JPWO2019124013A1 - 粘着剤組成物及びその利用 - Google Patents

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Abstract

ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)を含む粘着剤組成物であって、前記ビニル重合体(A)は、ガラス転移温度(Tg)が30℃以上200℃以下であり、数平均分子量が500以上10,000以下であって、前記アクリル系粘着性ポリマー(B)100質量部に対して0.5質量部以上60質量部以下含有するようにする。かかる粘着剤組成物をセパレーターに塗工し、硬化させて粘着剤層を得ることで、当該粘着剤層全体のガラス転移温度である第1のTgが−80℃以上10℃以下であり、前記粘着剤層のX線光電子分光分析により得られるその表層部分から計算されるガラス転移温度である第2のTgが40℃以上であり、且つ、前記第1のTgよりも30℃以上高い、粘着剤層を得ることができる。

Description

本明細書は、粘着剤組成物及びその利用に関する。
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年12月20日に出願された日本国特許出願である特願2017−244452の関連出願であり、この日本出願に基づく優先権を主張するものであり、この日本出願に記載された全ての内容をここに援用するものである。
粘着剤で異種材料を貼り合せた部材が、様々な用途において使用されている。ここで、例えば、カーナビゲーション用のタッチパネルディスプレイは、高温高湿条件となる車内で使用され、ポリカーボネートとガラスの積層体からなる交通路用透光性パネルやカーポート等の簡易屋根は、温度差の大きい屋外で使用される。このような過酷な条件下では、接着された異種材料同士の熱膨張係数の違いによる反りや寸法変形が生じるため、部品同士を接着する粘着剤層に応力が集中することとなるが、粘着剤層がこの応力を十分に緩和できない場合には、接着部の浮きや剥がれが生じてしまう。
また、タッチパネル等のディスプレイ用途では、加飾印刷や配線等の凹凸のある部材を貼り合わせるために、粘着剤層に段差追従性が要求されることがある。さらに、当該用途に用いられる粘着剤に対しても、高温高湿度条件下においても被着体からの浮きや剥がれを防止することができる、極めて高い耐熱性(耐久性)を有することが要求される。
例えば、特許文献1では応力緩和性に優れる粘着剤組成物が開示されている。しかしながら、高温高湿条件下におけるプラスチック基板からのアウトガス発生に起因する浮きや剥がれについては十分に抑制することができない。これに対して、高温高湿負荷後の浮きや剥がれを防止可能な粘着剤組成物も開示されている(特許文献2)。この粘着剤組成物は、ベースポリマーと粘着剤と溶剤とを含むが、粘着剤層形成時の溶剤の留去に伴い粘着剤が表層に偏析するという特徴を有しており、優れた粘着性及び耐久性を示すことが記載されている。
特開2012−41453号公報 特開2014−88549号公報
粘着剤層の応力緩和性及び段差追従性を向上させるためには、粘着剤層を厚膜化する方法が一般的である。しかしながら、特許文献2に記載の粘着剤組成物を厚膜化すると、塗工時の膜厚を厚くしなければならないため、塗工後の乾燥工程で突沸による泡が混入して外観を悪化させたり、溶剤が十分に揮発せず粘着剤層中に残留したりして、高温高湿下での発泡の原因となってしまうことがわかった。また、こうした発泡により、厚膜時には、高温高湿下でのプラスチック基板からのアウトガスへの対応も困難になる傾向があることがわかった。
粘着剤層の厚膜化には、また、無溶剤化も考えられる。しかしながら、特許文献2に記載の粘着剤組成物では、溶剤留去に伴う粘着剤の偏析によるものであるため、特許文献2には適用することができない。
本明細書は、厚膜化に適するとともに、高温高湿状態での優れた耐久性を発揮できる粘着剤層を形成できる粘着剤組成物及びその利用を提供する。
本発明者らは、タッキファイヤー成分としてのビニル重合体と、ベースポリマー成分としてのアクリル系粘着性ポリマーシロップと、重合開始剤と、を組み合わせることで、溶剤不存在下でも、ベースポリマー成分の重合に伴い、タッキファイヤー成分を表層に偏析させ得るという知見を得た。本明細書は、こうした知見に基づき、以下の手段を提供する。
(1)ビニル重合体(A)、アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)及び重合開始剤を含む粘着剤組成物であって、
前記ビニル重合体(A)は、ガラス転移温度(Tg)が30℃以上200℃以下であり、数平均分子量が500以上10,000以下であって、前記アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)100質量部に対して0.5質量部以上60質量部以下含有し、
前記粘着剤組成物をセパレーターに塗工し、重合させて粘着剤層を得た際に、当該粘着剤層のX線光電子分光分析により得られるその表層部分から計算されるガラス転移温度である第2のTgが、粘着剤層全体のガラス転移温度である第1のTgよりも30℃以上高い、粘着剤組成物。
(2)前記アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)を重合して得られるアクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度が−80℃以上10℃以下である、(1)に記載の組成物。
(3)前記アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)は、ポリマーシロップを構成する全単量体単位に対し、炭素数2〜4のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル及び炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を10質量%以上99質量%以下含む、(1)又は(2)に記載の組成物。
(4)前記重合開始剤が、光重合開始剤である、(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)前記第1のTgが−80℃以上10℃以下であり、 前記第2のTgが40℃以上である、(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物。
(6)さらに、架橋剤を含有する、(1)〜(5)のいずれかに記載の組成物。
(7)粘着剤層を備える粘着製品であって、
前記粘着剤層は、ビニル重合体(A)、アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)及び重合開始剤を含む粘着剤組成物であって、前記ビニル重合体(A)は、ガラス転移温度(Tg)が30℃以上200℃以下であり、数平均分子量が500以上10,000以下であって、前記アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)100質量部に対して0.5質量部以上60質量部以下含有する組成物を硬化して得られる、粘着製品。
(8)基材の片面又は両面に、前記粘着剤層を備えた粘着シート又は粘着テープである、(7)に記載の粘着製品。
(9)前記粘着剤層の厚みが50μm以上5mm以下である、(7)又は(8)に記載の粘着製品。
(10)前記粘着剤層のX線光電子分光分析により得られるその表層部分から計算されるガラス転移温度である第2のTgが、粘着剤層全体のガラス転移温度である第1のTgよりも30℃以上高い、(7)〜(9)のいずれかに記載の粘着製品。
(11)粘着剤組成物の製造方法であって、
ビニル重合体(A)、アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)及び重合開始剤を混合する工程と、
前記ビニル重合体(A)は、ガラス転移温度(Tg)が30℃以上200℃以下であり、数平均分子量が500以上10,000以下であって、前記アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)100質量部に対して0.5質量部以上60質量部以下を混合し、
前記粘着剤組成物を硬化させて得られる粘着剤層が、当該粘着剤層のX線光電子分光分析により得られるその表層部分から計算されるガラス転移温度である第2のTgが、粘着剤層全体のガラス転移温度である第1のTgよりも30℃以上高い、製造方法。
(12)粘着剤層を備える粘着製品の製造方法であって、
ビニル重合体(A)、アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)及び重合開始剤を含み、
前記ビニル重合体(A)は、ガラス転移温度(Tg)が30℃以上200℃以下であり、数平均分子量が500以上10,000以下であって、前記アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)100質量部に対して0.5質量部以上60質量部以下含有する前記粘着剤組成物を基材に塗工する工程と、
前記粘着剤用セパレータ上において前記粘着剤組成物を硬化させて粘着剤層を形成する工程と、
を備える、方法。
(13)前記粘着剤層は、X線光電子分光分析により得られるその表層部分から計算されるガラス転移温度である第2のTgが、粘着剤層全体のガラス転移温度である第1のTgよりも30℃以上高いガラス転移温度特性を有する粘着剤層である、(12)に記載の方法。
本明細書は、所定のビニル重合体及び所定のアクリル系粘着性ポリマーシロップを含有する粘着剤組成物であって、特定のガラス転移温度組成を備える粘着剤組成物及びその製造方法、並びに当該粘着剤組成物を用いてなる粘着製品に関する。
本明細書に開示される粘着剤組成物(以下、単に本粘着剤組成物ともいう。)は、所定のガラス転移温度と数平均分子量とを有するビニル重合体(A)と、アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)と、重合開始剤と、を組み合わせることで、粘着剤層の形成時において、溶剤不存在下であっても、アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)の重合に伴って、ビニル重合体(A)を粘着剤層の表層に偏析させることができる。これにより、溶剤不存在下でも、表層にビニル重合体(A)を偏析させた厚膜の粘着剤層を得ることができる。
また、得られる粘着剤層は、その全体のガラス転移温度である第1のTgを特定温度範囲、−80℃以上10℃以下とし、前記粘着剤層のX線光電子分光分析により得られるその表層部分から計算されるガラス転移温度である第2のTgが40℃以上であり、且つ、前記第1のTgよりも30℃以上高い、という特性を発揮することができ、これにより、優れた耐熱性を備えることができる。
本粘着剤組成物によれば、厚膜であって、しかも、高温条件や高温高湿条件において、十分な耐熱性を発揮して、粘着性の低下や発泡耐性の低下を抑制又は回避できる粘着製品を得ることができる。また、上記粘着製品は、厚膜の粘着剤層を備えるとともに、高温高湿条件下で使用した場合であってもアウトガス由来の発泡を抑制することが可能であるため、粘着製品の膨れや剥がれによる視認性の低下等の問題を抑制又は回避できる。
以下、本開示の代表的かつ非限定的な具体例について、適宜図面を参照して詳細に説明する。この詳細な説明は、本開示の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。また、以下に開示される追加的な特徴ならびに発明は、さらに改善された粘着剤組成物を提供するために、他の特徴や発明とは別に、又は共に用いることができる。
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本開示を実施する際に必須のものではなく、特に本開示の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、上記及び下記の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、独立及び従属クレームに記載されるものの様々な特徴は、本開示の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
本明細書及び/又はクレームに記載された全ての特徴は、実施例及び/又はクレームに記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
以下、本明細書の開示について詳しく説明する。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味する。
(本粘着剤組成物)
本粘着剤組成物は、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)を含有するものである。当該ビニル重合体(A)、アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)及びこれらを含有する粘着剤組成物の詳細について、以下に順次説明する。
