本発明の第1の側面は、交流信号が入力される第1導電体と第2導電体との間に形成される静電容量を測定するための静電容量測定回路である。静電容量測定回路は、入力及び出力を有する増幅器を備えてよい。静電容量測定回路は、帰還容量を含み増幅器の出力から増幅器の入力に負帰還をかける負帰還部を含み、増幅器の入力が第2導電体に接続されるとともに負帰還部により仮想接地され、静電容量と関数関係にある振幅の交流信号を出力する信号検知手段を備えてよい。静電容量測定回路は、信号検知手段の出力に接続され、少なくとも信号検知手段の交流信号出力の振幅を測定する機能を有する測定手段を備えてよい。
信号検知手段は、さらに、直流補償回路を含んでよい。直流補償回路は、増幅器の出力に接続された入力を有する積分回路と、積分回路の出力及び増幅器の入力に接続する帰還抵抗を含み、増幅器の出力中の直流成分及び低周波成分を、増幅器の入力に負帰還をかけることによって増幅器を直流的に安定させてよい。
直流補償回路は、さらに、少なくとも一つのローパスフィルタを含んでよい。該ローパスフィルタは、増幅器の出力と積分回路の入力の間、又は積分回路の出力と帰還抵抗の間の少なくとも一方の間に設置されてよい。
第2導電体と信号検知手段の間に設置され、第1の共振回路、第2の共振回路、又は第1の共振回路及び第2の共振回路を含むノイズ除去回路をさらに備えてよい。第1の共振回路は、第1導電体に入力される交流信号の周波数成分で共振してよい。第2の共振回路は、除去しようとする周波数成分で共振してよい。
静電容量測定回路は、第2導電体と信号検知手段の間、第2導電体の近辺、又は第1導電体の近辺の少なくとも1か所に設置されるシールドを備えてよい。静電容量測定回路は、入力及び出力を含む第2のバッファアンプを備えてよい。第2のバッファアンプの入力が信号検知手段の入力に接続されるとともに、第2のバッファアンプの出力がシールドに接続され、第2のバッファアンプの出力によってシールドを駆動してよい。
静電容量測定回路は、第1導電体と第2導電体の間、第1導電体に入力される交流信号を発生する駆動信号発生手段と第1導電体の間、第2導電体と信号検知手段の間、又は駆動信号発生手段と第1導電体の間と第2導電体と信号検知手段の間の両方の間に設置されるインダクタをさらに備えてよい。静電容量とインダクタが共振回路を形成し、静電容量が特定の値であるときに共振回路が第1導電体に入力される交流信号の周波数で共振してよい。
信号検知手段は、増幅器の出力と測定手段の間に設置される増幅回路を含んでよい。該増幅回路は、第1導電体に入力される交流信号の周波数における増幅率の絶対値が1より大きい増幅率を有してよい。
帰還容量は、減衰器と、第3のバッファアンプと、容量素子を含んでよい。増幅器の出力側に減衰器の入力側が接続されてよい。減衰器の出力側に第3のバッファアンプの入力側が接続されてよい。第3のバッファアンプの出力側に容量素子の一端が接続され、容量素子の他端が増幅器の入力側に接続されてよい。記帰還容量が等価的に容量素子の容量と減衰器の減衰率と第3のバッファアンプの利得の積値と同じ容量を備えるように、信号検知手段が動作してよい。
帰還容量は、第1の抵抗と第2の抵抗を含む減衰器と容量素子を含んでよい。増幅器の出力側に減衰器の入力側が接続され、減衰器の出力側に容量素子の一端が接続され、増幅器の入力側に容量素子の他端が接続されてよい。交流信号の周波数における、容量素子のインピーダンスが第1の抵抗と第2の抵抗の並列抵抗値に対して大きいとき、帰還容量が等価的に容量素子の容量と減衰器の減衰率の積値と同じ容量を備えるように、信号検知手段が動作してよい。
静電容量測定回路は、第1導電体及び第2導電体に並列に接続された基準容量を備えてよい。静電容量測定回路は、第1導電体に入力される交流信号を発生する駆動信号発生手段と、第1導電体及び基準容量との間に配置され、駆動信号発生手段を第1導電体又は基準容量に切り替え可能に接続するスイッチを備えてよい。
静電容量測定回路は、各々異なる周波数の交流信号を出力し、第1導電体に入力される交流信号を発生する駆動信号発生手段を、複数備えてよい。第1導電体は、複数の第1導電体を含み、複数の第1導電体は、各々異なる周波数の交流信号に対応する複数の駆動信号発生手段に一対一で接続してよい。第2導電体は1つであってよい。信号検知手段又は測定手段は、複数の周波数を分離して、各第1導電体と第2導電体間の静電容量を測定してよい。
第1導電体は1つであってよい。第2導電体は複数の第2導電体を有し、複数の第2導電体に一対一で対応する信号検知手段及び測定手段に接続されてよい。信号検知手段又は測定手段は、1つの第1導電体と、複数の第2導電体間の静電容量を各々測定してよい。
第1導電体に入力される交流信号を生成する駆動信号発生手段、第1導電体、第2導電体、信号検知手段、及び測定手段のうちの2つの間の接続を切り替える切替手段をさらに備えてよい。
第1導電体は、位相が90°異なる2つの交流信号が各々入力される2つの第1導電体を有してよい。第2導電体は1つであってよい。測定手段が2つの交流信号を位相差で分離することによって、1つの第2導電体と各第1導電体間の静電容量を測定してよい。
第1導電体は、位相が180°異なる2つの交流信号が各々入力される2つの第1導電体を有してよい。第2導電体は1つであってよい。第2導電体が接続されている信号検知手段の出力が最小になる位置と2つの第1導電体における各々の電圧に基いて第2導電体の位置を測定してよい。
第1導電体及び第2導電体は第1の静電容量を形成してよい。該第1の静電容量は、信号検知手段の入力に接続されてよい。測定手段は、第1の位相検波手段と、該第1の位相検波手段の出力を直流に変換する平均化手段を含み、直流電圧を出力してよい。静電容量測定回路は、さらに、第2の静電容量と、第2の位相検波手段とを備えてよい。直流電圧は、第2の位相検波手段及び第2の静電容量を介して信号検知手段の入力に接続されてよい。第1の静電容量及び第2の静電容量のいずれかが静電容量を形成してよい。直流電圧は、第1の静電容量に比例し、第2の静電容量に反比例してよい。
第1導電体に入力される交流信号は、ディジタル直接合成シンセサイザにより発生されてよい。ディジタル直接合成シンセサイザはルックアップテーブルを含み、該ルックアップテーブルによって位相の異なる信号を得てよい。
第1導電体に入力される交流信号は、ディジタル直接合成シンセサイザにより発生されてよい。ディジタル直接合成シンセサイザは、出力の上位2ビットの論理演算によって90°単位の位相の異なる信号を得てよい。
第1導電体に入力される交流信号を発生する駆動信号発生手段、第1導電体、第2導電体、信号検知手段、及び測定手段により構成される回路の少なくとも一部を集積回路に実装してよい。
第1導電体に入力される交流信号を発生する駆動信号発生手段と第1導電体の間、第2導電体と信号検知手段の間、又は第1導電体に入力される交流信号を発生する駆動信号発生手段と第1導電体の間及び第2導電体と信号検知手段の間を着脱可能としてよい。
本発明の第2の側面は、静電容量変位計である。静電容量変位計は、上記の静電容量測定回路を備えてよい。第1導電体又は第2導電体は、測定の対象物であってよい。第1導電体及び第2導電体は、別の対象物であってよい。記測定手段は、第1導電体と第2導電体の間の距離を測定してよい。
本発明の第3の側面は、静電容量変位計である。静電容量変位計は、上記の静電容量測定回路を備えてよい。測定手段は、第1導電体と第2導電体間の静電容量に影響する物体の状態を検知してよい。
静電容量変位計は、静電容量と、静電容量に影響する物体の状態の関係を曲線関数で近似し、曲線関数に基いて補正を行うことによって、静電容量と物体の状態の関係を得てよい。
本出願の明細書、図面、又は明細書及び図面に開示(以下、「本開示」という)の静電容量測定回路によれば、次のような効果の一以上が得られる。(本開示の静電容量測定回路を、以下、「容量測定回路」という。)
本開示において「駆動電極」は、第1導電体の一例である。「検知電極」は第2導電体の一例である。本開示の容量測定回路の駆動電極や検知電極は、導電体であればどのような形状や大きさであってもよく、電極の選択の自由度が高い。
検知電極が接続されている信号検知手段の増幅器の入力は仮想接地されるので、交流信号が発生しないため、検知電極対接地間の浮遊容量による影響が生じず、また増幅器の入力容量も同様に測定に影響しない。
容量測定回路は、駆動電極も浮遊容量の影響を受けず、駆動電極に入力される交流信号を発生する駆動信号発生手段自体の出力容量も測定に影響しない。言い換えると、駆動信号発生手段が定電圧出力であれば浮遊容量や出力容量の影響を受けない。定電圧出力でなくても、駆動電極における交流信号の振幅を知る手段があれば影響は生じない。
また、大きな電極を使用すると、高感度になる一方、ハムや周囲雑音の影響を受けやすくなる。しかし容量測定回路はさらに、ハムや周囲雑音の影響を排除するための様々な手法が含まれているので、大きな電極を使用することによる高感度化も容易である。
このような容量測定回路を静電容量変位計に適用すると、一例として1000mm以上の距離測定ができる。従来技術による静電容量変位計は測定距離が短いことが最大の欠点であった。しかしこのような容量測定回路を含む静電容量変位計によれば、このような欠点を大きく改善できる。
一方、従来技術による静電容量変位計では、対象物の制限を受けない物体検知ができるという特長や、対象物の表面粗さの影響受けないという特長を有していたが、本開示の静電容量変位計でも同様にこの特長を享受可能である。
従来技術による静電容量変位計では最大測定距離が短いため電極と接地された物体の間が近い必要があり、小さい物体の検知しか実現できなかった。しかし本開示の静電容量変位計では駆動電極と検知電極の距離を大きくすることができ、即ちはるかに大きな測定距離を実現できるため、大きい物体の物体検知を実現できる。
具体的な一例として、複数の液体容器が梱包されて外から見えない状態であっても、各容器に充填されている液体の容量を検知するような用途がある。一例として、2リットルのペットボトルの高さは300mm強であり、これが複数梱包された状態のままでもペットボトル各々の内容量を検知可能なので、最終出荷検査において特に有効である。このような検査は、レーザー変位計、渦電流変位計、従来技術による静電容量変位計のいずれでも実現不可能であった。
なお、本開示の1fF(0.001pF)以下の容量測定の例や1000mm以上の測定距離の例は、出願時点において確認されている一例にすぎず、これらに限定するものではない。
従来技術による静電容量変位計によって複数点の距離測定や物体検知を行う場合は、電極や回路を複数点の数だけ用いる必要がある。これに対して本開示による静電容量変位計では、複数の周波数、90°単位の位相差、ヘテロダイン検波手段や切り替えによって、電極や回路の一部を簡素化できるという効果も有している。
以下、図面を参照して実施の形態を説明する。実施の形態の説明において「駆動電極」は、第1導電体の一例である。「検知電極」は第2導電体の一例である。また、「駆動信号発生手段」は、第1導電体に入力される交流信号の発生手段の一例である。
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態は、容量測定回路の基本的な構成を示している。この容量測定回路は、本開示の容量測定回路の一例である。図1は第1の実施の形態に係る容量測定回路の一例を示している。以下、第1の実施の形態について、詳細に説明する。
図1に示す容量測定回路は、駆動信号発生手段201と、駆動電極301と、検知電極401と、信号検知手段501と、測定手段601を含む。駆動信号発生手段201は交流信号を発生して、この交流信号を駆動電極301に印加している。この駆動信号発生手段201は、例えば信号発生器である。駆動電極301は、駆動信号発生手段201の出力に接続される。検知電極401は、駆動電極301との間に電極間容量Cxを形成する。信号検知手段501は、例えば信号検知回路であって、入力及び出力を有する増幅器Uと、帰還容量Cfを含み増幅器Uの出力から入力に負帰還をかける負帰還部701を含む。増幅器Uの入力は、増幅器Uの動作によって仮想接地され、仮想接地点となる増幅器Uの入力には検知電極401が接続されている。この信号検知手段501は、駆動電極301と検知電極401間の電極間容量Cxを示す振幅の交流信号を出力する。信号検知手段501が出力する交流信号の振幅は、駆動電極301と検知電極401間の容量と関数関係にある。測定手段601は、例えば交流電圧測定回路であって、信号検知手段501の出力に接続される。測定手段601は、信号検知手段501の出力の交流信号の振幅などを測定し、駆動電極301と検知電極401間の電極間容量Cxなどの情報を得る。
以下で使用する電極間容量Cxという表現は、駆動電極と検知電極間に生じる静電容量そのものを指すと共に、その静電容量値も指すこととし、表現の区別なく使用する。他の容量、抵抗や電圧等についても同様に、実体とその値は表現の区別なく使用する。また、駆動電極301と検知電極401の間の距離を、電極間距離と略記する。
容量測定回路101では、電極間容量Cxとほぼ比例する振幅の出力信号が信号検知手段501から得られる。(信号検知手段501に含まれる増幅器Uが理想アンプであり、電極間容量Cxや帰還容量Cfが理想素子であれば、電極間容量Cxと信号検知手段501の出力信号の振幅は、完全な比例関係となる。)一方、電極間容量Cxと電極間距離は、駆動電極301及び検知電極401が平行平板の場合、端効果が小さい領域(平行平板電極の寸法が、平行平板電極間の距離に比べて大きい場合)においては、ほぼ反比例の関係にある。よって、端効果が無視できる領域においては、測定誤差を考えなければ、電極間距離と信号検知手段501の出力信号の振幅は、平行平板の場合、反比例する。(端効果の影響等の詳細は、後述の第22の実施の形態で説明する。)
測定手段601は、信号検知手段501の出力信号の振幅に基いて電極間容量Cxを得て、それに基いて、電極間距離や電極間容量Cxに影響する物体の状態などの情報を得ている。
容量測定回路101の構成要素の一部又は全てはIC(Integrated Circuit:集積回路)に実装してもよい。ICへの実装については、第20の実施の形態で詳細を説明する。
以下、容量測定回路101の各構成要素について説明する。
〔第1の実施の形態−駆動信号発生手段〕
駆動信号発生手段201で発生する交流信号のことを、以下「駆動信号」と略記する。駆動電極301における駆動信号の振幅を、以下「駆動信号振幅」と略記する。また駆動信号発生手段201で発生する交流信号の周波数、波形等を、以下「駆動信号周波数」、「駆動信号波形」等のように略記する。
駆動信号周波数は任意に選択可能であるが、信号検知手段501の周波数帯域、周囲雑音の周波数、物体の誘電率の周波数特性や、交流信号を電磁波として放射しにくい駆動電極301の形状などを考慮して選択することが好ましい。一例として、物体検知を行う場合の対象物の誘電率が平坦でない周波数特性を有する場合、誘電率が高い周波数を選択すると、高い感度が得られる。
また、位相差を持つ複数の駆動信号を用いることも可能である。90°位相差については、第15の実施の形態で説明する。また180°位相差については、第16の実施の形態で説明する。位相差を持つ駆動信号の発生については、第18の実施の形態で説明する。
駆動信号振幅は、大振幅であるほど高感度の測定が可能となるが、大振幅であるほど駆動信号を電磁波として放射しやすくなり、また大振幅であるほど感電のおそれも生じやすくなるので、これらを考慮して選択することが好ましい。
駆動信号波形も任意に選択可能である。正弦波以外の好適例として、方形波、台形波や周波数帯域を制限した方形波、複数の周波数成分を重畳した波形(以下、「周波数重畳波形」と称する。)などが挙げられる。方形波は、ピーク電圧に対する実効値が大きく、発生が容易である。台形波や周波数帯域を制限した方形波は、方形波よりも過渡状態の影響が小さい。
駆動信号発生手段201の具体的な交流信号発生方法は任意に選択可能であり、一例として各種の発振回路などが考えられ、必要に応じて、PLL(位相ロックループ)を用いることによって周波数を安定化することも可能である。さらに、DDS(Direct Digital Synthesizer:ディジタル直接合成シンセサイザ)を用いれば、正確な周波数が得られ、任意波形による周波数成重畳波形や位相差を持つ複数の交流信号を発生することなども容易なので、特に好ましい。また、同一のクロックを用いる複数のDDSを用いれば、複数の駆動信号周波数間で相対誤差が生じないような複数の周波数の駆動信号を得ることもできる。
駆動信号の出力インピーダンスも任意である。出力インピーダンスが、駆動信号周波数における電極間容量Cxのインピーダンスよりも十分に小さい定電圧出力であれば、駆動信号発生手段201の出力振幅がそのまま駆動信号振幅になる。より出力インピーダンスが高い場合は、駆動電極301において駆動信号振幅を測定又は算出する手段を設けることによって、正確な駆動信号振幅を知ることもできる。
さらに、駆動信号発生手段201の出力を、図不示のトランス結合や容量結合にすることも可能である。トランス結合によれば、小振幅の駆動信号発生手段201を昇圧して大振幅にすることや、出力インピーダンスの高い駆動信号の出力インピーダンスを下げて実用上定電圧として使用することもできる。駆動信号発生手段201の出力電圧が直流成分を有することによって感電の恐れが生じる場合などは、容量結合とすることによって直流成分を除去することも可能である。
〔第1の実施の形態−駆動電極、検知電極〕
駆動電極301や検知電極401は、導電体で構成される。従来技術による静電容量変位計のように、一方を特殊な構造の専用の電極にするという必要はない。
駆動電極301や検知電極401の面積が大きいほど電極間容量Cxが大きくなり、高感度の容量測定が可能となるので、可能な範囲で面積を大きくすることが望ましい。図1では同じ面積の円形の電極を例示しているが、必要に応じて駆動電極301と検知電極401の面積や形状を異ならせることも可能である。
駆動電極301や検知電極401の形状は任意であり、形状の一例として円形、方形、角の丸い方形、多角形などが挙げられる。駆動電極301と検知電極401の両方が平坦の場合は、平坦な対向面が平行かつ中心が一致している場合と、その他の場合で、電極間容量Cxが異なる場合がある。一例として、駆動電極301と検知電極401の一方又は両方を球状にすると、駆動電極301と検知電極401の位置関係による電極間容量Cxへの影響を低減することが可能である。
駆動電極301や検知電極401の表面状態も任意である。容量測定回路101を用いた静電容量変位計は、電極の表面粗さの影響を受けないという特長を有する。駆動電極301や検知電極401が導電体だけで構成されていてもよいし、例えばメッキや塗装等の表面処理がされていてもよい。
表面処理されていない場合や表面処理が導電体の場合、駆動電極301と検知電極401が誤って接触すると、信号検知手段501の増幅器Uの反転入力に駆動信号発生手段201の出力が直接接続されることになる。このとき、駆動信号発生手段201の出力インピーダンスが低いと、信号検知手段501の増幅器Uの入力許容電圧を超えてしまい、増幅器Uの故障の原因となる可能性がある。これを防止するために、信号検知手段501の増幅器Uの入力に、図不示の保護素子や適切な保護回路を追加してもよい。保護素子の一例として、駆動信号周波数におけるインピーダンスが電極間容量Cxのインピーダンスよりも十分に小さく、かつ増幅器Uの入力を保護しうる程度に十分に大きいインピーダンスを有するような素子(例えば抵抗やコンデンサ)を用いればよい。
距離測定の場合、駆動電極301や検知電極401の一方又は両方の、対向する表面に誘電体を追加すれば、電極間容量Cxを大きくでき、より高感度の測定を行うことが可能となる。ただしこの場合は原則として、誘電体の厚さの合計を駆動電極301と検知電極401の取りうる最小距離以下にすることが必要である。誘電体が弾性を有する場合は、誘電体の厚さの合計を駆動電極301と検知電極401の最小距離よりも大きめにして、衝撃吸収効果を持たせることもできる。物体検知の場合も、電極と物体の間について、上記と同様である。
駆動信号発生手段201と駆動電極301の間や、検知電極401と信号検知手段501の間は、使用しないときなどに容易に外すことができるよう、コネクタ等の手段によって着脱可能としてもよい。
検知電極401が周囲雑音を拾うことによって影響を受ける場合は、検知電極401の駆動電極301と反対側にシールドを設けることも可能である。容量測定回路101では、検知電極401と接地間の浮遊容量の影響をほとんど受けないので、検知電極401とシールド間の容量は測定結果にほとんど影響しない。シールド等については、後述の第6の実施の形態で、より詳細を説明する。
〔第1の実施の形態−信号検知手段〕
信号検知手段501は、増幅器Uと帰還容量Cfにより構成されている。
なお以下の説明では、「増幅器」は、演算増幅器であってもよく、例えばオペアンプIC等のように、外付け部品を追加することによって増幅機能を実現するためのものを指す。また「増幅回路」とは、増幅器に外付け部品を追加することによって、回路全体として増幅機能を有するものを指す。
増幅器Uの反転入力には、検知電極401と、帰還容量Cfの一端が接続されており、帰還容量Cfの他端は増幅器Uの出力に接続されている。増幅器Uの非反転入力は接地されている。
増幅器Uの非反転入力が接地されているという表現は、増幅器Uの非反転入力が交流的に接地されていることを指しており、非反転入力が直流電圧を有していてもよい。(以下、同様。)一例として、増幅器が正負電源ではなく単一極性の電源で動作している場合、非反転入力には例えば電源電圧の半分の直流電圧を与えることがある。(図1の例では、増幅器Uは図不示の正負電源によって動作しており、増幅器Uの非反転入力が直接基準電位に接続されているので、交流的にも直流的にも接地されている。)
駆動信号振幅をVin、駆動信号周波数をf、信号検知手段501の出力振幅をVoutとする。この場合、電極間容量Cxのインピーダンスは1/(2π・f・Cx)、帰還容量Cfのインピーダンスは1/(2π・f・Cf)となり、増幅器Uは反転増幅器を構成する。増幅器Uが反転増幅器のときの入出力の関係から、理想アンプの場合の入出力の関係は式1のようになる。
駆動信号振幅Vinと帰還容量Cfは既知の値なので、信号検知手段501の出力振幅Voutによって、電極間容量Cxを知ることができる。
例えば駆動信号振幅Vinが1Vrms、帰還容量Cfが1pFのとき、信号検知手段501の出力振幅Voutが1Vrmsなら電極間容量Cxは1pF、信号検知手段の出力振幅Voutが0.1Vrmsなら電極間容量Cxは0.1pFのように、信号検知手段の出力振幅Voutによって、電極間容量Cxを知ることができる。
増幅器Uがいわゆる理想アンプの場合は、信号検知手段501の出力振幅Voutは電極間容量Cxに比例し、帰還容量Cfに反比例する。現実の増幅器Uなどではこの比例・反比例関係に若干の誤差が生じるが、出力振幅Voutと電極間容量Cxとは「関数関係」にあるといえる。校正等によってこの関数関係を知ることができれば、補正によってより正確に電極間容量Cxを知ることができる。以降ではこのような正確性に関する議論は原則として省略し、式1が成立することを前提に説明する。
検知電極401に接続されている増幅器Uの反転入力は、非反転入力と同電位になるように動作する結果、いわゆる仮想接地の状態になるので、検知電極401は接地電位に保たれる。このため、検知電極401と接地間の浮遊容量には駆動信号周波数等の電圧はかからない、あるいは一定の直流電圧になるので、容量測定回路101では、浮遊容量の影響が抑制される。
現実の増幅器Uの場合は、駆動信号周波数における開ループ利得をAvとすると、浮遊容量の影響を1/Avにできる。(増幅器Uの働きによって、浮遊容量は実際の容量の1/Avの容量に見える。)すなわち、増幅器Uの帯域を考慮して駆動信号周波数を適宜選択することによって必要な浮遊容量の低減効果を得ることができ、駆動信号周波数における開ループ利得Avが大きい増幅器Uを用いることができれば浮遊容量の影響をより効果的に低減できる。
ここでは信号検知手段501の出力として、低インピーダンスの電圧出力を例示しているが、必要に応じて高インピーダンスの電流出力や、適当なインピーダンスを有する出力とすることも可能である。
信号検知手段501のさらなる改良・変形等は、後述の、第8の実施の形態から第11の実施の形態で説明する。
〔第1の実施の形態−測定手段〕
前述のように、信号検知手段501の出力振幅Voutは電極間容量Cxに比例するので、測定手段601は少なくとも信号検知手段501の出力振幅Voutを知ることができるように構成される。
測定手段601は、例えば交流電圧測定機能を有するデジタルマルチメータ又は交流電圧計であってもよい。このデジタルマルチメータ又は交流電圧計が信号検知手段501の出力に接続されて、測定手段601は信号検知手段501の出力振幅Voutを知ることができる。
測定手段601は、交流電圧測定手段を含み、信号検知手段501の出力を直流に変換して、信号検知手段501の出力振幅Voutをその直流電圧によって知るようにしてもよい。交流電圧測定手段として、下記のような例が挙げられる。
・信号検知手段501の出力を整流し平均化して直流に変換する(平均値検波)。(整流手段として用いるダイオードの順方向電圧(VF)が、無視できない誤差要因になる場合は、慣用されている理想ダイオード回路を使用することもできる。)
・熱変換方式等の実効値検波素子や回路によって直流に変換する(実効値検波)。
・アナログ演算回路によって実効値変換を行い、直流に変換する(実効値検波)。
信号検知手段501の出力を直流に変換する場合、信号検知手段501の出力に雑音が含まれていると一緒に直流電圧に変換されて誤差となる。したがって、後述の第12の実施の形態や第13の実施の形態のような方法によって駆動信号周波数だけを抽出することが望ましい。
信号検知手段501の出力に、A/D変換器(アナログディジタル変換器)を接続して、各種のディジタル処理によって信号検知手段501の出力振幅Voutを知ることもできる。この場合、必要に応じて、信号検知手段501の出力とA/D変換器の間にローパスフィルタやバンドパスフィルタを挿入することも可能である。
特にディジタル処理を併用する場合は、信号検知手段501の出力振幅Voutに基いて電極間容量CxをCPU(Central Processing Unit)によって算出することも容易である。さらに、電極間容量Cxに基いて、電極間距離や物体の状態などの様々なパラメータを測定結果として算出することもできる。
比較判定手段と閾値設定手段を測定手段601に備えることによって各種の判定を行うことも可能であり、後述の第19の実施の形態で詳細を説明する。
