明 細 書
蛋白質の固定化方法及び定量方法
技術分野
[0001] 本発明は、固相への蛋白質の新規な固定化方法、それを用いた蛋白質の定量方 法、ィムノブロッテイング方法並びに蛋白質固定化用試液、更には該固定化方法を 用いた異常型プリオン蛋白質の検出方法及びプリオン病(特に牛海綿状脳症、
Bovine Spongiform Encephalopathy,以下 BSEと略記する。)の判定方法等に関するも のである。
背景技術
[0002] 蛋白質の定量は、従来、溶液内で蛋白質の化学的反応性の高い部分と蛋白質反 応試液とを反応させたり [Lowry,O.H.et al., J.Biol.Chem., 193: 265-275 (1951)、 Smith,P.K. et al., Anal.Biochem., 150:76-85 (1985)]、蛋白質と特異的に吸着する色 素試液と反応させることで [Bradford,M., Anal.Biochem., 72: 248-254 (1976)、
Watanabe,N. et al., Clin.Chem., 32: 1551-1554 (1986)]、溶液の吸光度を変化させ、 その吸光度変化に基づいて測定する方法、いわゆる液相法が主流であった。しかし ながら、生化学的サンプルには、通常、蛋白質の他、非蛋白質性生体成分や緩衝剤 、塩類、酸化防止剤、キレート剤、糖類、有機溶媒、人工ポリマー、界面活性剤等多 数の物質が共存しており、多くのサンプルでは、これらの共存物質が原因となって蛋 白質と蛋白質測定試液の相互作用(反応 ·結合)を阻害し、正確な蛋白質の測定が できない場合が多々ある。そこで、蛋白質を膜等の固相面に吸着させ、上記共存物 質のような蛋白質測定に対する阻害物質を洗い流し、固相面に滞留した蛋白質を蛋 白質測定試液で反応させ定量する方法、いわゆる固相化法が開発された (非特許文 献 1、非特許文献 2、非特許文献 3、非特許文献 4,非特許文献 5)。
[0003] し力しながら、これらの蛋白質の膜固定化方法は、阻害物質を除去することはでき るが、一定の割合で蛋白質を膜に固定化することができず、やはり正確な蛋白質の 定量を行えなレ、ため、問題解決には至ってレ、なレ、。
[0004] 一方で、蛋白質の固定化法として蛋白質変性 ·チャージ中和作用のあるトリクロ口酢
酸や酢酸溶液、酢酸 Zメタノール溶液を夫々固定化溶液として用いる方法が古くか ら行われている。しかし、蛋白質によっては十分な固定化ができない場合があるため 、蛋白質の測定を定量的に行えない。そのため、新たな蛋白質の固定化 Z定量方 法の開発が望まれている現状にあった。
[0005] ところで、 BSE、ヒッジのスクレイピー及びヒトのクロイツフェルト 'ヤコブ病に代表され るプリオン病は、プリオン蛋白質(Prion Protein,以下、 PrPと略記する。)が異常化し 、脳の組織力 Sスポンジ状になり、運動失調などの神経症状を引き起こす病気である。
PrPの遺伝子自体はゥシだけでなぐヒトゃヒッジ、ネコ等、ほ乳類が普通に持ってい る。正常な個体の正常組織に存在する PrP (以下、正常型 PrPと記載する。)は、プロ ティナーゼ Kで容易に分解される。しかし、 BSE等の疾患でみられる PrPは、蛋白質分 解酵素や、加熱、紫外線照射などの物理化学的処理にも抵抗性であるという特徴を 有する(この PrPを以下、異常型 PrPと記載する)。 BSEでは、この異常型 PrPが脳内に 蓄積され、細胞が死滅することで脳がスポンジ状になり神経障害を引き起こすことが 知られている。
[0006] プリオン病の判定は、異常型 PrPを検出することにより行われる力 異常型 prpの検 出方法としては、 ELISA法とウェスタン 'ブロット法が知られている。
[0007] ELISA法による異常型 PrPの検出方法は、まず被検試料中の PrPのうち正常型 PrP を酵素処理等により分解し、異常型 PrPのみにしたのち、 ELISE用プレートに結合した 抗 PrP抗体 (一次抗体)、次レ、で標識物質で標識した抗 PrP抗体 (二次抗体)と反応させ 、異常型 PrPに結合した抗 PrP抗体の標識を発色させて測定するというものである。こ の方法では、異常型 PrPのみと抗 PrP抗体を結合させるために、予め正常型 PrPと他 の蛋白質を完全に分解させる必要があるが、実際には正常型 PrPやその他の蛋白質 が完全には分解されずに、残ったこれらの蛋白質が抗 PrP抗体と結合する場合があり (偽陽性判定がされる原因)、異常型 PrPを特異的に検出することが困難であるという 問題がある。
[0008] またウェスタン'プロット法による判定方法は、 ELISA法の場合と同様に被検試料中 の PrPのうち正常型 PrPを分解した後、電気泳動を行う。分離した電気泳動分画をシ ートに転写し、異常型 PrPと結合して発色する試薬を添加し、その発色を測定する方
法である。この方法では、電気泳動を行うことで、被検試料中の蛋白質を分子量別に 分類できるので、被検試料中に正常型 PrPやその他の蛋白質があつたとしても、異常 型 PrP画分だけを判別することが出来る。し力 ながら、ウェスタン'プロット法では、電 気泳動の結果を得るために数時間を要し、また一度に泳動できる検体数が限られて レ、るという問題がある。
[0009] そのため、より迅速且つ精度の高い異常型 PrPの検出方法及びプリオン病の判定 方法が望まれてレ、る現状にあった。
[0010] 非特許文献 l : Kuno, H. et al., Nature, 1967, 215, p.974- 975
非特許文献2 : 0& 63,尺.,八11&1.810(:1½111. , 1991, 196, p.290-295
非特許文献 3 : Said-Fernandez,S.et al., Anal.Biochem. 1990, 191, ρ· 119- 126 非特許文献 4 : Ghosh,S. et al" Anal.Biochem., 1988, 169, p.227-233
非特許文献 5 : Lim,M.K. et al. , BioTechniques, 1996, 21, p.888-895
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0011] 本発明は、これら上記した如き状況に鑑みなされたもので、従来の固相化法では容 易に固定化できなかった試料中の蛋白質を固相に固定化でき、且つ試料中に共存 する阻害物質の影響を軽減して蛋白質の定量的測定/検出を行うことができる固定 化方法、それを用いた蛋白質の定量方法、ィムノブロッテイング方法並びに蛋白質 固定化用試液、更には該固定化方法を用いた異常型 PrPの迅速且つ精度の高い検 出方法及びプリオン病(特に BSE)の判定方法等を提供することを課題とする。
課題を解決するための手段
[0012] 本発明は、上記課題を解決する目的でなされたものであり、以下の構成よりなる。
( 1 )低級アルコールと、ハロゲノカルボン酸及び Z又は長鎖アルキル硫酸塩の共存 下で、蛋白質を、疎水性表面を有する固相と接触させることを特徴とする、当該蛋白 質の当該固相への固定化方法。
(2)上記 (1)の方法により蛋白質が固定化された固相に蛋白質染色液を接触させ、そ れにより生じた発色の程度に基づいて行うことを特徴とする、蛋白質の定量方法。
(3)上記 (1)の方法により蛋白質が固定化された固相を用いることを特徴とする、ィム
ノブロッテイング方法。
(4)異常型 PrPを含有する被検試料を、上記 (1)の方法により処理して異常型 PrPを当 該固相に固定化させた後、異常型 PrPに結合し得る抗体を反応させ、それにより生じ た抗原抗体複合物の量を測定し、その結果に基づいて行うことを特徴とする、異常型 PrPの検出方法。
(5)上記 (4)の方法により異常型 PrP蛋白質を検出し、その結果に基づいて行う、プリ オン病の判定方法。
(6)低級アルコールと、ハロゲノカルボン酸及び/又は長鎖アルキル硫酸塩とを含有 する、蛋白質固定化用試液。
(7)低級アルコールと、ハロゲノカルボン酸及び/又は長鎖アルキル硫酸とを含有す る固定化用試液 1 (2)低級アルコール、ハロゲノカルボン酸及び非イオン性界面活 性剤を含有する固定化用試液 2、及び (3)異常型 PrPと特異的に結合し得る標識抗体 、を構成試薬として含有してなる、異常型 PrP検出用キット。
発明の効果
[0013] 本発明に係る蛋白質固定化方法によれば、従来の固定化方法よりも充分に蛋白質 を固相に固定化できる。また、従来の固定化方法では正確に行えなかった蛋白質の 定量も行うこと力 Sできる。更に、本発明に係る蛋白質固定化方法を用いれば、ィムノ ブロッテイングを行った際の感度も高くなるという効果を奏する。
更に、本発明に係る異常型 PrPの検出方法によれば、より迅速且つ高精度で異常 型 PrPを検出し、プリオン病(特に BSE)をより迅速に精度良く判定することができると いう効果を奏する。
図面の簡単な説明
[0014] [図 1]実施例 1において得られた、各固定化用試料中の蛋白質を固定化したポリビニ リデンジフロライド膜(PVDF膜)を Pyromolex試液で染色した後、 600nmにおける吸光 度 (シグナル強度)を測定した結果を示す。
[図 2]実施例 2に於いて得られた、各固定化用試料中の蛋白質を固定化した PVDF膜 を Pyromolex試液で染色した後、 600 における吸光度(シグナル強度)を測定した 結果を示す。
[図 3]実施例 3に於いて得られた、各固定化用試料中の蛋白質を固定化した PVDF膜 を Pyromolex試液で染色した後、 600匪に於ける吸光度(シグナル強度)を測定した 結果を示す。
[図 4]実施例 4に於いて得られた、各固定化用試料中の蛋白質を固定化した PVDF膜 を Pyromolex試液で染色した後、 600匪に於ける吸光度(シグナル強度)を測定した 結果を示す。
[図 5]実施例 5に於いて得られた、蛋白質試料として卵白アルブミン(OVA)を用いて 、 PVDF膜に固定化、定量を行って得られた検量線を示す。
[図 6]実施例 6に於いて得られた、固相法により蛋白質を測定した結果又は液相法に より蛋白質を測定した結果に基づいて得られた相対値を示す。
[図 7]実施例 7に於いて得られた、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含有しない IgG試 料又は SDSを含有する IgG試料を蛋白質試料として用い、本発明に係る固定化、蛋 白質の定量を行って得られた検量線を示す。
[図 8]実施例 10に於いて得られた、ィムノブロッテイングの結果を示し、 Aは PVDF膜 に固定化した蛋白質試料の免疫検出を発光反応により行い、 X線フィルムに感光さ せ検出したものである。 Bは、 PVDF膜に固定化した蛋白質試料の免疫検出を発色 反応により行レ、、検出したものである。
[図 9]実施例 14及び比較例 4に於いて得られた、希釈試料を用いて本発明に係る固 定化、蛋白質の定量を行って得られた結果と、従来法である ELIZA法により蛋白質の 定量を行って得られた結果を併せて示したものである。
符号の説明
図 2において、 _△_はリゾチーム、——はチトクローム c、 _〇_は IgG、 _□_はフィ ブリノーゲン、一拿一は BSA、一♦—は OVA、一◊—はトリプシンインヒビターを含有する 蛋白質試料を用レ、た場合の結果を夫々示す。
図 7において、 _♦_は SDSを含有しない IgG試料を用いた場合、 -△-は SDSを含有 する IgG試料を用いた場合の結果を夫々示す。
図 9において、 -□- -■- --國一は、実施例 14について得られた、夫々試料 No. l、 2及び 3を用いた結果を夫々示し、 -〇一、 -秦一、一拿一は、比較例 4につい
て得られた、夫々試料 NO.1、 2及び 3を用いた結果を夫々示す。
発明を実施するための最良の形態
[0016] 即ち、本発明者等は、従来の固相化法では蛋白質の固定化力 Sうまく行かない要因 について検討を行ったところ、その最大の要因は、蛋白質を固相に固定化する段階 で、 目的の蛋白質を充分に(一定の割合で)固相に固定化できないために、蛋白質 の定量的な測定が行えないのが原因であるということを見出した。
そこで、固定化を効率よく行う方法について更に検討を行った結果、エタノール等 の低級アルコール類と、トリクロ口酢酸等のハロゲノカルボン酸の共存下に蛋白質の 固定化を行うと、固相に蛋白質を充分に固定化できることを見出した。
[0017] また、界面活性剤のうち、長鎖アルキル硫酸塩が蛋白質の固定化にユニークな特 性を持つことを見出した。即ち、長鎖アルキル硫酸塩を、低級アルコール、又は低級 アルコールとハロゲノカルボン酸とが存在する条件下で蛋白質の固定化を行うと、蛋 白質の吸引'ろ過を行う過程で、蛋白質に何らかの影響を及ぼし、その結果、蛋白質 の膜吸着を促進し安定化する一方、阻害物質等の共存物質を膜固相面から排除す るように働く(阻害物質の膜滞留を抑える)ことが明らかとなった。長鎖アルキル硫酸 塩のこうした働きは、蛋白質含有固定化用試料溶液をマイクロプレートウエル等の固 相面に静置した場合でも起こり得る。
[0018] 一般的に非イオン性界面活性剤等の界面活性剤は、疎水性物質の吸着を阻害す る性質を有しており、一方、蛋白質と膜の結合は疎水結合によると考えられている。 そのため、これまで界面活性剤が蛋白質の固定化時に好んで用いられることはなぐ それ故に界面活性剤の持つ蛋白質に対する作用と、作用を受けた蛋白質の固相面 に対する相互作用を詳細に論じた報告は殆ど無い。そのため、界面活性剤の一種で ある長鎖アルキル硫酸塩が、蛋白質の固定化に有効であるということは今まで知られ ていなかった。
[0019] 従って、長鎖アルキル硫酸塩を、従来から蛋白質固定化に用いられていた低級ァ ルコール類、若しくは低級アルコールと/、ロゲノカルボン酸と共存させることで、蛋白 質を充分に固相に固定化できるということは、本発明者らが初めて見出したことであ る。更に、従来の固相法では界面活性剤が共存する試料中の蛋白質を効率よく固定
化することができなかったため、このような試料については蛋白質の定量も行えなか つたが、本発明の固定化法によれば、そのような試料中の蛋白質も効率よく固定化 することができ、極めて有効な、利用価値の高い蛋白質固定化方法を完成した。
[0020] 更に、当該蛋白質固定化方法を用いて異常型 PrPを検出し、その結果を基にプリォ ン病の判定を行えば、従来の ELISA法やウェスタン 'ブロット法よりも迅速で高精度の 判定が行えるのではなレ、かと考え、鋭意研究の結果、従来の組織試料の調製方法 及び本発明に係る蛋白質固定化方法を利用することによって、従来の ELISA法に比 較して偽陽性が出ずに精度良く判定が行え、また従来のウェスタン'プロット法に比 較して判定に要する時間を 1/3に短縮することができることを見出し、本発明を完成 した。
[0021] 尚、本発明に於いて、蛋白質の固定化法という場合、蛋白質を固相に固定化する 方法をいい、固相法による蛋白質の測定又は定量という場合は、本発明に係る固定 化方法で蛋白質を固相に固定化した後、蛋白質の測定又は定量を行うことを意味す る。
[0022] 本発明に係る低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等が 挙げられ、中でもエタノール又はメタノールが好ましい。
[0023] 本発明に係るハロゲノカルボン酸のハロゲン原子としては、臭素、フッ素、塩素等が 挙げられ、中でも塩素が好ましい。カルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸等が挙げ られ、中でも酢酸が好ましレ、。このようなハロゲノカルボン酸としては、例えばトリクロ口 酢酸 (TCA)、トリフロロ酢酸 (TFA)等が挙げられる。
[0024] 本発明に係る長鎖アルキル硫酸塩の長鎖アルキル基としては、炭素数 7— 25のも のが好ましぐ中でも 8— 15が好ましい。より好ましくはドデシル基である。また、硫酸 塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が好ましぐ中でもナトリウム塩が好ましい。この ような長鎖アルキル硫酸塩の具体例としては、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS) 等が挙げられる。
[0025] 本発明に係る固定化方法に於いて、蛋白質を低級アルコールと、ハロゲノカルボン 酸及び Z又は長鎖アルキル硫酸塩と共存させる方法としては、蛋白質を、疎水性表 面を有する固相と接触させる際に、当該蛋白質が低級アルコールと、ハロゲノカルボ
ン酸及び Z又は長鎖アルキル硫酸塩と共存している状態にできるものであれば、ど のような方法でも良い。
[0026] 例えば、(1)蛋白質を含有する試料と、低級アルコールを含有する溶液と、ハロゲノ カルボン酸を含有する溶液及び/又は長鎖アルキル硫酸塩を含有する溶液を混合 する方法、(2)蛋白質を含有する試料と、低級アルコールと、ハロゲノカルボン酸及 び Z又は長鎖アルキル硫酸塩を直接混合する方法等が挙げられるが、特に限定さ れるものではない。
[0027] 低級アルコールを含有する溶液、長鎖アルキル硫酸塩を含有する溶液及びハロゲ ノカルボン酸を含有する溶液を調製する際に用いられる溶液としては、例えば精製 水、緩衝液等が挙げられ、緩衝液を構成する緩衝剤としては、例えば MOPS, HEPES 等のグッド緩衝剤、トリス (Tris)緩衝剤、リン酸緩衝剤、ベロナール緩衝剤、ホウ酸緩 衝剤等、通常この分野で用いられている緩衝剤が挙げられる力 なるべく蛋白質の 固定化や測定に対する影響を回避するために、精製水を用いるのが好ましい。
