JPWO2019216025A1 - 信号処理装置 - Google Patents
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Abstract
Description
現状、セキュリティ(多くの場合数理暗号に依る)は、レイヤ2以上で実装されており、物理層ではセキュリティ対策が施されていない。しかしながら、物理層でも盗聴の危険性がある。
例えば、有線通信の代表である光ファイバ通信では、光ファイバに分岐を導入し、信号パワーの一部を取り出すことで大量の情報を一度に盗み出すことが原理的に可能である。そこで、本出願人は、物理層における暗号化技術として、例えば特許文献1に挙げる所定のプロトコルの開発を行っている。
第1範囲におけるM1個(M1は任意の整数値)のパターンのうち何れかに信号を変調する第1変調素子と、
第2範囲乃至第k範囲(kは2以上の整数値)の夫々における、M2乃至Mk個(M2乃至MkはM1を含め相互に独立した任意の整数値)の夫々のパターンのうち何れに信号を夫々変調する(k−1)個の第2変調素子と、
前記第1変調素子の第1範囲、及び前記(k−1)個の第2変調素子の夫々の前記第2範囲乃至前記第k範囲を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、(k−1)個の前記第2変調素子の夫々の前記第2範囲乃至前記第k範囲を、前記第1変調素子の前記第1範囲と比較して狭くなるように制御する。
図1の例の送受信システムは、光送信装置1と、光受信装置2と、それらを接続する光通信ケーブル3とを含むように構成されている。
暗号鍵提供部12は、暗号化部13における暗号化に用いる暗号鍵を、暗号化部13に提供する。なお、暗号鍵は、光送信装置1と光受信装置2とで、暗号化及び復号で用いることが可能な鍵であれば足り、その提供元(生成場所や保存場所)や提供方法、及び暗号化・復号方式は特に限定されない。
暗号化部13は、送信データ提供部11から提供された送信データを、暗号鍵提供部12から提供された暗号鍵を用いて暗号化して、後述の搬送波発生部14により発生された搬送波(光信号)に重畳して、暗号信号送信部15に提供する。なお、暗号化部13から出力される光信号、即ち、暗号化された送信データが搬送波に重畳されたものを、以下、「暗号信号」と呼ぶ。
搬送波発生部14は、光信号を搬送波として発生させ、暗号化部13に提供する。
暗号信号送信部15は、暗号化部13から提供された暗号信号を、必要に応じて増幅等したうえで、光通信ケーブル3を介して光受信装置2に送信する。
光受信装置2は、受信した暗号信号を復号することで、平文のデータ(送信データ)を復元させる。このため、光受信装置2は、暗号信号受信部21と、暗号鍵提供部22と、復号部23とを含むように構成されている。
暗号鍵提供部22は、暗号データを復号する際に用いる暗号鍵を、復号部23に提供する。
復号部23は、暗号信号受信部21から提供された暗号データを、暗号鍵提供部22から提供された暗号鍵を用いて復号することで、平文のデータ(送信データ)を復元させる。
光ファイバ通信では、第三者が、光ファイバに分岐を導入し、信号パワーの一部を取り出すことで、大量の情報(ここでは暗号信号)を一度に盗み出すことが原理的に可能である。
このため、暗号信号がたとえ盗み出されたとしても、その暗号信号の意味内容、即ち平文(送信データ)の内容を第三者に認識させないようにする手法が必要である。
本出願人は、このような手法として、Y−00光通信量子暗号を用いた手法を開発している。
Y−00光通信量子暗号において、送信データ(平文)は、「0」又は「1」のビットデータの1以上の集合体で表される。この送信データを構成する各ビットデータは、所定のアルゴリズムにより、N個(Nは2以上の整数値)の値のうち所定値に変調される。そこで、以下、この数値Nを「変調数N」と呼ぶ。
Y−00光通信量子暗号では、暗号側と復号側で暗号鍵により、光信号(搬送波)の位相と振幅のうち少なくとも一方が変調数Nの値のうち何れかに変調されることによって、送信データ(平文)に対する暗号化が行われる。ここで、変調数Nを極めて多値とすることで、「量子雑音の効果で暗号文を正しく取得できないこと」という特徴が実現される。