測定手段601は、出力手段を備え、信号検知手段501の出力振幅Vout、電極間容量Cx、電極間距離や物体の状態などの様々な測定結果、及び判定を行った結果などの情報を、適宜出力する。出力手段は、情報の各種の表示、印刷(値の印字やグラフ出力を含む)、判定によって知った異常等の際の警報や接点出力等を広く含み、これらには限定されない。また、測定手段601が通信手段を備え、この通信手段によって、必要なところにこれらの情報を伝達してもよい。このような測定手段の詳細も、後述の第19の実施の形態で説明する。
測定手段601を含む組み合わせにおいてはさらに、一例として下記のような改良・変形が考えられるが、これらの詳細は各々の実施の形態で説明する。
・信号検知手段501において、帰還容量Cfを等価的により小さい容量とする回路によって、より高感度な測定を行う。(第9の実施の形態。)
・信号検知手段501の出力に、さらに増幅回路を追加することによって、より高感度な測定を行う。(第10の実施の形態。)
・駆動信号周波数以外の周波数成分を減衰するようなフィルタを、信号検知手段501との間に追加することによって、雑音等の影響を低減する。(第12の実施の形態。)
・駆動信号周波数以外の影響を受けにくい交流電圧測定方法(一例として位相検波手段)によって、雑音等の影響を低減する。(第13の実施の形態。)
・同時に複数点の距離測定や物体検知を行う。(第14の実施の形態。)
・90°の位相差を有する2つの駆動信号によって、同時に2点の距離測定や物体検知を行う。(第15の実施の形態。)
〔第1の実施の形態−静電容量変位計への応用の概要〕
容量測定回路101では前述のように、信号検知手段501の出力振幅Voutによって電極間容量Cxを知ることができる。平行平板の場合は、端効果が無視できる領域においては、電極間距離と電極間容量Cxは反比例の関係にあるので、電極間容量Cxを知ることによって電極間距離を知ることができる。端効果が無視できない場合や平行平板でない場合であっても、電極間距離と電極間容量Cxの関係を予め知っておけば、電極間容量Cxから電極間距離を知ることができる。この場合も、電極間距離と電極間容量Cxは、ある関数関係にあるので、電極間容量Cxを知ることによって電極間距離を知ることができる。
駆動電極301と検知電極401のいずれか一方又は両方が測定対象物となるように容量測定回路101を適用すれば、電極と測定対象物の間又は測定対象物同士の間の距離測定が可能な静電容量変位計を実現できる。なお距離測定の場合には、駆動電極301や検知電極401となる測定対象物が導電体である必要がある。ただし、非導電体の対象物に電極を取り付ければ、距離測定を行うことも可能である。
容量測定回路101を用いれば、電極間容量Cxに影響を及ぼす物体に係る物体検知も可能であり、この場合の物体は導電体でなくてもよい。例えば、空気よりも誘電率の大きい物体が駆動電極301と検知電極401間に入ると、電極間容量Cxが増加するので、その増加の程度によって誘電体の量や厚さなどを知ることができる。また、電気的に浮いた(絶縁された)導電体(このような導電体を、以下、「浮いた導電体」という)が駆動電極301と検知電極401間に入ると、電極間容量Cxが増加するので、その増加の程度によって浮いた導電体の大きさや厚さなどを知ることができる。一方、接地された導電体などの物体が駆動電極301と検知電極401間に入ったり近づいたりすると、駆動電極301と検知電極401間の電気力線を遮ることになるため、電極間容量Cxが減少する。よって、その電極間容量Cxの変化の程度によって物体の状態を知ることができ、容量測定回路101によって、物体検知が可能な静電容量変位計も実現できる。
ここで、誘電体、浮いた導電体、及び接地された導電体という分類は一つの例であり、このような分類が一義に適用できない場合もある。例えば人体は、導電体というにはインピーダンスは大きめではあるが、物体検知においては接地された導電体のようにふるまう場合が多い。しかし、接地部(例えば靴)のインピーダンスが大きい場合や、駆動電極301や検知電極401が人体に対して十分な大きさの場合は、浮いた導電体のようにふるまう可能性がある。また人体の大部分は水であり、水は誘電体なので、誘電体としてふるまう可能性もある。
容量測定回路101を静電容量変位計に適用すれば、検知電極等における浮遊容量の影響を受けず、例えば1fF(0.001pF)以下の微小な容量が測定可能である。このため、容量測定回路101を用いた静電容量変位計では、例えば1000mm以上の電極間距離の測定が実現可能である。
また容量測定回路101を用いた静電容量変位計は、大きな距離の距離測定という効果と、物体検知では測定対象物が導電体でなくてもよいという静電容量変位計特有の長所を兼ね備えている。このため、従来の静電容量変位計では検知できなかった大きな物体の物体検知を実現できる。
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態の信号検知手段では、入力に直流成分が存在すると、使用している増幅器Uの直流における開ループ利得だけ直流成分が増幅されることになる。即ち、直流オフセット電圧、バイアス電流、雑音等に起因して、信号検知手段の出力の直流成分が不定になったり、出力が飽和したりする可能性がある。
第2の実施の形態は、信号検知手段の出力の直流成分の不定及び出力の飽和を抑制する例を示している。図2は、第2の実施の形態に係る容量測定回路の一例を示している。図1と同一部分には同一の符号を付している。第1の実施の形態と同一部分の説明を省略する。
第2の実施の形態に係る容量測定回路102は、信号検知手段501に代えて信号検知手段502を含む。この信号検知手段502は、既述の増幅器Uと、負帰還部702を含む。負帰還部702は、既述の帰還容量Cfを含み、帰還容量Cfに並列に接続される放電スイッチSfを含んでいる。放電スイッチSfがオンになると、帰還容量Cfが放電されて負帰還部702の端子間電圧はゼロになる。この結果、信号検知手段502に含まれる増幅器Uの出力は反転入力と同電位になる。一方、増幅器Uは反転入力と非反転入力が同電位になるように動作しているので、増幅器Uの出力は、非反転入力が接続されている基準電位と同電位になる。これにより、信号検知手段502の入力に直流成分が存在した場合であっても、増幅器Uの直流における開ループ利得により入力の直流成分が増幅されることが抑制される。即ち、直流オフセット電圧、バイアス電流、雑音等に起因して、信号検知手段502の出力の直流成分が不定になったり、出力が飽和したりすることが抑制される。
放電スイッチSfを一時的にオンするタイミングの例として、増幅器Uの出力の直流成分が所定値を越えたとき、交流成分のピークと直流成分の和が増幅器Uの出力飽和電圧に近づいたとき、信号検知手段502の電源が投入されたとき(パワーオンリセット時)、増幅器Uの出力が飽和しないような一定のタイミングや任意のタイミング、などが挙げられる。
放電スイッチSfは、例えば半導体スイッチ、半導体リレー、機械的なリレーである。半導体スイッチ、半導体リレーや機械的リレーの端子間容量は一般的に数pF以上あるので、帰還容量Cfが端子間容量の影響を受けないような容量の場合(一例として帰還容量Cfが10pF以上の場合)に使用可能である。
機械的なリレーの一種として、高周波リレーがある。高周波リレーでは、オフ時に接触子を接地するなどの特殊な接点構造によって端子間容量を低減し、アイソレーション性能を大幅に改善している。このような高周波リレーを用いれば、より小さい容量(一例として1pF)の帰還容量Cfを採用することができる可能性がある。
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態は、信号検知手段の出力の直流成分不定及び出力飽和を抑制する別の例を示している。図3Aから図3Cは、第3の実施の形態に係る容量測定回路、周波数特性、出力雑音特性の一例を示しており、図4Aから図4Dは、第3の実施の形態に係る容量測定回路の信号検知手段の変形例である。図1及び図2と同一部分には同一の符号を付している。第1の実施の形態および第2の実施の形態の何れかと同一部分の説明を省略する。
第3の実施の形態に係る容量測定回路103は、信号検知手段501、502に代えて信号検知手段503を備える。この信号検知手段503は、既述の増幅器Uと、負帰還部703を含む。負帰還部703は、図3Aに示すように、既述の帰還容量Cfを含み、帰還容量Cfに並列に接続される帰還抵抗Rfを含んでいる。この帰還抵抗Rfは、第1の帰還抵抗の一例であり、放電のための抵抗である。この帰還抵抗Rfを備えることにより、容量測定回路103は、信号検知手段503の出力の直流成分不定と出力飽和とを抑制している。
帰還容量Cfと帰還抵抗Rfによる時定数に相当する周波数よりも低い周波数(直流を含む)では、帰還容量Cfのインピーダンスよりも帰還抵抗Rfのインピーダンスが低くなるため増幅器Uの利得が低下する。(図3B参照。なお、帰還容量Cfと帰還抵抗Rfによる時定数に相当する周波数は、1/(2π・Cf・Rf)である。)この結果、信号検知手段503の出力の直流成分不定及び出力飽和が抑制される。一方、帰還容量Cfと帰還抵抗Rfによる時定数に相当する周波数よりも高い周波数では、帰還容量Cfのインピーダンスが帰還抵抗Rfのインピーダンスよりも低くなるため、周波数が高いほど帰還抵抗Rfの影響が低下し、式1に近づく。即ち、帰還容量Cfと帰還抵抗Rfによる時定数に相当する周波数は、駆動信号周波数よりも十分に低い周波数、一例として、1/10程度の周波数にするのが好ましい。
ここで、帰還抵抗Rfは一般的に、大きな抵抗値、一例として100MΩの抵抗値を有している。帰還容量Cfと帰還抵抗Rfによる時定数に相当する周波数を、駆動信号周波数よりも低くするためである。また帰還抵抗Rfが大きい方が、帰還抵抗Rfに起因する信号検知手段503の雑音を小さくできるためである。この理由を、図3Cを参照して説明する。
帰還抵抗Rfには並列に帰還容量Cfが接続されているため、信号検知手段503に現れる帰還抵抗Rfに起因する熱雑音は、帰還容量Cfと帰還抵抗Rfによる時定数に相当する周波数以上において、周波数に比例して低下する。一例として100倍大きい抵抗値の帰還抵抗Rf'を使用すると、この時定数に相当する周波数は1/100になる。一方、帰還抵抗Rfを大きくすると、帰還抵抗Rfに生じる熱雑音は大きくなる。一例として100倍大きい抵抗値の帰還抵抗Rf'を使用すると、熱雑音は√100倍(10倍)になる。時定数に相当する周波数が1/100になり、熱雑音が10倍になる結果、駆動信号周波数における熱雑音は1/10に低減される。すなわち、帰還抵抗Rfが大きい方が、帰還抵抗Rfに起因する信号検知手段503の雑音を小さくできる。
容量測定回路103によれば、帰還容量Cfと帰還抵抗Rfによる時定数に相当する周波数よりも低い周波数において、継続的に増幅器Uの利得が低下するので、信号検知手段503の出力の直流成分不定と出力飽和とを抑制され、連続して容量測定を行うことが可能になる。
信号検知手段503は、さらに図2に示す放電スイッチSfを備えていてもよい。例えば、信号検知手段503の電源投入時に放電スイッチSfをオンして帰還容量Cfを放電し、放電スイッチSfがオフになった後は帰還抵抗Rfの効果によって信号検知手段503を直流的に安定させることができる。
帰還抵抗Rfとして用いる実際の抵抗素子には、端子間容量Cf'が存在しており、帰還抵抗Rfや帰還容量Cfに並列に接続される。一例として、チップ抵抗の端子間容量は0.1pF程度あるので、帰還容量Cfがこの影響を受けないような容量の場合(一例として帰還容量Cfが1pF以上の場合)に使用可能である。また、実際の抵抗素子の端子間容量Cf'は、実際の容量素子よりもQ値(クオリティファクタ)が低く、容量のばらつきが大きく容量値も保証されないため、信号検知手段503の性能劣化の原因となる可能性がある。
信号検知手段503は、例えば図4Aから図4Dのいずれかに示す信号検知手段503−1、503−2、503−3、503−4であってもよい。図4Aから図4Dは、帰還抵抗Rfの端子間容量による影響をキャンセルし、帰還容量Cfの選択の自由度を向上させるための回路が追加された信号検知手段の例を示している。
図4Aに示す信号検知手段503−1の負帰還部703−1は、帰還抵抗Rfに直列に接続されるバッファアンプBと、キャンセル回路とを備える。キャンセル回路は、抵抗Rcと容量Ccを含み、帰還抵抗Rfの端子間容量、つまり帰還容量Cf'の影響をキャンセルする。バッファアンプBは、図4Aにおいて三角形の記号により表され、利得1のバッファアンプである。帰還抵抗RfとともにバッファアンプB及びキャンセル回路は、帰還容量Cfに並列に接続される。このとき、下記の式2のように抵抗Rc、容量Cc、帰還抵抗Rf及び帰還容量Cf'の値を選択することによって、帰還抵抗Rfの端子間容量の影響をキャンセルできる。
Rc・Cc≒Rf・Cf' ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
実際に入手できる容量素子は、帰還容量Cf'よりも大容量である場合がほとんどであるので、Cc>Cf'かつRc<Rfになる場合が多い。帰還容量Cf'の容量値のばらつきを補償するために、抵抗Rcと容量Ccのいずれか一方、もしくはその値の一部を可変素子としてもよい。一般的には可変抵抗の方が安価で入手性もよいので、抵抗Rcに可変抵抗を用いるか、固定抵抗と可変抵抗を適宜併用することが好ましい。
帰還容量Cf'に並列に、この帰還容量Cf'よりも大容量(一例として10倍の容量)の図不示の固定容量素子を並列接続し、これらの並列容量をCf'として式2に適用することもできる。固定容量素子を併用する方法によれば、実際の抵抗素子の端子間容量が実際の容量素子よりもQ値が低く、容量のばらつきが大きく、容量値が保証されない、という問題点を、さらに緩和又は解決できるという効果が得られる。
帰還抵抗Rfの抵抗値が抵抗Rcの抵抗値よりも十分に大きいときは、信号検知手段503−1からバッファアンプBを省略し、図4Bに示す信号検知手段503−2のような構成としても、図4Aの信号検知手段503−1と同様の効果が得られる。
入手性や部品コストの問題によって帰還抵抗Rfの抵抗値をより小さくする場合は、図4Cに示す信号検知手段503−3のような構成にすることが可能である。信号検知手段503−3の負帰還部703−3は、帰還抵抗Rfに直列に接続されるバッファアンプBと、減衰器(アッテネータ)とを備える。減衰器は、抵抗R1と抵抗R2を含む。この場合は、減衰器の減衰率の分、帰還抵抗Rfの抵抗値を小さくできる。例えば、抵抗R1が9kΩであり、抵抗R2が1kΩであり、減衰器の減衰率が20dB(1/10)である場合、帰還抵抗Rfとして100MΩの抵抗を使用することによって、負帰還部703−3が1GΩの帰還抵抗Rfと同様の時定数として動作する。ただし、100MΩの抵抗を使用するときの信号検知手段503−3の雑音は、帰還抵抗Rfが1GΩ時よりも大きくなり、実際に使用する100MΩ相当となる。
図4Cの信号検知手段503−3においては、抵抗R1と抵抗R2の並列抵抗値を抵抗Rcとして、前述の式2を満たすようにする。
帰還抵抗Rfの抵抗値が抵抗R1と抵抗R2の並列抵抗値よりも十分に大きいときは、信号検知手段503−3のバッファアンプBを省略し、図4Dの信号検知手段503−4のような構成としても、図4Cの信号検知手段503−3と同様の効果が得られる。
図4Cにおいて、バッファアンプの利得が1よりも低い場合は、その分、抵抗R1と抵抗R2による減衰器の減衰率を下げて補償すればよい。バッファアンプの代わりに利得が1よりも大きい非反転増幅回路を使用する場合は、その利得の分だけ減衰器の減衰率を上げればよい。
なお、図3Aの容量測定回路103において、信号検知手段503の増幅器Uの出力を図不示の別のバッファアンプの入力に接続することにより、増幅器Uの出力と帰還抵抗Rfの間に別のバッファアンプを挿入しても、図3Aの容量測定回路103と同様の効果が得られる。この別のバッファアンプの増幅率が1よりも小さい場合は、それに相当する分、帰還抵抗Rfの抵抗値を小さくすればよい。図4Aと図4Bにおいて増幅器Uの出力と抵抗Rcの間に図不示の別のバッファアンプを挿入しても、同様であり、図4Cと図4Dにおいて増幅器Uの出力と抵抗R1の間に、図不示の別のバッファアンプを挿入しても、同様である。
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態は、信号検知手段の出力の直流成分不定及び出力飽和を抑制する別の例を示している。図5Aは、第4の実施の形態に係る容量測定回路の一例を示しており、図5Bは、容量測定回路の信号検知手段の一例を示している。図5Aにおいて、図1、図2及び図3Aと同一部分には同一の符号を付している。第1の実施の形態から第3の実施の形態の何れかと同一部分の説明を省略する。
図5Aに示す容量測定回路104は、信号検知手段501、502、503に代えて信号検知手段504を備える。この信号検知手段504は、増幅器Uの入力及び出力に接続された直流補償回路904を含み、信号検知手段504の出力の直流成分不定及び出力飽和を抑制する。直流補償回路904は、増幅器Ui、積分容量Ci及び積分抵抗Riからなる積分回路と、第2の帰還抵抗の一例である帰還抵抗Rf'とを含み、積分回路を用いて増幅器Uの出力信号中の直流成分及び低周波成分を抽出し、負帰還をかけることによって信号検知手段504を直流的に安定させ、信号検知手段504の直流補償を行う。
図5Aでは、信号検知手段504中の増幅器Uの出力と反転入力の間に(即ち、帰還容量Cfと並列に)、積分回路、及び積分回路の増幅器Uiの出力に接続される帰還抵抗Rf'が接続されている。積分容量Ci、積分抵抗Riによって決まる積分回路の時定数は、帰還抵抗Rf'と帰還容量Cfによって決まる時定数よりも小さくすることが好ましい。
直流や低周波数成分に対して、信号検知手段504中の増幅器Uの開ループ利得に加えて、増幅器Uiの開ループ利得の分、増幅されて負帰還がかかるので、直流補償回路904によれば第3の実施の形態よりも、直流成分をより正確にキャンセルすることができるという効果が得られる。
信号検知手段504は、例えば図5Bに示す信号検知手段504−1であってもよい。図5Bの信号検知手段504−1は、増幅器Uの入力及び出力に接続された直流補償回路904−1を含む。直流補償回路904−1は、既述の積分回路及び帰還抵抗Rf'並びに第1のローパスフィルタ及び第2のローパスフィルタを含み、雑音や高周波数成分が、図不示の帰還抵抗Rf'の電極間容量Cf'を経由して増幅器Uの入力に戻ることを低減する。
第1のローパスフィルタは、抵抗RLPF1と容量CLPF1により形成され、増幅器Uの出力と積分回路の入力の間に設置され、増幅器Uiが十分に動作できないような雑音や高周波数成分を低減する。第1のローパスフィルタのカットオフ周波数は、増幅器Uiのユニティゲイン帯域幅よりも十分に低く(一例として1/10程度に)、かつ、積分抵抗Riと積分容量Ciからなる時定数に相当する周波数よりも十分に高く(一例として10倍以上に)選択することが望ましい。
第2のローパスフィルタは、抵抗RLPF2と容量CLPF2により形成され、積分回路の出力と帰還抵抗Rf'の間に設置され、増幅器Uが十分に動作できないような雑音や高周波数成分を低減する。第2のローパスフィルタのカットオフ周波数は、増幅器Uのユニティゲイン帯域幅よりも十分に低く(一例として1/10程度に)選択することが望ましい。
図5Bは、第1のローパスフィルタと、第2のローパスフィルタの両方を適用する例を示しているが、必要に応じてどちらか一方でもよく、また雑音や高周波数成分が十分に小さくほとんど影響がない場合は、ローパスフィルタはなくてもよい。
図5Bでは抵抗と容量による一次のローパスフィルタを例示しているが、これに限定するものではなく、より高次のローパスフィルタを用いたり、LCフィルタなどを用いたり、自由に選択可能である。
[第5の実施の形態]
第5の実施の形態は、LC共振回路によって周囲からのノイズを除去する例を示している。図6A、図6B、図8A、図8B及び図8Cは、第5の実施の形態に係る容量測定回路の一例を示しており、図7は、信号検知手段の出力の周波数特性のシミュレーション例を示している。図1、図2、図3A及び図5Aと同一部分には同一の符号を付している。第1の実施の形態から第4の実施の形態の何れかと同一部分の説明を省略する。信号検知手段505は、第1の実施の形態から第4の実施の形態で既述した信号検知手段の何れであってもよい。
図6Aの容量測定回路105は、検知電極401と信号検知手段505の間に設置されたノイズ除去回路1005を備えている。このノイズ除去回路1005は、並列バンドパスフィルタ(P−BPF)(以下、「並列BPF」という)と容量Cdを含んでおり、検知電極401と信号検知手段505の間に設置される。並列BPFは、第1の共振回路の一例であり、並列共振回路によるバンドパスフィルタである。並列共振回路は、例えば並列共振コンデンサCppと並列共振インダクタLppからなる。この並列BPFの共振周波数は、駆動信号周波数に一致させる。
並列BPFにおいては、共振周波数ではインピーダンスが高くなり、理想素子による並列共振回路であればインピーダンスは無限大になるので、駆動信号発生手段201で発生した駆動信号周波数の交流信号は減衰しない。一方並列BPFでは、共振周波数以外の周波数においてインピーダンスが低くなり、例えば商用電源周波数のハムや、電磁波等による外来雑音等を減衰させることができ、バンドパスフィルタとして動作する。
より詳細には、信号検知手段505に含まれる増幅器Uが理想アンプの場合は、検知電極401が接続されている信号検知手段505の入力は完全に仮想接地されて電圧が発生しないため、並列BPFはバンドパスフィルタとして動作しない。しかし現実の増幅器Uでは、信号検知手段505の入力にわずかな電圧が生じるため、並列BPFはバンドパスフィルタとして動作する。
並列BPFに含まれている並列共振インダクタLppは、直流におけるインピーダンスはゼロになるため、図6Aに示されている容量Cdがなく直結されている場合、直流では、信号検知手段505に含まれる増幅器Uの反転入力が接地される。一方、信号検知手段505に含まれる増幅器Uの非反転入力も接地されている。現実の増幅器Uでは直流オフセット電圧がゼロとは限らないので、反転入力と非反転入力が共に接地されると、容量Cdがない場合は、直流オフセット電圧が直流における開ループ利得の分、増幅される。この結果、信号検知手段505に含まれる増幅器Uの出力に直流成分が生じたり、出力が飽和したりする可能性がある。図6Aに示されている容量Cdは、このようなことを防止するために追加しているものであり、電極間容量Cxよりも十分に大きな容量を選択する。なおこの容量は、第1の実施の形態の、駆動電極、検知電極の項で述べた保護素子の一種に含めて考えることもできる。
より高感度の測定を行うために、検知電極401を大きくすると、その分、ハムの影響や外来雑音を受けやすくなる。しかし、並列BPFを用いればこれらを除去できるので、検知電極401を大きくしてより高感度の測定を行うことができるという効果もある。
駆動信号発生手段201が定電圧出力でなければ、駆動信号波形が正弦波以外の場合、例えば信号発生が容易な方形波を用いた場合に、この並列共振回路によって高調波成分が減衰されるので、正弦波(共振回路のQ値が低い場合は正弦波に近い波形)として扱うこともできる。ただしこの場合は、正弦波の駆動信号電圧を測定又は算出することが望ましい。
図6Bの容量測定回路105−1は、ノイズ除去回路1005−1中の並列BPFにおいて、複数の共振回路を直列接続する例を示している。一例として、後述する第14の実施の形態のように複数の駆動信号周波数を用いる場合には、直列接続した各並列BPFの共振周波数を、使用する複数の周波数各々に一致させる。これによって、複数の駆動信号周波数各々は減衰されず、それら以外の周波数成分を減衰させることができる。直列接続した並列BPFの共振周波数の間には反共振周波数が生じるため、特に急峻な周波数特性で減衰される。この一例として、ノイズ除去回路1005−1が、4700pFの並列共振コンデンサCppと100μHの並列共振インダクタLppを有する第1の並列BPFと、2200pFの並列共振コンデンサCppと100μHの並列共振インダクタLppを有する第2の並列BPFと、1000pFの並列共振コンデンサCppと100μHの並列共振インダクタLppを有する第3の並列BPFとを含み、この3つの並列BPFを直列接続した場合の、信号検知手段505の出力の周波数特性のシミュレーション例を、図7に示す。なお、第1の並列BPFの共振周波数は約232kHzであり、第2の並列BPFの共振周波数は約339kHzであり、第3の並列BPFの共振周波数は約503kHzである。
第5の実施の形態に係る図8Aの容量測定回路105−2は、ノイズ除去回路1005に代えて、ノイズ除去回路1005−2を備える。このノイズ除去回路1005−2は、直列バンドパスフィルタ(S−BPF)(以下、「直列BPF」という)を含んでいる。直列BPFは、第1の共振回路の一例であり、直列共振回路によるバンドパスフィルタであり、検知電極401と信号検知手段505の間に設置される。直列共振回路は、例えば直列共振コンデンサCspと直列共振インダクタLspからなる。この直列共振回路の共振周波数も、駆動信号周波数に一致させる。
直列BPFにおいては、共振周波数ではインピーダンスが低くなる(理想素子による直列共振回路であればインピーダンスはゼロになる)ので、駆動信号発生手段201で発生した駆動信号周波数の交流信号は減衰せずに信号検知手段505に送られる。一方、共振周波数以外の周波数においては、直列BPFでは共振周波数においてインピーダンスが高くなるので、例えば商用電源周波数のハムや、電磁波等による外来雑音等は信号検知手段505に伝わりにくくなる。この結果、ハムや外来雑音を減衰させるためのバンドパスフィルタとして動作する。
直列BPFの効果や駆動信号波形に対する影響は前述の並列BPFと同様なので、説明を省略する。また複数の駆動信号周波数を使用する場合、複数の直列BPFを並列接続すれば、前述の並列BPFの直列接続と同様、使用する複数の周波数成分を通過させ、それ以外の周波数成分を減衰させることができる。直列BPFを使用する場合は、直列共振コンデンサCspが直流成分を通さないため、前述の容量Cdは不要である。
図8Aにおいて、検知電極401と直列BPFの間や直列BPFと信号検知手段505の入力の間に並列BPFを追加したり、複数の並列BPFと複数の直列BPFを交互に備えたりする等の方法によって、より高次のバンドパスフィルタとすることも可能である。(信号検知手段505の入力の直前に並列BPFを備える場合は、前述の容量Cdが必要である。
