明細書
動物型糖鎖をもつ糖タンパク質の生産方法 技術分野
本発明は、.動物型糖鎖糖鎖をもつ糖タンパク質の生産方法に関する。 本発明は また、 動物型糖鎖付加機能をもつ植物細胞および植物、 より詳細には、 糖タンパ ク質の末端糖鎖部分にシアル酸を付加し得る糖付加機構をもつ植物細胞および植 物に関する。 背景技術
遺伝子組換え植物細胞を利用したバイォ医薬品などの有用タンパク質生産が注 目を浴びて来ている。 外来タンパク質を生産する宿主として植物細胞を利用する 利点は、遺伝子操作が比較的容易であること、動物病原の汚染を回避出来ること、 スケールアップに関して低コスト化が見込めること、 真核生物翻訳後修飾機構を 有することなどである。
翻訳後修飾のなかで、 N -結合型糖タンパク質糖鎖の合成および付加は、 生物 にとつて重要な反応の一つである。 生物における糖鎖の役割として、 タンパク質 の血中クリアランスからの保護、 細胞間接着への関与、 タンパク質のフォールデ イング、 タンパク質生理活性への関与などが挙げられる。 植物細胞を利用した動 物由来タンパク質の生産を考えた場合、 目的タンパク質には植物型糖鎖が付加さ れてしまうため、本来有する生理活性を示さない場合がほとんどである。そこで、 植物細胞の N—結合型糖鎖合成経路を改変し、 オリジナルの動物由来タンパク質 がもつ糖鎖の構造と類似の構造の糖鎖を有するタンパク質を生産させることは有 効な手段の一つである。 植物細胞と動物細胞では N—結合型糖鎖合成機構は類似 する部分もあるが、 細部は異なっている。 すなわち、 植物および動物両細胞にお いて GN2 M3という糖鎖コア構造 (GNはァセチルダルコサミン、 および Mはマ
ンノースをそれぞれ表す) が合成されるが、 その後、 動物細胞では糖鎖の非還元 末端にガラクト―スおよびシアル酸が付加することにより糖鎖はさらに伸長する。 これに対し、植物細胞では、還元末端 N—ァセチルダルコサミンへの a 1, 3 —フ コース結合あるいはコアマンノースへの) 3 1, 2 —キシロース結合が起こる。 ま た、 植物型糖鎖に見られるこれらの結合様式を示す糖が、 生体内において免疫原 性を示す報告もある。
動物型糖鎖において付加されるシアル酸 (N—ァセチルノイラミン酸、 N e u A c ) は、 糖タンパク質の機能にとって重要である。 シアル酸は、 インビボにお ける糖タンパク質の分解を防ぐことが知られている。 例えば、 エリスロポエチン のような糖タンパク質の糖鎖から、 シアル酸が除去されてガラクト―ス残基が露 出すると、 この糖タンパク質は、 血中のクリアランス機構に探知され、 肝臓にお いて速やかに分解されてしまう。 また、 動物型糖鎖において付加されるシアル酸 は、 セレクチンなどの関与する白血球ホーミングもしくはその他の細胞間接着、 ウィルスなどの病原の感染とも深く関わっていることが知られている。
しかし、 植物細胞には、 糖タンパク質糖鎖へのシアル酸付加機能はないと考え られている。 さらに、 植物細胞は、 シアル酸を合成する機能さえも備えていない といわれている。 したがって、 植物細胞を利用した有用糖タンパク質の生産を考 えた場合、 宿主が目的夕ンパク質糖鎖へのシアル酸付加機能を有することが望ま れる。 植物細胞がその糖タンパク質糖鎖ヘシアル酸を付加するためには、 少なく とも、 シアル酸合成酵素、 C MP—シアル酸合成酵素 (CM Pは 5 ' —シチジル 酸を表す) 、 C M P—シアル酸トランスポー夕一およびシアル酸転移酵素が必要 である。 また、 動物と微生物は、 それぞれ異なるシアル酸生合成経路をもつこと が知られている (図 1 ) 。 図 1の左に示されるのが動物におけるシアル酸生合成 経路である。 図示されるように、 動物においては、 N—ァセチルマンノサミンか ら、 N—ァセチルマンノサミンキナーゼ、 N—ァセチルノイラミン酸一 9 一ホス フエ一トシンターゼ、 N—ァセチルノイラミン酸ホスファターゼによって N—ァ
セチルノイラミン酸 (シアル酸) が生成される。 これに対し、 大腸菌では、 N— ァセチルマンノサミンおよびホスホエノ一ルビルビン酸 (PEP) から、 N—ァ セチルノイラミン酸シン夕一ゼ (neuB) によってシアル酸が生成される。 一般に、 以下の文献に示されるように、 遺伝子組換え植物細胞を得るための手 法は、 マイクロインジョクシヨン (Cr o s swayら、 B i oTe c hn i q u e s 4 : 320— 334 (1986) 、 エレクトロボ一レ一シヨン (R i g g sら、 P r o c. Na t l . Ac ad. S c i. USA 83 : 5602-5 606 (1986) 、 ァグロパクテリゥム媒介形質転換 (H i n c h e eら、 B i o t e c hno l ogy 6 : 915-921 (1988) ; I s h i d aら、 Na t u r e B i o t e c hno l o gy 14 : 745-750 (J une 1996) (トウモロコシ) 、 直接遺伝子移入 (P a s z k ows k iら、 E MBO J. 3 : 2717-2722 (1984) ; Haya s h imo t oら、 P l an t Phy s i o l 93 : 857-863 (1990) (イネ) 、 A g r a c e t u s, I nc. , Mad i s on, Wi s. および D upon t, I n c. , Wi lmi ng t on, De l . 社製のデバイスを用いた衝撃粒子加 速(S a n f o r d、米国特許第 4, 945, 050号)などが知られているが、 シアル酸合成酵素、 CMP—シアル酸合成酵素、 および CMP—シアル酸トラン スポーターを導入した植物細胞は知られていない。 発明の開示
本発明は、 上記従来の課題を解決し、 動物型糖鎖構造をもつ糖タンパク質を生 産するために、 糖タンパク質の糖鎖の非還元末端にシアル酸を付加し、 動物型糖 鎖構造をもつ糖タンパク質を産生し得る植物細胞を提供する。
本発明者らは、 シアル酸合成酵素、 そして CTPおよび N—ァセチルノイラミ ン酸から、 シアル酸転移酵素の基質である CMP—シアル酸を合成する CMP— シアル酸合成酵素 (CSS) 、 および糖鎖合成の場であるゴルジ
体内へ CMP—シアル酸を細胞質側から輸送する役割を担う C M P—シアル酸ト ランスポーター (CST) に注目した。 シアル酸合成酵素および CMP—シアル 酸合成酵素 (CSS) を生産する植物培養細胞を構築することが出来れば、 培養 液中にシアル酸合成酵素 (CSS) の基質 (前駆体) を添加することで植物細胞 内においてシアル酸および CMP—シアル酸が合成され、 さらには、 CMP—シ アル酸トランスポーター (CST) 生産能を有する植物細胞において、 CMP— シアル酸がゴルジ体内へ取り込まれることを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明は、 シアル酸合成酵素、 CMP—シアル酸合成酵素 (CSS) 、 および CMP—シアル酸トランスポーター (CST) からなる群から選択される少なく とも 1つのタンパク質をコードする遺伝子を植物に導入し、 植物内の糖鎖付加経 路を改変し、 植物内で動物型糖鎖構造を発現する方法、 それによつて得られる植 物細胞および植物を提供する。
本発明は、 動物型糖鎖をもつ糖タンパク質の生産方法に関し、 この方法は、 糖 鎖の非還元末端にシアル酸を付加し得る酵素の遺伝子、 および異種糖夕ンパク質 の遺伝子を導入して形質転換された植物細胞を得る工程、 該植物細胞を培養する 工程、 および 該植物細胞の培養液を回収する工程を包含する。
上記動物型糖鎖をもつ糖タンパク質は、 コア糖鎖および外部糖鎖を含み、 該コ ァ糖鎖が複数のマンノースおよびァセチルダルコサミンから本質的になり、 該外 部糖鎖が非還元末端ガラクトースを含む末端糖鎖部分を含み得る。
上記外部糖鎖は直鎖状構造を備え得る。
上記外部糖鎖は分岐状構造を備え得る。
上記分岐糖鎖部分は、 モノ、 ノ ィ、 トリ、 またはテトラ構造を備え得る。
本発明はまた、 糖タンパク質の糖鎖の非還元末端にシアル酸を付加し得る糖付 加機構を備えた植物細胞に関し、 この植物細胞は、 シアル酸合成酵素、 CMP— シアル酸合成酵素 (CSS) 、 および CMP—シアル酸トランスポーター (CS T) からなる群から選択される少なくとも 1つのタンパク質をコードする遺伝子
で形質転換されている。
本発明はまた、 シアル酸の前駆体を取り込み得る植物細胞に関し、 この植物細 胞は、 シアル酸合成酵素、 CMP—シアル酸合成酵素 (CSS) 、 および CMP —シアル酸トランスポー夕一 (CST) 力、らなる群から選択される少なくとも 1 つのタンパク質をコードする遺伝子で形質転換されている。
本発明はまた、 シアル酸を取り込み得る植物細胞に関し、 この植物細胞は、 シ アル酸合成酵素、 CMP—シアル酸合成酵素 (CSS) 、 および CMP—シアル 酸トランスポーター (CST) からなる群から選択される少なくとも 1つのタン パク質をコードする遺伝子で形質転換されている。
本発明はまた、 シアル酸を取り込み得るべシクルを有する植物細胞に関し、 こ の植物細胞は、 シアル酸合成酵素、 CMP—シアル酸合成酵素 (CSS) 、 およ び CMP—シアル酸トランスポーター (CST) 力らなる群から選択される少な くとも 1つのタンパク質をコードする遺伝子で形質転換されている。
本発明はまた、 上記植物細胞から再生された植物に関し、 この植物は、 動物型 糖鎖付加機能をもち、 より詳細には、 糖タンパク質の末端糖鎖部分にシアル酸を 付加し得る糖付加機構をもつ。 図面の簡単な説明
図 1は、 動物と微生物におけるシアル酸生合成経路を示す図である。
図 2は、 本発明のシアル酸合成酵素が導入された植物において合成されたシァ ル酸を示す図である。
図 3は、 本発明のシアル酸合成酵素が導入された植物において合成されたシァ ル酸を示す図である。
図 4Aは、 本発明の CMP—シアル酸合成酵素 (CSS) が導入された植物に おける CMP—シアル酸の合成を示す図である。
図 4Bは、 図 4 Aと組み合わせて、 本発明の CM P—シアル酸合成酵素 (CS
S) が導入された植物における CMP—シアル酸の合成を示す図である。 · 図 5は、 本発明の CM P—シアル酸合成酵素 (CSS) が導入された植物にお ける CMP—シアル酸の合成を示す図である。
図 6は、 本発明の CM P—シアル酸合成酵素 (CSS) が導入された植物にお ける CMP—シアル酸の合成を示す図である。
図 7は、 本発明の CMP—シアル酸合成酵素が導入された植物における、 糖夕 ンパク質へのシアル酸の転移を示す図である。 同位体標識したシアル酸を基質と して合成された CMP—シアル酸を、 市販のヒト由来シアル酸転移酵素を用いて ァシァ口フェツインに転移させた。
図 8は、 本発明の CMP—シアル酸卜ランスポー夕一 (CST) が導入された 植物における、 CSTの発現を示す図である。
図 9は、 本発明の CMP—シアル酸トランスポーター (CST) が導入された 植物における、 トランスポーターの発現を示す図である。 Aは、 CSTの発現を、 そして Bは、 UDP—ガラクトーストランスポーターの発現をそれぞれ示す。 図 10Aは、 本発明のトランスジエニック植物から得た粗製酵素液のシアル酸 転移反応を示す H P L Cプロフィールを示す図である。
図 10Bは、 本発明のトランスジエニック植物から得た粗製酵素液のシアル酸 転移反応を示す HP L Cプロフィールを示す図である。
図 11Aは、 本発明のトランスジエニック植物から得た粗製酵素液のシアル酸 合成反応を示す図である。
図 11Bは、 本発明のトランスジエニック植物から得た粗製酵素液のシアル酸 合成反応を示す図である。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明を詳細に説明する。
本発明では、 当該分野で公知の遺伝子工学的手法、 生化学的手法、 免疫学的手
法などを用い得る。 これらの手法は、 市販のキット、 抗体、 標識物質などを使用 して行い得る。
本発明の方法は、 動物型糖鎖付加機能をもつ植物細胞に関する。 本明細書で用 いる用語 「動物型糖鎖」 は、 シアル酸を含む糖鎖を意味する。 好ましくは、 動物 型糖鎖は分岐構造を有する。
植物細胞は、 任意の植物細胞であり得る。 植物細胞は、 培養細胞、 培養組織、 培養器官、または植物体のいずれの形態であってもよい。好ましくは、培養細胞、 培養組織、 または培養器官であり、 より好ましくは培養細胞である。 本発明の生 産方法に使用され得る植物種は、遺伝子導入を行い得る任意の植物種であり得る。 本発明の生産方法に使用され得る植物種の例としては、 ナス科、 イネ科、 アブ ラナ科、 パラ科、 マメ科、 ゥリ科、 シソ科、 ユリ科、 ァカザ科、 セリ科の植物が 挙げられる。
ナス科の植物の例としては、 N i c o t i an a、 So l an um、 D a t u r a.Lyc ope r s i o n、または P e t u n i aに属する植物が挙げられ、 例えば、 タノ コ、 ナス、 ジャガイモ、 トマト、 トウガラシ、 ペチュニアなどを含 む。 ' '
イネ科の植物の例としては、 〇r yz a、 Ho r d e num、 S e c a l e、 S c c c h a r urn, Ec h i no c h l o a、 または Z e aに属する植物が挙 げられ、 例えば、 イネ、 ォォムギ、 ライムギ、 ヒェ、 モロコシ、 トウモロコシな どを含む。
アブラナ科の植物の例としては、 Raph anu s、 B r a s s i c a、 A r ab i do p s i s、 Wa s ab i a、 または C a p s e 1 1 aに属する植物が 挙げられ、 例えば、 大根、 アブラナ、 シロイヌナズナ、 ヮサビ、 ナズナなどを含 む。
パラ科の植物の例としては、 〇r unu s、 Ma l u s、 Pynu s、 Fr a g a r i a、 または Ro s aに属する植物が挙げられ、 例えば、 ウメ、 モモ、 リ .