〔ビニル重合体(A)〕
本発明のビニル重合体(A)は、30℃以上200℃以下のTgを備えることができる。Tgの範囲は、アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)から得られる粘着性ポリマーのTgにもよるが、ビニル重合体(A)のTgが高い場合には、良好な耐熱性が得られ易い。Tgが30℃未満であると、高温条件下で各種被着体への接着強度が十分でなく耐久性に劣る場合がある。また、原料単量体の制約等から、一般に200℃を超えることはない。
ビニル重合体(A)のTgの下限は、例えば40℃以上、また例えば、45℃以上、また例えば50℃以上、また例えば60℃以上、また例えば70℃以上、また例えば80℃以上、また例えば90℃以上、また例えば100℃以上、さらに例えば110℃以上とすることができる。また、上限は、例えば180℃以下、また例えば150℃以下、また例えば140℃以下、また例えば130℃以下、また例えば120℃以下とすることもできる。さらに例えば100℃以下とすることもできる。また、Tgの範囲は、こうした下限温度及び上限温度を適宜組み合わせることによって設定することができるが、例えば、30℃以上180℃以下、40℃以上150℃以下とすることもできる。また例えば40℃以上130℃以下とすることもできる。また例えば45℃以上130℃以下、また例えば50℃以上120℃以下、また例えば60℃以上120℃以下、また例えば70℃以上120℃以下、また例えば80℃以上120℃以下等とすることができる。
ビニル重合体(A)のTgは、示差走査熱量測定(DSC)により昇温速度10℃/分で測定した値をTgとして採用する。
ビニル重合体(A)を構成する単量体としては、ラジカル重合性を有する種々のビニル系不飽和化合物を使用することができる。これにより、ビニル重合体(A)が、こうしたビニル系不飽和化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構造単位を有することもできる。当該化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、脂肪族環式ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸、不飽和酸無水物、ヒドロキシル基含有ビニル化合物、アミノ基含有ビニル化合物、アミド基含有ビニル化合物、アルコキシ基含有ビニル化合物、シアノ基含有ビニル化合物、ニトリル基含有ビニル化合物、マレイミド系化合物等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸n−オクタデシル等の直鎖状又は分岐状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。なかでも、Tgの高いビニル重合体(A)を得易い点で、メタクリル酸メチルが好ましい。
ビニル重合体(A)を構成するビニル系不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物を好ましく用いることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物の使用量は、特に限定するものではないが、例えば、その下限は10質量%以上とすることができ、また例えば15質量%以上、また例えば20質量%以上、また例えば25質量%以上、また例えば30質量%以上、また例えば35質量%以上、また例えば40質量%以上、また例えば50質量%以上、また例えば60質量%以上、また例えば70質量%以上とすることもできる。また、その上限は、100質量%であってもよく、例えば95質量%以下、また例えば90質量%以下、また例えば85質量%以下、また例えば80質量%以下、また例えば75質量%以下、また例えば70%質量%以下、また例えば65質量%以下とすることもできる。使用量の範囲は、こうした下限及び上限を適宜組み合わせることによって設定することができるが、例えば、かかる使用量は、例えば20質量%以上90質量%以下、また例えば30質量%以上90質量%以下とすることができ、また例えば40質量%以上90質量%以下、また例えば40質量%以上70質量%以下などとすることができる。
上記脂肪族環式ビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
これらの中でも、比較的Tgを高く設定することができ、粘着剤層を形成した際にビニル重合体(A)が表層へ偏析し易く、良好な粘着性能が得られる傾向がある点で、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル及び(メタ)アクリル酸アダマンチルとすることもできる。なかでも、(メタ)アクリル酸イソボルニルとすることもできる。
脂肪族環式ビニル化合物は、粘着剤層において良好な粘着性能が得られる傾向があるため好適である。これらのビニル化合物を用いることで、アクリル系粘着性ポリマー(B)に対して相対的に低極性のビニル重合体(A)を得られ易くなり、粘着剤層を形成した際にビニル重合体(A)を表層へ偏析し易くできるからである。
上記脂肪族環式ビニル化合物から選択される1種又は2種以上の単量体の具体的な使用量(総量)は適宜設定することができるが、例えば、その下限は3質量%以上とすることができ、また例えば5質量%以上、また例えば10質量%以上、また例えば15質量%以上、また例えば20質量%以上、また例えば25質量%以上、また例えば30質量%以上とすることもできる。また、その上限は、100質量%であってもよく、例えば80質量%以下、また例えば70質量%以下、また例えば60質量%以下、また例えば55質量%以下、また例えば50質量%以下、また例えば45%質量%以下、また例えば40質量%以下とすることもできる。使用量の範囲は、こうした下限及び上限を適宜組み合わせることによって設定することができるが、例えば3質量%以上80質量%以下、また例えば5質量%以上70質量%以下とすることができ、また例えば10質量%以上50質量%以下、また例えば20質量%以上40質量%以下などとすることができる。
ビニル重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物及び脂肪族環式ビニル化合物を単量体に由来する単量体単位を備えることが好適である。例えば、これらに由来する単量体単位が、全単量体単位の80質量%以上であり、また例えば85質量%以上であり、また例えば90質量%以上であり、また例えば95質量%以上であり、また例えば100質量%である。
上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。例えば、スチレン等を用いることもできる。
上記不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、桂皮酸、更には、不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等のモノアルキルエステル)等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
上記不飽和酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
ヒドロキシル基含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステルや、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール、m−イソプロペニルフェノール、o−イソプロペニルフェノール等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
アミノ基含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−(ジ−n−プロピルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ジ−n−プロピルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸3−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸3−ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸3−(ジ−n−プロピルアミノ)プロピル等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
アミド基含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
アルコキシ基含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロポキシプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシプロピル等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
シアノ基含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸1−シアノエチル、(メタ)アクリル酸2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸1−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸2−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸3−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸4−シアノブチル、(メタ)アクリル酸6−シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチル−6−シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸8−シアノオクチル等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
ニトリル基含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリロニトリル、エタクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル、α−イソプロピルアクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−フルオロアクリロニトリル等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
上記マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ナフチルマレイミド等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
上記化合物以外に、不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステル、ビニルエステル化合物、ビニルエーテル化合物等を用いることもできる。 不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステルとしては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等のジアルキルエステルが挙げられる。
ビニルエステル化合物としては、メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニル、桂皮酸ビニル等が挙げられる。
上記ビニルエーテル化合物としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル等が挙げられる。
上記ビニル重合体(A)の数平均分子量(Mn)は500以上10,000以下とすることができる。下限は1,000以上、1,500以上とすることもできる。また、上限は7,000以下、5,000以下、4,000以下とすることもできる。また、範囲は500以上7,000以下、1,000以上5,000とすることもできる。Mnが10,000を超えるとアクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)から得られる粘着性ポリマーとの相溶性が悪くなる。一方、Mnが500未満の重合体を製造するには、重合開始剤や連鎖移動剤を多量に用いたり、生産性の低下を招く等の問題がある。
また、重量平均分子量(Mw)と上記(Mn)との比(Mw/Mn)は、良好な接着強度が得られやすいという観点から、例えば3.0以下、また例えば2.2以下、また例えば1.9以下、また例えば1.8以下、また例えば1.7以下、また例えば1.6以下などとすることもできる。ここで、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて得られた標準ポリスチレン換算値である。
