JPWO2020217597A1 - サーボ制御装置 - Google Patents

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Abstract

被駆動体が接続された機械部(7a)を駆動するアクチュエータに対して、指令値演算部(9)で演算された位置指令(Xc)に追従するように、回転角検出器(2)で検出された検出位置(Xd)をフィードバックし、コントローラ部(6a)でアクチュエータを制御するサーボ制御装置(100)であって、評価点の状態量を検出する評価点センサ(1a)と、参照点の状態量を検出する参照点センサ(1b)と、評価点の状態量および参照点の状態量を用いて第一の伝達関数(FRF1(s))を演算する第一の伝達関数演算部(4a)と、参照点の状態量および検出位置を用いて第二の伝達関数(FRF2(s))を演算する第二の伝達関数演算部(4b)と、第一の伝達関数(FRF1(s))、第二の伝達関数(FRF2(s))、および剛性値パラメータ(Kdr)を用いて、評価点推定位置を演算するシミュレーション部(5)と、を備える。

Description

本発明は、システム同定を行うサーボ制御装置に関する。
サーボ制御装置は、位置検出器を用いて検出された被駆動体の位置が指令位置に一致するように、アクチュエータを用いてフィードバック制御を行う装置である。
数値制御工作機械、産業用機械、ロボット、搬送機などのように多自由度を有する機械装置は、軸と呼ばれるサーボ制御装置を複数有する。このような機械装置は、各軸に取り付けられたアクチュエータで被駆動体の位置を制御し、各軸の位置制御を組み合わせることで、多自由度の運動を実現している。
運動軌跡が指令された経路である指令軌跡に正確に追従するように行うサーボ制御は、軌跡制御または輪郭運動制御と呼ばれる。軌跡制御中に摩擦、機械構造の振動などの外乱要因によって軸の運動に誤差が発生すると運動軌跡は指令軌跡から外れるため、軌跡誤差が生じる。例えば、切削工具の運動を加工対象の工作物に転写することで形状を創生する数値制御工作機械においては、数十マイクロメートルの軌跡誤差であっても加工不良と判断されることがある。
数値制御工作機械、産業用機械、ロボット、搬送機などでは、工具、搬送物、ロボットハンドのような実際に作業を行う部位が真に軌跡制御を実現したい制御対象となる。しかしながら、全ての軸において、被駆動体の位置を検出するための位置検出器を制御対象に完全に一致して取り付けることは難しい。そのため、サーボ制御装置は、フィードバック制御を行っている場合でも、位置検出器の取り付け位置が制御対象の位置と一致していないと位置検出器で正確に制御対象の運動を検出できないため、軌跡誤差が生じる。
運動軌跡に軌跡誤差が発生する場合、サーボ制御装置に補正指令を入力することで誤差低減を図る。補正指令を生成するためには、軌跡誤差の発生原因を特定し、発生する軌跡誤差の誤差量を知る必要がある。誤差量を知る直接的な方法として、制御対象に変位計測器を取り付け、発生する軌跡誤差を測定する方法が既知である。例えば、ダブルボールバーと呼ばれる測定器は、2つの高精度な鋼球の間が変位計を介して結合され、2球間の相対距離を一定に保つような運動を行わせたときの2点間の相対変位を読み取るものである。ダブルボールバーは、工作機械の工具先端の軌跡誤差を測定する際によく用いられる。しかしながら、このような変位計測器を取り付けたままで加工、組み立て、搬送などの作業を行うことは難しいため、測定を行う際は都度作業を中止する必要がある。そのため、より簡易な方法で、かつ作業中に制御対象の軌跡誤差を測定または推定する方式がより好ましい。
機械装置のモデリング、システム同定などを用いた軌跡誤差の予測結果、誤差原因の予測結果に基づくサーボ制御装置の軌跡誤差の補正は重要な課題であり、複数の方法が公知である。例えば、特許文献1には、検出手段によって検出された動作量および動作指令から機械の周波数特性を得て、機械の負荷量の剛体負荷モデル、摩擦を数値化した摩擦モデル、および振動特性モデルを同定する技術が開示されている。
特開2006−333594号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、周波数領域で誤差の発生要因および最大誤差量を特定することは可能であるが、制御対象に生じる時々刻々の誤差量を予想できない、という問題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、軌跡制御を行う機械の特性を同定し、制御対象の軌跡誤差を模擬するシステム同定が可能なサーボ制御装置を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、制御対象である被駆動体が接続された機械部を駆動する1つ以上のアクチュエータに対して、被駆動体の位置が指令値演算部で演算された位置を指示する位置指令に追従するように、検出点に取り付けられた位置検出器で検出された被駆動体の位置を示す検出位置をフィードバックし、コントローラ部でアクチュエータを制御するサーボ制御装置である。サーボ制御装置は、被駆動体または被駆動体に応じた位置に設定された評価点の状態量を検出する第一の検出部と、評価点とアクチュエータとの間の機械部に設定された参照点の状態量を検出する第二の検出部と、評価点の状態量および参照点の状態量を用いて、参照点から評価点までの周波数応答特性である第一の伝達関数を演算する第一の伝達関数演算部と、参照点の状態量および検出位置を用いて、検出位置から参照点までの周波数応答特性である第二の伝達関数を演算する第二の伝達関数演算部と、第一の伝達関数、第二の伝達関数、および検出位置と参照点との間の剛性値を示す剛性値パラメータを用いて、評価点の推定位置を演算する第一のシミュレーション部と、を備える。第一のシミュレーション部は、検出位置の挙動が推定された検出点推定位置をフィードバックとし、コントローラ部を模擬してアクチュエータへの指令トルク推定値を生成するコントローラ模擬部と、第二の伝達関数および検出点推定位置を用いて、参照点の挙動を推定した参照点推定位置を演算する参照点推定位置演算部と、第一の伝達関数および参照点推定位置を用いて、評価点の挙動を推定した評価点推定位置を演算する評価点推定位置演算部と、検出点推定位置、参照点推定位置、および剛性値パラメータを用いて、駆動反力推定値を演算する駆動反力推定部と、駆動反力推定値および指令トルク推定値から演算される有効トルク推定値を用いて、検出点推定位置を演算する検出点推定位置演算部と、第一の伝達関数を評価点推定位置演算部に設定し、第二の伝達関数を参照点推定位置演算部に設定し、剛性値パラメータを駆動反力推定部に設定するシミュレータパラメータ設定部と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、サーボ制御装置は、軌跡制御を行う機械の特性を同定し、制御対象の軌跡誤差を模擬するシステム同定ができるという効果を奏する。
実施の形態1に係る数値制御工作機械の構成例を示す図 実施の形態1に係る数値制御工作機械の軸であるX軸サーボ制御装置の構成例を示す模式図 実施の形態1に係るコントローラ部の構成例を示すブロック図 実施の形態1に係るシステム同定を行うサーボ制御装置の構成例を示すブロック図 実施の形態1に係るシミュレーション部の構成例を示すブロック図 実施の形態1に係るコントローラ模擬部の構成例を示すブロック図 実施の形態1に係る駆動反力推定部の構成例を示すブロック図 実施の形態1に係るサーボ制御装置の動作を示すフローチャート 実施の形態1に係るサーボ制御装置が備える処理回路をプロセッサおよびメモリで構成する場合の例を示す図 実施の形態1に係るサーボ制御装置が備える処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の例を示す図 実施の形態2に係るシステム同定を行うサーボ制御装置の構成例を示す図 実施の形態2に係る数値制御工作機械の軸であるX軸サーボ制御装置の構成例を示す模式図 実施の形態2に係るコントローラ部の構成例を示すブロック図 実施の形態3に係るサーボ制御装置の構成例を示す模式図 実施の形態4に係るシステム同定を行うサーボ制御装置の構成例を示す図 実施の形態4に係るサーボ制御装置の動作を示すフローチャート 実施の形態5に係るシステム同定を行うサーボ制御装置の構成例を示す図 実施の形態5に係る補正指令演算部の構成例を示すブロック図 実施の形態5に係るコントローラ部の構成例を示すブロック図 実施の形態5に係るサーボ制御装置の動作を示すフローチャート 実施の形態6に係るシステム同定を行うサーボ制御装置の構成例を示す図 実施の形態7に係るシステム同定を行うサーボ制御装置の構成例を示すブロック図 実施の形態7に係る学習部の構成例を示すブロック図 実施の形態7に係るシミュレーション部の構成例を示すブロック図 実施の形態7に係るサーボ制御装置の動作を示すフローチャート 実施の形態8に係るシステム同定を行うサーボ制御装置の構成例を示す図 実施の形態8に係る学習部の構成例を示すブロック図 実施の形態8に係るシミュレーション部の構成例を示すブロック図
