明 細 書 細胞培養容器 技術分野
本発明は動物細胞、 特に、 付着性動物細胞を培養する容器に関する。 さらに具 体的には付着性細胞を高密度で培養し、 培養した細胞の産生する物質も しくは細 胞自体を利用するために用いる細胞培養容器に関する。 背景技術
従来から、 細胞がもつ代謝機能を利用する方法として、 細胞を培養し、 その細胞 が産生する物質、 例えばタンパクを利用する方法、 または、 増殖させた細胞に接 触した気体、 液体などに含まれる汚染物質を分解させて空気浄化、 水質浄化を行 う方法など、 生物学的リアクターとして細胞を利用する方法が種々開発されてい る。 これらの方法には細胞を高密度で培養する技術が不可欠であり、 種々の高密 度細胞培養方法が開発され、 利用されてきた。
一般的な細胞の培養方法の 1つとしては、 ガラスシヤーレなどの容器中に細胞 を静置した状態で培養を行う静置培養方法があるが、 大量の細胞を培養するため には、 大きな表面積および容積を有する容器が必要であり、 これらシャーレなど の容器を用いた方法には限界があり、 実験的に使用されるに留まっている。 静置培養方法の欠点を補う方法として、 容積の大きなタンク中で細胞を攪拌機 で攪拌しながら培養する攪拌培養方法も開発され、 実験レベルから工業的なレべ ルへと展開を見せている。 しかし、 これらタンクなどの容器を用いた攪拌培養方 法では、 細胞の培養密度が 1 X 1 0 6〜 5 X 1 0 6個/ m L程度で増殖が均衡状態 に達し、 それ以上増加しない。 このため産生された物質を必要な濃度に高めるた めには、 煩雑な濃縮などの操作が必要であり、 また必要量を確保するためには巨 大な容積を有する容器を必要とすることもあり、 工業的には困難な点が多々存在 する。
また、 攪拌培養方法は、 浮遊性細胞を培養するのに適した形態であり、 付着性細
胞の高密度培養には適していない。 しかし、近年遺伝子組換え技術の発達と共に、 人為的に特定の物質を産生するように改良された細胞、 例えば組換細胞または融 合細胞などを利用して、 種々の貴重な物質が生産されるようになってきたが、 こ れらの細胞には付着性細胞と浮遊性細胞があり、 動物組織に由来する付着性細胞 を利用することが比較的多い。
このため、 付着性細胞に攪拌培養法を適用するための方法と して、 タンク内部 に付着性細胞の担体としてガラスビーズを封入する方法なども考案されてきた。 しかし、 ビーズの表面積を大きく とるためには大容積のタンクが必要であり、 そ の場合でも培養密度は 5 X 1 0 6個ノ m L程度が限界であり、 培養効率を高める ことができない。 さらに、 大規模な設備を必要とするためにコス ト的にも高くつ く ことになるため、 小スペースで高密度の細胞培養が可能な方法が要求されてき た。
小スペースで高密度細胞培養が可能な方法として、 中空繊維を利用した細胞培 養技術が注目を集めている。 この方法は、 径の中心部が空洞である中空繊維が封 入された容器内で、 細胞を培養する方法である。 細い中空繊維を多数封入した容 器は限られた空間内部に大きな細胞付着面積をとれる利点があり、 また、 細胞付 着体である中空繊維として、 物質透過性を有する素材を用いることにより、 中空 繊維を通して細胞の増殖に必要な栄養分の供給が可能となる合理的な方法である。 このような中空繊維を使用した培養方法は、 容器に封入した中空繊維で細胞に必 要な栄養分を供給すると同時に、 その中空繊維自体に細胞を付着させ、 付着性細 胞を増殖に必要な足場を確保する方法 (特開昭 49-41579号) として Knazak ら により紹介されている。 また、 この中空繊維を使用した培養方法を発展させた方 法と して、 中空繊維と してセルロースアセテー ト繊維を使用した方法 (特公昭 54-6634号公報)、 ポリスルホン繊維を使用した方法(特開昭 62- 130678号公報)、 ポリオレフイ ン繊維を利用した方法 (特開昭 63- 17685号公報) 等が提案されて いる。 また、 これら中空繊維の細胞付着性を改良し、 より増殖効率を高めた方法 としては、 ポリオレフイ ンを使用した多孔質膜を利用した方法 (特開平 2- 16972 号公報、 特開平 3-292884号公報、 特開平 3-292885号公報など) 等で提案されて いる。
