JPWO2019107211A1 - 太陽電池素子 - Google Patents

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Abstract

太陽電池素子は、半導体基板と、パッシベーション層と、保護層と、電極層と、を備えている。パッシベーション層は、半導体基板の第1面の上に位置している。保護層は、パッシベーション層の上に位置している。電極層は、保護層の上に位置し、ガラス成分を含む。保護層は、電極層側の面に位置している複数の凸状部を有する。該複数の凸状部は、それぞれ電極層側において凹状部分を有する。該凹状部分の内部空間には、ガラス成分が位置している。

Description

本開示は、太陽電池素子に関する。
太陽電池素子には、PERC(Passivated Emitter and Rear Cell)型の太陽電池素子がある(例えば、特開2013−4944号公報の記載を参照)。この太陽電池素子では、半導体基板の裏面上にパッシベーション層が位置している。さらに、パッシベーション層の上、あるいはパッシベーション層の上に位置している保護層の上に、裏面側の集電電極が位置している。
太陽電池素子が開示される。
太陽電池素子の一態様は、半導体基板と、パッシベーション層と、保護層と、電極層と、を備えている。前記パッシベーション層は、前記半導体基板の第1面の上に位置している。前記保護層は、前記パッシベーション層の上に位置している。前記電極層は、前記保護層の上に位置し、ガラス成分を含む。前記保護層は、前記電極層側の面に位置している複数の凸状部を有する。該複数の凸状部は、それぞれ前記電極層側に凹状部分を有する。該凹状部分の内部空間には、前記ガラス成分が位置している。
図1は、第1実施形態に係る太陽電池素子の一例の前面側の外観を示す平面図である。 図2は、第1実施形態に係る太陽電池素子の一例の裏面側の外観を示す平面図である。 図3は、図1および図2のIII−III線に沿った太陽電池素子の仮想的な切断面部の一例を示す図である。 図4(a)は、図3の部分P1の仮想的な切断面部の一例を示す拡大図である。図4(b)は、図4(a)の部分P11の仮想的な切断面部の一例を示す拡大図である。 図5(a)は、図3の部分P1の仮想的な切断面部の一例を示す拡大図である。図5(b)は、図5(a)の部分P11の仮想的な切断面部の一例を示す拡大図である。 図6(a)は、一参考例に係る太陽電池素子についてのピール試験の条件を説明するための図である。図6(b)は、一参考例に係る太陽電池素子についてのピール試験の結果を示す図である。 図7は、図5(a)の部分P12の仮想的な切断面部の一例を示す拡大図である。 図8(a)から図8(f)は、それぞれ第1実施形態に係る太陽電池素子を製造する途中の状態における、図3の仮想的な切断面部に対応する仮想的な切断面部の一例を示す図である。 図9は、第1実施形態に係る保護層の構造の一例を説明するための図である。 図10(a)は、第2実施形態に係る太陽電池素子のうち、図4(a)の部分P11に対応する部分の仮想的な切断面部の一例を示す拡大図である。図10(b)は、第2実施形態に係る太陽電池素子のうち、図5(a)の部分P11に対応する部分の仮想的な切断面部の一例を示す拡大図である。 図11は、第2実施形態に係る保護層の構造の一例を説明するための図である。 図12は、第3実施形態に係る太陽電池素子の一例の裏面側の外観を示す平面図である。 図13は、第3実施形態に係る太陽電池モジュールの一例の前面側の外観を示す平面図である。 図14は、図13のXIV−XIV線に沿った太陽電池素子の仮想的な切断面部の一例を示す図である。 図15は、第3実施形態に係る太陽電池モジュールを製造する途中の状態における、図14の仮想的な切断面部に対応する仮想的な切断面部の一例を示す図である。 図16(a)は、図3の部分P16の仮想的な切断面部の一例を示す拡大図である。図16(b)は、一変形例に係る太陽電池素子のうちの図3の部分P16に対応する部分の仮想的な切断面部の第1の例を示す拡大図である。図16(c)は、一変形例に係る太陽電池素子のうちの図3の部分P16に対応する部分の仮想的な切断面部の第2の例を示す拡大図である。 図17(a)は、他の一変形例に係る太陽電池素子のうちの図3の部分P16に対応する部分の仮想的な切断面部の第1の例を示す拡大図である。図17(b)は、他の一変形例に係る太陽電池素子のうちの図3の部分P16に対応する部分の仮想的な切断面部の第2の例を示す拡大図である。図17(c)は、他の一変形例に係る太陽電池素子のうちの図3の部分P16に対応する部分の仮想的な切断面部の第3の例を示す拡大図である。
PERC型の太陽電池素子が製作される際には、例えば、半導体基板の裏面上に、パッシベーション層と保護層と裏面電極とがこの記載の順に形成される。保護層は、例えば、酸化珪素などで構成される酸化膜、窒化珪素などで構成される窒化膜、または酸化膜と窒化膜とが積層された膜によって構成される。この保護層は、例えば、湿式プロセスまたは乾式プロセスによって形成される。湿式プロセスには、例えば、シロキサン樹脂を含む絶縁性ペーストの塗布と乾燥とを行う塗布法などが適用される。乾式プロセスには、例えば、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)、プラズマCVD(plasma-enhanced chemical vapor deposition:PECVD)またはスパッタリングなどが適用される。
ところで、太陽電池素子における光電変換効率を向上させるために、例えば、半導体基板の前面側に、照射された光の反射を低減するための微細な凹凸構造(テクスチャ)を形成する場合がある。この場合には、半導体基板に対して、例えば、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性の水溶液またはフッ硝酸などの酸性の水溶液を用いた湿式のエッチングを施すことで、テクスチャが形成される。このとき、半導体基板の前面だけでなく裏面を含む全面にテクスチャが形成され得る。
このように、半導体基板の裏面にテクスチャなどの凹凸が存在していれば、半導体基板の裏面上に形成される、パッシベーション層および保護層の表面にも凹凸が生じやすい。ここで、例えば、保護層の上に、主としてアルミニウムを含む金属粉末とガラス成分と有機ビヒクルとを含むペースト(金属ペーストともいう)を塗布し、この金属ペーストの焼成を行うことで、裏面側の集電電極を形成する場合がある。この場合には、保護層の表面における凹凸の存在により、金属ペーストの成分の分布に偏りが生じやすい。このため、保護層に対する集電電極の密着強度が不均一になりやすい。これにより、保護層上において集電電極の部分的な剥離が生じるおそれがある。具体的には、例えば、流動性を有するガラス成分および有機ビヒクルが、保護層の凸状部上から金属粉末の間を通って保護層の凹状部上などの重力方向においてより低い部分に流れ込みやすい。このため、保護層の凸状部上において集電電極の部分的な剥離が生じるおそれがある。そして、保護層から集電電極が剥離すると、太陽電池素子の裏面側において集電電極の剥離が進行し、太陽電池素子の裏面側における集電の効率が低下するおそれがある。その結果、太陽電池素子における光電変換効率が低下するおそれがある。
そこで、保護層上における集電電極の部分的な剥離を低減するために、例えば、金属ペーストにおけるガラス成分の含有率を増加させることが考えられる。しかしながら、金属ペーストにおけるガラス成分の含有率が増加すると、金属ペーストの焼成時に、金属ペーストによる保護層のファイヤースルー(焼成貫通)が生じやすい。このため、太陽電池素子の裏面側におけるパッシベーション効果の低下によって、太陽電池素子における光電変換効率が低下するおそれがある。
また、上記の点に対して、例えば、金属ペーストによる保護層のファイヤースルーを生じにくくするために、保護層の厚さを大きくすることが考えられる。しかしながら、保護層の厚さが大きくなると、金属ペーストの焼成時および太陽電池素子の使用時に、半導体基板と保護層との間において、温度変化に伴う膨張および収縮によって生じる応力が大きくなりやすい。これにより、半導体基板の裏面側から保護層が剥離するおそれがある。また、例えば、保護層の温度変化に伴う膨張および収縮によって半導体基板と保護層との間で生じる応力が大きくなると、太陽電池素子の反りが増大して、太陽電池素子にクラックあるいは割れが生じるおそれがある。その結果、太陽電池素子における光電変換効率が低下するおそれがある。
そこで、本発明者らは、PERC型の太陽電池素子について、光電変換効率を向上させることができる技術を創出した。
これについて、以下、各種実施形態を図面に基づいて説明する。図面においては同様な構成および機能を有する部分に同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。図面は模式的に示されたものである。図1から図6(a)、図7、図9から図17(c)には、右手系のXYZ座標系が付されている。このXYZ座標系では、第1出力取出電極7aの長手方向が+Y方向とされ、第1出力取出電極7aの短手方向が+X方向とされ、+X方向と+Y方向との両方に直交する、太陽電池素子10における前面10fsの法線方向が+Z方向とされている。
<1.第1実施形態>
<1−1.太陽電池素子の概略的な構成>
第1実施形態に係る太陽電池素子10の概略的な構成を、図1から図3に基づいて説明する。図3では、半導体基板1の第2面1fsにおいて意図的に形成されたテクスチャが便宜的に大きなサイズで描かれている。一方、図3では、半導体基板1の第1面1bsにおいて形成されてしまったテクスチャは、実際のサイズに合うように省略されている。第1実施形態に係る太陽電池素子10は、PERC型の太陽電池素子である。
図1から図3で示されるように、太陽電池素子10は、主に光を受光する面(前面ともいう)10fsと、この前面の逆側に位置している面(裏面ともいう)10bsと、を有する。図1から図3の例では、前面10fsが、+Z方向を向いており、裏面10bsが、−Z方向を向いている状態にある。
太陽電池素子10は、例えば、半導体基板1と、パッシベーション層4と、反射防止層5と、保護層6と、表面電極7と、裏面電極8と、を有する。
