JP3916335B2 - 角膜切除量決定装置及び角膜手術装置 - Google Patents
角膜切除量決定装置及び角膜手術装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、角膜表面を切除してその形状を変化させることにより屈折異常を矯正する屈折矯正手術のための角膜切除量決定装置及び角膜手術装置に関する。
【0002】
【従来技術】
レーザビームで角膜の表面を切除(アブレーション)し、角膜表面形状を変化させることにより眼球の屈折異常を矯正する角膜手術装置が知られている。この手術では手術眼の術前の角膜形状と眼屈折力を知ることにより、矯正に必要な角膜切除量を算出している。従来、この算出は次のようにしていた。
【0003】
術眼の角膜表面を球面やトーリック面と仮定して、角膜形状測定による術前の平均角膜曲率から求まる角膜形状を想定する。自覚屈折力測定や他覚屈折力測定で求まるS(球面度数)、C(乱視度数)、A(乱視軸角度)の値を使用し、この値を矯正(補正)するように角膜実質からなる球面又はトーリックレンズを角膜から切除するものとして、やはり術後の角膜形状も球面又はトーリック面となるものとして切除量を算出する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、人間の眼の角膜は、常に球面やトーリック面ではなく、不正乱視等で角膜表面形状は部分的に異なり非対称の場合がある。また、眼の屈折力も角膜中心に対して対称とは限らない。従来の他覚眼屈折力測定装置は、角膜中心部の3mm弱領域の限られた測定領域から求まるS、C、Aの値(球面やトーリック面を表現する値)を算出するのみであり、これを基にした切除量の決定では不十分である。
【0005】
また、人間の眼を角膜から網膜までの結像光学系と考えると、上記のように術後の角膜形状を球面やトーリック面とする切除では球面収差の影響を受けることになり、この点においても十分とは言えなかった。さらに、人の眼の角膜形状は元来非球面であるので、従来のような切除では収差の点においてより悪くしている可能性がある。
【0006】
本発明は、上記従来技術に鑑み、術眼の持つ角膜形状及び屈折力の状態に応じて、好ましい矯正結果を得るための角膜切除量を決定する装置及び角膜手術装置を提供することを技術課題とする。
【0007】
また、球面収差の影響をより減らすように角膜形状を非球面形状とする角膜切除量を決定する装置及び角膜手術装置を提供することを技術課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0009】
(1)角膜表面を切除することにより屈折異常を矯正する屈折矯正手術のための角膜切除量決定装置において、術前の角膜曲率分布データを入力する第1入力手段と、術前の他覚眼屈折力の分布データを入力する第2入力手段と、術前の角膜曲率分布データをスネルの法則を基本にして角膜表面屈折力の分布データに変換し、この角膜表面屈折力の分布データに他覚眼屈折力の分布データを加算し、手術眼を正視とするに等価な角膜表面屈折力の分布データを求め、該角膜表面屈折力の分布データをスネルの法則を基本にして術後に予定する角膜曲率分布データに変換し、この術後に予定する角膜曲率分布データと前記術前の角膜曲率分布データに基づいて角膜切除量の分布データを算出する切除量演算手段と、を備えることを特徴とする。
(2) (1)の切除量演算手段は、前記第1入力手段により入力された術前の角膜曲率分布データ及び前記術後に予定する角膜曲率分布データからそれぞれ角膜の三次元形状を求め、角膜中心を基準とする前記両三次元形状の差に基づいて角膜切除量を算出することを特徴とする。
(3) (1)の角膜切除量決定装置は、さらに術前の角膜曲率分布データ及び術後に予定する角膜曲率分布データのそれぞれをカラーマップ又は三次元形状の表示をするか、両角膜曲率分布データのある経線方向の断面形状を重ねて表示するか、いずれかを表示する表示手段を備えることを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る角膜切除量決定装置の光学系概略配置図である。光学系は、眼屈折力測定光学系、固視標光学系及び角膜曲率測定光学系に大別される。
