JPWO2020116024A1 - エアバッグ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】クッションが膨張展開して乗員を拘束するまで、ベントホールからのガス漏れを抑制して内圧を維持できるエアバッグ装置を提供することを目的とする。【解決手段】エアバッグ装置100は、ガスを供給するインフレータ110と、ガスによって膨張展開し乗員112を拘束するクッション104と、クッションの所定箇所に設けられガスを排出するベントホール116と、クッションの内側に設けられベントホールの開閉に用いるパッチ118と、クッションが膨張展開して乗員を拘束するまでパッチがベントホールを覆い、クッションが乗員を拘束するとパッチを解放して内圧によりベントホールの外へ飛び出すようにすることでベントホールを開くパッチ操作部120とを備え、パッチは、ベントホールを覆う本体部148と、本体部の外周に形成されクッションの内側に向かって折り返され本体部と重なる少なくとも1つの折返し部150、152、154を有する。【選択図】図3

Description

本発明は、緊急時での乗員保護を目的として膨張展開するクッションを備えたエアバッグ装置に関する。
エアバッグ装置は、車両衝突などの緊急時に作動する安全装置であって、例えば袋状のクッションを備える。クッションは、緊急時にガスによって膨張展開して乗員を受け止め保護する。エアバッグ装置は、設置箇所や用途に応じて様々な種類がある。一例として、主に衝突の衝撃から前部座席の乗員を守るために、運転席にはステアリングの中央にフロントエアバッグが設けられていて、助手席の近傍にはインストルメントパネルやその周辺部位にパッセンジャエアバッグが設けられている。その他には、側面衝突やそれに続いて起こるロールオーバ(横転)から乗員を守るために、車両用シートの側部から乗員のすぐ脇へ膨張展開するサイドエアバッグや、車室内の車体側壁の天井付近からサイドウィンドウに沿って膨張展開するカーテンエアバッグなどが知られている。
エアバッグ装置のクッションが膨張展開して乗員を拘束するとき、乗員はクッションに衝突しその反力を受ける。乗員がクッションから受ける反力は、例えば車両衝突時の衝突速度に比例して大きくなる。クッションから受ける反力が高すぎると、乗員の傷害値が高まることが予測されるため、この反力を抑える対策が要請されている。
特許文献1には、エアバッグ(クッション)に設けられ、インフレータから供給されるガスを外部に排出するベントホールと、クッションの内側からベントホールを覆う蓋部材(パッチ)とを備えたエアバッグ装置が記載されている。
特許文献1のエアバッグ装置では、エアバッグの膨張初期の段階においてはベントホールが蓋部材によって閉または小開度とされる。このため、ベントホールからのガスの流出が規制され、エアバッグが速やかに膨張する、としている。また同エアバッグ装置では、エアバッグ内が昇圧すると、蓋部材がエアバッグ内のガス圧によってスムーズにベントホールから押し出されてベントホールを開または大開度とする。このため、膨張したエアバッグに乗員が突っ込むと、ベントホールからエアバッグの外にガスが流出し、その結果、乗員がエアバッグによってソフトに受け止められ拘束される、としている。
国際公開2007/091511号公報
車両衝突から乗員を拘束するまでの段階に着目すると、特許文献1も言及しているように、この段階では、クッションには、速やかに膨張することが求められている。すなわちベントホールからのガス抜きは一切行わず、クッションが迅速に膨張することが望ましい。
しかし、特許文献1に記載の技術では、単に蓋部材でベントホールを覆っているに過ぎず、ベントホールと蓋部材とのシール性に関しては改善の余地があった。ベントホールと蓋部材とのシール性が低い場合、クッションが膨張展開して乗員を拘束する前にベントホールからガス漏れが生じて、クッションの内圧を維持できず、乗員拘束時のエネルギー吸収量が減少するという問題がある。
本発明は、このような課題に鑑み、クッションが膨張展開して乗員を拘束するまで、ベントホールからのガス漏れを抑制して内圧を維持できるエアバッグ装置を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明にかかるエアバッグ装置の代表的な構成は、ガスを供給するインフレータと、ガスによって膨張展開し乗員を拘束するクッションと、クッションの所定箇所に設けられてガスを排出するベントホールと、クッションの内側に設けられベントホールの開閉に用いられるパッチと、クッションが膨張展開して乗員を拘束するまで、パッチがベントホールを覆い、クッションが乗員を拘束すると、パッチを解放して内圧によりベントホールの外へ飛び出すようにすることでベントホールを開くパッチ操作部とを備え、パッチは、ベントホールを覆う本体部と、本体部の外周に形成されクッションの内側に向かって折り返され本体部と重なる少なくとも1つの折返し部を有することを特徴とする。
