明 細 書
人工磁性体による、遺伝子導入調節法およびシステム
技術分野
[0001] 本発明は、遺伝子工学の分野にある。より詳細には、磁性を利用した、遺伝子導入 に関する。
背景技術
[0002] 近年の先進医療技術の向上により、遺伝子治療あるいは細胞治療による難治性疾 患の克服の可能性が膨らみつつある。これら次世代の治療で大きくクローズアップさ れるのは、「場」の概念であり、遺伝子の局所での過剰発現または「ニッチ」と呼ばれ る未分化細胞の組織特異的な分化に適した環境が重要視されている。この「場」に遺 伝子または細胞を人為的に集積される技術が最近にわかに必要とされてきた。
[0003] 種々の疾患を治療する手段として、遺伝子治療が注目されて!/ヽる。遺伝子治療で は、リボソームなどの遺伝子送達因子が利用されている力 特異性が低いことから、 標的とする細胞、部分以外にも導入される遺伝子が送達されると ヽぅ欠点がある。
[0004] 特異性を高めるために、細胞に特異的に発現するマーカーなどを指標に遺伝子を 送達することもまた提唱されている。しかし、そのような指標に特異的な因子は、概し て宿主の体に有害であることが多ぐ生体適合性という観点からは、好ましくないか、 あるいは、好まし力つたとしても、その開発は困難である。
[0005] 特許文献 1は、磁性細菌のマグネトソームおよび遺伝子を含有するリボソームを開 示する。しかし、この公報で使用されるマグネトノームとは、磁性細菌が菌体内に有 する、寸法約 500〜 1500 Aの微小なマグネタイト微粒子であり、同様のものを人工 的に合成することは困難とされている。従って、従来は、自由自在に遺伝子送達因子 を設計することが困難であった。また、磁性細菌は、生体にとって必ずしも安全とはい えず、医薬への応用は困難である。また、マグネタイトは、遺伝子導入ベクターなどの 修飾には不向きである。
[0006] 特許文献 2でもまた、磁性細菌のマグネトノームの医療応用を開示する。しかし、こ の公報で使用されるものも、磁性細菌由来のものし力使用することができない。従つ
て、毒性および生体適合性などの点から、医薬への応用が困難であることには変わり がない。
[0007] そのような中、安全で、磁性を用いて遺伝子を自在に導入するための技術が渴望さ れている。
特許文献 1:特開平 07— 241192号
特許文献 2:特表 2001 - 527534号
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0008] 本発明は、通常の生体分子導入因子を用いて、磁力で送達位置を制御できるよう な技術を提供することを課題とする。
課題を解決するための手段
[0009] 上記課題は、鉄コロイドのような通常使用され、人工合成可能な磁性粒子を、核酸 導入因子ともに用いることができることを見出すことによって解決される。
[0010] 本発明によって、磁性粒子を用いて、遺伝子ベクターなどの遺伝子送達因子を改 変し、それらを目的の組織にまで誘導させて治療効果を増強するための技術および 磁場制御が可能な装置が開発される。
[0011] 本発明によって、以下が提供される。
(1)磁性粒子を含む、生体分子を導入するための組成物。
(2)上記生体分子は、核酸、タンパク質または低分子である、上記項目に記載の組 成物。
(3)上記生体分子は、 DNA、 RNAおよびその改変体力もなる群より選択される、上 記項目に記載の組成物。
(4)上記組成物は、遺伝子導入ベクターを含む、上記項目に記載の組成物。
(5)上記磁性粒子は、金属を含む、上記項目に記載の組成物。
(6)上記磁性粒子には、タンパク質をコードする核酸が付着される、上記項目に記載 の組成物。
(7)上記磁性粒子は、コロイド状態で存在する、上記項目に記載の組成物。
(8)上記磁性粒子は、生体高分子でコーティングされる、上記項目に記載の組成物
(9)上記磁性粒子は、硫酸プロタミン、ゼラチン、コラーゲン、およびファイブロネクチ ンカ なる群より選択される少なくとも 1つの化合物でコーティングされる、上記項目 に記載の組成物。
(10)上記磁性粒子は、硫酸プロタミンでコーティングされる、上記項目に記載の組 成物。
(11)上記磁性粒子は、鉄化合物、ニッケル化合物、コノ レト化合物および電磁石か らなる群より選択される少なくとも 1つの化合物を含む、上記項目に記載の組成物。
(12)上記磁性粒子は、鉄化合物を含む、上記項目に記載の組成物。
(13)上記磁性粒子は、酸化鉄、硫酸鉄、塩ィ匕鉄または鉄アルコキシドから作製され るコロイドを含む、上記項目に記載の組成物。
(14)上記磁性粒子は、フェライト、マグネタイトまたはマグへマイトを含む、上記項目 に記載の組成物。
(15)上記磁性粒子は、沈降方法または加水分解して調製される磁性微粒子を含む 、上記項目に記載の組成物。
(16)上記遺伝子導入ベクターは、ウィルスベクターまたはその改変体を含む、項目 4に記載の組成物。
(17)上記ウィルスベクターまたはその改変体は、不活化される、項目 16に記載の組 成物。
(18)上記遺伝子導入ベクターは、センダイウィルスエンベロープ (HVJ— Ε)を含む 、項目 4に記載の組成物。
(19)上記遺伝子導入ベクターは、治療的効果を有するタンパク質をコードする核酸 を含む、項目 4に記載の組成物。
(20)さらに遺伝子導入試薬を含む、上記項目に記載の組成物。
(21)上記遺伝子導入試薬は、カチオン性高分子、カチオン性脂質およびリン酸カル シゥム力 なる群より選択される少なくとも 1つの成分を含む、項目 20に記載の組成 物。
(22)上記遺伝子導入試薬は、リポフエクタミンを含む、項目 20に記載の組成物。
(23)さらに、特定の細胞に特異的に相互作用する成分を含む、上記項目に記載の 組成物。
(24) 10〜150emuZgの磁性強度を有する、上記項目に記載の組成物。
(25) 20ηπ!〜 200nmの粒子状形態を有する、上記項目に記載の組成物。
(26) 20ηπ!〜 50nmの粒子状形態を有する、上記項目に記載の組成物。
(27)磁性粒子を含む、生体分子を導入するための組成物と、磁場発生手段とを備 える、装置。
(28)上記磁場発生手段は、 10, 000エルステッド未満の強さの磁場をかける能力を 有する、上記項目に記載の装置。
(29)上記磁場発生手段は、局所的に磁場をかけることができる、上記項目に記載の 装置。
(30)上記磁場発生手段は、永久磁石である、上記項目に記載の装置。
(31)上記磁場発生手段は、電磁石である、上記項目に記載の装置。
(32)磁性粒子を含む、生体分子を導入するための組成物を製造する方法であって
A)金属イオンと、水酸ィ匕物イオンとを含む水酸ィ匕物水溶液を生成する工程;およ び
B)物理的刺激を与えて上記金属の水酸化物コロイドを生成する工程、 を包含する、方法。
(33)上記水酸化物水溶液は、
A— 1)金属イオンを含む水溶液を調製する工程;および
A— 2)上記水溶液に水酸化物イオンをカ卩ぇ上記金属の水酸化物を生成する工程 によって生成される、上記項目に記載の方法。
(34)上記水酸化物水溶液は、金属アルコキシドを加水分解して生成される、上記項 目に記載の方法。
(35)上記金属は、鉄である、上記項目に記載の方法。
(36)上記金属イオンを含む水溶液は、塩ィ匕鉄 (II)または硫酸鉄 (II)の水溶液であ る、項目 33に記載の方法。
(37)上記金属アルコキシドは、鉄アルコキシドである、項目 34に記載の方法。
(38)上記金属イオンは、 0. 01〜: LmolZdm3の濃度で存在する、項目 32に記載の 方法。
(39)さらに、生体分子を混合する工程を包含する、上記項目に記載の方法。
(40)上記生体分子は、核酸を含む、項目 39に記載の方法。
(41)磁性粒子を含む、生体分子を導入するための組成物を含む、生体分子を生体 に導入するための医薬キット。
(42)上記組成物は、遺伝子導入ベクターを含む、上記項目に記載の医薬キット。
(43)上記組成物と、目的の生体分子とを混合して生体に投与するよう指示する指示 書をさらに備える、上記項目に記載の医薬キット。
(44)以下の工程:
A)治療または予防に使用される生体分子および磁性粒子を含む、生体分子を導入 するための組成物を被検体に投与する工程;および
B)上記被検体において上記生体分子の送達が所望される部位に磁場をかける工程 を包含する、上記生体分子によって治療または予防を行うことができる疾患または障 害を処置または予防するための方法。
(45)上記生体分子は、核酸を含み、上記治療または予防は、遺伝子治療を含む、 上記項目に記載の方法。
(46)上記組成物は、遺伝子導入ベクターを含む、上記項目に記載の方法。
(47)上記遺伝子導入ベクターは、ウィルスベクターまたはその改変体を含む、項目 46に記載の方法。
(48)上記ウィルスベクターまたはその改変体は、不活化される、項目 47に記載の方 法。
(49)上記遺伝子導入ベクターは、センダイウィルスエンベロープ(HVJ—E)を含む 、項目 46に記載の方法。
(50)上記磁場をかける工程は、 10分力も数日間の間行われる、上記項目に記載の 方法。
(51)上記磁場をかける工程は、 10分から 2時間の間行われる、上記項目に記載の 方法。
(52)磁性粒子の、生体分子を導入するための組成物を調製するための、使用。
[0012] 以下に、本発明の好ましい実施形態を示すが、当業者は本発明の説明および当該 分野における周知慣用技術力もその実施形態などを適宜実施することができ、本発 明が奏する作用および効果を容易に理解することが認識されるべきである。
発明の効果
[0013] 本発明は、任意の遺伝子をコードする核酸分子を自由に生体分子導入因子に導 入して核酸を導入する技術を提供する。本発明は、生体に安全に適合し、さらに送 達位置を制御可能とする生体分子導入因子を提供する。このような生体分子導入因 子技術を用いることによって、遺伝子治療のより詳細な制御およびティラーメイド治療 が可能になる。特に、なお安全性に関しては、酸化鉄自体は貧血の治療薬として既 に臨床で使用されており、今後磁性コロイドを GMP基準下で製造すれば充分に医 療に使える素材であり、その応用範囲は広い。
[0014] マウス、ラットなどの動物、植物などでも、 HVJ— Eなどの遺伝子導入べクタ一を、維 管束、脈管または血管内に注入し、磁場により目的の器官,組織まで移動させて遺 伝子導入を行うことが可能である。
