JPWO2020032185A1 - カチオン性脂質を用いた心筋細胞へのトランスフェクション方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、心筋細胞への核酸の導入効率に優れた手段、特にトランスフェクション方法を提供する。本発明の心筋細胞への核酸のトランスフェクション方法は、式(I)で表される化合物又はその塩、構造脂質、および核酸を含む組成物と、心筋細胞を含む細胞集団とを接触させる工程を含む。n1は2〜6の整数を、n2は0〜2の整数を、n3は0〜2の整数を、Lは、−C(O)O−または−NHC(O)O−を、Raは、直鎖状C5−13アルキル基、直鎖状C13−17アルケニル基または直鎖状C17アルカジエニル基を、Rbは、直鎖状C2−9アルキル基を、Rcは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、Rdは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、Reは、直鎖状C2−9アルキル基を、Rfは、直鎖状C2−9アルキル基を示す。

Description

本発明は、核酸を心筋細胞に導入することを可能にする組成物に関する。さらに本発明は、そのような組成物を用いた、心筋細胞への核酸のトランスフェクション方法、ならびに心筋細胞の精製方法および製造方法に関する。
[発明の背景]
心筋細胞は出生と同時にその分裂能を喪失し、再生が困難である。したがって、近年、心筋梗塞、心筋炎または老化等を原因とする傷害心組織に対して、胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)など多能性を有する細胞を分化誘導して得られる心筋細胞を移植する補充療法が注目されている。これら多能性幹細胞からの心筋細胞への分化誘導法が多数報告されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3および非特許文献1)。しかし、移植用細胞として用いるためには、ソーティング等により心筋細胞の純度を高める必要がある。
従来、心筋細胞を選別する方法として、心筋細胞もしくは心筋前駆細胞に対する表面マーカーを用いて心筋細胞を選別する方法が多く用いられているが、例えば特許文献4には、心筋細胞において特異的に発現しているmRNAに対応する「miRNA応答性オフスイッチmRNA」を用いて、多能性幹細胞等から分化誘導された細胞集団に含まれる心筋細胞を精製できることが記載されている。
一方、心筋細胞に所望の物質を導入する(トランスフェクションする)ことに関して、例えば非特許文献2には、L α-Phosphatidylcholine (PC)、1,2- Dipalmitoyl-sn-Glycero-3-Phopshoethanolamine (DPPE) およびCholesterol (CHOL) によって形成される脂質ナノ粒子 (LNP) 中にFITC-Dextranを内封したものを、培養心筋細胞にトランスフェクションすることにより、心筋細胞中で蛍光が認められたことが記載されている。
国際公開第2007/002136号 国際公開第2009/118928号 特開2010-158206号公報 国際公開第2015/141827号
Yan P, et al, Biochem Biophys Res Commun. 379:115-20 (2009) Stephen L. Hayward [Univ. Nebraska - Lincoln] (Digital Commons @University of Nebraska - Lincoln, 2015)
本発明の目的は、例えば前掲特許文献4に記載された方法を実施するために利用することのできる、心筋細胞への核酸の導入効率に優れた手段、特にトランスフェクション方法を提供することにある。また、別の観点では、本発明の目的は、そのような手段を利用した心筋細胞の精製方法および製造方法を提供することにある。
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、下記の式で示される化合物(カチオン性脂質の一種)またはその塩と他の構造脂質とにより形成される脂質粒子を用いることにより、核酸を心筋細胞に効率的に導入することができ、上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は少なくとも以下の発明に関する。
[1]
1)式(I):
Figure 2020032185
[式中、n1は2〜6の整数を、n2は0〜2の整数を、n3は0〜2の整数を、
Lは、−C(O)O−または−NHC(O)O−を、
Raは、直鎖状C5−13アルキル基、直鎖状C13−17アルケニル基または直鎖状C17アルカジエニル基を、
Rbは、直鎖状C2−9アルキル基を、
Rcは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
Rdは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
Reは、直鎖状C2−9アルキル基を、
Rfは、直鎖状C2−9アルキル基を示す。]
で表される化合物又はその塩、
2)構造脂質、および
3)核酸
を含む組成物と、心筋細胞を含む細胞集団とを接触させる工程を含む、心筋細胞への核酸のトランスフェクション方法。
[2]
前記核酸が、mRNAである、項1記載の方法。
[3]
前記mRNAが、
(i)心筋細胞で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列、および機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含む、心筋細胞特異的なmiRNA応答性mRNA、および/または
(ii)機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含むmRNA
を含む、項2記載の方法。
[4]
前記mRNAが、
(i)心室筋細胞で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列、および機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含む、心室筋細胞特異的なmiRNA応答性mRNA、および/または
(ii)機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含むmRNA
を含む、項2記載の方法。
[5]
前記(i)および(ii)の機能的な遺伝子が、それぞれ独立して、薬剤耐性遺伝子、蛍光タンパク質をコードする遺伝子、アポトーシス誘導遺伝子および自殺遺伝子からなる群から選択される1またはそれ以上の遺伝子である、項3または4記載の方法。
[6]
心筋細胞を含む細胞集団が、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞またはその他の幹細胞から分化誘導された心筋細胞を含む細胞集団である、項1記載の方法。
[7]
1)式(I):
Figure 2020032185
[式中、n1は2〜6の整数を、n2は0〜2の整数を、n3は0〜2の整数を、
Lは、−C(O)O−または−NHC(O)O−を、
Raは、直鎖状C5−13アルキル基、直鎖状C13−17アルケニル基または直鎖状C17アルカジエニル基を、
Rbは、直鎖状C2−9アルキル基を、
Rcは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
Rdは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
Reは、直鎖状C2−9アルキル基を、
Rfは、直鎖状C2−9アルキル基を示す。]
で表される化合物又はその塩、
2)構造脂質、および
3)mRNA
を含む組成物と、心筋細胞を含む細胞集団とを接触させる工程を含む、心筋細胞の精製方法であって、ここで該mRNAが、
(i)心筋細胞で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列、および機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含む、心筋細胞特異的なmiRNA応答性mRNA、および/または
(ii)機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含むmRNA
を含む、心筋細胞の精製方法。
[8]
1)式(I):
Figure 2020032185
[式中、n1は2〜6の整数を、n2は0〜2の整数を、n3は0〜2の整数を、
Lは、−C(O)O−または−NHC(O)O−を、
Raは、直鎖状C5−13アルキル基、直鎖状C13−17アルケニル基または直鎖状C17アルカジエニル基を、
Rbは、直鎖状C2−9アルキル基を、
Rcは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
Rdは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
Reは、直鎖状C2−9アルキル基を、
Rfは、直鎖状C2−9アルキル基を示す。]
で表される化合物又はその塩、
2)構造脂質、および
3)mRNA
を含む組成物と、心室筋細胞を含む細胞集団とを接触させる工程を含む、心室筋細胞の精製方法であって、ここで該mRNAが、
(i)心室筋細胞で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列、および機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含む、心室筋細胞特異的なmiRNA応答性mRNA、および/または
(ii)機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含むmRNA
を含む、心室筋細胞の精製方法。
[9]
1)式(I):
Figure 2020032185
[式中、n1は2〜6の整数を、n2は0〜2の整数を、n3は0〜2の整数を、
Lは、−C(O)O−または−NHC(O)O−を、
Raは、直鎖状C5−13アルキル基、直鎖状C13−17アルケニル基または直鎖状C17アルカジエニル基を、
Rbは、直鎖状C2−9アルキル基を、
Rcは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
Rdは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
Reは、直鎖状C2−9アルキル基を、
Rfは、直鎖状C2−9アルキル基を示す。]
で表される化合物又はその塩、
2)構造脂質、および
3)mRNA
を含む組成物と、心筋細胞を含む細胞集団とを接触させる工程を含む、心筋細胞の製造方法であって、ここで該mRNAが、
(i)心筋細胞で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列、および機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含む、心筋細胞特異的なmiRNA応答性mRNA、および/または
(ii)機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含むmRNA
を含む、心筋細胞の製造方法。
[10]
1)式(I):
Figure 2020032185
[式中、n1は2〜6の整数を、n2は0〜2の整数を、n3は0〜2の整数を、
Lは、−C(O)O−または−NHC(O)O−を、
Raは、直鎖状C5−13アルキル基、直鎖状C13−17アルケニル基または直鎖状C17アルカジエニル基を、
Rbは、直鎖状C2−9アルキル基を、
Rcは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
Rdは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
Reは、直鎖状C2−9アルキル基を、
Rfは、直鎖状C2−9アルキル基を示す。]
で表される化合物又はその塩、
2)構造脂質、および
3)mRNA
を含む組成物と、心室筋細胞を含む細胞集団とを接触させる工程を含む、心室筋細胞の製造方法であって、ここで該mRNAが、
(i)心室筋細胞で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列、および機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含む、心室筋細胞特異的なmiRNA応答性mRNA、および/または
(ii)機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含むmRNA
を含む、心室筋細胞の製造方法。
[11]
1)式(I):
Figure 2020032185
[式中、n1は2〜6の整数を、n2は0〜2の整数を、n3は0〜2の整数を、
Lは、−C(O)O−または−NHC(O)O−を、
Raは、直鎖状C5−13アルキル基、直鎖状C13−17アルケニル基または直鎖状C17アルカジエニル基を、
Rbは、直鎖状C2−9アルキル基を、
Rcは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
Rdは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
Reは、直鎖状C2−9アルキル基を、
Rfは、直鎖状C2−9アルキル基を示す。]
で表される化合物又はその塩、
2)構造脂質、および
3)核酸
を含む、心筋細胞への核酸のトランスフェクション用組成物。
[12]
1)式(I):
Figure 2020032185
[式中、n1は2〜6の整数を、n2は0〜2の整数を、n3は0〜2の整数を、
Lは、−C(O)O−または−NHC(O)O−を、
Raは、直鎖状C5−13アルキル基、直鎖状C13−17アルケニル基または直鎖状C17アルカジエニル基を、
Rbは、直鎖状C2−9アルキル基を、
Rcは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
Rdは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
Reは、直鎖状C2−9アルキル基を、
Rfは、直鎖状C2−9アルキル基を示す。]
で表される化合物又はその塩、
2)構造脂質、および
3)核酸
を含む、心筋細胞への核酸のトランスフェクション用キット。
なお、本明細書において、「式(I)で表される化合物」を「化合物(I)」と記載することがある。「式(I)で表される化合物又はその塩」を「本発明の化合物」と呼ぶことがある。「式(I)で表される化合物又はその塩(本発明の化合物)を含有する脂質粒子」を「本発明の脂質粒子」と呼ぶことがある。本発明の化合物、構造脂質、および核酸を含む、心筋細胞への核酸のトランスフェクション用組成物を「本発明の組成物」と呼ぶことがある。本発明の化合物、構造脂質、および核酸を含む、心筋細胞への核酸のトランスフェクション用キットを「本発明のキット」と呼ぶことがある。
本発明のトランスフェクション方法により、種々の核酸を心筋細胞に対して優れたトランスフェクション効率で導入することが可能となる。また、そのようなトランスフェクション方法において、核酸として心筋細胞に特異的なmiRNA応答性mRNAを利用することにより、効率的に細胞集団中の心筋細胞を精製すること、換言すれば効率的に心筋細胞を含む細胞集団の精製物を製造することが可能となる。
さらに本発明のトランスフェクション方法において、核酸として、特定の心筋細胞サブタイプ(例、心室筋細胞)に特異的なmiRNA応答性mRNAを利用することにより、効率的に細胞集団中の特定の心筋細胞サブタイプのみを精製することができる。
図1は、実施例において、「Messenger MAX」を用いて調製された緑色蛍光タンパク質(GFP)mRNA含有脂質ナノ粒子(LNP)、および本発明の化合物を用いて調製されたGFP mRNA含有LNP(調製例8、10、11)を、iPSC由来の心筋細胞を含む細胞集団へトランスフェクションした翌日の、位相差顕微鏡写真および蛍光顕微鏡写真である。 図2は、実施例において、「Messenger MAX」を用いて調製されたGFP mRNA含有LNP、および本発明の化合物を用いて調製されたGFP mRNA含有LNP(調製例8、10、11)を、iPSC由来の心筋細胞を含む細胞集団へトランスフェクションした翌日の、フローサイトメトリー解析の結果を表す。
(発明の詳細な説明)
本明細書において、「トランスフェクション」とは、任意の物質を細胞の内部に導入することを意味する。細胞の内部には、少なくとも、細胞質内及び核内が包含される。
本明細書では「核酸」(例えば「mRNA」)をトランスフェクションにより細胞内部に導入する。核酸の使用量は、トランスフェクションの条件や目的などによって変わり得るが、例えば、mRNAの使用量は、1×10個の細胞に対して1ng〜100μg、好ましくは100ng〜5000ngである。
「培養(Culture)」又は「培養する」とは、組織外又は体外で、例えば、ディッシュ、シャーレ、フラスコ、あるいは培養槽(タンク)中で細胞を維持し、増殖させ、かつ/又は分化させることを意味する。
「多能性(pluripotency)」とは、種々の異なった形態や機能を持つ組織や細胞に分化でき、3胚葉のどの系統の細胞にも分化し得る能力を意味する。「多能性(pluripotency)」は、胚盤には分化できず、したがって個体を形成する能力はないという点で、胚盤を含めて、生体のあらゆる組織に分化しうる「全能性(totipotency)」とは区別される。
「多能性(multipotency)」とは、複数の限定的な数の系統の細胞へと分化できる能力を意味する。例えば、間葉系幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞はmultipotentだが、pluripotentではない。
「幹細胞(stem cell)」としては、例えば、多能性幹細胞(pluripotent stem cell)が挙げられる。
本発明において使用可能な「多能性幹細胞(pluripotent stem cell)」とは、生体の種々の異なった形態や機能を持つ組織や細胞に分化でき、3胚葉(内胚葉、中胚葉、外胚葉)のどの系統の細胞にも分化し得る能力を有する幹細胞を指す。それには、特に限定されないが、例えば、胚性幹細胞(ESC)、核移植により得られるクローン胚由来の胚性幹細胞、精子幹細胞、胚性生殖細胞、人工多能性幹細胞(本明細書中、「iPSC」と称することもある)などが挙げられる。
また、本発明において使用可能な「多能性幹細胞(multipotent stem cell)」とは、複数の限定的な数の系統の細胞へと分化できる能力を有する幹細胞を指す。本発明において使用可能な「多能性幹細胞(multipotent stem cell)」としては、例えば、歯髄幹細胞、口腔粘膜由来幹細胞、毛包幹細胞、培養線維芽細胞や骨髄幹細胞由来の体性幹細胞などが挙げられる。好ましい多能性幹細胞(pluripotent stem cell)は、ESC及びiPSCである。
「人工多能性幹細胞(iPSC)」とは、哺乳動物体細胞又は未分化幹細胞に、特定の因子(核初期化因子)を導入して再プログラミングすることにより得られる細胞を指す。現在、「人工多能性幹細胞」にはさまざまなものがあり、山中らにより、マウス線維芽細胞にOct3/4・Sox2・Klf4・c-Mycの4因子を導入することにより、樹立されたiPSC(Takahashi K, Yamanaka S., Cell, (2006) 126: 663-676)のほか、同様の4因子をヒト線維芽細胞に導入して樹立されたヒト細胞由来のiPSC(Takahashi K, Yamanaka S., et al. Cell, (2007) 131: 861-872.)、上記4因子導入後、Nanogの発現を指標として選別し、樹立したNanog-iPS細胞(Okita, K., Ichisaka, T., and Yamanaka, S. (2007). Nature 448, 313-317.)、c-Mycを含まない方法で作製されたiPS細胞(Nakagawa M, Yamanaka S., et al. Nature Biotechnology, (2008) 26, 101-106)、ウイルスフリー法で6因子を導入して樹立されたiPS細胞(Okita K et al. Nat. Methods 2011 May;8(5):409-12, Okita K et al. Stem Cells. 31(3):458-66.)も用いることができる。また、Thomsonらにより作製されたOCT3/4・SOX2・NANOG・LIN28の4因子を導入して樹立された人工多能性幹細胞(Yu J., Thomson JA. et al., Science (2007) 318: 1917-1920.)、Daleyらにより作製された人工多能性幹細胞(Park IH, Daley GQ. et al., Nature (2007) 451: 141-146)、桜田らにより作製された人工多能性幹細胞(特開2008-307007号)等も用いることができる。このほか、公開されているすべての論文(例えば、Shi Y., Ding S., et al., Cell Stem Cell, (2008) Vol3, Issue 5,568-574;Kim JB., Scholer HR., et al., Nature, (2008) 454, 646-650;Huangfu D., Melton, DA., et al., Nature Biotechnology, (2008) 26, No 7, 795-797)、あるいは特許(例えば、特開2008-307007号、特開2008-283972号、US2008-2336610、US2009-047263、WO2007-069666、WO2008-118220、WO2008-124133、WO2008-151058、WO2009-006930、WO2009-006997、WO2009-007852)に記載されている当該分野で公知の人工多能性幹細胞のいずれも用いることができる。
「人工多能性幹細胞」としては、NIH、理研(理化学研究所)、京都大学等が樹立した各種iPSC株が利用可能である。例えば、ヒトiPSC株であれば、理研のHiPS-RIKEN-1A株、HiPS-RIKEN-2A株、HiPS-RIKEN-12A株、Nips-B2株、京都大学の253G1株、201B7株、409B2株、454E2株、606A1株、610B1株、648A1株等が挙げられる。あるいは、京都大学やCellular Dynamics International等から提供される臨床グレードの細胞株並びにそれらの細胞株を用いて作製された研究用および臨床用の細胞株等を用いてもよい。
「胚性幹細胞(ESC)」としては、マウスESCであれば、inGenious targeting laboratory社、理研(理化学研究所)等が樹立した各種マウスESC株が利用可能であり、ヒトESCであれば、NIH、理研、京都大学、Cellartis社が樹立した各種ヒトESC株が利用可能である。たとえば、ヒトESC株としては、NIHのCHB-1〜CHB-12株、RUES1株、RUES2株、HUES1〜HUES28株等、WisCell ResearchのH1株、H9株、理研のKhES-1株、KhES-2株、KhES-3株、KhES-4株、KhES-5株、SSES1株、SSES2株、SSES3株等を利用することができる。あるいは、臨床グレードの細胞株並びにそれらの細胞株を用いて作製された研究用および臨床用の細胞株等を用いてもよい。
本明細書において「心筋細胞」とは、特に述べない限り、心室筋細胞、心房筋細胞、ペースメーカー細胞などのサブタイプを1種以上含む。
本明細書において「心筋細胞を含む細胞集団」は、心筋細胞と心筋細胞以外の細胞を1種以上含む細胞集団を意味し、生体内(in vivo)におけるものでも、生体外(ex vivo)におけるものでも、培養されているもの(in vitro)でもよい。心筋細胞を含む細胞集団は、例えば、生体内にある、または任意の方法で採取されて生体外にある、末梢血、心臓、骨髄組織、脂肪組織、骨格筋組織、羊膜組織、胎盤組織、臍帯血などに含まれる細胞集団であってもよいし、心筋細胞へ分化誘導することが可能な細胞(例、幹細胞、多能性幹細胞、ESC、iPSC)を、心筋細胞への分化誘導に適した条件下で培養することにより得られた細胞集団(胚様体を含む)であってもよい。
本明細書において「心筋細胞以外の細胞」とは、特に限定はないが、例えば、「心筋細胞を含む細胞集団」が由来する生体組織、培養物に含まれる心筋細胞以外の細胞が挙げられる。
一つの実施形態では、「心筋細胞を含む細胞集団」は、iPSCから分化誘導した心筋細胞(1種以上のサブタイプを含む)と未分化のiPSC等の心筋細胞以外の細胞を含む細胞集団である。
本明細書において「心室筋細胞を含む細胞集団」は、心室筋細胞と、心室筋細胞以外の細胞を1種以上含む細胞集団である。
本明細書において「心室筋細胞以外の細胞」とは、特に限定はないが、例えば、心室筋細胞以外の心筋細胞のサブタイプ(例、心房筋細胞、ペースメーカー細胞)、心筋細胞以外の細胞が挙げられる。
本発明における「心筋細胞」、「心室筋細胞」、「心筋細胞以外の細胞」および「心室筋細胞以外の細胞」は、ヒト由来の細胞であってもよいし、ヒト以外の哺乳類(非ヒト哺乳動物)由来の細胞であってもよい。非ヒト哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、サルが挙げられる。
本明細書において「対象細胞」とは、本発明のトランスフェクションの対象となる心筋細胞またはその特定のサブタイプ(例えば、心室筋細胞、心房筋細胞、ペースメーカー細胞など)を意味する。