上記構成によれば、クッションが膨張展開して乗員を拘束するまで、すなわち乗員がクッションに当接するまでは、パッチは、パッチ操作部によってベントホールを覆っている。またパッチは、クッションの内側に向かって折り返され本体部と重なる折返し部を有している。そのためパッチは、クッションの膨張展開時に本体部と折返し部との隙間にガスが入り込み、このガス圧を受けて本体部のうち折返し部と重なった部位がクッションに押し付けられ密着する。これによって、パッチとクッションとのシール性を高め、パッチがベントホールを覆う位置から容易にずれないようにすることができる。
また上記構成によれば、パッチの一部が内圧によってベントホールの外に飛び出し始めてしまっても、折返し部が広がってベントホールを塞ぐため、折返し部が設けられていない場合に比べて、ベントホールが開きにくい。すなわち、ベントホールが開くのは専らパッチ操作部がパッチを解放したとき、という挙動をより確実化することができる。したがって、クッションが膨張展開して乗員を拘束するまで、ベントホールからのガス漏れを抑制して内圧を維持し、乗員拘束時のエネルギー吸収量が減少することを回避できる。
上記のパッチの折返し部は、1つ以上の所定の箇所において、本体部に接合されているとよい。これにより、パッチは、より確実に本体部と折返し部との隙間にガスを溜めることができ、パッチとクッションとのシール性をより高めることができる。
上記のパッチの本体部は、多角形状を有し、折返し部は、本体部の各辺のうち少なくとも一辺に設けられているとよい。このように、パッチの本体部を多角形状とし、本体部の少なくとも一辺に折返し部を設けたので、折返し部を折り返して本体部に重ねるだけで本発明の構成を実現できる。
上記のパッチの折返し部を広げたときの外形は、曲線を含んでいてもよい。これにより、パッチの外形が例えば円形や楕円形であっても、本体部と折り重なる折返し部を形成できる。
上記のパッチ操作部は、クッションの内部に配置された紐状のテザーであって、一端部がパッチに接合され他端部がクッションのうち乗員に当接する側に接合されたテザーと、クッションの内側でパッチの近傍に設けられ、テザーを通すテザーガイドとを有し、テザーは、クッションが膨張展開するとテザーガイドを通してパッチをクッションの内面に沿って引っ張って、それによってパッチがベントホールを塞いだ状態を維持し、テザーは、クッションが乗員に当接すると緩んでパッチを解放し、それによってパッチがベントホールを開くとよい。
このように、テザーは、クッションが膨張展開するとテザーガイドを通してパッチを引っ張るため、パッチがベントホールを塞いだ状態を維持できる。また、クッションが乗員に当接すると、テザーが緩み、パッチを解放するので、ガス圧によってパッチがベントホールから外に飛び出し、ベントホールを開くことができる。ここでテザーは、一端部がパッチに接合されて、さらに他端部がクッションのうち乗員に当接する側に直接的に接合されていることが好ましい。
上記のクッション内部には、クッションの展開形状を形成するために一端がクッションのうち乗員が当接する側に接合され、他端がクッションの他の部分に接合されたメインテザーが配置されていて、パッチ操作部は、クッションの内部に配置された紐状のテザーであって、一端部がパッチに接合され、他端部がメインテザーの一部分に接合されたテザーと、クッションの内側でパッチの近傍に設けられ、テザーを通すテザーガイドとを有し、テザーは、クッションが膨張展開するとテザーガイドを通してパッチをクッションの内面に沿って引っ張って、それによってパッチがベントホールを塞いだ状態を維持し、テザーは、クッションが乗員に当接すると緩んでパッチを解放し、それによってパッチがベントホールを開くとよい。
