JPWO2019160114A1 - 繊維製品処理用物品及び繊維製品処理剤組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
本願は、2018年2月16日に、日本に出願された特願2018−025929号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
しかし、皮膚に薬液を直接塗布した場合、皮膚に付着した忌避成分が、汗と一緒に流れたり、体温によって揮散したりする。そのため、忌避効果の持続時間が比較的短く、吸血被害を長時間受けないようにするためには、頻繁に薬液を皮膚に塗布する必要があり、不便である。
吸血害虫の中でも蚊は、衣類の上からでも吸血行動を起こすことができる。そこで、薬液で衣類を処理する方法が提案されている(特許文献1〜3)。薬液を衣類に塗布又は含浸させて処理することにより、薬液を皮膚に直接塗布するよりも、忌避効果の持続時間を長くすることができる。
忌避成分を洗液中に添加して洗濯を行えば、忌避成分を一度に沢山の衣類へ付着させ得ると考えられる。しかしこの場合、洗液に添加した忌避成分のほとんどが流れ出てしまうことで衣類に残留しにくく、効率よく衣類に付着できない。そのため、衣類に充分な忌避効果を付与するためには、洗液中において高濃度の忌避成分の存在が必要となり、実用的ではない。
本発明者らは、忌避成分を基材に保持させることで表面積を拡大し、洗濯した衣類を乾燥機内で乾燥する際に衣類と接触させれば、基材に保持された忌避成分を、複数枚の衣類に一度に均一に付着させ得ると考えた。しかし、検討を進めたところ、所望の忌避効果を得るのに充分な量の忌避成分を基材に保持させると、べたつきが生じることがわかった。忌避成分を保持させた基材にべたつきがあると、この基材を手で持って乾燥機内に投入したときに手がべたつく等、使用性が悪く、忌避成分の付着量のムラ(ムラ付き)も起こる。
〔1〕繊維製品を乾燥機で乾燥する際に使用される繊維製品処理用物品であって、
基材と、前記基材に担持された繊維製品処理剤組成物とを含み、
前記繊維製品処理剤組成物が、
(B)成分:ディート、3−(N−n−ブチル−N−アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p−メンタン−3,8−ジオール、2−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン−1−カルボン酸1−メチルプロピル、及びピレスロイド系化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、
(A)成分:前記(B)成分とは異なる、加熱により溶融可能である化合物の1種以上からなり、1atm、30℃において固体状である成分と、
を含み、1atm、30℃において固体状であり、31〜120℃で溶融可能である、繊維製品処理用物品。
〔2〕前記(B)成分の質量に対する前記(A)成分の質量比が0.1〜999であり、
前記(B)成分の含有量が、前記繊維製品処理剤組成物の総質量に対して0.1〜99質量%である前記〔1〕の繊維製品処理用物品。
〔3〕前記(A)成分と前記(B)成分との合計量が、前記繊維製品処理剤組成物の総質量に対して1〜100質量%である前記〔1〕又は〔2〕の繊維製品処理用物品。
〔4〕前記(A)成分が、カチオン性界面活性剤を含む前記〔1〕〜〔3〕のいずれかの繊維製品処理用物品。
〔5〕(B)成分:ディート、3−(N−n−ブチル−N−アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p−メンタン−3,8−ジオール、2−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン−1−カルボン酸1−メチルプロピル、及びピレスロイド系化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、
(A)成分:前記(B)成分とは異なる、加熱により溶融可能である化合物の1種以上からなり、1atm、30℃において固体状である成分と、
を含み、1atm、30℃において固体状であり、31〜120℃で溶融可能である、繊維製品処理剤組成物。
〔6〕前記(B)成分の質量に対する前記(A)成分の質量比が0.1〜999であり、
前記(B)成分の含有量が、前記繊維製品処理剤組成物の総質量に対して0.1〜99質量%である前記〔5〕の繊維製品処理剤組成物。