本明細書において「miRNA」とは、mRNAからタンパク質への翻訳の阻害やmRNAの分解を通して、遺伝子の発現調節に関与する、細胞内に存在する短鎖(通常20〜25塩基)のノンコーディングRNAである。このmiRNAは、DNAからmiRNAとその相補鎖を含むヘアピンループ構造を取ることが可能な一本差のpri−miRNAとして転写され、核内にあるDroshaと呼ばれる酵素により一部が切断されpre−miRNAとなって核外に輸送された後、さらにDicerによって切断されて機能する。
「〜を含む(comprise(s)又はcomprising)」とは、その語句に続く要素の包含を示すがこれに限定されないことを意味する。したがって、その語句に続く要素の包含は示唆するが、他の任意の要素の除外は示唆しない。
「〜からなる(consist(s) of又はconsisting of)」とは、その語句に続くあらゆる要素を包含し、かつ、これに限定されることを意味する。したがって、「〜からなる」という語句は、列挙された要素が要求されるか又は必須であり、他の要素は実質的に存在しないことを示す。「〜から本質的になる」とは、その語句に続く任意の要素を包含し、かつ、その要素について本開示で特定された活性又は作用に影響しない他の要素に限定されることを意味する。したがって、「〜から本質的になる」という語句は、列挙された要素が要求されるか又は必須であるが、他の要素は任意選択であり、それらが列挙された要素の活性又は作用に影響を及ぼすかどうかに応じて、存在させる場合もあり、存在させない場合もあることを示す。
以下、本明細書中で用いられる各置換基の定義について詳述する。特記しない限り各置換基は以下の定義を有する。
本明細書中、「直鎖状C5−13アルキル基」としては、例えば、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デカニル、ウンデカニル、ドデカニル、トリデカニルが挙げられる。
本明細書中、「直鎖状C13−17アルケニル基」としては、例えば、1−トリデセニル、2−トリデセニル、3−トリデセニル、4−トリデセニル、5−トリデセニル、6−トリデセニル、7−トリデセニル、8−トリデセニル、9−トリデセニル、10−トリデセニル、11−トリデセニル、12−トリデセニル;1−テトラデセニル、2−テトラデセニル、3−テトラデセニル、4−テトラデセニル、5−テトラデセニル、6−テトラデセニル、7−テトラデセニル、8−テトラデセニル、9−テトラデセニル、10−テトラデセニル、11−テトラデセニル、12−テトラデセニル、13−テトラデセニル;1−ペンタデセニル、2−ペンタデセニル、3−ペンタデセニル、4−ペンタデセニル、5−ペンタデセニル、6−ペンタデセニル、7−ペンタデセニル、8−ペンタデセニル、9−ペンタデセニル、10−ペンタデセニル、11−ペンタデセニル、12−ペンタデセニル、13−ペンタデセニル、14−ペンタデセニル;1−ヘキサデセニル、2−ヘキサデセニル、3−ヘキサデセニル、4−ヘキサデセニル、5−ヘキサデセニル、6−ヘキサデセニル、7−ヘキサデセニル、8−ヘキサデセニル、9−ヘキサデセニル、10−ヘキサデセニル、11−ヘキサデセニル、12−ヘキサデセニル、13−ヘキサデセニル、14−ヘキサデセニル、15−ヘキサラデセニル;1−ヘプタデセニル、2−ヘプタデセニル、3−ヘプタデセニル、4−ヘプタデセニル、5−ヘプタデセニル、6−ヘプタデセニル、7−ヘプタデセニル、8−ヘプタデセニル、9−ヘプタデセニル、10−ヘプタデセニル、11−ヘプタデセニル、12−ヘプタデセニル、13−ヘプタデセニル、14−ヘプタデセニル、15−ヘプタラデセニル、16−ヘプタラデセニルが挙げられる。これらの直鎖状C13−17アルケニル基は炭素−炭素二重結合を1つ含むためシス型およびトランス型の構造を取り得るが、どちらの構造であってもよい。
本明細書中、「直鎖状C17アルカジエニル基」としては、例えば、1,3−ヘプタデカジエニル、1,4−ヘプタデカジエニル、1,5−ヘプタデカジエニル、1,6−ヘプタデカジエニル、1,7−ヘプタデカジエニル、1,8−ヘプタデカジエニル、1,9−ヘプタデカジエニル、1,10−ヘプタデカジエニル、1,11−ヘプタデカジエニル、1,12−ヘプタデカジエニル、1,13−ヘプタデカジエニル、1,14−ヘプタデカジエニル、1,15−ヘプタデカジエニル、1,16−ヘプタデカジエニル、2,4−ヘプタデカジエニル、2,5−ヘプタデカジエニル、2,6−ヘプタデカジエニル、2,7−ヘプタデカジエニル、2,8−ヘプタデカジエニル、2,9−ヘプタデカジエニル、2,10−ヘプタデカジエニル、2,11−ヘプタデカジエニル、2,12−ヘプタデカジエニル、2,13−ヘプタデカジエニル、2,14−ヘプタデカジエニル、2,15−ヘプタデカジエニル、2,16−ヘプタデカジエニル、3,5−ヘプタデカジエニル、3,6−ヘプタデカジエニル、3,7−ヘプタデカジエニル、3,8−ヘプタデカジエニル、3,9−ヘプタデカジエニル、3,10−ヘプタデカジエニル、3,11−ヘプタデカジエニル、3,12−ヘプタデカジエニル、3,13−ヘプタデカジエニル、3,14−ヘプタデカジエニル、3,15−ヘプタデカジエニル、3,16−ヘプタデカジエニル、4,6−ヘプタデカジエニル、4,7−ヘプタデカジエニル、4,8−ヘプタデカジエニル、4,9−ヘプタデカジエニル、4,10−ヘプタデカジエニル、4,11−ヘプタデカジエニル、4,12−ヘプタデカジエニル、4,13−ヘプタデカジエニル、4,14−ヘプタデカジエニル、4,15−ヘプタデカジエニル、4,16−ヘプタデカジエニル、5,7−ヘプタデカジエニル、5,8−ヘプタデカジエニル、5,9−ヘプタデカジエニル、5,10−ヘプタデカジエニル、5,11−ヘプタデカジエニル、5,12−ヘプタデカジエニル、5,13−ヘプタデカジエニル、5,14−ヘプタデカジエニル、5,15−ヘプタデカジエニル、5,16−ヘプタデカジエニル、6,8−ヘプタデカジエニル、6,9−ヘプタデカジエニル、6,10−ヘプタデカジエニル、6,11−ヘプタデカジエニル、6,12−ヘプタデカジエニル、6,13−ヘプタデカジエニル、6,14−ヘプタデカジエニル、6,15−ヘプタデカジエニル、6,16−ヘプタデカジエニル、7,9−ヘプタデカジエニル、7,10−ヘプタデカジエニル、7,11−ヘプタデカジエニル、7,12−ヘプタデカジエニル、7,13−ヘプタデカジエニル、7,14−ヘプタデカジエニル、7,15−ヘプタデカジエニル、7,16−ヘプタデカジエニル、8,10−ヘプタデカジエニル、8,11−ヘプタデカジエニル、8,12−ヘプタデカジエニル、8,13−ヘプタデカジエニル、8,14−ヘプタデカジエニル、8,15−ヘプタデカジエニル、8,16−ヘプタデカジエニル、9,11−ヘプタデカジエニル、9,12−ヘプタデカジエニル、9,13−ヘプタデカジエニル、9,14−ヘプタデカジエニル、9,15−ヘプタデカジエニル、9,16−ヘプタデカジエニル、10,12−ヘプタデカジエニル、10,13−ヘプタデカジエニル、10,14−ヘプタデカジエニル、10,15−ヘプタデカジエニル、10,16−ヘプタデカジエニル、11,13−ヘプタデカジエニル、11,14−ヘプタデカジエニル、11,15−ヘプタデカジエニル、11,16−ヘプタデカジエニル、12,14−ヘプタデカジエニル、12,15−ヘプタデカジエニル、12,16−ヘプタデカジエニル、13,15−ヘプタデカジエニル、13,16−ヘプタデカジエニル、14,16−ヘプタデカジエニルが挙げられる。これらの直鎖状C11アルカジエニル基は炭素−炭素二重結合を2つ含むため、それぞれにおいて互いに独立してシス型およびトランス型の構造を取り得るが、それぞれどちらの構造であってもよい。
本明細書中、「直鎖状C2−9アルキル基」としては、例えば、エチル、ブチル、プロピル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルが挙げられる。
式(I)におけるn1、n2、n3、L、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、およびRfの各々の好ましい例は次の通りである。
n1は、好ましくは3〜5の整数である。
n2は、好ましくは0〜2の整数である。
n3は、好ましくは0〜2の整数である。
Lは、好ましくは−C(O)O−である。
Raは、好ましくは直鎖状C5−9アルキル基、直鎖状C13−17アルケニル基または直鎖状C17アルカジエニル基である。
Rbは、好ましくは直鎖状C4−8アルキル基である。
Rcは、好ましくは水素原子または直鎖状C4−7アルキル基である。
Rdは、好ましくは水素原子または直鎖状C3−6アルキル基である。
Reは、好ましくは直鎖状C3−6アルキル基である。
Rfは、好ましくは直鎖状C3−7アルキル基である。
化合物(I)の好適な具体例は次の通りである。
化合物(I−A):n1が3〜5の整数であり、n2が0であり、n3が0〜2の整数であり、Lが−C(O)O−であり、Raが直鎖状C5−9アルキル基であり、Rbが直鎖状C4−8アルキル基であり、Rcが水素原子であり、Rdが水素原子であり、Reが直鎖状C3−6アルキル基であり、Rfが直鎖状C3−7アルキル基である化合物。
化合物(I−B):n1が3〜5の整数であり、n2が0または1であり、n3が0または1であり、Lが−C(O)O−であり、Raが直鎖状C5−9アルキル基であり、Rbが直鎖状C4−8アルキル基であり、Rcが直鎖状C5−7アルキル基であり、Rdが水素原子であり、Reが直鎖状C3−6アルキル基であり、Rfが直鎖状C3−7アルキル基である化合物。
化合物(I−C):n1が3〜5の整数であり、n2が0または1であり、n3が0〜2の整数であり、Lが−C(O)O−であり、Raが直鎖状C5−9アルキル基であり、Rbが直鎖状C4−8アルキル基であり、Rcが水素原子であり、Rdが直鎖状C3−6アルキル基であり、Reが直鎖状C3−6アルキル基であり、Rfが直鎖状C3−7アルキル基である化合物。
化合物(I−D):n1が3〜5の整数であり、n2が0または1であり、n3が0〜2の整数であり、Lが−C(O)O−であり、Raが、直鎖状C13−17アルケニル基または直鎖状C17アルカジエニル基であり、Rbが直鎖状C3−6アルキル基であり、Rcが直鎖状C3−6アルキル基であり、Rdが水素原子であり、Reが直鎖状C2−6アルキル基であり、Rfが直鎖状C2−7アルキル基である化合物。
化合物(I)のより好適な具体例は次の通りである。
化合物(a):n1が3または4であり、n2が0であり、n3が0または2であり、Lが−C(O)O−であり、Raが直鎖状Cアルキル基であり、Rbが直鎖状Cアルキル基であり、Rcが水素原子であり、Rdが水素原子であり、Reが直鎖状C5−6アルキル基であり、Rfが直鎖状C6−7アルキル基である化合物。
化合物(b):n1が3〜5の整数であり、n2が0または1であり、n3が0または1であり、Lが−C(O)O−であり、Raが直鎖状C6−7アルキル基であり、Rbが直鎖状C5−6アルキル基であり、Rcが直鎖状C5−6アルキル基であり、Rdが水素原子であり、Reが直鎖状C4−5アルキル基であり、Rfが直鎖状C5−6アルキル基である化合物。
化合物(c):n1が3〜5の整数であり、n2が0であり、n3が2であり、Lが―C(O)O−であり、Raが直鎖状C5−9アルキル基であり、Rbが直鎖状C4−8アルキル基であり、Rcが水素原子であり、Rdが直鎖状C3−5アルキル基であり、Reが直鎖状C3−5アルキル基であり、Rfが直鎖状C3−5アルキル基である化合物。
化合物(d):n1が3〜5の整数であり、n2が0または1であり、n3が0〜2の整数であり、Lが−C(O)O−であり、Raが、直鎖状C13−17アルケニル基または直鎖状C17アルカジエニル基であり、Rbが直鎖状C3−5アルキル基であり、Rcが直鎖状C3−5アルキル基であり、Rdが水素原子であり、Reが直鎖状C3−6アルキル基であり、Rfが直鎖状C3−7アルキル基である化合物。
化合物(I)の塩としては、薬理学的に許容される塩が好ましく、例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩が挙げられる。
無機塩基との塩の好適な例としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。好ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩であり、より好ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩である。
有機塩基との塩の好適な例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン]、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジベンジルエチレンジアミンとの塩が挙げられる。
無機酸との塩の好適な例としては、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸との塩が挙げられる。好ましくは、塩酸との塩、リン酸との塩である。
有機酸との塩の好適な例としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸との塩が挙げられる。
塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、アルギニン、リジン、オルニチンとの塩が挙げられる。
酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、アスパラギン酸、グルタミン酸との塩が挙げられる。
以下、本発明の組成物について説明する。
本発明によるトランスフェクション方法、精製方法および製造方法では、1)式(I)で表される化合物またはその塩(本発明の化合物)、2)構造脂質、および3)核酸を含む、心筋細胞への核酸のトランスフェクション用組成物、すなわち本発明の組成物、を使用して、所定の核酸を心筋細胞に導入する。
本発明の典型的な実施形態において、本発明の組成物に含まれる本発明の化合物および構造脂質は、脂質粒子を形成しており、核酸はこの脂質粒子に内封されている。
「構造脂質」は、本発明の化合物と混合して混合脂質成分を調製した後、脂質粒子を形成することができるものであれば特に限定されるものではない。そのような構造脂質としては、例えば、
ステロール類(例えば、コレステロール、コレステロールエステル、コレステロールヘミコハク酸など);
リン脂質(例えば、ホスファチジルコリン(例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、リソホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジリノレノイルホスファチジルコリン、MC−1010(NOF CORPORATION)、MC−2020(NOF CORPORATION)、MC−4040(NOF CORPORATION)、MC−6060(NOF CORPORATION)、MC−8080(NOF CORPORATION)など)、ホスファチジルセリン(例えば、ジパルミトイルホスファチジルセリン、ジステアロイルホスファチジルセリン、ジオレオイルホスファチジルセリン、パルミトイルオレオイルホスファチジルセリンなど)、ホスファチジルエタノールアミン(例えば、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン、リソホスファチジルエタノールアミンなど)、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸など);および
ポリエチレングリコール脂質(PEG脂質)(例えば、PEG−DAA、PEG−DAG、PEG−phospholipid cunjugate、PEG−Cer、PEG−cholesterol、PEG−C−DOMG、2KPEG−CMG、GM−020(NOF CORPORATION)、GS−020(NOF CORPORATION)、GS−050(NOF CORPORATION)など)
からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。本発明では、構造脂質として、ステロール類(特に、コレステロール)、リン脂質(特に、ホスファチジルコリン)およびポリエチレングリコール脂質の3種全てを用いることが好ましい。
本発明の組成物における、本発明の化合物と構造脂質との割合は、目的に応じて適宜調節することができる。例えば、本発明の組成物において、本発明の化合物および構造脂質を含有する混合脂質成分によって脂質粒子が形成されている場合、本発明の化合物1モルに対して、構造脂質は通常0.008〜4モルの割合であり、好ましくは0.4〜1.5モルの割合である。また、別の規定の仕方をすれば、混合脂質成分中、本発明の化合物は通常1〜4モル、ステロール類は通常0〜3モル、リン脂質は通常0〜2モル、ポリエチレングリコール脂質は通常0〜1モルの比率である。本発明の化合物と他の脂質成分とを混合して用いる場合のより好ましい態様は、本発明の化合物1〜1.5モル、ステロール類0〜1.25モル、リン脂質0〜0.5モルおよびポリエチレングリコール脂質0〜0.125モルの比率である。
「核酸」とは、ヌクレオチドおよび該ヌクレオチドと同等の機能を有する分子が重合した分子であればいかなるものでもよく、例えば、リボヌクレオチドの重合体であるRNA、デオキシリボヌクレオチドの重合体であるDNA、リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドが混合した重合体、および、ヌクレオチド類似体を含むヌクレオチド重合体を挙げることができ、さらに、核酸誘導体を含むヌクレオチド重合体であってもよい。また、核酸は、一本鎖核酸または二本鎖核酸であってもよい。また二本鎖核酸には、一方の鎖に対し、他方の鎖がストリンジェントな条件でハイブリダイズする二本鎖核酸も含まれる。
ヌクレオチド類似体としては、RNAまたはDNAと比較して、ヌクレアーゼ耐性の向上または、安定化させるため、相補鎖核酸とのアフィニティーを上げるため、あるいは細胞透過性を上げるため、あるいは可視化させるために、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、RNAまたはDNAに修飾を施した分子であればいかなる分子でもよい。ヌクレオチド類似体としては、天然に存在する分子でも非天然の分子でもよく、例えば、糖部修飾ヌクレオチド類似体やリン酸ジエステル結合修飾ヌクレオチド類似体等が挙げられる。
糖部修飾ヌクレオチド類似体としては、ヌクレオチドの糖の化学構造の一部あるいは全てに対し、任意の化学構造物質を付加あるいは置換したものであればいかなるものでもよく、その具体例としては、2’−O−メチルリボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’−O−プロピルリボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’−メトキシエトキシリボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’−O−メトキシエチルリボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’−O−[2−(グアニジウム)エチル]リボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’−フルオロリボースで置換されたヌクレオチド類似体、糖部をモルフォリノ環に置換した核酸類縁体(モルフォリノ核酸)、糖部に架橋構造を導入することにより2つの環状構造を有する架橋構造型人工核酸(Bridged Nucleic Acid)(BNA)、より具体的には、2’位の酸素原子と4’位の炭素原子がメチレンを介して架橋したロックド人工核酸(Locked Nucleic Acid)(LNA)、およびエチレン架橋構造型人工核酸(Ethylene bridged nucleic acid)(ENA)[Nucleic Acid Research, 32, e175(2004)]、2’位の炭素原子と4’位の炭素原子がアミド結合を介して架橋したアミド架橋構造型人工核酸(Amide - Bridged Nucleic Acids) (AmNA)が挙げられ、さらにペプチド核酸(PNA)[Acc. Chem. Res., 32, 624(1999)]、オキシペプチド核酸(OPNA)[J. Am.Chem. Soc., 123, 4653 (2001)]、およびペプチドリボ核酸(PRNA)[J.Am. Chem. Soc., 122, 6900 (2000)]等を挙げることができる。
リン酸ジエステル結合修飾ヌクレオチド類似体としては、ヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の化学構造の一部あるいは全てに対し、任意の化学物質を付加あるいは置換したものであればいかなるものでもよく、その具体例としては、ホスホロチオエート結合に置換されたヌクレオチド類似体、N3’−P5’ホスホアミデート結合に置換されたヌクレオチド類似体等を挙げることができる[細胞工学, 16, 1463-1473 (1997)][RNAi法とアンチセンス法、講談社(2005)]。
核酸誘導体としては、核酸に比べ、ヌクレアーゼ耐性を向上させるため、安定化させるため、相補鎖核酸とのアフィニティーを上げるため、細胞透過性を上げるため、あるいは可視化させるために、該核酸に別の化学物質を付加した分子であればいかなる分子でもよく、その具体例としては、5’−ポリアミン付加誘導体、コレステロール付加誘導体、ステロイド付加誘導体、胆汁酸付加誘導体、ビタミン付加誘導体、Cy5付加誘導体、Cy3付加誘導体、6−FAM付加誘導体、およびビオチン付加誘導体等を挙げることができる。
本発明における核酸としては、対象細胞を含む細胞集団と接触させ、対象細胞へトランスフェクションすることにより、対象細胞の精製もしくは製造、またはその他の所期の目的を果たすことのできるものであれば特に限定されない。
本発明の好ましい一実施形態において、核酸はmRNAである。「mRNA」とは、タンパク質に翻訳可能な塩基配列を含むRNAを意味する。本発明におけるmRNAとしては、細胞内で所望のタンパク質を発現させることができるmRNAであれば、特に限定されない。本発明の一実施形態において、mRNAは、対象細胞で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列がさらに結合していてもよい、機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含むmRNAである。
本発明の好ましい一実施形態において、mRNAは下記(i)および/または(ii)を含む:
(i)心筋細胞(または心筋細胞サブタイプ)で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列、および機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含む、心筋細胞(または心筋細胞サブタイプ)特異的なmiRNA応答性mRNA;
(ii)機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含むmRNA。
(i)の実施形態における「心筋細胞(または心筋細胞サブタイプ)特異的なmiRNA応答性mRNA」は、「心筋細胞(または心筋細胞サブタイプ)で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列」と「機能的な遺伝子」とが“制御可能に連結”している核酸である。すなわち、「機能的な遺伝子」の発現は、「心筋細胞(または心筋細胞サブタイプ)で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列」によって制御され、「心筋細胞(または心筋細胞サブタイプ)で特異的に発現しているmiRNA」が存在する場合に、その存在量に応じて「機能的な遺伝子」のタンパク質への翻訳が調節される。典型的には、「心筋細胞(または心筋細胞サブタイプ)で特異的に発現しているmiRNA」が存在する心筋細胞(または心筋細胞サブタイプ)内で、その存在量に応じて「機能的な遺伝子」のタンパク質への翻訳は抑制され、当該タンパク質の心筋細胞(または心筋細胞サブタイプ)内での発現量(存在量)は減少する。このような機構により、「心筋細胞(または心筋細胞サブタイプ)で特異的に発現しているmiRNA」が存在する心筋細胞(または心筋細胞サブタイプ)と、そのようなmiRNAが存在しない心筋細胞(または心筋細胞サブタイプ)以外の細胞との間で「機能的な遺伝子」の発現量が相違することなり、それによって心筋細胞(または心筋細胞サブタイプ)とその他の細胞とを区別することができる。
「心筋細胞で特異的に発現しているmiRNA」(以下「心筋細胞特異的miRNA」と呼ぶ。)は、心筋細胞以外の細胞、より具体的には心筋細胞を含む細胞集団中の心筋細胞以外の細胞と比較して、心筋細胞でより高く発現しているmiRNAであれば特に限定されるものではない。例えば、心筋細胞特異的miRNAは、心筋細胞における発現量が、心筋細胞以外の細胞における発現量と比較して、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上または90%以上高いmiRNAであってよい。このようなmiRNAは、データベースの情報(例えば、http://www.mirbase.org/又はhttp://www.microrna.org/)に登録されたmiRNA、及び/または当該データベースに記載されている文献情報に記載されたmiRNAより適宜選択することができる。心筋細胞で特異的に発現しているmiRNAとしては、例えば、hsa−miR−1、hsa−miR−22−5p、hsa−miR−133a、hsa−miR−133b、hsa−miR−143−3p、hsa−miR−145−3p、hsa−miR−208a−3p、hsa−miR−208b−3p、hsa−miR−490−3p、hsa−miR−490−5p、hsa−miR−499a−5p、hsa−miR−1271−5p、hsa−miR−3907、hsa−miR−4324、hsa−let−7e−5pが挙げられる。このうち、心筋細胞特異的miRNAの好ましい具体例としては、hsa−miR−1、hsa−miR−208a−3p、hsa−miR−208b−3pおよびhsa−miR−499a−5pが挙げらる。
