以下、本願の搬送装置を具体化した一実施形態について説明する。図1は、本実施形態の搬送装置10の斜視図を示している。図1は、単位固定部11に、キャリア13を配置した状態を示している。搬送装置10は、リニアモータの駆動によって単位固定部11に対してキャリア13をスライド移動させる装置である。まず、図1に示す直線の搬送路を有する搬送装置10を用いて、搬送装置10の構成について説明する。曲線の搬送路や分岐点を有する搬送装置10については、後述する。尚、以下の説明では、図1におけるキャリア13をスライド移動させる方向をX方向、X方向に垂直で単位固定部11を載置する面に平行な方向をY方向、X方向及びY方向に垂直な方向をZ方向と称して説明する。この場合、X方向は、本願の移動方向の一例である。Y方向は、本願の側方の一例である。
搬送装置10は、キャリア13を単位固定部11内に配置して構成されている。尚、キャリア13の数は、1つに限らず、2つ以上の複数個でも良い。図2は、搬送装置10のY方向における手前側の部材を取り除いて、搬送装置10の内部を一部だけ示している。図3は、X方向に直交する平面で単位固定部11を切断した断面を示している。
図1〜図3に示すように、単位固定部11は、X方向に延設されている。X方向に直交する平面で切断した単位固定部11の断面形状は、Z方向の上部を開口した略U字形状をなしている。単位固定部11は、底部21と、第1側壁22と、第2側壁23を備えている。底部21は、X方向に延設され、下部を開口され、上下方向に薄い略箱型形状をなしている。底部21の下部には、後述する非接触給電の制御や、キャリア13の動作を制御する制御基板25が設けられている。制御基板25は、下部を開口した底部21内に収納され、底部21の下面に固定されている。制御基板25は、キャリア13に設けられた通信部60(図5参照)と通信可能となっている。制御基板25は、例えば、通信部60と無線通信を行い、キャリア13との間で制御に必要なデータ等の送受信を行う。
第1及び第2側壁22,23は、底部21の上面に設けられ、Z方向に沿うように立った状態で設けられている。第1及び第2側壁22,23は、X方向に沿って延設されている。第2側壁23は、第1側壁22と平行に設けられている。単位固定部11は、底部21、第1及び第2側壁22,23によって、X方向に延びる溝を構成している。この溝は、キャリア13が、移動する搬送路である。第1側壁22は、壁部22Aと、底板部22Bとを有している。同様に、第2側壁23は、壁部23Aと、底板部23Bとを有している。壁部22A,23Aは、Z方向及びX方向に沿った略平板状をなし、X方向に沿って延設されている。壁部22A,23AのZ方向の高さは、同一となっている。
底板部22Bは、Z方向における壁部22Aの下端部から底部21の上面に沿ってY方向の内側に向かって、即ち、対向する第2側壁23に向かって延びている。同様に、底板部23Bは、Z方向における壁部23Aの下端部から底部21の上面に沿ってY方向の内側に向かって、即ち、対向する第1側壁22に向かって延びている。底板部22B,23Bは、底部21の上面に固定されている。
キャリア13は、底部21、第1側壁22、及び第2側壁23に囲まれた溝内に収納されている。壁部22A,23Aの各々の内壁には、複数の永久磁石26が固定子として取り付けられている。複数の永久磁石26は、例えば、Z方向に延びる長方形の板状をなし、第1及び第2側壁22,23の各々の内壁において、X方向に沿って、即ち、キャリア13の移動方向に沿って所定のピッチ63(図2参照)で配列されている。永久磁石26の各々は、例えば、キャリア13とY方向で対向する内側の面においてN極、S極が交互に現れるように、X方向において隣り合うものが互いに異なる極性(N極及びS極)となっている。換言すれば、複数の永久磁石26は、X方向に沿って交互に異なる極性となるように配置されている。尚、複数の永久磁石26は、X方向において同一のピッチ63で等間隔に並んでいない構成でも良い。また、図2及び図3は、永久磁石26のキャリア13側を覆うカバー27(図1参照)を取り外した状態を示している。また、図2は、Y方向の手前側の第2側壁23を取り外した状態を示している。
また、第1及び第2側壁22,23の各々のZ方向における上部には、レール部28が設けられている。レール部28は、例えば、スライド面をV字に形成されたVレールであり、後述するキャリア13の溝ローラ43を取り付けられる。なお、以下の説明では、第1側壁22のレール部28と、第2側壁23のレール部28とを区別して説明する場合、符号の後にアルファベットを付して説明する。具体的には、第1側壁22のレール部28を、レール部28Aと称し、第2側壁23のレール部28を、レール部28Bと称して説明する。
また、第1側壁22の上部に設けられたレール部28Aの上面には、リニアスケール29が取り付けられている。同様に、第2側壁23のレール部28Bの上面には、リニアスケール29が取り付けられている。また、図4に示すように、キャリア13には、単位固定部11のリニアスケール29の各々とZ方向で対向する位置にリニアヘッド40が取り付けられている。リニアヘッド40は、キャリア13のX方向への移動にともなって、リニアスケール29の上部を移動し、X方向におけるキャリア13の位置を位置情報PI(図5参照)としてキャリア13の受電基板50(図5参照)に出力する。受電基板50は、通信部60を介して位置情報PIを単位固定部11の制御基板25に送信する。
搬送装置10は、後述するように、曲線の搬送路や分岐路で側壁の一部がなくなる。このため、少なくとも一方の側壁が存在すれば、キャリア13の位置を検出できるように、単位固定部11には、Y方向の両側にリニアスケール29が設けられている。また、キャリア13には、リニアスケール29に対応して一対のリニアヘッド40が設けられている。尚、単位固定部11は、Y方向の一方側にリニアスケール29を備える構成でも良い。この場合、キャリア13は、リニアスケール29と同様に、リニアヘッド40をY方向の一方側に備える構成でも良い。また、リニアスケール29及びリニアヘッド40による位置の検出方法は、特に限定されない。例えば、位置の検出方法は、光学式の検出方法でも良く、あるいは電磁誘導を用いた検出方法でも良い。また、キャリア13の位置を検出する方法は、リニアスケールに限らず、例えば、ロータリーエンコーダを用いても良い。
また、底部21の上面には、X方向に延設された走行レール30が設けられている。走行レール30は、Y方向における底板部22B,23Bの間に設けられている。走行レール30は、レール底部32と、一対のレール側部34とを有している。レール底部32は、底部21の上面に設けられ、Y方向の幅を略一定に形成され、X方向に沿って延びた板状に形成されている。一対のレール側部34は、Y方向におけるレール底部32の両端のそれぞれに形成されている。一対のレール側部34の各々は、Z方向に沿って上方に向かって延びた板状をなしている。走行レール30をX方向に直交する平面で切断した断面形状は、上部を開口した略U字形状をなしている。尚、図2は、Y方向の手前側の走行レール30を取り外した状態を示している。また、以下の説明では、第1側壁22(レール部28A)側のレール側部34と、第2側壁23(レール部28B)のレール側部34とを区別して説明する場合、符号の後にアルファベットを付して説明する。具体的には、第1側壁22側のレール側部34を、レール側部34Aと称し、第2側壁23側のレール側部34を、レール側部34Bと称して説明する。
また、底板部22B,23Bの上には、非接触給電を行う送電コイル部31が設けられている。送電コイル部31は、X方向に延びるコイル保持部33と、送電コイル35とを備えている。尚、図1及び図2は、送電コイル35を取り外した状態を示している。コイル保持部33は、X方向に延びる略板状をなしている。コイル保持部33の材料は、例えば、フェライトや電磁鋼板などの磁性材料である。X方向に直交する平面で切断したコイル保持部33の断面形状は、上方に向かって突出する略E字形状をなしている。送電コイル35は、Y方向におけるコイル保持部33の中央部で突出した部分に巻回されている。