このように、クッション内部に、クッションの展開形状を形成するためのメインテザーが配置されている場合、テザーの一端部をパッチに接合し、他端部をメインテザーの一部分に接合すればよい。つまり、テザーの他端部は、クッションのうち乗員に当接する側にメインテザーを介して間接的に接合されている。このようにすれば、メインテザーを利用しつつ、テザーは、クッションが膨張展開するとテザーガイドを通してパッチを引っ張るため、パッチがベントホールを塞いだ状態を維持できる。また、クッションが乗員に当接すると、テザーが緩み、パッチを解放するので、ガス圧によってパッチがベントホールから外に飛び出し、ベントホールを開くことができる。 上記のベントホールはクッションの車両前側に位置し、クッションはその車両後側で乗員を拘束し、テザーは、パッチを上下に区分したときの上側の領域のみに接合されているとよい。
ここでテザーは、クッションが膨張展開して乗員に当接すると緩むので、乗員が拘束されたことに反応する部材と言える。そこで上記構成のように、パッチを上下に2分したときの上側の領域にのみテザーを接合すると、テザーの反応をより確実にパッチに伝えることができる。
上記のパッチの本体部は、四角形であり、テザーは、パッチの上側の領域の2つの角部にそれぞれ接合されているとよい。これにより、パッチの位置を安定させた状態でベントホールを覆わせることができる。
本発明によれば、クッションが膨張展開して乗員を拘束するまで、ベントホールからのガス漏れを抑制して内圧を維持できるエアバッグ装置を提供することができる。
本発明の実施形態におけるエアバッグ装置の概要を例示する図である。 図1(b)のエアバッグ装置を例示する模式図である。 図2のエアバッグ装置の一部を例示する図である。 図3のエアバッグ装置の膨張展開時での挙動を例示する図である。 比較例のエアバッグ装置を例示する図である。 図5のエアバッグ装置の膨張展開時での挙動を例示する図である。 図2のエアバッグ装置のクッションが乗員を拘束したときの挙動を例示する図である。 本実施形態におけるクッションと比較例のクッションとの性能試験を例示する図である。 図3(b)のパッチの変形例を例示する図である。 本発明の他の実施形態におけるエアバッグ装置を例示する図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
なお本実施形態においては、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員が向いている方向を前方、その反対方向を後方と称する。また乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員の右側を右方向、乗員の左側を左方向と称する。更に、乗員が正規の姿勢で着座した際に、乗員の頭部方向を上方、乗員の腰部方向を下方と称する。そして、以下の説明において用いる図面では、必要に応じて、上述した乗員を基準とした前後左右上下方向を、Front、Back、Left、Right、Up、Downと示す。
図1は、本発明の実施形態におけるエアバッグ装置100の概要を例示する図である。エアバッグ装置100は、図1(a)に示すように、右ハンドル車における前列右側の座席102すなわち運転席用のフロンタルエアバッグとして実施されている。図1(b)は、エアバッグ装置100のクッション104の膨張展開後での車両を例示した図である。
クッション104は、図1(b)に示すように、膨張展開時に座席102に向かって立体的に膨らむ袋として形成されている。袋状のクッション104は、巻回または折り畳まれて、ステアリングホイール106の中央に設けられた中央部(収納部108)に収納されている。クッション104は、その表面を構成する複数の基布を重ねて縫製または接着することや、OPW(One-Piece Woven)を用いての紡織などによって形成されている。
収納部108には、クッション104の他に、図中点線で示すディスク型のインフレータ110も収納されている。インフレータ110は、ガス発生装置であって、不図示のセンサから送られる衝撃の検知信号に起因して稼働し、クッション104にガスを供給する。
図2は、図1(b)のエアバッグ装置100を例示する模式図である。クッション104は、インフレータ110から供給されるガスによって展開し、図2(a)に示すように乗員112とステアリングホイール106との間に膨張展開する。図2(a)のクッション104は、乗員112に当接していないため、乗員112を拘束する前の状態である。図2(b)は、図2(a)のクッション104のA矢視図である。
クッション104の基布114には、ベントホール116が設けられている。ベントホール116は、クッション104の車両前側の基布114に位置し、インフレータ110からのガスをクッション110の内部から排出する。エアバッグ装置100はさらに、パッチ118と、パッチ操作部120とを備える。