上記(i)において心筋細胞サブタイプで特異的に発現しているmiRNAで特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列、および機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含む、心筋細胞サブタイプ特異的なmiRNA応答性mRNAの特定の実施形態として、心室筋細胞で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列、および機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含む、心室筋細胞特異的なmiRNA応答性mRNAを用いることができる。「心室筋細胞特異的なmiRNA応答性mRNA」は、「心室筋細胞で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列」と「機能的な遺伝子」とが“制御可能に連結”している核酸である。すなわち、「機能的な遺伝子」の発現は、「心室筋細胞で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列」によって制御され、「心室筋細胞で特異的に発現しているmiRNA」が存在する場合に、その存在量に応じて「機能的な遺伝子」のタンパク質への翻訳が調節される。典型的には、「心室筋細胞で特異的に発現しているmiRNA」が存在する心室筋細胞内で、その存在量に応じて「機能的な遺伝子」のタンパク質への翻訳は抑制され、当該タンパク質の心室筋細胞内での発現量(存在量)は減少する。このような機構により、「心室筋細胞で特異的に発現しているmiRNA」が存在する心室筋細胞と、そのようなmiRNAが存在しない心室筋細胞以外の細胞との間で「機能的な遺伝子」の発現量が相違することなり、それによって心室筋細胞とその他の細胞とを区別することができる。
「心室筋細胞で特異的に発現しているmiRNA」(以下「心室筋細胞特異的miRNA」と呼ぶ。)は、心室筋細胞以外の細胞、より具体的には心室筋細胞を含む細胞集団中の心室筋細胞以外の細胞と比較して、心室筋細胞でより高く発現しているmiRNAであれば特に限定されるものではない。例えば、心室筋細胞特異的miRNAは、心室筋細胞における発現量が、心室筋細胞以外の細胞における発現量と比較して、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上または90%以上高いmiRNAであってよい。このようなmiRNAは、データベースの情報(例えば、http://www.mirbase.org/又はhttp://www.microrna.org/)に登録されたmiRNA、及び/または当該データベースに記載されている文献情報に記載されたmiRNAより適宜選択することができる。心筋細胞特異的miRNAのなかでも、心室筋細胞特異的miRNAの好ましい具体例としては、hsa−miR−208b−3pが挙げられる。
上に例示した心筋細胞特異的miRNAの塩基配列を下記表1に示す。
Figure 2020032185
「心筋細胞で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列」(以下「心筋細胞特異的miRNA認識配列」と呼ぶ。)は、所定の複数のタンパク質と相互作用してRISC(RNA-induced silencing complex)を形成した状態にある心筋細胞特異的miRNAによって、特異的に認識される塩基配列である。心筋細胞特異的miRNA認識配列は、心筋細胞特異的miRNAが認識し、RISCとしてハイブリダイズ可能であればよく、完全に相補的な配列であってもよいし、不一致(ミスマッチ)を有する配列であってもよい。例えば、心筋細胞特異的miRNA認識配列は、心筋細胞特異的miRNAと完全に相補的な配列を基準として、1%以下、5%以下、10%以下、20%以下、30%以下、40%以下または50%以下のミスマッチ、あるいは1塩基、2塩基、3塩基、4塩基、5塩基、6塩基、7塩基、8塩基、9塩基または10塩基のミスマッチを有していてもよい。心筋細胞特異的miRNA認識配列の塩基長は特に限定されるものではなく、心筋細胞特異的miRNA(を含むRISC)に対応する適切な塩基長とすればよいが、例えば、18塩基以上23塩基以下が好ましく、20塩基または21塩基がより好ましい。
心筋細胞特異的miRNA認識配列のなかでも、「心室筋細胞で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列」(以下「心室筋細胞特異的miRNA認識配列」と呼ぶ。)は、所定の複数のタンパク質と相互作用してRISC(RNA-induced silencing complex)を形成した状態にある心室筋細胞特異的miRNAによって、特異的に認識される塩基配列である。心室筋細胞特異的miRNA認識配列は、心室筋細胞特異的miRNAが認識し、RISCとしてハイブリダイズ可能であればよく、完全に相補的な配列であってもよいし、不一致(ミスマッチ)を有する配列であってもよい。例えば、心室筋細胞特異的miRNA認識配列は、心室筋細胞特異的miRNAと完全に相補的な配列を基準として、1%以下、5%以下、10%以下、20%以下、30%以下、40%以下または50%以下のミスマッチ、あるいは1塩基、2塩基、3塩基、4塩基、5塩基、6塩基、7塩基、8塩基、9塩基または10塩基のミスマッチを有していてもよい。心室筋細胞特異的miRNA認識配列の塩基長は特に限定されるものではなく、心室筋細胞特異的miRNA(を含むRISC)に対応する適切な塩基長とすればよいが、例えば、18塩基以上23塩基以下が好ましく、20塩基または21塩基がより好ましい。
上に例示した心筋細胞特異的miRNAの塩基配列のそれぞれに対応する、標準的な心筋細胞特異的miRNA認識配列(完全に相補的な塩基配列)を下記表2に示す。
Figure 2020032185
(i)の実施形態における「機能的な遺伝子」は、心筋細胞を含む細胞集団における心筋細胞の精製、または、心室筋細胞を含む細胞集団における心室筋細胞の精製のために用いることができる公知の遺伝子、より一般的には、細胞集団の中から特定の細胞を選別するために用いることのできる各種の遺伝子であればよく、特に限定されるものではない。そのような「機能的な遺伝子」としては、例えば、薬剤耐性遺伝子、蛍光タンパク質をコードする遺伝子、アポトーシス誘導遺伝子、および自殺遺伝子が挙げられる。複数の「機能的な遺伝子」を使用する場合、例えば後述するような実施形態において、「機能的な遺伝子」を含む(i)の心筋細胞特異的なmiRNA応答性mRNAまたは心室筋細胞特異的なmiRNA応答性mRNAと、「機能的な遺伝子」を含む(ii)のmRNAとを併用する場合、それぞれの「機能的な遺伝子」は、互いに独立して薬剤耐性遺伝子、蛍光タンパク質をコードする遺伝子、アポトーシス誘導遺伝子、および自殺遺伝子の中から選択することができ、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
「薬剤耐性遺伝子」としては、例えば、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子が挙げられる。これらの遺伝子は、いずれか1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
「蛍光タンパク質をコードする遺伝子」としては、例えば、Sirius、BFP、EBFPなどの青色蛍光タンパク質;mTurquoise、TagCFP、AmCyan、mTFP1、MidoriishiCyan、CFPなどのシアン蛍光タンパク質;TurboGFP、AcGFP、TagGFP、Azami-Green (例えば、hmAG1)、ZsGreen、EmGFP、EGFP、GFP2、HyPerなどの緑色蛍光タンパク質;TagYFP、EYFP、Venus、YFP、PhiYFP、PhiYFP-m、TurboYFP、ZsYellow、mBananaなどの黄色蛍光タンパク質;KusabiraOrange (例えば、hmKO2)、mOrangeなどの橙色蛍光タンパク質;TurboRFP、DsRed-Express、DsRed2、TagRFP、DsRed-Monomer、AsRed2、mStrawberryなどの赤色蛍光タンパク質;TurboFP602、mRFP1、JRed、KillerRed、mCherry、HcRed、KeimaRed(例えば、hdKeimaRed)、mRasberry、mPlumなどの近赤外蛍光タンパク質が挙げられる。これらの遺伝子は、いずれか1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。2種以上の蛍光タンパク質をコードする遺伝子を利用する場合、その蛍光タンパク質の発光波長を異なるものとすれば、互いの視認性を妨げないため好ましい。
「アポトーシス誘導遺伝子」としては、例えば、IκB、Smac/DIABLO、ICE、HtrA2/OMI、AIF、endonuclease G、Bax、Bak、Noxa、Hrk (harakiri)、Mtd、Bim、Bad、Bid、PUMA、activated caspase-3、Fas、Tkが挙げられる。これらの遺伝子は、いずれか1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
「自殺遺伝子」としては、例えば、ジフテリアA毒素、単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子(HSV-TK)、カルボキシペプチダーゼG2(CPG2)、カルボキシルエステラーゼ(CA)、シトシンデアミナーゼ(CD)、チトクロームP450(cyt-450)、デオキシシチジンキナーゼ(dCK)、ニトロレダクターゼ(NR)、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)、チミジンホスホリラーゼ(TP)、水痘帯状疱疹ウイルスチミジンキナーゼ(VZV-TK)、キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT)をコードする遺伝子が挙げられる。これらの遺伝子は、いずれか1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
対象細胞特異的miRNA認識配列および機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含む、本発明において用いることのできる「心筋細胞特異的なmiRNA応答性mRNA」および「心室筋細胞特異的なmiRNA応答性mRNA」(対象細胞特異的なmiRNA応答性mRNA)は、当業者であれば適切なものを設計し作成することができる。必要であれば、これらの対象細胞特異的なmiRNA応答性mRNAの全長の塩基配列の具体例は、例えば前掲特許文献4を参照することができる。
対象細胞特異的なmiRNA応答性mRNAは、必要に応じて対象細胞で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列(対象細胞特異的miRNA認識配列)および「機能的な遺伝子」以外の塩基配列を含んでいてもよい。例えば、対象細胞特異的なmiRNA応答性mRNAは、局在化シグナルをコードする遺伝子を含んでいてもよい。一例として、「機能的な遺伝子」として「蛍光タンパク質をコードする遺伝子」を選択する実施形態において、当該遺伝子に局在化シグナルをコードする遺伝子が連結されていてもよい。そのような実施形態は、後述する対象細胞の精製方法および製造方法における選別工程を、イメージングサイトメトリー等を用いて画像上で行う際に特に有利である。
対象細胞特異的なmiRNA応答性mRNAにおいて、対象細胞特異的miRNA認識配列と「機能的な遺伝子」とが“制御可能に連結”されているとは、「機能的な遺伝子」のオープンリーディングフレーム(ORF)(ただし、開始コドンを含む。)の5’非翻訳領域(UTR)内、3’UTR内、または当該ORF内(開始コドンの3’側)の少なくとも1つに、少なくとも1つの対象細胞特異的miRNA認識配列が含まれていることを意味する。対象細胞特異的miRNA認識配列の数は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つまたはそれ以上であってよく、それらの認識配列は、5’UTR、3’UTRまたはORFの1つ以上に含まれていてよい。
本発明の一実施形態において、対象細胞特異的なmiRNA応答性mRNAは、5’末端から3’末端の向きに、Cap構造(7メチルグアノシン5’リン酸)、「機能的な遺伝子」をコードするORFおよびポリAテイルを備えており、5’UTR内、3’UTR内、及び/またはORF内に、少なくとも1つの対象細胞特異的miRNA認識配列を備えている。効率的な翻訳の制御(抑制)を達成するためには、対象細胞特異的miRNA認識配列および「機能的な遺伝子」は、5’末端から3’末端の向きに、この順序で配置されていることが好ましく、したがって少なくとも1つの対象細胞特異的miRNA認識配列が5’UTR内に含まれていることが好ましい。
cap構造と対象細胞特異的miRNA認識配列との間の塩基数及び塩基の種類は、ステム構造や立体構造を構成しない限り、任意であってよい。例えば、cap構造と対象細胞特異的miRNA認識配列との間の塩基数は、0〜50塩基、好ましくは10〜30塩基とすることができる。
対象細胞特異的miRNA認識配列と、機能的な遺伝子の開始コドン(真核生物においては通常AUG)との間の塩基数及び塩基の種類は、ステム構造や立体構造を構成しない限り、任意であってよい。例えば、対象細胞特異的miRNA認識配列と機能的な遺伝子の開始コドンとの間の塩基数は、0〜50塩基、好ましくは10〜30塩基とすることができる。
対象細胞特異的miRNA認識配列内には、開始コドンとなる塩基配列が存在しないことが好ましい。例えば、対象細胞特異的miRNA認識配列が5’UTRに存在し、かつ、当該認識配列が開始コドンとしてAUGを含む場合には、3'側に連結される機能的な遺伝子との関係上でインフレームとなるように設計されることが好ましい。また、対象細胞特異的miRNA認識配列が開始コドンとしてAUGを含む場合、当該AUGを開始コドンではないGUGに変換した上で使用することも可能である。一方で、対象細胞特異的miRNA認識配列内の開始コドンの影響を最小限に留めるために、当該認識配列の5’UTR内における配置場所を適宜調整することができる。例えば、cap構造と対象細胞特異的miRNA認識配列内の開始コドン(AUG)との間の塩基数が、0〜60塩基、例えば、0〜15塩基、10〜20塩基、20〜30塩基、30〜40塩基、40〜50塩基、50〜60塩基となるよう設計してもよい。
対象細胞特異的なmiRNA応答性mRNAは、上記のようにしてそこに含める要素(配列)が決定されれば、当業者にとって既知の遺伝子工学的な方法、一般的には、プロモーター配列を含むテンプレートDNAを鋳型として用いたin vitro合成法により、合成することができる。
対象細胞特異的なmiRNA応答性mRNAは、細胞集団中の対象細胞の選別における有効性が検証されたものであってもよい。すなわち、本発明のトランスフェクション方法、精製方法および製造方法は、各方法を実施する前に必要に応じて予め、対象細胞特異的なmiRNA応答性mRNAを用いて、細胞集団中の対象細胞の選別における有効性を検証する工程(および当該工程の結果に基づいて対象細胞特異的なmiRNA応答性mRNAを選択する工程)を行ってもよい。具体的には、上記に例示したような5’ UTRを有する、候補となる複数種の対象細胞特異的なmiRNA応答性mRNAを作製して、それぞれを純度が既知の対象細胞を含む細胞集団にトランスフェクションし、対象細胞の選別の有効性が高いものを決定することができる。
対象細胞特異的なmiRNA応答性mRNAは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。2種以上の対象細胞特異的なmiRNA応答性mRNAを用いる場合、それらのmiRNA応答性mRNAに含まれる対象細胞特異的miRNA認識配列および機能的な遺伝子は、miRNA応答性mRN同士の間で互いに異なっていることが好ましい。また、2種以上の対象細胞特異的なmiRNA応答性mRNAを用いる場合、それらのmiRNA応答性mRNAに含まれる対象細胞特異的miRNA認識配列の数および5’末端からの距離、ならびにその他の構造的特徴は、各miRNA応答性mRNAにおいて同一であってもよいし、異なっていてもよい。あるいは、対象細胞特異的miRNA認識配列は同一であるが、機能的な遺伝子が異なる、2種以上の対象細胞特異的なmiRNA応答性mRNAを用いることもできる。例えば、FasおよびBimのように、異なる経路でシグナル伝達するアポトーシス誘導遺伝子の組み合わせを、同一の対象細胞特異的miRNA認識配列と組み合わせた、2種類の対象細胞特異的なmiRNA応答性mRNAを用いることが可能であり、この場合には目的としない細胞(対象細胞以外の細胞)の除去を効率よく行うことが期待できる。
(ii)の実施形態のmRNAに含まれる「機能的な遺伝子」としては、(i)の実施形態のmRNAに含まれる「機能的な遺伝子」と同様のもの、例えば薬剤耐性遺伝子および蛍光タンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。
あるいは、(ii)の実施形態のmRNAに含まれる「機能的な遺伝子」は、薬剤耐性遺伝子および蛍光タンパク質をコードする遺伝子以外の、核酸が細胞に導入されたことを示す遺伝子、いわゆるレポーター遺伝子であってもよい。そのようなレポーター遺伝子としては、例えば、蛍光タンパク質以外の、発光または呈色を補助するタンパク質や、細胞膜に局在して発現し、それを抗原とする抗体と結合可能な膜局在タンパク質が挙げられる。
本発明の一実施形態において、(i)の対象細胞特異的なmiRNA応答性mRNAと、(ii)のmRNAとは、併用することができる。すなわち、(i)のmiRNA応答性mRNAおよび(ii)のmRNAを両方とも対象細胞を含む細胞集団に接触させ、その細胞(特に心筋細胞)に導入することができる。このような実施形態において、(ii)のmRNAは「コントロールmRNA」と呼ぶことができる。
コントロールmRNAを併用することにより、対象細胞の選別をより効率的なものとすることができる。例えば、「コントロールmRNA」として薬剤耐性遺伝子、「機能的な遺伝子」としてアポトーシス誘導遺伝子または自殺遺伝子をそれぞれ用いた場合、薬剤耐性であり、且つ細胞死が誘導されていない細胞集団を選択することで、対象細胞の選別の精度を向上させるができる。より具体的には、トランスフェクションによる核酸の導入効率が悪い細胞、すなわち対象細胞特異的なmiRNA応答性mRNAの導入効率が悪い対象細胞およびその他の細胞を、薬剤耐性を示すことに基づいて識別し、そのような細胞を除外した上で、対象細胞特異的なmiRNA応答性mRNAが含む「機能的な遺伝子」の発現の有無によって対象細胞の選別をより効率的なものとすることができる。これは、対象細胞においてはその細胞内に存在している「心筋細胞特異的miRNA」または「心室筋細胞特異的miRNA」がmiRNA応答性mRNAの所定の塩基配列にハイブリダイズすることにより「機能的な遺伝子」の発現が抑制される、一方で対象細胞以外の細胞では「心筋細胞特異的miRNA」または「心室筋細胞特異的miRNA」は細胞内に存在しないため「機能的な遺伝子」の発現は抑制されないことによる。なお、薬剤耐性を示す細胞集団の選択は、公知の方法により行うことができる。
また、「コントロールmRNA」および「機能的な遺伝子」として蛍光タンパク質をコードする遺伝子をもちいた場合、より蛍光強度の低い細胞集団を選択することで、対象細胞の選別の精度を向上させるができる。より具体的には、トランスフェクションによる核酸の導入効率がよい細胞を、蛍光を発することに基づいて識別し、その細胞集団の中でもより蛍光強度の低い細胞集団を選択することにより、対象細胞の選別をより効率的なものとすることができる。これは、コントロールmRNAに含まれる蛍光タンパク質の対象細胞およびその他の細胞への導入量は、それと同時にトランスフェクションされる対象細胞特異的なmiRNA応答性mRNAの対象細胞およびその他の細胞への導入量と比例するためである。蛍光強度に基づく細胞の選択は、例えば、セルソーター(例えばベクソン・ディッキンソン社「FACS」)を用いて一定基準以上の蛍光を発している細胞を選択的に分離することにより可能である。
以下、本発明のトランスフェクション方法の工程について説明する。
本発明のトランスフェクション方法は、少なくとも、本発明の組成物と、対象細胞を含む細胞集団とを接触させる工程(本明細書において「組成物接触工程」と呼ぶ。)を含み、必要に応じてさらに、心筋細胞へ核酸を導入する(トランスフェクションする)ことに関するその他の工程を含んでいてもよい。また、本発明のトランスフェクション方法は、試薬として本発明の組成物を用いるが、それ以外の技術的事項は基本的に、一般的なトランスフェクション方法、例えば脂質ナノ粒子(LNP)またはリポソームを用いたトランスフェクション(リポフェクション)方法に準じたものとすることが可能である。例えば、本発明のトランスフェクション方法は、対象細胞を含む細胞集団への核酸含有LNPのトランスフェクションが可能な条件(トランスフェクションを誘起しうる条件)の下で行うことができる。
本発明の組成物を、生体内にある対象細胞を含む細胞集団と接触させる場合、投与対象(例えばヒトまたは非ヒト哺乳動物、好ましくはヒト)に対して、核酸の有効量が標的とする対象細胞に送達されるように、当該組成物を投与すればよい。このような実施形態においても、本発明の組成物は、安定かつ低毒性で安全に使用することができる。
本発明の組成物をin vivoで用いる場合、例えば、静脈内注射、動脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、腹腔内注射などの注射剤とすることが好ましいが、他の経路によっても核酸の有効量を目的の細胞に送達することができれば、それに適応した剤型とすることも可能である。
本発明の好ましい実施形態の一つにおいて、対象細胞を含む細胞集団は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)、またはその他の幹細胞、前駆細胞などの対象細胞へ分化誘導することが可能な細胞を、対象細胞への分化誘導に適した条件下で培養することにより作製される、前記幹細胞等と対象細胞が混合しているin vitroにおける細胞集団である。
iPS細胞またはその他の多能性幹細胞からの分化誘導工程を経て調製された細胞集団(胚様体であってもよい。)に対象細胞特異的なmiRNA応答性mRNAを含む組成物を接触させる時期は、一定程度の細胞が対象細胞に分化した後であれば特に限定されるものではなく、目的に応じて対象細胞に核酸をトランスフェクションするのに適した時期、例えば目標とする対象細胞の純度を達成する上で対象細胞の選別を行うのに適した時期であればよい。例えば、iPS細胞から対象細胞を含む胚様体が形成された日から起算して10〜40日目、好ましくは14〜20日目またはその前後に、その胚様体に本発明の組成物を接触させることができる。
本発明のトランスフェクション方法では、組成物接触工程の前後に、その他の工程、特に細胞に導入される「核酸」に対応する処理を含む工程を行うことができる。
例えば、本発明では「核酸」として「機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含むmRNA」を用いることができるが、その核酸が導入された細胞の濃縮、単離、または検出をするために、「機能的な遺伝子」として「薬剤耐性遺伝子」、「蛍光タンパク質をコードする遺伝子」、その他の陽性選択マーカー遺伝子または陰性選択マーカー遺伝子を用いてもよい。「薬剤耐性遺伝子」を用いる実施形態では、例えば、組成物接触工程の後、その薬剤耐性遺伝子(例えばピューロマイシン耐性遺伝子)に対応した薬剤(例えばピューロマイシン)を、適切な濃度で培地に添加する工程、およびその培地で細胞を培養する工程、その培養によって薬剤耐性遺伝子が導入された細胞を選択する工程、などを行うことができる。「蛍光タンパク質をコードする遺伝子」を用いる実施形態では、例えば、組成物接触工程の後、その蛍光タンパク質に対応した励起波長の光を照射する工程、その照射により発せられる蛍光を蛍光顕微鏡、セルソーター等で検出する工程、その検出によって蛍光タンパク質による蛍光の発光が所定の特徴を有する細胞を選択する工程、などを行うことができる。
