明 細 書
放射線断層撮影装置 技術分野
本発明は、 放射線断層撮影装置に係り、 特に、 被写体中における放 射線の線質変化や放射線検出器の入出力特性の非線形性に起因して 発生する、放射線断層像中のアーチファク トを軽減するための技術に 関する。 背景技術
放射線断層撮影装置においては、 再構成された被写体の断層画像 (以下、 再構成画像とする) 中にアーチファタ トが発生する場合があ る。 このようなアーチファク トの主なものとして、再構成画像中に環 状の模様となって現れるリングアーチファタ トゃ、高放射線吸収物質 同士の間に黒い帯状の模様として現れるダークバンドアーチファク ト等がある。 リングアーチファタ ト発生の主要因としては、放射線検 出器の感度が画素毎にばらつく点や、放射線検出器の入出力特性が理 想的でなく非線形性を有する点が挙げられる。 また、 ダークバンドア 一チファク ト発生の主要因としては、被写体中において放射線の線質 が変化する (ビームハードユング効果) 点が挙げられる。 これらァー チファタ トの低減のために、 これまで様々な方法が提案されている。 最も一般的なアーチファク ト低減法としては、エアキヤリブレーシ ョン法がある。 エアキヤリブレーション法では、 予め被写体を配置せ ずに撮影したエア画像が準備される。 エア画像の信号強度分布は、検 出器に入射する放射線の強度分布と検出器感度分布の積に相当する。 従って、検出器の各画素において撮影画像の信号をエア画像の信号で
除算することで、上記放射線強度分布および検出器感度のばらつきが 補正できる。
アーチファタ ト低減法の別の例として、水補正法が提案されている
(例えば、 特開平 7— 1 7 1 1 4 5号公報参照) 。 水補正法は、 エア キヤリブレーション法を拡張した方法であり、円筒または楕円筒状の 形状を有する水筒ファントムを撮影して得た水画像を、エア画像の代 わりに使用する。上記水筒ファン トムと被写体の放射線吸収量が近い 場合、 エアキヤリブレーションによる上記補正効果に加えて、 検出器 の非線形入出力特性に起因する リ ングアーチファク トゃ、 ビームハー ドユングに起因するダークバンドアーチファタ トを除去できる。 アーチファク ト低減法のさらに別の例として、ファン トムキヤリブ レーション法が提案されている (例えば、 特公昭 6 1— 5 4 4 1 2号 公報参照) 。 ファン トムキャリブレーショ ン法は、 予め作成した変換 関数に基づいて被写体の撮影データを補正する方法である。上記変換 関数は、撮影画像の実測値をその理論値に変換するための多項式であ り、実測値と理論値との関係は予め較正用ファン トムを用いて導出さ れる。様々な直径を有する較正ファントムに対して上記実測値と理論 値との関係を求めることで、検出器ダイナミックレンジの広い範囲に わたって撮影画像の信号強度が較正できる。 発明の開示
エアキヤリブレーション法は、放射線検出器に入射する放射線の強 度分布や放射線検出器の感度ばらつきを補正できるため、 リングァー チプアク トが大幅に低減される。 しかし、 放射線検出器の非線形入出 力特性を補正できないため、 リングアーチファク トを完全に除去でき ないという課題を有する。 また、 ビームハードユングに起因するダー
クバンドアーチファタ トを除去できない問題がある。
水補正法は、上記エアキヤリブレーション法における捕正効果に加 えて、検出器の非線形入出力特性に起因するリングアーチファタ トゃ ダークバンドアーチファタ トを除去できるメリ ッ トがある。 しかし、 水筒ファントムと被写体の放射線吸収量を完全に一致できないため、 上記除去精度が低いという課題を有する。
ファン トムキヤリブレーショ ン法は、検出器ダイナミ ックレンジの 広い範囲にわたって撮影画像の信号強度を較正できる。このため水捕 正法に比べて、検出器の非線形入出力特性に起因するリングアーチフ ァク トやダークパン ドアーチファク トを精度よく除去できるメ リ ツ トがある。 ただし、 上記多項式の近似精度を向上するためには実測値 のサンプル数を増加する必要があるが、実際にはサンプル数の増加は 困難であり、高々 4、 5点のサンプルしか使用されていないのが現状 である。 このため多項式近似の精度が低く、 ファントムキヤリブレー ション後も再構成画像にアーチファク.トが残存するという課題を有 していた。
サンプル数の増加が困難である理由は、実測データの取得に手間が かかる点にある。 例えば、 上記従来例 (特許文献 2 ) に示される頭部 用較正ファン トム (断層面方向に円形の形状を有する) の撮影におい ては、 1つのサイズの較正用ファントムに対して得られる実測データ は 1サンプルにすぎない。 また、 同従来例に示される胸部用較正ファ ン トム (断層面方向に非円形の形状を有する) の撮影においては、 1 つのサイズの較正用ファントムに対して得られる実測データは 2サ ンプルにすぎない(胸部用較正ファン トムの長軸方向および短軸方向 から撮影) 。 従って、 多数のサンプルを取得するためには、 サイズの 異なる多数の較正用ファントムに対して実測データを取得する必要
があり、 手間がかかるという課題を有していた。
また、 上記実測データの取得においては、較正用ファントムの中心 位置を撮影系の回転中心位置に精度よく合わせる必要があり、較正用 ファン トムの配置に手間がかかるという課題を有していた。 さらに、 従来のファントムキヤリブレーション法では、検出器の画素位置が周 辺部に近づくにつれて、上記サンプル点数が減少するという課題を有 していた。
本発明の目的は、放射線断層撮影装置において、再構成画像中に発 生するアーチファク トを高い精度で低減し、再構成画像の画質を向上 できる放射線断層撮影技術を提供することにある。
本発明の目的および新規な特徴の詳細は、本明細書の記述おょぴ添 付図面によって明らかになるであろう。
上記目的を達成するために、本発明の放射線断層撮影装置は、次に 示すような特徴を有する。 以下、 本発明の代表的な構成例を述べる。
( 1 ) 被写体に照射する放射線を発生する発生手段と、 前記発生手 段に対向配置され前記被写体を透過した前記放射線を検出する検出 手段とを含む撮影系と、前記撮影系を前記被写体の周囲に回転させる 回転手段とを具備し、前記撮影系を前記被写体の周囲で回転させなが ら複数の回転角度位置で撮影した複数の前記透過像に基づいて、前記 被写体の断層像を生成する放射線断層撮影装置であって、前記撮影系 の回転軸に垂直な断面が前記回転軸に直交する 2方向でそれぞれ異 なるサイズを有する少なく とも一つのファン トムを含む複数のファ ントムのそれぞれについて、その周囲に前記撮影系を回転しながら撮 影した 3枚以上の透過像の実測画像を格納する第 1の格納手段と、前 記透過像に対応する画像を計算により計算画像として生成する生成 手段と、 生成された前記計算画像を格納する第 2の格納手段と、 前記
