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技術分野
この発明は、 遊星歯車機構を利用した車両用差動歯車装置に関する。 明
背景技術
一般に、 この種の差動歯車装置は、 互いの軸線を一致させて回転可能に配置さ 書
れた内歯車及び太陽歯車と、 この内歯車及び太陽歯車と軸線を一致させて回転可 能に配置されたキャリアと、 このキャリアに回転可能 (自転可能) に支持され、 上記内歯車及ぴ太陽歯車と嚙み合う遊星歯車とを備えている。 そして、 キャリア を回転駆動すると、 その回転が遊星歯車を介して内歯車及び太陽歯車に伝達され る。 内歯車及び太陽歯車は、 遊星歯車が自転しないときには、 相対回転すること なく同一回転数で一体的に回転する。 一方、 遊星歯車が自転すると、 その回転数 に応じて差動回転する (特開平 9一 1 1 2 6 5 7号公報参照) 。
上記従来の差動歯車装置においては、 内歯車及び太陽歯車の各ピッチ円径が決 定されると、 それぞれに伝達される回転トルクの比率 (以下、 トルクバイアス比 という。 ) が一義的に定まってしまい、 変更することができないという問題があ つた。 例えば、 内歯車及び太陽歯車の各ピッチ円径がそれぞれ D 1, D 2である ものとすると、 トルクバイアス比は D 1 : D 2に一義的に決定されてしまう。 発明の開示
この発明は、 上記の問題を解決するために、 回転可能に配置された内歯車と、 ^の内歯車と軸線を一致させて回転可能に配置された太陽歯車と、 上記内歯車と 上記太陽歯車との間に自転可能にかつ公転可能に配置され、 上記内歯車及ぴ太陽 歯車と嚙み合う遊星歯車とを備えた車両用差動歯車装置において、 上記遊星歯車 にピッチ円径の異なる第 1、 第 2歯車部を設け、 第 1歯車部を上記内歯車に嚙み
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2 - 合わせ、 第 2歯車部を上記太陽歯車に嚙み合わせたことを特徴としている。
上記第 1歯車部のピッチ円径は、 上記第 2歯車部のピッチ円径より大きくして もよく、.小さくしてもよい。
上記内歯車のピッチ円径を D 1とし、 上記太陽歯車のピッチ円径を D 2とし、 上記遊星歯車の第 1、第 2歯車部のピッチ円径をそれぞれ D 3, D 4としたとき、 D 1〜D 4については、 D 1 ZD 3≥D 2 /D 4が成立するように設定してもよ く、 D I /O 3 < D 2 ZD 4が成立するように設定してもよい。 図面の簡単な説明
図 1は、 この発明の一実施の形態を示す図であって、 図 2の X— X線に沿う断 面図である。
図 2は、 図 1の X _ X線に沿う断面図である。
図 3は、 図 1の Y— Y線に沿う断面図である。 発明を実施するための最良の形態
以下、 この発明の一実施の形態について図 1〜図 3を参照して説明する。
この実施の形態の車両用差動歯車装置 1は、 例えば車両のセンターデフとして 用いられるものであり、 図 1に示すように、 ハウジング 2、 キャリア 3、 内歯車 4、 太陽歯車 5及び遊星歯車 6を主な構成要素としている。
ハウジング 2は、 回転軸線 Lを中心として回転駆動されるものであり、 軸線を 回転軸線 Lと一致させた円筒状の本体部 2 1を有している。 この本体部 2 1の一 端部 (図 1の左端部) には、 底部 2 2が形成されている。 この底部 2 2の外側の 端面には、 軸線を回転軸線 Lと一致させた軸受部 2 3が形成されている。 本体部 2 1の他端部には、 キャリア 3が収容されている。 このキャリア 3は、 本体部 2 1の他端部にスプライン嵌合によって回転不能に連結されるとともに、 本体部 2 1の内周面に螺合された締付部材 7 1を締め付けることによって回転軸線 L方向 へ移動不能に固定されている。軸受部 2 3及ぴキャリア 3の各内周面には、第 1、 第 2出力軸 (図示せず) が回転自在に揷通されている。 この第 1、 第 2出力軸に よってハウジング 2が回転軸線 Lを中心として回転自在に支持されている。
本体部 2 1の内部の底部 2 2側には、 内歯車 4がその軸線を回転軸線 Lと一致 きせて回転自在に配置されている。 内歯車 4の内周面の一端部 (底部 2 2側の端 部) には、 径方向内側へ突出する環状突出部 4 1が形成されている。 この環状突 出部 4 1の内周面には、 円筒状をなす中間部材 7 2がスプライン嵌合等によって 回転不能に連結されている。 環状突出部 4 1及び中間部材 7 2は、 ヮッシャ 7 3 を介して底部 2 2に接触している。 中間部材 7 2の内周面には、 上記第 1出力軸 の一端部がスプライン嵌合等によって回転不能に連結されている。 第 1出力軸の 他端部は、 例えばリャデフ (図示せず) に接続されている。 内歯車 4の内周面の 他端部には、 捩れ歯を有する内歯車部 4 2が形成されている。
