JPH04117600U - 中空糸膜型細胞培養器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 培養器内に均一な培養環境を形成するのに好
適な構成を有する中空糸膜型細胞培養器を提供するこ
と。 【構成】中空糸膜型細胞培養モジュールを有する細胞培
養器の中空糸膜型細胞培養モジュールに、培養領域９を
挟んで対向する固定定部材６、６’と、これら固定部材
によりその両端の各々が固定され、培養領域９を横切る
方向にほぼ直線状に互いに隣接されて配列された培地供
給用中空糸膜７と培地排出用中空糸膜８とを有する構成
の中空糸膜型細胞培養モジュールを用いる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、中空糸膜の外表面あるいは外表面に接する領域内での細胞培養のた めの中空糸膜型細胞培養器に関する。

【０００２】

【従来の技術】

近年、動物細胞の産生する生理活性物質、例えばインターフェロンやモノクロ ーナル抗体など、付加価値の高い蛋白質やペプチド性の生理活性物質を工業規模 で生産するために、動物細胞の大量培養に必要な技術の開発が重要な課題となっ ている。そこで、これまでに種々の動物細胞の培養方法についての検討がなされ てきた。例えば、細胞の付着面積を増大させる方法として、マイクロキャリヤー 法や中空糸膜型細胞培養器を用いる方法などが開発されてきた。

【０００３】 一般に、細胞を高密度で培養するには、培養系に絶えず細胞増殖に適した生理 的環境を保つことが必要であり、そのためには、細胞の増殖に必要な栄養成分の 補給と、増殖過程で産出される増殖阻害物質の除去を連続的に行うことが有効と 考えられている。この点において、Ｋｎａｚｅｋらによる中空糸膜外表面に細胞 を付着させ中空糸膜の中空部に培養液を循環させて膜を介して細胞に連続的に栄 養分を供給する培養方法（特開昭４９−４１５７９号公報）は、高密度での細胞 培養を効率良く行なう上で有望な方法であると考えられている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、これまでの中空糸膜型細胞培養器は、必ずしも理想的な細胞培 養器とはいえないのが現状である。

【０００５】 すなわち、中空糸膜の場合、通常、細胞を中空糸膜の片側に付着または浮遊さ せて培養するが、攪拌培養のように積極的に培養器内の培地を混合できないため 、細胞の均一分散状態が得られず、また、栄養成分の供給、細胞の産生する老廃 物等の増殖阻害物質の除去が膜を介した透析あるいは濾過の原理によって行われ るために、細胞と膜との位置関係、例えば中空糸膜内を循環する培養液の流れに おける上流部と下流部における細胞増殖のための微小環境が異なってしまい、均 一な細胞増殖を得ることが困難であるという問題があった。細胞の増殖状態が不 均一となると、培養器内での栄養成分の消費速度、代謝生産物や老廃物などの生 産分泌速度のバラツキが細胞の増殖につれてより大きくなるので、培養器内を有 効に利用した高密度培養を達成することが困難となる。

【０００６】 培養容器内に均一な培養環境が得にくいという問題に対しては、従来より、モ ジュール長、すなわち中空糸膜の中空部を流れる培養液の培養領域内での流路長 を短くする、あるいはモジュール長の長い培養器においては、培養液の供給方向 を培養中に変化させるなどの手段により対処してきたが、十分満足できる成果が 得られていないのが現状である。

【０００７】 本考案は、上述の問題を解決するためになされたものであり、培養器内に均一 な培養環境を形成するのに好適な構成を有する中空糸膜型細胞培養器を提供する ことにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】

本考案の中空糸膜型細胞培養器は、 培地供給口、培地排出口及び細胞接種口を有する容器内に、中空糸膜型細胞培 養モジュールを設けた細胞培養器において、 中空糸膜型細胞培養モジュールが、細胞接種口と連通する培養領域を挟んで対 向する第１の固定部材と第２の固定部材によりその両端の各々が固定された中空 糸膜束を有し、 中空糸膜束は、培養領域を横切る方向にほぼ直線状に配列された培地供給用中 空糸膜と培地排出用中空糸膜を含み、 培地供給用中空糸膜は、培地供給口と連通する領域に開口し、第１の固定部材 に固定された開口端を有し、かつ培養排出用中空糸膜は、培地排出口と連通する 領域に開口し、第２の固定部材に固定された開口端を有し、 更に、各中空糸膜の外表面が接する培養領域と培地供給用中空糸膜が開口する 培地供給口と連通する領域とが第１の固定部材により隔離され、かつ各中空糸膜 の外表面が接する培養領域と培地排出用中空糸膜が開口する培地排出口と連通す る領域とが第２の固定部材により隔離されている ことを特徴とする。