本発明のビニル重合体(A)は、その製造方法について特段の制約はないが、例えば、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知のラジカル重合方法を採用して上記単量体を重合することにより容易に得ることができる。溶液重合法による場合、有機溶剤及びビニル単量体原料を反応器に仕込み、有機過酸化物、アゾ系化合物等の熱重合開始剤を添加して、50〜300℃に加熱して共重合することにより目的とするビニル重合体を得ることができる。当該ビニル重合体は、有機溶剤に溶解された溶液として使用しても良いし、加熱減圧処理等により溶剤を留去して用いても良い。 単量体を含む各原料の仕込み方法は、すべての原料を一括して仕込むバッチ式の初期一括仕込みでもよく、少なくとも一つの原料を連続的に反応器中に供給するセミ連続仕込みでもよく、全原料を連続供給し、同時に反応器から連続的に生成樹脂を抜き出す連続重合方式でもよい。
溶液重合法等に使用する有機溶剤としては、有機炭化水素系化合物が適当であり、テトラヒドロフラン及びジオキサン等の環状エーテル類、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素化合物、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、オルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル等が例示され、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの重合溶剤の中では、ビニル系重合体をよく溶解し、精製しやすいように沸点が比較的低い、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトンを用いることもできる。
本発明で使用する開始剤は、アゾ系化合物、有機過酸化物、無機過酸化物等を用いることができるが、特に限定されるものではない。公知の酸化剤及び還元剤からなるレドックス型重合開始剤を用いても良い。また、同じく公知の連鎖移動剤を併用することもできる。
上記アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾクメン、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスジメチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2−(tert−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等が挙げられる。
上記有機過酸化物としては、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ビス(tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。
上記無機過酸化物としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。 また、レドックス型重合開始剤としては、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸、硫酸第一鉄等を還元剤とし、ペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等を酸化剤としたものを用いることができる。
ビニル重合体(A)の分子量を調整するため、必要に応じて公知の連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、エタンチオール、ブタンチオール、ドデカンチオール、ベンゼンチオール、トルエンチオール、α−トルエンチオール、フェネチルメルカプタン、メルカプトエタノール、3−メルカプトプロパノール、チオグリセリン、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、α−メルカプトイソ酪酸、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸エチル、チオ酢酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、tert−テトラデシルメルカプタン等が挙げられる。
また、本発明のビニル重合体(A)は、攪拌槽型反応器を使用し、180〜350℃の温度範囲において連続重合することにより得ることもできる。この重合方法では、重合開始剤や連鎖移動剤を実質的に使用することなく比較的低分子量のビニル重合体を得ることができるため純度の高い重合体が得られ、後述する着色や臭気の点でも有利であるため好ましい。重合温度が180℃未満の場合には、重合反応に重合開始剤や多量の連鎖移動剤が必要となり、得られた共重合体は着色しやすく、また好ましくない臭気を発生する。一方、重合温度が350℃を越える場合には、重合反応中に分解反応が起こりやすく、得られる共重合体が着色するため、これを含む粘着剤組成物から得られる粘着層の透明性の低下が懸念される。さらに、このような重合方法によれば分子量の分布範囲の小さいビニル重合体が得られる。尚、重合開始剤は随意に使用してもよいが、全単量体に対して約1質量%以下で使用することもできる。
〔アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)〕
アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)(以下、単に本シロップともいう。)は、以下に説明するアクリル系粘着性ポリマー(以下、単に、本粘着性ポリマーともいう。)を得ることができるポリマーシロップである。本明細書において、本シロップは、本粘着性ポリマーの一部であるポリマー成分と、本粘着性ポリマーの残余を構成する(メタ)アクリル系モノマーとを含有することができる。以下、本粘着性ポリマーについて説明する。
<アクリル系粘着性ポリマー>
本粘着性ポリマーは、−80℃以上10℃以下の範囲にあるTgを有することができる。Tgが−80℃以上であれば粘着剤として十分な凝集力を有するとともに、良好な接着性を示すことができる。一方、Tgが10℃以下であれば、良好な応力緩和性を示すからである。Tgの下限は、例えば−70℃以上であり、また例えば−60℃以上であり、また例えば−50℃以上であり、また例えば−40℃以上であり、また例えば−30℃以上であり、また例えば−25℃以上である。また、Tgの上限は、例えば5℃以下であり、また例えば1℃以下であり、また例えば0℃以下である。Tgの範囲は、これらの上限及び下限を適宜組み合わせることで設定できるが、例えば、−70℃以上10℃以下、また例えば−60℃以上10℃以下、また例えば−50℃位及び上10℃以下、また例えば−40℃以上10℃以下、また例えば−30℃以上10℃以下、また例えば−30℃以上5℃以下などとすることができる。
なお、本粘着性ポリマーのTgを、例えば−30℃以上とすることで耐熱性及び低タック性に優れる粘着剤組成物を得ることができる。また例えば−25℃以上であり、また例えば−20℃以上であり、また例えば−15℃以上であり、また例えば−10℃以上などとすることができる。
本粘着性ポリマーは、十分な凝集力と良好な接着性とを発揮する観点から、例えば数平均分子量(Mn)が50,000以上、また例えば100,000以上、また例えば120,000以上、また例えば130,000以上、また例えば140,000以上、また例えば150,000以上などとすることもできる。一方、数平均分子量の上限は特に限定されるものではないが、現実的にその上限は、例えば500,000以下、また例えば400,000以下、また例えば300,000以下、また例えば200,000以下などとすることができる。
本粘着性ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、良好な凝集力を付与するという観点から、例えば300,000以上、また例えば400,000以上、また例えば500,000以上とすることができる。また、重量平均分子量(Mw)が600,000以上であると耐熱性がより向上する点で好ましく、例えば700,000以上、また例えば800,000以上、また例えば900, 000以上、また例えば1,000,000以上などとすることもできる。一方、重量平均分子量の上限は特に限定されるものではないが、現実的にその上限は、例えば10,000,000以下、また例えば5,000,000以下、また例えば3,000,000以下、また例えば2,000,000以下、また例えば1,000,000以下などとすることができる。
また、重量平均分子量(Mw)と上記(Mn)との比(Mw/Mn)は、良好な接着強度が得られやすいという観点から、例えば6.0以下、また例えば5.0以下、また例えば4.5以下、また例えば4.0以下、また例えば3.8以下、また例えば3.6以下などとすることもできる。ここで、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ビニル重合体(A)と同様、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて得られた標準ポリスチレン換算値である。
本粘着性ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群から選択される1種又は2種以上のモノマーに由来する構成単位を備えることができる。かかる単量体単位を備えることで、柔軟で粘着性に優れる本粘着性ポリマーが得られるとともに、上記ビニル重合体(A)とを含む粘着剤組成物から粘着剤層を形成した際に、耐熱性に優れた粘着剤層を得ることができる。
((メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル)
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸ブトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル及び(メタ)アクリル酸ブトキシブチル等の炭素数2〜8のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル等を挙げることができ、上記ビニル重合体(A)の偏析を生じさせ易い点で炭素数2〜4のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルを用いることもできる。また、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルは、上記の内の1種又は2種以上を使用することができる。
こうした(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの選択にあたり、溶解パラメータ(SP値)が9.9以上となるホモポリマーの単量体単位となる化合物を用いることができる。SP値が9.9以上であると、得られる粘着剤層の表層にビニル重合体(A)が偏析しやすくさせることができる。例えばアクリル酸メトキシエチル(SP値:10.2)、アクリル酸エトキシエチル(同10.0)等が挙げられる。なお、SP値は、当業者に周知なFedors法により算出することができる。
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしての使用量は、特に限定するものではないが、粘着剤層を形成した際にビニル重合体(A)が表層へ偏析し易く、良好な粘着性能が得られる傾向がある点で、例えば、その下限は、本粘着性ポリマーの全単量体単位の10質量%以上とすることができ、また例えば15質量%以上、また例えば20質量%以上、また例えば25質量%以上、また例えば30質量%以上、また例えば40質量%以上、また例えば50質量%以上、また例えば60質量%以上、また例えば70質量%以上、また例えば80質量%以上、また例えば90質量%以上などとすることができる。また、その上限は、例えば99質量%とすることができ、また例えば95質量%以下、また例えば90質量%以下、また例えば80%質量%以下、また例えば70質量%以下などとすることができる。使用量の範囲は、これらの上限及び下限を適宜組み合わせることで設定できるが、例えば10質量%以上95質量%以下、また例えば20質量%以上95質量%以下、また例えば30質量%以上70質量%以下、また例えば40質量%以上60質量%以下などとすることができる。
((メタ)アクリル酸アルキルエステル)
アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げることができ、これらの内の1種又は2種以上を使用することができる。
なかでも、例えば、炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを少なくとも用いることができる。こうした(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることで、本粘着性ポリマーのTgを向上させることができ、粘着剤層の耐熱性向上に有利である。好適には、炭素数1〜2のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、より好適には、(メタ)アクリル酸メチルエステルである。