本発明では「核酸」として「心筋細胞で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列、および機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含む、心筋細胞特異的なmiRNA応答性mRNA」または「心室筋細胞で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列、および機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含む、心室筋細胞特異的なmiRNA応答性mRNA」を用いることもできる。この実施形態では、対象細胞においてはその細胞内に存在している対象細胞で特異的に発現しているmiRNAがmiRNA応答性mRNAの所定の塩基配列にハイブリダイズすることにより「機能的な遺伝子」の発現が抑制される、一方で対象細胞以外の細胞では対象細胞で特異的に発現しているmiRNAは細胞内に存在しないため「機能的な遺伝子」の発現は抑制されない。したがって、「機能的な遺伝子」として、例えばそれが発現する細胞を死滅させる「アポトーシス誘導遺伝子」または「自殺遺伝子」を含むmiRNA応答性mRNAを用いる場合は、組成物接触工程の後に、それらの遺伝子の発現の有無によって、対象細胞以外の細胞が混在している細胞集団内の対象細胞の濃縮、単離、または検出をするための工程を行うことができる。なお、そのような実施形態の本発明の「トランスフェクション方法」は、後述するような、本発明の「心筋細胞の精製方法」、「心筋細胞の製造方法」、「心室筋細胞の精製方法」および「心室筋細胞の製造方法」に対応しており、「トランスフェクション方法」に関する技術的事項の記載を適宜「心筋細胞の精製方法」、「心筋細胞の製造方法」、「心室筋細胞の精製方法」および「心室筋細胞の製造方法」に適用することが可能である。
本発明の好ましい実施形態の一つにおいて、本発明のトランスフェクション方法は、下記工程1を含み、必要に応じてさらに下記工程2を含む方法として実施される:
工程1:細胞非接着性容器内において、対象細胞を含む細胞集団への本発明の組成物のトランスフェクションが可能な条件下で、対象細胞を含む細胞集団の凝集体を形成する工程(以下「凝集体形成工程」と呼ぶこともある。);
工程2:前記組成物がトランスフェクションされた細胞集団の中から、前記組成物に含まれている核酸の細胞内での機能に基づいて、対象細胞を選別する工程(以下「選別工程」と呼ぶこともある。)。
工程1(凝集体形成工程)には、より具体的には、下記工程1−1または1−2のいずれかが含まれていてもよい:
工程1−1:細胞非接着性容器内において、本発明の組成物およびマイクロキャリアの存在下で、対象細胞を含む細胞集団を培養し、本発明の組成物に含まれる核酸が導入された細胞と前記マイクロキャリアとからなる凝集体を形成する工程(以下「凝集体形成工程第1実施形態」と呼ぶこともある。);
工程1−2:細胞非接着性容器内において、本発明の組成物の存在下で、対象細胞を含む細胞集団を培養し、本発明の組成物に含まれる核酸が導入された細胞からなる凝集体を形成する工程(以下「凝集体形成工程第2実施形態」と呼ぶこともある。)。
さらに、工程1(凝集体形成工程)の前に、必要に応じて、下記工程AおよびBが含まれていてもよい:
工程A:多能性幹細胞(集団)の対象細胞への分化を誘導する工程;
工程B:工程Aによる分化誘導後の細胞(集団)を分散させる工程。
凝集体形成工程における対象細胞を含む細胞集団は、好ましくは接着性細胞集団である。ここで、「接着性細胞(集団)」とは、足場となる固相表面への接着状態において最適に維持又は増殖させることができる細胞(集団)を意味する。特に、工程1−1における「対象細胞を含む細胞集団」は、凝集能を有し、細胞非接着性容器内において培養されると凝集体を形成し得る細胞を含む集団である。また、工程1−2における「対象細胞を含む細胞集団」は、マイクロキャリアへの接着能を有し、細胞非接着性容器内においてマイクロキャリアとともに培養されるとマイクロキャリアに接着し得る細胞を含む集団である。
「対象細胞を含む細胞集団」はどのようにして調製されたものであってもよい。例えば、本発明のトランスフェクション方法においては、必要に応じて(工程1の前に行われる前記工程Aとして)、多能性幹細胞を対象細胞へ分化誘導するための工程を行ってもよい。前述したような各種の多能性幹細胞から対象細胞への分化誘導方法は特に限定されるものではなく、公知の各種の方法を用いることができる。多能性幹細胞から対象細胞への分化誘導方法としては、例えば、Laflamme MAらにより報告された方法が挙げられる(Laflamme MA & Murry CE, Nature 2011, Review)。また、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を浮遊培養により細胞塊(胚様体)を形成させて心筋細胞を製造する方法、BMPシグナル伝達を抑制する物質の存在下で心筋細胞を製造する方法(WO2005/033298)、Activin AとBMPを順に添加させて心筋細胞を製造する方法(WO2007/002136)、カノニカルWntシグナル経路の活性化を促す物質の存在下で心筋細胞を製造する方法(WO2007/126077)、人工多能性幹細胞からFlk/KDR陽性細胞を単離し、シクロスポリンAの存在下で心筋細胞を製造する方法(WO2009/118928)などを例示することもできる。
分化誘導された対象細胞とは、少なくとも心筋トロポニン(cTnT)またはαMHCを発現している細胞を意味する。cTnTは、ヒトの場合NCBIのaccession番号NM_000364が例示され、マウスの場合、NM_001130174が例示される。αMHCは、ヒトの場合NCBIのaccession番号NM_002471が例示され、マウスの場合、NM_001164171が例示される。
凝集体形成工程には、分散された状態の細胞集団が培養に供されることが好ましい。すなわち、本発明のトランスフェクション方法においては、必要に応じて、凝集体形成工程の前段工程においてあらかじめ、対象細胞を含む細胞集団、好ましくは(工程1の前に行われる前記工程Bとして)多能性幹細胞から対象細胞への分化誘導が行われた後の細胞集団の、分散処理のための工程を行ってもよい。分散処理は、公知の手法によって行うことができ、酵素などによる化学的処理、ピペッティングなどによる物理的処理、及びこれらの組み合わせを採用できる。化学処理には市販の試薬(例えば、Liberase TM Research Grade、Roche社;StemPro Accutase Cell Dissociation Reagent、Gibco社;TrypLE Select CTS、Gibco社など)を用いることができる。
凝集体形成工程における細胞集団の培養に用いられる「細胞非接着性容器」としては、(a)容器の表面が細胞との接着性を向上させる目的で人工的に処理(例えば、細胞外マトリクス等によるコーティング処理)されていないもの、または(b)容器の表面が、細胞との接着性を低下させる目的で人工的に処理(例えば、疎水性の分子によるコーティング処理)されているものを、使用することができる。「細胞非接着性」とは、接着性細胞が接着しないか、または接着しにくいこと、例えば、容器に播種した細胞の総数に対して、20%未満、好ましくは10%未満、更に好ましくは1%未満の細胞が容器に接着していることを意味する。
細胞非接着性容器の材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ナイロン6,6、ポリビニルアルコール、セルロース、シリコン、ポリスチレン、ガラス、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、およびステンレスが挙げられる。
細胞非接着性容器の形態としては、例えば、マイクロプレート、シャーレ(ディッシュ)、細胞培養フラスコ(スピナーフラスコ、シェイカーフラスコ等)、細胞培養バッグ、ローラーボトル、バイオリアクターおよび培養槽(タンク)が挙げられる。細胞非接着性容器のサイズも、製造規模に応じて適宜(例えば、1mL〜2000Lの範囲で)選択することができ、本発明においては特に、大容量(例えば、100mL〜2000L)の細胞非接着性容器が好ましい。
凝集体形成工程第1実施形態(工程1−1)は、例えば、細胞非接着性容器内で、接着性細胞集団である対象細胞を含む細胞集団に、本発明の組成物およびマイクロキャリアを添加し、それらの存在下で前記細胞集団を静置培養することにより行われる。このような工程では、対象細胞を含む細胞集団がマイクロキャリアに接着して凝集体が形成され、その過程で本発明の組成物に含まれる核酸が前記細胞集団を構成している細胞に導入される。
したがって、凝集体形成工程第1実施形態における「凝集体」は、少なくとも1つの細胞と1つのマイクロキャリアを含む集合体を意味する。この凝集体のサイズは、使用するマイクロキャリアの大きさに依存し、特に限定されない。1つのマイクロキャリアに接着する細胞の数は、特に限定されるものではないが、例えば2〜500個、好ましくは、50〜300個である。凝集体形成工程第1実施形態において培養される細胞集団には、凝集体を形成する細胞(凝集体形成細胞)と凝集体を形成していない細胞(非凝集体形成細胞)が含まれる。それらの総数に対する凝集体形成細胞の割合は、特に限定されるものではないが、例えば、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または100%である。
凝集体形成工程第1実施形態で用いられる「マイクロキャリア」は、対象細胞を含む細胞集団を表面に接着させることのできる担体を意味する。マイクロキャリアは、対象細胞を含む細胞集団が接着した状態で、液体培地中に懸濁させることができ、それによって接着した細胞集団を培養する役割を果たすことができればよく、その材質、形状、大きさなどは特に制限されない。
マイクロキャリアの材質としては、例えば、デキストラン、ゼラチン、コラーゲン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリアクリルアミド、ガラス、セルロースが挙げられる。
マイクロキャリアの形状としては、例えば、球状(ビーズ)、円盤状などが挙げられる。
球状のマイクロキャリアの大きさは、例えば直径2〜1000μm、好ましくは100〜300μmである。
マイクロキャリアは多孔性であってもよい。
細胞の培養に用いるマイクロキャリアの数は、特に限定されるものではないが、例えば、細胞10個あたりマイクロキャリア1個である。細胞の培養に用いるマイクロキャリアの量は、特に限定されないが、例えば細胞1×10個から5×10個に対してマイクロキャリア0.1g、好ましくは細胞2×10個から3×10個に対してマイクロキャリア0.1gである。
マイクロキャリアは、市販のものであってもよく、例えば高濃度Synthemax IIマイクロキャリア(Corning社)を用いることができる。
凝集体形成工程第2実施形態(工程1−2)は、例えば、細胞非接着性容器内で、接着性細胞集団である対象細胞を含む細胞集団に、本発明の組成物を添加し、その存在下で前記細胞集団を静置培養することにより行われる。このような工程では、対象細胞を含む細胞集団は、マイクロキャリアが存在しなくても、細胞同士で凝集体が形成され、その過程で本発明の組成物に含まれる核酸が前記細胞集団を構成している細胞に導入される。
したがって、凝集体形成工程第2実施形態における「凝集体」は、少なくとも2つの細胞を含む集合体を意味する。凝集体の多くは、多数の細胞が接着したものが占める。1つの凝集体を形成する細胞数は、特に限定されるものではないが、例えば2〜500個、好ましくは、50〜300個である。凝集体形成工程第2実施形態において培養される細胞集団には、凝集体を形成する細胞(凝集体形成細胞)と凝集体を形成していない細胞(非凝集体形成細胞)が含まれる。それらの総数に対する凝集体形成細胞の割合は、特に限定されるものではないが、例えば、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または100%である。
凝集体形成工程(第1実施形態および第2実施形態)における静置培養は、凝集体の形成およびトランスフェクションの完了にとって十分な期間行えばよい。静置培養の期間は特に限定されないが、例えば2〜10時間程度、好ましくは3〜6時間程度、より好ましくは4〜5時間である。静置培養の条件も特に限定されないが、例えば、約37℃、5%CO存在下とすることができる。
静置培養後、形成された凝集体を維持するために、撹拌培養が行われてもよい。撹拌培養の期間は特に限定されないが、例えば12〜48時間程度、好ましくは24時間程度である。撹拌培養の条件も特に限定されないが、例えば、約37℃、5%CO存在下とすることができる。
撹拌速度および時間は、細胞密度と培養容器の大きさに応じて適宜設定されるが、代表的には、4〜6時間静置後、25rpmで12時間以上撹拌する。過度の撹拌または振盪は、細胞に対して物理的ストレスを与え、また凝集体の維持を阻害するおそれがある。したがって、培地成分および培地内酸素濃度を均一化でき、かつ凝集体の維持を阻害しないように、撹拌速度を制御することが望ましい。
培地としては、対象細胞を含む細胞集団の培養にとって適切な、従来公知の培地を用いることができる。例えば、BME培地、BGJb培地、CMRL 1066培地、Glasgow MEM培地、Improved MEM(IMEM)培地、Improved MDM(IMDM)培地、Medium 199培地、Eagle MEM培地、αMEM培地、DMEM培地(High glucose、Low glucose)、DMEM/F12培地、ハム培地、RPMI 1640培地、Fischer's培地、及びこれらの混合培地などが用いられる。培地の種類および使用量は、当業者であれば、細胞や培養条件に応じて適宜設定することができる。
培地には、必要に応じて、アミノ酸、L-グルタミン、GlutaMAX(製品名)、非必須アミノ酸、ビタミン、抗生物質(例えば、ペニシリン、ストレプトマイシン、又はこれらの混合物)、抗菌剤(例えば、アンホテリシンB)、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類等の添加物を添加してもよい。添加物の種類および使用量は、当業者であれば、細胞や培養条件に応じて適宜設定することができる。
上述したような凝集体形成工程を含むトランスフェクション方法によれば、容器(シャーレ、ディッシュ等)の表面に細胞を接着させて培養する従来の方法のように、容器表面の面積による制約を受けることがなく、所望の核酸が導入された心筋細胞(を含む細胞集団)を商業レベルで大量に得ることが可能となる。
以下、本発明の対象細胞の精製方法の工程について説明する。
本発明の対象細胞の精製方法は、少なくとも、本発明の組成物と、対象細胞を含む細胞集団とを接触させる工程(組成物接触工程)を含み、必要に応じてさらに、対象細胞を精製することに関するその他の工程を含んでいてもよい。また、本発明の対象細胞の精製方法は、細胞集団中の対象細胞を精製する、換言すれば細胞集団中の対象細胞の比率を高める(対象細胞を富化する)ために、特定の核酸を含む本発明の組成物を用いるが、それ以外の技術的事項は基本的に、公知の心筋細胞の精製方法に準じたものとすることが可能である。
本発明の対象細胞の製造方法では、「核酸」として、前記(i)の対象細胞特異的なmiRNA応答性mRNA、および/または前記(ii)のmRNAを用いる。このような特定の核酸を含む本発明の組成物を、対象細胞を含む細胞集団と接触させ、対象細胞およびそれ以外の細胞内に上記所定の核酸を導入すると、前述したような機構により、対象細胞内では対象細胞特異的なmiRNA応答性mRNAが含む「心筋細胞で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列」(心筋細胞特異的miRNA認識配列)または「心室筋細胞で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列」(心室筋細胞特異的miRNA認識配列)によって「機能的な遺伝子」の発現量が抑制されるのに対し、対象細胞以外の細胞内では「機能的な遺伝子」の発現量は抑制されず、相対的に高い発現量となる。そのような差異を利用することにより、細胞集団中の対象細胞以外の細胞を排除し、対象細胞の純度を高めることができる。
上記のようにして対象細胞を精製するためには、具体的には、組成物接触工程の後、「機能的な遺伝子」に対応する処理を含む、対象細胞を選別するための工程(本明細書において「対象細胞選別工程」と呼ぶ。)を行う必要がある。
例えば、「機能的な遺伝子」として「蛍光タンパク質をコードする遺伝子」を用いる場合、対象細胞選別工程は、所定の検出装置を用いて、当該蛍光タンパク質から発せられる信号(蛍光の発光)を検出する処理を含むことが適切である。そのための検出装置としては、例えば、フローサイトメーター、イメージングサイトメーター、蛍光顕微鏡、発光顕微鏡、CCDカメラが挙げられる。このような検出装置は、蛍光タンパク質の吸収波長および発光波長に適した実施形態(装置の構成、測定条件等)に調整することができる。また、蛍光顕微鏡を用いたり、光応答性細胞培養器材をコーティングした培養皿(光を照射しなかった細胞を培養皿から剥離させることができる)を用いたりすることで、蛍光タンパク質の発現量が高い(蛍光強度の高い)対象細胞以外の細胞を選択して除外することも可能である。
本発明の対象細胞の精製方法によって得られる細胞集団は、対象細胞の純度を一定の水準まで高めることができる。そのような細胞集団中の対象細胞の純度は、本発明の対象細胞の精製方法を適用せずに得られる細胞集団中の対象細胞の純度より高ければよく、その程度は特に限定されるものではない。一つの指標として、本発明の対象細胞の精製方法によって得られる細胞集団中の対象細胞の純度は、60%以上、70%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、および100%(実質的に対象細胞以外の細胞が検出できない)であってよい。
本発明の対象細胞の精製方法に関する、上記の説明およびその他の本明細書の説明において、「精製方法」は適宜「製造方法」に読み替えることができる。すなわち、本発明の「心筋細胞の精製方法」(細胞集団中の心筋細胞の純度または比率を高める方法)および「心室筋細胞の精製方法」(細胞集団中の心室筋細胞の純度または比率を高める方法)に関係する発明についての記載は、「心筋細胞の製造方法」(心筋細胞の純度または比率が高められた細胞集団の製造方法、あるいはそのような細胞集団に含まれる心筋細胞の製造方法)および「心室筋細胞の製造方法」(心室筋細胞の純度または比率が高められた細胞集団の製造方法、あるいはそのような細胞集団に含まれる心室筋細胞の製造方法)についての記載にそれぞれ読み替えることができる。また、本発明の対象細胞の精製方法および製造方法はそれぞれ、前述した本発明のトランスフェクション方法において、対象細胞の精製および製造を目的とする実施形態に対応するといえ、技術的事項に関する記載は適宜相互に適用することができる。
以下、本発明の化合物の製造方法について説明する。
以下の製造方法における各工程で用いられた原料や試薬、ならびに得られた化合物は、それぞれ塩を形成していてもよい。このような塩としては、例えば、前述の本発明の化合物における塩と同様のものが挙げられる。
各工程で得られた化合物が遊離化合物である場合には、公知の方法により、目的とする塩に変換することができる。逆に各工程で得られた化合物が塩である場合には、公知の方法により、遊離体または目的とする他の種類の塩に変換することができる。
各工程で得られた化合物は反応液のままか、または粗生成物として得た後に、次反応に用いることもできる、あるいは、各工程で得られた化合物を、常法に従って、反応混合物から濃縮、晶出、再結晶、蒸留、溶媒抽出、分溜、クロマトグラフィーなどの分離手段により単離および/または精製することができる。
各工程の原料や試薬の化合物が市販されている場合には、市販品をそのまま用いることができる。
各工程の反応において、反応時間は、用いる試薬や溶媒により異なり得るが、特に記載の無い場合、通常1分〜48時間、好ましくは10分〜8時間である。
各工程の反応において、反応温度は、用いる試薬や溶媒により異なり得るが、特に記載が無い場合、通常−78℃〜300℃、好ましくは−78℃〜150℃である。
各工程の反応において、圧力は、用いる試薬や溶媒により異なり得るが、特に記載が無い場合、通常1気圧〜20気圧、好ましくは1気圧〜3気圧である。
各工程の反応において、例えば、Biotage社製InitiatorなどのMicrowave合成装置を用いることがある。反応温度は、用いる試薬や溶媒により異なり得るが、特に記載がない場合、通常室温〜300℃、好ましくは室温〜250℃、より好ましくは50℃〜250℃である。反応時間は、用いる試薬や溶媒により異なり得るが、特に記載の無い場合、通常1分〜48時間、好ましくは1分〜8時間である。
各工程の反応において、試薬は、特に記載が無い場合、基質に対して0.5当量〜20当量、好ましくは0.8当量〜5当量が用いられる。試薬を触媒として使用する場合、試薬は基質に対して0.001当量〜1当量、好ましくは0.01当量〜0.2当量が用いられる。試薬が反応溶媒を兼ねる場合、試薬は溶媒量が用いられる。
各工程の反応において、特に記載が無い場合、これらの反応は、無溶媒、あるいは適当な溶媒に溶解または懸濁して行われる。溶媒の具体例としては、実施例に記載されている溶媒、あるいは以下が挙げられる。
アルコール類:メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、tert−ブチルアルコール、2−メトキシエタノールなど;
エーテル類:ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテルなど;
芳香族炭化水素類:クロロベンゼン、トルエン、キシレンなど;
飽和炭化水素類:シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタンなど;
アミド類:N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなど;
ハロゲン化炭化水素類:ジクロロメタン、四塩化炭素など;
ニトリル類:アセトニトリルなど;
スルホキシド類:ジメチルスルホキシドなど;
芳香族有機塩基類:ピリジンなど;
酸無水物類:無水酢酸など;
有機酸類:ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸など;
無機酸類:塩酸、硫酸など;
エステル類:酢酸エチル、酢酸イソプロピルエステルなど;
ケトン類:アセトン、メチルエチルケトンなど;
水。
上記溶媒は、二種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
各工程の反応において塩基を用いる場合、例えば、以下に示す塩基、あるいは実施例に記載されている塩基が用いられる。
無機塩基類:水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムなど;
塩基性塩類:炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウムなど;
有機塩基類:トリエチルアミン、ジエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチルアニリン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、イミダゾール、ピペリジンなど;
金属アルコキシド類:ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシドなど;
アルカリ金属水素化物類:水素化ナトリウムなど;
金属アミド類:ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジドなど;
有機リチウム類:n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムなど。
各工程の反応において酸または酸性触媒を用いる場合、例えば、以下に示す酸や酸性触媒、あるいは実施例に記載されている酸や酸性触媒が用いられる。
無機酸類:塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、リン酸など;
有機酸類:酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸、10−カンファースルホン酸など;
ルイス酸:三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、ヨウ化亜鉛、無水塩化アルミニウム、無水塩化亜鉛、無水塩化鉄など。
各工程の反応は、特に記載の無い限り、公知の方法、例えば、第5版実験化学講座、13巻〜19巻(日本化学会編);新実験化学講座、14巻〜15巻(日本化学会編);精密有機化学 改定第2版(L. F. Tietze,Th. Eicher、南江堂);改訂 有機人名反応 そのしくみとポイント(東郷秀雄著、講談社);ORGANIC SYNTHESES Collective Volume I〜VII(John Wiley & SonsInc);Modern Organic Synthesis in the Laboratory A Collection of Standard Experimental Procedures(Jie Jack Li著、OXFORD UNIVERSITY出版);Comprehensive Heterocyclic Chemistry III、Vol.1〜Vol.14(エルゼビア・ジャパン株式会社);人名反応に学ぶ有機合成戦略(富岡清監訳、化学同人発行);コンプリヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメーションズ(VCH Publishers Inc.)1989年刊などに記載された方法、あるいは実施例に記載された方法に準じて行われる。
各工程において、官能基の保護または脱保護反応は、公知の方法、例えば、Wiley−Interscience社2007年刊「Protective Groups in Organic Synthesis, 4thEd.」(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著);Thieme社2004年刊「Protecting Groups 3rdEd.」(P.J.Kocienski著)などに記載された方法、あるいは実施例に記載された方法に準じて行われる。
