明細書
C末端修飾タンパク質およびその製造方法、 ならびに、 C末端修飾タンパク質の 製造に用いる修飾剤および翻訳テンプレート、 ならびに、 C末端修飾タンパク質 を用いたタンパク質相互作用の検出方法 技 fe分野
本発明は、 タンパク質の修飾法、 および、 その修飾タンパク質を用いたタンパ ク質相互作用の検出法に関する。 ゲノムプロジェク卜の進展に伴い大量の遺伝子 情報が蓄積されつつあり、 今後はそれら遺伝子間の相互作用を網羅的に解析する ことが重要な課題となっている。 大量の遺伝子間の相互作用に関して高速でハイ スル一プットスクリーニング (High- Throughput Screening: HTS) を行うために は、 タンパク質相互作用をより迅速かつ簡便に検出できる系が必要である。 本発 明は、 ゲノム機能解析 .プロテオ一ム解析において、 タンパク質と他の生体分子 (タンパク質、 核酸など) との相互作用を簡便に検出する有効な手段を提供する。 背景技術
分子間相互作用の検出方法として、 これまで表面プラズモン共鳴法、 蛍光共鳴 エネルギー移動法、 蛍光偏光解消法、 エバネッセント場イメージング法、 蛍光相 関分光法、 蛍光イメージング法、 固相酵素免疫検定法などが知られている。 とり わけ、 蛍光相関分光法 (Fluorescence Correlation Spectroscopy: FCS) は、 測定に必 要な試料量が少なく (およそフェムトリットル) 、 測定時間が短く (およそ 10秒、) 、 HTSのための自動化が容易である (実際に EV0TEC社では 1日で 10万検体以上のス クリーニングを行うウルトラ HTSを目指した装置の開発を行なっている) 等の長 所があり、 検出系として優れている (金城政孝 (1999) 蛋白質核酸酵素 44 : 143 1-1438) 。 さらに 2種類の蛍光色素を用いる蛍光相互相関分光法 (Fluorescence Cross-Correlation Spectroscopy: FCCS) では、 1種類の蛍光色素を用レヽる FCSでは 困難であつた同程度の大きさをもつ分子間の相互作用も検出が可能であり、 タン パク質相互作用の HTSへの応用が期待されている。 しかしこれまで、 FCCSを用い
質相互作用の検出に成功した例は知られていない (
一般に、 タンパク質相互作用の検出系では、 固定化のためのタグや蛍光色素等 のプローブでタンパク質を修飾する必要がある。 本発明者等は、 ピューロマイシ ン等の核酸誘導体を用いて翻訳系中でタンパク質の C末端を修飾する方法を先に 提案している (特閧平 11- 322781、 特開 2000- 139468) 。 この方法は、 従来の化学 修飾法や蛍光タンパク質融合法に比べて、 タンパク質の機能を損ないにくい等の 利点があるが、 修飾タンパク質の収量が少なく、 主に無細胞翻訳系を用いるため 大量に修飾タンパク質を調製するためには費用がかかる等の、 なお改善を要する 点がある。 特に、 HTSの検出系として最も優れている FCCSに適用する場合、 蛍光 修飾したタンパク質の精製度が問題となるため、 ゲノム機能解析等の実用化に向 けての収量の改善は必須の条件である。 発明の開示
本発明の目的は、 タンパク質の C末端修飾法における修飾タンパク質の収量を 大幅に改善すること、 および、 この改善された修飾法をタンパク質の蛍光修飾に 適用し、 さらに適当な蛍光修飾夕ンパク質の精製法等を検討することによって、 蛍光相互相関分光法をはじめ種々の分子間相互作用検定法による夕ンパク質相互 作用の検出を改善されたレベルで実現することである。
本発明者等は、 上記課題を解決すべく研究した結果、 蛍光色素等の非放射性修 飾物質とピュー口マイシンとの間にヌクレオチドリンカ一を挿入した修飾剤を用 いると、 従来のヌクレオチドリンカ一を含まない修飾剤を用いた場合に比べて、 修飾タンパク質の収量が 100倍近く増大することを見出した。 さらに、 翻訳テン プレートを改良することにより従来の 5〜 6倍翻訳効率が上昇することも見出し た。 リンカ一を介してフルォレセィンゃローダミングリーンや Cy5等の蛍光物質 とビューロマイシンとを結合させた修飾剤と改良した翻訳テンプレートを用いて タンパク質の C末端を蛍光修飾すると、 従来法の 500倍の収量で C末端蛍光修飾夕 ンパク質が得られ、 それを適当な方法で精製して蛍光相互相関分光法や蛍光ィメ —ジングアナライズ法で測定することにより、 タンパク質間相互作用やタンパク 質-核酸相互作用を簡便かつ迅速に、 実用レベルで検出できることがわかった。
本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
本発明は、 第 1に、 タンパク質の翻訳系で、 ペプチド転移反応によってタンパ ク質と結合し得る基をもつァクセプ夕一部と、 該ァクセプ夕一部とヌクレオチド リンカ一を介して結合した、 非放射性修飾物質を含む修飾部とを含む、 タンパク 質の C末端修飾剤 (以下、 本発明修飾剤ともいう) を提供する。
本発明修飾剤においては、 ァクセプ夕一部がピューロマイシン又はその誘導体 の残基をもつことが好ましい。
本発明修飾剤においては、 ヌクレオチドリンカーが 2,-デォキシシチジル酸、 2, -デォキシシチジル-(3',5' )- 2,-デォキシシチジル酸、 リボシチジル酸、 又は、 リボシチジル -(3',5';)-リボシチジル酸であることが好ましい。
本発明修飾剤においては、 修飾部が蛍光基、 タンパク質と結合する基、 または、 その両方をもつことが好ましい。
本発明は、 第 2に、 本発明修飾剤が C末端に結合したタンパク質である C末端 修飾タンパク質 (以下、 本発明修飾タンパク質ともいう) を提供する。
本発明修飾タンパク質において、 本発明修飾剤が C末端に結合するタンパク質 は、 全長タンパク質であることが好ましい。
本発明は、 第 3に、 タンパク質をコードする 0RF領域と、 (IF領域の 5 ' 側に位 置する、 転写プロモーターおよび翻訳ェンハンサーを含む 5'非翻訳領域と、 0RF 領域の 3,側に位置する、 ポリ A配列を含む 3'末端領域とを含む翻訳テンプレート (以下、 本発明翻訳テンプレートともいう) を提供する。
本発明翻訳テンプレートにおいては、 転写プロモーターが SP6 RNAポリメラー ゼのプロモ一夕一配列を含み、 翻訳ェンハンサ一がタバコモザイクウィルスのォ メガ配列の一部を含むことが好ましい。
本発明翻訳テンプレートにおいては、 0RF領域は、 好ましくは、 その下流部分 に親和性夕グ配列を含む。 親和性夕グ配列は好ましくは His- tag配列を含む。 本発明は、 第 4に、 本発明修飾剤存在下で、 本発明翻訳テンプレートを翻訳系 で発現させてタンパク質合成を行わせ、 合成されたタンパク質を精製することを 含む、 C末端修飾タンパク質の製造方法 (以下、 本発明製造方法ともいう) 、 お よび、 その製造方法により得られる、 C末端が修飾されたタンパク質を提供する。
本発明製造方法において、 精製は、 ァフィ二ティクロマトグラフィー、 ゲルろ 過、 イオンクロマトグラフィー、 電気泳動、 沈殿、 透析、 および、 それらの任意 の組合せにより行われることが好ましい。
本発明は、 第 5に、 本発明修飾タンパク質を利用したタンパク質と標的分子と の間の相互作用の解析方法、 すなわち、 タンパク質と標的分子との間の相互作用 を解析する方法であって、 該タンパク質を含む本発明修飾タンパク質を用いるこ とを特徴とする方法を提供する。 相互作用の解析は、 例えば、 蛍光相関分光法、 蛍光イメージングアナライズ法、 蛍光共鳴エネルギー移動法、 エバネッセント場 分子イメージング法、 蛍光偏光解消法、 表面プラズモン共鳴法、 又は、 固相酵素 免疫検定法により行われる。 また、 この解析方法においては、 本発明修飾タンパ ク質を固定化してもよい。 あるいは、 標的分子が固定されたアレイ上に本発明修 飾タンパク質を添加し、 該標的分子と特異的に結合した本発明修飾タンパク質を 検出してもよい。 図面の簡単な説明
図 1は、 C末端修飾タンパク質 (A)、 修飾剤 (B )、 および、 翻訳テンプレート(C) の構成を示す図である。
図 2は、 修飾剤の化学合成法を示す図である。 図中、 CPGは固相担体、 DMTrは 4, 4,-ジメ トキシトリチル基、 Fmocはフルオレン- 9-メ トキシカルボ二ル基を示す。 修飾剤 1〜1 1の構造については第 1表を参照。
図 3は、 修飾剤の化学合成法を示す図である。 図中、 MMTrは 4-モノメ トキシト リチル基を示す。 修飾剤 1 2〜1 8の構造については第 2表を参照。
図 4は、 ヌクレオチドリンカーの c-Fos夕ンパク質の C末端修飾効率に対する 影響を示す図である。 左図は蛍光基にフルォレセインを用いた。 右図は蛍光基に Cy5を用いた。 ピュー口マイシン残基と蛍光基の間のヌクレオチドリンカ一は、 2,-デォキシシチジル酸(-dC -)、 2,-デォキシシチジル -(3,,5,)- 2,-デォキシシチ ジル酸(- dCdC -)、 リボシチジル酸(-rC - )、 リボシチジル-(3,,5,) -リボシチジル 酸(- rCrC- )で、 ヌクレオチドリンカ一がないものは、 (-none- )で示してある。 図 5は、 蛍光相互相関分光法による特異的な夕ンパク質-核酸相互作用の検出
の結果を示す図である。 1 : Cy5-DNA + RG-Jun + Fos、 2 : Cy5-DNA + RG-Fos + Jun、 3 : Cy5-DNA + RG-Jun + Jun、 4 : Cy5-DNA + RG-Fos + Fos。 1および 2 は、 Fos、 Jun、 DNAの 3種類全てを加えた試料、 3および 4は、 Fosまたは Junの 一方が欠けている対照試料である。
図 6は、 翻訳テンプレートの一例の基本的構造および各要素の DNA塩基配列を 示す図である。
図 7は、 翻訳テンプレートの蛍光修飾効率に及ぼす影響を示す図である。
A:本発明の翻訳テンプレートの 3'末端領域のポリ A配列の効果を示す。
B :本発明の翻訳テンプレートの 5' UTRの翻訳ェンハンサ一の効果を示す。
図 8は、 タンパク質 C末端のビォチン修飾およびストレプトアビジン膜への固 定の結果を示す図 (写真) である。 1はピオチニル基と蛍光基 (TAMRA) を同一 分子に有する修飾剤で C- Junタンパク質の C末端を修飾した (ピオチン ·蛍光修 飾タンパク質(c-Jun) ) 。 2は蛍光基 (TAMRA) のみを有する修飾剤で c- Junタン パク質の C末端を修飾した (蛍光修飾タンパク質(C- Jun) ) 。 3は対照実験で、 1の修飾剤とモル比で 1000倍量の遊離ピオチンを同時に加えた (ピオチン '蛍光 修飾タンパク質(C- Jun) +遊離ビォチン) 。
図 9は、 固相担体表面上での夕ンパク質相互作用の検出結果及び結果の説明を 示す図 (写真) である。 スライ ドガラス上に、 Cy5(635 nmで蛍光を測定)で修飾 した Fosと Junの結合領域の DNAを固定し、 これに無修飾 Fos存在下でローダミング リーン (532皿で蛍光を測定) で C末端が修飾された Jun (左) と p53タンパク質 (右) をそれそれ作用させた。
図 1 0は、 修飾剤の化学合成法を示す図である。 図中 Bocは tert-ブトキシカル ボニル基を示す。
図 1 1は、 修飾剤の化学合成法を示す図である。 修飾剤 2 1〜2 5の構造につ いては第 4表を参照。
図 1 2は、 Cy5標識 c- Junについて、 ポリヒスチジンの長さとニッケルキレート 樹脂による回収量を検討した結果を示す図 (写真) である。 Cy5- dC-ピュ 一口マイシン (修飾剤 9 ) 存在下、 等濃度の mRNAを小麦胚芽抽出液で翻訳した。 翻訳後上清 (レーン 1 ) 、 ニッケルキレート樹脂素通り (レーン 2 )、 イミダゾ
一ル溶出 (レーン 3 ) の各画分を 12.5%- SDSポリアクリルアミ ド電気泳動で分離 し、 蛍光画像解析装置 (Molecular Imager FX、 バイオラッド社) で検出した。 M は分子量マーカー (プレシジョンマーカー、 バイオラッド社) である。 ポリヒス チジンの長さが増えるに従い、 蛍光標識タンパク質の回収が増加した。
図 1 3は、 各種 Cy5- dC-ピューロマイシンを用いて c-Fosを標識し、 ニッケルキ レート樹脂での回収を検討した結果を示す。 Aは精製後、 17.5% SDS- PAGEで分離 し、 蛍光画像解析装置で検出した結果を示す図 (写真) である。 矢印は翻訳する 時の各種ピューロマイシン濃度が増加する方向を示し、 各レーンは 12.5、 25、 50、 100 zMに相当する。 Bは Aの各バンドの蛍光強度を示したグラフである。 白丸は dC -ピューロマイシン (修飾剤 9 ) 、 黒三角は dC-イミノビォチン (修飾剤 2 5 ) 、 黒四角は dC -ピオチン (修飾剤 2 4 ) である。 イミノビォチンを含む標識化合物 (修飾剤 2 5 ) を用いた場合は、 イミノビォチンを含まない標識化合物 (修飾剤 9 ) に比べて約 2倍の効率で蛍光標識された。
図 1 4は、 イミノビォチンを含む Cy5- dC-ピュ一ロマイシン (修飾剤 2 5 ) で 標識された c-Fosおよび c-Jun夕ンパク質のストレブトァビジン樹脂による精製の の結果を示す図 (写真) である。 ニッケルキレート樹脂で粗精製した画分 (レ一 ン 1 ) 、 ストレブトアビジン樹脂素通り画分 (レーン 2 ) 、 ピオチン溶出画分 (レーン 3 ) を 17, 5% SDS- PAGEで分離後、 蛍光画像解析 (A) 、 ィムノブロット (B) にて検出した。 ィムノブロットは電気泳動で分離後ポリビニリデンフロラ ィ ド膜 (ポールゲルマンサイエンス社) に電気的に転写し、 T7タグに対するマウ スモノクローナル抗体 (ノバジェン社) 、 西洋ヮサビペルォキシダーゼ標識ャギ 抗マウス抗体 (トランスダクシヨン社) を反応させ、 ECLキッ ト (アマシャムフ アルマシア社) を用いて化学発光させた。 ニヅケルキレート樹脂に結合したヒス チジンタグタンパク質のうち、 ストレブトアビジン固定樹脂を素通りしたタンパ ク質は蛍光で検出されなかったが (レーン 2 ) 、 ビォチン溶出画分は抗体、 蛍光 とも検出された (レーン 3 ) 。