こうした(メタ)アクリル酸アルキルエステルの選択にあたり、上記と同様、溶解パラメータ(SP値)が9.9以上となるホモポリマーの単量体単位となる化合物を用いることができる。例えば、アクリル酸メチル(SP値:10.6)、アクリル酸エチル(同10.2)、メタクリル酸メチル(同9.9)等が挙げられる。SP値が9.9以上であると、得られる粘着剤層の表層にビニル重合体(A)が偏析し易くすることができる。
こうした、炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量は、特に限定するものではないが、本粘着性ポリマーのTg向上及び得られる粘着剤層の表層にビニル重合体(A)が偏析し易くなる点等から、例えば、その下限は、全単量体単位の10質量%以上とすることができ、また例えば15質量%以上、また例えば20質量%以上、また例えば25質量%以上、また例えば30質量%以上、また例えば35質量%以上、また例えば40質量%以上、また例えば50質量%以上、また例えば60質量%以上、また例えば70質量%以上、また例えば80質量%以上、また例えば90質量%以上などとすることができる。また、その上限は、例えば99質量%とすることができ、また例えば95質量%以下、また例えば90質量%以下、また例えば80質量%以下、また例えば70質量%以下などとすることができる。使用量の範囲は、これらの上限及び下限を適宜組み合わせることが設定できるが、例えば10質量%以上99質量%以下、また例えば20質量%以上95質量%以下、また例えば20質量%以上85質量%以下、また例えば20質量%以上70質量%以下、また例えば30質量%以上60質量%以下などとすることができる。
また、得られる粘着剤層の表層にビニル重合体(A)が偏析し易くなる点から、本粘着性ポリマーを構成する全単量体単位に対し、炭素数2〜4のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル及び炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を10質量%以上含むことができる。例えば、その下限は、全単量体単位の15質量%以上、また例えば20質量%以上、また例えば25質量%以上、また例えば30質量%以上、また例えば35質量%以上、また例えば40質量%以上、また例えば50質量%以上、また例えば60質量%以上、また例えば70質量%以上、また例えば80質量%以上、また例えば90質量%以上などとすることができる。また、その上限は、例えば99質量%とすることができ、また例えば95質量%以下、また例えば90質量%以下、また例えば80質量%以下、また例えば70質量%以下などとすることができる。使用量の範囲は、これらの上限及び下限を適宜組み合わせることが設定できるが、例えば10質量%以上99質量%以下、また例えば20質量%以上95質量%以下、また例えば20質量%以上85質量%以下、また例えば20質量%以上70質量%以下、また例えば30質量%以上60質量%以下などとすることができる。
また例えば、炭素数4以上8以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることもできる。こうした(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることで、本粘着性ポリマーのTgを低減することができ、粘着剤層に応力緩和性を付与する点で有利である。好適には、炭素数4〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、より好適には、炭素数4又は5のアルキル基、さらに好適には炭素数4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸メチルエステルである。
こうした、炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量は、特に限定するものではないが、粘着剤層の応力緩和性の観点等から、例えば、その下限は、全単量体単位の10質量%以上とすることができ、また例えば15質量%以上、また例えば25質量%以上、また例えば30質量%以上、また例えば35質量%以上、また例えば40質量%以上、また例えば50質量%以上、また例えば60質量%以上、また例えば70質量%以上などとすることができる。また、その上限は、例えば90質量%以下とすることができ、また例えば80質量%以下とすることができ、また例えば75質量%以下、また例えば70質量%以下、また例えば65%質量%以下、また例えば60質量%以下などとすることができる。使用量の範囲は、これらの上限及び下限を適宜組み合わせることで設定できるが、例えば10質量%以上90質量%以下、また例えば10質量%以上85質量%以下、また例えば15質量%以上80質量%以下、また例えば15質量%以上50質量%以下、また例えば30質量%以上60質量%以下などとすることができる。
本粘着性ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群から選択される1種又は2種以上の単量体単位を、その全単量体単位の80質量%以上備えることができる。こうすることで、耐熱性に優れる粘着剤層を得ることができる。また、例えば85質量%以上であり、また例えば90質量%以上であり、また例えば99質量%以下であり、また例えば95質量%以下である。使用量の範囲は、これらの上限及び下限を適宜組み合わせることで設定できるが、例えば80質量%以上99質量%以下、また例えば85質量%以上95質量%以下などとすることができる。
本粘着性ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外にも本粘着剤組成物の効果を損なわない範囲で、これと共重合可能な他の単量体を使用することができる。共重合可能な単量体としては例えば、エチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、その他のビニル系単量体が挙げられる。
上記エチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物とは、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物である。分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物は、いわゆる架橋剤として作用し、これを使用することにより本粘着性ポリマーに架橋構造を形成することができる。分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物としては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−ノナンジオールジアクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート;これらポリ(メタ)アクリレートの原料アルコールのアルキレンオキサイド〔エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等〕付加物のポリ(メタ)アクリレート;これらポリ(メタ)アクリレートの原料アルコールのカプロラクトン変性物のポリ(メタ)アクリレート;エチレンオキサイド変性イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート及びエチレンオキサイド変性イソシアヌル酸のトリ(メタ)アクリレート等のアルキレンオキサイド変性イソシアヌル酸のポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらの内の1種又は2種以上を使用することができる。
上記ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、例えばポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−モノ(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらの内の1種又は2種以上を使用することができる。
その他のビニル系単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のα、β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の脂肪族環式ビニル化合物;イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル等の不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル及び(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の水酸基含有単量体;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシブチルアクリルアミド等のエチレン系不飽和カルボン酸アミド及びN−置換化合物;アリルアルコール等の不飽和アルコール;(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸グリシジル、ダイアセトンアクリルアミド等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を使用することができる。
その他の単量体の使用量は、0質量%以上10質量%以下の範囲としてもよいほか、例えば0.5質量%以上8.0質量%以下、また例えば1.0質量%以上5.0質量%以下とすることもできる。
本粘着性ポリマーは、上記のとおり、溶解パラメータ(SP値)が9.9以上となるホモポリマーの単量体単位となる化合物を用いることが、得られる粘着剤層の表層にビニル重合体(A)が偏析し易くなるために好適である。本粘着性ポリマーにおいては、こうした単量体を、全単量体単位の例えば10質量%以上、また例えば20質量%以上、また例えば25質量%以上、また例えば30質量%以上、また例えば35質量%以上、また例えば40質量%以上、また例えば50質量%以上、また例えば55質量%以上、また例えば60質量%以上、また例えば65質量%以上、また例えば70質量%以上、また例えば75質量%以上、また例えば80質量%以上、また例えば90質量%以上備えることができる。 上記Fedors法により求められる主な単量体の溶解パラメータ(SP値)を表1に例示する。
Figure 2019124013
(アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B))
本シロップは、本粘着性ポリマーを得ることができるポリマーシロップである。本明細書において、本シロップは、本粘着性ポリマーの一部であるポリマー成分と、本粘着性ポリマーの残余を構成するためのモノマー成分とを含有することができる。より具体的には、本シロップは本粘着性ポリマーを構成する全モノマーを部分的に重合させることによって得られるポリマー成分/モノマー成分の混合物であってもよいし、前記混合物に別の種類のモノマーを添加して得られるポリマー成分/モノマー成分であってもよい。さらには、公知の重合法によりあらかじめポリマー成分を得ておき、そこに所定のモノマーを添加して得られる、ポリマー成分/モノマー成分の混合物であってもよい。
本シロップは、ポリマー成分/モノマー成分の混合物であるが、概して、ポリマー成分が残余のモノマーに溶解した溶液の形態を採ることができる。ポリマー成分及び残余モノマーが液体であるため、ビニル重合体(A)を本粘着性シロップの重合直前まで溶解する一方、本粘着性ポリマーが重合生成するのに伴って、本粘着剤組成物におけるタッキファイヤー成分であるビニル重合体(A)を粘着剤層の表層に偏析させることができる。
本シロップに含まれるポリマー成分の構成モノマーと、残余のモノマーとは、1種又は2種以上の同一モノマーを使用してもよいし、異なっていてもよいが、好ましくは1種又は2種以上の同一モノマーを使用する。同一モノマーであると、ポリマー成分の残余のモノマーへの相溶性が優れており、粘着剤層を形成したときの透明性が優れている。なお、1種又は2種以上の同一モノマーを使用するとは、少なくとも、モノマーの種類の観点から同一のモノマー組成であることを意味し、好ましくは量的にも同一のモノマー組成であることを意味している。
本シロップにおける、ポリマー成分と残余モノマーとの比率は特に限定するものではなく、塗膜の形成やハンドリングに必要な粘度が得られる程度であればよい。例えば、ポリマー成分が1質量%以上99質量%以下であり、残部が残余モノマーである。また例えば、ポリマー成分が10質量%以上90質量%以下であり、残部が残余モノマーである。また例えば、ポリマー成分が20質量%以上80質量%以下であり、残部が残余モノマーであり、また例えば、ポリマー成分が30質量%以上70質量%以下である。