【０００９】

【作用】

培養領域への培地の供給と、培養領域からの培地の排出を別々の中空糸膜に行 わせ、更に、培地供給用の中空糸膜の開口端は培地供給のみに利用し、また、培 地排出用の中空糸膜の開口端は培地の排出のみに利用することにより、培地供給 用の中空糸膜の外表面の全面からほぼ均一に培地が供給でき、培地排出用の中空 糸膜から効率良く培地を回収排除できる。しかも、培地供給用の中空糸膜と培地 排出用の中空糸膜とを隣接して配置することで、培地供給部と培地排出部との実 質的な距離を短縮でき、栄養成分、代謝生産物等の濃度分布をなくして、培養器 内での培養環境を均一化することが可能となり、均一に細胞を増殖させることが できる。

【００１０】

【実施例】

以下、本考案の細胞培養器の実施例について図を参照しつつ説明する。図１は 、本考案の細胞培養器の一例の模式縦断面図である。この細胞培養器は、培地供 給口２、培地排出口３、細胞接種口４とが設けられた直管１と、中空糸膜型細胞 培養モジュール５とを有して構成されている。

【００１１】 直管１は、中心軸に対して垂直な方向での断面（横断面）が円形の筒状体であ り、その両端のそれぞれに、直管１の横断面形状とほぼ同心円をなす横断面形状 の開口と該開口に連通する領域が形成されている。図示した例では、上方の開口 が培地排出口３として、また下方の開口が培地供給口２として用いられる。直管 １の側面には細胞接種口４が設けられている。培地供給口２及び培地排出口３の 形状、大きさ、設ける位置等は、図示された例に限定されないが、均一な培地供 給及び排出を行うという点からは、図示したようにその横断面が直管１の横断面 形状と同心円をなす位置に設けるのが好ましい。また、細胞接種口４の大きさ、 形状、設ける位置、その個数等も図示した例に限定されないが、培養領域９内へ の均一な接種を行えるように選択される。

【００１２】 なお、直管１の形状としては、図１のような円柱状に限定されず、横断面が楕 円や四角形等の多角形などの管状のものであれば良い。直管１を構成する材料は 、細胞の増殖に害を及ぼさない材料であれば特に限定されないが、細胞の増殖状 態が観察できる点で透明な材料が好ましい。例えば、ポリカーボネート、ポリス チレン等の有機材料、ガラス等の無機材料などを用いることができる。

【００１３】 なお、直管１には、培地供給口２、培地排出口３及び細胞接種口４以外に必要 に応じて各種の用途に用いる貫通孔を設けても良い。

【００１４】 中空糸膜型細胞培養モジュール５は、細胞接種口４と連通する培養領域９を挟 んで対向する第１の固定部材６と第２の固定部材６’と、これらの固定部材のそ れぞれにその両端の各々が固定され、培養領域を横切る方向にほぼ直線状に配列 された培地供給用中空糸膜７と培地排出用中空糸膜８とを有する。培地供給用中 空糸膜７と培地排出用中空糸膜８の外表面は、培養領域９と接し、培養領域９は 、固定部材６より培地供給口２に連通する領域としてのモジュール入口１０と、 更に、固定部材６’により培地排出口３に連通する領域としてのモジュール出口 １１とそれぞれ隔離されている。

【００１５】 細胞培養モジュール５において、固定部材６、６’間に固定された培地供給用 中空糸膜７と培地排出用中空糸膜８は、各々隣接して複数配列されている。培地 供給用中空糸膜７は、培地供給口２側の一端が固定部材６によりモジュール入口 １０に開口して固定され、他端は固定部材６’により封鎖されている。また、培 地排出用中空糸膜８は、培地排出口２側の一端が固定部材６’によりモジュール 出口１１に開口して固定され、他端は固定部材６により封鎖されている。

【００１６】 なお、ここでいう「隣接」には、直管１の横断面において、例えば図２に示さ れるように、培地供給用中空糸膜７及び培地排出用中空糸膜８が各々一本ずつ隣 接しながら均一に複数配列されている場合だけでなく、図３に示されるように、 培地供給用中空糸膜７及び培地排出用中空糸膜８が複数本ずつ隣接しながらモジ ュール５全体としてほぼ同数配列される場合も含まれる。