以下に、本発明の実施の形態に係るサーボ制御装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。サーボ制御装置が数値制御工作機械のシステム同定を行う場合について具体的に説明するが、本発明は、アクチュエータを用いて制御対象を駆動するサーボ制御装置を1つ以上有する産業用機械、ロボット、搬送機などの機械にも適用可能である。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る数値制御工作機械99の構成例を示す図である。数値制御工作機械99は、直交3軸立形工作機械であり、X軸、Y軸、およびZ軸の合計3つのサーボ制御装置を有する。数値制御工作機械99は、工具76をX軸およびZ軸の方向で駆動し、ワークテーブル77に設置された工作物78をY軸の方向で駆動して、工作物78の加工を行う。すなわち、数値制御工作機械99において、X軸およびZ軸における制御対象である被駆動体は工具76であり、Y軸における制御対象である被駆動体は工作物78である。
数値制御工作機械99において、各軸では、アクチュエータであるモータ71の回転運動が送りねじ73によって各軸の駆動方向への直進運動に変換される。数値制御工作機械99では、結果として、各軸の直進運動を組み合わせた工具76のXZ平面内の2自由度運動および工作物78のY方向の1自由度の運動によって、XYZの3次元空間内、すなわち3自由度の運動が実現される。数値制御工作機械99は、工具76を回転させ、工作物78において工具76と干渉した部分の材料を除去することで、工作物78の3次元形状を創生する。加工中に工具76と工作物78との間に相対変位が生じると、工作物78において材料の削り残し、削りすぎなどが発生して加工誤差となる。そのため、数値制御工作機械99の加工精度を評価する上で最も重要となる箇所は、X軸およびZ軸においては工具76の先端となり、Y軸においては工作物78の加工点となる。
図2は、実施の形態1に係る数値制御工作機械99の軸であるX軸サーボ制御装置101の構成例を示す模式図である。ここでは、便宜上、X軸サーボ制御装置101のみを例に示しているが、Y軸およびZ軸のサーボ制御装置についても同様の構成である。ただし、X軸およびZ軸の被駆動体は工具76であるのに対して、Y軸の被駆動体は工作物78である点が異なる。X軸と工具76との間にはZ軸が存在するが、X軸の駆動方向とZ軸の駆動方向とは直交しており相互に干渉しない。そのため、X軸から見たときZ軸は独立した構造部材の1つとみなせるので、図示しない。
X軸サーボ制御装置101において、モータ71の回転運動は、カップリング74を介して送りねじ73に伝達され、ナット80を介して直進運動に変換される。送りねじ73の直進運動は、支持軸受75a,75bにより拘束されている。ナット80の直進運動は、工具76とナット80との間に介在するZ軸、支持部材などを総称した機械構造部材72を介して、工具76をX方向に駆動する。
X軸の位置指令Xcは、指令値演算部9から出力され、コントローラ部6aに入力される。位置指令Xcは、指令値演算部9で演算された、所望の制御状態における被駆動体の位置を示すものである。コントローラ部6aは、モータ71に取り付けられた回転角検出器2により検出されたモータ回転角度に送りねじ73のねじピッチを乗じて得られる検出位置Xdと、位置指令Xcとの誤差が小さくなるようにフィードバック制御を行い、モータ71へモータ電流Imを出力して機械部7aを駆動する。機械部7aには、制御対象である被駆動体が接続されている。ここで、回転角検出器2はモータ71の回転角度のみを検出するが、上述のように回転運動と直進運動とは容易に換算できる。そのため、本実施の形態において、回転角検出器2は、モータ回転角度に送りねじ73のねじピッチを乗じ、X軸サーボ制御装置101の直進運動に変換後の検出位置Xdを出力するものとする。回転角検出器2は、モータ71すなわち検出点に取り付けられた位置検出器である。
図3は、実施の形態1に係るコントローラ部6aの構成例を示すブロック図である。コントローラ部6aは、指令値演算部9から入力される位置指令Xcと、回転角検出器2から入力される検出位置Xdとを用いて、モータ電流Imを出力する。まず、加減算器61aは、位置指令Xcと検出位置Xdとの差分である位置偏差(Xc−Xd)を演算する。位置制御器62は、位置偏差(Xc−Xd)に応じた位置制御を行い、速度指令Vcを生成する。位置制御器62の一例はP(Proportional)制御器である。速度演算器65は、検出位置Xdから検出速度Vdを生成する。速度演算器65の一例は微分演算器である。加減算器61bは、速度指令Vcと検出速度Vdとの差分である速度偏差Vde=Vc−Vdを演算する。速度制御器63は、速度偏差Vdeに応じて速度制御を行い、電流指令Icを生成する。速度制御器63の一例はPI(Proportional Integral)制御器である。加減算器61cは、電流指令Icとモータ電流Imとの差分である電流偏差(Ic−Im)を演算する。最後に、電流制御器64は、電流偏差(Ic−Im)に応じて電流制御を行い、モータ電流Imを出力する。電流制御器64の一例はPI制御器である。
以上のように、コントローラ部6aは、フィードバック制御によって、検出位置Xdが位置指令Xcで示される位置に一致するように制御を行う。しかしながら、数値制御工作機械99では、回転角検出器2の取り付け位置を制御対象である工具76の先端に一致させることができない。そのため、回転角検出器2で検出できない外乱が制御対象に生じる場合、また、外乱にコントローラ部6aのフィードバック制御が追いつかない場合などでは、数値制御工作機械99において、制御対象すなわち工具76の運動に意図しない誤差が生じる。
加工に影響する外乱の例としては、カップリング74、送りねじ73、機械構造部材72などの振動、軸の摩擦力による誤差などが知られている。これらの外乱は、工具76とナット80との間に介在する別の軸の位置、工具76および工作物78の質量、機械の経年変化、送りねじ73およびナット80の摩耗、各可動軸の潤滑油量、気温の変化などによって特性が変化することが知られている。
前述のような使用状況によって外乱が変動するため、数値制御工作機械99において工作物78の加工品位を維持するためには、指令値演算部9において外乱に応じた補正を行う、コントローラ部6aの制御パラメータを適切に変更するなどの制御が必要である。そのためには、数値制御工作機械99の稼働中において継続的に制御対象に発生する誤差を予測できることが好ましい。
図4は、実施の形態1に係るシステム同定を行うサーボ制御装置100の構成例を示すブロック図である。サーボ制御装置100は、評価点センサ1aと、参照点センサ1bと、回転角検出器2と、第一の伝達関数演算部4aと、第二の伝達関数演算部4bと、シミュレーション部5と、コントローラ部6aと、機械部7aと、剛性値保持部8と、指令値演算部9と、を備える。サーボ制御装置100は、機械部7aを駆動する1つ以上のモータ71に対して、被駆動体である工具76の位置が位置指令Xcに追従するように、回転角検出器2で検出された被駆動体の位置を示す検出位置Xdをフィードバックし、コントローラ部6aでモータ71を制御する。
サーボ制御装置100は、2つの3軸加速度センサを備える。サーボ制御装置100は、上記構成により、作業中の機械の動特性が測定可能となる。2つの3軸加速度センサは同一種類の加速度センサであるが、便宜上、評価点センサ1a、および参照点センサ1bと区別して呼ぶこととする。3軸加速度センサの取り付け位置は、図2に示すように、評価点センサ1aは数値制御工作機械99の工具76の取り付け部である主軸端面83に取り付けられ、参照点センサ1bはナット80の支持部材であるナットブロック79に取り付けられる。評価点センサ1aの取り付け位置を評価点とし、参照点センサ1bの取り付け位置を参照点とする。評価点センサ1aを第一の検出部と称し、参照点センサ1bをする第二の検出部と称することがある。評価点は、制御対象と一致させることが好ましいが、X軸の場合は工具76が回転するため、ここに加速度センサを取り付けると正しく加速度が測定できない。そのため、X軸においては、工具76に最も近い非回転部分である主軸端面83を評価点とする。一方、Y軸であれば、工作物78は回転しないため、加工点に最も近い工作物78またはワークテーブル77の上面を評価点とし、加速度センサを設置すればよい。また、評価点は、制御対象と発生する誤差量が同一とみなせる部材上であれば、任意の場所に変更してもよい。このように、評価点は、被駆動体または被駆動体に応じた位置に設定される。
3軸加速度センサは、1つのセンサで直交する3軸方向の加速度を測定することが可能であるため、1つの3軸加速度センサを用いることで3次元内での加速度を測定することができる。ただし、X軸サーボ制御装置101でシステム同定に使用するのは駆動方向であるX方向の加速度信号のみであるので、1軸加速度センサで代用しても差し支えない。また、評価点には3軸加速度センサを設置し、X軸とZ軸サーボ制御装置においてそれぞれX方向、Z方向の信号を使用し、参照点にはそれぞれの軸毎に1軸加速度センサを設置してもよい。複数の軸を有する数値制御工作機械99において、軸毎に異なる参照点を選定してもよい。
サーボ制御装置100において、3軸加速度センサの取り付けには、例えば、マグネットによる磁力を用いた接着、ジグとネジを用いた締結、ワックスによる固定、接着剤を用いた固定方法がある。本実施の形態では、評価点センサ1aおよび参照点センサ1bに3軸加速度センサを利用した例を示したが、評価点および参照点の運動を計測できれば、レーザドップラー振動計のような速度計測器、レーザ変位センサ、レーザ干渉計のような変位計測器を用いてもよい。