ポリマー成分は、十分な凝集力と良好な接着性とを発揮する観点から、例えば数平均分子量(Mn)が50,000以上、また例えば100,000以上、また例えば120,000以上、また例えば130,000以上、また例えば140,000以上、また例えば150,000以上などとすることもできる。一方、数平均分子量が高すぎると製造上の扱いが困難となる場合がある。よって、上限は、例えば500,000以下、また例えば400,000以下、また例えば300,000以下、また例えば200,000以下などとすることができる。
ポリマー成分の重量平均分子量(Mw)は、良好な凝集力を付与するという観点から、例えば300,000以上、また例えば400,000以上、また例えば500,000以上とすることができる。また、重量平均分子量(Mw)が600,000以上であると耐熱性がより向上する点で好ましく、例えば700,000以上、また例えば800,000以上、また例えば900, 000以上、また例えば1,000,000以上などとすることもできる。一方、重量平均分子量が高すぎると製造上の扱いが困難となる場合がある。よって、上限は、例えば3,000,000以下、また例えば2,000,000以下、また例えば1,000,000以下などとすることができる。
本シロップに含まれるポリマー成分は、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知のラジカル重合法により製造することができる。また、重合にあたっては、必要なモノマーのほか、重合開始剤、重合調整剤、連鎖移動剤を使用することができる。
重合開始剤は、熱分解型、光開始型などの公知の各種重合開始剤を用いることができる。好ましくは、光重合開始剤を用いる。
熱分解型重合開始剤である有機パーオキサイド類としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジアセチルパーオキサイド、ジデカノイルパーオキサイド、ジイソノナイルパーオキサイド、2−メチルペンタノイルパーオキサイド等が例示できる。また有機ハイドロパーオキサイド類としては、tert−ブチルハイドロパ−オキサイド、クミルハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジハイドロパーオキシヘキサン、p−メタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパ−オキサイド等が例示できる。
熱分解型重合開始剤である有機パ−オキシケタ−ル類としては、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが、アゾ化合物類としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2、2’−アゾビスシクロヘキシルニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等がそれぞれ例示できる。
光重合開始剤としては、ベンゾインとそのアルキルエーテル類、アセトフェノン類、アントラキノン類、チオキサントン類、ケタール類、ベンゾフェノン類及、キサントン類、アシルホスフィンオキシド類、α−ジケトン類等が挙げられる。
これらの重合開始剤は、ポリマー成分を得るためのモノマーの混合物100質量部に対して、0.0001〜0.5質量部の範囲で用いることができる。
上記したように、本シロップは、本粘着性ポリマーを構成するためのモノマーに上記重合開始剤を添加し、モノマーを部分的に重合させてポリマー成分を得るか、又は本粘着性ポリマーを構成するためのモノマーの一部を重合して得られるポリマー成分を、前記一部のモノマー以外の残余のモノマーに溶解させることなどによって得られる。
〔粘着剤組成物〕
本粘着剤組成物は、上記ビニル重合体(A)と、本シロップ(B)と、重合開始剤と、含有することができる。
本粘着剤組成物においては、ビニル重合体(A)と本シロップ(B)とを所定の配合比で含有することができる。そして、これにより、本粘着剤組成物から粘着剤層を得た際に、ビニル重合体(A)を表層に偏析させることで、粘着剤層表面近傍のTgが高くなり、ひいては良好な耐熱性と接着強度を得ることができる。こうしたビニル重合体(A)の偏析挙動のほか、後述する粘着剤層表層と粘着剤層全体のTg差は、本シロップ(B)に対するビニル重合体(A)の配合比、ビニル重合体(A)の単量体組成(極性)や分子量のほか、Tg、Mw/Mn等を適宜設定することにより調整することができる。
本粘着剤組成物は、固形分換算で、本シロップ(B)100質量部に対してビニル重合体(A)を0.5質量部以上60質量部以下含有することができる。ビニル重合体(A)の使用量を0.5質量部以上とすることにより耐久性が向上して加熱湿熱後の浮きや剥がれを抑制する効果が十分発現される傾向にあり、60質量部以下とすることにより透明性に優れた粘着剤層とすることができる。
特に限定するものではないが、ビニル重合体(A)の下限は、例えば、同0.8質量部以上であり、また例えば1.0質量部以上、また例えば2.0質量部以上、また例えば5.0質量部以上、また例えば6.0質量部以上、また例えば8.0質量部以上、また例えば10質量部以上、また例えば15質量部以上などとすることができる。また、上限は、例えば、同50質量部以下であり、また例えば40質量部以下、また例えば30質量部以下、また例えば25質量部以下などとすることもできる。使用量の範囲は、これらの上限及び下限を適宜組み合わせることで設定できるが、例えば1.0質量部以上40質量部以下、また例えば1.5質量部以上30質量部以下、また例えば1.0質量部以上25質量部以下、また例えば1.0質量部以上20質量部以下などとすることができる。
本粘着剤組成物にふくまれる重合開始剤は、本シロップに用いることができるのと同様の、熱分解型、光開始型など公知の各種重合開始剤を用いることができる。好ましくは、光重合開始剤を用いる。また、必要に応じて、既述の光増感剤を用いることもできる。
本粘着剤組成物において、重合開始剤は、本シロップ100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上10質量部以下程度用いることができ、また例えば、0.05質量部以上1質量部以下程度用いることができる。
本粘着剤組成物は、有機溶剤等を含んでも良いが、一般的には溶剤類を含まない無溶剤型として用いられる。
〔本粘着剤組成物によって得られる粘着剤層〕
本粘着剤組成物をセパレーターに塗工し、乾燥させて粘着剤層を得た際に、当該粘着剤層の全体のガラス転移温度である第1のTgが、−80℃以上10℃以下とすることができる。この範囲であると、良好な粘着性能を発揮することができる。第1のTgの下限は、例えば−70℃以上であってもよいし、また例えば−60℃以上、また例えば−50℃以上また例えば−40℃以上、また例えば−30℃以上、また例えば−20℃以上であってもよい。また第1のTgの上限は、例えば5℃以下であってもよく、また例えば4℃以下、また例えば3℃以下、また例えば2℃以下また例えば1℃以下、また例えば0℃以下であってもよい。第1のTgの範囲は、これらの上限及び下限を適宜組み合わせることで設定できるが、例えば−70℃以上10℃以下、また例えば−50℃以上10℃以下、また例えば−40℃以上5℃以下、また例えば−30℃以上5℃以下、また例えば−25℃以上5℃以下、また例えば−25℃以上1℃以下、また例えば−20℃以上1℃以下、また例えば−20℃以上0℃以下などとすることができる。
尚、上記粘着剤層全体のガラス転移温度とは、ビニル重合体(A)及び本シロップ(B)を含む粘着剤組成物から得られる粘着剤層を試料とし、後述する実施例に記載の条件におけるDSC測定により得られるガラス転移温度を意味する。粘着剤層の作製のための塗工、乾燥等の条件は、後述する実施例に従うことができる。
本粘着剤組成物をセパレーターに塗工し、乾燥させて粘着剤層を得た際に、当該粘着剤層のX線光電子分光分析(XPS)により得られるその表層部分から計算されるガラス転移温度である第2のTgを、40℃以上とすることができる。40℃以上であると、良好な耐熱性を確保することができる。第2のTgの下限は、例えば50℃以上であってもよいし、また例えば60℃以上、また例えば70℃以上、また例えば75℃以上、また例えば80℃以上、また例えば85℃以上であってもよい。また第2のTgの上限は、特に限定するものではないが、例えば、120℃以下、また例えば90℃以下などとすることができる。第2のTgの範囲は、これらの上限及び下限を適宜組み合わせることで設定できるが、例えば50℃以上120℃以下、また例えば50℃以上90℃以下、また例えば60℃以上90℃以下、また例えば70℃以上90℃以下などとすることができる。
本粘着剤組成物から得られる第2のTgは、第1のTgよりも30℃以上高いことが好適である。すなわち、第2のTgから第1のTgを差分した差分値は、30℃以上であることが好適である。かかる温度差を有することにより、十分な耐熱性と粘着性とを確保することができる。差分値は、例えば40℃以上であってもよいし、また例えば50℃以上、また例えば60℃以上、また例えば70℃以上、また例えば75℃以上、また例えば80℃以上、また例えば85℃以上であってもよい。差分値の上限は特に限定するものではないが、概して200℃以下であり、例えば120℃以下であってもよく、また例えば110℃以下、また例えば100℃以下などとすることができる。
なお、表層部分の組成から計算される第2のTgは、X線光電子分光測定(XPS)から得られるビニル重合体(A)と本シロップ(B)を重合して得られる本粘着性ポリマーとの組成比率から計算によって求められる。XPSでは粘着剤層の表面にX線を照射することにより発生する光電子を検出し、その運動エネルギーから組成情報を得ることができる。表面から深い層で発生した光電子は表面に到達する前にその運動エネルギーを喪失するため、XPSにおける検出深さは数nmとなる。したがって、XPSにより粘着剤層の表面から数nm程度の表層部分に関する組成情報を得ることができ、得られた組成情報に基づいてビニル重合体(A)及び本粘着性ポリマーの組成比率を求め、Tgを算出することができる。XPSの具体的な測定条件及びTgの算出方法等は、後述する実施例の記載に従う。
上記粘着剤層を作製するに当たっては、粘着剤組成物を被着体に直接塗工し、重合開始剤を作用させて重合硬化して粘着剤層を得る方法、又は、一旦離型紙等に塗工し重合硬化後、被着体に転写する方法のいずれの方法を採用しても良い。より具体的には、塗工、重合等の条件は、後述する実施例に従うことができる。
本粘着剤組成物は、また、良好な耐発泡性の粘着剤層を形成することができる。耐発泡性については、例えば、粘着剤層(膜厚50μm及び150μm)の片面に厚さ100μmの易接着処理したPETフィルムを貼り付け、他方の面にポリカーボネート板を貼り付けた積層体を作成し、前記積層体に50℃、0.5MPa、20分の圧着処理を行う。その後、積層体に恒温槽を用いて85℃/85%RHで24時間の条件で負荷を与えたとき、負荷後の外観(発泡の有無)を目視で確認して評価できる。評価は、外観変化なし、発泡面積が試験片面積の10%以下、同10%超などとして評価できる。
本粘着剤組成物は、ビニル重合体(A)、本シロップ(B)及び重合開始剤を規定量含むものであれば、その混合方法に特段の制約はない。例えば、ビニル重合体(A)及び本シロップ(B)を混合する方法であってもよいし、ビニル重合体(A)の存在下に本シロップ(B)を構成するモノマー成分を部分的に重合することにより得られたものでもよい。
本発明の粘着剤組成物は、上記ビニル重合体(A)、本シロップ(B)及び重合開始剤以外にも必要に応じて、架橋剤(硬化剤)、粘着付与剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、難燃剤、防かび剤、シランカップリング剤、充填剤、着色剤等の添加剤を含有した組成物とすることもできる。
上記架橋剤(硬化剤)としては、エポキシ基を2つ以上有するエポキシ化合物、イソシアネート基を2つ以上有するイソシアネート化合物、アジリジニル基を2つ以上有するアジリジン化合物、オキサゾリン基を有するオキサゾリン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物等が挙げられる。これらのうち、アジリジン化合物、エポキシ化合物及びイソシアネート化合物を用いることもできる。なかでも、高温条件下における粘着物性に優れる点でイソシアネート化合物が好ましい。
上記アジリジン化合物としては、1,6−ビス(1−アジリジニルカルボニルアミノ)ヘキサン、1,1’−(メチレン−ジ−p−フェニレン)ビス−3,3−アジリジル尿素、1,1’−(ヘキサメチレン)ビス−3,3−アジリジル尿素、エチレンビス−(2−アジリジニルプロピオネート)、トリス(1−アジリジニル)ホスフィンオキサイド、2,4,6−トリアジリジニル−1,3,5−トリアジン、トリメチロールプロパン−トリス−(2−アジリジニルプロピオネート)等が挙げられる。