[0028] 蛋白質と疎水性表面を有する固相とを接触させる固定化用試料中の各試薬の好ま しい濃度としては、低級アルコール濃度が 30— 50 V/V%、好ましくは 35— 50W/V%、 ハロゲノカルボン酸濃度が 0.08— 10W/V%、好ましくは 0.5— 5W/V%、長鎖アルキル 硫酸塩濃度が 0.1— 1W/V%、好ましくは 0.1— 0.4W/V%である。
[0029] 本発明に係る疎水性表面を有する固相としては、例えば疎水性表面を有する膜、 疎水性表面を有するプレート等が挙げられる。疎水性表面を有する膜の具体例とし ては、例えば疎水性膜であるポリビニリデンジフロライド膜 (PVDF膜)、ニトロセルロー ス膜、濾紙等が挙げられ、疎水性表面を有するプレートの具体例としては、例えば通 常 ELISA等でよく用いられるプラスッチックプレート等が挙げられる。
[0030] 蛋白質を、疎水性表面を有する固相と接触させる方法としては、上記方法により調 製した、蛋白質と、低級アルコールと、ハロゲノカルボン酸及び Z又は長鎖アルキル 硫酸塩を含有する固定化用試料を、当該疎水性表面を有する固相と接触させれば よい。例えば固定化用試料を当該固相上に滴下する、塗布する等の方法がある。
[0031] 当該固相として疎水性膜を用いる場合には、当該疎水性膜上に当該固定化用試 料を滴下等した後、静置して当該疎水性膜に当該固定化用試料を浸透させるか、又
は固定化用試料を、当該疎水性膜を通して吸引濾過する、通常のフィルトレーシヨン 法、或いは遠心濾過法による方法を用いれば良レ、。
[0032] フィルトレーシヨン法による蛋白質の固定化方法を、市販のドットプロッターもしくは スロットプロッターを用いる方法を例に挙げて具体的に説明すると、以下の通りである
[0033] まず、メタノーノレ、次いで蒸留水に浸した PVDF膜等の疎水性膜及び要すればその 上に蒸留水に浸した濾紙となるようにドットプロッターにセットする。次に、一定量の蛋 白質と低級アルコール、長鎖アルキル硫酸塩及び/又はハロゲノカルボン酸を含有 する固定化用試料 (最大 400 μ L)をドットブロッターのゥエルにアプライし、真空ボン プで、約 15Kpa程度の引圧でゆっくり吸引する(フィルトレーシヨンする)と、固定化用 試料中の蛋白質は PVDF膜に吸着される。固定化試料を完全に吸引した後、洗浄液 を各ゥエルにアプライし、吸引する。次いで、ドットブロッター力 PVDF膜を取り出し、 ペーパータオル、濾紙等の上に乗せ、約 30分以上かけて真空乾燥を行う。
[0034] 蛋白質が吸着し易いか否かは、その蛋白質の疎水性と固相膜面の疎水性の関係 により決まる。例えばその条件下で吸着し易い蛋白質は、速く吸引した場合も十分吸 着される力 中程度もしくは弱い吸着性しか示さない蛋白質の吸着の程度は吸引速 度に大きく影響される。従って、 目的の蛋白質を十分吸着させるためには、一般にゆ つくり吸引することが好ましい。例えば 10分以上をかけて吸引することが好ましい。
[0035] 当該固相として、疎水性表面を有するプレートを用いる場合には、例えば当該プレ ート上に当該固定化用試料を滴下又は塗布等した後、静置して自然乾燥させる方法 等を行えばよい。
[0036] 蛋白質の定量を行うには、蛋白質を固定化した固相を通常の蛋白質定量方法に付 し、試料中の蛋白質量を測定すればよい。
[0037] 本発明に係る蛋白質の定量方法としては、上記方法により蛋白質を固相に固定化 させた後、蛋白質染色液として例えばアミノブラック、ピロガロールレッド-モリブデン 酸複合体(Pyromolex)溶液を用いた方法、クマシ一ブリリアントブルー(CBB)_G250 を用いたブラッドフォード法、ビシンコニン酸を用いた BCA法等によって染色を行い、 生じた発色の程度を測定することによって行う、 自体公知の蛋白質測定方法によって
測定を行えばよい。
[0038] 実際の定量には、測定しょうとする蛋白質毎に、蛋白質濃度既知の蛋白質試料を 用いて同様に固定化、染色、測定を行い、検量線を作成しておく。そして、その検量 線をもとに、試料中の蛋白質濃度を決定する。
[0039] 例えば、 Pyromolex発色法による定量方法を例にとって説明すると、先ず、蛋白質 試料中の蛋白質を本発明の方法により PVDF膜に固定化させた後、 PVDF膜を精製 水又はリン酸緩衝食塩水(PBS)等の緩衝液で洗浄する。要すれば室温で 30分程度 真空乾燥させた後、 Pyromolex含有染色試液に 20— 35分程度浸漬させて、発色させ る。その後、デンシトメ一ター、 CCDカメラ等により 600應の吸光度を測定する。得ら れた吸光度を、予め濃度既知の蛋白質試料を用いて同様に蛋白質の固定化、測定 を行って得られた検量線から、蛋白質の濃度を決定すればょレ、。
[0040] 尚、蛋白質の固定化、蛋白質濃度測定等の各工程の間に固相の洗浄処理操作を 行うのは任意であるが、行うことが好ましい。その際の洗浄液としては、精製水又は PBS等の緩衝液等が用いられる。
[0041] 本発明に係るィムノブロッテイング方法としては、本発明の方法によって固相に蛋 白質を固定化させる以外は、当該蛋白質に対する抗体や標識抗体を用いて抗原抗 体反応による当該蛋白質の測定/検出を行う、通常のィムノブロッテイング方法が適 用できる。本発明に係る固定化方法を行えば、蛋白質を効率的に固相に固定化でき るので、本発明に係るィムノブロッテング方法によれば、従来よりも感度よく蛋白質の 検出及び分析を行うことができる。
[0042] 本発明の固定化方法によって固定化できる蛋白質は、従来の固相化法によって固 定化されていた蛋白質は全て挙げられる力 例えば血液、血清、血漿、髄液等の各 種体液や尿、リンパ球、血球、細胞類等の生体由来の試料中に含まれる蛋白質が挙 げられる。
[0043] 具体的には、例えばリゾチーム,チトクローム c、 DNase等の酵素、 IgG、 IgM、 IgE等 の抗体、フイブリノ一ゲン等の糖蛋白質、ゥシ血清アルブミン(BSA),ヒト血清アルブミ ン(HAS)等の血清蛋白質、卵白アルブミン(OVA), PrP等の蛋白質、トリプシンインヒ ビタ一等のインヒビター、インシュリン等のホルモン等が挙げられる力 S、これらに限定さ
れるものではない。
[0044] 尚、本発明は、例えば従来の固相化法では固相に充分固定化できなかったチトク ローム c等の塩基性蛋白質をも固定化することができ、蛋白質の定量を行える点で、 特に有効である。
[0045] 本発明に係る蛋白質の固定化方法に於いて、固相に固定化できる蛋白質の濃度 上限は、例えば、固相が膜の場合約 500 z gZcm2程度、固相がマイクロプレートの場 合約 10 x g/cm2程度であるので、固定化用試料中の蛋白質の量は、固定化する固 相の種類に応じて、その最大保持能を超えないように、調製することが望ましい。
[0046] 本発明に係る異常型 PrPの検出方法は、異常型 PrPを含有する被検試料を、本発 明に係る蛋白質の固定化方法により処理して異常型 PrPを当該固相に固定化させた 後、異常型 PrPに結合し得る抗体を反応させ、それにより生じた抗原抗体複合物の量 を測定し、その結果に基づいて行う方法である。
[0047] 本発明に係る異常型 PrPの検出方法に用いられる異常型 PrPを含有する被検試料 の調製方法は、従来の BSEの判定方法に於いて行われている、動物組織由来の試 料の調製方法に従って行ってもよい。
[0048] 即ち、異常型 PrPを検出すべき動物組織を、適当な緩衝液や糖類溶液中でホモジ ナイズし、得られたホモジネートをプロティナーゼ Kで処理して正常型 PrPを分解させ る。次いで反応物に蛋白質沈降剤を加えて異常型 PrPを沈殿させ、沈殿物を適当な 溶媒 (緩衝液、尿素水溶液等)に溶解して、 ELISA又はウェスタン'ブロッテイングに付 すという方法である。
[0049] 但し、下記工程による調製方法で異常型 PrPを検出すべき動物組織を処理すれば
、上記した従来法よりも、効率よく動物組織から異常型 PrPを抽出することが出来る。
[0050] 即ち、
1)異常型 PrPを検出すべき動物組織を界面活性剤の存在下に破砕処理する工程、
2)不溶物を除去する工程、
3)上清に分解酵素をカ卩えて正常型 PrPを分解する工程、
4)異常型 PrPを沈降させる工程、
5)沈降物を回収したのち、沈降物の溶液を得る工程、
である。
[0051] 上記工程 1)に於いて用いられる界面活性剤としては、 SDS、ラウリルベンゼンスル ホン酸、デォキシコール酸、コール酸、トリス(ヒドロキシメチル)ァミノメタンドデシルサ ノレフェイト (Tris DS)等の陰イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンセチルエーテル ,ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、 例えばポリオキシエチレンォクチルフエニルエーテル(Triton X-100、ロームアンド ハース社商品名)等のポリオキシエチレンアルキルフエニルエーテル類、例えばポリ ォキシエチレンソルビタンモノォレエート,ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテ ート,ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート,ポリオキシエチレンソルビタント リオレート等のポリオキシエチレンアルキルエステル類、例えばオタタノィル -N-メチル グルカミド, ノナノィル -N-メチルダルカミド,デカノィル -N-メチルダルカミド等のメチ ルグルカミド誘導体、例えば n-ォクチル- β -D-ダルコシド等のアルキル糖誘導体等 の非イオン界面活性剤等が挙げられる。中でも Triton X-100、デォキシコール酸が 好ましい。これらは単独又は二種以上混合して用いられる。
[0052] 動物組織を界面活性剤の存在下に破砕処理する方法としては、動物組織を破砕 処理する際に界面活性剤が共存するように、動物組織に界面活性剤又はこれを含 有するホモジナイズ用溶液を添加しても、またその逆に界面活性剤又はホモジナイ ズ用溶液に動物組織をカ卩えても良レヽ。
[0053] 工程 1)に於いて用いられる界面活性剤の濃度は、ホモジナイズされた時のホモジ ネート中の濃度が 0.015— 15.6W/V%、好ましくは 0.078— 7.8W/V%である。また、ホ モジナイズ用溶液中の濃度として、 0.02— 20W/V%、好ましくは 0.1— 10W/V%であ る。
[0054] 尚、当該ホモジナイズ溶液中には上記界面活性剤の他に例えばトリス緩衝剤、リン 酸緩衝剤、ベロナール緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、グッド緩衝剤等の緩衝剤、糖類、 Na C1等の塩類、界面活性剤、防腐剤、蛋白質等が含まれていても良い。
[0055] 上記工程 2)に於ける不溶物を除去する方法としては、不溶物を分離除去すること が出来る方法で有れば良 遠心分離による方法が簡便である。
[0056] 上記工程 3)に於いて用いられる分解酵素としては、正常型 PrPを分解するが異常
型 PrPを分解しなレ、性質を持つ酵素であればょレ、。例えば従来の異常型 PrPの検出 に於いて用いられるプロティナーゼ K等が挙げられる。その濃度及び分解反応時の 条件等は、分解酵素が正常型 PrPを分解できる条件、濃度であればよい。
[0057] 上記工程 4)に於いて異常型 PrPを沈降させるために用いられる蛋白質沈降剤とし ては、異常型 PrPを沈降させる性質を持つものであれば良ぐ従来の異常型 PrPの検 出に於いて用いられるものを使用すればよいが、例えば 3-ブタノール、 2 -ブタノール とメタノールの混合溶媒等が挙げられる。
[0058] 工程 5)に於いて沈降物を回収する方法としては、上清を除いて沈殿した異常型 PrPを回収できる方法で有れば良ぐ遠心分離による方法が簡便である。
[0059] また、工程 5)に於いて沈降物の溶液を得るには、沈降物を適当な沈降物溶解液中 に溶解すればよい。
[0060] 沈降物溶解液を構成する溶媒としては、異常型 PrPが固相上に吸着或いは結合す るのを妨げる性質を有するものでなければ良ぐ例えば精製水、例えばトリス緩衝液、 リン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、ホウ酸緩衝液、グッド緩衝液等、この分野で普通 に用いられている緩衝液は全て挙げられる。緩衝液の pHとしては抗原抗体反応を抑 制しない範囲であれば特に限定されないが、通常 5— 9の範囲が好ましい。
[0061] また、これらの緩衝液中の緩衝剤濃度としては、通常 10— 500mM、好ましくは 10— 300mMの範囲から適宜選択される。また、この溶解液中には、抗 PrP抗体が固相上に 吸着或は結合するのを妨げない量であれば、例えば糖類、 NaCl等の塩類、界面活 性剤、防腐剤、蛋白質等が含まれていても良い。
[0062] 更に、沈降物溶解液中には、工程 3)の分解酵素を失活させ、異常型 PrPを不活性 ィ匕させる(病原性-感染性を失わせる)ために、例えば尿素、 SDS、蟻酸、チォシアン 酸グァニジン、塩酸グァニジン、三塩化酢酸、フヱノール等の界面活性剤、酸化剤又 は蛋白質変性剤を共存させておく必要がある。その濃度は、沈殿物溶解液中の濃度 として 0.5%W/V%以上、好ましくは 2 %W/V%以上である。
[0063] 尚、分解酵素を失活させる為、この分野で用いられる加熱処理を行っても良い。
[0064] また、工程 1)一 5)の各工程に於いて使用するその他の試薬、器具類や、処理条 件等 (反応温度、反応時間等)は、すべて自体公知の上記した如き異常型 PrPを検
出すべき動物組織を処理する方法に準じて選択すればよい。
[0065] 従来の BSEの判定方法における動物組織由来の試料の調製方法では、動物組織 をホモジナイズ処理及びプロティナーゼ K処理後、蛋白質沈降剤により異常型 PrPを 沈降させるが、ここに至るまでの過程でホモジネートを除去する操作を行わなレ、。そ のため得られた異常型 PrPを含有する被検試料中には、異常型 PrP以外の多種の蛋 白質も多量に共存することになり、抗 PrP抗体の非特異的結合を起こさせ BSEの判定 の際に偽陽性の判定をもたらす危険性が高くなる。
[0066] これに対し、上記工程 1)では、非イオン性界面活性剤等の界面活性剤の存在下に 動物組織を破砕処理することにより、細胞膜を可溶化して細胞膜に結合した形で存 在する PrPを細胞膜より遊離させることが出来る。そのため、次の工程 2)で沈殿物を 除去する工程を行っても、 PrPは組織片と一緒に沈殿してしまうことがないので、上清 を回収すれば、 PrPを含有し且つ動物組織片を含有しない溶液が得られる。この溶 液について工程 3)を行えば、従来のホモジネートをそのまま酵素処理するよりも、効 率よく正常型 PrPを分解出来るので、正常型 PrPを含有しない、且つ異常型 PrPを含 有する被検試料を得ることができるのである。
[0067] また、工程 2)及び 5)の工程に於いて異常型 PrP以外の成分の除去操作が複数回 行われることにより、動物組織片ゃ異常型 PrP以外の蛋白質が除かれるので、次の固 定化処理の工程で、固相が目詰まりしてしまう危険性を排除できる。
[0068] 更に工程 1)及び 5)に於いて、被検試料を非イオン性界面活性剤と共存させること により、測定対象でない他の蛋白質や、正常型 PrPを分解できる。一方異常型 PrPは 変性,分解しにくい蛋白質なので、非イオン性界面活性剤の共存下でも変性,分解 されなレ、。そのため、固相への固定化方法を行った際に、分解された蛋白質は固相 を通過してしまうが、分解されなかった異常型 PrPは固相上に残るので、異常型 PrPを 効率よく固相に固定化することができるのである。
[0069] 異常型 PrPを含有する被検試料中の異常型 PrPを固相に固定化させる方法は、本 発明に係る蛋白質の固定化方法に従い、上記の方法により調製した異常型 PrPを含 有する被検試料から、低級アルコールと、ハロゲノカルボン酸及び/又は長鎖アルキ ル硫酸塩を含有する異常型 PrP固定化用試料を調製し、当該疎水性表面を有する
固相と接触させればよい。
[0070] 当該方法に用いられる低級アルコール,ハロゲノカルボン酸,長鎖アルキル硫酸塩 の具体例、これらを含有する溶液の調製方法及び当該溶液中の濃度、当該被検試 料を低級アルコールと、ハロゲノカルボン酸及び Z又は長鎖アルキル硫酸塩と共存 させる方法等の好ましい態様及び具体例は、前記した通りである。
[0071] また、当該異常型 PrP固定化用試料を疎水性表面を有する固相と接触させる方法 に用レ、られる固相の具体例は前記した通りであるが、例えば疎水性膜である PVDF膜 、ニトロセルロース膜、濾紙等が好ましい。
[0072] 異常型 PrP固定化用試料を、疎水性表面を有する固相と接触させる方法及び接触 させる条件等は前記した通りであるが、中でも、当該疎水性膜を通して吸引濾過する 、通常のフィルトレーシヨン法、或いは遠心濾過法による方法力 S、好ましレ、。これらの 方法により、固相上には測定対象である異常型 PrPが固定化され、それ以外の蛋白 質は固相を通過してしまうので、より効率的である。
[0073] 当該方法では、異常型 PrPを固相に固定化するために試料を固相と接触させた後 、 1分一 30分、好ましくは 10分程度静置し、その後吸引濾過処理を行う。従来の