実測画像および前記計算画像に基づいて、前記被写体の前記透過像の 強度を捕正する補正手段とを有することを特徴とする。
( 2 ) 前記 (1 ) の放射線断層撮影装置において、 前記少なく とも 一つのファントムは、前記回転軸に垂直な断面が略楕円形であること を特徴とする。
( 3 ) 前記 ( 1 ) 又は (2 ) の放射線断層撮影装置において、 前記 複数のファントムのうち、少なく とも一つのファントムは、前記回転 軸に垂直な断面が略円形であり、 かつ、 前記円形の中心が前記回転軸 と異なる位置に配置されていることを特徴とする。
( 4 ) 被写体に照射する放射線を発生する発生手段と、 前記発生手 段に対向配置され前記被写体を透過した前記放射線を検出する検出 手段とを含む撮影系と、前記撮影系を前記被写体の周囲に回転させる 回転手段とを具備し、前記撮影系を前記被写体の周囲で回転させなが ら複数の回転角度位置で撮影した複数の前記透過像に基づいて、前記 被写体の断層像を生成する放射線断層撮影装置であって、前記撮影系 の回転軸に垂直な断面が略円形であり、前記円形の中心が前記回転軸 と異なる位置に配置されている少なく とも一つのファントムを含む 複数のファントムのそれぞれについて、その周囲に前記撮影系を回転 しながら撮影した 3枚以上の透過像の実測画像を格納する第 1の格 納手段と、前記透過像に対応する画像を計算により計算画像として生 成する生成手段と、生成された前記計算画像を格納する第 2の格納手 段と、 前記実測画像および前記計算画像に基づいて、 前記被写体の前 記透過像の強度を補正する補正手段とを有することを特徴とする。
( 5 ) 前記 (4 ) の放射線断層撮影装置において、 前記複数のファ ン トムのうち、 少なく とも 3のファン トムは、前記回転軸に垂直な 断面が略楕円形であることを特徴とする。
( 6 ) 前記 (4 ) の放射線断層撮影装置において、 前記複数のファ ン トムのうち、 少なく とも一つのファントムは、前記回転軸に垂直な 断面が略円形であり、前記円形の中心が前記回転軸と略同じ位置に配 置されていることを特徴とする。
( 7 ) 前記 ( 1 ) 又は (4 ) の放射線断層撮影装置において、 前記 実測画像より再構成された前記ファン トムの断層像に基づいて、前記 プアン トムの断層面の中心位置と前記断層面に平行な方向での傾き を算出するファン トム位置算出手段を有し、 前記生成手段は、前記中 心位置と前記傾きに基づいて、前記計算画像を作成する時の前記放射 線の投影方向を決定することを特徴とする。
( 8 ) 前記 (7 ) の放射線断層撮影装置において、 前記ファン トム 位置算出手段は、前記ファン トムの前記断層像の信号強度分布の重心 位置に基づいて、前記プアントムの断層面の中心位置を算出すること を特徴とする。
( 9 ) .前記 (7 ) の放射線断層撮影装置において、 前記ファン トム 位置算出手段は、前記ファントムの断層像の信号強度分布の 1次近似 に基づいて、前記ファントムの断層面に平行な方向での傾きを算出す ることを特徴とする。
( 1 0 ) 被写体に照射する放射線を発生する発生手段と、 前記発生 手段に対向配置され前記被写体を透過した前記放射線を検出する検 出手段とを含む撮影系と、前記撮影系を前記被写体の周囲に回転させ る回転手段とを具備し、前記撮影系を前記被写体の周囲で回転させな がら複数の回転角度位置で撮影した複数の前記透過像に基づいて、前 記被写体の断層像を生成する放射線断層撮影装置であって、前記撮影 系の回転軸に垂直な断面が前記回転軸に直交する 2方向でそれぞれ 異なるサイズを有する少なく とも一つのファン トムを含む複数のフ
ァントムのそれぞれについて、その周囲に前記撮影系を回転しながら 撮影した 3枚以上の透過像の実測画像を格納する第 1の格納手段と、 前記透過像に対応する画像を計算により計算画像として生成する生 成手段と、 生成された前記計算画像を格納する第 2の格納手段と、 前 記実測画像の信号強度と前記計算画像の信号強度との関係を近似関 数で近似して、前記近似関数のパラメータ値を導出するパラメータ値 導出手段と、 前記パラメータ値を格納する第 3の格納手段と、 前記実 測画像および前記計算画像に基づいて、前記被写体の前記透過像の強 度を補正する補正手段とを有することを特徴とする。
( 1 1 ) 被写体に照射する放射線を発生する発生手段と、 前記発生 手段に対向配置され前記被写体を透過した前記放射線を検出する検 出手段とを含む撮影系と、前記撮影系を前記被写体の周囲に回転させ る回転手段とを具備し、前記撮影系を前記被写体の周囲で回転させな がら複数の回転角度位置で撮影した複数の前記透過像に基づいて、前 記被写体の断層像を生成する放射線断層撮影装置であって、前記撮影 系の回転軸に垂直な断面が略円形であり、前記円形の中心が前記回転 軸と異なる位置に配置されている少なく とも一つのファン トムを含 む複数のファントムのそれぞれについて、その周囲に前記撮影系を回 転しながら撮影した 3枚以上の透過像の実測画像を格納する第 1の 格納手段と、前記透過像に対応する画像を計算により計算画像として 生成する生成手段と、生成された前記計算画像を格納する第 2の格納 手段と、前記実測画像の信号強度と前記計算画像の信号強度との関係 を近似関数で近似して、前記近似関数のパラメータ値を導出するパラ メータ値導出手段と、前記パラメータ値を格納する第 3の格納手段と. 前記実測画像および前記計算画像に基づいて、前記被写体の前記透過 像の強度を捕正する補正手段とを有することを特徴どする。
これにより、 本発明は、 以下のような利点を有する。
( a ) 従来のファントムキャリブレーション法において高々 4、 5 点であった実測データのサンプル数を、 6個以上〜数千個程度に増加 できるため、ファントムキヤリプレーション法における捕正精度を高 めて再構成画像の画質を向上できる。
( b ) ファン トムによる放射線減衰量を撮影方向にダイナミックに 変化できるため、広範囲のダイナミックレンジを有する実測データを 取得できる。
( c ) 断層面方向に円形の形状を有する一般的なファン トムに対し てもファントムによる放射線減衰量を撮影方向にダイナミックに変 化できるため、広範囲のダイナミックレンジを有する実測データを取 得できる。
( d ) ファントムを撮影系に対して精度良く配置する必要がなくな るため、配置が容易となり、 実測データ取得における作業効率を向上 できる。