参照点は、モータ71と評価点との間の駆動力が伝達される経路上であれば、いずれの場所に設定してもよい。ただし、カップリング74、送りねじ73などは回転運動を行う。そのため、カップリング74、送りねじ73などの部材上に参照点を設定する場合には、3軸加速度センサの代わりに、カップリング74、送りねじ73などに回転角検出器を取り付けて回転角から角加速度を演算する、または、角加速度を直接測定可能なジャイロセンサを設置する必要がある。
図2に示すように、X軸サーボ制御装置101では、コントローラ部6aが、指令値演算部9で生成された位置指令Xcに応じてフィードバック制御を行い、機械部7aを駆動する。このとき、評価点センサ1aは、評価点のX方向の加速度信号を検出する。また、参照点センサ1bは、参照点のX方向の加速度信号を検出する。評価点センサ1aおよび参照点センサ1bは、被駆動体の運動状態を示すものであれば、加速度以外を検出してもよい。評価点センサ1aおよび参照点センサ1bで検出される被駆動体の運動状態を示すものを状態量と称することがある。
第一の伝達関数演算部4aには、機械部7aに取り付けられた評価点センサ1aおよび参照点センサ1bのX方向の加速度信号が入力される。また、第二の伝達関数演算部4bには、参照点センサ1bのX方向の加速度信号、およびモータ71に取り付けられた回転角検出器2から出力される検出位置Xdが入力される。第一の伝達関数演算部4aは、参照点センサ1bから取得した加速度信号である参照点加速度Arと、評価点センサ1aから取得した加速度信号である評価点加速度Aeとを用いて、参照点位置Xrから評価点位置Xeまでの周波数応答特性である第一の伝達関数FRF1(s)=Xe(s)/Xr(s)を演算する。ただし、sはラプラス演算子である。第二の伝達関数演算部4bは、回転角検出器2で検出された検出位置Xdを2階微分して得られた検出加速度Adと、参照点センサ1bから取得した参照点加速度Arとを用いて、検出位置Xdから参照点位置Xrまでの周波数応答特性である第二の伝達関数FRF2(s)=Xr(s)/Xd(s)を演算する。ここで、第一の伝達関数演算部4aおよび第二の伝達関数演算部4bで演算される伝達関数の一例は、式(1)のように表される。伝達関数の次数を決定するnおよびmは整数であり、a,…,aおよびb,…,bは、伝達関数の各次数の項の係数である。
Figure 2020217597
機械構造部材72が完全な剛体であればXd=Xr=Xeとなるが、現実の機械構造は完全な剛体では近似できないため、各点における振動伝達特性、および応答特性が異なる。ただし、伝達関数演算のアルゴリズムは、最小二乗法、逐次最小二乗法、ARX(Auto Regressive with eXogenous)同定、固有値分解などの既知の時系列の入力信号および出力信号を1つずつ有する1入力1出力システムの伝達関数演算アルゴリズムのいずれを使用してもよい。
シミュレーション部5は、第一の伝達関数FRF1(s)、第二の伝達関数FRF2(s)、および剛性値保持部8にあらかじめ保存されている剛性値パラメータKdrを用いて、指令値演算部9から入力される時々刻々の位置指令Xcに対する評価点推定位置Xeおよび検出点推定位置Xdを演算し、表示器10に出力する。ここで、剛性値パラメータKdrは、あらかじめ測定されて剛性値保持部8に保存されている、検出位置Xdと参照点位置Xrとの間の剛性値である。剛性値パラメータKdrは、スカラー量である。
図5は、実施の形態1に係るシミュレーション部5の構成例を示すブロック図である。シミュレーション部5は、コントローラ模擬部51と、検出点推定位置演算部53と、参照点推定位置演算部54と、駆動反力推定部55と、評価点推定位置演算部56と、シミュレーションパラメータ設定部57と、加減算器61eと、を備える。コントローラ部6aを模擬したコントローラ模擬部51は、位置指令Xcおよび検出点推定位置Xdを用いて、モータトルク推定値Tmを演算する。図6は、実施の形態1に係るコントローラ模擬部51の構成例を示すブロック図である。コントローラ模擬部51において、コントローラ部6aとの差異は、フィードバック信号として検出位置Xdの代わりに検出点推定位置Xdを使用する点、および電流制御器64の出力Imに対してトルク推定器70により演算されたモータトルク推定値Tmを出力する点である。このように、コントローラ模擬部51は、検出位置Xdの挙動が推定された検出点推定位置Xdをフィードバックとし、コントローラ部6aを模擬してモータ71への指令トルク推定値であるモータトルク推定値Tmを生成する。モータトルク推定値Tmの一例は、モータ71のトルク定数の推定値である。
図5の説明に戻る。加減算器61eは、指令トルク推定値であるモータトルク推定値Tmと駆動反力推定値Trとの差分から有効トルク推定値(Tm−Tr)を演算する。検出点推定位置演算部53は、有効トルク推定値(Tm−Tr)を用いて、検出点推定位置Xdを演算する。参照点推定位置演算部54は、第二の伝達関数FRF2(s)および検出点推定位置Xdを用いて、参照点の挙動を推定した参照点推定位置Xrを演算する。評価点推定位置演算部56は、第一の伝達関数FRF1(s)および参照点推定位置Xrを用いて、評価点の挙動を推定した評価点推定位置Xeを演算する。駆動反力推定部55は、検出点推定位置Xd、参照点推定位置Xr、および剛性値パラメータKdrを用いて、駆動反力推定値Trを演算する。
シミュレーション部5は、上記構成により、検出位置Xdと被駆動体との間の2点間の相対運動軌跡を測定することが可能となる。シミュレーション部5は、第一の伝達関数FRF1(s)および第二の伝達関数FRF2(s)を用いた評価点および参照点の演算方法について、時間領域の入力信号をラプラス変換し、周波数領域において伝達関数を乗じた後に、逆ラプラス変換において時間領域の出力を演算してもよいし、コントローラ部6aの演算周期で、Tustin変換などの双一次変換法を用いて、伝達関数を離散系の差分方程式で記述し、入力信号に対する出力信号を演算してもよい。
本実施の形態では、評価点における運動方向の運動のみを演算の対象としたが、例えば、モータ電流Imから評価点のY方向およびZ方向のような駆動方向と直交する方向の加速度までの伝達関数を演算しておき、シミュレーション部5においてモータ電流Imから評価点のY方向およびZ方向の推定位置を演算してもよい。
図7は、実施の形態1に係る駆動反力推定部55の構成例を示すブロック図である。加減算器61dは、参照点推定位置Xrと検出点推定位置Xdとの差分(Xd−Xr)を演算する。乗算器67は、剛性値パラメータKdrを差分(Xd−Xr)に乗じ駆動反力推定値Trを演算する。一方で、駆動反力推定部55は、剛性値パラメータKdrの代わりに、検出位置Xdと参照点位置Xrとの差分(Xd−Xr)に対する駆動反力Trの伝達特性が記述された伝達関数を使用してもよい。剛性値パラメータKdrは、事前に参照点に負荷を加え、加えた負荷力の大きさとその時の参照点および検出点の変位量から計算できる。
図5の説明に戻る。シミュレーションパラメータ設定部57は、第一の伝達関数FRF1(s)を評価点推定位置演算部56に設定し、第二の伝達関数FRF2(s)を参照点推定位置演算部54に設定し、剛性値パラメータKdrを駆動反力推定部55に設定する。シミュレーションパラメータ設定部57がパラメータを設定するタイミングは、連続する任意時間のタイミングであってもよいし、モータ71が完全に停止しているタイミングを検知して設定してもよい。また、シミュレーションパラメータ設定部57が設定するパラメータの値は、不連続な値を設定してもよいし、パラメータの変動が連続的になるように補間またはある時定数を持って変化させてもよい。
表示器10は、シミュレーション部5から出力された評価点推定位置Xeおよび検出点推定位置Xdを、機械を操作する機械オペレータに提示するためのビデオモニタである。表示器10は、例えば、数値制御工作機械99の軸毎の検出点推定位置Xdに対する評価点推定位置Xeの誤差量を表示することで、数値制御工作機械99で発生する誤差量を提示することができる。また、表示器10は、X軸、Y軸、およびZ軸で同期制御を行った際の検出点位置での運動軌跡および評価点推定位置Xeでの運動軌跡を2次元平面または3次元空間上にプロットすることで、機械全体でどのような加工誤差が発生したかを機械オペレータに提示できる。これにより、機械オペレータは、表示器10に表示された内容を確認することで加工の良否を判定し、誤差が発生した箇所に対して修正加工し、または加工プログラムを修正することができ、誤差抑制が可能となる。
サーボ制御装置100の動作を、フローチャートを用いて説明する。図8は、実施の形態1に係るサーボ制御装置100の動作を示すフローチャートである。サーボ制御装置100において、評価点センサ1aは、評価点の状態量を検出する(ステップS1)。参照点センサ1bは、参照点の状態量を検出する(ステップS2)。第一の伝達関数演算部4aは、評価点の状態量および参照点の状態量を用いて、参照点から評価点までの周波数応答特性である第一の伝達関数FRF1(s)を演算する(ステップS3)。第二の伝達関数演算部4bは、参照点の状態量および検出位置Xdを用いて、検出位置Xdから参照点までの周波数応答特性である第二の伝達関数FRF2(s)を演算する(ステップS4)。シミュレーション部5は、第一の伝達関数FRF1(s)、第二の伝達関数FRF2(s)、位置指令Xc、および検出位置Xdと参照点との間の剛性値を示す剛性値パラメータKdrを用いて、評価点の推定位置を示す評価点推定位置Xe、および検出位置Xdの推定位置を示す検出点推定位置Xdを演算する(ステップS5)。