ンゴ、 ナシ、 オランダイチゴ、 バラなどを含む。
マメ科の植物の例としては、 G l yc i ne、 V i gn a、 P h a s e o 1 u s、 P i s um、 V i c i a、 Ar a ch i s、 Tr i f o l i um、 A 1 p h a 1 f a、 または Me d i c a g oに属する植物が挙げられ、 例えば、 ダイズ、 ァズキ、 インゲンマメ、 エンドゥ、 ゾラマメ、 ラッカセィ、 クローパ、 ゥマゴャ シなどを含む。
ゥリ科の植物の例としては、 Lu f f a、 Cu c u r b i t a, または Cu c umi sに属する植物が挙げられ、 例えば、 へチマ、 カポチヤ、 キユウリ、 メロ ンなどを含む。
シソ科の植物の例としては、 Lav andu l a Me n t ha, または P e r i l l aに属する植物が挙げられ、 例えば、 ラベンダー、 ハツ力、 シソなどを 含む。
ユリ科に属する植物の例としては、 A l 1 i um、 L i 1 i um、 または Tu 1 i p aに属する植物が挙げられ、 例えば、 ネギ、 ニンニク、 ユリ、 チューリツ プなどを含む。
ァカザ科の植物の例としては、 S p i n a c i aに属する植物が挙げられ、 例 えば、 ホウレンソゥを含む。
セリ科の植物の例としては、 Ange l i c a、 Dauc u s、 C ryp t o t aen i a,または Ap i t umに属する植物が挙げられ、例えば、シシゥド、 ニンジン、 ミツパ、 セロリなどを含む。
本発明の生産方法に用いられる植物は、 好ましくはタバコ、 トマト、 ジャガイ モ、 イネ、 トウモロコシ、 ダイコン、 ダイズ、 エンドゥ、 ゥマゴヤシ、 およびホ ウレンソゥであり、 より好ましくは、 夕パコ、 トマト、 ジャガイモ、 トウモロコ シ、 およびダイズである。
本発明で用いられる用語 「シアル酸合成酵素をコードする遺伝子」 は、 N—ァ セチルマンノサミンから N—ァセチルムラミル酸 (シアル酸) を生成し得る任意
の酵素をコードする遺伝子を意味する。 このような酵素をコードする遺伝子は任 意の生物に由来し得る。 このような酵素は、 大腸菌 (06118 & 1111受託番号1;
05248. 1および AF 36 1 371. D. S t r e p t oc o c c u s a g a l a c t i a e, Ne i s s e r i a me n i n g i t i d e s (Ge n
B an k受託番号 AE 0023 6 6、 NMM950 5 3、 および NMU4074
0) 、 Ae r omona s c a v i a e (Gen B a n k受託番号 AF 126
256) 、 Campy 1 ob a c t e r j e j u n i (G e n B a n k受託番 号 AY 034084および AF 2 15659) 、 P s eud omon a s a e r ug i no s a (Ge nB a n k受託番号 AF 498419. l) 、 De s u 1 f o v i b r i o d e s u l f u r i c an s (G e n B a n k受託番号 N Z— AAB 101000040) Ba c i l l u s s ub t i l i s (Ge n B a n k受託番号 B SUB 0020) Rhodob a c t e r c a p s u 1 a t u s (Ge n B a n k受託番号 R CU 57682) 、 Cy t oph a g a hu t c h i n s on i i (Ge nB a n k受託番号 N Z一 AAB E 0100 0064. 1) 、 C h 1 o r o b i urn t e p i d um (G e n B ank受託 番号 A E 012850. 1) 、 Le p t o s p i r a . i n t e r r og an s (Ge nB a n k受託番号 AE 01 1425. 1) , S t r e p t omy c e s c o e 1 i c o l o r (Ge nB a n k受託番号 A 3 (2) および AL 939 121) He l i c ob ac t e r py l o r i (Ge nBank受託番号 HP Y418352および HP Y418354) 、 Z ymomo n a s mo b i 1 i s (Ge nB a n k受託番号 AY 083905. 1) , Rhodo s p i r i l l um r ub r um (Ge nBan k受託番号 N Z— AAAG 0100 0017. 1) などに存在することが知られている。' これらアミノ酸配列はそれ ぞれ約 33 %以上の相同性を有している。 その他に、 N—ァセチルマンノサミン から N—ァセチルノイラミン(シアル酸)を生成し得る酵素については、例えば、 G l yc ob i o l ogy 1997 J u l . 7 (5) : 697— 701頁、
Pu r f i c a t i on and c h a r ac t e r i z a t i on o f t he E s ch e r i c h i a c o l i K 1 n e u B g en e p r o duc t N-a c e t y l neu r ami n i c a c i d s y n t h e t a s e . 、 Vann WF, Tava r e z J J, C r owl ey J, V i mr E, S i l ve r RP. を参照のこと。 なお、 「シアル酸合成酵素 をコードする遺伝子」 は、 市販のものを購入してもよいし、 これら植物での発現 に適切なように改変して用いてもよい。 このような方法は当業者に周知である。 本発明で用いられる 「CMP—シアル酸合成酵素 (CSS) をコードする遺伝 子」 もまた同様に、 CTPと N—ァセチルノイラミン酸とから CMP—シアル酸 を生成し得る任意の酵素をコードする遺伝子を意味する。 このような酵素は、 M u s mu s c u 1 u s (Ge n B a n k受託番号 NM— 009908) 、 D r o s oph i l a me l anog a s t e r (Ge nBan k受託番号 NM― 168828) 、 Le p t o s p i r a i n t e r r o g an s (G e n B a n k受託番号 AE 01 1339. 1および AE 01 1338. l) 、 〇nc o r hync hu s my k i s s (G e n B a n k受託番号 AB 027414. 1 )、 S t r e p t oc oc c u s ag a l a c t i a e (G e n B a n k受託番号 AB 028896. 2) 、 E s c he r i ch i a c o l i (G e nB a n k 受託番号 J 05023) 、 C amp y 1 o b a c t e r j e j un i (Ge n B a n k受託番号 AF 215659. 1および AF 167344. 1、 AF 13 0984) 、 Ne i s s e r i a men i n'g i t i d e s (Ge nBank 受託番号 U 60146) 、 Me t h ano s a r c i n a a c e t i v o r a n s s t r, (Ge nB a n k受託番号 C 2 A AE 01 1088 ) に存在す ることが知られている。 本発明で用いる CM P—シアル酸合成酵素 (CSS) を コードする遺伝子もまた、 任意の動物種に由来し得、 哺乳動物に由来することが 好ましく、 ヒトに由来することがより好ましい。 CS Sをコードする遺伝子は、 この酵素をコ一ドすることが知られているヌクレオチド配列を用いて任意の動物
細胞から単離してもよいし、 市販のものを購入してもよいし、 これらを植物での 発現に適切なように改変して用いてもよい。 このような方法は当業者に周知であ る。
本発明で用いられる用語 「CMP—シアル酸トランスポー夕一 (CST) をコ ードする遺伝子」 もまた同様に、 植物細胞の細胞質からコルジ体中に CM—シァ ル酸を輸送し得る任意のタンパク質をコードする遺伝子を意味する。 このような 酵素は、 Cr i c e tu l us gr i seu s (GenBan k受託番号 Y 1 2074)、Mus mus cu l us (GenBan k受託番号 Z 71268)、 マウス (Ge nB a n k受託番号 BC 012252. 1および NM— 01189 5. 1) 、 Caeno rhabd i t i s e 1 e g a n s (GenBank受 託番号 NM— 070047. 1および NM— 070046. l) 、 〇ryz i a s 1 a t i p e s (G e n B a n k受託番号 A J 510197. 4) 、 Can i s f am i 1 i a r i s (G e n B a n k受託番号 BM427609. 1お よび AY 064407. l) 、 Dro s oph i l a me l anogas t e r (GenB ank受託番号 B 1371925、 1、 B I 635065. 1、 お よび B 1640101. l) 、 Ga l l us ga l l us (GenBank受 託番号 BG713468. 1、BM427609、および BQ 126114. 1)、 Zebr a f i s (GenBan k受託番号 BE 557523. 1) 、 Phy s c om i t r e 1 1 a pa t ens (G e n B a n k受託番号 AW7389 91) 、 ラット (GenBan k受託番号 AW 141112および AA9256 11. 1)、 P s eudop 1 euronec t e s ame r i. c anus (G e nB an k受託番号 AW013208. 1) に存在することが知られている。 CSTをコードする遺伝子もまた、 この酵素をコードすることが知られているヌ クレオチド配列を用いて任意の動物細胞から単離してもよいし、 市販のものを購 入してもよいし、 これらを植物での発現に適切なように改変して用いてもよい。 このような方法は当業者に周知である。
本明細書で用いる用語 「遺伝子」 は、 通常、 構造遺伝子部分を意味する。 遺伝 子には、 植物での発現に適切なように、 プロモーター、 オペレーター、 および夕 —ミネ一夕—などの制御配列が連結され得る。
本明細書で用いる用語 「異種糖タンパク質」 は、 本発明に用いられる植物にお いて本来発現されない糖タンパク質を意味する。
異種糖タンパク質の例としては、 酵素、 ホルモン、 サイト力イン、 抗体、 ワク チン、 レセプ夕一、 血清タンパク質などが挙げられる。 酵素の例としては、 西洋 ヮサビペルォキシダーゼ、 キナーゼ、 ダルコセレブ口シダ—ゼ (g 1 u c o c e r e b r o s i d a s e) 、 アルファ—ガラクトシダ—ゼ、 フイターゼ、 TP A (t i s s ue— t yp e p l a smi noge n a c t i v a t o r) 、
HMG— C o Aレダクターゼ (HMG— CoA r e duc t a s e) などが挙 げられる。 ホルモンおよびサイト力インの例としては、 エンケフアリン、 インタ —フエロンひ、 β, ァ、 GM—CSF、 G— CSF、 絨毛性性腺刺激ホルモン、 インターロイキン一 2、 4、 6、 12、 インターフェロン一べ一夕、 インターフ エロンーガンマ、 エリスロポイエチン、 血管内皮細胞増殖因子 (V a s c u 1 a r e nd o t he l i a l g r owt h f a c t o r) 、 ヒト絨毛性ゴナ ドトロピン (HCG) 、 黄体形成ホルモン (LH) 、 甲状腺刺激ホルモン (TS H) 、 プロラクチン、 卵胞刺激ホルモンなどが挙げられる。 抗体の例としては、 I gG、 s c Fvなどが挙げられる。ワクチンの例としては、 B型肝炎表面抗原、 口夕ウィルス抗原、 大腸菌ェンテロトキシン、 マラリア抗原、 狂犬病ウィルス r ab i e s v i r u sの Gタンパク質、 H I Vウィルス糖タンパク質(例えば、 gp 120) などが挙げられる。 レセプターおよびマトリックスタンパク質の例 としては、 EGFレセプター、 フイブロネクチン、 a; 1—アンチ卜リブシン、 凝 固因子 V I I Iなどが挙げられる。 血清タンパク質の例としては、 アルブミン、 補体系タンパク質、 プラスミノ—ゲン、 コルチコステロイド結合グロブリン (c o r t i c o s t e r o i d— b i nd i ng g 1 o b u 1 i n) 、 スロキシ
ン結合グロブリン (Th r ox i ne— b i nd i ng g 1 o b u 1 i n) > プロテイン C (p r o t e i n C) などが挙げられる。
「異種糖タンパク質の遺伝子」 は、 目的の異種糖タンパク質をコードすること が知られているヌクレオチド配列を用いて任意の細胞から単離してもよいし、 市 販のものを購入してもよいし、 これらを植物での発現に適切なように改変して用 いてもよい。
シアル酸合成酵素、 CS Sおよび CSTをコードする遺伝子、 ならびに異種糖 タンパク質の遺伝子は、 当該分野で公知の方法により、 植物細胞へ導入される。 これらの遺伝子は、 別々に導入してもよいし、 同時に導入してもよい。 前述の文 献に加え、 以下の文献が、 種々の植物に遺伝子を導入する方法を開示している。
We 1 s s i n g e r e t a 1. , Annu a 1 Rev. Ge ne t.