半導体基板1は、第1面1bsと、第2面1fsと、第3面1ssと、を有する。第1面1bsは、裏面10bs側に位置している。第2面1fsは、前面10fs側に位置している。換言すれば、第1面1bsと第2面1fsとは相互に反対方向を向いている状態で位置している。第3面1ssは、第1面1bsと第2面1fsとを接続している状態で位置している。換言すれば、第3面1ssは、半導体基板1の外周縁を構成している状態にある端面である。図1から図3の例では、第1面1bsは、−Z方向を向いている状態にある。第2面1fsは、+Z方向を向いている状態にある。半導体基板1は、+Z方向に沿った厚さを有する平板状の形態を有する。このため、第1面1bsおよび第2面1fsは、それぞれXY平面に沿った半導体基板1の板面を構成している状態にある。
また、半導体基板1は、第1半導体層2と、第2半導体層3と、を有する。第1半導体層2は、第1導電型を有する半導体によって構成されている状態にある。第2半導体層3は、第1導電型とは逆の第2導電型を有する半導体によって構成されている状態にある。第1半導体層2は、半導体基板1のうちの第1面1bs側の部分に位置している。第2半導体層3は、半導体基板1のうちの第2面1fs側の表層部に位置している。図3の例では、第1半導体層2上に第2半導体層3が位置している。
ここで、例えば、半導体基板1がシリコン基板である場合を想定する。この場合、シリコン基板として、多結晶または単結晶のシリコン基板が採用される。シリコン基板は、例えば、250μm以下あるいは150μm以下の厚さを有する薄い基板である。また、シリコン基板は、例えば、平面視して矩形状の外縁形状を有する。このような形状を有する半導体基板1が採用されれば、複数の太陽電池素子10を並べて太陽電池モジュールが製造される際に、太陽電池素子10同士の間の隙間が小さくなり得る。
また、例えば、第1導電型がp型であり且つ第2導電型がn型である場合、p型のシリコン基板は、例えば、多結晶あるいは単結晶のシリコンの結晶に、ドーパント元素として、ボロンあるいはガリウムなどの不純物を含有させて製作され得る。この場合、p型のシリコン基板の第2面1fs側の表層部にドーパントとしての燐などの不純物を拡散させることで、n型の第2半導体層3が生成され得る。このとき、p型の第1半導体層2とn型の第2半導体層3とが積層された半導体基板1が形成され得る。これにより、半導体基板1は、第1半導体層2と第2半導体層3との界面に位置しているpn接合部を有する。
図3に示されるように、半導体基板1の第2面1fsは、例えば、照射された光の反射を低減するための微細な凹凸構造(テクスチャ)を有していてもよい。このとき、テクスチャの凸部の高さは、例えば、0.1μmから10μm程度とされる。隣り合う凸部の頂点の間の距離は、例えば、0.1μmから20μm程度とされる。テクスチャでは、例えば、凹部が略球面状であってもよいし、凸部がピラミッド形状であってもよい。上述した「凸部の高さ」とは、例えば、図3において、凹部の底面を通る直線を基準線とし、この基準線に対して垂直な方向(ここでは+Z方向)において、この基準線から凸部の頂点までの距離のことである。
さらに、半導体基板1は、第3半導体層2bsを有する。第3半導体層2bsは、半導体基板1のうちの第1面1bs側の表層部に位置している。第3半導体層2bsの導電型は、第1半導体層2の導電型(本実施形態ではp型)と同一とされる。そして、第3半導体層2bsが含有するドーパントの濃度は、第1半導体層2が含有するドーパントの濃度よりも高い。第3半導体層2bsは、半導体基板1の第1面1bs側において内部電界を形成する。これにより、半導体基板1の第1面1bsの近傍では、半導体基板1において光の照射に応じた光電変換によって生じる少数キャリアの再結合が低減され得る。その結果、太陽電池素子10における光電変換効率の低下が生じにくい。第3半導体層2bsは、例えば、半導体基板1のうちの第1面1bs側の表層部に、アルミニウムなどのドーパント元素が拡散されることで形成され得る。このとき、第1半導体層2が含有するドーパント元素の濃度を、5×1015atoms/cmから1×1017atoms/cm程度とし、第3半導体層2bsが含有するドーパント元素の濃度を、1×1018atoms/cmから5×1021atoms/cm程度とすることができる。第3半導体層2bsは、後述する第2集電電極8bと半導体基板1との接触部分に存在する。
パッシベーション層4は、半導体基板1の少なくとも第1面1bs上に位置している。パッシベーション層4は、半導体基板1において、光の照射に応じた光電変換によって生成される少数キャリアの再結合を低減することができる。パッシベーション層4の素材としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化シリコン、窒化シリコンおよび酸窒化シリコンなどから選択される1種類以上の素材が採用される。パッシベーション層4は、例えば、1層あるいは互いに異なる素材を含む2層以上によって構成されている状態にある。この場合、パッシベーション層4は、例えば、CVD法または原子層堆積(Atomic Layer Deposition:ALD)法で形成され得る。ここで、パッシベーション層4が酸化アルミニウムを含む場合を想定する。この場合、この酸化アルミニウムは負の固定電荷を有する。このため、電界効果によって、半導体基板1の第1面1bs側で生じる少数キャリア(この場合は電子)が、p型の第1半導体層2とパッシベーション層4との界面(第1面1bs)から遠ざけられる。これにより、半導体基板1のうちの第1面1bsの近傍における少数キャリアの再結合が低減され得る。このため、太陽電池素子10の光電変換効率が向上し得る。パッシベーション層4の厚さは、例えば、3nmから100nm程度とされる。パッシベーション層4は、例えば、半導体基板1の第2面1fs上にも位置していてもよい。また、パッシベーション層4は、例えば、半導体基板1の第2面1fsと第1面1bsとを接続する端面としての第3面1ss上にも位置していてもよい。
反射防止層5は、太陽電池素子10の前面10fsに照射される光の反射率を低減することができる。反射防止層5の素材としては、例えば、酸化シリコン、酸化アルミニウムまたは窒化シリコンなどが採用される。反射防止層5の屈折率および厚さは、太陽光のうち、半導体基板1に吸収されて発電に寄与し得る波長範囲の光に対して、反射率が低い条件(低反射条件ともいう)を実現することが可能な値に適宜設定され得る。例えば、反射防止層5の屈折率を1.8から2.5程度とし、この反射防止層5の厚さを、20nmから120nm程度とすることが考えられる。
保護層6は、半導体基板1の第1面1bs上に位置しているパッシベーション層4上に位置している。保護層6は、パッシベーション層4を保護することができる。保護層6の素材としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコンおよび酸窒化シリコンなどから選択される1種類以上の素材が採用される。保護層6は、パッシベーション層4上において、所望のパターンを有する状態で位置している。保護層6は、厚さ方向(ここでは+Z方向)にこの保護層6を貫通する間隙を有する。この間隙は、例えば、第1面1bsに沿った周囲が閉じられた貫通孔を形成している状態にある孔部であってもよいし、第1面1bsに沿った周囲の少なくとも一部が開口している状態にあるスリット状の孔部であってもよい。例えば、図2で示されるように、裏面10bs側から保護層6を平面透視した際に、保護層6が複数の孔部CH1を有する場合が想定される。ここで、裏面10bs側から保護層6を平面透視した際に、各孔部CH1は、ドット(点)状であってもよいし、帯(線)状であってもよい。孔部CH1の直径または幅は、例えば、10μmから500μm程度とされる。孔部CH1のピッチは、例えば、0.3mmから3mm程度とされる。孔部CH1のピッチは、例えば、裏面10bs側から保護層6を平面透視した際の互い隣り合う孔部CH1の中心同士の距離とされる。図2の例では、110個の孔部CH1が存在している。ただし、各孔部CH1の大きさ、形状、数の組合せは、適宜調整され得る。このため、孔部CH1の数は、例えば、1つ以上であればよい。
ところで、保護層6は、例えば、半導体基板1の第1面1bs上に形成されたパッシベーション層4上に、絶縁性ペーストがスプレー法、コーター法またはスクリーン印刷法などの塗布法によって所望のパターンを有するように塗布された後に乾燥されることで形成される。保護層6は、例えば、半導体基板1の第3面1ss上において、直接、パッシベーション層4上あるいは反射防止層5上にも形成されてもよい。このとき、保護層6の存在によって、太陽電池素子10におけるリーク電流の低減が図られ得る。
ここで、例えば、保護層6の上に後述する第2集電電極8bを形成する際には、アルミニウムを主成分とする金属粉末とガラス成分と有機ビヒクルとを含む金属ペースト(第1金属ペーストともいう)が保護層6上に所望の形状を有するように塗布されて焼成される。主成分とは、含有成分のうち含有される比率(含有率ともいう)が最も大きい(高い)成分のことを意味する。このとき、パッシベーション層4上に直接塗布された第1金属ペーストは、保護層6の孔部CH1においてパッシベーション層4のファイヤースルー(焼成貫通)を生じ、半導体基板1の第1面1bsに第2集電電極8bが直接接続される。これにより、パッシベーション層4および保護層6は、パッシベーション層4および保護層6を貫通している状態でそれぞれ位置している複数の孔部CH1を有する状態となる。また、このとき、例えば、複数の孔部CH1内に位置している第1金属ペーストが含有しているアルミニウムが半導体基板1の第1面1bsの表層部内に拡散することで、第3半導体層2bsが形成される。また、例えば、保護層6の厚さが、パッシベーション層4の厚さよりも十分大きければ、パッシベーション層4のうちの保護層6で覆われた状態にある部分では、第1金属ペーストはパッシベーション層4のファイヤースルーを生じない。これにより、太陽電池素子10において、半導体基板1の第1面1bs上に、保護層6の所望のパターンに対応するパターンでパッシベーション層4を存在させることが可能となる。
保護層6の厚さは、例えば、0.5μmから10μm程度とされる。保護層6の厚さは、保護層6を形成するための後述する絶縁性ペーストの組成、半導体基板1の第1面1bsの形状、および第2集電電極8bの形成時の焼成条件などによって、適宜設定される。