図 1 5は、 イミノビォチンを含む Cy5-dC -ビューロマイシン (修飾剤 2 5 ) で 標識された c- Fosおよび C- Junの精製の結果を示す図 (写真) である。 ニッケルキ レート樹脂精製画分 (レーン 1 ) およびストレプトアビジン固定樹脂精製画分
(レーン 2 ) をそれそれ 17.5% SDS- PAGEで分離し、 SyproRuby (モレキュラープ 口一ブス社) にてタンパク質を染色後、 蛍光画像解析した。 ストレプトアビジン 固定樹脂を用いることによって、 ほぼ単一な成分に精製できた。
図 1 6は、 蛍光相互相関分光法によりタンパク質 -タンパク質相互作用を測定 した結果を示す。 Cy5標識 c- Jun、 ローダミングリーン標識 c- Fos、 および AP- 1配 列をもつ DM各 10 nMを混合した場合 (Cy5-Jun + Rh-Fos + API) 、 相互相関 G。(0) は約 1.1で (黒丸) 、 この結果から算出された解離定数 (Kd)は約 1 X 10— 8 Mであつ た。 一方、 Cy5標識 c- Fos、 ローダミングリーン標識 c- Fos、 および AP- 1配列 DNAの 場合 (Cy5-Fos + Rh-Fos + API) は相互相関が認められなかった (白丸) 。
図 1 7は、 プロティンマイクロアレイを用いたタンパク質間相互作用の検出の 結果及び説明を示す図である。 最上図は調製の説明図である。 (A) STA- Fos(F )お よび STA- Jun( J)のビォチンプレート上への固定化の蛍光標識抗体を用いた確認の 結果を示す図 (写真) 及びその説明図を示す。 (B ) STA-Jun(J) と STA- Fos(F )を ピオチンプレート上へ固定化した後、 C末端蛍光標識 Fosを作用させた結果を示す 図 (写真) およびその説明図を示す。 C末端蛍光標識 Fosは STA- Jun(J)とは特異的 に相互作用するが、 STA- Fos(F)とは全く相互作用しないことが分かる。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明をさらに詳細に説明する。
( 1 ) 本発明修飾タンパク質および本発明製造方法、 並びに、 本発明製造方法に 使用される本発明修飾剤および本発明翻訳テンプレート
( 1 - 1 ) 本発明修飾タンパク質
本発明修飾タンパク質は、 C末端が修飾されたタンパク質であり、 図 1の Aに 示すように、 修飾剤がタンパク質の C末端に結合した構成をもっている。 すなわ ち、 本発明修飾タンパク質は、 タンパク質と修飾剤とにより構成される。
本発明修飾タンパク質を構成する 「タンパク質」 とは、 その機能が既知又は未 知である相互作用の解析対象として用いるタンパク質を意味する。 本発明の C末 端修飾タンパク質は、 このタンパク質と後述する標的分子との相互作用の有無の 測定に使用できる。
このタンパク質は、 天然タンパク質又はその変異体、 および人工タンパク質又 はその変異体の何れでもよい。 天然タンパク質は、 種々の生物の器官、 組織又は 細胞に由来する c D N Aライブラリ一から転写および翻訳される、 多様性を有す るタンパク質のライブラリーをも含むものである。 人工タンパク質は、 天然タン パク質の全てもしくは部分配列を組み合わせた配列、 又はランダムなアミノ酸配 列を含むものである。
本発明修飾夕ンパク質を構成するタンパク質は、 全長夕ンパク質であることが 好ましい。 本明細書において 「全長タンパク質」 とは、 C末端が完全に翻訳され ているタンパク質、 すなわち、 そのタンパク質をコードする塩基配列の終止コド ンの一つ前までのコドンが翻訳されて得られたタンパク質を意味する。 全長タン パク質の N末端は、 シグナルぺプチドの切断等何らかのプロセシングを受けてい てもよい。
また、 本発明修飾タンパク質を構成するタンパク質は親和性タグと融合した夕 ンパク質であってもよい。 親和性タグの例としては、 ポリヒスチジンペプチドや ェピトープペプチド、 グル夕チオン- S-トランスフェラ一ゼ、 プロテイン A、 マル トース結合タンパク質、 カルモジュリン結合べプチド等が挙げられる。
( 1 - 2 ) 本発明修飾剤
本発明修飾剤は、 図 1の Bに示すように、 タンパク質の翻訳系でのペプチド転 移反応、 すなわち、 リボソーム上でのペプチド転移反応によってタンパク質と結 合し得る基 (残基を含む) をもつァクセプ夕一部が、 ヌクレオチドリンカ一を介 して修飾部と結合した構成をもつ。 この修飾剤の存在下でタンパク質合成を行い、 得られる C末端修飾タンパク質を精製し、 分子間相互作用の検出系を用いること によって、 タンパク質相互作用の検出が可能となる。
修飾部に含まれる非放射性修飾物質の具体例としては、 蛍光性、 非蛍光性修飾 物質等が挙げられる。 蛍光性物質としては、 フルォレセイン系列、 ローダミン系 列、 Cy3、 Cy5、 ェォシン系列、 NBD 系列等の蛍光色素や、 緑色蛍光タンパク質 (GFP) 等の蛍光性タンパク質がある。 また、 非蛍光性物質としては、 ビォチン のような補酵素、 タンパク質、 ペプチド、 糖類、 脂質類、 色素、 ポリエチレング リコール等、 何らかの目印となり得る化合物であればいかなるものでもよい。
本発明修飾剤においては、 修飾部が蛍光基、 タンパク質と結合する基 (例えば ピオチニル基やイミノビォチニル基) 、 または、 その両方をもつことが好ましい。 特に、 ピオチニル基やイミノビォチニル基を有することは、 本発明修飾剤による 修飾の効率が上昇するため、 好ましい。
ァクセプ夕一部は、 タンパク質の翻訳系で、 ペプチド転移反応によってタンパ ク質と結合し得る基をもち、 好ましくはピューロマイシン又はその誘導体の残基 をもつ。
ピューロマイシンはアミノアシル tRNAと類似した構造をもち、 タンパク質合成 を阻害する抗生物質として知られているが、 低濃度ではタンパク質の C末端に結 合することが知られている (Miyamoto-Sato, E. et al. (2000) Nucleic Acids Res. 28: 1176-1182) 。 本発明で用いることができるピューロマイシン誘導体は、 ピュー ロマイシンと類似した構造を有し、 タンパク質の C末端に結合することができる 物質であればいかなるものでもよい。 具体例としては、 3,-N-アミノアシルビユ —ロマイシンアミノヌクレオシド、 3' - N-アミノアシルアデノシンアミノヌクレ オシド等が挙げられる。
修飾部とァクセプ夕一部との間をつなぐヌクレオチドリンカーとは、 具体的に は、 リボヌクレオチドまたはデォキシリボヌクレオチドが 1個ないし複数個つな がった核酸または核酸誘導体であり、 特に好ましい例として、 シトシン塩基を含 むリボヌクレオチド (- rC- ) またはデォキシリボヌクレオチド (- dC- ) が 1個な いし複数個つながった化合物が挙げられる。 その他、 修飾部とァクセプ夕一部と の間に挿入することによって修飾タンパク質の収量を上げることができる物質で あればいかなるものでもよい。
本発明修飾剤においては、 ヌクレオチドリンカーが 2,-デォキシシチジル酸、 2,-デォキシシチジル-(3' , 5' )-2' -デォキシシチジル酸、 リボシチジル酸、 又は、 リポシチジル-(3,,5' )-リボシチジル酸であることが好ましい。
修飾剤は、 上記修飾部とァクセプ夕一部とを所望のヌクレオチドリンカーを介 して、 それ自体既知の化学結合方法によって結合させることにより製造すること ができる。 具体的には、 例えば、 適当な保護基で保護された上記ァクセプ夕一部 を固相担体上に結合させ、 核酸合成機等を用いてヌクレオチドリンカ一としてヌ
クレオチドホスホアミダイ ト、 およびデォキシヌクレオチドホスホアミダイ ト、 修飾物質として蛍光物質やビォチンなどを結合したヌクレオチドホスホアミダイ トを順次結合させた後、 脱保護を行うことによって作製することができる。 上記 各部の種類、 あるいは結合の種類によっては液相合成法で結合させるかあるいは 両者を併用することもできる。 また、 修飾物質としてニッケル等の金属イオンを 用いる場合には、 金属イオンが配位しうる二トリロトリ酢酸やィミノジ酢酸等の キレート性の試薬を結合させ、 次いで金属イオンを配位させることができる。
( 1 - 3 ) 本発明翻訳テンプレート
本発明翻訳テンプレートは、 本発明修飾タンパク質を製造する際に利用できる 翻訳テンプレートであり、 図 1の Cに示すように、 ポリ A配列を含む 3,末端領域、 転写プロモ一夕一を含んだ 5,非翻訳領域(5,UTR)、 および、 タンパク質のコード された 0RF領域から構成される。 翻訳テンプレートは DNAでも RNAでもよい。
さらに詳細には、 本発明の翻訳テンプレートは、 タンパク質をコードする 0RF 領域と、 0RF領域の 5 ' 側に位置する、 転写プロモーターおよび翻訳ェンハンサ 一を含んだ 5' UTRと、 0RF領域の 3'側に位置する、 ポリ A配列(polyA)を含んだ 3'末 端領域から構成される。
さらに好ましい翻訳テンプレートは、 5' UTRの転写プロモ一夕一として SP6 RNA ポリメラーゼのプロモーター配列を含み、 翻訳ェンハンサ一としてタバコモザィ クウィルス(TMV)のオメガ配列の一部(029)を含む。 また、 領域がその下流部 分に親和性タグ配列を含むことが好ましい。 親和性タグ配列は、 上述の親和性夕 グをコードする配列であり、 好ましくは His-tag (ポリヒスチジンタグ) 配列を 含む。 本発明翻訳テンプレートを用いて製造された本発明修飾タンパク質をポリ ヒスチジンタグを用いて製造する場合には、 ポリヒスチジンタグは長い方が、 二 ヅケルキレート樹脂による回収率が向上するため、 好ましい。 ポリヒスチジン夕 グの好ましい長さの範囲は、 修飾されるタンパク質の種類や標識の種類により変 化し得るが、 通常には、 8〜1 2残基である。
なお、 本明細書において 「上流」 および 「下流」 とは、 転写または翻訳の方向 におけるものを意味する。
本発明翻訳テンプレートは、 DNAである場合、 上記の領域を適当な DNAベクター
又はプラスミ ドに導入することにより得られた DNAベクタ一又はプラスミ ドであ つてもよい。
また、 本発明翻訳テンプレートは、 RNAである場合、 5'末端に Cap構造があって もなくてもよい
( 1一 4 ) 本発明製造方法
本発明製造方法、 本発明修飾剤存在下で、 本発明翻訳テンプレートを翻訳系で 発現させてタンパク質合成を行わせ、 合成されたタンパク質を精製することを含 む。
本発明で用いられる翻訳系としては、 無細胞タンパク質合成系や細胞発現系が 挙げられる。 無細胞タンパク質合成系の具体例としては、 小麦胚芽抽出液、 ゥサ ギ網状赤血球抽出液、 大腸菌 S30抽出液等が挙げられる。 これらの無細胞タンパ ク質合成系の中に、 上記翻訳テンプレートを加え、 同時に;!〜 100 Mの修飾剤を 加え、 25〜37°Cで 1〜数時間保温することによって C末端修飾タンパク質が合成 される。 合成された修飾タンパク質は、 そのまま次の精製プロセスまたは検出プ 口セスに供することができる。 一方、 細胞発現系の具体例としては、 大腸菌、 枯 草菌、 好熱菌、 酵母等の細菌から、 昆虫細胞、 哺乳類等の培養細胞、 さらに線虫、 ショウジヨウバエ、 ゼブラフィ ッシュ、 マウス等に至るまで、 遺伝子導入が可能 な細胞であればいかなるものでもよい。 これらの細胞の中に、 上記本発明翻訳テ ンプレートを導入し、 同時に 1〜100〃Mの本発明修飾剤を電気穿孔法、 マイクロ ィンジェクション法等により細胞の中に導入し、 細胞の至適生育温度で数時間保 温することによって修飾タンパク質が合成される。 合成された修飾タンパク質は、 細胞を破碎することによって回収し次の精製プロセスまたは検出プロセスに供す ることができる。 また、 そのまま細胞の中で検出プロセスに供することも可能で ある。 翻訳テンプレートは、 用いる翻訳系に合わせて適切なものを選択する。 本発明修飾タンパク質を精製する方法としては、 ァフィ二ティー、 ゲルろ過、 ィォン交換等のクロマトグラフィ一や、 電気泳動、 沈澱、 透析等、 一般にタンパ ク質の精製に用いられるあらゆる方法が利用可能である。 好ましくは、 ァフィ二 ティークロマトグラフィー、 ゲルろ過、 イオンクロマトグラフィー、 電気泳動、 沈殿、 透析、 および、 それらの任意の組合せが挙げられる。 特に好ましい例とし
て、 ポリヒスチジンペプチドゃェピトープペプチド、 グル夕チオン- S-トランス フェラ一ゼ、 プロテイン A、 マルト一ス結合タンパク質、 カルモジュリン結合ぺ プチド等の親和性タグを融合した修飾タンパク質を親和性樹脂で精製し、 さらに 未反応の修飾剤を完全に除去するためにゲルろ過カラムに数回かける方法がある。 また、 上記の親和性タグを融合した修飾タンパク質を親和性樹脂で予め精製し た後、 修飾部のピオチニル基あるいはィミノピオチニル基とアビジンあるいはス トレブトアビジンの親和性を利用して、 未修飾タンパク質を完全に除き、 100%修 飾されたタンパク質を得る方法もある。
( 2 ) 相互作用の解析法
本発明は、 本発明修飾タンパク質を利用したタンパク質と標的分子との間の相 互作用の解析方法、 すなわち、 タンパク質と標的分子との間の相互作用を解析す る方法であって、 該タンパク質を含む本発明修飾タンパク質を用いることを特徴 とする方法を提供する。
本発明の解析方法においては、 通常には、 上記で得られた本発明修飾タンパク 質と標的分子を、 修飾物質の種類や反応系の種類などにより適宜組み合わせて接 触せしめ、 該本発明修飾タンパク質又は該標的分子が発する信号において両分子 間の相互作用に基づいて発生される上記信号の変化を測定すること.により相互作 用を解析する。 相互作用の解析は、 例えば、 蛍光相関分光法、 蛍光イメージング アナライズ法、 蛍光共鳴エネルギー移動法、 エバネッセント場分子イメージング 法、 蛍光偏光解消法、 表面プラズモン共鳴法、 又は、 固相酵素免疫検定法により 行われる。 これらの方法の詳細については下記 (3 ) で説明する。