しかしながら、 実際に付着性細胞を使用して、 これら各種の中空繊維自体に細 胞を付着させる培養方法で培養を行った場合でも、 思うように細胞は増殖してい ない。 これは中空繊維自体に細胞が付着する足場と栄養分交換の役割を持たせて いるため、 中空繊維表面に細胞が付着してく ると、 付着した細胞により中空繊維 表面部分は目詰り した場合と同様な結果となる。 さらに、 付着している細胞にし か栄養分を供給することができず、 細胞の増殖に従い栄養交換可能な面積は減少 し、 中空繊維の栄養交換効率も低下していく。
このため、 付着性細胞をさらに高密度で培養する場合には、 中空繊維表面に付 着性細胞を付着させるのみでは不十分であり、 中空繊維と容器との間隙部分に該 細胞を 3次元的に増殖させ、 中空繊維の栄養交換効率を維持する必要がある。 前 記中空繊維表面に細胞を付着させる方法では、 中空繊維表面に 2次元的に付着し た細胞に栄養を供給することは可能であるが、 1 x 1 0 8個/ m L以上の 3次元 高密度培養を目的とした場合には適しているとはいえない。
このような中空繊維に細胞を付着させる方法を改良し、 3次元的に細胞を高密 度培養させることを目的とした方法が提案されている。 そのうちの一つには、 細 胞に必要な栄養分と気体を供給する 2つのチューブ間に、 細胞を付着させる担体 としてシート状の 3 Dマ ト リ クスをらせん状に卷付けており、 前記チューブの片 方が気体交換を行い、 もう片方のチューブで栄養交換を行う方法 (英国特許第 2178447号明細書) であり、 また、 その技術に類似した内容であるが、 前記技術 の培養効率を高めてバイオ人工肝臓に適用するために、 シート状の 3 Dマ ト リク ス上に 0.5〜5mm間隔で中空繊維を並べて付着させた物を円筒容器內に収納した もの (特表平 11-514229号公報) が提案されている。
前記の提案は、 これまでに述べてきた表面に細胞が付着して増殖効率の低下を 招く中空繊維型細胞培養方法の欠点を中空繊維とは別に細胞が付着する担体を使 用することにより、 中空繊維の効率低下を改善する方法である。
しかしながら、 前記英国特許第 2178477号明細書や特表平 11-514229号公報 で提案されている方法では、 実際に高密度で細胞を培養するには十分に適してい ない。 何故なら、 英国特許第 2178477号明細書で記載される方法では、 酸素、 栄 養などの交換に使用されるチューブが単一導管であるため、 現実には高密度培養
される細胞全体に栄養分、 酸素などを十分に供給することは不可能であり、 生物 学的リアクターとして使用可能な高密度の細胞培養効率は得られないであろう。 また、 特表平 11-514229号公報に記載される 法では、 栄養分の供給と高濃度 酸素の交換に着目 して改良を行っているが、 この場合も十分な性能を発揮できて いるとは言い難い。 なぜなら、 特表平 11-514229号公報では細胞の付着担体とな るシ一ト状の 3 Dマト リクス表面に、 中空繊維を付着させた状態で並べているこ とを特徴と している。 この場合、 気体、 栄養分の交換に使用する中空繊維の表面 のうち、 シ一トに付着している部分は有効に物質交換を行うことができないため に、 その付着面積分の物質交換効率が低下していることになるからである。 さらに、 細胞の付着担体の形状がシート状であることにも次の問題がある。 す なわち、 細胞は付着担体の表面に付着して増殖していくため、 細胞の増加率、 す なわち、 培養密度はその表面積に比例する。 このため円筒形容器など、 規定の容 積に限定された容器内でシート状の付着担体の表面積を増加させることには限界 があるから、 得られる細胞密度には限界があり、 細胞付着担体をシート状にして いることは、 高密度培養には向かない形態である。