単位固定部11の制御基板25は、送電コイル35と接続され、送電コイル35に供給する交流電圧を変更する。制御基板25は、送電コイル35に供給する交流電圧を変更することで、送電コイル35から後述するキャリア13の受電コイル49へ非接触による電力供給を行う。尚、非接触給電の方式は、コイルを用いた電磁結合方式や電磁誘導方式に限定されず、例えば、平板状の電極を用いた静電結合方式でも良い。また、キャリア13への電力の供給は、非接触給電に限らず、接触型の給電方法を用いても良い。例えば、キャリア13に設けたパンタグラフを架線に接触させて給電を行っても良い。
また、図1及び図2に示すように、キャリア13は、本体部41と、作業台42とを備えている。本体部41は、X方向及びZ方向に長い箱型形状をなし、内部に様々な機器が内蔵されている。作業台42は、X方向に長い略板状をなし、本体部41の上部に固定されている。図4は、キャリア13をX方向から見た側面図であり、本体部41の一部を取り除いた状態を示している。図4に示すように、作業台42の下面には、複数の溝ローラ43が取り付けられている。本実施形態の複数の溝ローラ43は、Y方向における作業台42の両側のそれぞれに3個ずつ(合計で6個)取り付けられている(図2参照)。一方側の3つの溝ローラ43は、X方向に沿って配列されている。また、作業台42の下面には、上記したリニアヘッド40が取り付けられている。
また、本体部41の下面の中央部には、第1走行ローラ45と、第2走行ローラ46とが取り付けられている。第1走行ローラ45は、Y方向で対向して配置された2つを1組として、X方向において複数組設けられている。第1走行ローラ45の各々は、Z方向に沿った回転軸を中心に回転可能となっている。第1走行ローラ45の各々は、走行レール30におけるY方向で対向するレール側部34(図3参照)に内側から接触して回転する。
第2走行ローラ46は、Y方向で対向する第1走行ローラ45の間に設けられ、X方向において複数設けられている。第2走行ローラ46の各々は、Y方向に沿った回転軸を中心に回転可能となっている。第2走行ローラ46の各々は、走行レール30のレール底部32(図3参照)の上面に接触して回転する。
キャリア13は、作業台42を単位固定部11の上方に配置した状態で、略U字状をなす単位固定部11の溝内に本体部41を挿入している。単位固定部11に挿入された本体部41は、単位固定部11の第1及び第2側壁22,23との間に一定の隙間を設けている。複数の溝ローラ43の各々は、第1及び第2側壁22,23の上部に設けられたレール部28に対して回転可能に取り付けられている。また、第1走行ローラ45及び第2走行ローラ46の各々は、走行レール30内に配置され、走行レール30と接触して回転可能な状態となっている。キャリア13は、溝ローラ43、第1走行ローラ45及び第2走行ローラ46を単位固定部11に対して回転可能に取り付けられることでX方向へ移動可能となり、作業台42に物品(部品など)を載置して移動する。本実施形態の搬送装置10は、例えば、後述する図6に示すように、複数の単位固定部11を連結して構成した固定部12の搬送路90上でキャリア13を移動させ、作業工程位置85等においてキャリア13を停止させ、部品の供給や組み立てなどの作業を実行する。
また、キャリア13は、溝ローラ43、第1走行ローラ45及び第2走行ローラ46によって、移動方向とは異なる方向、例えば、Y方向やZ方向への移動を規制される。例えば、キャリア13は、溝ローラ43をレール部28Aに係合させ、第1走行ローラ45をレール側部34Aに接触させることで、第1側壁22側へのY方向の移動を規制されつつ、X方向へガイドされる。
また、図4に示すように、本体部41の下面には、非接触給電を行う受電コイル部47が設けられている。受電コイル部47は、X方向に延びるコイル保持部48と、受電コイル49とを備えている。コイル保持部48は、X方向に延びる略板状をなしている。X方向に直交する平面で切断したコイル保持部48の断面形状は、下方に向かって突出する略E字形状をなしている。コイル保持部48の材料は、例えば、フェライトや電磁鋼板などの磁性材料である。受電コイル49は、Y方向におけるコイル保持部48の中央部で突出した部分に巻回されている。キャリア13を単位固定部11内に配置した状態では、受電コイル部47は、Z方向において送電コイル部31と所定の間隔を間に設けて対向して配置されている。尚、キャリア13は、図6に示すように、複数の単位固定部11を跨がって移動する。このため、跨がった2つの単位固定部11の少なくとも一方から電力の供給を受けるために、キャリア13は、X方向における両端(移動方向の前後の端部)のそれぞれに、別の受電コイル部47を備えても良い。
また、図2及び図4に示すように、本体部41内には、受電基板50と、サーボアンプ51と、可動子である巻線部53と、誘導巻線部55と、が内蔵されている。従って、本実施形態の搬送装置10は、固定子(単位固定部11)に永久磁石26を配置し、キャリア13に可動子(巻線部53)を配置した、所謂、ムービングコイル型のリニアモータを構成している。受電基板50は、受電コイル部47の受電コイル49と接続され、送電コイル部31から受電コイル部47へ給電された交流電力に応じた電力を供給される。また、受電基板50は、サーボアンプ51と接続され、サーボアンプ51へ電力W1(図5参照)を供給する。サーボアンプ51は、受電基板50から供給された電力W1から巻線部53に通電する駆動電流を生成する。
本実施形態の巻線部53は、Y方向における本体部41の両側にそれぞれ設けられ、Y方向において永久磁石26と対向する位置に設けられている。Y方向の一方側の巻線部53は、例えば、3つのヨーク53Aのそれぞれにコイル53Bが巻回されている(図2参照)。この3つのコイル53Bの各々は、例えば、U相、V相、W相の各相に対応している。各相のヨーク53A及びコイル53Bは、X方向、即ち、キャリア13Aの移動方向に並んで配置されている。サーボアンプ51は、駆動電流として、三相の交流電流Iac(図5参照)を各コイル53Bに通電する。巻線部53は、サーボアンプ51からコイル53Bに交流電流Iacを通電されると磁界を発生させ(N極及びS極を誘起され)、単位固定部11の永久磁石26との間に推進力(磁気吸引力や磁気反発力)を発生させる。キャリア13は、巻線部53と永久磁石26との間に生じる推進力により、X方向へ移動する。本実施形態では、Y方向の両側に設けられた永久磁石26及び巻線部53により両側式のリニアモータを構成している。受電基板50は、サーボアンプ51を介して巻線部53に通電する三相の交流電流Iacを制御することで、コイル53Bによって形成する磁界、即ち、キャリア13Aを移動させる方向や速度を制御する。なお、本実施形態のキャリア13は、コイル53Bに発生する極性に応じて、前後方向のどちらにも移動できる。即ち、キャリア13は、コイル53Bの極性に応じて、X方向の一方(前方)又は他方(後方)へ移動可能となっている。
ここで、本実施形態の搬送装置10では、キャリア13をガイドする部材としてレール部28と走行レール30とを備える。図3及び図4に示すように、レール部28と走行レール30は、Z方向(上下方向)において永久磁石26を間に挟む位置に配置されている。このため、例えば、第1側壁22の永久磁石26と第1側壁22側の巻線部53との間に磁気力が発生した場合、キャリア13は、磁気力の発生する位置に対して上方に設けられたレール部28A(溝ローラ43)と、下方に設けられたレール側部34A(第1走行ローラ45)とによってY方向の外側から支えられた状態となる。これにより、磁気力によってキャリア13が傾くのを抑制することができる。
