本発明を具体的に説明する前に、本明細書で使用する「有機基」について説明する。
本明細書において、「有機基」は、1個以上の炭素原子を含有する基、又は有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基を意味する。
当該「有機基」の例は、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
シアノ基、
ホルミル基、
RaO−、
RaCO−、
RaSO2−、
RaCOO−、
RaNRaCO−、
RaCONRa−、
RaOCO−、
RaOSO2−、及び、
RaNRbSO2−
(これらの式中、Raは、独立して、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
Rbは、独立して、H又は1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基である)
を包含する。
上記有機基としては、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基が好ましい。
以下に、本発明を具体的に説明する。
本発明のポリテトラフルオロエチレン粉末の製造方法は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子を含むPTFE水性分散液に超音波を照射して、PTFE粒子を凝析させる工程(以下「凝析工程」ともいう。)を含む。
上記PTFE粒子はPTFEからなる。
上記PTFEとしては、TFE単独重合体であっても、変性PTFEであってもよい。変性PTFEは、TFE単位とTFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位とを含む。
上記変性モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕等のパーフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕等のクロロフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン〔VDF〕等の水素含有フルオロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル;パーフルオロアルキルエチレン;エチレン;ニトリル基を有するフッ素含有ビニルエーテル等が挙げられる。また、用いる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
上記パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、下記一般式(X)
CF2=CF−ORf (X)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上記一般式(X)において、Rfが炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基を表すものであるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕が挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜5である。
上記PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられるが、パーフルオロアルキル基がパーフルオロメチル基であるパーフルオロメチルビニルエーテル〔PMVE〕、パーフルオロアルキル基がパーフルオロプロピル基であるパーフルオロプロピルビニルエーテル〔PPVE〕が好ましい。
パーフルオロアルキルエチレンとしては特に限定されず、例えば、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、パーフルオロヘキシルエチレン(PFHE)、パーフルオロオクチルエチレン(PFOE)等が挙げられる。
上記変性PTFEにおける変性モノマーとしては、HFP、CTFE、VDF、PMVE、PPVE、PFBE、PFHE及びエチレンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記変性PTFEは、変性モノマー単位が0.0001〜1質量%の範囲であることが好ましい。変性モノマー単位の下限としては、0.001質量%がより好ましく、0.01質量%が更に好ましい。変性モノマー単位の上限としては、0.5質量%がより好ましく、0.3質量%が更に好ましい。本明細書において、上記変性モノマー単位とは、変性PTFEの分子構造の一部分であって変性モノマーに由来する部分を意味し、全単量体単位とは、変性PTFEの分子構造における全ての単量体に由来する部分を意味する。
上記PTFEにおいて、分子量の指標として用いられる標準比重(SSG)、および溶融粘度(MV)は特に限定されない。
上記PTFEは、非溶融加工性を有し、フィブリル化性を有する高分子量PTFEであってもよいし、溶融加工性を有し、フィブリル化性を有しない低分子量PTFEであってもよい。
上記非溶融加工性とは、ASTM D−1238に準拠して、結晶化融点より高い温度でメルトフローレートを測定できない性質を意味し、溶融加工性とは、結晶化融点より高い温度でメルトフローレートを測定できる性質を意味する。
フィブリル化性の有無は、高分子量PTFE粉末を成形する代表的な方法である「ペースト押出し」で判断できる。通常、ペースト押出しが可能であるのは、高分子量のPTFEがフィブリル化性を有するからである。ペースト押出しにより連続した押出物(押出ストランド)が得られない、あるいはペースト押出しで得られた未焼成の成形物に実質的な強度や伸びがない場合、例えば伸びが0%で引っ張ると切れるような場合はフィブリル化性がないとみなすことができる。
上記高分子量PTFEは、標準比重(SSG)が2.130〜2.280であることが好ましい。上記標準比重は、ASTM D4895−89に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D−792に準拠した水置換法により測定する。本発明において、「高分子量」とは、上記標準比重が上記の範囲内にあることを意味する。
上記低分子量PTFEは、380℃における溶融粘度が1×102〜7×105Pa・sである。本発明において、「低分子量」とは、上記溶融粘度が上記の範囲内にあることを意味する。
上記高分子量PTFEは、上記低分子量PTFEよりも溶融粘度が極めて高く、その正確な溶融粘度を測定することは困難である。他方、上記低分子量PTFEの溶融粘度は測定可能であるが、上記低分子量PTFEからは、標準比重の測定に使用可能な成形品を得ることが難しく、その正確な標準比重を測定することが困難である。従って、本発明では、上記高分子量PTFEの分子量の指標として、標準比重を採用し、上記低分子量PTFEの分子量の指標として、溶融粘度を採用する。なお、上記高分子量PTFE及び上記低分子量PTFEのいずれについても、直接に分子量を特定できる測定方法は知られていない。
上記高分子量PTFEは、ピーク温度が333〜347℃であることが好ましく、335〜345℃であることがより好ましい。上記低分子量PTFEは、ピーク温度が322〜333℃であることが好ましく、324〜332℃であることがより好ましい。上記ピーク温度は、300℃以上の温度に加熱した履歴がないPTFEについて示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
上記高分子量PTFEは、300℃以上の温度に加熱した履歴がないPTFEについて示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線において、333〜347℃の範囲に少なくとも1つ以上の吸熱ピークが現れ、上記融解熱曲線から算出される290〜350℃の融解熱量が62mJ/mg以上であることが好ましい。
上記PTFE粒子は、コアシェル構造を有していてもよい。例えば、粒子中に高分子量のPTFEのコアと、より低分子量のPTFEまたは変性のPTFEシェルとを含む変性PTFEが挙げられる。このような変性PTFEとしては、例えば、特表2005−527652号公報に記載されるPTFEが挙げられる。
上記コアシェル構造としては、次の構造をとり得る。
コア:TFE単独重合体 シェル:TFE単独重合体
コア:変性PTFE シェル:TFE単独重合体
コア:変性PTFE シェル:変性PTFE
コア:TFE単独重合体 シェル:変性PTFE
コア:低分子量PTFE シェル:高分子量PTFE
コア:高分子量PTFE シェル:低分子量PTFE
上記コアシェル構造を有するPTFE粒子において、コアの比率の下限は、好ましくは0.5質量%、より好ましくは1.0質量%、更に好ましくは3.0質量%、特に好ましくは5.0質量%、最も好ましくは10.0質量%である。コアの比率の上限は、好ましくは99.5質量%、より好ましくは99.0質量%、更に好ましくは97.0質量%、特に好ましくは95.0質量%、最も好ましくは90.0質量%である。
上記コアシェル構造を有するPTFE粒子において、シェルの比率の下限は、好ましくは0.5質量%、より好ましくは1.0質量%、更に好ましくは3.0質量%、特に好ましくは5.0質量%、最も好ましくは10.0質量%である。シェルの比率の上限は、好ましくは99.5質量%、より好ましくは99.0質量%、更に好ましくは97.0質量%、特に好ましくは95.0質量%、最も好ましくは90.0質量%である。
上記コアシェル構造を有するPTFE粒子において、上記コア又は上記シェルを2層以上の構成とすることもできる。例えば、変性PTFEのコア中心部と、TFE単独重合体のコア外層部と、変性PTFEのシェルとを有する3層構造を有するPTFE粒子であってよい。このような3層構造を有するPTFE粒子としては、例えば、国際公開第2006/054612号に記載されるPTFEが挙げられる。
本明細書において、PTFEを構成する各単量体の含有量は、NMR、FT−IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
上記PTFE水性分散液はPTFE粒子を含む。上記PTFE粒子の濃度は、通常、PTFE水性分散液の1〜70質量%である。好ましくは8〜60質量%であり、より好ましくは8〜50質量%である。PTFE粒子の濃度の更により好ましい下限はPTFE水性分散液の10質量%であり、特に好ましい下限は15質量%であり、更により好ましい上限は40質量%であり、特に好ましい上限は35質量%である。
上記PTFE粒子の平均一次粒子径は、例えば、50〜500nmである。平均一次粒子径の下限は、好ましくは100nm、より好ましくは150nmである。平均一次粒子径の上限は、好ましくは400nm、より好ましくは350nmであり、更に好ましくは300nmである。
上記平均一次粒子径は、PTFE粒子濃度を0.15質量%に調整した水性分散液の単位長さに対する550nmの投射光の透過率と、透過型電子顕微鏡写真における定方向径を測定して決定された平均一次粒子径との検量線を作成し、測定対象である水性分散液について、上記透過率を測定し、上記検量線をもとに決定できる。
上記PTFE水性分散液は、通常、水性媒体を含む。上記水性媒体は、水を含む液体であれば特に限定されず、水に加え、例えば、アルコール、エーテル、ケトン、パラフィンワックス等の有機溶媒を含むものであってもよい。
上記水性媒体は、水が50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%が最も好ましい。
上記PTFE水性分散液は、通常、界面活性剤を含む。上記界面活性剤は、含フッ素界面活性剤であってもよいし、炭化水素系界面活性剤であってもよい。炭化水素系界面活性剤は、フッ素原子を含まない界面活性剤である。
含フッ素界面活性剤及び炭化水素系界面活性剤としては特に限定されず、従来公知の界面活性剤を用いることができ、例えば、後述する含フッ素界面活性剤及び炭化水素系界面活性剤等が挙げられる。
上記PTFE水性分散液において界面活性剤の含有量は特に限定されないが、上記PTFE水性分散液100質量%に対して0.0001〜10.0質量%であることが好ましい。0.0001質量%未満であると、分散安定性に劣る場合があり、10.0質量%を超えると、存在量に見合った分散効果がなく実用的でない。上記界面活性剤のより好ましい下限は0.001質量%であり、更に好ましい下限は0.01質量%であり、特に好ましい下限は0.07質量%である。より好ましい上限は8.5質量%であり、更に好ましい上限は1.0質量%であり、更により好ましい上限は0.90質量%であり、更に好ましい上限は0.46質量%であり、特に好ましい上限は0.32質量%である。
上記PTFE水性分散液は、従来公知の方法で得ることができる。
上記PTFE水性分散液としては、PTFE粒子以外に、溶融加工性フッ素樹脂を含むものを用いてもよく、例えば、PTFE粒子を含む水性分散液と溶融加工性フッ素樹脂粒子の水性分散液とを混合したものを用いてもよい。
上記溶融加工性フッ素樹脂としては、例えば、TFE/HFP共重合体〔FEP〕、TFE/PAVE共重合体〔PFA〕、エチレン/TFE共重合体〔ETFE〕、エチレン/TFE/HFP共重合体等が挙げられるが、中でもFEPが好ましい。
上記凝析工程における超音波の照射は、PTFE粒子を凝析させる観点で、20W以上の出力で行うことが好ましい。照射出力が低い場合、凝析時間が長くなり生産性に劣るおそれがある。また、凝析することができず目的とするPTFE粉末を得ることができないおそれがある。
上記照射出力は、100W以上の出力で行うことがより好ましく、200W以上が更に好ましい。出力の上限は特に限定されないが、例えば、3000W以下であってよく、1000W以下が好ましく、800W以下がより好ましい。
上記超音波の照射は、PTFE粒子を凝析させる観点で、15kHz以上の周波数で行うことが好ましい。上記周波数は、18kHz以上がより好ましい。周波数の上限は特に限定されないが、例えば、100kHz以下が好ましく、50kHz以下がより好ましく、40kHz以下が更に好ましい。
上記超音波の照射時間は特に限定されないが、例えば、60秒以上であることが好ましく、300秒以上であることがより好ましい。
超音波の照射時間はPTFE粒子を凝析させるのに十分な時間であればよく、生産性の観点から、20分以下であることが好ましい。
上記超音波の照射は、市販の超音波発生装置を用いて行うことができる。
上記超音波照射装置としては、市販の超音波発信装置(例えば、超音波ホモジナイザー)、超音波発信器、循環式超音波照射機、超音波振動子、超音波洗浄器などがあり、これらのものから適宜選択して用いることができる。また、前記水性分散液に超音波を照射する方法は、PTFE水性分散液が凝集する条件であれば、特に制限なく、従来公知の方法を採用することができる。
超音波を照射する具体的な方法としては、例えば、超音波ホモジナイザーのノズル部分をPTFE水性分散液に浸して行う方法や、PTFE水性分散液を導入した容器に投げ込み式の超音波振動子を浸して照射する方法、予め水性媒体などを仕込んだ超音波洗浄器にPTFE水性分散液が入った容器を導入し照射する方法、槽型に製作された超音波洗浄器や超音波発信器にPTFE分散液を導入し照射する方法等が挙げられる。
上記凝析工程は、水性分散液の温度を0〜80℃に調整した上で超音波を照射することが好ましい。水性分散液の温度の下限は10℃がより好ましく、20℃が更に好ましい。水性分散液の温度の上限は50℃がより好ましく、40℃が更に好ましい。
また、必要に応じてpHを調整してもよい。例えば、超音波を照射する前に炭酸アンモニウムや硝酸などを適宜加える方法等が挙げられる。
水性分散液の比重を1.03〜1.20に調整することが好ましい。水性分散液の比重の上限は1.10がより好ましく、1.08が更に好ましい。
上記凝析工程により生じる排水中の未凝集の上記TFE重合体濃度は、生産性の観点から低いことが好ましく、0.4質量%未満がより好ましく、0.3質量%未満が更に好ましい。
上記凝析工程によりPTFE水性分散液中のPTFE粒子が凝析し、湿潤PTFE粉末が生成する。
本発明の製造方法は、更に、凝析工程で得られた湿潤PTFE粉末を含む凝析後分散液から、湿潤PTFE粉末を単離する工程を含んでもよい。
また、単離した湿潤PTFE粉末を乾燥する工程を含んでもよい。
乾燥は、湿潤PTFE粉末をあまり流動させない状態で、熱風などの加熱手段を用いて行うことが好ましい。乾燥温度は、ポリマーの融点より低い温度であればよいが、通常100〜300℃の範囲が適している。上記乾燥は、120〜250℃、好ましくは140〜230℃の乾燥温度で行うことができる。上記乾燥は、減圧、真空、高周波と組み合わせてもよい。
乾燥時間は特に限定されず、乾燥後のPTFE粉末中の水分を含まなくなるまで行うことが好ましい。
本発明の製造方法で得られるPTFEは、色調L*が88以上であることが好ましく、90以上であることがより好ましい。
本発明の製造方法で得られるPTFEは、色調Zが80以上であることが好ましく、85以上であることがより好ましく、90以上であることが更に好ましい。
本発明の製造方法で得られるPTFEは、385℃で10分間焼成した後の色調L*が40以上であることが好ましく、45以上であることがより好ましい。
本発明の製造方法で得られるPTFEは、385℃で10分間焼成した後の色調Zが10以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましい。
色調L*及びZを測定するためのサンプルは、4.0gのPTFEの粉末を、内径28.6mm、厚み約4mmの円盤状PTFE成形体に成形して得られる。
上記PTFEの色調L*及びZは、JIS Z8781−4に準拠して、測色色差計(CIELABカラースケール)を用いて測定する。
上記焼成は、385℃に加熱した電気炉内で10分間熱処理することで実施する。
本発明の製造方法で得られるPTFE粉末は、見掛密度が0.60g/ml以下であることが好ましく、0.55g/ml以下であることがより好ましく、0.52g/ml以下であることが更に好ましく、0.40g/ml以上であることが好ましく、0.45g/ml以上であることがより好ましく、0.47g/ml以上であることが更に好ましい。
上記見掛密度はJIS K6892に準拠して測定する値である。
本発明の製造方法で得られるPTFE粉末は、平均粒径が1000μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましく、700μm以下であることが更に好ましく、300μm以上であることが好ましく、400μm以上であることがより好ましく、500μm以上であることが更に好ましい。
上記平均粒径は、JIS K6891に準拠して測定する値である。
本発明の製造方法は、超音波を照射することで凝析できるため簡便であり、必ずしも多量の凝析剤等を必要としないため、凝析剤等を除去する工程が必要でない点で有利である。
更に、通常、PTFE水性分散液には界面活性剤が含まれているため、得られるPTFE粉末に界面活性剤が残存する。本発明の製造方法では、残存する界面活性剤量が少ないPTFE粉末が得られる。
本発明の製造方法は、炭化水素系界面活性剤を用いて製造されたPTFE水性分散液からPTFE粉末を得る場合に特に有用である。
従来、乳化重合によりPTFEを製造する場合、含フッ素アニオン界面活性剤が使用されてきたが、最近では、含フッ素アニオン界面活性剤に代えて、炭化水素界面活性剤の使用も提案されている。