つづいて、サーボ制御装置100のハードウェア構成について説明する。サーボ制御装置100において、評価点センサ1a、参照点センサ1b、および回転角検出器2は、計測器である。機械部7aは、アクチュエータなどを備える機器である。剛性値保持部8は、メモリである。第一の伝達関数演算部4a、第二の伝達関数演算部4b、シミュレーション部5、コントローラ部6a、および指令値演算部9は、処理回路により実現される。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサおよびメモリであってもよいし、専用のハードウェアであってもよい。
図9は、実施の形態1に係るサーボ制御装置100が備える処理回路をプロセッサおよびメモリで構成する場合の例を示す図である。処理回路がプロセッサ91およびメモリ92で構成される場合、サーボ制御装置100の処理回路の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ92に格納される。処理回路では、メモリ92に記憶されたプログラムをプロセッサ91が読み出して実行することにより、各機能を実現する。すなわち、処理回路は、サーボ制御装置100の処理が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ92を備える。また、これらのプログラムは、サーボ制御装置100の手順および方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
ここで、プロセッサ91は、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、またはDSP(Digital Signal Processor)などであってもよい。また、メモリ92には、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)などが該当する。
図10は、実施の形態1に係るサーボ制御装置100が備える処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の例を示す図である。処理回路が専用のハードウェアで構成される場合、図10に示す処理回路93は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。サーボ制御装置100の各機能を機能別に処理回路93で実現してもよいし、各機能をまとめて処理回路93で実現してもよい。
なお、サーボ制御装置100の各機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、処理回路は、専用のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、システム同定を行うサーボ制御装置100は、直接評価点の位置を測定できない場合においても、2つの加速度センサおよび回転角検出器2を用いて伝達関数を演算し、演算した伝達関数および位置指令Xcを用いて、高精度に評価点の時々刻々の位置を推定することができる。サーボ制御装置100は、加速度センサである評価点センサ1aおよび参照点センサ1bの信号と、位置検出器である回転角検出器2の信号を2つ以上の帯域に分岐し、較正することで、高精度に被駆動体の運動軌跡を測定することができるようになる。
サーボ制御装置100は、数値制御工作機械、産業用機械、ロボット、搬送機などの軌跡制御を行う機械において、簡易なセットアップで、機械の特性を同定し、制御対象の軌跡誤差を模擬するためのシステム同定ができる。また、サーボ制御装置100は、制御対象である評価点の状態測定に加速度計を用いるため、使用中の機械においても工作物78、工具76などを外さずに測定できる。
実施の形態2.
実施の形態2では、サーボ制御装置においてフルクローズドループ制御を行う場合について説明する。
図11は、実施の形態2に係るシステム同定を行うサーボ制御装置100bの構成例を示す図である。実施の形態2のサーボ制御装置100bにおいて、実施の形態1のサーボ制御装置100との差異は、検出位置の入力として回転角検出器2の代わりに直動位置検出器21を使用する点、実施の形態1とは構成の異なる機械部7bを使用する点、および機械部7bの制御にコントローラ部6bを使用する点である。
図12は、実施の形態2に係る数値制御工作機械99の軸であるX軸サーボ制御装置101bの構成例を示す模式図である。X軸サーボ制御装置101bは、ナットブロック79の直動位置を検出するリニアエンコーダと呼ばれる直動位置検出器21を備える。X軸サーボ制御装置101bのような機械構成をフルクローズドループ制御と呼ぶ。
図13は、実施の形態2に係るコントローラ部6bの構成例を示すブロック図である。フルクローズドループ制御のサーボ制御装置100bでは、コントローラ部6bは、直動位置検出器21の信号を位置フィードバック信号に使用し、回転角検出器2の信号を速度フィードバック信号に使用する。その他はコントローラ部6aと同じである。図11から図13では、直動位置検出器21の信号、すなわち直動位置検出器21で検出される検出位置をXlとして表している。
実施の形態2においては、図12に示すように、評価点の位置は実施の形態1と同じであるが、機械部7bの検出点の位置は直動位置検出器21の取り付け位置となる。また、参照点の位置は検出点と評価点との間の機械構造部材72の表面に設置される。使用するセンサの取り付け位置が異なるだけであるので、第一の伝達関数演算部4a、第二の伝達関数演算部4b、およびシミュレーション部5の作用は実施の形態1と同じである。
実施の形態2においては、回転モータであるモータ71および送りねじ73で駆動されるサーボ制御装置100bへの適用を例に記述したが、アクチュエータにリニアモータを用いたサーボ制御装置のように、回転モータを有しない構成においても本実施の形態を適用することは可能である。
サーボ制御装置100bの動作の流れ、およびハードウェア構成は、実施の形態1のサーボ制御装置100と同様である。
以上説明したように、本実施の形態によれば、システム同定を行うサーボ制御装置100bは、フルクローズドループ制御の場合においても、高精度に評価点の時々刻々の位置を推定することができる。サーボ制御装置100bは、上記構成により、セミクローズドループ制御、フルクローズドループ制御のいずれの制御方式にも適用可能となる。
実施の形態3.
実施の形態1および実施の形態2では、直進軸であるサーボ制御装置への適用例を示したが、数値制御工作機械では回転軸を有する場合がある。実施の形態3では、回転軸であるサーボ制御装置に適用する場合について説明する。
図14は、実施の形態3に係るサーボ制御装置100cの構成例を示す模式図である。実施の形態3のサーボ制御装置100cにおいて、実施の形態1のサーボ制御装置100との差異は、実施の形態1とは構成の異なる機械部7cを使用する点である。モータ71は、ウォームギア81によって回転運動が減速され、回転テーブル82を回転運動させる。図14に示すサーボ制御装置100cの回転軸では、機械構造部材72の上に工作物78を設置するため、この回転軸における評価点は機械構造部材72上となる。また、図14に示すサーボ制御装置100cにおいて、参照点は、回転テーブル82の円周上の1点とする。なお、サーボ制御装置100cにおいて、回転テーブル82の回転方向は、図14の矢印84で示される方向とする。
図14に示すサーボ制御装置100cにおいて、回転軸は回転運動をするため、評価点および参照点における運動方向は、回転運動の円周方向となる。そのため、直交3軸の加速度センサでは、参照点および評価点の回転運動を正しく測定することが難しい。実施の形態3では、加速度センサの代わりに回転運動を検出可能なジャイロセンサ1cを評価点に設置し、同様のジャイロセンサ1dを参照点に設置し、円周方向の角加速度を測定する。以上により実施の形態1に示したシステム同定方式を適用することが可能となる。
また、図14に示すようなサーボ制御装置100cの構成では、ジャイロセンサを使用する他に、回転中心の点対称となる位置に2つの加速度センサを設置することで、円周方向の運動を正確に測定する方式も公知であるが、円周方向の各加速度が測定できる方式や計測器であれば、この限りではない。
ウォームギア駆動の他に、ダイレクトドライブ方式と呼ばれる、直進軸ではリニアモータ駆動のサーボ制御装置に相当する機械構成もあるが、同様に本発明を適用可能である。
サーボ制御装置100cの動作の流れ、およびハードウェア構成は、実施の形態1のサーボ制御装置100と同様である。
以上説明したように、本実施の形態によれば、システム同定を行うサーボ制御装置100cは、回転軸を有する場合においても、高精度に評価点の時々刻々の位置を推定することができる。
実施の形態4.