また、 上記特許公報では、 バイオ人工肝臓に適用する目的で細胞個数を 2 0 X 1 0 5個/ m Lの培養密度まで増殖させており、 また、 2 2 0 x 1 0 5個/ m Lの 培養密度の可能性についても言及している。 救命目的で人体に使用する場合であ れぱ十分に意味を為す可能性もあるが、 一般的な生物学的リアクターとして、 ェ 業的に細胞の産生する物質を利用する目的であれば、 l x l O 8個/ m L以上の 高密度培養が必要であり、 前記技術では十分であるとは言い難い。
すなわち、 本発明はかかる事情を背景に為されたものであって、 その課題は動 物細胞、 特に付着性細胞を高密度に培養する方法を提供することにあり、 具体的 には、 中空繊維培養容器内に中空繊維のもつ物質交換効率を最大限に引出せるよ うに、 細胞が付着することが可能な担体を細胞支持体として具備してなり、 付着 性動物細胞を長期間高密度に培養することが可能な中空繊維培養容器を提供する ことにある。 発明の開示
本発明者らは、 細胞が付着しやすい繊維状細胞支持体、 及び細胞が増殖するた めに必要な条件を維持することを可能とする中空繊維を封入した細胞培養容器を 用い、 高密度の細胞培養を行うことにより、 従来よりもさらに高密度の培養が可 能であることを見出し、 本発明に到達した。
すなわち、 本発明は下記の細胞培養容器および細胞培養方法からなる。
1 . 半透膜機能を有する中空繊維、 および細胞が付着しやすい繊維状細胞支持体 が内部に封入された細胞培養容器。
2 . 前記中空繊維は両端部で開口し、 且つ中空繊維内腔に連通する接続口および 前記容器と前記中空繊維との間の間隙部分に連通する接続口をそれぞれ独立に備 えてなる前項 1 に記載の細胞培養容器。
3 . 前記細胞支持体は、 前記中空繊維と前記容器との間の間隙部分に収納されて いる前項 1又は 2に記載の細胞培養容器。
4 . 中空繊維の両端を隔壁により、 該容器の両端部に固定されている前項 1 ~ 3 の何れか 1 に記載の細胞培養容器。
5 . 前記細胞支持体は、 両端が封止材で前記容器の両端部に固定された繊維集合 体である前項 1 〜 4の何れか 1 に記載の細胞培養容器。
6 . 前記細胞支持体は、 少なく とも 1本の繊維集合体 (繊維束) である前項 1 〜 5の何れか 1 に記載の細胞培養容器。
7 . 前記細胞支持体は、 一本の直径が 0 . 0 1 〜 1 0 0 0 mである繊維からな る繊維集合体である前項 6に記載の細胞培養容器。
8 . 前記細胞支持体は、 有機繊維または無機繊維である繊維の集合体である前項 1〜 7の何れか 1 に記載の細胞培養容器。
9 . 前記有機繊維は、 ポリオレフイ ン系繊維、 ポリエステル系繊維、 ポリスチレ ン系繊維、 ポリ力一ポネート繊維、 ポリアミ ド系繊維からなる群から選択された 繊維である前項 8に記載の細胞培養容器。
1 0 . 前記無機繊維は、 セラミ ックス繊維またはガラス繊維である前項 9に記載 の細胞培養容器。
1 1 . 前記中空繊維は、 内径 1 0〜 1 0◦ 0 m、 膜厚 1 〜 5 0 mであり、 分 画分子量が 1 0 0 0〜 1 0 0 0 0 0である中空繊維である前項 1〜 1 ◦の何れか
1に記載の細胞培養容器。
1 2. 前記細胞支持体は少なく とも 1本の繊維集合体であって、 該細胞支持体と 前記中空繊維との割合は、 繊維集合体数を nと して表し、 前記中空繊維の本数を χとして表すと、 Ι