[0015] 本発明の粒子で遺伝子導入ベクターの表面を修飾し磁場による遺伝子導入効率 の増強が行われる。より好ましい実施形態では、磁性粒子そのものよりも磁性粒子表 面を硫酸プロタミンのような生体高分子でコーティングする方が、より遺伝子導入効 果が奏される。このような磁性組成物は、プラスミドなどの遺伝子をコードする核酸を 含む核酸分子などと混合することにより培養細胞での遺伝子導入効率が上昇し、特 に、 HVJ— Eベクターと併用すると飛躍的に遺伝子導入効率の増強が可能になった 。安全性の評価として培養上清中の LDHの量を測定したところ、細胞上清中の LD H濃度の検討では、細胞約 1万個あたり 10 gの使用までであれば LDHの上昇は 認めな力つたことから、安全性も高いという効果も有する。
図面の簡単な説明
[0016] [図 1]図 1は、本発明の磁性粒子を含む組成物の構成例を示す。
[図 2]図 2は、磁石を用いたトランスフエクシヨン実験例を示す。
[図 3]図 3は、実施例 6のトランスフエクシヨン実験結果(トランスフエクシヨン効率 (ルシ フェラーゼ活性))を示す。左から、 HVJ— E500HAUZゥエルのみ、 HVJ— E500 HAUZゥエル +硫酸プロタミン 50 μ g/mU HVJ—E500HAUZゥエル +PS— M agnet (磁性粒子を硫酸プロタミンにまぶしたもの) 1 μ gZゥエル、 HVJ— E500H AUZゥエル +PS— Magnet 10 μ gZゥエル、 HVJ— E500HAU/ゥエル +PS -Magnet 100 g/ゥエルを示す。
[図 4]図 4は、実施例 6の毒性実験結果 (細胞傷害性 (LDH放出))を示す。左から、 HVJ— E500HAUZゥエルのみ、 HVJ— E500HAUZゥエル +硫酸プロタミン 50 μ g/mU HVJ— E500HAUZゥエル +PS— Magnet (磁性粒子を硫酸プロタミン にまぶしたもの) 1 μ g/ゥエル、 HVJ— E500HAU/ゥエル +PS— Magnet 10 μ gZゥエル、 HVJ— E500HAUZゥエル +PS— Magnet 100 μ gZゥエルを示 す。
[図 5]図 5は、実施例 7のトランスフエクシヨン実験 (ルシフェラーゼ活性一低容量 HVJ —Eの利用)結果を示す。縦軸は、タンパク質あたりの発光量 (RLU)を示す。左から 、 HVJ— E100HAUZゥエルのみ、 HVJ— E100HAUZゥエル +硫酸プロタミン 10 μ g/ml、 HVJ— E100HAU/ゥエル +硫酸プロタミン 100 μ g/ml、 HVJ— E100 HAUZゥエル + PS— Magnet (磁性粒子を硫酸プロタミンにまぶしたもの) 3 g Zゥエル、 HVJ— E100HAUZゥエル +PS— Magnet 10 ^ gZゥエル、 HVJ— E 100HAU/ゥエル +PS— Magnet 30 μ g/ゥエルを示す。
[図 6]図 6は、実施例 7の毒性実験 (細胞傷害性試験 (LDH放出))結果を示す。左か ら、 HVJ— E100HAUZゥエルのみ、 HVJ— E100HAUZゥエル +硫酸プロタミン 100 ^ g/mU HVJ— El 00HAUZゥエル + PS— Magnet (磁性粒子を硫酸プロタ ミンにまぶしたもの) 3 μ gZゥエル、 HVJ— E100HAUZゥエル +PS— Magnet 10 μ gZゥエル、 HVJ— EIOOHAUZゥエル +PS— Magnet 30 μ gZゥエルを示 す。
[図 7]図 7は、実施例 8のトランスフエクシヨン実験結果および毒性実験結果を示す。 左から、プラスミド(5 ;z g/ 12ゥエル)、 PS— Magnet 1 gZゥエル、 PS— Magne
t 10 ^u g/ゥエル、 PS— Magnet /ゥエル、 PS 100 g/mlを示す。
[図 8]図 8は、実施例 9において、 GFPまたは FITCを用いたトランスフエクシヨン効率 の評価を示す結果である。図の上段が蛍光顕微鏡の写真であり、下段が位相顕微 鏡の写真である。左半分は、 GFPを使用した実施例であり、右半分は FITCを使用し た実施例である。拡大率は上下二枚の写真の拡大率を示す。
配列表の説明
[0017] 配列番号 1:使用したルシフェラーゼベクター(pGL— Basic)の配列
配列番号 2:実施例 9にお!/、て使用された配列 CCTTGAAGGGATTTCCCTC C。
発明を実施するための最良の形態
[0018] 以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及 しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形 の冠詞 (例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、そ の複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用 される用語は、特に言及しない限り、当上記分野で通常用いられる意味で用いられる ことが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用 される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によ つて一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書 (定義を含 めて)が優先する。
[0019] 以下に本明細書において特に使用される用語の定義および一般技術を列挙する。
[0020] (一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、遺伝子工学的手法、生化学的 手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例え 【 、 Sambrook J. et al. (1989). Molecular Cloning: A Laboratory Manual,し old Spring Harborおよびその 3rd Ed. (2001); Ausubel, F. M. (1987). Current Protocolsin Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley— Interscience; Ausubel, F. M. (1989). Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methodsfrom Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates
andWiley-Interscience; Innis, M. A. (1990). PCR Protocols: A Guide to Methods andApplications, Academic Press; Ausubel, F. M. (1992). Short Protocols inMolecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in
MolecularBiology, Greene Pub. Associates; Ausubel, F. M. (1995). Short Protocols inMolecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in
MolecularBiology, Greene Pub. Associates; Innis, M. A. et al. (1995). PCR
Strategies, Academic Press; Ausubel, F. M. (1999). Short Protocols in Molecular Biology: ACompendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Wiley, andannual updates; Sninsky, J. J. et al. (1999). PCR Applications: Protocols forFunctional Genomics, Academic Press,別冊実験医学「遺伝子導入 &発現解析 実験法」羊土社、 1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する 部分 (全部であり得る)が参考として援用される。本発明の遺伝子ワクチンは、当該分 野において公知の技術を用いて実施することができる。そのようなワクチンの作製は 、本明細書において他の場所において詳述される分子生物学的手法、生化学的手 法および遺伝子工学的手法を応用することによって実施することができる。
[0021] 人工的に合成した遺伝子を作製するための DNA合成技術および核酸ィ匕学にっ ヽ ては、例えば、 Gait, M. J. (1985). Oligonucleotide Synthesis: A Practical
Approach, IRL Press; Gait, M. J. (1990). Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; Eckstein, F. (1991). Oligonucleotides and Analogues: A PracticalApproach, IRL Press; Adams, R. L. et al. (1992). The Biochemistry of theNucleic Acids, Chapman & Hall; Shabarova, Z. et al. (1994). AdvancedOrganic Chemistry of Nucleic Acids, Weinheim; Blackburn, G. M. et al. (1996). Nucleic Acids in Chemistry and Biology, Oxford University Press; Hermanson, G.T. (1996).