第5の実施の形態に係る図8Bの容量測定回路105−3は、ノイズ除去回路1005に代えて、ノイズ除去回路1005−3を備える。このノイズ除去回路1005−3は、直列バンドエリミネーションフィルタ(S−BEF)(以下、「直列BEF」という)を含んでいる。直列BEFは、第2の共振回路の一例であり、直列共振回路によるバンドエリミネーションフィルタ(帯域除去フィルタ)であり、検知電極401と信号検知手段505の間に設置される。直列共振回路は、例えば直列共振コンデンサCseと直列共振インダクタLseからなる。この直列共振回路の共振周波数は、除去したいハムや外来雑音の周波数に一致させる。
直列BEFにおいては、共振周波数ではインピーダンスが低くなる(理想素子による直列共振回路であればインピーダンスはゼロになる)ので除去したい周波数成分だけが減衰し、例えば商用電源周波数のハムや、電磁波等による外来雑音のような所定の周波数成分だけを減衰させることができる。一方、共振周波数以外の周波数においては、直列BEFのインピーダンスが高くなるので、駆動信号周波数の周波数成分は減衰せず、バンドエリミネーションフィルタとして動作する。
第5の実施の形態に係る図8Cの容量測定回路105−4は、ノイズ除去回路1005に代えて、ノイズ除去回路1005−4を備える。このノイズ除去回路1005−4は、並列バンドエリミネーションフィルタ(P−BEF)(以下、「並列BEF」という)を含んでいる。並列BEFは、第2の共振回路の一例であり、並列共振回路によるバンドエリミネーションフィルタであり、検知電極401と信号検知手段505の間に設置される。並列共振回路は、例えば並列共振コンデンサCpeと並列共振インダクタLpeからなる。この並列共振回路の共振周波数は、除去したいハムや外来雑音駆動の周波数に一致させる。
並列BEFにおいては、共振周波数ではインピーダンスが高くなる(理想素子による並列共振回路であればインピーダンスは無限大になる)ので、除去したい周波数成分は信号検知手段505に伝わりにくくなる。一方、共振周波数以外の周波数においては、並列BEFではインピーダンスが低くなるので、駆動信号周波数の周波数成分は減衰せずに信号検知手段505に伝わる。この結果、ハムや外来雑音だけを減衰させるためのバンドエリミネーションフィルタとして動作する。
直列BEFを並列接続したり、並列BEFを直列接続したりすることによって、複数の周波数成分を減衰させることも可能である。
ノイズ除去回路1005、1005−1、1005−2では、駆動信号周波数の周波数成分のみを通過させる並列BPFや直列BPFを使用している。特定の周波数成分を減衰させるだけでよい場合は、ノイズ除去回路1005−3、1005−4に示した直列BEFや並列BEFを使用することもできる。
また、並列BPFや直列BPFだけでは不要周波数成分を除去しきれない場合に、直列BEFや並列BEFを併用することもできる。ただしこの場合は、相互影響によって共振周波数や通過・減衰特性が変化する。一例として、並列BPFと直列BEFを並列に使用すると、2つの通過周波数とその間の一つの減衰周波数が現れる。このように、並列BPF、直列BPFや直列BEFや並列BEFを適宜併用して適切な設計を行えば、所望の通過・減衰特性を得ることができるので、これ以上の組み合わせの例示は省略する。
[第6の実施の形態]
第6の実施の形態は、シールドによってハムや外来雑音の混入を防止する例を示し、さらに、検知電極と接地されたシールドとの間の容量を並列BPFの並列共振コンデンサCppとして利用する例を示している。また第6の実施の形態では、駆動電極、検知電極やシールド電極として、プリント基板を用いる例を示している。図9Aおよび図9Bは、第6の実施の形態に係る容量測定回路の一例を示している。図1、図2、図3A、図5A及び図5Bと同一部分には同一の符号を付している。第1の実施の形態から第5の実施の形態の何れかと同一部分の説明を省略する。信号検知手段506は、第1の実施の形態から第4の実施の形態で既述した信号検知手段の何れであってもよい。
第6の実施の形態に係る図9Aの容量測定回路106は、接地したシールド電極1106を検知電極401の付近に備え、また信号検知手段506への接続に使用し、外被の導体が接地されたシールド線1206を備えることによって、ハムの影響や外来雑音を受けにくいようにしている。シールド電極1106とシールド線1206は、いずれか一方だけを使用したり、図9Aのように各々を独立して接地して使用したりすることも可能であり、以下総称して「シールド」と記載する。シールド電極1106やシールド線1206における接地という表現は、交流的に接地されていることを指しており、直流電圧を有していてもよい。(以下、同様。)
検知電極401とシールド電極1106の間や、シールド線1206の芯線と外被の間には静電容量が存在している。並列BPFを用いる場合は、これらの容量を並列共振コンデンサCppの全部又は一部として利用することもできる。(図9Aでは、検知電極401とシールド電極1106の間の静電容量Cppのみを図示し、シールド線1206の芯線と外被の間の静電容量の図示は省略している。)この容量だけでは静電容量が不足する場合は、図不示の容量素子をさらに並列に接続することによって、所望の容量にすることもできる。検知電極401とシールド電極1106との間に並列共振インダクタLppを接続すると、並列共振回路が形成され、並列BPFとして動作する。この並列BPFの共振周波数は、駆動信号周波数に一致させる。
本開示の技術では前述のように、検知電極401と接地の間の浮遊容量の影響を受けないという特長がある。検知電極401とシールド電極1106間の静電容量やシールド線1206の静電容量も、浮遊容量の一種と考えることができるので、第6の実施の形態ではシールドによる静電容量の影響を受けない。さらに、この静電容量を並列BPFとして利用することによって、駆動信号周波数において高いインピーダンスとなるため、この静電容量による影響はさらに低減される。
第6の実施の形態に係る図9Bの容量測定回路106−1では、シールド電極1106やシールド線1206の外被が信号検知手段506−1の入力と同電位になるように、バッファアンプBを介してシールド電極1106やシールド線1206の外被を駆動している。このようなシールドを、以下、「アクティブシールド」と記載する。ここで、容量測定回路106−1に備えられる信号検知手段506−1は、バッファアンプBを含む。バッファアンプBの入力は増幅器Uの入力に接続され、バッファアンプBの出力はシールド線1206やシールド電極1106に接続される。
第1の実施の形態でも述べた通り、増幅器Uの働きによって、浮遊容量は実際の容量の1/Avの容量に見える。しかしシールドによる浮遊容量が大きく、見かけ上の浮遊容量の影響が無視できないような場合は、アクティブシールドによって、シールドによる浮遊容量を打ち消すことができる。すなわち、シールドの電位を信号検知手段506−1の入力(=検知電極401)の電位と同電位になるように駆動することによって、電位差が生じなくなる結果、シールドによる浮遊容量が見かけ上ゼロになる。
なお現実のバッファアンプBは、利得が1よりもわずかに小さく、また若干の遅延も生じるので、浮遊容量が見かけ上完全にはゼロにはならないが、現実のバッファアンプBを使用する場合であってもシールドの浮遊容量による影響を大幅に低減できる。
なお、アクティブシールドを使用する場合は、図9Aのような、検知電極401とシールドの間の容量を並列BPFの並列共振容量Cppとして利用する方法は採用できない。この場合は、前述の第5の実施の形態に係る図6Aのような並列BPFを用いればよい。検知電極401とシールドの間の容量を共振回路に使用しない構成であれば、いずれもアクティブシールドと併用可能である。例えば、前述の第5の実施の形態に係る図6Bのような並列BPFの共振回路の直列接続、図8Aのような直列BPF、図8Bのような直列BEF、図8Cのような並列BEFは、いずれもアクティブシールドと併用可能である。
検知電極401やシールド電極1106の、より具体的な実現方法の一例として、プリント基板を用いることができる。図10Aから図10Cは、検知電極とシールド電極としてプリント基板を用いる場合の一例を示している。なお図10Aから図10Cでは、配線パターン等の図示は省略している。
検知電極401はプリント基板1306の一方の面の導体パターンとして設ける。シールド電極1106を設ける場合は、検知電極401とは異なる面の導体パターンとして設けることができる。より効果的なシールド効果を得るためには、図10Aから図10Cのように、シールド電極1106の導体パターンは検知電極401の導体パターンよりも大きくして、検知電極401の導体パターンを完全に覆うようにすることが好ましい。検知電極401とシールド電極1106の間に生じる静電容量は、検知電極401やシールド電極1106の導体パターンの面積、プリント基板1306の絶縁体の厚さや誘電率によって決まり、これを並列共振コンデンサCpp又はその一部として利用することができる。シールド線1206の容量も同様に、並列共振コンデンサCpp又はその一部として利用できる。
なお、並列共振インダクタLppや追加する容量素子をこのプリント基板1306上に、図10Aから図10Cに示すように実装することも可能であり、実装工数の低減や小型化に寄与しうる。
図10Aから図10Cの検知電極401と同様、駆動電極301としてプリント基板1306を用いることも可能である。駆動信号発生手段201の出力インピーダンスが高い場合は、ハムや外来雑音が駆動電極301に入ってくる可能性があるが、プリント基板1306の駆動電極301とは反対の面にシールド電極1106を設けて接地することによって、これを防止することも可能である。
駆動電極301、検知電極401、又はシールド電極1106としてプリント基板1306を使用する場合、プリント基板1306上に設けたコネクタ1406を介してシールド線1206とプリント基板1306を接続することも容易である。このコネクタ1406は、シールドされたコネクタや、図10Aから図10Cに例示しているような同軸コネクタを用いることが好ましい。
前述の第5の実施の形態に係る図6Aの容量測定回路105、図6Bの容量測定回路105−1、図8Aの容量測定回路105−2、図8Bの容量測定回路105−3及び図8Cの容量測定回路105−4においても、シールドや、プリント基板1306を用いた電極を採用することが可能である。
プリント基板1306によって検知電極401を実現するときに、信号検知手段506などをプリント基板1306に実装することも可能であり、さらに測定手段601などをプリント基板1306に実装することも可能である。また、プリント基板1306によって駆動電極301を実現するときは、駆動信号発生手段201などもプリント基板1306に実装することが可能である。
[第7の実施の形態]
第7の実施の形態は、共振回路によって電極間容量Cxが特定の値であることを検知する例を示している。図11Aから図12Bは、第7の実施の形態に係る容量測定回路の一例を示している。図1、図2、図3A、図5A及び図5Bと同一部分には同一の符号を付している。第1の実施の形態から第4の実施の形態の何れかと同一部分の説明を省略する。信号検知手段507は、第1の実施の形態から第4の実施の形態で既述した信号検知手段の何れであってもよい。
第7の実施の形態に係る図11Aの容量測定回路107では、駆動電極301と検知電極401の間に設置された並列共振インダクタLp'を含んでいる。この並列共振インダクタLp'は電極間容量Cxと並列に接続されて、並列共振回路1507を構成している。
電極間容量Cxは、距離測定の場合の電極間距離、又は物体検知の場合の、電極間容量Cxに影響を及ぼす物体の状態によって変化するため、並列共振回路1507の共振周波数もこれに従って変化する。一方、駆動信号周波数は一定である。
並列共振回路1507の共振周波数が変化して駆動信号周波数と一致すると、並列共振回路1507のインピーダンスが高くなり、駆動電極301から検知電極401への交流電流が流れにくくなる。一方、並列共振回路1507の共振周波数が駆動信号周波数と一致しない場合は、駆動電極301から検知電極401への交流電流にはほとんど影響しない。
前述の式1のように、信号検知手段507の出力振幅Voutは、電極間容量Cxに比例する。しかし第7の実施の形態の並列共振回路1507を用いた場合、その共振周波数が駆動信号周波数と一致するような特定の電極間容量Cxとなったときに駆動電極301から検知電極401への交流電流が流れにくくなる。この結果、信号検知手段507の出力振幅Voutが低下するので、図11Bのグラフに示すような"ディップ"が生じる。(図11Bでは、横軸に電極間容量Cx、縦軸に信号検知手段507の出力振幅Voutを取っている。)
即ち、距離測定の場合において電極間距離が特定の距離になったとき、又は物体検知の場合において電極間容量Cxに影響を及ぼす物体が特定の状態になったときに、信号検知手段507の出力振幅Voutにディップが生じる。これを利用すれば、特定の距離や特定の物体の状態に合わせ込むこと、つまりチューニングが可能となる。静電容量変位計の物体検知に利用する場合の一例として、駆動電極301と検知電極401間に配置した容器に錠剤を出し入れして信号検知手段507の出力振幅Voutが最小になるようにすれば、容器中の錠剤を特定の数に合わせ込むことが可能となる。
第7の実施の形態に係る図12Aの容量測定回路107−1では、検知電極401と信号検知手段507の間に設置された直列共振インダクタLs'を備える。この直列共振インダクタLs'は電極間容量Cxと直列に接続されて、直列共振回路1607を構成している。
電極間容量Cxが変化することにより直列共振回路1607の共振周波数が変化して、駆動信号周波数と一致すると、直列共振回路1607のインピーダンスが低くなり、駆動電極301から検知電極401への交流電流が流れやすくなる。直列共振回路1607の共振周波数が駆動信号周波数と一致しない場合は、駆動電極301から検知電極401への交流電流にはほとんど影響せず、電極間容量Cxと比例した交流電流が流れる。
第7の実施の形態の直列共振回路1607を用いた場合、その共振周波数が駆動信号周波数と一致するような特定の電極間容量Cxとなったときにだけ駆動電極301から検知電極401への交流電流が流れやすくなって信号検知手段507の出力振幅Voutが上昇するため、図12Bのグラフに示すような"ピーク"が生じる。(図12Bのグラフでも図11Bのグラフと同様、横軸に電極間容量Cx、縦軸に信号検知手段507の出力振幅Voutを取っている。)
即ち、距離測定の場合における、電極間距離が特定の距離になったとき、又は物体検知の場合における、電極間容量Cxに影響を及ぼす物体が特定の状態になったとき、に信号検知手段507の出力振幅Voutにピークが生じる。これを利用すれば、特定の距離や特定の物体の状態に合わせ込むこと、つまりチューニングが可能となる。静電容量変位計の距離測定に利用する場合の一例として、駆動電極301となる対象物と検知電極401となる対象物間の距離を調整して信号検知手段507の出力振幅Voutが最大になるようにすれば、対象物の間隔を特定の距離に合わせ込むことが可能となる。
なお、駆動信号発生手段201と駆動電極301の間、検知電極401と直列共振インダクタLs'の間、直列共振インダクタLs'と信号検知手段507の間のいずれか一箇所以上に図不示の抵抗を接続すると、ピークの鋭さを和らげる効果を得ることができる。ただしこの場合、共振周波数から離れた周波数における電極間容量Cxと信号検知手段507の出力振幅Voutの関係は、抵抗の影響によって式1からずれるが、補正を行うことは可能である。直列共振インダクタLs'の直流抵抗も、このような抵抗と同様の影響を有する。
図12Aでは、検知電極401と信号検知手段507の間に直列共振インダクタLs'を設ける例を示したが、駆動信号発生手段201と駆動電極301の間に設けても同様の効果が得られる。また、検知電極401と信号検知手段507の間及び駆動信号発生手段201と駆動電極301の間の両方にインダクタを設けると、それらのインダクタンスの合計が直列共振インダクタLs'のインダクタンスとして動作する。
第7の実施の形態の並列共振回路1507や直列共振回路1607は、前述の第5の実施の形態と、適宜組み合わせて併用できる。ただし、第7の実施の形態の直列共振回路1607と第5の実施の形態の直列BPFのように、一部併用できない組み合わせもある。
[第8の実施の形態]
第8の実施の形態は、信号検知手段に含まれる増幅器Uとして、ディスクリート素子で構成した増幅器を用いる例を示している。第8の実施の形態は、増幅器Uとして、ディスクリート素子で構成した増幅器を用いる以外は、第1の実施の形態から第7の実施の形態と同様に構成することができる。容量測定回路の図示及びディスクリート素子で構成した増幅器以外に関する説明を省略する。
市販されている演算増幅器ICでは、さまざまな負帰還回路でも発振しないように十分に余裕のある("深い")位相補償が施されており、差動入力であるというような特徴を有している。
市販されている演算増幅器ICのような深い位相補償を施すと、それによって帯域幅が狭くなる。しかしディスクリート素子で構成した増幅器によれば、実際に使用する帰還容量Cfに最適となるような("浅い")位相補償となるように設計可能であり、これによって増幅器の広帯域化を図ることができる。また、高速のディスクリート素子を用いたり、回路構成や動作点等の設計によって増幅器の広帯域化を図ったりすることもできる。広帯域な増幅器を用いることができれば、駆動信号周波数における増幅器の開ループ利得が大きくなるので、浮遊容量の影響をより確実に低減できる。
ディスクリート素子で構成した増幅器の入力を、差動入力でない単入力の増幅器とすることによって低雑音化を図りSN比の高い増幅器を実現することも可能である。単入力の増幅器とすれば、入力段で発生する雑音は差動入力の場合の1/(√2)に低減できる。一方単入力の増幅器では、入力と出力間の直流電位が異なり、周囲温度や電源電圧によってその電位差が変化する場合がある。しかしこのような場合であっても、第4の実施の形態の直流補償回路904、904−1によって電位差の影響を補正することができる。
以上の説明のように、ディスクリート素子で構成した適切な増幅器を用いれば、より広帯域や低雑音の、高性能な信号検知手段を実現できる。第8の実施の形態の信号検知手段は、他の実施の形態の信号検知手段にも適用可能である。
[第9の実施の形態]
第9の実施の形態は、信号検知手段の増幅器の帰還容量Cfを等価的小容量とすることによって、高感度化を図る例を示している。図13Aは、第9の実施の形態に係る容量測定回路の一例を示し、図13Bは、容量測定回路の信号検知手段の一例を示す図である。図1、図2、図3A、図5A及び図5Bと同一部分には同一の符号を付している。第1の実施の形態から第4の実施の形態の何れかと同一部分の説明を省略する。
式1からわかるように、信号検知手段509の増幅器Uの帰還容量Cfが小さいほど高感度となる。即ち、ある駆動信号振幅Vinのときに、より大きな信号検知手段509の出力振幅Voutが得られる。
しかし、一般的に入手できる実際の容量素子は一例として最小0.1pFまでであり、さらに小容量であればあるほど相対誤差が大きいという問題を有している。0.1pFの実際の容量素子の誤差は、一例として±0.05pF、即ち±50%という大きな相対誤差を有している。一例として数pF以下であれば同じ±0.05pFの絶対誤差の素子を入手可能なので、例えば1pFを用いることができれば±5%、5pFなら±1%という小さな相対誤差で済む。
第9の実施の形態では、より容量が大きく相対誤差の小さい容量素子を用いて、等価的に小容量の帰還容量Cfを実現することによって、より高感度な信号検知手段509を実現する例を示している。
第9の実施の形態に係る図13Aの容量測定回路109は、信号検知手段509を備え、この信号検知手段509に含まれる増幅器Uの出力に抵抗R3と抵抗R4の直列回路が接続されており、抵抗R3と抵抗R4の接続点には利得が1のバッファアンプBの入力が接続されている。バッファアンプBの出力は、帰還容量Cf'を介して信号検知手段509に含まれる増幅器Uの入力に接続されている。
抵抗R3、抵抗R4、バッファアンプBと帰還容量Cf'で構成される回路は、負帰還部709を形成し、他の実施の形態の信号検知手段における帰還容量Cfの代わりとして増幅器Uに接続されている。
一般的なバッファアンプの利得は1よりもわずかに小さい程度だが、利得が正のバッファアンプ(非反転増幅回路)であれば、バッファアンプBとして利用可能である。
抵抗R3と抵抗R4は減衰器を構成しており、信号検知手段509に含まれる増幅器Uの出力信号は減衰器の減衰率で減衰されてバッファアンプBの入力に与えられる。バッファアンプBの利得をA
Bとすると、バッファアンプBの出力は下記の式3のようになる。
このため、バッファアンプBの出力を経由する帰還容量Cf'による負帰還の量は、式3のように減衰される結果、等価的な帰還容量Cfは下記の式4のようになる。
ここで、駆動信号周波数における帰還容量Cf'のインピーダンスが、抵抗R3と抵抗R4の並列抵抗値よりも十分に大きければ、バッファアンプBがなくても、利得1のバッファアンプBが存在するときと同様の動作となる。すなわちこのような場合は、図13Bの信号検知手段509−1によって同様の効果が得られる。バッファアンプBの利得が1よりも小さければその分減衰器の減衰率を減らし、利得が1よりも大きければその分減衰器の減衰率を増やすことによって、同様の効果を得ることができる。
具体的な一例として、帰還容量Cf'が2.5pFの場合、駆動信号周波数が318kHzのときの帰還容量Cf'のインピーダンスは約200kΩになる。抵抗R3を24kΩ、抵抗R4を1kΩとすると、抵抗R3とR4の並列抵抗値は0.96kΩとなり、これを約200kΩよりも十分に小さいと見る。これらの値を式4に適用すると、相対誤差の小さい2.5pFの帰還容量Cf'によって、相対誤差の小さい等価的な0.1pFの帰還容量Cfを得ることができる。
図13A及び図13Bでは、抵抗R3と抵抗R4による減衰器を例示しているが、例えば容量を用いた減衰器などの、他の方式による減衰器であっても同様の効果が得られる。
容量測定回路101〜107を静電容量変位計に適用する場合、多様な対象物、つまり多様な電極間容量Cxを適切に測定するためには、容量測定回路101〜107の信号検知手段501〜507の感度を広範囲に切り替える必要が生じる場合がある。信号検知手段501〜507の帰還容量Cfを切り替えることによって感度を切り替えようとすると、その切り替え回路の浮遊容量が影響するので、特に小容量の帰還容量Cfの切り替えは困難な場合が多い。これに対して第9の実施の形態によれば、抵抗R3又は抵抗R4の少なくとも一方を切り替えればよいので、容易に感度を切り替えることができる。また、小容量の帰還容量Cfでは第9の実施の形態を用い、より大容量の帰還容量Cfでは容量素子をそのまま用いるようにして切り替えることも可能である。
前述の第2の実施の形態では、帰還容量Cfを放電スイッチSfの端子間容量の影響を受けないような比較的大容量とする必要があり、帰還容量Cfの容量選択に制限があったが、第9の実施の形態はこのような場合にも有効である。第2の実施の形態の放電スイッチSfは帰還容量Cf'の両端に接続すればよく、第9の実施の形態では必要な帰還容量Cfよりも大きな容量の帰還容量Cf'を使えるので、容量選択の制限を受けないようにできる。
[第10の実施の形態]
第10の実施の形態は、信号検知手段の出力を増幅するための増幅回路を追加することによって、高感度化を図る例を示している。図14は、第10の実施の形態に係る容量測定回路の一例を示している。図1、図2、図3A、図5A及び図5Bと同一部分には同一の符号を付している。第1の実施の形態から第4の実施の形態の何れかと同一部分の説明を省略する。
容量測定回路110は、増幅回路1710を含む信号検知手段510を備える。増幅回路1710の入力は、信号検知手段510に含まれる増幅器Uの出力に接続され、増幅回路1710の出力は、測定手段601に接続される。増幅回路1710を追加すれば、より高感度な容量測定回路110を実現することができる。追加された増幅回路1710の増幅率をA、信号検知手段510に含まれる増幅器Uの出力振幅をVout'、信号検知手段510の出力振幅をVoutとすると、Voutは
Vout=A・Vout' ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5)
となり、増幅率A倍の高感度な信号検知手段510を実現できる。
図14では、増幅回路1710の一例として、演算増幅器による反転増幅回路を示しており、増幅率Aは負の値{−(抵抗値R6/抵抗値R5)}になるので、増幅回路1710を追加しない場合に対して信号検知手段510の出力位相が反転する。しかし測定手段601では原則として信号検知手段510の出力振幅を知ることができればよいので、位相が反転しても問題は生じない。例えば、後述の第13の実施の形態などのように位相検波手段を使用する場合は、位相反転によって位相検波手段の出力電圧の極性が反転するので、これを考慮して適用すればよい。
追加する増幅回路1710は、信号検知手段510に含まれる増幅器Uの出力信号中の必要な周波数成分を増幅できる増幅回路であればよく、演算増幅器による非反転増幅回路や、その他の回路形式の増幅回路も広く適用可能である。
信号検知手段510に含まれる増幅器Uの出力に誤差として直流オフセット電圧が含まれている場合、追加する増幅回路1710が直流も増幅可能な増幅回路だと、直流オフセット電圧が増幅率A倍されてしまい、大きな誤差になったり増幅回路1710が飽和したりする可能性が生じる。このような場合は一例として、追加する増幅回路1710の入力側に容量素子を追加して容量結合とすればよい。
前述の第9の実施の形態でも述べた通り、信号検知手段509、509−1の帰還容量Cfを直接切り替えることによって感度を切り替えることは困難である。これに対して第10の実施の形態によれば、追加する増幅回路1710の増幅率Aを切り替えることによって感度を切り替えることができるので、抵抗切り替え等によって容易に感度を切り替えることができる。
なお第10の実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせて使用することができ、同じく高感度化という効果を有する第9の実施の形態とも、自由に組み合わせて適用することが可能である。
[第11の実施の形態]
第11の実施の形態は、基準容量Crと比較することによって容量測定の確度を向上させる例を示している。図15は、第11の実施の形態に係る容量測定回路の一例を示している。図1、図2、図3A、図5A及び図5Bと同一部分には同一の符号を付している。第1の実施の形態から第4の実施の形態の何れかと同一部分の説明を省略する。信号検知手段511は、第1の実施の形態から第4の実施の形態で既述した信号検知手段の何れであってもよい。
