明細書
レーザビームによるアブレーション方法及びアブレーションに供する装置 技術分野
本発明は、 レーザビームにより加工対象物をアブレーシヨンする方法、 及 びアブレーシヨンに供する装置に関する。 背景技術
レーザビームは治療用や加工用として様々な分野で用いられている。例え ば、 眼科分野では、 レーザビームにより角膜をアブレーシヨン (切除) して 角膜の曲率を変えることにより眼の屈折異常を矯正するレーザ装置が知ら れている。 この種の装置では、 レーザビームの 1ショット当たり (または 1 スキャン当たり) のアブレーシヨンレート (ァプレーション深さ) は、 レー ザ出力や導光光学系の経年変化等の要因によりしばしば変化する。 このため 、アブレーションレートの変化に対応させて加工対象物をアブレーションす ることが重要となる。
アブレーシヨンレートの変化に対応するために、 本出願人は、 特開平 6— 2 2 6 4 7 1号において 1つの方法を提案している。 この方法は、 既知のァ ブレーシヨンレートを持つ透明平板 (P MMA板) に、 所期する屈折力を持 つようにレーザ照射により曲面を形成し、 アブレーションにより形成された 透明平板曲面部分の屈折力をレンズメータ等で測定し、 その測定結果に基づ きアブレーシヨンのためのデータを較正する、 というものである。
このような方法により、 アブレーションレートの変化に対応させて加 ェ対象物をアブレーシヨンすることができるようになつたが、 より精度 良くアブレーションするためのさらなる技術も思考されている。
本発明は、 アブレーシヨン状態を容易に評価することができ、 また、 加工 対象物を精度良くアブレーションすることができる方法、及ぴそれに供する
装置を提供することを技術課題とする。 発明の開示
上記課題を解決するために、 本発明は、 以下のような構成を備えることを 特 ί敷とする。
(1) レーザビームにより加工対象物をアブレーシヨンする方法は、 加 ェ対象物の曲面形状に近似した第 1の曲面形状を持つ基準物に対して第 2 の曲面形状を形成すべくレーザ照射条件を定めてレーザ照射する照射段階 と、 レーザ照射により実際に形成された第 3の曲面形状を測定する測定段階 と、得られた第 3の曲面形状に基づき第 2の曲面形状に対する形状変化を解 析する解析段階と、 を有することを特徴とする。
(2) (1) のアブレーシヨン方法は、 さらに、 レーザ照射装置の制御 データを解析結果に基づき較正する較正段階を有することを特徴とする。
(3) (1) のァプレーシヨン方法は、 さらに、 加工対象物を所期する 形状にするためのアブレーションデータを入力する入力段階と、入力された アブレーションデータを解析結果に基づき較正する較正段階と、 を有するこ とを特敷とする。
(4) (1) のァプレーシヨン方法は、 さらに、 解析結果を表示する表 示段階を有することを特徴とする。
(5) (1) のァプレーシヨン方法において、 測定段階では角膜形状測 定装置が使用されることを特徴とする。
(6) (1) のアブレーシヨン方法において、 基準物は、 加工対象物の アブレーションレートに対して既知のアブレ一シヨンレートを持つことを 特徴とする。
(7) レーザビームによるアブレーシヨンに供する装置は、 加工対象物 の曲面形状に近似した第 1の曲面形状を持つ基準物に対して第 2の曲面形 状を形成すべくレーザ照射条件を定めてレーザ照射して実際に形成された
第 3の曲面形状を測定したデータを入力する測定データ入力手段と、入力さ れた第 3の曲面形状に基づき第 2の曲面形状に対する形状変化を解析する 解析手段と、 を有することを特徴とする。
( 8 ) ( 7 ) のアブレーシヨンに供する装置は、 レーザ光源からのレー ザビームを加工対象物に導光する導光光学系と,導光光学系によるレーザビ ームの加工対象物への照射位置及び照射時間を制御する制御手段と, を備え るレーザ照射装置であり、 さらに、 制御手段の制御データを解析結果に基づ き較正する較正手段を有することを特徴とする。