22 : 4 2 1 ― 477 (198 8) ; S a n f o r d e t a 1. , P a r t i c u 1 a t e S c i e n c e and Te c hn o 1 o gy 5. 27-
37 9 1 9 8 7) (夕マネギ); : S v a b e t a 1. , P r o c . N a t 1.
A c a d S c i . USA 8 7 : 8526-8530 (1990) (タパコク ロロプラスト); C h r i s t o' u e t a l .., P l an t Phy s i o l .
8 7 : 67 1 - 674 (1988) (ダイズ) ; Mc C a b e e t a 1. , B i o/Te c h no 1 o gy 6. 923— 926 (1988) (ダイズ); K 1 e i n e t a l . , P r o c. Na t 1. Ac ad. S c i. USA, 85 :
4 305 - 43 09 (1988) (卜ゥモロコシ) ; K 1 e i n e t a l . ,
B i o/T e c hno l ogy 6 : 559-563(198 '8') '(トウモロコシ);
K 1 e i n e t a 1. , P l an t Phy s i o l . 91 : 440— 44
4 (198 8) (トウモロコシ) ; F r omm e t a 1. , B i o/Te c h n o 1 o g y 8 : 833-839 (1990) ;および G o r d o n— K am m e t a 1 . , P l an t Ce l l 2 : 603— 618 ( 1990 ) (卜 ゥモロコシ); K o z i e 1 e t a l . , B i o t e chno l ogy
1 94— 200 (1993) (トウモロコシ); S h imamo t o e t a 1., Na t u r e 338 : 274-277 (1 989) (イネ) ; Ch r i s t ou e t a l . , B i o t e c hn o l o gy 9 : 957-962 (1 99 1) (イネ) ; D a t t a e t a 1. , B i o l /Ύ e c hno l o gy 3 : 7 36— 740 (1990) (イネ) ; Eu r o p e an P a t e n t Ap p l i c a t i on EP 0 332 58 1 (力モガヤなどのイネ科の植物) ; V a s i 1 e t a l . , B i o t e c hn o l o gy 1 1 : 1 553— 1 5 5 8 (1993) (コムギ) ; We e k s e t a 1. , P l an t P hy s i o l . 102 : 1077- 1084 (1993) (コムギ) ; Wan e t a l . , P l an t Phy s i o l . 104 : 37-48 (1 994) (ォ ォムギ) ; J ahn e e t a 1. , Th e o r . Ap p l . Ge n e t. 8 9 : 525 -533 (1 994) (ォォムギ) ; Umb e c k e t a 1. , B i o /Te c hno l o gy 5 : 263-266 (1 987) (コットン) ; C a s a s e t a l . , P r o c. Na t l . Ac ad. S c i. USA 9 0 : 1 1 2 12- 1 1216 (De c em e r 1993) (ソルガム) ; S ome r s e t a 1. , B i o/T e c hno l o gy 10 : 1 589— 1 594 (De c emb e r 1 992) (ォ—トムギ) ; To r b e r t e t a 1. , P l an t Ce l l Re p o r t s 14 : 635-640 (1 995) (ォ—トムギ) ; We e k s e t a 1. , P l an t P hy s i o 1. 1 02 : 1077 - 1084 (1993) (コムギ) ; Ch ang e t a l . , W094/13822 (コムギ) および N e r a e t a 1. , Th e P l an t J ou r n a l 5 : 285 -297 (1994) (コム ギ) 。
微粒子銃によって、 トウモロコシ中に組換え DN A分子を導入するために特に 好適な実施形態は、 Ko z i e l e t a l . , B i o t e c hno l o gy 1 1 : 194-200 (1993) , H i l l e t a 1. , Eu p h y t
i c a 85 : 1 19— 123 (1995)および Ko z i e 1 e t a 1. , Ann a 1 s o f t he ew Yo r k Ac ad emy o f S c i e nc e s 792 : 164— 171 (1996) に記載されている。 トウモ ロコシについて別の好適な実施形態であるプロトプラスト形質転換法は、 EP 0 292 435に記載されている。 植物の形質転換は、 単一の DN A種または 複数の DNA種 (すなわち同時形質転換) を用いて行うことができる。
遺伝子が導入された植物においては、 当該分野で公知の方法により、 導入され た遺伝子の発現が確認され得る。 このような方法として、 銀染色、 ウエスタンブ ロッテイング、 ノザンハイブリダィゼ—シヨン、 酵素活性の検出などが挙げられ る。 導入された遺伝子を発現する細胞は、 形質転換細胞である。
得られた形質転換植物細胞は、 培養細胞の状態で維持されてもよいし、 特定の 組織または器官へと分化させてもよいし、 完全な植物体に再生させてもよい。 あ るいは、 完全な植物体から得られる、 種子、 果実、 葉、 根、 茎、 花などの部分で あってもよい。
形質転換植物細胞の培養、 分化および再生のためには、 当該分野で公知の手法 および培地が用いられる。 このような培地には、 例えば、 Mu r a s h i g e— S k o o g (MS) 培地、 GaMb o r g B 5 (B) 培地、 Wh i t e培地、 N i t s c h&N i t s c h (N i t s c h) 培地などが含まれるが、 これらに 限定されるわけではない。 これらの培地は、 通常、 植物生長調節物質 (植物ホル モン) などが適当量添加されて用いられる。
また、 動物型糖鎖を持つ糖タンパク質の生産のためには、 形質転換植物細胞が 増殖し、そして所望の遺伝子産物を生産する限り、基本的には、炭素源、窒素源、 およびビタミン類、 塩類のような植物細胞の生育に必要な微量栄養素を含む任意 の組成の培養培地を用いることができる。 生産された異種タンパク質の安定化、 および異種タンパク質を効率良く分泌するために、 ポリビニルピロリドン、 タン パク質分解酵素阻害剤などを添加してもよい。
形質転換植物細胞により生産された植物型の糖鎖をもつ糖夕ンパク質は、 培養 された植物細胞、 植物体、 または植物細胞の培養液から単離され得る。
植物細胞の培養液からの糖タンパク質の単離は、 当業者に周知の方法を用いて 実施され得る。 例えば、 塩析 (硫酸アンモ ゥム沈殿、 リン酸ナトリウム沈殿な ど)、溶媒沈殿(アセトンまたはエタノールなどによるタンパク質分画沈殿法)、 透析、 ゲル濾過、 イオン交換、 逆相等のカラムクロマトグラフィー、 限外濾過、 高速液体クロマトグラフィー (HPLC) 等の手法を単独で、 または組み合わせ て用いて、 培養液から糖タンパク質を精製して単離し得る。
あるいは、 本発明の糖タンパク質は、 植物細胞または植物体から単離または抽 出されてもよい。 植物細胞または植物体から単離または抽出する方法は、 当該分 野で周知である。
さらには、 本発明の糖タンパク質は、 形質転換細胞中に含まれたままの状態で 食用に供され得る。 本発明の糖タンパク質は、 動物型の糖鎖構造を有するので、 抗原性を有さず、 それゆえ、 ヒトを含む動物への投与に適している。
以下に、 本発明の植物細胞を得るための代表的な手法を例示する。
1. シアル酸合成酵素をコードする遺伝子を植物に導入する植物感染用べクタ 一の構築。
本発明の植物細胞を得るために、 まず、 シアル酸合成酵素を植物細胞にクロー ニングする。 シアル酸合成酵素をコードする遺伝子として、 当業者に公知である 大腸菌由来のシアル酸合成酵素、例えば、 E s c he r i c h i a c o l i K 1株の n euB遺伝子を用いることができる。 n euB遺伝子を、 例えば、 植物 発現用プロモータ一であるカリフラワーモザイクウィルス 35 Sプロモーターの 制御下に配置することにより構築した植物外来遺伝子発現用カセッ卜を、 既存の ベクタ一 pB I 121に導入し、植物感染用ベクター pB I 121— CNを得る。 なお、 本明細書で用いる用語 「既存」 は、 C 1 o n t e c h、 CAなどの製造会 社から市販されているか、アメリカンタイプカルチャーコレクション(AT CC)
などの寄託機関などから入手可能であることを意味する。 本明細書で用いる用語 「既存」 はまた、 これら既存のものから、 当業者に公知の方法を用いて改変され たものをも包含する意味で用いられる。
2. CS Sをコ一ドする遺伝子、 および CSTをコードする遺伝子を植物に導 入する植物感染用ベクターの構築。
次いで、 CSSおよび CSTをコードする遺伝子を植物細胞に導入する。 CS Sおよび CSTをコードする遺伝子として、 例えば、 公知であるヒト腎臓由来 C SS (以下 hCSSと称する) 遺伝子およびヒト腎臓由来 CST (以下 hCST と称する) 遺伝子を用いることができる。 これら遺伝子を、 それぞれ、 植物発現 用プロモータ一であるカリフラワーモザイクウィルス 35 Sプロモ一ターの制御 下に配置し、 抗生物質ハイグロマイシン耐性遺伝子を保持する既存のプラスミド p GP TV— HP Tにそれぞれ導入し、 プラスミド pGPTV— HPT— hCS Sおよび p GPTV— HPT— hCSTを得る。
3. シアル酸合成系遺伝子群を保持するベクターの構築。
α2, 6—シアル酸合成酵素 (ST) 遺伝子 (例えばヒト由来 ST) を、 カリ フラワーモザイクウィルス 35 Sプロモーターの制御下に配置した既存のカセッ 卜を、 上記のヒト由来 hCS S遺伝 :?を導入した植物感染用ベクターに挿入し、 植物発現用べクタ一 P GP TV— HPT— h C SS- S Tを構築する。次いで、 この pGPTV— HPT— hCSS— hSTから、 上記の大腸菌由来 n e u B遺 伝子の植物感染用ベクター pB I 121— CN、 および上記の h C S T遺伝子植 物感染用べクタ一 P GPTV— HPT— hCSTを用い、 p GPTV— HPT— h CS S— h ST— CNまたは p GPTV— HPT— hCS S— h ST— CN— hCSTを構築する。 なお、 ここで、 HPT、 hCS S h ST. CN、 h CS Tは、八ィグロマイシン耐性遺伝子、ヒト由来 CM P—シアル酸合成酵素遺伝子、 ヒト由来 α 2, 6—シアル酸合成酵素遺伝子、 シアル酸合成酵素遺伝子、 ヒト由' 来 CMP—シアル酸トランスポーター遺伝子をそれぞれ表し、 記載の順序に従つ て、 植物感染用ベクター中に導入されている。
4. シアル酸合成系遺伝子群を発現する植物体の構築。
上記の植物感染用ベクター pGPTV— HPT—hCS S— hST— CNまた は pGPTV— HPT— hCSS— hST— CN— hCSTを、 Ag r ob a c t e r i urn t ume f a c i e n s L B A 4404株に導入し、 植物感染 用ァグロパクテリゥム LB A4404— HPT— hCS S— hST—CNあるい は LBA4404— HPT— hCSS— hST— CN— hCSTを得る。
次いで、 これらの植物感染用ァグロパクテリゥムを用い、 タバコ植物 (N i c o t i an a t a b a c urn c v SR I) または β 1, 4—ガラク I ^一ス 転移酵素 (以下 hGT) 遺伝子を導入し糖鎖構造が改変していることが確認され ている既存のこの夕パコ植物の形質転換体 N i c o t i a n a t a b a c urn c v SR 1—hGTをさらに形質転換する。
すなわち、 10 OmgZ 1のリファンピシン、 5 OmgZ 1のストレプトマイ シンおよび 5 Omg/ 1のカナマイシンを含む LB液体培地を用いて培養した上 記感染用ァグロパクテリゥムを、 上記タバコ植物の葉の切片と混合し、 25°C明 所にて 3日間、 改変 MS (0. lmg/ 1ナフタレン酢酸、 0. lmgZlベン ジルアデニン、 1 Omg Ίチアミン塩酸塩、 lmgZlニコチン酸、 lmgZ 1塩酸ピリドキシン、 1 OmgZlミオイノシトールを含むムラシゲ スク一グ 培地用混合塩類 (和光純薬) ) 寒天培地上で共存培養する。
次いで、 得られた感染葉を滅菌水で洗浄し、 25 Omg/ 1のカルべニシリン を含む改変 MS寒天培地上に静置し、 25°C明所にて 1週間除菌培養を行う。次い で、 この感染葉を、 25 Omg/ 1のカルペニシリンおよび 5 Omg/ 1のハイ グロマイシンを含む改変 MS寒天培地に移して静置し、 25 °C明所にて茎葉の誘 導を行う。
得られた茎葉を切り取り、 25 OmgZlのカルペニシリンおよび 5 Omg/ 1のハイグロマイシンを含む MS寒天培地 (1 OmgZ 1チアミン塩酸塩、 lm g/1ニコチン酸、 lmgZl塩酸ピリドキシン、 l OmgZlミオイノシ) ^一
ルを含むムラシゲ ·スク一グ培地用混合塩類 (和光純薬) ) に継代し、 25°C明 所にて発根させる。
発根の確認された形質転換植物体から、ゲノム DNAおよび mRNAを調製し、 P CRおよび RT— PC R法を用いることで目的遺伝子の導入および発現の確認 を行う。
次いで、 mRNAの産生が確認されたクローンについて鉢上げし、 植物体の再 生を行う。 得られた形質転換植物は、 N i c o t i an a t a b a c um c v SR I— hCSS - hST - CN、 S R 1 - h C S S _ h S T - CN— h C ST、 または N i c o t i ana t a b a c um c v SRl— hGT— h CS S— hST— CN、 SR 1— hGT— hCSS_hST— CN— hCSTで ある。