表面電極7は、半導体基板1の第2面1fs側に位置している。表面電極7は、図1および図3で示されるように、第1出力取出電極7aと複数の線状の第1集電電極7bとを有する。
第1出力取出電極7aは、半導体基板1における光の照射に応じた光電変換によって得られたキャリアを太陽電池素子10の外部に取り出すことができる。第1出力取出電極7aとしては、前面10fsを平面視して、例えば、細長い長方形状の形状を有するバスバー電極が採用される。第1出力取出電極7aの短手方向の長さ(幅ともいう)は、例えば0.3mmから2.5mm程度とされる。第1出力取出電極7aの少なくとも一部は、第1集電電極7bに対して交差している状態で電気的に接続している状態にある。
第1集電電極7bは、半導体基板1において光の照射に応じた光電変換によって得られたキャリアを集めることができる。各第1集電電極7bは、例えば、20μmから200μm程度の幅を有する線状の電極である。換言すれば、各第1集電電極7bの幅は、第1出力取出電極7aの幅よりも小さい。複数の第1集電電極7bは、例えば、互いに1mmから3mm程度の間隔を空けて並んでいる状態で位置している。表面電極7の厚さは、例えば、3μmから30μm程度とされる。このような表面電極7は、例えば、銀を主成分とする金属粒子などを含有する金属ペースト(第2金属ペーストともいう)をスクリーン印刷などによって所望の形状に塗布した後に、この第2金属ペーストを焼成することで形成され得る。また、例えば、第1集電電極7bと同様の形状の補助電極7cが、半導体基板1の+X方向の側および−X方向の側にそれぞれ存在している縁部に沿って位置していることで、第1集電電極7b同士を電気的に接続していてもよい。
裏面電極8は、半導体基板1の第1面1bs側に位置している。裏面電極8は、図2および図3で示されるように、第2出力取出電極8aと第2集電電極8bとを有する。
第2出力取出電極8aは、半導体基板1の第1面1bs側に位置している。この第2出力取出電極8aは、太陽電池素子10において光電変換によって得られたキャリアを太陽電池素子10の外部に取り出すための電極である。第2出力取出電極8aの厚さは、例えば、3μmから20μm程度とされる。第2出力取出電極8aの幅は、例えば、1.3mmから7mm程度とされる。第2出力取出電極8aが、主成分として銀を含む場合、第2出力取出電極8aは、例えば、銀を主成分とする金属粉末とガラス成分と有機ビヒクルとを含む金属ペースト(第3金属ペーストともいう)がスクリーン印刷などによって所望の形状に塗布された後に、この第3金属ペーストを焼成することで形成され得る。
第2集電電極8bは、半導体基板1の第1面1bs側において、保護層6上に位置している。この第2集電電極8bは、半導体基板1に電気的に接続している状態にある。具体的には、第2集電電極8bは、電極層8blと、接続部8bcと、を有する。電極層8blは、保護層6の上に位置している層状の部分である。接続部8bcは、パッシベーション層4および保護層6を貫通している状態でそれぞれ位置している複数の孔部CH1において、それぞれ電極層8blと半導体基板1の第1面1bsとを電気的に接続している状態で位置している部分である。
第2集電電極8bは、半導体基板1の第1面1bs側において、半導体基板1において光の照射に応じた光電変換によって得られたキャリアを集めることができる。第2集電電極8bは、第2出力取出電極8aの少なくとも一部に対して電気的に接続している状態で位置している。第2集電電極8bにおける電極層8blの厚さは、例えば、15μmから50μm程度とされる。第2集電電極8bが、主成分としてアルミニウムを含む場合、第2集電電極8bは、例えば、第1金属ペーストが所望の形状に塗布された後に、この第1金属ペーストを焼成することで形成され得る。
さらに、第2集電電極8bは、例えば、太陽電池素子10の第1面1bs上において第1集電電極7bと同様な形状を有しており且つ第2出力取出電極8aに接続している状態で位置していてもよい。このような構造が採用されれば、太陽電池素子10の裏面10bsに入射する光も太陽電池素子10における光電変換に利用され得る。これにより、例えば、太陽電池素子10における出力が向上し得る。裏面10bsに入射する光は、例えば、地面などにおける太陽光の反射によって生じ得る。
<1−2.太陽電池素子の裏面側における構造>
第1実施形態に係る太陽電池素子10の裏面10bs側における構造について、図4(a)および図4(b)に基づいて説明する。ここで、例えば、塩酸などを用いたエッチングで太陽電池素子10の裏面電極8を除去した後に、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)によって保護層6の表面形状を観察することができる。また、例えば、太陽電池素子10を切断し、塩酸などを用いたエッチングで太陽電池素子10の切断面において切断による歪みおよび傷を有する部分を除去した後に、SEMなどによって保護層6の断面を観察することができる。
図4(a)で示されるように、例えば、保護層6は、第2集電電極8bの電極層8bl側の面に位置している、複数の凸状部6pを有する。換言すれば、例えば、複数の凸状部6pは、保護層6のうちのパッシベーション層4が位置している側の面とは反対側の面に位置している。ここで、保護層6のうちのパッシベーション層4が位置している側の面とは反対側の面は、保護層6のうちの電極層8b1が位置している側の面である。第1実施形態では、保護層6は、第2集電電極8bの電極層8bl側に位置している、複数の凸状部6pと、非凸状部6apと、を有する。非凸状部6apは、保護層6のうちの電極層8bl側の面に位置している、複数の凸状部6p以外の部分である。換言すれば、保護層6における電極層8bl側の表面は、凸状部6pと、非凸状部6apと、を含む凹凸構造を有する。図4(a)の例では、各凸状部6pは、非凸状部6apを基準として、−Z方向に突出している状態で位置している。
また、例えば、図5(a)で示されるような態様で、保護層6は、第2集電電極8bの電極層8bl側の面に位置している、凸状部6pと、この凸状部6p以外の非凸状部6apと、を有していてもよい。換言すれば、例えば、凸状部6pおよび非凸状部6apは、保護層6のうちのパッシベーション層4が位置している側の面とは反対側の面に位置している。図5(a)の例では、各凸状部6pは、非凸状部6apを基準として、−Z方向に突出している状態で位置している。
保護層6の表面における凹凸構造は、例えば、半導体基板1の第1面1bsの凹凸構造1rgに由来し得る。図4(a)および図5(a)の例では、半導体基板1の第1面1bsに、+Z方向に凹んでいる状態で位置している部分(凹部ともいう)1rと、−Z方向に突出している状態で位置している部分(凸部ともいう)1pと、が存在している。凹凸構造1rgは、これらの凹部1rと凸部1pとを有する状態で構成されている状態にある。このため、例えば、この凹凸構造1rg上に、厚さが小さなパッシベーション層4および保護層6がこの記載の順に形成されることで、保護層6のうちの電極層8blが形成される対象となる表面において、半導体基板1の凹凸構造1rgに対応する凹凸構造が形成され得る。
第1実施形態では、半導体基板1では、上述したように、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性の水溶液またはフッ硝酸などの酸性の水溶液を用いた湿式のエッチングによって、第2面1fs側に上述した微細な凹凸構造(テクスチャ)が形成される。例えば、この凹凸構造が第2面1fs側に形成される際に、半導体基板1の第1面1bs側にも凹凸構造1rgが形成され得る。
また、図4(b)および図5(b)で示されるように、保護層6における複数の凸状部6pのそれぞれは、第2集電電極8bの電極層8bl側において1つ以上の凹状部分6prを有する。これにより、凸状部6pは、複数の凹状部分6prを有する。図4(b)には、凸状部6pに位置している6つの凹状部分6prが描かれている。図5(b)には、凸状部6pに位置している7つの凹状部分6prが描かれている。このような凹状部分6prは、例えば、保護層6を形成する際に用いる絶縁性ペーストに有機フィラーを含有させ、この絶縁性ペーストを乾燥させる際に、有機フィラーを熱分解させることで、この有機フィラーが消滅した領域の痕跡として形成され得る。
この凹状部分6prの内部空間SC1には、第2集電電極8bの電極層8blの一部が位置している。換言すれば、凹状部分6prの内部空間SC1には、第2集電電極8bの電極層8blを構成している状態にある成分(電極成分ともいう)が位置している。この電極成分には、少なくともガラス成分が含まれている。このガラス成分は、例えば、第2集電電極8bを形成する際に使用した第1金属ペーストに含まれているガラス成分に由来し得る。
ところで、例えば、第2集電電極8bを形成する際に保護層6上に塗布する第1金属ペーストが含有しているガラス成分の含有量を仮に低下させると、保護層6と第2集電電極8bとの間における密着性が低下する。例えば、下記のように、4種類の実験用の太陽電池素子110(図6(a)および図6(b)参照)を試料として作製し、保護層106に対する第2集電電極108bの密着性について実験を行った。その結果、第1金属ペーストに含有されたガラス成分の含有量が低下すると、保護層106に対する第2集電電極108bの密着性が低下することが確認された。
4種類の実験用の太陽電池素子110を作製する際には、まず、1辺が約156mmの矩形状の表裏面と、約200μmの厚さと、を有する多結晶のシリコン基板を準備した。この多結晶のシリコン基板の裏面側に、ALD法で約50nmのパッシベーション層を形成し、このパッシベーション層の上に保護層106を形成した。このとき、パッシベーション層の上に、シロキサン樹脂と有機溶剤と複数の無機フィラーとを含む絶縁性ペーストを、コーター法で塗布して、約270℃で乾燥させることで、約1μmの厚さを有する保護層106を形成した。次に、この保護層106の上の略全面に、主成分としてアルミニウム(Al)を含む金属粉末と、ガラス成分と、有機ビヒクルと、を含有する第1金属ペーストをスクリーン印刷法で塗布した。ここでは、ガラス成分の含有率が、2質量%、3.5質量%、4質量%および5質量%の4水準である4種類の第1金属ペーストを使用した。さらに主成分として銀を含む金属粉末と、有機ビヒクルと、ガラスフリットと、を含有する第3金属ペーストをスクリーン印刷法で第2出力取出電極108aのパターンとなるように塗布した。そして、最高温度が約740℃で、加熱時間が約1分(min)間とされる条件で、第1金属ペーストおよび第3金属ペーストの焼成を行うことで、第2出力取出電極108aと第2集電電極108bとを含む裏面電極108を形成した。これにより、4種類の実験用の太陽電池素子110の試料を作製した。