実施の形態4では、コントローラ部6aの制御パラメータを変更する場合について説明する。
図15は、実施の形態4に係るシステム同定を行うサーボ制御装置100dの構成例を示す図である。実施の形態4のサーボ制御装置100dは、実施の形態1のサーボ制御装置100に制御パラメータ変更部11を追加したものである。
制御パラメータ変更部11は、シミュレーション部5で演算された評価点推定位置Xeおよび検出点推定位置Xdを用いて、コントローラ部6aの制御パラメータCPを変更する。すなわち、制御パラメータ変更部11は、被駆動体の運動精度が目標値以内になるようにコントローラ部6aの制御パラメータCPを変更する。具体的には、制御パラメータ変更部11は、コントローラ部6aの各制御器の制御ゲインを変更する。制御パラメータ変更部11は、例えば、評価点推定位置Xeと検出点推定位置Xdとの差分がある閾値以上になった場合、位置制御器62のPゲインを下げるなどの制御を行う。制御パラメータ変更部11は、同様に速度制御器63のPゲインまたはIゲインを変更してもよい。なお、制御パラメータ変更部11は、評価点推定位置Xeのみを用いて、コントローラ部6aの制御パラメータCPを変更してもよい。
サーボ制御装置100dの動作を、フローチャートを用いて説明する。図16は、実施の形態4に係るサーボ制御装置100dの動作を示すフローチャートである。ステップS1からステップS5までの動作は、図8のフローチャートに示す実施の形態1のサーボ制御装置100の動作と同様である。サーボ制御装置100dにおいて、制御パラメータ変更部11は、評価点推定位置Xe、または評価点推定位置Xeおよび検出点推定位置Xdを用いて、被駆動体である工具76の運動精度が目標値以内になるようにコントローラ部6aの制御パラメータCPを変更する(ステップS11)。コントローラ部6aは、制御パラメータ変更部11によって変更された制御パラメータCPを用いて、電流偏差(Ic−Im)に応じて電流制御を行い、モータ電流Imを出力する(ステップS12)。
サーボ制御装置100dのハードウェア構成について、制御パラメータ変更部11は、シミュレーション部5などと同様、処理回路により実現される。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサおよびメモリであってもよいし、専用のハードウェアであってもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、システム同定を行うサーボ制御装置100dは、評価点の時々刻々の位置を推定した結果に基づいて、コントローラ部6aの制御パラメータCPを変更することで、実際の制御を高精度化することができる。サーボ制御装置100dは、制御パラメータ変更部11により、適応的に制御パラメータの変更が可能となり、制御を最適化できる。
実施の形態5.
実施の形態5では、コントローラ部に対する補正指令を演算する場合について説明する。
図17は、実施の形態5に係るシステム同定を行うサーボ制御装置100eの構成例を示す図である。実施の形態5のサーボ制御装置100eは、実施の形態1のサーボ制御装置100に対して、コントローラ部6aの代わりにコントローラ部6eを有し、さらに補正指令演算部12を追加したものである。
補正指令演算部12は、シミュレーション部5で演算された評価点推定位置Xeおよび検出点推定位置Xd、さらに指令値演算部9で演算された位置指令Xcを用いて、コントローラ部6eへの位置補正指令Xcmp、速度補正指令Vcmp、および電流補正指令Icmpを演算し、コントローラ部6eに出力する。図18は、実施の形態5に係る補正指令演算部12の構成例を示すブロック図である。まず、検出点位置ゲイン乗算部69aは、検出点推定位置Xdに検出点位置ゲインKpを乗じたKp×Xdを演算する。加減算器61fは、評価点推定位置Xeと検出点位置ゲイン乗算部69aで演算されたKp×Xdとの差分(Xe−Kp×Xd)を演算する。次に、位置指令ゲイン乗算部69bは、位置指令Xcに位置指令ゲインKcを乗じたKc×Xcを演算する。加減算器61gは、加減算器61fで演算された差分(Xe−Kp×Xd)と位置指令ゲイン乗算部69bで演算されたKc×Xcとの差分(Xe−Kp×Xd−Kc×Xc)を演算する。
次に、フィルタ部68は、特定の周波数成分についてフィルタリングし、補正指令を演算する。フィルタ部68は、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ、バンドエリミネイトフィルタのいずれか、またはこれらの組み合わせである。位置補正ゲイン乗算部69cは、フィルタ部68で演算された補正指令に位置補正ゲインを乗じた値を位置補正指令Xcmpとして出力する。速度演算器65は、フィルタ部68で演算された補正指令を速度の次元に演算する。速度演算器65の一例は微分器である。速度補正ゲイン乗算部69dは、速度演算器65で演算された速度の次元の補正指令に速度補正ゲインを乗じた値を速度補正指令Vcmpとして出力する。加速度演算器66は、フィルタ部68で演算された補正指令を加速度の次元に演算する。加速度演算器66の一例は2階微分器である。電流補正ゲイン乗算部69eは、加速度演算器66で演算された加速度の次元の補正指令に電流補正ゲインを乗じた値を電流補正指令Icmpとして出力する。
なお、各種ゲインは定数値であり、0を含む実数である。例えば、補正指令演算部12から位置補正指令Xcmpのみ出力する場合は、速度補正ゲインおよび電流補正ゲインを0に設定すればよい。なお、補正指令演算部12は、評価点推定位置Xeのみを用いて、コントローラ部6eへの位置補正指令Xcmp、速度補正指令Vcmp、および電流補正指令Icmpを演算し、コントローラ部6eに出力してもよい。また、補正指令演算部12は、位置補正指令Xcmp、速度補正指令Vcmp、および電流補正指令Icmpのうち少なくとも1つを演算し、コントローラ部6eに出力してもよい。
コントローラ部6eは、補正指令演算部12から各補正指令を受け取り、フィードバック制御を行う。図19は、実施の形態5に係るコントローラ部6eの構成例を示すブロック図である。実施の形態1のコントローラ部6aとの差異は、加減算器61a、加減算器61b、および加減算器61cの演算内容である。具体的には、加減算器61aは、位置指令Xc、検出位置Xd、および位置補正指令Xcmpから位置偏差(Xc−Xd+Xcmp)を演算する。また、加減算器61bは、速度指令Vc、検出速度Vd、および速度補正指令Vcmpから速度偏差Vde=Vc−Vd+Vcmpを演算する。また、加減算器61cは、電流指令Ic、モータ電流Im、および電流補正指令Icmpから電流偏差(Ic−Im+Icmp)を演算する点である。
サーボ制御装置100eの動作を、フローチャートを用いて説明する。図20は、実施の形態5に係るサーボ制御装置100eの動作を示すフローチャートである。ステップS1からステップS5までの動作は、図8のフローチャートに示す実施の形態1のサーボ制御装置100の動作と同様である。サーボ制御装置100eにおいて、補正指令演算部12は、補正指令を演算する(ステップS21)。具体的には、補正指令演算部12は、評価点推定位置Xe、または評価点推定位置Xeおよび検出点推定位置Xdを用いて、コントローラ部6eへの位置補正指令Xcmp、速度補正指令Vcmp、および電流補正指令Icmpのうち少なくとも1つを演算する。コントローラ部6eは、補正指令演算部12で演算された補正指令を用いて、モータ電流Imを出力する(ステップS22)。具体的には、コントローラ部6eは、位置補正指令Xcmp、速度補正指令Vcmp、および電流補正指令Icmpのうち少なくとも1つを用いて、電流偏差(Ic−Im+Icmp)に応じて電流制御を行い、モータ電流Imを出力する。
サーボ制御装置100eのハードウェア構成について、補正指令演算部12は、シミュレーション部5などと同様、処理回路により実現される。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサおよびメモリであってもよいし、専用のハードウェアであってもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、システム同定を行うサーボ制御装置100eは、シミュレーションによって推定した評価点推定位置Xeに応じて補正指令を生成することで、高精度な運動を実現できる。サーボ制御装置100eは、上記構成により、補正指令を生成し、直接フィードバックすることで高精度に補正可能となる。
実施の形態6.