アルコールなどの水酸基やフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、メトキシメチルエーテル、ベンジルエーテル、p−メトキシベンジルエーテル、t−ブチルジメチルシリルエーテル、t−ブチルジフェニルシリルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテルなどのエーテル型保護基;酢酸エステルなどのカルボン酸エステル型保護基;メタンスルホン酸エステルなどのスルホン酸エステル型保護基;t−ブチルカルボネートなどの炭酸エステル型保護基などが挙げられる。
アルデヒドのカルボニル基の保護基としては、例えば、ジメチルアセタールなどのアセタール型保護基;環状1,3−ジオキサンなどの環状アセタール型保護基などが挙げられる。
ケトンのカルボニル基の保護基としては、例えば、ジメチルケタールなどのケタール型保護基;環状1,3−ジオキサンなどの環状ケタール型保護基;O−メチルオキシムなどのオキシム型保護基;N,N−ジメチルヒドラゾンなどのヒドラゾン型保護基などが挙げられる。
カルボキシル基の保護基としては、例えば、メチルエステルなどのエステル型保護基;N,N−ジメチルアミドなどのアミド型保護基などが挙げられる。
チオールの保護基としては、例えば、ベンジルチオエーテルなどのエーテル型保護基;チオ酢酸エステル、チオカルボネート、チオカルバメートなどのエステル型保護基などが挙げられる。
アミノ基や、イミダゾール、ピロール、インドールなどの芳香族ヘテロ環の保護基としては、例えば、ベンジルカルバメートなどのカルバメート型保護基;アセトアミドなどのアミド型保護基;N−トリフェニルメチルアミンなどのアルキルアミン型保護基、メタンスルホンアミドなどのスルホンアミド型保護基などが挙げられる。
保護基の除去は、公知の方法、例えば、酸、塩基、紫外光、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、N−メチルジチオカルバミン酸ナトリウム、テトラブチルアンモニウムフルオリド、酢酸パラジウム、トリアルキルシリルハライド(例えば、トリメチルシリルヨージド、トリメチルシリルブロミド)を使用する方法や還元法などを用いて行うことができる。
各工程において、還元反応を行う場合、使用される還元剤としては、水素化アルミニウムリチウム、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム、水素化シアノホウ素ナトリウム、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL−H)、水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリアセトキシホウ素テトラメチルアンモニウムなどの金属水素化物類;ボランテトラヒドロフラン錯体などのボラン類;ラネーニッケル;ラネーコバルト;水素;ギ酸などが挙げられる。例えば、水素またはギ酸存在下で、ラネーニッケルまたはラネーコバルトを用いることができる。炭素−炭素二重結合あるいは三重結合を還元する場合は、パラジウム−カーボンやLindlar触媒などの触媒を用いる方法がある。
各工程において、酸化反応を行う場合、使用される酸化剤としては、m−クロロ過安息香酸(MCPBA)、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシドなどの過酸類;過塩素酸テトラブチルアンモニウムなどの過塩素酸塩類;塩素酸ナトリウムなどの塩素酸塩類;亜塩素酸ナトリウムなどの亜塩素酸塩類;過ヨウ素酸ナトリウムなどの過ヨウ素酸類;ヨードシルベンゼンなどの高原子価ヨウ素試薬;二酸化マンガン、過マンガン酸カリウムなどのマンガンを有する試薬;四酢酸鉛などの鉛類;クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)、二クロム酸ピリジニウム(PDC)、ジョーンズ試薬などのクロムを有する試薬;N−ブロモスクシンイミド(NBS)などのハロゲン化合物類;酸素;オゾン;三酸化硫黄・ピリジン錯体;四酸化オスミウム;二酸化ゼレン;2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)などが挙げられる。
各工程において、ラジカル環化反応を行う場合、使用されるラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などのアゾ化合物;4−4’−アゾビス−4−シアノペンタン酸(ACPA)などの水溶性ラジカル開始剤;空気あるいは酸素存在下でのトリエチルホウ素;過酸化ベンゾイルなどが挙げられる。また、使用されるラジカル反応試剤としては、トリブチルスタナン、トリストリメチルシリルシラン、1,1,2,2−テトラフェニルジシラン、ジフェニルシラン、ヨウ化サマリウムなどが挙げられる。
各工程において、Wittig反応を行う場合、使用されるWittig試薬としては、アルキリデンホスホラン類などが挙げられる。アルキリデンホスホラン類は、公知の方法、例えば、ホスホニウム塩と強塩基を反応させることで調製することができる。
各工程において、Horner−Emmons反応を行う場合、使用される試薬としては、ジメチルホスホノ酢酸メチル、ジエチルホスホノ酢酸エチルなどのホスホノ酢酸エステル類;アルカリ金属水素化物類、有機リチウム類などの塩基が挙げられる。
各工程において、Friedel−Crafts反応を行う場合、使用される試薬としては、ルイス酸と、酸クロリドあるいはアルキル化剤(例、ハロゲン化アルキル類、アルコール、オレフィン類など)が挙げられる。あるいは、ルイス酸の代わりに、有機酸や無機酸を用いることもでき、酸クロリドの代わりに、無水酢酸などの酸無水物を用いることもできる。
各工程において、芳香族求核置換反応を行う場合、試薬としては、求核剤(例、アミン類、イミダゾールなど)と塩基(例、塩基性塩類、有機塩基類など)が用いられる。
各工程において、カルボアニオンによる求核付加反応、カルボアニオンによる求核1,4−付加反応(Michael付加反応)、あるいはカルボアニオンによる求核置換反応を行う場合、カルボアニオンを発生するために用いる塩基としては、有機リチウム類、金属アルコキシド類、無機塩基類、有機塩基類などが挙げられる。
各工程において、Grignard反応を行う場合、Grignard試薬としては、フェニルマグネシウムブロミドなどのアリールマグネシウムハライド類;メチルマグネシウムブロミド、イソプロピルマグネシウムブロミドなどのアルキルマグネシウムハライド類が挙げられる。Grignard試薬は、公知の方法、例えばエーテルあるいはテトラヒドロフランを溶媒として、ハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アリールと、金属マグネシウムとを反応させることにより調製することができる。
各工程において、Knoevenagel縮合反応を行う場合、試薬としては、二つの電子求引基に挟まれた活性メチレン化合物(例、マロン酸、マロン酸ジエチル、マロノニトリルなど)および塩基(例、有機塩基類、金属アルコキシド類、無機塩基類)が用いられる。
各工程において、Vilsmeier−Haack反応を行う場合、試薬としては、塩化ホスホリルとアミド誘導体(例、N,N−ジメチルホルムアミドなど)が用いられる。
各工程において、アルコール類、アルキルハライド類、スルホン酸エステル類のアジド化反応を行う場合、使用されるアジド化剤としては、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、トリメチルシリルアジド、アジ化ナトリウムなどが挙げられる。例えば、アルコール類をアジド化する場合、ジフェニルホスホリルアジドと1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン(DBU)を用いる方法やトリメチルシリルアジドとルイス酸を用いる方法などがある。
各工程において、還元的アミノ化反応を行う場合、使用される還元剤としては、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム、水素化シアノホウ素ナトリウム、水素、ギ酸などが挙げられる。基質がアミン化合物の場合は、使用されるカルボニル化合物としては、パラホルムアルデヒドの他、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類、シクロヘキサノンなどのケトン類が挙げられる。基質がカルボニル化合物の場合は、使用されるアミン類としては、アンモニア、メチルアミンなどの1級アミン;ジメチルアミンなどの2級アミンなどが挙げられる。
各工程において、光延反応を行う場合、試薬としては、アゾジカルボン酸エステル類(例、アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)など)およびトリフェニルホスフィンが用いられる。
各工程において、エステル化反応、アミド化反応、あるいはウレア化反応を行う場合、使用される試薬としては、酸クロリド、酸ブロミドなどのハロゲン化アシル体;酸無水物、活性エステル体、硫酸エステル体など活性化されたカルボン酸類が挙げられる。カルボン酸の活性化剤としては、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSCD)などのカルボジイミド系縮合剤;4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド−n−ハイドレート(DMT−MM)などのトリアジン系縮合剤;1,1−カルボニルジイミダゾール(CDI)などの炭酸エステル系縮合剤;ジフェニルリン酸アジド(DPPA);ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリスジメチルアミノホスホニウム塩(BOP試薬);ヨウ化2−クロロ−1−メチル−ピリジニウム(向山試薬);塩化チオニル;クロロギ酸エチルなどのハロギ酸低級アルキル;O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロリン酸塩(HATU);硫酸;あるいはこれらの組み合わせなどが挙げられる。カルボジイミド系縮合剤を用いる場合、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、N−ヒドロキシコハク酸イミド(HOSu)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)などの添加剤をさらに反応に加えてもよい。
各工程において、カップリング反応を行う場合、使用される金属触媒としては、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリエチルホスフィン)パラジウム(II)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、塩化1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)などのパラジウム化合物;テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)などのニッケル化合物;塩化トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(III)などのロジウム化合物;コバルト化合物;酸化銅、ヨウ化銅(I)などの銅化合物;白金化合物などが挙げられる。さらに反応に塩基を加えてもよく、このような塩基としては、無機塩基類、塩基性塩類などが挙げられる。
各工程において、チオカルボニル化反応を行う場合、チオカルボニル化剤としては、代表的には五硫化二リンが用いられるが、五硫化二リンの他に、2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3,2,4−ジチアジホスフェタン−2,4−ジスルフィド(Lowesson試薬)などの1,3,2,4−ジチアジホスフェタン−2,4−ジスルフィド構造を持つ試薬を用いてもよい。
各工程において、Wohl−Ziegler反応を行う場合、使用されるハロゲン化剤としては、N−ヨードコハク酸イミド、N−ブロモコハク酸イミド(NBS)、N−クロロコハク酸イミド(NCS)、臭素、塩化スルフリルなどが挙げられる。さらに、熱、光、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル開始剤を反応に加えることで、反応を加速させることができる。
各工程において、ヒドロキシ基のハロゲン化反応を行う場合、使用されるハロゲン化剤としては、ハロゲン化水素酸と無機酸の酸ハロゲン化物、具体的には、塩素化では、塩酸、塩化チオニル、オキシ塩化リンなど、臭素化では、48%臭化水素酸などが挙げられる。また、トリフェニルホスフィンと四塩化炭素または四臭化炭素などとの作用により、アルコールからハロゲン化アルキル体を得る方法を用いてもよい。あるいは、アルコールをスルホン酸エステルに変換の後、臭化リチウム、塩化リチウムまたはヨウ化ナトリウムと反応させるような2段階の反応を経てハロゲン化アルキル体を合成する方法を用いてもよい。
各工程において、Arbuzov反応を行う場合、使用される試薬としては、ブロモ酢酸エチルなどのハロゲン化アルキル類;トリエチルフォスファイトやトリ(イソプロピル)ホスファイトなどのホスファイト類が挙げられる。
各工程において、スルホンエステル化反応を行う場合、使用されるスルホン化剤としては、メタンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリド、メタンスルホン酸無水物、p−トルエンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物などが挙げられる。
各工程において、加水分解反応を行う場合、試薬としては、酸または塩基が用いられる。また、t−ブチルエステルの酸加水分解反応を行う場合、副生するt−ブチルカチオンを還元的にトラップするためにギ酸やトリエチルシランなどを加えることがある。
各工程において、脱水反応を行う場合、使用される脱水剤としては、硫酸、五酸化二リン、オキシ塩化リン、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、アルミナ、ポリリン酸などが挙げられる。
化合物(I)は、例えば、以下の製法によって製造することができる。本発明では、特にエステル化の際に、目的とする化合物(I)の構造に応じた適切な原料を用いることにより、所望の構造の化合物(I)を合成することが可能である。また、化合物(I)の塩は、無機塩基、有機塩基、有機酸、塩基性または酸性アミノ酸との適切な混合により得ることができる。
Figure 2020032185
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以下、本発明の化合物を含有する脂質粒子、および当該脂質粒子と核酸を含有する、心筋細胞への核酸のトランスフェクション用組成物(本発明の組成物)の製造方法について記載する。
本発明の脂質粒子は、カチオン性脂質として本発明の化合物を、その他の脂質成分(例えば、構造脂質)と混合した後、脂質成分から脂質粒子を調製するための公知の方法により製造することができる。例えば、上記の混合脂質成分を有機溶媒に溶解し、得られる有機溶媒溶液を水もしくは緩衝液と混合すること(例えば、乳化法)により、脂質粒子分散液として製造することができる。上記混合は、微小流体混合システム(例えば、NanoAssemblr装置 (Precision NanoSystems社))を用いて行うことができる。得られた脂質粒子は、脱塩もしくは透析および滅菌ろ過に付してもよい。また、必要に応じてpH調整、浸透圧調整を行ってもよい。
化合物(I)は、式(I)のn1、n2、n3、L、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、およびRfの定義の組み合わせによって、複数の構造を取り得る。脂質粒子の製造には、化合物(I)として、特定の構造を有する1種類の化合物を単独で使用してもよいし、構造の異なる複数の種類の化合物の混合物として使用してもよい。
「構造脂質」としては、前述したようなもの、例えば、ステロール類、リン脂質、ポリエチレングリコール脂質が挙げられる。「構造脂質」は、例えば、本発明の化合物1モルに対して、0.008〜4モル用いられる。本発明の化合物は、特に、ステロール類としてのコレステロール、リン脂質としてのホスファチジルコリン、およびポリエチレングリコール脂質と混合して用いることが好ましい。構造脂質として上記成分を用いる場合の好ましい混合比率は、本発明の化合物1〜4モル、ステロール類0〜3モル、リン脂質0〜2モルおよびポリエチレングリコール脂質0〜1モルである。構造脂質として上記成分を用いる場合のより好ましい混合比率は、本発明の化合物1〜1.5モル、ステロール類0〜1.25モル、リン脂質0〜0.5モルおよびポリエチレングリコール脂質0〜0.125モルである。
前記した有機溶媒溶液中の本発明の化合物、あるいは本発明の化合物と他の脂質成分との混合物の濃度は、好ましくは0.5〜100mg/mLである。
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、またはこれらの混合物が挙げられる。有機溶媒は、0〜20%の水もしくは緩衝液を含有してもよい。
緩衝液としては、酸性緩衝液(例えば、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、2-モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝液、リン酸緩衝液)や、中性緩衝液(例えば、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)緩衝液、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)緩衝液、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS))が挙げられる。
微小流体混合システムを用いて混合を行う場合、有機溶媒溶液1容積部に対して水もしくは緩衝液1〜5容積部を混合することが好ましい。また、該システムにおいて、混合液(有機溶媒溶液と水もしくは緩衝液との混合液)流速は、例えば0.01〜20mL/min、好ましくは0.1〜10mL/minであり、温度は、例えば5〜60℃、好ましくは15〜45℃である。
本発明の組成物は、脂質粒子または脂質粒子分散液を製造する際、水もしくは緩衝液に核酸を添加しておくことにより、核酸を含む脂質粒子分散液として製造することができる。核酸は、水もしくは緩衝液における核酸の濃度が、例えば0.01〜20mg/mL、好ましくは0.05〜2.0mg/mLとなるように添加することが好ましい。
また、本発明の組成物は、脂質粒子または脂質粒子分散液と、核酸またはその水溶液とを、公知の方法で混和することによっても、核酸を含む脂質粒子分散液として製造することができる。脂質粒子分散液は、脂質粒子を適当な分散媒に分散させることにより調製することができる。また、核酸の水溶液は、核酸を適当な溶媒に溶解させることにより調製することができる。
分散媒および溶媒を除いた本発明の組成物における本発明の化合物の含量は、通常10〜70重量%、好ましくは40〜70重量%である。
分散媒および溶媒を除いた本発明の組成物における核酸の含量は、通常0.1〜25重量%、好ましくは1〜20重量%である。
脂質粒子分散液または組成物を含む分散液の分散媒は、透析することで水または緩衝液に置換することができる。透析には、分画分子量10〜20Kの限外ろ過膜を用い、4℃〜室温にて実施する。繰り返し透析を行ってもよい。分散媒の置換には、タンジェンシャルフロー・フィルトレーション(TFF)を使用してもよい。また、分散媒の置換後、必要に応じてpH調整、浸透圧調整を行ってもよい。pH調整剤としては、例えば水酸化ナトリウム、クエン酸、酢酸、トリエタノールアミン、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムなどが挙げられる。また、浸透圧調整剤としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムなどの無機塩類、グリセロール、マンニトール、ソルビトールなどのポリオール類、グルコース、フルクトース、ラクトース、スクロースなどの糖類が挙げられる。pHは、通常6.5〜8.0、好ましくは7.0〜7.8に調整される。浸透圧は、好ましくは250〜350Osm/kgに調整される。
本発明の組成物には、必要に応じて、脂質粒子および核酸以外の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、例えば、適量の安定化剤および酸化防止剤が挙げられる。
安定化剤としては、特に限定されないが、例えば、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、またはスクロースのような糖類が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えばアスコルビン酸、尿酸、システイン、トコフェロール同族体(ビタミンE、トコフェロールα、β、γ、δの4つの異性体など)、EDTA、システインなどが挙げられる。
以下、本発明の化合物を含有する脂質粒子、および当該脂質粒子と核酸を含有する組成物の分析方法について記載する。
(組成物中の)脂質粒子の粒子径は、公知の手段により測定することができる。例えば、動的光散乱測定技術に基づく粒子径測定装置、Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments)を用い、自己相関関数のキュムラント解析によりZ平均粒子径として算出することができる。(組成物中の)脂質粒子の粒子径(平均粒子径)は、例えば10〜200nm、好ましくは60〜150nmである。
本発明の組成物における核酸(例えばsiRNA、mRNA)の濃度および内封率は、公知の手段により測定することができる。例えば、Quant−iTTM RiboGreen(登録商標)(Invitrogen)を用いて核酸を蛍光標識し、その蛍光強度を測定することによって濃度および内封率を求めることができる。組成物中の核酸の濃度は、濃度が既知の核酸水溶液から作成される標準曲線を用いて算出することができ、内封率は、Triton−X100(脂質粒子を崩壊させるための界面活性剤)の添加の有無による蛍光強度の違いを元に算出することができる。なお、組成物中の核酸の濃度は、脂質粒子に内封されている核酸および内封されていない核酸の合計の濃度を指し、内封率は組成物中の核酸全体のうち脂質粒子に内封されているものの割合を指す。
以下、本発明のキットについて説明する。
本発明のキットは、1)式(I)で表される化合物またはその塩(本発明の化合物)、2)構造脂質、および3)核酸を含む。本発明のキットにおける、本発明の化合物、構造脂質および核酸は、本発明の組成物に含まれる本発明の化合物、構造脂質および核酸と同じである。
本発明は、更に以下の合成例、調製例および実施例によって詳しく説明されるが、これらは本発明を限定するものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
以下の実施例中の「室温」は通常約10℃ないし約35℃を示す。混合溶媒において示した比は、特に断らない限り容量比を示す。%は、特に断らない限り重量%を示す。
実施例のカラムクロマトグラフィーにおける溶出は、特に言及しない限り、TLC(Thin Layer Chromatography,薄層クロマトグラフィー)による観察下に行った。TLC観察においては、TLCプレートとしてメルク(Merck)社製の60 F254を用い、展開溶媒として、カラムクロマトグラフィーで溶出溶媒として用いた溶媒を用いた。また、検出にはUV検出器を採用し、必要に応じてTLC発色試薬を用いて観察した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにおいて、NHと記載した場合はアミノプロピルシラン結合シリカゲルを、Diolと記載した場合は3−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)プロピルシラン結合シリカゲルを用いた。分取HPLC(高速液体クロマトグラフィー)において、C18と記載した場合はオクタデシル結合シリカゲルを用いた。溶出溶媒において示した比は、特に断らない限り容量比を示す。
H NMRはフーリエ変換型NMRで測定した。H NMRの解析にはACD/SpecManager(商品名)ソフトウエアなどを用いた。水酸基やアミノ基などのプロトンピークが非常に緩やかなピークについては記載していないことがある。
MSは、LC/MSおよびMALDI/TOFMSにより測定した。イオン化法としては、ESI法、APCI法または、MALDI法を用いた。マトリックスとしてはCHCAを用いた。データは実測値(found)を記載した。通常、分子イオンピークが観測されるがフラグメントイオンとして観測されることがある。塩の場合は、通常、フリー体の分子イオンピーク、カチオン種、アニオン種もしくはフラグメントイオンピークが観測される。
以下の実施例においては下記の略号を使用する。
MS:マススペクトル
M:モル濃度
N:規定度
CDCl:重クロロホルム
DMSO−d:重ジメチルスルホキシド
H NMR:プロトン核磁気共鳴
LC/MS:液体クロマトグラフ質量分析計
ESI:electrospray ionization、エレクトロスプレーイオン化
APCI:atmospheric pressure chemical ionization、大気圧化学イオン化
MALDI:Matrix-assisted laser desorption/ionization、マ卜リックス支援レーザー脱離イオン化
TOFMS:Time-of-flight mass spectrometry、飛行時間型質量分析