( e ) ファン トムの断層面方向の中心位置を簡便に、 精度よく抽出 できるため、ファン トムキヤリブレーション法による較正精度を向上 できる。
( f ) ファントムが断層方向に非円形の断面を有する場合でも、 フ アントムの断層面に平行な方向での傾きを簡便に、精度よく抽出でき るため、ファン トムキヤリプレーション法による較正精度を向上でき る。
( g )被写体の撮影時に得られる任意の透過像の信号強度に対して、 ファントムキヤリプレーション法による信号強度の補正が可能とな る。
図面の簡単な説明
図 1は、本発明の実施例 1に係る放射線断層撮影装置の正面模式図、 図 2は、本発明の実施例 1に係る放射線断層撮影装置の前処理手段を '説明するための図、 図 3は、本発明の実施例 1に係る放射線断層撮影 装置の前処理手段におけるデータ配列の構造を説明するための図、図 4は、本発明の実施例 1に係る放射線断層撮影装置の補正テーブル作 成手段を説明するための図、 図 5は、 本発明の実施例 1に係る放射線 断層撮影装置の補正テーブル作成方法を説明するための図、 図 6は、 本発明の実施例 1に係る放射線断層撮影装置の信号強度捕正手段を 説明するための図、 図 7は、本発明の実施例 1に係る放射線断層撮影 装置のシミュレーショ ン画像発生手段における演算方法を説明する ための図、 図 8は、本発明の実施例 1に係る放射線断層撮影装置の較 正用ファントム位置検出手段を説明するための図、 図 9は、 本発明の 実施例 1に係る放射線断層撮影装置の複数の楕円ファントムの配置 方法を説明するための図、 図 1 0は、 本発明の実施例 2に係る放射線 断層撮影装置のシミュレーショ ン画像発生手段における演算方法を 説明するための図、 図 1 1は、 本発明の実施例 2に係る放射線断層撮 影装置の複数の円筒ファントムの配置方法を説明するための図、図 1 2は、本発明の実施例に係る放射線断層撮影装置の他の較正用ファン トムの例を説明するための図、 図 1 3は、本発明の実施例 1に係る放 射線断層撮影装置による画質改善効果の例を説明するための図であ る。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施例 1 )
図 1は、本発明の実施例 1に係る放射線断層撮影装置の正面模式図 である。 本実施例 1に係る放射線断層撮影装置は、 X線管 1、 X線検 出器 2、 回転板 4、 駆動モーター 5、 駆動ベルト 6、 ガントリー 7、 撮影制御手段 1 0 0、 前処理手段 1 1 1、 実測画像用メモリ 1 0 1、 補正テーブル作成手段 1 0 2、シミュレーション画像用メモリ 1 0 3、 信号強度補正手段 1 0 4、捕正テーブル用メモリ 1 0 5、 シミュレ一 ション画像発生手段 1 0 6、画像再構成手段 1 0 7、較正用ファン ト ム位置検出手段 1 0 8、 画像表示手段 1 0 9、操作卓 1 1 0等から構 成される。
以下では、 X線管 1および X線検出器 2を合わせて撮影系と呼ぶ。 撮影系は回転板 4に固定されている。駆動モーター 5は駆動ベルト 6 を介して回転板 4および撮影系全体を回転する。撮影系は上記回転中 に被写体 3に対して全周方向から X線を照射し、その X線透過像を撮 影する。以下では、回転板 4の回転軸(図示してない)を Z軸とする。 また、回転板 4の回転中心 Oを原点とする水平方向および垂直方向の 座標軸をそれぞれ X軸、 Y軸と定める。 X軸、 Y軸おょぴ Z軸によつ て規定される X Y Z座標系は直交座標系である。
図 1において、 X線管 1の X線発生点 Sと回転中心 Oとの距離の代 表例は 6 9 0 m mである。 また、 回転中心 Oと X線検出器 2の X線入 力面との距離の代表例は 3 8 0 m mである。回転板 4の 1回転の所要 時間の代表例は 0 . 5秒である。
X線検出器 2にはセラミックシンチレータおよぴフォ トダイォード 等から構成される公知のマルチスライス型 X線検出器が使用される。 X線検出器 2は多数の検出素子(図示してない)から構成されており、 その素子数の代表例は X Y平面方向 (以下、 チャネル方向とする) に 8 9 6個、 Z軸方向 (以下、 スライス方向とする) に 3 2個である。
各検出素子は X線発生点 sから略等距離の円弧上に配置されており、 その入力面サイズの代表例はチャネル方向おょぴスライス方向に共 に 1 m mである。撮影系の 1回転における撮影回数の代表例は 9 0 0 回であり、 回転板 4の Q . 4度の回転毎に 1回の撮影が行われる。 次に、 本実施例 1に係る放射線断層撮影装置の動作を説明する。 本 放射線断層撮影装置には、本撮影モードおよびキヤリブレーション撮 影モードの 2種類の撮影モードが用意されている。本撮影モードおよ ぴキヤリブレーション撮影モードの選択は、検者が操作卓 1 1 0を通 して指示する。 なお、 図 1において、 破線の矢印は本撮影モードにお けるデータ処理の流れを示す。また実線の矢印はキヤリブレーション 撮影モードにおけるデータ処理の流れを示す。
以下では、まず本撮影モードにおける本放射線断層撮影装置の動作 について説明する。 まず、 検者が操作卓 1 1 0を通して撮影開始を指 示すると、撮影制御手段 1 0 0は駆動モーター 5を介して回転板 4の 回転を開始する。 回転板 4の回転が定速状態に入った時点で、 撮影制 御手段 1 0 0は X線管 1 の X線照射タイミングおよび X線検出器 2 の撮影タイミングを指示し、被写体 3の全周方向からの撮影データを 取得する。 次に前処理手段 1 1 1は、 上記撮影データに対して、 後述 する方法を用いてオフセッ ト処理、 エアキヤリブレーション処理、 対 数変換処理から成る前処理を行い、 前処理後の撮影データ (以下、 実 測画像とする) を実測画像用メモリ 1 0 1に記録する。 次に、 信号強 度補正手段 1 0 4は、実測画像用メモリ 1 0 1に記録された実測画像 を読み出して、後述する方法を用いて上記実測画像の信号強度を補正 する。 なお、 信号強度補正手段 1 0 4は、 補正テーブル用メモリ 1 0 5に予め記録されている補正テーブルを参照し、上記捕正テーブルに 基づいて所定の補正を行う。上記補正テーブルの詳細については後述
する。 次に画像再構成手段 1 0 7は、前記信号強度補正手段 1 0 4の 出力値に基づき、公知の技術を用いて上記被写体 3の放射線断層像を 再構成する。再構成された放射線断層像は最後に画像表示手段 1 0 9 によって表示される。