( 9 ) ( 7 ) のアブレーシヨンに供する装置は、 さらに、 加工対象物を 所期する形状にするためのアブレーションデータを入力するアブレーショ ンデータ入力手段と、入力されたアブレーシヨンデータを解析結果に基づい て較正する較正手段と、 を有することを特徴とする。 図面の簡単な説明
図 1は、 アブレーシヨン装置システムの概略構成図である。
図 2は、 レーザ照射装置の導光光学系及び制御系の概略構成図である。 図 3は、 分割アパーチャ板の概略構成図である。
図 4は、 角膜形状測定装置の概略構成図である。
図 5は、基準物のレーザ照射前の曲面形状、 レーザ照射により予定される曲 面形状、 及びレーザ照射後の実際の曲面形状を説明する図である。
図 6は、 レーザ照射により予定されるアブレーシヨン深さと実際のアブレ一 ション深さとの関係を示す図である。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。 図 1は、 本発明に係 る眼科用のアブレーション装置システムの概略構成図である。
2 0 0はエキシマレーザビームにより患者眼の角膜をアブレーションす
„
4 るレーザ照射装置である。 1 0は凸曲面形状を持つ基準物であり、 照射装置
2 0 0の較正用に供する。 基準物 1 0は透明な P MMA (ポリメチルァクリ ルレート) から成り、 その凸曲面形状は人眼の角膜形状に似た曲率を持つ。 例えば、 人眼の平均的な曲率半径 R = 7 . 8 mmの半球面を持つ。 この半球 面の直径は 1 2 mmであり、 1 O mm以上あることが好ましい。 1 1は基準 物 1 0を支持する支持器であり、 レーザ照射中に基準物 1 0を安定して支持 できればその構成は特に問わない。 なお、 レーザ照射により発生するカスが アブレーシヨン面に付着してアブレーション後の形状に影響を与えるのを 防ぐため、 カス除去手段 (ファンによるカスの吹き飛ばし、 または吸引ボン プによるカスの吸引など) を支持器 1 1または基準物 1 0の近辺に設けるこ とが好ましい。
1 0 0は角膜形状測定装置であり、後述するように、 患者眼の角膜に多数 の円環状のプラチドリングを投影してその像を検出することにより、角膜の 広い範囲にわたって角膜曲率分布を得ることができ、角膜表面形状を測定す ることができる。 なお、角膜形状測定はブラチドリングを使用した構成に限 られるものでなく、例えば、 スリット光により光切断した断面像を得て、 こ れから角膜表面形状を測定する構成でもよい。 この測定装置 1 0 0は、角膜 だけでなく基準物 1 0の形状を測定する装置としても使用される。 これによ り、 専用の測定装置を用意しなくても済むので、 経済的に有利である。
3 0は解析装置であり、 解析部 3 1、 モニタ 3 2、 キーボード等の入力部
3 2、 を備える。 解析部 3 1は、 測定装置 1 0 0で得られた角膜形状データ と眼屈折力分布データとに基づき屈折矯正手術時のアブレーシヨンデータ を解析する機能を持つ。 また、 レーザ照射に対するアブレーシヨンむら等を 基準物 1 0の測定結果に基づき解析する機能や、照射装置 1 0 0の較正デー タを解析する機能等を持つ。 解析装置 3 0で得られた解析結果は、 照射装置 1 0 0のコンピュータ 2 0 9に入力される。 なお、 解析装置 3 0の機能は、 測定装置 1 0 0やコンピュータ 2 0 9に持たせてもよレ、。