〔7〕前記(A)成分と前記(B)成分との合計量が、前記繊維製品処理剤組成物の総質量に対して1〜100質量%である前記〔5〕又は〔6〕の繊維製品処理剤組成物。
〔8〕前記(A)成分が、カチオン性界面活性剤を含む前記〔5〕〜〔7〕のいずれかの繊維製品処理剤組成物。
処理剤組成物は、以下の(A)成分と(B)成分とを含む。
処理剤組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)成分及び(B)成分以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。
1atm、30℃において固体状であるとは、1atm、30℃の条件下で静置したときに流動しない(変形しない)ことを示す。
処理剤組成物は、31〜110℃で溶融可能であることが好ましく、40〜100℃で溶融可能であることがより好ましい。
(A)成分は、(B)成分とは異なる、加熱により溶融可能である化合物の1種以上からなり、1atm、30℃において固体状である成分である。処理剤組成物が(A)成分を含むことによって、1atm、30℃において液状である(B)成分を含む処理剤組成物を、1atm、30℃において固体状とすることができ、((B)成分に起因する)繊維製品処理用物品のべたつきを抑制できる。
(A)成分は、1種単独で用いても、2種以上の化合物の混合物を用いてもよい。処理剤組成物が30℃において固体状であり、40〜120℃で溶融可能となるように、後述する(B)成分の種類、配合量に応じて(A)成分を選択し、2種以上を組み合わせたり、処理剤組成物中の(A)成分の配合量を調整したりすることができる。
(A)成分が2種以上の化合物の混合物である場合、(A)成分の融点は、混合物としての融点である。混合物としての融点が前記した好ましい範囲内であるときに、混合物が、融点が前記した好ましい範囲外である化合物を含んでいてもよい。
(A)成分を構成する化合物の少なくとも一部は、融点が前記した好ましい範囲内である化合物であることが好ましい。
ただし化合物に不純物が含まれている場合や、油化学便覧(第四版、日本油化学会編)に記載のとおり多形がある場合は、融点に幅がある。この場合、本発明では油化学便覧(第四版、日本油化学会編)に記載の最も高い融点を採用し、油化学便覧にない場合は、化学大辞典(共立出版)に記載の最も高い融点を採用する。また、上記辞典、便覧等に融点が記載されていない化合物の場合は、分析化学便覧(社団法人 日本分析化学会編、改訂二版)、有機化学ハンドブック(社団法人 有機合成化学協会編 全訂改版 技報堂出版)、又は基準油脂分析試験法(社団法人 日本油化学協会)に記載の融点測定方法に準じる方法で測定した値を採用する。なお、本発明における融点とは、混合物における融点も含まれている。
界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、半極性界面活性剤等が挙げられる。
[R11R12R13R14N]+X− ・・・式1
(式中、R11及びR12は、各々独立して、炭素数が12〜26、好ましくは14〜18のアルキル基を示す。R13及びR14は、各々独立して、炭素数が1〜4、好ましくは1〜2のアルキル基、ベンジル基、炭素数が2〜4、好ましくは2〜3のヒドロキシアルキル基、又はポリオキシアルキレン基を示す。X−は、対イオンを示す。)
[R15R16R17R18N]+X− ・・・式2
(式中、R15は、炭素数が12〜26、好ましくは14〜18のアルキル基を示す。R16、R17及びR18は、各々独立して、炭素数が1〜4、好ましくは1〜2のアルキル基、ベンジル基、炭素数が2〜4、好ましくは2〜3のヒドロキシアルキル基、又はポリオキシアルキレン基を示す。X−は、対イオンを示す。)
[R19R20R21R22N]+X− ・・・式3
(式中、R19、R20、R21及びR22は、各々独立して、炭素数が1〜4、好ましくは1〜2のアルキル基、ベンジル基、炭素数が2〜4、好ましくは2〜3のヒドロキシアルキル基、又はポリオキシアルキレン基を示す。X−は、対イオンを示す。)
[R23R24R25R26N]+X− ・・・式4
(式中、R23、R24及びR25は、各々独立して、炭素数が12〜26、好ましくは14〜18のアルキル基を示す。R26は、炭素数が1〜4、好ましくは1〜2のアルキル基、ベンジル基、炭素数が2〜4、好ましくは2〜3のヒドロキシアルキル基、又はポリオキシアルキレン基を示す。X−は、対イオンを示す。)