そして、図6(a)で示されるように、4種類の実験用の太陽電池素子110の試料のそれぞれについて、第2集電電極108b上の二点鎖線で囲まれた領域Aa0にエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)の樹脂を加熱しながら貼付した。そして、このEVA樹脂を第2集電電極108b上から剥がすことで、第2集電電極108bが保護層106から剥離するか否かを確認する実験を行った。このとき、図6(b)で示されるように、4種類の実験用の太陽電池素子110の試料のうち、作製に使用した第1金属ペースト中のガラス成分の含有率が4質量%および5質量%であった試料については、第2集電電極108bが保護層106から剥離しないことが認められた。これに対して、作製に使用した第1金属ペースト中のガラス成分の含有率が3.5質量%および2質量%と低ければ、第2集電電極108bが保護層106から剥離することが認められた。この実験結果より、第1金属ペーストに含有されていたガラス成分の含有量が低下すると、保護層106に対する第2集電電極108bの密着性が低下することが確認された。これにより、第1金属ペーストにおけるガラス成分の含有量が高まれば、ガラス成分の存在によって、保護層106と第2集電電極108b中の金属粒子との間で密着性が高まることが分かった。
これに対して、第1実施形態に係る太陽電池素子10では、保護層6の表面に存在している凸状部6pに凹状部分6prが存在している。このため、例えば、保護層6上に第1金属ペーストを塗布して第2集電電極8bを形成する際に、保護層6の表面に凹凸構造が存在していても、凸状部6pに存在している凹状部分6prに、第1金属ペースト中のガラス成分などが入り込む。このため、例えば、図4(a)および図5(a)で示された構成を形成する際には、凸状部6p上に位置している第1金属ペーストにおいて、ガラス成分および有機ビヒクルなどを含む流動性を有する成分が重力方向に沿った方向(図4(a)および図5(a)の例では+Z方向)へ流出しにくくなる。これにより、凸状部6p上に位置している第1金属ペーストにおいて、ガラス成分の含有量が減少しにくい。その結果、第2集電電極8bを形成する際に、保護層6上に塗布される第1金属ペーストの成分の分布に偏りが生じにくい。このとき、例えば、保護層6上における第2集電電極8bの密着性に偏りが生じにくい。そして、第1金属ペーストを焼成する際に、凹状部分6prではガラス成分の存在によって、凸状部6pにおいて保護層6と第2集電電極8b中の金属粒子との間で密着性が向上し得る。また、例えば、第2集電電極8bの一部が保護層6の凹状部分6prに入り込むことで、いわゆるアンカー効果も生じ得る。これにより、保護層6に対する第2集電電極8bの密着性が向上し得る。その結果、例えば、保護層6からの第2集電電極8bの部分的な剥離が生じにくい。したがって、PERC型の太陽電池素子10における光電変換効率が向上し得る。
ここで、例えば、保護層6を第2集電電極8bの電極層8bl側から平面透視した場合に、保護層6の表面に存在している凹状部分6prの径は、例えば、0.1μmから10μm程度とされる。この場合には、例えば、第1金属ペーストの焼成を行う際に第1金属ペースト内で溶融している状態にあるガラス成分が、凹状部分6prに容易に入り込むことができる。その結果、保護層6に対する第2集電電極8bの密着性が向上し得る。
また、ここで、例えば、保護層6のうちの第2集電電極8bの電極層8bl側の表面に存在している凹状部分6prの深さは、例えば、0.1μmから1μm程度とされる。ここで、例えば、凹状部分6prの深さが、凸状部6pの高さよりも小さければ、第2集電電極8bを形成する際に、保護層6上に塗布される第1金属ペーストの成分の分布に偏りが生じにくい。その結果、例えば、保護層6上における第2集電電極8bの密着性に偏りが生じにくい。また、ここで、例えば、保護層6において凹状部分6prが存在している部分における保護層6の厚さ(最小膜厚ともいう)が、0.5μm以上程度であれば、保護層6によってパッシベーション層4を保護する機能が確保され得る。
ところで、ここで、図4(b)および図5(b)で示されるように、例えば、凸状部6pに存在している複数の凹状部分6prのうちの隣り合う凹状部分6pr同士の距離(第1距離ともいう)をD1とする。第1距離D1としては、例えば、隣り合う凹状部分6pr同士の中心間の距離が採用される。この第1距離D1は、例えば、隣り合う凹状部分6pr同士の中心間の距離の平均値であってもよいし、隣り合う凹状部分6prが離れている距離(離間距離ともいう)であってもよいし、隣り合う凹状部分6prの離間距離の平均値であってもよい。また、図4(a)および図5(a)で示されるように、例えば、複数の凸状部6pのうちの隣り合う凸状部6p同士の距離(第2距離ともいう)をD2とする。第2距離D2としては、例えば、隣り合う凸状部6p同士の中心間あるいは頂部間の距離が採用される。この第2距離D2は、例えば、隣り合う凸状部6p同士の中心間あるいは頂部間の距離の平均値であってもよいし、隣り合う凸状部6pの離間距離であってもよいし、隣り合う凸状部6pの離間距離の平均値であってもよい。また、図2および図3で示されるように、例えば、複数の孔部CH1に存在している複数の接続部8bcのうちの隣り合う接続部8bc同士の距離(第3距離ともいう)をD3とする。第3距離D3としては、例えば、隣り合う接続部8bc同士の中心間の距離が採用される。この第3距離D3は、例えば、隣り合う接続部8bc同士の中心間の距離の平均値であってもよいし、隣り合う接続部8bcの離間距離であってもよいし、隣り合う接続部8bcの離間距離の平均値であってもよい。この場合に、例えば、第1距離D1が、第2距離D2および第3距離D3の何れよりも短ければ、保護層6に対する第2集電電極8bの密着性が十分に向上し得る。その結果、例えば、保護層6からの第2集電電極8bの部分的な剥離が生じにくい。したがって、PERC型の太陽電池素子10における光電変換効率が向上し得る。さらに、ここで、例えば、隣り合う凹状部分6pr同士がつながっていてもよい。この場合には、保護層6に対する第2集電電極8bの密着性がより向上し得る。その結果、例えば、保護層6からの第2集電電極8bの部分的な剥離がより生じにくい。
また、ここで、例えば、保護層6の電極層8bl側の面を平面視した場合に、凸状部6pにおける単位面積の領域を凹状部分6prが占める割合が、5%から40%程度とされると、保護層6に対する第2集電電極8bの密着性が向上しやすくなる。ここでは、例えば、太陽電池素子10の裏面電極8を塩酸などによるエッチングで除去した後に、SEMによって保護層6の電極層8bl側の面を観察することで、保護層6の電極層8bl側の面を平面視することができる。単位面積は、例えば、10μmから20μmの範囲に設定される。
また、ここで、例えば、図4(b)および図7で示されるように、保護層6の非凸状部6apも、凸状部6pと同様に、1つ以上の凹状部分6prを有していてもよい。これにより、例えば、保護層6のうちの第2集電電極8bの電極層8bl側の部分における広範囲にわたって、複数の凹状部分6prが存在し得る。そして、例えば、この非凸状部6apの凹状部分6prの内部空間SC1にも、第2集電電極8bの電極層8blを構成している状態にあるガラス成分を含む電極成分が位置している。このような構成が採用されれば、第2集電電極8bの形成時に、保護層6上に塗布される第1金属ペーストの成分の分布が偏りを生じにくい。これにより、例えば、太陽電池素子10の裏面10bs側において、保護層6と第2集電電極8bとの間における密着性の分布に偏りが生じにくい。その結果、例えば、保護層6からの第2集電電極8bの部分的な剥離が生じにくい。したがって、PERC型の太陽電池素子10における光電変換効率が向上し得る。
<1−3.絶縁性ペースト>
第1実施形態では、例えば、保護層6を形成するために、2種類の絶縁性ペーストが用いられる。この2種類の絶縁性ペーストは、第1絶縁性ペーストおよび第2絶縁性ペーストを含む。
第1絶縁性ペーストおよび第2絶縁性ペーストのそれぞれは、例えば、シロキサン樹脂と、有機溶剤と、複数のフィラーと、を含む。シロキサン樹脂は、Si−O−Si結合(シロキサン結合)を有するシロキサン化合物である。具体的には、シロキサン樹脂としては、例えば、アルコキシシランまたはシラザンなどを加水分解させて縮合重合させることで生成された、分子量1万以下の低分子量の樹脂が採用される。
ここで、第1絶縁性ペーストにおける複数のフィラーは、主成分が無機材料であるフィラー(無機フィラーともいう)を含む。第2絶縁性ペーストにおける複数のフィラーは、主成分が有機材料であるフィラー(有機フィラーともいう)を含む。第2絶縁性ペーストにおける複数のフィラーは、無機フィラーを含んでいてもよい。
<1−4.絶縁性ペーストの製造>
<1−4−1.第1絶縁性ペーストの製造>
第1絶縁性ペーストは、次のようにして製造され得る。
まず、シロキサン樹脂の前駆体と、水と、有機溶剤と、触媒と、フィラーと、を混合することで混合溶液を作製する。
シロキサン樹脂の前駆体としては、例えば、Si−O結合を有するシラン化合物またはSi−N結合を有するシラザン化合物などが採用され得る。これらの化合物は、加水分解を生じる性質(加水分解性ともいう)を有する。また、シロキサン樹脂の前駆体は、加水分解して縮合重合を生じることでシロキサン樹脂となる。
シラン化合物は、次の一般式1で表される。
(R1)Si(OR2)(4−n) ・・・ (一般式1)。
一般式1のnは、例えば、0、1、2および3のうちのいずれかの整数である。また、一般式1のR1およびR2は、メチル基(−CH)およびエチル基(−C)などのアルキル基(−C2m+1)あるいはフェニル基(−C)などといった炭素水素基を示す。ここで、mは、自然数である。
