JP5170586B2 - Yuen暗号用光送信装置及び受信装置、Yuen暗号光送信方法及び受信方法、並びに暗号通信システム - Google Patents

Yuen暗号用光送信装置及び受信装置、Yuen暗号光送信方法及び受信方法、並びに暗号通信システム Download PDF

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Description

本発明は、Yuen暗号用光送信装置及び受信装置、Yuen暗号光送信方法及び受信方法、並びに暗号通信システムに関する。
現代の情報通信ネットワークでは、第三者による通信文の盗聴を防ぐために、伝送する情報を数学的方法で攪乱する数理暗号が用いられている。近年、通信手段における信号系の物理現象を利用し、より高度な安全性の実現を目的とする物理暗号の開発が始められた。
物理暗号の中でも、光信号を受信した際に不可避に発生する量子雑音によって暗号としての高度な安全性を実現する暗号は、Yuen−2000プロトコル(Y−00と呼称)に基づくYuen暗号あるいは光通信量子暗号と呼ばれている。この暗号では、情報ビットを伝送するための2つの信号のセットを基底と呼び、基底を多数(M個)用意し、初期鍵を擬似乱数生成器によって伸長した擬似乱数列を用いて、不規則にその基底を選び、選ばれた基底に対応する光信号によって情報ビット(暗号学では平文と呼ぶ)を送信する。受信者は送信側と同期された送信者と同じ秘密鍵と擬似乱数生成器を用いて、1と0の2値の信号を識別する。
Yuen暗号においては、鍵を知らない盗聴者はどの基底が用いられているか解らないので、2M個の信号を識別する必要がある。このとき、正規受信者の2値の識別の誤り特性はほぼゼロとなり、盗聴者の2M個の識別の誤り特性が極めて劣化するように信号と雑音効果を設計すると、盗聴者に対して高度な秘匿効果が得られる。このようにして秘匿効果を得ることを、通信方式と雑音効果に基づく安全性利得の生成原理と呼ぶ。
Yuen暗号を実装する通信方式には、非特許文献1に開示されている光位相変調方式と、非特許文献2に開示されている光強度変調方式とが知られている。これらの方式では、基底に対応する光信号は1つの関係式にしたがって配置される。光位相変調方式では位相平面上で振幅Aによる円周を信号数2Mで等間隔に分割した位置に配置される。光強度変調方式では、最大強度と最小強度との中間点を基準として2M等分あるいは最大から最小にかけて線形に間隔を小さくするなどの配置が用いられる。さらに用途によって種々の配置が提案されている。
前述の信号配置は、量子雑音の効果が均等に出現するようにするための工夫である。盗聴者に対して秘密鍵に対する安全性(Q)は次式によって簡易的に評価される(非特許文献2)。
Figure 0005170586
式中、Γは量子雑音に隠れる信号の数、Kは秘密鍵長、Mは基底数である。Γ=Mのとき秘密鍵の可能性は観測数を増やしても全く減少しないので情報理論的安全という。位相変調方式では量子雑音は真空雑音と等価となるため極めて小さく、Γを大きくする事が難しいが、強度変調方式での量子雑音は量子ショット雑音として出現するため量子雑音の量が大きくΓを大きくすることが簡単にできるという特徴を有する。
図1は、非特許文献2に記載の、従来技術に係る光強度変調を用いたYuen暗号の構成を表す図である。以下、図1を用いて、光強度変調方式によるYuen暗号装置の基本原理を説明する。
図1において、従来の暗号通信装置は、光送信装置10と光受信装置20とが、光ファイバ等の光通信路30で接続された構成である。光送信装置10は、搬送波発生部11と、M−ary強度変調部12と、擬似乱数発生部13と、基底選択制御部14と、送信データ発生部15とを備える。光受信装置20はフォトダイオード21と、強度判定部22と、信号判定部23、擬似乱数発生部24と、基底選択制御部25とを備える。光送信装置10の擬似乱数発生部13と光受信装置20の擬似乱数発生部24とは、構成及び機能が実質的に同一である。また、光送信装置10の基底選択制御部14と光受信装置20の基底選択制御部25とは、構成・機能が実質的に同一である。
