明 細 書 突起物群表示体とその製造方法 技術分野
本発明は、 突起物群表示体とその製造方法、 さらに詳しくは、 路面又は壁面等の 被固着面に複数の突起物を具備させた、 主として視覚障害者誘導標識等の突起物群 表示体と、 その表示体の製造方法に関するものである。 背景技術
一般に、 この種の視覚障害者誘導標識等の突起物群表示体は、 コンクリート製ブ ロックに錤を埋め込んだもの、 突起を一体成形した歩道敷設板、 ゴムチップの成形 プレートを路面上に配設したもの、 或いは、 これらを路面に埋め込んだもの等が用 いられている
しかし, これらは, あらかじめ凸部を有するブロック等を成形した後、 現場へ運 び、 配設又は埋め込み作業を行なって施工するため、 作業効率が低下するという問 題点があった。
また、 長期使用により磨耗することもあり、 さらには点字用錤等の場合にあって は、 脱離が生じ、 或いは脱離直前の錤に視覚障害者がつまずくおそれがあり, いず れにしても耐久性や安全性の点で問題があった。
'さらに、 従来の視覚障害者誘導標識は、 上述のようにブロック等を敷設して製造 されていたため、 その施工上、 誘導標識の突起物の形状も丸形凸部ゃ帯状凸部等に 限定されており、 従って、 誘導標識のパターンも簡単なものに限られていた。
よって、 視覚障害者は、 横断歩道の位置や駅のホームの危険位置を知ることはで きるが、 目的地へ到達するために、 どの進行方向へ歩行すればよいか等を認識する ことまではできない。 従って、 日頃行き来している場所へは単独でも歩行できるが、
訪れたことのない B的地へ単独で行くことは難しかった。 発明の開示
本発明は、 このような問題点を解決するためになされたもので, あらゆる場所の 路面や壁面等に現場で簡単に施工することができ、 しかも単に横断歩道や駅のホー ムの危険位置を知るのみならず、 視覚障害者をそれまでに訪れたことのない目的地 へも比較的容易に誘導することができる視覚障害者誘導標識等の突起物群表示体を 提供することを課題とする。
すなわち, 本発明は, このような課題を解決するために突起物群表示体とその製 造方法としてなされたものである。 突起物群表示体としての特徴は、 固化性物質 5 を固化することによって、 路面又は壁面等の被固着面 7とは別体に形成された突起 物 8力 前記被固着面 7に接着されて構成されてなることにある。
また、 突起物群表示体の製造方法としての特徴は、 シート体 1に複数の凹部 12を 設け、 該凹部 12に固化性物質 5を注入し、 固化後, 該固化性物質 5の表面に接着剤 6を塗布し、 次に前記シート体 1を上下反転し、 該接着剤 6を介して固化性物質 5 を路 ώ'又は壁面等の被固着面 7に接着して突起物群表示体を製造することにある。 さらに、 他の突起物群表示体の製造方法としての特徴は、 シート体 1に複数の凹 部 12を設け、 該凹部 12に固化性物質 5を注入し、 固化後、 該固化性物質 5の表面 に接着剤 6を塗布し、 次に前記シート体 1を上下反転し、 該接着剤 6を介して固化 性物質 5を路面又は壁面等の被固着面 7に接着し、 その後、 前記シート体 1を除去 することにより、 前記被固着面 7に複数の突起物 8が配設された突起物群表示体を 製造することにある。
さらに、 他の突起物群表示体の製造方法としての特徴は、 固化性物質 9を路面又 は壁面等の被固着面 7に流下し、 固化した後、 複数の莨通孔 10を穿設し, 該貫通孔 10に、 ホットメルト樹脂 1 1を流し込み、 ホットメルト榭脂 1 1の硬化後, 前記固化 性物質 9を除去することにより, 前記被固着面 7に複数の突起物 8が配設された突
起物群表示体を製造することにある。
前記固化性物質の種類は、 セメント. 石膏、 ポリエステル樹脂、 エポキシ樹脂、 ゥ レタン樹脂、 石粉、 ゴム及びガラス等、 固化する材料であれば特に限定されないが、 一 3 でも 1 0〜 2 0分で硬化するメタクリル樹脂が好ましい。 特に、 室内の床 に施工する場合等, 素足で踏んで利用するような場合には、 硬化後ゴム様の弾力を 有するため、 この意味でもメタクリル樹脂の使用が好ましい。
また、 シート体 1としては、 たとえば合成樹脂製フィルムを用いることが可能で ある。