上記エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAエピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、テトラグリシジルキシレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等の多官能グリシジル化合物が挙げられる。
上記イソシアネート化合物としては、例えば、イソシアネート基を2つ以上有する化合物が用いられる。上記イソシアネート化合物としては、芳香族系、脂肪族系、脂環族系の各種イソシアネート化合物、更には、これらのイソシアネート化合物の変性物(プレポリマー等)を用いることができる。
芳香族イソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、p−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)等が挙げられる。 脂肪族イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リシンジイソシアネート(LDI)、リシントリイソシアネート(LTI)等が挙げられる。 脂環族イソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、水添化XDI(H6XDI)、水添化MDI(H12MDI)等が挙げられる。 また、変性イソシアネートとしては、上記イソシアネート化合物のウレタン変性体、2量体、3量体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビューレット変性体、ウレア変性体、イソシアヌレート変性体、オキサゾリドン変性体、イソシアネート基末端プレポリマー等が挙げられる。
本発明の粘着剤組成物が架橋剤(硬化剤)を含有する場合、その含有量は、本シロップ(B)100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下とすることもできる。また、0.03質量部以上5質量部以下、0.05質量部以上2質量部以下とすることもできる。
上記粘着性付与剤としては、ロジンエステル、ガムロジン、トール油ロジン、水添ロジンエステル、マレイン化ロジン、不均化ロジンエステル等のロジン誘導体;テルペンフェノール樹脂、α−ピネン、β−ピネン、リモネン等を主体とするテルペン系樹脂;(水添)石油樹脂;クマロン−インデン系樹脂;水素化芳香族コポリマー;スチレン系樹脂;フェノール系樹脂;キシレン系樹脂;(メタ)アクリル系重合体等が挙げられる。
上記可塑剤としては、ジn−ブチルフタレート、ジn−オクチルフタレート、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート、ジn−デシルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類;ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジn−オクチルアジペート等のアジピン酸エステル類;ビス(2−エチルヘキシル)セバケート、ジn−ブチルセバケート等のセバシン酸エステル類;ビス(2−エチルヘキシル)アゼレート等のアゼライン酸エステル類;塩素化パラフィン等のパラフィン類;ポリプロピレングリコール等のグリコール類;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ変性植物油類;トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;トリフェニルホスファイト等の亜リン酸エステル類;アジピン酸と1,3−ブチレングリコールとのエステル化物等のエステルオリゴマー類;低分子量ポリブテン、低分子量ポリイソブチレン、低分子量ポリイソプレン等の低分子量重合体;プロセスオイル、ナフテン系オイル等のオイル類等が挙げられる。
上記酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−〔β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、ビス〔3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェロール類等のフェノール系酸化防止剤;ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ステアリル3,3’−チオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤;トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジフォスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。
上記紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤;ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、〔2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェノラート)〕−n−ブチルアミンニッケル、ニッケルコンプレックス−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−リン酸モノエチレート、ニッケル−ジブチルジチオカルバメート等のニッケル系紫外線安定剤等が挙げられる。
上記老化防止剤としては、ポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、1−(N−フェニルアミノ)−ナフタレン、スチレン化ジフェニルアミン、ジアルキルジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、モノ(α−メチルベンジル)フェノール、ジ(α−メチルベンジル)フェノール、トリ(α−メチルベンジル)フェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジステアリル等が挙げられる。
上記難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ヘキサブロモベンゼン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、デカブロモジフェニルオキサイド、含ハロゲンポリフォスフェート等のハロゲン系難燃剤;リン酸アンモニウム、トリクレジルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリスクロロエチルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、酸性リン酸エステル、含窒素リン化合物等のリン系難燃剤;赤燐、酸化スズ、三酸化アンチモン、水酸化ジルコニウム、メタホウ酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤;ポリ(ジメトキシシロキサン)、ポリ(ジエトキシシロキサン)、ポリ(ジフェノキシシロキサン)、ポリ(メトキシフェノキシシロキサン)、メチルシリケート、エチルシリケート、フェニルシリケートのようなシロキサン系難燃剤等が挙げられる。
上記防かび剤としては、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、トリハロアリル、トリアゾール、有機窒素硫黄化合物等が挙げられる。
上記シランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記充填剤としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、マイカ、タルク等の無機粉末充填剤;ガラス繊維、有機補強用繊維等の繊維状充填剤等が挙げられる。
本粘着剤組成物は、上記ビニル重合体(A)、本シロップ(B)及び重合開始剤を含むものであればその形態に特段の制約はない。
本粘着剤組成物は、粘着フィルム、粘着シート、粘着テープ、粘着ラベル、感圧性テープ、表面保護フィルム、表面保護テープ、マスキングテープ、電気絶縁用テープ、ラミネート物等の各種一般粘着加工製品の他に、各種光学フィルム等の積層体を構成する際の貼り合せ用途にも好適に用いることができる。
こうした粘着加工製品及び積層体における本粘着剤組成物を硬化して得られる粘着剤層の厚み(膜厚)は用途により選択されるが、例えば、10μm以上10mm以下であり、また例えば、50μm以上5mm以下であり、また例えば、100μm以上5mm以下である。本粘着剤組成物によれば、こうした厚膜化も容易に対応して、表層にタッキファイヤー成分を偏析させて、粘着性及び高温高湿下での耐久性に優れる粘着剤層を形成することができる。
上記一般粘着加工製品に適用する場合、本粘着剤組成物を各種基材の片面又は両面に塗工後、UV等の活性エネルギー線などを照射することで本シロップを重合させて粘着剤層を形成し、粘着シート又は粘着テープ等の粘着製品とすることができる。基材としては、紙類、フィルム、布、不織布、及び金属箔等を用いることができ、粘着剤組成物の塗工は直接これらの基材上に行っても良いし、離型紙等に塗工して硬化した後に基材に転写しても良い。
また、基材にガラス板及び/又は透明プラスチック板用いることにより、粘着剤層の片面又は両面にガラス板及び/又は透明プラスチック板を貼り合せてなる粘着加工品を得ることができる。係る粘着加工品は各種光学フィルム等の積層体として適用することができる。この場合においても、粘着剤組成物の塗工は基材上に直接行っても良いし、離型紙等に塗工して硬化した後に基材に転写しても良い。
本粘着剤組成物から得られる粘着剤層は、透明性、並びに、厚膜であっても、高温条件下での各種被着体に対する剥離強度及び耐発泡性に優れるため、タッチパネル、液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマディスプレイパネル等のディスプレイ及びこれに用いられる各種光学フィルムの貼り合せにも好適である。また、フレキシブルプリント回路基板等の電子部品における接着用途にも有用である。
以上のことから、本明細書によれば、粘着を目的とする製品(粘着製品)の製造方法も提供される。すなわち、粘着剤組成物を硬化して得られる粘着剤層を被着体上に形成する工程を備える、粘着製品の製造方法が提供される。この場合、本組成物を被着体の表面にに直接塗工して重合硬化して粘着剤層を得る工程又は一旦本組成物をセパレータ等に塗工し硬化後被着体に転写する工程などとして実施できる。
また、本明細書によれば、粘着剤層によって積層された2以上の被着体を備える粘着製品の製造方法も提供される。本製造方法によれば、被着体の表面に本組成物を硬化して得られる粘着剤層を形成する工程と、前記被着体の表面に他の接触させて一体化する工程と、を備えることができる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。尚、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。以下の記載において「部」は質量部を意味し、「%」は質量%を意味する。
また、本実施例において得られた重合体の各種分析は、以下に記載の方法により実施した。
<固形分>
測定サンプル約1gを秤量(a)し、次いで、送風乾燥機155℃、30分間乾燥後の残分を測定(b)し、以下の式より算出した。測定には秤量ビンを使用した。その他の操作については、JIS K 0067−1992(化学製品の減量及び残分試験方法)に準拠した。
固形分(%)=(b/a)×100
<分子量測定>
分子量はGPCにて下記の条件で測定した。
GPC:東ソー(HLC−8120)
カラム:東ソー(TSKgel−Super MP−M×4本)
試料濃度:0.1%
流量:0.6ml/分
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折計(RI)
標準物質:ポリスチレン
<ガラス転移点(Tg)>
ビニル重合体(A)、アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)から得られる粘着性ポリマー及び粘着剤層全体のTgはDSCにて以下の条件で測定した。
DSC:TA Instrument製(Q−100)
昇温温度:10℃/分測定
雰囲気:窒素
<ポリマー組成>
ポリマー組成はモノマー仕込量とGC測定によるモノマー消費量から算出した。
GC:Agilent Technolosies製(7820A GC System)
検出器:FID
カラム:100%ジメチルシロキサン(CP−Sil 5CB)長さ30m、内径0.32mm
算出方法:内部標準法
1.ビニル重合体の合成合成例1(重合体A−1の合成)