ここで、シラン化合物は、例えば、少なくともR1がアルキル基を有するシラン化合物(アルキル基系のシラン化合物ともいう)を含む。具体的には、アルキル基系のシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン(CH−Si−(OCH)、ジメチルジメトキシシラン((CH−Si−(OCH)、トリエトキシメチルシラン(CH−Si−(OC)、ジエトキシジメチルシラン((CH−Si−(OC)、トリメトキシプロピルシラン((CHO)−Si−(CHCH)、トリエトキシプロピルシラン((CO)−Si−(CHCH)、ヘキシルトリメトキシシラン((CHO)−Si−(CHCH)、トリエトキシヘキシルシラン((CO)−Si−(CHCH)、トリエトキシオクチルシラン((CO)−Si−(CHCH)およびデシルトリメトキシシラン((CHO)−Si−(CHCH)などが挙げられる。
ここで、例えば、アルキル基が、メチル基、エチル基またはプロピル基であれば、シロキサン樹脂の前駆体が加水分解する際に炭素数が少なく揮発しやすい副生成物としてのアルコールが生成され得る。これにより、後述する工程で副生成物が除去されやすくなる。その結果、例えば、保護層6を形成する際に、副生成物の蒸発による空孔の発生が起こりにくくなることで、保護層6が緻密となり、保護層6のバリア性が向上し得る。
ここで、例えば、シロキサン樹脂の前駆体がフェニル基を有する場合には、シロキサン樹脂の前駆体は、加水分解して縮合重合し、フェニル基の加水分解および縮合重合で生じた副生成物が除去されたシロキサン樹脂とされた状態で、用いられてもよい。これにより、例えば、シロキサン樹脂の加水分解および縮合重合の反応による絶縁性ペーストの粘度の変動が低減され、絶縁性ペーストの粘度が安定しやすくなる。また、例えば、副生成物が除去された状態で、シロキサン樹脂と有機溶剤とフィラーとを混合して絶縁性ペーストを生成すれば、絶縁性ペーストに含有される副生成物の量が低減される。このため、このような絶縁性ペーストを生成すれば、例えば、スクリーン印刷法によって絶縁性ペーストの塗布を行う場合には、スクリーン製版の乳剤が副生成物によって溶解されることが低減される。その結果、スクリーン製版のパターンの寸法が変動しにくくなる。
また、シラン化合物は、例えば、R1およびR2が、フェニル基とアルキル基の双方を有するシラン化合物を含む。このようなシラン化合物としては、例えば、トリメトキシフェニルシラン(C−Si−(OCH)、ジメトキシジフェニルシラン((C−Si−(OCH)、メトキシトリフェニルシラン((C−Si−OCH)、トリエトキシフェニルシラン(C−Si−(OC)、ジエトキシジフェニルシラン((C−Si−(OC)、エトキシトリフェニルシラン((C−Si−OC)、トリイソプロポキシフェニルシラン(C−Si−(OCH(CH)、ジイソプロポキシジフェニルシラン((C−Si−(OCH(CH)およびイソプロポキシトリフェニルシラン((C−Si−OCH(CH)などが挙げられる。
これらのシラン化合物のうち、例えば、2つ以上のOR結合を含むシラン化合物が採用されれば、シラン化合物が加水分解した後に縮合重合を生じることで生成されるシロキサン結合(Si−O−Si結合)の数が増加し得る。これにより、保護層6を形成する酸化シリコンにおけるシロキサン結合のネットワークが多くなり得る。その結果、保護層6のバリア性が向上し得る。
また、シラザン化合物は、無機シラザン化合物および有機シラザン化合物の何れであってもよい。ここで、無機シラザン化合物としては、例えば、ポリシラザン(−(HSiNH)−)が挙げられる。有機シラザン化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン((CH−Si−NH−Si−(CH)、テトラメチルシクロジシラザン((CH−Si−(NH)−Si−(CH)およびテトラフェニルシクロジシラザン((C−Si−(NH)−Si−(C)などが挙げられる。
水は、シロキサン樹脂の前駆体を加水分解させるための液体である。例えば、水として、純水を用いる。例えば、シラン化合物のSi−OCHの結合に対して水が反応することで、Si−OH結合とHO−CH(メタノール)を生じさせる。
有機溶剤は、シロキサン樹脂の前駆体からシロキサン樹脂を含むペーストを生成するための溶剤である。また、有機溶剤は、シロキサン樹脂の前駆体と水とを混合させることができる。有機溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチルアルコール、2−(4−メチルシクロヘキサ−3−エニル)プロパン−2−オールまたは2−プロパノールなどが用いられる。ここでは、これらの有機溶剤のうちの1種類の有機溶剤および2種類以上の有機溶剤を混合した有機溶剤の何れが用いられてもよい。
触媒は、シロキサン樹脂の前駆体が加水分解および縮合重合を生じる際に、反応の速度を制御することができる。例えば、シロキサン樹脂の前駆体が含むSi−OR結合(例えば、Rはアルキル基)に加水分解および縮合重合を生じさせて、2つ以上のSi−OHからSi−O−Si結合とHO(水)とを生じさせる反応の速度が調整され得る。触媒としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、ホウ酸、燐酸、フッ化水素酸および酢酸などのうちの1種類以上の無機酸または1種類以上の有機酸が用いられる。また、触媒として、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウムおよびピリジンなどのうちの1種類以上の無機塩基または1種類以上の有機塩基が用いられてもよい。さらに、触媒は、例えば、無機酸と有機酸とが組み合わされたものでもよく、無機塩基と有機塩基とが組み合わされたものであってもよい。
フィラーは、例えば、酸化シリコン、酸化アルミニウムまたは酸化チタンなどを含む無機フィラーである。
ここで混合される各材料の混合比率については、例えば、全ての材料を混合した後の混合溶液において、シロキサン樹脂の前駆体の濃度が7質量%から60質量%となり、水の濃度が5質量%から40質量%(10質量%から20質量%でもよい)となり、触媒の濃度が1ppmから1000ppmとなり、有機溶剤の濃度が5質量%から50質量%となり、無機フィラーの濃度が3質量%から30質量%となるように調整される。このような混合比率であれば、例えば、シロキサン樹脂の前駆体の加水分解および縮合重合によって生じるシロキサン樹脂を、絶縁性ペースト中に適切な濃度で含有させることができる。また、例えば、絶縁性ペーストにおいてゲル化による過度な粘度の増大が生じにくい。
このようにして材料が混合される際には、シロキサン樹脂の前駆体と水とが反応して、シロキサン樹脂の前駆体の加水分解が始まる。また、加水分解したシロキサン樹脂の前駆体が縮合重合を生じて、シロキサン樹脂が生成され始める。
次に、混合溶液を攪拌する。ここでは、混合溶液を、例えば、ミックスローターまたはスターラーなどを用いて攪拌する。混合溶液を攪拌すると、さらに、シロキサン樹脂の前駆体の加水分解が進行する。また、加水分解したシロキサン樹脂の前駆体が縮合重合を生じ、シロキサン樹脂が生成され続ける。例えば、ミックスローターで攪拌を行なう場合には、ミックスローターの回転ローラーの回転数が400rpmから600rpm程度とされ、攪拌時間が30分間から90分間程度とされる攪拌条件が採用される。このような攪拌条件が採用されると、シロキサン樹脂の前駆体、水、触媒および有機溶剤を均一に混合することができる。また、混合溶液を攪拌する際には、例えば、混合溶液が加熱されれば、シロキサン樹脂の前駆体の加水分解および縮合重合が進行しやすい。これにより、例えば、攪拌時間の短縮による生産性の向上が図られ得るとともに、混合溶液の粘度が安定しやすくなる。
次に、混合溶液から水と触媒とを揮発させることで、第1絶縁性ペーストが製造され得る。ここで、例えば、第1絶縁性ペーストをスクリーン印刷法で塗布する場合には、スクリーンの乳剤が溶けて寸法が変動することが起こりにくくなるように、副生成物および有機溶剤も揮発させる。副生成物は、例えば、シロキサン樹脂の前駆体と水との反応によって発生したアルコールなどの有機成分を含む。
ここでは、例えば、ホットプレートまたは乾燥炉などを用いて、処理温度が室温から90℃程度(50℃から90℃程度でもよい)であり且つ処理時間が10分間から600分間程度である条件で、攪拌後の混合溶液に処理を施す。処理温度が上記温度範囲内であれば副生成物が除去され得る。また、上記温度範囲内では、副生成物である有機成分が揮発しやすいため、処理時間の短縮による生産性の向上が図られ得る。ここで、例えば、減圧下であれば、副生成物である有機成分が揮発しやすい。その結果、処理時間の短縮による生産性の向上が図られ得る。また、例えば、ここで、混合溶液が攪拌された際に加水分解せずに残存したシロキサン樹脂の前駆体をさらに加水分解させてもよい。
<1−4−2.第2絶縁性ペーストの製造>
第2絶縁性ペーストの製造方法は、例えば、上述した第1絶縁性ペーストの製造方法において、無機フィラーの全部あるいは一部に代えて、混合溶液に有機フィラーを添加することで実現され得る。ここでは、例えば、混合溶液中の副生成物および有機溶剤による有機フィラーの溶解が生じにくくなるように、混合溶液中の副生成物および有機溶剤を揮発させた後に、混合溶液に有機フィラーを添加し、混合溶液を攪拌してもよい。
ここで、有機フィラーとしては、例えば、保護層6を形成する際に第2絶縁性ペーストを乾燥させる温度以下において、熱分解を生じる素材を主成分として含むものが採用される。有機フィラーが熱分解を生じる温度は、例えば、300℃以下である。このような素材としては、アクリル系の素材などが挙げられる。有機フィラーの平均粒径は、例えば、1μm程度以下とされる。また、ここでは、例えば、100質量部の混合溶液に対して、5質量部から20質量部程度の有機フィラーが添加されれば、混合溶液の粘度ならびに保護層6に形成される凹状部分6prの数が容易に調整され得る。
<1−5.太陽電池素子の製造方法>
太陽電池素子10の製造方法の一例について、図8(a)から図8(f)に基づいて説明する。
まず、半導体基板1を準備する工程(第1工程ともいう)を実施する。半導体基板1は、第1面1bsおよびこの第1面1bsとは逆方向を向いた第2面1fsを有する。