Ι Ο Οである前項 1 1に記載の細胞培養容器。
1 3. 前記細胞支持体は繊維集合体であり、 該繊維集合体と前記中空繊維は、 前 記細胞培養容器内で均等に分散される前項 1 2に記載の細胞培養容器。
1 4. 前記細胞支持体は繊維集合体であり、 該繊維集合体は前記中空繊維の間隙 に挿入されている前項 1 3に記載の細胞培養容器。
1 5. 前記細胞支持体と前記中空繊維の総量は、 前記細胞培養容器全体の少なく とも 20 %の容積を占める前項 1 2〜 14の何れか 1に記載の細胞培養容器。
1 6. 前記細胞ま持体と前記中空繊維の総量は、 前記細胞培養容器全体の 20 ~ 85%の容積を占める前項 1 2〜 1 5の何れか 1に記載の細胞培養容器。
1 7. 前記細胞培養容器は、 筒状容器であって、 両端に前記中空繊維の内腔に連 通する各容器端部接続口、 側面に前記細胞支持体および前記中空繊維と前記細胞 培養容器の間隙部分に連通する 2つの容器側面接続口を設け、 該容器内部両端に は各端部室、 および各隔壁を設けた前項 1〜 1 6の何れか 1に記載の細胞培養容
1 8. 細胞支持体に細胞を付着させ、 中空繊維に連通する外部から培地を供給し、 中空繊維の半透膜機能により、 栄養分の補給と細胞代謝老廃物の回収をおこなう 前項 1 7に記載の細胞培養容器。
1 9. 酸素を循環させる前項 1 8に記載の細胞培養容器。
20. 前記細胞は、 動物に由来する付着性細胞である前項 1〜 1 9の何れか 1に 記載の細胞培養容器。
2 1. 前項 20に記載の細胞培養容器を使用して細胞を増殖させることを特徴と する細胞培養方法。 本発明において、 中空繊維と前記細胞支持体を封入する容器とは、 該容器自体 が細胞に対する毒性を持たず、 かつ、培養に使用する際に必要な操作である滅菌、 洗浄、 培養液との接触などにより、 変質、 分解などの悪影響を及ぼさないもので
あり、 中空繊維と細胞支持体を内封して保持できるものであれば、 いかなる素材 のものでも使用することができる。 素材の一例を挙げるならば、 ポリカーボネー ト、 ポリスチレン、 アクリル系樹脂、 ポリオレフイ ン系樹脂などいかなる高分子 材料も使用可能であり、 鉄、 アルミニウム、 その他の金属材料や、 ガラス、 セラ ミ ックスなどの無機材料も使用可能である。
中空繊維と細胞支持体を封入する容器の形状は、 中空繊維と細胞支持体を内封 して保持できるものであれば、 いかなる形態をとることも可能であり、 一例を挙 げると、 円筒状、 箱状、 バッグ状、 球状などの形状があり、 容器の形状は適宜目 的に応じて種々の設計が可能である。 一般的には円筒状容器である。 このような 容器には、 好ましくは、 細胞培養に必要である培地あるいはガス類を導入または 排出することが可能な容器端部接続口、 および細胞または細胞が産生する物質を 導入または排出することが可能な接続口すなわち容器側部接続口が設けられてい る。
本発明でいう中空繊維とは、 内部中央に空間を有する繊維である。その素材は、 繊維自体''が細胞に対する毒性を持たず、 かつ、 培養に使用する際に必要な操作で ある滅菌、 洗浄、 培養液との接触などにより、 変質、 分解などで細胞に悪影響を 及ぼさないものであり、 細胞の産生するタンパク様物質を透過せず、 それ以下の 分子量の物質透過性を有する半透膜の特性を持つ中空繊維であれば、 どの様な材 質のものでも使用できる。 材質の一例を挙げると、 有機材料ではセルロース系樹 脂、 ポリオレフイ ン、 フッ素系樹脂、 ポリスルホン、 ポリエーテルスルホン、 ポ リカーボネート、 アク リル系樹脂などが挙げられ、 また、 無機材料ではセラミ ツ クスなどが挙げられる。 また、 前記特性を満たす中空繊維であれば、 各種化学処 理、 表面改質などにより表面を改質した膜でも良い。