Bioconj ^t gate Techniques, Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細 書において関連する部分が参考として援用される。
[0022] (用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
[0023] (磁性粒子)
本明細書において「磁性粒子」とは、磁性を有する任意の粒子 (分子、化合物)を意 味する。通常、磁性粒子は、金属カゝら構成されるが、磁性を有するプラスチックも開 発されており、そのようなプラスチックもまた使用され得る。好ましくは、磁性粒子は、 人工的に製造されるものであり得るがそれに限定されない。磁性粒子は、例えば、正 に帯電している(例えば、 ζ電位(固体と液体の界面に生じた電気二重層をはさんで 固体と液体の相対運動があるとき,固体と液体の間に生じる電位)が 10mV〜20mV のようなもの)ものが使用され得る。なお、磁性粒子に高分子 (例えば、生体分子、遺 伝子送達ベクターなど)が付与されたものは、本明細書にぉ 、て「磁性高分子」と呼 ぶことがある。
[0024] 本明細書において磁性は、 emuZgで表すことができ、通常 10〜500emuZgの 磁性強度を有する粒子が使用されるがそれらに限定されない。
[0025] 本明細書にぉ 、て「粒子」とは、一定の硬度を有し、一定の大きさ以上の大きさを有 する物質をいい、本発明では、金属などによって構成されるものをいう。本発明にお いて使用される粒子としては、例えば、鉄コロイドなどが挙げられるがそれらに限定さ れない。このような粒子は、通常、 20nm〜200nmのものが使用され得、例えば、 20 nm〜50nmのものを使用することができるがそれらに限定されない。本発明におい て使用される粒子としては、例えば、鉄コロイド、塩化鉄、酸化鉄、水酸化鉄、鉄アル コキシド、硫酸鉄、フェライト粉 (戸田工業など力 入手可能)などが挙げられるがそれ らに限定されない。従って、 1つの実施形態では、本発明において用いられる磁性粒 子は、磁性細菌のマグネトノームとは異なる。
[0026] 本明細書において使用される金属は、磁性を付与することができる限り、どのような 金属であっても使用することができることが理解される。そのような金属としては、例え ば、鉄 (酸化鉄、フェライト、マグネタイトまたはマグへマイトなど)、ニッケル、コノ レト 、ネオジム、サマリウムなどを挙げることができるがそれらに限定されない。このような 磁性粒子は、酸化鉄、硫酸鉄、塩ィ匕鉄または鉄アルコキシドから (例えば、沈降方法 または加水分解により)作製され得る。
[0027] 本明細書において「コロイド」は、当該分野において通常使用されるのと同じ意味で 用いられ、気体、固体、液体のいずれともはっきり区別できない状態の物質であり、通
常、分散媒 (dispersion medium)とよばれる第 1の相の中に微粒子状の第 2の相と して均等に分布する分散質 (dispersoid)のうち、分子より大きいが、顕微鏡などでは 見ることのできない大きさのものを指す。コロイドは、例えば、水酸化金属水溶液に強 アルカリ(例えば、水酸ィ匕カリウム、水酸ィ匕ナトリウム)などをカ卩えることによって調製す ることができることが理解される。
[0028] 本明細書において「コーティング」とは、粒子について用いられるとき、その粒子の 表面上にある物質の膜を形成させることおよびそのような膜をいう。コーティングは種 々の目的で行われ、生体分子と磁性粒子との親和性の増強などの目的で行われる。 本明細書において、そのようなコーティングのための物質は、「コーティング剤」と呼ば れる。そのようなコーティング剤としては、種々の物質が用いられ得、上述の固相支持 体および基板自体に使用される物質のほか、 DNA、 RNA、タンパク質、脂質などの 生体物質、硫酸プロタミン、へパリン、ポリマー(例えば、ポリ— L—リジン、疎水性フッ 素榭脂)、シラン (APS (例えば、 y—ァミノプロビルシラン))、金属 (例えば、金など) が使用され得るがそれらに限定されない。そのような物質の選択は当業者の技術範 囲内にあり、当該分野において周知の技術を用いて場合ごとに選択することができる
[0029] 磁性粒子は、沈降、加水分解などの任意の公知の磁性粒子製造方法によって調 製することができ、当業者は、目的の粒子に応じて適宜そのような磁性粒子を作製す ることができることが理解される。
[0030] 本明細書にぉ 、て「磁場発生手段」は、所望の磁性強度を発生させることができる 限り、どのような手段でもよい。そのような磁場発生手段としては、例えば、永久磁石、 電磁石などを挙げることができるがそれらに限定されない。電磁石のような一過性の 磁石を使用することによって、所望のタイミングで所望の生体分子を局所的に送達す ることができることが理解される。
[0031] (生体分子)
本明細書において使用される用語「生体分子」とは、生体に関連する分子をいう。 本明細書において「生体」とは、生物学的な有機体をいい、動物、植物、菌類、ウイ ルスなどを含むがそれらに限定されない。従って、本明細書では生体分子は、生体
カゝら抽出される分子を包含するが、それに限定されず、生体に影響を与え得る分子 であれば生体分子の定義に入る。したがって、コンビナトリアルケミストリで合成された 分子、医薬品として利用され得る低分子 (たとえば、低分子リガンドなど)もまた生体 への効果が意図され得る力ぎり、生体分子の定義に入る。そのような生体分子には、 タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオ チド、ヌクレオチド、核酸(例えば、 cDNA、ゲノム DNAのような DNA、 mRNAのよう な RNAを含む)、ポリサッカライド、オリゴサッカライド、脂質、低分子 (例えば、ホルモ ン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子など)、これらの複合分子 (糖脂質、糖タン パク質、リポタンパク質など)などが包含されるがそれらに限定されない。生体分子に はまた、細胞への導入が企図される限り、細胞自体、組織の一部も包含され得る。好 ましくは、生体分子は、核酸 (DNAまたは RNA)またはタンパク質を含む。別の好ま しい実施形態では、生体分子は、核酸 (例えば、ゲノム DNAまたは cDNA、あるいは PCRなどによって合成された DNA)である。他の好ましい実施形態では、生体分子 はタンパク質であり得る。
[0032] 本明細書においてコーティングに使用される「生体分子」は、送達が意図される生 体分子との親和性がある限り、どのようなものでも使用することができ、例えば、硫酸 プロタミン、へパリン、コラーゲンなど細胞外マトリクス成分などを使用することができる ことが理解される。
[0033] 本明細書にお!ヽて「遺伝子導入試薬」とは、遺伝子導入方法にお!ヽて、導入効率 を促進するために用いられる試薬をいう。そのような遺伝子導入試薬としては、例え ば、カチオン性高分子、カチオン性脂質、ポリアミン系試薬、ポリイミン系試薬、リン酸 カルシウムなどが挙げられるがそれらに限定されない。トランスフエクシヨンの際に利 用される試薬の具体例としては、種々の業者力 市販されている試薬が挙げられ、例 は、 Effectene Transfection Reagent、cat. no. 301425, Qiagen, CA) , TransFastTM Transfection Reagent (E2431, Promega, Wl) , TfxTM- 20 Reagent (E2391, Promega, Wl) , SuperFect Transfection Reagent (30 1305, Qiagen, CA) , PolyFect Transfection Reagent (301105, Qiagen, CA) ,リポフエクタミン(LipofectAMINE)ゝ LipofectAMINE 2000 Reagent (1
1668-019, Invitrogen corporation, CA) , JetPEI ( X 4) cone. (101- 30, Pol yplus- transfection, France)および ExGen 500 (R0511, Fermentas Inc. , MD)などが挙げられるがそれらに限定されない。
[0034] 本発明は、臨床または非臨床への適用に有用である。本発明の遺伝子送達技術 は、制御性が高ぐし力も有効性が高いという効果を奏する。本発明の遺伝子送達技 術は、遺伝子治療を利用して疾患を治療または予防する治療レジメ (例えば、癌治 療 '癌予防など)において特に有用である。
[0035] (ウィルス)
本明細書にぉ 、て「ウィルス」とは、 DNAまたは RNAの!、ずれかをゲノムとして有 する、感染細胞内だけで増殖する感染性の微小構造体をいう。ウィルスとしては、レト ロウィルス科、トガウィルス科、コロナウィルス科、フラビウィルス科、ノラミクソゥイノレス 科、オルトミクソウィルス科、ブ-ャウィルス科、ラブドウィルス科、ボックスウィルス科、 ヘルぺスウィルス科、バキュロウィルス科およびへパドナウィルス科からなる群より選 択される科に属するウィルスが挙げられる。本明細書において好ましくは、使用され るウィルスは、オルトミクソウィルス科のインフルエンザウイルスまたはセンダイウィルス であり得る。本明細書においてより好ましくは、使用されるウィルスは、センダイウィル スである。
[0036] 本明細書において「センダイウィルス」または「HVJ」(Hemagglutinating virus of Japan)とは、互換的に用いられ、パラミクソウィルス科パラミクソウィルス属に属す る、細胞融合作用を有するウィルスをいう。 M. Kuroyaら(1953)がセンダイウィルス として報告した。ゲノムは,約 15500塩基長のマイナス鎖 RNAである。センダイウイ ルスのウィルス粒子にはエンベロープがあり、直径 150〜300nmの多形性を示す。 センダイウィルスは、 RNAポリメラーゼを有する。熱に不安定で,ほとんどあらゆる種 類の赤血球を凝集し、溶血性も示す。発育鶏卵および Zまたは各種動物の腎臓由 来培養細胞の細胞質中で増殖する。センダイウィルスは、株細胞に感染させた場合 は持続感染を起こしやすい。種々の細胞を融合する能力をもつことから、細胞のへテ ロカリオン形成、雑種細胞の作製などの細胞融合に広く利用されて 、る。
[0037] 本明細書にぉ 、て「ウィルスの一部」とは、ウィルスの全部ではな!/、が、ウィルスが
有する細胞融合能力を保持する部分 (例えば、エンベロープ、コアなど)をいう。その ような能力は、任意の細胞を複数用意し、試験されるべき部分を提供したときに、細 胞が融合するかどうかを判定することによって判断することができる。
