明細書
除草用混合液剤 技術分野
本発明は、 生活環境に生育する不必要で有害な雑草類を効率的に防除する除 草技術に関する。 背景技術
農耕地、 非農耕地を問わず雑草類の繁茂は、 農業生産物の生産量の低下や生 活環境の悪化をもたらしている。 これらの対策として除草剤が広く利用されて いる。 中でも N—ホスホノメチルダリシナ一トの塩類 (以下グリホサートとい う) は、 安価でかつ殆どの植物に除草活性を有し、 土壌に落下した後速やかに 分解し、 または土壌に吸着されて、 薬剤を散布した直後から作物を植栽できる 特徴から非常に広く使用されている。 グルホシネ一トも同じ様な作用性を持つ ていることから広く使用されている。 両者の違いは、 グリホサートが遅効的で 残効性に優れているのに比べ、 グルホシネートは速効的に除草作用を表す特徴 を有しているところにある。 ダルホシネートを第 1有効成分とし、 縣濁された 他の有効成分を混合した除草剤が開示されている (例えば、 特許第 3 2 9 3 8 6 7号公報参照。)。
グリホサ一トは遅効的であると同時に一部の植物に対して効果が低い欠点 を有していた。 ダルホシネートは、 速効的で、 多種の植物に対して活性を有す るものの根部まで枯死させることができないため、 植物の再生があり残効性に 劣る欠点を持っていた。 これらの欠点を克服するため、 ダリホサ一トの場合は 各種の植物ホルモン剤やプロ トポルフィ リノ一ゲンォキシダ一ゼ阻害剤等を 混合して遅効性の欠点や効果の低い草種への適用拡大を図っている。 しかしな がらダルホシネートに匹敵するような速効性を付与するまでには至っていな い。 一方、 ダルホシネ一卜に他薬剤を混合した場合は、 ダルホシネートによつ て植物組織が速やかに破壌され、 混合した他薬剤の植物体内への吸収が阻害さ
れてその効果が十分発現しにくい場合があった。 また他薬剤が縣濁状態の場合 は、 液剤の保存安定性を確保することに困難性を有していた。 更に、 環境に直 接放出される農薬の投下量の減少は常に求められることであり、 投下薬量の減 少は同時に生産コストの低減につながり、 望まれているところである。
上記のように、 グリホサートは遅効的であると同時に一部の植物に対して効 果が低い欠点を有していた。 ダルホシネートは、 速効的で、 多種の植物に対し て活性を有するものの根部まで枯死させることができないため、 植物の再生が あり残効性に劣る欠点を持っていた。 本発明はダリホサー卜の有する残効性を 維持しつつ速効性を併せ持たせ、 保存中に有効成分が沈降する恐れを無く し、 投下薬剤量を 2 0 %程度減少させることを目的としている。 発明の開示
本発明は、 N _ホスホノメチルダリシナート (N— ( phosphonomethyl) glycinate) の塩.類に対してク レホシ不一卜 ( glufosinate-ammonium) を、 刖 者: 後者が重量比で 5 : 1 - 1 5 : 1の割合で混合した有効成分を含有するこ とを特徴とする除草用混合液剤である。 また、 本発明は N—ホスホノメチルダ リシナ一トの塩類に対してダルホシネートを、 前者: 後者が重量比で 5 : 1 - 1 5 : 1の割合で混合した有効成分を含有する混合液剤を使用することを特徴 とする除草方法である。 さらに、 前記した有効成分を含有する混合液剤を使用 することによって、 速効性を付与したことを特徴とする除草方法である。
本発明では、 ダリホサートの有する根部まで枯死せしめる能力を維持しつつ、 速効性を併せ持たせるために、 グリホサートを主剤にして、 その 1 5から 1 / 1 5のグルホシネートを添加することにより残効性を維持しつつ速効性を 付与するとともに投下薬剤量を 2 0 %程度減少することを可能にしたもので ある。 また、 ダリホサ一トとグルホシネートは共に水溶性であるので、 混合剤 として他に懸濁剤を採用した場合のように、 保存中に有効成分が沈降する恐れ が無い。
発明を実施するための最良の形態
本発明において、 N—ホスホノメチルダリシナ一トの塩類は、 炭素数が好ま しくは 1〜4のアルキルアミン塩ゃアンモニゥム塩が好適である。 また、 本発 明の除草用混合液剤中において、 N—ホスホノメチルダリシナートの塩類の濃 度は 1〜 6 0重量%が好ましく、 特には 3 ~ 3 0重量%が好適である。 また、 グルホシネートの濃度は 0. 1〜 1 2重量%が好ましく、 特には 0. 2 ~ 6重 量%が好適である。 また、 カチオン界面活性剤又は両面界面活性剤が含有する 場合は、本発明の除草用混合液剤中、 界面活性剤の濃度が、 0. 1〜 1 0重量% が好ましく、 特には 0. 5〜 5重量%が好適である。