【0021】
(眼屈折力測定光学系)
眼屈折力測定光学系100は、スリット投影光学系1とスリット像検出光学系10から構成される。スリット投影光学系1の光源2を発した近赤外の光は、ミラ−3に反射されて回転セクタ−4のスリット開口4aを照明する。回転セクタ−4はモータ5により回転される。回転セクタ−4の回転により走査されたスリット光束は、投影レンズ6、制限絞り7を経た後にビ−ムスプリッタ8で反射される。その後、固視標光学系及び観察光学系の光軸を同軸にするビ−ムスプリッタ9を透過して被検眼Eの角膜近傍で集光した後、眼底に投影される。なお、光源2は投影レンズ6に関して被検眼角膜近傍と共役な位置に位置する。
【0022】
スリット像検出光学系10は、主光軸L1 上に設けられた受光レンズ11及びミラ−12と、ミラ−12により反射される光軸L3 上に設けられた絞り13及び受光部14を備える。絞り13はミラ−12を介して受光レンズ11の後ろ側焦点位置に配置される(即ち、正視眼の被検眼眼底と共役な位置に位置する)。受光部14はその受光面に、図2に示すように、受光レンズ11に関して被検眼角膜と略共役な位置に位置する8個の受光素子15a〜15hを有している。この内の受光素子15a〜15fは受光面の中心(光軸L3 )を通る直線上に位置し、受光素子15aと15b、受光素子15cと15d、受光素子15eと15fがそれぞれ受光面の中心に対して対称になるように設けられている。この3対の受光素子は、角膜の経線方向の各位置に対応した屈折力を検出できるように、その配置距離が設定されている(図2上では、角膜上における等価サイズとして示している)。一方、受光素子15gと15hは、光軸L3 を中心にして受光素子15a〜15fと直交する直線上で対称になるように設けられている。
【0023】
このような構成の眼屈折力測定光学系100は、モ−タ20とギヤ等から構成される回転機構21により、スリット投影光学系1のスリット照明光源2〜モ−タ5が光軸L2 を中心に、受光部14が光軸L3 を中心にして同期して回転するようになっている。本形態では、乱視を持たない遠視または近視の被検眼眼底上でスリット開口4aによるスリット光束が走査されたとき、受光素子15a〜15fの配置方向が受光部14上で受光されるスリットの長手方向と直交する方向となるように設定している。
【0024】
(固視標光学系)
30は固視標光学系であり、31は可視光源、32は固視標、33は投光レンズである。投光レンズ33は光軸方向に移動することによって被検眼の雲霧を行う。34は観察光学系の光軸を同軸にするビ−ムスプリッタである。光源31は固視標32を照明し、固視標32からの光束は投光レンズ33、ビ−ムスプリッタ34を経た後、ビ−ムスプリッタ9で反射して被検眼Eに向かい、被検眼Eは固視標32を固視する。
【0025】
(角膜曲率測定光学系)
角膜曲率測定光学系は曲率測定用指標投影光学系25と曲率測定用指標検出光学系35とから成る。曲率測定用指標投影光学系25は次の構成を有する。26は中央部に開口を持つ円錐状のプラチド板であり、プラチド板26には光軸L1 を中心にした同心円状に多数の透光部と遮光部を持つリングパタ−ンが形成されている。27はLED等の複数の照明光源であり、照明光源27から発した照明光は反射板28で反射され、プラチド板26を背後からほぼ均一に照明する。プラチド板26の透光部を透過したリングパタ−ンの光束は被検眼角膜に投影される。
【0026】
曲率測定用指標検出光学系35は、ビ−ムスプリッタ9、ビ−ムスプリッタ34、撮影レンズ37及びCCDカメラ38を備える。曲率測定用指標投影光学系25により投影されたリングパタ−ンの角膜反射光束は、ビ−ムスプリッタ9及びビ−ムスプリッタ34で反射された後、撮影レンズ37によりCCDカメラ38の撮像素子面にリングパタ−ンの角膜反射像を形成する。また、この曲率測定用指標検出光学系35は観察光学系を兼ね、図示なき前眼部照明光源に照明された被検眼Eの前眼部像はCCDカメラ38の撮像素子面に結像し、TVモニタ39に映出される。