実施の形態6では、システム同定を行うサーボ制御装置が、物理的に離れた場所に分散して設置される場合について説明する。
図21は、実施の形態6に係るシステム同定を行うサーボ制御装置100fの構成例を示す図である。サーボ制御装置100fにおいて、実施の形態5のサーボ制御装置100eとの差異は、センサ信号送信部30、補正指令送信部31、センサ信号受信部32、補正指令受信部33、およびシミュレーション指令値演算部90を有する点である。
センサ信号送信部30は、数値制御工作機械99に設置される第一の送信部である。センサ信号送信部30は、評価点センサ1aから加速度信号である評価点加速度Aeを取得し、参照点センサ1bから加速度信号である参照点加速度Arを取得し、回転角検出器2で検出された検出位置Xdを取得する。センサ信号送信部30は、取得した評価点加速度Ae、参照点加速度Ar、および検出位置Xdを、ネットワークを介して遠隔地に設置されたセンサ信号受信部32へ送信する。センサ信号受信部32は、評価点加速度Ae、参照点加速度Ar、および検出位置Xdを受信すると、評価点加速度Aeおよび参照点加速度Arを第一の伝達関数演算部4aに出力し、参照点加速度Arおよび検出位置Xdを第二の伝達関数演算部4bに出力する第一の受信部である。センサ信号送信部30およびセンサ信号受信部32は、ネットワークケーブルにより物理的に接続されていてもよいし、無線ネットワーク通信によって接続されていてもよいし、ネットワークケーブルおよび無線ネットワーク通信の組み合わせによって接続されていてもよい。
補正指令送信部31は、補正指令演算部12から位置補正指令Xcmp、速度補正指令Vcmp、および電流補正指令Icmpのうち少なくとも1つを取得し、ネットワークを介して遠隔地に設置された補正指令受信部33に送信する第二の送信部である。補正指令受信部33は、位置補正指令Xcmp、速度補正指令Vcmp、および電流補正指令Icmpのうち少なくとも1つを受信すると、コントローラ部6eに出力する第二の受信部である。補正指令送信部31および補正指令受信部33は、ネットワークケーブルにより物理的に接続されていてもよいし、無線ネットワーク通信によって接続されていてもよいし、ネットワークケーブルおよび無線ネットワーク通信の組み合わせによって接続されていてもよい。
シミュレーション部5が遠隔地に設置される場合、シミュレーション部5が指令値演算部9の指令値を受け取ってから評価点推定位置Xeを演算し、補正指令演算部12が補正指令を演算していると、通信の遅延の影響によって、コントローラ部6eにおいて補正指令の入力タイミングが遅れるという問題がある。そのため、シミュレーション部5および補正指令演算部12は、指令値演算部9と同じ位置指令Xcを演算するシミュレーション指令値演算部90を用いて事前に演算を行う。補正指令送信部31は、補正指令演算部12で事前に演算された補正指令を送信する。補正指令の送信について、全ての位置指令Xcに対する補正指令を補正指令演算部12で事前に全て行った後、補正指令送信部31が、まとめて送信してもよい。また、補正指令が適切なタイミングで補正指令受信部33に到着するように、指令値演算部9に対してシミュレーション指令値演算部90を早いタイミングで起動して補正指令演算部12で補正指令を演算し、補正指令送信部31が、時々刻々の補正指令を都度送信してもよい。また、指令値演算部9およびシミュレーション指令値演算部90を同時に起動し、シミュレーション部5および補正指令演算部12が実時間よりも早い処理周期で演算することで、補正指令送信部31が、時々刻々の補正指令を都度送信してもよい。
サーボ制御装置100fの動作の流れは、実施の形態1のサーボ制御装置100と同様である。サーボ制御装置100fのハードウェア構成について、センサ信号送信部30および補正指令送信部31は、無線通信または有線通信を行う送信機である。また、センサ信号受信部32および補正指令受信部33は、無線通信または有線通信を行う受信機である。
以上説明したように、本実施の形態によれば、システム同定を行うサーボ制御装置100fは、物理的に離れた場所に分散して設置する場合においても、遅延なく適切なタイミングで補正指令を用いた制御を行うことができる。
実施の形態7.
実施の形態1から6においては、1入力1出力、いわゆるSISO(Single Input Single Output)の古典的な伝達関数演算アルゴリズムを有する伝達関数演算部を使用した例について説明した。実施の形態7では、機械学習により多入力多出力、いわゆるMIMO(Multi Input Multi Output)の伝達関数を算出する方法について説明する。
図22は、実施の形態7に係るシステム同定を行うサーボ制御装置100gの構成例を示すブロック図である。実施の形態7のサーボ制御装置100gは、実施の形態1のサーボ制御装置100に対して、第一の伝達関数演算部4aおよび第二の伝達関数演算部4bの代わりに学習部13gを有し、さらにシミュレーション部5の代わりにシミュレーション部5gを有するものである。
学習部13gが用いる機械学習アルゴリズムについては、どのようなものを用いてもよい。本実施の形態では、一例として、深層学習、すなわちDL(Deep Learning)を適用した場合について説明する。図23は、実施の形態7に係る学習部13gの構成例を示すブロック図である。学習部13gには、評価点加速度Ae、参照点加速度Ar、および検出位置Xdが入力される。評価点加速度Aeは、評価点センサ1aの取り付け位置である評価点の状態量である。参照点加速度Arは、参照点センサ1bの取り付け位置である参照点の状態量である。検出位置Xdは、コントローラ部6aで取得される、アクチュエータであるモータ71の状態量である。学習部13gは、評価点の状態量、参照点の状態量、およびコントローラ部6aで取得されるアクチュエータの状態量を状態変数として観測し、状態変数に基づいて作成される訓練データセットに従って学習を行う。学習部13gは、入力されたデータを予め設定された学習周期毎にサンプリングし、訓練データセットとして学習に使用する。学習部13gは、評価点の状態量、参照点の状態量、およびアクチュエータの状態量である検出位置Xdを訓練データセットに使用して、検出位置Xdを入力とし、評価点の状態量、および参照点の状態量を出力とするシステムモデルを学習する。学習部13gは、ニューラルネットワーク部91gと、損失関数演算部92gと、オプティマイザ部93gと、AI(Artificial Intelligence)モデル出力部94gと、を備える。
学習部13gは、訓練データセット、すなわち評価点加速度Ae、参照点加速度Ar、および検出位置Xdを用いて、評価点加速度Ae、および参照点加速度Arについて、予め定められた時刻である一定時刻先の学習評価点加速度AeM、および学習参照点加速度ArMを予測するためのシステムモデルとして、ネットワーク構造パラメータMdl1の学習を実施する。具体的には、ニューラルネットワーク部91gは、ネットワーク構造パラメータMdl1を学習により決定する。ネットワーク構造パラメータMdl1の一例としては、重みパラメータ、バイアスパラメータなどが該当する。ニューラルネットワーク部91gは、訓練データセットを入力とし、ネットワーク構造パラメータMdl1を用いて、ニューラルネットワークの計算、すなわち推論処理を行い、学習評価点加速度AeM、および学習参照点加速度ArMを演算する。ニューラルネットワーク部91gは、演算により求めた学習評価点加速度AeM、および学習参照点加速度ArMを損失関数演算部92gに出力する。
損失関数演算部92gは、実際の評価点加速度Aeおよび参照点加速度Arと、ニューラルネットワーク部91gで演算された学習評価点加速度AeMおよび学習参照点加速度ArMとを入力とし、損失関数Lfを演算する。損失関数演算部92gは、損失関数の実装について、公知の技術で知られているようないずれの損失関数を使用してもよい。最も簡易な損失関数の実装としては、推定値と実測値の差分の二乗和がある。損失関数演算部92gは、演算により求めた損失関数Lfを、オプティマイザ部93gおよびAIモデル出力部94gに出力する。
オプティマイザ部93gは、損失関数演算部92gで演算により求められた損失関数Lfを用いて、次の学習時に使用するネットワーク構造パラメータMdl1を更新する。オプティマイザ部93gは、誤差逆伝播法とも呼ばれるバックプロパゲーションなどの公知の技術を用いて各パラメータを計算する。
AIモデル出力部94gは、損失関数Lfを入力とし、損失関数Lfの値と予め決められた閾値とを比較する。AIモデル出力部94gは、損失関数Lfの値が予め決められた閾値以下になった場合、ネットワーク構造パラメータMdl1をシミュレーション部5gに出力する。AIモデル出力部94gは、ネットワーク構造パラメータMdl1の出力タイミングについて、予め設定されたモデル更新周期で周期的に出力してもよい。
なお、学習部13gは、コントローラ部6aでサンプリングされる、モータ71の速度または加速度、モータ71に流れるモータ電流などを組み合わせて学習を行う構成であってもよい。
図24は、実施の形態7に係るシミュレーション部5gの構成例を示すブロック図である。シミュレーション部5gは、学習部13gの学習結果を用いて、指令値演算部9から入力される時々刻々の位置指令Xcに対する評価点推定位置Xeおよび検出点推定位置Xdを演算し、表示器10に出力する。実施の形態7のシミュレーション部5gは、実施の形態1のシミュレーション部5に対して、参照点推定位置演算部54および評価点推定位置演算部56の代わりに、AIモデル部58g、2階積分器95、および2階積分器96を有するものである。なお、本実施の形態において、シミュレーションパラメータ設定部57は、学習部13gで学習されたネットワーク構造パラメータMdl1をAIモデル部58gに設定し、剛性値パラメータKdrを駆動反力推定部55に設定する。
AIモデル部58gは、ニューラルネットワーク部91gと同じニューラルネットワーク構造を有する人工知能モデル部である。AIモデル部58gは、評価点加速度Ae、参照点加速度Ar、シミュレーションパラメータ設定部57から設定されたネットワーク構造パラメータMdl1、および検出点推定位置演算部53で演算された検出点推定位置Xdを用いて、ニューラルネットワークの計算、すなわち推論処理を行い、推定評価点加速度Ae1、および推定参照点加速度Ar1を演算する。AIモデル部58gは、推定評価点加速度Ae1を2階積分器95に出力し、推定参照点加速度Ar1を2階積分器96に出力する。
2階積分器95は、入力された推定評価点加速度Ae1を2階積分し、評価点推定位置Xeに変換する。2階積分器96は、入力された推定参照点加速度Ar1を2階積分し、参照点推定位置Xrに変換する。なお、2階積分器95,96の機能をAIモデル部58gが備えるようにしてもよい。この場合、AIモデル部58gは、演算により求めた推定評価点加速度Ae1を2階積分して評価点推定位置Xeに変換、すなわち評価点推定位置Xeを演算する。同様に、AIモデル部58gは、演算により求めた推定参照点加速度Ar1を2階積分して参照点推定位置Xrに変換、すなわち参照点推定位置Xrを演算する。
学習部13gが深層学習を利用して機械学習する場合について説明したが、一例であり、これに限定されない。学習部13gは、他の公知の方法、例えば、Q学習、遺伝的プログラミング、機能論理プログラミング、サポートベクターマシンなどに従って機械学習を実行してもよい。
サーボ制御装置100gの動作を、フローチャートを用いて説明する。図25は、実施の形態7に係るサーボ制御装置100gの動作を示すフローチャートである。ステップS1およびステップS2の動作は、図8のフローチャートに示す実施の形態1のサーボ制御装置100の動作と同様である。サーボ制御装置100gにおいて、学習部13gは、評価点の状態量、参照点の状態量、および検出位置Xdを用いて、ネットワーク構造パラメータMdl1を学習する(ステップS31)。シミュレーション部5gは、評価点の状態量、参照点の状態量、ネットワーク構造パラメータMdl1、位置指令Xc、および剛性値パラメータKdrを用いて、評価点推定位置Xe、および検出点推定位置Xdを演算する(ステップS32)。サーボ制御装置100gのハードウェア構成について、学習部13gおよびシミュレーション部5gは、処理回路により実現される。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサおよびメモリであってもよいし、専用のハードウェアであってもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、システム同定を行うサーボ制御装置100gは、機械学習アルゴリズムを適用することで、人が明示的にモデル構造を設計することなしに、多入力多出力のシステムモデルを得ることができる。なお、実施の形態1を例にして説明したが、一例であり、これに限定されない。本実施の形態については、実施の形態2から6についても適用可能である。
実施の形態8.