しかし、炭化水素系界面活性剤の存在下にTFEの重合を行うと、得られるポリテトラフルオロエチレン粉末が着色する傾向があり、改善の余地があった。
例えば、特表2015−516029号公報には、フッ素化ポリマー樹脂の熱誘起変色を低減させる方法であって、湿潤もしくは乾燥形態のフッ素化ポリマー樹脂を酸化剤に暴露させるステップを含む方法が記載されている。
本発明者等が鋭意検討したところ、PTFE水性分散液に超音波を照射して凝析させると、炭化水素系界面活性剤を用いて得られたPTFE水性分散液から得られるPTFE粉末の着色が低減されることが見出された。
すなわち、本発明の製造方法は、PTFE粒子を含むPTFE水性分散液に超音波を照射して、PTFE粒子を凝析させる工程を含み、前記ポリテトラフルオロエチレン水性分散液は、炭化水素系界面活性剤の存在下に、水性媒体中でテトラフルオロエチレンの重合を行うことにより得られたものであることが好ましい。
本発明のPTFE粉末の製造方法は、PTFE水性分散液が炭化水素系界面活性剤を用いて得られたものであったとしても、得られるPTFE粉末の着色を低減することができる。
上記PTFE水性分散液は、炭化水素系界面活性剤の存在下に、水性媒体中でテトラフルオロエチレンの重合を行う工程を含む方法により得ることができる。
すなわち、炭化水素系界面活性剤の存在下に、水性媒体中でテトラフルオロエチレンの重合を行う工程(以下「重合工程」ともいう)、及び、PTFE粒子を含むPTFE水性分散液に超音波を照射して、PTFE粒子を凝析させる工程を含むPTFE粉末の製造方法も本発明の一つである。
上記重合は、乳化重合であってよい。上記工程において、上記TFE、並びに、必要に応じて上述したTFEと共重合可能な変性モノマーを重合することにより、ポリテトラフルオロエチレンからなる粒子を含むPTFE水性分散液を得ることができる。
上記重合工程は、炭化水素系界面活性剤の存在下に行う。本発明において、炭化水素系界面活性剤としては、一般に知られているものを使用できる。例えば、特表2013−542308号公報、特表2013−542309号公報、特表2013−542310号公報に記載されているもの等を使用することができる。炭化水素系界面活性剤の詳細は後述する。
上記重合工程は、重合反応器に、水性媒体、上記界面活性剤、TFE及び必要に応じてTFEと共重合可能な変性モノマー、並びに、必要に応じて他の添加剤を仕込み、反応器の内容物を撹拌し、そして反応器を所定の重合温度に保持し、次に所定量の重合開始剤を加え、重合反応を開始することにより行うことができる。重合反応開始後に、目的に応じて、TFE等のモノマー、重合開始剤、連鎖移動剤及び上記界面活性剤等を追加添加してもよい。
上記重合において、通常、重合温度は、5〜120℃であり、重合圧力は、0.05〜10MPaGである。重合温度、重合圧力は、使用するモノマーの種類、目的とするPTFEの分子量、反応速度によって適宜決定される。
上記炭化水素系界面活性剤は、合計添加量で、水性媒体100質量%に対して0.0001〜10質量%の量を添加することが好ましい。より好ましい下限は0.001質量%であり、更に好ましい下限は0.01質量%であり、特に好ましい下限は0.1質量%である。より好ましい上限は1.0質量%であり、更に好ましい上限は0.50質量%であり、特に好ましい上限は0.35質量%である。0.0001質量%未満であると、分散力が不充分となるおそれがあり、10質量%を超えると、添加量に見合った効果が得られず、却って重合速度の低下や反応停止が起こるおそれがある。上記炭化水素系界面活性剤の添加量は、使用するモノマーの種類、目的とするPTFEの分子量等によって適宜決定される。
上記重合工程では、炭化水素系界面活性剤を少なくとも1種用いればよい。例えば、後述する炭化水素系界面活性剤を2種以上同時に用いてもよいし、炭化水素系界面活性剤以外のその他の界面活性能を有する化合物を同時に使用してもよい。炭化水素系界面活性剤と含フッ素界面活性剤を併用することもできる。
本発明の製造方法において、炭化水素系界面活性剤とともに、ラジカル重合で反応可能な官能基と親水基とを有する変性モノマー(以下「変性モノマー(A)」と記載する。)を使用してもよい。上記変性モノマー(A)としては、少なくとも1つ以上のビニル基を含む界面活性能を有する化合物であればよい。
上記変性モノマー(A)における親水基としては、例えば、−NH2、−PO3M、−OPO3M、−SO3M、−OSO3M、−COOM(各式において、Mは、H、金属原子、NR7 4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R7は、H又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)が挙げられる。上記親水基としては、なかでも、−SO3M又は−COOMが好ましい。R7としては、H又はC1−10の有機基が好ましく、H又はC1−4の有機基がより好ましく、H又はC1−4のアルキル基が更に好ましい。
上記金属原子としては、1、2価の金属原子が挙げられ、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
上記変性モノマー(A)における「ラジカル重合で反応可能な官能基」としては、例えば、エチレン性不飽和結合を有する基が挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する基は、下記式:
CX1X3=CX2R−
(式中、X1、X2及びX3は、それぞれ独立して、F、Cl、H、CF3、CF2H、CFH2、又は、CH3であり;Rは連結基である。)で示すことができる。好ましくは−CH=CH2、−CF=CH2、−CH=CF2、−CF=CF2、−CH2−CH=CH2、−CF2−CF=CH2、−CF2−CF=CF2、−(C=O)−CH=CH2、−(C=O)−CF=CH2、−(C=O)−CH=CF2、−(C=O)−CF=CF2、−(C=O)−C(CH3)=CH2、−(C=O)−C(CF3)=CH2、−(C=O)−C(CH3)=CF2、−(C=O)−C(CF3)=CF2、−O−CH2−CH=CH2、−O−CF2−CF=CH2、−O−CH2−CH=CF2、−O−CF2−CF=CF2等の不飽和結合を有する基が挙げられる。
上記変性モノマー(A)としては、例えば、一般式(270a):
CF2=CF−(CF2)n271a−Y271
(式中、n271aは、1〜10の整数を表し、Y271は、−SO3M271又は−COOM271を表し、M271は、H、NH4又はアルカリ金属を表す。)で表される界面活性剤、一般式(270b):
CF2=CF−(CF2C(CF3)F)n271b−Y271
(式中、n271bは、1〜5の整数を表し、Y271は、前記定義と同じ。)で表される界面活性剤、一般式(270c):
CF2=CF−O−(CFX271)n271c−Y271
(式中、X271は、F又はCF3を表し、n271cは、1〜10の整数を表し、Y271は、前記定義と同じ。)で表される界面活性剤、一般式(270d)
CF2=CF−O−(CF2CFX271O)n271d−CF2CF2−Y271
(式中、n271dは、1〜10の整数を表し、Y271及びX271は、前記定義と同じ。)で表される界面活性剤、一般式:(270e)
CX272 2=CFCF2−O−(CF(CF3)CF2O)n271e−CF(CF3)−Y271
(式中、各X272は、同一であり、F又はHを表す。n271eは、0又は1〜10の整数を表し、Y271は、前記定義と同じ。)で表されるモノマー等が挙げられる。
上記重合開始剤としては、上記重合温度範囲でラジカルを発生しうるものであれば特に限定されず、公知の油溶性及び/又は水溶性の重合開始剤を使用することができる。更に、還元剤等と組み合わせてレドックスとして重合を開始することもできる。上記重合開始剤の濃度は、TFEと共重合可能な変性モノマーの種類、目的とするPTFEの分子量、反応速度によって適宜決定される。
上記重合開始剤としては、水溶性ラジカル重合開始剤を使用できる。
水溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の水溶性過酸化物であってよく、水溶性無機過酸化物としては、たとえば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸などのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩などが挙げられる。水溶性有機過酸化物としては、たとえば、ジコハク酸パーオキサイド、ジグルタル酸パーオキサイド、t−ブチルパーマレエート、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。サルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤も併せて含んでもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1〜20倍であってよい。
重合開始剤として、酸化剤と還元剤を組み合わせるレドックス開始剤を用いるのも好ましい。酸化剤としては、過硫酸塩、有機過酸化物、過マンガン酸カリウム、三酢酸マンガン、セリウム硝酸アンモニウム等が挙げられる。還元剤としては、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、臭素酸塩、ジイミン、シュウ酸等が挙げられる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが挙げられる。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウムが挙げられる。開始剤の分解速度を上げるため、レドックス開始剤の組み合わせには、銅塩、鉄塩を加えることも好ましい。銅塩としては、硫酸銅(II)、鉄塩としては硫酸鉄(II)が挙げられる。
上記レドックス開始剤としては、例えば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸、過硫酸アンモニウム/重亜硫酸塩/硫酸鉄、過硫酸アンモニウム/亜硫酸塩/硫酸鉄、三酢酸マンガン/シュウ酸、セリウム硝酸アンモニウム/シュウ酸、臭素酸塩/亜硫酸塩、臭素酸塩/重亜硫酸塩等が挙げられ、過マンガン酸カリウム/シュウ酸が好ましい。レドックス開始剤を用いる場合は、酸化剤又は還元剤のいずれかをあらかじめ重合槽に仕込み、ついでもう一方を連続的又は断続的に加えて重合を開始させてもよい。例えば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸を用いる場合、重合槽にシュウ酸を仕込み、そこへ過マンガン酸カリウムを連続的に添加することが好ましい。
重合開始剤の添加量は、特に限定はないが、重合速度が著しく低下しない程度の量(たとえば、数ppm対水濃度)以上を重合の初期に一括して、または逐次的に、または連続して添加すればよい。上限は、装置面から重合反応熱で除熱を行ないながら、反応温度を上昇させてもよい範囲であり、より好ましい上限は、装置面から重合反応熱を除熱できる範囲である。
上記水性媒体は、重合を行わせる反応媒体であって、上述したPTFE水性分散液に含まれてよい水性媒体を採用できる。
上記重合において、更に、目的に応じて、公知の連鎖移動剤、ラジカル捕捉剤、分解剤を添加し、重合速度、分子量の調整を行うこともできる。
上記連鎖移動剤としては、たとえばマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、コハク酸ジメチルなどのエステル類のほか、水素、イソペンタン、メタン、エタン、プロパン、メタノール、イソブタン、イソプロパノール、アセトン、各種メルカプタン、四塩化炭素などの各種ハロゲン化炭化水素、シクロヘキサンなどがあげられる。
上記連鎖移動剤の使用量は、目的とするポリマーの分子量、使用する連鎖移動剤の種類、使用する開始剤の種類と使用量などによって適宜選択できるが、通常、供給されるフルオロモノマー全量に対して、1〜50,000ppmであり、好ましくは1〜20,000ppmである。
上記連鎖移動剤は、重合開始前に一括して反応容器中に添加してもよいし、重合開始後に一括して添加してもよいし、重合中に複数回に分割して添加してもよいし、また、重合中に連続的に添加してもよい。
また、上記重合工程において、上記炭化水素系界面活性剤と、所望により用いるその他の界面活性能を有する化合物に加え、各化合物を安定化するため添加剤を使用することができる。上記添加剤としては、緩衝剤、pH調整剤、安定化助剤、分散安定剤などが挙げられる。
安定化助剤としては、パラフィンワックス、フッ素系オイル、フッ素系溶剤、シリコーンオイルなどが好ましい。安定化助剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。安定化助剤としては、パラフィンワックスがより好ましい。パラフィンワックスとしては、室温で液体でも、半固体でも、固体であってもよいが、炭素数12以上の飽和炭化水素が好ましい。パラフィンワックスの融点は、通常40〜65℃が好ましく、50〜65℃がより好ましい。
安定化助剤の使用量は、使用する水性媒体の質量基準で0.1〜12質量%が好ましく、0.1〜8質量%がより好ましい。安定化助剤は十分に疎水的で、TFEの乳化重合後にPTFE水性乳化液と完全に分離されて、コンタミ成分とならないことが望ましい。
上記重合工程は、上記炭化水素系界面活性剤の存在下に、水性媒体中でTFEを重合して、PTFE(A)粒子の水性分散液を製造する工程(I)、及び、(II)上記PTFE(A)粒子の水性分散液中で、上記TFEをPTFE(A)粒子にシード重合するものであってもよい。
上記重合工程により得られるPTFE水性分散液は、通常、炭化水素系界面活性剤を含む。上記PTFE水性分散液において炭化水素系界面活性剤の含有量は特に限定されないが、上記PTFE水性分散液100質量%に対して0.0001〜10.0質量%であることが好ましい。0.0001質量%未満であると、分散安定性に劣る場合があり、10.0質量%を超えると、存在量に見合った分散効果がなく実用的でない。上記界面活性剤のより好ましい下限は0.001質量%であり、更に好ましい下限は0.01質量%であり、特に好ましい下限は0.07質量%である。より好ましい上限は8.5質量%であり、更に好ましい上限は1.0質量%であり、更により好ましい上限は0.90質量%であり、殊更に好ましい上限は0.46質量%であり、特に好ましい上限は0.32質量%である。
上記重合工程の後で凝析工程の前、若しくは凝析工程中に、顔料や機械的性質を改良するための各種充填剤を添加してもよい。これにより、顔料や各種充填剤を含むPTFE粉末が得られる。
本発明の製造方法で得られるPTFE粉末は、成形用として好ましく、好適な用途としては、航空機及び自動車等の油圧系、燃料系のチューブ等が挙げられ、薬液、蒸気等のフレキシブルホース、電線被覆用途等が挙げられる。
本発明の製造方法で得られるPTFE粉末は、加工助剤としても使用できる。加工助剤として使用する場合、上記PTFE粉末をホストポリマー等に混合することにより、ホストポリマー溶融加工時の溶融強度向上や、得られたポリマーの機械的強度、電気特性、難燃性、燃焼時の滴下防止性、摺動性を向上することができる。上記PTFE粉末は、PTFE以外の樹脂と複合させてから加工助剤として使用することもできる。
本発明の製造方法で得られるPTFE粉末は、電池用結着剤、防塵用途として使用することもできる。
本発明の製造方法で得られるPTFE粉末が高分子量PTFEである場合、PTFE多孔体(膜)の原料としても有用である。例えばPTFE粉末をペースト押出し圧延後、未焼成又は半焼成し、少なくとも1方向に延伸して(好ましくは、圧延方向にロール延伸し次いでテンターにより幅方向に延伸して)、PTFE多孔体(膜)を得ることができる。延伸することによりPTFEは容易にフィブリル化し、結節と繊維からなるPTFE多孔体(膜)となる。この多孔体(膜)は、各種フィルターとして有用であり、薬液フィルターとして、特にエアフィルター濾材として好ましく使用できる。
本発明の製造方法で得られるPTFE粉末が低分子量PTFE(PTFEマイクロパウダーとも呼ばれる)の粉末である場合、化学的安定性に優れ、表面エネルギーが極めて低いことに加え、フィブリル化が生じにくいので、滑り性や塗膜表面の質感を向上させることなどを目的とした添加剤として、プラスチック、インク、化粧品、塗料、グリース、オフィスオートメーション機器部材、トナー等の製造に好適である(例えば、特開平10−147617号公報参照。)。
以下に、本発明のPTFE粉末の製造方法にて使用できる具体的な含フッ素界面活性剤及び炭化水素系界面活性剤について記載する。
含フッ素界面活性剤としては特に限定されないが、含フッ素アニオン性界面活性剤が好ましい。従来から使用されていたパーフルオロオクタン酸やその塩(例えばアンモニウム塩)等も使用することができるが、例えば、米国特許出願公開第2007/0015864号明細書、米国特許出願公開第2007/0015865号明細書、米国特許出願公開第2007/0015866号明細書、米国特許出願公開第2007/0276103号明細書、米国特許出願公開第2007/0117914号明細書、米国特許出願公開第2007/0142541号明細書、米国特許出願公開第2008/0015319号明細書、米国特許第3250808号明細書、米国特許第3271341号明細書、特開2003−119204号公報、国際公開第2005/042593号、国際公開第2008/060461号、国際公開第2007/046377号、国際公開第2007/119526号、国際公開第2007/046482号、国際公開第2007/046345号に記載されたもの等を使用できる。
含フッ素アニオン性界面活性剤としては、LogPOWが3.4以下である含フッ素界面活性剤が好ましい。
上記含フッ素界面活性剤は、LogPOWが2.5以上であってもよいし、3.0以上であってもよい。
上記LogPOWは、1−オクタノールと水との分配係数であり、LogP[式中、Pは、含フッ素界面活性剤を含有するオクタノール/水(1:1)混合液が相分離した際のオクタノール中の含フッ素界面活性剤濃度/水中の含フッ素界面活性剤濃度比を表す]で表されるものである。
LogPOWで表されるオクタノール/水分配係数は、カラム:TOSOH ODS−120Tカラム(φ4.6mm×250mm)、溶離液:アセトニトリル/0.6質量%HClO4水=1/1(vol/vol%)、流速:1.0ml/分、サンプル量:300μL、カラム温度:40℃、検出光:UV210nmの条件で、既知のオクタノール/水分配係数を有する標準物質(ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸及びデカン酸)についてHPLCを行い、各溶出時間と既知のオクタノール/水分配係数との検量線を作成し、この検量線に基づき、試料液におけるHPLCの溶出時間から算出する。
上記LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤としては、一般式:
CF3−(CF2)4−COOX
(式中、Xは水素原子、NH4又はアルカリ金属を表す。)、一般式:
CF3CF2CF2OCF(CF3)COOX
(式中、Xは水素原子、NH4又はアルカリ金属原子を表す。)、一般式:
CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOX
(式中、Xは水素原子、NH4又はアルカリ金属原子を表す。)、及び、一般式:
CF3CF2OCF2CF2OCF2COOX
(式中、Xは水素原子、NH4又はアルカリ金属原子を表す。)
からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素界面活性剤であることが好ましい。
LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤としては、一般式:
CF3OCF2CF2OCF2CF2COOX
(式中、Xは水素原子、NH4又はアルカリ金属原子を表す。)、一般式:
CF3OCF2CF2CF2OCHFCF2COOX
(式中、Xは水素原子、NH4又はアルカリ金属原子を表す。)
等も挙げることができる。
上記含フッ素界面活性剤が塩である場合、該塩を形成する対イオンとしては、アルカリ金属イオン又はNH4+等が挙げられ、アルカリ金属イオンとしては、例えば、Na+、K+等が挙げられる。
LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤としては、CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COONH4、CF3CF2OCF2CF2OCF2COOH、CF3CF2OCF2CF2OCF2COONH4、CF3OCF2CF2CF2OCHFCF2COOH、CF3OCF2CF2CF2OCHFCF2COONH4、CF3−(CF2)4−COOH、CF3−(CF2)4−COONH4、CF3CF2CF2OCF(CF3)COONH4、CF3CF2CF2OCF(CF3)COOH等が挙げられる。
炭化水素系界面活性剤は、同じ分子上に親水性部分及び疎水性部分を有する。これらは、カチオン性、非イオン性またはアニオン性であってよい。
カチオン性界面活性剤は、通常、アルキル化臭化アンモニウムなどのアルキル化ハロゲン化アンモニウムなどの正に帯電した親水性部分と、長鎖脂肪酸などの疎水性部分を有する。
アニオン性界面活性剤は、通常、カルボン酸塩、スルホン酸塩又は硫酸塩などの親水性部分と、アルキルなどの長鎖炭化水素部分である疎水性部分とを有する。
非イオン性界面活性剤は、通常、帯電した基を含まず、長鎖炭化水素である疎水性部分を有する。非イオン性界面活性剤の親水性部分は、エチレンオキシドとの重合から誘導されるエチレンエーテルの鎖などの水溶性官能基を含む。
非イオン性炭化水素系界面活性剤の例
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、グリセロールエステル、それらの誘導体。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルの具体例:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等。
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの具体例:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等。
ポリオキシエチレンアルキルエステルの具体例:ポリエチレングリコールモノラウリレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリエチレングリコールモノステアレートなど。
ソルビタンアルキルエステルの具体例:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなど。
ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルの具体例:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなど。
グリセロールエステルの具体例:モノミリスチン酸グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、モノオレイン酸グリセロールなど。
上記誘導体の具体例:ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニル−ホルムアルデヒド凝縮物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェートなど。
上記エーテル及びエステルは、10〜18のHLB値を有してよい。
非イオン性炭化水素系界面活性剤としては、Dow Chemical Company製のTriton(登録商標)Triton(登録商標)Xシリーズ(X15、X45、X100等)、Tergitol(登録商標)15−Sシリーズ、Tergitol(登録商標)TMNシリーズ(TMN−6、TMN−10、TMN−100等)、Tergitol(登録商標)Lシリーズ、BASF製のPluronic(登録商標)Rシリーズ(31R1、17R2、10R5、25R4(m〜22、n〜23)、Iconol(登録商標)TDAシリーズ(TDA−6、TDA−9、TDA−10)等が挙げられる。
アニオン性炭化水素系界面活性剤としては、Resolution Performance ProductsのVersatic(登録商標)10、BASF製のAvanel Sシリーズ(S−70、S−74等)等が挙げられる。
炭化水素系界面活性剤としては、R−L−M(式中、Rが、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基であり、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでもよいし、環を巻いていてもよい。Lが、−ArSO3 −、−SO3 −、−SO4−、−PO3 −又は−COO−であり、Mが、H+、Na+、K+又はNH4 +である。−ArSO3 −は、アリールスルホン酸塩である。)によって表されるアニオン性界面活性剤も挙げられる。
具体的には、CH3−(CH2)n−L−M(式中、nが、6〜17の整数である。LおよびMが、上記と同じ)によって表されるものが挙げられる。
Rが、12〜16個の炭素原子を有するアルキル基であり、Lが、硫酸塩又はドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であるものの混合物も使用できる。
炭化水素系界面活性剤としては、R6(−L−M)2(式中、R6が、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又は、置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキレン基であり、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでもよいし、環を巻いていてもよい。Lが、−ArSO3 −、−SO3 −、−SO4−、−PO3 −又は−COO−であり、Mが、H+、Na+、K+又はNH4 +である。−ArSO3 −は、アリールスルホン酸塩である。a及びbは、それぞれ、1以上の整数である。)によって表されるアニオン性界面活性剤も挙げられる。
炭化水素系界面活性剤としては、R7(−L−M)3(式中、R7が、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキリジン基、又は、置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキリジン基であり、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでもよいし、環を巻いていてもよい。Lが、−ArSO3 −、−SO3 −、−SO4−、−PO3 −又は−COO−であり、Mが、H+、Na+、K+又はNH4 +である。−ArSO3 −は、アリールスルホン酸塩である。a及びbは、それぞれ、1以上の整数である。)によって表されるアニオン性界面活性剤も挙げられる。
本明細書中、特に断りのない限り、「置換基」は、置換可能な基を意味する。当該「置換基」の例は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、芳香族オキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、芳香族スルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、脂肪族スルホニルオキシ基、芳香族スルホニルオキシ基、ヘテロ環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルホンアミド基、芳香族スルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、アミノ基、脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、芳香族オキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルフィニル基、芳香族スルフィニル基、脂肪族チオ基、芳香族チオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、脂肪族オキシアミノ基、芳香族オキシアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ハロゲン原子、スルファモイルカルバモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ジ脂肪族オキシホスフィニル基、及び、ジ芳香族オキシホスフィニル基を包含する。
シロキサン炭化水素系界面活性剤としては、Silicone Surfactants,R.M.Hill,Marcel Dekker,Inc.,ISBN:0−8247−00104に記載されているものが挙げられる。シロキサン界面活性剤の構造は、明確な疎水性部分および親水性部分を含む。疎水性部分は、1つ以上のジヒドロカルビルシロキサン単位を含み、ここで、シリコーン原子上の置換基が、完全に炭化水素である。
ヒドロカルビル基の炭素原子が、フッ素などのハロゲンによって置換され得る場合に、水素原子によって完全に置換されるという意味では、これらのシロキサン界面活性剤は、炭化水素界面活性剤とみなすこともでき、すなわち、ヒドロカルビル基の炭素原子上の一価置換基は水素である。
シロキサン界面活性剤の親水性部分は、スルフェート、スルホネート、ホスホネート、リン酸エステル、カルボキシレート、カーボネート、スルホサクシネート、タウレート(遊離酸、塩またはエステルとしての)、ホスフィンオキシド、ベタイン、ベタインコポリオール、第4級アンモニウム塩などのイオン性基を含む1つ以上の極性部分を含んでもよい。イオン性疎水性部分は、イオン的に官能化されたシロキサングラフトも含み得る。
このようなシロキサン界面活性剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサン−グラフト−(メタ)アクリル酸塩、ポリジメチルシロキサン−グラフト−ポリアクリレート塩およびポリジメチルシロキサングラフト化第4級アミンが挙げられる。
シロキサン界面活性剤の親水性部分の極性部分は、ポリエチレンオキシド(PEO)、および混合されたポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドポリエーテル(PEO/PPO)などのポリエーテル;単糖類および二糖類;およびピロリジノンなどの水溶性複素環によって形成される非イオン性基を含み得る。エチレンオキシド対プロピレンオキシド(EO/PO)の比率は、混合されたポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドポリエーテルにおいて変化され得る。
シロキサン界面活性剤の親水性部分は、イオン性部分と非イオン性部分との組合せも含み得る。このような部分としては、例えば、イオン的に末端官能化されたまたはランダムに官能化されたポリエーテルまたはポリオールが挙げられる。本発明の実施に好ましいのは、非イオン性部分を有するシロキサン、すなわち、非イオン性シロキサン界面活性剤である。
シロキサン界面活性剤の構造の疎水性および親水性部分の配置は、ジブロックポリマー(AB)、トリブロックポリマー(ABA)(ここで、「B」は、分子のシロキサン部分を表す)、またはマルチブロックポリマーの形態をとってもよい。あるいは、シロキサン界面活性剤は、グラフトポリマーを含んでいてもよい。
シロキサン界面活性剤については、米国特許第6,841,616号明細書にも開示されている。
シロキサンベースのアニオン性炭化水素系界面活性剤としては、Lubrizol Advanced Materials,Inc.のNoveon(登録商標)Consumer Specialtiesから入手可能なSilSenseTMPE−100シリコーン、SilSenseTMCA−1シリコーン等が挙げられる。
アニオン性炭化水素系界面活性剤としては、Akzo Nobel Surface Chemistry LLCのスルホサクシネート界面活性剤Lankropol(登録商標)K8300等も挙げられる。
スルホサクシネート炭化水素系界面活性剤としては、スルホコハク酸ジイソデシルNa塩、(ClariantのEmulsogen(登録商標)SB10)、スルホコハク酸ジイソトリデシルNa塩(Cesapinia ChemicalsのPolirol(登録商標)TR/LNA)等が挙げられる。
炭化水素系界面活性剤としては、Omnova Solutions,Inc.のPolyFox(登録商標)界面活性剤(PolyFoxTMPF−156A、PolyFoxTMPF−136A等)も挙げられる。
上記炭化水素系界面活性剤としては、下記式(a):
(式中、R
1aは、炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3以上の環状のアルキル基であり、炭素原子に結合した水素原子がヒドロキシ基又はエステル結合を含む1価の有機基により置換されていてもよく、炭素数が2以上の場合はカルボニル基を含んでもよく、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでも環を巻いていてもよい。R
2a及びR
3aは、独立に、単結合又は2価の連結基である。R
1a、R
2a及びR
3aは、炭素数が合計で5以上である。A
aは、−COOX
a又は−SO
3X
a(X
aは、H、金属原子、NR
4a 4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R
4aはH又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。)である。R
1a、R
2a及びR
3aは、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)で示される界面活性剤(a)、及び、下記式(b):
(式中、R
1bは、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基であり、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでも環を巻いていてもよい。R
2b及びR
4bは、独立に、H又は置換基である。R
3bは、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基である。nは、1以上の整数である。p及びqは、独立に、0以上の整数である。A
bは、−SO
3X
b又は−COOX
b(X
bは、H、金属原子、NR
5b 4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R
5bはH又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。)である。R
1b、R
2b、R
3b及びR
4bは、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。L
bは、単結合、−CO
2−B−*、−OCO−B−*、−CONR
6b−B−*、−NR
6bCO−B−*、又は、−CO−(但し、−CO
2−B−、−OCO−B−、−CONR
6b−B−、−NR
6bCO−B−に含まれるカルボニル基を除く。)であり、Bは単結合もしくは置換基を有してもよい炭素数1から10のアルキレン基であり、R
6bは、H又は置換基を有していてもよい、炭素数1〜4のアルキル基である。上記アルキレン基は、炭素数が1〜5であることがより好ましい。また、上記R
6bは、H又はメチル基であることがより好ましい。*は、式中の−A
bに結合する側を指す。)で示される界面活性剤(b)からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
界面活性剤(a)について説明する。
式(a)中、R1aは、炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3以上の環状のアルキル基である。
上記アルキル基は、炭素数が3以上の場合、2つの炭素原子間にカルボニル基(−C(=O)−)を含んでもよい。また、上記アルキル基は、炭素数が2以上の場合、上記アルキル基の末端に上記カルボニル基を含むこともできる。すなわち、CH3−C(=O)−で示されるアセチル基等のアシル基も、上記アルキル基に含まれる。
また、上記アルキル基は、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含むこともできるし、環を巻くこともできる。上記複素環としては、不飽和複素環が好ましく、含酸素不飽和複素環がより好ましく、例えば、フラン環等が挙げられる。R1aにおいて、2価の複素環が2つの炭素原子間に挿入されていてもよいし、2価の複素環が末端に位置して−C(=O)−と結合してもよいし、1価の複素環が上記アルキル基の末端に位置してもよい。
なお、本明細書において、上記アルキル基の「炭素数」には、カルボニル基を構成する炭素原子の数及び上記複素環を構成する炭素原子の数も含めるものとする。例えば、CH3−C(=O)−CH2−で示される基は炭素数が3であり、CH3−C(=O)−C2H4−C(=O)−C2H4−で示される基は炭素数が7であり、CH3−C(=O)−で示される基は炭素数が2である。
上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子が官能基により置換されていてもよく、例えば、ヒドロキシ基(−OH)又はエステル結合を含む1価の有機基により置換されていてもよいが、如何なる官能基によっても置換されていないことが好ましい。
上記エステル結合を含む1価の有機基としては、式:−O−C(=O)−R101a(式中、R101aはアルキル基)で示される基が挙げられる。
上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
式(a)中、R2a及びR3aは、独立に、単結合又は2価の連結基である。
R2a及びR3aは、独立に、単結合又は炭素数1以上の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基又は炭素数3以上の環状のアルキレン基であることが好ましい。