搬送波発生部11は、例えばレーザ・ダイオードからなり、所定の光搬送波を出力する。送信データ発生部15は、伝送すべき情報に基づいて情報「1」及び「0」で構成される送信データを発生する。擬似乱数発生部13は、初期鍵Kに基づいて2進数擬似乱数列、すなわち2進数Running鍵列を生成する。基底選択制御部14は、この2進数Running鍵列を、logMビット毎にブロック分割し、その各ブロックに応じた10進数Running鍵に変換する。そして、基底選択制御部14は、Running鍵にしたがって基底群から1つの基底を選択し、基底情報としてM−ary強度変調部12に指示する。M−ary強度変調部12は、基底情報で指示されている基底に対応する光強度を用いて送信データで光搬送波を強度変調し、光通信路30を介して光受信装置20へ出力する。
フォトダイオード21は、光通信路30を介して光送信装置10から出力される強度変調光信号を受信する。擬似乱数発生部24は、初期鍵Kに基づいて2進数Running鍵列を生成する。基底選択制御部25は、この2進数Running鍵列を、logMビット毎にブロック分割し、その各ブロックに応じた10進数Running鍵に変換する。そして、基底選択制御部25は、Running鍵にしたがって基底群から1つの基底を選択肢、基底情報として信号判定部23に指示する。信号判定部23は、基底選択制御部25によって指示される基底情報に基づいて、受信信号をどのように判定するかを制御して、信号に含まれている情報「1」及び「0」を抽出し受信データとして出力する。具体的には、受信信号がしきい値より上あるいは下になるとき、1として判定する、あるいは0として判定する機能を有する。
上述の従来のYuen暗号通信装置において、基底選択制御部14及び25で用いられる基底群、すなわち各基底に対応する光信号の配置は、暗号の強さを決定する重要な要素である。
E.Corndorf, C.Liang, G.S.Kanter, P.Kumar, H.P.Yuen, "Quantum noise randomized data encryption for wavelength division multiplexed fiber optic", Physical Review A, vol−71, 062326, (2005年) O.Hirota, M.Sohma, M.Fuse, K.Kato, "Quantum stream cipher by Yuen−2000 protocol:design and experiment by intensity modulation scheme", Physical Review A, vol−72, 022335, (2005年)
ところで、図2は、光強度変調によるYuen暗号の暗号文単独攻撃に対する情報理論的安全性を持つ光強度信号の配置の例である。以下、図2を用いて、光信号配置方法を説明する。まず、強度変調のダイナミックレンジを、最大強度Smax〜最小強度Sminとして設定する。この最大強度Smaxと最小強度Sminとの中心強度を、[(Smax+Smin)/2]とする。各基底に対応する光信号は、高強度と低強度とで構成され、高強度は中心強度よりも高く、低強度は中心強度よりも低くなる規則で配置される。また、基底数Mは基底に対応する光信号群の中で、隣接する信号間(例えば、強度Sと強度Si+1との間)の距離(強度差)が、量子ショット雑音に埋没するに十分な数として決められる。例えば、図2で示すように、各信号強度を最大強度Smaxから最小強度Sminまで順番にS,S,・・・・,SM−1,S,SM+1,・・・・,S2Mとして、基底に対応する光信号のセットは{S,SM+1},{S,SM+2},・・・・のように規定する。なお、隣り合う基底間では、送信データの情報「1」を伝送する強度信号と、情報「0」を伝送する強度信号とが、反転するように配置設計されている。
上述した従来のYuen暗号通信装置においては、正規受信者は、信号間距離が大きい2値の信号識別を行うことになるので誤りがほとんど無い。しかし、初期鍵Kを知らない盗聴者は、信号間距離の小さい2M値の信号識別のための受信方法に制限されるため、その受信データには量子ショット雑音により誤りが発生する。よって、盗聴者は、暗号文自体の情報を得ることができない。
このような仕組みはランダム・ストリーム暗号の一種であるが、量子ショット雑音によってランダム化されるため、そのランダム性を計算によって確定値に戻すことは不可能である。したがって、これらの理由から、Yuen暗号は、従来の数学的な暗号システムに比べて高い安全性を持つ暗号を実現できると言える。
このように、Yuen暗号は、通信システム自体が量子性の弱い従来の光通信で構成される。鍵を知らない盗聴者に対しては、量子ショット雑音によって情報が得られない工夫がなされていることに基づく極めて高い安全性を提供する。