「標的分子」 とは、 本発明修飾タンパク質と相互作用する分子を意味し、 具体 的にはタンパク質、 核酸、 糖鎖、 低分子化合物などが挙げられ、 好ましくは、 夕 ンパク質又は D NAである。
夕ンパク質としては、 本発明修飾夕ンパク質と相互作用する能力を有する限り 特に制限はなく、 タンパク質の全長であっても結合活性部位を含む部分べプチド でもよい。 またアミノ酸配列、 およびその機能が既知のタンパク質でも、 未知の タンパク質でもよい。 これらは、 合成されたペプチド鎖、 生体より精製された夕
ンパク質、 あるいは c D NAライブラリー等から適当な翻訳系を用いて翻訳し、 精製したタンパク質等でも標的分子として用いることができる。 合成されたぺプ チド鎖はこれに糖鎖が結合した糖タンパク質であってもよい。 これらのうち好ま しくはァミノ酸配列が既知の精製されたタンパク質か、 あるいは c D N Aライブ ラリー等から適当な方法を用いて翻訳および精製されたタンパク質を用いること ができる。
核酸としては、 本発明修飾タンパク質と相互作用する能力を有する限り、 特に 制限はなく、 D N Aあるいは R N Aも用いることができる。 また、 塩基配列ある いは機能が既知の核酸でも、 未知の核酸でもよい。 好ましくは、 タンパク質に結 合能力を有する核酸としての機能、 および塩基配列が既知のものか、 あるいはゲ ノムライブラリー等から制限酵素等を用いて切断単離してきたものを用いること ができる。
糖鎖としては、 本発明修飾タンパク質と相互作用する能力を有する限り、 特に 制限はなく、 その糖配列あるいは機能が、 既知の糖鎖でも未知の糖鎖でもよい。 好ましくは、 既に分離解析され、 糖配列あるいは機能が既知の糖鎖が用いられる。 低分子化合物としては、 本発明修飾タンパク質と相互作用する能力を有する限 り、 特に制限はない。 機能が未知のものでも、 あるいはタンパク質に結合する能 力が既に知られているものでも用いることができる。
これら標的分子が本発明修飾タンパク質と行う 「相互作用」 とは、 通常は、 夕 ンパク質と標的分子間の共有結合、 疎水結合、 水素結合、 ファンデルワールス結 合、 および静電力による結合のうち少なくとも 1つから生じる分子間に働く力に よる作用を示すが、 この用語は最も広義に解釈すべきであり、 いかなる意味にお いても限定的に解釈してはならない。 共有結合としては、 配位結合、 双極子結合 を含有する。 また静電力による結合とは、 静電結合の他、 電気的反発も含有する。 また、 上記作用の結果生じる結合反応、 合成反応、 分解反応も相互作用に含有さ o
相互作用の具体例としては、 抗原と抗体間の結合および解離、 タンパク質レセ プ夕一とリガンドの間の結合および解離、 接着分子と相手方分子の間の結合およ び解離、 酵素と基質の間の結合および解離、 核酸とそれに結合するタンパク質の
間の結合および解離、 情報伝達系におけるタンパク質同士の間の結合と解離、 糖 タンパク質とタンパク質との間の結合および解離、 あるいは糖鎖とタンパク質と の間の結合および解離が挙げられる。
用いられる標的分子は、 態様に応じて修飾物質により修飾して用いることがで きる。 修飾物質は、 通常、 蛍光性物質などの非放射性修飾物質から選択される。 蛍光物質としては、 フリーの官能基 (例えばカルボキシル基、 水酸基、 アミノ基 など) を持ち、 タンパク質、 核酸等の上記標的物質と連結可能な種々の蛍光色素、 例えばフルォレセイン系列、 ローダミン系列、 Cy3、 Cy5、 ェォシン系列、 N B D 系列などのいかなるものであってもよい。 その他、 色素など修飾可能な化合物で あれば、 その化合物の種類、 大きさは問わない。
これらの修飾物質は、 標的分子と本発明修飾タンパク質との間の相互作用に基 づいて発生される信号の変化の測定又は解析方法に適したものが適宜用いられる。 上記修飾物質の標的分子への結合は、 それ自体既知の適当な方法を用いて行う ことができる。 具体的には、 例えば、 標的分子がタンパク質の場合、 上記 ( 1— 4 ) に記載した C末端を修飾する方法等を用いることができる。 また標的分子が 核酸の場合は、 予め修飾物質を共有結合などで結合させたォリゴ D N Aプライマ —を用いた P C Rを行う方法などによって簡便に修飾することができる。
また、 本発明修飾タンパク質または本発明に用いられる標的分子は態様に応じ て、 固相に結合させる (即ち、 固定化する) 場合があるが、 固相に結合させる方 法としては、 修飾物質を介して結合させるものと、 それ以外の部分により結合さ せるものが挙げられる。
修飾物質を介して結合させる場合に用いられる修飾物質は、 通常には、 特定の ポリペプチドに特異的に結合する分子 (以下、 「リガンド」 と称することがある。 ) であり、 固相表面には該リガンドと結合する特定のポリペプチド (以下、 「ァダ プ夕ータンパク質」 と称することがある) を結合させる。 アダプタータンパク質 には、 結合タンパク質、 受容体を構成する受容体タンパク質、 抗体なども含まれ る。
アダプタータンパク質 Zリガンドの組み合わせとしては、 例えば、 アビジンお よびストレブトアビジン等のピオチンおよびィミノビォチン結合タンパク質/ビ
ォチン又はイミノビォチン、 マルト一ス結合タンパク質/マルトース、 Gタンパ ク質/グァニンヌクレオチド、 ポリヒスチジンペプチド /ニッケルあるいはコバ ルト等の金属イオン、 グル夕チオン一 S—トランスフェラーゼ /グル夕チオン、 D N A結合タンパク質/ D N A、 抗体/抗原分子 (ェピトープ) 、 カルモジユリ ン /カルモジュリン結合ペプチド、 A T P結合タンパク質/ A T P、 あるいはェ ストラジオ一ル受容体タンパク質/エストラジオールなどの各種受容体タンパク 質/そのリガンドなどが挙げられる。
これらの中で、 アダプタ一タンパク質ノリガンドの組み合わせとしては、 アビ ジンおよびストレブトアビジンなどのピオチンおよびィミノピオチン結合タンパ ク質/ピオチン又はィミノピオチン、 マルト一ス結合タンパク質/マルトース、 ポリヒスチジンペプチド/ニッケルあるいはコバルト等の金属イオン、 グル夕チ オン一 S—トランスフェラーゼ/グル夕チオン、 抗体/抗原分子 (ェピトープ) 、 などが好ましく、 特にストレブトアビジン/ピオチン又はイミノビォチンの組み 合わせが最も好ましい。 これらの結合タンパク質は、 それ自体既知のものであり、 該タンパク質をコードする D N Aは既にクローニングされている。
アダプタ一タンパク質の固相表面への結合は、 それ自体既知の方法を用いるこ とができるが、 具体的には、 例えば、 タンニン酸、 ホルマリン、 グルタルアルデ ヒド、 ビルビックアルデヒド、 ビス一ジァゾ化べンジゾン、 トルエン- 2,4-ジィ ソシァネート、 アミノ基、 活性エステルに変換可能なカルボキシル基、 又はホス ホアミダイ ドに変換可能な水酸基あるいはアミノ基などを利用する方法を用いる ことができる。
修飾物質以外の部分により固相に結合させる場合は、 通常タンパク質、 核酸、 糖鎖、 低分子化合物を固相に結合させるのに用いられる既知の方法、 具体的には 例えば、 タンニン酸、 ホルマリン、 グルタルアルデヒド、 ピルビックアルデヒド、 ビス一ジァゾ化べンジゾン、 トルエン- 2, 4-ジイソシァネート、 アミノ基、 活性 エステルに変換可能なカルボキシル基、 又はホスホアミダイ ドに変換可能な水酸 基あるいはアミノ基などを利用する方法を用いることができる。
固相は、 通常、 タンパク質や核酸等を固定化するのに用いられるものでよく、 その材質および形状は特に限定されない。 例えば、 ガラス板やニトロセルロース
メンブレンやナイロンメンブレンやポリビニリデンフロラィ ド II莫、 あるいはプラ スチック製のマイクロプレート等を用いることができる。
( 3 ) 信号の変化の測定法
「測定」 とは解析のために用いられる信号の変化を収集するための手段であり、 いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。 用いられる測定法として は、 例えば、 蛍光相関分光法、 蛍光共鳴エネルギー移動法、 エバネツセント場分 子イメージング法、 蛍光偏光解消法、 蛍光イメージングアナライズ法、 表面ブラ ズモン共鳴法、 固相酵素免疫検定法など γ分子間相互作用を検出できるあらゆる 系が利用可能である。
この測定法は、 標的分子が固定されたアレイ上に本発明修飾タンパク質を添加 し、 該標的分子と特異的に結合した本発明修飾タンパク質を検出することを含む 方法も含む。 標的分子が固定されたアレイとは、 標的分子がそれらの同定が可能 な配置で固定化されている固相を意味する。 該標的分子と特異的に結合した本発 明修飾タンパク質の検出の方法は、 該標的分子と特異的に結合した本発明修飾夕 ンパク質が検出される限り、 特に限定されず、 通常には、 本発明修飾タンパク質 を添加したアレイから、 標的分子に結合しない本発明修飾タンパク質を洗浄によ り除去し、 残った本発明修飾タンパク質を検出する方法が挙げられる。
以下、 測定法の例について説明する。
( 3 - 1 ) 蛍光相関分光法
街光相 ¾分光法 (Fluorescence Correlation Spectroscooy (FCS) : Eigen, M., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, 5740-5747(1994)) は、 共焦点レーザ一顕微鏡等の下 で、 粒子の流動速度、 あるいは拡散率、 容積収縮等を測定する方法であり、 本発 明においては、 本発明修飾タンパク質 (C末端修飾タンパク質) と標的分子間の 相互作用により元の修飾分子 1分子の並進ブラゥン運動の変化を測定することに より、 相互作用する分子を測定することができる。
具体的には試料粒子が励起光により励起されて、 試料液容積の一部において蛍 光を放射し、 この放射光を測定し光子割合を得る。 この値は、 特定の時間に観測 されている空間容積中に存在する粒子の数と共に変化する。 上述した種々のパラ
メタ一は自己相関関数を使用してこの信号の変動から算出され得る。 この FCSを 行う為の装置も力一ルヅアイス (Zeiss) 社等から市販されており、 本方法にお いてもこれらの装置を用いて解析を行うことができる。
この方法を用いてタンパク質一標的分子間相互作用の測定又は解析を行う場合、 C末端修飾タンパク質あるいは標的分子のいずれも溶液として供することが必要 である (液相法) 。 標的分子は修飾の必要はない。 また相互作用を調べようとす る C末端修飾タンパク質より非常に分子量の小さい分子は、 C末端修飾タンパク 質のブラウン運動に影響を及ぼさないため本方法においてはふさわしくない。 しかし、 2種類の蛍光色素を用いる蛍光相互相関分光法 (FCCS) は、 1種類の 蛍光色素を用いる FCSでは困難であった同じくらいの分子量をもつタンパク質間 の相互作用も検出できる。 2種類の蛍光色素を用いる他の方法としては蛍光共鳴 エネルギー移動 (FRET) 法が知られているが、 FRETが生じるためには 2つの蛍光 色素が 40〜50A以内に近接する必要があり、 タンパク質の大きさや蛍光色素の付 いている位置によっては、 相互作用していても FRETが観測されない危険性がある。 FCCS法では相互相関の検出は蛍光色素間の距離に依存しないので、 そのような問 題がない。 一方、 他の検出系である蛍光偏光解消法と比較すると、 FCCS法は必要 なサンプル量が少なく、 検出時間が短く、 HTSのための自動化が容易等の長所が ある。 さらに FCCS法では蛍光標識された分子の大きさや数というきわめて基本的 な情報が得られるので、 表面ブラズモン共鳴法のように汎用的な用途に利用でき る可能性がある。 両者の違いは、 表面プラズモン共鳴法ではタンパク質が固定化 された状態で相互作用を検出するのに対して、 FCCS法ではより天然の状態に近い 溶液中の相互作用を見ることができる点にある。 FCCS法では、 タンパク質の固定 化が必要ないかわりに、 タンパク質を蛍光色素で標識する必要があるが、 本発明 により、 この課題を克服することが可能となった。
また、 FCCS法では細胞内の環境に近い溶液状態でタンパク質 ·タンパク質相互 作用やタンパク質 ·核酸相互作用を調べることができ、 かつ解離定数 (結合定数) を 1回の測定で簡便に算出することができる。
本方法において C末端修飾夕ンパク質に標的分子を接触せしめる方法としては、 両分子が相互作用するに十分な程度に接触する方法であれば如何なるものであつ
てもよいが、 好ましくは市販の F C S用装置の測定用ゥエルに通常生化学的に用 いられる緩衝液等に適当な濃度で C末端修飾タンパク質溶解した溶液を投入し、 さらに同緩衝液に適当な濃度で標的分子を溶解した溶液を投入する方法によって 行われる。
この方法において、 同時に多数の解析を行う方法としては、 例えば上記 F C S 用測定装置の各測定用ゥエルにそれそれ異なる複数の C末端修飾タンパク質を投 入し、 これに特定の標的分子溶液を投入するか、 あるいは特定の C末端修飾タン パク質を投入し、 各ゥエルに互いに異なる複数種の標的分子溶液を投入する方法 が用いられる。
( 3— 2 ) 蛍光イメージングアナライズ法
蛍光イメージングアナライズ法は、 固定化された分子に、 修飾分子を接触せし め、 両分子の相互作用により、 固定化された分子上にとどまった修飾分子から発 せられる蛍光を、 市販の蛍光イメージングアナライザ一を用いて測定又は解析す る方法である。
この方法を用いてタンパク質—標的分子間相互作用の測定又は解析を行う場合、 C末端修飾タンパク質あるいは標的分子のいずれか一方は上記した方法により固 定化されていることが必要である。 標的分子は固定化して用いる場合には修飾さ れているものと、 されていないもののどちらも利用可能である。 また、 固定化し ないで用いる場合には上記した修飾物質により修飾されていることが必要である。 C末端修飾タンパク質は、 修飾部を介して固定化されているものも、 修飾部以外 の部分で固定化されているものも用いることができる。