Y−00光通信量子暗号で採用される「所定のプロトコル」については、例えば特許5170586号公報を参照するとよい。そこで、ここでは簡単に、Y−00光通信量子暗号の原理の概要について、位相変調を例として図2及び図3を参照しつつ説明する。
図2に示すA変調乃至C変調には、縦軸と横軸の交点を原点とした、光信号の位相と振幅(強度)を表すIQ平面が描画されている。IQ平面上の一点を決めると、光信号の位相と振幅が一意に決まる。位相は、IQ平面の原点を始点とし、その光信号を表す点を終点とする線分と、位相0を表す線分との成す角度となる。一方、振幅は、その信光号を表す点と、IQ平面の原点との間の距離となる。
例えば、平文(送信データ)がそのまま光信号(搬送波)に重畳されて送信される場合、平文を構成する各ビットデータ(1又は0)の夫々に対して、図2に示すA変調に示す2値変調が行われるものとする。
この場合、図2に示すA変調において、ビットデータが「0」の場合の位相変調後の光信号を示す点(以下、「シンボル点」と呼ぶ)の配置は、横軸上右側の0(0)とした点の配置、即ち位相が0の配置となる。一方、ビットデータが1の場合のシンボル点の配置は、横軸上左側のπ(1)とした点の配置、即ち位相がπの配置となる。
図2に示すB変調の例の場合、平文を構成する各ビットデータの夫々について、暗号鍵を用いて8値のうちランダムな何れかの値が生成される。そして、図2に示すA変調に示す通常の2値変調のシンボル点(0に対応する位相0の点、又は1に対応する位相πの点)の位相が、8値のうちランダムに生成された値に従ってIQ平面においてビット毎に回転されることで、位相変調が行われる。
ビットデータの取り得る値は「0」又は「1」の2値であるので、結果として、図2に示すB変調の例の位相変調が行われると、シンボル点の配置は、(π/8)ずつ位相が異なる16個(変調数N=16)の配置となる。
そこで、実際には、図2に示すC変調に示すように、変調数Nとして極めて多値、例えば4096が採用され、Y−00光通信量子暗号の安全性が高められている。
図3は、図2に示すC変調の位相変調におけるN=4096のシンボル点の配置のうち、隣接する3つのシンボル点の配置が視認できるように、図2に示すC変調を拡大した図である。
図3に示すように、各シンボル点の夫々において、範囲SNだけショット雑音(量子雑音)による揺らぎがある。
ショット雑音は、光が量子性をもつことに起因する雑音であり、真にランダムであり、物理法則として取り除けないという特徴を有する。
変調数Nとして4096等の極めて多値の位相変調がなされると、図3に示すように、隣接するシンボル点がショット雑音に隠れて判別できない状況になる。
具体的には、隣接する2つのシンボル点の距離Dが、ショット雑音の範囲SNよりも十分小さいとき(そのように小さくなるように、変調数Nとして極めて多値の位相変調がなされたとき)、受信側で測定された位相情報から、元のシンボル点の位置は断定困難となる。つまり、例えばある時刻の光信号の位相が、図3に示す3つのシンボル点のうち中央のシンボル点の位置に対応していたものとする。この場合、元々中央の位置のシンボル点の光信号として送信されたものであるのか、それとも、実際には隣の位置のシンボル点の光信号として送信されたものがショット雑音の影響で中央の位置として測定されたのかは、区別ができない。
これにより、2つのシンボル点の距離Dを、ショットノイズの範囲SNより十分に小さくすることが可能となり、「量子雑音の効果で暗号文を正しく取得できない」という特徴が可能になる。また、量子雑音は安全性を担保することになるが、実際的には、量子雑音に加えて熱雑音等の古典雑音も含めたすべての「雑音」の効果によって盗聴者が正しい暗号文を取得することを防止することになる。
換言すると、Y−00光通信量子暗号の安全性は、変調数Nをどれだけ多値にできるのかにかかっていると言える。
まず、本発明の理解を容易なものとすべく、基本的な暗号化部13の2つの具体例について、図4と図5を参照して個別に説明する。なお、基本的な暗号化部13の説明においては、説明の便宜上、変調数N=4096の位相変調が行われるものとする。