CHCA:α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
THF:テトラヒドロフラン
DMAP:4−ジメチルアミノビリジン
TBAF:テトラブチルアンモニウムフルオリド
DIBAL−H:水素化ジイソブチルアルミニウム
DBU:1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン
[合成例1] 3-((5-(ジメチルアミノ)ペンタノイル)オキシ)-2,2-ビス((オクタノイルオキシ)メチル)プロピル 4-ヘプチルウンデカノアート
A) 2-ヘプチルノナン酸メチルエステル
窒素気流氷冷下、60% 水素化ナトリウム(ミネラルオイル含有)(3.78 g)の脱水DMF(100 mL)懸濁液を10分間撹拌した。その後、マロン酸ジメチル(5.0 g)を10℃以下で滴下した。同温度で10分間撹拌した後、1-ヨードヘプタン(18.3 mL)を滴下し、室温まで昇温した。4時間後、反応混合物に6N 塩酸で中和した後、酢酸エチルで希釈し、飽和食塩水で2回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残渣をDMSO (75 mL)に溶解し、水(0.68 mL)、塩化リチウム(3.21 g)添加し、165℃に昇温した。同温度で16時間撹拌した後、水を加え、酢酸エチルで希釈した。飽和食塩水で2回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー (酢酸エチル/ヘキサン) で精製して標題化合物(8.14 g) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.84 - 0.90 (6 H, m), 1.20 - 1.32 (20 H, m), 1.36 - 1.47 (2 H, m), 1.54 - 1.62 (2 H, m), 2.33 (1 H, tt, J = 9.0, 5.4 Hz), 3.67 (3 H, s)
B) 2-ヘプチルノナン-1-オール
窒素気流氷冷下、水素化アルミニウムリチウム(2.15 g)の脱水THF(92 mL)懸濁液に、2-ヘプチルノナン酸メチルエステル(7.67 g)の脱水THF(50 mL)溶液を滴下し、10℃以下で1時間撹拌した。その後室温に昇温し、3時間撹拌した。再度10℃以下に冷却した後、硫酸ナトリウム・10水和物を少しずつ添加した。酢酸エチルで希釈した後、不溶物をセライトろ過し、溶媒を減圧留去して、標題化合物(6.91 g)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.86 - 0.91 (6 H, m), 1.16 - 1.34 (25 H, m), 1.41 - 1.49 (1 H, m), 3.54 (2 H, t, J = 5.2 Hz)
C) 2-ヘプチルノナナール
窒素気流下、塩化オキザリル(4.9 mL)のジクロロメタン(30 mL)溶液を-70℃に冷却し、ジメチルスルホキシド(6.1 mL)のジクロロメタン(30 mL) 溶液を-60℃以下を保持しながら滴下した。-70℃で15分撹拌後、2-ヘプチルノナン-1-オール(6.9 g)のジクロロメタン(25 mL)溶液を-60℃以下を保持しながら滴下した。-70℃で2時間撹拌後、トリエチルアミン(23.8 mL)を加え室温まで昇温した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて分液操作を行った後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(6.06 g)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.85 - 0.92 (6 H, m), 1.19 - 1.33 (20 H, m), 1.37 - 1.47 (2 H, m), 1.56 - 1.65 (2 H, m), 2.18 - 2.25 (1 H, m), 9.55 (1 H, d, J = 3.2 Hz)
D) エチル-4-ヘプチルウンデカ-2-エノアート
窒素気流氷冷下、60% 水素化ナトリウム(ミネラルオイル含有)(1.4 g)の脱水THF(70mL)懸濁液を10分間撹拌した。その後、エチル(ジエトキシフォスフォリル)アセタート(16.8 g)を10℃以下で滴下した。同温度で10分間撹拌した後、2-ヘプチルノナナール(6.0 g)の脱水THF(60 mL)溶液を滴下し、室温まで昇温した。しばらく撹拌した後、50℃に昇温した。6時間撹拌後、反応混合物を5℃以下にして水を添加した後、酢酸エチルで希釈し、飽和食塩水で2回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(5.4 g)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.87 (6 H, t, J=6.0 Hz), 1.16 - 1.34 (25 H, m), 1.37 - 1.45 (2 H, m) 2.07 - 2.15 (1 H, m), 4.19 (2 H, q, J = 7.5 Hz), 5.75 (1 H, d, J = 16.0 Hz), 6.75 (1 H, dd, J=16.0, 10.0 Hz)
E) 4-ヘプチルウンデカン酸
エチル-4-ヘプチルウンデカ-2-エノアート(5.40 g)のエタノール(100 mL)溶液に、10%Pd炭素(1.08 g)を室温で加え、水素雰囲気下、20時間撹拌した。反応後、Pd炭素をろ過除去した後、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣に8N 水酸化ナトリウム水溶液(6.38 mL)のエタノール(20 mL)溶液を加え、60℃で5時間撹拌した。溶媒を減圧下留去した後、6N塩酸で酸性にした。残渣をヘキサンで希釈し、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下留去して標題化合物(4.73 g)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.88 (6 H, t, J = 7.5 Hz), 1.17 - 1.41 (25 H, m), 1.16 - 1.34 (2 H, m), 2.22 - 2.34 (2 H, m)
F) 2-(((tert-ブチル(ジフェニル)シリル)オキシ)メチル)-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール
2, 2-ビス(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオ一ル(5.0 g)、1H-イミダゾ一ル(2.5 g)およびDMF(200 mL)の混合物に、tert-ブチルクロロジフェニルシラン(5.1 g)のDMF(10 mL)溶液を室温で加えた。18時間撹拌後、反応混合物を減圧下濃縮した。残渣を酢酸エチルで希釈し、水で3回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(6.4 g)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 1.07 (9 H, s), 2.34 (3 H, t, J = 5.5 Hz), 3.67 (2H,s), 3.74 (6 H, d, J = 5.7 Hz), 7.39 - 7.48 (6 H, m), 7.63 - 7.67 (4 H, m)
G) (5-(((tert-ブチル(ジフェニル)シリル)オキシ)メチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メタノール
2-(((tert-ブチル(ジフェニル)シリル)オキシ)メチル)-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール(3.5 g)、2,2-ジメトキシプロパン(1.5 g)のアセトン(35 mL)溶液に、p-トルエンスルホン酸一水和物(89 mg)を室温で加えた。2時間撹拌後、反応混合物に希アンモニア水を加え中和した後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(2.7 g)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 1.07 (9 H, s), 1.27 (3 H, s), 1.41 (3 H, s), 2.12 - 2.18 (1 H, m), 3.69 - 3.78 (8 H, m), 7.38 - 7.47 (6 H, m), 7.65 - 7.69 (4 H, m)
H) (5-(ヒドロキシメチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル 4-ヘプチルウンデカノアート
(5-(((tert-ブチル(ジフェニル)シリル)オキシ)メチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メタノール(3.56 g)、DMAP(1.37 g)および4-ヘプチルウンデカン酸(3.18 g)のDMF(30 mL)溶液に、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(2.47 g)を50℃で加えた。6時間撹拌後、反応混合物に酢酸エチルを加え、水で1回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣(6.15 g)のTHF(20mL)溶液に、TBAFのTHF溶液(1M, 10.3 mL)を室温で加えた。4時間撹拌後、反応混合物を減圧下濃縮した。残渣を酢酸エチルで希釈し、水で1回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(2.34 g)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.88 (6 H, t, J = 6.9 Hz), 1.22 - 1.32 (25 H, m), 1.42 (6 H, s), 1.57 - 1.62 (2 H, m), 2.30 - 2.35 (2 H, m), 3.48 (2 H, d, J = 6.6 Hz), 3.71 - 3.73 (4 H, m), 4.25 (2 H, s)
I) (5-(((5-ジメチルアミノ)ペンタノイル)オキシ)メチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル 4-ヘプチルウンデカノアート
(5-(ヒドロキシメチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル 4-ヘプチルウンデカノアート(1.2 g)、DMAP(0.94 g)および5-(ジメチルアミノ)ペンタン酸塩酸塩(0.74 g)のDMF(30 mL)溶液に、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(0.94 g)を40℃で加えた。4時間撹拌後、反応混合物に酢酸エチルを加え、水で1回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(NH、酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(1.37 g)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.88 (6 H, t, J = 6.9 Hz), 1.20 - 1.32 (25 H, m), 1.42 (6 H, s), 1.45 - 1.52 (2 H, m), 1.54 - 1.67 (4 H, m), 2.21 (6 H, s), 2.23 - 2.31 (4 H, m), 2.35 (2 H, t, J = 7.5 Hz), 3.75 (4 H, s), 4.11 (2 H, s), 4.12 (2 H, s)
J) 3-((5-(ジメチルアミノ)ペンタノイル)オキシ)-2,2-ビス((オクタノイルオキシ)メチル)プロピル 4-ヘプチルウンデカノアート
(5-(((5-ジメチルアミノ)ペンタノイル)オキシ)メチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル 4-ヘプチルウンデカノアート(1.37 g)に酢酸(6.85 mL)、水(3.43 mL)を加えて、70℃で2時間撹拌後、溶媒を減圧下留去した。残渣に酢酸エチル、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて、2時間撹拌した。水で2回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣(400 mg)に、DMAP(478 mg)およびオクタン酸(327 mg)のDMF(4 mL)溶液を加えた後、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(478 mg)を50℃で加えた。4時間撹拌後、反応混合物に酢酸エチルを加え、飽和炭酸ナトリウム水溶液で2回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(NH、酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(300 mg)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.86 - 0.91 (12 H, m), 1.15 - 1.34 (45 H, m), 1.45 - 1.52 (2 H, m), 1.53 - 1.66 (4 H, m), 2.20 (6 H, s), 2.23 - 2.36 (10 H, m), 4.11 (8 H, s)
[合成例8] 2-(((6-(ジメチルアミノ)ヘキサノイル)オキシ)メチル-2-((オクタノイルオキシ)メチル)プロパン-1,3-ジイル ビス(2-ヘキシルオクタノアート)
A) 2-ヘキシルオクタン酸
窒素気流氷冷下、60% 水素化ナトリウム(ミネラルオイル含有)(3.78 g)の脱水DMF(90 mL)懸濁液を10分間撹拌した。その後、マロン酸ジメチル(5.0 g)を10℃以下で滴下した。同温度で10分間撹拌した後、1-ヨードヘキサン(16.8 mL)を滴下し、室温まで昇温した。8時間後、反応混合物に酢酸(1 mL)添加した後、酢酸エチルで希釈し、水で2回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残渣をEtOH (80 mL)に溶解し、8N 水酸化ナトリウム水溶液(25 mL)加えて、60℃で6時間撹拌した。6N 塩酸で中和した後、酢酸エチルで希釈し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残渣を160℃で1.5時間加熱し、室温に冷却後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(7.45 g)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.83 - 0.92 (6 H, m), 1.22 - 1.35 (16 H, m), 1.38 - 1.52 (2 H, m), 1.56 - 1.67 (2 H, m), 2.34 (1 H, ddd, J=8.7, 5.4, 3.3 Hz)
B) (2-(4-メトキシフェニル)-1,3-ジオキサン-5,5-ジイル)ジメタノール
2, 2-ビス(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオ一ル(506 g)の水(2.0 L)溶液を50℃で撹拌した。濃塩酸(18 mL)を加え、p-メトキシベンズアルデヒド(474 mL)を30℃付近で3時間かけて滴下した。その後、反応液を25℃にし、5時間撹拌した。2N水酸化ナトリウム水溶液(120 mL)を加え、1時間撹拌した。結晶をろ過し、水で洗浄した後、酢酸エチル/ヘキサンで再結晶して標題化合物(769 g)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ ppm 3.24 (2 H, d, J = 5.0 Hz), 3.67 (2 H, d, J = 5.4 Hz), 3.74 (3 H, s), 3.77 (2 H, d, J = 11.3 Hz), 3.88 (2 H, t, J = 11.3 Hz), 4.53 (1 H, t, J = 5.4 Hz), 4.62 (1 H, t, J = 5.0 Hz), 5.34 (1 H, s), 6.90 (2 H, d, J = 8.9 Hz), 7.33 (2 H, d, J = 8.9 Hz)
C) 9-(4-メトキシフェニル)-3,3-ジメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン
(2-(4-メトキシフェニル)-1,3-ジオキサン-5,5-ジイル)ジメタノール(2.00 g)、2,2-ジメトキシプロパン(2.46 g)のDMF(8 mL)溶液に、ピリジニウム p-トルエンスルホナート(20 mg)を室温で加えた。4時間撹拌後、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、飽和食塩水で2回洗浄後、無水硫酸マウネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣を酢酸エチル/ヘキサンで再結晶して標題化合物(1.62 g)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.34 (6 H, s), 3.33 (2 H, s), 3.63 (2 H, d, J = 11.7 Hz), 3.74 (3 H, s), 3.99 (2 H, s), 4.12 (2 H, d, J = 11.7 Hz), 5.37 (1 H, s), 6.90 (2 H, d, J = 8.8 Hz), 7.34 (2 H, d, J = 8.8 Hz)
D) (5-(((4-メトキシベンジル)オキシ)メチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メタノール
9-(4-メトキシフェニル)-3,3-ジメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(22.0 g)のトルエン(200 mL)懸濁溶液に1.5M DIBAL-H溶液(60 mL)を5〜20℃で滴下し、15℃で3時間撹拌した。メタノール(22 mL)を添加した後、2N 水酸化ナトリウム水溶液(100 mL)、4N 水酸化ナトリウム水溶液(200 mL)を順に滴下した。1.5時間攪拌した後、トルエン層を分取し、5%食塩水で洗浄した。溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(14.7 g)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.29 (3 H, s), 1.29 (3 H, s), 3.35 (2 H, s), 3.39 (2 H, d, J = 5.1 Hz), 3.61 (4 H, s), 3.74 (3 H, s), 4.38 (2 H, s), 4.59 (1 H, t, J = 5.1 Hz), 6.90 (2 H, d like, J = 7.5 Hz), 7.24 (2 H, d like, J = 7.5 Hz)
E) (5-(((4-メトキシベンジル)オキシ)メチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチルオクタノアート
(5-(((4-メトキシベンジル)オキシ)メチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メタノール(2.00 g)、DMAP(412 mg)およびオクタン酸(1.27 g)のDMF(20 mL)溶液に、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(1.94 g)を50℃で加えた。4時間撹拌後、反応混合物に酢酸エチルを加え、水で2回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(2.78 g)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.84 - 0.91 (3 H, m), 1.22 - 1.33 (8 H, m), 1.40 (6 H, s), 1.53 - 1.61 (2 H, m), 2.26 (2 H, t, J = 7.6 Hz), 3.39 (2 H, s), 3.68 - 3.74 (2 H, m), 3.76 - 3.80 (2 H, m), 3.80 (3 H, s), 4.15 (2 H, s), 4.42 (2 H, s), 6.87 (2 H, d, J = 7.8 Hz), 7.20 - 7.24 (2 H, m)
F) 3-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-2-(((4-メトキシベンジル)オキシ)メチル)プロピル オクタノアート
(5-(((4-メトキシベンジル)オキシ)メチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチルオクタノアート(754 mg)のTHF(6 mL)溶液に1N 塩酸(6 mL)を加え、室温で6時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液または2N 水酸化ナトリウム水溶液(4 mL)加えた後、酢酸エチルで抽出し、水および飽和食塩水で洗浄した。この一連の操作を、脱保護が完了するまで4回繰り返した。反応完結後、溶媒を減圧下留去し、標題化合物(608 mg)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ ppm 0.85 (3 H, t, J = 7.3 Hz), 1.15 - 1.30 (9 H, m), 1.40 - 1.50 (2 H, m), 2.22 (2 H, t, J = 7.5 Hz), 3.31 (2 H, s), 3.39 (4 H, d, J = 5.4 Hz), 3.76 (3 H, s), 3.95 (2 H, s), 4.35 (2 H, s), 4.43 (2 H, t, J = 5.4 Hz), 6.89 (2 H, d, J = 6.6 Hz), 7.21 (2 H, d, J = 6.6 Hz)
G) 2-(((4-メトキシベンジル)オキシ)メチル)-2-((オクタノイルオキシ)メチル)プロパン-1,3-ジイル ビス(2-ヘキシルオクタノアート)
3-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-2-(((4-メトキシベンジル)オキシ)メチル)プロピル オクタノアート(2.0 g)、DMAP(0.64 g)および2-ヘキシルオクタン酸(2.63 g)のDMF(20 mL)溶液に、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(2.41 g)を室温で加えた。室温で15時間撹拌した後、反応混合物に酢酸エチルを加え、水で2回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(3.48 g)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.83 - 0.91 (15 H, m), 1.19 - 1.33 (42 H, m), 1.37 - 1.47 (4 H, m), 1.51 - 1.61 (4 H, m), 2.24 (2 H, t, J = 7.6 Hz), 2.32 (2 H, br t, J = 5.4 Hz), 3.41 (2 H, s), 3.80 (3 H, s), 4.08 - 4.16 (6 H, m), 4.39 (2 H, s), 6.86 (2 H, d, J = 7.6 Hz), 7.19 (2 H, d, J = 8.8 Hz)
H) 2-(ヒドロキシメチル)-2-((オクタノイルオキシ)メチル)プロパン-1,3-ジイル ビス(2-ヘキシルオクタノアート)
2-(((4-メトキシベンジル)オキシ)メチル)-2-((オクタノイルオキシ)メチル)プロパン-1,3-ジイル ビス(2-ヘキシルオクタノアート)(3.48 g)のエタノール(30 mL)溶液に、10%Pd炭素(280 mg)を室温で加え、水素雰囲気下で7時間撹拌した。反応後、Pd炭素をろ過除去した後、溶媒を減圧下留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(1.68 g)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.84 - 0.91 (15 H, m), 1.19 - 1.33 (42 H, m), 1.41 - 1.51 (4 H, m), 1.54 - 1.63 (4 H, m), 2.30 - 2.38 (4 H, m), 2.61 - 2.64 (1 H, m), 3.48 (2 H, d, J = 7.3 Hz), 4.08 - 4.14 (6 H, m)
I) 2-(((6-(ジメチルアミノ)ヘキサノイル)オキシ)メチル-2-((オクタノイルオキシ)メチル)プロパン-1,3-ジイル ビス(2-ヘキシルオクタノアート)