本体部 2 1の内部のキヤリァ 3側には、 太陽歯車 5がその軸線を回転軸線 Lと 一致させて回転自在に配置されている。 この太陽歯車 5の一端面 (図 1において 左端面) は、 ヮッシャ 7 4を介して中間部材 7 2に接触しており、 さらに中間部 材 7 2及ぴヮッシャ 7 3を介して底部 2 2に接触している。 太陽歯車 5の他端面 は、 ヮッシャ 7 5を介してキャリア 3に接触している。 したがって、 太陽歯車 5· は、その回転軸線 L方向へほぼ移動不能になっている。太陽歯車 5の外周面には、 捩れ歯を有する外歯車部 5 1が形成されている。 この外歯車部 5 1は、 歯数及び 搌れ方向を除き、 モジュール、 圧力角、 捩れ角等の歯車諸元が内歯車部 4 2と同 一になつており、 外歯車部 5 1の歯数は内歯車部 4 2の歯数より少なくなつてい る。 したがって、 外歯車部 5 1の外径は、 内歯車部 4 2の内径より小さくなつて いる。 太陽歯車 5の内周面には、 上記第 2出力軸の一端部がスプライン嵌合等に よって回転不能に連結されている。 第 2出力軸の他端部は、 例えばフロントデフ
(図示せず) に接続されている。
上記キヤリア 3の底部 2 2側の端面には、 円筒状をなす支持部 3 1が形成され ている。 この支持部 3 1は、その軸線を回転軸線 Lと一致させて設けられている。 支持部 3 1の先端面には、 回転軸線 Lと平行に延びる複数 (この実施の形態では 6つ) の第 1収容孔 3 2が支持部 3 1の周方向へ等間隔に配置形成されている。 図 2に示すように、 第 1収容孔 3 2の内径は、 支持部 3 1の厚さより大径に設定 されており、 支持部 3 1の径方向における第 1収容孔 3 2の外側及び内側の各側 部は、 支持部 3 1の外周面及ぴ内周面からそれぞれ外部に開放されている。 第 1
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収容孔 3 2は、 支持部 3 1の先端面から支持部 3 1の中間部まで延びている。 第 1収容孔 3 2の底部には、 第 2収容孔 3 3がその軸線を第 1収容孔 3 2の軸線と 一致させて形成されている。 第 2収容孔 3 3の内径は、 第 1収容孔 3 2の内径よ り小径になっている。 図 3に示すように、 支持部 3 1の径方向内側における第 2 収容孔 3 3の側部は、 支持部 3 1の内周面から外部に開放されている。
上記遊星歯車 6は、その一端部(図 1の左端部) に第 1歯車部 6 1が形成され、 他端部に第 2歯車部 6 2が形成されている。 第 1歯車部 6 1は、 第 1収容孔 3 2 に回転自在に嵌合されており、 第 1収容孔 3 2の外側の開放部において内歯車 4 の内歯車部 4 2と嚙み合っている。 第 2歯車部 6 2は、 第 2収容孔 3 3に回転自 在に嵌合されており、 第 2収容孔 3 3の内側の開放部において太陽歯車 5の外歯 車部 5 1と嚙み合っている。 したがって、 ハウジング 2が回転駆動されると、 そ の回転がキャリア 3を介して遊星歯車 6に伝達され、 遊星歯車 6から内歯車 4及 び太陽歯車 5に伝達される。 この場合、 内歯車 4及ぴ太陽歯車 5は、 遊星歯車 6 が自転しないときには、 同一回転数で一体に回転する。 一方、 遊星歯車 6が自転 すると、 その自転数に応じて差動回転する。
第 1歯車部 6 1 'と第 2歯車部 6 2とは、 それぞれ内歯車部 4 2及ぴ外歯車部 5 1と嚙み合っていることから明かなように、 互いの歯数が異なる点及ぴ捩れ方向 が互いに逆方向である点を除き、 同一の歯車諸元を有している。 第 1歯車部 6 1 の歯数は、 第 2歯車部 6 2の歯数より多くなつている。 ここで、 内歯車部 4 2、 外歯車部 5 1、 第 1歯車部 6 1及ぴ第 2歯車部 6 2の各歯数をそれぞれ N 1, N 2 , N 3, N 4とすると、
N 1 > N 2 , N 3 > N 4
であり、
N 1 /N 3 = N 2 /N 4
が成立するように、各歯数 N 1〜N 4が定められている。 しかも、各歯車部 4 2, 5 1 , 6 1, 6 2のモジュール及ぴ捩れ角が同一であるから、 内歯車部 4 2のピ ツチ円径 (第 1歯車部 6 1との嚙み合いピッチ円径) を D 1とし、 外歯車部 5 1 のピッチ円径 (第 2歯車部 6 2との嚙み合いピッチ円径) を D 2とし、 第 1内歯 車部 6 1のピッチ円径 (内歯車部 4 2との嚙み合いピッチ円径) を D 3とし、 第