R2a及びR3aを構成する上記アルキレン基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子が官能基により置換されていてもよく、例えば、ヒドロキシ基(−OH)又はエステル結合を含む1価の有機基により置換されていてもよいが、如何なる官能基によっても置換されていないことが好ましい。
上記エステル結合を含む1価の有機基としては、式:−O−C(=O)−R102a(式中、R102aはアルキル基)で示される基が挙げられる。
上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキレン基であることが好ましい。
R1a、R2a及びR3aは、炭素数が合計で5以上である。合計の炭素数としては、7以上が好ましく、9以上がより好ましく、20以下が好ましく、18以下がより好ましく、15以下が更に好ましい。
R1a、R2a及びR3aは、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。
式(a)中、式中、Aaは、−COOXa又は−SO3Xa(Xaは、H、金属原子、NR4a 4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R4aはH又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。)である。R4aとしては、H又は炭素数1〜10の有機基が好ましく、H又は炭素数1〜4の有機基がより好ましい。上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
Xaとしては、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR4a 4が好ましく、水に溶解しやすいことから、H、Na、K、Li又はNH4がより好ましく、水に更に溶解しやすいことから、Na、K又はNH4が更に好ましく、Na又はNH4が特に好ましく、除去が容易であることから、NH4が最も好ましい。XaがNH4であると、上記界面活性剤の水性媒体への溶解性が優れるとともに、PTFE中又は最終製品中に金属成分が残留しにくい。
R1aとしては、カルボニル基を含まない炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、カルボニル基を含まない炭素数3〜8の環状のアルキル基、1〜10個のカルボニル基を含む炭素数2〜45の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、カルボニル基を含む炭素数3〜45の環状のアルキル基、又は、炭素数が3〜45の1価又は2価の複素環を含むアルキル基が好ましい。
また、R
1aとしては、下記式:
(式中、n
11aは0〜10の整数であり、R
11aは炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3〜5の環状のアルキル基であり、R
12aは炭素数0〜3のアルキレン基である。n
11aが2〜10の整数である場合、R
12aは各々同じであっても異なっていてもよい。)で示される基がより好ましい。
n11aとしては、0〜5の整数が好ましく、0〜3の整数がより好ましく、1〜3の整数が更に好ましい。
R11aとしての上記アルキル基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
R11aとしての上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子が官能基により置換されていてもよく、例えば、ヒドロキシ基(−OH)又はエステル結合を含む1価の有機基により置換されていてもよいが、如何なる官能基によっても置換されていないことが好ましい。
上記エステル結合を含む1価の有機基としては、式:−O−C(=O)−R103a(式中、R103aはアルキル基)で示される基が挙げられる。
R11aとしての上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
R12aは炭素数0〜3のアルキレン基である。上記炭素数は1〜3が好ましい。
R12aとしての上記アルキレン基は、直鎖状又は分岐鎖状であってよい。
R12aとしての上記アルキレン基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。R12aとしては、エチレン基(−C2H4−)又はプロピレン基(−C3H6−)がより好ましい。
R12aとしての上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子が官能基により置換されていてもよく、例えば、ヒドロキシ基(−OH)又はエステル結合を含む1価の有機基により置換されていてもよいが、如何なる官能基によっても置換されていないことが好ましい。
上記エステル結合を含む1価の有機基としては、式:−O−C(=O)−R104a(式中、R104aはアルキル基)で示される基が挙げられる。
R12aとしての上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキレン基であることが好ましい。
R2a及びR3aとしては、独立に、カルボニル基を含まない炭素数1以上のアルキレン基が好ましく、カルボニル基を含まない炭素数1〜3のアルキレン基がより好ましく、エチレン基(−C2H4−)又はプロピレン基(−C3H6−)が更に好ましい。
次に界面活性剤(b)について説明する。
式(b)中、R1bは、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基である。
上記アルキル基は、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含むこともできるし、環を巻くこともできる。上記複素環としては、不飽和複素環が好ましく、含酸素不飽和複素環がより好ましく、例えば、フラン環等が挙げられる。R1bにおいて、2価の複素環が2つの炭素原子間に挿入されていてもよいし、2価の複素環が末端に位置して−C(=O)−と結合してもよいし、1価の複素環が上記アルキル基の末端に位置してもよい。
なお、本明細書において、上記アルキル基の「炭素数」には、上記複素環を構成する炭素原子の数も含めるものとする。
R1bとしての上記アルキル基が有してもよい上記置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3〜10の環状のアルキル基、ヒドロキシ基が好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
R1bとしての上記アルキル基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
上記アルキル基は、如何なる置換基も有していないことが好ましい。
R1bとしては、置換基を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数3〜10の環状のアルキル基が好ましく、カルボニル基を含まない炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はカルボニル基を含まない炭素数3〜10の環状のアルキル基がより好ましく、置換基を有さない炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が更に好ましく、置換基を有さない炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が更により好ましく、メチル基(−CH3)又はエチル基(−C2H5)が特に好ましく、メチル基(−CH3)が最も好ましい。
式(b)中、R2b及びR4bは、独立に、H又は置換基である。複数個のR2b及びR4bは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
R2b及びR4bとしての上記置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3〜10の環状のアルキル基、ヒドロキシ基が好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
R2b及びR4bとしての上記アルキル基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
上記アルキル基は、如何なる置換基も有していないことが好ましい。
R2b及びR4bとしての上記アルキル基としては、カルボニル基を含まない炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はカルボニル基を含まない炭素数3〜10の環状のアルキル基が好ましく、カルボニル基を含まない炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、置換基を有さない炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が更に好ましく、メチル基(−CH3)又はエチル基(−C2H5)が特に好ましい。
R2b及びR4bとしては、独立に、H又はカルボニル基を含まない炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、H又は置換基を有さない炭素数1〜3の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、H、メチル基(−CH3)又はエチル基(−C2H5)が更により好ましく、Hが特に好ましい。
式(b)中、R3bは、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基である。R3bは、複数個存在する場合、同一でも異なっていてもよい。
上記アルキレン基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
上記アルキレン基は、如何なる置換基も有していないことが好ましい。
上記アルキレン基としては、置換基を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基又は置換基を有してもよい炭素数3〜10の環状のアルキレン基が好ましく、カルボニル基を含まない炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基又はカルボニル基を含まない炭素数3〜10の環状のアルキレン基が好ましく、置換基を有さない炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基がより好ましく、メチレン基(−CH2−)、エチレン基(−C2H4−)、イソプロピレン基(−CH(CH3)CH2−)又はプロピレン基(−C3H6−)が更に好ましい。
R1b、R2b、R3b及びR4bは、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。
式(b)中、nは、1以上の整数である。nとしては、1〜40の整数が好ましく、1〜30の整数がより好ましく、5〜25の整数が更に好ましい。
式(b)中、p及びqは、独立に、0以上の整数である。pとしては、0〜10の整数が好ましく、0又は1がより好ましい。qとしては、0〜10の整数が好ましく、0〜5の整数がより好ましい。
n、p及びqは、合計が6以上の整数であることが好ましい。n、p及びqの合計は8以上の整数であることがより好ましい。n、p及びqの合計はまた、60以下の整数であることが好ましく、50以下の整数であることがより好ましく、40以下の整数であることが更に好ましい。
式(b)中、Abは、−SO3Xb又は−COOXb(Xbは、H、金属原子、NR5b 4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R5bはH又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。)である。R5bとしては、H又は炭素数1〜10の有機基が好ましく、H又は炭素数1〜4の有機基がより好ましい。上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。Xbは金属原子又はNR5b 4(R5bは上記のとおり)であってよい。
Xbとしては、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR5b 4が好ましく、水に溶解しやすいことから、H、Na、K、Li又はNH4がより好ましく、水に更に溶解しやすいことから、Na、K又はNH4が更に好ましく、Na又はNH4が特に好ましく、除去が容易であることから、NH4が最も好ましい。XbがNH4であると、上記界面活性剤の水性媒体への溶解性が優れるとともに、フルオロポリマー中又は最終製品中に金属成分が残留しにくい。
式(b)中、Lbは、単結合、−CO2−B−*、−OCO−B−*、−CONR6b−B−*、−NR6bCO−B−*、又は、−CO−(但し、−CO2−B−、−OCO−B−、−CONR6b−B−、−NR6bCO−B−に含まれるカルボニル基を除く。)であり、Bは単結合もしくは置換基を有してもよい炭素数1から10のアルキレン基であり、R6bは、H又は置換基を有していてもよい、炭素数1〜4のアルキル基である。上記アルキレン基は、炭素数が1〜5であることがより好ましい。また、上記R6bは、H又はメチル基であることがより好ましい。*は、式中の−Abに結合する側を指す。
Lbは単結合であることが好ましい。
上記界面活性剤は、1H−NMRスペクトルにおいて、ケミカルシフト2.0〜5.0ppmの領域に観測される全ピーク強度の積分値が10%以上であることが好ましい。
上記界面活性剤は、1H−NMRスペクトルにおいて、ケミカルシフト2.0〜5.0ppmの領域に観測される全ピーク強度の積分値が上記範囲内にあることが好ましい。この場合、上記界面活性剤は分子中にケトン構造を有することが好ましい。
上記界面活性剤において、上記積分値は、15以上がより好ましく、95以下が好ましく、80以下がより好ましく、70以下が更に好ましい。
上記積分値は、重水溶媒にて室温下に測定する。重水を4.79ppmとする。
界面活性剤(a)は、新規化合物であり、例えば、次に例示する製造方法により製造することができる。
界面活性剤(a)は、式:
(式中、R
3aは上述のとおり、E
aは脱離基である。)で示される化合物(10a)と、リチウム、及び、式:R
201a 3Si−Cl(式中、R
201aは、独立に、アルキル基又はアリール基である。)で示されるクロロシラン化合物とを反応させて、式:
(式中、R
3a、R
201a及びE
aは上述のとおりである。)で示される化合物(11a)を得る工程(11a)、
化合物(11a)と、式:
(式中、R
1aは上述のとおり、R
21aは単結合又は2価の連結基である。)で示されるオレフィンとを反応させて、式:
(式中、R
1a、R
21a、R
3a及びE
aは上述のとおりである。)で示される化合物(12a)を得る工程(12a)、
化合物(12a)が有する脱離基を脱離させて、式:
(式中、R
1a、R
21a及びR
3aは上述のとおりである。)で示される化合物(13a)を得る工程(13a)、及び、
化合物(13a)を酸化させて、式:
(式中、R
1a、R
21a及びR
3aは上述のとおりである。)で示される化合物(14a)を得る工程(14a)、
を含む製造方法により製造できる。
R1aにフラン環を含む場合は、例えば酸によりフラン環を開環しジカルボニル誘導体に変換してもよい。酸としては酢酸、塩酸、p−トルエンスルホン等があげられる。後述する他の製造方法においても同じである。
Eaは脱離基を表す。上記脱離基としては、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)基、トリエチルシリル(TES)基、トリイソプロピルシリル(TIPS)基、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)基、ベンジル(Bn)基等が挙げられる。後述する他の製造方法においても同じである。
R21aとしては、単結合又は炭素数1以上の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。
上記クロロシラン化合物としては、例えば、
が挙げられる。
工程(11a)におけるいずれの反応も、溶媒中で実施することができる。上記溶媒としては、有機溶媒を使用でき、非プロトン性極性溶媒が挙げられ、具体的にはエーテルを例示できる。
工程(12a)において、化合物(11a)と上記オレフィンとの反応割合としては、収率の向上及び廃棄物の減少を考慮して、化合物(11a)1モルに対して、上記オレフィンが1〜2モルの量を採用できる。
工程(12a)における反応は、チアゾリウム塩及び塩基の存在下、溶媒中で実施できる。
上記チアゾリウム塩としては、3−エチル−5−(2−ヒドロキシエチル)−4−メチルチアゾリウムブロミド、3−ベンジル−5−(2−ヒドロキシエチル)−4−メチルチアゾリウムクロリド等が挙げられる。
上記塩基としては、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、トリエチルアミン等が挙げられる。
上記溶媒としては、有機溶媒を使用でき、非プロトン性極性溶媒が挙げられ、具体的にはエーテルを例示できる。
工程(13a)における脱離基の脱離反応は、フッ化物イオンや酸を使用することにより、実施できる。脱離基を脱離させる方法としては、例えば、フッ酸を用いる方法、ピリジン・nHFやトリエチルアミン・nHFのようなフッ化水素のアミン錯体を用いる方法、フッ化セシウム、フッ化カリウム、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、フッ化アンモニウムのような無機塩を用いる方法、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)のような有機塩を用いる方法が挙げられる。
工程(13a)における脱離基の脱離反応は、極性溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、有機溶媒を使用でき、非プロトン性極性溶媒が挙げられ、具体的にはエーテルを例示できる。
工程(14a)における酸化は、亜塩素酸ナトリウムの存在下に、溶媒中で実施できる。
上記溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、tert−ブチルアルコール等のアルコール及び水が使用できる。緩衝液として、リン酸水素二ナトリウム溶液を使用してもよい。
化合物(14a)をアルカリと接触させて、−COOHを塩型に変換してもよい。上記アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等が挙げられ、例えばアンモニアの水溶液を使用できる。
各工程の終了後、溶媒を留去したり、蒸留、精製等を実施したりして、得られる化合物の純度を高めてもよい。
界面活性剤(a)は、また、式:
(式中、R
3aは上述のとおり、R
22aは1価の有機基、E
aは脱離基である。)で示されるケトンと、式:
(式中、R
1aは上述のとおり、R
23aは1価の有機基である。)で示されるカルボン酸エステルとを反応させて、式:
(式中、R
1a、R
3a及びE
aは上述のとおり、R
24aは単結合又は2価の連結基である。)で示される化合物(21a)を得る工程(21a)、