ELISA法によれば、 ELISA用プレートに蛋白質を固定化するために約 75分程度静置 する必要があった力 本発明の方法によれば、この時間を大幅に短縮することが出 来る。
[0074] フィルトレーシヨン法による異常型 PrPの固定化方法を、市販のドットブロッターもしく はスロットプロッターを用いる方法を例に挙げて具体的に説明すると、以下の通りであ る。
[0075] まず、メタノーノレ、次いで蒸留水に浸した PVDF膜等の疎水性膜及び要すればその 上に蒸留水に浸した濾紙となるようにドットプロッターにセットする。次に、例えば上記 の方法で調製した、異常型 PrP、低級アルコール、長鎖アルキル硫酸塩及び/又は ハロゲノカルボン酸を含有する異常型 PrP固定化用試料 (最大 400 μ L)をドットブロッ ターのゥエルにアプライし、真空ポンプで、約 15Kpa程度の引圧でゆっくり吸引する( フィルトレーシヨンする)と、異常型 PrP固定化用試料中の異常型 PrPは PVDF膜に吸 着される。溶液を完全に吸引した後、洗浄液を各ゥエルにアプライし、吸引する。
[0076] 異常型 PrPを固相に固定化するための吸引操作は、異常型 PrPを十分吸着させる 条件で行えば良ぐ約 2KPa— 30Kpa程度の引圧で吸引すればよレ、。吸引に要する 時間、吸引速度等は特に制限されない。
[0077] 異常型 PrPを含有する被検試料中の異常型 PrPを固相に結合させた後、吸引濾過 することにより、固相に結合しなかった正常型 PrPやその他の蛋白質等の被検試料中 の成分を除去することが出来、測定対象である異常型 PrPを効率よく固相に固定化 することが出来る。
[0078] 尚、固相上には抗体を変性させる畏れのある SDSが残存している。そこで、本発明 に係る固定化方法では、固定化処理の後固相を精製水又は PBS等の緩衝液で洗浄 することを任意に行うことは先に述べた通りである。異常型 PrPを固相に固定化する方 法に於いては、上記の吸引濾過の工程を行った後、非イオン性界面活性剤を含有 する溶液で固相を洗浄する工程を更に追加して行うことにより、試料中の SDSを除き、 続く異常型 PrPの検出工程に付すことが好ましい。この方法では、(1)他の蛋白質は非 イオン性界面活性剤により変性してしまう可能性がある力 異常型 PrPはこの処理で は変性しないこと、(2)非イオン性界面活性剤が、固相に蛋白質を一様に広げる作用 があることから、特に異常型 PrPのような変性しにくい蛋白質の固定化を行うには有効 な方法である。
[0079] 当該洗浄工程に用いられる溶液には、非イオン性界面活性剤の他に、低級アルコ ール及びハロゲノカルボン酸を含有してレ、ることが望ましレ、。
[0080] 当該洗浄処理に用いられる、低級アルコール、ハロゲノカルボン酸及び非イオン性 界面活性剤の好ましレ、具体例は上記した通りである。
[0081] また、当該洗浄処理における洗浄剤(固定化用試液 2とする)中の好ましい濃度とし ては、低級アルコール濃度が 80— 50V/V%、好ましくは 30— 50V/V%、ハロゲノカル ボン酸濃度が 0.08— 10W/V%、好ましくは 1一 4W/V%非イオン性界面活性剤濃度が
0.01一 10V/V%、好ましくは 0.04— 2V/V%程度である。
[0082] 本発明に係る異常型 PrPの検出方法に於いて、固相に固定化できる蛋白質の濃度 上限は、前記した通りである。
[0083] 本発明に係る異常型 PrPの検出方法に於いては、本発明の方法によって固相に異
常型 PrPを固定化させる以外は、当該蛋白質に対する抗体や標識抗体を用いて自 体公知の免疫測定法 [例えば酵素免疫測定法 (EIA)、放射免疫測定法 (RIA)、蛍 光免疫測定法 (FIA)等]の測定操作法に準じて異常型 PrPの測定 Z検出を行う、通 常のィムノブロッテイング方法が適用できる。また、その際に使用する例えば緩衝剤、 発色剤、蛍光物質、酵素、基質、放射性同位元素等の試薬類もこれら自体公知の免 疫学的測定法に於いて用いられるものの中から適宜選択して用いれば足りる。
[0084] 本発明の異常型 PrPの検出方法において用いられる抗体としては、異常型 PrPに結 合し得る性質を有するものであれば、正常型 PrPとも反応性を有するものであっても 良ぐ特に限定されない。
[0085] また、これらの抗体の由来については特に限定されないが例えば、ヒト、兎、馬、ゥ シ、羊、山羊、ラット、マウス等に由来する、上記した如き性質を有するものが挙げら れる。
[0086] また、抗 PrP抗体は、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でも何れにても良 い。例えば、モノクローナル抗体は、市販品、或いは細胞融合技術や遺伝子組換え 技術等を利用した自体公知の方法〔Eur.J immunol, 6, 511 (1976)〕等によって産生さ れた、上記した如き性質を有するモノクローナル抗体は全て使用可能である。また、 ポリクローナル抗体は、市販のものを使用しても良いし、また、動物抗血清から公知 の方法(例えば、「タンパク質精製法, Robert.K.Scopes著,シュプリンガー'フェアラ ーク東京株式会社, 1985年, 37頁一 179頁」等に記載された方法等。 )で取得される ポリクロ—ナル抗体を使用しても良レ、。これらを単独で或はこれらを適宜組み合わせ て用いる等は任意である。
[0087] また、これら抗体は、要すればペプシン,パパイン等の酵素を用いて消化して F (ab')、 Fab'、或は Fabとして使用してもよいことは言うまでもない。
2
[0088] 尚、均一の性質を有する抗体の特異性を考慮すると、ポリクローナル抗体よりもモノ クローナル抗体の方が好ましレ、。
[0089] 本発明に係る異常型 PrPの検出方法に於いて、抗 PrP抗体を標識するために用い られる標識物質としては、例えば EIAに於いて用いられる西洋ヮサビ由来ペルォキシ ダーゼ等のペルォキシダーゼ,アルカリホスファターゼ, β -ガラタトシダーゼ,マイク
口パーォキシダーゼ,グルコースォキシダーゼ,グルコース- 6-リン酸脱水素酵素,リ ンゴ酸脱水素酵素,ルシフェラーゼ等の酵素類、例えば RIAで用いられる99 mTc, 1311 , 125I, 14C, 3H等の放射性同位元素、例えば FIAで用いられるフルォレセイン,ダン シル,フルォレスカミン,クマリン,ナフチルァミン或はこれらの誘導体等の蛍光物質、 例えばルシフェリン,イソルミノール,ノレミノーノレ,ビス (2,4,6-トリフロロフヱニル)ォキザ レート等の発光性物質、例えばフエノール,ナフトール,アントラセン或はこれらの誘 導体等の紫外部に吸収を有する物質、例えば 4 -ァミノ- 2,2,6,6-テトラメチルピベリジ ン -1-ォキシル, 3-ァミノ- 2,2, 5, 5-テトラメチルピロリジン- 1-ォキシル, 2, 6-ジ -t-ブチ ル- α -(3, 5-ジ -t-ブチル -4-ォキソ -2,5-シクロへキサジェン -1-イリデン) -ρ-トリルォ キシノレ等のォキシル基を有する化合物に代表されるスピンラベルィヒ剤としての性質 を有する物質等が挙げられるが、これらに限定されるものではないことは言うまでもな い。
[0090] 中でもペルォキシダーゼ等の酵素類力 取扱いが簡便なため好ましい。
[0091] また、上記した如き標識物質を抗 PrP抗体に結合させる (標識する)には、例えば自 体公知の EIA、 RIAあるいは FIA等において一般に行われている自体公知の標識方 法 [例えば、医化学実験講座、第 8卷、山村雄一監修、第 1版、中山書店、 1971 ;図説 蛍光抗体、川生明著、第 1版、(株)ソフトサイエンス社、 1983 ;酵素免疫測定法、石 川栄治、河合忠、室井潔編、第 2版、医学書院、 1982等]を適宜利用して行えばよい 。尚、当該標識物質を標識した抗 PrP抗体は市販されているので、それを用いても良 レ、。
[0092] 標識抗 PrP抗体含有溶液を調製するための溶媒としては、標識抗 PrP抗体が固相 上に吸着或いは結合するのを妨げる性質を有するものでなければ良ぐ例えば精製 水、例えばトリス緩衝液、リン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、ホウ酸緩衝液、グッド緩 衝液等通常抗原抗体反応を利用した測定法に用いられている緩衝液は全て挙げら れる。緩衝液の pHとしては抗原抗体反応を抑制しない範囲であれば特に限定されな レ、が、通常 5— 9の範囲が好ましい。
また、これらの緩衝液中の緩衝剤濃度としては、通常 10— 500mM、好ましくは 10— 300mMの範囲から適宜選択される。また、この溶液中には、抗 PrP抗体が固相上に吸
着或は結合するのを妨げない量であれば、例えば糖類、 NaCl等の塩類、界面活性 剤、防腐剤、蛋白質等が含まれていても良い。
[0093] 抗原抗体反応の結果生成する抗原抗体複合物中の標識量を測定する方法として は、標識物質の種類により異なるが、標識物質が有している何らかの方法により検出 し得る性質に応じて、夫々所定の方法に従い実施すればよい。例えば、標識物質が 酵素の場合には EIAの常法、例えば「酵素免疫測定法」(蛋白質核酸酵素別冊 No.31、北川常廣 ·南原利夫*辻章夫 ·石川榮治編集、 51— 63,共立出版 (株)、 1987) 等に記載された方法に準じて測定を行えばよぐ標識物質が放射性物質の場合には RIAの常法に従い、該放射性物質の出す放射線の種類および強さに応じて液浸型 GMカウンター、液体シンチレーシヨンカウンター、井戸型シンチレーシヨンカウンター 、 HPLC用カウンタ一等の測定機器を適宜選択して使用し、測定を行えばよい(例え ば医化学実験講座、第 8卷、山村雄一監修、第 1版、中山書店、 1971等)。また、標識 物質が蛍光性物質の場合には蛍光光度計等の測定機器を用いる FIAの常法、例え ば「図説蛍光抗体、川生明著、第 1版、(株)ソフトサイエンス社、 1983」等に記載され た方法に準じて測定を行えばよぐ標識物質が発光性物質の場合にはフォトカウンタ 一等の測定機器を用いる常法、例えば「酵素免疫測定法」(蛋白質核酸酵素別冊 No.31、北川常廣*南原利夫 ·辻章夫 ·石川榮治編集、 252— 263、共立出版 (株)、 1987)等に記載された方法に準じて測定を行えばよい。さらに、標識物質が紫外部に 吸収を有する物質の場合には分光光度計等の測定機器を用いる常法によって測定 を行えばよぐ標識物質力スピンの性質を有する場合には電子スピン共鳴装置を用 いる常法、例えば「酵素免疫測定法」(蛋白質 核酸酵素別冊 No.31、北川常廣-南 原利夫 ·辻章夫 ·石川榮治編集、 264— 271、共立出版 (株)、 1987)等に記載された 方法に準じて夫々測定を行えばよい。
[0094] より具体的には、例えば標識物質が酵素である場合は、これを酵素反応で発色を 生じる基質等の発色試薬と反応させて発色反応に導き、その結果生成する色素量を 分光光度計等により測定する方法等の自体公知の方法が挙げられる。
[0095] このような目的で用いられる発色試薬としては、例えばトリメチルベンジルピペラジン
(TMB)、テトラメチルベンジジン、 0-フエ二レンジァミン、 0-ニトロフエニル- β -D-ガラ
クトシド、 2, 2,-アジノ-ビス(3-ェチルベンズチアゾリン- 6-スルホン酸)(ABTS)、 N- ェチル - N-スルホプロピル- m-ァニシジン(ADPS)、 p -ニトロフエ二ルリン酸等、通常こ の分野で用いられる発色試薬が挙げられる。
[0096] また、発色反応を停止させるには、例えば反応液に 1一 6Nの硫酸等の酵素活性阻 害剤を添加する等、通常この分野で行われている反応停止方法を利用すればよい。
[0097] 本発明の異常型 PrPの検出方法に於いて使用する標識抗体、発色試薬及びその 他の試薬や、測定条件等 (反応温度、反応時間、測定波長、測定装置等)はすべて 自体公知の上記した如き免疫学的測定法におけるそれらに準じて選択すれば足り、 自体公知の免疫学的測定法の測定操作法に準じて実施すれば良ぐ 自動分析装置 、分光光度計等も通常この分野で使用されているものは何れも例外なく使用し得る。
[0098] 本発明の異常型 PrPの検出方法を、以下に具体的に説明する。
[0099] 即ち、本発明に係る方法で得た異常型 PrPを固定化した固相に、例えば POD標識 抗 PrP抗体をアプライし、 10分程度静置後、吸引濾過して、 PrPに結合しなかった標 識 PrP抗体を除く。次いで洗浄剤をアプライし、吸引する。この洗浄操作を数回行うこ とは任意である。次いで TMBを含有する発色液をアプライし、 30分程度反応させる。 反応後吸引濾過して発色液を除去した後、停止液を添加して反応を停止させる。
450nmに於ける吸光度をマイクロプレートリーダー等により測定する。
本発明に係る固定化方法を行えば、異常型 PrPを効率的に固相に固定化できるの で、本発明に係るィムノブロッテング方法によれば、 ELISA法やウェスタン 'ブロット法 等の従来の異常型 PrP検出方法よりも、感度よく異常型 PrPの検出及び分析を行うこ とがでさる。
[0100] 本発明に係る異常型 PrPの検出方法に於いて異常型 PrPを検出し得る動物組織と しては動物由来の延髄、小脳、脊髄その他の中枢神経系組織、リンパ節等の細網リ ンパ系組織、骨等が挙げられる。これらの由来動物としては、ヒト、ゥシ、ヒッジ、ハム スター、マウス等が挙げられる。
[0101] 本発明に係るプリオン病の判定方法としては、例えばカットオフ値を設定して行う方 法がある。以下にその一例として BSEを判定する場合の例を示す。
[0102] (1)すなわち、先ず PrP (正常型)を試料として用いて上記の PrPの検出方法を行い、
標識抗 PrP抗体の標識量 (例えば吸光度。以下同じ)を測定し、この平均値と標準偏 差(SD)をだす。この平均値 + XSDをカットオフ値とする。ここで、 Xは通常 2— 5の整 数から適宜選択されるものであり、 Xが小さくなればなるほど、検体が BSEと判定され る率は高くなるが、測定精度等を考慮に入れると、その値をより小さくすると偽陽性率 も上昇すると思われる。そのため、実際の検体を測定する場合には、 Xは 5程度に設 定するのが望ましい。
別に、同様の方法で BSEを判定すべき被検試料を用いて同様の方法で標識抗 PrP 抗体の標識量を測定し、検体値とする。
検体値がカットオフ値よりも低い場合には検体はプリオン病陰性と判定し、反対に 検体値がカットオフ値と同じかそれよりも高い場合にはプリオン病陽性と判定するとい う方法である。
(2)また、先ず PrP (正常型)を試料として用いて上記の PrPの検出方法を行い、標識 抗 PrP抗体の標識量を測定し、この平均値と標準偏差 (SD)をだし、この平均値 + X SDを求める。 (式中、 Xは前記と同じ。 )
別に、同様の方法で PrPを含まない溶液を試料として用いて(陰性対照)同様の方 法で標識抗 PrP抗体の標識量を測定し、平均値を求める。この陰性対照の標識量の 平均値を先に求めた値に加えた値 = [ (正常型 PrPを試料とした場合の平均値) +X SD] + [陰性対照の平均値]を求め、これをカットオフ値とする。
更に、同様の方法で BSEを判定すべき被検試料を用いて同様の方法で標識抗 PrP 抗体の標識量を測定し、検体値とする。
検体値がカットオフ値よりも低レ、場合には検体はプリオン病陰性と判定し、反対に 検体値がカットオフ値と同じかそれよりも高い場合にはプリオン病陽性と判定するとい う方法もある。
[0103] カットオフ値を得るために用いられる PrPは、動物組織から精製したものでも、遺伝 学的法で調製したリコンビナント PrPであってもよい。
[0104] 本発明のプリオン病の判定方法によって判定し得るプリオン病としては、特に BSE が挙げられる。
[0105] 本発明に係る蛋白質固定化用試液としては、本発明に係る低級アルコールと、ハロ
ゲノカルボン酸及び/又は長鎖アルキル硫酸塩とを含有していればよぐその具体 例は前記した通りである。
[0106] また、蛋白質固定化用試液中の低級アルコールの濃度は、蛋白質を固相に固定 化する際に 30— 50V/V%になるような濃度、ハロゲノカルボン酸の濃度は 0.1— 10W/V%になるような濃度、長鎖アルキル硫酸塩の濃度は、 0.1— 1W/V%になるような 濃度であればよい。より好ましくは、低級アルコールは 35— 50V/V%、ハロゲノカルボ ン酸は 0.5— 5W/V%、長鎖アルキル硫酸塩は 0.1— 0.4W/V%である。
[0107] 更に、本発明に係る蛋白質固定化用試液には、蛋白質の固相への固定化、またそ れに続く蛋白質の定量に影響を及ぼさないものであれば、その他に塩類、キレート等 を含有していてもよい。
[0108] 本発明に係る異常型 PrP検出用キットとしては、(1)低級アルコールと、ハロゲノカル ボン酸及び/又は長鎖アルキル硫酸とを含有する固定化用試液 1、(2)低級アルコ一 ル、ハロゲノカルボン酸及び界面活性剤を含有する固定化用試液 2、及び (3)異常型 プリオン蛋白質と結合し得る標識抗体、を構成試薬として含有してなるものであり、そ の具体的な実施態様は前記した通りである。
[0109] 尚、上記キットを構成する標識抗体が酵素標識抗体である場合には、更に当該酵 素の反応により検出可能なシグナルを発生し得る当該酵素の基質を構成試薬として 含有して成る。その好ましい態様及び具体例は前記した通りである。
[0110] 以下に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによ り何等限定されるものではなレ、。
実施例
[0111] 実施例 1.