図 2は、照射装置 2 0 0の導光光学系及び制御系を説明する概略構成図で ある。 2 1 0は 1 9 3 n mの波長を持つエキシマレーザビームを出射するレ 一ザ光源である。 レーザ光源 2 1 0から出射されたレーザビームは、 ミラー 2 1 1 , 2 1 2により反射され、 平面ミラー 2 1 3でさらに反射される。 ミ ラー 2 1 3はミラー駆動部 2 1 4により図における矢印方向に平行移動可 能であり、 レーザビームをガウシアン分布方向に平行移動 (走査) する。 2 1 5はイメージローテータであり、イメージローテータ駆動部 2 1 6により 中心光軸を中心に回転駆動され、 レーザビームを中心光軸周りに回転させる 。 2 1 7はレーザビームの方向を変えるミラーである。
2 1 8はアブレーシヨン領域を円形状に制限する可変円形アパーチャで あり、 アパーチャ駆動部 2 1 9によりその開口径が変えられる。 2 2 0はァ ブレーシヨン領域をスリット状に制限する可変スリットアパーチャであり、 アパーチャ駆動部 2 2 1により開口幅とスリツト開口の方向とが変えられ る。 2 2 2 , 2 2 3はレーザビームの方向を変えるミラーである。 2 2 4は 円形アパーチャ 2 1 8およびスリットアパーチャ 2 2 0を患者眼の角膜 E c上に投影するための投影レンズである。
また、 スリツトアパーチャ 2 2 0とミラー 2 2 2との間の光路には、 分割 アパーチャ板 2 6 0が挿脱可能に配置される。 分割アパーチャ板 2 6 0は、 分割シャツタ 2 6 5との組み合わせにより、アブレーシヨン領域をさらに制 限する (スキャン領域を選択的に抽出する) 。 この分割アパーチャ板 2 6 0 及び分割シャツタ 2 6 5は、角膜 E cの非対称成分をアブレーションすると きに使用される。 分割アパーチャ板 2 6 0を光源 2 1 0側から見ると、 図 3 に示すように、 同じ大きさの円形小アパーチャ 2 6 1が 6個並んでいる。 こ れらの小アパーチャ 2 6 1を分割シャツタ 2 6 5が持つシャツタ板 2 6 6 によつて選択的に開閉することにより、アブレーション領域をさらに制限し てレーザ照射することができる。 なお、 各小アパーチャ 2 6 1には、 その開 口を通過する際に起こる回折によるレーザビームの強度分布を補正する補
正光学系が設けられている。分割アパーチャ板 2 6 0及び分割シャツタ 2 6 5は、駆動部 2 6 8により、 中心光軸の垂直な平面内で移動可能となってい る。
2 2 5は 1 9 3 n mのエキシマレーザビームを反射して可視光及び赤外 光を通過する特性を持つダイクロイックミラーであり、投影レンズ 2 2 4を 経たレーザビームはダイクロイツクミラー 2 2 5により反射されて角膜 E cへと導光される。 ダイクロイツクミラー 2 2 5の上方には、 固視灯 2 2 6 、 対物レンズ 2 2 7、 双眼の顕微鏡部 2 0 3、 が配置される。
2 5 0はレーザ光源 2 1 0や各駆動部 2 1 4, 2 1 6, 2 1 9 , 2 2 1 , 2 6 8等を制御する制御部であり、 コンピュータ 2 0 9に接続されている。 この照射装置 1 0 0におけるアブレーシヨンは次のように行われる。一定 の深さでアブレーシヨンする場合、 ミラー 2 1 3を図 2中の矢印方向に平行 移動させ、 レーザ光源 2 1 0からのレーザパルスの繰返し周波数を踏まえた 速度でレーザビームをガウシァン分布方向へ走査する。 ミラー 2 1 3はレー ザパルスに同期させて移動される。 すなわち、 ある移動位置で 1パルスまた は数パルス照射後にミラー 2 1 3を次の位置に移動させ、再び 1パルスまた は数パルス照射後にミラー 2 1 3を移動させる。 この動作をアパーチャ 2 1 8の開口で制限される領域の一端から他端まで繰り返し、 レーザパルスを重 ね合わせる。 そして、 1走査毎に所定角度ずつ走査方向を変える。 この重ね 合わせの走査方向は、 放射状に分散するようにすることが好ましい。 なお、 この対象物を均一にアブレーションする方法は、特開平 6— 1 1 4 0 8 3号 に詳細に記載されているので、 詳しくはこれを参照されたい。