図4の例の暗号発生部31は、送信データ提供部11から提供される送信データを構成する各ビットデータ(0又は1)の夫々を、暗号鍵提供部12から提供される暗号鍵を用いて、変調数N=4096個の多値のうち任意の値を有するデータ(以下、「多値のデータ」と呼ぶ)に変換していくことで、当該送信データを暗号化する。
即ち、暗号発生部31は、送信データを構成する各ビットデータ毎に、多値のデータを生成して、デジタル信号として信号路L1を介して多値変調部32に供給する。
図5の例の基本的な暗号化部13は、暗号発生部31と、多値変調部32とを備える。
ここで、マッハ・ツェンダ変調器MZ1は、マッハ・ツェンダ干渉計の原理を利用した変調器である。信号路L3は、信号路L21と信号路L22とに分岐される。信号路L21には位相変調素子52が配置されている。これにより、位相変調素子52を介して信号路L21を通過した光信号と、信号路L22を通過した光信号とは相互に干渉して、信号路L23から出力される。
なお、図5の構成のマッハ・ツェンダ変調器MZ1は例示に過ぎない。即ち、分岐した信号路のうち一方、又はその両方において位相変調素子を介することで、マッハ・ツェンダ干渉計がマッハ・ツェンダ変調器MZ1として利用可能となる。
位相変調素子52から出力された光信号は、搬送波発生部14において発生されて信号路L22で伝達される光信号(搬送波)と干渉して、図2に示すA変調に示す通常の2値位相変調信号となる。この2値変調の変調数N1=2である。2値変調の信号は、信号路L23を介して位相変調素子54に供給される。
ここで、位相変調素子54に供給される光信号は、上述のようにマッハ・ツェンダ変調器MZ1において2値変調がなされている。つまり、マッハ・ツェンダ変調器MZ1におけるデータ変調の変調数N1は2である。また、位相変調素子54における変調数N2は、2048である。従って、変調数N1と変調数N2の積、即ちN1×N2=2×2048=4096が、総合的な変調数Nとなる。
換言すると、図4の例では、送信データ提供部11から提供される送信データを構成する各ビットデータ(0又は1)の夫々を、暗号鍵提供部12から提供される暗号鍵を用いて、変調数N=4096個の多値のうち任意の値を有するデータ、即ち、多値のデータに変換する処理が、電気のデジタル領域で行われているのに対して、図5の例では、光の領域で行われている。
より具体的には、DACでは、出力電圧分解能と変調帯域(速度)に強いトレードオフがあり、現状手に入るものでは10Gbit/sの変調において1024値程度となっている。即ち、DACとして、本願の出願時点で現在実用化されているものを採用した場合、上述の図4及び図5の基本的な暗号化部13を用いると、10Gbit/sの変調において変調数Nとして4096を実現することは困難である。逆にいえば、本願の出願時点で現在実用化されているものを採用した場合、変調数Nとして4096を達成するためには、転送速度を10Gbit/sから下げる必要がある。
更に言えば、より高い安全性を担保すべく、変調数Nとして10000程度が要求されている。上述の図4及び図5の基本的な暗号化部13では、到底このような要望に応えることはできない。
即ち、k段階(kは2以上の整数値)の光の変調(位相変調と振幅変調の少なくとも一方)を行うという手法、具体的には例えば、変調数N=M1×M2×・・・Mkに分解し、変調数M1の第1種の光の変調を1回行い、その後、変調数M2乃至Mkの夫々の(k−1)回の第2種の光の変調を行うという手法を、本発明者らは考案した。なお、以下、第1種の変調を「粗変調」と呼び、第2種の変調を「微変調」と呼ぶ。
そこで、以下、上述の図4又は図5の基本的な暗号化部13に対して、この新たな手法を適用したものについて、図6以降の図面を参照して幾つかの具体例を説明していく。
図6の例の暗号発生部31は、図4の例の暗号発生部31と基本的に同様の機能を有している。
ただし、図6の例の暗号発生部31は、出力の仕方が、図4の例の暗号発生部31と比較して次のように異なる。