[試料及び試液の調製]
(1)蛋白質試料
卵白アルブミン (以下、 OVAと略記する。ニヮトリ卵白由来、和光純薬工業 (株)製)、 ヘモグロビン (ゥシ血液由来、和光純薬工業 (株)製)、 IgG (ゥシ由来、和光純薬工業( 株)製)、チトクローム c (ゥマ心筋由来、和光純薬工業 (株)製)、リゾチーム (ニヮトリ卵 白由来、和光純薬工業 (株)製)、を夫々秤量し、精製水に溶解して 250 x g/mL溶液
としたものを蛋白質試料として用レ、た。
[0112] (2)固定化用試液
各試薬を精製水に溶解して、下記の固定化用試液を調製した。この中で固定化用 試液 3— 5が、本発明に係る固定化用試液である。
尚、各試薬は、エタノール (和光純薬工業 (株)製、特級)、トリクロ口酢酸 (以下、 TCAと略記する。和光純薬工業 (株)製、化学用)、ドデシノレ硫酸ナトリウム(以下 SDSと 略記する。和光純薬工業 (株)製、化学用)を用いた。
対照 :精製水
固定化用試液 1 : 0.2 W/V % SDS、
固定化用試液 2 : 0.2 W/V % SDS、 2.5W/V% TCA
固定化用試液 3 : 0.2 W/V % SDS、 45V/V%エタノール
固定化用試液 4 : 0.2 W/V % SDS、 2.5W/V% TCA、 45V/V%エタノール
固定化用試液 5 : 2.5W/V% TCA、 45V/V%エタノーノレ
[0113] (3)固定化用試料
蛋白質試料 20 μ L (蛋白質 5 μ g)と、所定の固定化用試液 300 μ Lとを混合したもの を調製し、固定化用試料とした。固定化用試料中の各試薬の終濃度 (PVDF膜と接 触させる際の濃度。以下同じ。)は、夫々下記の通りである。
固定化用試料 1 : 0.19 W/V % SDS、
固定化用試料 2 : 0.19 W/V % SDS、 2.34W/V% TCA
固定化用試料 3 : 0.19 W/V%SDS、 42.2V/V%エタノーノレ
固定化用試料 4 : 0.19 W/V % SDS、 2.34W/V% TCA、 42.2V/V%エタノール 固定化用試料 5 : 2.34W/V% TCA、 42.2V/V%エタノール
[0114] [蛋白質の固定化及び測定]
ドットブロッター ADVANTEC DP-96 (アドバンテック製)に親水化処理したポリビニリ デンジフロライド膜 (PVDF膜、ミリポア製、ィモビロン PSQ 0.1 μ m)をセットした。次に PVDF膜に固定化用試料 320 μ Lをアプライし、真空ポンプ (バイオクラフト社製)にて 、 15KPa (10cmHg)で 10分間吸引濾過した。次いで pH7.4リン酸緩衝食塩水(PBS) 300 x Lをアプライし、同様に吸引濾過して、 PVDF膜を洗浄した。 PVDF膜を取り出し
真空乾燥させた後、 Pyromolex試液(Protein Assay Rapid Kit wako、和光純薬工業( 株)製)で発色させ、次いでデンシトメ一ター SHIMADZU CS_9000 ((株)島津製作所 製)で 600nmの吸光度(シグナル強度)を測定した。
[0115] [結果]
結果を図 1に示す。図 1に於いて、各バーは下記固定化用試料を用いた場合の結 果を夫々示す。
[0116] 図 1から明らかなように、試薬として SDSのみを含有する固定化用試料 1を膜に固定 化させた場合は、シグナル強度が全く測定できなかった(固定化用試料 1)。また、
SDSと TCAを含有する固定化用試料 2を用いた場合は、少しシグナル強度が強くなつ た (測定できた)が、対照 (精製水を用いた場合、従来の固定化法)ほど高いシグナ ル強度は得られなかった。
これに対し、 SDSとエタノールを含有する固定化用試料 3を用いた場合は、対照と同 等若しくはそれ以上のシグナル強度が得られた。
また、 TCAとエタノールを含有する固定化用試料 5を用いた場合は、チトクローム c を固定化した場合以外は、すべて対照と比較して遙かに高いシグナル強度が得られ た。
更に、 TCAとエタノールと SDSを含有する固定化用試料 4を用いた場合には、チトク ローム cを固定化した場合も含めて、全ての場合で対照と比較して遙かに高いシグナ ル強度が得られた。
以上のことより、低級アルコールとハロゲノカルボン酸及び/又は長鎖アルキル硫 酸塩の共存下で行う本発明に係る固定化法によれば、従来の水や緩衝液だけを用 レ、て行っていた固定化法と比較して、膜への蛋白質の固定化率を飛躍的に向上さ せること力 Sできること力 S半 IJる。
また、固定化用試料 3及び 4で、対照と同程度又はそれより高いシグナル強度が測 定できたことから、本発明の固定化法によれば、予め SDS等を含有する試料を用いて も、蛋白質を固定化することができることが判る。
[0117] 実施例 2.
[試料及び試液の調製]
(1)蛋白質試料
リゾチーム、チトクローム c、 IgG、フイブリノ一ゲン (ヒト血漿由来、和光純薬工業 (株) 製)、 BSA (牛血清アルブミン、和光純薬工業 (株)製)、 OVA、トリプシンインヒビター( 大豆由来、和光純薬工業 (株)製)、ヘモグロビンを夫々秤量し、精製水に溶解して 250 μ g/mL溶液としたものを蛋白質試料として用いた。
尚、これらの蛋白質は等電点 piが 4.0-11.4の幅広い範囲にあり、分子量は 12,000-150,000と広範囲のものである(久保ら,蛋白質生化学ハンドブック,丸善株式 会社, 54-73 (1984)参照)。
(2)固定化用試液
2.5 W/V% TCA、 45 V/V%エタノール、及び所定濃度(0— 0.4W/V%)の SDSを含有 するように、精製水に溶解して調製したものを固定化用試液として用いた。
(3)固定化用試料
所定の蛋白質試料 20 μ L (蛋白質量 5 μ g)と固定化用試液 300 μ Lとを混合したもの を調製し、固定化用試料とした (TCA終濃度 2.34W/V%、エタノール終濃度 42.2V/V%
) o
[蛋白質の固定化及び測定]
実施例 1と同様の方法で、各固定化用試料中の蛋白質を PVDF膜に固定化し、洗 浄、染色処理し、次いでデンシトメ一ターで 600nmの吸光度(シグナル強度)を測定し た。
[0118] [結果]
結果を図 2に示す。
図 2に於いて、 _△—はリゾチーム、——はチトクローム c、 _〇_は IgG、—口—はフィ ブリノーゲン、一拿一は BSA ♦—は OVA ◊—はトリプシンインヒビターを含有する
蛋白質試料を用いた場合の結果を夫々示す。また、横軸は固定化用試液中の SDS 濃度を示す。更に、図 2中の、各ポイントのバーは、土 SDを示す。
図 2から明らかな如 殆どの蛋白質で SDS共存下に PVDF膜に固定化させると、一 且シグナル強度が増加する力 SDS濃度が 0.1W/V%以上になるとシグナル強度があ る一定の値を示す傾向を示した。このこと力ら、固定化用試液中の SDS濃度を
0.1W/V%以上(固定化用試料中の終濃度 0.09W/V%以上)とすることにより、試料中 の蛋白質の PVDF膜への固定化率が一定となると考えられる。
また、データのバラツキを示す CV値(CV値 =標準偏差/平均値 (%) )についてみる と、どの蛋白質も固定化用試液中の SDS濃度が 0.1 W/V%より低い濃度では、 CV値が 大きぐシグナル強度が安定していないことが分かる。それに対し、固定化用試液中 の SDS濃度が 0.1W/V%以上の場合は、 CV値が比較的小さぐ上述したようにこの濃 度範囲でシグナル強度の値が安定であることが示されている。この結果は、試料中の 蛋白質の固相膜に固定化される量を示していると考えられる。また、データは示して レヽなレ、が、この結果は再現性があることを確認してレ、る。
[0119] 一般に、 SDS等の長鎖アルキル硫酸塩は、 0.0025 W/V%といったかなりの低濃度で も蛋白質の構造崩壊作用を示し、構造崩壊の程度により蛋白質結合 (染色)色素に 対する反応性に違いを生ずるといわれている(Orsonneau, J_L et al. , Clin.Chem., 35, 2233-2236 (1989))。従って、ここでも、それが要因となって、 SDS濃度が 0.1 W/V%より低い固定化溶液を用いた場合で、シグナル強度が上昇する等の急激な変 化を示し、且つ、それが変化の途中過程にあるため、 CV値(< 15%)が大きくなつたと 推察される。また、このことは、 0.1 W/V%より低レ、 SDS濃度条件下では、試料中の蛋 白質の PVDF膜への固定化率が変動してレ、る(一定でなレ、)可能性をも示唆してレ、る 以上のことより、図 2に於いて、 SDSの濃度変化の影響を受けずに吸光度(シグナル 強度)が安定した時、始めて蛋白質の PVDF膜への固定化率が一定になっているの ではないかと推察された。
[0120] そこで、図 2の結果を基に、蛋白質試料として BSAを用レ、、 0.1 W/V% SDSを含有す る固定化用試液で固定化した後測定を行った場合のシグナル強度を 100 (基準値)と
した。そして、基準値に対する、その他の各蛋白質を蛋白質試料として用い、 0.1W/V%SDS、 0.2 W/V%SDS、 0.3 W/V%SDS又は 0.4 W/V%の SDS固定化用試液を 用いて同様に固定化及び測定を行って得られたシグナル強度の相対値を夫々算出 した。
[0121] 表 1に、 SDS濃度が 0.2W/V%— 0.4W/V%まで変化するまで、表 2には SDS濃度が 0.1W/V%— 0.4W/V%まで変化するまでの、各ポイントの CV値を平均化した値(平均 CV値 (%) )、各ポイントの相対値の平均値、そのポイント間の絶対偏差を平均した値( 平均絶対偏差)、平均絶対偏差をその平均値で割りパーセント表示した値 (ポイント 間変動率 (%) )を夫々示す。ポイント間変動率とは、 SDS濃度変化に伴うシグナル強 度の変化を変動率として算出した値のことで、この数字が小さいほど、 SDS濃度に影 響されずにシグナル強度(測定結果)が一定であることを示している。
[0122] [表 1]
[0123] [表 2]
醤 平均 CV値 平均値 !¾絶対隔差 ポイント間変勤率 (%)
BSA 3.9 74.2 13.87 18.7 トリ シンインヒビタ- 2.5 54.4 4.62 8.5 フィフ 'リノ一ゲン 1 .5 62.7 6,38 10.2
OVA 1 .3 69.6 2.32 3.3 へモク'ロビン 1.7 68.6 5.94 8.7
IgG 0,8 98.3 3.1 7 3.2 チトクロ一ム c 2.1 127.4 2.93 2.3 リソ 'チーム 1 .8 92.0 9.48 1 0.3
CV値の平均 ポイント聞変動率の平均 2.0 8.1
[0124] その結果、表 1より、 SDS濃度が 0.2 W/V%_0.4W/V%間で、例えばフイブリノ一ゲン、 OVA, IgG,チトクローム cは、そのポイント間変動率が最も安定し、 1.4一 2.7%を示した 。また、これら蛋白質の平均 CV値(0.8— 1.9%)と比較しても遜色ない結果であり、 SDS 濃度が変化してもシグナル強度の変動が非常に少ないことを示している。
また、表 2より、フイブリノ一ゲンを除く 3つの蛋白質は、 SDS濃度が 0.1_0.4 W/V%の 間でもポイント間変動率が 2.3— 3.3%であり、 SDS濃度の影響によるシグナル強度の変 動が少ないことがわかる。
また、 SDS濃度が 0.1— 0.4 W/V%の間でポイント間変動率が 10%を超えるフイブリノ一 ゲン、リゾチーム、 BSAについても、 SDS濃度を 0.2_0.4W/V%に限定すると安定した結 果が得られることが判る。
以上のことより、 SDS濃度が 0.1W/V%以上でポイント間変動率が安定してくることか ら、この濃度範囲の SDSを含有する固定化用試液を用いて、蛋白質を固定化すると、 試料中の蛋白質量の正確な定量が行えることが判る。
[0125] 実施例 3.低級アルコールの検討
低級アルコールとしてエタノールの代わりにメタノールを用いた場合の蛋白質試料 の固定化及び測定を行った。
[試料及び試液の調製]
(1)蛋白質試料
BSA、 OVA、ヘモグロビン、 IgG,チトクローム c、リゾチームを夫々秤量し、精製水に
溶解して 250 μ g/mL溶液としたものを蛋白質試料として用いた。
(2)固定化用試液
精製水を用いて下記固定化用試液を調製した。
固定化用試液 1 : 0.2 W/V% SDS、 2.5 W/V% TCA