ここでは、例えば、まず、図8(a)で示されるように半導体基板1を準備する。半導体基板1は、例えば、既存のCZ法または鋳造法などを用いて形成され得る。ここでは、鋳造法によって作製されたp型の多結晶シリコンのインゴットを用いた例について説明する。このインゴットを、例えば250μm以下の厚さにスライスして半導体基板1を作製する。ここで、例えば、半導体基板1の表面に対して、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、フッ酸またはフッ硝酸などの水溶液でごく微量のエッチングを施すと、半導体基板1の切断面の機械的なダメージを受けた層および汚染された層を除去することができる。このとき、例えば、半導体基板1の第2面1fsに上述したテクスチャの一部が形成され得るとともに、半導体基板1の第1面1bsにも上述した凹凸構造1rgの少なくとも一部が形成され得る。
次に、図8(b)で示されるように、半導体基板1の第2面1fsにテクスチャを形成する。テクスチャは、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性の水溶液またはフッ硝酸などの酸性の水溶液を用いたウエットエッチング、あるいは反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)法などを使用したドライエッチングによって形成され得る。このとき、例えば半導体基板1の第1面1bsに、上述した凹凸構造1rgの少なくとも一部が形成されてもよい。
次に、図8(c)で示されるように、テクスチャを有する半導体基板1の第2面1fs側の表層部に、n型の半導体領域である第2半導体層3を形成する。第2半導体層3は、例えば、ペースト状にした五酸化二燐(P)を半導体基板1の表面に塗布して燐を熱拡散させる塗布熱拡散法、あるいはガス状にしたオキシ塩化燐(POCl)を拡散源とした気相熱拡散法などを用いて形成され得る。第2半導体層3は、例えば、0.1μmから2μm程度の深さと40Ω/□から200Ω/□程度のシート抵抗値とを有するように形成される。
例えば、気相熱拡散法では、まず、POClなどを主として含有する拡散ガスを有する雰囲気中において600℃から800℃程度の温度において半導体基板1に5分間から30分間程度の熱処理を施して、燐ガラスを半導体基板1の表面に形成する。その後、アルゴンまたは窒素などの不活性ガスの雰囲気中において800℃から900℃程度の比較的高温において、半導体基板1に10分間から40分間程度の熱処理を施す。これにより、燐ガラスから半導体基板1に燐が拡散して、半導体基板1の第2面1fs側の表層部に第2半導体層3が形成される。
ここで、第2半導体層3を形成する際に、第1面1bs側にも第2半導体層が形成される場合がある。この場合には、第1面1bs側に形成された第2半導体層をエッチングで除去する。例えば、フッ硝酸の水溶液に半導体基板1の第1面1bs側の部分を浸すことで、第1面1bs側に形成された第2半導体層を除去することができる。これにより、半導体基板1の第1面1bsにp型の導電型を有する領域を露出させることができる。その後、第2半導体層3を形成する際に半導体基板1の第2面1fs側に付着した燐ガラスをエッチングで除去する。このように、第2面1fs側に燐ガラスを残存させた状態で、第1面1bs側に形成された第2半導体層をエッチングで除去すれば、第2面1fs側の第2半導体層3の除去およびダメージが低減され得る。このとき、半導体基板1の第3面1ssに形成された第2半導体層も併せて除去してもよい。
また、例えば、半導体基板1の第1面1bs側に予め拡散マスクを形成しておき、気相熱拡散法などによって第2半導体層3を形成し、続いて拡散マスクを除去してもよい。この場合には、第1面1bs側に第2半導体層は形成されないため、第1面1bs側の第2半導体層を除去する工程が不要となる。
以上の処理によって、第2面1fs側にn型の半導体層である第2半導体層3が位置し、第2面1fsにテクスチャを有し、且つ第1面1bsに凹凸構造1rgを有する、第1半導体層2を含む半導体基板1が準備され得る。
次に、パッシベーション層4を形成する工程(第2工程ともいう)を実施する。第1実施形態では、少なくとも、半導体基板1の第1面1bs上にパッシベーション層4が形成される。
ここでは、例えば、図8(d)で示されるように、第1半導体層2の第1面1bsの上と、第2半導体層3の第2面1fsの上に、酸化アルミニウムを主として含有するパッシベーション層4を形成する。また、パッシベーション層4の上に反射防止層5を形成する。反射防止層5は、例えば、窒化シリコン膜などによって構成される。
パッシベーション層4は、例えば、CVD法またはALD法などによって形成され得る。ALD法によれば、例えば、半導体基板1の第3面1ssを含む全周囲にパッシベーション層4が形成され得る。ALD法によるパッシベーション層4の形成工程では、まず、成膜装置のチャンバー内に、第2半導体層3までが形成された半導体基板1を載置する。そして、半導体基板1を100℃から250℃程度の温度域まで加熱した状態で、次の工程Aから工程Dを複数回繰り返し行い、酸化アルミニウムを主に含有するパッシベーション層4を形成する。これにより、所望の厚さを有するパッシベーション層4が形成される。
[工程A]酸化アルミニウムを形成するためのトリメチルアルミニウム(TMA)などのアルミニウム原料が、Arガスまたは窒素ガスなどのキャリアガスとともに、半導体基板1上に供給される。これにより、半導体基板1の全周囲にアルミニウム原料が吸着される。TMAが供給される時間は、例えば、15ミリ秒(m秒:msec)間から3000ミリ秒間程度とされる。ここで、工程Aの開始時には、半導体基板1の表面はOH基で終端されていてもよい。換言すれば、半導体基板1の表面がSi−O−Hの構造であってもよい。この構造は、例えば、半導体基板1を希フッ酸で処理した後に純水で洗浄することで形成され得る。
[工程B]窒素ガスによって成膜装置のチャンバー内の浄化が行なわれることで、チャンバー内のアルミニウム原料が除去される。さらに、半導体基板1に物理吸着および化学吸着したアルミニウム原料の内、原子層レベルで化学吸着した成分以外のアルミニウム原料が除去される。窒素ガスによってチャンバー内が浄化される時間は、例えば、1秒(sec)間から数十秒間程度とされる。
[工程C]水またはオゾンガスなどの酸化剤が、成膜装置のチャンバー内に供給されることで、TMAが含むアルキル基が除去されてOH基で置換される。これにより、半導体基板1の上に酸化アルミニウムの原子層が形成される。酸化剤がチャンバー内に供給される時間は、例えば、750ミリ秒間から1100ミリ秒間程度とされる。また、例えば、チャンバー内に酸化剤ととともに水素が供給されれば、酸化アルミニウムに水素原子がより含有されやすくなる。
[工程D]窒素ガスによって成膜装置のチャンバー内の浄化が行なわれることで、チャンバー内の酸化剤が除去される。このとき、例えば、半導体基板1上における原子層レベルの酸化アルミニウムの形成時において反応に寄与しなかった酸化剤などが除去される。ここで、窒素ガスによってチャンバー内が浄化される時間は、例えば、1秒間以上から数十秒間程度とされる。
以後、工程A、工程B、工程Cおよび工程Dがこの記載の順に行われる一連の工程を複数回繰り返すことで、所望の膜厚の酸化アルミニウムの層が形成される。
反射防止層5は、例えば、PECVD法またはスパッタリング法を用いて形成される。PECVD法を用いる場合は、事前に半導体基板1を反射防止層5の成膜中の温度よりも高い温度まで加熱しておく。その後、シラン(SiH)とアンモニア(NH)との混合ガスを、窒素(N)ガスで希釈し、反応圧力を50Paから200Pa程度にして、グロー放電分解でプラズマ化させたものを、加熱された半導体基板1上に堆積させる。これにより、半導体基板1上に反射防止層5が形成される。このとき、成膜温度を、350℃から650℃程度とし、半導体基板1の事前の加熱温度を成膜温度よりも50℃程度高くする。また、グロー放電に必要な高周波電源の周波数として、10kHzから500kHz程度の周波数が採用される。また、ガスの流量は、反応室の大きさなどによって適宜決定される。例えば、ガスの流量は、150ミリリットル(ml)/分(sccm)から6000ミリリットル/分(sccm)程度の範囲とされる。このとき、アンモニアガスの流量Bをシランガスの流量Aで除した値(B/A)は、0.5から15の範囲とされる。
次に、保護層6を形成する工程(第3工程ともいう)を実施する。第1実施形態では、少なくとも半導体基板1の第1面1bs側において、パッシベーション層4上に、孔部CH1を含むパターンを形成するように溶液を塗布してこの溶液を乾燥することで保護層6が形成される。このとき、溶液として、例えば、第1絶縁性ペーストおよび第2絶縁性ペーストが用いられることで、複数の凹状部分6prを有する保護層6が形成され得る。
このような保護層6は、例えば、次のような処理によって形成され得る。ここでは、まず、パッシベーション層4上に、第1絶縁性ペーストを塗布する。次に、パッシベーション層4上に塗布された第1絶縁性ペーストの層の上に、第2絶縁性ペーストを塗布する。次に、塗布後の第1絶縁性ペーストおよび第2絶縁性ペーストを、ホットプレートまたは乾燥炉などを用いて、最高温度が200℃から350℃程度とされ、加熱時間が1分間から10分間程度とされる条件で乾燥させる。このとき、図9で示されるように、第1絶縁性ペーストに由来する第1保護層領域6aと、この第1保護層領域6a上に位置している第2絶縁性ペーストに由来する第2保護層領域6bと、を有する保護層6が形成される。ここでは、乾燥時における熱処理により、第2絶縁性ペーストが含有している有機フィラーが熱分解する。これにより、有機フィラーが熱分解によって消失した部分が凹状部分6prとなり、表面に複数の凹状部分6prを有する保護層6が形成される。
また、このような保護層6は、例えば、次のような処理によって形成されてもよい。ここでは、まず、パッシベーション層4上に、第1絶縁性ペーストを塗布する。次に、パッシベーション層4上に塗布された第1絶縁性ペーストの層の上に、第2絶縁性ペーストを塗布する。次に、塗布後の第1絶縁性ペーストおよび第2絶縁性ペーストを、ホットプレートまたは乾燥炉などを用いて、第2絶縁性ペーストが含有している有機フィラーが熱分解を生じない、比較的低温(例えば、100℃程度)で乾燥させる。次に、有機溶剤を用いて、乾燥した第2絶縁性ペーストの表面に位置している有機フィラーを溶解させる。次に、ホットプレートまたは乾燥炉などを用いて、有機溶剤を蒸散させる乾燥処理を行う。これにより、表面に複数の凹状部分6prを有する保護層6が形成される。