また、誘導巻線部55は、後述する搬送装置10Bの単位固定部11(図8参照)に設けられた誘導磁石115,116との間に磁気力を発生させ、キャリア13の移動方向を変更するための磁石である。誘導巻線部55は、Z方向における巻線部53の上方に設けられている。誘導巻線部55は、Y方向において誘導磁石115,116と対向するように、Z方向における高さを調整されている。サーボアンプ51は、受電基板50から供給される電力W1に基づいて、誘導巻線部55に通電する駆動電流Iac2(図5参照)を生成する。
誘導巻線部55は、Y方向における本体部41の両側にそれぞれ設けられている。誘導巻線部55は、例えば、巻線部53と同様に、ヨークやコイル(図示略)を備えている。誘導巻線部55は、サーボアンプ51から駆動電流Iac2を通電されると磁界を発生させ、単位固定部11の誘導磁石115,116(図8参照)との間に磁気力を発生させる。キャリア13は、誘導巻線部55と、誘導磁石115,116との間に生じる磁気力(磁気吸引力や磁気反発力)により、移動方向を変更される。受電基板50は、サーボアンプ51を介して誘導巻線部55に通電する駆動電流Iac2を制御することで、誘導巻線部55の極性を変更する。受電基板50は、誘導巻線部55の極性を変更することで、誘導磁石115,116との間に発生する磁気力の向きを変更し、キャリア13の移動方向を制御する。
(生産システムについて)
次に、上記した本実施形態の搬送装置10を複数台用いて構成した生産システムについて図5及び図6を参照しつつ説明する。図5は、本実施形態の生産システム71の電気的な構成を示している。図6は、生産システム71の概要を模式的に示している。図6に示すように、生産システム71は、例えば、図1に示す直線形状の搬送装置10や、曲線の搬送路を有する搬送装置10A、分岐点を有する搬送装置10Bなどを互いに連結し、環状の生産ラインを構成している。なお、以下の説明では、曲線の搬送路を有する搬送装置10Aや、分岐点を有する搬送装置10Bを、直線形状の搬送装置10と区別する場合には、符号の後に「A」や「B」のアルファベットを付し区別して説明する。また、各種の搬送装置を総称して説明する場合には、単に、搬送装置10と称して説明する。
図5に示すように、生産システム71は、例えば、生産ラインを構成する複数の搬送装置10を統括的に制御する管理PC73を備えている。各搬送装置10の制御基板25は、管理PC73の制御信号CT1に基づいて、自身の単位固定部11に配置された移動中や停止中のキャリア13の動作を制御する。制御基板25は、通信部60を介して各キャリア13の受電基板50へ制御信号CT2を送信する。受電基板50は、単位固定部11の制御基板25から受信した制御信号CT2に基づいて、電力W1の供給先、電力W1の大きさ、電力W1をコイルに印加する際の電流の向き等を変更し、サーボアンプ51からコイル53Bに供給する交流電流Iacや、誘導巻線部55に供給する駆動電流Iac2を制御する。これにより、管理PC73は、各搬送装置10の制御基板25を介して、複数のキャリア13の動作を統括的に制御することが可能となる。
例えば、図6に示すように、管理PC73は、図中の移動方向75の方向に向かって環状の搬送路上で複数のキャリア13を移動させる。各キャリア13の作業台42(図2参照)には、物品79が載置されている。生産システム71の搬送路には、各種の作業を行う作業ロボット81が配置されている。キャリア13は、各作業ロボット81の作業工程位置85で停止する。作業ロボット81は、管理PC73の制御に基づいて、物品79に対する作業を行う。管理PC73は、各キャリア13の移動や、作業ロボット81の作業を制御し、物品79を用いた組み立てや、物品79に対する加工等を実行する。
(曲線の搬送装置10Aの構成について)
次に、図6に示す生産システム71のうち、曲線の搬送路を有する搬送装置10Aと、分岐点を有する搬送装置10Bの構成について説明する。図7は、搬送装置10Aの斜視図であり、図6における上方から下方に向かって搬送装置10Aを見た構成を示している。また、図8は、搬送装置10Bの斜視図であり、図6における下方から上方に向かって搬送装置10Bを見た構成を示している。なお、図7及び図8は、図面が煩雑となるのを避けるため、一部の部材の図示を省略している。例えば、図7及び図8は、キャリア13、カバー27、リニアスケール29、送電コイル35などの図示を省略している。また、図7は、直線の搬送路のコイル保持部33の図示を省略している。
また、以下の説明では、第1側壁22側の永久磁石26を、第2側壁23側の永久磁石26と区別して説明する場合、第1側壁22側の永久磁石26を第1磁石26Aと称し、第2側壁23側の永久磁石26を第2磁石26Bと称して説明する。また、図6に示すように、複数の単位固定部11を連結した固定部12の搬送路90のうち、直線の搬送路を、第1搬送路部91、曲線の搬送路を第2搬送路部92、第2搬送路部92とは異なる方向へ第1搬送路部91から分岐した搬送路を分岐路93と称して説明する。また、図7及び図8に図示したXYZ方向は、直線の搬送路を基準とした方向を示している。
さらに、図7及び図8に示すように、第2搬送路部92において、第1搬送路部91の第1側壁22に連続して延設される部分を、第1曲線側壁121と称し、キャリア13を間に挟んで第1曲線側壁121と対向する側壁を第2曲線側壁123と称して説明する。分岐路93において、第1搬送路部91の第2側壁23に連続して延設される部分を、第2分岐側壁126と称し、キャリア13を間に挟んで第2分岐側壁126と対向する側壁を第1分岐側壁125(図13参照)と称して説明する。また、第1搬送路部91の第1側壁22の内壁に配列された複数の第1磁石26Aを、第1直線磁石列131と称し、第2側壁23の内壁に配列された複数の第2磁石26Bを、第2直線磁石列132と称して説明する。また、第1曲線側壁121の内壁に配列された複数の第1磁石26Aを、第1曲線磁石列135と称し、第2曲線側壁123の内壁に配列された複数の第2磁石26Bを、第2曲線磁石列136(図9参照)と称して説明する。また、第1分岐側壁125の内壁に配列された複数の第1磁石26Aを、第1分岐磁石列138(図13参照)と称し、第2分岐側壁126の内壁に配列された複数の第2磁石26Bを、第2分岐磁石列139と称して説明する。
図6に示す第2搬送路部92は、直線の第1搬送路部91に接続された曲線搬送路であり、第1搬送路部91に沿った方向、例えば、X方向と所定の角度をなす方向に延びている。搬送装置10Aの場合、第2搬送路部92は、第1搬送路部91に沿った方向に対し、移動方向75における左側へと曲がっている。
図7に示すように、搬送装置10Aの単位固定部11は、第1搬送路部91を有する単位固定部11Aと、第2搬送路部92を有する単位固定部11Bとを備えている。直線の第1搬送路部91を有する単位固定部11Aは、第1側壁22及び第2側壁23の両方を備えている。第1及び第2側壁22,23は、単位固定部11Aにおいて、X方向に沿って延設されている。図9は、搬送装置10Aを模式的に示している。なお、図9では、説明を理解し易くするため、第1側壁22や第2側壁23の外側に永久磁石26を図示している。また、極性を示すため、N極の永久磁石26にハッチングを付している。
図9に示すように、直線の第1搬送路部91において、キャリア13は、側方であるY方向の両側に設けられた永久磁石26と巻線部53との間に働く磁気吸引力を受ける。例えば、キャリア13は、図9における左に向かって発生する磁気吸引力F1と、右に向かって発生する磁気吸引力F2とを付加される。磁気吸引力F1は、第1側壁22の第1磁石26Aと、巻線部53との間に働く磁気力である。磁気吸引力F2は、第2側壁23の第2磁石26Bと、巻線部53との間に働く磁気力である。本実施形態の搬送装置10Aは、磁気吸引力F1と磁気吸引力F2とが釣り合うように構成されている。