C末端修飾タンパク質、 あるいは標的分子を固定化するための基板 (固相) と しては、 通常、 タンパク質や核酸等を固定化するのに用いられるガラス板ゃニト ロセルロースメンブレンやナイロンメンブレン、 あるいはプラスチック製のマイ クロプレート等も用いることができる。 また、 表面が種々の官能基 (ァミノ基、 カルボキシル基、 チオール基、 水酸基等) や種々のリガンド (ビォチン、 ィミノ ピオチン、 ニッケルあるいはコバルト等の金属イオン、 グル夕チオン、 糖類、 ヌ クレオチド類、 DNA、 RNA、 抗体、 カルモジュリン、 受容体タンパク質等) が結合 した上記基板等も用いることができる。
本方法において修飾標的分子あるいは C末端修飾タンパク質を固定化分子へ接 触せしめる方法としては、 両分子が相互作用するに十分な程度に接触する方法で あればいかなるものであってもよいが、 好ましくは修飾標的分子あるいは C末端 修飾タンパク質を生化学的に通常使用される緩衝液に適当な濃度で溶解した溶液 を作成し、 これを固相表面に接触させる方法が好ましい。
両分子を接触せしめた後、 好ましくは過剰に存在する修飾標的分子あるいは C 末端修飾タンパク質を同緩衝液等により洗浄する工程を行い、 固相上にとどまつ た標的分子あるいは C末端修飾タンパク質の修飾物質から発せられる蛍光信号、 又は固定化されている修飾分子から発せられる蛍光と固相上にとどまった修飾分 子から発せられる蛍光が混ざり合った信号を、 市販のイメージングアナライザー を用いて測定あるいは解析することにより、 固定化された分子と相互作用する分 子を同定することができる。
この方法において、 同時に多数の解析を行う方法としては、 例えば上記固相表 面に、 複数の c末端修飾タンパク質あるいは修飾又は非修飾標的分子を番地付け して固定化する方法、 あるいは 1種類の C末端修飾タンパク質あるいは修飾又は 非修飾標的分子に固定化されていない複数種の C末端修飾タンパク質あるいは修 飾標的分子を接触させる方法等が用いられる。 複数種の C末端修飾タンパク質あ るいは修飾標的分子を接触させる場合には、 固相にとどまつた該分子を緩衝液の 濃度の差等により解離させて取得し、 これを既知の方法により分析することによ り同定できる。
( 3 - 3 ) 蛍光共鳴エネルギー移動法
2種類の蛍光色素を用いる他の分子間相互作用検出法として、 蛍光共鳴エネル ギ一移動 (FRET) 法がよく知られている。 FRET とは、 2種類の蛍光色素の一方
(エネルギー供与体) の蛍光スペクトルと、 もう一方 (エネルギー受容体) の吸 収スペクトルに重なりがあるとき、 2つの蛍光色素間の距離が十分小さいと、 供 与体からの発光が起こらないうちに、 その励起エネルギーが受容体を励起してし まう確率が高くなる現象をいう。 したがって、 相互作用を検出したい 2つのタン パク質を、 それそれ供与体および受容体となる蛍光色素で標識しておき、 供与体 を励起すれば、 2つのタンパク質が相互作用しない場合は、 蛍光色素間の距離が
大きいため FRETは起こらず、 供与体の蛍光スぺクトルが観察されるが、 2つの タンパク質が相互作用して蛍光色素間の距離が小さくなると、 FRETにより受容体 の蛍光スぺクトルが観察されるので、 蛍光スぺクトルの波長の違いからタンパク 質間相互作用の有無を判別することができる。 蛍光色素としては、 供与体がフル ォレセイン、 受容体がローダミンという組み合わせがよく用いられている。 また 最近では、 蛍光緑色タンパク質 (GFP) の波長の異なる変異体の組み合わせによ り、 細胞の中で ΙΈΕΤを観察し相互作用を検出する試みがなされている。 この方 法の欠点としては、 FRETが生じるために 2つの蛍光色素が 40〜50A以内に近接 する必要があるため、 タンパク質の大きさや蛍光色素の付いている位置によって は、 相互作用していても FRETが観測されない危険性があるという点が挙げられる。
( 3 - 4 ) エバネヅセント場分子ィメージング法
エバネヅセント場分子イメージング法とは、 Funatsu, T., et al ., Nature, 3 74, 555-559 ( 1995 )等に記載されている方法で、 ガラス等の透明体に固定化した 分子に溶液として第 2の分子を接触せしめ、 これにエバネッセント場が発生する 角度でレーザ一光等の光源を照射し、 発生したエバネッセント光を検出器によつ て測定又は解析する方法である。 これらの操作は、 それ自体既知のエバネッセン ト場蛍光顕微鏡装置を用いて行うことができる。
この方法を用いてタンパク質一標的分子間相互作用の測定又は解析を行う場合、 C末端修飾タンパク質あるいは標的分子のいずれか一方は上記した方法により固 定化されていることが必要である。 標的分子は固定化する場合は修飾の必要はな いが、 固定化しないで用いる場合には上記した修飾物質により修飾されているこ とが必要である。
C末端修飾タンパク質、 あるいは標的分子を固定化するための基板としては、 ガラス等の材質の基板が用いられ、 好ましくは石英ガラスが用いられる。 また、 レーザー光の散乱等を防く、ために表面を超音波洗浄したものが好ましい。
本方法において固定化していない C末端修飾タンパク質あるいは修飾標的分子 を固定化分子へ接触せしめる方法としては、 両分子が相互作用するに十分な程度 に接触する方法であればいかなるものであってもよいが、 好ましくは固定化して いない C末端修飾タンパク質あるいは修飾標的分子を生化学的に通常使用される
緩衝液に適当な濃度で溶解した溶液を作成し、 これを固相表面に滴下する方法が 好ましい。
両分子を接触せしめた後、 エバネッセント場照明により励起された蛍光を C C Dカメラ等の検出器を用いて測定することにより、 固定化された分子と相互作用 する分子を同定することができる。
この方法において、 同時に多数の解析を行う方法としては、 例えば上記基板に、 複数の C末端修飾タンパク質あるいは修飾標的分子を番地付けして固定化する方 法等が用いられる。
( 3 - 5 ) 蛍光偏光解消法
蛍光偏光法 (Perran, J" et al, J. Phys. Rad" 1, 390-401(1926)) は、 蛍光偏光で励 起された蛍光分子が、 励起状態の間、 定常状態を保っている場合には同一の偏光 平面で蛍光を放射するが、 励起された分子が励起状態中に回転ブラウン運動等を 行つた場合に、 放射された蛍光は励起光とは異なつた平面になることを利用する 方法である。 分子の運動はその大きさに影響を受け、 蛍光分子が高分子である場 合には、 励起状態の間の分子の運動はほとんどなく、 放射光は偏光を保ったまま になっているのに対して、 低分子の蛍光分子の場合は、 運動速度が速いために放 射光の偏光が解消される。 そこで、 平面偏光で励起された蛍光分子から放射され る蛍光の強度を、 元の平面とそれに垂直な平面とで測定し、 両平面の蛍光強度の 割合からこの分子の運動性およびその存在状態に関する情報が得られるものであ る。 この方法によれば、 夾雑物があってもこれに影響されることなく、 蛍光修飾 された分子と相互作用する標的分子の挙動を追跡できる。 これは蛍光修飾された 分子と標的分子が相互作用するときにのみ、 偏光度の変化として測定されるから である。
この方法を行うための装置としては例えば BECON (Panyera社製) 等が市販され ており、 本方法もこれらの装置を用いることにより行うことができる。
この方法を用いてタンパク質一標的分子間相互作用の測定又は解析を行う場合、 C末端修飾タンパク質あるいは標的分子のいずれも溶液として供する必要がある。 標的分子は修飾の必要はない。 また相互作用を調べようとする C末端修飾タンパ ク質より非常に分子量の小さい分子は、 C末端修飾タンパク質のブラウン運動に
影響を及ぼさないため本方法においてはふさわしくない。
本方法において C末端修飾タンパク質に標的分子を接触せしめる方法としては、 両分子が相互作用するに十分な程度に接触する方法であれば如何なるものであつ てもよいが、 好ましくは市販の蛍光偏光解消装置の測定用ゥエルに通常生化学的 に用いられる緩衝液等に適当な濃度で C末端修飾タンパク質溶解した溶液を投入 し、 さらに同緩衝液に適当な濃度で標的分子を溶解した溶液を投入する方法によ つて行われる。
本方法において測定する C末端修飾タンパク質および標的分子との間の相互作 用は、 必ずしも抗原抗体反応ほど特異性は高くないことが考えられるため、 最適 の組み合わせを検出するためには、 相互作用の程度を数値化することが有効であ る。 相互作用の程度を示す指標としては、 例えば一定濃度の C末端修飾タンパク 質に対して、 極大蛍光偏光度を与える最小標的物濃度の値等を用いることができ る。
この方法において、 同時に多数の解析を行う方法としては、 例えば上記蛍光偏 光解消法測定装置の各測定用ゥエルにそれそれ異なる複数の C末端修飾タンパク 質を投入し、 これに特定の標的分子溶液を投入するか、 あるいは特定の C末端修 飾タンパク質を投入し、 各ゥエルに互いに異なる複数種の標的分子溶液を投入す る方法が用いられる。
( 3— 6 ) 表面ブラズモン共鳴法
表面ブラズモン共鳴法とは、 金属/液体界面で相互作用する分子によって表面 プラズモンが励起され、 これを反射光の強度変化で測定する方法である (Cullen, D.C., et al., Biosensors, 3(4), 211-225(1987-88)) 。 この方法を用いてタンパク質一 標的分子間相互作用の測定又は解析を行う場合、 C末端修飾夕ンパク質は上記し た方法により固定化されていることが必要であるが、 標的分子の修飾は必要ない。
C末端修飾タンパク質を固定化するための基板としては、 ガラスの等の透明基 板上に金、 銀、 白金等の金属薄膜が構成されたものが用いられる。 透明基板とし ては、 通常表面プラズモン共鳴装置用に用いられるものであればいかなるもので あってもよく、 レーザー光に対して透明な材料からなるものとして一般的にはガ ラス等からなるものであり、 その厚さは 0 . l〜5 mm程度のものが用いられる。
また金属薄膜の膜厚は 1 0 0〜2 0 0 O A程度が適当である。 このような表面プ ラズモン共鳴装置用固基板として市販されているものも用いることができる。 C 末端修飾タンパク質の上記基板への固定化は前述した方法により行うことができ る。
本方法において標的分子を C末端修飾タンパク質へ接触せしめる方法としては、 両分子が相互作用するに十分な程度に接触する方法であればいかなるものであつ てもよいが、 好ましくは標的分子を生化学的に通常使用される緩衝液に適当な濃 度で溶解した溶液に固定化された C末端タンパク質を接触させる方法を用いるこ とができる。
これらの行程は市販の表面プラズモン共鳴装置、 例えば B IAcore2000 (Pharmacia Biosensor社製)によってもよい。 両分子を接触せしめた後、 それ自体 既知の表面プラズモン共鳴装置を用いて、 それそれの反射光の相対強度の時間的 変化を測定することにより、 固定化された C末端修飾夕ンパク質と標的分子の相 互作用が解析できる。
この方法において、 同時に多数の解析を行う方法としては、 例えば上記表面プ ラズモン共鳴装置に用いられる基板に、 複数の C末端修飾タンパク質を番地付け して固定化するか、 あるいは 1種類の固定化された C末端修飾タンパク質に複数 種の標的分子を接触させる方法等が用いられる。
( 3 - 7 ) 固相酵素免疫検定法
固相酵素免疫検定法 (Enzyme Linked Immunosorbent Assay (ELISA): Crowther, J.R., Methods in Molecular Biology, 42 (1995)) は、 固相上に固定化した抗原に対し、 抗体を含む溶液を接触せしめ、 両分子の相互作用 (抗原抗体反応) により、 固定 化された抗原上にとどまった抗体をこれと特異的に結合する修飾分子 (I g G等) から発せられる蛍光、 あるいは修飾分子を基質とする色素から発せられる信号を、 市販の検出器 (E L I S Aリーダ一) を用いて測定又は解析する方法である。 この方法を用いてタンパク質—標的分子間相互作用の測定又は解析を行う場合、 抗原となる C末端修飾夕ンパク質は上記した方法により固定化されていることが 必要である。 また抗体となる標的分子は上記した修飾物質により修飾されている ことが必要である。
抗原となる C末端修飾夕ンパク質を固定化するための基板としては、 通常 E L I S Aに用いられるプラスチック製のマイクロプレート等も用いることができる。 本方法において抗体となる修飾標的分子を固相分子へ接触せしめる方法として は、 両分子が相互作用するに十分な程度に接触する方法であればいかなるもので あってもよいが、 好ましくは修飾標的分子を生化学的に通常使用される緩衝液に 適当な濃度で溶解した溶液を作成し、 これをマイクロプレートに注入する方法が 好ましい。
両分子を接触せしめた後、 好ましくは過剰に存在する固定化分子に結合してい ない修飾分子を同緩衝液等により洗浄する工程を行い、 固相上にとどまった修飾 分子から発せられる蛍光を、 市販の E L I S Aリーダー等を用いて測定あるいは 解析することにより、 固定化された抗原分子と相互作用する分子を同定すること ができる。
この方法において、 同時に多数の解析を行う方法としては、 例えば上記マイク 口プレートの各穴にそれそれ異なる複数の修飾標的分子を固定化する方法が用い られる。
( 4 ) 相互作用する分子の同定方法
上記 (3 ) のそれぞれの方法により測定され C末端修飾タンパク質との間に相 互作用が認められた標的分子は、 該分子の一次構造が未知の場合、 それ自体既知 の適当な方法により、 その一次構造を解析することができる。 具体的には、 相互 作用を認められた標的分子が夕ンパク質の場合、 ァミノ酸分析装置等によりアミ ノ酸配列を解析し、 一次構造を特定することができる。 また、 標的分子が核酸の 場合には、 塩基配列決定方法により、 オート D NAシーケンサ一などを用いれば 塩基配列を決定することができる。