2-(ヒドロキシメチル)-2-((オクタノイルオキシ)メチル)プロパン-1,3-ジイル ビス(2-ヘキシルオクタノアート)(600 mg)、DMAP(54 mg)および6-(ジメチルアミノ)ヘキサン酸(280 mg)のDMF(6 mL)溶液に、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(303 mg)を室温で加えた。40℃で15時間撹拌した後、反応混合物に酢酸エチルを加え、水で2回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(NH, 酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(513 mg)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.83 - 0.92 (15 H, m), 1.19 - 1.34 (42 H, m), 1.39 - 1.50 (6 H, m), 1.52 - 1.73 (8 H, m), 2.21 (6 H, s), 2.21 - 2.35 (8 H, m), 4.10 (8 H, s)
[合成例10] 3-((5-(ジメチルアミノ)ペンタノイル)オキシ)-2,2-ビス((オクタノイルオキシ)メチル)プロピル 4,5-ジブチルノナノアート
A) エチル 3-ブチルヘプタ-2-エノアート
窒素気流氷冷下、60% 水素化ナトリウム(ミネラルオイル含有)(3.94 g)の脱水THF (100 mL)懸濁液を10分間撹拌した。その後、エチル(ジエトキシフォスフォリル)アセタート(23.7 g)を10℃以下で滴下した。同温度で10分間撹拌した後、ノナン-5-オン(10.0 g)を添加し室温まで昇温した。しばらく撹拌した後、50℃に昇温した。10時間撹拌後、反応混合物を5℃以下にして水を添加した後、酢酸エチルで希釈し、飽和食塩水で2回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(4.47 g)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.92 (6 H, td, J = 7.3, 3.2 Hz), 1.25 - 1.47 (11 H, m), 2.14 (2 H, td, J = 7.6, 1.1 Hz), 2.57 - 2.62 (2 H, m), 4.14 (2 H, q, J = 7.1 Hz), 5.62 (1 H, s)
B) エチル 3-ブチルヘプタノアート
エチル 3-ブチルヘプタ-2-エノアート(5.80 g)のエタノール(25 mL)溶液に、10%Pd炭素(1.50 g)を室温で加え、水素雰囲気下、5時間撹拌した。反応後、Pd炭素をろ過除去した後、溶媒を減圧下留去し標題化合物(5.49 g)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.84 - 0.93 (6 H, m), 1.21 - 1.33 (15 H, m), 1.80 - 1.88 (1 H, m), 2.22 (2 H, d, J = 6.9 Hz), 4.12 (2 H, q, J = 7.1 Hz)
C) エチル 2,3-ジブチルヘプタノアート
窒素気流下、ジイソプロピルアミン(11.8 mL)の脱水THF(59 mL)溶液を-10℃に冷却し、1.6M n-BuLiヘキサン溶液(35.2 mL)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応液を0℃にして10分間撹拌した。再度-10℃に冷却し、エチル 3-ブチルヘプタノアート(5.49 g)の脱水THF(16 mL)溶液を滴下し、-5℃付近で30分間撹拌する。その後、1-ヨードブタン(9.43 g)を滴下し、しばらく撹拌した後室温にした。3時間撹拌後、6N塩酸で中和した後、酢酸エチルで希釈し、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液で2回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(5.57 g)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.84 - 0.93 (9 H, m), 1.17 - 1.41 (20 H, m), 1.51 - 1.65 (2 H, m), 2.34 (1 H, ddd, J = 10.6, 6.5, 3.8 Hz), 4.07 - 4.19 (2 H, m)
D) 2,3-ジブチルヘプタン-1-オール
窒素気流氷冷下、水素化リチウムアルミニウム(1.54 g)の脱水THF(66 mL)懸濁液に、エチル 2,3-ジブチルヘプタノアート(5.50 g)の脱水THF(10 mL)溶液を滴下した。滴下終了後、10分撹拌し室温に戻した。2時間撹拌後、5℃以下に冷却し、硫酸ナトリウム・10水和物を少量ずつ添加した。発泡が見られなくなった後、酢酸エチルで希釈して不溶物をセライトろ過した。溶媒を減圧下留去して標題化合物(4.67 g) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.86 - 0.93 (9 H, m), 1.12 - 1.34 (19 H, m), 1.37 - 1.46 (1 H, m), 1.47 - 1.61 (1 H, m), 3.49 - 3.62 (2 H, m)
E) 2,3-ジブチルヘプタナール
窒素気流下、2,3-ジブチルヘプタン-1-オール(4.60 g)およびDBU(6.02 mL)のジクロロメタン(46 mL)溶液を-10℃に冷却し、N-tert-ブチルベンゼンスルフィンイミドイル クロリド(6.52 g)のジクロロメタン(20 mL)溶液を-5℃以下を保持しながら滴下した。-10℃で3時間撹拌後、1N塩酸で酸性にした。分液操作を行った後、溶媒を減圧下留去した。残渣を酢酸エチルで希釈し、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物 (4.11 g) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.83 - 0.96 (9 H, m), 1.15 - 1.39 (16 H, m), 1.52 - 1.60 (1 H, m), 1.62 - 1.74 (2 H, m), 2.22 - 2.27 (1 H, m), 9.64 (1 H, d, J = 2.8 Hz)
F) エチル 4,5-ジブチルノン-2-エノアート
窒素気流氷冷下、60% 水素化ナトリウム(ミネラルオイル含有)(1.0 g)の脱水THF(41 mL)懸濁液を10分間撹拌した。その後、エチル(ジエトキシフォスフォリル)アセタート(6.10 g)を10℃以下で滴下した。同温度で10分間撹拌した後、2,3-ジブチルヘプタナール(4.10 g)の脱水THF(8 mL)溶液を滴下し、室温まで昇温した。しばらく撹拌した後、50℃に昇温した。5時間撹拌後、反応混合物を5℃以下にして水を添加した後、酢酸エチルで希釈し、飽和食塩水で2回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(4.14 g)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.83 - 0.97 (9 H, m), 1.14 - 1.38 (22 H, m), 2.16 - 2.30 (1 H, m), 4.10 - 4.22 (2 H, m), 5.72 - 5.78 (1 H, m), 6.80 (1 H, dd, J = 15.6, 9.6 Hz)
G) 4,5-ジブチルノン-2-エノン酸
エチル 4,5-ジブチルノン-2-エノアート(4.10 g)および8N 水酸化ナトリウム水溶液(6.1 mL)のエタノール(30 mL)溶液を60℃で2時間撹拌した。溶媒を減圧下留去し、1N塩酸で酸性にした。残渣を酢酸エチルで希釈し、水で2回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(2.80 g)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.81 - 0.93 (9 H, m), 1.06 - 1.47 (19 H, m), 2.16 - 2.33 (1 H, m), 5.75 - 5.80 (1 H, m), 6.92 (1 H, dd, J = 15.8, 9.8 Hz)
H) 3-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-2-(((4-メトキシベンジル)オキシ)メチル)プロピル-4,5-ジブチルノン-2-エノアート
(5-(((4-メトキシベンジル)オキシ)メチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メタノール(600 mg)、DMAP(240 mg)および4,5-ジブチルノン-2-エノン酸(706 mg)のDMF(4 mL)溶液に、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(582 mg)を室温で加えた。一晩撹拌後、反応混合物に酢酸エチルを加え、水で2回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をTHF(12 mL)に溶解させた後、1N塩酸(6 mL)を加えて3日間撹拌した。反応混合物に酢酸エチルを加え、5%炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー (酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(870 mg)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.84 - 0.93 (9 H, m), 1.13 - 1.36 (18 H, m), 1.40 - 1.47 (1 H, m), 2.21 (1 H, dt, J = 9.3, 4.8 Hz), 2.69 (2 H, td, J = 6.6, 2.5 Hz), 3.48 (2 H, s), 3.55 - 3.67 (4 H, m), 3.80 - 3.82 (3 H, m), 4.23 - 4.32 (2 H, m), 4.45 (2 H, s), 5.74 - 5.79 (1 H, m), 6.82 - 6.91 (3 H, m), 7.21 - 7.25 (2 H, m)
I) 3-((4-メトキシベンジル)オキシ)-2,2-ビス((オクタノイルオキシ)メチル)プロピル -4,5-ジブチルノン-2-エノアート
3-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-2-(((4-メトキシベンジル)オキシ)メチル)プロピル-4,5-ジブチルノン-2-エノアート(870 mg)、DMAP(210 mg)およびオクタン酸(545 mg)のDMF(6 mL)溶液に、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(757 mg)を室温で加えた。60℃で4時間撹拌した後、反応混合物に酢酸エチルを加え、水で2回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(1.26 g)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.83 - 0.93 (15 H, m), 1.13 - 1.45 (35 H, m), 1.52 - 1.61 (4 H, m), 2.17 - 2.31 (5 H, m), 3.43 (2 H, s), 3.80 (3 H, s), 4.10 - 4.22 (6 H, m), 4.40 (2 H, s), 5.73 (1 H, d, J = 15.4 Hz), 6.78 - 6.90 (3 H, m), 7.19 (2 H, d, J = 7.9 Hz)
J) 3-((5-(ジメチルアミノ)ペンタノイル)オキシ)-2,2-ビス((オクタノイルオキシ)メチル)プロピル 4,5-ジブチルノナノアート
3-((4-メトキシベンジル)オキシ)-2,2-ビス((オクタノイルオキシ)メチル)プロピル -4,5-ジブチルノン-2-エノアート(1.26 g)のエタノール(10 mL)と酢酸エチル(10 mL)の混合溶液に、10%Pd炭素(110 mg)を室温で加え、水素雰囲気下で一晩撹拌した。反応後、Pd炭素をろ過除去した後、溶媒を減圧下留去した。残渣(500 mg)、DMAP(95 mg)および5-(ジメチルアミノ)ペンタン酸塩酸塩(170 mg)のDMF(4 mL)溶液に、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(194 mg)を室温で加えた。50℃で7時間撹拌後、反応混合物に酢酸エチルを加え、水で2回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(NH、酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(250 mg)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.84 - 0.91 (15 H, m), 1.09 - 1.31 (37 H, m), 1.42 - 1.52 (2 H, m), 1.54 - 1.66 (6 H, m), 1.76 - 1.97 (1 H, m), 2.21 (6 H, s), 2.24 - 2.35 (10 H, m), 4.07 - 4.13 (8 H, m)
[合成例14] 2-(((4,5-ジブチルノナノイル)オキシ)メチル)-2-(((5-(ジメチルアミノ)ペンタノイル)オキシ)メチル)プロパン-1,3-ジイル ジデカノアート
A) エチル 4,5-ジブチルノナノアート
エチル 4,5-ジブチルノン-2-エノアート(2,50 g)のエタノール(20 mL)溶液に、10%Pd炭素(0.54 g)を室温で加え、水素雰囲気下、5時間撹拌した。反応後、Pd炭素をろ過除去した後、溶媒を減圧下留去し標題化合物(2.49 g)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.82 - 1.00 (9 H, m), 1.10 - 1.33 (23 H, m), 1.46 - 1.63 (2 H, m), 2.19 - 2.36 (2 H, m), 4.06 - 4.19 (2 H, m)
B) 4,5-ジブチルノナノン酸
エチル 4,5-ジブチルノナノアート(2.49 g)および8N 水酸化ナトリウム水溶液(3.55 mL)のエタノール(12.5 mL)溶液を60℃で7時間撹拌した。溶媒を減圧下留去し、1N塩酸で酸性にした。残渣を酢酸エチルで希釈し、水で2回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下留去して標題化合物(2.36 g)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.83 - 0.94 (9 H, m), 0.95 - 1.33 (20 H, m), 1.49 (1 H, ddt, J = 13.7, 9.3, 6.8, 6.8 Hz), 1.56 - 1.74 (1 H, m), 2.26 - 2.42 (2 H, m)
C) (5-(ヒドロキシメチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル 4,5-ジブチルノナノアート
(5-(((tert-ブチル(ジフェニル)シリル)オキシ)メチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メタノール(800 mg)、DMAP(306 mg)および4,5-ジブチルノナノン酸(678 mg)のDMF(8 mL)溶液に、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(555 mg)を室温で加えた。50℃で8時間撹拌後、反応混合物に酢酸エチルを加え、水で2回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製した。この化合物のTHF(4 mL)溶液に、TBAFのTHF溶液(1M, 2.32 mL)を室温で加えた。室温で一晩撹拌後、反応混合物を減圧下濃縮した。残渣を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(680 mg)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.89 (9 H, t, J = 6.8 Hz), 1.09 - 1.31 (20 H, m), 1.42 (6 H, s), 1.45 - 1.54 (1 H, m), 1.57 - 1.62 (1 H, m), 2.29 - 2.37 (3 H, m), 3.48 (2 H, d, J = 6.6 Hz), 3.70 - 3.75 (4 H, m), 4.25 (2 H, d, J = 1.9 Hz)
D) (5-(((5-(ジメチルアミノ)ペンタノイル)オキシ)メチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル 4,5-ジブチルノナノアート
(5-(ヒドロキシメチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル 4,5-ジブチルノナノアート(680 mg)、DMAP(388 mg)および5-(ジメチルアミノ)ペンタン酸塩酸塩(576 mg)のDMF(7 mL)溶液に、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(669 mg)を室温で加えた。50℃で7時間撹拌後、反応混合物に酢酸エチルを加え、水で2回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(740 mg)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.89 (9 H, t, J = 6.9 Hz), 1.09 - 1.31 (21 H, m), 1.42 (6 H, s), 1.48 (3 H, dt, J = 15.1, 7.6 Hz), 1.60 - 1.66 (2 H, m), 2.21 (6 H, s), 2.22 - 2.32 (4 H, m), 2.35 (2 H, t, J = 7.6 Hz), 3.75 (4 H, s), 4.09 - 4.13 (4 H, m)
E) 2-(((4,5-ジブチルノナノイル)オキシ)メチル)-2-(((5-(ジメチルアミノ)ペンタノイル)オキシ)メチル)プロパン-1,3-ジイル ジデカノアート
(5-(((5-(ジメチルアミノ)ペンタノイル)オキシ)メチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル 4,5-ジブチルノナノアート(1.68 g)に酢酸(8.4mL)と水(4.2 mL)を加え75℃で2時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、酢酸エチルと飽和水酸化ナトリウム水溶液を加えて2時間撹拌した。有機層を飽和水酸化ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣(700 mg)、DMAP(497 mg)およびデカン酸(701 mg)のDMF(7 mL)溶液に、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(859 mg)を室温で加えた。50℃で7時間撹拌後、反応混合物に酢酸エチルを加え、水で2回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン、酢酸エチル/メタノール及びNH, 酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(405 mg)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.84 - 0.93 (15 H, m), 1.10 - 1.32 (44 H, m), 1.40 - 1.54 (3 H, m), 1.54 - 1.66 (7 H, m), 2.21 (6 H, s), 2.23 - 2.35 (10 H, m), 4.11 (8 H, s)
[合成例18] 3-(((4-(ジメチルアミノ)ブチル)カルバモイル)オキシ)-2,2-ビス((オクタノイルオキシ)メチル)プロピル 4,5-ジブチルノナノアート
(5-(ヒドロキシメチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル 4,5-ジブチルノナノアート(0.50 g)のテトラヒドロフラン溶液(7.5 mL)に1,1-カルボニルジイミダゾール(0.28 g)を室温で加えた。1時間撹拌後、反応混合物を減圧下濃縮した。残渣をヘキサンで希釈し、不溶物を除いた後、ろ液を減圧下濃縮した。残渣にテトラヒドロフラン(10 mL)、(4-アミノブチル)ジメチルアミン(0.20 g)、トリエチルアミン(0.24 mL)を室温で加えた。20時間攪拌後、酢酸エチルで希釈し、水、塩化アンモニウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液で順次洗浄し、溶媒を減圧下留去した。残渣に酢酸(3.3 mL)、水(1.7 mL)を加え、65℃で5時間攪拌した。室温に冷却後、溶媒を減圧下留去した。残渣を酢酸エチルで希釈し、炭酸水素ナトリウム水溶液、水で順次洗浄し、溶媒を減圧下留去した。残渣に、N, N-ジメチルホルムアミド(4 mL)、DMAP(61 mg)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(288 mg)、オクタン酸(0.19 mL)を加えた。60℃で3時間撹拌後、反応混合物に酢酸エチルを加え、水、食塩水で順次洗浄後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(NH、酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(215 mg)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.88 (15 H, t, J = 7.09 Hz) 1.10 - 1.33 (32 H, m) 1.40 - 1.62 (14 H, m) 2.21 (6 H, s) 2.25 - 2.32 (8 H, m) 3.16 (2 H, m) 4.10 (8 H, s) 5.84 (1 H, m)
[合成例20] 3-((3-ブチルヘプタノイル)オキシ)-2-(((3-ブチルヘプタノイル)オキシ)メチル)-2-(((4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)プロピル (9Z)-ヘキサデカ-9-エノアート
A) (5-(((tert-ブチル(ジフェニル)シリル)オキシ)メチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル (9Z)-ヘキサデカ-9-エノアート
窒素雰囲気下、(5-(((tert-ブチル(ジフェニル)シリル)オキシ)メチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メタノール(1.50 g)、DMAP(0.49 g)およびパルミトレイン酸(1.01 g)のDMF(15 mL)溶液に、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(0.83 g)を50℃で加えた。21時間撹拌後、反応混合物に酢酸エチルを加え、水で1回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(2.11 g)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ ppm 0.85 - 0.94 (3 H, m), 1.01 - 1.10 (9 H, m), 1.24 - 1.35 (16 H, m), 1.40 (6 H, d, J = 10.3 Hz), 1.52 - 1.61 (2 H, m), 1.97 - 2.07 (4 H, m), 2.25 (2 H, t, J = 7.6 Hz), 3.66 (2 H, s), 3.77 (4 H, q, J = 11.8 Hz), 4.18 (2 H, s), 5.35 (2 H, ddd, J = 5.8, 3.4, 2.7 Hz), 7.36 - 7.47 (6 H, m), 7.65 - 7.69 (4 H, m)
B) 3-((tert-ブチル(ジフェニル)シリル)オキシ)-2,2-ビス(((3-ブチルヘプタノイル)オキシ)メチル)プロピル (9Z)-ヘキサデカ-9-エノアート