例えば、本実施形態の第1直線磁石列131の各第1磁石26A及び第2直線磁石列132の各第2磁石26Bは、直線の第1搬送路部91において、キャリア13との距離が同一となるように構成されている。より具体的には、キャリア13は、Y方向において対照な構造となっている。Y方向における第1及び第2側壁22,23の間の中央にキャリア13を配置した場合、キャリア13のY方向における中心97と第1磁石26Aとの間の距離と、中心97と第2磁石26Bとの間の距離が同一となっている。また、例えば、キャリア13の受電基板50及びサーボアンプ51(図5参照)は、管理PC73の制御に基づいて、Y方向の両側に設けられた巻線部53に同一の大きさの交流電流Iacを供給する。これにより、磁気吸引力F1を磁気吸引力F2と同一の大きさにすることが可能となる。そして、磁気吸引力F1,F2を釣り合わせることで、キャリア13に対しY方向へ働く力を相殺できる。キャリア13を、所望の位置、例えば、Y方向における第1及び第2側壁22,23の間の中央の位置に配置できる。そして、溝ローラ43とレール部28との間で発生する摩擦抵抗や、第1走行ローラ45(図4参照)とレール側部34(図3参照)との間に発生する摩擦抵抗などを低減でき、キャリア13を円滑に移動方向75(この場合X方向)へ移動させることができる。また、Y方向において第1及び第2側壁22,23の一方にキャリア13を引きつけて走行させないため、第1及び第2側壁22,23に要求される剛性を小さくできる。
一方で、図7に示すように、曲線の第2搬送路部92を有する単位固定部11Bは、第1曲線側壁121を有する。第1側壁22は、第1曲線側壁121と接続され、第1搬送路部91から連続して第2搬送路部92に延設されている。また、単位固定部11Bは、第1曲線側壁121とキャリア13を挟んで対向する第2曲線側壁123を有する。第2曲線側壁123は、その一部に不連続となる不連続部95,96を有する。単位固定部11Bは、単位固定部11Aの第2側壁23と接続される部分に、第2曲線側壁123の一部である不連続部95を有する。また、第2曲線側壁123は、移動方向75における単位固定部11Bの先端、即ち、第2搬送路部92の先端部分に、その一部である不連続部96を有する。第2曲線側壁123は、不連続部95と、不連続部96との間において、壁部23A、底板部23B、第2曲線磁石列136の第2磁石26B(図9参照)などを取り除かれている。このため、第2曲線磁石列136は、不連続部95,96の間において不連続となっている。なお、本願の不連続部とは、不連続となっている部分や、不連続となって残っている部分の両方を含む概念である。また、不連続部95,96の間には、キャリア13が、単位固定部11Bの外側に脱線するのを防止するための、脱落防止部材101が複数配置されている。
図9に示すように、本実施形態のキャリア13は、第2搬送路部92のうち、この不連続部95,96の間において、第1曲線側壁121のレール部28Aに溝ローラ43を係合させる一方、第2曲線側壁123のレール部28Bには溝ローラ43を係合させない状態で走行する。キャリア13は、第2曲線側壁123のレール部28Bと溝ローラ43との係合を一時的に解除された状態となる。キャリア13は、不連続部95のレール部28Bから溝ローラ43が外れた後、第2搬送路部92の先において不連続部96のレール部28Bに再度溝ローラ43を係合させる。換言すれば、不連続部95,96と対向する側壁(第1曲線側壁121)が連続しており、本実施形態のキャリア13は、対向する2つのレール部28A,28Bのうち、常に少なくとも一方のレール部28Aによりガイドされ走行することとなる。
また、本実施形態の走行レール30は、レール部28と同様に、単位固定部11Bの不連続部95と、不連続部96との間において、第2曲線側壁123側のレール側部34Bが取り除かれている。このため、レール側部34Bは、不連続部95,96の間において不連続となっている。キャリア13は、第2搬送路部92のうち、この不連続部95,96の間において、第1曲線側壁121側のレール側部34Aに第1走行ローラ45を接触させて回転させる一方、第2曲線側壁123側のレール側部34Bには第1走行ローラ45を接触させない状態で走行する。換言すれば、本実施形態のキャリア13は、対向する2つのレール側部34A,34Bのうち、常に少なくとも一方のレール側部34Aによりガイドされ走行することとなる。なお、単位固定部11Bの走行レール30は、不連続部95,96の間のみでレール側部34Bが不連続な構成でも良く、第2搬送路部92の全域に亘ってレール側部34Bがない構成でも良い。また、レール部28Bのみを不連続な構成とし、レール側部34Bを連続した構成としても良い。即ち、レール側部34Bを、第1搬送路部91と同様に、第2搬送路部92においても設けても良い。この場合、走行レール30は、曲線の第2搬送路部92の全域において、対向する一対のレール側部34A,34Bを備えた構成となる。
従って、本実施形態のキャリア13は、曲線の第2搬送路部92において、第2搬送路部92の内側に配置されたレール部28Aのみに溝ローラ43を係合させ、レール側部34Aのみに第1走行ローラ45を接触させて一時的に走行する状態となる。第2搬送路部92において、キャリア13は、第2搬送路部92の内側に配置された第1曲線磁石列135の第1磁石26Aと巻線部53との間に働く磁気吸引力F3を受ける。また、キャリア13は、曲線の第2搬送路部92を曲がりながら移動する際に、外側に向かって発生する遠心力F4を受ける。本実施形態の搬送装置10Aでは、磁気吸引力F3の大きさが遠心力F4以上となるように構成されている。例えば、磁気吸引力F3の大きさが遠心力F4以上となるように、単位固定部11Bの構造のうち、磁気吸引力F3や遠心力F4に影響を与える条件を調整されている。ここでいう影響を与える条件とは、例えば、励磁していない巻線部53と第1磁石26Aの間に働く磁気吸引力、巻線部53と第1磁石26Aとの距離、第1磁石26Aの磁力の大きさなどである。あるいは、影響を与える条件とは、巻線部53のコイル53B(図2参照)の巻数、第2搬送路部92を走行する際のキャリア13の速度、巻線部53へ供給する交流電流Iacの電流値などである。
これによれば、磁気吸引力F3を遠心力F4以上の大きさにすることで、キャリア13を内側の第1曲線側壁121や第1曲線磁石列135に引き付けて移動させることができる。そして、曲線の第2搬送路部92において、キャリア13を第1曲線側壁121のみで走行させることができる。これにより、第2搬送路部92の不連続部95,96の間の距離をより拡大し、即ち、不連続な部分を拡大し、第2曲線側壁123として必要な部材の量をより削減でき、搬送装置10Aの構造の簡略化を図れる。
なお、管理PC73は、遠心力F4を調整するため、曲線の第2搬送路部92に侵入する前に、キャリア13の速度を減速しても良い。これにより、直線の第1搬送路部91ではより速い速度でキャリア13を移動させ、曲線の第2搬送路部92では、減速して遠心力F4が磁気吸引力F3より大きくならないように調整できる。また、本実施形態のキャリア13は、走行レール30(図7参照)内で第1走行ローラ45を接触させながら走向する。このため、仮に、遠心力F4が磁気吸引力F3より大きくなっても、キャリア13は、第2搬送路部92の曲線における外側のレール側部34B(図3参照)に第1走行ローラ45を接触させ外側への移動を規制される。キャリア13は、第1走行ローラ45をレール側部34Bに接触させ回転させながら、第2搬送路部92を走向できる。従って、磁気吸引力F3を、レール側部34Bと第1走行ローラ45との規制力を加味した大きさに調整しても良い。具体的には、磁気吸引力F3を、(遠心力F4+規制力)以上の大きさにしても良い。
また、図7に示すように、第1磁石26Aは、第1搬送路部91の第1直線磁石列131から連続して、第2搬送路部92の第1曲線磁石列135として配列されている。第1磁石26Aは、第1側壁22の内壁において、キャリア13の移動方向75に沿って、所定のピッチ63で配置されている。本実施形態の搬送装置10Aでは、第1曲線磁石列135の複数の第1磁石26Aのピッチ63Bが、第1直線磁石列131の複数の第1磁石26Aのピッチ63Aに比べて狭くなっている。即ち、曲線搬送路のピッチ63Bが、直線搬送路のピッチ63Aに比べて狭くなっている。