さらに、 シート体 1に凹部 12を形成する方法としては、 凹部を形成する部分を腐 食する方法、 或いは紫外線硬化榭脂を利用することにより凹部の形成部分以外を硬 化させた後、 残りの部分を腐食して凹部を形成する方法等もあるが, 両者とも現場 作業が困難で、 コストがかかるため、 熱した金属棒をフィルム面上に押しつけるこ とにより、 凹部を形成する方法が好ましい。
さらに合成樹脂製フィルムとしては、 ポリエチレンテレフタレ一トフイルム. ポ リエチレンフィルム、 セロハン等, 凹部を形成することができるものであれば材質 は特に限定されないが, 2 0〜8 0ででしかも数秒間で深さ 1 c m位、 直径数 mm 〜 3 c m位の凹部を形成することができるポリ塩化ピニルフィルムを用いるのが好 ましい。
但し、 ポリ塩化ビニルフィルムは熱に弱く、 一回使用すると熱による型崩れが生 じるため、 一回使用する毎に廃棄することになる。
この点、 ポリエチレンテレフタレ一卜フィルム等は, 凹部を形成するのに時間が かかるが、 熱に強く、 繰り返し使用することができるという利点がある。
従って、 同じ点字を多数製造する場合には、 ポリエチレンテレフ夕レート等の熱 に強いフィルムを使用する方がコストを低下する意味で好ましい。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明の一実施形態の視覚障害者誘導標識の製造方法における型作りェ 程を示す要部拡大断面図である。
図 2は、 固化性物質の流し込み工程を示す要部拡大断面図である。
図 3は, 接着剤塗布工程を示す要部拡大断面図である。
図 4は、 接着工程を示す要部拡大断面図である。
図 5は、 フィルム剥離工程を示す要部拡大断面図である。
図 6は、 固化性物質の流下工程を示す要部拡大断面図である。
図 7は、 貫通孔の穿設工程を示す要部拡大断面図である。
図 8は、 貫通孔にホットメルト樹脂を注入して硬化する工程を示す要部拡大断面 図である。
図 9は、 固化性物質の取外し工程を示す要部拡大断面図である。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明の突起物群表示体の一例としての視覚障害者誘導標識の製造方法と、 その方法によって得られる視覚障害者誘導標識の実施形態について説明する。
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態の製造工程を、 図 1〜 5に従って説明する。
厚さ 1 0〜3 0 mのポリ塩化ビニルフィルムからなるシート体 1の両端を引つ 張ってシート体 1を張設した状態にし、 そのシート体 1上に所望の点字を形成する 各点の位置を定める。
その後、 図 1に示すように、 前記各点について、 先端が丸く形成され、 7 0でに 熱せられた直径 1 c mの金属棒 2を上から押しつけてシート体 1上に深さ 7 mmの 凹部 12を形成する。
但し、 シート体 1の厚さ、 金属棒 2のサイズ、 加熱温度及び凹部 12の深さは、 上 記値に限定されるものではなく、 製造する突起物の大きさ及び使用するシート体 1 の種類等に応じて適宜定めることができる。
例えば, 2 c mx 2 c mx 1 0 c mの金属棒を使用して, 深さ l c m, 横方向長 さ 2 c m, 縦方向長さ 1 0 c mの凹部】 2を形成すれば、 誘導線として利用できる突 起物を製造することができる。
金属棒としては、 亜鉛、 真鐮、 鉛等が使用でき、 その太さ、 先端の形状、 温度は シート体 1の性質や点字の大きさに応じて適宜設計変更可能である。
また、 金属棒の上下運動は、 固定式、 移動式, アーム式のいずれも可能で、 直動 バルブ、 エアーシリンダー、 オイルシリンダー, ウォー夕一シリンダー等で押しつ ける。
大きさや形の異なる金属棒に適宜交換可能なように, 金属棒に接続される熱線 4 の先にはネジ 3が取り付けられ、 該ネジ 3を金属棒 2の上部に設けられたネジ溝に 蟝合することにより金属棒 2に熱線 4が着脱自在に支持される。
シート体 1を冷却した後、図 2に示すように、上記凹部 12にメタクリル樹脂液(三 菱レイヨン社製ァクリシラップ) 、 骨剤及び硬化剤を調合したもの (以下 「調合樹 脂液」 という) を流し込む。
骨剤としては、 砂、 セラミック、 ガラス粉等を使用し、 硬化剤としては、 ベンゾ ィルパーォキサイド等を使用する。