パッチ118は、クッション104の内側に配置され、ベントホール116の開閉に用いられる。パッチ118は、クッション104が膨張展開して乗員112を拘束するまで、パッチ操作部120によって図2(a)に示すようにベントホール116をクッション104の内側から塞いで覆う状態にされている(図3(a)参照)。またパッチ118は、パッチ操作部120の図3(a)に示すテザー122、124に接合されていて、クッション104の基布114には接合されていない。なお接合とは、縫製に限らず、接着などであってもよく、仮縫製状態でもよい。
図3は、図2のエアバッグ装置100の一部を例示する図である。図3(a)は、図2(a)のクッション104のB矢視図である。図3(b)は、図3(a)のパッチ118の外形を示す図である。図3(c)は、図3(a)のパッチ118のC−C断面図である。
パッチ操作部120は、図3(a)に示す紐状のテザー122、124とテザーガイド126とを有する。テザー122は、図2(a)に示すように、クッション104の内部に配置され、一端部128がパッチ118に接合(ここでは縫製)され、他端部130がクッション104のうち乗員112に当接する側に接合されている。なおテザー124もテザー122と同様に、クッション104のうち乗員112に当接する側とパッチ118とをつないでいる。
テザーガイド126は、図3(a)に示すようにクッション104の内側でパッチ118の近傍に設けられ、各テザー122、124を通すものである。なお図2(a)では、テザーガイド126を省略している。図3(a)に示すテザーガイド126は、縫製ライン132a、132b、132cによってクッション104の基布114に接合されている。
テザー122は、テザーガイド126のうち縫製ライン132a、132bで区画された部位134と基布114との間に通されている。またテザー122の一端部128は、テザーガイド126の部位134に通されて、縫製ライン136aによってパッチ118の角部138に接合されている。テザー124は、テザーガイド126のうち縫製ライン132a、132cで区画された部位140と基布114との間に通されている。またテザー124の一端部142は、テザーガイド126の部位140に通されて、縫製ライン136bによってパッチ118の角部144に接合されている。
このようにテザー122、124は、図3(a)に示すパッチ118を上下に区分したときの上側の領域146のみ、ここでは領域146の2つの角部138、144にのみ接合されている。なお領域146は、図中ではC−C線よりも上側に位置する領域としている。また、テザー122、124は、クッション104が膨張展開すると(図2(a)参照)、テザーガイド126を通して、パッチ118をクッション104の内面に沿って引っ張って、パッチ118がベントホール116を塞いだ状態を維持する。さらにテザー122、124は、パッチ118のうち、上側の領域146の2つの角部138、144にそれぞれ接合されているため、パッチ118の位置を安定させた状態で、パッチ118がベントホール116を塞いだ状態を維持することができる。
また、パッチ118の角部138、144に接合されたテザー122、124は、テザーガイド126の部位134、140によって基布114に多少押し付けられている。このため、クッション104が膨張展開する途中、すなわちテザー122、124が張っていない状態であっても、パッチ118は、ベントホール116を塞いで覆う位置からずれないようになっている。
パッチ118は、図3(b)に示すように多角形(ここでは四角形)の本体部148と、本体部148の外周に形成された少なくとも1つ(ここでは3つ)の折返し部150、152、154とを有する。折返し部150、152、154は、本体部148の各辺のうち点線で示す3辺150a、152a、154aに設けられ、図中の矢印に示すようにクッション104の内側に向かって折り返され、図3(a)に示すように本体部148と重なっている。また一例として折返し部150、152は、図3(b)に示すように幅寸法La、Lbを有するものとする。
パッチ118の本体部148は、図3(a)に示すようにベントホール116を覆っている。また、折返し部150、152、154は、本体部148と重なった状態で縫製ライン156a、156bによって、角部138、144で本体部148に接合されている。さらに折返し部150、152は、本体部148と重なった状態で縫製ライン158a、158bによって、角部160、162で本体部148に接合されている。このため、図3(c)に示すように折返し部150、152は、本体部148との間で隙間164、166を形成する。なお図示は省略するが、折返し部154も本体部148との間で隙間を形成している。