即ち、図4の例の暗号発生部31からは、変調数Nに対応して、N個の多値のデータが信号路L1に出力された。
これに対して、図6の例の暗号発生部31からは、粗変調用の変調数M1に対応して、M1個の多値のデータ(以下、「粗用多値のデータ」と呼ぶ)が信号路L31に出力されると共に、微変調用の変調数M2に対応して、M2個の多値のデータ(以下、「微用多値のデータ」と呼ぶ)が信号路L33に出力される。
即ち、変調数M1の粗変調が既に行われた光信号が、更に微位相変調素子62Bにより変調数M2の微変調が行われ、結果として、変調数N=M1×M2の変調が行われた光信号として、信号路L4を介して暗号信号送信部15に供給される。
なお、上述の図6の例では、変調数N=4096となるように、粗変調数M1と微変調数M2とが決定される。これに対して、図7においては説明の便宜上、変調数N=16として、粗変調数M1=4、変調数M2=4が夫々行われるものとする。
搬送波発生部14において発生された搬送波(光信号)は変調されておらず、基準となる位相角は例えばゼロであるものとする。
粗位相変調素子62Aは、光信号の位相を、ゼロから、粗変調数M1=4個のシンボル点(図7に示すA変調の実線の白丸)のうち何れか1つに対応する位相に回転させる。なお、粗変調数M1=4個のシンボル点(図7に示すA変調の実線の白丸)のうち何れの点に回転されるのかについては、印加された電圧に基づくものである。
図7に示すA変調の粗位相変調では、位相角0(図7に示すA変調では横軸)を基準とすると、M1=4値の位相変調では、(−3π/4乃至3π/4)の範囲VP1で位相が回転される。
図7に示すB変調の微位相変調では、変調対象の光信号は、粗位相変調としてM1=4値の位相変調が既になされている。このため、基準となる位相角は、図7に示すA変調に示す各シンボル点の配置位置に夫々対応する4つの位相、即ち、―3π/4、−π/4、π/4、及び3π/4のうちの何れかとなる。この基準となる位相角に対応するシンボルは、図7に示すB変調においては、実線の白丸として描画されている。
微位相変調素子62Bは、光信号の位相を、基準となる位相角から、微変調数M2=4個のシンボル点(図7に示すB変調の点線の白丸)のうちの何れかに1つに対応する位相に回転させる。
図7に示すB変調の微位相変調では、基準となる位相角は4つ(図7に示すB変調に示す実線の白丸)あるため、M2=4値の微位相変調では、2つの基準となる位相角の間の範囲VP2、即ち、図7に示すA変調の粗位相変調の1/4の範囲VP2で位相が回転される。
即ち、粗位相変調素子62Aと微位相変調素子62Bとが同一特性と仮定すると、微DAC61Bの電圧の出力は、粗DAC61Aの電圧の出力の1/4に設定する必要がある。
このような粗位相変調の後に微位相変調が行われることで、結果として、N=16(=M1×M2)の位相変調が可能となる。
例えば、微DAC61Bの出力電圧が粗DAC61Aと同一であるとして、微位相変調素子62Bの効率を、粗位相変調素子62Aの(1/4)にする(例えば素子長を1/4にする)ことでも、上述の図7に示すA変調で示す粗位相変調と図7に示すB変調で示す微位相変調とが可能になる。
即ち、微位相変調素子62Bの範囲VP2で特定される位相回転量(ピーク・ピーク)を、粗位相変調素子62Aの範囲VP1で特定される位相回転量(ピーク・ピーク)の(1/4)にする点が重要である。
即ち、位相調整素子で回転させる位相のうち、最大の位相と最小の位相との差の絶対値が、位相回転量(ピーク・ピーク)である。
例えば、上述の図7に示すA変調で示す粗位相変調における位相回転量(ピーク・ピーク)は、範囲VP1で示されるように(3π/2)となる。
なお、この定義による位相回転量(ピーク・ピーク)に代わるものとして、最大の位相と最小の位相で特定する手法を採用してもよいが、この場合シンボル点の配置によって値が変化してしまう。従って、上述の定義による位相回転量(ピーク・ピーク)を採用した方が好適である。
即ち、粗変調数M1×微変調数M2=変調数Nの位相変調が可能になる。
この場合、粗位相変調素子62Aの位相回転量(ピーク・ピーク)Iaは、次の式(1)で表される。
