンチン抗体 2種(PROGEN社製 VIM3B4および Santa Cruz Biotechnology 社製 V9)とモノクローナル抗体 KM3565の認識ェピトープの異同を検討する目的で、 該巿販抗体の化合物 1に対する反応性を上記 (4)の酵素免疫測定法にて調べた。 その結果、図 6に示すように該巿販抗体は ヽずれもビメンチン蛋白に反応性を有する 力 化合物 1に対する反応性を示さな力つたことから、これらの抗体はビメンチン蛋白 上のモノクローナル抗体 KM3565とは異なる別のェピトープを認識していることが明ら カゝとなった。
産業上の利用可能性
[0118] 本発明により、ビメンチンと LAPの部分断片との結合を阻害する物質を有効成分と して含有する潜在型 TGF- βの活性化抑制剤、または TGF- β活性化抑制物質のス クリーニング方法が提供される。本発明の TGF- |8の活性ィ匕抑制剤は、 TGF- 力 S関 与する疾患の治療薬として利用することができる。
配列表フリ' —テキスト
[0119] 配列番号 1 -人工配列の説明 :合成ペプチド
配列番号 2 -人工配列の説明 :合成ペプチド
配列番号 3 -人工配列の説明 :合成ペプチド
配列番号 4 -人工配列の説明 :合成ペプチド
配列番号 5 -人工配列の説明 :合成ペプチド
配列番号 6 -人工配列の説明 :合成ペプチド
配列番号 7 -人工配列の説明 :合成ペプチド
配列番号 8 -人工配列の説明 :合成ペプチド
配列番号 9 -人工配列の説明 :合成ペプチド
配列番号 10—人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号 11- -人工配列の説明:合成ペプチド 配列番号 12- -人工配列の説明 :合成ペプチド 配列番号 13- -人工配列の説明 :合成ペプチド 配列番号 14- -人工配列の説明 :合成ペプチド 配列番号 15- -人工配列の説明 :合成ペプチド 配列番号 16- -人工配列の説明 :合成ペプチド 配列番号 17- -人工配列の説明 :合成ペプチド 配列番号 18- -人工配列の説明 :合成ペプチド 配列番号 19- -人工配列の説明: :合成ペプチド 配列番号 20- -人工配列の説明: :合成ペプチド