5. 糖鎖へのシアル酸付加の確認。
h GTなどで形質転換した植物体における、 糖タンパク質にシアル酸が付加し ていることの確認を、 この植物体の細胞を破砕した後、 細胞内糖タンパク質の調 製を行い、 得られた細胞内糖タンパク質からヒドラジン分解法を利用し糖鎖を切 り出すことにより行う。 すなわち、 まず、 植物体の破碎物から調製した細胞内糖 タンパク質糖鎖を TSKゲルカラムにかけ、糖鎖を精製する。精製された糖鎖を、 2-アミノビリジン(PA) と反応させることによつて糖鎖の還元末端を P A化標 識する。 得られた PA化糖鎖を逆相 (RP— ) HPLCおよびサイズ分画 (SF ―) HPLCを用いて精製し、 既知糖鎖との比較、 シァリダ一ゼ (例えば C 1 0 s t r i d i um p e r f r i nge n s由来、 C a 1 i o c h e m社) 消 化および /31, 4—ガラクトシダ一ゼ (例えば D i p l o c o c c u s pne umo n i a e由来、 Ro c he D i agno s t i c s社) 消化と、 マスス ベクトル分析とを組み合わせ、 糖鎖の構造を決定する。 シァリダ一ゼ消化によつ て、 非還元末端にシアル酸残基を有する P A化糖鎖の存在が確認されたならば、 これらの糖鎖をマススぺクトルで分析する。
マススペクトルは、 例えば、 Vo y a g e r— DETM RP B i o s p e c t r ome t r y™ Wo r k s t a t i on (P e r S e p t i ve B i o s y s t ems) を用いて実施することができる。
上記シァリダーゼ消化および iS 1, 4—ガラクトシダ一ゼ消化の反応生成物は、 蛍光検出器を備えた HI TACH I HPLC s y s t e m (日立)を用いる逆 相 (RP) —HPLCで分析され得る。 RP— HPLCにおいては、 励起および 蛍光波長をそれぞれ 310 nmおよび 380 nmとして蛍光強度を測定する。 分 析カラムとしては、 Co smo s i l 5 C 18—AR c o l umn (6 2 50mm, ナカライテスク)が用いられ、 通常、流速 1. 2m 1ノ分の下で、 0. 02 %TF A水溶液中のァセトニトリル濃度を 40分間で 0%から 6%に増加さ せることで P A化糖鎖を溶出することができる。
6. 外来夕ンパク質の糖鎖へのシアル酸付加の確認。
外来夕ンパク質の例として、 マウスモノクローナル抗体夕ンパク質を構成する H鎖および L鎖を植物細胞で発現させる。 この目的のために、 H鎖および L鎖を それぞれコードする遺伝子を、 植物感染用プロモ一ターである力リフラヮ一モザ イクウィルス 35 Sプロモーターの制御下に配置し、 抗生物質ハイグロマイシン 耐性遺伝子を保持するプラスミド pGPTV— HPTにそれぞれ導入し、 発現力 セットを作成する。 本発明者らは、 これら 2つの遺伝子の発現カセットを同一べ クタ一上にもつプラスミド pGPTV— HPT— I gGを既に得ている。 このプ ラスミド pGPTV— HPT— I gGから、 H鎖および L鎖発現用カセットを切 り出し、 抗生物質ビアラホス耐性遺伝子とを保持する既存のプラスミド PGPT V— BARに導入し、 ベクター pGPTV— BAR— I gGを構築する。 これを 用い、 タバコ植物 (Ni c o t i an a t a b a c um c v S R 1) 、 ま たは β1, 4一ガラクトース転移酵素 (hGT) 遺伝子が導入され糖鎖構造が改 変されていることが確認された形質転換体 N i c o t i an a t ab a c um c v SR 1— hGTをさらに形質転換する。 10 Omg/ 1のリファンピシン、
5 OmgZlのストレプトマイシンおよび 5 Omg/ 1カナマイシンを含む 2 X YT液体培地中で培養した感染用ァグロパクテリゥムを、 タバコの葉の切片と混 合し、 25°C明所にて 3日間、 改変 MS寒天培地上で共存培養する。 この感染葉 を滅菌水で洗浄した後、 25 OmgZlのカルペニシリンを含む改変 MS寒天培 地上に移して静置し、 さらに 25°C明所にて 1週間除菌培養を行う。 次いで、 得 られた感染葉を、 25 Omg / 1のカルペニシリンおよび 1 OmgZrのビアラ ホス (明治製菓) を含む改変 LS寒天培地に移して静置し、 25°C明所にて茎葉 の誘導を行う。
得られた茎葉を切り取り、 25 OmgZ 1のカルペニシリンおよび 1 OmgZ 1のピアラホスを含む MS寒天培地に継代し、 25 °C明所にて発根させる。 この 結果、 発根の確認された形質転換植物体よりゲノム DN Aおよび mRNAを調製 し、 PCRおよび RT— P CR法を用いることで目的遺伝子の導入および発現の 確認を行う。 mRNAの産生が確認されたクロ一ンに関して、 鉢上げし植物体の 再生を行う。
得られた植物体 N i c o t i a n a t ab a c um c v SR I— I g
Gあるいは N i c o t i a n a t a b a c um c v S R 1 - h GT- I g Gについて、 抗体タンパク質の発現を、 抗マウス二次抗体を用いて確認し、 プロ ティン A (アマシャム) あるいはプロテイン G (アマシャム社製) カラムを用い て精製し、 糖鎖構造を確認する。
糖鎖構造解析は、 以下の方法で行う。 精製した目的糖タンパク質よりヒドラジ ン分解法を利用し糖鎖を切り出す。 TSKゲルカラムにて糖鎖を精製し、 2—ァ ミノピリジン (PA) と反応させることで糖鎖の還元末端を P A化標識する。 得 られた P A化糖鎖を逆相 (RP-) HPLCとサイズ分画 (SF— ) HPLCで 精製し、 既知糖鎖との比較、 )31, 4—ガラクトシダーゼ消化、 マススペクトル 分析を行い糖鎖の構造を決定する。 β 1, 4一ガラクトシダーゼ消化の結果、 非 還元末端にガラクト一ス残基を有する Ρ Α化糖鎖の存在を確認し、 さらに、 これ
らの糖鎖をマススぺクトルで分析する。
7. シアル酸が付加された外来タンパク質を発現する植物体の構築。
上記で得られた形質転換植物 N i c o t i a n a t a b a c urn c v S R 1— h GT— I g Gと、 N i c o t i a n a t a b a c um c v SR I —hCS S— hST— CNまたは SR 1— hCSS— hST— CN— hCSTと を交配する。 あるいは N i c o t i a n a t a b a c um c v SR I— I gGと N i c o t i an a t a b a c um c v SRl-hGT-hCSS — hST— CNまたは SR 1— hGT—hCSS— hST— CN— hCSTとを 交配する。
交配することにより得られた多重形質転換体は、 hGT遺伝子、 hCSS遺伝 子、 hST遺伝子、 CN遺伝子、 I gG遺伝子および、 hGT遺伝子、 hCSS 遺伝子、 hST遺伝子、 CN遺伝子、 hCST遺伝子、 I gG遺伝子をもつ植物 体である。 この多重形質転換体について、 先と同様に、 I gG抗体タンパク質の 発現を、 抗マウス二次抗体を用いて確認する。 発現した抗体を、 プロテイン Aま たはプロテイン Gカラムを用いて精製した後、 その糖鎖構造を確認する。 このた めに、 精製抗体をヒドラジン分解し、 得られた分解産物から、 TSKゲルカラム ' を用いて糖鎖を精製する。得られた糖鎖を 2-アミノピリジン (PA) と反応させ 糖鎖の還元末端を P A化標識する。 得られた P A化糖鎖を、 逆相 (RP—) HP LCとサイズ分画 (SF— ) HPLCで精製し、 既知糖鎖との比較、 シァリダ一 ゼ消化、 およびマススペクトル分析によって糖鎖構造を決定する。 シァリダーゼ 消化によって、非還元末端にシァル酸残基を有する P A化糖鎖の存在が確認され、 これらの糖鎖構造が H P L Cおよびマススペクトルによつて分析される。
以下に実施例を用いて本発明を詳細に説明する。 以下の実施例は本発明の例示 であって、 本発明を制限するものではない。 実施例
本実施例を要約すると、 本実施例は、 モデル植物細胞であるタバコ培養細胞 B Y 2株において、 E s c h e r i c h i a c o l i Kl株由来のシアル酸合 成酵素 (neuB) 遺伝子を、 タバコ N—ァセチルダルコサミン転移酵素 I (G n T— I )の CTS (c y t o p 1 a s m i c t ransmembr ane s t em)領域との融合タンパク質(CTS— n e uB)として発現させ、 さらに、 ヒト由来 h C S S遺伝子およびヒト由来 h C S T遺伝子をタバコ培養細胞 BY 2 株に各々導入して発現させ、 各タンパク質が植物細胞内において活性をもつこと を示したものである。
本実施例では、 本発明に用いる宿主の代表例として夕パコ培養細胞 BY 2株を 用いた。 BY2株 (Ni co t i ana t abacum L. c v. Br i g h t Ye l l ow 2)は、理化学研究所ライフサイエンス筑波研究センタ—、 ジーンパンク室植物細胞開発銀行のカタ口グ番号 R P C 1から細胞株名 B Y 2と して入手可能である。
方法
1. CTS-neu B遺伝子の取得および植物感染用ベクターの構築。
n e uB遺伝子は E s c h e r i c h i a co l i 1:1株ょり?〇1法を 用いて増幅した。 正確には、 Roche s t e r大学 J. S i l ve r博士か ら分与戴いた。 用いたプライマ一は以下の通りである:
Fo rwa rd p r i me r配列; n e u B 5, (5 ' - TTTAGCTCG AGACAATGAGTAATATATATAT- 3 ' ) (配列番号 7) ; Reve r s e p r i me r配列は n e u B 3, (5' -TTTTTCTCG 番号 8) 。 なお、 下線部は Xho I制限部位を示す。
一方、 CTS領域の PCR増幅には、 N i c 0 t i a n a t abacum c v. SR 1株の cDNAを铸型とし以下のプライマーを用いて行った: Fo rward pr ime r配列; CTS— 5Sa l I (5, -TTTAAG.
TCGACACGATGAGAGG— 3 ' ) (配列番号 9) ; Re ve r s e p r ime r配列; CTS— 3S a l I (5 ' -AATCGT CGACCCTTAACTGTC- 3, ) (配列番号 10) 。 なお、 下線部は S a 1 Iサイトを示す。
得られた neuB (配列番号 1 ) および CTS遺伝子を、 1101ぉょび3 & 1 I部位で連結し、 目的とする CTS_n euB遺伝子を取得した。 得られた遺 伝子をプラスミド pB 1221 (C 1 on t e c h、 CA) に導入し、 植物発現 用プロモータ一であるカリフラワーモザイクウィルス 35 S (C aMV 35 S) プロモーターの制御下に置いた。 以下に記載のように構築した植物外来遺伝子発 現用カセットを pB I 121に導入し、 植物感染用べクタ一 pB I 121 -CN (または pB I 121— CTS— Ne uBとも称する) を得た。 次いで、 pB I 121— CNを、 Ag r o b a c t e r i um t ume f ac i en s LB A4404株に導入し、 植物感染用ァグロパクテリゥム LBA4404— CNを 構築した。
上記のように、 CTS— Ne uB遺伝子は、 N i c o t i a n a t a b a c urn L. c v. SR— I株由来の N—ァセチルダルコサミニルトランスフェラ —ゼ Iの CTS領域と、 E. c o l i Kl株由来のNeuB遺伝子との融合遺 伝子である。 この遺伝子は、 81 121上の〇& ¥ 35 Sプロモーターお よびノパリンシン夕一ゼ夕ーミネ一夕一によって駆動される。 プラスミド pB I 221は、 植物由来の発現プロモーターであるカリフラワーモザイクウィルス 3 5 S (C aMV 35 S) プロモ一ター、 およびノパリンシン夕一ゼ夕ーミネ一 ターを保持している公知のプラスミドである。
後の操作のために、 以下に示すように、 CaMV 35 Sプロモーターの前お よびノパリンシンターゼ夕一ミネ一夕一の後に、 新たな X ho Iおよび Sp e I 制限酵素部位を PCR法により導入し、 植物外来遺伝子発現用カセットを構築し た。
Fo rwa r d p r ime rとして 5' -ATTCTCGAGAGCTTG CATGCCTGCAG- 3 ' (配列番号 15 ) を、 そして R e v e r s e p
A— 3' (配列番号 16) を用い、 PCR増幅 (94°Cで 30秒の最初のステツ プを行い、 94°Cで 1分の 30サイクル、 55 で1分、 68 °Cで 3分のサイク ルを 30回行った後、 68°Cで 5分の最終の伸長ステップを行う) を行った。 P CR産物は、 pGEM— T Ea s yベクター (P r ome g a社製) にサブク ローン化した。
2. ヒト由来 CMP—シアル酸合成酵素 (hCSS) 遺伝子、 CMP—シアル 酸トランスポーター (hCST) 遺伝子のクロ一ニングぉよび植物感染用べクタ —の構築。
ヒト腎臓由来 cDNA (Human k i dney Ma r a t hon-Re a d y cDNA, C 1 o n t e c h) を錡型として、 P C R法を用いて目的 遺伝子の増幅を試みた。 用いたプライマー配列は以下の通りである。 なお、 この 実験には、 宿主として、 E c h e r i c h i a c o 1 i ' J M 109株または DH5 o;株 (TAKARA社から購入) を用いた。
h CSS遺伝子関して: Ge nB a n k受託番号 AF 271388 Bouq u i n, T. and Mundy, J. を参考にした。
Fo rwa r d p r ime r配列; hCSS_ l (5 ' -GTTACTAGT
1) ; .