図15の容量測定回路111は、切替スイッチSWと基準容量Crとを含む。切替スイッチSWは、切替手段の一例であり、駆動信号発生手段201の後に設けられ、駆動信号は切替スイッチSWの共通接点に接続されている。切替スイッチSWの一方の接点は駆動電極301に接続されており、他方の接点は基準容量Crの一方の端子に接続されている。つまり、切替スイッチSWは、駆動信号発生手段201と、駆動電極301及び基準容量Crとの間に配置され、駆動信号発生手段201を駆動電極301又は基準容量Crに切り替え可能に接続する。当該他方の接点と基準容量Crの間に、減衰器ATを挿入することも可能である。基準容量Crの他方の端子は、検知電極401及び信号検知手段511の入力に接続されている。つまり基準容量Crは、切替スイッチSWの他方の接点と信号検知手段の入力の間に接続されている。
切替スイッチSWによって駆動信号発生手段201の出力が駆動電極301に接続されているときは、他の実施の形態と同様の動作となるので、信号検知手段511の出力振幅Voutは、電極間容量Cxと比例する。切替スイッチSWによって駆動信号発生手段201の出力が基準容量Crに接続されているときは、信号検知手段511の出力振幅Voutは基準容量Crと比例する。前述のように減衰器ATが接続されている場合は、信号検知手段511の出力振幅Voutは、(減衰器ATの減衰率×基準容量Cr)に比例する。
具体的な一例として、駆動信号振幅Vinが10Vrms、電極間容量Cxが0.11pF、減衰器ATの減衰率が1/100、基準容量Crが10pFであり、信号検知手段511には前述の第10の実施の形態のような増幅回路1710は追加されておらず、図不示の帰還容量Cfが1pFであるものとする。この場合、切替スイッチSWによって駆動信号発生手段201の出力が駆動電極301に接続されているときには、式1により、信号検知手段511の出力振幅Voutは1.1Vrmsとなる。一方、切替スイッチSWによって駆動信号発生手段201の出力が減衰器ATを介して基準容量Crに接続されているときは、式1の電極間容量Cxの代わりに、(減衰器ATの減衰率×基準容量Crの)0.1pFを式1に適用して、信号検知手段511の出力振幅Voutは1.0Vrmsとなる。
誤差や経年変化等によって帰還容量Cfが変化すると、それに従って信号検知手段511の出力振幅Voutが変化することになる。例えば上記の例で帰還容量Cfが0.9pFに変化した場合、信号検知手段511の出力振幅Voutは0.99Vrmsと0.9Vrmsに変化してしまう。しかし、減衰器ATの減衰率と基準容量Crが正確でありさえすれば、1.0Vrmsに対する1.1Vrmsの比1.1も、0.9Vrmsに対する0.99Vrmsの比1.1も一定に保たれる。すなわち、減衰器ATの減衰率と基準容量Crを選択したときの信号検知手段511の出力振幅Voutを基準として、電極間容量Cxを正確に知ることができる。
減衰器ATの減衰率を切り替えることは比較的容易であり、本開示の信号検知手段に適用する場合の性能劣化等もほとんどないので、より正確な容量測定を行うためには、切替スイッチSWを切り替えた時の信号検知手段の出力振幅Voutの差が小さめになるように減衰器ATの減衰率を選択することが好ましい。
切替スイッチSWを基準容量Cr側に切り替えるタイミングは任意である。例えば距離測定や物体検知のために使用する場合は、対象物が移動している間に切り替えることができる。基準容量による校正が必要と思われるタイミングで切り替えることも可能であり、例えば電源投入の後、回路動作や周囲温度が安定するまでは頻繁に切り替え、安定した後は切り替え頻度を下げることも可能である。また、定期的に切り替えを行ってもよい。
第11の実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせて使用することができる。ただし前述の第7の実施の形態では、電極間容量Cxと信号検知手段の出力振幅Voutの比例関係が成立しない部分があるので、組み合わせて使用することが不適当な場合がある。
[第12の実施の形態]
第12の実施の形態は、測定手段の入力側にフィルタを設けることによって、雑音等の影響を低減させる例を示している。このフィルタは、例えば測定手段に備えられる。図16は、フィルタを含む測定手段の一例を示している。
単一の周波数(正弦波)によって容量測定を行う場合に、検知電極401と信号検知手段505の間に共振回路を含むノイズ除去回路1005、1005−1、1005−2、1005−3、1005−4を設けることによって雑音等の影響を低減させる例を、前述の第5の実施の形態に示した。これに対して第12の実施の形態では、測定手段の入力側にフィルタを設けることによって同様の効果を得ている。前述の第5の実施の形態と第12の実施の形態を併用することによって、雑音等の影響をより確実に低減させることも可能である。
図16におけるフィルタfcは、雑音等の影響を低減させるものであればどのようなものでもよい。一例として、インダクタとコンデンサによる並列共振回路や直列共振回路、抵抗とコンデンサによるCRフィルタ、抵抗とインダクタによるLRフィルタ、各種のアクティブフィルタ、メカニカルフィルタやクリスタルフィルタなどを自由に用いることができる。また、A/D変換してディジタルフィルタを用いることなども可能である。アクティブフィルタを使用する場合にはフィルタ回路に利得を持たせて、前述の第10の実施の形態の増幅回路1710と兼用させることも可能である。
減衰特性としては、駆動信号周波数だけを通過させるバンドパスフィルタ(BPF)や雑音の周波数を除去するバンドエリミネーションフィルタ(BEF)が有用な場合が多いが、雑音等の周波数成分によっては、ローパスフィルタ(LPF)、ハイパスフィルタ(HPF)やこれらの組み合わせを適宜選択可能である。
フィルタfcによって抽出された必要な周波数成分は、前述の第1の実施の形態の測定回路の項で説明した各種の手法によってその交流振幅を測定する交流振幅測定手段ACに与えられる。交流信号測定手段ACの具体的な実現方法は、第1の実施の形態の測定手段の項で示した各種の方法を用いることができる。
こうして得られた交流振幅情報は、前述の第1の実施の形態の測定回路の項で説明した比較判定手段によって測定結果の判定に用いることもできる。
第12の実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせて使用することができる。
[第13の実施の形態]
第13の実施の形態は、測定手段として位相検波手段を使用する例を示している。位相検波手段によれば、駆動信号周波数成分だけを抽出でき、さらに位相を知ることもできる。図17Aから図17Cは、第13の実施の形態に係る容量測定回路の一例を示している。図1、図2、図3A、図5A及び図5Bと同一部分には同一の符号を付している。第1の実施の形態から第4の実施の形態の何れかと同一部分の説明を省略する。駆動電極301、検知電極401及び信号検知手段501は、前述の第1の実施の形態(図1)と同様の例を示しているが、他の実施の形態を適宜使用することもできる。
図17Aの容量測定回路113は、駆動信号発生手段213及び測定手段613を含む。駆動信号発生手段213は90°位相の異なる2つの信号、一例としてサイン信号(以下、「sin信号」という)とコサイン信号(以下、「cos信号」という)を出力する。一方の信号(一例としてsin信号)が駆動電極301に接続されると共に、測定手段613に接続される。また、他方の信号(一例としてcos信号)が測定手段613に接続される。測定手段613は、2つの位相検波手段1813−1、1813−2を含み、各位相検波手段1813−1、1813−2は2つの入力を有する。位相検波手段1813−1の一方の入力に、例えばsin信号が参照信号として与えられるとともに、他方の入力には、信号検知手段501の出力が接続されている。また、位相検波手段1813−2の一方の入力に、例えばcos信号が参照信号として与えられるとともに、他方の入力には、信号検知手段501の出力が接続されている。位相検波手段1813−1、1813−2は例えば位相検波器である。
90°位相の異なる2つの信号を得るためには、アナログ信号の場合は90°移相回路を併用すればよい。駆動信号発生手段213としてDDS(ディジタル直接合成シンセサイザ)を用いると、より正確な90°位相差を有する2つの信号を得ることが期待できるので、後述の第18の実施の形態でその詳細を説明する。
位相検波手段1813−1、1813−2は、2つの入力の乗算を行う。位相検波手段1813−1の出力には、平均化手段1913−1が接続され、位相検波手段1813−2の出力には、平均化手段1913−2が接続されている。
駆動電極301に与えられたsin信号が、検知電極401、信号検知手段501における遅れなく信号検知手段501の出力に現れた場合、即ち信号検知手段501の出力とsin信号が同相の場合を考える。位相検波手段1813−1、1813−2では2つの入力の乗算が行われる。積和の公式により、sin信号が参照信号として与えられている位相検波手段1813−1では式6のような出力が得られる。
sinαは信号検知手段501の出力、sinβは参照信号とする。数式の簡素化のために、sinαとsinβの振幅はいずれも1とする。
ここで、α=βなので、駆動信号周波数の2倍の周波数(cos(α+β))と直流成分(cos(α−β))が得られるが、平均化手段1913−1(ローパスフィルタ)によって2倍の周波数成分は除去される結果、直流成分だけが得られる。このため、位相検波手段では、参照信号周波数の周波数成分だけが抽出され、参照信号周波数以外の周波数成分(例えばハムや雑音)を除去する効果も有している。
参照信号周波数以外の周波数成分(例えばハムや雑音)を除去する効果を向上させるために、位相検波手段1813−1、1813−2の入力に、前述の第12の実施の形態のようなフィルタを備えてもよい。
cos(0)=1なので、この例では1/2、すなわち信号検知手段501の出力振幅と参照信号の振幅の積の半分の直流が得られる。これが、図17Aの「Y(sin成分)」である。
一方、cos信号が参照信号として与えられている位相検波手段1813−2では、式7のような出力が得られる。(sinαは信号検知手段501の出力、cosβは参照信号とする。)
sin(0)=0なので、こちらでは0の直流が得られる。これが、図17Aの「X(cos成分)」である。
即ち、参照信号としてsin信号が与えられた位相検波手段−平均化手段の出力には、信号検知手段501の出力信号のうちsin成分に比例する直流電圧Yが得られ、参照信号としてcos信号が与えられた位相検波手段−平均化手段の出力には、信号検知手段501の出力信号のうちcos成分に比例する直流電圧Xが得られる。
信号検知手段501等による位相遅れが無視できない場合は、必要に応じて、平均化手段1913−2と直流電圧測定手段2013−2の間に、式8の演算を行う演算手段2113−2を設置し、得られた直流電圧XとYを演算手段2113−2に与えて、信号検知手段501の出力振幅Voutを得ることができる。また、必要に応じて、平均化手段1913−1と直流電圧測定手段2013−1の間に、式9の演算を行う演算手段2113−1を設置し、得られた直流電圧XとYを演算手段2113−1に与えて、駆動信号発生手段213の出力のsin信号を基準とした位相を得ることができる。
Atan(Y,X) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(9)
ここで、式9のAtan(Y,X)は、X、Y座標XY平面上のベクトルについて、X軸の正側となす偏角を求める、4象限正接関数である。
演算手段2113−1の出力には直流電圧測定手段2013−1が接続されており、駆動信号発生手段213の出力のsin信号を基準とした位相の値を得ることができる。また、演算手段2113−2の出力には直流電圧測定手段2013−21が接続されており、信号検知手段501の出力振幅Voutの値を得ることができる。
信号検知手段501等による位相遅れが無視できる場合や、駆動信号発生手段213による駆動信号と信号検知手段501の出力信号の間の位相を知る必要がない場合は、cos信号側の駆動信号、位相検波手段1813−2及び平均化手段1913−2、並びに演算手段2113−1、2113−2は不要であり、図17Bの容量測定回路113−1のような構成を取ることができる。すなわち、位相検波手段1813−1の出力には平均化手段1913−1が接続され、平均化手段1913−1の出力には直流電圧測定手段2013−1が接続される。
平均化手段1913−1、1913−2をアナログ的に実現する場合は、ローパスフィルタ等で構成する。直流電圧測定手段2013−1、2013−2は、アナログ的な手段でもよいし、A/D変換してディジタル的な手段を用いてもよい。平均化手段1913−1、1913−2と直流電圧測定手段2013−1、2013−2を共にディジタル的に実現する場合は、各種のディジタルによる平均化手段1913−1、1913−2と、その結果のディジタル値を直流電圧値として知る適切な手段を、直流電圧測定手段2013−1、2013−2として用いればよい。
なお、信号検知手段501の出力信号と参照信号の両方に直流成分が含まれていると、式6や式7で得られる直流に誤差が生じるので、信号検知手段501の出力や参照信号の入力の少なくとも一方を容量結合にする等の適当な手段で直流成分を除去する必要がある。
図17Cの容量測定回路113−2は、駆動信号発生手段201及び測定手段613−2を含む。測定手段613−2中の参照信号発生器2213は、駆動信号発生手段201の周波数fから周波数fcだけ異なる周波数fhを出力している。即ち、fc=|f−fh|という周波数関係にある。この場合、位相検波手段2313の出力には、前述の式6や式7に示すように、f+fhの周波数成分と、|f−fh|(=fc)の周波数成分が現れる。フィルタfcによって周波数成分fcを抽出して交流振幅測定手段ACに与えることによって、電極間容量Cxを知ることができる。このような構成を、ヘテロダイン検波手段と称する。本開示において、ヘテロダイン検波手段は、位相検波手段の一例である。
なお、周波数fcを抽出するフィルタfcや交流信号測定手段ACの具体的な実現手段は、前述の第12の実施の形態と同様である。
ここで、駆動信号発生手段201の周波数fや参照信号発生器2213の周波数fhは、fやfhよりも周波数fcが低くなるように選択することが好ましい。一例としてフィルタfcとしてバンドパスフィルタを用いる場合、同じ構成であれば、中心周波数によらず比帯域幅(帯域幅を中心周波数で割った値)が同じになるのが一般的である。すなわち、バンドパスフィルタであるフィルタfcの中心周波数fcを低くするほど、帯域幅が狭くなる。このため、周波数fcが低くなるように選択すれば狭帯域幅を実現できるので、雑音等の不要な周波数成分を除去する能力を、より向上させることができる、という効果が生じる。
また、図17Cの容量測定回路113−2では、フィルタfcによって周波数fcの交流を抽出して使用し、直流は減衰されるので、信号検知手段501の出力信号と参照信号の両方に直流成分が含まれていても誤差要因にならないという効果も有している。
位相検波手段1813−1、1813−2、2313、平均化手段1913−1、1913−2、フィルタfc、交流振幅測定手段AC、駆動信号発生手段213、201、及び参照信号発生器2213は、アナログ回路、ディジタル回路のいずれも可能であり、またアナログ回路とディジタル回路を適宜混合することも可能である。
位相検波手段1813−1、1813−2、2313をアナログ回路で実現する場合は、例えば参照信号を正弦波とするとともにアナログ乗算器を位相検波手段1813−1、1813−2、2313として用いることが可能である。
駆動信号発生手段201、213や参照信号発生器2213から与える参照信号を方形波とし、それによって利得の正負をスイッチするような、アナログ回路による位相検波手段1813−1、1813−2、2313としてもよい。平均化手段1913−1、1913−2をアナログ回路で実現する場合は、適当なローパスフィルタを用いて直流成分を抽出して、抽出した直流成分を直流電圧測定手段2013−1、2013−2に与えればよい。
位相検波手段1813−1、1813−2、2313をディジタル回路で実現する場合は、駆動信号発生手段201、213や参照信号発生器2213から与える参照信号や、信号検知手段501の出力信号をA/D変換して、ディジタル乗算などによって位相検波手段を実現すればよい。A/D変換のアンチエイリアシングフィルタに、前述の第12の実施の形態のフィルタの機能を備えてもよい。
駆動信号発生手段201、213や参照信号発生器2213としてDDS(ディジタル直接合成シンセサイザ)を使用すれば、参照信号をディジタル信号として得ることも可能であり、90°位相の異なる信号を得ることも容易である。平均化手段1913−1、1913−2をディジタル回路で実現する場合は、移動平均、ディジタル演算による積分や、ディジタルフィルタによるローパスフィルタなどの適当な平均化手法を用いて直流成分を抽出し、そのディジタル値を直流電圧として知ればよい。
式8や式9によって振幅や位相を知るための演算を行う場合も同様に、アナログ演算回路で実現してもよいし、ディジタル回路で演算を行ってもよい。
このようにして得られた測定結果は、前述の第1の実施の形態の測定回路の項で説明した比較判定手段によって測定結果の判定に用いることもできる。
位相検波手段1813−1、1813−2、2313は、駆動信号周波数が変化しても動作するので、電極間容量Cxの周波数特性を測定する用途にも利用可能である。例えば、駆動電極301と検知電極401の間に誘電体が存在しており、その比誘電率が周波数によって変化するときに、その比誘電率の周波数特性を測定できる。図17Aの例では駆動信号発生手段213の駆動信号周波数を、図17Bの例では駆動信号発生手段201の駆動信号周波数を適宜変化させることによって電極間容量Cxの周波数特性を測定すればよい。図17Cのヘテロダイン検波手段の例では、駆動信号発生手段201の駆動信号周波数と参照信号発生器2213の参照信号周波数の差を周波数fcに保ちながら、各々の周波数を適宜変化させることによって、電極間容量Cxの周波数特性を測定すればよい。
第13の実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせて実施可能である。
例えば、容量測定回路113、113−1、113−2は、信号検知手段501に代えて、第1の実施の形態から第4の実施の形態で既述した信号検知手段を備えていてもよい。
[第14の実施の形態]
第14の実施の形態は、複数点の測定を行う例を示している。図18Aから図23Bは、第14の実施の形態に係る容量測定回路の一例を示している。図1、図2、図3A、図5A及び図5Bと同一部分には同一の符号を付している。第1の実施の形態から第4の実施の形態、第12の実施の形態や、第13の実施の形態の何れかと同一部分の説明を省略する。
複数点の測定を行う場合、最も単純には、駆動信号発生手段、駆動電極、検知電極、信号検知手段、測定手段を複数組用いればよいが、第14の実施の形態ではそれらの一部を簡素化する例を示している。
図18A及び図18Bでは、検知電極と信号検知手段が、各々一つだけで済む例を示している。図19では、駆動信号発生手段と駆動電極が、各々一つだけで済む。図20A及び図20Bでは、検知電極と信号検知手段が各々一つだけで済むのに加えて、測定手段も一つだけで済む。なお図20Bでは、切替手段を併用している。
図21から図23Bでも、切替手段を併用している。図21では、駆動信号発生手段と駆動電極が各々一つだけで済むのに加えて、測定手段も一つだけで済む。図22では駆動電極だけを複数使用し、他は一つだけで済む。図23A及び図23Bでは検知電極だけを複数使用し、他は一つだけで済む。
図18Aの容量測定回路114及び図18Bの容量測定回路114−1は、駆動信号発生手段214−1・・・214−n、駆動電極314−1・・・314−n及び検知電極414を備える。各駆動信号発生手段214−1・・・214−nは第1の実施の形態で既述した駆動信号発生手段201と同様であり、各駆動電極314−1・・・314−nは第1の実施の形態で既述した駆動電極301と同様である。駆動信号発生手段214−1・・・214−nは駆動電極314−1・・・314−nに一対一で接続する。検知電極414は、各駆動電極314−1・・・314−nとの間に電極間容量Cx1・・・Cxnを形成する。また、容量測定回路114は、第12の実施の形態で既述したフィルタfc1・・・fcn及び交流電圧測定手段AC1・・・ACnを含む測定手段614を備え、容量測定回路114−1は、第13の実施の形態で既述した位相検波手段1814−1・・・1814−n、平均化手段1914−1・・・1914−n及び直流電圧測定手段DC1・・・DCnを含む測定手段614−1を備える。
駆動信号発生手段214−1で生成された周波数f1の駆動信号は1番目の駆動電極314−1に与えられ、図不示の周波数f2の駆動信号は図不示の2番目の駆動電極に与えられ、以下同様に周波数fnの駆動信号はn番目の駆動電極314−nに与えられる。ここでnは2以上の任意の自然数である。f1からfnは各々異なる周波数であり、フィルタfc1・・・fcn及び位相検波手段1814−1・・・1814−nで分離可能な程度に離れた周波数を選択する。検知電極414と1番目の駆動電極314−1の間の電極間容量をCx1とし、以下同様に検知電極414とn番目の駆動電極314−nの間の電極間容量をCxnとする。
測定手段614の入力には、前述の第12の実施の形態で説明したフィルタfcがn個接続されている。周波数f1だけを抽出するフィルタfc1の出力には交流電圧測定手段AC1が接続されており、図不示の周波数f2だけを抽出するフィルタfc2には図不示の交流電圧測定手段AC2が接続されており、以下同様に周波数fnだけを抽出するフィルタfcnには交流電圧測定手段ACnが接続されている。フィルタfc1・・・fcn及び交流電圧測定手段AC1・・・ACnによって各々、電極間容量Cx1・・・Cxnを得ることができる。容量測定回路114では、各フィルタに対応する複数の交流電圧測定手段を用いる測定手段を例示したが、一つ(あるいはnよりも少ない個数)の交流電圧測定手段を用いて、n個のフィルタの出力を切り替えてもよい。また、抽出する周波数を切り替えることが可能な一つ(あるいはnよりも少ない個数)のフィルタと交流電圧測定手段を用いてもよい。
容量測定回路114−1では、前述の第13の実施の形態信号で説明した位相検波手段1813−1を用いる例を示しており、測定手段614−1の入力にはn個の位相検波手段1814−1・・・1814−nと、各々に対応する平均化手段1914−1・・・1914−n及び直流電圧測定手段DC1・・・DCnが接続されている。前述の第13の実施の形態で説明したように、位相検波手段では参照信号以外の周波数を除去できるので、位相検波手段1814−1・・・1814−nによってフィルタfc1・・・fcnと同様の効果を得られる。また、各々の位相検波手段1814−1・・・1814−nに接続される平均化手段1914−1・・・1914−nによって、各々Cx1・・・Cxnの容量に比例した直流電圧を得ることができる。
容量測定回路114−1では位相検波手段各々に対応する複数の平均化手段と複数の直流電圧測定手段を用いる例を示しているが、一つ(あるいはnよりも少ない個数)の直流電圧測定手段を切り替えて使用してもよいし、一つ(あるいはnよりも少ない個数)の平均化手段と直流電圧測定手段を切り替えて使用してもよい。
こうして得られた、複数の駆動電極各々に対応する容量の情報を、静電容量変位計としてどのように活用できるかについては、第21の実施の形態以降で説明する。
図19の容量測定回路114−2では、周波数fの駆動信号波形が駆動信号発生手段201で生成されて駆動電極314に与えられる。ここでnは2以上の任意の自然数である。フィルタfc1・・・fcnや位相検波手段1814−1・・・1814−nは各々、周波数fの周波数成分を抽出する。
容量測定回路114−2は、駆動電極314、検知電極414−1・・・414−n、信号検知手段514及び測定手段614−2を備える。駆動電極314は、各検知電極414−1・・・414−nとの間に電極間容量Cx1・・・Cxnを形成する。信号検知手段514は、第1の実施の形態で既述した信号検知手段501を複数含み、信号検知手段501の入力は、検知電極414−1・・・414−nに一対一で接続する。測定手段614−2は、フィルタfc1・・・fcn及び交流電圧測定手段AC1・・・ACnを含み、フィルタfc1・・・fcn及び交流電圧測定手段AC1・・・ACnは、複数のフィルタと交流電圧測定手段のセットを形成する。複数のフィルタと交流電圧測定手段のセットは、複数の信号検知手段501の出力に一対一で接続する。フィルタと交流電圧測定手段のセットの代わりに、位相検波手段、平均化手段と直流電圧測定手段のセットを用いてもよい。
駆動電極314と1番目の検知電極414−1の間の電極間容量をCx1とし、1番目の検知電極414−1が接続される信号検知手段514は、帰還容量Cf1と増幅器U1を含んでおり、周波数fの周波数成分を抽出するフィルタfc1を介して交流電圧測定手段AC1に与える構成となっている。以降、n番目まで各々同様の構成となっている。
図19の容量測定回路114−2を図18Aの容量測定回路114と比較すると、駆動信号発生手段214−1・・・214−nがn個から1個に削減できる反面、信号検知手段501に含まれる増幅器Uや帰還容量Cfが1個からn個に増えるという違いがあるので、実際に使用する場合に適する方を選択可能である。
図20Aから図23Bは、信号源や切替手段の追加によって、信号検知手段や測定手段を簡素化する変形例を示している。
図20Aの容量測定回路114−3は、信号源2214と乗算器2314を追加して、前述の第13の実施の形態で述べたヘテロダイン検波手段を構成することによって、容量測定回路114から信号検知手段501と測定手段614を簡素化する変形例を示している。
前述の式6や式7で示したように、2つの周波数成分を乗算すると、それらの周波数成分の和と差の周波数成分が得られる。信号源2214の周波数がfh、1番目の駆動電極314−1に与えられている駆動信号の周波数がf1のとき、乗算器2314の出力では(f1±fh)の周波数成分が得られる。
容量測定回路114−3において、フィルタfcが抽出する周波数fcが、f1±fhのいずれかになるように信号源周波数fhを選択すれば、1番目の駆動電極314−1に与えられた周波数f1がフィルタfcで抽出される。こうして選択された周波数f1の振幅を、測定手段614−3中の交流電圧測定手段ACで測定すれば、1番目の駆動電極314−1と検知電極414との間の電極間容量Cx1を知ることができる。信号源周波数fhを切り替えることによって、以下同様にn番目の電極間容量Cxnまでを各々知ることができる。