暗号技術において、暗号機構が情報理論的安全とは、無限の計算機を用いても解読できないことを意味する。従来の数理暗号では特殊な条件のもとで暗号文単独攻撃に対して情報理論的安全にできるが、既知平文攻撃に対しては原理的に情報理論的安全にはできない。
上記(図2)の信号配置を用いるYuen暗号は、暗号文単独攻撃に対して情報理論的安全性が保証され、既知平文攻撃に対しては部分的な安全性を持つことが証明されているが、十分とは言えない。Yuen暗号は物理暗号の特徴として、既知平文攻撃を実施する多数の方法の中で、正規受信者と同じ方式の受信機を用いた最も原理的な既知平文攻撃を実施するには少なくとも100億×100億×100億以上の回路要素が必要となる。この数値は将来にわたっても物理的に実現不可能である。このように天文学的な構成要素を持つ回路は実現不可能という条件の下では、その他の既知平文攻撃手法に対する完全な情報理論的安全性の実現可能性は否定されていない。
本発明の目的は、暗号文単独攻撃に対する情報理論的安全性を有するYuen暗号に対して天文学的な構成要素を持つ回路は実現不可能という条件下で、既知平文攻撃に対する情報理論的安全性を実現する送信と受信法の構成法を提供することにある。
本発明は、Yuen暗号において、伝送しようとする情報データ(暗号学では平文という)をブロックにしてパケット化し、そのパケットの集団の順序をランダムに送信し、既知平文攻撃に対する情報理論的安全性を持つYuen暗号の実現に関する。
本発明に係るYuen暗号光送信装置は、伝送する情報データ系列をブロックに分割し、そのブロックに番号を付加してパケット化し、そのパケットの順番をランダムにするための電気雑音発生器で構成される伝送情報データ系列ランダム化装置と、基底をランダム化するための擬似乱数発生部と、その出力系列を多数の基底に対応させる基底選択制御部と、選択された一つの基底と情報ビットに基づいた光強度信号を送信する強度光変調部とを備えるYuen暗号の基本構成要素を有する。
すなわち、本発明に係るYuen暗号光送信装置は、光強度変調方式によるY−00プロトコルを実装するYuen暗号光送信装置であって、光変調部への情報データ系列(入力情報)をブロックに分割し、そのブロックに番号を付加してパケット化し、そのパケットの順番を電気雑音発生器の出力系列によってランダムに並べ替え、一つの系列としてYuen暗号の光変調部への入力系列とする仕組みを有し、初期鍵から擬似乱数列を発生する擬似乱数発生部と、多数の基底から構成される基底群を保持し、擬似乱数列に従って当該基底群から1つの基底を選択する基底選択制御部と、選択された1つの基底に対応する2つの光強度を用いて、伝送データに基づいた光変調信号を生成する強度光変調部とを備え、基底群を構成する全ての基底において、各基底に対応する2つの光信号の強度は、最大強度と最小強度の中間点を挟んで上と下に値を持ち、中間点の上にある信号群の強度は、中間点から十分離れた光強度周辺に集中的に配置され、中間点の下にある信号群の強度は、中間点から十分離れた光強度付近に集中的に配置され、中間点の上にある信号群及び中間点の下にある信号群の強度が集中的に配置されるそれぞれの強度の範囲は、信号群の強度近傍のエネルギーに比例して出現する量子ショット雑音によって全て隠されるように設定されることを特徴とする。
また、本発明に係る光送信装置から出力される光信号を受信する光受信装置は、受信した光強度信号の最大受信強度と最小受信強度との中間点を識別しきい値として信号強度を判定して判定値を出力する強度判定部と、判定値に対して、光送信装置の初期鍵を用いて擬似乱数列を発生する擬似乱数発生部と、多数の基底から構成される基底群を保持し、擬似乱数列にしたがって当該基底群から1つの基底を選択する基底選択制御部と、基底選択制御部により選択された基底を用いて情報データの0と1を判定する信号判定部とで構成される基本的Yuen暗号受信装置とそれによって復号された系列を送信側で設定されたブロック長にブロック化し、そのブロックに付加された番号順に並べ替える順序再構成部で構成される受信データ系列再構築装置を備えることを特徴とする。
すなわち、本発明の送信部は、光強度変調方式によるY−00プロトコルを用いるYuen暗号光送信方法であって、伝送される情報データ系列をブロックに分割し、順序を電気雑音発生器の出力によってランダムにし、それらを入力とし、1と0のデータを伝送する各基底に対応する2つの光信号の強度は、最大強度と最小強度の中間点を挟んで上と下に値を持ち、中間点の上にある信号群の強度は、中間点から十分離れた光強度周辺に集中的に配置され、中間点の下にある信号群の強度は、中間点から十分離れた光強度付近に集中的に配置され、中間点の上にある信号群及び中間点の下にある信号群の強度が集中的に配置されるそれぞれの強度の範囲は、信号群の強度近傍のエネルギーに比例して出現する量子ショット雑音によって全て隠されるように設定されることを特徴とする。