メタクリル樹脂液は、 上塗り用、 中塗り用及び下塗り用とがあるが、 本実施形態 の点字を製造するためには, 表面を硬くするため、 上塗り樹脂液を調合した調合樹 脂波 (以下 「第 1調合樹脂液」 という) を型に流し込み、 5〜 1 0分後、 下塗り榭 脂液を調合した調合樹脂液 (以下 「第 2調合樹脂液」 という) を型に流し込む。 この場合, 第 1調合樹脂液の割合が多いと、 固化後、 割れ、 亀裂が生ずるおそれ があるので、 第 1調合樹脂液と第 2調合樹脂液の割合は、 体積比 1 : 4にするのが 好ましい。
尚, 第 2調合樹脂液は、 柔軟性をもち、 夏冬等の気候による温度変化を受けて膨 張 ·縮小を繰り返す下地の動きに追従するため, 縮み、 割れ, 剥がれを起こしにく く、 施工場所の環境によっては. 第 2調合樹脂液のみで点字を形成することも可能
である。
流し込む材料は、 流し込んだ後、 固化するものであれば, 特に限定されず、 セメ ント、 石膏、 ポリエステル樹脂、 エポキシ樹脂、 石粉、 ゴム, ガラス等も使用可能 であるが, 短時間硬化性、 低温硬化性, 耐磨耗性、 耐薬品性等の点において, メタ クリル樹脂が最も好ましい。
次に、 流し込んだ調合樹脂液 5が固化した後、 図 3に示すように、 該調合樹脂液 5の表 fiに刷毛等によって接着剤 6を塗布する。
次に、 接着剤 6の乾燥後、 図 4に示すように、 シート体 1を上下反転してコンク リート、 アスファルト、 タイル、 レンガ、 Pタイル, モルタル、 ガラス、 金属、 大 理石等の路面又は壁面等の被固着面 7に接着する。
接着剤としては, メタクリルブライマー, 瞬間接着剤等が使用される。
被固着面 7に接着してから約 2 0分後、 図 5に示すように, シート体 1を剥がす と、 路面又は壁面等の被固着面 7に、 点字を形成するメタクリル樹脂製の複数の突 起物 8が接着された視覚障害者誘導標識が形成されることとなる。
上記調合樹脂液には, センサ一を埋め込むことも可能であり、 その場合、 例えば、 ソーラー電池を電源にして、 視覚障害者が持つ杖に内蔵された発信装置から発信さ れる信号を前記センサーが感知して、 音を発生させるようにしてもよい。 この場合、 例えば 1 0 0 m位離れた所から信号を感知して近づくとともに音が大きくなり、 点 字がある所まで視覚障害者を誘導することができる。
また、 上記調合樹脂液には、 顔料等の着色剤を自由に混ぜ合わせることができ、 例えば、 反射ビーズ及びチタンを混ぜ合わせれば、 夜間でも光が当たるとビーズが 反射して光り、 また、 雲母石を混ぜ合わせると、 昼間でも光る点字を形成すること ができ、 視覚に障害のない者にとっても交通安全につながる。
例えば、 上記方法で製造される各突起物は点字を構成するものでなくても、 電柱 ゃ摒への不当なポスター張り防止の突起物として利用することも可能である。 特に フィルムが破れない程度に先が尖った金属棒によって上記突起物を製造すると一層
効果的である。
或いは、 突起部の形状を星型にしたり、 突起部毎に色を変化させることにより模 様を構成するようにすれば、 路面や壁面等の被固着面の装飾として利用することも できる。
さらに, 上記調合樹脂液に銀粉や銅粉を混合することにより、 製造された突起物 が導電性を有し、 I Cの基板等にも応用可能である。
(第 2実施形態)
次に, 本発明の他の実施形態の製造工程を、 図 6〜 9に従って説明する。
先ず、 図 6に示すように、 路面等の被固着面 7に. 石膏等の固化性物質 9を 5 m m〜 1 c m高さに流下させ、 固化させる。
次に、 図 7に示すように、 点字を形成すべき位置に相当する部分に貫通孔 10を穿 設する。
次に、 このようにして穿設された貫通孔 10に, 図 8に すようにホットメルト樹 脂 Πを流し込み、 固化させる。
次に、 図 9に示すように, 固化した固化性物質 9を除去することにより、 複数の 点字を形成するホットメルト樹脂製の突起物 8が被固着面 7に固着された視覚障害 者誘導標識が形成されることとなる。
固化性物質は, 上記石膏の他、 セメント、 合成樹脂製フィルム等, 突起物の高さ 程度の厚みを形成することができるものであれば、 特に限定されない。
また、 敷設する固化性物質の厚み及び固化性物質に形成する貫通孔の大きさは、 突起物の大きさに応じて適宜定めることができる。