ここでは、例えば、スプレー法、コーター法またはスクリーン印刷法などを用いてパッシベーション層4上の少なくとも一部に上述した第1絶縁性ペーストおよび第2絶縁性ペーストを所望のパターンで塗布する。これにより、例えば、図8(e)で示されるように、パッシベーション層4上の少なくとも一部に保護層6を形成する。
次に、表面電極7および裏面電極8を含む電極を形成する工程(第4工程ともいう)を実施する。ここでは、例えば、保護層6上および孔部CH1内に電極形成用の材料を配してこの電極形成用の材料を加熱することで、裏面電極8を形成する。このとき形成される裏面電極8は、第2出力取出電極8aと第2集電電極8bとを含む。第2集電電極8bは、電極層8blと接続部8bcとを含む。
ここでは、例えば、図8(f)で示されるように、表面電極7および裏面電極8が形成される。
表面電極7は、例えば、主成分として銀を含む金属粉末、有機ビヒクルおよびガラスフリットを含有する第2金属ペースト(銀ペーストともいう)を用いて作製する。まず、第2金属ペーストを、半導体基板1の第2面1fs側に塗布する。第1実施形態では、第2面1fs上のパッシベーション層4上に形成された反射防止層5上に、第2金属ペーストを塗布する。ここでは、第2金属ペーストの塗布は、例えば、スクリーン印刷などによって実現され得る。そして、第2金属ペーストの塗布後、所定の温度で第2金属ペースト中の溶剤を蒸散させて乾燥させてもよい。スクリーン印刷によって第2金属ペーストを塗布するのであれば、例えば、表面電極7に含まれる第1出力取出電極7a、第1集電電極7bおよび補助電極7cを1つの工程で形成することができる。その後、例えば、焼成炉内で最高温度が600℃から850℃とされ、加熱時間が数十秒間から数十分間程度とされる条件で、第2金属ペーストを焼成することで表面電極7を形成する。
裏面電極8に含まれる第2出力取出電極8aは、例えば、主成分として銀を含む金属粉末、有機ビヒクルおよびガラスフリットなどを含有する第3金属ペースト(銀ペーストともいう)を用いて作製する。半導体基板1へ第3金属ペーストを塗布する方法としては、例えば、スクリーン印刷法などを用いることができる。第3金属ペーストの塗布後、所定の温度で第3金属ペースト中の溶剤を蒸散させて乾燥してもよい。その後、焼成炉内で最高温度が600℃から850℃とされ、加熱時間が数十秒間から数十分間程度とされる条件で、第3金属ペーストを焼成することで、第2出力取出電極8aが半導体基板1の第1面1bs側に形成される。
裏面電極8に含まれる第2集電電極8bは、例えば、主成分としてアルミニウムを含む金属粉末、有機ビヒクルおよびガラスフリットを含有する第1金属ペースト(Alペースト)を用いて作製する。まず、第1金属ペーストを、予め塗布された第3金属ペーストの一部と接触するように、半導体基板1の第1面1bs側に塗布する。第1実施形態では、第1面1bs上のパッシベーション層4上に形成された保護層6上および孔部CH1内に、第1金属ペーストを塗布する。このとき、第2出力取出電極8aが形成される部位の一部を除いて、半導体基板1の第1面1bs側のほぼ全面に第1金属ペーストを塗布してもよい。ここでは、第1金属ペーストの塗布は、例えば、スクリーン印刷などによって実現され得る。また、このとき、第1金属ペーストは、保護層6の複数の凹状部分6prの内部空間SC1にも入り込む。
ここで、第1金属ペーストの塗布後、所定の温度で第1金属ペースト内の溶剤を蒸散させて乾燥させてもよい。その後、例えば、焼成炉内において最高温度が600℃から850℃とされ、加熱時間が数十秒間から数十分間程度とされる条件で第1金属ペーストを焼成することで、第2集電電極8bが半導体基板1の第1面1bs側に形成される。このとき、保護層6の複数の凹状部分6prの内部空間SC1には、第2集電電極8bのガラスを含む電極成分が入り込んだ状態となる。また、このとき、孔部CH1内において、第1金属ペーストは、焼成される際にパッシベーション層4をファイヤースルーして、第1半導体層2と電気的に接続する。これにより、第2集電電極8bが形成される。また、このとき、第2集電電極8bの形成に伴い、第3半導体層2bsも形成される。ただし、このとき、保護層6上にある第1金属ペーストは、保護層6でブロックされる。このため、第1金属ペーストが焼成される際には、保護層6でブロックされたパッシベーション層4へは焼成による悪影響がほとんど及ばない。
このようにして、裏面電極8が形成され得る。このため、第1実施形態では、裏面電極8を形成するための電極形成用の材料として、第1金属ペーストおよび第3金属ペーストが採用される。ここでは、例えば、第2集電電極8bを形成した後に第2出力取出電極8aを形成してもよい。第2出力取出電極8aは、例えば、半導体基板1と直接接触していても、第2出力取出電極8aと半導体基板1との間にパッシベーション層4が存在するなどして、半導体基板1と直接接触していなくてもよい。また、第2出力取出電極8aは保護層6の上に位置するように形成されてもよい。また、表面電極7および裏面電極8は、各々の金属ペーストを塗布した後に、同時に焼成を施すことで形成してもよい。これにより、太陽電池素子10の生産性が向上し得る。また、この場合、半導体基板1に施される熱履歴が低減されるため、太陽電池素子10の出力特性が向上し得る。
<1−6.第1実施形態のまとめ>
第1実施形態に係る太陽電池素子10では、例えば、保護層6の凸状部6pに存在している凹状部分6prに第2集電電極8bの電極層8blを構成している状態にあるガラス成分を含む電極成分が位置している。このような構成が採用されれば、例えば、保護層6上に第1金属ペーストを塗布して第2集電電極8bを形成する際に、保護層6の表面に凹凸構造が存在していても、凸状部6pに存在している凹状部分6prに、第1金属ペースト中のガラス成分などが入り込む。このため、例えば、凸状部6p上に位置している第1金属ペーストにおいて、ガラス成分および有機ビヒクルなどを含む流動性を有する成分が重力方向においてより低い部分へ流出しにくい。これにより、凸状部6p上に位置している第1金属ペーストにおいて、ガラス成分の含有量が減少しにくい。その結果、第2集電電極8bを形成する際に、保護層6上に塗布される第1金属ペーストの成分の分布に偏りが生じにくい。このとき、例えば、保護層6上における第2集電電極8bの密着性に偏りが生じにくい。そして、凹状部分6prではガラス成分の存在によって、凸状部6pにおいて保護層6と第2集電電極8b中の金属粒子との間で密着性が向上し得る。また、例えば、第2集電電極8bの一部が保護層6の凹状部分6prに入り込むことで、いわゆるアンカー効果が生じ得る。これにより、保護層6に対する第2集電電極8bの密着性が向上し得る。その結果、例えば、保護層6からの第2集電電極8bの部分的な剥離が生じにくい。したがって、PERC型の太陽電池素子10における光電変換効率が向上し得る。
<2.他の実施形態>
本開示は上述の第1実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良などが可能である。
<2−1.第2実施形態>
上記第1実施形態において、例えば、図10(a)および図10(b)で示されるように、保護層6は、この保護層6の内部に位置している複数の空隙部6vdを有していてもよい。ここで、空隙部6vdの径をd4とする。この場合に、例えば、径d4が、隣り合う凸状部6p同士の第2距離D2および隣り合う接続部8bc同士の第3距離D3の何れよりも短い形態が考えられる。具体的には、空隙部6vdとしては、例えば、0.1μmから1μm程度の径d4の内部空間を有する微小な空隙部が採用される。また、ここで、例えば、保護層6のうちの凹状部分6prおよび空隙部6vdが存在している部分において、空隙部6vdを除いた保護層6の厚さ(最小膜厚)が、0.5μm以上程度であれば、保護層6によってパッシベーション層4を保護する機能が確保され得る。
ところで、例えば、保護層6の形成時および太陽電池素子10の使用時に、保護層6が温度変化に応じた膨張または収縮を生じ、保護層6の縮合重合の反応に応じた収縮を生じる場合がある。このとき、保護層6とこの保護層6に隣接している状態にある層(隣接層ともいう)との間に応力が生じ得る。これに対して、例えば、保護層6の内部に複数の空隙部6vdが位置してれば、保護層6とこの保護層6に隣接している状態にある隣接層との間において生じる応力が、保護層6内の複数の空隙部6vdによって緩和され得る。これにより、保護層6とこの保護層6に隣接している状態にある隣接層との間で、剥離が生じにくい。その結果、PERC型の太陽電池素子10における光電変換効率が向上し得る。
また、ここで、例えば、複数の空隙部6vdのうちの隣り合う空隙部6vd同士の距離(第4距離ともいう)をD4とする。第4距離D4としては、例えば、隣り合う空隙部6vd同士の中心間の距離が採用される。この第4距離D4は、例えば、隣り合う空隙部6vd同士の中心間の距離の平均値であってもよいし、隣り合う空隙部6vdの離間距離であってもよいし、隣り合う空隙部6vdの離間距離の平均値であってもよい。この場合に、例えば、第4距離D4が、隣り合う凸状部6p同士の第2距離D2および隣り合う接続部8bc同士の第3距離D3の何れよりも短い形態が考えられる。このとき、例えば、保護層6における複数の空隙部6vdの密度がある程度高い。これにより、例えば、保護層6とこの保護層6に隣接している状態にある隣接層との間において生じる応力が、保護層6内の複数の空隙部6vdによって緩和されやすい。このため、PERC型の太陽電池素子10における光電変換効率が向上しやすい。
内部に複数の空隙部6vdを有する保護層6は、例えば、次のような処理によって形成され得る。