図4は、図3のエアバッグ装置100の膨張展開時での挙動を例示する図である。図中では、図3(c)に示す折返し部150、152と本体部148との隙間164、166に着目して挙動を説明している。まずクッション104が膨張展開して乗員112を拘束するまで、すなわち乗員112がクッション104に当接するまでは、パッチ118の本体部148は、パッチ操作部120によってベントホール116を塞いで覆っている。
そのためパッチ118では、図4(a)に示すようにクッション104の膨張展開時に本体部148と折返し部150、152との隙間164、166にガス167Aが入り込む。その結果、パッチ118では、隙間164、166に入り込んだガス167Aのガス圧による荷重167Bを受けて、本体部148のうち折返し部150、152と重なった部位、特に本体部148の辺150a、152a付近がクッション104の基布114に押し付けられ密着する。これによって、エアバッグ装置100では、パッチ118とクッション104とのシール性を高め、パッチ118がベントホール116を塞いで覆う位置から容易にずれないようにすることができる。
また図4(b)に示すように、パッチ118の一部が内圧によってベントホール116の外に飛び出し始めてしまっても、折返し部150、152が広がって袋状となりベントホール116を塞ぐため、ベントホール116が開きにくい。さらに図4(c)に示すようにパッチ118は、本体部148から折返し部150、152の幅寸法La、Lbの分だけベントホール116の外に向かって移動しない限り、ベントホール116を開くことがない。このようにして、エアバッグ装置100では、パッチ118とクッション104とのシール性を高めることができる。
図5は、比較例のエアバッグ装置100Aを例示する図である。図5(a)は、図3(a)に対応する図である。図5(b)は、図5(a)のエアバッグ装置100AのD−D断面図である。エアバッグ装置100Aは、パッチ118Aが上記の折返し部150、152、154を有していない点で、上記のエアバッグ装置100と異なる。
すなわちパッチ118Aは、図5(a)に示すようにベントホール116を覆う本体部148Aを有するものの、各辺168、170、172には折返し部150、152、154が設けられていない。そのため図5(b)に示すように、パッチ118Aは、本体部148Aのうち、各辺168、170から幅寸法Lc、Ldを有する部位174、176が、クッション104Aの基布114と重なっているに過ぎない。
図6は、図5のエアバッグ装置100Aの膨張展開時での挙動を例示する図である。なお図6は、図4に対応させて示している。クッション104Aが膨張展開すると、パッチ118Aは、図6(a)に示すように本体部148Aがガス177Aを受けて、本体部148Aのうちベントホール116に重なった部位が、ガス177Aのガス圧による荷重177Bを受ける。しかし本体部148Aには、上記の折返し部150、152(図4(a))が設けられていないため、隙間164、166も存在しない。
そのため、パッチ118Aでは、本体部148Aの各辺168、170をガス177Aが通り過ぎるだけであり、本体部148のうち幅寸法Lc、Ld(図4(b)参照)を有する部位174、176を基布114に押し付けることもない。したがって、エアバッグ装置100Aでは、パッチ118Aとクッション104Aとのシール性を高めることが困難となる。
また図6(b)に示すように、パッチ118Aの一部が内圧によってベントホール116の外に飛び出し始めてしまうと、パッチ118Aは、折返し部150、152が存在しないため、本体部148Aのうち部位174、176の幅寸法Lc、Ldの分だけベントホール116の外に向かって移動するだけで、図6(c)に示すようにベントホール116を開いてしまう。
したがって、比較例のエアバッグ装置100Aでは、パッチ118Aとクッション104Aとのシール性が低いため、クッション104Aが膨張展開して乗員112を拘束する前にベントホール116からガス漏れが生じ、クッション104Aの内圧を維持することができない。