中空繊維の形態としては、 内径、 外径、 中空繊維の肉厚、 全長などの条件を使 用する細胞、 細胞が産生する物質の必要量、 培養期間、 設備の規模などに応じ、 適宜任意の形状に設計可能である。 前記中空繊維は、 具体的には内径 1 0〜 1 0 0 0 m、 好ましくは 5 0〜 5 0 0 〃 m、 膜厚 l〜 5 0 0 ^m、 好ましくは 5〜 1 〇 0 μ τηであり、 分画分子量は 1 0 0 0〜 1 0 0 0 0 0、 好ましくは 5 0 0 0 ~ 5 0 0 0 0である。 通常、 該細胞培養容器には 1 0 0〜 4 0 0 0 0本、 好まし
くは 5 0 0〜 2 0 0 0 0本の中空繊維が内封される。
中空繊維を容器に収納する形態としては、 中空繊維の内腔部分は前記容器の外 部と連通するように、 該中空繊維両端を隔壁により該容器の両端部に固定可能な 方法であれば、 どの様な形態でも可能である。 該容器の容積に対し、 細胞支持体 と中空繊維の合算の細胞培養容器全体での容積は、 少なく とも 2 0 %を占め、 好 ましく は 2 0〜 8 5 %、 より好ましくは 2 5 ~ 7 5 %、 特に好ましくは 3 5〜 6 5 %である。該容器の形状は、 この充填率に合わせて設計されることが好ましい。 本発明において、 細胞支持体とは、 付着性細胞が増殖するための担体である。 その素材は、 好ま しくは中空繊維でない繊維である。 その素材は、 支持体自体が 細胞に対する毒性を持たず、 かつ、 培養に使用する際に必要な操作である滅菌、 洗浄、 培養液との接触などにより、 変質、 分解などの悪影響を及ぼさないもので あり、 細胞の付着しやすい素材であれば、 どの様な物でも使用可能であり、 一例 を挙げると、 高分子材料などからなる群では、 ポリオレフイ ン系樹脂、 ポリエス テル系樹脂、 ポリスチレン系樹脂、 ポリカーボネート、 ポリアミ ド系樹脂などが 挙げられる。 また、 無機材料ではセラミ ックス、 ガラスなどが挙げられる。 好ま しくは、 ポリエステル系樹脂、 ガラスなどである。 これら細胞支持体は、 細胞の 付着性を向上する目的で、 その表面に対して物理的、 化学的な処理を施すことが 可能である。
細胞ま持体の形態としては、 単繊維または単繊維が集合した繊維束の形態であ り、 単繊維の繊維径としては、 培養対象となる細胞の大きさに合わせ、 その細胞 と同等以上の外径を持つことが、 細胞を増殖させる上では好ましい。 細胞に適し た繊維外径は、 0 . 0 1 〜 1 0 0 0〃 m、 好ましくは 0 . 0 5 m〜 2 0 0 m であり、 さらに好ましくは 0 . l 〜 2 0 0〃mである。 繊維長は、 容器の長さに 応じて種々選択される。 これら単繊維を収束して繊維束とする場合、 前記単繊維 が 2〜 5 0 0本集合した繊維束が好ましく、 さらに好適であるのは 2〜 1 0 0本 の単繊維が集合した繊維束である。
細胞支持体が、 複数の単繊維が集合した繊維束の形態からなる場合、 繊維束の 形態は、 撚り糸、 不織布、 編み糸など、 いかなる形態を取ることも可能であるが、 不織布の形態で、 繊維束を構成する各繊維間にも細胞が進入、 付着できる間隙が
空いている形態が好ましい。 繊維束の間隙は、 培養対象となる細胞の大きさに合 わせて調整することが好ましいが、 0 . 0 1〜 5 0 0 w mの間隙が好ましく、 さ らに好適であるのは 0 . 1 ~ 2 0 0 ]1:1でぁる。 繊維束の形態をとる場合、 各繊 維間に均等に間隙が空いていることが好ま しいが、 不織布、 撚り糸、 編み糸など、 部分的に接触している形態をとつてもよい。