化合物(21a)が有する脱離基を脱離させて、式:
(式中、R
1a、R
24a及びR
3aは上述のとおりである。)で示される化合物(22a)を得る工程(22a)、及び、
化合物(22a)を酸化させて、式:
(式中、R
1a、R
24a及びR
3aは上述のとおりである。)で示される化合物(23a)を得る工程(23a)、
を含む製造方法により製造できる。
R22aとしては、炭素数1以上の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
R23aとしては、炭素数1以上の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
R24aとしては、炭素数1以上の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基(−CH2−)がより好ましい。
工程(21a)における反応は、塩基の存在下、溶媒中で実施できる。
上記塩基としては、ナトリウムアミド、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等が挙げられる。
上記溶媒としては、有機溶媒を使用でき、非プロトン性極性溶媒が挙げられ、具体的にはエーテルを例示できる。
工程(22a)における脱離基の脱離反応は、フッ化物イオンや酸を使用することにより、実施できる。脱離基の脱離させる方法としては、例えば、フッ酸を用いる方法、ピリジン・nHFやトリエチルアミン・nHFのようなフッ化水素のアミン錯体を用いる方法、フッ化セシウム、フッ化カリウム、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、フッ化アンモニウムのような無機塩を用いる方法、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)のような有機塩を用いる方法が挙げられる。
工程(22a)における脱離基の脱離反応は、溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、有機溶媒を使用でき、非プロトン性極性溶媒が挙げられ、具体的にはエーテルを例示できる。
工程(23a)における酸化は、亜塩素酸ナトリウムの存在下に、溶媒中で実施できる。
上記溶媒としては、アルコール及び水が使用できる。緩衝液として、リン酸水素二ナトリウム溶液を使用してもよい。
化合物(23a)をアルカリと接触させて、−COOHを塩型に変換してもよい。上記アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等が挙げられ、例えば、アンモニアの水溶液を使用できる。
各工程の終了後、溶媒を留去したり、蒸留、精製等を実施したりして、得られる化合物の純度を高めてもよい。
界面活性剤(a)は、また、式:Y
a−R
3a−CH
2−OE
a
(式中、R
3aは上述のとおり、Y
aはハロゲン原子、E
aは脱離基である。)で示されるハロゲン化アルキルと、式:
(式中、R
1aは上述のとおりである。)で示されるリチウムアセチリドとを反応させて、式:
(式中、R
1a、R
3a及びE
aは上述のとおりである。)で示される化合物(31a)を得る工程(31a)、
化合物(31a)を酸化して、式:
(式中、R
1a、R
3a及びE
aは上述のとおりである。)で示される化合物(32a)を得る工程(32a)、
化合物(32a)が有する脱離基を脱離させて、式:
(式中、R
1a及びR
3aは上述のとおりである。)で示される化合物(33a)を得る工程(33a)、及び、
化合物(33a)を酸化させて、式:
(式中、R
1a及びR
3aは上述のとおりである。)で示される化合物(34a)を得る工程(34a)、
を含む製造方法により製造できる。
工程(31a)において、上記ハロゲン化アルキルと上記リチウムアセチリドとの反応割合としては、収率の向上及び廃棄物の減少を考慮して、上記ハロゲン化アルキル1モルに対して、上記リチウムアセチリドが1〜2モルの量を採用できる。
工程(31a)における反応は、溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、ヘキサンが挙げられる。
工程(32a)における酸化は、[(Cn*)RuIII(CF3CO2)3]・H2O(式中、Cn*は1,4,7−トリメチルー1,4,7−トリアザビシクロノナンを表す)を、(NH4)2Ce(NO3)6及びトリフルオロ酢酸で処理した後、過塩素酸ナトリウムを添加することにより生じる錯体を使用して、ニトリル系溶媒中で実施できる。
酸化終了後に、アルカリにより中和し、エーテル等の有機溶媒を使用して化合物(32a)を抽出してもよい。
工程(33a)における脱離基の脱離反応は、フッ化物イオンや酸を使用することにより、実施できる。脱離基の脱離させる方法としては、例えば、フッ酸を用いる方法、ピリジン・nHFやトリエチルアミン・nHFのようなフッ化水素のアミン錯体を用いる方法、フッ化セシウム、フッ化カリウム、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、フッ化アンモニウムのような無機塩を用いる方法、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)のような有機塩を用いる方法が挙げられる。
工程(33a)における脱離基の脱離反応は、溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、有機溶媒を使用でき、非プロトン性極性溶媒が挙げられ、具体的にはエーテルを例示できる。
工程(34a)における酸化は、亜塩素酸ナトリウムの存在下に、溶媒中で実施できる。
上記溶媒としては、アルコール及び水が使用できる。緩衝液として、リン酸水素二ナトリウム溶液を使用してもよい。
化合物(34a)をアルカリと接触させて、−COOHを塩型に変換してもよい。上記アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等が挙げられ、具体的にはアンモニアの水溶液を使用できる。
各工程の終了後、溶媒を留去したり、蒸留、精製等を実施したりして、得られる化合物の純度を高めてもよい。
界面活性剤(a)は、また、式:
で示されるジビニルケトンと、式:
で示される2−メチルフランとを反応させて、式:
で示される化合物(51a)を得る工程(51a)、
化合物(51a)と式:
で示されるフランとを反応させて、式:
で示される化合物(52a)を得る工程(52a)、
化合物(52a)を酸の存在下で加熱することにより、式:
で示される化合物(53a)を得る工程(53a)、及び、
化合物(53a)を酸化させて、式:
で示される化合物(54a)を得る工程(54a)、
を含む製造方法により製造できる。
工程(51a)において、ジビニルケトンと2−メチルフランとの反応割合としては、収率の向上及び廃棄物の減少を考慮して、ジビニルケトン1モルに対して、2−メチルフランが0.5〜1モルの量を採用できる。
工程(51a)における反応は、酸の存在下に実施することができる。上記酸としては、酢酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸等があげられる。
工程(51a)における上記酸の使用量は、収率の向上及び廃棄物の減少を考慮して、ジビニルケトン1モルに対して、0.1〜2モルの量を採用できる。
工程(51a)における反応は、極性溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、水、アセトニトリルが挙げられる。
工程(52a)において、化合物(51a)とフランとの反応割合としては、収率の向上及び廃棄物の減少を考慮して、化合物(51a)1モルに対してフランが1〜2モルの量を採用できる。
工程(52a)における反応は、酸の存在下に実施でき、上記酸としては、酢酸、塩酸、p−トルエンスルホン等があげられる。
工程(52a)における上記酸の使用量は、収率の向上及び廃棄物の減少を考慮して、化合物(51a)1モルに対して、0.1〜2モルの量を採用できる。
工程(52a)における反応は、極性溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、水が挙げられる。
工程(53a)では、化合物(52a)を酸の存在下で加熱することにより、フラン環を開環させる。
上記酸としては、塩酸、硫酸が使用できる。
工程(53a)における反応は、極性溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、水が例示できる。
工程(54a)における酸化は、亜塩素酸ナトリウムの存在下に、溶媒中で実施できる。
上記溶媒としては、tert−ブチルアルコール及び水が使用できる。緩衝液として、リン酸水素二ナトリウム溶液を使用してもよい。
化合物(54a)をアルカリと接触させて、−COOHを塩型に変換してもよい。上記アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等が挙げられ、具体的にはアンモニアの水溶液を使用できる。
各工程の終了後、溶媒を留去したり、蒸留、精製等を実施したりして、得られる化合物の純度を高めてもよい。
界面活性剤(a)は、また、式:
(式中、R
1aは上述のとおり、R
21aは単結合又は2価の連結基である。)で示されるアルケンと、式:
(式中、Y
61aはアルキルエステル基である。)で示されるアルキンとを反応させて、式:
(式中、R
1a、R
21a及びY
61aは上述のとおりである。)で示される化合物(61a)を得る工程(61a)、及び、
化合物(61a)に、アルカリを作用させたのちに酸を作用させて、式:
(式中、R
1a及びR
21aは上述のとおりである。)で示される化合物(62a)を得る工程(62a)、
を含む製造方法により製造できる。
工程(61a)において、上記アルケンと上記アルキンとの反応割合としては、収率の向上及び廃棄物の減少を考慮して、上記アルキン1モルに対して、上記アルケンが0.5〜2モルの量を使用できる。
工程(61a)における反応は、金属触媒存在下に実施することができる。上記金属としては、ルテニウム等があげられる。
工程(61a)における上記金属触媒の使用量は、収率の向上及び廃棄物の減少を考慮して、上記アルケン1モルに対して、0.01〜0.4モルの量を使用できる。
工程(61a)における反応は、極性溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、水、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドが挙げられる。
工程(62a)において、化合物(61a)と上記アルカリとの反応割合としては、収率の向上及び廃棄物の減少を考慮して、化合物(61a)1モルに対して上記アルカリが0.6〜2モルの量を使用できる。
工程(62a)における上記酸の使用量は、収率の向上及び廃棄物の減少を考慮して、化合物(61a)1モルに対して、1.0〜20.0モルの量を使用できる。
工程(62a)における反応は、極性溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、水が挙げられる。
化合物(62a)をアルカリと接触させて、−COOHを塩型に変換してもよい。上記アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等が挙げられ、例えば、アンモニアの水溶液を使用できる。
各工程の終了後、溶媒を留去したり、蒸留、精製等を実施したりして、得られる化合物の純度を高めてもよい。
界面活性剤(b)は、新規化合物であり、例えば、次に例示する製造方法により製造することができる。
界面活性剤(b)は、下記式:
(式中、R
1b、R
2b及びnは、上記のとおりである。)
で示される化合物(10b)と、下記式:
(式中、R
3bは、上記のとおりである。L
bは、単結合、−CO
2−B−*、−OCO−B−*、−CONR
6b−B−*、−NR
6bCO−B−*、又は、−CO−(但し、−CO
2−B−、−OCO−B−、−CONR
6b−B−、−NR
6bCO−B−に含まれるカルボニル基を除く。)であり、Bは単結合もしくは置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基であり、R
6bは、H又は置換基を有していてもよい、炭素数1〜4のアルキル基である。*は、式中の−S(=O)
2−に結合する側を指す。)で示されるサルトンとを反応させて、下記式:
(式中、R
1b〜R
3b、n及びX
bは、上記のとおりである。L
bは、単結合、−CO
2−B−*、−OCO−B−*、−CONR
6b−B−*、−NR
6bCO−B−*、又は、−CO−(但し、−CO
2−B−、−OCO−B−、−CONR
6b−B−、−NR
6bCO−B−に含まれるカルボニル基を除く。)であり、Bは単結合もしくは置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基であり、R
6bは、H又は置換基を有していてもよい、炭素数1〜4のアルキル基である。*は、式中の−SO
3X
bに結合する側を指す。)で示される化合物(11b)を得る工程(11b)を含む製造方法により製造できる。
工程(11b)における反応は、塩基の存在下に実施できる。
上記塩基としては、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン等が挙げられる。上記塩基は、化合物(10b)1モルに対して、0.5〜20モルの量で使用できる。
工程(11b)における反応は、溶媒中で実施できる。
上記溶媒としては、有機溶媒を使用でき、非プロトン性極性溶媒が挙げられ、具体的にはエーテル、芳香族化合物、ニトリル、ハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
界面活性剤(b)は、また、下記式:
(式中、R
1b〜R
4b、n、p及びqは上記のとおりである。L
bは、単結合、−CO
2−B−*、−OCO−B−*、−CONR
6b−B−*、−NR
6bCO−B−*、又は、−CO−(但し、−CO
2−B−、−OCO−B−、−CONR
6b−B−、−NR
6bCO−B−に含まれるカルボニル基を除く。)であり、Bは単結合もしくは置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基であり、R
6bは、H又は置換基を有していてもよい、炭素数1〜4のアルキル基である。*は、式中の−CH
2−OHに結合する側を指す。)
で示される化合物(20b)を酸化させて、下記式:
(式中、R
1b〜R
4b、n、p、q及びX
bは上記のとおりである。L
bは、単結合、−CO
2−B−*、−OCO−B−*、−CONR
6b−B−*、−NR
6bCO−B−*、又は、−CO−(但し、−CO
2−B−、−OCO−B−、−CONR
6b−B−、−NR
6bCO−B−に含まれるカルボニル基を除く。)であり、Bは単結合もしくは置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基であり、R
6bは、H又は置換基を有していてもよい、炭素数1〜4のアルキル基である。*は、式中の−COOX
bに結合する側を指す。)
で示される化合物(21b)を得る工程(21b)を含む製造方法により製造できる。
工程(21b)における酸化は、化合物(20b)にニトロソ化剤を作用させることにより実施できる。
上記ニトロソ化剤としては、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸及び亜硝酸イソアミル等が使用できる。
上記ニトロソ化剤は、化合物(20b)1モルに対して、0.5〜10モルの量で使用できる。
工程(21b)における酸化は、溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、トリフルオロ酢酸、アセトニトリル等が使用できる。
化合物(10b)及び化合物(20b)は、下記式:
R
11b−CH=CH−Y
1b−OH
(式中、R
11bは、H、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基であり、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでも環を巻いていてもよい。Y
1bは、−(CR
2b 2)
n−又は−(CR
2b 2)
n−(OR
3b)
p−(CR
4b 2)
q−L
b−CH
2−(R
2b〜R
4b、n、p及びqは、上記のとおり。L
bは、単結合、−CO
2−B−*、−OCO−B−*、−CONR
6b−B−*、−NR
6bCO−B−*、又は、−CO−(但し、−CO
2−B−、−OCO−B−、−CONR
6b−B−、−NR
6bCO−B−に含まれるカルボニル基を除く。)であり、Bは単結合もしくは置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基であり、R
6bは、H又は置換基を有していてもよい、炭素数1〜4のアルキル基である。*は、式中の−CH
2−に結合する側を指す。)である。)で示される化合物(100b)をヒドロキシ化して、下記式:
(式中、R
11b及びY
1bは、上記のとおり。)で示される化合物(101b)を得る工程(101b)、及び、
化合物(101b)を酸化して、下記式:
(式中、R
11b及びY
1bは、上記のとおり。)で示される化合物(102b)を得る工程(102b)を含む製造方法により製造できる。
R11bとしての上記アルキル基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
R11bとしての上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
上記アルキル基は、如何なる置換基も有していないことが好ましい。
R11bとしては、H、置換基を有してもよい炭素数1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数3〜9の環状のアルキル基が好ましく、H、カルボニル基を含まない炭素数1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はカルボニル基を含まない炭素数3〜9の環状のアルキル基がより好ましく、H、又は、置換基を有さない炭素数1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が更に好ましく、H、メチル基(−CH3)又はエチル基(−C2H5)が更により好ましく、H又はメチル基(−CH3)が特に好ましく、Hが最も好ましい。
工程(101b)におけるヒドロキシ化は、例えば、(1b)酸素雰囲気中で化合物(100b)にフタロシアニン鉄(II)(Fe(Pc))及び水素化ホウ素ナトリウムを作用させる方法や、(2b)化合物(100b)にイソピノカンフェイルボラン(IpcBH2)を作用させた後、得られる中間体(ジアルキルボラン)を酸化する方法により実施できる。
方法(1b)において、フタロシアニン鉄(II)の量は、触媒量であってよく、化合物(100b)1モルに対して、0.001〜1.2モルの量で使用できる。
方法(1b)において、水素化ホウ素ナトリウムは、化合物(100b)1モルに対して、0.5〜20モルの量で使用できる。