次に、キヤリブレーション撮影モードにおける本放射線断層撮影装 置の動作について説明する。キヤリブレーション撮影モードにおいて は、被写体 3として後述する較正用ファ.ントムが配置される。 まず本 撮影モードの場合と同様の手順で較正用ファントムの撮影および撮 影データの前処理が行われ、 前処理後の撮影データ (以下、 較正用実 測画像とする) が実測画像用メモリ 1 0 1に記録される。 次に上記較 正用実測画像は信号強度補正手段 1 0 4によって読み出される。ここ で信号強度補正手段 1 0 4は、補正テーブルが既に捕正テーブル用メ モリ 1 0 5に記録されているかどうかを判別し、存在する場合には上 記補正テーブルを参照して上記較正用実測画像への信号強度補正を 行う。 また、補正テーブルが存在しない場合には上記較正用実測画像 への信号強度補正を省略する。 次に、 画像再構成手段 1 0 7は、 前記 信号強度補正手段 1 0 4の出力値に基づき、公知の技術を用いて上記 較正用ファン トムの放射線断層像を再構成する。 次に、較正用ファン トム位置検出手段 1 0 8は、 上記放射 断層像に基づき、 後述する方 法を用いて上記較正用ファン トムの X Y平面上における位置を算出 する。 次に、 シミュレーション画像発生手段 1 0 6は、 上記算出され た較正用ファントムの位置に基づき、後述する方法を用いて上記較正 用ファン トムの撮影データの理論値 (以下、 シミ ュレーショ ン画像も しくは計算画像とする) を計算し、計算結果をシミュレーショ ン画像 用メモリ 1 0 3に記録する。 次に補正テーブル作成手段 1 0 2は、 実 測画像用メモリ 1 0 1に記録された上記較正用実測画像およびシミ
ュレーション画像用メモリ 1 0 3に記録された上記シミュレーショ ン画像に基づき、後述する方法を用いて実測画像の信号強度を理論値 に変換するための捕正テーブルデータを作成し、作成結果を補正テー ブル用メモリ 1 0 5に記録する。 なお、既に古い補正テーブルデータ が補正テーブル用メモリ 1 0 5に記録されている場合は、上記古い捕 正テーブルデータを新しい捕正テーブルデータで上書きする。
図 2は、本発明の実施例 1に係る放射線断層撮影装置の前処理手段 1 1 1を説明するための図である。 また、 図 3は、 本発明の実施例 1 に係る放射線断層撮影装置の前処理手段 1 1 1におけるデータ配列 の構造を説明するための図である。 以下、 図 2およぴ図 3を用いて前 処理手段 1 1 1における処理の手順について説明する。
X線検出器 2は、 マルチスライス型検出器であり、 上述のようにチ ャネル方向おょぴスライス方向にそれぞれ 8 9 6、 3 2個の検出素子 を有する。 以下では、 上記チャネル方向おょぴスライス方向の検出素 子数を、 それぞれ一般的に N、 Mと表す。 また上述のように、 撮影に おいては撮影系の 1回転の回転中に 9 0 0回の撮影が行われる。以下 では、 上記撮影回数を一般的に Kと表す。 .さらに以下では、 k番目の 撮影 (k = l〜K ) において、 X線検出器 2の nチャネル、 mスライ ス目の検出素子 (n = l〜N、 m = l〜M) で得られた検出信号を Inm ( k )と表す。
前処理手段 1 1には、オフセット画像作成処理、エア画像作成処理、 およびエアキヤリブレーション処理の 3種類の処理が用意されてい る。 このうちオフセッ ト画像作成処理およびエア画像作成処理は、被 写体 3の撮影に先立って行われるオフセッ ト画像撮影およびエア画 像撮影時において選択される。 またエアキャリブレーション処理は、 被写体 3の撮影時において選択される。 以下、 上記 3種類の処理手順
について順に説明する。
オフセッ ト画像作成処理は、 オフセッ ト画像撮影 (X線管 1による X線照射を行わずに撮影)によって得られた K枚のオフセット画像に 対して、 これらの加算平均画像を作成する処理である。 上記オフセッ ト画像は、撮影が行われる度にフレームメモリ 2 0 0に順次上書きさ れる。 フレームメモリ 2 0 0ほ、 図 3 (A) に示されるようなデータ 構造を有し、 X線検出器 2の 1フレーム分に相当する N XM個の撮影 データを保存する。フレームメモリ 2 0 0にオフセット画像が記録さ れると同時に、加算平均手段 2 0 1は上記オフセッ ト画像を順次読出 して (数 1 ) で表される加算平均演算を行う。 bnm = ∑ ( ) (" =l〜N, =1〜M)
(数 1) 加算平均手段 2 0 1によって得られた平均オフセッ ト画像は、オフ セット画像用メモリ 2 0 4に記録される。オフセッ ド画像用メモリ 2
0 4は、 図 3 (B) に示されるようなデータ構造を有し、 X線検出器 2の 1 フレーム分に相当する N XM個の平均オフセッ ト画像データ を保存する。
エア画像作成処理は、 エア画像撮影 (被写体 3を配置しない状態で X線管 1による X線照射行いながら撮影) 、 によって得られた K枚の エア画像に対して、 これらの加算平均画像を作成する処理である。 上 記エア画像は、撮影が行われる度にフレームメモリ 2 0 0に順次上書 きされる。 フレームメモリ 2 0 0にエア画像が記録されると同時に、 加算平均手段 2 0 1は上記エア画像を順次読み出して、 (数 2 ) で表 される加算平均演算を行う。
1 κ
η, = ZJ ( ) (" = 1〜 ' 111 = 1〜M)
(数 2)
加算平均手段 2 0 1によって平均エア画像が計算されると同時に、 オフセッ ト補正手段 2 0 2は上記平均エア画像を読み出して、 (数 3 ) で表されるオフセッ ト補正処理を行う。 . m = n, - m (" = l^N,m. = l〜ikf)
(数 3 ) なお、 上記演算においては、 オフセッ ト画像用メモリ 2 0 4に記録 されている平均オフセッ ト画像が参照される。オフセッ ト補正手段 2
0 2によって得られたオフセッ ト捕正後の平均エア画像は、エア画像 用メモリ 2 0 5に記録される。エア画像用メモリ 2 0 5は、図 3 ( C ) に示されるようなデータ構造を有し、 X線検出器 2の 1 フレーム分に 相当する N X M個の平均エア画像データを保存する。
エアキヤリブレーション処理は、被写体 3の撮影画像に対してエア キヤリブレーションを行い、 X線管 1より放射される X線エネルギー の空間分布や、 X線検出器 2の検出感度のむらを補正する処理である。 上記撮影画像は、撮影が行われる度にフレームメモリ 2 0 0に順次上 書きされる。フレームメモリ 2 0 0に撮影画像が記録されると同時に、 オフセッ ト捕正手段 2 0 2は上記撮影画像をフレームメモリ 2 0 0 より順次読み出して、 (数 4.)で表されるオフセット補正処理を行う。 ( ) = W-も腸 (" = 1〜N =\-M,k =\~K)