[0038] 本明細書にぉ 、て「(ウィルス)エンベロープ」とは、センダイウィルスなどの特定の ウィルスに存在するヌクレオキヤプシドの周囲を取り囲む脂質二重層を基本とする膜 構造をいう。エンベロープは、通常、細胞から出芽によって成熟するウィルスにみら れる。エンベロープは、概してウィルス遺伝子によりコードされたスパイクタンパク質か らなる小突起構造物と宿主由来の脂質とからなる。本明細書において使用される細 胞融合技術には、このエンベロープを使用しても良い。
[0039] 本明細書にぉ 、て「不活化」とは、ウィルス(例えば、センダイウィルス)につ!/ヽて言 及されるとき、ゲノムが不活化されることをいう。不活化されたウィルスは、複製欠損で ある。不活ィ匕されたウィルスは、細胞融合能を通常保持するが、ウィルスが有してい た病原性は消失していることが好ましい。不活ィ匕は、例えば、紫外線照射、 X線照射 、電子線照射、 Ύ線照射、アルキル化剤での処理によって達成される。
[0040] 本明細書にお!、て「アルキル化」とは、有機化合物の水素原子をアルキル基で置 換する作用を有すことをいい、「アルキル化剤」(alkylating agent)とは、アルキル 基を与える化合物をいう。アルキル化剤としては、例えば、ハロゲンィ匕アルキル,硫酸 ジアルキル、スルホン酸アルキル、アルキル亜鉛などの有機金属化合物が挙げられ る。好ましいアルキル化剤としては、 13—プロピオラタトン、ブチロラタトン、ヨウ化メチ ル、ヨウ化工チル、ヨウ化プロピル、臭化メチル、臭化工チル、臭化プロピル、ジメチ ル硫酸、ジェチル硫酸などが挙げられるがそれらに限定されな ヽ。
[0041] (ウィルスの不活化)
ウィルスの不活ィ匕が必要な場合、代表的には、以下に記載するように、紫外線照射 またはアルキル化剤処理などにより行う。
[0042] 紫外線照射法:ウィルス(例えば、 HVJ)懸濁液 lmlを 30mm径のシャーレにとり、 9 9または 198ミリジュール Zcm2を照射した。ガンマ一線照射も利用可能である(5〜2 0グレイ)が完全な不活ィ匕がおこらな!/ヽ。
[0043] アルキル化剤による処理:使用直前に、 10mM KH PO中に 0. 01% β プロ
ピオラ外ンの調製をした。作業中は低温下に保ち素早く作業を行う。
[0044] 精製直後のウィルス(例えば、 HVJ)の懸濁液に最終 0. 01%になるように β プロ ピオラタトンを添加し、氷上で 60分間でインキュベートした。その後 2時間、 37°Cでィ ンキュペートした。エツペンドルフチューブにチューブあたり 10, 000HAU分ずつ分 注し、 15, OOOrpm, 15分遠心し、沈澱を— 20。Cで保存する。
[0045] エンベロープに加えて、これらの薬学的組成物および医薬は、賦形剤または薬学 的に使用できる製剤を調製するために、エンベロープのプロセシングを促進する他 の化合物を含む、適切な、薬学的に受容可能なキャリアーを含み得る。処方および 投与のための技術のさらなる詳細は、例えば、日本薬局方の最新版および最新追補 、「: REMINGTON' S PHARMACEUTICAL SCIENCES] (Maack Publish ing Co. , Easton, PA)の最終版に記載されている。
[0046] (医薬)
本発明は、医薬として提供され得る。本発明は、生体分子の直接の送達剤、遺伝 子治療薬として投与され得るカゝ、あるいは、予防剤として投与され得る。
[0047] 本発明の組成物が医薬として使用される場合、そのような組成物は、薬学的に受容 可能なキャリアなどをさらに含み得る。本発明の医薬に含まれる薬学的に受容可能な キャリアとしては、当該分野において公知の任意の物質が挙げられる。例えば、本発 明の薬学的組成物および医薬は、任意の無菌生体適合性薬学的キャリアー(生理 食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、および水を含むが、それらに限定され ない)中で投与され得る。これらの分子のいずれも、適切な賦形剤、アジュバント、お よび Zまたは薬学的に受容可能なキャリアーと混合する薬学的組成物中にて、単独 で、あるいは他の薬剤と組み合わせて患者に投与され得る。本発明のある実施形態 にお 、て、薬学的に受容可能なキャリアーは薬学的に不活性である。
[0048] 本発明の組成物などで用いられ得る薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば 、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フ イラ一、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および Zまたは薬学的アジ ュバントが挙げられるがそれらに限定されない。代表的には、本発明の医薬は、生体 分子導入因子またはその改変体もしくは誘導体を、 1つ以上の生理的に受容可能な
キャリア、賦形剤または希釈剤とともに含む組成物の形態で投与される。例えば、適 切なビヒクルは、注射用水、生理的溶液、または人工脳脊髄液であり得、これらには 、非経口送達のための組成物に一般的な他の物質を補充することが可能である。
[0049] 本明細書で使用される受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、レシピエン トに対して非毒性であり、そして好ましくは、使用される投薬量および濃度において不 活性である。そのような非毒性および不活性のキャリアとしては、例えば、リン酸塩、ク ェン酸塩、または他の有機酸;ァスコルビン酸、 α—トコフエロール;低分子量ポリべ プチド;タンパク質 (例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性 ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸 (例えば、グリシン、グルタミン、ァス ノ ラギン、アルギニンまたはリジン);モノサッカリド、ジサッカリドおよび他の炭水化物 (グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、 EDTA); 糖アルコール (例えば、マン-トールまたはソルビトール);塩形成対イオン (例えば、 ナトリウム);ならびに Ζあるいは非イオン性表面活性化剤(例えば、 Tween、プル口 ニック (pluronic)またはポリエチレングリコール (PEG) )などが挙げられるがそれらに 限定されない。
[0050] 本発明は、医薬組成物として提供される他に、動物薬組成物、医薬部外品、水産 薬組成物、食品組成物およびィ匕粧品組成物等などとしても提供され得、そしてこれら についても公知の調製法により製造することができることが理解される。
[0051] 本発明の医薬は、必要に応じて生理学的に受容可能なキャリア、賦型剤または安 定化剤 (日本薬局方第 14版またはその最新版、 Remington' s Pharmaceutical sciences, 18th Edition, A. R. Gennaro, ed. , MacK Publishing Compan y, 1990などを参照)を用いた水溶液の形態で調製され保存され得る。
[0052] 経口投与のための薬学的組成物は、投与に適した投与形において当該分野で周 知の薬学的に受容可能なキャリアを用いて処方され得る。このようなキャリアは、薬学 的組成物が患者による摂取に適した液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁物などに処 方されることを可能とする。本発明では、細胞自体の投与が目的とされることから、経 口投与ではなぐ非経口投与で投与することが好まし 、。
[0053] 非経口投与用の薬学的組成物は活性成分の水溶液または懸濁物を含む。注射の
ために、本発明の薬学的組成物は水溶液、好ましくはハンクスの溶液、リンゲル溶液 、または緩衝化生理食塩水のような生理学的に適合する緩衝液中に処方され得る。 水性注射懸濁物は、懸濁物の粘度を増加させる物質 (例えば、ナトリウムカルボキシ メチルセルロース、ソルビトール、またはデキストラン)を含有し得る。さら〖こ、活性化合 物の懸濁物は、適切な油状注射懸濁物として調製され得る。適切な親油性溶媒また はビヒクルは、ゴマ油のような脂肪酸、あるいはォレイン酸ェチルまたはトリグリセリド のような合成脂肪酸エステル、またはリボソームを含む。所望により、懸濁物は、高濃 度溶液の製剤を可能にする安定化剤または化合物の溶解度を増加させる適切な薬 剤または試薬を含有し得る。
[0054] 本発明の融合細胞、組成物、キットおよび医薬などはまた、生体親和性材料を含み 得る。この生体親和性材料は、例えば、シリコーン、コラーゲン、ゼラチン、グリコール 酸'乳酸の共重合体、エチレンビニル酢酸共重合体、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリ テトラフルォロエチレン、ポリプロピレン、ポリアタリレート、ポリメタタリレートからなる群 より選択される少なくとも 1つを含み得る。成型が容易であることからシリコーンが好ま しい。生分解性高分子の例としては、コラーゲン、ゼラチン、 —ヒロドキシカルボン 酸類 (例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸など)、ヒドロキシジカルボン酸類( 例えば、リンゴ酸など)およびヒドロキシトリカルボン酸 (例えば、クェン酸など)力もな る群より選択される 1種以上から無触媒脱水重縮合により合成された重合体、共重合 体またはこれらの混合物、ポリ α シァノアクリル酸エステル、ポリアミノ酸 (例えば 、ポリ γ —べンジルー L グルタミン酸など)、無水マレイン酸系共重合体(例えば 、スチレン マレイン酸共重合体など)のポリ酸無水物などが挙げられる。重合の形 式は、ランダム、ブロック、グラフトのいずれでもよぐ a—ヒドロキシカルボン酸類、ヒド 口キシジカルボン酸類、ヒドロキシトリカルボン酸類が分子内に光学活性中心を有す る場合、 D 体、 L 体、 DL 体のいずれでも用いることが可能である。
[0055] 本発明の薬学的組成物は、細胞調製に関して当該分野で公知の様式と同様の様 式 (例えば、混合、溶解など)で製造され得る。
[0056] 本発明の薬学的組成物は、本発明の生体分子導入因子が意図される目的を達成 するのに有効な量で含有される組成物を含む。「予防有効量」、「治療有効量」または
「薬理学的有効量」は当業者に十分に認識される用語であり、意図される薬理学的 結果 (例えば、予防、治療、再発防止など)を生じるために有効な薬剤の量をいう。従 つて、治療有効量は、処置されるべき疾患の徴候を軽減するのに十分な量である。 予防有効量は、予防されるべき疾患の徴候を軽減するのに十分な量である。再発防 止有効量は、再発防止するのに十分な量である。所定の適用のための有効量 (例え ば、治療有効量)を確認する 1つの有用なアツセィは、標的疾患の回復の程度を測 定することである。実際に投与される量は、処置が適用されるべき個体に依存し、好 ましくは、所望の効果が顕著な副作用をともなうことなく達成されるように最適化され た量である。有効用量の決定は十分に当業者の能力内にある。