また、本発明の受信部は、Yuen暗号光送信方法を用いて送信された光信号を受信するYuen暗号光受信装置であって、受信した光強度信号の最大受信強度と最小受信強度との中間点を識別しきい値として信号強度を判定して判定値を出力する強度判定部と、判定値に対して、光送信装置の初期鍵を用いて擬似乱数列を発生する擬似乱数発生部と、多数の基底から構成される基底群を保持し、擬似乱数列にしたがって当該基底群から1つの基底を選択する基底選択制御部と、基底選択制御部により選択された基底を用いて情報データの0と1を判定する信号判定部とによって復号された系列を送信側で設定されたブロック長にブロック化し、そのブロックに付加された番号順に並べ替える順序再構成部、を含む。
本発明によれば、従来のYuen暗号が暗号文単独攻撃に対して情報理論的安全性を有していれば、天文学的規模の構成要素を持つ攻撃装置が実現できないとする制約の下では、既知平文攻撃に対する情報理論的安全性を持つYuen暗号の実現を低コストで提供できる。
従来技術に係る、光強度変調を用いたYuen暗号の構成を表す図である。 光強度変調を用いたYuen暗号の暗号文単独攻撃に対する情報理論的安全性を持つ光強度信号の配置実施例を表す図である。 本発明の実施形態に係る、Yuen暗号を用いる暗号通信装置の構成を表す図である。 本発明の実施形態に係る、伝送情報データ系列ランダム化装置50の構成を表す図である。 本発明の実施形態に係る、受信データ系列再構築装置70の構成を表す図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る、Yuen暗号を用いる暗号通信装置の構成を表す図である。図3に示すように、本発明に係る光送信装置40と光受信装置60とを、光ファイバ等の光通信路80を介して接続し、本発明に係る送信及び受信方法を実施することにより、本発明に係る暗号通信システムを構成することができる。
具体的には、本実施形態に係るYuen暗号通信システムは、光送信装置40、光受信装置60及び光通信路80を備える。
光送信装置40は、入力情報を一以上のブロックに分割し、該ブロックに番号を付加してパケット化し、パケットの順番を電気雑音発生器(電気雑音発生部54、図4)の出力系列を用いてランダム化して並べ替えた送信情報を生成する伝送情報データ系列ランダム化装置50と、初期鍵から擬似乱数列を発生する送信機擬似乱数発生部としての擬似乱数発生部43と、多数の基底から構成される基底群を保持し、擬似乱数列にしたがって当該基底群から1つの基底を選択する送信機基底選択制御部としての基底選択制御部44と、選択された1つの基底に対応する2つの光強度を用いて、送信情報に基づいた光変調信号を生成する強度光変調部としてのM−ary強度変調部42とを備え、基底群を構成する全ての基底において、各基底に対応する2つの光信号の強度は、最大強度と最小強度の中間点を挟んで上と下に値を持ち、中間点の上にある信号群の強度は、中間点から十分離れた光強度周辺に集中的に配置され、中間点の下にある信号群の強度は、中間点から十分離れた光強度付近に集中的に配置され、中間点の上にある信号群及び中間点の下にある信号群の強度が集中的に配置されるそれぞれの強度の範囲は、信号群の強度近傍のエネルギーに比例して出現する量子ショット雑音によって全て隠されるように設定される。搬送波発生部41の動作は、図1に示した搬送波発生部11と同等である。
このように、本実施形態に係る光送信装置40は、送信データ発生部46への入力前に、本発明に係わる伝送情報データ系列ランダム化装置50により、伝送される情報データをランダム化し、それを送信データ発生部46に入力して、既知の平文と光出力の関係をランダムにする。これにより、既知の平文と暗号文の関係がランダム化される。したがって、既知平文攻撃が可能な状況でありながら、暗号文単独の状況を作り出すことによって、既知平文攻撃に対する情報理論的安全性を実現できる。