また、微位相変調素子62Bの位相回転量(ピーク・ピーク)Ibは、粗位相変調素子62Aの位相回転量(ピーク・ピーク)Iaとの比として、即ち、Ib/Iaとして、次の式(2)で表されるように設定される。
ここで、Y−00光通信量子暗号の安全性を高めるためには、粗変調数M1と微変調数M2とをできるだけ大きく取ると好適である。例えば、粗変調数M1=64、微変調数M2=1024とするとよい。
図8は、図4の基本的な暗号化部に対して新たな手法を適用した暗号化部、即ち本発明が適用される暗号化部の第2の例の詳細な構成例を示すブロック図である。
図8の例の暗号発生部31は、図6の例の暗号発生部31と基本的に同様の機能を有している。
ただし、図8の例の暗号発生部31は、出力の仕方が、図6の例の暗号発生部31と比較して次のように異なる。
即ち、図7の例の暗号発生部31からは、粗用多値のデータが出力されると共に、1種類の微用多値のデータが出力された。これに対して、図8の例の暗号発生部31からは、粗用多値のデータが出力されると共に、(k−1)種類の微用多値のデータの夫々が出力される。
これにより、図8の例の多値変調部32からは、変調数M1の粗変調が行われた後、変調数M2乃至Mkの夫々の(k−1)回の微変調が行われた光信号が出力されて、暗号信号送信部15に供給される。
つまり、図8の例ではk=3段階以上として、変調数M1の粗変調と、変調数M2乃至Mkの夫々の(k−1)回の微変調とが行われて、総合的な変調数N=M1×M2×・・×Mkの変調が行われる。
一方、n番目(ここでのnは、2乃至kのうち何れかの値)の微位相変調素子62B−nの位相回転量(ピーク・ピーク)Inは、粗位相変調素子62Aの位相回転量(ピーク・ピーク)との比として、即ち、In/Iaとして、次の式(3)で表されるように設定される。ただし、Πは、総乗の記号である。
送信データ提供部11から提供される送信データは、暗号発生部31を介さず多値変調部32へと直接供給される。
図9の例の暗号発生部31は、暗号鍵提供部12により提供される暗号鍵を用いて、粗変調用及び微変調用の夫々の多値を生成し、後述の粗DAC72Aと微DAC72Bの夫々に提供する。
図9の例における、粗DAC72Aと粗位相変調素子73Aの組と、微DAC72Bと微位相変調素子73Bの組の夫々は、図6の例における、粗DAC61Aと粗位相変調素子62Aの組と、微DAC61Bと微位相変調素子62Bの組の夫々と同様のものである。
図10の例の暗号発生部31は、図6の例の暗号発生部31と基本的に同様の機能と構成を有している。
一方、図10の例の多値変調部32は、図6の例の多値変調部32と比較して、粗変調数M1の粗変調に係る構成が異なっている。即ち、図6の例の多値変調部32では、粗DAC61Aと粗位相変調素子62Aとが設けられていた。これに対して、図10の例の多値変調部32では、2つの粗DAC80Aa,80Abと、2つの粗位相変調素子81Aa,81Abを含むIQ変調器IQ1が設けられている。
換言すると、粗変調に係る構成としてIQ変調器IQ1を採用した場合における、微変調に係る図10の例の構成は例示に過ぎず、図示はしないが例えば図8の例の構成、つまり、k=3以上として(k−1)回の微変調が行われる構成と同様の構成を採用することもできる。
換言すると、上述の例では、このような処理の例示として、多値の位相(多数個のパターンの一例)のうち、何れかの位相に回転させるという方式が採用されていた。
更に、図11に示すような光信号の多値の振幅(強度)変調、即ち、多値の強度(多数個のパターンの別の例)のうち何れかの強度に変調するという方式を採用してもよい。
図11に示すA変調乃至C変調には、縦軸と横軸の交点を原点とした、光信号の位相と振幅(強度)を表すIQ平面が描画されている。
例えば、平文(送信データ)がそのまま光信号(搬送波)に重畳されて送信される場合、平文を構成する各ビットデータ(1又は0)の夫々に対して、図11に示すA変調に示す2値変調が採用される。