[0057] V、ずれの組成物にっ 、ても、有効用量は、中和抗体測定、または任意の適切な動 物モデルのいずれか〖こおいて、最初に見積もられ得る。植物モデルおよび動物モデ ルはまた、所望の濃度範囲および投与経路を達成するために用いられる。次いで、 このような情報を用いて、他の植物、他の動物、ヒトにおける投与に有用な用量およ び経路を決定することができる。
[0058] 治療有効量、予防有効量などおよび毒性は、細胞培養または実験動物における標 準的な薬学的手順 (例えば、 ED 、集団の 50%において治療的に有効な用量;およ
50
び LD 、集団の 50%に対して致死的である用量)によって決定され得る。治療効果と
50
毒性効果との間の用量比は治療係数であり、それは比率 ED /LD
50 50として表され得 る。大きな治療係数を呈する薬学的組成物が好ましい。細胞培養アツセィおよび動 物実験力も得られたデータ力 ヒトでの使用のための量の範囲を公式ィ匕するのに使 用される。このような化合物の用量は、好ましくは、毒性をほとんどまたは全くともなわ ない ED を含む循環濃度の範囲内にある。この用量は、使用される投与形態、患者
50
の感受性、および投与経路に依存してこの範囲内で変化する。一例として、投与量 は、年齢その他の患者の条件、疾患の種類、使用する細胞の種類等により適宜選択 される。
[0059] ヒトで使用する場合、センダイウィルスが使用される場合は、 6 X 106細胞あたり、少 なくとも 100HAU相当の、好ましくは少なくとも 500HAU相当の、より好ましくは 100 OHAU相当のウィルスまたはエンベロープベクターが使用され得る。この場合、融合
されるべき細胞の比率は、等価が好ましいが、それに限定されず、代表的には、 1 : 1 00〜: LOO : l内の範囲が使用され得る。好ましくは、 1 : 10〜10 : 1内の範囲が使用さ れ、より好ましくは 1 : 3〜3 : 1内の範囲が使用され得る。さらに好ましくは、 1 : 2〜2 : 1 または約 1: 1などを採用することもできる。
[0060] 本明細書にぉ 、て「HAU」とは、 -ヮトリ赤血球 0. 5%を凝集可能なウィルスの活 性をいう。 1HAUは、ほぼ 2400万ウィルス粒子に相当する(Okada, Y.ら、 Biken Journal 4, 209— 213、 1961)。上記の量は、例えば、 1回から数回に分けて使用 することができる。
[0061] 正確な用量は、治療されるべき患者を考慮して、個々の臨床医によって選択される 。用量および投与は、十分なレベルの活性部分を提供するか、または所望の効果を 維持するように調整される。考慮され得るさらなる因子としては、疾患状態の重症度( 例えば、腫瘍のサイズおよび位置;患者の年齢、体重、および性別;投与の食餌制限 時間、および頻度、薬物組合せ、反応感受性、および治療に対する耐性 Z応答)が 挙げられる。特定の製剤の半減期およびクリアランス速度に応じて、持続作用性薬学 的組成物は、 3〜4日毎に、毎週、または 2週間に 1回、投与され得る。特定の用量お よび送達の方法に関するガイダンスは当該分野で公知の文献に提供されている。
[0062] 1つの実施形態において、本発明の組成物、キットおよび医薬などは、徐放性形態 で提供され得る。徐放性形態の剤型は、本発明において使用され得る限り、当該分 野で公知の任意の形態であり得る。そのような形態としては、例えば、ロッド状 (ペレツ ト状、シリンダー状、針状など)、錠剤形態、ディスク状、球状、シート状のような製剤 であり得る。徐放性形態を調製する方法は、当該分野において公知であり、例えば、 日本薬局方、米国薬局方および他の国の薬局方などに記載されている。徐放剤 (持 続性投与剤)を製造する方法としては、例えば、複合体から薬物の解離を利用する 方法、水性懸濁注射液とする方法、油性注射液または油性懸濁注射液とする方法、 乳濁製注射液 (oZw型、 wZo型の乳濁製注射液など)とする方法などが挙げられる
[0063] 本発明の組成物および医薬は、通常は医師の監督のもとで実施されるが、その国 の監督官庁および法律が許容する場合は、医師の監督なしに実施することができる
[0064] 本発明の薬学的組成物および医薬の投与は、経口または非経口により達成される 。非経口送達の方法としては、局所、動脈内(例えば、頸動脈を介する)、筋肉内、皮 下、髄内、クモ膜下腔内、脳室内、静脈内、腹腔内、または鼻孔内の投与が挙げら れる。本発明は、処置部位に到達する経路であれば、どのような経路でもよい。本発 明に係るワクチンの投与経路は、特に限定されないが、非経口的に投与することが 好ましい。例示されるべき非経口投与としては、例えば、静脈内、動脈内、皮下、真 皮内、筋肉内または腹腔内の投与が挙げられる。
[0065] 本発明におけるワクチンの投与は、どのような手法を用いて行ってもよいが、好まし くは、針無し注射を用いることが有利である。患者に過度の負担を与えることなく投与 を行えるからである。
[0066] ここで本発明における針無注射器とは、注射針を用いずに、ガス圧または弾性部 材の弹力によりピストンを移動させて薬液を皮膚に噴射し、薬剤成分を皮下、より好 ましくは皮下の細胞内に投与する医療機器を意味する。
[0067] 具体的には例えば、シマジェット™ (島津製作所製)、メディ ·ジェクタ一ビジョン
(Medi— JectorVision)™、(Elitemedical社製)、ペンジェット (Penjet)™ (Penjet社製)など が市販されて 、る。このような針無し注射にっ 、ては、
http://www.shimadzu.co.jp/ ep/ other/ shimajet/ shimajettop.html
http://www.elitemedical.com/ehmsi/meachoic.html
http://www.penjet.com/ pages/ pr_drymix.html
などを参照することができる。
なお遺伝子銃 (パーティクルガン)とは、 DNAを被覆した金やタングステン等の高密度 粒子をヘリウム等のガス圧を利用して加速し、 invivo遺伝子導入が可能な医療 Z実 験機器である。遺伝子銃の利点は、少量の DNAでも効率良く細胞導入できることと、 異なる操作者でも安定した結果が得られることである。
[0068] 具体的には、例えば米国 Bio-Rad社製の Helios Gene Gunなどが市販されており、 禾 IJ用することがでさる。
[0069] 本発明の方法による予防処置の終了の判断は、市販のアツセィもしくは機器使用
によって惹起される抗体を確認することによって行うことができる。
[0070] このような治療活性または予防活性は、本発明のワクチンについて判定されるとき、 好ましくは、ヒトでの使用の前にインビトロで、そして次いでインビボで試験される。例 えば、本発明の遺伝子ワクチンの、治療有用性または予防有用性を証明するための インビトロアッセィとしては、細胞株または患者組織試料に対するワクチンの特異的 結合の効果が挙げられる。そのような試験は、当業者に公知である技術 (例えば、 EL IS Aなどの免疫学的アツセィ)を利用して決定され得る。インビボ試験としては、例え ば、中和抗体を惹起する能力があるかどうかを試験する方法が挙げられるがそれら に限定されない。
[0071] 本発明は、患者への有効量の本発明の遺伝子ワクチンの投与による処置、阻害お よび予防の方法を提供する。好ましい局面において、本発明の遺伝子ワクチンは実 質的に精製されたものであり得る (例えば、その効果を制限する力または望ましくない 副作用を生じる物質が実質的に存在しない状態が挙げられる)。
[0072] 本発明が対象とする生物は、遺伝子を有するものであれば、どの生物(例えば、原 核生物、植物 (裸子植物、被子植物)、シダ類、コケ類、真菌、動物 (たとえば、脊椎 動物、無脊椎動物)など)でもよい。好ましくは、局所的な遺伝子送達が所望される多 細胞生物が対象とされ、特に、脊椎動物(たとえば、メタラウナギ類、ャッメゥナギ類、 軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)が対象とされる。より好 ましくは、哺乳動物 (例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食 虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯 類、ゥサギ目など)であり得る。例示的な患者としては、例えば、ゥシ、ブタ、ゥマ、ニヮ トリ、ネコ、ィヌなどの動物が挙げられるがそれらに限定されない。さらに好ましくは、 霊長類 (たとえば、チンパンジー、二ホンザル、ヒト)が対象とされる。最も好ましくはヒ トが対象とされる。
[0073] (好ま 、実施形態の説明)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本 発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に 限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参
酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
[0074] (生体分子導入組成物)
1つの局面において、本発明は、磁性粒子を含む、生体分子を導入するための組 成物を提供する。この組成物において送達されるべき生体分子は、核酸、タンパク質 または低分子であり得る。
[0075] 好ましくは、生体分子は、 DNA、 RNAおよびその改変体(DNAと RNAとの複合 体、 PNAなど)などの核酸であり得ることが理解される。核酸は、好ましくは、遺伝子 導入ベクターを用いて送達されることから、本発明の組成物は、遺伝子導入ベクター を含み得ることが理解される。
[0076] 本発明の 1つの実施形態では、使用される磁性粒子は、金属を含んでいてもよい。
磁性は、通常、金属によって付与されることが多いからである。そのような金属として は、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、ネオジム、サマリウムなど通常磁性を有するとし て知られている金属またはその化合物を利用することができるがそれらに限定されな いことが理解される。そのような金属は、好ましくは、生体にとって有毒でない方が有 利である。本発明は、生体分子を生体に局所的に送達するために使用され、その効 果を発揮するには、生体にとって有毒でないことが都合がよいからである。ただし、生 体内において送達された後その場所で毒性の存在が所望される場合は、そのような 毒性はあってもよ!/ヽことが理解される。