上記繊維状細胞支持体を容器に収納し、 内封する形態としては、 中空繊維の間 隙に平行状態にて容器内部間隙に収納されることが好ましいが、 中空繊維に対し て細胞支持体がやや斜行して挿入する、 または中空繊維間に細胞支持体が蛇行し ている状態で揷入しても良い。 該繊維状細胞支持体の末端は、 隔壁により細胞培 養容器の両端部に固定される。 内封する本数は目的とする培養条件に応じて適宜 増減可能であり、 容器の大きさによりいかなる本数でも収納することが可能であ るが、 容器内に収納される中空繊維と細胞ま持体の割合を、 単繊維が 1〜 5 0 0 本集合した繊維束を 1単位として、 nと表した場合、 中空繊維本数を χとして表 すと、 1≤ χ Ζ η≤ 1 0 0で表す割合で収納することが好ましい。 さらに好まし いのは、 1≤ χノ η≤ 5 0である場合である。
本発明において、 動物性付着性細胞とは、 動物の組織に由来し、 増殖する際に 何らかの足場に付着して増殖していく特性を持つ細胞の総称であり、 それらの細 胞については種類を限定することなく使用可能であるが、 一例としては、 チヤィ ニーズハムスター卵巣由来細胞 (CHO 細胞) 、 アフ リ カミ ドリザル腎由来細胞 (Vero細胞) 、 ヒ ト胎児由来細胞 (MRC-5細胞) 、 新生仔シリ アンハムスター 腎由来細胞 (BHK細胞) 、 ヒ ト子宮頸部癌由来細胞 (Hela細胞) 、 マウス胎仔 由来細胞 (Balb3T3細胞) 、 また、 これら天然細胞に外来遺伝子を導入した細胞 などが挙げられる。
本発明は付着性細胞に好適な培養容器の提供を目的に為されているが、 浮遊系 の細胞を培養する場合でも、 細胞付着担体として内封された細胞支持体が、 中空 繊維間隙に浮遊性細胞が存在できる空間を確保し、 中空繊維の栄養交換効率を最 大限に発揮できるように配置されているので、 中空繊維のみを用いた浮遊性細胞 の培養を目的とする生物学的リアクターよりも高い培養効率を示すであろうこと は明白である。 このため、 本発明による培養容器は付着性細胞の培養のみに限定
されるものではない。 図面の箇単な説明
第 1 図は、 本発明に係る細胞培養容器の縦断面図である。
第 2図は、 本発明の実施例に係る細胞培養システムの回路図である。 発明を実施するための最良の形態
第 1 図に、 本発明の容器の具体例を模式図で示す。 細胞支持体 1 が、 多本数の中 空繊維 2に平行 t挿入されており、 細胞支持体 1 と、 中空繊維 2は、 容器 7の両 端部分に、 それぞれ封止材である隔壁 6a、 6b で固定されている。 各中空繊維の 内側内腔は、 各両端の端部室 5a、5bで一つにまとめられ、 容器両端にある接続口 3a,3b で外部と連通する。 細胞を培養するために必要な栄養分は、 接続口 3a,3b に接続した回路を通じて中空糸内腔部分に培地を供給することにより、 中空繊維 外部と容器に囲まれた細胞増殖スペース 8に必要な栄養分が中空繊維膜を介して 供給され、 細胞培養スペース中にある、 細胞が代謝した老廃物は逆に細胞増殖ス ペース 8から中空繊維内部に取込まれる。 細胞増殖スペース 8は容器 7側面に開 口した接続口 4a,4bにより外部の回路に接続される。 接続口 4a,4bは細胞の注入、 細胞の増殖に必要な培地の補給、 細胞の産生した物質の取出し等に適宜使用され る。
第 2図に、 本発明の細胞培養容器を使用した、 細胞培養回路の一例を示す。 中 空繊維内腔部分は、 細胞培養容器 7両端の接続口 3a,3bを経て端部接続口接続回 路 9, 10に接続される。 回路 9途中には供給される培養液の酸素濃度を監視する、 酸素濃度計 11 と、 回路を流れる培養液のガス濃度を調整するガス交換機 20が接 続され、 回路 10の途中には、 供給される培地の p Hを監視する p H計 12が接続 される。 回路 9, 10は培養液タンク 14に接続されており、 ポンプ 13により培養 液は供給される。 培養液は細胞の種類に応じて適切な成分を選択することが好ま しい。 容器 7に供給される培養液の酸素濃度と P Hはそれぞれ配置された計測器 により監視されているので、 適宜最適な環境を保つ様に調整される。 細胞培養ス ペース 8は容器 7側面の接続口 4a,4bを経て容器側面接続口接続回路 15,16によ