ここで、曲線の第2搬送路部92では、キャリア13の巻線部53と、第1曲線磁石列135との間の距離が、第2搬送路部92の曲率に応じて変化する場合がある。例えば、直線に沿った第1側壁22に長方形板状の第1磁石26Aを複数配置した場合、隣り合う第1磁石26Aの隙間は、第1側壁22に固定される第1磁石26Aの基端部と、第1側壁22から離間した第1磁石26Aの先端部とのどちらにおいて同一の大きさとなる。一方で、曲線の第1曲線側壁121に長方形板状の第1磁石26Aを複数配置した場合、隣り合う第1磁石26Aの隙間は、第1曲線側壁121に固定される第1磁石26Aの基端部から、第1曲線側壁121ら離間した第1磁石26Aの先端部に向かうに従って徐々に広がる。換言すれば、曲線の第2搬送路部92を移動するキャリア13から見た場合、第2搬送路部92の内側に配置された第1曲線磁石列135の各第1磁石26Aの先端と巻線部53との間の距離は、曲率が大きくなるのに従って相対的に長くなる。例えば、キャリア13が第2搬送路部92を同一速度で移動したとしても、キャリア13の内側に第1磁石26Aが現れる周期が長くなる。そこで、第2搬送路部92における第1曲線磁石列135のピッチ63Bを、第1搬送路部91における第1直線磁石列131のピッチ63Aに比べて狭くすることで、第1搬送路部91から第2搬送路部92に進入した際の第1磁石26Aと巻線部53との距離の変動を抑制し、推進力の変動を抑制できる。なお、第1搬送路部91のピッチ63Aと、第2搬送路部92のピッチ63Bとは、同一ピッチでも良い。また、ピッチ63Bは、ピッチ63Aに比べて大きくても良い。
また、本実施形態の第1磁石26Aは、図9に示すように、第2搬送路部92において、キャリア13の巻線部53と、レール部28Aやレール側部34Aとの間の距離が短くなるのに応じて、第2搬送路部92における内側に向かって距離99だけ移動した位置にオフセットして配置される。キャリア13が第2搬送路部92を移動する場合、磁気吸引力F3の大きさ、移動方向に対するキャリア13の傾き、第2搬送路部92の曲率などに応じて、巻線部53とレール部28A等との間の距離が一部短くなり、巻線部53と第1曲線磁石列135の各第1磁石26Aとの間の距離が短くなる場合がある。例えば、図9に示すように、第2搬送路部92を移動するキャリア13は、磁気吸引力F3により第1曲線側壁121側へと吸着される。また、第1磁石26Aや巻線部53の磁極の配置に応じて磁気反発力が発生し、キャリア13は、傾いた状態となる。キャリア13の一部は、第1曲線側壁121のレール部28Aや走行レール30のレール側部34A(図3参照)により内側への移動を規制される位置まで、第1曲線側壁121に近づく。その結果、巻線部53の一部とレール部28A等との距離が短くなり、巻線部53の一部と第1磁石26Aとの距離が短くなる虞がある。
そこで、図9に示すように、第2搬送路部92における内側に向かって移動した位置に第1磁石26Aをオフセットさせ、即ち、巻線部53から離間する方向へ第1磁石26Aをオフセットさせる。例えば、第1曲線側壁121の壁部22Aの内壁に凹部を設け、オフセットさせる距離99だけ凹んだ位置に第1磁石26Aを配置する。凹んだ位置に配置され曲線のより内側となった第1磁石26Aは、壁部22Aの内壁に面一で配置された第1磁石26Aに比べて、巻線部53との距離が遠くなる。これにより、第1搬送路部91と曲線の第2搬送路部92の両方において、巻線部53と第1磁石26Aとの間の距離を一定に保つことが可能となる。
また、図9に示すように、不連続部96に設けられた第2曲線磁石列136の各第2磁石26Bは、キャリア13に徐々に近づくように配置されている。具体的には、不連続部96に配置される第2磁石26Bが、移動方向75(図6参照)の手前から先に行くのに従って徐々にキャリア13に近づくように配置されている。キャリア13の巻線部53は、移動方向75の手前側に配置された不連続部95を通過すると、第2曲線側壁123の第2磁石26Bとの間の磁気力が低下する又はなくなる。また、巻線部53は、移動方向75の先に配置された不連続部96と対向する位置へ移動すると、第2曲線側壁123の第2磁石26Bとの間に磁気力が発生する。そこで、不連続部96に配置する第2曲線磁石列136の各第2磁石26Bを、徐々にキャリア13に近づくように配置している。例えば、上記した距離99の調整方法と同様に、深さを調整した凹部を第2曲線側壁123の内壁に設け、その凹部に第2磁石26Bを配置する。これにより、不連続部96に侵入した際に、巻線部53と第2磁石26Bとの間の発生する磁気力が徐々に大きくなり、磁気力を滑らかに変化させることで、キャリア13を安定して移動させることが可能となる。
次に、キャリア13の溝ローラ43の構成について説明する。本実施形態のキャリア13は、上記したように、移動方向とは異なる方向へのキャリア13の移動を規制する規制部として、溝ローラ43、第1走行ローラ45、及び第2走行ローラ46を備える。溝ローラ43、第1走行ローラ45及び第2走行ローラ46は、キャリア13のY方向やZ方向への移動を規制する。これにより、巻線部53と永久磁石26との相対的な位置の変動を抑制し、推進力の向きや大きさの変動を抑制して、キャリア13をより安定して所望の移動方向75へ移動させることができる。
また、キャリア13の溝ローラ43は、第2搬送路部92の曲率に応じて配置されている。図10は、溝ローラ43の配置を模式的に示しており、位置関係が明確となるように溝ローラ43の距離の差を大きくして図示している。なお、実際の溝ローラ43の配置は、第2搬送路部92の曲率に応じて微細な距離を調整される場合もある。以下の説明では、6つの溝ローラ43のうち、移動方向75の前方側及び後方側に配置された一対の溝ローラ43の各々を、第1回転体43Aと称して説明する。また、6つの溝ローラ43のうち、移動方向75において一対の第1回転体43Aの間に配置された溝ローラ43を、第2回転体43Bと称して説明する。
第1回転体43Aは、直線の第1搬送路部91において、レール部28と接触するように、キャリア13の前後方向に沿って直線状に配置されている。第1搬送路部91にキャリア13を配置した場合、前方に配置された第1回転体43Aと、後方に配置された第1回転体43Aとは、例えば、図1におけるX方向に沿って配置される。第1回転体43Aは、第1搬送路部91における第1側壁22のレール部28Aや第2側壁23のレール部28Bに沿って配置されることで、第1搬送路部91においてレール部28と接触して回転する。
一方で、第2回転体43Bは、例えば、一対の第1回転体43Aの位置に比べてY方向において若干だけ内側となる位置に配置されている。この第2回転体43Bの位置は、図10に示すように、第2搬送路部92の第1曲線側壁121のレール部28Aや第1曲線側壁121側のレール側部34Aの曲率に応じた位置となっている。換言すれば、第2回転体43Bは、レール部28A等が曲がって突出する分だけ、他の第1回転体43Aに比べて内側にオフセットした位置となっている。第2搬送路部92において、曲線の内側となる第2回転体43Bは、第1曲線側壁121のレール部28Aと接触して回転する。また、第2搬送路部92において、曲線の外側となる第2回転体43Bは、レール部28Bと接触しない、あるいはキャリア13の傾きに応じて接触して回転する。これによれば、例えば、第1搬送路部91においては第1回転体43Aをレール部28(レール部28A,28Bの両方)に係合させ、第2搬送路部92においては第2回転体43Bや、一対の第1回転体43Aの一方を第1曲線側壁121のレール部28Aに係合させて、キャリア13を走行させることができる。このため、常に複数の溝ローラ43をレール部28に係合させ、キャリア13の走行を安定させることができる。