[0077] 本発明の 1つの実施形態では、使用される磁性粒子は、マグネトソームともマグネタ イト粒子とは異なり、人工的に合成可能な粒子であり得る。細菌由来のものを使用す ることは、生体にとって安全とはいえないことから、細菌など異種生物由来のものを含 まな!/、ことが本発明にお!/、て好まし!/、。
[0078] 1つの実施形態において、本発明の磁性粒子には、上述のような生体分子として、 タンパク質をコードする核酸が付着されることが好ま 、。このような付着は直接の結 合によっても達成され得るが、好ましくは、硫酸プロタミンなどの生体分子 (好ましくは 、生体高分子)を粒子にコーティングした上で行うことが都合がよい。
[0079] 1つの実施形態において、本発明において使用される磁性粒子は、コロイド状態で 存在する。このようなコロイドは、本明細書において記載され、実施例などにおいて例
示されるように、当該分野において公知の任意の手法を用いて調製することができる ことが理解される。
[0080] 磁性粒子は、単独の化合物カゝら作製されてもよいが、混合物であってもよいことが 理解される。従って、天然に存在する磁鉄鉱などもまた使用され得ることが理解され 得る。そのような混合物に含まれるべき組成は、当業者は任意に選択することができ る。
[0081] 本発明において使用される磁性粒子としては、鉄化合物、ニッケル化合物、コバル ト化合物およびその混合物などを挙げることができるがそれらに限定されない。
[0082] 好ましい実施形態では、鉄化合物が磁性粒子として使用される。鉄は、磁性を発揮 する最も典型的な物質であり、その扱いも容易であること、生体内での安全性が確認 されて 、る化合物が多 、ことなどの利点があることが知られて 、る。
[0083] そのような鉄化合物としては、例えば、酸化鉄、硫酸鉄、塩ィ匕鉄または鉄アルコキシ ドから作製されるコロイドを挙げることができるがそれらに限定されない。鉄化合物は また、例えば、フェライト、マグネタイトまたはマグへマイトなどであってもよいことが理 解される。
[0084] 本発明の磁性粒子は、当該分野にお!、て公知の任意の方法を用いて調製され得 、例えば、沈降方法または加水分解などが例示される。
[0085] 本発明において使用される遺伝子導入ベクターは、好ましくは、ウィルスベクターま たはその改変体を含み得る。そのようなウィルスベクターまたはその改変体は、不活 化されていることが好ましい。生体内での安全性がより高まる力もである。
[0086] 好ま ヽ実施形態では、本発明で用いられる遺伝子導入ベクターは、センダイウイ ルスエンベロープ (HVJ— E)を含み得る。本発明では、磁性を用いることによって、 HVJ— Eの高送達性力 局所送達においても維持されていることが確認されており、 従来では達成できなカゝつた、高送達性および局所性の両方の効果を達成したと ヽぅ 点で本発明は注目すべきである。
[0087] このような遺伝子導入ベクターは、治療的効果を有するタンパク質をコードする核 酸を含み得る。
[0088] 好ま ヽ実施形態では、本発明の組成物は、さらなる遺伝子導入試薬を含んで ヽ
てもよい。そのような遺伝子導入試薬としては、カチオン性高分子、カチオン性脂質 およびリン酸カルシウムなどを挙げることができる。好ましくは、そのような遺伝子導入 試薬としては、例えば、リポフエクタミンが使用される。さらなる遺伝子導入試薬の含 有によって、局所的な送達効率をさらに上げることができる。
[0089] 好ま 、実施形態では、本発明の組成物は、さらに、特定の細胞に特異的に相互 作用する成分を含み得る。磁性でのコントロールの他、別の手段によって特異性、局 所性をコントロールすることができる力もである。
[0090] 本発明の組成物は、磁力による局所送達をすることができる限り、どのような磁性強 度を有しており、通常 10〜150emuZgの磁性強度を有しており、好ましい範囲とし ては、 20〜: LOOemu/gなどを挙げることができる。扱いが容易である磁性の強度と いわれているからである。
[0091] 本発明の組成物は、通常、 20nm〜200nmの粒子状形態を有する。組成物の大 きさは、実質的に磁性粒子の大きさに依存することから、本発明において使用される 磁性粒子もまた、通常、 20nm〜200nmの大きさを有し、好ましくは、 20ηπ!〜 50η mの大きさを有する。本発明の粒子は、細菌マグネトソームに比べて、粒子径が一定 であること、工業的な大量生産が可能なこと、安定した品質を保持することができるこ と、不純物混入の恐れがないこと、生体適合性のある粒子を提供できること、毒性が な!、ことが確認された粒子を提供できることなどの種々の利点を挙げることができる。
[0092] (生体分子送達装置)
別の局面において、本発明は、磁性粒子を含む、生体分子を導入するための組成 物と、磁場発生手段とを備える、装置を提供する。
[0093] ここで使用される組成物は、本明細書において上記される任意の形態を採り得るこ とが理解される。
[0094] 1つの実施形態において、本発明において使用される磁場発生手段は、 10000ェ ルステッド未満、好ましくは、 500〜6000エルステッドの強さの磁場をかける能力を 有し得る。
[0095] 1つの実施形態において、本発明において使用される磁場発生手段は、局所的に 磁場をかけることができる能力を有する。局所的に磁場をかけるためには、例えば、
ある一定以下の大きさを有すること、磁場発生のオンオフが可能なことなどの条件を 挙げることができるがそれらに限定されず、一定の大きさ、オンオフが必ずしも必要で あるというわけではない。
[0096] そのような磁場発生手段の例としては、例えば、永久磁石、電磁石などを挙げること ができる。
[0097] (生体分子送達組成物製造法)
別の局面において、本発明は、磁性粒子を含む、生体分子を導入するための組成 物を製造する方法を提供する。この方法は、 A)金属イオンと、水酸化物イオンとを含 む水酸化物水溶液を生成する工程;および B)物理的刺激を与えて該金属の水酸ィ匕 物コロイドを生成する工程、を包含する。ここで、物理的刺激は、例えば、攪拌、混合 、懸濁などを挙げることができるがそれらに限定されない。
[0098] ここで、例えば、水酸化物水溶液は、例えば、 A— 1)金属イオンを含む水溶液 (例 えば、塩ィ匕鉄 (Π)、硫酸鉄 (Π)などの水溶液)を調製する工程;および A— 2)該水溶 液に水酸化物イオンを加え該金属の水酸化物を生成する工程によって生成され得る
[0099] あるいは、水酸化物水溶液は、金属アルコキシド (例えば、鉄工トキシド、鉄メトキシ ドなどのような鉄アルコキシド)を加水分解して生成され得る。
[0100] 好ましい実施形態において、本発明の製造法において使用される金属イオンは、 通常、 0. 01〜: LmolZdm3の濃度、好ましくは 0. 05-0. 5molZdm3の濃度、さら に好ましくは約 0. ImolZdm3の濃度で存在し得る。
[0101] さらに好ましくは、本発明の製造法では、送達されるべき生体分子を混合する工程 を包含してもよい。そのような送達されるべき生体分子としては、例えば、核酸を挙げ ることができ、そのような核酸は、遺伝子送達ベクター(例えば、ウィルスベクター)を 挙げることができいる。そのような核酸はさらに、リボソーム、ウィルスエンベロープな どを含んで 、てもよ 、ことが理解される。
[0102] 好ましい実施形態において、本発明は、さら〖こ、磁性粒子をコーティングする工程 を包含し得る。そのようなコーティングの材料には、例えば、硫酸プロタミン、ゼラチン 、コラーゲン、およびファイブロネクチンなどを挙げることができるがそれらに限定され
ない。コーティング材料はこれらの材料には限定されないが、細胞表面は負に荷電し て!、ることから、コーティングにはゼータ電位が高 、もの( +電荷のもの)が適して!/、る 。従って、これらの中では、最もカチォニックな硫酸プロタミンがより好ましい。コーティ ングの方法もまた、公知の方法を使用することができる。
[0103] (キット)
別の局面において、本発明は、磁性粒子を含む、生体分子を導入するための組成 物を含む、生体分子を生体に導入するための医薬キットを提供する。ここで使用され る組成物は、本明細書において上記される任意の形態を採ることができることが理解 される。
[0104] 従って、好ま ヽ実施形態では、本発明の組成物は、遺伝子導入ベクターを含むこ とが有利である。遺伝子導入ベクターは、さらに、 HVJ— Eのようなウィルスェンベロ ープを含んでもょ ヽことが理解される。
[0105] 本発明の医薬キットは、本発明の組成物と、目的の生体分子とを混合して生体に投 与するよう指示する指示書をさらに備えることが好ましい。そのような指示書は、本明 細書において説明した任意の形態を採ることができることが理解される。
[0106] (治療法'予防法)
別の局面において、本発明は、 A)治療または予防に使用される生体分子および 磁性粒子を含む、生体分子を導入するための組成物を被検体に投与する工程;およ び B)該被検体にお!、て該生体分子の送達が所望される部位に磁場をかける工程、 を包含する、該生体分子によって治療または予防を行うことができる疾患または障害 を処置または予防するための方法を提供する。ここで使用される組成物は、本明細 書において上記に説明される任意の形態を採ることができることが理解される。
[0107] 好ましい実施形態では、本発明の方法において使用される組成物は、核酸を含み 、この核酸は、遺伝子治療のために用いられる。従って、本発明の治療または予防 方法は、遺伝子治療において好ましく使用されることが理解される。
[0108] 従って、好ましい実施形態において、本発明の方法において使用される組成物は 、遺伝子導入ベクターを含むことが好ましい。
[0109] 好ま ヽ実施形態では、本発明にお ヽて使用される遺伝子導入ベクターは、ウィル
スベクターまたはその改変体を含むことが都合力 Sょ 、。このウィルスベクターまたはそ の改変体は、不活ィ匕されていることが好ましい。この不活ィ匕は、限外濾過、アルキル ィ匕、紫外線照射などの技術を利用して行うことができる。
[0110] さらに好ましい実施形態では、本発明において使用される遺伝子導入ベクターは、 センダイウィルスエンベロープ(HVJ— E)を含む。このエンベロープは、硫酸プロタミ ンを粒子にコーティングして用いられることが好ま U、。
[0111] 本発明の治療または予防方法において磁場をかける時間は、達成されるべき効果 などの因子によって依存する。そのような因子は、当業者が任意に設定することがで きるが、例えば、 10分力も数日間の間、好ましくは 10分から 2時間の間行われ得る。 生命体に強磁場をかけることが好ましくない情況もあることから、磁場は、所望の効果 が達成され得る最低限の時間だけかけられることが好ましい。そのような磁場をかけ る時間は、磁場の強度によっても変動することが理解される。