Reve r s e p r ime r配列; hCSS— 2 (5' — TGGGAGCTC CTATTTTTGGCATGAATTATT- 3 ' ) (配列番号 12) 。
h C ST遺伝子に関して: I s h i a、 N. ら、 J. B i o c hem. 120、
1074- 1078 (1996) を参考にした。
Fo rwa r d p r i me r配列; h C S T— 1 (5 ' -GTTAGATCT ATGGCTGCCCCGAGAGACAAT— 3, ) (配列番号 13 ;下線は B 1 I I制限酵素部位を示す) ;
Re ve r s e p r i me r配列; h C S T— 2 (5 ' -TTGGAGCTC TCACACACCAATAACTCTCTC— 3, ) (配列番号 14 ;下線は S a c I制限酵素部位を示す) 。
各々得られた PC R産物(hCSS:配列番号 2および hC ST:配列番号 3) をプラスミド pB I 221に導入し、 植物発現用プロモーターであるカリフラヮ 一モザイクウィルス 35 Sプロモーターの制御下に置いた。 構築した植物外来遺 伝子発現用カセットを、 抗生物質ハイグロマイシン耐性遺伝子を保持するプラス ミド pGPTV— HPT (ATCC 77388) に導入した。 この結果得られ たプラスミド p GPTV— HPT— hCS Sおよび p GPTV— HPT-h CS Tを、 それぞれ、 Ag r ob ac t e r i um t ume f a c i e n s LB A4404株に導入し、 植物感染用ァグロパクテリゥム LB A4404— HPT — hCSSおよび LBA4404—HP T— h C S Tを構築した。
hCS T遺伝子を得るために用いた P CR法は、 ヒト腎臓由来 c DNAを铸型 として KODプラスポリメラーゼ (TOYOBO社製) を製造業者のプロトコ一 ルに従って行った。 94°Cで 30秒の最初のステップを実施し、 次いで、 94°C で 1分、 50°Cで 2分、 68 °Cで 2分のサイクルを 30回行った後、 最終の伸長 ステップを、 68°Cで 5分実施した。 PCR産物は、 電気泳動に供してパンドを チェックすることにより確認した。 得られた PC R産物をテンプレートとして用 い、 さらに、 同一条件下で同じプライマ一を用いて第 2の PCR増幅を行った。 得られた増幅産物を電気泳動に供し、 Q IAqu i c k (登録商標) PCR P u r i f i c a t i on K i t (Q I AGEN社製) を用いて精製した。 精製 した PC R産物を、 Ex. T a qポリメラーゼ (TAKARA社製) を用い、 7 2°Cで 30分間反応させることによりさらに伸長させた。 得られた伸長産物を電
気泳動に供し、 単一の 1. O k bpのパンドを電気泳動ゲルから切り出し、 そし て GENECLEAN I I KI T (B i o 101 Sy s t ems社製) を 用いてフラグメント精製した。 得られた精製 DNAを、 上記のように、 pGEM 一 T E a s yベクタ一 (P r ome g a社製) にサブクローン化した。
次に、サブクローン化した hCST遺伝子を、 Bg 1 I lZS ac Iで消化し、 得られた Bg 1 I Iノ S a c Iフラグメントを、 B amH I/S a c I消化した プラスミド pB I 221に連結した。上記のように、プラスミド pB I 221は、 植物由来の発現プロモーターであるカリフラワーモザイクウィルス 35 S (Ca MV 35 S) プロモ一夕一、 およびノパリンシン夕一ゼ夕ーミネ一ターを保持 している公知のプラスミドである。 得られたプラスミドは、 pB I 221_hC STと命名した。
次いで、 後の操作のために、 PCR法を用い、 pB I 221— hCST上の C aMV 35 Sプロモ一夕一の前に新たな S p e I制限酵素部位、 およびノパリ ンシン夕一ゼターミネ一夕一の後に、 新たな Xho I制限酵素部位をそれぞれ導 入し、 遺伝子カセットを構築した。
Fo rwa r d p r ime r配列: 5 ' — ATT ACTA GTAGCTTG CATGCCTGCAG - 3, (配列番号 17 ) 、 および R e v e r s e p r
—3, (配列番号 18) を用いて PCR増幅 (94。Cで 30秒、 続いて 94 で 1分、 55でで1分、 68 °Cで 3分のサイクルを 30回行った後、 68°Cで 5分 の最終の伸長ステップを行う) を行った。 得られた PC R産物を、 上記のように して、 pGEM— T Ea s yベクター (P r ome ga社製) にサブクローン 化した。
上記のように、 hCSTカセットは、 Sp e l制限酵素部位、 CaMV 35 Sプロモータ一、 hCSTのcDNA、 ノパリンシン夕一ゼ夕一ミネ一夕一およ び Xho I制限酵素部位から構成されている。 また、 CTS— NeuBカセット
は、 Xho l制限酵素部位、 CaMV 35 Sプロモ一夕一、 CTS— NeuB 遺伝子、 ノパリンシン夕一ゼ夕一ミネ一ター、 および Sp e I制限酵素部位から 構成されている。 これら 2つのプラスミドを、 制限酵素 Xho I/Sp e Iでそ れぞれ消化し、 各プラスミド由来の Xho I/S p e Iフラグメントをともに、 S p e Iで消化し、 そして細菌アルカリホスファターゼ (TAKARA社製) で 処理した P GEM— T E a s yベクターに連結した。 得られたプラスミドを、 pGEM-T- CST-CTS-Ne uBと命名した。
p GEM— T— h CST— CTS— Ne uBを制限酵素 S p e Iで消化して、 S p e Iフラグメント (hCST— CTS— NeuBカセット) を得た。 その一 方、 上記のプラスミド P GPTV— HPT—hCS Sは、 CaMV 35 Sプロ モーター、 ヒト CM P—シアル酸合成酵素遺伝子、 およびノパリンシン夕ーゼ夕 —ミネ一夕一を含む。 このプラスミドを、 Xb a lで消化し、 そして細菌アル力 リホスファタ一ゼ (TAKARA社製) で処理した。
得られた pGEM— T— hCST— CTS—Ne uB由来の S p e Iフラグメ ント (hCST— CTS—Ne uBカセット) を、 プラスミド p GPTV— HP T_hCSSの Xb a I部位に導入して、 ベクタ一 pGPTV— HPT— hCS S— hCST— CTS— Ne uBを得た。 このべクタ一の構造は、 制限酵素消化 および配列決定により確認した。 このべクタ一を、 エレクト口ボーレ一シヨンに よりァグロ'パクテリゥム チュメファシエンス LBA4404株 (以後ァグロバ クテリゥム LBA4404と記する) に導入した。 得られた植物感染用ァグロバ クテリウムを、 ァグロパクテリゥム LBA4404— HPT— hCSS— hCS T— CTS—Ne uBと略記する。
3. 形質転換タバコ培養細胞およびタバコ植物体の調製。
要約すれば、 改変 L S液体培地中で 4日目培養したタバコ B Y 2細胞の培養液 4mlに対し、 10 OmgZ 1のリファンピシン、 50 mgZ 1のストレブトマ イシンおよび 5 Omg/ 1のカナマイシンを含む 2 XYT液体培地で 2日目培養
した上記感染用ァグロパクテリゥムの培養液を 100 1加えて混合し、 3日間 共存培養した。
次いで、 感染細胞を、 25 Omg/1のカルペニシリンおよび 30%のスクロ —スを含む改変 LS液体培地で洗浄した後、 ァグロパクテリゥム LBA4404 一 CNによる感染細胞は、 25 OmgZ 1のカルペニシリンおよび 10 OmgZ 1のカナマイシンを含む改変 LS寒天培地に、 そしてァグロパクテリゥム LB A 4404— HPT— h CS Sおよび hCST、 ならびにァグロパクテリゥム L B A4404— HPT— hCS S— hCST— CTS— Ne uBによる感染細胞は、 25 Omg/ 1のカルべニシリンおよび 5 Omg/ 1のハイグロマイシンを含む 改変 LS寒天培地にそれぞれ播種し、 カルス形成の誘導を行った。 この結果、 得 られたカルスから、 ゲノム DNAおよび mRNAを調製し、 PCRおよび RT— P C R法を用いることで目的遺伝子の導入および発現の確認を行った。
次いで、 mRNAの産生が確認されたクロ一ンについて、 25 Omg/ 1の力 ルベニシリン、 5 Omg/ 1のハイグロマイシンまたは 10 OmgZ 1のカナマ イシンおよび 30%のスクロースを含む改変 LS液体培地で培養を行った。 以下に、 ァグロパクテリゥム LBA4404-HPT-hCSS-hCST- CTS-Ne u Bによる感染細胞から植物体を取得した詳細について記載する。
(形質転換: Tab a c c o Le a f D i s c Tr an s f o rma t i on)
—ァグロパクテリゥムの培養培地 (YEB培地) 一
以下の組成の培養培地 (YEB培地) でァグロパクテリゥム チュメファシェ ンスを培養した: B a c t be e f ex t r a c t 5 gZl、Ba c t y e a s t ex t r a c t 1 g/ Po l yp e p t on e 5gZl、 ス クロース 5 gZl、 MgS〇4 2X 10—3M、 pH7. 2に調製。
一同時培養およびシュート再生のための MS— B 5培養培地一
以下の組成の培地を用いた: MS培地塩 * 1、 My o—イノシトール 100
mg/し BDS— I V (ニコチン酸 1. Omg/ 1、チアミン HC 1 10. Omg/1 , ピリドキシン HC 1 1. Omg/1) 、 ベンジルァミノプリン 2 00 p pm (200 g/1) ^ナフタレン酢酸 200 p pm ( 200 g/ 1 ) > スクロース 3%、および I NA寒天 0. 8%、 1M K〇Hで ρΗ5· 7に調製、 である。 ここで、 * 1 (mg/1) : NH4N03 1650、 C a C 12 · 2H2 〇 440、 KN〇3 1900、 Mg S〇4 · 7H2〇 370、 KH2P〇4 1 70、 Na2_EDTA 37. 3、 H3B〇3 6. 2、 F e S 04 · 7 H2 O 2 7. 8、 Mn S04 · 4H20 22. 3、 K I 0. 83、 Z n S04 · 4H2 O 8. 6、 Na2Mo〇4 * 2H20 0. 25、 CuS〇4 , 5H2〇 0. 0 25、 C o C 12 · 2H20 0. 025である。
(ァグロパクテリゥム媒介形質転換および植物体の取得)
ァグロパクテリゥム チュメファシエンス LBA4404株を、 硫酸カナマイ シン 50mgZl、 リフアンプシンも 50mg 、 硫酸ストレプトマイシン 2 0 OmgZ 1を含む 5m 1の YEB培地中 28°Cで 24時間培養した。 3000 r pmで 5分間の遠心分離によりァグロパクテゥム細胞を回収し、 そして次に M S液体培地 ' (My 0—イノシト一ル 10 OmgZ 1、 MS— V I (ニコチン酸 0. 5mg/ 1、 ピリドキシン HC 1 0. 5mg/l、 チアミン HC 1 0. lmgZl、 グリシン 2. Omg/ 1 > スクロース 3%、 1M KOHで p H5. 7に調製) ) で〇D6。。=1となるように希釈し、 殺菌したペトリ皿に注 いだ。 タパコ植物 N i c o t i ana t a b a c urn SRIの若い葉を界面 活性剤で洗浄した後、 1 %次亜塩素酸ナトリゥムで 10分間滅菌し.、 そして蒸留 水で 3回すすいだ。 この滅菌した葉からリーフディスクを調製し、 そしてペトリ 皿中のァグロパクテリウム溶液と 1分間ィンキュペートした。 過剰の液体を除い た後、 リーフディスクを MS— B 5平板培地上に配置し、 一日のうち 25°Cで 1 6時間弱い日光に曝して、 合計 3日間培養した。 その後、 このリーフデイクスを 25 OnigZlのカルペニシリンナトリウムを含む MS— B 5培地 (MS培地塩
1パック、 My o—イノシトール 10 Omgノ 1、MS— V I (ニコチン酸 0. SmgZl、 ピリドキシン HC 1 0. 5mg/l、 チアミン HC 1 0. 1 m g l、グリシン 2. OmgZ 1 )、スクロ一ス 3%、 I NA寒天 0. 8%、 1M KOHで pH5. 7に調製) に移し、 16時間日光にあたるようにして 1 週間 25 °Cでィンキュベートした。
その後、 このリーフディスクを、 15 Omg/ 1ハイグロマイシンを含む新た な MS— B 5培地に移し、 そして一日あたり 16時間日光をあてて 25°Cでイン キュベ一トした。 2週間毎にこのリーフディスクを、 カルペニシリンおよびハイ グロマイシンを含む MS— B 5培地に移した。 このリーフディスクが再生し、 シ ユート 1. 5 cmの高さに生長したとき、 シュートを切り出し、 そしてカルべ ニシリンおよびハイグロマイシンを含む発根培地上の植物ボックス (6 X 6 X 1 O cm) 中に配置した。 このシュートが根を形成したとき、 これを、 植物ポット (6 X 6 X 1 O cm) 中の土壌に移し、 そして 25 °Cで培養した。 その結果、 ァ グロパクテリゥム LBA4404-HPT-hCSS-hCST-CTS-Ne uBによる感染細胞から、 3つのトランスジエニック植物 No. .1、 o. 2お よび No. 3を得た。
4. neuB活性の測定。
4. 1. 粗酵素液の調製。
培養 7日目の細胞培養液を、 2, 000 r p mで 10分間遠心分離することに よって培養液から細胞を分離した。 回収した細胞に、 2分の 1容量の 0. 25M スクロース、 ImM塩ィ匕マンガン、 5 OmM塩化カリウムを含む、 20mMピシ ン緩衝液 PH8. 5を加え、 手動ホモジナイザーを用いて破碎した。
次いで、 得られた溶液を、 4°C、 12, 000 r pmで 10分間遠心分離する ことによって細胞抽出液を調製した。 得られた細胞抽出液を、 4°C、 100, 0 00 r pmで 1時間超遠心分離し、 ミクロソ一ム画分を得た。
得られたミクロソーム画分を、 1 OmM塩化マンガン、 1M塩化ナトリウム、
1%の Tr i t onX— 100を含む、 2 OmMビシン緩衝液 pH 8. 5に懸濁 し、 4°C1時間静置してミクロゾーム液とした。
得られた上記 3つのトランスジエニック植物 No. 1、 No. 2および No. 3については、 これら植物からの葉および対照となる野生型植物の葉 (それぞれ 0. 23-0. 40 g) を採取し、 それぞれ乳鉢で磨り潰して、 1mlの 10m M Tr i s— HC l、 pH9. 5中に懸濁した。 4。Cで、 8, 000 r pm、 15分間の遠心分離により上清液を得た。得られた細胞抽出液を、 4°C、 100, 000 r pmで 1時間超遠心分離し、 ミクロソーム画分を得た。