また、図10に示すように、本実施形態のキャリア13は、Y方向において対照な構成となっている。溝ローラ43は、Y方向におけるキャリア13の中心97(図9参照)を通るX方向に沿った直線に対して、Y方向で対照な位置に配置されている。このため、図6に示す移動方向75のような左周り、即ち、左曲がりだけでなく、移動方向75とは逆方向の右曲がりにおいても、同様に走行することができる。なお、キャリア13は、図9に示す左曲がりとは逆に、右曲がりに移動する場合、Y方向において逆側の溝ローラ43をレール部28(右曲がりのレール部28B)に接触させて走行することとなる。
また、第2回転体43Bの位置を、Y方向の内側にオフセットした位置に固定しなくとも良い。例えば、図11に示すように、第2回転体43BをY方向において可動できるように構成しても良い。これにより、第2回転体43Bは、第1曲線側壁121のレール部28Aに接触し、曲線の外側へオフセットした位置、即ち、キャリア13におけるY方向の内側の位置へ移動し回転する。この場合、第2回転体43Bは、レール部28Aの曲率の変動に応じて位置を変更し回転できる。このため、様々な曲率のカーブに対応して位置を変更し回転することができる。また、キャリア13に設ける溝ローラ43の数は、特に限定されない。例えば、図12に示すように、キャリア13は、第2回転体43Bを備えず、第1回転体43Aのみを備える構成でも良い。
(分岐点を有する搬送装置10Bの構成について)
次に、図8に示す分岐点を有する搬送装置10Bについて説明する。なお、以下の説明では、上記した曲線の第2搬送路部92を有する搬送装置10Aと同様の構成については、同一符号を付し、その説明を適宜省略する。図8に示すように、搬送装置10Bの単位固定部11は、第1搬送路部91を有する単位固定部11Aと、第2搬送路部92及び分岐路93を有する単位固定部11Cとを備えている。単位固定部11Aは、X方向に沿った第1側壁22及び第2側壁23を備えている。単位固定部11Aは、図9に示す単位固定部11Aと同様に、永久磁石26と巻線部53との間で発生する磁気力(磁気吸引力F1,F2など)を相殺する構成となっている。
曲線の第2搬送路部92を有する単位固定部11Cは、単位固定部11Aの第1側壁22と接続される第1曲線側壁121を有する。また、単位固定部11Cは、分岐部分を間に挟んで第1曲線側壁121とは反対側の位置に、第2分岐側壁126を有する。第2分岐側壁126は、第1搬送路部91の第2側壁23と接続されている。第2側壁23及び第2分岐側壁126は、第1搬送路部91から分岐路93へX方向に沿って直線状に延設される。また、第2分岐側壁126と第1曲線側壁121の間には、第1搬送路部91や分岐路93を区画する壁部23Aや底板部23Bが設けられていない。従って、第2搬送路部92は、曲線搬送路の内側に第1曲線側壁121のみを有し、外側に第2曲線側壁123(壁部23A等)を有しない部分がある。また、分岐路93は、Y方向における第2分岐側壁126と反対側の位置に第1分岐側壁125(図13参照)を有する。第1分岐側壁125は、第1曲線側壁121や第2曲線側壁123と不連続となっている。この壁部23A等がない部分は、第1搬送路部91から分岐路93へ移動するキャリア13の移動を妨げる部分や、あるいは上記した曲線の第2搬送路部92の移動において第2曲線側壁123を必要としない部分である。分岐する部分において、第2曲線側壁123は、その一部を不連続とする不連続部96を有する。また、分岐する部分において、第1分岐側壁125は、その一部を不連続とする不連続部113(図13参照)を有する。
第1搬送路部91、分岐路93、第2搬送路部92は、分岐点111において3方向に分岐している。従って、本実施形態の曲線の第2搬送路部92は、第1搬送路部91から分岐する2つの分岐路に含まれる1つの搬送路である。また、単位固定部11Cの走行レール30は、第1搬送路部91、分岐路93、第2搬送路部92を接続するように分岐点111で分岐している。第2側壁23及び第2分岐側壁126の底板部23Bに設けられたコイル保持部33は、X方向に沿って延設され、第1搬送路部91及び分岐路93に跨がって配設されている。また、第1側壁22及び第1曲線側壁121の底板部22Bに設けられたコイル保持部33は、湾曲する第2搬送路部92に沿って曲がり、第1搬送路部91及び第2搬送路部92に跨がって配設されている。
図13は、搬送装置10Bを模式的に示している。図8及び図13に示すように、単位固定部11Cの第2曲線側壁123は、分岐点111の周辺において、不連続な部分が形成されている。単位固定部11Cは、第2側壁23や第2分岐側壁126の分岐点111に近い部分と、第2曲線側壁123とを接続する部分をなくし、不連続部96が形成されている。不連続部96は、第2搬送路部92において、移動方向75(図6参照)の先側に設けられている。不連続部96から分岐点111側の不連続な部分には、第1曲線側壁121と対向する第2曲線側壁123が設けられていない。第2曲線側壁123は、不連続な部分において、壁部23A、底板部23B、第2曲線磁石列136の第2磁石26Bなどを取り除かれている。不連続部96の第2曲線磁石列136は、図9に示す単位固定部11Bの不連続部96の第2曲線磁石列136と同様に、移動方向75の手前から先に行くのに従って徐々にキャリア13に近づくように配置されている。
また、単位固定部11Cの第1分岐側壁125は、分岐点111の周辺において、不連続な部分が形成されている。単位固定部11Cは、第1側壁22や第1曲線側壁121の分岐点111に近い部分と、第1分岐側壁125とを接続する部分を無くし、不連続部113が形成されている。不連続部113は、分岐路93において、移動方向75の先側に設けられている。不連続部113から分岐点111側の不連続な部分には、第2分岐側壁126と対向する第1分岐側壁125が設けられていない。第1分岐側壁125は、不連続な部分において、壁部22A、底板部22B、第1分岐磁石列138の第1磁石26Aなどを取り除かれている。不連続部113の第1分岐磁石列138は、不連続部96の第2曲線磁石列136と同様に、移動方向75の手前から先に行くのに従って徐々にキャリア13に近づくように配置されている。これにより、分岐路93を移動して不連続部113に侵入した際に、巻線部53と第1磁石26Aとの間に発生する磁気力が徐々に大きくなり、磁気力を滑らかに変化させることで、キャリア13を安定して移動させることが可能となる。
従って、本実施形態の不連続部96,113は、2つの分岐路(第2搬送路部92、分岐路93)に分岐する部分に設けられている。これによれば、不連続部96,113を分岐する部分に設けることで、キャリア13の移動を阻害する可能性がある第2曲線側壁123や第1分岐側壁125の一部を無くすことができる。そして、キャリア13を、第2搬送路部92や分岐路93へスムーズに移動させることが可能となる。第2曲線側壁123の不連続な部分を走行する場合、第1曲線側壁121の第1曲線磁石列135により推進力を発生させキャリア13を走行させることができる。また、第1分岐側壁125の不連続な部分を走行する場合、第2分岐側壁126の第2分岐磁石列139により推進力を発生させキャリア13を走行させることができる。
本実施形態の搬送装置10Bは、単位固定部11Aと単位固定部11Cとの接続部分に誘導磁石115,116を有する。誘導磁石115,116は、キャリア13を第2搬送路部92又は分岐路93へ誘導するための磁石である。誘導磁石115は、第1側壁22及び第1曲線側壁121の壁部22Aの上部に設けられている。誘導磁石115は、壁部22Aの内壁であって、第1磁石26Aの上部に設けられている。誘導磁石115は、Y方向においてキャリア13の誘導巻線部55(図4参照)と対向する位置に設けられている。誘導磁石115は、第1側壁22の壁部22Aと第1曲線側壁121の壁部22Aとの接続部分に設けられ、第1側壁22から第1曲線側壁121へと所定のピッチで複数個設けられている。