なお容量測定回路114−3の場合は、f1±fhからfn±fhの周波数が各々、フィルタで抽出可能な程度に離れた周波数になるように選択する。(一例として、f1+fh≒f2−fhのようにならないように、周波数を選択する。)
図20Bの容量測定回路114−4は、切替スイッチ2614を追加することによって、容量測定回路114−1の測定手段614−1を簡素化する例を示している。位相検波手段1814は、参照信号の周波数以外を減衰する働きを有しており、一種のバンドパスフィルタとして動作する。容量測定回路114−4では、信号検知手段501から測定手段614−4に、駆動信号周波数f1からfnまでの各周波数成分が重畳された波形が与えられる。
位相検波手段1814の参照信号として駆動信号周波数f1を選択すると、位相検波手段1814では1番目の駆動電極314−1から与えられている駆動信号周波数f1の成分だけが抽出される。このため平均化手段1914の出力では、検知電極414と1番目の駆動電極314−1との間の電極間容量Cx1に比例した直流電圧が得られる。駆動信号周波数の切替スイッチ2614の選択により、以下同様に、n番目の電極間容量Cxnまでを各々知ることができる。
図21の容量測定回路114−5は、切替手段の一例である切替スイッチ2714を追加することによって、駆動信号発生手段201、駆動電極314と測定手段614−5を簡素化する例を示している。容量測定回路114−5では、検知電極と信号検知手段を複数組使用し、測定手段614−5の切替スイッチ2714で切り替えることによって、複数点の測定を行っている。
まず容量測定回路114−5では、一つの駆動信号発生手段201で、一つの周波数を出力するだけとなっている。また容量測定回路114−5の測定手段614−5では、位相検波手段1814と直流電圧測定手段DCが一組だけでよい。検知電極414−1・・・414−nと信号検知手段501を複数組使用している点は、容量測定回路114−2と同様である。
容量測定回路114−5では、位相検波手段1814と直流電圧測定手段DCによる測定手段614−5を例示しているが、これに限定するものではない。例えば第12の実施の形態で示した、フィルタfcと交流信号測定手段ACによる測定手段612であってもよい。
図22の容量測定回路114−6は、切替手段の一例である切替スイッチ2715を追加して駆動電極を切り替えることによって、駆動信号発生手段201、検知電極414、信号検知手段501と測定手段601を簡素化する例を示している。
容量測定回路114−6では駆動電極を複数使用し、駆動電極と駆動信号発生手段201の間を切替スイッチ2715で切り替えることによって駆動電極のいずれか一つに駆動信号を与えている。駆動電極314−1から駆動電極314−nまでを順次切り替えることによって、電極間容量Cx1から電極間容量Cxnを各々知ることができる。
図22の容量測定回路114−6を適用した静電容量変位計の具体例を、後述の第6の実施例や図56A及び図56Bに示す。
図23Aの容量測定回路114−7は、切替手段の一例である切替スイッチ2716を追加して検知電極を切り替えることによって、駆動信号発生手段201、駆動電極314、信号検知手段501と測定手段601を簡素化する例を示している。
容量測定回路114−7では、検知電極を複数使用し、検知電極と信号検知手段501の間を切替スイッチ2716で切り替えることによって、検知電極の一つと信号検知手段501を接続している。
検知電極414−1から検知電極414−nまでを順次切り替えることによって、電極間容量Cx1から電極間容量Cxnを各々知ることができる。
図23Bの容量測定回路114−8は、図23Aの容量測定回路114−7の変形例を示している。容量測定回路114−7や容量測定回路114−8において、一つの検知電極と信号検知手段501を接続することを、以下「選択」と略記する。
容量測定回路114−7では、複数備える検知電極のうち選択された検知電極以外は、電気的に浮いた状態となる。これに対して容量測定回路114−8では、選択された検知電極以外を接地している。これによって、選択された検知電極以外の接地された電極を、電気力線を整形させるために用いることができる。(この詳細は、後述の第2の実施例中で、ガード電極として説明する。)
図23Bでは、検知電極414−1だけが選択され、切り替えスイッチ2717−1によって信号検知手段501に接続されている。他の検知電極、414−2(図不示)から414−nは、切り替えスイッチ2717−2(図不示)から2717−nによって基準電位に接続(接地)されている。
図不示の検知電極414−2が選択されて図不示の切り替えスイッチ2717−2によって信号検知手段501に接続されるときは、他の検知電極、414−1及び414−3(図不示)から414−nは、切り替えスイッチ2717−1及び2717−3(図不示)から2717−nによって接地される。
切り替えスイッチ2717−1から切り替えスイッチ2717−nを同様に切り替えて検知電極414−1から414−nを順次選択することによって、1番目の電極間容量Cx1からn番目の電極間容量Cxnを各々知ることができる。
図23Bの容量測定回路114−8を適用した静電容量変位計の具体例を、後述の第6の実施例の図57A及び図57Bや図58に示す。
第14の実施の形態では、前述の第12の実施の形態や第13の実施の形態を適用する例を示したが、必要に応じてさらに他の実施の形態を適用することも可能である。
容量測定回路114−3、114−4、114−5、114−6、114−7、114−8では、信号源や切替手段の追加によって、測定手段を簡素化する変形例を示したが、これらは代表的な一例にすぎず、これらに限定するものではない。前述の実施の形態で例示したように、駆動信号発生手段、駆動電極、検知電極、信号検知手段、測定手段各々の実現手段は様々であり、切替手段や信号源等の追加による信号検知手段や測定手段を簡素化する変形例は、組み合わせによって数多く考えられる。
[第15の実施の形態]
第15の実施の形態は、90°の位相差を有する2つの信号を発生可能な駆動信号発生手段と、それに対応する2つの駆動電極を用いることによって、2点の測定を行う例を示している。第15の実施の形態では、検知電極、信号検知手段と測定手段は、各々一つだけで済む。図24は、第15の実施の形態に係る容量測定回路の一例を示している。図1、図2、図3A、図5A及び図5Bと同一部分には同一の符号を付している。第1の実施の形態から第4の実施の形態、及び第13の実施の形態の何れかと同一部分の説明を省略する。
第15の実施の形態に係る容量測定回路115では、前述の第13の実施の形態と同様、90°の位相差を有する例としてsin信号とcos信号を例示しているが、90°の位相差を有する2つの信号であればこれに限定されない。
容量測定回路115では、駆動信号発生手段201で生成された一方の駆動信号(sin信号)は一方の駆動電極315−1に与えられ、他方の駆動信号(cos信号)は他方の駆動電極315−2に与えられる。検知電極415とsin信号側の駆動電極315−1の間の電極間容量をCxsとし、cos信号側の駆動電極315−2との間の電極間容量をCxcとする。
測定手段615は、sin信号が参照信号として与えられる位相検波手段1815−1と、cos信号が参照信号として与えられる位相検波手段1815−2と、各々に対応する平均化手段1915−1、1915−2を含んでいる。sin信号を参照信号として与えられる位相検波手段1815−1に接続された平均化手段1915−1の出力からは、電極間容量Cxsに比例した直流電圧が得られる。cos信号を参照信号として与えられる位相検波手段1815−2に接続された平均化手段1915−2の出力からは、電極間容量Cxcに比例した直流電圧が得られる。容量測定回路115では位相検波手段1815−1、1815−2各々に対応する2つの直流電圧測定手段DC1、DC2を用いる例を示しているが、1つの直流電圧測定手段を切り替えて使用してもよい。
第15の実施の形態では90°の位相差を有する信号を用いている。直交する90°の位相差を有する信号はお互いに影響を及ぼさないという性質を有しているため、独立した2点の測定が可能である。
駆動電極315−1、315−2と検知電極415の間に存在する物体によっては、周波数が異なると比誘電率が変化する(周波数特性を有する)場合があるため、前述の第14の実施の形態に係る図18A及び図18Bや図20A及び図20Bのように複数の周波数を使用すると、比誘電率の周波数特性が誤差要因になる場合がある。これに対して第15の実施の形態では、位相差を利用していることによって単一の周波数で済むので、比誘電率の周波数特性が誤差要因にならないという利点も有している。
また、信号検知手段や測定手段が周波数特性を有している場合も同様に、単一の周波数で済むことによる第15の実施の形態の利点が得られる。
第15の実施の形態では、前述の第13の実施の形態を適用する例を示したが、必要に応じてさらに他の実施の形態を適用することも可能である。
[第16の実施の形態]
第16の実施の形態、及び図25A、図25B及び図25Cと図26は、本開示の容量測定回路を用いた検知電極の位置検出の例を示しており、特定の位置を検出するための物体検知を行う例を示している。図25A、図25B及び図25Cと図26において、検知電極のリード線の端に付されている丸印は、信号検知手段(図不示)に接続される点を示しており、測定手段も図示を省略している。
図25Aの例では、駆動信号発生手段5421で180°位相差の異なる駆動信号を発生させて2つの駆動電極5422−1、5422−2に印加しており、検知電極5423は2つの駆動電極5422−1、5422−2の間に移動可能に設けられている。駆動信号の一方を0°とし、その電圧をV0、対応する駆動電極5422−1と検知電極5423の電極間距離をd0とする。駆動信号の他方を180°とし、その電圧をV180、対応する駆動電極5422−2と検知電極5423の電極間距離をd180とする。
検知電極5423を移動させる場合、電圧V0とV180が等しいときには、電極間距離d0とd180が等しいところで2つの駆動信号が打ち消し合う結果、容量測定回路の信号検知手段の出力振幅Voutがゼロとなる。即ち、検知電極5423が2つの駆動電極5422−1、5422−2の中心に到達したことを知ることができる。
電圧V
0とV
180が異なるときに検知電極5423を移動させる場合は、式10を満たすときに2つの駆動信号が打ち消し合う結果、信号検知手段の出力振幅Voutがゼロとなる。即ち、2つの駆動信号電圧によって、2つの駆動電極5422−1、5422−2の間の任意の位置を知ることができる。
図25Aでは一次元の位置検知を例示したのに対して、図25Bや図25Cでは二次元の位置検知を例示する。
図25Bでは、図25Aの一次元の位置検知を縦と横に2組設けることによって、二次元の位置検知を実現している。縦の位置検知の駆動信号周波数をf1とし、横の位置検知の駆動信号周波数をf2として異なる周波数とし、第14の実施の形態に係る図18A、図18B、図20A、図20Bや図22のような方法を適用すれば、f1によって縦方向、f2によって横方向の位置検知ができるので、二次元の位置検知を実現できる。図25Bの前後方向にもう一組の一次元の位置検知を追加し、さらに異なる周波数f3を使用すれば、三次元の位置検知も実現可能である。
図25Cも、図25Aの一次元の位置検知を縦と横に2組設けることによって、二次元の位置検知を実現している。図25Cでは、縦の位置検知を0°と180°、横の位置検知を90°と270°のように、縦横を90°の位相差としている。この場合は、第15の実施の形態に係る図24のような方法によって、縦と横各々の位置検知ができるので、一つの周波数で二次元の位置検知を実現できる。
なお、図25Bや図25Cで円柱状の検知電極を例示しているのは、縦方向、横方向ともに方向性を持たせないためである。また、駆動電極は平板状に限定するものではなく、例えば4つの90°弱の円弧状の駆動電極によって、円筒に近い電極形状と電極配置とするなど、用途に合わせて自由に変形することが可能である。
図26の変形例では、図のX方向の検知電極の位置と、検知電極の高さ(Z方向の位置)や駆動電極に対する平行度を知る例を示している。
まず、180°の位相差を有する2つの駆動信号を、各々、図26のような直角三角形状の電極2601及び電極2602に与えている。これら2つの駆動信号の振幅は、等しいものとする。さらに、細長い検知電極が駆動電極面と高さ方向で平行に設けられており、図の左右方向に移動可能の場合を考える。検知電極が図の左側にいる場合は180°成分が大きく、右側にいる場合は0°成分が大きくなり、検知電極が中央にいるときには0°成分と180°成分が打ち消し合う結果、信号検知手段の出力電圧はゼロになる。
容量測定回路の測定手段として、0°の駆動信号を参照信号とする位相検波手段を使用する場合は、180°成分に対しては位相検波手段の出力が負の値となり、0°成分に対しては正の値となる。駆動電極左右方向の検知電極の位置を横軸に取って対応させると、0°の駆動信号を参照信号とする位相検波手段の出力電圧は図26のグラフ2603の実線のようになる。
検知電極が駆動電極面と高さ方向で平行でない場合、すなわち直角三角形状の電極2601及び電極2602の一方の電極に近く、他方の電極からは遠いように傾いていると、0°の駆動信号を参照信号とする位相検波手段の出力電圧は図26のグラフ2603の実線に対して誤差を持つ。このような誤差を生じないよう、検知電極の平行度を保つために、さらに下記のような方法を併用している。
図26ではさらに、直角三角形の電極2601及び電極2602に与えている駆動信号とは90°の位相差を持つ、90°と270°の駆動信号を、図のように、各々長方形状の電極に与えている。細長い検知電極が駆動電極面と高さ方向で平行を保っている場合、即ち図の高さZ1とZ2が等しい場合は、90°と270°の駆動信号が打ち消し合う結果、90°の駆動信号を参照信号とする信号検知手段の出力電圧はゼロになる。高さ方向の平行が崩れると、90°の駆動信号を参照信号とする位相検波手段の出力電圧が正又は負の値になるので、これがゼロになるように検知電極の角度を修正する。
なお、高さZ1とZ2の平均値、即ち検知電極の平均高さをZとすると、平均高さZの高低によって、図26のグラフ2603のように0°の駆動信号を参照信号とする位相検波手段の出力電圧が変化する。
ここでは、90°単位の位相差を持つ駆動信号を使用し、位相検波手段によって0°・180°と90°・270°を分離測定する例を示したが、これに限定するものではない。例えば、図26の90°・270°側を、0°・180°とは周波数の異なる180°位相差を有する駆動信号とすることも可能である。さらに、図26の90°側と270°側の代わりに、各々異なる周波数を用いれば、高さZ1とZ2を各々独立して知ることも可能である。検知電極の傾きを知る必要がない場合は、長方形の電極の一方とそれに対応する駆動信号を省略することも可能である。また、検知電極の高さを知る必要がない場合は、長方形の電極の両方とそれらの駆動信号を省略することも可能である。
[第17の実施の形態]
第17の実施の形態は、ひとつの容量に比例し、もうひとつの容量には反比例する直流電圧を得る応用例を示している。図27は、第17の実施の形態に係る容量測定回路の一例を示している。図1、図2、図3A、図5A及び図5Bと同一部分には同一の符号を付している。第1の実施の形態から第4の実施の形態の何れかと同一部分の説明を省略する。
反比例する側の容量として基準容量を用い、比例する側の容量を駆動電極と検知電極の電極間容量として測定する場合は、前述の実施の形態と同様の効果が得られる。
比例する側の容量として基準容量を用い、反比例する側の容量を電極間容量として測定する場合は、電極間容量と反比例する直流電圧を得ることができる。ここで、平行平板における端効果の影響が小さい場合は、電極間容量は電極間距離とほぼ反比例するので、電極間距離とほぼ比例する直流電圧を得ることが可能となる。
前述の第1の実施の形態において「関数関係」という表現を用いたのは、第17の実施の形態のように、容量に比例する直流電圧だけでなく、容量と反比例の関係にある直流電圧を得ることもできるためである。
以下、図27の容量測定回路116の構成と動作を詳細に説明する。
駆動信号発生手段216は、駆動電極において±V1の振幅の方形波を発生しており、第1の容量の一例である容量C1を介して信号検知手段501の入力に接続されている。駆動信号発生手段216ではさらに、方形波と同期したスイッチ切り替え信号を発生しており、スイッチ2816とスイッチ3016を切り替え駆動している。
前述の第13の実施の形態において、アナログ回路で位相検波手段を実現する例として、駆動信号発生手段から与える参照信号を方形波とし、それによって利得の正負をスイッチするような回路について説明した。第17の実施の形態の測定手段616の位相検波手段は、第1の位相検波手段の一例であり、このようなアナログ回路による位相検波手段を例示しており、前述のスイッチ切り替え信号を参照信号として利得の正負を切り替えている。位相検波手段1816中の「−1」と記載された三角記号は、利得が1倍の反転増幅回路を示しており、位相検波手段1816中のスイッチ2816の一方の接点には反転増幅器の出力が与えられている。スイッチ2816の他方の接点には位相検波手段1816の入力がそのまま与えられているが、必要に応じて利得が1倍の非反転増幅回路を使用してもよい。また、利得の絶対値が1よりも大きい反転増幅回路及び同じ絶対値利得の非反転増幅回路を使用すれば、前述の第10の実施の形態と同様の高感度化を実現することができる。
位相検波手段1816の出力、すなわちスイッチ2816の共通接点は、積分回路の入力に接続されている。この積分回路は平均化手段の一例であり、増幅器Ui'、積分抵抗Ri'と、積分容量Ci'で構成されており、位相検波手段1816の出力を直流に変換している。この直流電圧をV2とする。
この直流電圧V2は、直流電圧測定手段DCの入力及び位相検波手段1816と同様の回路2916の入力に接続されている。この回路2916は第2の位相検波手段の一例であり、回路2916中のスイッチ3016の一方の接点には直流電圧V2がそのまま与えられており、他方の接点には直流電圧V2を反転した直流電圧−V2が与えられている。このスイッチ3016は、前述のスイッチ切り替え信号によって切り替え駆動されており、駆動電極の電圧が+V1のときは直流電圧−V2側のスイッチの接点と共通接点が接続され、駆動電極の電圧が−V1のときは直流電圧V2側のスイッチの接点と共通接点が接続されるように動作している。このスイッチの共通接点は、第2の容量の一例である容量C2を介して信号検知手段501の入力に接続されている。
図27の回路は、下記の式11の関係となるように動作する。
V1・C1=V2・C2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(11)
ここで、V1は既知の値である。式12は、直流電圧V2が、容量C1に比例し、容量C2に反比例することを示している。
C2に基準容量となるような容量素子を使用し、C1を電極間容量として動作させれば、前述の実施の形態と同様、電極間容量C1に比例した直流電圧V2が得られる。
一方、C1に基準容量となるような容量素子を使用し、C2を電極間容量として動作させれば、電極間容量C2と反比例する直流電圧V2を得ることができる。平行平板電極において端効果が無視できる場合は、電極間容量と電極間距離はほぼ反比例するので、直流電圧V2として電極間距離とほぼ比例する直流電圧を得ることが可能となる。
第17の実施の形態でも、必要に応じて他の実施の形態を適用することが可能である。
[第18の実施の形態]
第18の実施の形態は、駆動信号発生手段としてDDSを使用する例を示している。つまり、DDSを含む駆動信号発生手段を使用する例である。図28A及び図28Bは、第18の実施の形態に係るDDSの一例を示している。
図28AのDDS3117は、位相アキュムレータと、LUT(ルックアップテーブル)と、D/A変換器(D/A)と、LPF(ローパスフィルタ)を備える。加算器とレジスタ(ラッチ、D−F/F)からなる位相アキュムレータは、クロック毎に周波数設定の値だけ値が増える(即ち位相が進む)動作を行い、周波数設定の値に比例した周波数を出力する。より具体的には、クロック周波数をf
CLK、加算器とレジスタが各々2進数nビット、周波数設定値がfsetのとき、DDS3117の出力周波数foutは式13のようになり、周波数設定値fsetに比例した周波数の出力周波数foutが得られる。
位相アキュムレータの出力をそのままD/A変換すると鋸歯状波となる。位相アキュムレータの出力nビットのうちn'ビット(n≧n')を、2n'ワードのLUTによって正弦波に相当するディジタルデータに変換して、D/A変換することにより、正弦波を得ている。LUTは通常、ROM(Read-Only Memory)で構成されているが、RAM(Random-Access Memory)を用いることもできる。
また、LUTのデータ内容によって、正弦波以外の任意の波形データを生成することも可能である。例えば、周波数f1からfnの複数の周波数成分を含む波形データをLUTに格納することによって、複数の周波数成分を含む波形を生成することができる。
mビットのD/A変換器を使用する場合、LUTの出力のうちmビットがD/A変換器に与えられる。この場合、LUTの出力ビット数はmビット以上である必要があり、mビット未満のときはD/A変換器の分解能の一部が無駄になる。
ディジタル回路の遅延時間等の過渡状態が無視できない場合は、D/A変換器の前にレジスタを設けてクロック毎に波形データを取り込むことによって良好なD/A変換結果を得ることができる。図28A、図28B及び図29Aは共に、このようなレジスタを内蔵しているD/A変換器を例示している。
D/A変換器の出力は階段波状のアナログ波形であり、不要な周波数成分を含んでいるので、LPFによって不要な周波数成分(スプリアス)を除去し、所望の波形を得ている。単一周波数の正弦波を出力する場合は、BPF(バンドパスフィルタ)を用いることによって、さらにスプリアス性能を向上させることもできる。
DDSは周知の技術なので、DDSについてのこれ以上詳細な説明は、省略する。
図28Bは、DDS3117−1を示し、同一周波数で位相の異なる波形を得るための方法の一例を示しており、LUTに位相が異なる波形データを格納することによって、異なる位相の波形を得ている。即ち、0°出力側のLUTには正弦波(sin)データ、90°出力側のLUTには余弦波(cos)データを格納し、LUTの入力には同一のDDS出力を与えている。
前述の第16の実施の形態では、0°の反転波形の180°や、90°の反転波形の270°を使用する場合がある。LUT、D/A変換器、LPFを各4個使用する場合は、反転した正弦波データをLUTに格納して180°波形を得、反転した余弦波データで270°波形を得ることができる。また、反転増幅器によって0°波形や90°波形を反転して、180°波形や270°波形を得ることもできる。
ここでは、LUTに90°単位の位相差データを格納する例を示したが、LUTによる方法であればこれに限定することなく、自由な位相差データを格納することによって、任意の位相差の波形を得ることができる。
LUTのデータ内容が固定されている場合、例えば正弦波(sin)データのLUTしか使用できない場合は、ディジタル加算器によって位相を変化させることが可能である。図29AのDDS3117−2に追加されている加算器では、位相アキュムレータの出力に位相設定値を加算して、位相設定値の分、位相が進んだ移相出力を得ている。位相アキュムレータのビット数をn、位相設定値のビット数をpとすると、n≧pであることが必要である。(n<pの場合は、加算器による位相分解能の一部が無駄になる。)位相アキュムレータのMSB(Most Significant Bit:最上位ビット)と加算器のMSBは一致するように接続されており、n>pのときは余分な下位ビットには固定値(一般的には0)が与えられる。このときの位相分解能は、360°÷2pとなる。
前述の第13の実施の形態や第15の実施の形態において、90°の位相差を有する駆動信号を使用している。また前述の第16の実施の形態では、0°の反転波形の180°や、90°の反転波形の270°を使用する場合もある。位相差が90°の倍数だけであれば、位相の異なる波形を得るための加算器を簡略化できるので、以下これについて説明する。
nビットの位相アキュムレータの出力は0〜2n−1の値を取る。これに対して180°位相の異なる出力を得るためには、位相アキュムレータの出力に2n−1を加算すればよいが、これはMSBに1を加える、つまりMSBを反転することに相当する。この場合、MSB以外のビットは変化しないので、そのままの値を使用すればよい。
同様に、90°位相を進ませるためには、位相アキュムレータの出力に2n−2を加算すればよいが、これは位相アキュムレータの上位2ビットの値に1を加えることに相当する。また、90°位相を遅らせるためには、位相アキュムレータの出力から2n−2を減算すればよいが、これは位相アキュムレータの上位2ビットの値から1を減じることに相当する。この場合、上位2ビット以外は変化しないので、そのままの値を使用すればよい。
図29Bの真理値表は、MSBを含む上位2ビットの値を示している。例えば、0°の上位2ビットが00のとき、90°では01、180°では10、270°では11となっている。
90°のときにこの真理値表を満たすためには、0°の上位2ビットの排他的論理和(XOR)をとって90°のMSBとし、0°の上から2ビット目の論理否定(NOT)をとって90°の上から2ビット目とすればよい。180°のときは、0°のMSBを反転させ、上から2ビット目はそのまま使用すればよい。270°のときも同様に、90°のMSBを反転させ、90°の上から2ビット目をそのまま使用すればよい。図29Bの真理値表の下の論理演算記号は、このような処理を図示している。
90°の単位の位相差を有する駆動信号を得るためにこのような方法を用いれば、多ビットの加算器を用いることなく、簡単な論理回路で移相できるので、より低コストでDDSを実現することができる。また、各位相のD/A変換器とLPFの特性や、D/A変換のタイミングが一致していれば、正確な90°単位の位相差を有する信号を得ることができる。
前述の第13の実施の形態で説明し、第17の実施の形態で図示した、アナログ回路で位相検波手段を実現する例では、方形波の参照信号によって利得の正負をスイッチしている。この場合の参照信号は、各位相のLUTに与えている各々のMSBを使用することができる。
[第19の実施の形態]
第19の実施の形態は、比較判定手段や閾値設定手段を測定手段中に追加したり、通信手段を測定手段中に追加したりする変形例を示している。図30は、第19の実施の形態に係る測定手段の一例を示している。