また、本実施形態に係る光受信装置60においては、図3のフォトダイオード61を介して光信号を受信する。フォトダイオード61の動作は、図1に示したフォトダイオード21と同等である。光受信装置60は、最大強度と最小強度の中間点の信号強度に対応する受信信号強度にしきい値を設定し、該しきい値に対して上あるいは下の情報を出力する強度判定部62と、送信装置で使用した同じ初期鍵と擬似乱数発生部64からの出力系列によって、基底選択制御部65を経由して情報ビットの0あるいは1を判定する信号判定部63とからなり、その出力系列を受信データ系列再構築装置70によって元の情報データに戻すことによって、暗号通信が完了する。
図4に、本発明に係る伝送情報データ系列ランダム化装置50の構成を示す。本発明のYuen暗号光送信装置は、基本的に図1に示した光送信装置10と、伝送情報データ系列ランダム化装置50とによって構成できる。すなわち、本発明に係るYuen暗号の光送信装置40(図3)は、伝送情報データ系列ランダム化装置50を、従来のYuen暗号の光送信装置10(図1)の送信データ発生部15の入力に接続することによって構成される。
図5に、本発明に係る受信データ系列再構築装置70の構成を示す。本発明に係る光受信装置60(図3)は、図1に示した従来のYuen暗号の光受信装置20の信号判定部の出力に、受信データ系列再構築装置70を接続することによって構成される。
本発明は、光送信装置10の送信データ発生部の入力の前処理として、情報データ系列のブロック化とその順序のランダム化に特徴があり、そのランダム化によって、情報データと暗号化された光信号の関係を独立にし、既知平文攻撃に対する情報理論的安全性を実現するという特徴を有している。以下に、本発明の特徴的なデータのランダム化ついて図面を参照しながら説明する。
(情報データ系列のランダム化)
図4に示した伝送情報データ系列ランダム化装置50の構成を用いて、情報データ系列のランダム化を説明する。本発明の実施形態では以下のように情報データ系列をランダム化する。
伝送すべきデータ系列(入力情報)は、伝送情報データ入力部51に入力される。次いで、データ系列ブロック化部52は、該データ系列を一連のビット系列としてブロック化する。例えば、mビット毎のブロック化を行う。次いで、順序番号付加部53は、このブロックの集合に順序番号に対応するビット系列を付加する。電気雑音発生部54は電気的な雑音を発生し、この雑音はデジタル化部55において数値情報に変換される。順序変換部56は、順序番号を付加されたブロックの順番を、雑音に基づく数値情報を用いてランダム化する。したがって、順序変換部56の出力は、入力された情報データ系列に対してブロック化の順番がランダムなビット系列である。この出力は、Yuen暗号光送信装置の送信データ発生部に順次送られる。
本発明の実施形態に係る情報データ系列のランダム化により、情報データ系列が既知であっても、光送信装置から出力される光信号は、基底を選択する擬似乱数発生部の出力系列のランダム性とランダム化された情報データ系列との両方によって撹拌されたものになる。
さらに、基底群を構成する全ての基底において、各基底に対応する2つの光信号の強度は、最大強度と最小強度の中間点を挟んで上と下に値を持ち、中間点の上にある信号群の強度は、中間点から十分離れた光強度周辺に集中的に配置され、中間点の下にある信号群の強度は、中間点から十分離れた光強度付近に集中的に配置され、中間点の上にある信号群及び中間点の下にある信号群の強度が集中的に配置されるそれぞれの強度の範囲は、信号群の強度近傍のエネルギーに比例して出現する量子ショット雑音によって全て隠されるように設定されていれば、盗聴者の受信機では上半面にある信号は全く識別できない。また、同じように下半面にある信号も識別できない。したがって、式(1)においてΓ=Mとなり秘密鍵の可能性は、盗聴者に対して
Figure 0005170586
となり、いくら既知の平文に対応する暗号文を観測しても鍵の候補が減らないことになる。
すなわち、既知平文攻撃が可能な状況でありながら、平文にあたる情報データと暗号文の対応関係がランダムになり、暗号文単独攻撃と同じ状況になる。上記システムは暗号文単独攻撃に対して情報理論的安全性を持つので、このシステムは既知平文攻撃に対しても完全な情報理論的安全性を持つことになる。
図5に示した、本発明の実施形態に係る情報データ系列のランダム化を用いたYuen暗号の光受信装置における受信データ系列再構築装置70の構成を用いて、情報データ系列のランダム化を用いたYuen暗号のための光受信装置を説明する。