【００１７】 中空糸膜７、８としては、培地を効率良く供給、排出できる点で、多孔質の中 空糸膜が好ましい。また、付着性細胞を培養する場合においては細胞を付着増殖 させることのできる素材からなるものを利用する必要があるが、マイクロキャリ アなどの細胞付着性担体を、細胞接種時に細胞培養領域９に細胞と一緒に注入す れば、細胞付着性のあまり良くない素材からなる中空糸膜でも用いることが可能 となる。本考案に用いる中空糸膜としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレ ンなどのポリオレフィン系の素材からなるもの、ポリスルホン、ポリアクリロニ トリルなどの精密濾過用の素材からなるものなどを挙げることができる。

【００１８】 一方、固定部材６、６’を構成する材料としては、例えばポリウレタン、エポ キシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂などの中空糸膜固定用のポ ッティング剤として用いられている各種樹脂などが利用できる。

【００１９】 固定部材６の培地供給口２側に面する端面は、培地供給用中空糸膜７のみの開 口端と同一平面をなしており、培地排出用中空糸８の開口端は固定部材６内部に 埋設されて封鎖されている。このような固定状態は、例えば、中空糸膜束端を、 固定部材６内までの長さの中空糸膜と固定部材６以上の長さをもつ中空糸膜を混 在させて仮固定し、従来の中空糸膜モジュールの製造法における固定方法と同様 に、遠心法などにより、液状の固定部材形成用材料を直管端部内の固定部材形成 領域内にある中空糸膜間に注入し、直管の端面方向への遠心力等の作用によって 、液状の固定部材形成用材料を固定部材形成領域内に保持させつつ固化させて固 定部材を形成し、その後固定部材の不要な部分を切断除去するとともに培地供給 用中空糸膜７のみの端部を開口化して、それらの開口を有する固定部材６の培地 供給口２側に面する端面を形成することにより得ることができる。

【００２０】 なお、この固定操作において、固定部材形成用の液状材料が中空糸膜の開口端 から中空部内に侵入しにくいものであれば、上述の固定操作を中空糸膜の開口端 を開口させたままで行うことができるが、そうでない場合は、中空糸膜の開口端 をあらかじめ封鎖した後にポッティング剤により固定する。

【００２１】 これらの固定部材６による固定に関する事項は、固定部材６’における固定に ついても同様である。

【００２２】 本考案の細胞培養器を用いて培養する際、通常の殺菌方法によって培養器を殺 菌することができる。例えば、エチレンオキサイドガス滅菌処理やγ線滅菌処理 などが利用できる。

【００２３】 本考案の細胞培養器の中空糸膜７、８に、例えばポリエチレンやポリプロピレ ンなどのポリオレフィン系多孔質膜を用いる場合、７０％エタノール水溶液を培 地供給口２より供給し、培地排出口３から排出することで、中空糸膜を親水化し 、水で培養器内を洗浄してから培地を細胞培養器内へ供給することにより培養を 開始することができる。培地は、培養する細胞の種類に応じて通常用いられてい るものなどを選択すれば良い。例えば、ＭＥＭ培地やＨａｍ’ｓＦ１２などの培 地に血清を１０％程度添加した培地、あるいはＲＤＦなどの無血清培地など種々 の培地を用いることができる。

【００２４】 培養方法に関しては、通常の培養方法が適用でき、例えば、培地タンクからポ ンプなどにより、培地を必要に応じて酸素富化して、培地供給口２に供給し、培 地排出口３より排出する方法が利用できる。このときの培地のｐＨ及び培養温度 は、培養する細胞の種類に応じて調節される。

【００２５】 本考案の細胞培養器に供給された培地は、培地供給口２よりモジュール入口１ ０を経由して培地供給用中空糸膜７の中空部に供給される。この培地供給用中空 糸膜７は、固定部材６’により封鎖されているためにその中空部内に流入した全 ての培地は培地供給用中空糸膜７の膜を介してその外表面から細胞培養領域９に 効率良く放出され、細胞培養領域９で増殖している細胞に必要な栄養源を供給す る。一方、細胞培養領域９において培地中の必要な栄養源は消費されるとともに 、細胞より代謝物や老廃物などが分泌される。消費されずに残っている栄養成分 や細胞により生産された代謝物や老廃物等を多く含んだ培地は、培地排出用中空 糸膜８の外表面より膜を介してその中空部に回収される。この培地排出用中空糸 膜８はその培地供給口２側を固定部材６により封鎖されているために、培地は中 空部から更にモジュール出口１１を介して培地排出口３より細胞培養器外部に排 出される。