本開示の容量測定回路の測定手段では、信号検知手段の出力振幅Vout、電極間容量Cxや、電極間距離や物体の状態などの様々な測定結果を得ることができる。この様々な測定結果は、必要に応じてさらに比較判定手段に与えることによって、各種の判定を行うこともできる。
このような比較判定手段は、電圧値に対してアナログ的なコンパレータを用いてもよいし、ディジタル処理による場合はディジタル値に基いて比較判定を行ってもよい。比較判定手段のための閾値は、閾値設定手段によって比較判定手段に与える。
最も単純には、単一の比較判定手段によって、測定結果がある値を超えたら正常、ある値以下なら異常(あるいは、ある値を超えたら異常、ある値以下なら正常)のような判定が可能である。2つの比較判定手段を用いれば、一例として、ある範囲以内(例えば、比較判定手段1の閾値よりも高く、比較判定手段2の閾値以下)であれば正常、その範囲よりも下(例えば、比較判定手段1の閾値よりも低い)であれば異常1、その範囲よりも上(例えば、比較判定手段2の閾値よりも高い)なら異常2、のような範囲判定が可能である。必要があれば、さらに多くの比較判定手段を用いて、複数の範囲判定等、任意の比較判定を行えばよい。
また、測定結果の立ち上がり時間、立ち下がり時間、ある値以下で保持している時間、ある値以上で保持している時間などを比較判定手段によって同様に判定することも可能である。さらに、これら各種時間相互の、大小や比などを比較判定手段によって判定することもできる。このような判定の具体的な応用の一例を、後述の実施例4、図51Aから図53Bに示す。
本開示の容量測定回路の比較判定手段で得た測定結果や判定結果のような情報は、各種の通信によってコンピュータ等に情報伝達して、データ保管や適切な情報処理を行うことも可能である。例えば、有線又は無線接続によってインターネットに接続し、適当な目的地(遠隔地を含む)に情報を伝達して適切な情報処理を行う、いわゆるIoT(Internet of Things)に適用することも可能である。もちろん、LAN(Local Area Network)や他の通信手段によって、工場内のコンピュータ等に情報を伝達することなども可能である。
このような、比較判定手段、閾値設定手段や通信手段も、測定手段の中に含まれるものとする。図30に示す測定手段618は、比較判定手段、閾値設定手段、通信手段を全て含む測定手段の例である。比較判定手段と閾値設定手段だけを含むこともできるし、通信手段だけを含むことも可能であり、どちらも含まないことも可能である。
具体的な応用の一例として、本開示の容量測定回路を物体検知を行う静電容量変位計として用いる場合に、電極間への物体の接近・離脱を比較判定手段で検出するように用いれば、「近接センサ」として使用することができる。さらにこの場合、比較判定手段によって測定結果が閾値を超えているか否かを判定すれば、ある程度以上に近接しているか否かなどを判定するための「近接スイッチ」として使用することもできる。
[第20の実施の形態]
第20の実施の形態は、駆動信号発生手段、駆動電極、検知電極、信号検知手段や測定手段をICに実装する例を示している。図31Aから図32は、第20の実施の形態に係る容量測定回路の一例を示している。
本開示の容量測定回路における基本的な構成要素、即ち、駆動信号発生手段、駆動電極、検知電極、信号検知手段、測定手段の5つの構成要素の一部をICに実装することも有益である。ここでICは、パッケージの形態を問わず、モノリシックICやハイブリッドICなどを広く含むものとする。
例えば図31Aのように、駆動信号発生手段、信号検知手段、測定手段のような電気回路の全て又はその一部をIC3219に実装することによって、本開示の容量測定回路やそれを用いる静電容量変位計を、より小型かつ安価に提供できるようになる。
前述の第14の実施の形態などでは、駆動信号発生手段と駆動電極を対にして複数使用したり、検知電極と信号検知手段を対にして複数使用したりする例が示されている。このような形態で使用する場合は、駆動信号発生手段を備えるICのパッケージの表面に駆動電極などの電極3319を一体化した図31BのようなIC3219−1や、少なくとも信号検知手段を備えるICのパッケージの表面に検知電極を一体化したIC3219−1が、特に有効であろう。電極は、必要に応じてICパッケージの裏面に設けることも可能である。
また、物体検知を行う静電容量変位計のように、駆動電極と検知電極の相対位置関係が固定されていてもよい場合は、ICのパッケージの表面などに駆動電極と検知電極の両方を備え、電気回路と共にIC化することも有効である。このような場合、後述の第5の実施例で説明する並列電極3419や同心円電極3519を、図31Cや図31DのようにIC3219−2、3219−3のパッケージ上に設けることができる。
また、IC3219−1、3219−2、3219−3では円形の電極を例示しているが、電極の形状や寸法は、必要に応じて自由に選択することができる。
本開示の容量測定回路の構成要素の一部をICに実装することも可能である。例えば、駆動信号発生手段として第18の実施の形態のようなDDSを使用して、90°単位の位相差を持つ複数の駆動信号を得る場合を考える。図32は、DDSによる駆動信号発生手段を2種類のICに分割した一例を示している。
IC1は、周波数設定手段、加算器と、クロック信号が供給されるレジスタによって構成されており、加算器とレジスタによる位相アキュムレータの出力を、外部に出力している。
IC2では、IC1の出力と位相設定手段の値が加算器に与えられることによって移相され、LUT、D/A変換器、LPFを経由して波形が生成され、さらに増幅回路で必要な電圧に増幅されて駆動電極に与えられる。またIC2では、図31BのようにICパッケージに電極を備えてもよい。
本開示の容量測定回路にIC1及びIC2を適用する場合は、90°単位の位相差を有していればよいので、加算器の代わりとして、第18の実施の形態の図29Bのような上位2ビットによる移相手段を用いることもできる。この場合、位相設定手段は、0°/90°/180°/270°を選択する位相選択手段とし、図29Bの表の下に示すような回路をセレクタで切り替えればよい。
0°と90°の2つの信号が必要な場合は、IC1を1個とIC2を2個使用すればよい。0°、90°、180°、270°の4つ信号が必要な場合は、IC1を1個とIC2を4個使用すればよい。IC1の出力は、複数ビット幅のディジタル信号であるが、IC1の出力でパラレル−シリアル変換を行い、IC2の入力でシリアル−パラレル変換することによって、配線を簡略化することも可能である。
ここでは、駆動信号発生手段のDDSを2種類のICに分割し、各ICが駆動信号発生手段の一部となる例を示した。
第14の実施の形態の測定手段614、614−2のように、フィルタfc1・・・fcnと交流電圧測定手段AC1・・・ACnを複数組備える場合には、フィルタと交流電圧測定手段の組み合わせを一つのICとすると有効である。同様に、第14の実施の形態の測定手段614−1のように、位相検波手段1814−1・・・1814−n、平均化手段1914−1・・・1914−nと直流電圧測定手段DC1・・・DCnを複数組備えるような場合には、位相検波手段、平均化手段と直流電圧測定手段の組み合わせの全部又は一部を一つのICにすることが有効である。また第14の実施の形態では、信号検知手段501を複数用いる例も示されているので、信号検知手段501をICにすることもできる。この場合は、さらに検知電極を備えるICにすると、より有効であろう。
このように、本開示の容量測定回路の構成要素のどの部分をICに実装するかは、必要に応じて自由に選択することが可能である。
[第21の実施の形態]
第21の実施の形態は、前述の実施の形態のような容量測定回路を適用した、静電容量変位計を示している。静電容量変位計の主な用途は、距離測定と、容量に影響する物体の状態を知る物体検知に大別することができる。
図33Aから図33Cは、静電容量変位計120、120−1、120−2を距離測定に用いる場合を例示している。図1、図2、図3A、図5A及び図5Bと同一部分には同一の符号を付している。第1の実施の形態から第4の実施の形態の何れかと同一部分の説明を省略する。静電容量変位計120、120−1、120−2は、駆動電極320と、検知電極420と、信号検知手段520と、測定手段620とを含む。駆動電極320は、前述の駆動電極301又は対象物であり、検知電極420は、前述の検知電極401又は対象物である。信号検知手段520及び測定手段620の組は、第1の実施の形態から第20の実施の形態で前述した信号検知手段及び測定手段の組の何れであってもよい。
距離測定においては、以下の3通りがある。
(1) 駆動電極320を対象物として対象物と検知電極420の間の電極間距離dを測定する場合(図33A)、
(2) 検知電極420を対象物として駆動電極320と対象物の間の電極間距離dを測定する場合(図33B)、
(3) 駆動電極320、検知電極420共に対象物として対象物同士の間の電極間距離dを測定する場合(図33C)
これらの具体例は、後述の第1の実施例から第3の実施例で説明する。
なお、対象物が導電体でない場合は、対象物に電極を取り付ける(例えば貼付する)ことによって、同様に距離測定を行うことが可能である。
図34Aと図34Bは、静電容量変位計120−3、120−4を物体検知に用いる場合を例示している。図1、図2、図3A、図5A及び図5Bと同一部分には同一の符号を付している。第1の実施の形態から第4の実施の形態の何れかと同一部分の説明を省略する。静電容量変位計120−3、120−4は、駆動電極320と、検知電極420と、信号検知手段520と、測定手段620とを含む。駆動電極320は、前述の駆動電極301であり、検知電極420は、前述の検知電極401である。信号検知手段520及び測定手段620の組は、第1の実施の形態から第20の実施の形態で前述した信号検知手段及び測定手段の組の何れであってもよい。
物体検知を行う場合は、駆動電極320も検知電極420も対象物にはせず、電極間容量Cx(図1)によって、電極間容量Cxに影響する物体の状態を知る。静電容量変位計120−3、120−4による物体検知の最も代表的な例は、図34Aに示すように、駆動電極320と検知電極420の間の対象物の状態を知る場合である。例えば対象物が液体容器の場合、容器中の液体(通常、空気よりも比誘電率が大きい)の量によって電極間容量Cxが変化するので、電極間容量Cxによって容器中の液体の量を知ることができる。静電容量変位計120−3、120−4による物体検知の場合は、駆動電極320と検知電極420は図34Aのように対向している必要はなく、例えば図34Bのように隣接していてもよく、電極の向きや配置等は用途によって自由に選択可能である。物体検知の具体的な例は、後述の第4の実施例から第6の実施例で説明する。
[第22の実施の形態]
第22の実施の形態は、例えば静電容量変位計120、120−1、120−2において、電極間距離d(図33Aから図33C)と、電極間容量Cxの関係を、関数で近似して逆補正することによって、より正確な電極間距離dを知る例を示している。
また第22の実施の形態は、例えば静電容量変位計120−3、120−4において、対象物(図34A及び図34B)の状態と、電極間容量Cxの関係を、関数で近似して逆補正することによって、より正確な対象物の状態を知る例を示している。
図35は、第22の実施の形態の距離測定を説明するためのグラフの一例を示しており、横軸は電極間距離dであり、縦軸は電極間容量Cxである。図35では、駆動電極と検知電極が正方形の平行平板を用いた場合を例示しており、駆動電極と検知電極の面積は各々1.6×10−3m2(40mm×40mm)とした。
空気中の平行平板モデルによる平行平板コンデンサの静電容量C[F]は、平行平板電極の各々の面積をS[m
2]、平行平板電極の電極間距離をd[m]、空気の誘電率は真空の誘電率ε
0[F/m]と等しいとすると、式14のように表され、静電容量Cは平行平板電極の電極間距離dと反比例する。
この関係の一例を、図35中の「平行平板モデル」に示す。
ただし式14が成立するのは、端効果が無視できる領域(平行平板電極の寸法が、平行平板の電極間距離に比べて十分大きい場合)である。平行平板電極の寸法に対して平行平板の電極間距離が大きくなり、静電容量Cが小さくなると、端効果によって静電容量Cは式14よりもさらに小さくなる。
適切な電磁界シミュレータを用いれば、端効果も考慮した平行平板コンデンサの静電容量と平行平板の電極間距離の関係を得ることができる。振幅:20Vp−p、周波数:1MHzの正弦波の場合の関係の例を、図35中の「シミュレーション」に示す。なお図35では、電磁界シミュレータとして、有限会社 ソネット技研製、高周波用電磁界シミュレータ SonnetLiteを使用した。
本開示の容量測定回路を用いた静電容量変位計による実測値は、図35中の「実測値」に示す。なお、実測における測定条件の振幅と周波数は、電磁界シミュレータと同様である。実測時に使用した静電容量変位計の容量測定回路には、前述の実施の形態を適宜適用している。この測定値は、実測した適当な個数の電極間距離における電極間容量Cxを補間することによって得ている。
図35のグラフによると、電極間容量Cxが数pF以上となる電極間距離d、すなわち電極間距離dが数mm以下では、平行平板モデル、シミュレーション、実測値は各々、ほとんど一致している。また、電極間容量Cxが数pF未満となる電極間距離dにおいては、端効果によって、平行平板モデルよりもシミュレーションや実測値の方が電極間容量Cxが小さくなっている。さらに、電極間容量Cxが数十fF未満となる電極間距離d、すなわち電極間距離dが数十mm以上においては、測定値よりもシミュレーションの方が、電極間容量Cxが小さくなっている。
第22の実施の形態ではまず、図35に示すような実測値を得て、電極間容量と電極間距離の関係を関数で近似する。近似を行うための関数としては、多項式や指数関数等、周知の様々な関数を用いることができる。また近似手法としては最小二乗法等の周知の様々な手法を用いることができる。これらの周知の関数や手法に関する説明は、省略する。
何種類かの関数で近似してみた結果を図35に表示しようとしたが、図35の上では実測値のプロットと重なってしまって差異が見えなかったので、図35に近似結果を図示することは省略した。
実際の測定時には、静電容量変位計中の容量測定回路で実際に測定された容量値を、採用した近似関数に適用することによって、より正確な電極間距離を知ることができる静電容量変位計を実現できる。
上記では実測値に近似する例を示したが、予め実測することが困難などの場合は、シミュレーション結果に基づいて関数で近似することも可能である。このような簡易的な方法を採用する場合であっても、少なくとも平行平板モデルよりも正確な電極間距離を知ることができる。
なお上記では静電容量変位計の距離測定に適用することによって電極間距離を知る例を示したが、静電容量変位計の物体検知に適用することも可能である。
図36のグラフ3601は、第22の実施の形態の物体検知を説明するための実測値のグラフの一例を示しており、縦軸はペットボトル3621中の液体の水位であり、横軸は電極間容量Cxである。ペットボトル3621中の液体の水位は、液体の容量も示している。図36は更に、駆動電極と検知電極の位置関係や、液体の水位に対応づけて被試験体のペットボトル3621の形状を示している。この例では、直径60mmの円形の駆動電極321と、直径30mmの検知電極421と、検知電極421の周囲に直径60mmのガード電極(図不示、後述の第2の実施例を参照)を使用した。また駆動信号として、駆動信号振幅:20Vp−p、駆動信号周波数:1MHz、駆動信号波形:正弦波を用いた。なお被試験体として使用したペットボトル3621は、図36に示しているように、溝3721やくびれ3821を有しており、各溝3721に対応する水位、及びペットボトル3621の定格容量において、電極間容量Cxを測定した。
静電容量変位計の物体検知に適用する場合は、予め、実測値やシミュレーション値に基いて、測定対象物の物体の状態と電極間容量Cxの関係を関数で近似する。実際の測定時には、実際に測定された電極間容量Cxを、採用した近似関数に適用することによって、より正確な物体の状態を知ることができる。一例として、容器中の液体の容量を検出する場合、予め駆動電極と検出電極の電極間容量Cxと容器中の液体の容量や水位の関係を図36の例のように知って関数で近似し、実際の測定時には、測定された容量をこの近似関数に適用することによって、正確な容器中の液体の容量を知ることができる静電容量変位計を実現できる。
[第23の実施の形態]
本開示の静電容量変位計では、電極や被測定物を移動可能にすることもできる。ここで「移動」には、回転などの動きも広く含まれる。
前出の第14の実施の形態では、駆動電極又は検知電極のいずれかを複数設けることによって、複数箇所の距離測定や物体検知を可能としていた。
本開示の静電容量変位計では、電極や被測定物のいずれか一以上(以下「電極等」と記載する)を移動可能とすることによって、複数箇所の距離測定や物体検知を順次行うことが可能である。さらに前出の第14の実施の形態を併用することも可能であり、より短時間で測定できる等の効果が得られる。
本開示の静電容量変位計における距離測定では、前述のように、駆動電極又は検知電極のいずれか、又は両方を対象物として、電極間の距離を測定する。両方の電極を移動可能とする距離測定の具体例を後述の第1の実施例−2(図38)に、一方の電極を移動可能とする距離測定の具体例を後述の第1の実施例−4(図40B、図40C)、第2の実施例−2(図43Aから図43D)や第3の実施例−3(図46)に示す。第2の実施例−2(図43Aから図43D)や第3の実施例−3(図46)では、第14の実施の形態を併用する例を示している。
また、本開示の静電容量変位計における物体検知に関し、電極を移動する物体検知の具体例を後述の第6の実施例−5(図60A)に、電極間容量に影響する物体を移動する具体例を後述の第4の実施例−1(図48)、第4の実施例−4(図51A、図51B)、第4の実施例−5(図53A、図53B)、第6の実施例−4(図59)や第6の実施例−5(図62A及び図62B)に示す。
本開示の容量測定回路によれば、微小容量を測定できるので、長い距離の距離測定を実現できる。このため、静電容量変位計を用いた測定用途だけでなく、レーザー変位計や渦電流変位計等で実現していた測定用途にも広く適用可能である。
また、本開示の静電容量変位計によれば、梱包箱内部の外から見ることができないような物体の物体検知や、長距離における物体検知のような用途にも広く適用可能となる。
さらに、本開示の静電容量変位計によって、複数点における距離測定や物体検知を行う場合は、電極や回路の一部を簡素化することができるので、より低コストで実現できるという効果も有しており、この点においても広範囲な用途に適用可能である。
以下に、本開示の静電容量変位計によって距離測定や物体検知を行う場合の、具体的な実施例を示す。
[第1の実施例]
第1の実施例は、静電容量変位計による距離測定の具体的な例のうち、一組の駆動電極と検知電極による一例を示している。
図37から図40Cは、静電容量変位計による距離測定に使用する一組の駆動電極と検知電極の具体例を示している。図37から図63Bにおいて、リード線の端に付されている丸印は、本開示の駆動信号発生手段又は信号検知手段が、各図に示されている駆動電極又は検知電極に接続する箇所を示している。一方の電極に駆動信号発生手段との接続が図示されている場合はその電極が駆動電極になり、他方の電極は検知電極になる。
[第1の実施例−1]
図37は、隔膜真空計5001を例示している。隔膜真空計5001の本体5002は、隔膜5003によって測定室5004と基準室5005に気密分離されており、基準室5005は真空に保たれている。ゲッター剤5006は、真空度を保持するためのものである。基準室5005の隔膜5003と対向する面には、固定電極5007が設けられている。測定室5004に与えられる測定圧力が高い場合は破線のように隔膜5003が固定電極5007に近づき、測定圧力が低い場合は実線のように隔膜5003が固定電極5007から遠ざかる。この結果、隔膜5003と固定電極5007間の容量が、隔膜5003と固定電極5007間の電極間距離にほぼ反比例して変化するので、容量によって測定圧力を知ることができる。この例では、隔膜5003と固定電極5007と、駆動電極と検知電極の対応は、どちらでもよい。
隔膜5003(対象物)を駆動電極とし、固定電極5007を検知電極として、本体5002を接地し、固定電極5007を本体5002に近い位置に設けると、より好ましい結果が得られよう。本開示の容量測定回路を使用する静電容量変位計の場合、信号検知手段によって検知電極が仮想接地される。このため、本体5002を接地した場合、隔膜5003の周辺部からの電気力線は主に測定室5004の側面に広がり、隔膜5003の中心部からの電気力線は主に基準室5005の対向面に位置する固定電極5007に到達する。隔膜5003の中心部は測定圧力によって最も大きく移動する部分のため、上記のように接続することによって高感度にできる。また、接地された本体5002がシールドとして動作するため、周囲の雑音等の影響を受けにくいという利点もある。
第22の実施の形態で説明したように、図37において、隔膜5003と固定電極5007間の容量と測定圧力の関係を予め測定し、その関係を適切な関数で近似することによって、より正確な測定圧力を知ることも可能である。
[第1の実施例−2]
図38は、自動車等のブレーキ用ディスク(以下、「ディスク」という)5021の面振れ、表面の凹凸や平坦度など(以下、「面振れ等」という)の試験を行う例を示している。ディスク5021(対象物)は回転可能であり、駆動電極又は検知電極とすることが可能であり、例えば水平に設置されている。移動電極5022は、ディスク5021から若干離れた位置に設置されており、ディスク5021と平行に、ディスク5021の直径方向に移動可能とする。全く面振れ等のないディスク5021であれば、移動電極5022の位置に関わらず、ディスク5021を回転させてもディスク5021と移動電極5022の間の電極間距離は一定となる。面振れ等があればディスク5021の回転に伴って電極間距離が変化するので、静電容量変位計によってその距離変化を知ることができる。移動電極5022を図中の矢印のように移動させれば、ディスク5021の外周面と内周面の面振れ等の違いを知ることができる。なお図38ではディスク5021の一方の面の移動電極5022を例示したが、反対の面に移動電極5022を設けたり、両面に移動電極5022を設けたりすることも可能である。
図38のディスク5021の場合、より大きいディスク5021(対象物)を駆動電極とし、より小さい移動電極5022を検知電極とすると、検知電極を比較的小さくできるので、ハムや周囲雑音の影響を受けにくいという利点がある。検知電極において、ディスク5021とは反対側の面にシールド電極を設けたり、検知電極と信号検知手段との間の配線にシールド線を用いたりすると、ハムや周囲雑音の影響を低減可能である。逆に、ディスク5021を検知電極とし、移動電極5022を駆動電極にすると、駆動電極が小さいので駆動電極から放射される放射電波を抑制できるという利点がある。
このように、対象物と電極の形状等を考慮して、駆動電極と検知電極を適宜選択することができる。このことは、後述する他の実施例においても同様である。後述する実施例では、より好ましい組み合わせを示している場合があるが、例示している組み合わせに限定するものではない。
[第1の実施例−3]
隔膜真空計5001や、ディスク5021の面振れ等の例では、一方が電極、他方が対象物であり、即ち、図33A又は図33Bの駆動電極320及び検知電極420の組に相当していた。図39のCRT(cathode-ray tube)5041の垂直偏向板5042及び水平偏向板5043は、それぞれ図33Cの駆動電極320及び検知電極420の組に相当する、駆動電極と検知電極の両方が対象物となる例を示す。
図39は、CRT5041の偏向板間の距離測定を行う例を示している。図39において、破線は電子ビームの軌跡を示している。電子銃5044から発射された電子ビームは、垂直偏向板5042の間の電圧によって上下方向に偏向し、水平偏向板5043の間の電圧によって左右方向に偏向した上で、蛍光面5045に到達する。オシロスコープにおける代表的な応用例として、鋸歯状波を水平偏向板5043に印加することによって横軸を時間軸とし、入力電圧波形を増幅して垂直偏向板5042に印加することによって縦軸を入力電圧軸とすることができる。オシロスコープにおけるXYモードでは、X入力の電圧波形を増幅して水平偏向板5043に印加し、Y入力の電圧波形を増幅して垂直偏向板5042に印加することができる。
垂直偏向板5042や水平偏向板5043の形状は、誤差が小さい既知の値であるのに対して、組み立てによる偏向板間の距離の誤差は大きくなりがちなので、製造の良否判定等の目的で偏向板間の距離を測定する必要が生じる。
なお、2枚の垂直偏向板5042(いずれも対象物)は同形状なので、どちらを駆動電極とし、どちらを検知電極にするかは、自由である。2枚の水平偏向板5043(いずれも対象物)においても、同様である。
従来技術による静電容量変位計では、一方を専用の電極、他方を接地された導電体とする必要があるため、この実施例のような用途に適用することはできない。2つ以上の対象物を電極としている以降の実施例でも同様である。
[第1の実施例−4]
図40Aから図40Cでは、本開示の静電容量変位計による距離測定の具体的な例のうち、一組の駆動電極と検知電極による、その他の具体的な応用例を示している。
図40Aは、物体の高さを測定する一例として、乾電池の電極間の距離測定の例を示している。図40Aでは、乾電池5061を位置決めゲージ5062に押し当てて固定し、乾電池5061の下側の電極を例えば駆動電極とし、乾電池5061の上部から少し離れた位置に固定された電極5063を検知電極にして、乾電池5061の上側の電極と電極5063の間の容量を測定することによって距離測定を行っている。(乾電池5061の上側と下側の電極間のインピーダンスは、十分に低いことを前提にしている。)駆動電極と検知電極は上記の逆でもよく、乾電池5061の上下の向きも図と逆でもよい。(乾電池5061の上下を逆にすると、乾電池5061の平坦な電極面との容量を測定することになるので、さらに好ましい結果が得られる可能性がある。)このような高さの測定は、様々な物体に適用可能である。
図40Bは、ベアリングの真円度の測定を行う例を示しており、金属性のベアリング5081(対象物)の軸を固定して一方の電極とし、ベアリング5081の少し外に他方の電極5082を固定している。ベアリング5081が完全な真円度を有していればベアリング5081を回転させても電極間容量は変化しない。ベアリング5081の回転に伴い電極間容量が変化すれば、それによって電極間距離の変化を知ることができる結果、ベアリング5081の真円度を知ることができる。