( 5 ) C末端修飾タンパク質の固定化のための装置
上記 (2 ) に記載した C末端修飾タンパク質の修飾部を介した固相への結合 (固定化) 方法を行うために、 既知の適切な手段を組み合わせて装置を構築する こともできる。 本装置における各手段自体はそれそれ既知のものであり、 これら
の手段における、 基板の保持、 C末端修飾タンパク質溶液の添加、 洗浄等の各操 作は、 それ自体既知の方法により行えばよい。 これらの操作を組み合わせ、 全自 動又は半自動の、 C末端修飾夕ンパク質の固定化のための装置を構築することが できる。
( 6 ) 夕ンパク質—標的分子間相互作用測定のための装置
上記 (3 ) に記載したタンパク質—標的分子間相互作用測定を行うために、 既 知の適切な手段を組み合わせて装置を構築することもできる。 本装置における各 手段自体はそれそれ既知のものであり、 これらの手段における、 基板の保持、 檫 的分子の添加、 洗浄、 信号検出等の各操作は、 それ自体既知の方法により行えば よい。 これらの操作を組み合わせ、 全自動又は半自動の、 タンパク質—標的分子 間相互作用測定のための装置を構築することができる。 実施例
以下、 本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、 下記の実施例は本発 明についての具体的認識を得る一助とみなすべきものであり、 本発明の範囲は下 記の実施例により何ら限定されるものではない。 実施例 1 タンパク質の蛍光修飾の高効率化と蛍光相互相関分光法によるタンパ ク質相互作用の検出
がん遺伝子産物である c- Fosおよび C- Jun夕ンパク質は二量体を形成し、 さらに 特定の塩基配列をもつ DNAを認識して結合し転写因子として機能する。 この系を モデルとして、 c-Fosおよび c-Junタンパク質を数種類の蛍光色素で修飾し、 タン パク質間およびタンパク質- DNA相互作用を蛍光相互相関分光法により検出した。 1 ) 修飾剤の合成
ピューロマイシン残基を含む修飾剤は、 図 2 (固相法 1 ) あるいは図 3 (固相 法 2 ) にその概略を示す方法を用いて合成した。 ここで化合物 1は Ikedaらが報 告した方法 (Ikeda, S. et al. (1998) Tetrahedron Lett. 39: 5975-5978) を用い合成し た。 ヌクレオチドホスホアミダイ ト、 修飾物質ホスホアミダイ ト、 および化合物
2はグレンリサーチ社 (アメリカ合衆国、 バージニア州) より購入した。 修飾物 質スクシンイミ ドはモレキユラプローブ社 (アメリカ合衆国、 オレゴン州) より 購入した。 UV吸収は Backman DU 640スぺクトロフォトメータ一を用いて測定した。 マススペクトルは Finnigan MAT社の Lasermat 2000を用いて測定した。
1 - 1 ) 固相法 1を用いた修飾剤 1〜 1 1の合成
化合物 1 (400mg, ピューロマイシン残基 10〃mol含有) に対し、 以下の A〜D の処理を所定数のヌクレオチドが導入されるまで繰り返し行なった。
A . 3%トリクロ口酢酸一塩化メチレン溶液を 1 mL加え室温で 3分間放置後、 塩化 メチレン 5 mLで 3回洗浄する。 再度同じ操作を繰り返した後、 無水ァセトニトリ ル 5 mLで 5回洗浄する。
B . ヌクレオチドホスホアミダイ ト 30 Admol、 0.457 Mテトラゾ一ル-無水ァセト 二トリル溶液 100 mL、 および無水ァセトニトリル 1 mLを加え、 室温で 15分間振盪 する。 ァセトニトリル 5 mLで 5回洗浄する。
C . 50 mMョゥ素溶液 (テトラヒドロフラン一ピリジン一水 = 7 5 : 2 0 : 5 (容 量比)) を 1 mL加え室温で 3分間放置後、 ピリジン 5 mLで 3回洗浄する。 再度同じ 操作を繰り返した後、 無水ピリジン 5 mLで 5回洗浄する。
D . 10%無水酢酸ーピリジン溶液 1 mLおよび触媒量の 4, 4-ジメチルアミノピリジ ンを加え室温で 20分間放置後、 ピリジン 5 mLで 5回、 塩化メチレン 5 mLで 5回洗浄 する。
上記の処理をし所定数のヌクレオチドが導入された化合物 1に対し、 上記 Aの 処理を行なった後、 Bの処理をヌクレオチドホスホアミダイ トに代え修飾物質ホ スホアミダイ ト 30 molを用いて行ない、 その後 Cの処理を行なった。 ここで得 られた、 修飾剤および所定数のヌクレオチドが導入された化合物 1に濃アンモニ ァ水 1. 5 mLおよびエタノール 0.5 mLを加え、 室温で 14時間振盪した。 ろ過により 固相担体 (C P G ) を取り除き、 ろ液を凍結乾燥した。 図 2中 Yが tert-ブチル ジメチルシリルォキシ基の場合は残査に 1 Mテトラプチルアンモニゥムフルオリ ドーテトラヒドロフラン溶液 400〃Lを加え、 室温で 14時間放置後減圧濃縮した。 残査を HPLC (カラム : YMC社 (京都府) 製 YMC pack ODS-A SH- 343- 5, 溶離液: 1
0〜60%ァセ トニトリル一 0.1 M酢酸トリェチルアンモニゥム水溶液 (pH 7.0) の 30 分間の直線濃度勾配、 流速: 10 mL/分) で精製後、 凍結乾燥し修飾剤 1〜 1 1を得た。
修飾剤の物性は以下の通りであった。
修飾剤 1 :収率 31%、 UV (0.1 M トリス塩酸水溶液 pH 9.0) Amax 500 nm; MS m/z 1298 [M - H] - 修飾剤 2 :収率 28%、 UV (0.1 M トリス塩酸水溶液 pH 9.0) え max 498 nm; MS m/z 1586 [M- H]一
修飾剤 3 :収率 13%、 UV (0.1 M トリス塩酸水溶液 pH 9.0) え max 500 nm; MS m/z 1314 [M-H]一
修飾剤 4 :収率で UV (0.1 トリス塩酸水溶液 pH 9.0) 人 max 499 nm; MS m/z 1619 [M - H]一
修飾剤 5 :収率 48%、 UV (0.1 M トリス塩酸水溶液 pH 9.0) え max 500 nm; MS m/z 1312 [M- H]—
修飾剤 6 :収率 17%、 UV (0.1 M トリス塩酸水溶液 pH 9.0) え max 499 nm; MS m/z 1617 [M- H]—
修飾剤 7 :収率 79%、 UV (0.1 M トリス塩酸水溶液 pH 9.0) え max 500 nm; MS m/z 1320 [M-H]一
修飾剤 8 :収率 71%、 W (0.1 M トリス塩酸水溶液 pH 9.0) え max 499 nm; MS m/z 1336 [M- H]一
修飾剤 9 :収率 11%、 UV (MeOH) Amax 643 nm; MS m/z 1293 [M-H]一
修飾剤 1 0 :収率 8%ヽ UV (MeOH) Amax 645 nm; MS m/z 1582 [M- H]一
修飾剤 1 1 :収率 81 、 UV (水) え max 273 nm; MS m/z 1164 [M- H]一 合成された修飾剤の化学構造を第 1表に示す。
第 1表
(修飾剤 1一 1 1〉
修飾剤 1 修飾物質 H, n = 1
第 1表 (続き)
修飾剤 3 修飾物 H - X · = cvtosine-1-yl, Υ' = OH, n = 1 修飾剤 4 修飾物 K = ' = cytosine-1 -yl, Y' = OH, n = 2
修飾剤 5 修飾物 « Η, η = 1 修飾剤 6 修飾物 K H, n = 2
第 1表 (続き)
1 修飾剤 7 修飾物質 =
1 修飾剤 8 修飾物 K =
表 (続き)
修飾剤 1 0 修飾物質 Η, η = 2 修飾剤 1 1 修飾物 H, n = 1
1 - 2 ) 固相法 2を用いた修飾剤 1 2 ~ 1 8の合成
化合物 1 (400 mg, ピューロマイシン残基 10〃mol含有) に対し、 上記 A〜D の処理を所定数のヌクレオチドが導入されるまで繰り返し行なった。
上記の処理をし所定数のヌクレオチドが導入された化合物 1に対し、 上記 Aの 処理を行なった後、 Bの処理をヌクレオチドホスホアミダイ トに代え化合物 2 ( 30 mol )を用い行ない、 その後 Cの処理を行なった。 ここで得られた、 化合物 2および所定数のヌクレオチドが導入された化合物 1に対し 3%トリクロ口酢酸一 塩ィ匕メチレン溶液 1 mLを加え室温で 10分間放置後、 塩化メチレン 5 mLで 3回洗浄 した。 再度同じ操作を繰り返した後、 10%ジイソプロビルェチルァミン—塩化メ チレン溶液 5 mLで 3回、 塩化メチレン 5 mLで 5回洗浄し、 減圧下乾燥した。 得られ た固形物に修飾物質スクシンィミド 16醒 ol、 ジイソプロビルェチルァミン 16 mL、 およびジメチルホルムアミ ド 1 mLを加え室温で 48時間振盪した。 固形物をジメチ ルホルムアミ ド 5 mLで 5回、 エタノール 5 mLで 5回洗浄した後、 濃アンモニア水 1. 5 mLおよびエタノール 0. 5 mLを加え、 室温で 4時間振盪した。 ろ過により固相担 体 (C P G ) を取り除き、 ろ液を凍結乾燥した。 図 1中 Yが tert-ブチルジメチ ルシリルォキシ基の場合は残査に 1 Mテトラプチルアンモニゥムフルオリ ドーテ トラヒドロフラン溶液 400 ^Lを加え、 室温で 14時間放置後、 減圧濃縮した。 残查 を HPLC [カラム : YMC社 (京都府) 製 YMC pack ODS-A SH-343-5, 溶離液: 10-60 %ァセトニトリル— 0. 1 M酢酸トリエチルアンモニゥム水溶液 (pH 7.0) 30 分間 の直線濃度匂配、 流速: 10 mL/分) で精製後、 凍結乾燥し、 修飾剤 1 2〜 1 8を 得た。
修飾剤の物性は以下の通りであった。
修飾剤 1 2 :収率 6%、 UV (MeOH) Amax 503 nm; MS m/z 1295 [M-H]一
修飾剤 1 3 :収率 6%ヽ UV (MeOH) え max 504 nm; MS m/z 1585 [M- H]一
修飾剤 1 4 :収率 3%、 UV (MeOH) え max 503 nm; MS m/z 1313 [M - H]— 修飾剤 1 5 :収率 2¾、 UV (MeOH) 人 max 504 nm; MS m/z 1618 [M - H]一
修飾剤 1 6 :収率 ヽ UV (MeOH) Amax 625 nm; MS m/z 1484 [M - H]一
修飾剤 1 7 :収率 4%、 UV (MeOH) λ腿 646 nm; MS m/z 1467 [M-H]一
修飾剤 1 8 :収率 4%、 UV (MeOH) 人 max 590 nm; MS m/z 1639 [M - H]—
図 2の方法によって合成された修飾剤 (修飾剤 12〜18) の化学構造を第 2 表に示す。
第 2表
(修飾剤 12-18)
腐綱 l師裂
m
第 2表 (続き)
修飾剤 1 6 修飾物 K X ' = cytosine-1 -yl, Υ' = H, n = 1
修飾剤 1 7 修飾物質: H, n = 1
1 -3) 修飾剤 19および修飾剤 20の合成法
固相法 1 (図 2) に従い、 化合物 1に対し所定数のヌクレオチドを導入後、 修 飾物質ホスホアミダイトを用い、 修飾物質を所定の数導入した。 次いで、 脱保護 および精製し、 修飾剤 1 9および 20を得た。
修飾剤の物性は以下の通りであった。
修飾剤 1 9
収率 50 UV (50% MeOH-H20) え max 558 nm; MS m/z 1631 [M-H]- 修飾剤 2 0
収率 44%、 UV (50% MeOH - H20) 人 max 558 nm; MS m/z 2037 [M-H]~ 化学合成された修飾剤 1 9および 20の化学構造を第 3表に示す。
2 ) DNA の調製
マウス c-fosおよび c- jun遺伝子を、 マウス testis cDNAライブラリ一 (宝酒造 社) から以下のようにクロ一ニングした。 まず、 c- Junのアミノ酸配列中 c- Fosお よび DNAとの結合に必要な 216〜318番目のアミノ酸残基 (Ryder, K. and Nathans, D. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85, 8464-8467) に相当する遺伝子領域を、 PG β法により増幅し (用いたプライマーの塩基配列を配列番号 1および 2に示す) 、 愛媛大学 ·遠藤弥重太博士より供与されたプラスミ ドの SP6プロモータ一配列の 下流にクローニングし、 プラスミ ド pSP6-junを得た。 同様に、 C- Fosの 118〜211 番目のアミノ酸残基 (Van Beveren, C., et al. (1983) Cell 32, 1241-1255) に相当す る領域を、 プライマー (塩基配列を配列番号 3および 4に示す) を用いて cDNAラ イブラリーより増幅し、 プラスミ ド pSP6- junの c-Junをコードする領域と入れ換 え、 プラスミ ド pSP6- fosを得た。 クローニングの基本操作 (遺伝子操作、 大腸菌 の形質転換および培養、 プラスミ ドの回収など) は Molecular Cloning (Sambrook et al. 1989. CSH press) にしたがった。
マウス c- f osおよび c- jun遺伝子を転写する際の錶型となる直鎖状 MA断片を以 下のように調製した。 プラスミ ド pSP6- junを錶型として、 SP6プロモータ一の上 流のプライマ一 (塩基配列を配列番号 5に示す) および c-Junの C末端に 6個のヒ スチジンをコードする配列 (Hisタグ) を付加するためのプライマー (塩基配列 を配列番号 6に示す) を用いて、 PCR法により増幅した。 同様に、 プラスミ ド pSP 6-fosを錶型として、 プライマー (塩基配列を配列番号 5に示す) および c-Fosの C末端に Hisタグを付加するためのプライマー (塩基配列を配列番号 7に示す) を 用いて、 PCR増幅した。 これら 2つの DNAを QIAquick PCR精製キヅト (キアゲン社) を用いて精製し、 転写反応に用いた。