【0027】
次に、装置の動作を図3に示す制御系のブロック構成図を使用して説明する。まず、眼屈折力と角膜曲率の測定について説明する。
【0028】
角膜曲率を測定する場合は、モード切換スイッチ40により角膜曲率測定モードを選択する。検者は照明光源(図示せず)に照明された被検眼Eの前眼部像をTVモニタ39により観察してアライメントを行う(アライメントは位置合わせ用の指標を角膜に投影し、その角膜反射輝点とレチクルとが所定の関係になるようにする周知のものが使用できる)。アライメントが完了したら、図示なき測定開始スイッチによりトリガ信号を発生させて測定を開始する。
【0029】
角膜形状演算部53は、CCDカメラ38で撮影された像を画像処理して、プラチドリング像のエッジ検出を行う。そして、所定の角度(1度)ステップ毎に角膜中心に対する各エッジ位置を得ることより角膜曲率を求める。角膜曲率の演算は次のように行うことができる。図4に示すように、角膜から光軸上距離D、高さHにある光源Pの角膜凸面による像iが、レンズLにより2次元検出面上に結像したときの検出像高さをh´とし、装置の光学系の倍率をmとすると、角膜曲率半径Rは、次式により求めることができる。
R=(2D/H)mh´
【0030】
また、角膜曲率の次のような算出方法を採用することができる。j番目のリングが角膜に投影される領域の曲率半径をRj、j番目のリング高さと被検眼までの距離及び撮影倍率で決定される比例定数をKj、撮像面上での像高さをhjとすると、前述の関係式は、
Rj=Kj・hj
と表される。ここで、測定レンジをカバ−する複数の既知の曲率を持つ模型眼を予め測定することで、比例定数Kjを装置固有の値として得ることができ、測定時にこれを読みだして演算するようにすると、極めて短時間で曲率分布を得ることができる(角膜曲率の算出についての詳細は、特開平7−124113号公報等を参照されたい)。得られた角膜曲率のデータは、メモリ55bに記憶する。
【0031】
眼屈折力(以下、これを他覚眼屈折力という)を測定する場合は、測定モードを眼屈折力測定モードに切換え(連続測定モードとした場合は、自動的に眼屈折力測定モードに切り換る)、眼屈折力測定光学系100により測定を行う。眼屈折力演算部52は、受光部14が持つ各受光素子からの出力信号の位相差に基づいて他覚眼屈折力分布を得る。まず、従来の位相差法の屈折力と同様に予備測定を行い、その結果に基づいて固視標光学系30の投光レンズ33を移動して被検眼の雲霧を行う。その後、受光部14上でのスリット像の光の移動に伴って変化する受光素子15gと15hの出力信号から、受光素子15a〜15fが位置する経線方向の角膜中心を求める。次に、その中心に対する各受光素子15a〜15fの出力信号の位相差から、各受光素子に対応する角膜部位での屈折力を求める。スリット投影光学系1と受光部14を所定の角度(1度)ステップで光軸回りに180度回転させながら、各角度ステップの経線毎にこの屈折力の演算を行うことにより、経線方向で変化する屈折力の分布を求める(この詳細については、本出願人による特願平8−283281号を参照)。ここでの眼屈折力値は角膜頂点基準の値である(装置としては、眼鏡レンズ装用位置基準の屈折力値も出力できる)。得られた他覚眼屈折力のデータは、HDD55a又はメモリ55bに記憶する。
【0032】
以上のようにして他覚眼屈折力と角膜曲率の測定データが得られたら、制御部50に接続されたカラーディスプレイ56に表示される指示に従って、キーボード58又はマウス57を操作することにより解析をスタートする。制御部50が備える解析部54は、角膜曲率を角膜表面屈折力に変換した後、これに対する他覚眼屈折力の関係を表すための解析プログラムを実行する。
【0033】