ホットメルト樹脂は、 メ夕クリル樹脂等のベ一スとなる樹脂、 該べ一ス榭脂との 相溶性をもつ粘着付与剤、 ワックス類, 酸化防止剤等からなり、 7 0〜2 0 0 t:で 可塑性を得、 その後、 冷却することにより固化すると同時に前記粘着付与剤の働き によりアスファルト等の路面に接着される。 ベース樹脂、 粘着付与剤等の種類は、 施工条件に応じて適宜定められる。
(その他の実施形態)
尚、 上記第一実施形態では、 シート体 1を卜.下反転して、 路面又は壁面等の被固 着面 7に接着剤 6を介して固化性物質 5を接着した後、 シ一ト体 1を固化性物質 5 から除去したが、 このようにシート体 1を除去することは本発明に必須の条件では なく、 そのままシート体 1を残存させることも可能である。
この場合は、 たとえばシート体 1を透明に形成すると、 その透明なシート体 1を 介して固化した突起 8が表面に現出し、 その突起 8を形成する固化性物質 5の色を 任意の色或いは模様等に形成することによって、 種々の装飾的効果が得られること となる。
尚、 本発明は、 突起物群表示体を視覚障害者の誘導標識として使用することを主 眼とするものではあるが、 突起物群表示体の用途はこれに限定されるものではない。 たとえば、 上記のように透明なシート体 1を突起 8から除去することなく、 残存 した状態で路面等の被固着面に設置する場合には、 視覚に障害のない者に対し、 上 記のような色や模様が透視可能となる効果が得られることとなる。
いずれにしても、 突起物群表示体の用途は問うものではなく、 要は、 固化性物質 を固化することによって. 路面又は壁面等の被固着面とは別体に形成された突起物 力^ 被固着面に接着されて構成されたような突起物群表示体が用いられていればよ いのである。
試験例
本発明の視覚障害者誘導標識について, 視覚障害者が読解することができるかど うかを確認するため、 以下の試験を行なった。
路面に施工された本発明の視覚障害者誘導標識について、 点宇によって表された 数字の上を視覚障害者が歩いた場合に、 その点字数字を正しく読むことができるか どうかについて、 先天的な視覚障害者 1 0名と後天的な視覚障害者 1 0名を対象に、 底の厚い靴又は底の薄い靴を履いて上記点字数字の上を歩いてもらい、 試験を行な つた。
試験の結果、 先天的視覚障害者 1 0名は、 厚底の靴で全員が正確に読解すること ができ、 杖で触っただけでも読解することができるという結果であった。 後天的視 覚障害者のうち、 年少の頃に視覚障害をもった 5名中 4名は, 厚底の靴で正確に読 解することができ、 残りの 1名は薄底の靴を履くと読解することができた。
1 0歳以上で視覚障害をもった 5名中 2名は、 厚底の靴で点字数字の 5割を読解 することができ、 薄底の靴を履けば全て読解することができた。 残りの 3名は, 厚 底の靴で 2割弱、 薄底の靴で S割の点字数字を読解することができた。
以上の結果より、 本発明の視覚障害者誘導標識は、 視覚障害をもつ人にとって、 非常に読解し易いものであることがわかった。
本発明は以上のように構成されるので、 次のような効果を奏する。
すなわち、 上述のような方法によって、 本発明の突起物群表示体の一例としての 視覚障害者誘導標識を製造することにより、 安価でしかも簡単に点字で説明文等を 表現した視覚障害者誘導標識を製造することができる。 すなわち, あらゆる場所の 路面や壁面等の被固着面に現地で短時間で施工することができ、 コス卜がかからな い。
従って、 例えば、 交差点に, 右へ行くと AAA学校があり, 左へ行くと B B B駅 があるという説明を表現することができ、 視覚障害者が一人でも未知の目的地へ行 くことができる。
また、 長距離にわたる誘導線も安価で製造 P能であり、 視覚障害者を安全に目的 の場所まで誘導することができる。
さらに, 点字によって多くの国で使用される言語を表せば、 それらの国で利用す ることができ、 視覚障害者が単独で外国旅行することも容易となる。
一方、 上記のような製造方法によって得られた視覚障害者誘導標識は、 視覚障害 者にとって非常に読解しやすいものである上、 安全性、 耐磨耗性等に優れている。 また、 本発明の突起物群表示体は、 あらゆる形や色にて製造することができるの で、 視覚に障害のない者の交通安全にもつながるとともに, 路面や壁面等の装飾や
電柱等への不当なポスター張り防止にも利用することができる <