[0112] 特定の実施形態において、本発明の磁性粒子は、疾患または障害を処置、阻害ま たは予防するために、遺伝子治療の目的で投与される。遺伝子治療とは、タンパク質 を発現する、または発現可能な核酸を、被験体へ投与することにより行われる治療を いう。本発明のこの実施形態において、核酸は、それらにコードされたタンパク質を 産生し、そのタンパク質は治療効果を有する。
[0113] 当該分野で利用可能な遺伝子治療のための任意の方法が、本発明に従って使用 され得る。例示的な方法は、以下のとおりである。
[0114] 遺伝子治療の方法の一般的な概説については、 Goldspielら, Clinical Pharma cy 12 :488— 505 (1993) ;Wuおよび Wu, Biotherapy 3 : 87— 95 (1991) ;Tol stoshev, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32 : 573- 596 (1993); Mulligan, Science 260 : 926- 932 (1993);ならびに Morganおよび Anderson, Ann. Re v. Biochem. 62 : 191— 217 (1993); May, TIBTECH 11 (5) : 155— 215 (19 93)を参照のこと。遺伝子治療において使用される一般的に公知の組換え DNA技 術は、 Ausubelら (編) , Current Protocols in Molecular Biology, John Wi ley & Sons, NY (1993);および Kriegler, Gene Transfer and Expressio n, A Laboratory Manual, Stockton Press, NY(1990)に記載される。
[0115] (使用)
別の局面において、本発明は、磁性粒子の、生体分子を導入するための組成物を 調製するための、使用を提供する。医薬を製造する方法には、任意の方法を使用す ることができる。ここで使用されるべき組成物は、本明細書において説明される任意 の形態を採るべきことが理解される。
[0116] 本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、そ の全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援 用される。
[0117] 以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきた力 本発 明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求 の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、 本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に 基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引 用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載さ れているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであるこ とが理解される。
実施例
[0118] 以下、実施例により、本発明の構成をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定 されるものではない。以下において使用した試薬類は、特に言及した場合を除いて、 和光純薬、 Sigma, Promegaから市販されているものを使用した。マウスなどは、日 本チャールズリバ一など力 入手した。
[0119] (実施例 1:磁性粒子の製造例)
本発明の磁性粒子の代表例として、磁性コロイドを調製した。この調製は、本実施 例では、水溶液中での沈降反応を利用した。代表的には、 0. ImolZdm3の硫酸鉄 (II)を 100cm3の蒸留水中に溶解した。硫酸鉄 (II)が完全に溶解した後、 5mol/d m3 水酸化カリウム水溶液を上記硫酸鉄 (II)水溶液に、 l : 2 (Fe : OH)のモル比で 加えた。水酸ィ匕鉄 (II) (緑鲭色; Fe (OH) )の粒子が、混合後すぐに形成された。つ
2
いで、混合溶液を懸濁させ、水酸化鉄 (II)の沈澱を 30分間攪拌すると、室温 (25士
3°C)で空気によって水酸ィ匕鉄 (II)の沈澱が酸ィ匕鉄 (Fe O )コロイドに変化した。巿
3 4
販のマグネタイト粒子 (戸田工業)をコントロールの磁性コロイド粒子の比較として用 いた。
[0120] 生成した磁性粒子は、 10〜500emu/gの磁性を有し、直径 20〜50nmの間のもの であった。
[0121] (実施例 2 :磁性粒子の別の製造例)
本発明の別の磁性粒子として、強磁性酸ィ匕鉄コロイド溶液を次のように調製した。
[0122] ここでは、硫酸鉄 (II)の代わりに塩ィ匕鉄 (II)を用いた。
[0123] 1)実施例 1に記載のように、 0. ImolZLの塩ィ匕鉄 (FeCl )水溶液に水酸ィ匕ナトリ
2
ゥム(NaOH)水溶液または水酸化カリウム(KOH)水溶液を Fe: OHのモル比が 1: 2 になるように添加して水酸ィ匕鉄 (II) (Fe (OH) )を生成させた。
2
[0124] 2)その後、実施例 1に記載のように、室温(25°C± 3°C)にて 30分間空気酸ィ匕させ て強磁性酸ィ匕鉄コロイドを調製した。
[0125] (実施例 3 :磁性粒子のさらなる製造例)
本発明の別の磁性粒子として、強磁性酸化鉄コロイド溶液金属 (アルコキシド (鉄ァ ルコキシド)を用いた場合)を調製した。
[0126] 1)実施例 1に記載のように、鉄アルコキシドを溶解させた水 アルコール (メタノー ル、エタノールまたはプロパノール)の混合溶液に水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸 化カリウム (KOH)および Zまたは水酸ィ匕アンモ-ゥム(NH OH)の一種または複数
4
の水溶液を、 Fe : OHのモル比が 1 : 2になるように添カ卩して水酸化鉄(Π) (Fe (OH)
2
)を生成させた。
[0127] 2)その後、実施例 1に記載のように、室温(25 ± 3°C)で 30分間空気酸ィ匕させて強 磁性酸ィ匕鉄コロイドを調製した。
[0128] (実施例 4 :ウィルスエンベロープの調製)
HVJ (Z種)を、 -ヮトリ卵の漿尿膜液力も遠心分離することによって精製し、力価を 公知の技術を用いて決定した。
[0129] HVJの種ウィルスを、 SPF (Specific pathogen free)の受精卵を使って増殖さ せ分離 '精製した HVJ (Z種)を細胞保存用チューブに分注し、 10%DMSOをカロえ
て液体窒素中に保存し、調製した。
[0130] 受精直後の-ヮトリ卵を入荷し、インキュベーター(SHOWA— FURANKI P— 0 3型;約 300鶏卵収容)に入れ、 36. 5°C、湿度 40%以上の条件で 10〜14日飼育し た。暗室内で、検卵器 (電球の光が口径約 1. 5cmの窓を通して出るようになつている もの)を用いて、胚の生存および気室と漿尿膜を確認し、漿尿膜の約 5mm上方に鉛 筆でウィルス注入箇所の記しをつけた (太、、血管を除 、た場所を選定する)。ポリべ プトン溶液(1%ポリペプトン、 0. 2%NaClを混合し、 lMNaOHで pH7. 2に調整し てオートクレープ滅菌し、 2°C〜6°C保存したもの)で種ウィルス (液体窒素から取り出 したもの)を 500倍に希釈し、 2°C〜6°Cに置いた。卵をイソジンおよびアルコールで 消毒し、ウィルス注入箇所に千枚通しで小孔をあけ、希釈した種ウィルス 0. 1mlを 2 6ゲージの針付き lmlシリンジを用いて、漿尿腔内に入るように注入した。溶カゝしたパ ラフィン(融点 50〜52°C)をパスツールピペットを用いて孔の上に置きこれをふさいだ 。卵をインキュベーターに入れ、 34〜36. 5°C、湿度 40%以上の条件で 3日飼育し た。次に、接種卵を一晩 2°C〜6°Cに置いた。翌日、卵の気室部分をピンセットで割り 、 18ゲージの針を付けた 10mlシリンジを漿尿膜の中に入れて、漿尿液を吸引し、滅 菌ボトルに集め、 2°C〜6°Cに保存した。
[0131] HVJの濃縮を必要に応じて行った。上記工程で得た HVJ含有漿尿液 (HVJ含有の -ヮトリ卵の漿尿液を集め 2°C〜6°Cにて保存)の約 100mlを広口の駒込ピペットで 約 50mlの遠心チューブ 2本に入れ、低速遠心機で 3, 000rpm、 10分、 2°C〜6°C で遠心し (ブレーキはオフ)、卵の組織片を除去した。
[0132] 遠心後、上清を 35ml遠心チューブ 4本(高速遠心用)に分注し、アングルローター で 27, 000g、 30分遠心した(アクセル、ブレーキはオン)。上清を除き、沈澱に BSS (10mM Tris— HCl (pH7. 5)、 137mM NaCl、 5. 4mM KC1;オートクレーブ し、 2°C〜6°C保存)(BSSのかわりに PBSでも可能)をチューブ当たり約 5mlカ卩え、そ のまま 2°C〜6°Cでー晚静置した。広口の駒込ピペットでゆるやかにピペッティングし て沈澱をほぐし、 1本のチューブに集め、同様にアングルローターで 27, OOOg、 30 分遠心した。 上清を除き、沈澱に BSSを約 10mlカ卩え、同様に 2°C〜6°Cでー晚静 置した。広口の駒込ピペットでゆるやかにピペッティングして沈澱をほぐし、低速遠心
機で 3, 000rpm、 10分、 2°C〜6°Cで遠心し(ブレーキはオフ)、除ききれなかった組 織片ゃウィルスの凝集塊をのぞいた。上清を新しい滅菌済みチューブに入れ、 HVJ 濃縮液として 2°C〜6°Cで保存した。
[0133] この HVJ濃縮液 0. 1ml〖こ BSSを 0. 9ml加え、分光光度計で 540nmの吸光度を 測定し、ウィルス力価を赤血球凝集活性 (HAU)に換算した。 540nmの吸光度 1が ほぼ 15, 000HAUに相当した。 HAUは融合活性とほぼ比例するようである。
[0134] (ウィルスの不活化)
ウィルスを、紫外線照射によって不活ィ匕した (99 mj/cm2)。不活ィ匕は、使用直前に行 つたが、使用直前に行わなくても良い。
[0135] (実施例 5:磁性粒子のコーティングおよび遺伝子導入組成物の調製)
次に、実施例 1で調製した磁性粒子を硫酸プロタミンを用いてコーティングした。そ のプロトコールおよび結果を以下に示す。
[0136] (ベクターの準備)