内容積1リットルの4つ口フラスコに、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」という)(45質量部)、スチレン(以下、「St」という)(5.3質量部)、酢酸ブチル(257質量部)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬社製、商品名「V−601」)(2.7質量部)とからなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に上昇した。別途、MMA(180質量部)、St(19質量部)、V−601(24質量部)、酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をヘキサン(6000質量部)に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A−1を得た。得られた重合体A−1のポリマー組成は、仕込量とGC測定によるモノマー消費量から計算した結果、MMA90質量%及びSt10質量%からなり、Mw5600、Mn3300、Mw/Mn1.70であった。Tgは80℃であった。重合体A−1の組成及び分析結果を表2に示す。
合成例2(重合体A−2の合成)
内容積1リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチル(200質量部)とV−601(0.9質量部)とからなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に上昇した。別途、MMA(165質量部)、メタクリル酸イソボルニル(以下、「IBXMA」という)(44質量部)、V−601(17質量部)、酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をメタノール(4800質量部)、蒸留水(1200質量部)からなる混合溶液に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A−2を得た。重合体A−2の組成及び分析結果を表2に示す。
合成例3(重合体A−3の合成)
内容積1リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチル(280質量部)、V−601(0.3質量部)からなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に上昇した。別途、MMA(233質量部)、IBXMA(26質量部)、V−601(5.1質量部)、酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をヘキサン(6000質量部)に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A−3を得た。重合体A−3の組成及び分析結果を表2に示す。
合成例4(重合体A−4の合成)
内容積1リットルの4つ口フラスコに、MMA(50質量部)、酢酸ブチル(227質量部)、V−601(12質量部)からなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に上昇した。別途、MMA(200質量部)、V−601(46質量部)、酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をヘキサン(6000質量部)に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A−4を得た。重合体A−4の組成及び分析結果を表2に示す。
合成例5(重合体A−5の合成)
内容積1リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチル(221質量部)、V−601(3.2質量部)からなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に上昇した。別途、MMA(34質量部)、メタクリル酸ブチル(以下、「BMA」という)(215質量部)、V−601(60質量部)、酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をメタノール(4200質量部)、蒸留水(1800質量部)からなる混合溶液に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A−5を得た。重合体A−5の組成及び分析結果を表2に示す。
合成例6(重合体A−6の合成)
内容積1リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチル(200質量部)、V−601(6.2質量部)からなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に上昇した。別途、MMA(114質量部)、IBXMA(140質量部)、V−601(110質量部)、酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をメタノール(4800質量部)、蒸留水(1200質量部)からなる混合溶液に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体A−6を得た。重合体A−6の組成及び分析結果を表2に示す。
Figure 2019124013
2.ポリマー成分の合成合成例7(重合体C−1の合成)
内容積3リットルの4つ口フラスコに、アクリル酸メトキシエチル(以下、「MEA」という)(500質量部)、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(以下、「HEA」という)(27質量部)、酢酸エチル(980質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、アゾビスバレロニトリル(以下、「V−65」という)(0.25質量部)を仕込み、5時間重合した。酢酸エチルを固形分濃度が30%となるように追加して、重合体C−1の酢酸エチル溶液を得た。得られた重合体は、MEA95質量%、HEA5質量%とからなり、Mw520000、Mn116000、Mw/Mn4.48であった。Tgは−31℃であった。
合成例8(重合体C−2の合成)
内容積3リットルの4つ口フラスコに、MEA(413質量部)、HEA(27質量部)、アクリル酸ブチル(以下、「BA」という)(90質量部)、酢酸エチル(980質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、V−65(0.25質量部)を仕込み、5時間重合した。酢酸エチルを固形分濃度が30%となるように追加して、重合体C−2の酢酸エチル溶液を得た。重合体C−2の組成及び分析結果を表3に示す。
合成例9(重合体C−3の合成)
内容積3リットルの4つ口フラスコに、MEA(254質量部)、HEA(27質量部)、BA(90質量部)、アクリル酸メチル(以下、「MA」という)(159質量部)、酢酸エチル(980質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、V−65(0.20質量部)を仕込み、5時間重合した。酢酸エチルを固形分濃度が30%となるように追加して、重合体C−3の酢酸エチル溶液を得た。重合体C−3の組成及び分析結果を表3に示す。
合成例10(重合体C−4の合成)
内容積3リットルの4つ口フラスコに、HEA(27質量部)、BA(192質量部)、MA(330質量部)、酢酸エチル(1200質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、V−65(0.23質量部)を仕込み、5時間重合した。酢酸エチルを固形分濃度が30%となるように追加して、重合体C−4の酢酸エチル溶液を得た。重合体C−4の組成及び分析結果を表3に示す。
Figure 2019124013
3.アクリル系粘着性シロップの調製合成例11
(シロップB−1の調製)
重合体C−1の酢酸エチル溶液を60℃で2日間減圧乾燥して重合体固形分を得た。この重合体固形分(30質量部)に対して、MEA(66.5質量部)、HEA(3.5質量部)を加え、均一になるまで撹拌することでシロップB−1を得た。シロップB−1を構成するモノマー成分は、MEA95質量%、HEA5質量%であった。シロップB−1の組成を表4に示す。
合成例12(シロップB−2の調製)
重合体C−2の酢酸エチル溶液を60℃で2日間減圧乾燥して重合体固形分を得た。この重合体固形分(30質量部)に対して、MEA(54.6質量部)、HEA(3.5質量部)、BA(11.9質量部)を加え、均一になるまで撹拌することでシロップB−2を得た。シロップB−2の組成を表4に示す。
合成例13(シロップB−3の調製)
重合体C−3の酢酸エチル溶液を60℃で2日間減圧乾燥して重合体固形分を得た。この重合体固形分(30質量部)に対して、MEA(33.6質量部)、HEA(3.5質量部)、BA(11.9質量部)、MA(21質量部)を加え、均一になるまで撹拌することでシロップB−3を得た。シロップB−3の組成を表4に示す。
合成例14(シロップB−4の調製)
重合体C−4の酢酸エチル溶液を60℃で2日間減圧乾燥して重合体固形分を得た。この重合体固形分(30質量部)に対して、HEA(3.5質量部)、BA(24.5質量部)、MA(42質量部)を加え、均一になるまで撹拌することでシロップB−4を得た。シロップB−4の組成を表4に示す。
Figure 2019124013
4.粘着組成物の製造及び評価
実施例1
上記合成例1で得られた重合体A−1(4質量部)と合成例11で得られたシロップB−1(100質量部)、架橋剤としてタケネートD−110N(三井化学社製、固形分濃度75%)(0.53質量部)を乾燥させて得た固形分(0.4質量部)及び光開始剤としてIrgacure184(BASF社製)(0.2質量部)を混合して、粘着剤組成物を得た。
この粘着剤組成物を、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」)製セパレーター上に、厚み50μm及び150μmとなるように塗布した。塗膜上に厚さ75μmのPET製セパレーターを貼り合わせて、照度12.5mW/cmの紫外線を2分間照射して、アクリル系シロップ中のモノマーを重合した。さらに、40℃で5日間静置して熟成(エージング)することにより、両面セパレーター付き粘着フィルム試料を得た。
実施例2〜5及び10
これらの実施例については、表5に示す組成に基づいて、実施例1と同様に操作して、粘着フィルム試料を得た。
実施例6
重合体A−1(4質量部)とシロップB−1(100質量部)、架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製、商品名「アロニックスM−309」)(0.04質量部)及び光開始剤としてIrgacure184(0.2質量部)を混合して、粘着剤組成物を得た。
この粘着剤組成物を、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」)製セパレーター上に、厚み50μm及び150μmとなるように塗布した。塗膜上に厚さ75μmのPET製セパレーターを貼り合わせて、照度12.5mW/cmの紫外線を2分間照射して、アクリル系シロップ中のモノマーを重合することにより、両面セパレーター付き粘着フィルム試料を得た。
実施例7〜9
これらの実施例については、表5に示す組成に基づいて、実施例6と同様に操作して、粘着フィルム試料を得た。
比較例1〜7
これらの比較例については、表6に示す組成に基づいて、実施例1と同様に操作して、粘着フィルム試料を得た。
比較例8
重合体A−1(4質量部)を酢酸エチルに溶解させた固形分濃度30質量%の重合体(A−1)溶液を、重合体C−1溶液と混合し、重合体A−1(4質量部)と重合体C−1(100質量部)を含む固形分30質量%の溶液を調製した。ここに、架橋剤としてタケネートD−110N(0.53質量部)(固形分としては0.4質量部)を混合し、粘着剤組成物を得た。
この粘着剤組成物を、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」)製セパレーター上に、乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布した。粘着剤組成物を80℃、4分間乾燥することで、酢酸エチルを除去した。前記セパレーターとは剥離力の異なる厚さ50μmのPET製セパレーターを貼り合わせて、40℃で5日間静置して熟成(エージング)することにより、両面セパレーター付き粘着フィルム試料を得た。
また、乾燥後の厚みが150μmとなるように粘着剤組成物を塗布した以外は上記と同様の操作により、粘着剤層の厚みが150μmである粘着フィルム試料を得た。乾燥後の粘着剤層には発泡が観察された。
比較例9〜11
これらの比較例については、表7に示す組成に基づいて、比較例8と同様に操作して、粘着フィルム試料を得た。
(評価等)
得られた粘着フィルム試料について、次に示す方法により各種測定及び評価を行った。得られた結果を併せて表5〜7に示す。尚、比較例8〜11において、粘着剤層の厚みが150μmである粘着フィルム試料には発泡が観察されたため、発泡していない部分を選んで剥離試験及び耐発泡性試験を行った。
<ゲル分率>
粘着フィルム試料から粘着剤を0.2g採取し、粘着剤の初期重量を秤量した。その粘着剤を50gの酢酸エチルに浸漬し、室温で16時間静置する。その後、200メッシュ金網にろ過し、メッシュに残った残分を80℃で3時間乾燥し、秤量した。初期の重量と残分の重量から、ゲル分率を算出した。