具体的には例えば、図11に示すA変調において、ビットデータが「0」の場合の振幅変調後のシンボル点の配置は、縦軸上の原点0とした点の配置、即ち強度(振幅)が最小(距離0)の配置となる。一方、ビットデータが「1」の場合のシンボル点の配置は、縦軸上の1とした点の配置、即ち強度が最大(距離1)の配置となる。
図11に示すB変調の例の場合、平文を構成する各ビットデータ(1又は0)の夫々に対して、暗号鍵を用いて4値のうちランダムな値が生成される。そして、図11に示すA変調に示す通常の2値変調のシンボル点(0に対応する強度最小の点、又は1に対応する強度最大の点)の距離が、これら4値の中からランダムに生成された値に従ってビット毎に、距離が0,1/3,2/3,1(4値)のうちの何れかに伸縮されることで、振幅変調が行われる。
そこで、実際には、図11に示すC変調に示すように、変調数Nとして極めて多値、例えば4096が採用され、Y−00光通信量子暗号の安全性が高められている。
即ち、図11に示すC変調は、Y−00光通信量子暗号を採用した場合における、変調数N=4096の振幅変調の原理を説明する図である。
図12の例の暗号発生部31は、図6の例の暗号発生部31と基本的に同様の機能を有している。
図12の例の多値変調部32は、DAC90と、位相変調素子91を有するマッハ・ツェンダ変調器MZ3とを備えている。
上述の新たな手法、即ち、変調数N=M1×M2×・・・Mkとして、変調数M1の粗変調を1回行い、その後、変調数M2乃至Mkの夫々の(k−1)回の微変調を行うという手法を、図12の例に適用することで、図13以降に示す暗号化部13が具現化される。即ち、図13以降に示す暗号化部13は、本発明が適用される暗号化部13の上述の例とは異なる各種例である。
ここで、粗位相変調素子101A及び微位相変調素子101Bは、マッハ・ツェンダ変調器MZ3における2つの経路のうち1つにおいて、直列的に接続される。
即ち、振幅変調に係る光学系(例えば、マッハ・ツェンダ干渉計構成とそれに組み込まれた位相変調素子)において変調された振幅のうち、最大の振幅と最小の振幅の差の絶対値が、変調振幅(ピーク・ピーク)である。ただし、振幅の2乗に相当する強度を観測する自乗検波方式の受信を採用した場合は、最大の強度と最小の強度の差の絶対値が、変調振幅(ピーク・ピーク)となる。
粗変調数M1の粗変調に係る変調振幅(ピーク・ピーク)Iaは、搬送波の出力に応じた量となるため制限はない。
微変調数M2の微変調に係る変調振幅(ピーク・ピーク)Ibは、粗変調に係る変調振幅(ピーク・ピーク)Iaとの比として、即ちIb/Iaとして、次の式(4)で表されるようにするのが好適である。
主な構成要素は、図14の例と図13の例とは同様であるが、以下の点が異なる。
即ち、粗位相変調素子101A及び微位相変調素子101Bは、図13の例では、マッハ・ツェンダ変調器MZ3における2つの経路のうち1つにおいて、直列的に接続されていたのに対して、図14の例では、マッハ・ツェンダ変調器MZ3における2つの経路の夫々に配置されることで、並列的に接続される。図14の例では、図13の例における微位相変調素子101Bの配置を変更したもの、即ち、粗位相変調素子101Aに対し並列的に接続された微位相変調素子を、微位相変調素子101Bpとして示した。
マッハ・ツェンダ変調器を用いた振幅変調において、直列的に配置された位相変調素子を、並列的に配置する場合、並列的に配置した位相変調素子の片方の極性を反転(プラスマイナスの電圧が反転される)させることで、直列的な配置と同様の効果を得ることができる。このため、図14の例では、図13の例とは異なり、微DAC100Bpにおける駆動信号の極性は、図13の例における微DAC100Bの駆動信号の極性に対して反転されることになる。
換言すると、上述の例では、多値の位相と多値の振幅(強度)のうち何れか一方のみが用いられて予め用意された多数個のパターンのうち、何れかのパターンに変調(何れかの値の位相に回転、若しくは振幅を変化)するという方式が採用されていた。
しかしながら、多数個のパターンは、多値の位相又は多値の振幅の何れかだけで用意する必要は特にない。位相の1以上の値と振幅の1以上の値とを組み合わせることで、多数個のパターンを用意してもよい。