これに対して本実施形態のエアバッグ装置100では、パッチ118の本体部148に折返し部150、152を設けることで、図4に示す挙動を実現して、パッチ118とクッション104とのシール性を高めることができる。なお折返し部154も本体部148との間に隙間を形成しているため、その隙間にガスを溜めることからクッション104とのシール性を高めている。したがってエアバッグ装置100によれば、クッション104が膨張展開して乗員112を拘束するまで、ベントホール116からのガス漏れを抑制して内圧を維持できる。
図7は、図2のエアバッグ装置100のクッション104が乗員を拘束したときの挙動を例示する図である。パッチ操作部120のテザー122は、クッション104が乗員112に当接して乗員112を拘束すると、図7(a)に示すように緩む。なお図示は省略するが、テザー124も同様に緩む。このようにテザー122、124は、クッション104が膨張展開して乗員112に当接すると緩むので、乗員112が拘束されたことに反応する部材と言える。そしてパッチ118では、パッチ118を上下に2分したときの上側の領域146(図3(a)参照)にのみテザー122、124が接合されているため、テザー122、124の反応をより確実に受けることができる。
パッチ操作部120は、各テザー122、124が緩むことでパッチ118を解放する。そして解放されたパッチ118は、図7(b)に示すようにガス圧によってベントホール116から外に飛び出し、ベントホール116を開くことができる。
このようにエアバッグ装置100では、クッション104が膨張展開して乗員112を拘束するまではパッチ118がベントホール116を覆い、クッション104が乗員112を拘束すると、パッチ118を解放してベントホール116を開く、という挙動を確実に得ることができる。
図8は、本実施形態におけるクッション104と比較例のクッション104Aとの性能試験を例示する図である。試験では、各クッション104、104Aに対して、乗員112を模擬した試験装置(インパクタ)をぶつけ、各クッション104、104Aのエネルギー吸収量を測定した。図中のグラフでは、縦軸をエネルギー吸収量(J)、横軸をインパクタの移動距離(mm)とした。エネルギー吸収量は、インパクタの移動距離までにおけるクッション104、104Aのエネルギー吸収量の積分値として算出している。なおインパクタの移動距離は、インパクタが各クッション104、104Aに触れた状態を基準の0mmとして、インパクタが車両前側に向かう移動距離を測定している。なおグラフでは、本実施形態のクッション104の測定値を実線、比較例のクッション104Aの測定値を点線で示している。
各グラフを比較すると、インパクタの移動距離−300mm〜0mmにおいて、本実施形態のクッション104のエネルギー吸収量(J)が比較例のクッション104Aの値よりも高くなっていることが明らかである。なお本実施形態のクッション104では、グラフに示すように、エネルギー吸収量が「420(J)」となり、比較例のクッション104Aのエネルギー吸収量「350(J)」に比べて20%も向上している。これは、本実施形態のクッション104の方がパッチ118とクッション104とのシール性が高いため、クッション104が膨張展開して乗員112を拘束するまで、ベントホール116からのガス漏れを抑制して内圧を維持できることを示している。このようにエアバッグ装置100では、パッチ118とクッション104とのシール性を高めて、乗員拘束時のエネルギー吸収量が減少することを回避できる。
ここで上記実施形態のパッチ118は、四角形の本体部148を有し、本体部148の各辺のうち三辺に折返し部150、152、154を設けたが、これに限定されない。以下、図9を参照して説明する。
図9は、図3(b)のパッチ118の変形例を例示する図である。図9(a)に示すパッチ178は、五角形の本体部180を有し、本体部180の各辺のうち四辺182a、184a、186a、188aに折返し部182、184、186、188を設けている。
このようなパッチ178であっても、図9(b)に示すように折返し部182、184、186、188を折り返して本体部180に重ねて、縫製ライン190a、190b、190c、190d、190eで本体部180に接合するだけで上記実施形態と同様に、ベントホール116とのシール性を高めることができる。なおパッチ178は、本体部180のすべての辺に折返し部を設けてもよい。つまり、本実施形態では、パッチの本体部が多角形状を有し、折返し部が本体部の各辺のうち少なくとも一辺に設けられているのであれば、ベントホール116とのシール性を高めることができる。