また、 各走査におけるミラー 2 1 3の移動速度を変化させることにより、 加工対象物上でのレーザパルスの重ね合わせを変化させることができる。 し たがって、 ミラー 2 1 3の移動速度を適切に制御すれば、 凸曲面に対しても 略均一な深さでアブレーションすることができる。
近視矯正のための球面成分を取り除くべく角膜 E cの中央部を深くアブ
レーシヨンする場合は、 次のようにする。 円形アパーチャ 2 1 8の開口によ り制限された領域内を、 ミラー 2 1 3を順次移動させることによりレーザビ ームをガウシアン分布方向に走査する。 そして、 レーザビームが 1走査され るごとにイメージローテータ 2 1 5の回転によりレーザビームの走查方向 を変更する (例えば、 1 2 0度間隔の 3方向に走査する) 。 これを円形ァパ 一チヤ 2 1 8の開口径を順次変えるごとに行うことにより、角膜 E cの中央 部を深く周辺部を浅くアブレーシヨンすることができる。乱視成分を取り除 く場合は、 円形アパーチャ 2 1 8の代わりにスリットアパーチャ 2 2 0で同 様な制御を行う。
また、 部分的にアブレーシヨンするときは、 分割アパーチャ板 2 6 0を使 用する。 分割アパーチャ板 2 6 0を光路に配置し、 分割アパーチャ板 2 6 0 が持つ小アパーチャ 2 6 1の位置を制御すると共に、分割シャッタ 2 6 5に より小アパーチャ 2 6 1を選択的に開閉する。 ミラー 2 1 3の移動によりレ 一ザビームを走査することにより、 開放された小アパーチャ 2 6 1を通過す るレーザビームのみが部分的に照射される。
図 4は、 測定装置 1 0 0の概略構成図である。 角膜形状測定光学系は、 測 定用指標投影光学系 1 1 0と指標検出光学系 1 2 0と力 ら成る。投影光学系 1 1 0は、 中央部に開口を持つ円錐状のブラチド板 1 1 1、 L E D等の複数 の照明光源、 1 1 2、 反射板 1 1 3、 を備える。 ブラチド板 1 1 1には、 測定 光軸 1を中心にした同心円状に、多数の透光部と遮光部とを持つリングパ ターンが形成されている。光源 1 1 2から出射された照明光は反射板 1 1 3 で反射され、 プラチド板 1 1 2を背後からほぼ均一に照明する。 ブラチド板 1 1 2の透光部を透過したリングパターンの光は、 角膜 E cに投影される。 基準物 1 0の曲面形状を測定するときは、患者眼に代えて基準物 1 0が所定 の位置に配置される。
検出光学系 1 2 0は、 ビームスプリッタ 1 2 1、 ミラー 1 2 2、 撮影レン ズ 1 2 3、 C C Dカメラ 1 2 5、 を備える。 投影光学系 1 1 0により投影さ
れたリングパターンの反射光は、 ビームスプリッタ 1 21とミラー 122と でそれぞれ反射された後、撮影レンズ 1 23により CCDカメラ 1 25の撮 像素子面上に結像する。 また、 この検出光学系 35は観察光学系を兼ねてお り、 図示なき前眼部照明光源によって照明された患者眼の前眼部像は、 CC Dカメラ 1 25の撮像素子面上に結像し、 TVモニタ 1 26上に表示される ビームスプリッタ 1 21の後方には、患者眼の眼屈折力分布を測定する屈 折力測定光学系 1 30が配置されている。 この屈折力測定光学系 1 30は、 回転セクタにより走査されるスリット光を患者眼の眼底に投影する光学系 と、 スリツト光の走査方向に対応した経線方向で角膜 E cに略共役な位置に 測定光軸を挟んで対称に配置された受光素子を複数対持つ受光光学系と、 を 有し、 スリット光と受光素子とを光軸回りに同期して回転させることにより 、対となる受光素子の各々の位相差信号に基づいて各経線方向で変化する屈 折力分布を広い範囲で得る。 なお、 この眼屈折力分布測定については、 特開 平 10— 108837号、特開平 1 1一 3421 52号に詳細に記載されて いるので、 詳しくはこれを参照されたい。