α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩としては、例えば、下記式(a)で表される化合物が挙げられる。
R1−CH(SO3M)−COOR2・・・(a)
式(a)中、R1は、炭素数8〜20、好ましくは炭素数14〜16の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基、または炭素数8〜20の直鎖もしくは分岐鎖状のアルケニル基である。R2は炭素数1〜6のアルキル基であり、炭素数1〜3であることが好ましい。
Mは、対イオンを表し、例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン塩;アンモニウム塩等が挙げられる。なかでもアルカリ金属塩が好ましい。
α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩として、α−スルホ脂肪酸メチルエステルナトリウム塩(MES)が好ましい。
(6)炭素数8〜18のアルキル基を有する直鎖又は分岐鎖のアルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS又はABS)。
(7)炭素数10〜20のアルカンスルホン酸塩。
(8)炭素数10〜20のα−オレフィンスルホン酸塩(AOS)。
(9)炭素数10〜20のアルキル硫酸塩又はアルケニル硫酸塩(AS)。
(10)炭素数2〜4のアルキレンオキシドのいずれか、又はエチレンオキシドとプロピレンオキシド(モル比EO/PO=0.1/9.9〜9.9/0.1)を、平均0.5〜10モル付加した炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル(又はアルケニル)基を有するアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸塩(AES)。
(11)炭素数2〜4のアルキレンオキシドのいずれか、又はエチレンオキシドとプロピレンオキシド(モル比EO/PO=0.1/9.9〜9.9/0.1)を、平均3〜30モル付加した炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル(又はアルケニル)基を有するアルキル(又はアルケニル)フェニルエーテル硫酸塩。
(12)炭素数2〜4のアルキレンオキシドのいずれか、又はエチレンオキシドとプロピレンオキシド(モル比EO/PO=0.1/9.9〜9.9/0.1)を、平均0.5〜10モル付加した炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル(又はアルケニル)基を有するアルキル(又はアルケニル)エーテルカルボン酸塩。
(13)炭素数10〜20のアルキルグリセリルエーテルスルホン酸等のアルキル多価アルコールエーテル硫酸塩。
(14)炭素数10〜20のアルキル基を有するモノアルキル、ジアルキル又はセスキアルキルリン酸塩。
(15)ポリオキシエチレンモノアルキル、ジアルキル又はセスキアルキルリン酸塩。
(16)炭素数10〜20の高級脂肪酸塩(石鹸)。
高級アルコールは、具体的には、炭素数が14以上、好ましくは18以上の鎖式アルコールである。高級アルコールの炭素数は、好ましくは24以下である。高級アルコールの具体例としては、1−テトラデカノール、1−ヘキサデカノール、1−オクタデカノール、1−イコサノール、1−ドコサノール等が挙げられる。これらの高級アルコールはいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
高級脂肪酸は、具体的には、炭素数12以上、好ましくは14以上、より好ましくは16以上の鎖状飽和モノカルボン酸である。高級脂肪酸の炭素数は、好ましくは24以下、より好ましくは22以下である。高級脂肪酸の具体例としては、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸等が挙げられる。これらの高級脂肪酸は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
高級脂肪酸エステルとしては、高級脂肪酸と炭素数1〜4の1価アルコールとのエステル、高級脂肪酸と炭素数1〜6の多価アルコールとのモノ又はポリエステル、高級脂肪酸と炭素数1〜6の多価アルコールのエチレンオキシド付加物とのモノ又はポリエステル等が挙げられる。