【００２６】 培地排出口３より細胞培養器外部に排出された培地中に目的とする代謝生産物 が存在する場合には、これを所定の処理に施して、目的とする代謝生産物を所望 の精製度で回収する。

【００２７】 このように、本考案の培養器では、培地は、培地供給用中空糸膜７の他端が封 鎖されているために培地供給用中空糸膜７の外表面全面よりほぼ均一に細胞培養 領域９に供給され、更に隣接している培地排出用中空糸膜８より排出される。従 って、従来の中空糸膜型細胞培養器に比較して細胞培養領域の培地供給部と排出 部との実質上の距離を短くでき、細胞培養領域内を有効に利用して均一に細胞を 増殖させることができる。

【００２８】 本考案における中空糸膜の固定形態は、図示したような、一端を開口端として 一方の固定部材に固定し、他端を他方の固定部材に封鎖固定する場合に限定され ず、例えば、培地供給用中空糸膜と培地排出用中空糸膜のそれぞれを、ループ状 （Ｕ字状）に収束し、得られた培地供給用中空糸膜の束と、培地排出用中空糸膜 の束とを、直管の両端からそれぞれ挿入して、培地供給用中空糸膜の束において は各中空糸膜の両開口端が固定部材６に、そのループ部分が固定部材６’に固定 され、培地排出用中空糸膜の束においては各中空糸膜の両開口端が固定部材６’ に、そのループ部分が固定部材６に固定されるように、これらを固定したもので あってもよい。

【００２９】 本考案の細胞培養器は、通常培養に用いられる浮遊性細胞や付着性細胞なら培 養することができ、例えば、ＣＨＯ細胞、Ｈｅｌａ細胞やハイブリドーマを培養 して、モノクローナル抗体、インターフェロンなどの生理活性物質の生産するた めの動物細胞培養器として好適である。

【００３０】

【考案の効果】

本考案の中空糸膜型細胞培養器は、中空糸膜型細胞培養モジュールの中空糸膜 に培地供給専用の中空糸膜と培地排出専用の中空糸膜を用いてこれらを機能分離 し、且つこれらの中空糸膜を隣接して配置することにより、従来の中空糸膜型細 胞培養器に比較して細胞培養部の培地供給部分と排出部分の実質上の距離を短く でき、細胞培養部内の培地中の栄養成分や代謝生産物等の濃度分布を少なくし、 培養環境を一定にできる。従って、本考案の中空糸膜型細胞培養器では、細胞培 養器内を均一に細胞を増殖させることができるため、培養器内を有効に利用でき 、かつ高密度の細胞培養を効果的に達成できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の細胞培養器の一例の模式縦断面図であ
る。

【図２】本考案の細胞培養器における中空糸膜の配列の
一例を示す細胞培養器の模式横断面図である。

【図３】本考案の細胞培養器における中空糸膜の配列の
他の例を示す細胞培養器の模式横断面図である。

【符号の説明】

１ 直管 ２ 培地供給口 ３ 培地排出口 ４ 細胞接種口 ５ 中空糸膜型細胞培養モジュール ６、６’固定部材 ７ 培地供給用中空糸膜 ８ 培地排出用中空糸膜 ９ 培養領域 １０ モジュール入口 １１ モジュール出口

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 培地供給口、培地排出口及び細胞接種口
   を有する容器内に、中空糸膜型細胞培養モジュールを設
   けた中空糸膜型細胞培養器において、中空糸膜型細胞培
   養モジュールが、細胞接種口と連通する培養領域を挟ん
   で対向する第１の固定部材と第２の固定部材によりその
   両端の各々が固定された中空糸膜束を有し、中空糸膜束
   は、培養領域を横切る方向にほぼ直線状に配列された培
   地供給用中空糸膜と培地排出用中空糸膜を含み、培地供
   給用中空糸膜は、培地供給口と連通する領域に開口し、
   第１の固定部材に固定された開口端を有し、かつ培養排
   出用中空糸膜は、培地排出口と連通する領域に開口し、
   第２の固定部材に固定された開口端を有し、更に、各中
   空糸膜の外表面が接する培養領域と培地供給用中空糸膜
   が開口する培地供給口と連通する領域とが第１の固定部
   材により隔離され、かつ各中空糸膜の外表面が接する培
   養領域と培地排出用中空糸膜が開口する培地排出口と連
   通する領域とが第２の固定部材により隔離されているこ
   とを特徴とする中空糸膜型細胞培養器。