角膜曲率を角膜表面屈折力(Refractive Power)に変換する方法を説明する。角膜表面屈折力は、角膜頂点の法線と平行な光束が角膜により屈折をしたときのPowerであり、角膜曲率からの変換にはスネル(snell )の法則を用いる。角膜曲率を角膜表面屈折力に変換する際、測定光軸付近(角膜中心付近)については、前述の(式1)を用いてもその誤差は少ない。しかし、これは測定光軸付近について議論できるのみであり、それ以上の角膜周辺まで適用するとその信頼度は乏しくなる。すなわち、角膜周辺領域をも扱うには、角膜に入射する光がスネルの法則を基本とした屈折に従うとし、これにより求まる屈折力が、他覚眼屈折力と同じ尺度で比較できる屈折力となる。なお、周知のようにスネルの法則(屈折の法則とも呼ばれている)は、屈折面に光線が入射するとき、その光線の入射点での法線及びこの点で屈折した屈折光線は同一平面にあり、更に、法線と入射光線との間の角度の正弦に対する法線と屈折光線との間の正弦との比が一定であることを示した法則である。すなわち、屈折面のそれぞれの側の屈折率をN、N´とし、入射光線及び屈折光線が法線とのなす角度をi、i´とすると、スネルの法則は、
Nsini=N´sini´
であることを示す。
【0034】
スネルの法則を用いた角膜表面屈折力の算出について説明する。いま、図5において、角膜頂点Tと曲率中心Oaを通る直線と平行な光が、角膜頂点からX離れた角膜上の点Pで屈折し、点fにて直線TOaと交わるとし、
Ra:点Pでの角膜曲率
Rr:点Pと点fの距離
θ :点Pでの法線方向と入射光とがなす角度
γ :点Pでの法線方向と屈折光とがなす角度
とする(距離はメートルである)。この時の点Pでの屈折力は次の式により求めることができる。まず、図から、θは、
【数1】
となる。また、γはsnell の法則により、
【数2】
が成り立つ。これから、図に示す角度α(線分hPと線分Pfが成す角度)、Rr、及び線分hfの距離は、
【数3】
となる。別に、線分Thの距離は
【数4】
であるので、角膜頂点から点fまでの距離は
【数5】
となる。角膜屈折率n(=1.376)とする角膜中での屈折力は、
【数6】
となるが、空気中での屈折力は、
【数7】
となる。以上の演算を、全測定領域で適用することにより角膜表面屈折力が得られる(この算出は角膜形状演算部53が行っても良い)。
【0035】
次に、上記のように算出される角膜表面屈折力に対して、他覚眼屈折力を角膜表面と等価な屈折力に換算して表す。すなわち、これは被検眼を正視とするに必要な屈折力を角膜表面屈折力の形式で表した値となる(本明細書ではこれを「等価正視角膜表面屈折力」という)。
【0036】
ここで、他覚眼屈折力と角膜形状から得られる角膜表面屈折力との関係を確認しておく。他覚眼屈折力の値と角膜形状から得られる屈折力の値との意味は、図6で示すように全く異なる。角膜形状から得られる屈折力の値は、焦点距離fを求め、それを屈折力に変換している。これに対して他覚眼屈折力は、その目を正視の状態にするのに必要な屈折力(補正量)dfを測定している。例えば、他覚眼屈折力の測定領域と同じ領域の角膜形状から求まる角膜表面屈折力が、 43.50Dであり、他覚眼屈折力の測定値が0 Dである場合、この眼においては角膜表面屈折力が 43.50Dの時に、ちょうど網膜上に結像する光学系を持っているということになる。また、角膜形状から求まる角膜表面屈折力が 43.50Dであり、他覚眼屈折力が− 2Dである場合には、この眼においては角膜表面屈折力を− 2D分補正( 41.50Dに)すれば、網膜上に結像することを示している。
【0037】
即ち、他覚眼屈折力の測定領域においては、角膜形状の測定から求まる角膜表面屈折力に他覚眼屈折力の測定値を符号を含めて加えた値が、正視状態になるための角膜表面屈折力となる。つまり、これが等価正視角膜表面屈折力であり、
等価正視角膜表面屈折力=角膜表面屈折力+他覚眼屈折力
で表される。
【0038】
さらに、等価正視角膜表面屈折力はスネルの法則を用いて角膜曲率に変換する。この変換は、図5を引用すると、前述と同様な考え方によって導かれる次の2つの式より求められる。