誘導磁石116は、第2側壁23及び第2分岐側壁126の壁部23Aの上部に設けられている。誘導磁石116は、壁部23Aの内壁であって、第2磁石26Bの上部に設けられている。誘導磁石116は、Y方向においてキャリア13の誘導巻線部55(図4参照)と対向する位置に設けられている。誘導磁石116は、第2側壁23の壁部23Aと第2分岐側壁126の壁部23Aとの接続部分に設けられ、第2側壁23から第2分岐側壁126へと所定のピッチで複数個設けられている。
なお、上記した誘導磁石115,116の配置は、一例である。例えば、誘導磁石115を、第1磁石26Aの下部に設けても良い。この場合、キャリア13の誘導磁石115側(第1側壁22側)の誘導巻線部55を、誘導磁石115の位置に合わせてZ方向における下方に設けても良い。
誘導磁石115,116は、例えば、X方向に長い長方形の板状の永久磁石である。誘導磁石115,116は、同一極性の複数の磁石である。誘導磁石115,116の極性は、例えば、S極である。図13に示すキャリア13Aは、誘導磁石115,116及び誘導巻線部55により第2搬送路部92へ誘導されるキャリア13を示している。また、図13に示すキャリア13Bは、分岐路93へ誘導されるキャリア13を示している。
例えば、第2搬送路部92へ移動する場合、受電基板50(図5参照)は、管理PC73の制御に基づいて、誘導巻線部55の極性を変更する。誘導巻線部55は、駆動電流Iac2を変更され、図13に示すように、図13中における左側にN極、右側にS極を発生させる(キャリア13A参照)。誘導巻線部55は、誘導磁石115に逆極性(N極)を対向させ、誘導磁石115との間に磁気吸引力を発生させる。また、誘導巻線部55は、誘導磁石116に同極性(S極)を対向させ、誘導磁石116との間に磁気反発力を発生させる。これにより、キャリア13は、誘導磁石115,116で挟まれる搬送路において、第1側壁22や第1曲線側壁121側に押しつけられる外力、即ち、第2搬送路部92へ誘導する外力を付加される。キャリア13は、巻線部53及び永久磁石26による推進力を受けつつ、第2搬送路部92へ誘導される外力を付加されることで、第2搬送路部92へ進入する。
また、分岐路93へ移動する場合、受電基板50は、管理PC73の制御に基づいて、誘導巻線部55の極性を逆極性に変更する。誘導巻線部55は、図13中における左側にS極、右側にN極を発生させる(キャリア13B参照)。誘導巻線部55は、誘導磁石115との間に磁気反発力を発生させる。また、誘導巻線部55は、誘導磁石116との間に磁気吸引力を発生させる。これにより、キャリア13は、誘導磁石115,116で挟まれる搬送路において、第2側壁23や第2分岐側壁126側に押しつけられる外力、即ち、分岐路93へ誘導する外力を付加される。キャリア13は、巻線部53及び永久磁石26による推進力を受けつつ、分岐路93へ誘導される外力を付加されることで、分岐路93へ進入する。このようにして、誘導磁石115,116と誘導巻線部55との間に発生する磁気力により、キャリア13を、第2搬送路部92や分岐路93へ移動させることが可能となる。
また、図8及び図13に示すように、本実施形態の誘導磁石115,116は、キャリア13の移動方向75において第2搬送路部92と分岐路93に分岐する手前から分岐する部分に向かって複数配置されている。誘導磁石115は、第1側壁22と第1曲線側壁121の接続部分の手前から第2搬送路部92へ配列されている。誘導磁石116は、第2側壁23と第2分岐側壁126の接続部分の手前から分岐路93へ配列されている。これによれば、分岐部分に進入する前に、キャリア13の移動方向75を、第2搬送路部92又は分岐路93に向けて事前に変更することが可能となる。その結果、キャリア13の移動方向をより確実に所望の方向に変更できる。
因みに、上記実施形態において、第1側壁22のレール部28A及び第1側壁22側のレール側部34Aは、第1ガイドの一例である。第2側壁23のレール部28B及び第2側壁23側のレール側部34Bは、第2ガイドの一例である。永久磁石26は、磁石の一例である。溝ローラ43、第1走行ローラ45及び第2走行ローラ46は、回転体の一例である。巻線部53は、コイルの一例である。誘導巻線部55は、誘導コイルの一例である。分岐路93は、第3搬送路の一例である。第1曲線側壁121のレール部28A及び第1曲線側壁121側のレール側部34Aは、第3ガイドの一例である。第2曲線側壁123のレール部28B及び第2曲線側壁123側のレール側部34Bは、ガイドの一例である。第1分岐側壁125のレール部28A及び第1分岐側壁125側のレール側部34Aは、ガイドの一例である。第1曲線磁石列135は、第3磁石列の一例である。第2分岐側壁126のレール部28B及び第2分岐側壁126側のレール側部34Bは、第4ガイドの一例である。第2分岐磁石列139は、第4磁石列の一例である。
本実施形態の搬送装置10Aは、第1搬送路部91と、分岐点111において第1搬送路部91から分岐する第2搬送路部92及び分岐路93とを有する搬送路90と、永久磁石26により生じる磁力を利用して推進力を発生させる巻線部53を有し、推進力により搬送路90を移動方向75へ移動し物品79を搬送するキャリア13と、を備えている。第1搬送路部91は、キャリア13の第1搬送路部91に沿った移動をガイドする第1ガイド(第1側壁22のレール部28A、第1側壁22側のレール側部34A)及び第2ガイド(第2側壁23のレール部28B、第2側壁23側のレール側部34B)を有する。また、第1搬送路部91は、キャリア13のY方向の一方に配置され、第1ガイドに沿って複数の第1磁石26Aが配列される第1直線磁石列131と、キャリア13を間に挟んでキャリア13のY方向の他方に配置され、第2ガイドに沿って複数の第2磁石26Bが配列される第2直線磁石列132と、を有する。第2搬送路部92は、第1ガイドから連続して延設され、キャリア13の第2搬送路部92に沿った移動をガイドする第3ガイド(第1曲線側壁121のレール部28A、第1曲線側壁121側のレール側部34A)と、キャリア13のY方向の一方に配置され、第3ガイドに沿って複数の第1磁石26Aが配列される第1曲線磁石列135と、を有する。分岐路93は、第4ガイド(第2分岐側壁126のレール部28B及び第2分岐側壁126側のレール側部34B)と、第2分岐磁石列139を有する。第4ガイドは、第2ガイドから連続して延設されるとともに、少なくとも分岐点111から所定範囲においては分岐点111から離れるに従って第3ガイドから離れる方向に延設され、キャリア13の分岐路93に沿った移動をガイドする。第2分岐磁石列139は、キャリア13のY方向の他方に配置され、第4ガイドに沿って複数の第2磁石26Bが配列される。
これによれば、キャリア13を第2搬送路部92へ分岐させる場合は、第3ガイド(レール部28A、レール側部34A)を移動用のガイドとして利用することにより、第2搬送路部92への分岐が可能となる。また、分岐点111において第1曲線磁石列135による磁力を利用して巻線部53で推進力を発生させ、第2搬送路部92に沿ってキャリア13を移動させることが可能となる。また、キャリア13を分岐路93へ分岐させる場合は、第4ガイド(レール部28B、レール側部34B)を移動用ガイドとして利用することにより、分岐路93への分岐が可能となる。また、分岐点111において第2分岐磁石列139による磁力を利用して巻線部53で推進力を発生させ、分岐路93に沿ってキャリア13を移動させることが可能となる。
尚、本願は、上記実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。