実施の形態7では、実施の形態1から6と同様のシミュレーション部のモデル構成を満たすシステムモデルを機械学習によって同定する方法について説明した。実施の形態8では、異なる構造のシミュレーション部のモデルを機械学習によって同定する方法について説明する。
図26は、実施の形態8に係るシステム同定を行うサーボ制御装置100hの構成例を示す図である。実施の形態8のサーボ制御装置100hは、実施の形態7のサーボ制御装置100gに対して、学習部13g、シミュレーション部5g、および剛性値保持部8の代わりに、学習部13h、およびシミュレーション部5hを有するものである。
図27は、実施の形態8に係る学習部13hの構成例を示すブロック図である。学習部13hは、実施の形態7の学習部13gに対して、ニューラルネットワーク部91g、および損失関数演算部92gの代わりに、ニューラルネットワーク部91h、および損失関数演算部92hを有するものである。学習部13hは、評価点の状態量、参照点の状態量、アクチュエータの状態量である検出位置、およびアクチュエータの駆動力を訓練データセットに使用して、検出位置を入力とし、評価点の状態量、および駆動反力推定値を出力とするシステムモデルを学習する。学習部13hは、ニューラルネットワーク部91hと、損失関数演算部92hと、オプティマイザ部93hと、AIモデル出力部94hと、を備える。
学習部13hは、訓練データセット、すなわち評価点加速度Ae、参照点加速度Ar、検出位置Xd、およびモータ電流Imを用いて、評価点加速度Ae、および駆動反力推定値Trについて、予め定められた時刻である一定時刻先の学習評価点加速度AeM、および学習駆動反力TrMを予測するためのシステムモデルとして、ネットワーク構造パラメータMdl2の学習を実施する。具体的には、ニューラルネットワーク部91hは、ネットワーク構造パラメータMdl2を学習により決定する。ネットワーク構造パラメータMdl2の一例としては、重みパラメータ、バイアスパラメータなどが該当する。ニューラルネットワーク部91hは、訓練データセットを入力とし、ネットワーク構造パラメータMdl2を用いて、ニューラルネットワークの計算、すなわち推論処理を行い、学習評価点加速度AeM、および学習駆動反力TrMを演算する。ニューラルネットワーク部91hは、演算により求めた学習評価点加速度AeM、および学習駆動反力TrMを損失関数演算部92hに出力する。
損失関数演算部92hは、実際の評価点加速度Ae、参照点加速度Arおよび検出位置Xdと、コントローラ部6aで演算されたモータ電流Imと、ニューラルネットワーク部91hで演算された学習評価点加速度AeMおよび学習駆動反力TrMとを入力とし、損失関数Lfを演算する。このとき、損失関数演算部92hは、モータ電流Im、および検出位置Xdを用いて、実行駆動反力演算値Trを以下の式(2)から算出する。
Figure 2020217597
式(2)において、Ktはモータ電流Imからトルクを演算するトルク定数を示し、Jmはモータ71単体でのイナーシャを示す。これにより、損失関数演算部92hは、学習評価点加速度AeM、学習駆動反力Trm、評価点加速度Ae、および実行駆動反力演算値Trを用いて、損失関数Lfを演算することができる。
オプティマイザ部93hは、損失関数演算部92hで演算により求められた損失関数Lfを用いて、次の学習時に使用するネットワーク構造パラメータMdl2を更新する。オプティマイザ部93hは、誤差逆伝播法とも呼ばれるバックプロパゲーションなどの公知の技術を用いて各パラメータを計算する。
AIモデル出力部94hは、損失関数Lfを入力とし、損失関数Lfの値と予め決められた閾値とを比較する。AIモデル出力部94hは、損失関数Lfの値が予め決められた閾値以下になった場合、ネットワーク構造パラメータMdl2をシミュレーション部5hに出力する。AIモデル出力部94hは、ネットワーク構造パラメータMdl2の出力タイミングについて、予め設定されたモデル更新周期で周期的に出力してもよい。
図28は、実施の形態8に係るシミュレーション部5hの構成例を示すブロック図である。実施の形態8のシミュレーション部5hは、実施の形態7のシミュレーション部5gに対して、駆動反力推定部55、AIモデル部58g、および2階積分器96の代わりに、AIモデル部58hを有するものである。なお、本実施の形態において、シミュレーションパラメータ設定部57は、学習部13hで学習されたネットワーク構造パラメータMdl2をAIモデル部58hに設定する。
AIモデル部58hは、ニューラルネットワーク部91hと同じニューラルネットワーク構造を有する人工知能モデル部である。AIモデル部58hは、シミュレーションパラメータ設定部57から入力されたネットワーク構造パラメータMd2、コントローラ模擬部51で演算された推定モータ電流Im、検出点推定位置演算部53で演算された検出点推定位置Xd、および1サンプル前にAIモデル部58hで演算された推定評価点加速度Ae1を用いて、ニューラルネットワークの計算、すなわち推論処理を行い、推定評価点加速度Ae1、および駆動反力推定値Trを演算する。AIモデル部58hは、推定評価点加速度Ae1を2階積分器95に出力し、駆動反力推定値Trを加減算器61eに出力する。
2階積分器95は、入力された推定評価点加速度Ae1を2階積分し、評価点推定位置Xeに変換する。なお、2階積分器95の機能をAIモデル部58hが備えるようにしてもよい。この場合、AIモデル部58hは、演算により求めた推定評価点加速度Ae1を2階積分して評価点推定位置Xeに変換、すなわち評価点推定位置Xeを演算する。
サーボ制御装置100hの動作を示すフローチャートは、図25に示すサーボ制御装置100gのものと同様である。ただし、ステップS32において、シミュレーション部5hが、評価点推定位置Xe、および検出点推定位置Xdを演算する際に、ネットワーク構造パラメータMdl2、および位置指令Xcを用いる点が異なる。サーボ制御装置100hのハードウェア構成について、学習部13hおよびシミュレーション部5hは、処理回路により実現される。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサおよびメモリであってもよいし、専用のハードウェアであってもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、システム同定を行うサーボ制御装置100hは、機械学習によって得られたネットワーク構造パラメータMd2を用いて、AIモデル部58hで推論を行う際、センサデータ、実際のアクチュエータのサンプルデータなどを使用することなく推論を行うことができる。これにより、サーボ制御装置100hは、AIモデル部58hで推論を行う際に通信の遅延を考慮しなくてもよくなるので、シミュレーション部5hを物理的に離れた場所に置くことが可能となる。なお、実施の形態1を例にして説明したが、一例であり、これに限定されない。本実施の形態については、実施の形態2から6についても適用可能である。
以上のように本発明に係るサーボ制御装置は、制御対象である評価点に取り付けた加速度センサの信号と、位置検出器を取り付けた検出点の検出位置から演算した加速度と、検出点と評価点の間に設定された参照点に取り付けられた加速度センサの信号とを用いて、検出点から参照点までの伝達関数と、参照点から評価点までの伝達関数とを演算する。サーボ制御装置は、演算した2つの伝達関数と検出点から参照点までの剛性とを用いて、制御対象の時々刻々の軌跡誤差量を予想することができ、実際の使用状態にある機械の軌跡誤差をジグや工具を外すことなく精度よく測定する方法に適している。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
1a 評価点センサ、1b 参照点センサ、1c,1d ジャイロセンサ、2 回転角検出器、4a 第一の伝達関数演算部、4b 第二の伝達関数演算部、5,5g,5h シミュレーション部、6a,6b,6e コントローラ部、7a,7b,7c 機械部、8 剛性値保持部、9 指令値演算部、10 表示器、11 制御パラメータ変更部、12 補正指令演算部、13g,13h 学習部、21 直動位置検出器、30 センサ信号送信部、31 補正指令送信部、32 センサ信号受信部、33 補正指令受信部、51 コントローラ模擬部、53 検出点推定位置演算部、54 参照点推定位置演算部、55 駆動反力推定部、56 評価点推定位置演算部、57 シミュレーションパラメータ設定部、58g,58h AIモデル部、61a,61b,61c,61d,61e,61f,61g 加減算器、62 位置制御器、63 速度制御器、64 電流制御器、65 速度演算器、66 加速度演算器、67 乗算器、68 フィルタ部、69a 検出点位置ゲイン乗算部、69b 位置指令ゲイン乗算部、69c 位置補正ゲイン乗算部、69d 速度補正ゲイン乗算部、69e 電流補正ゲイン乗算部、70 トルク推定器、71 モータ、72 機械構造部材、73 送りねじ、74 カップリング、75a,75b 支持軸受、76 工具、77 ワークテーブル、78 工作物、79 ナットブロック、80 ナット、81 ウォームギア、82 回転テーブル、83 主軸端面、90 シミュレーション指令値演算部、91g,91h ニューラルネットワーク部、92g,92h 損失関数演算部、93g,93h オプティマイザ部、94g,94h AIモデル出力部、95,96 2階積分器、99 数値制御工作機械、100,100b,100c,100d,100e,100f,100g,100h サーボ制御装置、101,101b X軸サーボ制御装置。