<ヘイズ値>
粘着フィルム(50μm)試料から剥離フィルムを剥がし、ガラスプレート(1mm厚)に転写し、もう一方の剥離フィルムを剥がした。23℃、50%RH条件下で1日静置した後、日本電色社製ヘイズメーター「ヘイズメーターNDH2000」(型式名)を使用してヘイズ値を測定した。
<粘着剤層の表層部分のTg>
粘着フィルム試料のX線光電子分光装置(XPS)測定によるO1sとC1sのピーク面積比から、粘着剤層の表層部分におけるビニル重合体(A)及び重合後のアクリル系シロップ(B)の総量に対する、ビニル重合体(A)及び重合後のアクリル系シロップ(B)の各質量分率(w及びw)を算出し、FOXの式に基づき表層部分のTgを算出した。尚、XPS測定は以下の条件で測定した。
装置:アルバック・ファイ社製 PHI5000 VersaProbe
X線:Al−Kα(1486.6eV)
試料へのX線入射角:0°(試料測定面の法線に対する角度)
光電子検出角:45°(試料測定面の法線に対する角度)
上記質量分率の具体的な算出方法について以下に記載する。
XPS測定によるO1sとC1sのピーク面積比は、下式(1)の通り、ビニル重合体(A)及びアクリル系シロップ(B)からなる粘着剤組成物を重合させて形成した粘着剤層表層部の単位質量当りに存在する酸素原子数と炭素原子数の比で表される。
Figure 2019124013
ここで、(O/C)A+B:粘着剤組成物を重合してから得られた粘着剤層のXPS測定から求められるO1sとC1sのピーク面積比W:ビニル重合体(A)及びアクリル系シロップ(B)の総量に対するビニル重合体(A)の質量分率
w−A:ビニル重合体(A)の全構成単量体単位の加重平均分子量
w−B:アクリル系シロップ(B)の全構成単量体単位の加重平均分子量
O−A:ビニル重合体(A)を構成する全構成単量体の平均単量体構造式中に含まれる酸素原子数
O−B:アクリル系シロップ(B)を構成する全構成単量体の平均単量体構造式中に含まれる酸素原子数
C−A:ビニル重合体(A)を構成する全構成単量体の平均単量体構造式中に含まれる炭素原子数
C−B:アクリル系シロップ(B)を構成する全構成単量体の平均単量体構造式中に含まれる炭素原子数
また、ビニル重合体(A)及び重合後のアクリル系シロップ(B)各単体のフィルムのXPS測定により求められるO1sとC1sのピーク面積比は、各々下式(2)及び(3)で表される。
Figure 2019124013
ここで、(O/C):ビニル重合体(A)のフィルムのXPS測定から求められるO1sとC1sのピーク面積比
Figure 2019124013
ここで、(O/C):重合後のアクリル系シロップ(B)のフィルムのXPS測定から求められるO1sとC1sのピーク面積比
上記の式(1)〜(3)より下記式(4)が導かれ、これよりビニル重合体(A)及び重合後のアクリル系シロップ(B)の総量に対するビニル重合体(A)の質量分率(W)が算出される。
Figure 2019124013
さらに、上記で求めたWの値と下記式(5)から、重合後のアクリル系シロップ(B)の質量分率(W)が算出される。
Figure 2019124013
ここで、W:ビニル重合体(A)及び重合後のアクリル系シロップ(B)の総量に対する重合後のアクリル系シロップ(B)の質量分率
実施例1について、上記式(4)における各要素を以下に示す。
(O/C)A+B:0.320(実測値)
(O/C):0.308(実測値)
(O/C):0.474(実測値)
C−A:MMA1分子中の炭素原子数(5)、St1分子中の炭素原子数(8)及び組成比より、5×90(%)+8×10(%)=5.3NC−B:MEA1分子中の炭素原子数(6)、HEA1分子中の炭素原子数(5)及び組成比より、6×94(%)+5×6(%)=5.9
w−A:MMAの分子量(100)、Stの分子量(104)及び組成比より、100×90(%)+104×10(%)=100Mw−B:MEAの分子量(130)、HEAの分子量(116)及び組成比より、130×94(%)+116×6(%)=129 これらの値を式(4)に代入することによりW=0.92が得られ、(5)式よりW=0.08が得られた。
次いで、測定に得られた表面組成から下式(6)で表されるFOXの式に従って、表層部分のTgを計算し、67.5℃という値を得た。
1/〔表層部分のTg〕(K)=W/Tg+W/Tg (6)
ここで、
Tg:ビニル重合体(A)のTg(80℃) Tg:重合後のアクリル系シロップ(B)のTg(−31℃)
<ガラスに対する剥離強度>
粘着フィルム試料を易接着処理したPETフィルム(100μm)に転写した後、25mm幅の短冊状に裁断し、評価用の粘着シートを得た。被着体をガラス板(旭硝子社製、ファブリテックFL11A、1mm厚)とし、上記評価用の粘着シートを貼り合せ、卓上加圧脱泡装置TBR−200(千代田電気工業社製)を用いて0.5MPa、50℃の条件下で20分間圧着した後、恒温槽付き引張り試験機ストログラフR型(東洋精機社製)を用いて、温度が23℃と85℃、剥離速度が300mm/min.の条件で、JIS Z−0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じて粘着シートの180度剥離強度を測定し、接着強度とした。
<耐発泡性>
5cmm×6cmの粘着フィルム試料を易接着処理したPETフィルム(100μm)に転写して評価用の粘着シートを得た。被着体としてポリカーボネート板を貼り合わせた積層体を作製し、前記積層体に50℃、0.5MPa、20分の圧着処理を行った。その後、積層体に恒温恒湿槽を用いて、85℃/85%RHで24時間の湿熱負荷を与え、外観(発泡の有無)を目視で確認し、以下の基準に従って評価した。
○:外観変化無
△:試験片の面積に対し、発泡を生じた部分の面積が10%以下
×:試験片の面積に対し、発泡を生じた部分の面積が10%超
なお、比較例8〜11の耐発泡性には、50μm厚の粘着剤層を3枚積層して150μm厚とした場合の結果も示す。
Figure 2019124013
Figure 2019124013
Figure 2019124013
表5に示すように、本シロップ、すなわち、アクリル系シロップB−1〜B−4を用いた実施例の組成物から得られた粘着剤層は、いずれも良好なヘイズ値を呈するとともに、適度な偏析特性及びTg分布を備えていた。また、実施例の組成物による粘着剤層は、50μm厚の場合と150μm厚の場合とのいずれの場合においても、十分な接着強度を示していた。また、実施例の組成物による粘着剤層は、50μm厚時には、いずれも、ほとんど発泡せず高温高湿下で良好な耐発泡性を発揮した。また、実施例1〜9の組成物による粘着剤層は、150μm厚時においても、ほとんど発泡することなく良好な耐発泡性を示し、実施例10の組成物による粘着剤層は、150μm厚時においてやや耐発泡性が低下したものの(発泡面積が5%以下程度)、現実的には十分なものであった。
これに対して表6に示すように、ビニル重合体(A)を含まない場合(比較例1〜4)による粘着剤層は、高温下での接着強度も耐発泡性も十分でなかった。また、ビニル重合体(A)のTgが低すぎたり、あるいは分子量が大きすぎる場合や、ビニル重合体(A)の偏析が不十分であり第1のTgと第2のTgの差が十分でない場合(比較例5〜7)でも、それらによる粘着剤層は高温下での接着強度も十分でなかった。また、比較例の組成物による粘着剤層は、いずれも耐発泡性が大きく低下した(発泡面積15〜70%)。
また、表7に示すように、アクリル系シロップを用いることなく、重合体C−1〜C−4を用いたのみも場合には、厚膜時の耐発泡性を確保することができなかった。

Claims (13)

  1. ビニル重合体(A)、アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)及び重合開始剤を含む粘着剤組成物であって、
    前記ビニル重合体(A)は、ガラス転移温度(Tg)が30℃以上200℃以下であり、数平均分子量が500以上10,000以下であって、前記アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)100質量部に対して0.5質量部以上60質量部以下含有し、
    前記粘着剤組成物をセパレーターに塗工し、重合させて粘着剤層を得た際に、当該粘着剤層のX線光電子分光分析により得られるその表層部分から計算されるガラス転移温度である第2のTgが、粘着剤層全体のガラス転移温度である第1のTgよりも30℃以上高い、粘着剤組成物。
  2. 前記アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)を重合して得られるアクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度が−80℃以上10℃以下である、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)は、ポリマーシロップを構成する全単量体単位に対し、炭素数2〜4のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル及び炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を10質量%以上99質量%以下含む、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 前記重合開始剤が、光重合開始剤である、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
  5. 前記第1のTgが−80℃以上10℃以下であり、
    前記第2のTgが40℃以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
  6. さらに、架橋剤を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
  7. 粘着剤層を備える粘着製品であって、
    前記粘着剤層は、ビニル重合体(A)、アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)及び重合開始剤を含む粘着剤組成物であって、前記ビニル重合体(A)は、ガラス転移温度(Tg)が30℃以上200℃以下であり、数平均分子量が500以上10,000以下であって、前記アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)100質量部に対して0.5質量部以上60質量部以下含有する組成物を硬化して得られる、粘着製品。
  8. 基材の片面又は両面に、前記粘着剤層を備えた粘着シート又は粘着テープである、請求項7に記載の粘着製品。
  9. 前記粘着剤層の厚みが50μm以上5mm以下である、請求項7又は8に記載の粘着製品。
  10. 前記粘着剤層のX線光電子分光分析により得られるその表層部分から計算されるガラス転移温度である第2のTgが、粘着剤層全体のガラス転移温度である第1のTgよりも30℃以上高い、請求項7〜9のいずれかに記載の粘着製品。
  11. 粘着剤組成物の製造方法であって、
    ビニル重合体(A)、アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)及び重合開始剤を混合する工程と、
    前記ビニル重合体(A)は、ガラス転移温度(Tg)が30℃以上200℃以下であり、数平均分子量が500以上10,000以下であって、前記アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)100質量部に対して0.5質量部以上60質量部以下を混合し、
    前記粘着剤組成物を硬化させて得られる粘着剤層が、当該粘着剤層のX線光電子分光分析により得られるその表層部分から計算されるガラス転移温度である第2のTgが、粘着剤層全体のガラス転移温度である第1のTgよりも30℃以上高い、製造方法。
  12. 粘着剤層を備える粘着製品の製造方法であって、
    ビニル重合体(A)、アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)及び重合開始剤を含み、
    前記ビニル重合体(A)は、ガラス転移温度(Tg)が30℃以上200℃以下であり、数平均分子量が500以上10,000以下であって、前記アクリル系粘着性ポリマーシロップ(B)100質量部に対して0.5質量部以上60質量部以下含有する前記粘着剤組成物を基材に塗工する工程と、
    前記粘着剤用セパレータ上において前記粘着剤組成物を硬化させて粘着剤層を形成する工程と、
    を備える、方法。
  13. 前記粘着剤層は、X線光電子分光分析により得られるその表層部分から計算されるガラス転移温度である第2のTgが、粘着剤層全体のガラス転移温度である第1のTgよりも30℃以上高いガラス転移温度特性を有する粘着剤層である、請求項12に記載の方法。
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