マウス c-Fos/c- Jun二量体と特異的に結合する DNAの蛍光修飾断片を以下のよ うに調製した。 蛍光色素 Cy5で 5'末端が修飾された互いに相補な一本鎖 DNA (塩基 配列を配列番号 8および 9に示す) を等モル混合し、 0.1 M NaCl存在下で 95°Cで 保温した後、 室温まで徐冷し、 DNAをァ二一ルさせ二本鎖 DNAを得た。 これをその まま蛍光相互相関分光法の測定に用いた。
3 ) 転写 ·翻訳
マウス c-f osおよび c- junの遺伝子 DNAを、 Ribomax MA合成システム (プロメガ 社) を用いて SP6 DNAポリメラ一ゼにより転写した (37° 60分) 。 このとき反 応液に RNAキャップアナログ (ライフテックオリエンタル社) を加え、 RNAの 5,末 端を修飾した。 合成された RNAは、 フヱノール 'クロ口ホルム処理後、 ェ夕ノ一 ル沈澱により精製した。
さらにタンパク質に翻訳するため、 得られた RNAを小麦胚芽抽出液 (プロメガ 社) に加え、 25°C、 60分反応させた。 このとき、 蛍光色素 (フルォレセイン、 口 —ダミングリーン、 Cy5) とピューロマイシンとの間に各種のリンカ一を揷入し た修飾剤 (修飾剤 1〜1 8 ) をいろいろな濃度で加え、 タンパク質の C末端を蛍 光修飾した。 修飾タンパク質の収率を比較するために、 翻訳産物を SDSポリアク リルアミ ド電気泳動し、 蛍光修飾タンパク質のバンドを蛍光イメージング装置 (Molecular Imager FX, バイオラッド社) により検出 '定量した。
図 4に示すように、 タンパク質 c-Fosの C末端修飾効率は、 修飾剤のヌクレオ チドリンカー構造によって大きく変化した。 最も収率のよいリンカ一は蛍光色素 に依らず- dC- (修飾剤 1、 9、 1 2 ) であり、 修飾タンパク質の収率はヌクレオ チドリンカーがない場合に比べて、 最大 100倍上昇した。 これらの結果は C- Jun夕 ンパク質でも同様であった。 ヌクレオチドリンカ一が- dCdC- (修飾剤 2、 1 0、 1 3 ) は- dC-に比べて修飾効率は低かった。 また、 蛍光基がフルォレセインの場 合、 - rC- (修飾剤 3 ) は- dC- (修飾剤 1 ) に比べて、 修飾効率は非常に低かった が、 反対に- rCrC- (修飾剤 4 ) は- rC- (修飾剤 3 ) に比べて高かった。 ヌクレオ チドリンカーが、 - dT- (修飾剤 5 ) 、 -dTdT- (修飾剤 6 ) 、 -dA- (修飾剤 7 ) 、 -dG- (修飾剤 8 ) では、 効果は顕著ではなかったが、 デォキシシチジル酸あるい はリボシチジル酸の場合は顕著な効果を示した。 また、 蛍光基の種類により、 修 飾剤の至適濃度の違いが見られた。 Cy5の場合 (修飾剤 9と 1 0 ) 、 フルォレセ イン (修飾剤 1と 2 ) に比べてラベル化効率の至適濃度が半分程度低かった。 蛍 光基がローダミングリーン (RG)の場合 (修飾剤 1 2と 1 3 ) は、 至適濃度の傾向 は Cy5の場合によく似ていた。
蛍光相関分光法の測定に用いる蛍光修飾タンパク質は、 未反応の蛍光色素を除 去するため、 以下の手順で精製した。 まず、 翻訳反応液を平衡化したニッケル NT
Aァガロース樹脂 (キアゲン社) と混合し、 蛍光修飾タンパク質の C末端の His夕 グとニッケルイオンとの特異的な結合により樹脂と吸着させ、 洗浄後、 イミダゾ —ルで溶出した。 さらに、 タンパク質を含む溶出画分をゲルろ過カラム (PD-10、 フアルマシア社) に 2回かけ、 溶出液をセントリコン (ミリポア社) で遠心濃縮 した。
4 ) 蛍光相互相関分光法
蛍光基にローダミングリーン (RG) を有する修飾剤 (修飾剤 1 2 ) で修飾され たタンパク質 C- Fosおよび c- Junと Cy5で修飾された DNAとを用いて、 蛍光相互相関 分光法の測定を行った。 まず、 精製されたタンパク質および DNAをそれそれ最終 濃度 10 nMとなるように混合し、 37°Cで 60分保温した。 この試料 10 /Lを 8連ガ ラスチヱンバー (ヌンク社) にのせ、 蛍光相関分光計 ConfoCor2 (力一ルヅアイ ス社) を用いて蛍光相互相関を測定した。 その結果、 Fos、 Junおよび DNAの 3種 類全てを加えた試料では相互相関が観測されたが (図 5の 1、 2)、 Fosまたは Jun の一方が欠けている対照試料では相互相関は観測されなかった (図 5の 3、 4) 。 観測された相互相関の数値解析の結果、 全体の約 30%の分子が結合して複合体を 形成していることが分かった。 また、 この結果から直接計算される解離定数は 10一8 で、 これは従来から知られていた別の方法によって求められた値とよく一 致した。
以上の結果から、 蛍光色素とピューロマイシンとの間にデォキシシチジル酸の リンカ一を挿入した修飾剤を用いることによって、 従来の約 100倍の収率でタン パク質の C末端を蛍光修飾できることが分かった。 さらに、 本発明の方法で修飾 したタンパク質を用いることによって、 初めて蛍光相互相関分光法でタンパク質 相互作用を検出することが可能となり、 実用化のメ ドが立った。 実施例 2 小麦胚芽の無細胞翻訳系における翻訳テンプレートと蛍光修飾効率 マウス由来の C- junあるいは C- fosの組み込まれているベクターやプラスミ ドの 配列、 あるいはそれらの配列を含む DNAテンプレートを TaKaRa Ex Taq (宝酒造)を もちいて PCRで増幅し、 QIAquick PCR Purification Kits(QIAGEN)で精製した。 P CRのテンプレートは、 c-jun[pSPAM] s c- fos[pSPAM]および c- jun[F] (それそれ塩
基配列を配列番号 1 0〜1 2に示す) を用い、 プライマ一は、 Primerl (フォヮ —ドプライマ一) として SP6Fと 5' SP6- 029 (それぞれ塩基配列を配列番号 1 3お よび 1 4に示す) を、 Primer2 (リバースプライマ一) として JunHis、 JunHisAヽ FosHis、 FosHisA, JunFlagA、 35 HisAおよび 3' FlagA (それそれ塩基配列を配列番 号 1 5〜2 1に示す) を用いた。 以上の方法により翻訳テンプレート(DNAテンプ レート)を得た。 これを RiboMAXTM Large Scale MA Production Systems ( Promega)を用いて、 転写(37°C, 2h)し、 RNeasy Mini Kits(QIAGEN)で精製し翻 訳テンプレート(RNAテンプレート)を得た。 翻訳テンプレートの基本的構造およ び各要素の DNA塩基配列を図 6に示す。 以下、 翻訳テンプレートを、 増幅に用い たプライマ一に従って 「Primerl名- Primer2名」 の形で呼ぶ。
翻訳テンプレートのポリ A効果の実験と翻訳ェンハンサ一の 029の効果をみるた めに 2つの実験を行った。 両実験とも Wheat Germ Extract(Promega)を用いて蛍 光修飾剤 (修飾剤 1 ) の存在下、 翻訳 (26°C, 60min)を行い、 翻訳と同時にタン パク質を修飾し、 17.5% SDS- PAGEで泳動し、 蛍光(Fluorescein)によってマルチ 画像解析装置、 Molecular Imager FX (Bio- Had)で確認した。 分子量約 20〜25KDa の Junあるいは Fosタンパク質を得た。 各修飾効率の相対比の結果は以下のテンプ レートについて図 7にまとめた。 図 7の実験では、 翻訳テンプレートとして、 ポ リ Aの配列効果実験では、 SP6F-JunHis、 SP6F-JunHisA, SP6F- FosHisおよび SP6F- FosHisAを、 029効果実験では、 SP6F- Juni!agA、 SP6- 029Jun-FlagA、 SP6F-JunHis Aおよび SP6- 029Jun-Hisを用いた。 ポリ A効果の実験では、 SP6F- FosHisAを、 029 効果の実験では 5' SP6-029-JunHisAを 1.0として換算している。
ポリ A配列効果では、 タンパク質によらず、 Junでも Fosでもポリ A配列がある方 が、 ないものに比べて修飾効率が 3倍ほど高くなつた (図 7 ) 。 また、 翻訳ェン ハンサ一は 029配列の方が AMV配列よりも修飾効率が高い傾向を示した。 特に、 親 和性タグが His- tagである場合は、 修飾効率が 2倍に上昇した。 タンパク質の修 飾におけるポリ A配列、 029配列および His-tag配列の効果が確認された。 実施例 1では翻訳テンプレートの翻訳ェンハンサ一として AMVが用いられ、 また、 ポリ A配列は用いられなかった。 本実施例で用いた SP6- 029Jun- HisAの翻訳テンプレ 一トの翻訳効率は、 実施例 1の AMVを用いた翻訳テンプレートに比べて 5〜 6倍
ほど高かった。 従って、 SP6-029Jun-HisAの翻訳テンプレートとヌクレオチドリ ンカ一を有する修飾剤を組み合わせて用いると、 タンパク質の C末端修飾効率が 従来の方法 (特開平 11-322781、 特開 2000- 139468) に比べて、 500倍ほど高まる ことが明らかになった。 実施例 3 夕ンパク質 C末端のピオチン修飾およびストレプトァビジン膜への固 定
マウス C- Junをコードする DNAの調製、 転写 ·翻訳、 および c-Junタンパク質の 精製は、 実施例 1と同様の方法で行なった。
ピオチンと蛍光色素 (TAMRA) を同一分子内にもつ修飾剤 (修飾剤 2 0 ) と、 蛍光色素 (TAMRA) のみをもつ修飾剤 (修飾剤 1 9 ) で C末端を修飾した C- Jun夕 ンパク質を、 ストレブトアビジン膜 (SAM Biotin Capture Membrane; プロメガ 社) 上に 5 /Lスポットし、 1分後、 膜を 2 M NaCl溶液 50 mLで 4回、 蒸留水で 2 回洗浄し、 イメージアナライザ一 (Molecular Imager FX、 バイオラヅド社) で TAMRAの蛍光を 532 nmで検出した。 その結果、 図 8に示すように、 ピオチンと蛍 光色素を同一分子内にもつ修飾剤 (修飾剤 2 0 ) で C末端修飾された C - Junタン パク質は、 ストレプトアビジン膜上に固定化されることがわかった (図 8 ; 1 ) 。 しかし、 ビォチンをもたず蛍光色素のみをもつ修飾剤 (修飾剤 1 9 ) は、 ストレ ブトアビジン膜上に固定化されなかった (図 8 ; 2 ) 。 対照実験として、 モル比 で 1000倍量の遊離ピオチンを同時に加えた場合、 ピオチン化 C- Junタンパク質の 膜への結合は競合阻害された (図 8 ; 3 ) ので、 c- Junの膜への吸着はビォチン 特異的な結合であることがわかる。 実施例 4 固定化法によるタンパク質相互作用の解析 ( 1 )
Fos/Jun二量体の結合領域を含む DNAフラグメントを、 Cy5で修飾したブラィマ 一による PCRで増幅した。 DNAの精製には QIAquick PCR精製 (QIAGEN) を用いた。 標識した DNAフラグメントを 200 g/mlの濃度で含むスポッティング溶液 (150 mM リン酸ナトリゥム /0.01% SDS、 pH 8.5) を調製した。
マイクロアレイヤ一(Micro Grids BioRobotics)にスライ ドグラス (DNA- Ready
TM Type 11 Sl ides, CLONTECH)をセットしてスポッティングを行った (スポヅテ ィングの条件:庫内温度 約 25〜28°C前後、 湿度 38〜42%、 ソリッドビン使用、 0. 7mm間隔) 。
スポヅティング後、 80°Cで 2時間インキュベートし、 スポット面に水蒸気をあ て、 スポットに含水させた。 100°Cのホットプレート上で水分をとばした後、 UV を照射して固定させた。 スライ ドグラスをブロッキング溶液 (コハク酸 4 g、 1- メチル -2-ピロリディノン 252 ml、 1 Mほう酸(pH 8 ) 28 ml) に浸して最初 1分間 激しく振盪して、 その後 20〜30分間振盪した。 90°Cの蒸留水で洗浄、 次いで、 99. 5%エタノールで洗浄後、 乾燥させた。
DNAを固定したスライ ドグラスにハイプリダイゼーシヨン溶液をのせ、 パラフ イルムでカバーして、 スポット面全体に広げた。 アルミホイルで遮光し、 37°Cで 30分間インキュベートした (乾燥を防く、ために、 スライ ドグラスを並べた台の下 に水を張った) 。 I Xバッファ一中で 5分間振盪し、 液を交換して繰り返した。 50 00rpm、 4°Cで遠心した後、 乾燥し、 スライ ド上のスポットの蛍光をマイクロアレ ィスキャナ一 (Axon Instruments社 Gene Pix 4000A) を用い、 532 nmと 635 nm で検出した。
すなわち、 スライ ドガラス上に、 Cy5で修飾した Fosと Junの結合領域の DNA(635 nmで蛍光を測定)を固定し、 これに Fos存在下で、 ローダミングリーンを蛍光基 としてもつ修飾剤 (修飾剤 1 2 ) で C末端が修飾された Junと p53タンパク質 (53 2 nmで蛍光を測定) をそれそれ振りかけ、 DNA- Fos- Junの間と DNA- Fos- p53の間の 相互作用を調べた。 結果は図 9に示した通りである。 左上の像ではローダミング リーンで C末端修飾された Jimが Fos存在下で DNAと結合していることがわかる (5 32 nmでローダミングリーンの蛍光を検出することにより Junまたは p53の存在が 分かる) 。 また、 同一試料に関する左下の像では、 Cy5で修飾した DNAが固定化さ れ、 存在していることがわかる (635 皿で Cy5の蛍光を検出することにより DNAの 存在が分かる) 。 一方、 右上の像では、 ローダミングリーンの蛍光が検出されな いので、 p53が Fos存在下で DNAと結合していないことがわかる。 同一の試料に関 する右下の像では、 Cy5の蛍光が検出されるので、 DNAは存在していることが確認 される。 その結果、 蛍光修飾された Junが、 Fos存在下で結合領域の DNAと特異的