【数8】
ここで、Dが等価正視角膜表面屈折力であり、Raが求める角膜曲率となる。
【0039】
以上のようにして求まる等価正視角膜表面屈折力及びこれを変換した角膜曲率により、他覚屈折力の値と角膜形状の測定による値との関係を角膜表面の形式で表すことができるので、角膜表面形状の評価につなげることができる。すなわち、眼の全屈折力は、主に角膜屈折力と水晶体屈折力との和と言われているが、水晶体の屈折力を知ることは容易ではない。さらに、屈折異常の要素には眼軸長も加わる。これに対して、眼が持つ屈折力を上記のような形式で表すことにより、水晶体屈折力や眼軸等の未知数を知らなくても、屈折異常を角膜表面形状に置き換えることで現実の角膜表面形状との関係を知ることができる。
【0040】
以上のようにして等価正視角膜表面屈折力(及びこれを変換した角膜曲率)が得られると、これと他覚眼屈折力、角膜表面屈折力とを視覚的に比較しやすいようにカラーディスプレイ56に図形表示される。図7は、カラーマップの表示画面例である。画面右上方の表示部61には角膜形状測定から得られた角膜表面屈折力の分布が、画面左上方の表示部62には他覚眼屈折力の分布が、画面下段の表示部63には正視等価角膜表面屈折力の分布が、それぞれカラーマップとして表示されている。また、画面右下にある表示切換キー60により表示を切換えることができる。表示としては、角膜形状の測定結果による角膜曲率及び等価正視角膜表面屈折力から変換した角膜曲率のそれぞれを、カラーマップ表示、三次元形状表示、あるいは三次元形状をある経線方向の断面形状として重ねて表示したりすることができる。
【0041】
このように他覚眼屈折力の測定結果と角膜形状の測定結果、及びこれらから求まる等価正視角膜表面屈折力の関係が図形表示されるので、例えば、被検眼を正視状態にする角膜矯正手術では、手術前の角膜屈折力及び角膜形状が手術後にどのように変化するかを、視覚的に捉えることができる。
【0042】
さらにマウス等の操作により、角膜矯正手術のための解析プログラムの実行を指令すると、解析部54は等価正視角膜表面屈折力を変換した角膜曲率と角膜形状測定による角膜曲率とから角膜切除量を算出する。以下、この算出方法を説明する。
【0043】
図8、図9に示すように(説明を簡単にするために、図は角膜形状を円とし、ある経線方向の断面として表している)、切除領域を示すオプチカルゾーン70の範囲にて、等価正視角膜表面屈折力より変換される角膜曲率から三次元形状を算出する。この形状と角膜形状測定による角膜曲率から算出される三次元形状とにより、角膜頂点を基準にしてオプチカルゾーン70の領域内の高さの差の分布を算出する。
【0044】
近視矯正の場合は、図8(b)に示すように、角膜の中心部を深く切除して、角膜曲率を大きくする。したがって、オプチカルゾーン70の全領域内における2つの三次元形状の差の最大量分だけ、等価正視角膜表面屈折力より算出した三次元形状を下方へ平行移動する。この移動後の三次元形状が正視にするための角膜矯正形状表面となり、角膜形状測定により算出した三次元形状から等価正視角膜表面屈折力より算出した移動後の三次元形状の差の分布が、切除量の情報となる。(切除後の眼軸長変化が屈折力誤差に与える量は最大でも約0.25Dであり無視できるものである。)
一方、遠視矯正の場合は、図9に示すように、角膜周辺部分を深く切除して、角膜曲率を小さくする。この場合には、オプチカルゾーン70の全領域内における2つの三次元形状の差の分布が、そのまま切除量の情報となる。
【0045】
なお、両者の何れの場合も、オプチカルゾーン70の全領域について最大切除量が角膜切除の許容量を超えるときは、許容量内に収まるようにオプチカルゾーン70の領域を狭くして、切除量を補正する。また、角膜形状の凹凸により切除量が負になるときは、全体の切除を調節する。
【0046】
切除量の算出に当たっては、上記のように両三次元形状の差からそのまま切除量の分布を求めるほか、他覚眼屈折力の分布情報を使用して、種々の方法により角膜切除量の情報を得ることができる。