高級脂肪酸と炭素数1〜6の多価アルコールとのモノ又はポリエステルとしては、例えば高級脂肪酸グリセリンエステルが挙げられる。高級脂肪酸グリセリンエステルとしては、例えば、炭素数16以上の飽和脂肪酸とグリセリンとのモノ−、ジ−又はトリエステル、具体的には、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノパルミテート等が挙げられる。このうち、グリセリンモノステアレートが好ましい。これらの脂肪酸グリセリンエステルはいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カチオン性界面活性剤としては、べたつきの抑制効果と、(B)成分の繊維製品への付着性がより優れる点から、前記した(1)が好ましい。
(A)成分がカチオン性界面活性剤を含む場合、(A)成分の総質量に対するカチオン性界面活性剤の割合は、1〜90質量%が好ましく、5〜85質量%がより好ましく、10〜70質量%がさらに好ましく、15〜50質量%が特に好ましい。カチオン性界面活性剤の割合が前記範囲内であると、(B)成分の繊維製品への付着性がより優れる。
(A)成分がカチオン性界面活性剤を含む場合、(B)成分の繊維製品への付着性とべたつき抑制効果を高めるために、カチオン性界面活性剤以外の(A)成分を併用することが好ましい。具体的には、カチオン性界面活性剤として、ジステアリルジメチルアンモニウム塩や、ジ水添牛脂アルキルジメチルアンモニウム塩、ジ水添牛脂アルキルベンゼンメチルアンモニウム塩、ジステアリルメチルベンジルアンモニウム塩、ジステアリルメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩、ジステアリルメチルヒドロキシプロピルアンモニウム塩、ジステアリルジヒドロキシエチルアンモニウム塩、ジオレイルジメチルアンモニウム塩、ジココナッツアルキルジメチルアンモニウム塩等のジ長鎖アルキルジ短鎖アルキル型アンモニウム塩と、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸等の高級脂肪酸とを併用するのが好ましい。高級脂肪酸の質量に対するカチオン性界面活性剤の質量比(カチオン性界面活性剤/高級脂肪酸)は、0.1〜5が好ましく、0.2〜2がより好ましい。
(B)成分は、ディート(別称:N,N−ジエチル−m−トルアミド)、3−(N−n−ブチル−N−アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル(別称:IR3535)、p−メンタン−3,8−ジオール、2−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン−1−カルボン酸1−メチルプロピル(別称:イカリジン、CAS 119515−38−7、)、及びピレスロイド系化合物からなる群から選択される少なくとも1種の害虫忌避成分である。これらの害虫忌避成分はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分は、常圧常温(例えば1atm、30℃)で液状であるため、(B)成分を単独で担持させると、基材から流れ落ちたり物品がべたついたりする場合がある。
壁物質としては、カプセル化材料として一般的に用いられているものを特に制限なく用いることができる。例えば、ゼラチンや寒天等の天然系高分子、油脂やワックス等の油性膜形成物質、ポリアクリル酸系、ポリビニル系、ポリメタクリル酸系、メラミン系、ウレタン系等の合成高分子物質等が挙げられる。これらの壁物質はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。壁物質としては、乾燥機の温度と機械力に耐えられるものが好ましい。
カプセルの粒径は特に限定されないが、衣類への付着性及び衣類の外観を変化させないという観点から、300μm以下が好ましい。
他の成分としては、例えば、(B)成分以外の害虫忌避成分が挙げられる。
(B)成分以外の害虫忌避成分としては、害虫忌避効果を有する成分であればよく、公知の害虫忌避剤に有効成分として使用されている公知の害虫忌避成分が適用可能である。
(B)成分以外の害虫忌避成分の具体例としては、ジ−n−ブチルサクシネート、ヒドロキシアニソール、ロテノン、害虫忌避効果を有する香料等が挙げられる。
害虫忌避効果を有する香料は、カプセル香料でもよい。