本実施形態の受信データ系列再構築装置70において、従来のYuen暗号の受信機能によって誤り無く復号された情報データ系列は、送信側でのブロック単位で順序番号判定部71に入力され、その順序番号判定結果に基づいて、順序再構成部72において元の順番に戻される。これにより、本実施形態に係る光受信装置においては、送信側での本発明に係わるランダム化の影響のない受信データが得られる。
以上のように、本実施形態に係る暗号通信のための光送信装置と光受信装置によれば、既知平文攻撃に対する情報理論的安全性を確保し、正規通信者の通信可能距離をより長距離とすることが可能な、通信能力を高めた光信号の構成法、送信法、受信法、光送信装置、光受信装置、及び暗号通信システムを低コストで提供することができる。
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
本発明は、クラウド・コンピューテイング・システムに必須となるデータセンター間の超安全光通信網を実現するための基幹技術となり得る。
10 光送信装置
11、41 搬送波発生部
12、42 M−ary強度変調部
13、24、43、64 擬似乱数発生部
14、25、44、65 基底選択制御部
15、46 送信データ発生部
20 光受信装置
21、61 フォトダイオード
22、62 強度判定部
23、63 信号判定部
30、80 光通信路
40 光送信装置(伝送情報データランダム化付き)
50 伝送情報データ系列ランダム化装置
51 伝送情報データ入力部
52 データ系列ブロック化部
53 順序番号付加部
54 電気雑音発生部
55 デジタル化部
56 順序変換部
60 光受信装置(伝送情報データランダム化解除付き)
70 受信データ系列再構築装置
71 順序番号判定部
72 順序再構成部

Claims (5)

  1. 光強度変調方式によるY−00プロトコルを実装するYuen暗号光送信装置であって、
    入力情報を一以上のブロックに分割し、前記ブロックに番号を付加してパケット化し、前記パケットの順番を電気雑音発生器の出力系列を用いてランダム化して並べ替えて送信情報を生成する伝送情報データ系列ランダム化装置と、
    初期鍵から擬似乱数列を発生する擬似乱数発生部と、
    多数の基底から構成される基底群を保持し、前記擬似乱数列にしたがって当該基底群から1つの基底を選択する基底選択制御部と、
    前記選択された1つの基底に対応する2つの光強度を用いて、前記送信情報に基づいた光変調信号を生成する強度光変調部とを備え、
    前記基底群を構成する全ての基底において、各基底に対応する2つの光信号の強度は、最大強度と最小強度の中間点を挟んで上と下に値を持ち、
    前記中間点の上にある信号群の強度は、前記中間点から十分離れた光強度周辺に集中的に配置され、
    前記中間点の下にある信号群の強度は、前記中間点から十分離れた光強度付近に集中的に配置され、
    前記中間点の上にある前記信号群及び前記中間点の下にある前記信号群の強度が集中的に配置されるそれぞれの強度の範囲は、前記信号群の強度近傍のエネルギーに比例して出現する量子ショット雑音によって全て隠されるように設定されることを特徴とする
    Yuen暗号光送信装置。
  2. 請求項1に記載の光送信装置から出力される光信号を受信する光受信装置であって、
    受信した2値光強度信号の最大受信強度と最小受信強度との中間点を識別しきい値として信号強度を判定して判定値を出力する強度判定部と、
    前記判定値に対して、前記光送信装置の前記初期鍵を用いて擬似乱数列を発生する擬似乱数発生部と、
    多数の基底から構成される基底群を保持し、前記擬似乱数列にしたがって当該基底群から1つの基底を選択する基底選択制御部と、
    前記基底選択制御部により選択された前記基底を用いて情報ビットの0と1を判定する信号判定部と、
    前記信号判定部により判定された前記情報ビットからなるデータ系列を前記光送信装置において設定されたブロックの長さにブロック化し、前記ブロックに付加された番号の順序に再構成した受信データ系列を生成する受信データ系列再構築装置と、を備えることを特徴とする
    Yuen暗号光受信装置。
  3. 光強度変調方式によるY−00プロトコルを用いるYuen暗号光送信方法であって、
    入力情報を一以上のブロックに分割し、前記ブロックに番号を付加してパケット化し、前記パケットの順番を電気雑音発生器の出力系列を用いてランダム化して並べ替えて送信情報を生成する伝送情報データ系列ランダム化処理と、
    初期鍵から擬似乱数列を発生する擬似乱数発生処理と、