に結合していることがわかる。 本実施例では、 タンパク質を修飾後、 精製操作を 行わず相互作用を調べた。 それでも図 9に示した程度の明確な相互作用の差異が 見られたことは、 翻訳効率と修飾効率が上昇し、 相互作用可能な十分量の C末端 修飾タンパク質がっくられたことを意味する。 実施例 5 蛍光修飾夕ンパク質の高純度精製および蛍光相互相関分光法による夕 ンパク質間相互作用の解析
C末端標識タンパク質間での分子間相互作用の速度論的解析が可能となるよう、 標識タンパク質の高純度精製を目的とした。 翻訳錶型およぴ標識化合物にそれそ れ異なる親和性タグを導入した。 翻訳産物を 2段階で親和精製することにより、 C末端が蛍光色素で標識されたタンパク質を高純度に精製することが可能となつ た。 ローダミングリーン、 Cy 5で蛍光標識した癌遺伝子産物 C - Fosおよび c- Jun夕 ンパク質をそれぞれ 2段階精製し高純度精製標品を得た。 蛍光相互相関分光法に よって AP- 1 (c-Fosと C- Jun の二量体の結合領域 DM) Zローダミングリーン標識 c-fos/Cy5標識 c-Jun複合体形成を検出し、 分子間相互作用の解析値から解離定 数 (Kd) を算出した。
1 ) 修飾剤の合成
修飾剤 2 1〜2 5は、 図 1 0および図 1 1にその概略を示す方法を用いて合成 した。 図 1 0で化合物 は化合物 1と同様の方法を用いて合成した。 各ホスホ アミダイ トはグレンリサーチ社 (アメリカ合衆国、 バージニア州) より、 修飾物 質 1スクシンイミ ドはピアス社 (アメリカ合衆国、 イリノイ州) より、 修飾物質 2スクシンイミ ドはモレキュラープロ一ブネ土 (ァメリカ合衆国、 オレゴン州) お よびアマシャム · フアルマシアバイオテック社 (スエーデン、 ウプサラ) より、 購入した。
化合物 Γ (400 mg, ピューロマイシン 10 zmol含有) に対し、 固相法 1に示 した A〜 Dの処理を所定数のヌクレオチドが導入されるまで繰り返し行なった。 上記の処理をし所定数のヌクレオチドが導入された化合物 1,に対し、 Aの処 理を行なった後、 Bの処理をヌクレオチドホスホアミダイ トに代え化合物 2 (30
j ol) を用いて行ない、 その後 Cの処理を行なった。 ここで得られた、 化合物 2および所定数のヌクレオチドが導入された化合物 Γに対し 修飾剤 2 1の場合 は 50 mM炭酸ナトリゥム-メタノールを 2 mL、 修飾剤 2 2〜2 5の場合は濃アン モニァ水 1.5 mL およびエタノール 0.5 mLを加え、 室温で 14時間震盪した。 ろ 過により固相担体 (CP G) を取り除き、 ろ液を減圧濃縮した。 残査を HPLC [力 ラム : YMC社 (京都府) 製 YMC pack ODS-A SH-343-5, 溶離液 10-60% ァセトニ トリル- 0.1 M酢酸トリェチルアンモニゥム水溶液 (pH 7.0) 30 分間の直線濃度 勾配、 流速 10 mL/分] で精製後、 凍結乾燥した。
修飾剤 2 1の場合、 上記の残査を 80% 酢酸-水 2 mLに溶解させ、 室温で 4時間 放置後、 減圧濃縮した。 残査を 30%ァセトニトリル-水 1 mLに溶解させ、 1 M炭酸 水素ナトリウム-水 (pH 8.3) を 0.1 mL、 および修飾物質 1スクシンイミ ド 0.1 誦 olを Ν,Ν'-ジメチルホルムアミ ド 0.5 ώに溶解させた液を加え、 室温で 2時間 放置した。 その後、 Poly-Pakll (グレンリサーチ社) で脱塩し減圧濃縮した。 修飾剤 2 2〜2 5の場合、 上記の残査を 30 ァセトニトリル-水 1 mLに溶解さ せ、 1M炭酸水素ナトリウム-水 (pH 8.3) を 0.1 mL、 および修飾物質 2スクシン イミ ド 0.1 匪 olを N,N,-ジメチルホルムアミ ド 0.5 mLに溶解させた液を加え、 室温で 2時間放置した。 その後、 Poly- Pakllで脱塩し減圧濃縮した。 残査を 80% 酢酸-水 2 mLに溶解させ、 室温で 4時間放置後、 減圧濃縮した。 残査を 30%ァセト 二トリル-水 1 mLに溶解させ、 1M炭酸水素ナトリウム-水 (pH 8.3) を 0.1 mL、 および修飾物質 1スクシンイミ ド 0.1 腿 olを N,N,-ジメチルホルムアミ ド 0.5 m Lに溶解させた液を加え、 室温で 2時間放置した。 その後 Poly- Pakllで脱塩し減圧 濃縮した。
修飾剤 2 1の場合および修飾剤 2 2〜2 5の場合、 両方とも上記の残査に 60% トリフルォロ酢酸-水 2 mLを加え、 室温で 30分間放置後、 減圧濃縮した。 残査を HPLC [カラム : YMC社 (京都府) 製 YMC pack ODS-A SH-343-5, 溶離液 10-60% ァセトニトリル- 0.1 M酢酸トリエチルアンモニゥム水溶液 (pH 7.0) 30 分間の 直線濃度勾配、 流速 10 mL/分] で精製後、 凍結乾燥し修飾剤 2 1-2 5を得た。 修飾剤 2 6は、 化合物 1より固相法 1を用いて合成した。 ここで、 修飾物質 1 あるいは修飾物質 2を含むホスホアミダイ トはグレンリサーチ社 (アメリカ合衆
国、 バージニア州) より購入した。
修飾剤の物性は以下の通りであった。
修飾剤 2 1 :収率 32%、 UV (H20) 入 max 558 nm; MS m/z 2035 [M- H] _ 修飾剤 2 2 :収率 8%、 UV (H2 O ) 人 max 506 nm; MS m/z 2093 [M- H]一 修飾剤 2 3 :収率 8°ん UV (H20) え max 506 皿; MS m/z 1979 [M- H]一 修飾剤 2 4 :収率 13%、 UV (H20) 人 max 649 nm; MS m/z 2375 [M-H] " 修飾剤 2 5 :収率 13%、 UV (H20) え max 649 nm; MS m/z 2261 [M- H]— 修飾剤 2 6 :収率 、 UV (H2 O ) Amax 646 nm; MS m/z 1977 [M- H]一 合成された修飾剤の化学構造を、 第 4表に示す。
第 4表
(修飾剤 21-25) 修飾剤 21 修飾物 Si =
第 4表 (続き) 修飾剤 2 2 修飾物質
修飾剤 2 3 修飾物質
第 4表 (続き) 修飾剤 2 5 修飾物
修飾剤 2 6 修飾物
2 ) DNAの調製
錶型 DNAは実施例 1の DNAの調製の項で調製したマウス c-fosおよび c-jun遺伝子 の載ったプラスミ ドを用いた。 C- junおよび c- fosはそれそれ DNAとの結合に必要 なドメインを含む領域を、 SP6プロモー夕一、 Ω配列、 および T7タグ (T7- tag)を 含むプライマー (配列番号 2 2 ) と、 ヒスチジンタグ、 終止コドン、 ポリ A配列 を含むリバースブラィマ一 (配列番号 2 3又は 2 4 ) によって PCR法により増幅 した。 PCR産物はトポ TAクローニングキット (インビトロジェン社) を用いて pCR 2.1T0P0ベクタ一へサブクローニングした。 方法の詳細はメ一力一記載のプロト コールに従った。 塩基配列を確認したプラスミ ド DNAは、 Wizard Plus SV Minipr eps DNA Purification System (プロメガ社) を用いて精製した。
A合成のための直鎖状錶型 DNAは、 挿入部より上流のベクター配列の一部を用 いたプライマ一 (配列番号 25) と、 ヒスチジンタグ部分のリバースプライマ一を 用いて PCR法で得た。 翻訳タンパク質の回収を検討するために、 ポリヒスチジン
(長さ 6〜 1 2残基) に相当するリバースプライマ一 (配列番号 2 6〜2 9 ) を 作成した。 錶型 DNAを QIAquick PCR Purification Kits (キアゲン社) にて精製 した。
3 ) 転写、 翻訳
錶型 DNAをキヤップアナローグ (ライフテックオリエン夕ル酵母社)存在下で S P6 RiboMAX Large Scale RNA Production System (プロメガ社) を用いて転写し た (37°C、 3時間) 。 詳細はメーカ一記載のマニュアルに従った。 転写後、 キヅ 卜に添付のデォキシリボヌクレア一ゼで鎵型 DNAを除去し、 SV Total RNA Isolat ion system (プロメガ社) で精製 Aを得た。
翻訳はメーカ一記載のマニュアルに従い、 精製 MA 5 mg、 小麦胚芽抽出液 (Wh eat germ extract, プロメガ社) 100〃1を用いた。 同反応系にピオチンあるいは イミノビォチンと蛍光色素 (ローダミングリーングリーン、 Cy 5 ) を同一分子内 に導入した蛍光標識用化合物 (修飾剤 2 2〜2 6 ) を加えて、 C末端が蛍光標識 されたタンパク質を合成した (25°C、 1時間) 。 ピオチンを導入した蛍光色素の 至適濃度は Cy5 (修飾剤 2 4、 2 6 ) 、 ローダミングリーン (修飾剤 2 2 ) 共お
よそ 125〃M、 また、 イミノビォチンを導入した蛍光色素の至適濃度は、 Cy5 (修 飾剤 2 5 ) では 30〃M、 ローダミングリーン (修飾剤 2 3 ) は 12.5 Mであった。
4 ) 蛍光標識タンパク質の精製
ニッケルキレ一ト樹脂 Ni- NTA Superflow (キアゲン社) を用いた精製をメーカ 一添付のマニュアルに従って行った。 反応液にプロテアーゼ阻害剤 (ヒスチジン タグタンパク質精製用カクテル、 シグマ社) 0.1 zlおよび 5倍容の結合緩衝液を 加えた後、 ニッケルキレート樹脂混濁液 20〃1を穏やかに混和した (4°C、 1時間) < 十分に樹脂を結合緩衝液で洗った後、 0.5 Mイミダゾールを含む緩衝液 50 z lでヒ スチジンタグタンパク質を溶出した。
通常のヒスチジン夕グ夕ンパク質は長さ 6残基のポリヒスチジン夕グで十分に ニッケルキレート樹脂に回収されるが (Abate, C. et al., ( 1990) Proc .Natl . Acad. Sci . USA. 87, 1032-1036) 、 本標識法の場合、 長さ 6残基のポリヒスチ ジンでは若干回収が低いので、 ヒスチジンの数をさらに増やしてニッケルキレ一 ト樹脂による回収量を検討した。 翻訳後上清、 ニッケルキレート樹脂素通り、 及 び、 イミダゾール溶出の各画分を SDSポリアクリルアミ ド電気泳動 (SDS- PAGE) にて分離し、 蛍光画像解析装置 (Molecular Imager FX、 バイオラッド社) で検 出した。 ポリヒスチジンの長さが増えるに従い、 蛍光標識タンパク質の回収量が 増加した (図 1 2 ) 。 C- Fosの場合も同様の結果であった。 また、 イミノビォチ ンを含む標識化合物 (修飾剤 2 5 ) で蛍光標識した場合は、 イミノビォチンを含 まない標識化合物 (修飾剤 9 ) を用いた場合に比べて、 およそ 2倍の効率で標識 された (図 1 3 ) 。
ィミノピオチンを含む標識タンパク質は、 ストレブトアビジン固定樹脂 Strept avidin Sepharose High Performance (アマシャムファノレマシア社) でさらに精 製した。 同樹脂による精製はメーカー記載のマニュアルに従って行った。 上記ィ ミダゾ '一ル溶出画分に対して、 5倍容の結合緩衝液を加え、 あらかじめ平衡化し た の樹脂を穏やかに混和した (4°C、 3 0分) 。 結合緩衝液で十分に樹脂を 洗浄した後、 50 lの 50 Mピオチンを含む緩衝液で溶出した。
ピオチンを含む標識タンパク質は、 アビジン単量体固定樹脂 UltraLink I雇 obi
lized Monomeric Avidin (ピアス社) で精製した。 同樹脂による精製はメーカ一 記載のマニュアルに従って行った。 上記イミダゾール溶出画分に対して、 9倍容 の結合緩衝液を加え、 あらかじめ平衡化した 10〃1の樹脂を穏やかに混和した (4 °C、 3 0分) 。 結合緩衝液で十分に樹脂を洗浄した後、 50〃1の 50 mMピオチンを 含む緩衝液で溶出した。
ィミノピオチンを含む Cy5標識されたタンパク質を SDS- PAGEで分離後、 蛍光画 像解析およびィムノブロットにて精製を確認した (図 1 4の Aおよび B) 。 ィムノ プロヅトは、 電気泳動後のゲルをポリビニリデンフロライ ド膜 (ポールゲルマン サイエンス社) に電気的に転写し、 N末端に配した T7タグに対するマウスモノク ローナル抗体 (ノバジェン社) および西洋ヮサビペルォキシダ一ゼ標識ャギ抗マ ウス抗体 (トランスダクシヨン社) を反応させ、 ECLキヅ ト (アマシャムフアル マシア社) を用いて化学発光させた。 このィムノブロット法は同キットのメ一力 一記載のマ二ュアルに依った。 ニッケルキレート樹脂に結合したヒスチジン夕グ タンパク質のうち、 ストレブトアビジン固定樹脂を素通りしたタンパク質は蛍光 で検出されなかったが、 ピオチン溶出画分は、 抗体および蛍光の両方で検出され た (図 1 4の Aおよび B、 レーン 2、 3) 。