CCDカメラ 1 25の出力と屈折力測定光学系 130が持つ受光素子の 出力とは、 演算 ·制御部 140に接続されている。 演算 ·制御部 140は、 CCDカメラ 125で撮像された像を画像処理して、 プラチドリング像のェ ッジを検出する。 そして、 所定の角度 (例: 1度) ステップ毎に角膜中心に 対する各エッジ位置を得ることにより、 角膜曲率を求める。 基準物 10の曲 面形状についても同様に処理する。 演算 ·制御部 140により得られた角膜 E c及び基準物 10の演算結果は、 トポグラフィとして TVモニタ 1 26に カラー表示される。 また、 演算 '制御部 140により得られた眼屈折力分布 も、 カラーマップとして TVモニタ 1 26に表示される。
以上のようなアブレーション装置システムにおいて、アブレーシヨン状態 の評価及び較正方法について説明する。
まず、 照射装置 2 0 0の導光光学系に対し、 基準物 1 0を所定の位置に配 置する。 照射装置 2 0 0のコンピュータ 2 0 9により、 あるレンズ分を矯正 するものとして、 その度数データを入力する。 例えば、 一 3 . 0 0 Dの近視 矯正をすべく、 + 3 . 0 0 Dのレンズを取り除くようなデータを入力する。 また、 図 5 ( a ) に示すように、 基準物 1 0の曲面形状 R 1のデータ (曲率 二半径 7 . 8 mm) とアブレーシヨン領域 O Zのサイズデータとを入力して おく。 基準物 1 0のレーザ照射 (アブレーシヨン) 前の曲面形状 R 1が既知 でない場合には、 測定装置 1 0 0により測定して得ることができる。 コンビ ユータ 2 0 9はこれらのデータ及び基準物 1 0の屈折率 (既知) に基づき、 レーザ照射 (アブレーシヨン) 後に予定される曲面形状 R 2を求める。 そし て、 曲面形状 R 1と曲面形状 R 2とから、 アブレーシヨン領域 O Zにおける ァプレーシヨンデータを求める。 このアブレーシヨンデータに基づき、 レー ザ照射条件となる各駆動部の制御データを定める。
制御部 2 5 0は、 前述の近視矯正の場合と同様に、 制御データに基づき円 形アパーチャ 2 1 8の開口径とミラー 2 1 3の移動とを制御することによ り、 基準物 1 0をその中央部が深くなるようにアブレーシヨンする。
レーザ照射後、 実際にアブレーシヨンした基準物 1 0の曲面形状 R 3 (図 3 ( b ) 参照) を測定装置 1 0 0により測定する。 測定に際しては、 基準物 1 0を測定装置 1 0 0が持つ顎台ュニットに取り付け、治具を用いて固定す る。 測定装置 1 0 0では、 角膜 E cの測定と同様に、 基準物 1 0のアブレ一 ション面に多数の円環状のプラチドリングを投影してその像を検出するこ とにより、 レーザ照射後の実際の曲面形状 R 3が測定される。
アブレーシヨン状態を評価する場合は、 曲面形状 R l , R 2 , R 3等のデ ータを解析部 3 1に入力する。 解析部 3 1は、 曲面形状 R 2の形成に対して 曲面形状 R 3を形成したときの形状変化を解析する。 例えば、 曲面形状 R 2 と曲面形状 R 3とを比較し、 その曲率分布の差分を解析する。 あるいは、 曲 面形状 R 1から曲面形状 R 2にするときのアブレーシヨン深さの分布と実
際にアブレーシヨンした後の曲面形状 R 3におけるアブレーション深さの 分布とから、 その差分を解析する。 解析結果は、 トポグラフィとして T Vモ ユタ 1 2 6に表示される。 トポグラフィはカラーマップの形式で表示すると 分かり易い。 曲面形状 R 2を一様な形状とするときには、 単に曲面形状 R 3 を屈折力値に変換したマップとしても表現することができる。 これらの解析 結果により、 実際に角膜にレーザ照射することなく、 照射装置 2 0 0の現状 におけるアブレーシヨン面のむら分布やエネルギ分布等を評価することが できる。 また、 照射装置 2 0 0の調整、 調整後の確認に使用することができ る。 その他、 手術結果の予測が可能となる。