さらに図9(c)に示すパッチ178Aのように、折返し部192、194、196、198を広げたときの外形は、曲線を含んでいてもよい。すなわちパッチ18Aの外形が円形であっても、図9(d)に示すように本体部180Aの四辺192a、194a、196a、198aに折返し部192、194、196、198を形成できる。そしてパッチ178Aでは、折返し部192、194、196、198を折り返して本体部180Aに重ねて、縫製ライン199a、199b、199c、199dで本体部180Aに接合できる。このようなパッチ178Aであっても、ベントホール116とのシール性を高めることができる。なおパッチの外形は、折返し部を形成できるのであれば、円形に限らず楕円形であってもよい。
図10は、本発明の他の実施形態におけるエアバッグ装置100Bを例示する図である。なお図10のエアバッグ装置100Bは、図2(a)のエアバッグ装置100に対応させて示している。ただし図10では、図2(a)で省略したテザーガイド126も示している。
エアバッグ装置100Bは、クッション104の内部に2本のメインテザー123、125が配置され、パッチ操作部120Aを備える点で、エアバッグ装置100と異なる。メインテザー123、125は、クッション104の展開形状を形成するためのテザーであって、図示のように上下方向に互いに離間して配置されている。メインテザー123、125は、一端123A、125Aがクッション104のうち乗員112が当接する側に接合され、他端123B、125Bがクッション104の他の部分に接合されている。ここでクッション104の他の部分とは、図中ではクッション104のうちステアリングホイール106に面する側、すなわち前側に位置する部分である。
パッチ操作部120Aは、テザー122の他端部130が図示のようにメインテザー123のうち一端123Aと他端123Bとの間に位置する一部分123Cに接合されている点で、図2(a)のパッチ操作部120と異なる。このようにして、テザー122の他端部130は、メインテザー123を介して、クッション104のうち乗員112が当接する側に間接的に接合されることになる。なお図示を省略するが、テザー124の他端部も、テザー122と同様にメインテザー123を介して間接的にクッション104のうち乗員112が当接する側に接合されている。
このようにエアバッグ装置100Bによれば、クッション104の内部にメインテザー123、125が配置されている場合であっても、メインテザー123を利用することにより、テザー122、124は、クッション104が膨張展開するとテザーガイド126を通してパッチ118を引っ張るため、パッチ118がベントホール116を塞いだ状態を維持できる。またエアバッグ装置100Bでは、クッション104が乗員112に当接すると、テザー122、124が緩み、パッチ118を解放するので、ガス圧によってパッチ118がベントホール116から外に飛び出し、ベントホール116を開くことができる。さらにエアバッグ装置100Bでは、テザー122、124が接合されるメインテザー123の一部分123Cの位置を調整することで、テザー122、124の長さを適宜変更することもできる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
また、上記実施形態においては本発明にかかるエアバッグ装置を自動車に適用した例を説明したが、自動車以外にも航空機や船舶などに適用することも可能であり、同様の作用効果を得ることができる。
本発明は、緊急時での乗員保護を目的として膨張展開するクッションを備えたエアバッグ装置に利用することができる。
100、100A、100B…エアバッグ装置、102…座席、104、104A…クッション、106…ステアリングホイール、108…収納部、110…インフレータ、112…乗員、114…基布、116…ベントホール、118、118A、178、178A…パッチ、120、120A…パッチ操作部、122、124…テザー、123、125…メインテザー、123A、125A…メインテザーの一端、123B、125B…メインテザーの他端、123C…メインテザーの一部分、126…テザーガイド、128、142…テザーの一端部、130…テザーの他端部、132a、132b、132c、136a、136b、156a、156b、158a、158b、190a、190b、190c、190d、190e、199a、199b、199c、199d…縫製ライン、134、140…テザーガイドの部位、138、144、160、162…角部、146…パッチの領域、148、148A、180、180A…本体部、150、152、154、182、184、186、188、192、194、196、198…折返し部、150a、152a、154a、168、170、172、182a、184a、186a、188a、192a、194a、196a、198a…本体部の各辺、164、166…隙間、167A、177A…ガス、167B、177B…ガス圧による荷重、174、176…本体部の部位