2歯車部 6 2のピッチ円径 (外歯車部 5 1との嚙み合いピッチ円径) を D 4とす ると、 -
D ί > D 2 , D 3 > D 4
D 1 /D 3 = D 2 /D 4
が成立する。 よって、 この差動歯車装置 1においては、 内歯車 4に伝達される回 転トルクと太陽歯車 5に伝達される回転トルクの比であるトルクバイアス比が 5 0 : 5 0になっている。 つまり、 内歯車 4と太陽歯車 5とには同一の大きさの回 転トルクが伝達される。
内歯車部 4 2、 外歯車部 5 1、 第 1歯車部 6 1及ぴ第 2歯車部 6 2の各ピッチ 円径 D 1, D 2 , D 3 , D 4は、
D 1 /D 3 > D 2 /D 4
が成立するように設定することも可能であり、
D 1 /D 3 < D 2 /D 4
が成立するように設定することも可能である。 前者の場合には、 内歯車部 4に伝 達される回転トルクが太陽歯車 5に伝達される回転トルクより大きくなる。 後者 の場合には、 内歯車 4に伝達される回転トルクが太陽歯車 5に伝達される回転ト ルクより小さくなる。
第 1及び第 2歯車部 6 1, 6 2のねじれ方向が互いに逆方向になっているので、 内歯車部 4 2と第 1歯車部 6 1との嚙み合いによって遊星歯車 6に発生するスラ スト力の作用方向と、 外歯車部 5 1と第 2歯車部 6 2との嚙み合いによって遊星 歯車 6に発生するスラスト力の作用方向とは同一になる。 この実施の形態では、 車両が前進するようにハウジング 2が回転駆動されたとき、 遊星歯車 6に作用す るスラストカにより遊星歯車 6の左端面がヮッシャ 7 6、 内歯車 4の環状突出部 4 1及びヮッシャ 7 3を介して底部 2 2に押し付けられるように、 第 1及び第 2 歯車部 6 1 , 6 2の捩れ方向が定められている。 勿論、 これとは逆に、 遊星歯車 6をキャリア 3に押し付けるようなスラスト力が遊星歯車 6に発生するように、 第 1、 第 2歯車部 6 1, 5 2のねじれ方向を定めてもよい。 その場合には、 遊星 歯車 6の右端面をヮッシャ (図示せず) を介してキャリア 3に接触させるように するのが望ましい。
上記構成の差動歯車装置 1においては、 遊星歯車 6に互いに異なる二つの歯車 部たる第 1歯車部 6 1と第 2歯車部 6 2とを設け、 この第 1、 第 2歯車部 6 1, 6 2を内歯車 4と太陽歯車 5とにそれぞれ嚙み合わせているから、 第 1歯車部 6 1及ぴ第 2歯車部 6 2の各ピッチ円径を適宜に選択することにより、 トルクパイ ァス比を比較的自由に選定することができる。
また、 この実施の形態の差動歯車装置 1では、 第 1歯車部 6 1と第 2歯車部 6 2との捩れ方向を逆方向にしているので、 第 1歯車部 6 1と内歯車 4との嚙み合 いによって生じるスラスト力の作用方向と、 第 2歯車部 6 2と太陽歯車 5との嚙 み合いによって生じるスラスト力の作用方向とが同一になる。 この結果、 遊星歯 車 6がその軸線方向へ大きな力で押され、 遊星歯車 6の左端面がヮッシャ 7 6を 介して内歯車 4の環状突出部 4 1に押し付けられ、 さらに環状突出部 4 1及ぴヮ ッシャ 7 3を介してハウジング 2の底部 2 2に押し付けられる。 よって、 差動回 転時には、 遊星歯車 6と内歯車 4との間、 及び内歯車 4とハウジング 2との間に それぞれ大きな摩擦抵抗が発生する。 それによつて、 差動回転を制限することが できる。 ちなみに、 第 1歯車部 6 1と第 2歯車部 6 2との捩れ方向を同一方向に すると、 第 1歯車部 6 1に生じるスラスト力の作用方向と第 2歯車部 6 2に生じ るスラスト力の作用方向とが逆方向になるため、 両スラスト力が打ち消し合い、 遊星歯車 6には、 見かけ上、 打ち消し合って残った小さなスラスト力しか作用し なくなってしまう。 このため、 差動制限能力が小さくなつてしまう。
なお、 この発明は、 上記の実施の形態に限定されるものでなく、 適宜変更可能 である。
例えば、 上記の実施の形態においては、 第 1、 第 2歯車部 6 1, 6 2の歯車諸 元を、 歯数及び捩れ方向を除いて同一にしており、 その結果歯数の多い第 1歯車 部 6 1のピッチ円径 D 3が第 2歯車部 6 2のピッチ円径より大径になっている。 しかし、 例えば第 1、 第 2歯車部のモジュールを異なるものにすることにより、 D 1 /D 3 > D 2 /D 4又は D 1 /D 3 < D 2 /D 4という条件を満たしつつ、 第 1歯車部 6 1のピッチ円径と第 2歯車部 6 2のピッチ円径とを同一にすること も可能である。
産業上の利用の可能性
この発明に係る車両用差動歯車装置は、 自動車のフロントデフゃリャデフとし て、 あるいは 4輪駆動車のセンターデフとして利用することができる。