次に、 照射装置 2 0 0の制御を較正する方法を説明する。 この方法として は、照射装置 2 0 0に測定装置 1 0 0で測定された曲面形状 R 3をフィード バックして較正する方法と、解析装置 3 0でアブレーションデータを曲面形 状 R 3等のデータに基づいて較正する方法と、 がある。
照射装置 2 0 0にフィードバックする場合は、測定装置 1 0 0で測定され た曲面形状 R 3のデータをコンピュータ 2 0 9に入力する。 曲面形状 R 2の 形成に対して曲面形状 R 3を形成したときの形状変化は、 アブレーションレ ートの変化として解析することができる。 例えば、 レーザ照射前後の曲面形 状 R l, 曲面形状 R 3の曲率半径の変化と基準物 1 0の屈折率とから、 実際 にアブレーションされたレンズ分の屈折力値を演算により得ることができ る。 これと、 曲面形状 R 2を形成すべく決定されたレーザ照射条件の屈折力 値とを比較することにより、基準物におけるアブレーシヨンレートの変化を 知ることができる。 簡易的には、 このアブレーシヨンレートの変化を使用し て、 照射装置 2 0 0の駆動制御データを較正することができる。
また、 屈折力変化として捉える代わりに、 レーザ照射前後の曲面形状の変 化から中央部で実際にアブレーションされた深さ情報が得られるので、 これ と曲面形状 R 2を形成すベく決定されたレーザ照射条件とから、そのまま基 準物におけるアブレーシヨンレートを知ることができる。 すなわち、 アブレ
ーシヨン深さを実際に施したレーザ照射条件のショット数 (スキャン数) で 割り算すれば、 中央部における現在のァプレーシヨンレートを知ることがで きる。
さらに、任意位置でのアブレーシヨン深さ情報が得られるので、 各位置に おけるショット数 (スキャン数) で割り算することにより、 その各位置での アブレーションレートを知ることができる。 各位置でのアブレーシヨンレー トを詳細に知ることができれば、周辺側のアブレーシヨン不足や部分的なァ ブレーシヨン面のムラを較正することができる。
なお、 人眼の角膜のアブレーシヨンレートは、 P MMAのアブレーシヨン レートに対して 2倍程の値となることが経験的に得られている。 従って、 P MMAから成る基準物を用いた場合、人眼の角膜に対する P MMAのアブレ ーションレートの関係と上記の演算で求められる P MMAでのアブレーシ ョンレートとから、角膜に対する現在のアブレーションレートを得ることが できる。
照射装置 2 0 0の較正を説明する。 アパーチャ 2 1 8の開口径がアブレ一 ション深さに対する関数として表現できるときは、現在のアブレーシヨンレ ートに対するアパーチャ 2 1 8の各開口径を演算し、その演算結果に基づい てアパーチャ 2 1 8の開口径を変化させる。 これは、 アブレーシヨン領域に おけるアブレーシヨンレートが回転対称で変動する場合にも対応すること ができる。 また、 アブレーシヨンレートが線対称に変動するときには、 スリ ットアパーチャ 2 2 0の開口幅の制御により同様に対応することができる。 また、 アパーチャ 2 1 8の開口径の制御は従来のままで、 レーザビームの 1スキャンにおけるミラー 2 1 3の移動速度を中央部と周辺部とで変化さ せることにより、回転対称で変動するアブレーシヨンレートに対応すること ができる。 すなわち、 アブレーシヨン領域の中央部に対して周辺部がアブレ ーション不足となる場合、 中央部から周辺部にいくにしたがってミラー 2 1 3の移動速度を遅く し、 周辺側のショット数 (レーザ照射時間) を多くする
。 この方法は、 アパーチャ 2 1 8の開口径を一定にしたまま、 一定の深さを アブレーシヨンする治療 (P T K) の場合に特に有効である。