【0047】
例えば、角膜形状測定による曲率分布、及び等価正視角膜表面屈折力から算出される曲率分布に対して、それぞれオプチカルゾーン内における中心領域から周辺領域にかけて同心円の領域を複数設定し、各領域毎に近似する曲率を算出する。これから三次元形状を求めて角膜切除量の分布を求める(各境界は、滑らかに繋がるように調整しておくと良い)。こうすると、オプチカルゾーンの切除領域全体を一様な球面又はトーリック面として切除する場合に比べて、比較的簡単なレーザビームの制御で、周辺領域での矯正精度を向上できる。
【0048】
また、角膜形状測定から算出される角膜形状、及び等価正視角膜表面屈折力から算出される角膜形状のそれぞれを複数の領域に分割して、演算式で表現できる非球面形状として、切除量情報を求めるようにすることも可能である。
【0049】
以上のような方法で得られた切除量情報に基づいて角膜切除手術を行うことによって、従来に比べてより好ましい矯正結果を得ることができるようになる。すなわち、人間の角膜形状は一般的に非球面形状であるにも拘わらず、従来の角膜切除は球面(又はトーリック面)で切除する方法が取られていた。しかし、本発明に係る方法での切除は自ずと非球面形状を保存できるものである。つまり、球面収差を入れることなく、元々の角膜形状を保存した状態で屈折異常成分のみを取り除いた矯正を行うことができる。
【0050】
解析部54により算出された角膜切除量のデータはHDD55a又はメモリ55bに記憶される。このデータはキーボード58等を操作することにより、フロッピドライブ59aによるFDや通信ポート59bと接続される通信ケーブルを介して、エキシマレーザ光により角膜をアブレーションする角膜手術装置90に転送入力する。角膜手術装置90側では、入力された角膜切除量データに基づいて手術眼角膜の各座標上のレーザ照射パルス数、照射パワーを決定し、これに従ってレーザ照射を制御することにより角膜手術を行う。
【0051】
角膜手術装置90としては、本出願人による特開平9−266925号公報に記載したものが使用できる。図10は角膜手術装置90が有する光学系及び制御系の概略配置を示した図である。図において、103は短冊状のマスクが多数並んだ形状の分割マスクであり、この短冊状のマスクをそれぞれ分割マスク駆動装置104が開閉することにより、レーザ光源101から出射された細長い矩形形状のエキシマレーザビームの長手方向が部分的にカットされる。マスクを通過したレーザビームを平面ミラー105のスキャン動作により移動させることにより、選択的に制限されたレーザビームが導光光学系を介して手術眼角膜113に照射される。制御装置120はデータ入力装置121を介して入力された角膜切除量データに基づいて手術眼角膜113でのレーザビームの座標位置及びその座標位置でのレーザ照射パルス数、照射パワーを決定し、レーザ光源101、分割マスク103、平面ミラー105、イメージローテータ107を制御してレーザビームを照射する。これにより角膜表面が角膜切除量データに基づいた非球面形状に切除される。
【0052】
以上、他覚眼屈折力分布の情報と角膜表面屈折力分布(角膜曲率分布)の情報を角膜矯正手術へ利用する例を示したが、さらに次のように利用することができる。
【0053】
被検眼の診断として、他覚眼屈折力分布の情報と角膜表面屈折力分布の情報を比較することで、被検眼が持つ乱視成分が角膜形状に起因するものか、角膜表面より後ろから網膜に至る眼内の要素に起因するものかを区別して、定量的かつ定性的に把握することができる。つまり、前述した等価正視角膜表面屈折力の任意の位置のpower から中心のpower を減算することにより、角膜表面を除いて網膜に至る眼内での乱視成分(残余乱視)の分布が算出する。この結果は、図7に示したようなカラーマップでディスプレイ56に表示される。これから、屈折矯正に使用するコンタクトレンズの適否を判断できる。例えば、不正乱視の被検眼の場合(これは他覚眼屈折力分布の情報から分かる)、眼鏡やソフトコンタクトレンズの処方では視力矯正が十分にできないが、この不正乱視が主に角膜表面形状に起因するものであると分かれば、ハードコンタクトレンズでの矯正を勧めることができる。さらに、白内障を治療するための眼内レンズの挿入においては、眼内レンズを挿入したときの傾きによる乱視誘発を防ぐ情報として利用することができる。