り、 外部バッファタンク 17 に接続される。 回路の途中には閉鎖バルブ 18, 19が 備えられており、 中空繊維内外の圧力差で発生する濾過により、 どちらか一方に 培養液が偏らないように細胞培養スペース 8を閉鎖系としている。 細胞が産生し た物質を取出す場合は閉鎖バルブを解放してバッファタンクよ り、 産生物を採取 する。 減少した溶液量は、 中空繊維膜を通じて適宜細胞培養スペースに補給され るため、 細胞培養スペースに存在する溶液量は常に一定に保たれる。
本発明の細胞培養方法は、 上記細胞培養容器 7の前記中空繊維 2 と前記容器 7 の間隙部分に存在する細胞ま持体 1に細胞を付着させ、 該容器の両端部に設けら れた容器端部接続口 3aおよび 3bから培地を供給し、 さらに必要により酸素を循 環させて、 前記細胞を増殖させる。 培地としては、 動物性付着細胞を培養するに 必要な培地であれば、 いかなるものでもよく、 例えば、 液体培地 (RPMI-1640, 90%、 牛胎児血清 10%、 LTI製) などが例示される。 培養条件は通常のものに従 ラ。 実施例
以下、 実施例により本発明の一例を説明する。
これらの実施例は本発明の細胞培養容器を用いた培養の一例であり、 接続され る回路構成、 回路形態、 培養液循環方法、 培養溶液の供給形態、 及び培養環境の 調整などは、 当該業者であれば適宜変更できるものであり、 本発明はこれらの実 施例で限定されるものではない。
実施例 1
内径 200 " m、 膜厚 15 mのセルロースアセテー ト中空繊維 約 4500本 (中空 繊'維内総面積が約 0.5m2) を、 ポリカーボネート製円筒状容器 (長さ 200mm、 直径 30mm) 内に封入した。 また細胞支持体として、 繊維直径 20 / mのポリェチ レンテ レフタ レ一 ト (PET) 繊維を 30本束ねた繊維束 (長さ 190mm) を、 中空 繊維 : P E T繊維束 = 24 : 1 の割合で各中空繊維間に均等に分散するように容器 内に封入した。 中空繊維と細胞支持体の両端は、 ウ レタン樹脂を用いて円筒容器 両端に固定した。 中空繊維の分画分子量は約 20,000 近辺であり、 容器内容積に 対して中空繊維と細胞支持体が占める容積は約 38%になるように調整した。
第 1 図に示す細胞培養容器を用いて、 第 2図で示す細胞培養回路を組立て、 線によ り回路全体の滅菌を行つた。 培養液タンク 14 には 10L の液体培地 (RPMI-1640, 90%、 牛胎児血清 10%、 LTI製) を入れ、 中空繊維 2内腔及びそ の接続口 3,9, 10を酸素濃度が 5ppmを維持するよう適宜調整しながら、 5~ 10mL /分の流速で循環させた。 循環する液体培地はガス交換機 20 により炭酸ガス濃 度を 5%に調整した。 細胞培養容器の培養スペース 8、 回路 15, 16及びバッファタ ンク 17 で構成される回路には上記液体培地と同組成の液体培地を満たし、 その 中に、 ヒ ト肝臓由来細胞 (Hep-G2細胞) を 1 X 105個 ZmLとなるように注入し 60日間培養を行った。
60 日間培養の結果、 最終的に細胞個数は 5.0 X 108個 ZmLに達した。 従来、 1 S x iC^ZmL程度といわれていたのと比較して、 約 10倍の高密度が得られた。 産業上の利用可能性
本発明の細胞培養容器を使用すると、 動物性付着細胞を効率よく高密度に培養 して、 高い物質生産能を維持することが可能になる。 すなわち、 同量の培養産物 の生産を行う場合、 設備は、従来と比較して約 1/10に規模を縮小することが可能 であり、 同規模の設備を用いれば、 従来の約 10 倍の生産量が得られることにな