    多数の基底から構成される基底群を保持し、前記擬似乱数列にしたがって当該基底群から1つの基底を選択する基底選択制御処理と、
    前記選択された1つの基底に対応する2つの光強度を用いて、前記送信情報に基づいた光変調信号を生成する強度光変調処理とを含み、
    前記基底群を構成する全ての基底において、各基底に対応する2つの光信号の強度は、最大強度と最小強度の中間点を挟んで上と下に値を持ち、
    前記中間点の上にある信号群の強度は、前記中間点から十分離れた光強度周辺に集中的に配置され、
    前記中間点の下にある信号群の強度は、前記中間点から十分離れた光強度付近に集中的に配置され、
    前記中間点の上にある前記信号群及び前記中間点の下にある前記信号群の強度が集中的に配置されるそれぞれの強度の範囲は、前記信号群の強度近傍のエネルギーに比例して出現する量子ショット雑音によって全て隠されるように設定されることを特徴とする、
    Yuen暗号光送信方法。
  4. 請求項3に記載のYuen暗号光送信方法を用いて送信された光信号を受信するYuen暗号光受信方法であって、
    受信した2値光強度信号の最大受信強度と最小受信強度との中間点を識別しきい値として信号強度を判定して判定値を出力する強度判定処理と、
    前記判定値に対して、前記光送信装置の前記初期鍵を用いて擬似乱数列を発生する擬似乱数発生処理と、多数の基底から構成される基底群を保持し、前記擬似乱数列にしたがって当該基底群から1つの基底を選択する基底選択制御処理と、
    前記基底選択制御部により選択された前記基底を用いて情報ビットの0と1を判定する信号判定処理と、
    前記信号判定処理により判定された前記情報ビットからなるデータ系列を前記光送信方法において設定されたブロックの長さにブロック化し、前記ブロックに付加された番号の順序に再構成した受信データ系列を生成する受信データ系列再構築処理と、を含む
    Yuen暗号光受信方法。
  5. 光強度変調方式によるY−00プロトコルを実装するYuen暗号通信システムであって、前記Yuen暗号通信システムは、Yuen暗号光送信装置と、Yuen暗号光受信装置とを有し、前記Yuen暗号光送信装置は、
    入力情報を一以上のブロックに分割し、前記ブロックに番号を付加してパケット化し、前記パケットの順番を電気雑音発生器の出力系列を用いてランダム化して並べ替えて送信情報を生成する伝送情報データ系列ランダム化装置と、
    初期鍵から擬似乱数列を発生する送信機擬似乱数発生部と、
    多数の基底から構成される基底群を保持し、前記擬似乱数列にしたがって当該基底群から1つの基底を選択する送信機基底選択制御部と、
    前記選択された1つの基底に対応する2つの光強度を用いて、前記送信情報に基づいた光変調信号を生成する強度光変調部とを備え、
    前記基底群を構成する全ての基底において、各基底に対応する2つの光信号の強度は、最大強度と最小強度の中間点を挟んで上と下に値を持ち、
    前記中間点の上にある信号群の強度は、前記中間点から十分離れた光強度周辺に集中的に配置され、
    前記中間点の下にある信号群の強度は、前記中間点から十分離れた光強度付近に集中的に配置され、
    前記中間点の上にある前記信号群及び前記中間点の下にある前記信号群の強度が集中的に配置されるそれぞれの強度の範囲は、前記信号群の強度近傍のエネルギーに比例して出現する量子ショット雑音によって全て隠されるように設定され、
    前記Yuen暗号光受信装置は、
    受信した2値光強度信号の最大受信強度と最小受信強度との中間点を識別しきい値として信号強度を判定して判定値を出力する強度判定部と、
    前記判定値に対して、前記光送信装置の前記初期鍵を用いて擬似乱数列を発生する受信機擬似乱数発生部と、
    多数の基底から構成される基底群を保持し、前記擬似乱数列にしたがって当該基底群から1つの基底を選択する受信機基底選択制御部と、
    前記受信機基底選択制御部により選択された前記基底を用いて情報ビットの0と1を判定する信号判定部と、
    前記信号判定部により判定された前記情報ビットからなるデータ系列を前記Yuen暗号光送信装置において設定された前記ブロックの長さにブロック化し、前記ブロックに付加された前記番号の順序に再構成した受信データ系列を生成する受信データ系列再構築装置と、を備える、
    Yuen暗号通信システム。
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