固定化用試液 2 : 0.2 W/V% SDS、 2.5 W/V% TCA、 45%エタノール
固定化用試液 3 : 0.2 W/V% SDS、 2.5 W/V% TCA、 45%メタノール(和光純薬工業( 株)製、特級)
(3)固定化用試料
蛋白質試料 20 μ L (蛋白質量 5 μ g)と、所定の固定化用試液 300mLとを混合したも のを調製し、固定化用試料 1 , 2,3とした。固定化用試料中の各試薬の終濃度は、夫 々SDS 0.19W/V%、 TCA 2.34W/V%、エタノール 42.2V/V%、メタノール 42.2V/V%で ある。
[蛋白質の固定化及び測定]
実施例 1と同様の方法で、各固定化用試料中の蛋白質を PVDF膜に固定化し、洗 浄、染色処理し、次いでデンシトメ一ターで 600nmの吸光度(シグナル強度)を測定し た。
[0126] [結果]
結果を図 3に示す。図 3に於いて、各バーは夫々下記固定化用試料を用いた場合 の結果を示す。
[0127] 図 3から明らかな如 メタノールを含有する固定化用試液を用いて調製した固定 化用試料を用いた場合も、エタノールを用いた場合と同程度のシグナル強度が得ら れ、蛋白質を PVDF膜に固定化することができたことが判る。
[0128] 実施例 4.ハロゲノカルボン酸の検討
ハロゲノカルボン酸として、 TCAの代わりにトリフルォロ酢酸(以下、 TFAと略記する 。)を用いた場合の蛋白質試料の固定化及び測定を行った。
[試料及び試液の調製]
(1)蛋白質試料
BSA、 IgG、リゾチームを夫々枰量し、精製水に溶解して 250 x gZmL溶液としたもの を蛋白質試料として用いた。
(2)固定化用試液
精製水を用いて、下記固定化用試液を調製した。
固定化用試液 1 : 0.2 W/V% SDS、 45 V/V%エタノール
固定化用試液 2 : 0.2 W/V% SDS、 45 V/V%エタノール、 2.5 W/V% TCA 固定化用試液 3 : 0.2 W/V% SDS、 45 V/V%エタノール、 2.5 W/V% TFA (和光純薬 工業 (株)製)
(3)固定化用試料
蛋白質試料 20 μ L (蛋白質量 5 μ g)と、所定の固定化用試液 300mLとを混合したも のを調製し、固定化用試料 1 , 2,3とした。固定化用試料中の各試薬の終濃度は、夫 々SDS 0.19W/V%、 TCA 2.34W/V%、 TFA 2.34W/V%、エタノーノレ 42.2V/V%である。
[蛋白質の固定化および測定]
実施例 1と同様の方法で、各固定化用試料中の蛋白質を PVDF膜に固定化し、洗 浄、染色処理し、次いでデンシトメ一ターで 600nmの吸光度(シグナル強度)を測定し た。
[結果]
結果を図 4に示す。図 4に於いて、各バーは夫々下記固定化用試料を用いた場合 の結果を示す。
[0130] 図 4から明らかな如 TFAを含有する固定化用試液を用レ、て調製した固定化用試 料を用いた場合も、 TCAを用いた場合と同程度又はそれ以上のシグナル強度が得ら れ、蛋白質を有効に膜に固定化することができたことが判る。
[0131] 実施例 5.検量線の作成
[試料及び試液の調製]
(1)蛋白質試料
OVAを 0— 20 μ gZ20 μ Lとなるように精製水に溶解して蛋白質試料とした。
(2)固定化用試液
0.2 V/V% SDS、 2.5 V/V% TCA、 45 V/V%エタノールとなるように精製水に溶解して 調製したものを固定化用試液として用いた。
(3)固定化用試料
蛋白質試料 20 μ L (蛋白質量 5 μ g)と、固定化用試液 300 μ Lとを混合したものを調 製し、固定化用試料とした。固定化用試料中の各試薬の終濃度は、夫々 SDS 0.19W/V%、 TCA 2.34W/V%、エタノール 42.2V/V%である。
[蛋白質の固定化及び測定]
実施例 1と同様の方法で、各固定化用試料中の蛋白質を PVDF膜に固定化し、洗 浄、染色処理し、次いでデンシトメ一ターで 600nmの吸光度(シグナル強度)を測定し た。
[結果]
その結果を基に、蛋白質量( x g)とシグナル強度との関係を示す検量線を作成した 結果を図 5に示す。図 5に於いて、各プロットのバーは、 ± 2SDを示す。
検量線から得られた結果は、測定範囲 0.2— 20 z gZ蛋白質試料、一致係数 0.99以 上、平均 CV1.9。/。であった。
また、蛋白質濃度 0.2— 5 z gZ蛋白質試料の範囲で、直線性が得られた。測定結果 を統計処理して得られた、この範囲での回帰直線式及び相関係数は下記の通りであ る。
回帰直線式: y=0.12x+0.01
相関係数 (R2) : 0.99
X:蛋白質量
y :シグナル強度
図 5から明らかな如ぐ本発明の方法により OVAを PVDF膜に固定化し、蛋白質量
の測定を行ったところ、良好な直線性を示す検量線が得られたので、本発明の固定 化方法によれば、高精度の OVA (蛋白質)濃度の定量測定が行えることが判った。 尚、データは示していないが、実施例 2で測定した他の蛋白質についても同様に測 定を行った結果、 OVAと同様に直線性のある検量線が得られ、これらの蛋白質につ レ、ても定量測定が行えることが判った。
[0133] 実施例 6.
[試料及び試液の調製]
(1)蛋白質試料
精製水を用いて、 BSA、トリプシンインヒビター、フイブリノ一ゲン、 OVA、へモグロビ ン、 IgG、チトクローム c、リゾチーム夫々の 5 μ g/20 /i L溶液を調製し、蛋白質試料と した。
[0134] [固相化法による蛋白質の測定]
精製水を用いて 0.2W/V%SDS、 2.5W/V%TCA、 45V/V%エタノールを含有する固定 化用試液を調製した。次いで、調製した蛋白質試料 20 μ Lと固定化用試液 300 μ Lを 混合し、得られた固定化用試料 320 μ Lを用いて実施例 1と同様の方法で固定化用 試料中の蛋白質を PVDF膜に固定化、洗浄、染色処理し、次いで、デンシトメ一ター で 600nmの吸光度(シグナル強度)を測定した。固定化用試料中の各試薬の終濃度 は、夫々 SDS 0.19W/V%、 TCA 2.34W/V%、エタノーノレ 42.2V/V%である。
[液相法による蛋白質の測定]
上記で調製した蛋白質試料 20 しに、 lmL Pyromolex液を添加して、室温で 20分 間インキュベーションし、 600nmの吸光度を測定した。
[結果]
蛋白質試料として BSAを用レ、、 0.2 W/V%SDSを含有する固定化用試料を調製して 、 BSAを固定化、測定を行った場合の吸光度(シグナル強度)を 1 (基準値)とした時 の、基準値に対する各蛋白質について同様に固定化、測定を行って得られた吸光 度の相対値を求めた結果を図 6に示す。また、同様に蛋白質試料として BSAを用レ、、 液相法による測定を行った場合の吸光度を 1 (基準値)とした時の、基準値に対する 各蛋白質について同様に液相法による測定を行って得られた吸光度の相対値を求
めた結果も、図 6に併せて示す。
尚、図 6に於いて、各バーは夫々下記の方法により各蛋白質を測定した結果に基 づいて得られた、上記相対値を示す。
[0136] 図 6より明らかな如ぐ液相法による測定では、蛋白質濃度は同じでも、蛋白質の種 類によって、 BSAに対する吸光度の相対値が大きく異なり、例えばフイブリノ一ゲンで は、 0.46程度であった。
これに対し、本発明の固相法によって測定を行った場合の BSAに対するフイブリノ 一ゲンの吸光度(シグナル強度)の相対値は 0.75になり、 BSAの場合との吸光度の差 が少なくなつていることが判る。これは、測定した殆どの蛋白質についても言える。 また、測定した全蛋白質の平均吸光度の、 BSAの場合のそれを 1とした場合に対す る相対値は、液相法の場合は 0.65であるのに対して本発明の固相法の場合は 0.94と なり、蛋白質種による定量誤差が改善されたことが判る。これはタンパク質が変性状 態で膜にトラップされることにより、液相法では反応できなかった、例えばチトクローム c、リゾチーム等の塩基性アミノ酸が、染色液と結合できる状態となり、本発明に係る 固定化液で蛋白質が効率良く固定化され、より正確な測定結果を得られるようになつ たと考えられる。
[0137] 実施例 7.
[試料の調製と固定化]
精製水を用いて、 IgG試料(蛋白質量 0— 4 z g/20 x L)、及び 2%SDS含有 IgG試料 ( 蛋白質量 0— 4 μ g/20 ζ L)を調製した。別に精製水を用いて 0.25W/V%SDS、 2.5W/V%TCA及び 45V/V%エタノールを含有する固定化用試液を調製した。次いで 、蛋白質試料 20 x Lと固定化用試液 300 z Lを混合し、得られた固定化用試料 320 μ Lを用いて実施例 1と同様の方法で固定化用試料中の蛋白質を PVDF膜に固定化、 洗浄、染色処理し、次いでデンシトメ一ターで 600nmの吸光度(シグナル強度)を測 定した。
[0138] 尚、 SDSを含有しない IgG試料を用いて得られた固定化用試料中の各試薬の終濃
度は、夫々 SDS 0.23W/V%、 TCA 2.34 W/V%、エタノール 42.2V/V%である。また、 2%SDS含有 IgG試料を用いて得られた固定化用試料中の各試薬の終濃度は、夫々 SDS 0.36 W/V%、 TCA 2.34 W/V%、エタノーノレ 42.2 V/V%である。
[0139] [結果]
得られた結果を基に、 SDSを含有しない IgG試料を用いた場合と、 2%SDS含有 IgG試 料を用いた場合夫々について、蛋白質量(μ g)とシグナル強度との関係を示す検量 線を作成した。
結果を図 7に示す。図 7に於いて、 _♦_は SDSを含有しない IgG試料を用いた場合
、 _△_は SDSを含有する IgG試料を用いた場合の結果を夫々示す。また、各プロット のバーは、土 SDを示す。
図 7より明らかな如ぐ両方の検量線は、ほぼ一致した。
この結果から、本発明の固定化方法により蛋白質を固定化させれば、 SDSが蛋白 質試料中に存在していても、それに影響されることなぐ 目的の蛋白質を固相に固定 化させ、蛋白質の定量を行うことができることが判る。
[0140] 実施例 8.
SDSを含有する種々の蛋白質試料を用いて本発明に係る蛋白質の固定化及び測 定を行い、当該測定に及ぼす SDSの影響を、液相法による測定の場合と比較した。
[試料及び試液の調製]
(1)蛋白質試料
精製水を用いて、 0.0W/V%SDS (対照)、 0.2W/V%SDS又は 2W/V%SDSを含有する 蛋白質試料(BSA、トリプシンインヒビター、フイブリノ一ゲン、ヘモグロビン、〇VA、チ トクローム c、リゾチーム、 IgG,トリプシン (和光純薬工業 (株)製)夫々 250 z g/mLを調 製した。
[固定化法による蛋白質の測定]
精製水を用いて 0.1W/V%SDS、 2.5W/V%TCA、 45V/V%エタノールを含有する固定 化用試液を調製した。次いで調製した蛋白質試料 20 μ Lと固定化用試液 300 μ Lを 混合し、得られた固定化用試料 320 μ Lを実施例 1と同様の方法で固定化、洗浄、染 色処理し、デンシトメ一ターで、 600nmの吸光度(シグナル強度)を測定した。
[液相法による測定]
上記で調製した蛋白質試料 20 μ Lに、 lmL Pyromolex液(Protein Assay Rapid Kit wako、和光純薬工業 (株)製)を添加して、 20分室温でインキュベーションし、 600nmに 於ける吸光度を測定した。
[0141] [結果]
得られた結果を、夫々の対照(SDS含有してレ、なレ、試料)を用いて得られた結果を 100とした相対値で表し、表 3にまとめた。
[0142] [表 3]
[0143] 表 3から明らかな如 本発明に係る固相法による蛋白質の測定を行った場合には 、 2W/V%SDS含有試料でも殆どの蛋白質で、対照に対し ± 20%以内の測定結果が得 られ、蛋白質試料中の SDSが蛋白質測定に及ぼす影響を回避できたことが判る。 これに対して、 2W/V%SDS含有試料を用いて液相法によって測定を行った場合に は、全く測定ができなかった。
以上の結果から、本発明の蛋白質の固定化法及び定量方法は、あらゆる蛋白質に 適用することができることが判る。また、これまで知られていたタンパク定量阻害剤、 特に蛋白質可溶化剤として汎用される SDS含有試料中の蛋白質定量が可能になつ た点で、非常に有用でもあることが明らかとなった。
[0144] 実施例 9.