(数 4 ) なお、 オフセット捕正手段 2 0 2は、加算平均手段 2 0 1を介さず に直接フレームメモリ 2 0 0より撮影データを読み出す。また上記演 算においては、オフセッ ト画像用メモリ 2 0 4に記録されている平均 オフセット画像が参照される。オフセット補正手段 2 0 2による撮影 画像のオフセット補正が終了すると同時に、エアキャリ ブレーショ ン 手段 2 0 3は上記オフセッ ト補正後の撮影画像を読み出して、 (数
5 ) で表されるエアキャ リ ブレーショ ン処理を行う。
Jnm{k) = ln-^- (n = 1〜N, m = 1〜M, k = l〜iT)
(数 5) なお、 上記演算においては、 エア画像用メモリ 2 0 5に記録されて いる平均エア画像が参照される。エアキヤリブレーション手段 2 0 3 によって得られたエアキヤリブレーション後の撮影画像は、実測画像 用メモリ 1 0 1に記録される。エアキヤリブレーション処理における 上記一連の処理は、フレームメモリ 2· 0 0に撮影画像が記録される度 に K回繰り返して行われる。 実測画像用メモリ 1 0 1は、 図 3 (D) に示されるようなデータ構造を有し、 X線検出器 2の Kフレーム分に 相当する N XMXK個の撮影画像データを保存する。
図 4は、本発明の実施例 1に係る放射線断層撮影装置の補正テープ ル作成手段 1 0 2を説明するための図である。 また、 図 5は、 本発明 の実施例 1に係る放射線断層撮影装置の捕正テーブル作成方法を説 明するための図である。 以下、 図 4および 5を用いて捕正テーブル作 成手段 1 0 2における処理の手順について説明する。
既に説明したように、補正テーブル作成手段 1 0 2はキヤリブレー ショ ン撮影モードにおいて使用される。 キヤリブレーショ ン撮影モー ドにおいては、被写体 3として後述する較正用ファントムが配置され、 上記較正用ファン トムの撮影データが取得される。上記撮影データは 前処理手段 1 1 1によってエアキヤリブレーション処理を行った後 に、 実測画像用メモリ 1 0 1に記録される。 実測画像用メモリ 1 0 1 およぴシミ ュレーション画像用メモリ 1 0 3に記録されるデータは 同一のデータ構造を有している。実測画像用メモリ 1 0 1にはェアキ ヤリブレーション後の全撮影データ(実測画像) Jnm(k) (n = 1〜N、 m= l〜M、 k= l〜K) が記録される。 一方シミュレーショ ン画像
用メモリには、シミュレーション画像発生手段 1 0 6によって計算さ れた上記撮影データの理論値(シミユレーション画像もしくは計算画 像) J,nn (k) ( n = l〜N、 m = l〜M、 k= l〜K ) が記録される。 なお、上記シミュレーショ ン画像 J' nra (k)の計算方法については後述す る。上記実測画像とシミユレーション画像の各データは理想的には一 致するはずであるが、 実際には一致しない。 こ,れは X線検出器 2の入 出力特性が非線形性を有していること、 X線管 1から放射される X線 のエネルギーがスぺク トル分布を有しており、被写体中にて X線の線 質が変化してしまうこと(ビームハードニング効果)等の原因による。 このよ うな実測画像データと理論値との非線形な関係は、再構成され る放射線断層像中においてリングアーチファタ トゃダークバンドア 一チファク トの発生原因となり得るため、補正によって線形に戻す必 要がある。 このため、 補正テーブル作成手段 1 0 2は上記非線形性を 補正するための補正テーブルを作成する。
実測画像 Jnm (k)とシミュレーショ ン画像 J' nra (k)の関係は、 多項式等 の関数で近似できる。 図 5には、 上記多項式近似の例が示してある。 多項式近似では、 まず実測画像 Jnm (k)の値を横軸、 シミ ュレーショ ン 画像 J' nm (k)の値を縦軸とする
点が、 全ての k= 1〜Kについてグラフ上にプロッ トされる。 次に、 上記プロットが (数 6 ) に示される多項式関数によって近似される。
〜M)
. · · (数 6 ) なお、 上記近似には最小 2乗法等の公知の技術が用いられる。 上記 多項式関数の最大次数 Lは予め設定された所定の値が用いられる。た だし、最大次数 Lが 1 の場合は上記多項式関数が線形関数となるため、 実測画像データと理論値との非線形な関係を表すことができない。従
つて、 Lは 2以上とする必要があるが、 上記非線形成分を精度良く近 似するためには、 Lは 3以上とするのが望ましい。 Lが 3の場合、 数 6より上記多項式は3つの係数 anm (l)、 ann (2)、 anm (3)を有する。 従つ て、 最小 2乗法で上記 3つの係数を求めるためには、撮影回数 Kを 3 以上にする必要がある。 一般に、 上記多項式関数の最大次数 Lに対し て、 撮影回数 Kは L以上とする必要がある。 以上の処理により多項式 の係数 anra (L)、 anra (L- 1)、 · · · anra (1)の値を導出して、 捕正テーブル とする。
上記補正テーブルを作成するために、補正テーブル作成手段 1 0 2 はまず、実測画像用メモリ 1 0 1およびシミュレーション画像用メモ リ 1 0 3からそれぞれ実測画像 Jnm (k)およびシミ ュ レーショ ン画像 J,nn (k)を全ての k= 1〜Kに対して読み出して、 バッファメモリ 4 0 0に書きこむ。次に最小 2乗近似手段 4 0 1がパッファメモリ 4 0 0 に記録されたデータを読み出して数 6による多項式近似を行い、得ら れた係数 anra (L)、 anra (L- 1)、 · · · anra (1)を補正テーブル用メモリ 1 0 5に記録する。上記一連の処理は、全ての各検出画素(n、 m ) ( n = 1〜N、 m = 1〜M) に対して繰り返し行われる。 なお、 最小 2乗 近似手段 4 0 1は、専用演算器や汎用演算器を用いたソフトウエア処 理等で実現される。
図 6は、本発明の実施例 1に係る放射線断層撮影装置の信号強度捕 正手段 1 0 4を説明するための図である。本撮影モードにおいて取得 された被写体 3の撮影画像は、前処理手段 1 1 1によって上述のエア キヤリプレーション処理が行われた後に実測画像用メモリ 1 0 1に 記録される。上記エアキヤリブレーション処理は X線検出器 2から撮 影画像が取得される度に行われ、 kフレーム目 (k= l〜K ) の撮影 画像に対して得られたエアキヤリプレーション処理後の撮影データ