得られたミクロソ一ム画分を、 1 %の Tr i t onX— 100を含む、 20m Mビシン緩衝液 ΡΗ8.5に懸濁し、 4°C 1時間静置してミクロゾーム液とした。 このミクロソ一ム液について酵素活性を測定した。
4. 2. 酵素反応。
得られたミクロソーム液に、 10mM塩化マンガン、 10mMN—ァセチルマ ンノサミン一水和物、 1 OmMホスホェノールピルピン酸三水和物を含む、 20 mMビシン緩衝液 p H 8. 5となる様に反応液を加え、 37 °Cで 24時間反応さ せた。 酵素反応は 20Nのリン酸を加え停止させた。
4. 3_. シアル酸の DMB (1, 2 - d i am i n o - 4, 5— me t hy l e n e d i oxyb e n z e ne) 蛍光標識。
上記酵素反応液に、 終濃度が 7mMDMB、 1. 4M 2—メルカプトエタノー ル、 1. 4M酢酸、 18πιΜΛイドロサルファイトナトリウムとなる様に蛍光標 識試薬を混合し、 50°Cで、 2. 5時間反応させた。 シアル酸蛍光標識用試薬キ ット (Tak a r a社製) も使用した。 反応は氷冷することで停止させた。
4. 4. HPLC分析。
シアル酸の蛍光標識産物は、蛍光検出器を有する H I TACH I HPLC s y s t em (日立) を用いる RP—HP L C法で分析した。 蛍光強度は、 励起波 長 373 nmおよび蛍光波長 448 nmで測定した。 RP— HPLC法では、 分
析カラムとして C o smos i l 5 C 18 -AR co l umn (6X250 mm;ナカライテスク) を用い、 流速 2m 1 分の下で、 溶液 A (ァセトニ トリル:メタノール:水 =4 : 7 : 89) および溶液 B (ァセトニトリル:メタ ノール:水 =20 : 35 : 45) について、 1サイクル 80分間として溶液 Bを 50分間から 65分間の間 100%流すことにより DMB化されたシアル酸の溶 出を行った。
4. 5. MALD I -TOF MS (Ma t r i x-a s s i s t ed L a s e r De s o rp t i on/ I on i z a t i on Time— o f— F l i gh t Ma s s Spec t rome t ry) 分析。
MALD I -TOF MS分析は、 V o y a g e r— D ETM RP B i o s pec t rome t ry™ Wo r、k s t a t i on(Pe rSep t ive B i osys t erns) を用いて行った。
5. h CSS活性測定。
5. 1. 形質転換細胞および植物体からの h C S S粗酵素液の調製。
培養 7日目の形質転換培養細胞培養液から、 室温で 3, O O O rpmで 10分 間遠心分離することによって、 形質転換細胞を回収した。 得られた形質転換細胞 に、 等量の、 2 OmMMgC 12を含む 2 OmMTr i s一 HC 1緩衝液 (pH 8.5)を加えてホモジナイザーで細胞を粉砕した。得られた細胞破砕物を、 4°C, 8, 000 r pmで 15分間遠心分離し、 得られた上清を粗酵素液とした。
得られた上記 3つのトランスジエニック植物 No. 1、 No. 2および No.
3については、 上記のように、 これら植物からの葉および対照となる野生型植物 の葉 (それぞれ 23-0. 40 g) を採取し、 それぞれ乳鉢で磨り潰して、 lmlの 10mM Tr i s— HC 1、 pH9. 5中に懸濁した。 4 °Cで、 8, 000 rpm、 15分間の遠心分離により上清液を得、 この得られた上清液につ . いて酵素活性を測定した。
5. 2. C MP—シアル酸の合成。
酵素反応は、 40 1の粗酵素液、 2 OmM MgC l 2、 5mM Ne uA c、 5mM CTP、 P r o t e i n a s e i nh i b i t o r (Ro c h e D i a gno s i s K. K. ) を含む、 2 OmMT r i s— HC 1 bu f f e r (pH8. 5) 50 1中、 37 °Cで 5時間反応させて行った。
また、 ドナ一基質として Ne uAcの代わりに 2— k e t 0— 3— d e oxy
— D-g 1 yc e r o-D-g a 1 a c t o— nonon i c a c i d (KD N) および 2— k e t o-3-d e oxyo c t o n a t e (KDO) もまた用 いた。 を用いて同様の反応を行った。
得られた上記 3つのトランスジエニック植物 No. 1、 No. 2および No. 3については、 まず最初に、 以下に示す 50 1の反応系において 37°Cで 20 時間行った: 20 OmM pH9. 5 T r i s -HC 1 5 1、 1 OmM D TT 5 20 OmM Mg C 12 5 1、 5 OmM CTP 5 プロテア一ゼインヒビ夕一 (1夕ブレット Z2ml) 2 /! 1、 [14C] シアル 酸 (S i gma社製) 0. 5 μ 1、 上清液 (細胞抽出物) 27. 5 1。 な お、 0時間におけるネガティブコントロールとして、 酵素反応の前に、 1 00 μ 1の 0. 5Μ EDTAを添加した。
5. 3. インピトロシアル酸転移反応。
C MP—シアル酸合成反応後、 培養細胞より調製した上記反応液に 100 pm 0 1 /m 1の PA化糖鎖(T a k a r a社製)、 1 OmUZmlのヒト由来ひ 2, 6—シアル酸転移酵素、 および、 終濃度が 1 0 OmMとなるように HEPES b u f f e r (pH7. 5) を加え、 37 °Cで 16時間インキュベートした。 植物 体より調製した上記反応液の場合には、 10 OmMHEPES bu f f e r (p H7. 5) の代わりに、 2 OmM力コジル酸ナトリウム、 pH6. 5、 2 OmM MgC 12を用いた。
5. 4. HPLC分析。
酵素反応産物を、 蛍光検出器を有する HI TACHI HPLC s y s t e
m (日立) を用いて、 RP— HPLC分析を行った。 励起および蛍光波長は 3 10 nm、 380 nmとし、 蛍光強度を測定した。 分析カラムには Co smo s i 1 5 C 18 -AR c o 1 umn (6 X 250mm;ナカライテスク) を用 い、 流速 1. 2mlZ分の下で 0. 02 %TF A水溶液中のァセトニトリル濃度 を 40分間で 0 %から 6%に増加させることで P A化糖鎖を溶出させた。
5. 5. TLC (薄層クロマトグラフィー) を利用した CMP—シアル酸合成 酵素活性測定。
酵素反応は、 16 1の粗酵素液、 20mMMgC l 2、 90 〔14C〕 N euAc、 5mMCTP、 P r o t e i n a s e i n h. i b i t o r (R o c h e D i agno s i s K. K. ) を含む 2 OmMT r i s—HC 1 b u f f e r (pH8. 5) 20/ lで、 37 °Cで 3時間反応を行った。反応液 0. :5 1を、 TLCアルミニウムプレート s i 1 i c a ge l 60 (MERC K) にスポットし、 展開溶媒液 (エタノール: 1M酢酸アンモニゥム PH7. 5 =7 : 3) で 10時間展開した。 展開後のプレートを 1 cm間隔に切断し、 各断 片の放射能活性を、 シンチレーシヨンカウン夕一を用いて測定した。
5. 6. 糖夕ンパク質糖鎖へのィンビ卜口シアル酸転移酵素反応。
16 1の植物細胞抽出粗酵素液、 2 OmMMgC 12、 90 M 〔14C〕 N e u A c、 5mMCTP、 P r o t e i n a s e i nh i b i t o r (R o c h e D i a gno s i s K. K. ) を含む 2 OmMT r i s -HC 1 b u f f e r (pH8. 5) 20 1の反応系で 37 °Cで 3時間反応を行った後、 25 1の l O OmM HEPES bu f f e r. pH 7. 4、 の lm Uヒト由来《 2, 6—シアル酸転 酵素、 そして 5 1の 1 Omg mlァシァ 口フェツインを添加し、 37°Cで 16時間インキュベートした。 その後、 反応液 に lmlの c o l d— w a t e rを加え反応を停止させた。 得られたサンプルを Ad V a n t e c To y o A 045 A 025 Aニトロセルロースフィルター に通し、 さらに lmlの c o l d— w a t e rでフィル夕一を 3回洗浄した。 洗
浄後のフィルターを乾燥し、 フィルター上の残存14 C放射能活性値を測定した。 6. hCST活性測定。
6. 1. ミクロソーム画分の調製。
培養 7日目の細胞培養液を 2, O O O r pmで 10分間遠心することで、 培地 より細胞を分離した。 回収した細胞に 2分の 1量の 1 OmMリン酸ナトリウム緩 衝液 pH7. 1を加え、 手動ホモジナイザーを用いて破砕し 4°C、 12, 000 r pmで 20分間遠心することで細胞抽出液を調製した。 得られた細胞抽出液を 4°C、 100, 000 r pmで 1時間超遠心し、 ミクロソーム画分の調製を行つ た。 ミクロゾーム画分は終濃度が 1 OmgZm 1となる様に、 0. 5%の Tr i t on X— 100を含む 1 OmMリン酸ナトリウム緩衝液 pH7. 1に懸濁し た。
6. 2. 抗ヒト由来 CM P—シアル酸卜ランスポーター抗体の作成。
抗体作成に利用したアミノ酸配列は CTS I QQGETASKERV I GVで ある。 この内、 C末端側より 17アミノ酸残基はヒト由来 CMP—シアル酸トラ ンスポ一夕一 C末端からの 17アミノ酸残基に一致する。 抗体作成はシグマジェ ノシスジャパンに依頼し、 抗体 (an t i CMP— S i a) はゥサギを免疫化 することで得た。
6. 3. ウエスタンプロッティング解析。
ミクロソ一ム画分を、 12. 5%ポリアクリルアミドゲルを用いて 120Vで 2時間 S D S— P A G Eを行つた後、 1 mA/ c m2の定電流下で 45分間二卜 ロセルロース膜への転移を行った。 ィムノブロッテイングでは、 一次抗体として Rab i t a n t i CMP— S i a、 二次抗体として h o r s e r a d i s h p e r ox i d a s e c on j ug a t e d a n t i r abb i t I gGを用い、 染色には PODィムノスティンキット (Wako) を利用し た。
6. 4. 植物培養細胞由来べシクルの調製。
培養 7日目の植物細胞培養液を 2, 000 r pmで 10分間遠心し、 細胞と培 地を分離した。 回収した培養細胞を 25 OmMスクロース、 ImMEDTAを含 む 1 OmMHEPES— Tr i s bu f f e r (pH7. 4) で 1回洗挣し、 2, 000 r pmで 10分間遠心した後、 再度細胞を回収した。 洗浄後の細胞に 対し 3倍量の l y s i s bu f f e r (25 OmMスクロース、 ImMEDT A、 1 t a b 1 e t/5 Oml Comp 1 e t eプロテアーゼインヒビ夕一 (R
0 c h e D i a gn o s t i c s) を含む 1 OmMHEPES— T r i s b u f f e r (pH7. 4) ) を加え、 手動ホモジナイザーを用いて細胞を破砕し た。 植物体の場合は、 室温で、 l OmMTr i s— HC 1 pH9. 5を lml 加え、 手動ホモジナイザ一を用いて細胞を破砕した。 4° (、 8, O O O r pmで 15分間遠心分離を行い、得られた上清を細胞抽出液とした。細胞抽出液を 4°:、
100, 000 r pmで 1時間超遠心分離し、 得られたペレツ卜をべシクルとし た。 べシクルは 1 Omg/m 1となる様に 25 OmMスクロース、 ImMMgC 12、 0. 5mMジメルカプトプロパノールを含む 1 OmMTr i s— HC 1 b u f f e r (pH7. 0) に懸濁した。
6. 5. ヒト由来 CMP—シアル酸トランスポーター活性の測定。
先に調製したべシクル溶液 50 1に対し、 反応基質溶液 (25 OmMスクロ —ス、 lmMMgC l 2、 0. 5 mMジメルカプトプロパノール、 I t ab l e t/5 Om 1 Comp 1 e t eプロテア一ゼインヒビ夕一および 1 MCMP— [3H] シアル酸 (33, 600 C i/mo 1) を含む 1 OmMTr i s -HC 1 bu f f e r (pH7. 0 ) ) を 50 1加えることで反応を開始した。 C MP—シアル酸取り込み反応は 30°Cで 3分間行った。 ただし、 n ega t i v e c o n t r o 1の反応は 0°Cで 0分間のものである。反応液中に c o 1 d s t op s o l u t i on (25 OmMスクロース、 ImMMgC 12、 0. 5 mMジメルカプトプロパノールおよび 1 MCMP—シアル酸を含む 1 OmM T r i s—HC l bu f f e r (pH7. 0) ) を lml加えることで.反応を停
止した。 得られたサンプルを Ad v a n t e c To y o A045A025A ニトロセルロースフィル夕一に通し、 さらに lmlの co I d s t op s o 1 u t i o nでフィルターを 3回洗浄した。 洗浄後のフィルターを乾燥し、 フィ ルター上の残存3 H放射能活性値を測定した。
また、 0. l%Tr i t on X— 100、 25 OmMスクロース、 ImMM gC l 2、 0. 5mMジメルカプトプロパノ一ルを含む 1 OmMT r i s—HC 1 bu f f d e r (pH7. 0) に懸濁し、 4°Cで 1時間インキュベートした 1 OmgZm 1べシクル溶液についても、 同様にトランスポーター活性の測定を 行った。