試料中に含まれる界面活性剤が、本発明の固定化用試液を用いた固定化方法及
び蛋白質の測定に及ぼす影響を調べた。
[固相法による固定化及び蛋白質の測定]
( 1 ) BSA又は IgG含有蛋白質試料中の蛋白質の測定
精製水で、表 4記載の濃度となるように、各界面活性剤を含有する BSA試料又は IgG試料 (蛋白質量 4 μ gZ20 x L)を調製し、蛋白質試料とした。
別に、精製水で 0.1W/V%SDS、 2.5 W/V% TCA、 45 V/V%エタノールを含有する固 定化用試液を調製した。
次いで蛋白質試料 20 μ Lと固定化用試液 300 μ Lを混合して固定化用試料を調製 し、その 320 / Lを用いて、実施例 1と同様の方法で固定化用試料中の蛋白質を PVDF膜に固定化、洗浄、染色処理し、 600應の吸光度(シグナル強度)を測定した。 固定化用試料中の各試薬の終濃度は、 SDSを含有しない蛋白質試料を用いた場 合は、 SDS 0.094W/V%、 TCA 23.4W/V%、エタノーノレ 42.2V/V%である。また、 SDS含 有蛋白質試料を用いた場合の各試薬の終濃度は、 TCA及びエタノールの終濃度は SDSを含有しない蛋白質試料を用いた場合と同じであるが、 SDSの終濃度は、 1% SDS含有蛋白質試料を用いた場合は 0.16W/V%、 2%SDS含有試料を用いた場合は 0.21W/V%、 4%SDS含有試料を用いた場合は、 0.34W/V%となる。
(2) OVA含有蛋白質試料中の蛋白質の測定
表 4記載の濃度となるように、各界面活性剤を含有する OVA試料 (蛋白質量 /20 μ L)を調製し、蛋白質試料とした。
別に、精製水で 0.2W/V%SDS、 2.5 W/V% TCA、 45 V/V%エタノールを含有する固 定化用試液を調製し、上記(1)と同様の方法で固定化用試料を調製し、実施例 1と 同様の方法で PVDF膜に固定化、洗浄、染色処理し、 600nmの吸光度(シグナル強 度)を測定した。
尚、固定化用試料中の各試薬の終濃度は、 SDSを含有しない蛋白質試料を用いた 場合は、 SDS 0.19W/V%、 TCA 23.4W/V%、エタノーノレ 42.2V/V%である。また、 2% SDS含有蛋白質試料を用いた場合の各試薬の終濃度は、 SDS 0.31W/V%、 TCA 23.4%、エタノーノレ 42.2W/V%となる。
また、界面活性剤(阻害物質)を含有しない以外は上記と同様に調製した BSA試料
、 IgG試料、 OVA試料を用いて同様に固定化、測定を行い、対照とした。
[液相法による蛋白質の測定]
表 4記載の濃度となるように各界面活性剤を含有する BSA試料(10 μ g/20 μ L)を 調製したものを用レ、、 lmL Pyromolex溶液を使って、実施例 6と同様の方法で測定し た。
また、界面活性剤(阻害物質)を含有しない以外は上記と同様に調製した BSA試料 を用レ、て同様に液相法による測定を行レヽ、対照とした。
[0146] [結果]
夫々の測定は 3回ずつ行い、得られた吸光度の平均値を求めた。。対照を用いて 得られた平均値を 100として、それに対する界面活性剤を含有する試料を用いて得ら れた吸光度の平均値の相対値 (%)を求め、その相関変位 (CV)と併せて表 4に示す。 表 4に於いて、界面活性剤(阻害物質)の濃度は、蛋白質試料中の濃度を示す。ま た、液相法のデータ中、左側の値は界面活性剤の濃度を、右側の値は対照に対す る、界面活性剤を含有する試料を用いた場合の平均測定値の相対値 (%)土 CVを示 す。
尚、表 4に示したデータは、界面活性剤の最大許容濃度時のデータ、すなわち、添 加剤として界面活性剤を用いた場合に、対照(添加剤なし)と比較して平均値が土 20%となる結果が得られた時のデータを示している。
[0147] [表 4]
固 相 '化 法 液 相 法 界面活性剤 濃 度 BSA(4«g) IgG(4/ig) OVA(5 g) BSA(lOii ) mean(%)土 CV mean(%)土 CV mean(%)土 CV mean(%)±CV
SDS 1% (w/v) 87 ±7.1 (0.01%(w/v), 92±6.0)
2% (w/v) 82 ±6.2 100 ±0.9 117 士 2.2
4% (w v) 103 ±4.3
2%(w/v) 101 ±1.9 (0.1%(wv), 109 ±7.3)
3% (w/v) 94 ±3,7
Triton X-100 1% (w/v) Π2 dfc 0. (0.1%(«7v), 107±3.9)
2% (w/v) 98 ±1.9 115 ±1.5 113 ±3.0
NP-40 1% (w/v) 96 ± H- 4.5 115 ±3.0 (0.1%<wv), 116±4,7)
2% (w/v) 90 ±1.2 115 ±2.4
Tween 20 0.05%(w/v) 110 ±4.4
0.1% (w/v) 97 士 4.5 116 ±2.8
0.2% (w/v) 89 ±2,6 109 ±1.6
Tween 80 0.05%(w/v) 105 ±2,7
0.1%(w/v) 82 ±2.0 112 士 0.6 111 ±0.7 112 土 1.4
Briji 35 1% (w/v) 107 ±3.4 (0Λ%(^ίν 108土 32)
2%(w/v) 93 ±3.9 112 ±2.9
CHAPS 1% (w/v) 96 ±2.6 111 ±2.2 (QA%(^Iv)t 104土 αο)
2% (w/v) 116 ±1.3 106 ±0.9
CTAB 0.05%(w/v) 112 ±0.2
0.1%( /v) 123 土 1.0
SLS: N-ラウロイルサルコシン酸ナトリウム
Triton X- 100 (ロームアンドハース社商品名):ポリオキシエチレン (10)ォクチルフエ ノレエーテノレ
b
NP_40(日本ェマルジヨン (株)商品名):ポリオキシエチレン (9)ォクチルフエニルエー テノレ
Tween 20 (花王 (株)商品名):ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート
Tween 80 (花王 (株)商品名):ポリオキシエチレンソルビタンモノォレエート
Brij 35(ICI社商品名):ポリオキシエチレンラウリルエーテル
CHAPS: 3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニォプロパンスルホン酸]
CTAB:セチルトリメチルアンモニゥムブロマイド
表 4から明らかな如ぐ本発明の方法により蛋白質を固定化し測定した場合、蛋白 質試料の調製時に一般に用いられる界面活性剤が高濃度共存していても、それに 影響を受けずに蛋白質の測定が可能であることが判る。特に液相法と比較すると、液 相法の 10倍又はそれ以上の濃度の界面活性剤が蛋白質試料中に添加剤として共 存していても、測定可能であることが判る。
[0149] 以上のことより、本発明の蛋白質の固定化方法は、従来より添加剤として汎用され ている界面活性剤に起因する問題、即ち蛋白質の定量を阻害するという問題を解決 し得るものであることが半 IJる。
[0150] 実施例 10.ィムノブロッテイング
[試料及び試液の調製]
(1)蛋白質試料
マウス IgG (和光純薬工業 (株)製)を秤量し、精製水に溶解して 0— 200 z g/mL溶 液としたものを蛋白質試料として用いた。
(2)固定化用試液
精製水で、 0.2 W/V% SDS、 2.5 W/V% TCA、 45 V/V%エタノールを含有する固定 化用試液を調製した。
(3)固定化用試料
上記で調製した各濃度の蛋白質試料夫々 20 μ Lと、固定化用試液 300 μ Lを混合し たもの(SDS終濃度 0.19W/V%、 TCA終濃度 2.34W/V%、エタノール終濃度 42.2V/V%) を調製し、固定化用試料とした。
(4)ブロッキング溶液
ブロックエース(雪印乳業 (株)製)を終濃度 25%となるように PBS (pH7.4)で希釈したも のを用いた。
(5)抗体溶液
発光検出用抗体溶液:西洋ヮサビペルォキシダーゼ標識抗マウス IgG抗体(アマシ ャムバイオサイエンス製)をブロッキング溶液で 1/10000希釈したものを用いた。
[0151] 発色検出用抗体溶液:アルカリフォスファターゼ標識抗マウス IgG抗体 (和光純薬ェ 業 (株)製)をブロッキング溶液で 1/1000希釈したものを用いた。
(6)洗浄液
Tween 20を、終濃度 0.05%となるように PBS (pH7.4)で希釈したものを用いた。
(7)検出試薬
発光検出用: ECL Plus Western Blotting Starter Kit (アマシャムバイオサイエンス( 株)製)
発色検出用: 0.033%ニトロブルーテトラゾリゥム(NBT,和光純薬工業 (株)製)、 0.0165% 5-ブロモ _4_クロ口- 3-インドリルリン酸(BCIP、和光純薬工業 (株)製) Z lOOmM Tris-HCl pH9.5 (100mM NaCl、 5mM MgCl含有)
[0152] [蛋白質の固定化および測定]
実施例 1と同様の方法で、上記した如く調製した固定化用試料を PVDF膜にァプラ ィし、吸引濾過後、 PBS (pH7.4) 300 z Lをアプライし、同様に吸引濾過を行った。
PVDF膜を取り出し、ブロッキング溶液に浸し、ローテーションさせながら室温で 1時間 インキュベーションした(ブロッキング操作)。その後、発光検出用抗体溶液又は発色 検出用抗体溶液に浸し、ローテーションさせながら室温 1時間インキュベーションした (抗体反応)。抗体反応後の膜を洗浄液で 5回洗浄した後、発光検出試薬又は発色 検出試薬に浸し、検出反応を行った。発光検出は、 PVDF膜を発光検出処理後、 X 線フィルム(アマシャムバイオサイエンス製)に感光させて検出を行った。
[0153] [結果]
結果を図 8に示す。図 8に於いて、 Aは PVDF膜に固定化した蛋白質試料の免疫検 出を発光反応により行レ、、 X線フィルムに感光させ検出したものである。 Bは、 PVDF 膜に固定化した蛋白質試料の免疫検出を発色反応により行い、検出したものである 。また、各ドットは、蛋白質試料を各蛋白質量として固定化後に検出した場合の結果 を夫々示す。
図 8より明らかな如ぐィムノブロッテイングにより発光検出、発色検出した場合の何 れも、膜に固定化したマウス IgGを検出することができた。発光検出での検出限界は 0.0625 x g、発色検出での検出限界は 0.5 x gであった。従って、本発明の蛋白質の 固定化方法により固定化したものは、ィムノブロッテイングによる免疫学的検出を行い 得ることが判った。
[0154] 実施例 11
[異常型 PrPを含有する被検試料の調製]
(1)試液の調製:下記試液を調製した
G)ホモジナイズ用溶液
50mM Tris-HCl pH7.4(150mM NaCl、 ImM KC1、 ImM EDTA、 1W/V%デォキシコ
ール酸ナトリウム、 1W/V% Triton X- 100含有)
(ii)プロテアーゼ溶 f夜
プロティナーゼ K (Tritirachium album由来、和光純薬工業 (株)製) 200 μ gを 10mM Tris-HCl pH7.4(150mM NaCl、 ImM KC1、 ImM EDTA、 20W/V% SDS、 10W/V% Triton X-100含有) 1.0 mLに溶解したもの。
Gii)蛋白質沈降剤
2—ブタノ一ノレ:メタノールの 5: 1(W/W)混合溶媒
(iv)沈殿物溶解液
50mM Tris-HCl pH7.4(150mM NaCl、 ImM KC1、 ImM EDTA、 0.005W/V% BSA、 2W/V% SDS含有)
[0155] (2)異常型 PrPを含有する被検試料の調製
BSE感染牛小脳(凍結融解を繰り返したもの)組織小片 320mg (湿重量)をホモジ ナイズ用溶液 1.3mL中でマルチビーズショッカー(安井器械 (株)製)を用いてホモジナ ィズ後、 20°C、 5000gで 5分間遠心分離を行い、上清を得た。
得られた上清 500 / Lにプロテアーゼ溶液 500 / Lを加え、よく混和後、 37°Cで 10分 間反応させた後、蛋白質沈降剤 500 μ Lを添加し混合させた。
次いで、この液を 20000 X gで 5分間遠心分離を行い、上清を廃棄して沈殿物を得た 得られた沈殿物に沈殿物溶解液 60 z Lを加えて溶解後、 100°Cで 5分間処理し、プ ロティナーゼ Kの失活及び異常型 PrPの病原性の不活性化処理を行った。
得られた溶液を異常型 PrPを含有する被検試料として用いた。
[0156] [異常型 PrPの固定化および検出]
(1)試液の調製
G)固定化用試液 1
精製水で、 0.1 W/V% SDS、 2.5 W/V% TCA、 45 V/V%エタノールを含有する固定 化用試液 1を調製した。
Gi)固定化用試液 2
精製水で、 0.1 W/V% Tween 20、 2.5 W/V% TCA、 45 V/V%エタノールを含有する
固定化用試液 2を調製した。
Gii)異常型 PrP固定化用試料
上記で調製した異常型 PrPを含有する被検試料 20 しと、固定化用試液 1 200 x L を混合したもの(SDS終濃度 0.27 W/V%、 TCA終濃度 2.3 W/V%、エタノール終濃度 41 V/V%)を調製し、異常型 PrP固定化用試料とした。
(iv)洗浄液
Tween 20を、終濃度 0.05%となるように PBS[pH7.4、 0.02V/V%スラオフ(日本ェンバ イロケミカルズ (株)商品名)含有]で希釈したものを用いた。
(V)抗体溶液
西洋ヮサビペルォキシダーゼ標識抗 BSEモノクロナール抗体 (独立行政法人 農業 •生物系特定産業技術研究機構 動物衛生研究所製)を PBS(pH7.4、20W/V% ダリ セロール、 0.1W/V% BSA含有)で 1/500希釈したものを用いた。
(vi)発色液
TMB Solution (和光純薬工業 (株)製、マイクロウェル用)を用いた。
(vii)停止液 0.1M HC1水溶液を停止液として用いた。
(2)異常型 PrPの固定化および検出
上記で調製した異常型 PrP固定化用試料を、 PVDF膜をセットしてあるマルチプレー ト (ミリポア社製)のゥエルにアプライし、 5分間静置後、吸引濾過した。次いで固定化 用試液 2 100 x Lをアプライし、同様に吸引濾過を行レ、、 PVDF膜を洗浄し、この洗浄 操作を再度行った。
その後、抗体溶液 50 μ Lをゥエルにアプライし、 20分間反応させた。反応後、洗浄 液 300 μ Lをアプライし吸引濾過する操作を 5回行レ、、 PVDF膜を洗浄した。
次いで、発色液 50 x Lをアプライし、喑所 '室温で 30分間反応させた。
反応後、マルチプレートのゥヱルの反応液を、吸引濾過によって 96穴の ELISAプレ 一トのゥエルに移した。その後、再度異常型 PrPを固定化してあるマルチプレートのゥ エルに発色液を 50 μ Lずつアプライし、吸引濾過によって 96穴の ELISAプレートの同 じゥヱルに移し、反応液でゥヱルを共洗いした。その後、 96穴 ELISAプレートの各ゥヱ ルに反応停止液 100 μ Lをアプライして、反応を停止させた。
反応停止後 30分以内に、マイクロプレートリーダー (Molecular Devices製)にて、反 応液の吸光度(主波長 450nm、副波長 620nm)を測定した。
別に陰性対照陰性対照 [0.01W/V% BSA、 0.02%スラオフを含有する 50mM Tris-HCl ρΗ7·4]と陽性対照 [50mM Tris-HCl ρΗ7·4、 50 μ g/mLリコンビナント PrP ( rPrP、広島大学から供与された)、 150mM NaCl、 ImM KC1、 ImM EDTA、 0.01W/V% BSA、 2W/V% SDS含有]を用いて同様に固定化、及び吸光度の測定を行った。結果 を表 5に示す。
[0158] 比較例 1 (従来の ELISA法)
日本バイオ'ラッドラボラトリーズ (株)製のブラテリア™BSEキットを用レ、、以下の通り 、異常型 PrPの検出を行った。
[異常型 Prpを含有する被検試料の調製]
実施例 1で用いたのと同じ BSE感染牛小脳(凍結融解を繰り返したもの)の組織小 片 350mg (湿重量)をホモジナイズ液(グルコース 50mg/mL) 1.4mL中でマルチビーズ ショッカーを用いてホモジナイズした。
得られたホモジネート 500 μ Lに、キットに添付のプロティナーゼ K (Tritirachium album由来)を Reagent A液(尿素 0.12g/mL)で希釈したもの 500 μ Lを加え、 37°Cで 10分間反応させた。
次いで反応液に Reagent B液(3-ブタノール) 500 μ Lを添加し、よく混和後、 20000g で 5分間遠心分離を行い、沈殿物を得た。
沈殿物に Reagent C 1液(尿素 0.36g/mL)を添加して溶解し、 100°Cで 5分間処理し、 プロティナーゼ Kの失活及び異常型 PrPの病原性不活性化処理を行った。
得られた溶液を異常型 PrPを含有する被検試料として用いた。
[0159] [異常型 PrPの検出]
上記で調製した異常型 PrPを含有する被検試料 17 μ Lを、希釈液 83 μ Lに溶解し、 抗ヒト PrPマウスモノクローナル抗体を結合した 96穴 ELISA用プラスチックプレートのゥ ヱルに滴下した後、 37°Cで 75分間静置した。次いで洗浄液 350 μ Lで、ゥヱルを洗浄 する操作を 6回行った。
各ゥエルに POD標識抗ヒト PrPマウスモノクローナル抗体溶液 100 μ Lを加え、 4。Cで
60分間反応させた。
各ゥエルを洗浄液 (トリス緩衝液)で 10回洗浄した。洗浄後、各ゥエルに基質発色液( TMB溶液) 100 μ Lをアプライし、 30分間反応させた。反応後各ゥエルに反応停止液 (0.5Μ硫酸) 100 μ Lを加えて反応を停止させた。
マイクロプレートリーダー (Molecular Devices製)にて、主波長 450nm、副波長 620nm で吸光度を測定した。
別にキットに添付の陰性対照(0.1W/V% BSAを含有する PBS)とキットに添付の陽性 対照(ヒトプリオン蛋白合成ペプチド)を用いて同様に固定化及び吸光度の測定を行 つた。
以上の結果を表 5に併せて示す。
[表 5]
[0161] 以上のことより、実施例 11においては固定化から検出までの工程を 60分以内に行 うことが出来たが、比較例 1に於いては、蛋白質の固定化の段階のみで 75分を要し、 本発明の方法の方が、迅速に BSE感染の判定を行うことが出来ることがわかる。 また、表 5から明らかな如ぐ BSE検体を用いた場合 (被検試料)、比較例 1では BSE 検体の吸光度は陽性対照よりもかなり低くなつてしまレ、、凍結融解を繰り返した BSE 感染牛小脳を試料として用いた場合には、信頼度の高い BSEの判定が行えないこと がわかった。これに対し、実施例 11では陽性対照と同等の吸光度が測定され、検体 の状態に関わらず BSEの判定が行えることがわかった。
[0162] 実施例 12.カットオフ値の設定
[被検試料の調製]
(1)試液の調製:下記試液を調製した
G)ホモジナイズ用溶液
50mM Tris-HCl pH7.4 [150mM NaCl、 ImM KC1、 ImM EDTA、 1W/V%デォキシ コール酸ナトリウム、 1W/V%サンライト SL-50 (非イオン性界面活性剤、サンライト (株) 商品名)含有]
(ii)プロテアーゼ溶 f夜
プロティナーゼ K (Tritirachium album由来、和光純薬工業 (株)製) 100 μ gを 10mM Tris-HCl pH7.4(150mM NaCl、 ImM KC1、 ImM EDTA、 20W/V% SLS、 10W/V%サン ライト SL-50含有) 500 β Lに溶解したもの(プロティナーゼ K終濃度 200 μ g/mL)。