(B)成分と害虫忌避効果を有する香料との混合物をカプセル化してもよい。
(B)成分と害虫忌避効果を有しない香料との混合物をカプセル化してもよい。
基材とは、(A)成分及び(B)成分を含む処理剤組成物を担持させるものである。基材としては、処理剤組成物を担持できるものであればよく、例えば、吸液性を有する基材が挙げられる。吸液性を有する基材としては、例えば紙、織物、編物、不織布、スポンジ等が挙げられる。
ここで、「不織布」の定義はJIS−L−0222による定義に準じる。すなわち、「繊維シート、ウェブ又はバットで、繊維が一方向又はランダムに配向しており、交流、及び/又は融着、及び/又は接着によって繊維間が結合されたもの。ただし、紙、織物、編物、タフト及び縮絨(しゅくじゅう)フェルトを除く。」を意味する。
なお、不織布の坪量は、不織布の単位面積当たりの不織布の質量である。不織布の坪量は、JIS L 1906:2000「一般長繊維不織布試験方法」に準じて測定できる。不織布として市販品を用いる場合は、各メーカーにより「坪量」、「目付け」又は「米坪」として表される値を坪量として採用できる。これらの値の単位はいずれもg/m2である。
シート状の基材の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。基材の厚さは、ABSデジマチックインジケーター 543−250BS ID−C112BS(ミツトヨ社製)を用いて測定される平均厚さである。
シート状の基材の強度としては、引張強さが縦方向50N/50mm以上、横方向15N/50mm以上であることが望ましい。強度が高いと乾燥中の基材の変形が抑えられ、処理剤組成物が剥がれ落ちにくいことからムラ付きを抑制できる。縦方向は、製造時の長軸の方向、つまりMD(Machine Direction)である。横方向は、縦方向と直交する方向、つまりTD(Traverse Direction)である。引張強さは、後述する実施例に記載の方法により測定される。
単位面積当たりの(B)成分の質量が前記下限値以上であると、乾燥機での乾燥時に繊維製品処理用物品と接触した繊維製品に、充分な量の(B)成分が付着し、充分な忌避効果を発揮させることができる。また、単位面積当たりの(B)成分の質量が多いほど、繊維製品に任意の量の(B)成分を付着させるために使用する繊維製品処理用物品の量を少なくできる。
単位面積当たりの(B)成分の質量が前記上限値以下であると、処理剤組成物を基材に担持させやすい。
例えば以下の方法により繊維製品処理用物品を製造できる。
(A)成分の融点以上の温度で(A)成分を加熱溶融し、溶融した(A)成分に対して(B)成分、及び必要に応じて他の成分を添加して液状の処理剤組成物を調製し、前記処理剤組成物をシート状の基材に塗布し、(A)成分の融点未満の温度に冷却する方法。
(A)成分の融点以上の温度としては、(A)成分の融点+5℃以上、かつ(A)成分の融点+10℃以下が好ましい。
繊維製品としては、特に制限はなく、例えば衣類、カーテン、ソファーカバー、カーペット、タオル、ハンカチ、シーツ、毛布等が挙げられる。
害虫忌避効果の対象となる害虫としては、例えば蚊、ブヨ、サシバエ、イエダニ、トコジラミ(ナンキンムシ)、マダニ、ツツガムシ、アリ、ゴキブリ、クモ、ヤスデ、ムカデ等が挙げられる。
乾燥機としては、従来、衣類等の乾燥に用いられているものを使用でき、典型的には、衣類等を回転させながら加熱するものを使用する。乾燥機の具体例としては、電気衣類乾燥機、ガス衣類乾燥機、ドラム式洗濯乾燥機、洗濯乾燥機、タンブル乾燥機、回転式乾燥機等が挙げられる。
乾燥機での乾燥時の温度は、一般に用いられている温度であってよく、通常、家庭用乾燥機では約80℃、業務用乾燥機では約115℃である。
乾燥時間は、特に制限はないが、好ましくは30分〜360分、より好ましくは60分〜300分である。乾燥時間が短いと、繊維製品の乾燥が不充分で、繊維製品に生乾き臭が生じるおそれがある。乾燥時間が長すぎると、繊維製品が傷む可能性がある。
本発明の繊維製品処理用物品による繊維製品の処理は上記の方法だけでなく、洗濯処理の不要な乾いた衣類等を用いて、乾燥機内で短時間(1〜30分)で前記成分を付着させる方法でもよい。左記方法により、長時間乾燥による前記成分のロスも最小限に抑えられ、効率よく衣類へ付着することができる。