方法(1b)の反応は、溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、有機溶媒を使用でき、具体的にはエーテル、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、ニトリル、含窒素極性有機化合物等が挙げられる。
方法(2b)において、イソピノカンフェイルボランは、化合物(100b)1モルに対して、1.0〜10.0モルの量で使用できる。
化合物(100b)とイソピノカンフェイルボランとの反応は、溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、有機溶媒を使用でき、具体的にはエーテル、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。
化合物(100b)とイソピノカンフェイルボランとの反応の温度としては、−78〜200℃が採用できる。
化合物(100b)とイソピノカンフェイルボランとの反応の圧力としては、0〜5.0MPaが採用できる。
化合物(100b)とイソピノカンフェイルボランとの反応の時間としては、0.1〜72時間が採用できる。
方法(2b)における酸化は、上記中間体に酸化剤を作用させることにより実施できる。上記酸化剤としては、過酸化水素が挙げられる。上記酸化剤は、上記中間体1モルに対して、0.7〜10モルの量で使用できる。
方法(2b)における酸化は、溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、水、メタノール、エタノール等が挙げられる。
工程(102b)において、化合物(101b)を酸化する方法としては、例えば、(a)ジョーンズ試薬(CrO3/H2SO4)を用いる方法(ジョーンズ酸化)、(b)デス・マーチン・ペルヨージナン(DMP)を用いる方法(デス・マーチン酸化)、(c)クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)を用いる方法、(d)NiCl2等のニッケル化合物の存在下に漂白剤(NaOClの約5〜6%水溶液)を作用させる方法、(e)Al(CH3)3、Al[OCH(CH3)2]3等のアルミニウム触媒の存在下にアルデヒド、ケトン等の水素受容体を作用させる方法(オッペナウアー酸化)が挙げられる。
工程(102b)における酸化は、溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、水及び有機溶媒を使用でき、具体的には水、ケトン、エーテル、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、ニトリル等が挙げられる。
化合物(10b)及び化合物(20b)は、また、下記式:
(式中、R
1b及びY
1bは、上記のとおり。R
101bは、有機基である。)で示される化合物(200b)をオゾン分解して、下記式:
(式中、R
1b及びY
1bは、上記のとおり。)で示される化合物(201b)を得る工程(201b)を含む製造方法により製造できる。
R101bとしては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。2個のR101bは、同一でも異なっていてもよい。
工程(201b)におけるオゾン分解は、化合物(200b)にオゾンを作用させた後、還元剤で後処理することにより実施できる。
オゾンは、酸素ガス中の無声放電によって発生させることができる。
上記後処理に用いる還元剤としては、亜鉛、ジメチルスルフィド、チオウレア、ホスフィン類等が挙げられる。
工程(201b)におけるオゾン分解は、溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、水及び有機溶媒を使用でき、水、アルコール、カルボン酸類、エーテル、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。
化合物(10b)及び化合物(20b)は、また、下記式:
R
21b−CH=CH−Y
1b−OH
(式中、Y
1bは、上記のとおり。R
21bは、H、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基であり、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでも環を巻いていてもよい。)で示される化合物(300b)をエポキシ化して、下記式:
(式中、R
21b及びY
1bは、上記のとおり。)で示される化合物(301b)を得る工程(301b)、
化合物(301b)と、R
22b 2CuLi(R
22bは、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基であり、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでも環を巻いていてもよい。)で示されるジアルキル銅リチウムとを反応させて、下記式:
(式中、R
21b、R
22b及びY
1bは、上記のとおり。)で示される化合物(302b)を得る工程(302b)、及び、
化合物(302b)を酸化して、下記式:
(式中、R
21b、R
22b及びY
1bは、上記のとおり。)で示される化合物(303b)を得る工程(303b)を含む製造方法により製造できる。
R21bとしての上記アルキル基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
R21bとしての上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
上記アルキル基は、如何なる置換基も有していないことが好ましい。
R21bとしては、H、置換基を有してもよい炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数3〜8の環状のアルキル基が好ましく、H、カルボニル基を含まない炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はカルボニル基を含まない炭素数3〜8の環状のアルキル基がより好ましく、H、又は、置換基を有さない炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が更に好ましく、H又はメチル基(−CH3)が特に好ましく、Hが最も好ましい。
R22bとしての上記アルキル基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
R22bとしての上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
上記アルキル基は、如何なる置換基も有していないことが好ましい。
R22bとしては、置換基を有してもよい炭素数1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数3〜9の環状のアルキル基が好ましく、カルボニル基を含まない炭素数1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はカルボニル基を含まない炭素数3〜9の環状のアルキル基がより好ましく、置換基を有さない炭素数1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が更に好ましく、メチル基(−CH3)又はエチル基(−C2H5)が特に好ましく、メチル基(−CH3)が最も好ましい。
2個のR22bは、同一でも異なっていてもよい。
R21b及びR22bは、炭素数が合計で1〜7であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。
工程(301b)におけるエポキシ化は、化合物(300b)にエポキシ化剤を作用させることにより実施できる。
上記エポキシ化剤としては、メタクロロ過安息香酸(m−CPBA)、過安息香酸、過酸化水素、tert−ブチルヒドロペルオキシド等の過酸、ジメチルジオキシラン、メチルトリフルオロメチルジオキシラン等が挙げられる。
上記エポキシ化剤は、化合物(300b)1モルに対して、0.5〜10.0モルの量で使用できる。
工程(301b)におけるエポキシ化は、溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、有機溶媒を使用でき、ケトン、エーテル、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、ニトリル、ピリジン、含窒素極性有機化合物、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
工程(302b)において、上記ジアルキル銅リチウムは、化合物(301b)1モルに対して、0.5〜10.0モルの量で使用できる。
工程(302b)の反応は、溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、有機溶媒を使用でき、エーテル、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。
工程(303b)において、化合物(302b)を酸化する方法としては、例えば、(a)ジョーンズ試薬(CrO3/H2SO4)を用いる方法(ジョーンズ酸化)、(b)デス・マーチン・ペルヨージナン(DMP)を用いる方法(デス・マーチン酸化)、(c)クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)を用いる方法、(d)NiCl2等のニッケル化合物の存在下に漂白剤(NaOClの約5〜6%水溶液)を作用させる方法、(e)Al(CH3)3、Al[OCH(CH3)2]3等のアルミニウム触媒の存在下にアルデヒド、ケトン等の水素受容体を作用させる方法(オッペナウアー酸化)が挙げられる。
工程(303b)における酸化は、溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、水及び有機溶媒を使用でき、水、ケトン、アルコール、エーテル、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、ニトリル等が挙げられる。
化合物(10b)及び化合物(20b)は、また、下記式:
R
11b−CH=CH−Y
1b−OH
(式中、R
11b及びY
1bは、上記のとおり。)で示される化合物(100b)を酸化して、下記式:
(式中、R
11b及びY
1bは、上記のとおり。)で示される化合物(401b)を得る工程(401b)を含む製造方法により製造できる。
工程(401b)における酸化は、水及びパラジウム化合物の存在下で、化合物(100b)に酸化剤を作用させることにより実施できる。
上記酸化剤としては、塩化銅、酢酸銅、シアン化銅、トリフルオロメタンチオール銅等の一価又は二価の銅塩、塩化鉄、酢酸鉄、シアン化鉄、トリフルオロメタンチオール鉄、ヘキサシアノ鉄等の鉄塩、1,4−ベンゾキノン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン、テトラクロロ−1,2−ベンゾキノン、テトラクロロ−1,4−ベンゾキノン等のベンゾキノン類、H2O2、MnO2、KMnO4、RuO4、m−クロロ過安息香酸、酸素等が挙げられる。
上記酸化剤は、化合物(100b)1モルに対して、0.001〜10モルの量で使用できる。
上記水は、化合物(100b)1モルに対して、0.5〜1000モルの量で使用できる。
上記パラジウム化合物としては、二塩化パラジウムが挙げられる。上記パラジウム化合物の量は、触媒量であってよく、化合物(100b)1モルに対して、0.0001〜1.0モルの量で使用できる。
工程(401b)における酸化は、溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、水、エステル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール、カルボン酸類、エーテル、ハロゲン化炭化水素、含窒素極性有機化合物、ニトリル、ジメチルスルホキシド、スルホランが挙げられる。
界面活性剤(b)は、また、下記式:
R
11b−CH=CH−(CR
2b 2)
n−(OR
3b)
p−(CR
4b 2)
q−L
b−COOX
b
(式中、R
2b〜R
4b、R
11b、n、p、q及びX
bは、上記のとおり。L
bは、単結合、−CO
2−B−*、−OCO−B−*、−CONR
6b−B−*、−NR
6bCO−B−*、又は、−CO−(但し、−CO
2−B−、−OCO−B−、−CONR
6b−B−、−NR
6bCO−B−に含まれるカルボニル基を除く。)であり、Bは単結合もしくは置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基であり、R
6bは、H又は置換基を有していてもよい、炭素数1〜4のアルキル基である。*は、式中の−COOX
bに結合する側を指す。)で示される化合物(30b)を酸化して、下記式:
(R
2b〜R
4b、R
11b、n、p、q及びX
bは、上記のとおり。L
bは、単結合、−CO
2−B−*、−OCO−B−*、−CONR
6b−B−*、−NR
6bCO−B−*、又は、−CO−(但し、−CO
2−B−、−OCO−B−、−CONR
6b−B−、−NR
6bCO−B−に含まれるカルボニル基を除く。)であり、Bは単結合もしくは置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基であり、R
6bは、H又は置換基を有していてもよい、炭素数1〜4のアルキル基である。*は、式中の−COOX
bに結合する側を指す。)で示される化合物(31b)を得る工程(31b)を含む製造方法により製造できる。
工程(31b)における酸化は、水及びパラジウム化合物の存在下で、化合物(30b)に酸化剤を作用させることにより実施でき、工程(401b)における酸化と同様の条件が採用できる。
上述したいずれの製造方法においても、各工程の終了後、溶媒を留去したり、蒸留、精製等を実施したりして、得られる化合物の純度を高めてもよい。また、得られる化合物が−SO3H、−COOH等のXbがHである化合物である場合は、炭酸ナトリウム、アンモニア等のアルカリと接触させることにより、これらの基を塩型に変換できる。
上記界面活性剤(a)又は(b)を用いて高分子量PTFEを製造することもできる。すなわち、上記界面活性剤を使用する本発明の製造方法は、驚くべきことに、従来の含フッ素界面活性剤を使用せずとも、従来の含フッ素界面活性剤を使用する製造方法と同等の分子量を有するPTFEを製造可能である。
上記界面活性剤(a)又は(b)を用いて低分子量PTFEを製造することもできる。
低分子量PTFEは、重合により製造しても良いし、重合で得られた高分子量PTFEを公知の方法(熱分解、放射線照射分解等)で低分子量化して製造することもできる。
上記炭化水素系界面活性剤としては、下記式(a1):
(式中、R
1aは、炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3以上の環状のアルキル基であり、炭素原子に結合した水素原子がヒドロキシ基又はエステル結合を含む1価の有機基により置換されていてもよく、炭素数が2以上の場合はカルボニル基を含んでもよく、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでも環を巻いていてもよい。R
2a及びR
3aは、独立に、単結合又は2価の連結基である。R
1a、R
2a及びR
3aは、炭素数が合計で6以上である。X
aは、H、金属原子、NR
4a 4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R
4aはH又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。R
1a、R
2a及びR
3aは、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)で示される界面活性剤(a1)、及び、下記式(b1):
(式中、R
1bは、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基であり、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでも環を巻いていてもよい。R
2b及びR
4bは、独立に、H又は置換基である。R
3bは、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基である。nは、1以上の整数である。p及びqは、独立に、0以上の整数である。X
bは、H、金属原子、NR
5b 4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R
5bはH又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。R
1b、R
2b、R
3b及びR
4bは、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。L
bは、単結合、−CO
2−B−*、−OCO−B−*、−CONR
6b−B−*、−NR
6bCO−B−*、又は、−CO−(但し、−CO
2−B−、−OCO−B−、−CONR
6b−B−、−NR
6bCO−B−に含まれるカルボニル基を除く。)であり、Bは単結合もしくは置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基であり、R
6bは、H又は置換基を有していてもよい、炭素数1〜4のアルキル基である。*は、式中の−OSO
3X
bに結合する側を指す。)で示される界面活性剤(b1)からなる群より選択される少なくとも1種も挙げられる。
界面活性剤(a1)について説明する。
式(a1)中のR1a、R2a及びR3aとしては、式(a)中のR1a、R2a及びR3aとして挙げたものを好ましく採用できる。
R1a、R2a及びR3aは、炭素数が合計で6以上である。合計の炭素数としては、8以上が好ましく、9以上がより好ましく、10以上が更に好ましく、20以下が好ましく、18以下がより好ましく、15以下が更に好ましい。
R1a、R2a及びR3aは、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。
式(a1)中のXaとしては、式(a)中のXaとして挙げたものを好ましく採用できる。
次に界面活性剤(b1)について説明する。
式(b1)中、R1b、R2b、R3b及びR4bとしては、式(b)中のR1b、R2b、R3b及びR4bとして挙げたものを好ましく採用できる。
式(b1)において、R1b、R2b、R3b及びR4bは、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよいが、環を形成していないことが好ましい。
式(b1)中、nは、1以上の整数である。nとしては、1〜40の整数が好ましく、1〜30の整数がより好ましく、5〜25の整数が更に好ましく、5〜9、11〜25の整数が特に好ましい。
式(b1)中、p及びqは、独立に、0以上の整数である。pとしては、0〜10の整数が好ましく、0又は1がより好ましい。qとしては、0〜10の整数が好ましく、0〜5の整数がより好ましい。