例えば、上記実施形態では、図9に示すように、曲線の第2搬送路部92の外側に配置した第2曲線側壁123に不連続部95,96を設けたが、内側の第1曲線側壁121に不連続部95,96を設けても良い。図14は、第2搬送路部92の内側の第1曲線側壁121に不連続部95,96を設けた搬送装置10Aを示している。このような構成であっても、上記実施形態と同様の様々な効果を奏する。具体的には、例えば、キャリア13は、キャリア13の側方の一方側に設けた第2曲線側壁123のみで第2搬送路部92の不連続な部分を走行できる。この場合、第2曲線側壁123は、磁気吸引力F3と遠心力F4とを合成した力を付加される。このため、第2曲線側壁123の剛性を、図9の第1曲線側壁121に比べて高めても良い。換言すれば、図9に示す外側に不連続部95,96を設けた場合、第1曲線側壁121に要求される剛性を、図14の第2曲線側壁123に要求される剛性に比べて小さくできる。
また、図14に示す搬送装置10Aでは、図9に示す搬送装置10とは異なり、曲線の外側に配置された第2曲線磁石列136の隣り合う第2磁石26Bの隙間が、直線部分に比べて狭くなる虞がある。このため、第2直線磁石列132のピッチ63Aに比べて、第2曲線磁石列136のピッチ63Bを広くしても良い。また、例えば、キャリア13が第2曲線側壁123側へ近づいて走行する可能性がある場合、図9に示す距離99と同様に、第2曲線磁石列136の第2磁石26Bを、キャリア13から離れるオフセットした位置に設けても良い。
また、分岐点111を有する搬送装置10Bは、図15に示すように、第1及び第2側壁22,23(レール部28A,28B)を、Y方向における互いの間の距離119を長くした構成にしても良い。図15に示すように、単位固定部11A,11Cは、分岐点111を含む搬送路90(図6参照)の前後において、距離119を長くし第1搬送路部91や分岐路93の幅を広げた構成となっている。なお、図15は、第1搬送路部91や分岐路93の広がりを理解し易くするため、距離119の差を強調して図示している。上記実施形態では、キャリア13は、第1走行ローラ45(図4参照)と、走行レール30(図3参照)とが接触しており、Y方向の移動を規制されていた。これに対し、図15に示す場合において、例えば、レール底部32のY方向の幅を広げ、第1走行ローラ45と走行レール30のレール側部34との間に、キャリア13をY方向へ可動できるように隙間を設けてもよい。この場合、距離119は、このキャリア13のY方向への可動範囲内で調整することができる。また、図15に示す誘導磁石115,116は、移動方向75において、距離119の広がる部分からX方向に沿って分岐路93等に向けて配列されている。なお、誘導磁石115,116を、第1側壁22と第1曲線側壁121との接続部分の手前、即ち、分岐点111の手前のみに設けても良い。
例えば、第2搬送路部92へキャリア13を移動させる場合、誘導巻線部55は、図15における左側にN極、右側にS極を発生させる(キャリア13A参照)。キャリア13は、誘導巻線部55及び誘導磁石115の磁気吸引力と、誘導巻線部55及び誘導磁石116の磁気反発力により、第1搬送路部91の幅の広がった部分で第1側壁22側に移動する。キャリア13は、第1側壁22側に寄りながら、第2搬送路部92へ進入する。なお、図15では、第2側壁23のレール部28Bと溝ローラ43とが離間した状態となっているが、第2側壁23のレール部28Bと溝ローラ43とは係合した状態でも良い。
同様に、分岐路93へキャリア13を移動させる場合、誘導巻線部55は、図15における左側にS極、右側にN極を発生させる(キャリア13B参照)。キャリア13は、誘導巻線部55及び誘導磁石115の磁気反発力と、誘導巻線部55及び誘導磁石116の磁気吸引力により、第1搬送路部91の幅の広がった部分で第2側壁23側に移動する。キャリア13は、第2側壁23側に寄りながら、分岐路93へ進入する。このようにして、キャリア13を、第1側壁22(レール部28A)又は第2側壁23(レール部28B)に寄せ、第2搬送路部92や分岐路93へ移動させることが可能となる。従って、誘導磁石115,116と誘導巻線部55の磁気力を利用して、分岐点111に進入する前に、キャリア13を第1側壁22又は第2側壁23に寄せることで、第2搬送路部92又は分岐路93にキャリア13を移動させ易くできる。
また、上記実施形態において、キャリア13は、溝ローラ43、第1走行ローラ45、及び第2走行ローラ46のうち、少なくとも一つを備える構成でも良い。例えば、搬送装置10は、キャリア13のY方向への移動を規制するガイドとして、レール部28又は走行レール30の一方のみを備える構成でも良い。例えば、キャリア13は、溝ローラ43や第2走行ローラ46を備えず、第1走行ローラ45のみを備える構成でも良い。また、単位固定部11は、レール部28を備えず、走行レール30のみを備える構成でも良い。また、例えば、溝ローラ43の溝を深くし、レール部28を溝ローラ43に深く入り込ませることで、キャリア13を溝ローラ43のみで支持できれば、キャリア13は、溝ローラ43のみを備える構成でも良い。
また、溝ローラ43は、溝を有しないローラでも良い。また、第1走行ローラ45及び第2走行ローラ46は、溝を有するローラでも良い。この場合、第1走行ローラ45等に係合するレールを、走行レール30に設けても良い。
また、直線の第1搬送路部91において、単位固定部11Aは、第1側壁22のみを備える構成でも良い。
また、第1搬送路部91は、直線の搬送路に限らず、曲線の搬送路でも良い。第2搬送路部92は、曲線の搬送路に限らず、直線の搬送路でも良い。例えば、搬送路90は、直線路の一部を所定角度に曲げた(くの字などに曲げた)搬送路を備えても良く、Y字に分岐した分岐路を備えても良い。
また、単位固定部11は、誘導磁石115,116を備えない構成でも良い。この場合、キャリア13は、誘導巻線部55を備えなくとも良い。
また、上記実施形態では、第2曲線側壁123の一部を不連続とし、不連続部96を設けた。これに対し、搬送装置10Aは、第2曲線側壁123の全てをなくした構成でも良い。この場合、第2曲線側壁123を全てなくした部分が、本願の不連続部に相当する。
同様に、上記実施形態では、第1分岐側壁125の一部を不連続とし、不連続部113を設けた。これに対し、搬送装置10Bは、第1分岐側壁125の全てをなくした構成でも良い。この場合、第1分岐側壁125を全てなくした部分が、本願の不連続部に相当する。
また、第1曲線磁石列135の第1磁石26Aを、距離99だけオフセットした位置に配置しなくとも良い。
また、不連続部96に設けた第2曲線磁石列136の各第2磁石26Bや、第1分岐側壁125に設けた第1分岐磁石列138の各第1磁石26Aを、キャリア13に徐々に近づくように配置しなくとも良い。
また、搬送装置10A,10Bは、磁気吸引力F1と磁気吸引力F2とが釣り合わない構成でも良い。
また、上記実施形態では、管理PC73が、キャリアを制御したが、これに限らない。例えば、搬送装置10の制御基板25が、自身の搬送装置10(単位固定部11)上のキャリア13を制御しても良い。あるいは、キャリア13同士が相互に通信を実行し、キャリア13自身が自律して動作をしても良い。
(付記)また、本願に係る搬送装置及び搬送路を具体化した実施例について上記に説明したが、搬送装置及び搬送路は以下の構成を有することも可能であり、その場合には以下の効果を奏する。
(付記1)前記第3ガイドは、第1ガイド部(レール部28A)と、第2ガイド部(レール側部34A)とを有し、前記第1ガイド部は、前記第3磁石列を間に挟んで前記第2ガイド部とは反対側の位置に配置され、前記キャリアは、前記第3磁石列と前記コイルとの間に磁気力を発生させた場合に、その磁気力の発生する位置を間に挟んで配置された前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部によって支持される、搬送装置。これによれば、磁気力の発生する位置を間に挟んで設けられた第1ガイド部及び第2ガイド部によってキャリアを複数箇所で支持し、キャリアの傾きを抑制できる。また、仮に、不連続部を設けて片側の第3ガイドのみでキャリアを支持する場合に、磁気力に抗してキャリアをより安定して支持できる。