また、処理する衣類の量に応じて、使用する繊維製品処理用物品の数を適宜変えてもよい。例えば、処理する衣類が多い場合は、繊維製品処理用物品を複数(例えば2〜5個)使用することで、1個使用する場合に比べて、衣類へ充分量の(B)成分を均一に付着することができる。
(A)成分:ジステアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェート(融点:37℃):ステアリン酸(融点:72℃):ソルビタンモノステアレート(融点:49〜65℃):ラウリルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート(融点:40℃未満)=28:38:28:6(質量比)の混合物。混合物としての融点:55〜57℃。ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製。
ラウリルアルコール((A)成分比較品):融点24℃、富士フィルム和光純薬社製。
香料:特開2011−132640の表2記載の香料組成物。
<繊維製品処理用物品の製造>
以下の手順で繊維製品処理用物品を製造した。
まず、HOTTING BATH(ADVANTEC社製)に水道水をいれ(A)成分の融点+5〜10℃に設定した。次に、(A)成分を300mLビーカーに入れ、HOTTING BATH内にて加熱溶融した。次に、表1〜2に示す組成のように(B)成分及び香料を添加し、加熱溶解混合して処理剤組成物を調製した。ただし、比較例1では(B)成分を添加しなかった。比較例2においては、(B)成分をそのまま処理剤組成物とした。
表1〜2中、各成分の含有量(%)は質量%である。表中の空欄は、その成分が配合されていないことを示す。
実施例1〜6、比較例1〜3:ポリエチレン−ポリプロピレン複合繊維不織布、坪量20g/m2、厚さ0.1mm、フラット2次加工。
実施例7:ポリエチレン−ポリプロピレン複合繊維不織布、坪量20g/m2、厚さ0.3mm、加工なし。
実施例8:ポリエチレン−ポリプロピレン複合繊維不織布、坪量20g/m2、厚さ0.2mm、エンボス1次加工。
裁断した不織布に、2mLポリスポイトを用いて、表1〜2に示す量(g)の前記処理剤組成物を塗布した。塗布後、25℃で1日放置して繊維製品処理用物品を得た。
裁断した不織布に、2mLポリスポイトを用いて、表1に示す量(g)の前記処理剤組成物を塗布した。塗布後、25℃で1日放置して繊維製品処理用物品を得た。その後、以下の操作を行って繊維製品処理用物品を評価した。
ただし、(B)成分をそのまま、裁断した不織布に塗布した比較例3においては、塗布した(B)成分は固体にならず、目的の繊維製品処理用物品をうまく製造できなかった。そのため、比較例3については以下の操作は行わなかった。
「繊維製品の前処理」
繊維製品として、市販のB.V.D肌シャツ(綿100%、フジボウアパレル社製)2枚を二槽式洗濯機(三菱電機社製、CW−C30A1−H)にて市販洗剤「消臭ブルーダイヤ」(ライオン社製)を用いて、以下の条件で前処理を行った。
洗剤標準使用量、浴比30倍、50℃の水道水、洗浄15分、脱水5分の工程を2回、その後流水すすぎ15分、脱水5分の工程を5回繰り返す。
前処理した2枚の繊維製品(B.V.D肌シャツ)を縦型全自動式洗濯機(AW−8V2 TOSHIBA社製)に入れ、洗浄10分すすぎ1回、脱水5分を行った。
脱水終了直後の2枚の繊維製品と一緒に、上記方法で作製した繊維製品処理用物品1枚を電気乾燥機(ED−45C TOSHIBA社製)に入れ、50〜80℃で1時間乾燥処理を行った。ブランクとして、繊維製品処理物品は入れずに上記と同様に乾燥処理を行った。
上記方法で作製した繊維製品処理用物品のべたつきの無さを以下の手順で評価した。結果を表1〜2に示す。
25℃の条件下で、評価者(n=5)により対象品(比較例1の繊維製品処理用物品)と比較した際のべたつきの無さを下記3段階で点数付けし、評価者の平均点数を算出した。
平均点数は、2点以上が好ましく、2.5点以上がより好ましい。
なお、評価が1点の繊維製品処理用物品は実用的でないと判断し、下記の害虫忌避効果は評価しなかった。
3点:対象品と比較してべたつきが改善。
2点:対象品と同等。
1点:対象品と比較してべたつきが悪化。
上記方法で処理した繊維製品(以下、「処理品」ともいう。)について、害虫忌避効果(防蚊性)を以下の手順で評価した。結果を表1〜2に示す。
天気:晴れ、気温:34.9℃、湿度:58%、試験実施場所:ヒトスジシマカが棲息する屋外土壌上。
「試験方法」
実地忌避効力試験:
無処理品(ブランク)及び処理品のB.V.D肌シャツを着用し、3分間当たりに全身に寄って来るヒトスジシマカの数をカウントした。無処理品着用時に蚊に刺された数をA、処理品着用時に蚊に刺された数をBとした。
試験後、ヒトスジシマカによる刺咬数を調査し、下記式により刺咬阻止率を算出した。
刺咬阻止率は、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
刺咬阻止率(%)={(A−B)/A}×100
ブロモフェノールブルー0.4gを95%エタノール200gに溶解し、純水で1Lにメスアップし染色液とした。
処理品を染色液に完全に浸し、染色液から取り出して絞ったのち、色が出なくなるまで水道水ですすいだ。
処理品の腹部中央部15cm×15cmの範囲を目視で観察し、その中にある濃青斑点の数を数えた。斑点の数から以下の基準でムラ付きの無さを評価した。ブロモフェノールブルーは、処理剤組成物中のカチオン(カチオン性界面活性剤)を染色する。斑点の数が少ないほど、処理剤組成物のムラ付き、ひいては(B)成分のムラ付きの発生が抑制されていることがわかる。
○:斑点が20個未満。
△:斑点20個以上40個未満。
×:斑点が40個以上。
JIS L 1913:2010記載の引張強さ及び伸び率の試験(標準時)に従い、繊維製品処理用物品の縦方向及び横方向の引張強さを測定した。試験片の幅は50.0mmで試験を行った。
Claims (8)
- 繊維製品を乾燥機で乾燥する際に使用される繊維製品処理用物品であって、
基材と、前記基材に担持された繊維製品処理剤組成物とを含み、
前記繊維製品処理剤組成物が、
(B)成分:ディート、3−(N−n−ブチル−N−アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p−メンタン−3,8−ジオール、2−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン−1−カルボン酸1−メチルプロピル、及びピレスロイド系化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、
(A)成分:前記(B)成分とは異なる、加熱により溶融可能である化合物の1種以上からなり、1atm、30℃において固体状である成分と、
を含み、1atm、30℃において固体状であり、31〜120℃で溶融可能である、繊維製品処理用物品。 - 前記(B)成分の質量に対する前記(A)成分の質量比が0.1〜999であり、
前記(B)成分の含有量が、前記繊維製品処理剤組成物の総質量に対して0.1〜99質量%である請求項1に記載の繊維製品処理用物品。 - 前記(A)成分と前記(B)成分との合計量が、前記繊維製品処理剤組成物の総質量に対して1〜100質量%である請求項1又は2に記載の繊維製品処理用物品。
- 前記(A)成分が、カチオン性界面活性剤を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の繊維製品処理用物品。
- (B)成分:ディート、3−(N−n−ブチル−N−アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p−メンタン−3,8−ジオール、2−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン−1−カルボン酸1−メチルプロピル、及びピレスロイド系化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、
(A)成分:前記(B)成分とは異なる、加熱により溶融可能である化合物の1種以上からなり、1atm、30℃において固体状である成分と、
を含み、1atm、30℃において固体状であり、31〜120℃で溶融可能である、繊維製品処理剤組成物。 - 前記(B)成分の質量に対する前記(A)成分の質量比が0.1〜999であり、
前記(B)成分の含有量が、前記繊維製品処理剤組成物の総質量に対して0.1〜99質量%である請求項5に記載の繊維製品処理剤組成物。 - 前記(A)成分と前記(B)成分との合計量が、前記繊維製品処理剤組成物の総質量に対して1〜100質量%である請求項5又は6に記載の繊維製品処理剤組成物。
- 前記(A)成分が、カチオン性界面活性剤を含む請求項5〜7のいずれか一項に記載の繊維製品処理剤組成物。
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