(iii)蛋白質沈降剤
2—ブタノール:メタノールの 5: 1(W/W)混合溶媒
(iv)沈殿物溶解液
50mM Tris-HCl pH7.4(150mM NaCl、 ImM KC1、 ImM EDTA、 0.005W/V% BSA、 2W/V% SDS含有)
[0163] (2)被検試料の調製
BSEに感染していないことを確認した牛 48頭の延髄のォベックス部(陰性検体とする 。 48検体)の組織小片夫々 320— 350mg (湿重量)を採取し、これらを夫々ホモジナイ ズ用溶液 1.3mL中でマルチビーズショッカー(安井器械 (株)製)を用いて 2000卬 mで 30秒ホモジナイズ後、室温、 5000 X gで 5分間遠心分離を行い、上清を得た。
得られた上清 500 μ Lにプロテアーゼ溶液 500 μ Lを加え(プロティナーゼ Κ 100 μ g )、よく混和後、 37°Cで 10分間反応させた後、蛋白質沈降剤 500 を添加し混合さ せた。
次いで、この液を 20000 X gで 5分間遠心分離を行い、上清を廃棄して沈殿物を得た 得られた沈殿物に沈殿物溶解液 60 z Lを加えて溶解後、 100°Cで 5分間処理し、プ ロティナーゼ Kの失活及び異常型 PrPの病原性不活性化処理を行った。
得られた溶液を被検試料として用いた。
[0164] [PrPの固定化および検出]
(1)試液の調製
G)固定化用試液 l
精製水で、 0.1 W/V% SDS、 2.5 W/V% TCA、 45 V/V%エタノールを含有する固定 化用試液 1を調製した。
Gi)固定化用試液 2
精製水で、 0.1 W/V% Tween 20、 2.5 W/V% TCA、 45 V/V%エタノールを含有する 固定化用試液 2を調製した。
(m)PrP固定化用試料
上記で調製した被検試料 60 μ Lをマイクロチューブに採り、固定化用試液 1の 600 μ Lを混合したもの(SDS終濃度 0.27 W/V%、 TCA終濃度 2.3 W/V%、エタノール終濃 度 41 V/V%)を調製し、 PrP固定化用試料とした。
Gv)洗浄液
Tween 20を、終濃度 0.05%となるように PBS[pH7.4、 0.02V/V%スラオフ(日本ェンバ イロケミカルズ (株)商品名)含有]で希釈したものを用いた。
(V)抗体溶液
西洋ヮサビペルォキシダーゼ標識抗 BSEモノクロナール抗体 (独立行政法人 農業 •生物系特定産業技術研究機構 動物衛生研究所製)を PBS(pH7.4、 20W/V% ダリ セロール、 0.1W/V% BSA含有)で 1/500希釈したものを用いた。
(vi)発色液
TMB Solution (和光純薬工業 (株)製、マイクロウェル用)を用いた。
(vii)停止液 0.1M HC1水溶液を停止液として用いた。
(2) PrPの固定化および検出
上記で調製した PrP固定化用試料につき、一試料毎に各 600 z Lを、 PVDF膜をセッ トしてあるマルチプレート(ミリポア社製)の 3ゥエルに 200 μ Lずつ(トリプリケート)、ァ プライした。
マルチプレートを室温で 5分間静置後、各ゥエル内の液を吸引濾過した。次いで固 定化用試液 2を 100 z Lずつ各ゥエルにアプライし、同様に吸引濾過した。更に洗浄 液 300 x Lを各ゥエルにアプライし、同様に吸引濾過を行レ、、各ゥエルの PVDF膜を洗 浄した。この洗浄操作を計 3回行った。その後、抗体溶液 50 / Lを各ゥエルにァプラ
ィし、室温で 20分間反応させた。反応後、洗浄液 300 μ Lを各ゥヱルにアプライし吸 引濾過する操作を 5回行い、 PVDF膜を洗浄した。
次いで、発色液 50 μ Lを各ゥヱノレにアプライし、喑所、室温で 30分間反応させた。 反応後、マルチプレートのゥヱルの反応液を、吸引濾過によって 96穴の ELISAプレ 一トのゥエルに移した。その後、再度 PrPを固定化してあるマルチプレートのゥエルに 発色液を 50 z Lずつアプライし、吸引濾過によって、 96穴の ELISAプレートの同じゥヱ ルに移し、反応液でゥヱルを共洗いした。その後、 96穴 ELISAプレートの各ゥヱルに 反応停止液を 100 μ Lずつアプライして、反応を停止させた。
反応停止後 30分以内に、マイクロプレートリーダー (Molecular Devices製)にて、反 応液の吸光度(主波長 450nm、副波長 620nm)を測定した。一検体毎に測定した、トリ プリケートの吸光度の平均値、 SD及び CV(%)を表 6に示す。
別に陰性対照 [0.01W/V% BSA、 0.02%スラオフを含有する 50mM Tris-HCl ρΗ7·4]と 陽性対照 [50mM Tris-HCl pH7.4、 50 μ g/mLリコンビナント PrP (rPrP、広島大学から 供与された)、 150mM NaCl、 ImM KC1、 ImM EDTA、 0.01W/V% BSA、 2W/V% SDS 含有]を用いて同様に固定化、吸光度の測定を行った。尚、陰性対照は 3検体、陽性 対照は 2検体用意し、各一検体毎にトリプリケートで測定を行った。夫々の検体につ いて得られた吸光度の平均値を表 7に示す。
比較例 2 (従来の ELISA法)
比較例 1で用いたのと同じ日本バイオ'ラッドラボラトリーズ (株)製のブラテリア™ BSEキットを用レ、、以下の通り、 PrPの検出を行った。
[被検試料の調製]
実施例 12で用いたのと同じ陰性検体 48検体の組織小片夫々 320— 350mg (湿重 量)を採取し、ホモジナイズ液(グルコース 50mg/mL) 1.4mL中でマルチビーズショッ カーを用いてホモジナイズした。
得られたホモジネート 500 Lに、キットに添付のプロティナーゼ K (Tritirachium album由来)を Reagent A液(尿素 0.12g/mL)で希釈したもの 500 μ Lを加え、 37°Cで 10分間反応させた。
次いで反応液に Reagent B液(3-ブタノール) 500 μ Lを添加し、よく混和後、 20000g
で 5分間遠心分離を行い、沈殿物を得た。
沈殿物に Reagent C1液(尿素 0.36g/mL)を添加して溶解し、 100°Cで 5分間処理し、 プロティナーゼ Kの失活及び異常型 PrPの病原性不活性化処理を行った。
得られた溶液を被検試料として用いた。
[0167] [PrPの検出]
上記で調製した被検試料 17 μ Lを、希釈液 83 μ Lに溶解し、抗ヒト PrPマウスモノクロ ーナル抗体を結合した 96穴 ELISA用プラスチックプレートのゥエルに滴下した後、 37 °Cで 75分間静置した。次いで洗浄液 350 / Lで、ゥエルを洗浄する操作を 6回行った 各ゥエルに POD標識抗ヒト PrPマウスモノクローナル抗体溶液 100 μ Lをカロえ、 4°Cで 60分間反応させた。
各ゥエルを洗浄液 (トリス緩衝液)で 10回洗浄した。洗浄後、各ゥエルに基質発色液( TMB溶液) 100 μ Lをアプライし、 30分間反応させた。反応後各ゥエルに反応停止液 (0.5Μ硫酸) 100 μ Lを加えて反応を停止させた。
マイクロプレートリーダー (Molecular Devices製)にて、主波長 450nm、副波長 620nm での吸光度を測定した。結果を表 6に併せて示す。
別にキットに添付の陰性対照(0.1W/V% BSAを含有する PBS) 2検体とキットに添付 の陽性対照(ヒトプリオン蛋白合成ペプチド) 2検体を用いて同様に固定化及び吸光 度の測定を行った。結果を表 7に併せて示す。
[0168] [表 6]
試料 No. 実施^ 1 2 比較例 2 mean SD CV%
No.1 0.029 0.025 87% 0,073
No.2 0.040 0.006 15% 0.1 10
No.3 0.025 0.008 33% 0.065
No.4 0.032 0.015 45% 0.070
No.5 0.036 0.032 87% 0.054
No.6 0.065 0.014 22% 0.046
No.7 0.055 0.005 8% 0.079
No.8 0.032 0.028 8Q% 0.048
No.9 0,040 0.0t 7 41 ¾ 0.054
No.10 0,050 0.002 5% 0.035
No.1 1 0,066 0.017 25% 0.040
No.12 0.065 0.007 10% 0.043
No.13 0.053 0.016 30% 0.026
No.14 0.060 0.020 33% 0.026
No.15 0.054 0.010 18% 0.036
No.16 0.061 0,026 42% 0.026
No.17 0.056 0.021 37% 0.056
No.18 0.041 0.001 2% 0.033
No.19 0.044 0.005 12% 0.038
No.20 0.042 0.006 14% 0.025
No.21 0,058 0.040 69% 0.034
No.22 0.066 0.007 11% 0.027
No.23 0,048 0.002 5% 0.027
No.24 0,051 0.023 46% 0.037
No.25 0.019 0.020 麵 0.056
No.26 0.040 0.005 11% 0.046
No.27 0.024 0.009 35% 0.055
No.28 0.034 0.019 56% 0.036
No.29 0.041 0.040 96% 0.050
No.30 0.068 0.007 10% 0.050
No.31 0.079 0.010 12% 0.058
No.32 0.034 0,028 84% 0.053
No.33 0.064 0,053 83% 0.137
No.34 0.054 0,003 5% 0.064
No.35 0.071 0.017 24% 0.064
No.36 0.093 0.027 29% 0.066
No.37 0.055 0.016 30% 0.066
No.38 0.062 0.020 •3 0.077
No.39 0.057 0,010 17% 0.081
No.40 0.063 0.026 41% 0.051
No.41 0.088 0.002 2% 0.059
No.42 0.044 0.002 4% 0.054
No.43 0,046 0.006 12% 0,066
No.44 0,044 0.008 17¾ 0.032
No.45 0,074 0.047 64% Q.033
No.46 0.083 0.010 1 1% 0.028
No.47 0.052 0.002 3% 0.040
No.48 0.052 0.025 49% 0.051
[0169] [表 7]
[0170] まず、比較例 2で用いた BSEキットの取扱説明書によると、陰性対照の吸光度が
0.15以下で、且つ陽性対照の吸光度が 1.0以上であった場合には、その検出系が信 用できると判定している。上記表 7から明らかな如ぐ本発明に係る PrPの検出方法に よる測定を行った場合 (実施例 12)も、従来の BSEキットを用いた PrP検出方法による 測定を行った場合 (比較例 2)も、陰性対照の吸光度は 0.15以下で、陽性対照の吸光 度は 1.0以上であった。
このことから、本発明の PrP検出方法の検出系は、従来の ELISA法による検出方法 と同様に、信用できると判断される。
[0171] 次に、得られた上記表 6の結果を基に陰性検体の吸光度の平均値を計算したとこ ろ、平均値は 0.052 ± 0.017、 CV値 (%)は 32%であった。
これに対し、従来の ELISA法による BSEキットを用いて同様に PrPの検出を行った場 合の(比較例 2)、陰性検体 (48検体)の吸光度の平均値は 0.052 ± 0.022、 CV値 (%) は 42%であった。すなわち、本願発明に係る PrPの検出方法の方が、従来の BSEキット を用いた方法よりも、陰性検体毎の測定値のばらつきが少ないことが分かった。
[0172] 更に、 BSE感染を判定するためのカットオフ値を決定した。 PrPの BSEの判定には主 として脳が検体として用いられる力 脳組織の PrP以外の成分が抗 PrP抗体の非特異 的反応を弓 Iき起こす畏れがある。また、測定操作時の測定誤差を弓 Iき起こす可能性 を考慮して、実施例 12の場合、陰性検体の吸光度の平均値 (0.052) + 5SD(5 X 0.017) ^ 0.14に、上記表 7で得られた、実施例 12の方法で行った陰性対照の吸光度 の平均値 (0.063)を加えた値、すなわち 0.203を、 BSE感染を判定するカットオフ値とし て仮に設定した。比較例 2の場合、キットの取扱説明書に従い、上記表 7で得られた
、比較例 2の方法で行った陰性対照の吸光度の平均値 (0.014)に、当該取扱説明書 に記載されているように 0.21を加えた値、すなわち 0.224を、 BSE感染を判定するカット オフ値として仮に設定した。
[0173] 実施例 13. BSEの判定
[被検試料の調製]
(1)試液の調製
実施例 12と同様の方法で、各試液を調製した。
(2)被検試料の調製
BSE感染牛小脳(陽性検体とする。 10検体)の組織小片夫々 320— 350mg (湿重量 )を採取し、これらを夫々ホモジナイズ用溶液 1.3mL中でマルチビーズショッカー(安 井器械 (株)製)を用いて 2000卬 mで 30秒ホモジナイズ後、室温、 5000 X gで 5分間遠心 分離を行い、上清を得た。
得られた上清 500 μ Lにプロテアーゼ溶液 500 μ L (プロティナーゼ Κ 100 μ g)を加 え、よく混和後、 37°Cで 10分間反応させた後、蛋白質沈降剤 500 / Lを添加し混合さ せた。
次いで、この液を 20000 X gで 5分間遠心分離を行い、上清を廃棄して沈殿物を得た 得られた沈殿物に沈殿物溶解液 60 z Lを加えて溶解後、 100°Cで 5分間処理し、プ ロティナーゼ Kの失活及び異常型 PrPの病原性不活性化処理を行った。
得られた溶液を実施例 12と同じ沈殿物溶解液で 2倍希釈した被検試料と、 10倍希 釈した被検試料を用意した。
[0174] [PrPの固定化および検出]
(1)試液の調製
実施例 12と同じものを調製した。
尚、 PrP固定化用試料は、上記で調製したホモジナイズ用溶液で 2倍希釈した被検 試料、及び 10倍希釈した被検試料を夫々用いて、実施例 12と同様に調製した。
[0175] (2) PrPの固定化および検出
上記で調製した PrP固定化用試料につき、一試料毎に各 600 / Lを、 PVDF膜をセッ
トしてあるマルチプレート(ミリポア社製)の 3ゥエルに 200 μ Lずつ(トリプリケート)、了 プライした。
マルチプレートを室温で 5分間静置後、各ゥエル内の液を吸引濾過した。次いで固 定化用試液 2を 100 z Lずつ各ゥエルにアプライし、同様に吸引濾過した。更に洗浄 液 300 x Lを各ゥエルにアプライし、同様に吸引濾過を行レ、、各ゥエルの PVDF膜を洗 浄した。この洗浄操作を計 3回行った。その後、抗体溶液 50 z Lを各ゥエルにァプラ ィし、室温で 20分間反応させた。反応後、洗浄液 300 μ Lを各ゥヱルにアプライし吸 引濾過する操作を 5回行い、 PVDF膜を洗浄した。
次いで、発色液 50 μ Lを各ゥヱノレにアプライし、喑所、室温で 30分間反応させた。 反応後、マルチプレートのゥエルの反応液を、吸引濾過によって 96穴の ELISAプレー トのゥエルに移した。その後、再度 PrPを固定化してあるマルチプレートのゥエルに発 色液を 50 /i Lずつアプライし、吸引濾過によって、 96穴の ELISAプレートの同じゥエル に移し、反応液でゥエルを共洗いした。その後、 96穴 ELISAプレートの各ゥエルに反 応停止液を 100 μ Lずつアプライして、反応を停止させた。
反応停止後 30分以内に、マイクロプレートリーダー (Molecular Devices製)にて、反 応液の吸光度(主波長 450nm、副波長 620nm)を測定した。一検体毎に測定した、トリ プリケートの吸光度の平均値、 SD及び CV(%)を表 8— 1及び表 8— 2に示す。尚、表 8— 1はホモジナイズ用溶液で 2倍希釈した被検試料を用いた場合、表 8_2は、ホモジナ ィズ用用液で 10倍希釈した被検試料を用いた場合の結果を夫々示す。
別に陰性対照 [0.01W/V% BSA、 0.02%スラオフを含有する 50mM Tris-HCl pH7.4]と 陽性対照 [50mM Tris-HCl pH7.4、 50 μ g/mLリコンビナント PrP (rPrP、広島大学から 供与された)、 150mM NaCl、 ImM KC1、 ImM EDTA、 0.01W/V% BSA、 2W/V% SDS 含有]を用いて同様に固定化、吸光度の測定を行った。尚、陰性対照及び陽性対照 は夫々 3検体用意し、各一検体毎にトリプリケートで測定を行った。夫々の検体につ レ、て得られた吸光度の平均値を表 9に示す。
比較例 3 (従来の ELISA法)
比較例 1で用いたのと同じ日本バイオ'ラッドラボラトリーズ (株)製のブラテリア™ BSEキットを用い、以下の通り、 PrPの検出を行った。
[被検試料の調製]
実施例 13で用いたのと同じ陽性検体 10検体夫々 320— 350mg (湿重量)を採取し、 ホモジナイズ液(グルコース 50mg/mL) 1.4mL中でマルチビーズショッカーを用いてホ モジナイズした。
得られたホモジネート 500 Lに、キットに添付のプロティナーゼ K (Tritirachium album由来)を Reagent八液(尿素 0.12g/mL)で希釈したもの 500 μ Lを加え、 37°Cで 10分間反応させた。
次いで反応液に Reagent B液(3-ブタノール) 500 μ Lを添加し、よく混和後、 20000g で 5分間遠心分離を行い、沈殿物を得た。
沈殿物に Reagent C1液(尿素 0.36g/mL)を添加して溶解し、 100°Cで 5分間処理し、 プロティナーゼ Kの失活及び異常型 PrPの病原性不活性化処理を行った。
得られた溶液を Reagent C1液(尿素 0.36g/mL)で 10倍希釈したものと、希釈しなか つたものとを用意し、夫々被検試料とした。
[0177] [PrPの検出]
上記で調製した被検試料 17 μ Lについて、比較例 2と同様の方法で PrPの検出を行 つた。結果を表 8— 1及び表 8— 2に併せて示す。尚、表 8— 1には、希釈しなかった被 検試料を用いた場合の結果を、表 8-2にはホモジナイズ液で 10倍希釈した被検試 料を用いた場合の結果を夫々示した。
別にキットに添付の陰性対照(0.1W/V% BSAを含有する PBS) 2検体とキットに添付 の陽性対照(ヒトプリオン蛋白合成ペプチド) 2検体を用いて同様に固定化及び吸光 度の測定を行った。結果を表 9に併せて示す。
尚、表 8— 2及び表 9に於いて、比較例 3の結果で「N.D.」と示したものは、測定を行 わなかった場合を夫々示す。
[0178] [表 8-1]
試料 No. 実施例 1 3 比較例 3
mean SD cv%
Νο·1 3.271 0.688 21% 2.294
Νο.2 3.201 0.578 18% 3.052
Νο.3 2.686 0.283 11% .835
Νο.4 3.330 0.832 25% 2.501
Νο.5 3,208 0.611 19% 1.619
Νο.6 3.251 0.694 21% 2.078
Νο.7 3.234 0,587 18¾ 2.790
Νο.8 3.115 0,466 15% 0.935
Νο.9 3.118 0.504 16% 1.721
Νο.10 3.178 0.554 17% 0.778
[0179] [表 8- 2]
試料 No. 実施例 1 3 比較例 3
mean SD cv%
Νο.1 2.427 0,167 7% N.D.