n、p及びqは、合計が5以上の整数であることが好ましい。n、p及びqの合計は8以上の整数であることがより好ましい。n、p及びqの合計はまた、60以下の整数であることが好ましく、50以下の整数であることがより好ましく、40以下の整数であることが更に好ましい。
式(b1)中、Xbとしては、式(b1)中のXbとして挙げたものを好ましく採用できる。
界面活性剤(b)としては、下記式:
(式中、L
b、R
1b、R
2b、n及びX
bは、上記のとおり。)で示される化合物が好ましい。
上記界面活性剤は、1H−NMRスペクトルにおいて、ケミカルシフト2.0〜5.0ppmの領域に観測される全ピーク強度の積分値が10%以上であることが好ましい。
上記界面活性剤は、1H−NMRスペクトルにおいて、ケミカルシフト2.0〜5.0ppmの領域に観測される全ピーク強度の積分値が上記範囲内にあることが好ましい。この場合、上記界面活性剤は分子中にケトン構造を有することが好ましい。
上記界面活性剤において、上記積分値は、15以上がより好ましく、95以下が好ましく、80以下がより好ましく、70以下が更に好ましい。
上記積分値は、重水溶媒にて室温下に測定する。重水を4.79ppmとする。
界面活性剤(a1)は、新規化合物であり、例えば、次に例示する製造方法により製造することができる。
界面活性剤(a1)は、式:
(式中、R
3aは上述のとおり、E
aは脱離基である。)で示される化合物(10a)と、リチウム、及び、式:R
201a 3Si−Cl(式中、R
201aは、独立に、アルキル基又はアリール基である。)で示されるクロロシラン化合物とを反応させて、式:
(式中、R
3a、R
201a及びE
aは上述のとおりである。)で示される化合物(11a)を得る工程(11a)、
化合物(11a)と、式:
(式中、R
1aは上述のとおり、R
21aは単結合又は2価の連結基である。)で示されるオレフィンとを反応させて、式:
(式中、R
1a、R
21a、R
3a及びE
aは上述のとおりである。)で示される化合物(12a)を得る工程(12a)、
化合物(12a)が有する脱離基を脱離させて、式:
(式中、R
1a、R
21a及びR
3aは上述のとおりである。)で示される化合物(13a)を得る工程(13a)、及び、
化合物(13a)と、式:
(式中、X
aは、上述したとおりである。)で示される塩化スルホン酸とを反応させて、式:
(式中、R
1a、R
21a、R
3a及びX
aは上述のとおりである。)で示される化合物(14a)を得る工程(14a)を含む製造方法により製造できる。
工程(11a)〜工程(13a)までは、上述した界面活性剤(a)と同じである。
工程(14a)において、化合物(13a)と上記塩化スルホン酸との反応割合としては、収率の向上及び廃棄物の減少を考慮して、化合物(13a)1モルに対して、上記塩化スルホン酸が1〜2モルの量を採用できる。
工程(14a)における反応は、塩基の存在下に実施することができる。上記塩基としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アミン等があげられる。
工程(14a)における上記アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N、N−ジメチルアニリン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,8−ナフタレンジアミン等の三級アミン、ピリジン、ピロール、ウラシル、コリジン、ルチジン等の複素芳香族アミン、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザ−ビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等の環状アミン等が挙げられる。
工程(14a)における上記塩基の使用量は、化合物(13a)1モルに対して、1〜2モルを採用できる。
工程(14a)における反応は、極性溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、有機溶媒を使用でき、非プロトン性極性溶媒が挙げられ、具体的にはエーテルを例示できる。
工程(14a)における反応を溶媒中で実施すると、上記反応の終了後に化合物(14a)を含む溶液が得られる。上記溶液に水を加えた後、静置して2相に分離させ、水相を回収し、溶媒を留去することにより、高純度の化合物(14a)を回収してもよい。化合物(14a)が−OSO3Hで示される基を有する場合は(すなわちXがHである場合は)、水に代えて、炭酸水素ナトリウム水溶液やアンモニア水等のアルカリ水溶液を使用することにより、−OSO3Hを硫酸塩基に変換することも可能である。
各工程の終了後、溶媒を留去したり、蒸留、精製等を実施したりして、得られる化合物の純度を高めてもよい。
界面活性剤(a1)は、また、式:
(式中、R
3aは上述のとおり、R
22aは1価の有機基、E
aは脱離基である。)で示されるケトンと、式:
(式中、R
1aは上述のとおり、R
23aは1価の有機基である。)で示されるカルボン酸エステルとを反応させて、式:
(式中、R
1a、R
3a及びE
aは上述のとおり、R
24aは単結合又は2価の連結基である。)で示される化合物(21a)を得る工程(21a)、
化合物(21a)が有する脱離基を脱離させて、式:
(式中、R
1a、R
24a及びR
3aは上述のとおりである。)で示される化合物(22a)を得る工程(22a)、及び、
化合物(22a)と、式:
(式中、X
aは、上述したとおりである。)で示される塩化スルホン酸とを反応させて、式:
(式中、R
1a、R
24a、R
3a及びX
aは上述のとおりである。)で示される化合物(23a)を得る工程(23a)を含む製造方法により製造できる。
工程(21a)〜工程(22a)までは、上述した界面活性剤(a)と同じである。
工程(23a)において、化合物(22a)と上記塩化スルホン酸との反応割合としては、収率の向上及び廃棄物の減少を考慮して、化合物(22a)1モルに対して、上記塩化スルホン酸が1〜2モルの量を採用できる。
工程(23a)における反応は、塩基の存在下に実施することができる。上記塩基としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アミン等があげられる。
工程(23a)における上記アミンとしては、上記工程(14a)と同じである。
工程(23a)における上記塩基の使用量は、収率の向上及び廃棄物の減少を考慮して、化合物(22a)1モルに対して、1〜2モルの量を採用できる。
工程(23a)における反応は、極性溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、有機溶媒がを使用でき、非プロトン性極性溶媒が挙げられ、具体的にはエーテルを例示できる。
工程(23a)における反応を溶媒中で実施すると、上記反応の終了後に化合物(23a)を含む溶液が得られる。上記溶液に水を加えた後、静置して2相に分離させ、水相を回収し、溶媒を留去することにより、高純度の化合物(23a)を回収してもよい。化合物(23a)が−OSO3Hで示される基を有する場合は(すなわちXがHである場合は)、水に代えて、炭酸水素ナトリウム水溶液やアンモニア水等のアルカリ水溶液を使用することにより、−OSO3Hを硫酸塩基に変換することも可能である。
各工程の終了後、溶媒を留去したり、蒸留、精製等を実施したりして、得られる化合物の純度を高めてもよい。
界面活性剤(a1)は、また、式:Y
a−R
3a−OE
a
(式中、R
3aは上述のとおり、Y
aはハロゲン原子、E
aは脱離基である。)で示されるハロゲン化アルキルと、式:
(式中、R
1aは上述のとおりである。)で示されるリチウムアセチリドとを反応させて、式:
(式中、R
1a、R
3a及びE
aは上述のとおりである。)で示される化合物(31a)を得る工程(31a)、
化合物(31a)を酸化して、式:
(式中、R
1a、R
3a及びE
aは上述のとおりである。)で示される化合物(32a)を得る工程(32a)、
化合物(32a)が有する脱離基を脱離させて、式:
(式中、R
1a及びR
3aは上述のとおりである。)で示される化合物(33a)を得る工程(33a)、及び、
化合物(33a)と、式:
(式中、X
aは、上述したとおりである。)で示される塩化スルホン酸とを反応させて、式:
(式中、R
1a、R
3a及びX
aは上述のとおりである。)で示される化合物(34a)を得る工程(34a)を含む製造方法により製造できる。
工程(31a)〜工程(33a)までは、上述した界面活性剤(a)と同じである。
工程(34a)において、化合物(33a)と上記塩化スルホン酸との反応割合としては、収率の向上及び廃棄物の減少を考慮して、化合物(33a)1モルに対して、上記塩化スルホン酸が1〜2モルの量を採用できる。
工程(34a)における反応は、塩基の存在下に実施することができる。上記塩基としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アミン等があげられる。
工程(34a)における上記アミンとしては、上記工程(14a)と同じである。
工程(34a)における上記塩基の使用量は、収率の向上及び廃棄物の減少を考慮して、化合物(33a)1モルに対して、1〜2モルの量を採用できる。
工程(34a)における反応は、極性溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、有機溶媒を使用でき、非プロトン性極性溶媒が挙げられ、具体的にはエーテルを例示できる。
工程(34a)における反応を溶媒中で実施すると、上記反応の終了後に化合物(34a)を含む溶液が得られる。上記溶液に水を加えた後、静置して2相に分離させ、水相を回収し、溶媒を留去することにより、高純度の化合物(34a)を回収してもよい。化合物(34a)が−OSO3Hで示される基を有する場合は(すなわちXがHである場合は)、水に代えて、炭酸水素ナトリウム水溶液やアンモニア水等のアルカリ水溶液を使用することにより、−OSO3Hを硫酸塩基に変換することも可能である。
各工程の終了後、溶媒を留去したり、蒸留、精製等を実施したりして、得られる化合物の純度を高めてもよい。
界面活性剤(a1)は、また、式:
(式中、R
1aは上述のとおり、R
21aは単結合又は2価の連結基である。)で示されるアルケンと、式:
(式中、Y
51aはアルコキシル基である。)で示されるアルキンとを反応させて、式:
(式中、R
1a及びR
21aは上述のとおりである。)
で示される化合物(41a)を得る工程(41a)、及び、
化合物(41a)に、式:
(式中、X
aは、上述したとおりである。)で示される塩化スルホン酸とを反応させて、式:
(式中、R
1a、R
21a及びX
aは上述のとおりである。)で示される化合物(42a)を得る工程(42a)を含む製造方法により製造できる。
工程(41a)は、上述した界面活性剤(a)と同じである。
工程(42a)において、化合物(41a)と上記塩化スルホン酸との反応割合としては、収率の向上及び廃棄物の減少を考慮して、化合物(41a)1モルに対して、上記塩化スルホン酸が1〜2モルの量を採用できる。
工程(42a)における反応は、塩基の存在下に実施することができる。上記塩基としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アミン等があげられる。
工程(42a)における上記アミンとしては、上記工程(14a)と同じである。
工程(42a)における上記塩基の使用量は、収率の向上及び廃棄物の減少を考慮して、化合物(41a)1モルに対して、1〜2モルの量を採用できる。
工程(42a)における反応は、極性溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、有機溶媒が使用でき、非プロトン性極性溶媒が挙げられ、具体的にはエーテルが挙げられる。
工程(42a)における反応を溶媒中で実施すると、上記反応の終了後に化合物(42a)を含む溶液が得られる。上記溶液に水を加えた後、静置して2相に分離させ、水相を回収し、溶媒を留去することにより、高純度の化合物(42a)を回収してもよい。化合物(42a)が−OSO3Hで示される基を有する場合は(すなわちXがHである場合は)、水に代えて、炭酸水素ナトリウム水溶液やアンモニア水等のアルカリ水溶液を使用することにより、−OSO3Hを硫酸塩基に変換することも可能である。
各工程の終了後、溶媒を留去したり、蒸留、精製等を実施したりして、得られる化合物の純度を高めてもよい。
界面活性剤(b1)は、新規化合物であり、例えば、次に例示する製造方法により製造することができる。
界面活性剤(b1)は、下記式:
R
11b−CH=CH−(CR
2b 2)
n−(OR
3b)
p−(CR
4b 2)
q−L
b−OH
(式中、R
2b〜R
4b、n、p及びqは、上記のとおり。R
11bは、H、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基であり、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでも環を巻いていてもよい。L
bは、単結合、−CO
2−B−*、−OCO−B−*、−CONR
6b−B−*、−NR
6bCO−B−*、又は、−CO−(但し、−CO
2−B−、−OCO−B−、−CONR
6b−B−、−NR
6bCO−B−に含まれるカルボニル基を除く。)であり、Bは単結合もしくは置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基であり、R
6bは、H又は置換基を有していてもよい、炭素数1〜4のアルキル基である。*は、式中の−OHに結合する側を指す。)で示される化合物(10b)をヒドロキシ化して、下記式:
(式中、L
b、R
2b〜R
4b、R
11b、n、p及びqは、上記のとおり。)で示される化合物(11b)を得る工程(11b)、
化合物(11b)を酸化して、下記式:
(式中、L
b、R
2b〜R
4b、R
11b、n、p及びqは、上記のとおり。)で示される化合物(12b)を得る工程(12b)、及び、
化合物(12b)を硫酸エステル化して、下記式:
(式中、L
b、R
2b〜R
4b、R
11b、n、p、q及びX
bは、上記のとおり。)で示される化合物(13b)を得る工程(13b)を含む製造方法により製造できる。
R11bとしては、上述した界面活性剤(b)におけるR11bと同じものを好適に採用できる。工程(11b)におけるヒドロキシ化は、上述した工程(100b)のヒドロキシ化と同じ方法を採用できる。
工程(12b)は、上述した界面活性剤(b)における工程(102b)と同様に行うことができる。
工程(13b)における硫酸エステル化は、化合物(12b)と硫酸化試薬とを反応させることにより実施できる。上記硫酸化試薬としては、三酸化硫黄ピリジン錯体、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体、三酸化硫黄トリエチルアミン錯体等の三酸化硫黄アミン錯体、三酸化硫黄ジメチルホルムアミド錯体等の三酸化硫黄アミド錯体、硫酸−ジシクロヘキシルカルボジイミド、クロロ硫酸、濃硫酸、スルファミン酸等が挙げられる。上記硫酸化試薬の使用量としては、化合物(12b)1モルに対して、0.5〜10モルが採用できる。
工程(13b)における硫酸エステル化は、溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、有機溶媒を使用でき、エーテル、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、ピリジン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ニトリル等が挙げられる。
界面活性剤(b1)は、また、下記式:
(式中、L
b、R
1b〜R
4b、n、p及びqは、上記のとおり。R
101bは、有機基である。)で示される化合物(20b)をオゾン分解して、下記式:
(式中、L
b、R
1b〜R
4b、n、p及びqは、上記のとおり。)で示される化合物(21b)を得る工程(21b)、及び、
化合物(21b)を硫酸エステル化して、下記式:
(式中、L
b、R
1b〜R
4b、n、p、q及びX
bは、上記のとおり。)で示される化合物(22b)を得る工程(22b)を含む製造方法により製造できる。
R101bとしては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。2個のR101bは、同一でも異なっていてもよい。
工程(21b)におけるオゾン分解としては、工程(201b)と同様の方法を採用できる。
工程(22b)における硫酸エステル化は、化合物(21b)と硫酸化試薬とを反応させることにより実施でき、工程(13b)における硫酸エステル化と同様の条件が採用できる。
界面活性剤(b1)は、また、下記式:
R
21b−CH=CH−(CR
2b 2)
n−(OR
3b)
p−(CR
4b 2)
q−L
b−OH
(式中、L
b、R
b2〜R
4b、n、p及びqは、上記のとおり。R
21bは、H、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基であり、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでも環を巻いていてもよい。)で示される化合物(30b)をエポキシ化して、下記式:
(式中、L
b、R
2b〜R
4b、R
21b、n、p及びqは、上記のとおり。)で示される化合物(31b)を得る工程(31b)、
化合物(31b)と、R
22b 2CuLi(R
22bは、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基であり、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでも環を巻いていてもよい。)で示されるジアルキル銅リチウムとを反応させて、下記式:
(式中、L
b、R
2b〜R
4b、R
21b、R
22b、n、p及びqは、上記のとおり。)で示される化合物(32b)を得る工程(32b)、
化合物(32b)を酸化して、下記式:
(式中、L
b、R
2b〜R
4b、R
21b、R
22b、n、p及びqは、上記のとおり。)で示される化合物(33b)を得る工程(33b)、及び、
化合物(33b)を硫酸エステル化して、下記式:
(式中、L
b、R
2b〜R
4b、R
21b、R
22b、n、p、q及びX
bは、上記のとおり。)で示される化合物(34b)を得る工程(34b)を含む製造方法により製造できる。
R21b及びR22bしては、上述した界面活性剤(b)におけるR21b及びR22bと同様である。
工程(31b)、工程(32b)及び工程(33b)は、上述した工程(301b)、工程(302b)及び工程(303b)と同様に実施できる。
工程(34b)における硫酸エステル化は、化合物(33b)と硫酸化試薬とを反応させることにより実施でき、工程(13b)における硫酸エステル化と同様の条件が採用できる。
界面活性剤(b1)は、また、下記式:
R
11b−CH=CH−(CR
2b 2)
n−(OR
3b)
p−(CR
4b 2)
q−L
b−OH
(式中、L
b、R
2b〜R
4b、R
11b、n、p及びqは、上記のとおり。)で示される化合物(10b)を酸化して、下記式:
(式中、L
b、R
2b〜R
4b、R
11b、n、p及びqは、上記のとおり。)で示される化合物(41b)を得る工程(41b)、及び、