次に、 植物細胞の UDP—ガラク 1 ストランスポ一夕一活性を測定した。 先 に調製したべシクル溶液 50 I 1に対し、反応基質溶液(25 OmMスクロース、 ImMMgC 12, 0. 5mMジメルカプトプロパノール、 l t ab l e tZ5 0ml C omp 1 e t eプロテア一ゼインヒビター (Roche) および 1 UDP— [14C] ガラクト一ス (305 C iZmo 1 ) を含む 1 OmMTr i s -HC 1 u f f e r (pH7. 0 ) ) を 50 1加えることで反応を開始し た。 UDP—ガラクト一ス取り込み反応は 30°Cで 3分間行った。 ただし、 ne ga t i v e con t ro lの反応は 0°Cで 0分間のものである。 反応液中に c o l d s t op s o l u t i on (25 OmMスクロース、 ImMMgC 12、 0. 5mMジメルカプトプロパノールおよび 1 MUDP—ガラク 1 ^一ス を含む 1 OmM Tr i s— HC 1 bu f f e r (pH7. 0) ) を lml加 えることで反応を停止した。得られたサンプルを Ad van t e c Toy o A 045 AO 25 Aニトロセルロースフィルターに通し、 さらに lmlの co 1 d s t op s o 1 u t i o nでフィル夕一を 3回洗浄した。 洗浄後のフィル夕一 を乾燥し、 フィルタ一上の残存14 C放射能活性値を測定した。
¾
1. neuBを生産するタバコ培養細胞の解析。
n euB遺伝子の発現が確認された形質転換体の 1つである CN— L株、 およ び野生型 BY 2株の培養細胞から調製した粗酵素溶液について、上記 4.1〜4. 3の記載方法に従って、 各々シアル酸合成反応を行った後 DMB化し、 上記 4. 4の記載の方法に従つて H P L Cによる解析を行つた。 図 2に H P L C分析結果 を示す。
図 2に見られるように、 CN— L株については、標準の DMB— Ne uAc (シ アル酸) と同様の溶出位置に期待されるピークが得られた (図 2の真中のチヤ一 ト) 。 しかしながら、 一方で n e g a t i ve c on t r o lの BY 2株につ いても極微量ではあるが同様のピークが得られた (図 2の一番下のチャート) 。 なお、 図 2の一番上のチヤ一卜が標準の DMB— Ne u Acの HP LC溶出位置 である。
また、 これらのピークを回収しマススペクトル分析を行ったところ、 図 3に示 すように、 CN— L株由来のピークの分子量 425. 43 (図 3の真中) および BY 2株由来のピークの分子量 425. 51 (図 3の右) はともに、 計算された DMB— Ne uAcの分子量 (図 3の左) に一致した。
2. ヒト由来 hCSSを生産するタバコ培養細胞の解析。
2. 1. I n v i t r oシアル酸転移酵素反応。
タバコ B Y 2株、 および h C S S遺伝子が導入された形質転換体の 1つ h C S S I 5株の培養細胞から上記 5. 1. に記載のように調製した細胞抽出液を粗酵 素液として、 上記 5. 2. 〜5. 3. に記載のように、 i n v i t r oにおけ る C M P—シアル酸合成反応を行った後、 得られた酵素反応産物を基質として P A化糖鎖へのシアル酸転移酵素反応を行った。 その結果、 hCSS 15株の抽出 物を用いた反応系において、 P A化糖鎖へのシアル酸転移が認められた (図 4A の I I Iに示されるように S i axGa 1 2 GN 2 M 3— P Aが検出された) 。 図 4の Aはシアル酸転移酵素反応後の反応液の、 そして図 4の Bはシアル酸転移 酵素反応前の反応液の H P L C分析結果である。 このようにして得られた P A化
糖鎖 (S i aiGa 1 2 GN2M3— PA) を回収し、 マススペクトル解析を行 つた結果、 得られた分子量 2011. 25は、 推定される計算値の分子量(図 5) と一致した。 さらに、 これを、 Nァセチルノイラミニダ一ゼで消化し HP LC分 析を行うと、 Ga 1 2 GN2M3— PAが得られた (デ一夕は示さず) 。 これら の結果は、 CMP—シアル酸合成酵素反応において CTPおよびシアル酸から、 目的とする CMP—シアル酸が合成されたことを示している。 これは、 hCSS 15株において、 CMP—シァル酸合成酵素が生産され、 かつ活性を有していた ことを示す。
その一方、 KDNおよび KDOを基質として同様の CMP—シアル酸合成酵素 反応およびシアル酸転移酵素反応を試みたが、 P A化糖鎖へのシアル酸の転移は 確認できなかった (図 4の Aの I Iおよび I V) 。
得られた上記 3つのトランスジエニック植物 No. 1、 No. 2および No. 3について検討した結果を詳述すると、 上記 5. 1. に記載のように得たこれら 3つのトランスジエニック植物 No. 1、 No. 2および No. 3から得た粗酵 素液を、 以下に示す組成の合計 50 ^ 1の反応液中、 CTPおよびシアル酸とと もに 37 °Cで 20時間インキュベートし、 CM P—シアル酸を生成した: 200 mM Tr i s _HC l、 pH9. 5 5 1 OmM DTT 5 2 0 OmM Mg C 12 5 ^ 1、 5 OmM CTP 5 1、 プロテア一ゼイン ヒビター (1錠 Z 2ml) 2 K 5 OmMシアル酸 5 ^ 1、 粗酵素液 2 3 1。
20時間後、 生成した CMP—シアル酸を、 以下に示す組成の合計 100 1 の反応液中、ァクセプ夕一基質としてピリジノアミノ (PA)標識糖鎖 001 (T AKARA社製) Ga 12GN2M3— PA、 および α2, 6シアル酸転移酵素 とともにインキュベートした。 なお、 反応 0時間におけるコントロールとして、 シァル酸転移反応のすべての反応溶液成分を含む溶液を 5分間煮沸した後、 4 、 12, O O O r pmで 15分間遠心分離して得た上清液を用いた: CM P—シァ
ル酸含有反応液 50 i l、 20 OmM 力コジル酸、 ρΗ6· 5 43 1 > 20 OmM MgC 12 5 PA—糖鎖 00 1 (TAKARA社製) 1 β I、 a 2, 6—シアル酸転移酵素 1 1。
3 7 で 20時間反応させた後、 反応液を 5分間煮沸した後、 4°C、 12, 0 00 r pmで 15分間遠心分離し、 得られた上清液を以下に示す条件下、 HPL C (H I TACH I HPLC s y s t e m) で分析した。
溶媒 A : 0. 02% トリフルォロ酢酸、 溶媒 B : 20%ァセトニトリル ZO. 2 %トリフルォロ酢酸、 グラジェント条件: 0→30→0 %溶媒 B (5→40→ 41分) 、 流速: 1. 2mlノ分、 検出器: H I TACH I FL De t e c t o r L - 4780、 検出:蛍光 (Ex ; 3 10 nm、 Em; 380 nm) 、 カラム温度: 30°C、 カラム: Co smo s i 1 5 C 1 8— P (6 X 250 n m; N a c a 1 a i t e s c社製) 。
結果を図 10 Aおよび図 10 Bに示す。 図 10 Aおよび図 10 Bにおいて、 S R Iは、 コントロール植物 (31 — 1株) の粗酵素反応液の HP LCプロフィ一 ル (各プロフィールにおいて、 横軸は H PLC分析における保持時間を示し、 そ して縦軸は蛍光強度を示す)であり、そして、 クローン No. 1、 クロ一ン No. 2、 およびクローン No. 3は、 それぞれ、 トランスジエニック植物 No. 1、 トランスジエニック植物 No. 2、 およびトランスジエニック植物 No. 3の粗 酵素反応液の HP LCプロフィールである。
図 10Aに示されるように、 20時間後の反応液の HP LCプロフィールは、 トランスジエニック植物 No. 1の粗酵素反応液中には、 S i aiGa l S GN 2M3— PAの 1つに類似の溶出ピークを有する成分が存在し (図 10Aにおい て、 左下の太い矢印で示される) 、 トランスジエニック植物 No. 1において h CS S活性が発現されたことを確認した。 また、 図 10Bに示されるように、 ト ランスジエニック植物 No. 2および No. 3においても、 同様の溶出ピークを 有する成分が確認された。
3. TLC分析。
h CS S 15株および BY 2株の抽出物を用いた i n v i t ro CMP— シアル酸合成酵素反応産物を、 さらに、 上記 5. 5. に記載のように TLCを用 いて解析した。 図 6に結果を示す。 hCSS 15株の抽出物を粗酵素液として用 いた反応産物中には、 コント口一ル CMP— 〔3H〕 Ne uAc (図 6の A) と 同じ展開位置 (F r a c t i 0 n 12) に、 CMP— (14C) NeuAcのピ一 クが存在した (図 6の C) 。 一方、 このピークは BY 2株の抽出物を粗酵素液と して用いた反応産物中には存在しなかった (図 6の Bおよび D) 。 これは、 hC SS 15株において CMP—シアル酸合成酵素が生産され、 かつ活性を有してい たことを示す。
得られた上記 3つのトランスジエニック植物 No. 1、 No. 2および No. 3について検討した結果を詳述すると、 トランスジエニック植物の粗酵素液から 以下の手順によりミクロソ一ム画分を調製して分析した。
i) 粗酵素液を、 4°C、 100, 000 r pmで 1時間遠心分離した。
i i) 得られたペレットを、 4°Cで 1時間かけて以下に示す組成の合計 45 1 の溶液中で可溶化した: 200 mM B i c i ne、 pH8. 5 22. 5 K 10% Tr i t onX- 100 4. 5 β dH20 18 1。
i i i) 得られた液を、 4°C、 12, 000 rmpで 15分間遠心分離した。 i v) 得られた上清液 (ミクロソ一ム画分) を、 CTS—NeuB酵素アツセィ に供した。
CTS— NeuB酵素アツセィ (シアル酸合成の測定) は、 以下に示す組成の 反応液を用いて行った: 20 OmM B i c i ne、 pH8. 5 2 20 OmM Mn C 12 2 1、 10 OmM PEP 2 /i I、 ミクロゾーム画分 13 [14C] ManNAc (55mC i/mmo 1 ) 1 n 1 (合計 20 ) 。
酵素反応は、 37°Cで 20時間行った。 次いで、 反応液を、 TLC上にスポッ
トし、そして 1M酢酸アンモニゥム pH 7. 5:エタノール =3: 7で展開した。 展開が終了した後、 TLCシートを 1 cm片に切断し、 各片に残存する放射活性 を、 LS6500 Mu l t i— Purpo s e s c i n t i l l a t i on coun t e r (BECKMAN C〇ULTERTM) で計数した。 なお、 コン トロールとして、 ミクロゾーム画分を、 [14C] Ne uAcまたは [14C] Ma nNAcのいずれかと展開した。
結果を図 11 Aおよび 11 Bに示す。 図 11 Aおよび 11 Bにおいて、 縦軸は 1分間あたりの計数値 (cpm) を、 そして横軸はフラクション番号を示す。 図 11Aは、 コントロールである [14C] NeuAcまたは [14C] Ma nNAc およびコントロール植物(SR— I株)の粗酵素液の結果を、そして図 11Bは、 上記 3つのトランスジエニック植物 No. 1、 No. 2および No. 3のミクロ ソ一ム液を用いた結果である。
図 11 Aおよび 11 Bに見られるように、 トランスジエニック植物 No. 1、 No. 2および No. 3の粗酵素液を用いた場合、 フラクション番号 10~15 に反応で生じた [14C] NeuAcの追加のピークが観察され、 NeuAcが生 成したことが確認された。
なお、 C T S— N e u B酵素ァッセィに用いたミクロソ一ムの濃度は以下の通 りであった (B r ad 0 f o r d法でタンパク質濃度として測定) : SRI (コ ントロール植物) : 2. 17mg/ml、 卜ランスジエニック植物 N o . 1 : 2 0. 7mg/mし 同 No. 2 : 20. 5mgZm 1、 および同 No. 3 : 16. 9mgZm 1。
4. ァシァ口フェツインへの i n V i t r oシアル酸転移酵素反応。
上記 5. 6. に記載の方法に従って、 ニトロセルロース膜を用いて洗浄濾過し た酵素反応産物の残存放射能活性を測定したところ、 hCSS 15株の抽出物を 粗酵素液として用いた反応産物中に、 反応時間の増加とともに、 ァクセプ夕一基 質であるァシァ口フェツインへ〔14C〕 Ne uAcが転移したことが示された(図
7) 。
得られた 3つのトランスジエニック植物 No. 1、 No. 2および No. 3に ついては、 20時間反応して得られた hCS S酵素反応混合物を、 市販のシアル 酸転移酵素 (ST) (TOYOBO社製) と、 以下に示される組成の 1 0 0 1 の反応液中で、 37° (:、 さらに 20時間インキュベートし、 シアル酸を、 合成さ れた C M P—シアル酸からァシァロフエツイン上のガラクト一ス残基に転移させ た。 ァシァ口フェツインは、 ガラクト一ス残基を有する、 STの基質である: h CS Sクローンの酵素反応混合物 50 1、 20 OmM ρΗ6. 5力コジル 酸 3 9 1、 20 OmM MgC l 2、 5 1 0 m gZm 1ァシァ口フエ ツイン 5 1、 ひ 2 , 6—シアル酸転移酵素 1 1。
酵素反応を、 I O O Iの 0. 5Μ EDTAを添加することにより停止した 後、 メンブレンフィルタ一 (ADVANTEC社製) で濾過し、 濾紙を蒸留水で 洗浄した。 濾紙上に残存する放射能活性を、 LS 6500 Mu 1 t i -Pu r p o s e s c i n t i l l a t i o n c oun t e r (B E CKMAN C OULTER™) で計測した。 結果を表 1に示す。
表 1 植物 酵素反応時間 c pm値 ブランク A cmp値 [14C] シアル酸 c mp値 (
SR I . 0時間 57.6 12.33 45.27 0.23
20時間 .59.0 12.33 46.67 0.24
No. 1 0時間 87.0 8.33 78.67 0.44
20時間 738 8.00 730 5.73
No. 2 0時間 44.8 12.67 32.13 0.16
. 20時間 267 7.00 261 1.76
No. 3 0時間 34.8 9.33 25.47 0.12
20時間—1310.4 7.00 1303.4 11.2
表 1に示されるように、 得られた 3つのトランスジエニック植物 No. 1、 N o. 2および No. 3のいずれも、 特に No. 1および No. 3について、 強い シアル酸転移反応が認められた。
これらの結果は、 2つのトランスジエニッククローン植物 No. 1および No.