Νο.2 0.792 0.009 1% N.D.
Νο.3 1.684 0.452 27% N.D.
ο.4 2.7 9 0.134 5% N.D.
Νο.5 0.556 0.156 28% N.D.
Νο.6 1.854 0.050 3% N.D.
Νο.7 2,709 0.147 5% N.D.
Νο.8 1,124 0.266 24% 0.091
Νο.9 1.272 0.243 19% 0.230
ο.10 1.350 0.313 23% 0.238
[0180] [表 9]
[0181] まず、比較例 3で用いた BSEキットの取扱説明書によると、陰性対照の吸光度が
0.15以下で、且つ陽性対照の吸光度が 1.0以上であった場合には、その検出系が信 用できると判定している。上記表 8—1及び 8—2から明らかな如ぐ本発明に係る PrPの 検出方法による測定を行った場合(実施例 13)も、従来の BSEキットを用いた PrP検出 方法による測定を行った場合 (比較例 3)も、陰性対照の吸光度は 0.15以下で、陽性 対照の吸光度は 1.0以上であった。このこと力ら、本発明の PrP検出方法の検出系は
、従来の ELISA法による検出方法と同様に、信用できると判断される。
[0182] 次に、 BSE感染を判定するためのカットオフ値を決定した。実施例 13の場合、実施 例 12で得られた陰性検体の吸光度の平均値 (0.052) + 5SD(5 X 0.017) 0.15に、上記 表 9で得られた、実施例 13の方法で行った陰性対照の吸光度の平均値 (0.035)をカロ えた値、すなわち 0.185を、 BSEを判定するカットオフ値として仮に設定した。そしてそ の値を表 8— 1及び表 8-2の結果に当てはめた場合、実施例 13に於ける全ての吸光 度の平均値はカットオフ値よりも高ぐ全ての検体が陽性と判定できた。
一方、比較例 3の場合、キットの取扱説明書に従い、上記表 9で得られた、比較例 3 の方法で行った陰性対照の吸光度の平均値 (0.023)に、当該取扱説明書に記載さ れているように 0.21をカ卩えた値、すなわち 0.233を、 BSE感染を判定するカットオフ値と して仮に設定した。そしてその価を表 8— 1及び表 8-2の結果に当てはめた場合、比 較例 3に於ける殆どの吸光度の平均値はカットオフ値よりも高く陽性と判定できた。
[0183] しかし、表 9の結果から明らかなように、実施例 13で得られた陰性対照のデータは 比較例 3で得られたそれらと同等であつたが、実施例 13で得られた陽性対照のデー タは、比較例 3で得られたそれらよりも有意に高くなつており、且つ表 8— 1及び表 8— 2 力も明らかな如ぐ実施例 13に於ける陽性検体についての吸光度の測定値は、比較 例 3に於ける同検体についての吸光度の測定値よりも高い値になった。
更に、 BSEの判定に用いられる動物組織由来の被検試料には、異常型 PrP以外の 多種の蛋白質を含んでいる。そのため、これらの影響を回避するためには、出来るだ け希釈された被検試料を用いても BSEの判定が出来ることが望ましい。表 8—2から明 らかな如ぐ実施例 13では、 10倍希釈した被検試料を用いても、比較例 3で未希釈 検体を用いて得られた値と同等以上の十分な吸光度が得られた。従って、本発明の 異常型 PrPの検出方法によれば、異常型 PrP以外の共存物質の影響をなるベく少なく
するために被検試料の希釈倍数を高くすることが出来るので、従来法に比較して、高 感度に異常型 PrPの検出が行えることが判る。
[0184] 実施例 14.検出感度の比較
[被検試料の調製]
(1)試液の調製:下記試液を調製した
G)ホモジナイズ用溶液
50mM Tris-HCl pH7.4 [150mM NaCl、 ImM KC1、 ImM EDTA、 1W/V%デォキシ コール酸ナトリウム、 1W/V%サンライト SL-50 (非イオン性界面活性剤、サンライト (株) 商品名)含有]
Gi)プロテアーゼ溶夜
プロティナーゼ K (Tritirachium album由来、和光純薬工業 (株)製) 100 μ gを 10mM Tris-HCl pH7.4(150mM NaCl、 ImM KC1、 ImM EDTA、 20W/V% SLS、 10W/V%サン ライト SL-50含有) 500 μ Lに溶解したもの(プロティナーゼ K終濃度 200 μ g/mL)。
(iii)蛋白質沈降剤
2—ブタノール:メタノールの 5: 1(W/W)混合溶媒
(iv)沈殿物溶解液
50mM Tris-HCl pH7.4(150mM NaCl、 ImM KC1、 ImM EDTA、 0.005W/V% BSA、 2W/V% SDS含有)
(v)正常検体
BSEに感染していないことを確認した牛の延髄のォベックス部の組織小片を採取し 、これらに上記ホモジナイズ用溶液を、ホモジナイズ用溶液に対する組織小片の濃 度が 20W/V%になるように加え、 1.3mL中でマルチビーズショッカー(安井器械 (株)製) を用いて 2000卬 mで 30秒ホモジナイズした。これを正常検体とした。
[0185] (2)被検試料の調製
BSE感染牛小脳(陽性検体とする。 3検体)の組織小片夫々 320— 350mg (湿重量) を採取し、これらに精製水を、精製水に対する組織小片の濃度が夫々 50W/V%となる ようにカロえ、マルチビーズショッカー(安井器械 (株)製)を用いて 2000rpmで 30秒ホモ ジナイズ後、 -80°Cで凍結保存したものを用レ、た。
被検試料調製時に、凍結保存した試料を溶解し、ホモジナイズ用溶液で 2.5倍(X 2.5)に希釈した(20W/V%試料となる。)。次いで、この X 2.5希釈試料を、上記 (l)(v) で調製した正常検体で順次希釈して、 X 10、 X 100、 X 500、 X 1000、 X 3000に希釈 した希釈試料を調製した。
次レ、で調製した希釈試料夫々 600 μ Lを、室温、 5000 X gで 5分間遠心分離を行レ、、 上清を得た。
得られた上清 500 μ Lにプロテアーゼ溶液 500 μ L (プロティナーゼ Κ 100 μ g)を加 え、よく混和後、 37°Cで 10分間反応させた後、蛋白質沈降剤 500 / Lを添加し混合さ せた。
次いで、この液を 20000 X gで 5分間遠心分離を行い、上清を廃棄して沈殿物を得た 得られた沈殿物に沈殿物溶解液 60 / Lを加えて溶解後、 100°Cで 5分間処理し、プ ロティナーゼ Kの失活及び異常型 PrPの病原性不活性化処理を行った。
得られた溶液を被検試料として用レ、た。
[PrPの固定化および検出]
(1)試液の調製
G)固定化用試液 1
精製水で、 0.1 W/V% SDS、 2.5 W/V% TCA、 45 V/V%エタノールを含有する固定 化用試液 1を調製した。
Gi)固定化用試液 2
精製水で、 0.1 W/V% Tween 20、 2.5 W/V% TCA、 45 V/V%エタノールを含有する 固定化用試液 2を調製した。
(m)PrP固定化用試料
上記で調製した被検試料 60 μ Lをマイクロチューブに採り、固定化用試液 1の 600 μ Lを混合したもの(SDS終濃度 0.27 W/V%、 TCA終濃度 2.3 W/V%、エタノール終濃 度 41 V/V%)を調製し、 PrP固定化用試料とした。
(iv)洗浄液
Tween 20を、終濃度 0.05%となるように PBS[pH7.4、 0.02V/V%スラオフ(日本ェンバ
イロケミカルズ (株)商品名)含有]で希釈したものを用いた。
(V)抗体溶液
西洋ヮサビペルォキシダーゼ標識抗 BSEモノクロナール抗体 (独立行政法人 農業 •生物系特定産業技術研究機構 動物衛生研究所製)を PBS(pH7.4、 20W/V% ダリ セロール、 0.1W/V% BSA含有)で 1/500希釈したものを用いた。
(vi)発色液
TMB Solution (和光純薬工業 (株)製、マイクロウェル用)を用いた。
(vii)停止液 0.1M HC1水溶液を停止液として用いた。
(2) PrPの固定化および検出
上記で調製した PrP固定化用試料につき、一試料毎に各 600 / Lを、 PVDF膜をセッ トしてあるマルチプレート(ミリポア社製)の 2ゥエルに 200 μ Lずつ(duplicate)、ァプラ ィした。
マルチプレートを室温で 5分間静置後、各ゥエル内の液を吸引濾過した。次いで固 定化用試液 2を 100 / Lずつ各ゥエルにアプライし、同様に吸引濾過した。更に洗浄 液 300 / Lを各ゥエルにアプライし、同様に吸引濾過を行レ、、各ゥエルの PVDF膜を洗 浄した。この洗浄操作を計 3回行った。その後、抗体溶液 50 / Lを各ゥエルにァプラ ィし、室温で 20分間反応させた。反応後、洗浄液 300 μ Lを各ゥエルにアプライし吸 引濾過する操作を 5回行い、 PVDF膜を洗浄した。
次いで、発色液 50 μ Lを各ゥヱノレにアプライし、喑所、室温で 30分間反応させた。 反応後、マルチプレートのゥヱルの反応液を、吸引濾過によって 96穴の ELISAプレー トのゥエルに移した。その後、再度 PrPを固定化してあるマルチプレートのゥエルに発 色液を 50 z Lずつアプライし、吸引濾過によって、 96穴の ELISAプレートの同じゥヱル に移し、反応液でゥヱルを共洗いした。その後、 96穴 ELISAプレートの各ゥヱルに反 応停止液を 100 μ Lずつアプライして、反応を停止させた。
反応停止後 30分以内に、マイクロプレートリーダー (Molecular Devices製)にて、反 応液の吸光度(主波長 450nm、副波長 620nm)を測定した。得られた duplicateの吸光 度の平均値、 SD及び CV(%)を表 10に示す。また、陽性検体から得られた被検試料毎 の、吸光度(シグナル強度)と希釈倍率との関係を図 9に示す。図 9に於いて、 -口-、
—國一、一國一は、夫々試料 No. l、 2及び 3について得られた結果を夫々示す。 別に陰性対照 [0.01W/V% BSA、 0.02%スラオフを含有する 50mM Tris-HCl pH7.4]と 陽性対照 [50mM Tris-HCl pH7.4、 50 μ g/mLリコンビナント PrP (rPrP、広島大学から 供与された)、 150mM NaCl、 ImM KC1、 ImM EDTA、 0.01W/V% BSA、 2W/V% SDS 含有]を用いて同様に固定化、吸光度の測定を行った。尚、陰性対照と陽性対照はト リプリケートで測定を行った。得られた吸光度の平均値を表 12に示す。
比較例 4 (従来の ELISA法)
比較例 1で用いたのと同じ日本バイオ'ラッドラボラトリーズ (株)製のブラテリア TM BSEキットを用い、以下の通り、 PrPの検出を行った。
[被検試料の調製]
実施例 14で用いたのと同じ陽性検体の凍結保存した試料を、溶解し、ホモジナイ ズ用溶液で 2.5倍( X 2.5)に希釈した(20W/W%試料となる。 )。次レ、で、この X 2.5 希釈試料を、上記で得られた正常検体で順次希釈して、 X 10、 X 30、 X 100、 X 300 、 X 1000に希釈した希釈試料を調製した。
希釈試料夫々 500 βしに(実施例 14で行った遠心操作は行わなレ、)、添付のプロテ イナーゼ K (Tritirachium album由来)を Reagent八液(尿素 0.12g/mL)で希釈したも の 500 /i Lをカロえ、 37°Cで 10分間反応させた。
次いで反応液に Reagent B液(3-ブタノール) 500 μ Lを添加し、よく混和後、 20000g で 5分間遠心分離を行い、沈殿物を得た。
沈殿物に Reagent C 1液(尿素 0.36g/mL)を添加して溶解し、 100°Cで 5分間処理し、 プロティナーゼ Kの失活及び異常型 PrPの病原性不活性化処理を行った。
得られた溶液を被検試料として用いた。
[PrPの検出]
上記で調製した被検試料 17 μ Lを、希釈液 83 μ Lに溶解したものを、抗ヒト PrPマウ スモノクローナル抗体を結合した 96穴 ELISA用プラスチックプレートのゥエルに滴下し た後、 37°Cで 75分間静置した。次いで洗浄液 350 z Lで、ゥエルを洗浄する操作を 6 回行った。
各ゥエルに POD標識抗ヒト PrPマウスモノクローナル抗体溶液 100 μ Lを加え、 4。Cで
60分間反応させた。
各ゥエルを洗浄液 (トリス緩衝液)で 10回洗浄した。洗浄後、各ゥエルに基質発色液( TMB溶液) 100 μ Lをアプライし、 30分間反応させた。反応後各ゥエルに反応停止液 (0.5Μ硫酸) 100 μ Lを加えて反応を停止させた。
マイクロプレートリーダ一 (Molecular Devices製)にて、主波長 450nm、副波長 620mn での吸光度を測定した。結果を表 11に示す。また、陽性検体から得られた試料毎の 、シグナル強度と希釈倍率との関係を図 9に併せて示す。図 9に於いて、 _〇一、 -· 一、一秦一は、夫々実施例 14と同じ試料 N0.1、 2及び 3について得られた結果を夫 々示す。
別にキットに添付の陰性対照(0.1W/V% BSAを含有する PBS) 1検体とキットに添付 の陽性対照(ヒトプリオン蛋白合成ペプチド) 1検体を用いて同様に固定化及び吸光 度の測定を行った。結果を表 12に併せて示す。
[表 10]
[0190] [表 12]
[0191] まず、実施例 13と同様に、実施例 14も、比較例 4も、陰性対照の吸光度は 0.15以 下で、陽性対照の吸光度は 1.0以上であった。このこと力ら、実施例 14の結果は信用 できると判断される。
表 10、 11及び図 9の結果から明らかな如 従来の方法では X 10程度の試料につ いてしか測定が出来なかったが、本発明に係る方法では、 X 100以上希釈しても十 分測定が可能であり、約 10倍以上高感度であることが判った。
産業上の利用可能性
[0192] 本発明に係る蛋白質固定化方法によれば、従来の固相化法では容易に固定化で きなかった試料中の蛋白質を固相に固定化でき、且つ試料中に共存する阻害物質 の影響を軽減して蛋白質の定量的測定/検出を行うことができる。また、従来の固定
化方法では正確に行えな力 た蛋白質の定量も行うことができる。
更に、該固定化方法を用いて異常型 PrPの検出を行えば、迅速且つ精度の高い検 出方法及びプリオン病(特に BSE)の判定を行うことが出来る。