窒素雰囲気下、(5-(((tert-ブチル(ジフェニル)シリル)オキシ)メチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル (9Z)-ヘキサデカ-9-エノアート(2.11 g)に酢酸(10.6 mL)、水(5.3 mL)を加え、75℃で8時間攪拌した。室温に冷却後、溶媒を減圧下留去した。残渣を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去し、残渣(1.95 g)を得た。窒素雰囲気下、残査(0.95 g)を秤量し、DMF(9.5 mL)溶液に溶解した後、DMAP(0.42 g)および3-ブチルヘプタン酸(0.64 g)を添加してしばらく撹拌した。その後、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(0.69 g)を50℃で加えた。6時間撹拌後、反応混合物に酢酸エチルを加え、水で1回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(0.71 g)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ ppm 0.84 - 0.93 (15 H, m), 1.05 (9 H, s), 1.18 - 1.37 (40 H, m), 1.51 - 1.60 (2 H, m), 1.78 (2 H, br d, J = 5.2 Hz), 1.97 - 2.07 (4 H, m), 2.17 - 2.26 (6 H, m), 3.63 (2 H, s), 4.10 - 4.17 (6 H, m), 5.35 (2 H, ddd, J = 5.6, 3.5, 2.2 Hz), 7.35 - 7.48 (6 H, m), 7.60 - 7.65 (4 H, m)
C) 3-((3-ブチルヘプタノイル)オキシ)-2-(((3-ブチルヘプタノイル)オキシ)メチル)-2-(((4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)プロピル (9Z)-ヘキサデカ-9-エノアート
3-((tert-ブチル(ジフェニル)シリル)オキシ)-2,2-ビス(((3-ブチルヘプタノイル)オキシ)メチル)プロピル (9Z)-ヘキサデカ-9-エノアート(0.71 g)のTHF(2.1 mL)溶液に、TBAFのTHF溶液(1M, 0.9 mL)を室温で加えた。室温で一晩撹拌後、反応混合物を減圧下濃縮した。残渣を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残査をDMF(5.3 mL)溶液に溶解した後、DMAP(0.14 g)および4-(ジメチルアミノ)ブタン酸塩酸塩(0.19 g)を添加してしばらく撹拌した。その後、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(0.24 g)を50℃で加えた。8時間撹拌後、反応混合物に酢酸エチルを加え、水で1回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(NH, 酢酸エチル/ヘキサン)で精製して標題化合物(0.31 g)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d ppm 0.85 - 0.94 (15 H, m), 1.20 - 1.37 (40 H, m), 1.55 - 1.66 (2 H, m), 1.66 - 1.86 (4 H, m), 1.97 - 2.08 (4 H, m), 2.21 (6 H, s), 2.22 - 2.39 (10 H, m), 4.08 - 4.17 (8 H, m), 5.35 (2 H, ddd, J = 5.6, 3.5, 2.1 Hz)
上記の各合成例に示した方法、またはそれらに準じた方法のいずれかに従って、以下の表中の合成例2〜7、9、11〜13、15〜17、19及び21が製造された。これらの合成例について、合成例1、8、10、14、18及び20ともに、化合物の名称、構造式、H NMRケミカルシフト及び製造時に実施された質量数(表中、MSで示す)を表3に示す。
Figure 2020032185
Figure 2020032185
Figure 2020032185
[調製例8]合成例8の化合物を用いたGFP mRNA含有LNPの調製
脂質混合物(各カチオン性脂質:DPPC:Cholesterol:GM-020 = 60:10.6:28:1.4, モル比)を、90% EtOH、10% 水に溶解して、8.5 mg/mlの脂質溶液を得た。GFP mRNA(TriLink)は10mM 2-モルホリノエタンスルホン酸 (MES) 緩衝液pH4.0に溶解して0.22 mg/ mlの核酸溶液を得た。得られた脂質溶液および核酸溶液を、室温で、Nanoassemblr装置 (Precision Nanosystems)によって、流速比 3 ml/min : 6 ml/minで混合し、組成物を含む分散液を得た。得られた分散液は、Slyde-A-Lyzer (20kの分画分子量、Thermo scientific) を用いて水に対して室温で1時間、PBSに対して4℃で48時間透析を行った。続いて、0.2 μmのsyringe filter (Iwaki) を用いてろ過を行い、4℃に保存した。得られたGFP mRNA含有LNPの分析結果を下表に示した。以下、組成物中の脂質粒子の粒子径は、動的光散乱測定技術に基づく粒子径測定装置、Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments)を用い、自己相関関数のキュムラント解析によりZ平均粒子径として算出した。
Figure 2020032185
[調製例10]合成例10の化合物を用いたGFP mRNA含有LNPの調製
合成例8の化合物を用いる代わりに合成例10の化合物を用いたこと以外は調製例8と同様にしてLNPを調製した。得られたGFP mRNA含有LNPの分析結果を下表に示した。
Figure 2020032185
[調製例11]合成例11の化合物を用いたGFP mRNA含有LNPの調製
合成例8の化合物を用いる代わりに合成例11の化合物を用いたこと以外は調製例8と同様にしてLNPを調製した。得られたGFP mRNA含有LNPの分析結果を下表に示した。
Figure 2020032185
[実施例1]iPSC由来分化細胞(心筋細胞含有)へのLNP
transfection
本実施例では、iPSCから分化誘導した細胞に、EGFP mRNAを含有したLNPを添加してその導入効率を確認した。
(1)心筋細胞系譜への誘導
iMatrix-511(Nippi)でコートした10cmディッシュを用い、StemFit AK03N(AJINOMOTO)で維持培養したiPSC(Ff-I14s04、京都大学iPS細胞研究所から入手)をStempro Accutase(Thermo Fisher Scientific)で5分程度処理後、ピペッティングによりシングルセルへと解離した。遠心分離(1,000 rpm, 5 min)により培地を除去し、得られた細胞を、30mLバイオリアクター1本(ABLE)あたり1×107 cells播種して、StemFit AK03NからC液を除いた培地(AJINOMOTO AK03NのA液400 mLおよびB液100 mLの計500 mL)に1% L−グルタミン、トランスフェリン150 μg/mL、アスコルビン酸50 μg/mL(sigma)、モノチオグリセロール4×10-4 M、10 μM Rock inhibitor(Y-27632)、2 ng/mL BMP4(R&D)および0.5% Matrigel(Growth Factor Reduced)を添加し、37℃、5%酸素条件下にて培養(55 rpm、浮遊撹拌培養法)して、胚様体を形成させた(0日目)。翌日(1日目)、10 μg/mLのアクチビンAを45 μL(最終濃度15 ng/mL)、10 μg/mLのbFGFを15 μL(最終濃度5 ng/mL)および10 μg/mLのBMP4を54μL(最終濃度20 ng/mL)をバイオリアクター中へ添加し、37℃、5%酸素条件にてさらに2日間培養した。続いて(3日目)、得られた胚様体を50 mL遠沈管に回収して遠心分離に供した(200 g、1 min)後、培地を除去し、StemFit AK03NからC液を除いた培地(AJINOMOTO AK03NのA液400 mLおよびB液100 mLの計500 mL)に1% L−グルタミン、トランスフェリン150 μg/mL、アスコルビン酸50 μg/mL(sigma)、モノチオグリセロール4×10-4 M、10 ng/mL VEGF、1μM IWP-3、0.6 μM Dorsomorphinおよび5.4 μM SB431542を添加した培地中で、37℃、5%酸素条件下(55 rpm、浮遊撹拌培養法)で、3日間培養した。
続いて(6日目)、バイオリアクターを静置して胚様体を沈降させ、培地の80〜90%除去した後、1%L−グルタミン、トランスフェリン150 μg/mL、アスコルビン酸50 μg/mL(sigma)、モノチオグリセロール4×10-4 Mおよび5 ng/mL VEGFを添加したStemFit AK03NからC液を除いた培地(AJINOMOTO AK03NのA液400 mLおよびB液100 mLの計500 mL)をtotal 30mLになるよう添加し、10日目まで37℃、5%酸素条件下で培養し(55 rpm)、その後Ultra Low Attachment 10 cm dish (Corning)に移して、37℃、正常酸素条件下で培養した。6日目以降、2〜3日に1度同じ条件の培地に交換した。
(2)RNAトランスフェクション
分化誘導開始から15日目の胚様体を、100 μg/ml Liberase (ROCHE)で1時間処理し、D-PBS(-)溶液(Wako社)でwash後、TrypLE select (Thermo Fisher Scientific)で10分間処理した。その後、1%L−グルタミン、トランスフェリン150 μg/mL、アスコルビン酸50 μg/mL(sigma)、モノチオグリセロール4×10-4 Mおよび5 ng/mL VEGFを添加したStemFit AK03NからC液を除いた培地(AJINOMOTO AK03NのA液400 mLおよびB液100 mLの計500 mL)を等量加え、ピペッティングによりシングルセルへと解離した。遠心分離(1,000 rpm, 5 min)により培地を除去し、得られた細胞を1x106 cells/mlになるよう1%L−グルタミン、トランスフェリン150 μg/mL、アスコルビン酸50 μg/mL(sigma)、モノチオグリセロール4×10-4 Mおよび5 ng/mL VEGFを添加したStemFit AK03NからC液を除いた培地(AJINOMOTO AK03NのA液400 mLおよびB液100 mLの計500 mL)に懸濁し調整した。細胞懸濁液をフィブロネクチン(Sigma)コートした12 well plateに1 ml/wellで播種した。
Lipofectamine(登録商標)MessengerMAX(Thermo Fisher Scientific)に添付されているプロトコルに従い、Opti-MEM培地(Thermo Fisher Scientific)にLipofectamine MessengerMAX reagent、GFP mRNA(TriLink)を混合し、上記12 well plateの細胞懸濁液に添加して混合し、インキュベーターにて、37℃、正常酸素条件下で1日培養した。
前述したようにして、調製例8、調製例10および調製例11において、それぞれ合成例8、合成例10、または合成例11の化合物(カチオン性脂質)を用いて調製された、mRNA(TriLink)を含有するLNPについても同様に、上記12 well plateの細胞懸濁液に添加して混合し、インキュベーターにて、37℃、正常酸素条件下で1日培養した。
(3)mRNA導入細胞の解析
トランスフェクション翌日、顕微鏡(Keyence, BZ-X710)にてGFP発現の観察を行った(図1)。続いて導入効率を解析するために、細胞をトリプシン/EDTA(Thermo Fisher Scientific)で3〜4分処理し、50% FBS(Thermo Fisher Scientific)入りIMDM(Thermo Fisher Scientific)溶液を等量加えて、軽くピペッティングした後、15 mL遠沈管に回収して遠心分離した(1,000 rpm, 5 min)。上清を除去後、2% FBS(Thermo Fisher Scientific)入りD-PBS(-)溶液(Wako社)に懸濁し、フローサイトメトリー(BD, FACS Aria Fusion)を用いてGFP陽性細胞の割合を確認した(図2)。
本発明による、特定の化合物(本発明の化合物)、構造脂質および核酸を含む組成物を使用するトランスフェクション方法により、心筋細胞に対して効率的に核酸を導入することが可能となる。そのような本発明のトランスフェクション方法は、例えば心筋細胞を含む細胞集団において心筋細胞を精製するための方法、換言すれば心筋細胞の純度が高い細胞集団を製造するための方法に応用することができる。これらの方法により得られる心筋細胞の純度の高い細胞集団は、例えば、心不全、虚血性心疾患、心筋梗塞、心筋症、心筋炎、肥大型心筋症、拡張相肥大型心筋症、拡張型心筋症などの心疾患の治療のために使用することができる。
配列番号16:配列番号1で表されるhas-miR-1に対応する、標準的な心筋細胞特異的miRNA認識配列である。
配列番号17:配列番号2で表されるhas-miR-22-5pに対応する、標準的な心筋細胞特異的miRNA認識配列である。
配列番号18:配列番号3で表されるhas-miR-133aに対応する、標準的な心筋細胞特異的miRNA認識配列である。
配列番号19:配列番号4で表されるhas-miR-133bに対応する、標準的な心筋細胞特異的miRNA認識配列である。
配列番号20:配列番号5で表されるhas-miR-143-3pに対応する、標準的な心筋細胞特異的miRNA認識配列である。
配列番号21:配列番号6で表されるhas-miR-145-3pに対応する、標準的な心筋細胞特異的miRNA認識配列である。
配列番号22:配列番号7で表されるhas-miR-208a-3pに対応する、標準的な心筋細胞特異的miRNA認識配列である。
配列番号23:配列番号8で表されるhas-miR-208b-3pに対応する、標準的な心筋細胞特異的miRNA認識配列である。
配列番号24:配列番号9で表されるhas-miR-490-3pに対応する、標準的な心筋細胞特異的miRNA認識配列である。
配列番号25:配列番号10で表されるhas-miR-490-5pに対応する、標準的な心筋細胞特異的miRNA認識配列である。
配列番号26:配列番号11で表されるhas-miR-499a-5pに対応する、標準的な心筋細胞特異的miRNA認識配列である。
配列番号27:配列番号12で表されるhas-miR-1271-5pに対応する、標準的な心筋細胞特異的miRNA認識配列である。
配列番号28:配列番号13で表されるhas-miR-3907に対応する、標準的な心筋細胞特異的miRNA認識配列である。
配列番号29:配列番号14で表されるhas-miR-4324に対応する、標準的な心筋細胞特異的miRNA認識配列である。
配列番号30:配列番号15で表されるhas-let-7e-5pに対応する、標準的な心筋細胞特異的miRNA認識配列である。

Claims (12)

  1. 1)式(I):
    Figure 2020032185
    [式中、n1は2〜6の整数を、n2は0〜2の整数を、n3は0〜2の整数を、
    Lは、−C(O)O−または−NHC(O)O−を、
    Raは、直鎖状C5−13アルキル基、直鎖状C13−17アルケニル基または直鎖状C17アルカジエニル基を、
    Rbは、直鎖状C2−9アルキル基を、
    Rcは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
    Rdは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
    Reは、直鎖状C2−9アルキル基を、
    Rfは、直鎖状C2−9アルキル基を示す。]
    で表される化合物又はその塩、
    2)構造脂質、および
    3)核酸
    を含む組成物と、心筋細胞を含む細胞集団とを接触させる工程を含む、心筋細胞への核酸のトランスフェクション方法。
  2. 前記核酸が、mRNAである、請求項1記載の方法。
  3. 前記mRNAが、
    (i)心筋細胞で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列、および機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含む、心筋細胞特異的なmiRNA応答性mRNA、および/または
    (ii)機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含むmRNA
    を含む、請求項2記載の方法。
  4. 前記mRNAが、
    (i)心室筋細胞で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列、および機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含む、心室筋細胞特異的なmiRNA応答性mRNA、および/または
    (ii)機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含むmRNA
    を含む、請求項2記載の方法。
  5. 前記(i)および(ii)の機能的な遺伝子が、それぞれ独立して、薬剤耐性遺伝子、蛍光タンパク質をコードする遺伝子、アポトーシス誘導遺伝子および自殺遺伝子からなる群から選択される1またはそれ以上の遺伝子である、請求項3または4記載の方法。
  6. 心筋細胞を含む細胞集団が、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞またはその他の幹細胞から分化誘導された心筋細胞を含む細胞集団である、請求項1記載の方法。
  7. 1)式(I):
    Figure 2020032185
    [式中、n1は2〜6の整数を、n2は0〜2の整数を、n3は0〜2の整数を、
    Lは、−C(O)O−または−NHC(O)O−を、
    Raは、直鎖状C5−13アルキル基、直鎖状C13−17アルケニル基または直鎖状C17アルカジエニル基を、
    Rbは、直鎖状C2−9アルキル基を、
    Rcは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
    Rdは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
    Reは、直鎖状C2−9アルキル基を、
    Rfは、直鎖状C2−9アルキル基を示す。]
    で表される化合物又はその塩、
    2)構造脂質、および
    3)mRNA
    を含む組成物と、心筋細胞を含む細胞集団とを接触させる工程を含む、心筋細胞の精製方法であって、ここで該mRNAが、
    (i)心筋細胞で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列、および機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含む、心筋細胞特異的なmiRNA応答性mRNA、および/または
    (ii)機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含むmRNA
    を含む、心筋細胞の精製方法。
  8. 1)式(I):
    Figure 2020032185
    [式中、n1は2〜6の整数を、n2は0〜2の整数を、n3は0〜2の整数を、
    Lは、−C(O)O−または−NHC(O)O−を、
    Raは、直鎖状C5−13アルキル基、直鎖状C13−17アルケニル基または直鎖状C17アルカジエニル基を、
    Rbは、直鎖状C2−9アルキル基を、
    Rcは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
    Rdは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
    Reは、直鎖状C2−9アルキル基を、
    Rfは、直鎖状C2−9アルキル基を示す。]
    で表される化合物又はその塩、
    2)構造脂質、および
    3)mRNA
    を含む組成物と、心室筋細胞を含む細胞集団とを接触させる工程を含む、心室筋細胞の精製方法であって、ここで該mRNAが、
    (i)心室筋細胞で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列、および機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含む、心室筋細胞特異的なmiRNA応答性mRNA、および/または
    (ii)機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含むmRNA
    を含む、心室筋細胞の精製方法。
  9. 1)式(I):
    Figure 2020032185
    [式中、n1は2〜6の整数を、n2は0〜2の整数を、n3は0〜2の整数を、
    Lは、−C(O)O−または−NHC(O)O−を、
    Raは、直鎖状C5−13アルキル基、直鎖状C13−17アルケニル基または直鎖状C17アルカジエニル基を、
    Rbは、直鎖状C2−9アルキル基を、
    Rcは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
    Rdは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
    Reは、直鎖状C2−9アルキル基を、
    Rfは、直鎖状C2−9アルキル基を示す。]
    で表される化合物又はその塩、
    2)構造脂質、および
    3)mRNA
    を含む組成物と、心筋細胞を含む細胞集団とを接触させる工程を含む、心筋細胞の製造方法であって、ここで該mRNAが、
    (i)心筋細胞で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列、および機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含む、心筋細胞特異的なmiRNA応答性mRNA、および/または
    (ii)機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含むmRNA
    を含む、心筋細胞の製造方法。
  10. 1)式(I):
    Figure 2020032185
    [式中、n1は2〜6の整数を、n2は0〜2の整数を、n3は0〜2の整数を、
    Lは、−C(O)O−または−NHC(O)O−を、
    Raは、直鎖状C5−13アルキル基、直鎖状C13−17アルケニル基または直鎖状C17アルカジエニル基を、
    Rbは、直鎖状C2−9アルキル基を、
    Rcは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
    Rdは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
    Reは、直鎖状C2−9アルキル基を、
    Rfは、直鎖状C2−9アルキル基を示す。]
    で表される化合物又はその塩、
    2)構造脂質、および
    3)mRNA
    を含む組成物と、心室筋細胞を含む細胞集団とを接触させる工程を含む、心室筋細胞の製造方法であって、ここで該mRNAが、
    (i)心室筋細胞で特異的に発現しているmiRNAによって特異的に認識される塩基配列、および機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含む、心室筋細胞特異的なmiRNA応答性mRNA、および/または
    (ii)機能的な遺伝子をコードする塩基配列を含むmRNA
    を含む、心室筋細胞の製造方法。
  11. 1)式(I):
    Figure 2020032185
    [式中、n1は2〜6の整数を、n2は0〜2の整数を、n3は0〜2の整数を、
    Lは、−C(O)O−または−NHC(O)O−を、
    Raは、直鎖状C5−13アルキル基、直鎖状C13−17アルケニル基または直鎖状C17アルカジエニル基を、
    Rbは、直鎖状C2−9アルキル基を、
    Rcは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
    Rdは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
    Reは、直鎖状C2−9アルキル基を、
    Rfは、直鎖状C2−9アルキル基を示す。]
    で表される化合物又はその塩、
    2)構造脂質、および
    3)核酸
    を含む、心筋細胞への核酸のトランスフェクション用組成物。
  12. 1)式(I):
    Figure 2020032185
    [式中、n1は2〜6の整数を、n2は0〜2の整数を、n3は0〜2の整数を、
    Lは、−C(O)O−または−NHC(O)O−を、
    Raは、直鎖状C5−13アルキル基、直鎖状C13−17アルケニル基または直鎖状C17アルカジエニル基を、
    Rbは、直鎖状C2−9アルキル基を、
    Rcは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
    Rdは、水素原子または直鎖状C2−9アルキル基を、
    Reは、直鎖状C2−9アルキル基を、
    Rfは、直鎖状C2−9アルキル基を示す。]
    で表される化合物又はその塩、
    2)構造脂質、および
    3)核酸
    を含む、心筋細胞への核酸のトランスフェクション用キット。
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