図 1のように磁性付カ卩した径 20〜50nmの粒子表面を硫酸プロタミンでコーティン グしたもの (本明細書以下、 PS— magnetともいう)を遺伝子導入に用いた。 HVJ-E にプラスミドを封入した後に、この PS— magnetを混合し 10分間静置し(Magnetic
HVJ— Eとも ヽぅ)細胞遺伝子導入に用いた。
[0137] また、 PS— magnetを直接プラスミドと混合し 10分間静置したものも同様に使用し た。
[0138] 遺伝子導入ベクターとして、ルシフェラーゼ遺伝子をコードする lucを含む、例えば PGL3 - Basic (Promega;配列番号 1)を用いて、実施例 1にお 、て調製した磁性 粒子の能力を測定した。
[0139] トランスフエクシヨンは、実施例 4において調製した HVJ—Eを用いたものと用いてい ないもの、ネガティブコントロールとして、磁性粒子のみ、磁性粒子を含んでいない遺 伝子導入ベクター (HVJ— E有り無し)、さらにそれらにリポフエクタミンを含むものと含 まないものとを調製して試験した。比較例として、さらに、硫酸プロタミン (PS)の遺伝 子ベクターを用いた。
[0140] ルシフェラーゼ活性は、例えば、 Promegaのキット(ルシフェラーゼ定量システム
カタログ番号 E1483)を用いて測定した。
[0141] 以下に結果を示す。
[0142] コントロールではルシフェラーゼ活性が見られなかったのに対して、 PS (硫酸プロタ ミン'磁性粒子'遺伝子導入ベクター)では、顕著に導入活性が亢進していた。また、 コロイド粒子 (コロイド粒子 ·磁性粒子 ·遺伝子導入ベクター)を使用したとき〖こは、 1 gでもすでに導入亢進活性が見られ、 10 g用いたときにはその 10倍の活性がみら れ、 100 g用いたときにもその増加傾向が観察された。従って、磁性粒子は多けれ ば多いほど、その遺伝子送達活性を促進することが理解される。これは、細胞に接着 する遺伝子導入分子がより多くなるからであると考えられる。
[0143] (実施例 6 :細胞への遺伝子導入)
BHK細胞(Percell Biolyticaから入手可能)を 12ゥエル培養皿にまき、そこに GL 2 (ルシフェラーゼ(Lucif erase) )遺伝子を封入した Magnet HVJ— Eを添カ卩した。 培養皿下には磁石をおき 10分間静置したのちに、磁石をはずし培養液(10%血清) を交換し 37度 5%COの状態で 24時間培養した。翌日、細胞を剥がしとりルシフエ
2
ラーゼ活性を測定し (上記 Promega社のキットを利用)、遺伝子導入効率を調べた。 同時に培養上清の LDH活性を測定し細胞障害を観察した。
[0144] また、 PS— magnetを直接 GL2遺伝子と混合したものも同様に培養皿下に磁石を おき、 24時間、 37°C 5%COの状態で培養してルシフェラーゼ活性を測定し遺伝
2
子導入効率を調べた。
[0145] 同時に培養上清の LDH活性を測定し、細胞傷害を観察した。模式図を図 2に示す
[0146] 本実施例では、以下のようなプロトコールを使用して、実験した。
[0147] 1 : GL2 20 /z gを HVJ— E (500HAU)に封入したものを細胞上清に添カロした。
[0148] 2 : GL2 20 gを HVJ— Eに封入したものに硫酸プロタミン 50 /z gZmlをカ卩えて 細胞上清に添加した。
[0149] 3 : GL2 20 gを HVJ— Eに封入したものに PS— Magnet 1 gZゥエルを加え て細胞上清に添加した。
[0150] 4 : GL2 20 gを HVJ— Eに封入したものに PS— Magnet 10 gZゥエルを加
えて細胞上清に添加した。
[0151] 5 : GL2 20 gを HVJ—Eに封入したものに PS— Magnet 100 gZゥエルを加 えて細胞上清に添加した。
[0152] なお、 HVJ— E 100 HAU (hemagglutinating unit)は 3 X 107粒子に相当す る。
[0153] 毒性については、 LDH活性を確認することによって判定した。
[0154] (結果)
硫酸プロタミンは過去の報告どおりに遺伝子導入効率を向上させた。一方、 PS— Magnetは濃度依存性に遺伝子導入効率を向上させ、硫酸プロタミンと同等ある!/ヽ はそれ以上の効果を示した。なお、高濃度の PS— Magnet (100 μ gZゥエル)は 遺伝子導入効率を増加させた反面、細胞毒性も引き起こした。トランスフエクシヨンの 結果を図 3に示す。毒性に関するデータを図 4に示す。
[0155] (実施例 7 : BHK細胞 12ゥエル培養皿での実証)
次に、 BHK細胞を用いて、 12ゥエル培養皿で同様の効果が見られるかどうかを確 した 0
1 : GL2 20 gを HVJ— E (IOOHAU)に封入したものを細胞上清に添カ卩した。 2 : GL2 20 gを HVJ— Eに封入したものに硫酸プロタミン 10 gZmlをカ卩えて細 胞上清に添加した。
3 : GL2 20 gを HVJ— Eに封入したものに硫酸プロタミン 100 /z g/mlをカ卩えて 細胞上清に添加した。
4 : GL2 20 gを HVJ— Eに封入したものに PS— Magnet 3 gZゥエルを加えて 細胞上清に添加した。
5 : GL2 20 gを HVJ— Eに封入したものに PS— Magnet 10 gZゥエルを加え て細胞上清に添加した。
6 : GL2 20 gを HVJ— Eに封入したものに PS— Magnet 30 gZゥエルを加え て細胞上清に添加した。
[0156] なお、 HVJ— E 100HAU (hemagglutinating unit)は 3x107粒子に相当する
[0157] (結果)
HVJ - Eの濃度を 5分の 1にしたところ、 PS - Magnetは濃度依存性に遺伝子導入 効率を向上させ、硫酸プロタミン以上の効果を示した。なお、 PS— Magnet 30 μ gZゥエルでは、細胞毒性は認められなかった。トランスフエクシヨンの結果を図 5に示 す。毒性に関するデータを図 6に示す。
[0158] (実施例 8: BHK細胞 12ゥエル培養皿を使用した別の例)
次に、同様の条件で、本発明の効果を実証した。
1: GL2 5 μ gを細胞上清に添カ卩した。
2 : GL2 5 μ gに PS— Magnet 1 μ gZゥエルをカ卩えて細胞上清に添カ卩した。
3 : GL2 5 gに PS— Magnet 10 g/ゥエルをカ卩えて細胞上清に添カ卩した。 4 : GL2 5 gに PS— Magnet 30 g/ゥエルをカ卩えて細胞上清に添カ卩した。 5 : GL2 5 gに硫酸プロタミン 100 gZmlをカ卩えて細胞上清に添カ卩した。
[0159] (結果)
PS— Magnetは濃度依存性に遺伝子導入効率を向上させた。なお、 PS— Magn et 30 /z gZゥエルで 24時間静置しておくと、細胞毒性が認められた。トランスフヱク シヨンの結果および毒性に関するデータをまとめて図 7に示す。
[0160] 上記の結果、本発明の磁性粒子を用いた組成物は、マウスなどの動物を用いたと きに、血管に投与した後、所望の臓器に移動させても効果を有することが示された。
[0161] (実施例 9 : BHK細胞 12ゥエル培養皿を使用した別の例)
次に、同様の条件で、 BHK細胞について、 12ゥエル培養皿を使用して、実験した
[0162] ここでは、グリーン蛍光タンパク質(GFP) 20 μ gまたはフルォレセインイソチォシァ ネート(FITC)標識オリゴヌクレオチド 4 μ gを HVJ - Eに封入した物に PS - Magnet 30 gZゥエルをカ卩えて細胞上清に添加した。また、使用したオリゴヌクレオチドの配 列は、 CCTTGAAGGGATTTCCCTCC (配列番号 2)であり、 5'末端を FITC標 識し 7こ。
[0163] 遺伝子導入後 24時間にて蛍光顕微鏡および位相差顕微鏡で観察して確認を行つ
[0164] 蛍光顕微鏡下で緑色に発色する GFPタンパク質または FITCオリゴヌクレオチドが ほぼすベての細胞において確認することができた。
[0165] 従って、図 8に示されるように、 GFPまたは FITC標識オリゴヌクレオチドを用いた場 合もまた、同様に本発明の磁性粒子を用いた組成物を用いることによって、局所送 達することができることが示されており、遺伝子に拘らず、本発明の組成物に効果が あることが示された。
[0166] (実施例 10:別の磁性粒子を用いた場合の実証)
実施例 2および 3にお ヽて調製した別の磁性粒子を用いて、実施例 5〜8に記載さ れた実施例と同様の実験を行う。
[0167] 実施例 5と同様に磁性粒子のコーティングおよび遺伝子導入組成物の調製を行つ たところ、実施例 2および 3で調製した磁性粒子を用いても、コントロールではルシフ エラーゼ活性が見られなかったのに対して、 PS (硫酸プロタミン'磁性粒子'遺伝子導 入ベクター)では、顕著に導入活性が亢進して ヽることが示される。
[0168] 実施例 6と同様に、細胞への遺伝子導入の実験を行ったところ、濃度依存性に遺 伝子導入効率を向上させ、硫酸プロタミンと同等あるいはそれ以上の効果を示すこと が実証される。
[0169] さらに、実施例 7と同様に、 BHK細胞 12ゥエル培養皿での効果を調べたところ、 H VJ - Eの濃度を 5分の 1にしたところ、 PS - Magnetは濃度依存性に遺伝子導入効 率を向上させ、硫酸プロタミン以上の効果を示すことが実証される。
[0170] 実施例 8または 9と同様に、 BHK細胞 12ゥエル培養皿を使用した別の実験を行 つたところ、本発明の磁性粒子を用いた組成物は、マウスなどの動物を用いたときに 、血管に投与した後、所望の臓器に移動させても効果を有することが示される。
[0171] 以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきた力 本発 明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求 の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、 本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に 基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引 用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載さ
れているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであるこ とが理解される。
産業上の利用可能性
本発明は、所望の生体分子を、所望の部位に自在に送達することができる技術を 提供する。