本発明の除草用混合液剤の製剤方法としては、 有効成分である、 N—ホスホ ノメチルダリシナートの塩類及びダルホシネートに対して、 好ましくは上記の カチオン界面活性剤及びノ又は両性界面活性剤を添加し、 水で希釈して除草用 混合液剤とする方法が挙げられる。
本発明の除草用混合液剤の有効成分量は、 上記のように従来の除草剤に比較 して少なくできる特長を有する。
以下に、 本発明の実施の形態を製剤例及び生物効果試験例に基づき、 具体的 に説明する。
実施例
[製剤例 1 ]
ダリホサ一トイソプロピルアミン塩の 4 1 %溶液 7 4 gに対して、 ダルホシ ネートの 5 0 %溶液をそれぞれ、 ① 2. 0 g② 4. 0 g③ 6. 0 g④ 8. 0 g ⑤ 1 2. 0 gの各量にて添加する。 次いで界面活性剤として、 塩化ラウリルジ メチルベンジルアンモニゥム 5. 0 g (力テナール C B 5 0 : 東邦化学社商品 名)、 更に水を加えて重量合計を 1 0 0 gに調整し、 攪拌混合して液剤を作製 した。
[製剤例 2 ]
ダリホサ一トアンモニゥム塩の 4 1 %溶液 74 gに対して、 ダルホシネート
の 5 0 %溶液をそれぞれ、 ① 2. 0 g② 4. 0 g③ 6.. O g④ 8. O g⑤ 1 2. O gの各量にて添加する。 次いで界面活性剤、 力ルポキシメチルヒドロキシェ チルイミダゾリゥムべタイン 5. 0 g (アンヒトール 2 0 Y:花王社商品名)、 更に水を加えて重量合計を 1 0 0 gに調整し、 攪拌混合して液剤を作製した。
[試験例 1 ] (ポッ ト試験)
1 5 0 c m2のプラスチック容器で栽培した、 メヒシバ 5. 5葉期、 エノ コログサ 5葉期、 ァオビュ 4. 2葉期、 ォナモミ 5. 3葉期の植物に、 上記製 剤例 1及び製剤例 2によって調製した 1 0種類の液剤、 及び対照として、 市販 されているグリホサ一トイソプロピルアミン塩 4 1 %液剤、 ダリホサートアン モニゥム塩 4 1 %液剤、 ダルホシネートの 1 8. 5 %液剤の計 1 3種類の薬剤 を 1平方メ一トル当たり、 0. 5m l、 1. 0 m 1 に相当する量を水で希釈し て、 1平方メートル当たり 2 0 0 m l散布した。 その結果を [表 1 ] に示す。 表中、 供試剤の製剤例は前数字がグリホサート塩の濃度 (重量%) で、 後数 字がダルホシネート濃度 (重量%) である。 調査実施日は左側数値が薬剤散布 3 日後のもので、 右側の数値が薬剤散布 2 8 日後のものである。 評価基準は、 1 0段階評価であり、 「0 :薬剤反応なし」、 「 1 0 :完全枯殺」 とし、 除草効果が 大となるに従って、 数値も大となっている。
供試剤 処理量 シ Λ' エノコロク、、サ ァオビュ ォナモミ ml/m
製剤例 1① 0. 5 2 9 1 9 4 9 5 8
30%: 1% 1. 0 4 10 2 10 5 10 7 10 製剤例 1.② 0. 5 4 9 2 10 5 10 5 9
30%:2% 1.0 5 10 3 10 7 10 8 10 製剤例 1③ 0. 5 4 10 2 10 6 10 10
30%:3% 1. 0 6 10 3 10 7 10 8 10 製剤例 1④, 0. 5 5 10 2 10 7 10 7 10
30%:4% 1. 0 6 10 3 10 7 10 8 10 製剤例 1 (E) 0. 5 5 10 2 10 7 10 7 10
30% :6% 1. 0 6 10 3 10 7 10 8 10 製剤例 2 ©. 0. 5 2 9 1 9 4 9 5 8
30%: 1% 1.0 4 10 2 10 5 10 7 10 製剤例 2 © 0.5 4 9 2 10 5 10 5 9
30¾:2% 1.0 5 10 3 10 6 10 8 10 製剤例 2③ 0.5 4 10 2 10 6 10 6 10
30% :3% 1.0 6 10 3 10 7 10 8 10 製剤例 2④ 0.5 5 10 2 10 7 10 7 10
30% :4% 1.0 6 10 3 10 7 10 8 10 製剤例 2⑤. 0.5 5 10 2 10 7 10 7 10
30¾: 6% 1.0 6 10 3 10 7 10 8 10 ク、、 リホサ—トイ!; 0. 5 0 9 0 10 2 10 0 10 フ。 Πヒ。 ルァミン 1. 0 0 10 0 10 2 10 0 10 塩 41%