精製した標識タンパク質の純度を検討した。 蛍光標準液はそれそれ、 650nmに おける分子吸光係数 25, 000で定量した Cy5色素および、 505nmにおける分子吸光係 数 68, 000で定量したローダミングリ一ン色素とした。 0.1 Mトリス塩酸緩衝液 pH 8に溶解した試料 100〃1を黒色 384穴ポリスチレンプレート (ヌンク社) に供し、 蛍光画像解析装置により定量した。 精製画分に含まれる c- Fosおよび C- Jun濃度は、 T7夕グリコンビナントタンパク質 (ノバジェン社) を標準物質としてドットプロ ット法で定量した。 試料 1〃1をそれそれニトロセルロース膜 (シュライヤ一シ ュルヅ社) にスポットし、 マウス抗 T7夕グ抗体および西洋ヮサビペルォキシダー ゼ標識ャギ抗マウス抗体を反応させた。 ECLを用いた化学発光を化学発光解析装 置 (Molecular Imager ChemiDoc、 バイオラッド社) で検出した。 精製画分の T7 タグタンパク質と蛍光のモル濃度の比は 90%以上であった (第 5表) 。 精製タン パク質を SDS- PAGEで分離後、 タンパク質染色したところ、 ほぼ単一な成分である ことが確認された (図 1 5 ) 。
第 5表 ドットブロッ卜/蛍光定量比
Cy5標識 c-Fos 0.99
Cy5標識 c- Jun 0.92
ローダミングリ一ン標識 C- Fos 1.02
ローダミングリーン標識 C- Jun 0.93
5 ) 蛍光相互相関分光法
蛍光標識 c-Fosおよび C- Junならびに AP-1配列 2本鎖 DNAを用いて、 蛍光相互相 関分光法にて分子間相互作用の解析を行った。 MAおよび標識タンパク質 (それ それ最終濃度 10 nM) を混合した。 この試料 10〃1を 8連ガラスチヱンバー(ヌンク 杜)に供し、 蛍光相関分光計 ConfoCor2(カールツァイス杜)を用いて蛍光相互相関 を測定した。 その結果、 c-Fos、 c- Junおよび DMの 3種類全てを加えた試料では相 互相関が確認されたが、 C- Junを含まない対照試料では相互相関は認められなか つた (図 1 6 ) 。 相互相関の解析結果から下記計算式に従って算出された解離定 数 (Kd)は、 約 l x lO—8 Mであった。 他の手法によって得られた解離定数は、 約 I X 10一9 Mから約 1.1 x 10— 7 M (Heuer, K. , et. al ., (1996) Biochemistry 35, 906 9-9075、 Pernelle, C 3 et. al ., ( 1993) Biochemistry 32, 11682-11687) と報 告されているが、 本発明の蛍光標識タンパク質を用いた結果はこれに矛盾しなレ、。 以上から、 本発明によって蛍光標識されたタンパク質は、 蛍光相互相関分光法を 用いてタンパク質相互作用を検出することができ、 さらに、 解離定数の簡便かつ 迅速な測定に利用できることが確認された。
•計算式 1
相互相関分析から Νε 、 Νε Gc (0)が得られる。
ここで
N
Gc(0)- 1
Cy5およびローダミンで蛍光標識された粒子の数
M - _ N ac>g N。c'r
sr N
Cy5のみで標識された粒子の数;
N r =N csr一 N gr
ローダミンのみで標識された粒子の数
N ■ g =N ac,g -N gr
以上から、 解離定数は
^η = ^叶^ 1 χ10"8
実施例 6 固定化法によるタンパク質相互作用の解析 (2 )
1 ) 修飾剤の合成
修飾剤 1 9は、 実施例 1で合成したものを用いた。
2) DNAの調製
2-① ペイ ト(Bait)タンパク質用
材料:放線菌ストレプトミセス ·ァビジニー (Streptomyces avidinii) は理 研より購入した。 オリゴ DNA (プライマ一) はエスペックオリゴサ一ビスで合成 された。 大腸菌、 プラスミ ド、 各種酵素 ·試薬などは市販のものを用いた :大腸 菌 JM109、 プラスミ ド pUC18 (東洋紡) 、 pET20b (ノバジェン社) ;制限酵素 Bam HK Bgl ll EcoRIおよび Hindl ll (東洋紡) ; Ligation High (東洋紡) 、 Ex Taq DNAポリメラ一ゼ、 レコチップ (宝酒造) ; QIAquick PCR精製キット (キアゲン 社) 。 遺伝子工学の基本操作 (クローニング、 大腸菌の形質転換および培養、 プ ラスミ ドの回収など) は、 サンブルック等のモレキュラー 'クローニング (Mole cular Clonings SambrooK et al . 1989. CSH press) に従った。
プラスミ ド pSP6-STA- Junおよび pSP6-STA- Fosを以下の手順で構築した。 まず、 ストレプトアビジン遺伝子を、 放線菌 Streptomyces avidiniiゲノムを錶型とし て、 ストレプトアビジン遺伝子の上流および下流に相補的なプライマー (配列番 号 3 0および 3 1 ) を用いて PCRで増幅し、 BamHIおよび EcoRIで消化し、 pUC18の BamHI- EcoRI部位にクロ一ニングし、 pUC-STAを得た。 これを錶型として、 ストレ ブトアビジン遺伝子の N末端に T7タグを付加するためのプライマ一 (配列番号 3
2 ) およびストレプトアビジン遺伝子下流に相補的なプライマー (配列番号 3 3 ) を用いて PCRを行い、 N末端に T7タグ配列をもつストレブトアビジン遺伝子を得 た。 さらに、 これを錶型として、 この上流に SP6プロモーターとタバコモザイク ウィルス由来のェンハンサー配列を含む非翻訳領域 (5 UTR) を付加するために、 T7夕グ配列をもつストレプトアビジン遺伝子の上流および下流に相補的なプライ マー (配列番号 3 4および 3 3 ) を用いて PCR増幅した断片を BamHIで消化し、 pE T20bの Bgll l- BamHI部位にクローニングした。 このとき、 ストレプトアビジン遺 伝子の揷入方向として Bglll側が遺伝子の上流になっているプラスミドを pSP6 - ST Aと名付けた。 次に、 実施例 1で調製した junおよび fos遺伝子を、 それそれ 2組 のプライマー (配列番号 3 5および 3 6、 配列番号 3および 3 7 ) を用いて PCR で増幅し、 BamHIおよび Hindl l lで消化し、 pSP6- STAの BamHI-Hindlll部位にクロ —二ングし、 pSP6- STA- Junおよび pSP6- STA- Fosを得た。
2-② プレイ(Prey)タンパク質用
マウス c- fosおよび C- junの遺伝子 DNAは、 実施例 5で調製された C末端に長さ 1 2残基のポリヒスチジンタグがついたものを用いた。
3) 転写、 翻訳
マウス c- fosおよび C- junの遺伝子 DNAは、 Ribomax RNA合成システム (プロメガ 社) を用いて SP6 DNAポリメラーゼにより転写された (37°C、 120分) 。 このとき 20 z lの反応液には、 DNA 6 100 mMの rUTP、 rCTP、 rATPそれそれ l l、 30 mM の rGTP l l、 SP6ポリメラ一ゼ 2 /1が入っており、 さらに 40 mMに調整した RNAキ ヤップアナログ (ライフテックオリエンタル社) を 4 l加えて RNAの 5' 末端を修 飾した。 合成された Aは、 RNeasy Mini Kit (キアゲン社) を用いて精製した。
タンパク質に翻訳するため、 得られた mRNAを ProteiosT M (T0Y0B0) の小麦胚芽 抽出液を用いた無細胞翻訳系に加え、 37°Cで 5時間反応させた。 翻訳系 100 1に 対しては 2種類のバヅファーのほかにクレアチンキナーゼ 4 1、 RNaseィンヒビ夕 -10 z ls 小麦胚芽 20 1、 m A10 lと蛍光修飾剤を添加した。 蛍光修飾剤には、 蛍光色素(TAMRA)-dC-ピューロマイシン (修飾剤 1 9 ) を使用した。 修飾タンパ ク質の収率を知るために、 翻訳産物を SDSポリアクリルアミ ドゲル電気泳動して、 蛍光修飾タンパク質のバンドを蛍光イメージング装置 (Molecular Imager FX、 バイオラヅ ド社) により検出した。
マイクロアレイに固定するためのストレブトアビジンを融合したペイ ト側の Ju nおよび Fosは、 pSP6-STA- Junおよび pSP6- STA- Fosを錶型として、 上記と同様の方 法で転写し、 ProteiosTM (T0Y0B0) による重層法を用いてタンパク質合成を行つ た。
4) 精製法 '
固定化法のプレイ側のタンパク質として用いる蛍光修飾タンパク質は、 未反応 の蛍光色素を除去する為、 以下の手順で精製した。
Hisタグ付きタンパク質の精製 (Niカラム法)
Hisタグ付きタンパク質の C末端蛍光修飾翻訳の反応液を、 平衡化したニッケル NTAァガロース樹脂 (キアゲン社) と混合し、 蛍光修飾タンパク質の C末端の His タグとニッケルイオンの特異的な結合により樹脂と吸着させ、 洗浄後、 500 の ィミダゾールで溶出した。
5) プロテインマイクロアレイを用いた固定化法
5 -① スライ ドグラス上へのタンパク質の固定化
DNAマイクロアレイヤー (MicroGridl K バイオロボテイクス社) にピオチンコ 一トスライ ドグラス (ゼノポア社) をセットして、 60%PBS ( 10 mMリン酸緩衝液 + 150 mM NaCK pH 7.4) /40%グリセロールに溶解した Junと Fosのストレプトァ ビジン融合タンパク質の翻訳液をスポッ トし、 調湿環境下に 1時間置いて、 スト レプトアビジンとピオチンの結合によりスライ ドグラス表面に固定した (図 1 7
の最上図) 。 固定後、 1 %BSA/PBS溶液で 1分間振とうしてリンスし、 交換した 1 %BSA/PBS溶液でさらに 1時間振とうしてプロッキングを行った。 プロヅキング後、 1 XPBSで洗浄して乾燥させた。 スライ ド上のスポヅ ト領域に in situハイブリダ ィゼ一シヨン用の枠状のシリコンシール (イージーシール、 ハイべィ ド社) を貼 り、 その枠内に 0.5 mg/mlのマウス由来の抗 Fos—次抗体 (c-Fos(6-2H) : sc- 447、 サン夕クル一ズ社) と 0.5 mg/mlのゥサギ由来の抗 Jun—次抗体 (c-Jun/AP- 1、 ォ ンコジーン社) を 1 XPBST (10 mMリン酸緩衝液 + 150 mM NaCl + 0.1¾ Tween 20、 H 7.4) に溶解した反応液を充填し、 上からシールカバーした。 この状態で調湿 環境下、 室温で 1時間反応させた。 反応後、 1 XPBSTで 5分間の振とうを液の交換 をして 5回と、 さらに 1 X PBSで 3分間の振とうを 3回、 液を交換して行ってから、 2 000rpm、 4°Cで 1分間の遠心をして乾燥させた。 ここで再び、 スライ ド上のスポヅ ト領域に in situハイブリダィゼーシヨン用の枠状のシリコンシール (イージー シール、 ハイべイ ド社) を貼り、 その枠内に 0.5 mg/mlの Cy3標識の抗マウス抗体 (ケミコン社) と 0.5 mg/mlの Cy5標識の抗ゥサギ抗体 (ケミコン社) を l xPBST に溶解した反応液を充填して上からシール力バ一した。 この状態で調湿環境下、 室温で 1時間反応させた。 反応後、 1 X PBSTで液を交換しながら 5分間ずつ 5回の振 とうをして、 さらに I xPBSでこれも液を取り換えて 3分間ずつの振とうを 3回行つ てから 2000rpm、 4°Cで 1分間の遠心をして乾燥させた。 これを、 DNAチップスキヤ ナー (GenePix4000B、 ァクソン社) でスキャンして、 スライ ド上にスポットされ た Junと Fosタンパク質を検出したところ、 ストレブトアビジン融合 Fosのスポッ ト部位には Cy3の蛍光が確認でき、 さらにストレブトァビジン融合 Junのスポット 部位には Cy5の蛍光が確認できた (図 1 7の A) 。 これらの結果より、 ピオチンコ 一トスライ ドグラス上へのストレプトアビジン融合タンパク質の固定ィ匕が確認さ れた。
5-② スライ ドグラス上に固定化されたペイ トタンパク質とプレイタンパク質と の相互作用の検出
DNAマイクロアレイヤー (MicroGridII、 バイオロボテイクス社) にピオチンコ 一トスライ ドグラス (ゼノポア社) をセットして、 60%PBS/40%グリセロールに溶
解した Junのストレブトアビジン融合タンパク質の翻訳液をスポヅトし、 調湿環 境下に 1時間置いて、 スライ ドグラス表面にストレプトアビジンとピオチンの結 合により固定した。 固定後、 1 %BSA/PBS溶液で 1分間振とうしてリンスし、 交換 した 1 % BSA/PBS溶液でさらに 1時間振とうしてブロッキングを行った。 BSAによ るブロッキング後、 1 X PBSで洗浄してから 2000rpm、 4°Cで 1分間遠心してスライ ドグラス上の溶液を飛ばした。 次に、 スライ ド上のスポット領域に in situハイ ブリダィゼーシヨン用の枠状のシリコンシール (イージーシール、 ハイべィ ド社) を貼り、 C末端を TAMRA- dC -ピューロマイシン (修飾剤 1 9 ) でラベル化した後に、 ニッケル NTァガ口一ス樹脂 (キアゲン社) で精製した Hisタグが 12個ついた Fos夕 ンパク質を含む反応液 (l x PBST/200 mM NaCl/20%グリセロール) を充填して、 上からシールカバ一した。 この状態で調湿環境下の室温で 1時間反応させた。 反 応後、 I xPBSTでの振とうを 5分間、 液を交換して 10分間、 再び液を交換して 30分 間振とう洗浄して、 さらに 1 XPBSで液の交換をしながら 3分間の振とうを 3回繰り 返し、 2000rpm、 4°Cの遠心を 1分間行ってから乾燥させた。 これを、 DNAチップス キヤナ一 (GenePix4000B、 ァクソン社) でスキャンした結果、 TAMRA- dC-ピュー ロマイシン (修飾剤 1 9 ) でラベル化された Fosの、 スライ ドグラス上に固定さ れた Junへの結合が検出された (図 1 7の B) 。 産業上の利用の可能性
本発明のヌクレオチドリンカ一を含む修飾剤によるタンパク質の C 末端修飾 法は、 種々のタンパク質相互作用の検出に有効であり、 ゲノムプロジェクトによ つて集積する遺伝子の機能解析において、 タンパク質間相互作用やタンパク質- 核酸相互作用を大量かつ高速にスクリーニングする上で極めて有効な手段を提供 する。