つまり、本発明は、光信号に対する変調として、位相変調と振幅(強度)変調とを組み合わせた多値の変調に対しても採用することができる。
つまり、図15の例の多値変調部32は、粗DAC120Aa、粗DAC120Ab、微DAC120Ba、及び微DAC120Bbを含むように構成される。そして、図15の例の多値変調部32は、粗位相変調素子121Aa、粗位相変調素子121Ab、微位相変調素子121Ba、及び微位相変調素子121Bbを有するIQ変調器IQ2を含むように構成される。
粗位相変調素子121Aa及び微位相変調素子121Baは、第1のマッハ・ツェンダ変調器における2つの経路のうち1つにおいて、直列的に接続される。
粗位相変調素子121Ab及び微位相変調素子121Bbは、第2のマッハ・ツェンダ変調器における2つの経路のうち1つにおいて、直列的に接続される。
また、粗位相変調素子121Ab及び微位相変調素子121Bbpの夫々は、第2のマッハ・ツェンダ変調器における2つの経路の夫々に配置されることで、並列的に接続される。
図16の例では、図15における微位相変調素子121Baの配置を変更したもの、即ち、粗位相変調素子121Aaに対し並列的に接続された微位相変調素子を、微位相変調素子121Bapとして示した。同様に、図15における微位相変調素子121Bbの配置を変更したもの、即ち、粗位相変調素子121Abに対し並列的に接続された微位相変調素子を、微位相変調素子121Bbpとして示した。
例えば、光通信ケーブル3と光送信装置1又は光受信装置2の間に、光増幅器や光スイッチ、波長スイッチ等の光通信に係る機器が挿入されてもよい。また、光の伝送路は、光ファイバを用いたものには限らず、所謂光無線等の空間を伝搬するような通信経路を含む。即ち、光通信ケーブル3と光送信装置1又は光受信装置2の間にいかなる通信チャネルを用いてもよい。
更に言えば、光信号暗号化装置は、送信データを既に搬送波に載せた光信号を入力し、暗号化に係る多値の変調を行うものであってもよい。
即ち、本発明が適用される信号処理装置は、
第1範囲(例えば図7の範囲VP1)におけるM1個(M1は任意の整数値)のパターン(例えば各シンボルの配置位置というパターン)のうち何れかに信号を変調する第1変調素子(例えば図8の粗位相変調素子62A)と、
第2範囲(例えば図7の範囲VP2)乃至第k範囲(kは1以上の整数値)の夫々における、M2乃至Mk個(M2乃至MkはM1を含め相互に独立した任意の整数値)の夫々のパターンのうち何れかに信号を夫々変調する(k−1)個の第2変調素子(例えば図8の微位相変調素子62B−1乃至62B−(k−1))と、
前記第1変調素子の第1範囲、及び前記(k−1)個の第2変調素子の夫々の前記第2範囲乃至前記第k範囲を制御する制御部(例えば図8の粗DAC61A、DAC61B−1乃至61B−(k−1))と、
を備え、
前記制御部は、(k−1)個の前記第2変調素子の夫々の前記第2範囲乃至前記第k範囲を、前記第1変調素子の前記第1範囲と比較して狭くなるように制御する、
信号処理装置である。
このような信号処理装置を採用することで、変調分解能を向上することができる。
Claims (4)
- 第1範囲におけるM1個(M1は任意の整数値)のパターンのうち何れかに信号を変調する第1変調素子と、
第2範囲乃至第k範囲(kは2以上の整数値)の夫々における、M2乃至Mk個(M2乃至MkはM1を含め相互に独立した任意の整数値)の夫々のパターンのうち何れかに信号を夫々変調する(k−1)個の第2変調素子と、
前記第1変調素子の第1範囲、及び前記(k−1)個の第2変調素子の夫々の前記第2範囲乃至前記第k範囲を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、(k−1)個の前記第2変調素子の夫々の前記第2範囲乃至前記第k範囲を、前記第1変調素子の前記第1範囲と比較して狭くなるように制御する、
信号処理装置。 - 前記制御部は、前記信号を暗号信号とするための制御を行う、
請求項1乃至3のいずれかに記載の信号処理装置。
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