Claims (11)

  1. 制御対象である被駆動体が接続された機械部を駆動する1つ以上のアクチュエータに対して、前記被駆動体の位置が指令値演算部で演算された位置を指示する位置指令に追従するように、検出点に取り付けられた位置検出器で検出された前記被駆動体の位置を示す検出位置をフィードバックし、コントローラ部で前記アクチュエータを制御するサーボ制御装置であって、
    前記被駆動体または前記被駆動体に応じた位置に設定された評価点の状態量を検出する第一の検出部と、
    前記評価点と前記アクチュエータとの間の前記機械部に設定された参照点の状態量を検出する第二の検出部と、
    前記評価点の状態量および前記参照点の状態量を用いて、前記参照点から前記評価点までの周波数応答特性である第一の伝達関数を演算する第一の伝達関数演算部と、
    前記参照点の状態量および前記検出位置を用いて、前記検出位置から前記参照点までの周波数応答特性である第二の伝達関数を演算する第二の伝達関数演算部と、
    前記第一の伝達関数、前記第二の伝達関数、および前記検出位置と前記参照点との間の剛性値を示す剛性値パラメータを用いて、前記評価点の推定位置を演算する第一のシミュレーション部と、
    を備え、
    前記第一のシミュレーション部は、
    前記検出位置の挙動が推定された検出点推定位置をフィードバックとし、前記コントローラ部を模擬して前記アクチュエータへの指令トルク推定値を生成するコントローラ模擬部と、
    前記第二の伝達関数および前記検出点推定位置を用いて、前記参照点の挙動を推定した参照点推定位置を演算する参照点推定位置演算部と、
    前記第一の伝達関数および前記参照点推定位置を用いて、前記評価点の挙動を推定した評価点推定位置を演算する評価点推定位置演算部と、
    前記検出点推定位置、前記参照点推定位置、および前記剛性値パラメータを用いて、駆動反力推定値を演算する駆動反力推定部と、
    前記駆動反力推定値および前記指令トルク推定値から演算される有効トルク推定値を用いて、前記検出点推定位置を演算する検出点推定位置演算部と、
    前記第一の伝達関数を前記評価点推定位置演算部に設定し、前記第二の伝達関数を前記参照点推定位置演算部に設定し、前記剛性値パラメータを前記駆動反力推定部に設定するシミュレータパラメータ設定部と、
    を備えることを特徴とするサーボ制御装置。
  2. 制御対象である被駆動体が接続された機械部を駆動する1つ以上のアクチュエータに対して、前記被駆動体の位置が指令値演算部で演算された位置を指示する位置指令に追従するように、検出点に取り付けられた位置検出器で検出された前記被駆動体の位置を示す検出位置をフィードバックし、コントローラ部で前記アクチュエータを制御するサーボ制御装置であって、
    前記被駆動体または前記被駆動体に応じた位置に設定された評価点の状態量を検出する第一の検出部と、
    前記評価点と前記アクチュエータとの間の前記機械部に設定された参照点の状態量を検出する第二の検出部と、
    前記評価点の状態量、前記参照点の状態量、および前記コントローラ部で取得される前記アクチュエータの状態量である前記検出位置を状態変数として観測し、前記状態変数に基づいて作成される訓練データセットに従って学習を行う学習部と、
    前記学習部の学習結果を用いて、前記評価点の挙動を推定した評価点推定位置、および前記検出位置の挙動を推定した検出点推定位置を演算する第二のシミュレーション部と、
    を備えることを特徴とするサーボ制御装置。
  3. 前記第一の検出部および前記第二の検出部は、加速度センサである、
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のサーボ制御装置。
  4. 前記位置検出器は、前記アクチュエータに取り付けられた回転角検出器、または前記機械部に取り付けられた直動位置検出器である、
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のサーボ制御装置。
  5. 前記評価点推定位置、または前記評価点推定位置および前記検出点推定位置を用いて、前記被駆動体の運動精度が目標値以内になるように前記コントローラ部の制御パラメータを変更する制御パラメータ変更部、
    を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のサーボ制御装置。
  6. 前記学習部は、前記評価点の状態量、前記参照点の状態量、および前記検出位置を訓練データセットに使用して、前記検出位置を入力とし、前記評価点の状態量、および前記参照点の状態量を出力とするシステムモデルを学習する、
    ことを特徴とする請求項2に記載のサーボ制御装置。
  7. 前記学習部は、前記評価点の状態量、前記参照点の状態量、前記検出位置、および前記アクチュエータの駆動力を訓練データセットに使用して、前記検出位置を入力とし、前記評価点の状態量、および駆動反力推定値を出力とするシステムモデルを学習する、
    ことを特徴とする請求項2に記載のサーボ制御装置。
  8. 前記第二のシミュレーション部は、
    前記検出位置の挙動が推定された検出点推定位置をフィードバックとし、前記コントローラ部を模擬して前記アクチュエータへの指令トルク推定値を生成するコントローラ模擬部と、
    前記学習部で学習されたシステムモデルを用いて、前記評価点推定位置、および前記参照点の挙動を推定した参照点推定位置を演算する人工知能モデル部と、
    前記検出点推定位置、前記参照点推定位置、および前記検出位置と前記参照点との間の剛性値を示す剛性値パラメータを用いて、駆動反力推定値を演算する駆動反力推定部と、
    前記駆動反力推定値および前記指令トルク推定値から演算される有効トルク推定値を用いて、前記検出点推定位置を演算する検出点推定位置演算部と、
    前記学習部で学習されたネットワーク構造パラメータを前記人工知能モデル部に設定し、前記剛性値パラメータを前記駆動反力推定部に設定するシミュレータパラメータ設定部と、
    を備えることを特徴とする請求項2または6に記載のサーボ制御装置。
  9. 前記第二のシミュレーション部は、
    前記検出位置の挙動が推定された検出点推定位置をフィードバックとし、前記コントローラ部を模擬して前記アクチュエータへの指令トルク推定値を生成するコントローラ模擬部と、
    前記学習部で学習されたシステムモデルを用いて、前記評価点推定位置、および駆動反力推定値を演算する人工知能モデル部と、
    前記駆動反力推定値および前記指令トルク推定値から演算される有効トルク推定値を用いて、前記検出点推定位置を演算する検出点推定位置演算部と、
    前記学習部で学習されたネットワーク構造パラメータを前記人工知能モデル部に設定するシミュレータパラメータ設定部と、
    を備えることを特徴とする請求項2または7に記載のサーボ制御装置。
  10. 前記評価点推定位置、または前記評価点推定位置および前記検出点推定位置を用いて、前記コントローラ部への位置補正指令、速度補正指令、および電流補正指令のうち少なくとも1つを演算し、前記コントローラ部に出力する補正指令演算部、
    を備えることを特徴とする請求項1に記載のサーボ制御装置。
  11. 前記評価点の状態量、前記参照点の状態量、および前記検出位置を送信する第一の送信部と、
    前記評価点の状態量、前記参照点の状態量、および前記検出位置を受信し、前記評価点の状態量および前記参照点の状態量を前記第一の伝達関数演算部に出力し、前記参照点の状態量および前記検出位置を前記第二の伝達関数演算部に出力する第一の受信部と、
    前記位置補正指令、前記速度補正指令、および前記電流補正指令のうち少なくとも1つを送信する第二の送信部と、
    前記位置補正指令、前記速度補正指令、および前記電流補正指令のうち少なくとも1つを受信し、前記コントローラ部に出力する第二の受信部と、
    を備えることを特徴とする請求項10に記載のサーボ制御装置。
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