Jnm(k) (n= l〜N、 m= l〜M) が順次実測画像用メモリ 1 0 1に 書き込まれる。 上記書き込みが終了する度に、 多項式演算手段 6 0 1 は捕正テーブル用メモリ 1 05から検出画素 (n、 m) に対する多項 式の係数 anm(L)、 anra(L-l)、 · · · anm(l)の値を読み出してバッファメ モリ 6 0 2に記録する。 また、 多項式演算手段 6 0 1はエアキヤリブ レーショ ン処理後の撮影データ Jnm(k)、 および多項式の係数 anraa)、 ann(L- 1)、 · · · anra(l)をそれぞれ実測画像用メモリ 1 0 1およびバ ッファメモリ 6 0 2から読み出して、 数 6を用いて fnra (Jnm(k)) を計 算して信号強度の補正を行う。上記信号強度の補正は全ての各検出画 素 (n、 m) (n = l〜N、 m= l〜M) に対して繰り返し行われ、 その結果は画像再構成手段 1 0 7に入力される。なお多項式演算手段 6 0 1は、専用演算器や汎用演算器を用いたソフトウエア処理等で実 現される。
図 7は、本発明の実施例 1に係る放射線断層撮影装置のシミユレ一 ション画像発生手段 1 0 6における演算方法を説明するための図で ある。 特に、 図 7では較正用ファントムとして楕円ファントム 70 0 を使用した場合のシミュレーション画像発生方法について説明する。 既に説明したように、 図 7 (A) に示す直交座標系 XY Zは、 ガント リー 7に固定された静止座標系である。 X線発生点 Sは、 XY平面上 を回転移動し、 その回転中心は XY Z座標系の原点 Oと一致する。 X Y平面は、 X線検出器 2と交線 70 2で交わる。 楕円ファン トム 70 0は、楕円柱型の形状を有し、 その柱方向が Z軸と略一致するように 配置される。 楕円ファン トム 700は、 略均一な材質および密度で構 成される。楕円ファン トム 700の材質の代表例はポリエチレンであ るが、 アタリル等の他の物質でこれを代用してもよい。 以下では、 楕 円ファン トム 700の長軸方向、短軸方向、 およぴ柱方向の外形サイ
ズをそれぞれ 2 a、 2 b、 Hと表す。 2 a、 2 b、 Hの代表例は、 そ れぞれ 3 5 0 mm、 2 0 0 mm, 3 0 0 mmである。 楕円ファン トム 7 0 0と XY平面の交線 7 0 1は、 楕円形の形状を有する。
図 7 (B ) に示すように、 p q座標系は、 楕円フアン トム 7 0 0に 固定された座標系であり、その原点を交線 7 0 1で表される楕円の中 心〇,とする。 また、 p軸および q軸を上記交線 7 0 1で表される略 楕円形の長軸および短軸方向とする。 楕円ファン トム 7 0 0は、楕円 中心点 O'が X Y Z座標形の原点 O付近に位置すると同時に、. p軸が X軸と略一致するように配置される。 ただし、 一般に上記配置を精度 よく行うことは困難であるため、 楕円中心点 o,の XY平面上におけ る位置 (0,x、 O' y) は完全に (0、 0 ) とはならない。 また、 p軸 と X軸のなす角 φも完全に 0とはならなレ、。楕円フアントム 7 0 0の 位置を規定する上記パラメータ (0' x、 O' y) および ψの値は、 較正 用ファントム位置検出手段 1 0 8 よって、後述する方法で自動検出 される。
シミュレーション画像発生手段 1 0 6は、 kフレーム目(k= 1〜K) の撮影画像に対して得られたエアキヤリブレーション処理後の撮影 データ Jnn(k) ( n = l〜N、 m= l〜M) に対し、 その理論値 J,nra(k) を計算する。 上記理論値 J' nn(k)は、 (数 7 ) で表される。 (k) = pwnm (k) n = l〜N, m = 1〜M)
(数7) ただし、 wnra(k)は、 kフレーム目の撮影において X線発生点 Sから 放射されて X線検出器 2の検出画素位置(n、 m)に入射する X線ビー ム 7 0 3の、 楕円ファン トム 7 0 0中の通過距離とする。 また、 μ p は楕円ファン トム 7 0 0の X線吸収係数とする。いま X線ビーム 7 0 3のチャネル方向の放射角度を γ、 交線 7 0 2と検出画素位置(η、
m)との距離を hnn、 X線発生点 Sと回転中心 Oとの間の距離を d、 X 線発生点 Sと X線検出器 2の入力面との間の距離を Dと表すと、通過 距離 Wnm(k)は、 (数 8 ) で得られる。 脚 () (" = m = 1〜M)
(数 8) ただし、 (数 8 ) において、 Sp、 Sqは p q座標系上における X線発 生点 Sの位置であり、それぞれ (数 9 )および(数 1 0 )で表される。
S = d cos<9,,一◦ ) cos + id sm0k -( ' )sm^
(数 9)
S„ = -{d cos&
k -
(数 1 0) また、 (数 8 ) において、 t
p、 t
qは、 X線ビーム 7 0 3の単位方向 ベタ トルの; p軸、 q軸成分であり、 それぞれ (数 1 1 ) および (数 1
2 ) で表される。
-D (¾! !) tq = + y-&k)
(数 1 2)
なお、 (数 9 ) 〜 (数 1 2 ) において、 0
kは kフレーム目の撮影 時における X線発生点 Sの X軸に対する回転角度を表し、 (数 1 3 ) で示される。
(数 1 3)
シミュレーション画像発生手段 1 0 6は、 (数 7 ) 〜 (数 1 3 ) を 用いて、 撮影画像の理論値 J, nra(k)を全ての n= 1 〜N、 m= 1〜M、 k