ク' リホサ-トアン 0.5 0 9 0 9 2 10 0 10 モニゥム 1.0 0 10 0 10 3 10 0 10
41¾
ク、、ルホシネ-ト 0. 5 5 10 2 10 7 10 7 10
18.5% 1. 0 6 10 3 10 7 10 8 10
[試験例 2] (圃場試験)
試験場所 : 関東鉄道 の下妻保線区内 ( 日 本国所在)
試験植物 : セイタカァヮタ"チリウ 3 0 〜 4 0 cm
才ォァレチノキ'ク 2 5〜 4 0 cm
スギナ 1 5 ~ 2 0 cm
メ ヒ シノ 2 0 〜 3 0 cm
ェノ コ ロ グサ 2 0 〜 3 0 cm
薬剤散布日 : 2 0 0 1年 9 月 1 3 日
試験規模 : 1 0 m 2Z区、 2 反復
試験方法 : 刈 り 払い 4 週間後、 各液剤の所定量を 1 平方メ ー トル当 た り 2 0 0 m 1 茎葉部に散布 した。
調査月 日 : 2 0 0 1 年 9 月 2 0 日 、 1 0 月 1 1 日
試験結果を [表 2] に示す。 表中、 供試剤の製剤例は前数字がダリホサー卜 塩の濃度 (重量%) で、 後数字がダルホシネート濃度 (重量%) である。 調査 実施日は左側数値が薬剤散布 7 日後のもので、 右側の数値が薬剤散布 2 8 日後 のものである。 評価基準は、 1 0段階評価であり、 「 0 : 薬剤反応なし」、 「 1 0 : 完全枯殺」 とし、 除草効果が大となるに従って、 数値も大となっている。
表 2
供試剤 処理量 セイタカァヮ ォオアレチノ スキ'ナ メヒシハ' エノ]ロク'サ
ral/m タ'チ'ノウ キ'ク
製剤例 1 ① 1. 0 7 9 7 8 6 8 7 8 8 9
30¾: 1¾ 7 9 . 8 8 6 7 8 9 8 9 製剤例 1 ② 1. 0 8 9 8 10 7 9 9 10 8 8
30¾:2¾ 8 10 8 10 7 8 8 10 8 9 製剤例 1 ③ 1. 0 8 10 8 10 7 9 9 10 9 10
9 10 9 10 7 9 9 10 9 9 製剤例 1 ④ 1. 0 9 10 9 10 8 9 9 10 9 9
30¾:4¾ 9 10 9 10 7 9 9 10 9 10 m ^sc ¾ Μ'4| ^ji 1 (ξ)
ti^ 1. 0 9 10 9 10 8 10 10 10 9 10
6 i% : b% 8 10 9 10 8 10 9 9 9 9 製剤例 2① 1. 0 6 8 8 9 6 8 7 8 7 8
30%: 1% 7 9 7 8 6 8 8 9 8 9 製剤例 2② 1. 0 8 10 8 10 7 9 9 10 8 8
30¾:2¾ 8 9 8 10 6 8 8 10 8 9 製剤例 2③ 1. 0 8 10 8 10 7 9 9 10 9 10
30%: 3¾ 9 10 9 10 7 9 9 10 9 9
Ω
製剤例 2④ 1. 0 q 1 i n 11 n 0
u 0 Q Q Q Q
y
Q 7
30¾:4¾ 丄 u y 丄 u 1丄 n U 製剤例 2⑤ 1. 0 9 10 q 8 10 Qf Q 1 fl
30% : 6% 8 10 Q 1 n u u 10 1 Π Q j Q Ό n o ク' リホサ -トイリ 1. U 2 10 L 10 1 6 0 10 ύ 9 すロピルァミン 2 10 1 10 2 3 7 9 8 9 塩 4
ク' リホサ -トアン 1. 0 1 10 1 10 2 3 7 9 7 9 モニゥム塩 2 10 2 10 2 3 6 9 8 9
41¾
ク'ルホシネ-ト 1. 0 8 9 9 9 8 10 9 9 9 8
18. 5% 9 9 9 10 7 9 9 8 9 9
以上の試験例で明らかなように、 グリホサート塩に対して、 重量比にて、 そ の 1ノ 5から 1ノ1 5量のダルホシネートを混合することによって、 ダリホサ 一トの欠点であった速効性が付与され、 効果の発現が極めて悪かったスギナを 防除できる。 同時に、 残効性を維持しつつ単位面積当たりの農薬投下量、 価格 を軽減することを可能にした。 産業上の利用可能性
本発明の除草用混合薬剤を使用することによって、 ダリホサ一トの有する残 効性を維持しつつ速効性を併せ持たせ、 保存中に有効成分が沈降する恐れを無 くし、 投下薬剤量を 2 0 %程度減少させることができる。 また、 防除が困難で あったスギナの防除を可能にすることができる。