図40Cは、モータ軸の芯振れの測定を行う例を示しており、モータ軸5101と導通しているモータ本体5102を一方の電極とし、モータ軸5101の少し外に他方の電極5103を固定している。モータ軸5101の回転に伴い電極間容量が変化すれば、それによって電極間距離の変化を知ることができる結果、モータ軸5101の芯振れの度合いを知ることができる。
[第1の実施例−その他]
本開示の静電容量変位計において、一組の駆動電極と検知電極を使用する距離測定は、他にも様々な用途に利用可能なので、以下これらを列挙する。
・駆動電極と検知電極で対象物を挟み込むことによるフィルム、紙、ゴム、樹脂等の厚さ測定。(対象物の比誘電率を予め知っておくことによって、測定された電極間容量から電極間距離=対象物の厚さを知る。)
・アクチュエータなどの位置決め(アクチュエータを一方の電極にしてもよいし、アクチュエータに一方の電極を貼り付けてもよい。)
・2つの物体の隙間測定(各物体を電極としてもよいし、各物体に電極を取り付けてもよい。)
第1の実施例に示した用途において、複数箇所の距離測定を行う場合は、後述の第2の実施例や第3の実施例のような方法を適用することができる。
[第2の実施例]
第2の実施例、及び図41Aから図43Dは、本開示の静電容量変位計による距離測定の具体的な例において、駆動電極と検知電極のいずれか一方を2つ使用することによって、2箇所の距離測定を行う、具体的な応用例を示している。
図41Aから図41Dは、2つの導体(いずれも対象物)の間に位置する電極と各導体間の電極間距離を測定する例を示している。図42Aから図42Cは、1つの導体(対象物)と2つの電極との各電極間距離を測定する例を示している。図43Aから図43Dは、円筒状金属部品の直角度測定を行う例を示している。
[第2の実施例−1]
図41Aは、2つの導体の一方を駆動電極、他方を検知電極とする例を示しており、第1の実施例に含まれる参照例であり、第2の実施例の対象外である。
図41Bは、前述の第15の実施の形態で示した90°の位相差を持つ2つの駆動信号を用いる方法によって、2つの導体の間に位置する電極と各導体間の電極間距離を各々測定している。一方の導体には駆動信号としてsin信号を与えており、他方の導体には駆動信号としてcos信号を与えており、第15の実施の形態のように位相検波手段によって2つの導体各々と電極との電極間距離を知ることができる。この結果、(一方の導体と電極との電極間距離+他方の導体と電極との電極間距離+電極の厚さ)によって、2つの導体間の距離を知ることができる。
図41Cは、前述の第14の実施の形態の図18Aや図18Bで示した、複数(2つ)の周波数を用いる方法によって、2つの導体の間に位置する電極と各導体の電極間距離を各々測定している。一方の導体には周波数f1の駆動信号を、他方の導体には周波数f2の駆動信号を与えており、2つの駆動電極を有している。これにより、第14の実施の形態で説明したように、2つの導体各々と電極との電極間距離を知ることができる。この結果、(一方の導体と電極との電極間距離+他方の導体と電極との電極間距離+電極の厚さ)によって、2つの導体間の距離を知ることができる。複数の周波数を用いる方法は、後述の第3の実施例で、さらなる具体例を用いて説明する。
図41Dは、前述の第14の実施の形態における、図19で示した方法や、図21、図23A及び図23Bに示した切り替えを用いる方法によって、2つの導体の間に位置する電極と各導体との電極間距離を各々測定している。(図19ではフィルタfc1・・・fcnと交流電圧測定手段AC1・・・ACnを用いる例を示しているが、位相検波手段、平均化手段と直流電圧測定手段を測定手段として使用することも可能である。)
図41Dでは、2つの導体5121−1、5121−2は共通に接続されており、駆動信号が印加されている。この例では、2つの導体5121−1、5121−2が1つの駆動電極であり、それらの間に2つの検知電極5122−1、5122−2を有している。一方の検知電極5122−1は一方の導体5121−1との電極間距離d1を測定し、他方の検知電極5122−2は他方の導体5121−2との電極間距離d2を測定している。2つの検知電極5122−1、5122−2の厚さをdとすると、2つの導体間の距離は、d1+d+d2によって知ることができる。
2つの検知電極5122−1、5122−2の周囲に接地された電極5123を追加すると、例えば図41Dに示しているような電気力線が生じ、導体5121−1、5121−2と検知電極5122−1、5122−2の間の電気力線は平行になるので、平行平板モデルによる平行平板コンデンサの静電容量の式(前出の式14)と一致しやすくなることが期待できる。このように、電気力線を適宜整形又は変形させるために設ける電極を総称して、ガード電極と称する。
なお図の電気力線は、理解の容易のための簡易的な図であり、正確な計算に基づく電気力線ではない。(他の電気力線の図においても同様。)
図41Bから図41Dでは、2つの導電体間の距離を測定する例を示したが、これらを応用して、図42Aから図42Cのように、1つの導電体の厚さを測定することも可能である。この方法によって、一例として、半導体のシリコンウェーハの厚さを測定することができる。
図42Aでは、前述の第15の実施の形態で示した90°の位相差を持つ2つの駆動信号を用いる方法によって、1つの導電体5141(対象物:検知電極)と2つの駆動電極5142−1、5142−2との電極間距離を、各々測定している。固定されている2つの駆動電極間の距離をd、導電体と一方の検知電極との電極間距離をd1、導電体と他方の検知電極との距離をd2とすると、導電体の厚さは、d−d1−d2によって知ることができる。(図42Bも同様。)(距離d、d1、d2と導電体の厚さの関係は、図42Cも参照。ただし図42Cでは、駆動電極と検知電極が、図42Aや図42Bとは逆になっている。)
図42Bでは、前述の第14の実施の形態の図18Aや図18Bで示した、複数(2つ)の周波数を用いる方法によって、1つの導電体5141と2つの駆動電極5142−1、5142−2との電極間距離を各々測定することによって、導電体5141の厚さを測定している。
また図42Cでは、前述の第14の実施の形態の図19で示した方法によって、1つの導電体5161と2つの検知電極5162−1、5162−2との電極間距離を各々測定して、導電体5161の厚さを測定している。
このように、90°の位相差を持つ2つの駆動信号を用いる方法、複数(2つ)の周波数を用いる方法や、前述の第14の実施の形態の図19で示した方法を適用することによって、例えば図39のようなCRT5041の垂直偏向板5042と水平偏向板5043各々の電極間距離を、同時に測定することも可能である。
[第2の実施例−2]
2つの距離測定を同時に行う、さらなる具体例を、図43Aから図43Dに示す。図43Aから図43Dは、円筒状の金属部品の直角度を検査する例である。ここでは90°の位相差を持つ2つの駆動信号(sin信号とcos信号)を用いる方法を例示しているが、図41Aから図42Cで示した方法と同様、複数(2つ)の周波数を用いる方法や、前述の第14の実施の形態の図19で示した方法、図21、図23A及び図23Bに示した切り替えを用いる方法などを適用することも可能である。
図43Aでは、面振れのない正確なターンテーブル5181の上に円筒状の金属部品5182が載せられており、金属部品5182の近辺に2つの駆動電極5183−1、5183−2がほぼ垂直の2点に固定されている。ターンテーブル5181は金属部品5182と接触して電気的に接続されており、金属部品5182と一体となって検知電極となっている。金属部品5182の直角度が完全でなく(すなわち傾きがあり)、その中心がターンテーブル5181の中心と一致しているとき(すなわち芯ずれがないとき)に、ターンテーブル5181が回転する状態を側面視すると、金属部品5182は、図43Bのように金属部品5182の縦の実線と破線のように動く。sin信号側の駆動電極と金属部品5182との間の容量をCsin、cos信号側の駆動電極と金属部品5182との間の容量をCcosとする。
図43A及び図43Bにおいて、金属部品5182の傾きがあり芯ずれがないとき、ターンテーブル5181の回転角度を横軸とし、sin信号側の容量Csin、及びcos信号側の容量Ccosを縦軸に取ると、図43Cのように変化する。この容量Csinと容量Ccosの容量変化の差によって、金属部品5182の直角度を知ることができる。
円筒状の金属部品5182の中心がターンテーブル5181の中心とずれているが、金属部品5182の直角度が完全のときは、図43Dのように、Csin、Ccos各々の容量は同じように変化する。この場合、Csin、Ccos各々の容量変化の差がゼロなので、金属部品の直角度が完全であることを知ることができる。
第2の実施例では、90°の位相差を持つ2つの駆動信号を用いる方法、複数(2つ)の周波数を用いる方法や、前述の第14の実施の形態の図19で示した方法を具体例として説明したが、これらに限定するものではない。例えば第14の実施の形態で説明した、ヘテロダイン検波手段や切替手段を適宜使用して、用途や要求性能に応じた静電容量変位計を実現してもよい。
[第3の実施例]
第3の実施例、及び図44から図47は、本開示の静電容量変位計による距離測定において、3箇所以上の距離測定を行う具体例を示している。
図44は金属平板5201の傾斜角や垂直位置を測定する例を、図45は自動車ドアの応力ひずみを測定する例を、図46は3点法によって真円度を測定する例を示している。
3箇所以上の距離測定を行う場合、第14の実施の形態で示した、複数(2つ)の周波数を用いる方法、前述の第14の実施の形態の図19で示した方法、ヘテロダイン検波手段や切替手段を適宜使用可能である。
各具体例においては、3箇所以上の距離測定を行う各種の測定方法についての説明や電極の接続方法の説明は省略しているが、第14の実施の形態で示した測定方法や電極接続方法のいずれも、適宜使用可能である。
[第3の実施例−1]
図44は、3箇所の距離測定によって、金属平板5201の傾斜角や垂直位置を測定する例を示している。駆動電極・検知電極の一方は金属平板5201(対象物)、他方は電極A、B、Cになっている。電極A、B、Cは、各電極が金属平板5201との電極間距離を測定している。電極A、B、C各々の金属平板5201との電極間距離を各々、距離A、B、Cと称する。
電極Aと電極Bの間隔は既知なので、距離Aと距離Bを知れば、傾きαを知ることができる。例えば、距離A>距離Bであれば、図44のαの下方向の矢印の方向に傾いていることを知ることができる。電極Cと、電極Aと電極Bの間の中央の間隔も既知なので、距離A、B、Cを知れば、傾きβを知ることができる。例えば、距離Aと距離Bの平均値>距離Cであれば、図44のβの上方向の矢印の方向に傾いていることを知ることができる。距離A、B、Cの平均値を知れば、垂直位置Zを知ることができる。例えば、距離A、B、Cの平均値が基準値よりも小さければ、金属平板5201が図44のZの矢印の方向に上昇していることを知ることができる。
ここでは、3箇所の距離測定によって傾きと垂直位置を知る例を示したが、例えば4箇所の距離測定によれば金属平板5201のねじれを知ることができ、さらに多数の距離測定によって金属平板5201の平面度などを知ることもできる。
[第3の実施例−2]
図45は、3箇所よりも多点の距離測定によって、自動車ドアの応力ひずみを測定する例を示している。図45において、自動車ドア5221(対象物)は、駆動電極・検知電極の一方となっている。電極位置決めを行う治具5222に複数備えている電極5223は、駆動電極・検知電極の他方となっている。
まず、自動車ドア5221に応力を加えない状態において、各電極5223と自動車ドア5221との間の電極間距離を測定し、これを基準値とする。自動車ドア5221の所定の位置に応力を加えると、応力を加えた付近の電極5223を中心として、各電極5223の電極間距離が大きくなる。これによって、応力による自動車ドア5221の変形・ひずみの度合いや、ひずみがどこまで広がるか、などを知ることができる。応力を加える位置を順次変更して測定したり、変形・ひずみの度合い等を「マスタ」(基準対象物)と比較することによって良否判定を行ったりすることもできる。
[第3の実施例−3]
図46は、金属円筒(金属円柱でも可)において、3点法によって真円度を測定する例を示している。図46において、駆動電極・検知電極の一方は回転可能となるように設置された金属円筒5241(対象物)そのものであり、他方は金属円筒5241の周囲の基準位置に配置された3つの電極5242になっている。金属円筒5241を回転可能とする方法や駆動電極・検知電極の一方に接続する方法は図示していないが、例えば図43Aのようなターンテーブル5181を使用すればよい。3点法による真円度測定は、被測定物を回転させ、三箇所で被測定物の変位を測定することによって真円度を測定する手法であるが、既知の手法なのでその詳細の説明は省略する。
[第3の実施例−4]
図47は、鋼板の直角度、平行度やサイズを測定する例を示している。図47において、駆動電極・検知電極の一方は四角形の鋼板5261(対象物)そのもの、他方は鋼板5261の付近に備えている電極5262−1、5262−2、5262−3、5262−4、5262−5、5262−6になっている。鋼板5261は、位置決めガイド5263によってその位置が決められている。電極5262−1、5262−2、5262−3、5262−4、5262−5、5262−6で測定した鋼板5261との電極間距離は、それぞれ第1の距離、第2の距離、第3の距離、第4の距離、第5の距離、第6の距離である。
まず、正確な直角度とサイズを有するマスタ鋼板を用いて、第1の距離から第6の距離を各々測定しておく。この際、各電極5262−1、5262−2、5262−3、5262−4、5262−5、5262−6の電極間距離が同じになるように、電極位置を調整してもよい。次に、被対象物の鋼板5261を用いて、第1の距離から第6の距離を各々測定する。
第1の距離と第2の距離の差を知ることによって電極5262−1と電極5262−2側の鋼板側面の傾き(マスタに対する相対値、以下同様)を知ることができ、第3の距離と第4の距離の差を知ることによって電極5262−3と電極5262−4側の鋼板側面の傾きを知ることができる。また、第1の距離と第3の距離によって鋼板5261の下の方のサイズ(図47における横幅)を知ることができ、第2の距離と第4の距離によって鋼板5261の上の方のサイズを知ることができる。また、(第1の距離と第2の距離の平均値)と(第3の距離と第4の距離の平均値)によって、鋼板5261の中心付近のサイズを推定することもできる。
第5の距離と第6の距離の差を知ることによって、鋼板5261の下側面と上側面の平行度を知ることができる。第5の距離によって鋼板5261の左側面付近のサイズ(図47における縦幅)を、第6の距離によって右側面付近のサイズを知ることができ、第5の距離と第6の距離の平均値によって鋼板5261の左右方向の中心付近のサイズを推定することもできる。
[第4の実施例]
第4の実施例、及び図48から図53Bは、本開示の静電容量変位計による物体検知において、一組の駆動電極と検知電極を使用する場合の具体例を示している。これらの図に示す具体例は代表的な一例にすぎず、一組の駆動電極と検知電極を使用する場合においても、本開示の静電容量変位計による物体検知は広範囲の用途に応用可能である。
[第4の実施例−1]
図48は、テープやベルト等のテープ状の対象物(以下、「テープ」という)5281の、製造ラインにおける厚さ測定の例を示している。テープ5281はローラー5282によって矢印方向に送られており、非接触でテープ5281を挟むように駆動電極と検知電極の組5283が設けられている。テープ5281の比誘電率は、空気の比誘電率よりも大きいので、電極間容量Cxはテープ5281がない場合よりも大きくなり、テープ5281が厚いほど電極間容量Cxが大きくなる。また、電極間距離は一定のため、テープ5281が図の上下方向にぶれても電極間容量Cxは変化しないので、電極間容量Cxによってテープ5281の厚さを知ることができる。
図48の例では、テープ5281の厚さの上限値(電極間容量Cxの最大値)とテープ5281の厚さの下限値(電極間容量Cxの最小値)の2つの比較を行うことによって、テープ5281の厚さが正常(電極間容量Cxが最小値と最大値の間にある)、テープ5281が厚すぎる(電極間容量Cxが最大値以上)、テープ5281が薄すぎる(電極間容量Cxが最小値以下)のような判定を行うことが好ましい。
図48では、一組の駆動電極と検知電極を使用して幅の狭いテープ状の対象物の厚さを測定する例を示した。しかし、幅の広いシート、紙、布地、フィルムのような対象物であっても、特定の位置の厚さを知れば足りる場合や、幅や面全体の平均的な厚さを知るような場合であれば、一組の駆動電極と検知電極を適用可能である。例えば紙送り機構において、紙が重なって送られていることを特定の位置で検出するような場合は、一組の駆動電極と検知電極を適用可能である。
[第4の実施例−2]
図49は、液体容器への液体注入量の測定の例を示している。液体容器5301の側面には、図のように駆動電極と検知電極の組5302が設けられている。液体容器5301や容器に入れられる液体の比誘電率は、空気の比誘電率よりも大きい。このため電極間容量Cxは、電極間に液体容器5301が存在しない場合に最も小さく、空の液体容器5301が存在する場合は少し大きくなり、液体が最大量充填された場合に最も大きくなる。この結果、電極間容量Cxによって液体容器5301内の液体の量を知ることができる。
例えばベルトコンベアで運ばれてきた液体容器5301が電極間で停止すると、電極間容量が少し増えることによって、液体容器5301が所定位置に停止したことを検出できる。さらに容器の上からノズル5303が降下してきて液体の注入が始まると、液体の増加に伴って電極間容量Cxが増加していく。所定の液体量に対応する電極間容量Cxに達したら、液体の注入を終了し、ノズル5303を上昇させ、次の液体容器5301に交代する。
この例の場合は、液体容器5301の有無を判定するための閾値と、所定の液体量に対応する閾値の2つを比較することができる。液体容器5301自体の厚さの個体差等による静電容量の違いが無視できない場合は、液体容器5301が空の状態の静電容量を基準値として、静電容量の増加量によって所定の液体量に達したことを知ることも可能である。
図49は、液体容器5301の両側面に平板状の電極、つまり駆動電極と検知電極の組5302を設ける例を示しているが、液体容器5301に沿って湾曲した電極を用いることによって、より高感度化を図ることもできる。この場合はさらに、湾曲した電極を動かして液体容器5301を挟み込むことによって液体容器5301の位置決めを行い、測定のばらつきを低減することも可能である。
また、前述の図36のように、液体容器の上下に設けた電極を用いることもできる。この場合は、容器の注入口側の電極に開けた穴にノズル5303を通せばよい。
[第4の実施例−3]
本開示の静電容量変位計において、一組の駆動電極と検知電極を使用する物体検知によって複数の周波数における各々の電極間容量を得て、これに基づいて対象物の誘電率などの周波数特性を知ることも可能である。
一例として、対象物が混合物であり、その混合比によって誘電率の周波数特性が変化するときに、特徴的な何点かの周波数における周波数特性を知ることによって、対象物の混合比を知ったり、混合物の良否判定を行うことなどが可能である。
第21の実施の形態に係る図34Aや図34Bを参照する。
まず駆動信号発生手段201において、複数の周波数成分を含む駆動信号を発生する。このような駆動信号として、周波数重畳波形を用いることができる。また、複数の高調波成分を含有する方形波、鋸歯状波、三角波などの波形も用いることができ、慣用されている技術で容易に生成可能である。(ホワイトノイズやピンクノイズのような、より多くの周波数成分を含む波形を用いることも可能ではあるが、各々の周波数成分が小さいためSN比はあまり期待できない。)
測定手段620は、必要となる複数の周波数の各々を知ることができる構成とする。一例として、第14の実施の形態に係る図18Aの測定手段614や、図20Aの測定手段614−3と同様の構成を適用可能である。
駆動信号としてf1・・・fnのn個の周波数の周波数重畳波形を用いる場合は、f1・・・fnのn点の周波数特性を知ることができる。方形波や鋸歯状波を駆動信号として用いる場合は、基本波や高調波のうち必要な周波数成分に対する周波数特性を知ることができる。
周波数重畳波形では、単一周波数の正弦波よりも振幅が大きくなりがちであり、信号検知手段増幅器の出力が飽和する可能性が増える。この可能性を軽減するためには、重畳する各周波数を適宜選択し、重畳する各周波数成分の位相を各々調整して、周波数重畳波形のピーク電圧が、最小あるいは必要なだけ小さくなるようにすればよい。重畳する周波数が予めわかっている場合は、計算やシミュレーションによってピーク電圧が小さくなるような各位相を求めることもできる。
この一例として、1kHzと3kHzの正弦波を重畳する場合を、図50A及び図50Bに示す。図50Aでは、1kHz(点線)の位相が0°のときに、3kHz(細い実線)の位相が180°の場合を示している。この場合の重畳波形(太い実線)のピーク値は、1kHzの正弦波や3kHzの正弦波のピーク値の2倍である。図50Bでは、1kHz(点線)との位相が0°のときに、3kHz(細い実線)の位相も0°の場合を示している。この場合の重畳波形(太い実線)のピーク値は、1kHzと3kHzの正弦波の約1.54倍である。即ちこの場合は、重畳する周波数成分の位相を選択することによって、ピーク電圧を8割弱に低減できる。
周波数特性を知るためのもう一つの方法として、駆動信号周波数をスイープさせる方法を用いることも可能であり、この場合は例えば図17Aから図17Cの容量測定回路を用いた静電容量変位計とする。
図17Aの駆動信号発生手段213、もしくは図17B又は図17Cの駆動信号発生手段201では、測定を行う周波数を順次発生させる(周波数をスイープさせる)。測定手段620としては、図17Aの測定手段613、図17Bの測定手段613−1、図17Cの測定手段613−2を各々用いる。図17Aから図17Cの構成、動作や特徴等は、第14の実施の形態の説明の該当部を参照し、ここではこれ以上の説明は省略する。
[第4の実施例−4]
図51Aから図52Bは、電極間に人体の一部(指を例示)を接近・離脱することによって、何らかの機器の操作指示を行う例を示しており、本開示の静電容量変位計を近接センサとして使用する一例である。
図51Aは電極と指ガードの位置関係の例を示す斜視図であり、図51Bは電極と指ガードの位置関係の例を示す正面図を示すと共に、指の接近状態と離脱状態を示している。指ガードは、指の移動範囲を規制すると共に、指が電極に直接触れないようにする機能も有している。
図52A及び図52Bは、図51A及び図51Bにおいて指を接近・離脱させたときの本開示の静電容量変位計の出力電圧の例を示している。本開示の静電容量変位計に対して、人体は一般的に接地された導体のようにふるまうため、指が電極に接近すると電極間容量が減少し、指が電極から離脱すると電極間容量が元に戻る。
図52Aは、図51A及び図51Bにおいて指を接近・離脱させるパターンと、各パターンに対応する本開示の静電容量変位計の出力電圧の例を示している。指が離脱状態から接近状態に早く移動した場合は、「早い接近」に示すように出力電圧が急激に下がる。指が離脱状態から接近状態にゆっくりと移動した場合は、「遅い接近」に示すように出力電圧がゆっくりと下がる。指が接近状態から離脱状態に早く移動した場合は、「早い離脱」に示すように出力電圧が急激に上がる。指が接近状態から離脱状態にゆっくりと移動した場合は、「遅い離脱」に示すように出力電圧がゆっくりと上がる。指が接近状態で停止したときは、「近接停止」に示すように出力電圧は下がったままとなり、離脱状態で停止したときは、「離脱停止」に示すように出力電圧は上がったままとなる。
図52Bは、図52Aに示した指を接近・離脱させる6つのパターンの組み合わせを示している。上段左端は早い接近と早い離脱が連続して生じたときの出力電圧を示している。上段左中は早い接近の後接近状態で停止し、その後早い離脱が生じたときの出力電圧を示している。上段右中は遅い接近と遅い離脱が連続して生じたとき、上段右端は遅い接近・接近状態で停止・遅い離脱が生じたときの出力電圧を示している。下段左端は早い接近と遅い離脱が連続して生じたとき、下段左中は早い接近・接近状態で停止・遅い離脱が生じたときの出力電圧を示している。下段右中は遅い接近と早い離脱が連続して生じたとき、下段右端は遅い接近・接近状態で停止・早い離脱が生じたときの出力電圧を示している。即ち、図52Aの6つのパターンの組み合わせによって、図52Bの8つのパターンが得られることを例示している。
図52Bにおいて、離脱状態時の出力電圧はVH、接近状態時の出力電圧はVLである。VHとVLの間には図のように、ハイレベル閾値電圧VthHとローレベル閾値電圧VthLを設定する。一例として、VHとVLの電圧差の10%だけVHよりも低い電圧をハイレベル閾値電圧VthHとし、VHとVLの電圧差の10%だけVLよりも高い電圧をローレベル閾値電圧VthLとすることができる。
離脱状態時の出力電圧VHは、指の太さ等による影響はほとんどないと考えられる。これに対して接近状態時の出力電圧VLは、指の太さ等によって異なる可能性が高い。このような場合、例えば、接近状態において最も低くなったときの出力電圧を接近状態時の出力電圧VLとすることによって、指の太さ等の差異を吸収することができる。
出力電圧がハイレベル閾値電圧VthHからローレベル閾値電圧VthLまで下がる時間を降下時間tfとし、出力電圧がローレベル閾値電圧VthLよりも低い時間を停止時間thとし、出力電圧がローレベル閾値電圧VthLからハイレベル閾値電圧VthHまで上がる時間を上昇時間trとする。
降下時間tfが予め定めた降下時間閾値よりも短ければ「早い接近」であり、降下時間閾値以上であれば「遅い接近」であると判定できる。停止時間thが予め定めた停止時間閾値よりも短ければ接近と停止が連続して発生したと判定し、停止時間閾値以上であれば接近停止があったと判定できる。上昇時間trが予め定めた上昇時間閾値よりも短ければ「早い離脱」であり、上昇時間閾値以上であれば「遅い離脱」であると判定できる。このような判定を行うために、前述の第19の実施の形態で説明した比較判定手段を用いることができる。
図52Bの8つのパターンを識別することによって、8種類の操作指示として用いることができる。一例として、自動車において、遅い接近と遅い離脱の連続をドアロック、早い接近と早い離脱の連続をドアロック解除の操作指示としたり、遅い接近と早い離脱の連続を窓を開ける指示、早い接近と遅い離脱の連続を窓を閉じる操作指示としたりすることができる。さらに、接近状態における停止があるときは窓の開閉速度を遅くし、停止がないときは窓の開閉速度を早くすることなども考えられる。