= 1〜Kについて計算し、計算結果をシミユレーション画像用メモリ 1 0 3に記録する。 なお、 シミ ュレーショ ン画像発生手段 1 0 6は、 専用演算器や汎用演算器を用いたソフトウエア処理等で実現される。 図 8は、本発明の実施例 1に係る放射線断層撮影装置の較正用ファ ントム位置検出手段 1 0 8を説明するための図である。既に説明した ように、 楕円ファン トム 70 0は、 その中心位置 Ο'が ΧΥ平面の中 心 οにほぼ一致するように配置される。 ただし、 両者を高精度に一致 させる必要はなく、 両者のずれが、例えば数 c m以内に収まっていれ ばよいものとする。 このような荒い配置精度を許容することで、 較正 用ファントムの配置における作業工数を削減できる。較正用ファン ト ム位置検出手段 1 0 8は、上記配置における楕円ファン トム 70 0の 位置ずれ量を自動検出する。 上記位置ずれ量は、楕円ファントム 70 0の中心位置 0'、 および楕円ファン トム 700の長軸方向 (p軸方 向)の X軸に対する傾き角度 φによって規定される。検出された o'、 φの値は、シミユレーション画像発生手段 1 0 6によって参照される c CT値 2値化手段 8 0 0は、まず楕円ファン トム 700の CT再構 成画像を画像再構成手段 1 0 7より読み込む。以下では上記 CT再構 成画像の信号値を R (i、 j) と表す。 ただし、 i、 j (i= l〜I、 j = 1〜 J )はそれぞれ再構成画像の X軸方向および Y軸方向のピクセ ル位置を表す。 CT値 2値化手段 8 00は、 次に閾値用メモリ 8 0 3 に予め記録された閾値 Rtを参照し、 Rtと R (i、 j) の値を比較する。 このとき、 もし Rt R (i、 j) であれば R (i、 j) の信号値を 1に 書き換える。 また、 R (i、 j) <Rtであれば R (i、 j) の信号値を 0に書き換える。 なお閾値 Rtの値は、 楕円ファントム内部領域の C T値と外部領域の C T値との中間の値が予め設定される。 このため、 CT値 2値化手段 8 00によって 2値化された C T再構成画像は、楕
円ファン トム内部領域および外部領域においてそれぞれ信号値 1お よび 0をとる。 上記 2値化された CT再構成画像は、 重心計算手段 8 0 1および傾き計算手段 8 0 2によってそれぞれ読み出される。重心 計算手段 8 0 1は、楕円ファン トム 7 0 0の重心位置を計算する手段 である。 上記重心位置は楕円ファン トム 7 0 0の中心位置 O'と一致 し、 (数 1 4) によって計算される。 .
(数 14) ただし、 Xい を、 それぞれピクセル (i、 j) の XY座標系にお ける位置とする。傾き計算手段 8 0 2は楕円ファン トム 7ひ 0の長軸 方向の X軸に対する傾き角度 φを求める手段である。傾き計算手段 8
0 2は1 (i、 j) = 1を満たすピクセル位置 (Xi、 に対して、
(数 1 5) による 1次近時を行う。
Y=AX+B
(数 15) のとき、 上記傾き角度 φは、 (数 1 6) で計算できる φ = tan一1 A
(数 16 ) なお、 上記 1次近時には最小 2乗法等の公知の技術が使用される。 また較正用ファントム位置検出手段 1 0 8は、専用演算器や汎用演算 器を用いたソフトウエア処理等で実現される。
図 1 3は、本発明の実施例 1に係る放射線断層撮影装置による画質 改善効果の例を説明するための図である。 特に、 図 1 3 (A) は評価 用被写体 1 3 0 0の配置方法を示している。 また、 図 1 3 (B) およ
び (C) は、 それぞれキャリブレーショ ン処理無しおょぴ有りの場合 に取得された再構成画像の Y軸上のプロファイルを示している。評価 用被写体 1 3 0 0は直径 3 5 0 mmの円柱状の水ファン トムである。 撮影時においては、 X線管 1の管電圧を 1 2 0 k V、 管電流を 2 0 0 mAとし、 その他の撮影条件は、本実施例 1で説明したものと同一と した。 キヤリブレーション処理無しの場合、 得られたプロファイル 1 3 0 1の均一性が低く、 その CT値の差は最大 5 9 HUであった。 こ れに対して、 キヤリプレーション処理を行った場合、 得られたプロフ アイル 1 3 0 2の均一性が高く、 その CT値の差は最大 4. 8 HUで あった。 従って、本発明により再構成画像の CT値の導出精度が向上 し、 画質が改善されることが確認された。
以上、 実施例 1に係る放射線断層撮影装置を示したが、 本発明は、 実施例 1のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲 において種々変更しうることはいうまでもない。 例えば、 実施例 1に おいては楕円フア ントム 7 0 0のサイズが 1種類に限定されていた 力 S、図 9に示すような異なるサイズを有する複数の楕円ファン トム 7 0 0 a〜(!を用いて捕正テーブルを作成してもよい。 ただし、 このと き各楕円ファントム 7 0 0a~ dは、'それらの中心位置が例えば撮影 系の回転中心 O付近に配置されるものとする。また上記全ての楕円フ アン トム 7 0 0a〜 dは、 X線検出器 2の視野 9 0 0の内部に完全に 包含されるように配置されるものとする。 さらに、 捕正テーブル作成 手段 1 0 2は、 上記全ての楕円ファントム 7 0 0a〜 dに対して得ら れた較正用実測画像およびシミ ュレーショ ン画像に対して (数 6 ) に 示される多項式関数近似を行い、得られた係数 ann(L)、 anra(L - 1)、 · · · anra(l)を捕正テーブル用メモリ 1 0 5に記録するものとする。
(実施例 2)
以下では、本発明の実施例 2に係る放射線断層撮影装置について説 明する。 本発明の実施例 2に係る放射線断層撮影装置は、 較正用フ アントムとして実施例 1で使用した楕円フアントム 7 0 0の代わり に円筒ファン トム 1 000を使用する。本放射線断層撮影装置の上記 以外の構成に関しては、実施例 1の図 1〜 6で説明したものと同一で あるため、 説明を省略する。
図 1 0は、本発明の実施例 2に係る放射線断層撮影装置のシミュレ ーション画像発生手段 1 0 6における演算方法を説明するための図 である。 特に、 図 1 ◦では較正用ファントムとして円筒ファントム 1 0 0 0を使用した場合のシミュレーション画像.発生方法について説 明する。 既に説明したように、 直交座標系 X Y Zはガントリー 7に固 定された静止座標系である。 X線発生点 Sは XY平面上を回転移動し、 その回転中心は XY Z座標系の原点 Oと一致する。 X Y平面は X線検 出器 2と交線 1 0 0 2で交わる。円筒ファン トム 1 000は円柱型の 形状を有し、 その柱方向が Z軸と略一致するように配置される。 円筒 ファン トム 1 00 0は、 略均一な材質および密度で構成される。 円筒 ファン トム 1 000の材質の代表例はポリエチレンであるが、アタリ ル等の他の物質でこれを代用してもよい。 以下では、 円筒ファン トム
1 0 0 0の円方向、 および柱方向の外形サイズをそれぞれ 2 r、 Hと 表す。 2 r、 Hの代表例はそれぞれ 2 50 mm、 3 00 mmである。