さらに、部分的にアブレーシヨンレートが変動する場合には、部分的なァ ブレーションに用いる分割アパーチャ板 2 6 0の制御により対応すること ができる。上記のアパーチャの開口制御やミラー 2 1 3の移動制御で対応で きない部分についは、分割アパーチャ板 2 6 0の制御により小領域のレーザ ビームを部分的に照射する。各位置ではアブレーションレートで割ることに よりショット数 (レーザ照射時間) を決定する。
コンピュータ 2 0 9で上記のような各駆動部の制御データの較正が終了 したら、 再度、 新たな基準物 1 0にレーザ照射し、 アブレーシヨンされた基 準物 1 0の曲面形状を測定装置 1 0 0により測定し、 較正状態を確認する。 次に、 解析装置 3 0でアブレーシヨンデータを較正する場合を説明する。 アブレーシヨン領域 O Z, 曲面形状 R 1 , 曲面形状 R 2, 曲面形状 R 3の各 データを解析部 3 1に入力する。解析部 3 1は、 曲面形状 R 2の形成に対し て曲面形状 R 3を形成したときの形状変化を解析する。 図 6に示すように、 レーザ照射前の曲面形状 R 1のデータとレーザ照射により予定される曲面 形状 R 2のデータとから、アブレーションレートが基準値のときにアブレ一 シヨンされる深さ D 1 (予定深さ) をアブレーシヨン領域 O Zの各位置で算 出する。 次に、 レーザ照射前の曲面形状 R 1のデータと実際にアブレーショ ンされた曲面形状 R 3のデータとから、実際にアブレーションされた深さ D 2をアブレーション領域 O Zの各位置で算出する。 これから各位置でのァプ レーシヨン深さの変化率である較正常数 k ( r , Θ ) を次式により求める。
k ( r , θ ) =設定深さ D 1 /実際にアブレーシヨンされた深さ D 2 ここで、 rは照射中心に対する距離、 0は基準方向に対する角度とし、位 置のパラメータを極座標系 (r , Θ ) で表すものとする。 この較正常数 k ( r , Θ ) を使用して、 手術時に照射装置 2 0 0に入力するアブレーシヨンデ ータを較正する。
実際に患者眼のアブレーションデータを算出するときは、測定装置 2 0 0 により測定した術前の角膜形状データと屈折力分布データとを解析部 3 1 に入力する。 また、 アブレーシヨン領域のサイズデータを入力する。 解析部 3 1は入力された各データに基づき、 アブレーシヨンレートが基準値である ときのアブレーシヨンデータ (ショットデータ) を決定する。 広い範囲にわ たる屈折力分布データを使用することにより、眼の収差をも補正するアブレ ーシヨンデータを得ることができる (この算出の詳細は、 特開平 1 1 — 2 0 7 8 1号等を参照) 。 なお、 このアブレーシヨンデータの算出は測定装置 2 0 0で行ってもよい。 算出したアブレーションデータに対して、 前述の較正 常数 k ( r , 0 ) を掛けて較正後のショットデータであるアブレーシヨンデ ータを決定する。
較正後のアブレーシヨンデータを照射装置 2 0 0に入力する。予めアブレ ーシヨンデータを較正しておけば、照射装置 2 0 0ではそのアブレーシヨン データに従って各駆動部 2 1 4, 2 1 6 , 2 1 9 , 2 2 1 , 2 6 8を制御す れば、 目的とするアブレーシヨンが可能となる。
以上説明した照射装置 2 0 0は、 アパーチャ開口制御、 レーザビームの平 行走査を使用する構成としたが、 1 . O mmほどの小スポットのレーザビー ムをガルバノミラー等で走査する方式であってもよい。 産業上の利用可能性
以上説明したように、 本発明によれば、 加工対象物の曲面に近似した曲面 形状を持つ基準物を使用することにより、 ァプレーション状態を容易に評価 することができる。 また、 加工対象物を精度良くアブレーシヨンすることが できる。 さらにまた、 基準物の曲面形状の測定に専用の装置を準備しなくて よいので、 経済的にも有利となる。