3が h C S S活性を有し、 しかもこれら植物で産生された h C S S酵素によって 合成された C M P—シアル酸が、 S Tの基質となってシアル酸が転移したことを 示している。
5. hCSTを生産するタバコ培養細胞の解析 (ウエスタンブロッテイング解 析)
mRNAの生産が確認された (データは示さず) 5つの形質転換体 (B 19、 B 20、 B 21、 B 26および B 28) の培養細胞から、 上記 6. 1 - に記載の 方法に従ってミクロソ一ム画分を調製し、 上記 6. 3. に記載のように抗 hCS T抗体を用いてウエスタンブロッテイング解析を行った。 結果を図 8に示す。 図 8に示されるように、 これらの形質転換体のミクロソーム画分に、 約 24. 2 k D aのパンドが確認された (B 19〜28) 。 その一方、 野生型 BY2株の細胞 のミクロソ一ム画分では、 このパンドは存在しなかった。 この結果は、 これら形 質転換体で h C S Tが生産されたことを示す。
6. トランスポ一夕一活性の測定。
上記の形質転換体 B 21、 B 26および B 28株について、 上記 6. 4. に記 載の手順に従ってべシクルを調製し、 上記 6. 5. に記載の方法によってそれら のトランスポー夕一活性を測定した。 結果を図 9の Aに示す。 図 9の Aに示され るように、 nega t i v e c on t r o lとして用いた野生型 BY 2株では、 0°C、 0分と 30°C、 3分のデータを比較してもトランスポート活性は見られな かったが、 形質転換体では、 B 21および B 26株において、 3分間で約 20 f mo 1 -CMP- C3H] シアル酸 Zmg—べシクル、 828株では約10 111
o 1 -CMP- [3H] シアル酸 Zmg—べシクルのトランスポート活性が確認 された。 なお、 図 9の Aにおいて、 横軸は各形質転換体を示し、 各形質転換体の トランスポーター活性は、 棒グラフと隣接する矩形領域で表され、 棒グラフは、 30°C、 3分の活性を、 そして矩形領域は 0° (:、 0分の活性を示している。 これ らの結果は、 形質転換体 B 21、 B26および B28株で発現した hCSTが活 性を保持していることを示す。
hCSTは、 本来、 膜タンパク質である。 そこで、 形質転換体 B 21、 B 26 および B28株で発現した hCS丁が、 実際に膜に局在しているかどうかを調べ た。 このため、 これら形質転換体から得られたべシクル溶液を、 界面活性剤 Tr i t on X- 100で処理し、上記と同様にトランスポ一夕一活性を測定した。 この結果、 各形質転換体の処理試料では、 いずれもトランスポーター活性は認め られなかった。 従って、 これら形質転換体で発現した hCSTは、 いずれも膜タ ンパク質として存在し、 界面活性剤処理によりべシクルから除去されたと考えら れる。
その一方で、 各株から調製されたべシクル試料が活性を損なうことなく調製さ れていることを示す P 0 s i t i V e c on t r o l実験として、 各株のべシ クル試料について、 上記 6. 5. に示す手順に従って、 UDP—ガラクトースト ランスポーター活性を測定した。基質は、 UDP— [14C]ガラクトースである。 図 9の Bに結果を示す。 図 9の Bに示されるように、 野生型の BY 2株では、 3 分間で約 85 f mo 1の UDP— [14C] ガラクト一スの取り込みが確認された のに対し、 形質転換体 B 21株で約 400 f moし B 26株で約 240 f mo 1、 そして B 28株では約 200 f mo 1の取り込み活性が確認された。 ' まとめ
本実施例において、 本発明者らは、 シアル酸合成能をもつ植物細胞を構築する ために、 タバコ培養細胞 BY 2株において、 大腸菌由来のシアル酸合成酵素、 ヒ 卜由来 CM P—シアル酸合成酵素、 そしてヒ卜由来 CMP—シアル酸トランスポ
—夕一を発現させた。
1. CTB— neuB融合タンパク質を植物細胞で発現させた結果、 その形質 転換体 CN— L株は、 シアル酸 (N—ァセチルノイラミン酸) を合成する能力を もつに至った。 ところが、 興味深いことに、 ne g a t i ve c on t r o l の野生型 BY 2株においても、 その抽出物を粗酵素溶液としてシアル酸合成反応 を行ったところ、 シアル酸を合成する能力をもっている可能性が示唆された (図 2および 3) 。 植物細胞は、 一般に、 シアル酸を合成する機能はないと考えられ ているので、 植物においても、 シアル酸合成酵素に類似の酵素群が存在する可能 性がある。 その遺伝子クローニングまたはタンパク質機能の解明が待たれる。
2. C MP—シアル酸合成酵素は、 糖タンパク質の糖鎖にシアル酸を転移する シァル酸転移酵素の基質である C M P—シアル酸を、 C T Pとシアル酸とから合 成する酵素である。 本発明者らは、 タバコ培養細胞 BY 2株において生産させた CMP—シアル酸合成酵素を用いて CMP— Ne uAcを合成した。 図 4Aおよ び図 5の結果から、 この様にして生産された CMP— Ne uAcが、 実際に、 シ アル酸含有動物型糖鎖の合成に利用されたこと、 すなわち、 動物由来のシアル酸 転移酵素の基質となることが示された。
その一方、 Ne uAcのアナログである KDNあるいは KDOは、 ニジマス精 子由来の C M P—シアル酸合成酵素の基質となるが、 動物由来の C M P—シアル 酸合成酵素の基質として利用されにくいという報告がある (Te r ad a e t a l) 。 また、 ラット由来のひ 2, 6—シアル酸転移酵素は、 糖鎖非還元末端 j3 1, 4—ガラクト一ス結合に KDNをシアル酸転移することが知られている (A n g a t a e t a 1) 。 そこで、 本発明者らはこれらシアル酸のアナログを 基質として、 同様に、 糖鎖への付加を試みが、 シアル酸の付加を確認することは できなかった (図 4B) 。 このことは、 KDNおよび KDOが、 植物細胞におい て生産されたヒト由来 CMP—シアル酸合成酵素の基質とはならなかったことを 示す。 さらに、 TLCにおいて、 形質転換体が、 CTPおよび [14C] Ne uA
cから CMP— [14C] Ne u Acを合成する能力を有することを確認した後、 本発明者らは、 実際に、 CMP— [14C] Ne u Acが糖タンパク質上に存在す るァシァ口糖鎖に付加されることを証明した。 これは、 )31, 4一ガラクトース 転移酵素を発現する植物細胞 GT 6株の様なモデル植物細胞に、 CMP—シアル 酸合成酵素を導入すれば、 植物細胞'内で糖タンパク質糖鎖にシアル酸を付加し得 る有用植物細胞の構築が可能であるということを示す。
3. また、 本発明者らは、 植物細胞におけるヒト由来 CMP—シアル酸トラン スポーターの発現も試みた。 糖ヌクレオチドトランスポーターは、 糖鎖修飾の場 であるゴルジ体内に存在する糖転移酵素の基質である糖ヌクレオチドを、 細胞質 側からゴルジ体内へ輸送するために必要とされるタンパク質である。 抗 CMP— シアル酸トランスポー夕一抗体を用いたウェスタンプロッティング解析の結果を 考慮して、 形質転換体 B 21、 B 26および B 28株におけるトランスポー夕一 活性を測定した。 その結果、 べシクル lmgあたり B 21および B 26株では、 酵素反応時間 3分間の間に約 20 ί mo 1の、 そして B 28では約 10 f mo 1 の CMP—シアル酸取り込み活性を有することが示された。
さらに、 べシクルを界面活性剤 T r i t o n- X— 100で処理し、 同様のト ランスポート活性を測定すると、 見かけ上の活性は確認されなかった。 このこと は、 発現させた CMP—シアル酸トランスポ一ターが、 べシクル膜に存在するこ とを示している。
また、 本発明者らが、 先に、 植物細胞での糖鎖合成経路改変を期待して、 タパ コ BY2株に、 ヒト由来 )31, 4一ガラクトース転移酵素を導入した際、 UDP —ガラクトーストランスポー夕一を発現させなくとも、 糖鎖にガラクトースが付 加された。 また、 BY 2株を含むいくつかの植物において、 β 1, 3—ガラクト —ス結合を含むいわゆるルイス Α構造をもつ糖鎖が存在することが報告されてい ることから、 少なくとも BY2株には UDP—ガラクトーストランスポ一夕一が 存在していると考えられた。 これは、 今回の CMP—シアル酸トランスポー夕一
活性測定条件の指標として利用できる。 そこで、 我々は、 UD P—ガラクト一ス トランスポーター活性の測定を行った。 野生型 B Y 2株おいて、 UD P—ガラク ト一スのトランスポート活性 3分間の反応において、 べシクル l mgあたり約 8 5 f m o 1の取り込み活性が確認された。 その一方、 形質転換体についても、 同 様に、 UD P—ガラクトース卜ランスポート活性を有することが示された。
4. 本発明者らは、 植物に、 シアル酸および CMP—シアル酸合成能を付加さ せることができた。 植物を利用した動物由来糖夕ンパク質の生産が盛んに行われ ている現在、 より本物に近いタンパク質の生産へ向けて、 糖鎖へのシアル酸付加 機能を有する植物細胞の構築は、 有用物質生産への有効な手段を提供する。 産業上の利用可能性
動物型糖鎖付加機能をもつ植物細胞が提供される。 シアル酸を取り込み、 糖夕 ンパク質に含まれる糖鎖のガラクトース残基にシアル酸を付加し得る植物細胞お よびそれを用いる方法が提供される。 本発明の植物細胞により産生される糖タン パク質は、 動物型の糖鎖を有するので、 動物特にヒトに対して抗原性を有さず、 それゆえ、 ヒトを含む動物への投与に適する糖タンパク質が提供される。