Claims (8)

  1. ガスを供給するインフレータと、
    前記ガスによって膨張展開し乗員を拘束するクッションと、
    前記クッションの所定箇所に設けられて前記ガスを排出するベントホールと、
    前記クッションの内側に設けられ前記ベントホールの開閉に用いられるパッチと、
    前記クッションが膨張展開して乗員を拘束するまで、前記パッチが前記ベントホールを覆い、前記クッションが乗員を拘束すると、前記パッチを解放して内圧により前記ベントホールの外へ飛び出すようにすることで該ベントホールを開くパッチ操作部とを備え、
    前記パッチは、前記ベントホールを覆う本体部と、該本体部の外周に形成され前記クッションの内側に向かって折り返され前記本体部と重なる少なくとも1つの折返し部を有することを特徴とするエアバッグ装置。
  2. 前記パッチの前記折返し部は、1つ以上の所定の箇所において、前記本体部に接合されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
  3. 前記パッチの前記本体部は、多角形状を有し、
    前記折返し部は、前記本体部の各辺のうち少なくとも一辺に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のエアバッグ装置。
  4. 前記パッチの折返し部を広げたときの外形は、曲線を含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載のエアバッグ装置。
  5. 前記パッチ操作部は、
    前記クッションの内部に配置された紐状のテザーであって、一端部が前記パッチに接合され他端部が前記クッションのうち乗員に当接する側に接合されたテザーと、
    前記クッションの内側で前記パッチの近傍に設けられ、前記テザーを通すテザーガイドとを有し、
    前記テザーは、前記クッションが膨張展開すると前記テザーガイドを通して前記パッチを前記クッションの内面に沿って引っ張って、それによって前記パッチが前記ベントホールを塞いだ状態を維持し、前記テザーは、前記クッションが乗員に当接すると緩んで前記パッチを解放し、それによって前記パッチが前記ベントホールを開くことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
  6. 前記クッション内部には、当該クッションの展開形状を形成するために一端が前記クッションのうち乗員が当接する側に接合され、他端が前記クッションの他の部分に接合されたメインテザーが配置されていて、
    前記パッチ操作部は、
    前記クッションの内部に配置された紐状のテザーであって、一端部が前記パッチに接合され、他端部が前記メインテザーの一部分に接合されたテザーと、
    前記クッションの内側で前記パッチの近傍に設けられ、前記テザーを通すテザーガイドとを有し、
    前記テザーは、前記クッションが膨張展開すると前記テザーガイドを通して前記パッチを前記クッションの内面に沿って引っ張って、それによって前記パッチが前記ベントホールを塞いだ状態を維持し、前記テザーは、前記クッションが乗員に当接すると緩んで前記パッチを解放し、それによって前記パッチが前記ベントホールを開くことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
  7. 前記ベントホールは前記クッションの車両前側に位置し、該クッションはその車両後側で乗員を拘束し、
    前記テザーは、前記パッチを上下に区分したときの上側の領域のみに接合されていることを特徴とする請求項5または6に記載のエアバッグ装置。
  8. 前記パッチの前記本体部は、四角形であり、
    前記テザーは、前記パッチの前記上側の領域の2つの角部にそれぞれ接合されていることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
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