円筒ファントム 1 000と XY平面の交線 1 00 1は、略円形の形 状を有し、 その円の中心を 0,とする。 円筒ファン トム 1 0 0 0は、 略円形の中心点 o,が、 回転軸すなわち XY Z座標形の原点 oとは異 なる位置 (0'x、 O'y) に配置される。
円筒ファン トム 1 000の位置を規定する上記パラメータ (0,x、
O'y) の値は、較正用ファントム位置検出手段 1 0 8によって自動検
出される。較正用ファントム位置検出手段 1 0 8による上記中心点 O ,の自動検出は、 図 8を用いて説明し こ方法と同一の方法で実現でき る。 ただし、 円筒ファン トム 1 0 0 0を対象とした場合、 楕円ファン トム 7 0 0の場合のように傾き角度 φを検出する必要がない。従って、 傾き計算手段 8 0 2による演算は省略され、重心計算手段 8 0 1によ つて検出された中心点 o,の位置のみがシミュレーション画像発生手 段 1 0 6によって参照される。
シミ ュレーショ ン画像発生手段 1 0 6は、 kフレーム目 (k = l〜 K)の撮影画像に対して得られたエアキヤリブレーション処理後の撮 影データ Jnffi(k) (n = l〜N、 m= l〜M) に対し、その理論値 J,nm(k) を計算する。 上記理論値 J'nm(k)は、 (数 1 7 ) で表される。 ) H ( ) ("=1〜N," 1〜M)
■■· (数 1 7) ただし、 wnm(k)は、 kフレーム目の撮影において X線発生点 Sから 放射されて X線検出器 2の検出画素位置 (n、 m) に入射する X線ビ ーム 1 0 0 3の、円筒ファントム 1 0 0 0中の通過距離とする。また、 は円筒ファン トム 1 0 0 0の X線吸収係数とする。 いま X線ビー ム 1 0 0 3のチャネル方向の放射角度を γ、交線 1 0 0 2と検出画素 位置 (n、 m) との距離を hnm、 X線発生点 Sと回転中心 Oとの間の 距離を d、 X線発生点 Sと X線検出器 2の入力面との間の距離を Dと 表すと、 通過距離 wnn(k)は、 (数 1 8 ) で得られる。
w
ただし、 (数 1 8 ) において、 S,x、 S,yはそれぞれ (数 1 9 ) およ ぴ (数 2 0 ) で表される。
Sx' = cos0k-Ox'
(数 19)
S^' dsinek-0 (数 20) また、 (数 1 8) において、 tx、—tyは X線ビーム 1 0 0 3の単位方 向べク トルの X軸、 Y軸成分であり、 それぞれ (数 2 1 ) および (数 2 2 ) で表される。 ""み (数 21) = ! 2 2 sin(; - + (数 22)
なお、 (数 1 9 ) 〜 (数 2 2 ) において、 e kフレーム目の撮 影時における X線発生点 Sの X軸に対する回転角度を表し、 (数 1 3) で示される。 シミュレーション画像発生手段 1 0 6は (数 1 7) 〜(数 2 2)を用ぃて、撮影画像の理論値 ,1) 1 を全ての11 = 1〜N、 m = 1〜M、 k = 1〜Kについて計算し、 計算結果をシミュレーショ ン画像用メモリ 1 03に記録する。 なお、 シミ ュレーション画像発生 手段 1 0 6は、専用演算器や汎用演算器を用いたソフトウエア処理等 で実現される。
以上、 実施例 2に係る放射線断層撮影装置を示したが、 本発明は、 実施例 2のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲 において種々変更しうることはいうまでもない。 例えば、 実施例 2に おいては、円筒ファントム 1 00 0のサイズが 1種類に限定されてい たが、図 1 1に示すような異なるサイズを有する複数の円筒ファント ム 1 00 0 a〜(!を用いて捕正テーブルを作成してもよい。 ただし、 このとき各円筒ファン トム 1 0 0 0 a〜dは、 それらの外周位置が
、例えば X線検出器 2の視野 90 0に略内接するように配置されるも のとする。 ただし上記全ての円筒ファントム 1 00 0 a〜(!は、 X線 検出器 2の視野 9 00の内部に完全に包含されるように配置される ものとする。 また、 補正テーブル作成手段 1 0 2は、 上記全ての円筒 ファン トム 1 0 0 0 a〜 dに対して得られた較正用実測画像および シミ ュレーション画像に対して (数 6) に示される多項式関数近似を 行い、 得られた係数 anm(L)、 anra(L- 1)、 · · · anm (1)を捕正テーブル用 メモリ 1 0 5に記録するものとする。
以上詳述した実施例 1および 2においては、それぞれ較正用ファン トムとして楕円ファン トム 7 0 0および円筒ファン トム 1 0 0.0を 使用したが、較正用ファントムの種類はこれだけに限定されるもので はない。 例えば、 較正用ファントムとして、 図 1 2 (A) に示される ような人体の腹部を模擬した.腹部用ファン トム 1 2 0 0や、 図 1 2 (B)に示されるような人体の胸部を模擬した胸部用ファントム 1 2 0 1を使用してもよい。 ただし、 胸部用ファントム 1 20 1には、 人 体中の肺野を模擬するためのホール 1 20 2および 1 2 0 3が設け てある。較正用ファン トムの形状を撮影対象である被写体 3の形状に 近づけることで、較正用ファン トムの撮影において発生する散乱 X線 量が被写体 3の撮影において発生する散乱 X線量に近づくため、信号 強度捕正手段 1 04による補正精度を向上できる。
また、 実施例 1および 2においては、 それぞれ 1種類の形状のみを 有する較正用ファントムを使用したが、それらのファン トムの併用に より取得した較正用実測画像およびシミュレーション画像を用いて 補正テーブル 1 0 5を作成しても良い。
また、実施例 1および/または実施例 2における校正用ファン トム と組み合わせて、その他の形状および Zまたはサイズの異なる種々の
較正用ファン トム (回転軸に垂直な断面が略円形で、 回転軸と略同じ 位置に配置されたファントムを含む)に対して取得した較正用実測画 像おょぴシミュレーション画像を用いて補正テーブル 1 0 5を作成 しても良い。
以上説明したように、本発明によれば、 ファン トムキヤリブレーシ ョン法において簡便な計測に基づいて較正用ファン トムの実測デー タのサンプルを多数取得するための放射線断層撮影技術を実現する もので、 これにより、 ファン トムキヤリブレーション法における多項 式近似の精度を向上し、 再構成画像の画質を向上できる。 産業上の利用可能性
本発明によれば、放射線断層撮影装置において、再構成画像中に発 生するアーチファク トを高い精度で低減し、再構成画像の画質を向上 が実現できる。