指の太さは個人差があるが、誰でも使えるようにするためには、図51Aの指ガードの幅は一例として30mm程度にすることになり、電極間距離はさらに広くなる。このため、測定距離の短い従来技術による静電容量変位計をこのような用途に適用することは困難である。
[第4の実施例−5]
図53A及び図53Bは、電極間を移動する物体の移動方向を知ることができる静電容量変位計の例を示している。
図53Aは、物体が左から右に移動する場合の例と、そのときの静電容量変位計の出力電圧波形の例を示している。また図53Bは、物体が右から左に移動する場合の例と、そのときの静電容量変位計の出力電圧波形の例を示している。
図53Aや図53Bでは、被測定物の一例である自動車が道路を走行する状態を例示している。例示している自動車は浮いた導電体であり、自動車が電極間に入ると電極間容量が増える。
図53Aや図53Bの電極は、図の左方向では電極間の距離が近く、右方向では電極間の距離が離れている。このような場合、図53Aに示すように、電極間の距離が近いところでは電気力線の密度が高く、電極間の距離が遠いところでは電気力線の密度が低くなる。
このような電極間を、図53Aのように自動車が左から右に通過すると、最初に電気力線の密度が高い部分を通過するときは静電容量変位計の出力電圧が早く上昇し、その後電気力線の密度が低い部分を通過するときは静電容量変位計の出力電圧がゆっくりと下降する。一方、図53Bのように自動車が右から左に通過すると、最初に電気力線の密度が低い部分を通過するときは静電容量変位計の出力電圧がゆっくり上昇し、その後電気力線の密度が高い部分を通過するときは静電容量変位計の出力電圧が早く下降する。
また、自動車の通過速度が早いときは静電容量変位計の出力電圧がより早く上昇/下降し、遅いときは静電容量変位計の出力電圧がより遅く上昇/下降する。
即ち、静電容量変位計の出力電圧の上昇時間と下降時間の間の大小に基づいて自動車が通過方向を知ることができる。また、上昇時間と下降時間の和に基づいて、自動車の通過速度を知ることもできる。
図53Aのように自動車が左から右に移動するときの静電容量変位計の出力電圧は図53Aのグラフ5351のように変化し、図53Bのように自動車が右から左に移動するときは出力電圧が図53Bのグラフ5352のように変化する。(図53Bでは自動車が右から左に移動するが、図53Bのグラフ5352では時間軸が右向きになっており、出力電圧は図の左から右に向かって変化する。)
[第4の実施例−その他]
本開示の静電容量変位計において、一組の駆動電極と検知電極を使用する物体検知は、他にも様々な用途に利用可能なので、以下これらを列挙する。
・薬品等の混合比や、酒類中のアルコール濃度を、対象物の比誘電率によって知る。
・土、砂、コンクリートブロック等の水分量を、対象物の比誘電率によって知る。
・シュークリーム内のクリームの有無や量などを、対象物の比誘電率によって知る。
・トレイ内の食品充填量などを、対象物の比誘電率によって知る。
・容器の内容物の量や種類を、対象物の比誘電率によって知る。
・容器内の付属品等の数や種類を、非接触検査する。
・タンクやケース中の液量・粉体量や、風呂等の水位を、検出・制御する。
・タイヤ、ゴムや樹脂部品等の中の気泡を、対象物の比誘電率によって知る。
・フィルムなどに付着した金属片を検出する。
・劣化すると膨らむ電池や電解コンデンサなど、物体の形状変化によって対象物の状態を知る。
・静電容量が面積、厚さ及び誘電率の積で決まる銅張り積層板の、厚さや比誘電率を知る。
・プリント基板のパターン間容量を知る。(本開示の容量測定回路によって、微小容量の測定も可能。)
・美術館等、進入禁止エリアへの人や車の侵入を検知する。
・産業用ロボットの動作による、危険領域への侵入を防止する。
・その他、物体の有無や、物体が近接したことの検知等に広く適用可能。
第4の実施例に示した用途では、後述の第5の実施例のような電極の形状や位置関係の変形例を適用することができる。また第4の実施例に示した用途において、複数箇所で物体検知を行う場合は、後述の第6の実施例のような方法を適用することができる。
[第5の実施例]
第5の実施例、及び図54Aから図55Cは、本開示の静電容量変位計による物体検知の一組の駆動電極と検知電極において、電極の形状や位置関係の変形例を示している。
例えば第4の実施例に係る図48と図49では、駆動電極と検知電極を対向配置する例を示した。これに対して第5の実施例に係る図54Aから図54Dでは、駆動電極と検知電極を並列配置する例を示す。また第5の実施例に係る図55Aから図55Cでは、駆動電極と検知電極を同心円状に配置する例を示す。
[第5の実施例−1]
図54Aには、円形の駆動電極5321と円形の検知電極5322を、同一平面に横に並べて配置(即ち、並列配置)する例を示している。電極の形状や配置は一例であり、用途に合わせて自由に選択可能である。例えば四角形の電極でもよく、高さを異ならせた配置や、電極を傾けた配置なども可能である。
図54Bには、検知電極5322の付近にシールド電極5323を設ける例を示している。駆動電極5321に対して同様にシールド電極5323を設けることも可能である。シールド電極5323は、検知電極5322や駆動電極5321と異なる大きさでも構わないが、少し大きめにすることが好ましい。検知電極5322と駆動電極5321の付近に、共通の大きなシールド電極5323を設けることも可能である。第6の実施の形態で説明したようなプリント基板を用いる電極は、並列配置の電極にも好適である。
図54Cには、並列配置した駆動電極5321と検知電極5322の間の電気力線のうち、一方の面の電気力線だけを例示している。
図54Dには、並列配置した駆動電極5321と検知電極5322の付近に、接地された導電体5324が接近した場合の電気力線の例を示している。この場合、駆動電極5321から発した電気力線の一部が接地された導電体5324に到達し、検知電極5322に届かなくなるので、電極間容量Cxは減少する。このような電極間容量Cxの減少を検出することによって、例えば接地された導電体が接近したことを検知する物体検知を行うことができる。
一方、並列配置した駆動電極5321と検知電極5322の付近に、空気よりも誘電率が大きい物体(例えば液体)が近接する場合(図不示)や浮いた導電体が近接する場合(図不示)は、電極間容量Cxが増加する。このような電極間容量Cxの増加を検出することによって、例えば液体容器や自動車などが接近したことを検知する物体検知を行うことができる。
[第5の実施例−2]
図55Aには、ドーナツ状の駆動電極5341と、ドーナツの穴に相当する部分に位置する円形の検知電極5342の例を示している。このような電極の形状・配置を、同心円状の配置と称する。
図55Bには、駆動電極5341と検知電極5342の間に、さらにドーナツ状のガード電極5343を設けた例を示しており、このような場合の電気力線を図55Cに例示している。ガード電極5343が存在する場合、電極が配置されている面に近く(低く)駆動電極5341から発生した電気力線はガード電極5343に到達し、電極が配置されている面から遠く(高く)発生した電気力線だけが検知電極5342に到達する。このため、電極面からより遠い物体の検知に適した電極配置として働くことが期待できる。
同心円状の電極配置においても、電極の形状や配置等は自由であり、各電極の直径の比率を変更したり、円形を四角形に変更したり、適宜ガード電極を追加することも可能である。第6の実施の形態で説明したようなプリント基板を用いる電極は、同心円状配置の電極にも好適である。駆動電極と検知電極を入れ替えて使用することも可能である。
接地された導電体の近接による静電容量の減少、又は、空気よりも比誘電率の高い物体や浮いた導電体の近接による静電容量の増加は、前述の並列配置と同様なので、説明を省略する。
このような、電極の並列配置や同心円状の配置等は、物体の近接・離脱の検知(近接スイッチや近接センサ)や、近接した物体の誘電率の増加等の検知(例えば内容物の有無や量の検知)にも適している。このような場合は、適切な閾値を用いることによって、物体検知の判定を行うことも、特に好ましい。このような場合の電極の配置は、並列配置や同心円状の配置に限定するものではない。同様の機能を実現可能な、様々な他の電極配置も考えられ、並列配置や同心円状の配置はこの代表的な一例にすぎない。
[第6の実施例]
第6の実施例、及び図56Aから図63Bは、本開示の静電容量変位計による物体検知において、駆動電極と検知電極の一方又は両方を複数用いることによって、複数の物体検知を行う例を示している。
[第6の実施例−1]
図56A及び図56Bは、複数の物体検知を行う例として、梱包箱5361に入った状態のままで、複数のペットボトル5362各々の内容量検査を行う例を示している。梱包箱5361に入った状態のペットボトル5362(対象物)は、外から見ることができず、レーザー光も通さないため、レーザー変位計によって内容量を検査することはできない。またこのような対象物は金属ではないため、渦電流変位計を適用することもできない。ペットボトル5362の高さは、500ミリリットル品でも高さ200mm前後、1.5リットル品や2リットル品では300mm強もある。このため、梱包箱に入った状態のペットボトルの内容量検査は、本開示の容量測定回路を用いた静電容量変位計によって可能になった。
図56Aは梱包状態のペットボトル5362を含む梱包箱5361の電極の上面図、図56Bは梱包箱5361や電極の側面図である。梱包箱5361内のペットボトル5362は破線で示されている。各ペットボトル5362の上部(梱包箱の上部)には、例示している断面が四角形のペットボトル5362に合わせて、四角形の駆動電極5363を設ける例を示している。また、梱包箱5361の下部には、梱包箱5361よりも大きいサイズの検知電極5364を設ける例を示している。駆動電極5363や検知電極5364の形状やサイズはこれらに限定するものではない。
また図56Aでは、前述の第14の実施の形態の図22の方法を用いて駆動電極5363を切り替える例を示しているが、この方法に限定するものではない。第14の実施の形態に示したような、複数箇所の容量測定を行う様々な手法を適宜適用したり、さらにこれらを適宜組み合わせて適用したりすることもできる。
図56Bには、ペットボトル5362のうち、左から2番目のペットボトル5362の内容量が少ない場合を例示している。また、ペットボトル5362のうち1本の上部に設けられた駆動電極5363から下部の検知電極5364への電気力線の一例を示している。電気力線のほとんどは駆動電極5363から検知電極5364に向かうため、駆動電極5363の直下のペットボトル5362の内容量によって、電極間容量Cxが支配的に決まる。若干の電気力線は駆動電極5363の周囲のペットボトル5362を通過するため、周囲のペットボトル5362の一部又は全部の内容量が極端に異なる場合は若干の影響が生じる可能性はある。しかし当該ペットボトル5362の上部の駆動電極5363を駆動して測定したときに、当該ペットボトル5362の内容量が極端に異なることを知ることができるので、周囲への影響を計算によって補正することも可能である。また、梱包箱5361中のペットボトル5362の一本でも内容量が極端に異なっていることを検知すれば、その梱包箱5361単位で検査不合格となり、ペットボトル5362の入れ替えを行う必要が生じるため、周囲の状態による測定結果への影響は大きな問題にはならない。
[第6の実施例−2]
図57A及び図57Bは、複数の物体検知を行う例として、梱包箱5381に入った状態のままで、複数の牛乳パック5382の内容量検査を行う例を示している。梱包箱5381に入った状態の牛乳パック5382(対象物)の内容量検査も同様に、本開示の容量測定回路を用いた静電容量変位計によって可能になった。(梱包箱5381に入っていなくても、牛乳パック5382はレーザー光を通さないので、やはりレーザー変位計を内容量検査に適用することはできない。なお1リットルの牛乳パック5382の代表的な高さは、194mmである。)
図56A及び図56Bの例では駆動電極を切り替える例を示したが、図57A及び図57Bの例では検知電極を切り替える例を示している。図57Aは検知電極の配置を示すための上面図の例であり、図57Bは側面図の例である。
図57Aに示すように、牛乳パック5382(3行×4列=12個を例示)の上部には各々、牛乳パック5382に近いサイズの四角形の電極5383が設けられている。また、梱包箱5381の周囲には、接地されたガード電極5384が設けられている。梱包箱5381の下には、ガード電極5384の外形と同程度の大きさの、駆動電極5385(図不示)が全面に設けられている。
図57Bでは、ガード電極5384や駆動電極5385の例や、電極5383の切り替えの例を示している。電極5383の切り替えは、前述の第14の実施の形態の図23Bの方法を例示している。図57Bの例では、電極5383の切り替えは1行の4個分だけを図示しているが、実際は、3行×4列=12個の切替スイッチが設けられている。12個の切替スイッチのうち1個だけが電極5383を信号検知手段と接続しており、他の電極5383は接地に接続されている。
信号検知手段と接続された電極1個も、信号検知手段の入力における仮想接地によって接地電位になっているので、梱包箱上部の12個の電極5383とガード電極5384は、全面的に接地された一つの大きな平板電極と同様に働く。一方、駆動電極5385もこれと同程度の大きさの平板電極であるため、全体として平行平板コンデンサのように働く。この様子を、図57Bの電気力線に例示している。
図57Bに示すように、周辺部分の電気力線は電極の外に膨らもうとするが(端効果)、牛乳パック5382が存在している部分ではほぼ平行な電気力線となっている。即ちガード電極5384は、牛乳パック5382が存在している部分において平行な電気力線となるように、電気力線を整形している。この結果、どの牛乳パック5382の内容量を検知測定する場合であっても、周囲の牛乳パック5382の内容量の影響をほとんど受けないようにすることができる。
周辺の対象物の影響を受けにくいようにしたい場合は、上記のようにガード電極5384を設けて、検知電極を切り替える方が有利である。しかしこの場合は、接地側に接続している切替スイッチの電極間容量が、検知電極への接続に対する浮遊容量となる。しかし本開示の容量測定回路では、検知電極に付加される浮遊容量はあまり問題にはならない。
さらに浮遊容量の影響をより小さくしたい場合は、第14の実施の形態の図21のように、信号検知手段を複数用いて測定手段で切り替えることも可能である。この場合も、梱包箱上部の12個の電極5383とガード電極5384は、全面的に接地された一つの大きな電極と同様に働き、駆動電極5385もこれと同程度の大きさであるため、全体として平行平板コンデンサのように働く。
浮遊容量の影響をより小さくしたい場合の他の対処方法として、図56A及び図56Bのように駆動電極を切り替える方法を選択するか、もしくは第6の実施の形態で示したアクティブシールドを用いることも可能である。即ち、検知電極と駆動電極のどちらを切り替えるかは、用途に応じて選択可能である。
[第6の実施例−3]
図58は、複数の物体検知を行う例として、カップラーメンの蓋、別添スープ、麺などの内部の状態を検査する例を示している。図58で左側に図示されている電極は駆動電極であり、右側に図示されている電極は検知電極5802、検知電極5803、検知電極5804及び検知電極5805とガード電極5801及びガード電極5806である。電極の形状は自由に選択可能であり、平板電極でもよいし、カップラーメンを囲むような円弧状の電極になっていてもよい。
ガード電極5801及びガード電極5806は接地されている。検知電極5802はカップラーメンの蓋の高さに設置されている。検知電極5804は麺の上に置かれている別添スープの高さに設置されており、検知電極5803は検知電極5802と検知電極5804の間に設置されている。検知電極5805はカップラーメン容器中の麺に相当する部分に設置されている。
前述の第14の実施の形態の図23Bの方法によって、電極切り替えスイッチは、検知電極5802、検知電極5803、検知電極5804及び検知電極5805のうちいずれか一つを信号検知手段に接続し、他は接地するように設けられている。(図58では、検知電極5804が信号検知手段に接続されており、他の検知電極は接地されている状態を例示している。)
カップラーメンの蓋は、プラスチックとアルミ箔が積層されていることを想定する。プラスチックは誘電体であり、アルミ箔は浮いた導電体なので、共に電極間容量を増大させる。このため、検知電極5802が信号検知手段に接続されているときにおいて、蓋が装着されていない場合やカップラーメンが電極間に置かれていない場合には、想定している電極間容量よりも小さくなるので、蓋の未装着やカップラーメンの不存在を検知できる。適切な閾値を適用すれば、蓋の未装着とカップラーメンの不存在を区別することも可能であろう。
カップラーメンの麺の上に置かれている別添スープ(粉末や液体)は、プラスチックとアルミ箔が積層された袋に入っていることを想定する。プラスチックやスープは誘電体であり、アルミ箔は浮いた導電体なので、共に電極間容量を増大させる。このため、検知電極5804が信号検知手段に接続されているときにおいて、別添スープが入っていないときや別添スープが正常な高さに置かれていないときは、想定している電極間容量よりも小さくなるので、このような事態を検知できる。
電極5803が信号検知手段に接続されているときにおいて、想定している電極間容量よりも大きい場合は、別添スープや麺と蓋の間に異物(誘電体や浮いた導電体)が入っている可能性があり、これを検知できる。逆に想定している電極間容量よりも小さいときは、カップラーメンが電極間に置かれていない場合が想定され、これを検知できる。
検知電極5805が信号検知手段に接続されているときにおいて、想定している電極間容量よりも大きい場合は、麺(誘電体)が規定量よりも多く高密度であることを検知できる。逆に想定している電極間容量よりも小さいときは、麺(誘電体)が規定量よりも少なく低密度であることを検知できる。電極間容量が大幅に小さいときは、麺が入っていない場合、カップラーメンが電極間に置かれていない場合が想定され、これを検知できる。
図58では、検知電極5082、検知電極5083、検知電極5084及び検知電極5085をスイッチで切り替える例を示したが、信号検知手段や測定手段を複数用いて同時に電極間容量を知ることによって、より短時間でカップラーメンの状態を知ることも可能である。その他にも、第14の実施の形態で示した様々な方法によって、複数箇所の電極間容量を知ることが可能である。
[第6の実施例−4]
図59は、複数の電極を用いることによって、被測定物の位置を推定する例を示している。図59の配置5901は、例えば、被測定物(一例としてペットボトルに入った飲料)がベルトコンベアに乗って左から右に移動していくときを例示している。図59の配置5901中のA、B、C、Dは各々、被測定物を検出するための近接センサや近接スイッチである。図59のグラフ5902中のA、B、C、Dは、本開示の静電容量変位計を近接センサとして用いたときの出力電圧の例を示している。図59のグラフの横軸は、図59の配置5901の被測定物の位置を示す横方向に対応しており、被測定物が左から右に移動していくときの静電容量変位計の出力電圧の例を示している。(被測定物は誘電体であり、被測定物が電極間に入ると電極間容量が増加して静電容量変位計の出力電圧が上がる場合を例示している。)
まず、従来用いられていた近接スイッチとして、図59の配置5901のA、B、C、Dとして光電センサ(遮光型や反射型)を用いる場合を考える。光電センサでは、被測定物が所定位置にあるかないかを光電センサの出力のオンオフで知ることはできるが、被測定物が近くにあるか遠いかを知ることはできない。
被測定物が位置Pまで移動してきたとき、センサAの出力は一度オンオフして、センサAを通過したことを知ることができる。センサA出力のオンオフ後、センサBの出力はまだオンオフしていない。この状態では、被測定物がセンサAとセンサBの間にいることは検知できるが、被測定物がセンサAとセンサBの間のどこにいるかを知ることはできない。
本開示の静電容量変位計を近接センサとして用いる場合を考える。この場合、図59の配置5901のA、B、C、Dは各々、本開示の静電容量変位計の駆動電極と検知電極である。
被測定物が位置Pにあるとき、Aの電極に対応する静電容量変位計の出力電圧は図59のグラフ5902のAの中に示している上下矢印の電圧である。(図59グラフ5902において、被測定物が離れたときの電圧、即ち電圧の平坦部を基準電圧とする。以下同様。)またこのとき、Bの電極に対応する静電容量変位計の出力電圧は図59のグラフ5902のBの中に示している上下矢印の電圧である。CとDの出力電圧は、共に基準電圧である。
A中の上下矢印の電圧は比較的大きく、B中の上下矢印の電圧は比較的小さい。このことから、被測定物はBよりもAに近い位置にあり、CやDからは離れていることを知ることができる。この場合の一例として、Aの電圧とBの電圧の比に基づいて、被測定物の位置を推定することができる。
各電極における被測定物の位置と静電容量変位計の出力電圧の関係を、図59のグラフ5902のように予め知っておけば、各電極に対応する静電容量変位計の出力電圧から、より正確な被測定物の位置を推定することもできる。
なお図59の配置5901で例示している複数の電極において、各々の静電容量を知るためには、第14の実施の形態の様々な方法を自由に選択して使用することができる。
[第6の実施例−5]
図60Aから図63Bには、さらに多数箇所の物体検知を行う一例として、自動車用タイヤ(以下、「タイヤ」という)5401の検査を示している。検査対象は自動車用タイヤに限定するものではない。例えば、タイヤ5401を構成するゴム等に気泡が含まれていると、強度が劣化したり、摩耗によって気泡部が外に現れると外観を損ねたりするおそれがある。気泡、すなわち空気の比誘電率は、ゴムの比誘電率よりも低いため、気泡が含まれている部分は電極間容量が減少するので、気泡を検知することができる。
図60Aから図61Bは、タイヤの断面方向から見た電極の構成を図示しており、図62Aから図63Bは、タイヤの側面方向から見た電極の構成を図示している。
図60Aは、一対の駆動電極と検知電極によってタイヤの検査を行う例を示している。タイヤ5401の内側全体には駆動電極5402が設けられており、タイヤ5401の外側には小型の検知電極5403が設けられている。(駆動電極5402と検知電極5403の関係は一例であり、逆でもよい。図60Aから図63Bの説明において同様。)なお、タイヤ5401の内側全体に、図のように駆動電極5402を設けるためには、電極を分割してタイヤ5401の内部に入れた上で、それら複数の電極を電気的に接続する必要があるが、これは図示を省略している。(以下同様。)
外側の電極は、図の点線矢印のようにタイヤ5401の外部を移動可能となっている。必要があればさらに、タイヤ5401の溝部分に入り込むことができるようになっていてもよい。外側の電極がタイヤ5401の外部を点線矢印のように一周すると、タイヤ5401を必要量回転させ、同じように検査を繰り返す。なお、タイヤ5401の回転は、一例として後述の図62Aや図62Bのようにして実現することができる。図60Aは、一対の駆動電極と検知電極だけで済むという利点があるが、外側の電極をタイヤ5401に沿って移動させる手段やタイヤ5401を回転させる手段が必要となり、また測定時間が長くかかる可能性が高い。
図60Aは、タイヤ5401の内側の電極を固定する場合を例示しているが、タイヤ5401の外側の電極と内側の電極が対をなして、両方の電極を移動可能にすることもできる。(図不示。)
図60Bは、一つの駆動電極と複数の検知電極によってタイヤの検査を行う例を示している。タイヤ5401の内側全体には駆動電極5402が設けられており、タイヤ5401の外側には適宜分割された複数の検知電極5403が設けられている。複数の検知電極5403の各々に、信号検知手段と測定手段を設けると、測定時間は短くできるがコストが上昇する。前述の第14の実施の形態やそれらの組み合わせを用いることによって、測定時間とコストを選択できるので、用途に応じて適宜選択すればよい。
図61Aは、図60Bとは逆に、タイヤ5401の外側全体に検知電極5403を設け、タイヤ5401の内側には適宜分割された複数の駆動電極5402を設けている。タイヤ5401の外側全体に、図のように検知電極5403を設ける場合は、例えば、接地面と両側面に電極を3分割してタイヤ外部に設けた上で、それら複数の電極を電気的に接続する必要が生じるが、これは図示を省略している。(以下同様。)複数の電極や、測定時間とコストの選択については、図60Bと同様なので、説明を省略する。
図61Bは、図60Bのタイヤの内側の電極を分割した例を示している。測定時間とコストの最適化のために、このようにタイヤ5401の内側の電極を適宜分割することも可能である。また、図61Aのようなタイヤ5401の外側の電極を適宜分割することも可能である。
図62Aと図62Bは、タイヤを回転させることによってタイヤの検査を行う例を示している。図62Aはタイヤ5401の内側に駆動電極5402を、外側に検知電極5403を設ける例を示しており、図60A、図60Bの例や、図61Bの例に適用することができる。図62Bは逆にタイヤ5401の外側に駆動電極5402を、内側に検知電極5403を設ける例を示しており、図61Aに適用することができる。検知電極5403の周囲のガード電極5404は、図57Bと同じように、駆動電極5402から検知電極5403への電気力線を平行にするために設ける例を示しており、必要時に設けることができる任意要素である。
タイヤ5401を回転・停止させながら測定を行うと時間がかかりすぎる場合は、図63Aや図63Bに例示するように、電極をタイヤ5401の円周方向に適宜分割することによって測定の並列化・高速化を図ることも可能である。図63Aや図63Bはタイヤ5401を回転させないで済むように電極を分割した例を示している。タイヤ5401を回転させない場合は、電極をタイヤ5401に接触させて測定を行うことができる。
図に示す電極よりも小さい電極にして、タイヤ5401を少しだけ((360°÷分割数の角度)以内)回転させることによって、より詳細な検査と測定時間低減を両立させようとすることも可能である。
以上説明したように、本開示の最も好ましい実施の形態や具体的な実施例等について説明したが、本発明は、上記の記載に限定されるものではなく、請求の範囲に記載され、又は明細書に開示された本開示の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。