化合物(41b)を硫酸エステル化して、下記式:
(式中、L
b、R
2b〜R
4b、R
11b、n、p、q及びX
bは、上記のとおり。)で示される化合物(42b)を得る工程(42b)を含む製造方法により製造できる。
工程(41b)における酸化は、上述した工程(401b)と同様に実施できる。
工程(42b)における硫酸エステル化は、化合物(41b)と硫酸化試薬とを反応させることにより実施でき、工程(13b)における硫酸エステル化と同様の条件が採用できる。
界面活性剤(b1)は、また、下記式:
R
11b−CH=CH−(CR
2b 2)
n−OH
(式中、R
2b、R
11b及びnは、上記のとおり。)で示される化合物(50)とハロゲン化剤とを反応させて、下記式:
R
11b−CH=CH−(CR
2b 2)
n−Z
51b
(式中、R
2b、R
11b及びnは、上記のとおり。Z
51bは、ハロゲン原子である。)で示される化合物(51)を得る工程(51)、
化合物(51)と、HO−R
3b−L
b−OH(L
b及びR
3bは、上記のとおり。)で示されるアルキレングリコールとを反応させて、下記式:
R
11b−CH=CH−(CR
2b 2)
n−O−R
3b−L
b−OH
(式中、L
b、R
2b、R
3b、R
11b及びnは、上記のとおり。)で示される化合物(52)を得る工程(52)、
化合物(52)を酸化して、下記式:
(式中、L
b、R
2b、R
3b、R
11b及びnは、上記のとおり。)で示される化合物(53)を得る工程(53)、及び、
化合物(53)を硫酸エステル化して、下記式:
(式中、L
b、R
2b、R
3b、R
11b、n及びX
bは、上記のとおり。)で示される化合物(54)を得る工程(54)を含む製造方法により製造できる。
Z51bとしては、F、Cl、Br又はIが好ましく、Brがより好ましい。
工程(51)で使用するハロゲン化剤としては、N−ブロモスクシンイミド、N−クロロスクシンイミド等が挙げられる。
上記ハロゲン化剤は、化合物(50)1モルに対して、0.5〜10.0モルの量で使用できる。
工程(51)の反応は、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類の存在下に実施できる。
上記ホスフィン類は、化合物(50)1モルに対して、0.5〜10.0モルの量で使用できる。
工程(51)の反応は、溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、有機溶媒を使用でき、具体的にはエーテル、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。
工程(52)において、上記アルキレングリコールは、化合物(51)1モルに対して、0.5〜10.0モルの量で使用できる。
工程(52)の反応は、塩基の存在下に実施できる。上記塩基としては、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
上記塩基は、化合物(51)1モルに対して、0.5〜10.0モルの量で使用できる。
工程(52)の反応は、溶媒中で実施できる。上記溶媒としては、有機溶媒を使用でき、含窒素極性有機化合物、エーテル、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。
工程(53)における酸化は、水及びパラジウム化合物の存在下で、化合物(52)に酸化剤を作用させることにより実施でき、工程(41)における酸化と同様の条件が採用できる。
工程(54)における硫酸エステル化は、化合物(53)と硫酸化試薬とを反応させることにより実施でき、工程(13)における硫酸エステル化と同様の条件が採用できる。
上述したいずれの製造方法においても、各工程の終了後、溶媒を留去したり、蒸留、精製等を実施したりして、得られる化合物の純度を高めてもよい。また、得られる化合物が−OSO3Hで示される基を有する場合は(すなわちXbがHである場合は)、炭酸ナトリウム、アンモニア等のアルカリと接触させることにより、−OSO3Hを硫酸塩基に変換できる。
また、上記炭化水素系界面活性剤としては、下記式(c):
(式中、R
1c〜R
5cはH又は一価の置換基を表し、但し、R
1c及びR
3cのうち、少なくとも1つは、一般式:−Y
c−R
6cで示される基、R
2c及びR
5cのうち、少なくとも1つは、一般式:−X
c−A
cで示される基、又は、一般式:−Y
c−R
6cで示される基を表す。また、X
cは、各出現において同一又は異なって、2価の連結基、又は、結合手;A
cは、各出現において同一又は異なって、−COOM、−SO
3M又は−OSO
3M(Mは、H、金属原子、NR
7c 4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R
7cは、H又は有機基);Y
cは、各出現において同一又は異なって、−S(=O)
2−、−O−、−COO−、−OCO−、−CONR
8c−及び−NR
8cCO−からなる群より選択される2価の連結基、又は、結合手、R
8cはH又は有機基;R
6cは、各出現において同一又は異なって、カルボニル基、エステル基、アミド基及びスルホニル基からなる群より選択される少なくとも1種を炭素−炭素原子間に含んでもよい炭素数2以上のアルキル基;を表す。R
1c〜R
5cのうち、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)で示される界面活性剤(c)も挙げられる。
次に界面活性剤(c)について説明する。
式中、R1c〜R5cはH又は一価の置換基を表し、但し、R1c及びR3cのうち、少なくとも1つは、一般式:−Yc−R6cで示される基、R2c及びR5cのうち、少なくとも1つは、一般式:−X−Aで示される基、又は、一般式:−Yc−R6cで示される基を表す。R1c〜R5cのうち、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。
R1cとしての上記アルキル基が有してもよい上記置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3〜10の環状のアルキル基、ヒドロキシ基が好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
R1cとしての上記アルキル基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
上記アルキル基は、如何なる置換基も有していないことが好ましい。
R1cとしては、置換基を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数3〜10の環状のアルキル基が好ましく、カルボニル基を含まない炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はカルボニル基を含まない炭素数3〜10の環状のアルキル基がより好ましく、置換基を有さない炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が更に好ましく、置換基を有さない炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が更により好ましく、メチル基(−CH3)又はエチル基(−C2H5)が特に好ましく、メチル基(−CH3)が最も好ましい。
一価の置換基としては、一般式:−Yc−R6cで示される基、一般式:−Xc−Acで示される基、−H、置換基を有していてもよいC1−20のアルキル基、−NH2、−NHR9c(R9cは有機基)、−OH、−COOR9c(R9cは有機基)又は−OR9c(R9cは有機基)が好ましい。上記アルキル基の炭素数は1〜10が好ましい。
R9cとしては、C1−10のアルキル基又はC1−10のアルキルカルボニル基が好ましく、C1−4のアルキル基又はC1−4のアルキルカルボニル基がより好ましい。
式中、Xcは、各出現において同一又は異なって、2価の連結基、又は、結合手を表す。
R6cがカルボニル基、エステル基、アミド基及びスルホニル基のいずれをも含まない場合は、Xはカルボニル基、エステル基、アミド基及びスルホニル基からなる群より選択される少なくとも1種を含む2価の連結基であることが好ましい。
Xcとしては、−CO−、−S(=O)2−、−O−、−COO−、−OCO−、−S(=O)2−O−、−O−S(=O)2−、−CONR8c−及び−NR8cCO−からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む2価の連結基、C1−10のアルキレン基、又は、結合手が好ましい。R8cはH又は有機基を表す。
R8cとしては、H又はC1−10の有機基が好ましく、H又はC1−4の有機基がより好ましく、Hが更に好ましい。
式中、Acは、各出現において同一又は異なって、−COOM、−SO3M又は−OSO3M(Mは、H、金属原子、NR7c 4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R7cはH又は有機基である。4つのR7cは、同一でも異なっていてもよい。)を表す。
R7cとしては、H又はC1−10の有機基が好ましく、H又はC1−4の有機基がより好ましい。
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
Mとしては、H、金属原子又はNR7c 4が好ましく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR7c 4がより好ましく、H、Na、K、Li又はNH4が更に好ましく、Na、K又はNH4が更により好ましく、Na又はNH4が特に好ましく、NH4が最も好ましい。
式中、Ycは、各出現において同一又は異なって、−S(=O)2−、−O−、−COO−、−OCO−、−CONR8c−及び−NR8cCO−からなる群より選択される2価の連結基、又は、結合手、R8cはH又は有機基を表す。
Ycとしては、結合手、−O−、−COO−、−OCO−、−CONR8c−及び−NR8cCO−からなる群より選択される2価の連結基が好ましく、結合手、−COO−及び−OCO−からなる群より選択される2価の連結基がより好ましい。
R8cとしては、H又はC1−10の有機基が好ましく、H又はC1−4の有機基がより好ましく、Hが更に好ましい。
式中、R6cは、各出現において同一又は異なって、カルボニル基、エステル基、アミド基及びスルホニル基からなる群より選択される少なくとも1種を炭素−炭素原子間に含んでもよい炭素数2以上のアルキル基を表す。上記R6cの有機基の炭素数は、2〜20が好ましく、2〜10がより好ましい。
R6cのアルキル基は、炭素−炭素原子間にカルボニル基、エステル基、アミド基及びスルホニル基からなる群より選択される少なくとも1種を1又は2以上含むことができるが、上記アルキル基の末端にこれらの基を含まない。上記R6cのアルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
R6cとしては、
一般式:−R10c−CO−R11cで示される基、
一般式:−R10c−COO−R11cで示される基、
一般式:−R11cで示される基、
一般式:−R10c−NR8cCO−R11cで示される基、又は、
一般式:−R10c−CONR8c−R11cで示される基、
(式中、R8cはH又は有機基を表す。R10cはアルキレン基、R11cは置換基を有してもよいアルキル基)が好ましい。
R6cとしては、一般式:−R10c−CO−R11cで示される基がより好ましい。
R8cとしては、H又はC1−10の有機基が好ましく、H又はC1−4の有機基がより好ましく、Hが更に好ましい。
R10cのアルキレン基の炭素数は、1以上が好ましく、3以上がより好ましく、20以下が好ましく、12以下がより好ましく、10以下が更に好ましく、8以下が特に好ましい。また、R10cのアルキレン基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、3〜10が更に好ましい。
R11cのアルキル基の炭素数は、1〜20であってよく、1〜15が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜10が更に好ましく、1〜8が更により好ましく、1〜6が殊更好ましく、1〜3が尚更に好ましく、1又は2が特に好ましく、1が最も好ましい。また、上記R11cのアルキル基は、1級炭素、2級炭素、3級炭素のみで構成されていることが好ましく、1級炭素、2級炭素のみで構成されるのが特に好ましい。すなわち、R11cとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が好ましく、特にメチル基が最も好ましい。
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
PTFE水性分散液中のPTFE固形分含有量
PTFE水性分散液1gを、送風乾燥機中で150℃、60分の条件で乾燥し、水性分散液の質量(1g)に対する、加熱残分の質量の割合を百分率で表した値を採用した。
平均一次粒子径
PTFE水性分散液を水で固形分濃度が0.15質量%になるまで希釈し、得られた希釈ラテックスの単位長さに対する550nmの投射光の透過率と、透過型電子顕微鏡写真により定方向径を測定して決定した数基準長さ平均粒子径とを測定して、検量線を作成する。この検量線を用いて、各試料の550nmの投射光の実測透過率からPTFE水性分散液中のPTFE粒子の平均一次粒子径を決定した。
標準比重(SSG)
ASTM D4895−89に準拠して作製したPTFE成形サンプルを用い、ASTM D−792に記載の水置換法によりPTFEの標準比重(SSG)を測定した。
見掛密度
得られたPTFE粉末について、JIS K6892に準拠して測定した。
PTFE粉末の平均粒径
得られたPTFE粉末について、JIS K6891に準拠して測定した。
PTFE粉末の色調
PTFE粉末の色調(L*、Z)について、JIS Z8781−4に準拠して、測色色差計ZE−6000(日本電色工業株式会社製)(CIELABカラースケール)を用いて測定した。
色調(L*、Z)を測定するためのPTFE検体の作製方法は以下の通りである。
PTFE粉末を4.0g計量して、内径28.6mmの円筒金型内に仕込み、8.27MPaの圧力で1分間保持し、厚みが約4mmの円盤状PTFE成形体(未焼成)を作製した。金型から円盤状PTFE成形体(未焼成)を取り出した後、24時間、25℃で放置した。
上記装置を使用して、円盤状PTFE成形体(未焼成)の色調(L*、Z)(未焼成)を測定した。
次に、円盤状PTFE成形体(未焼成)を385℃に加熱した電気炉内で10分間熱処理後、電気炉から取り出し、円盤状PTFE成形体(焼成後)を得た。上記装置を使用して、得られた円盤状PTFE成形体(焼成後)の色調(L*、Z)(焼成後)を測定した。
合成例1
10−ウンデセン−1−オール(16g)、1,4−ベンゾキノン(10.2g)、DMF(160mL)、水(16mL)及びPdCl2(0.34g)の混合物を90℃で12時間加熱撹拌した。
その後減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣を分液及びカラムクロマトグラフィーで精製し、11−ヒドロキシウンデカン−2−オン(15.4g)を得た。
得られた11−ヒドロキシウンデカン−2−オンのスペクトルデータを以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) δppm:1.29−1.49(m,14H)、2.08(s,3H)、2.45(J=7.6,t,2H)、3.51(J=6.5,t,2H)
11−ヒドロキシウンデカン−2−オン(13g)、三酸化硫黄トリエチルアミン錯体(13.9g)、テトラヒドロフラン(140mL)の混合物を50℃下12時間撹拌した。ナトリウムメトキシド(3.8g)/メタノール(12mL)溶液を反応液に滴下した。
析出固体を減圧濾過し、酢酸エチルで洗浄し、10−オキソウンデシル硫酸ナトリウム(15.5g)(以下、界面活性剤Aという)を得た。得られた10−オキソウンデシル硫酸ナトリウムのスペクトルデータを以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) δppm:1.08(J=6.8,m,10H)、1.32(m,2H)、1.45(m,2H)、1.98(s,3H)、2.33(J=7.6,t,2H)、3.83(J=6.5,t,2H)
合成例2
内容積6LのSUS製のオートクレーブに3500gの脱イオン脱気水、100gのパラフィンワックス、0.122gの界面活性剤Aを加え、反応器を密閉し、系内を窒素で置換を行ない、酸素を取り除いた。反応器を70℃に昇温し、TFEを反応器に充填して、反応器を0.78MPaにする。重合開始剤として過硫酸アンモニウム(APS)0.070gを仕込んだ。反応圧が0.78MPa一定となるようにTFEを仕込む。反応途中に界面活性剤Aを9回、トータル1.10g添加した。TFEを425g仕込んだ時に、撹拌を停止し、反応器が大気圧になるまで脱圧を行なう。水性分散液を反応器より取り出し、冷却後、パラフィンワックスを分離し、PTFE水性分散液Aを得た。
得られたPTFE水性分散液B中のPTFE固形分濃度は10.7質量%であった。
得られたPTFE水性分散液Bに含まれるPTFE粒子の平均一次粒子径は178nmであった。
比較例1
合成例2で得られたPTFE水性分散液Aに脱イオン水を加え、比重(25℃)を1.030に調整した。アンカー型撹拌翼と邪魔板を備えた内容量が1Lのガラス製凝析槽に、比重調整したPTFE水性分散液0.55Lを加え、内温が28℃になるように温度調節した。調節後直ちに硝酸(10%)1.3gを添加すると同時に撹拌速度600rpmで撹拌を開始した。撹拌開始後、水性分散液がスラリー状態を経て、湿潤PTFE粉末が形成されたことを確認し、更に1分間撹拌を継続した。
続いて、湿潤PTFE粉末を濾別し、湿潤PTFE粉末と脱イオン水0.55Lを凝析槽内に仕込み、25℃に調整して、撹拌速度600rpmでポリマー粉末を洗浄する操作を2回繰り返した。
洗浄の後、湿潤PTFE粉末を濾別し、熱風循環式乾燥機で150℃、18時間乾燥させ、PTFE粉末を得た。
得られたPTFE粉末について標準比重を測定したところ、2.175であった。
PTFE粉末の見掛密度、平均粒径、色調(L*、Z)を測定した。結果を表1に示す。
実施例1
合成例2で得られたPTFE水性分散液Aに脱イオン水を加え、比重(25℃)を1.030に調整した。希釈後のPTFE水性分散液0.55Lを予め25℃に調整した上で、深さ18.5cm及び内径8.5cmを有するガラスビーカーに投入した。
ウルトラソニックホモジナイザーUH−8−3C(超音波工業株式会社製)のノズル部分を上記希釈PTFE水性分散液に浸し、超音波処理(300W,19kHz)を12分間施したところ、湿潤PTFE粉末が形成されることが確認できた。
湿潤PTFE粉末を凝析排水から濾別した後、アンカー型撹拌翼と邪魔板を備えた1Lガラス製の容器を使用して、脱イオン水0.55Lで洗浄した(撹拌速度600rpm)。脱イオン水を入れ替えて、この洗浄操作を更に2回繰り返した。
洗浄の後、湿潤PTFE粉末を濾別し、熱風循環式乾燥機で150℃、18時間乾燥させ、PTFE粉末を得た。
比較例1と同様にして、PTFE粉末の見掛密度、平均粒径、色調(L*、Z)を測定した。結果を表1に示す。