【0054】
以上説明した形態は種々の変容が可能である。例えば、他覚眼屈折力を得るための測定手段及び角膜形状を得るための測定手段は、それぞれ別個の測定装置として構成し、各測定データを通信手段を介してパーソナルコンピュータに入力し、パーソナルコンピュータ側で解析及びその結果の表示をしても良い。また、別個に構成した何れか一方の測定装置側で解析を行うようにすることもできる。
【0055】
また、本形態ではプラチドリング投影による角膜形状測定で説明したが、角膜曲率、および角膜の三次元形状が得られる全ての角膜形状測定装置、および他覚眼屈折力分布が得られる全ての原理、方式の他覚眼屈折力測定装置に適用できるものである。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、術眼の持つ角膜形状及び屈折力の状態に応じて、好ましい矯正結果を得るための角膜切除量を決定することができる。
また、収差の影響を減らすように角膜表面を非球面に切除することにより、従来の矯正手術よりも矯正効果を向上することができ、より理想に近い矯正手術を行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本形態の装置の光学系概略配置を示す図である。
【図2】受光部が有する受光素子の配置を示す図である。
【図3】本形態の装置の制御系概略構成を示す図である。
【図4】角膜曲率の演算の方法を説明する図である。
【図5】角膜表面屈折力を算出する方法を示す図である。
【図6】角膜形状測定で得られる屈折力の算出値と他覚眼屈折力で得られる測定値との違いを示す図である。
【図7】カラーマップの表示画面例である。
【図8】近視矯正の場合の角膜切除量を説明する図である。
【図9】遠視矯正の場合の角膜切除量を説明する図である。
【図10】角膜手術装置が有する光学系及び制御系の概略配置を示した図である。
【符号の説明】
25 曲率測定用指標投影光学系
35 曲率測定用指標検出光学系
50 制御部
52 眼屈折力演算部
53 角膜形状演算部
54 解析部
56 カラーディスプレイ
90 角膜手術装置
100 眼屈折力測定光学系
Claims (3)
- 角膜表面を切除することにより屈折異常を矯正する屈折矯正手術のための角膜切除量決定装置において、
術前の角膜曲率分布データを入力する第1入力手段と、
術前の他覚眼屈折力の分布データを入力する第2入力手段と、
術前の角膜曲率分布データをスネルの法則を基本にして角膜表面屈折力の分布データに変換し、この角膜表面屈折力の分布データに他覚眼屈折力の分布データを加算し、手術眼を正視とするに等価な角膜表面屈折力の分布データを求め、該角膜表面屈折力の分布データをスネルの法則を基本にして術後に予定する角膜曲率分布データに変換し、この術後に予定する角膜曲率分布データと前記術前の角膜曲率分布データに基づいて角膜切除量の分布データを算出する切除量演算手段と、を備えることを特徴とする角膜切除量決定装置。 - 請求項1の切除量演算手段は、前記第1入力手段により入力された術前の角膜曲率分布データ及び前記術後に予定する角膜曲率分布データからそれぞれ角膜の三次元形状を求め、角膜中心を基準とする前記両三次元形状の差に基づいて角膜切除量を算出することを特徴とする角膜切除量決定装置。
- 請求項1の角膜切除量決定装置は、さらに術前の角膜曲率分布データ及び術後に予定する角膜曲率分布データのそれぞれをカラーマップ又は三次元形状の表示をするか、両角膜曲率分布データのある経線方向の断面形状を重ねて表示するか、いずれかを表示する表示手段を備えることを特徴とする角膜切除量決定装置。
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