ここでは、まず、パッシベーション層4上に、第1絶縁性ペーストを塗布する。次に、パッシベーション層4上に塗布された第1絶縁性ペーストの層の上に、第2絶縁性ペーストを塗布する。次に、第1絶縁性ペーストの層の上に塗布された第2絶縁性ペーストの層の上に、第1絶縁性ペーストを塗布する。次に、第2絶縁性ペーストの層の上に塗布された第1絶縁性ペーストの層の上に、第2絶縁性ペーストを塗布する。そして、塗布後の第1絶縁性ペーストの層、第2絶縁性ペーストの層、第1絶縁性ペーストの層および第2絶縁性ペーストの層を、ホットプレートまたは乾燥炉などを用いて乾燥させる。このとき、乾燥の条件として、第2絶縁性ペーストに含まれている有機フィラーが熱分解される200℃から350℃程度の最高温度と、1分間から10分間程度の加熱時間と、が採用される。このとき、図11で示されるように、パッシベーション層4の上に、第1保護層領域6aと、第2保護層領域6bと、第3保護層領域6cと、第4保護層領域6dと、がこの記載の順に積層している状態で位置している保護層6が形成される。ここでは、第1保護層領域6aおよび第3保護層領域6cは、第1絶縁性ペーストの乾燥によって形成される。第2保護層領域6bおよび第4保護層領域6dは、第2絶縁性ペーストの乾燥によって形成される。そして、このとき、乾燥時における熱処理により、第2絶縁性ペーストが含有する有機フィラーが熱分解する。これにより、第2保護層領域6bにおいて有機フィラーの消失によって複数の空隙部6vdが形成され、第4保護層領域6dの表面において有機フィラーの消失によって複数の凹状部分6prが形成される。その結果、表面に複数の凹状部分6prを有し且つ内部に複数の空隙部6vdを有する保護層6が形成され得る。
ここで、例えば、図11の第2保護層領域6bを形成するための第2絶縁性ペーストの層の代わりに、第1絶縁性ペーストに有機バインダを含有させた層が塗布されてもよい。この場合には、例えば、第1絶縁性ペーストを乾燥させる際に、第1絶縁性ペーストの層に存在している有機バインダのうちの一部の有機バインダにおける揮発によって、複数の空隙部6vdが生じ得る。また、ここで、図11の第4保護層領域6dおよび図9の第2保護層領域6bの少なくとも一方を形成するための第2絶縁性ペーストの層の代わりに、第1絶縁性ペーストに有機バインダを含有させた層が塗布されてもよい。この場合には、例えば、第1絶縁性ペーストを乾燥させる際に、第1絶縁性ペーストの層に存在している有機バインダのうちの一部の有機バインダにおける揮発によって、複数の凹状部分6prが生じ得る。
<2−2.第3実施形態>
上記各実施形態において、例えば、図12で示されるように、第2集電電極8bの電極層8bl側から保護層6を平面透視した場合に、保護層6が、凹状部分6prの単位面積当たりの数が異なる、第1領域Ar1と第2領域Ar2とを有していてもよい。ここでは、第1領域Ar1は、太陽電池素子10の外周部OP1側に位置している。第2領域Ar2は、太陽電池素子10の中央部CP1側に位置している。単位面積は、例えば、100mmから400mm程度に設定される。そして、第1領域Ar1に存在している凹状部分6prの単位面積当たりの数が、第2領域Ar2に存在している凹状部分6prの単位面積当たりの数よりも多くてもよい。このような構成が採用されると、例えば、太陽電池素子10の裏面10bs側において、中央部CP1側の部分よりも外周部OP1側の部分において、保護層6と第2集電電極8bとの密着性が高くなる。
このような第1領域Ar1と第2領域Ar2とを有する保護層6は、例えば、パッシベーション層4上に塗布された第1絶縁性ペーストの層の上に第2絶縁性ペーストを塗布する際に次のような処理を行うことで、形成され得る。まず、第1領域Ar1に対応する領域に、第2絶縁性ペーストを塗布する。次に、既に塗布された第2絶縁性ペーストよりも有機フィラーの含有率が低い第2絶縁性ペーストを、第2領域Ar2に対応する領域に塗布する。また、例えば、このような処理は、パッシベーション層4上に塗布された第1絶縁性ペーストの層の上に第2絶縁性ペーストを塗布して、第1絶縁性ペーストおよび第2絶縁性ペーストを乾燥させた後に、さらに第2絶縁性ペーストの層の上に塗布された第1絶縁性ペーストの層の上に第2絶縁性ペーストを塗布する際に行ってもよい。これにより、複数の空隙部6vdを有するとともに、第1領域Ar1と第2領域Ar2とを有する保護層6が形成され得る。
ところで、例えば、図13および図14で示されるように、複数の太陽電池素子10は、配線材Tbで電気的に直列に接続され且つ平面的に並んだ状態で位置している太陽電池モジュール100の形態で使用され得る。この太陽電池モジュール100では、相互に対向している状態で位置している第1保護部材101と第2保護部材104との間隙において、封止材102で覆われている状態で複数の太陽電池素子10を含む部分(光電変換部ともいう)103が位置している。ここでは、太陽電池モジュール100は、主として光を受光する面(前面ともいう)100fsと、前面100fsとは逆側に位置している面(裏面ともいう)100bsと、を有する。そして、太陽電池モジュール100では、前面100fs側に透光性を有する板状の第2保護部材104が位置し、裏面100bs側に板状あるいはシート状の第1保護部材101が位置している。また、第1保護部材101と第2保護部材104との間隙に位置している封止材102は、裏面100bs側に位置している第1封止材102bと、前面100fs側に位置している第2封止材102uと、を含む。
この太陽電池モジュール100は、例えば、図15で示されるように、第1保護部材101と、第1シートSH1と、光電変換部103と、第2シートSH2と、第2保護部材104と、がこの記載の順に積層された積層体が、ラミネート処理で一体化されることで製造され得る。第1シートSH1は、第1封止材102bのもととなるシート状の素材であり、第2シートSH2は、第2封止材102uのもととなるシート状の素材である。ここで、積層体のラミネート処理が行われる際には、複数の太陽電池素子10同士の間において、封止材102の厚さが大きい。このため、複数の太陽電池素子10同士の間において封止材102の膨張および収縮が大きくなる。これにより、ラミネート処理が行われる際には、例えば、太陽電池素子10の裏面10bs側では、この裏面10bsの外周部OP1に沿った領域に大きな応力が加わり得る。これに対して、第3実施形態に係る太陽電池素子10の裏面10bs側では、中央部CP1側の第2領域Ar2よりも外周部OP1側の第1領域Ar1において、保護層6と第2集電電極8bとの密着性が高い。このため、例えば、積層体のラミネート処理が行われる際に、保護層6から第2集電電極8bが剥離しにくい。
<2−3.その他>
上記各実施形態および各種変形例において、例えば、保護層6の上に位置している第2出力取出電極8aがガラス成分を含む電極層であってもよい。この場合、保護層6の凹状部分6prの内部空間に、第2出力取出電極8aのガラス成分が位置していてもよい。これにより、保護層6に対する第2出力取出電極8aの密着性を向上させることで、太陽電池素子10における光電変換効率を向上させてもよい。
上記各実施形態および上記各種変形例において、保護層6の電極層8bl側の面を平面視した場合に、凸状部6pにおける単位面積の領域を凹状部分6prが占める割合は、5%から40%程度に限られない。この割合は、例えば、第2集電電極8bまたはこの第2集電電極8bを形成するための第1金属ペーストにおける、ガラス成分の含有量およびガラス成分の種類などに応じて、適宜設定されれば、保護層6に対する第2集電電極8bの密着性が向上しやすくなる。換言すれば、例えば、この割合は、5%から40%程度の範囲のうちの一部もしくは全部を含む異なる割合の範囲あるいは5%から40%程度とは異なる割合の範囲に適宜設定されてもよい。
上記各実施形態および上記各種変形例では、例えば、図16(a)で示されるように、パッシベーション層4が、第1面1bs上から第3面1ss上にかけて位置し、保護層6が、第1面1bsの外縁部Ed1上に位置しているパッシベーション層4上に位置していたが、これに限られない。例えば、図16(b)で示されるように、第1面1bsのうちの第1面1bsの外縁部Ed1に沿った領域(外縁領域ともいう)Ao1上には、パッシベーション層4および保護層6ならびに反射防止層5が位置していなくてもよい。換言すれば、第3面1ss上に位置しているパッシベーション層4および反射防止層5と、第1面1bs上に位置しているパッシベーション層4および保護層6と、が外周領域Ao1上で離れていてもよい。このとき、外縁領域Ao1は、第1面1bsのうちの外縁部Ed1から距離L1の範囲に位置している形態が考えられる。距離L1は、例えば、0.5mmから2mm程度とされ得る。このような構成が採用される場合には、例えば、図16(b)で示されるように、第1面1bsの外縁領域Ao1上に第2集電電極8bが位置していなくてもよいし、図16(c)で示されるように、第1面1bsの外縁領域Ao1の少なくとも一部の上に第2集電電極8bが位置していてもよい。また、ここで、例えば、図17(a)から図17(c)で示されるように、第3面1ss上から第1面1bsの外縁領域Ao1のうちの外縁部Ed1の側の部分の上にかけて、パッシベーション層4および反射防止膜5が位置していてもよい。このとき、外縁領域Ao1上において、パッシベーション層4および反射防止膜5が、外縁部Ed1から距離L2の範囲に位置している形態が考えられる。距離L2は、例えば、0.1mmから1mm程度とされ得る。このような構成が採用される場合には、例えば、図17(a)および図17(b)で示されるように、第3面1ss上から第1面1bsの外縁領域Ao1上にかけて、パッシベーション層4よりも反射防止層5の方が、第1面1bsの中央部に近い部分まで位置していてもよい。また、例えば、図17(c)で示されるように、外縁領域Ao1上のうちの外縁部Ed1から距離L2の部分まで、パッシベーション層4および反射防止膜5の両方が位置していてもよい。なお、図17(c)で示される例においても、図16(c)または図17(b)で示されるように、第1面1bsの外縁領域Ao1の少なくとも一部の上に第2集電電極8bが位置していてもよい。
上記各実施形態および各種変形例をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
1 半導体基板
1bs 第1面
1fs 第2面
1p 凸部
1r 凹部
1ss 第3面
2 第1半導体層
2bs 第3半導体層
3 第2半導体層
4 パッシベーション層
6 保護層
6ap 非凸状部
6p 凸状部
6pr 凹状部分
6vd 空隙部
8 裏面電極
8a 第2出力取出電極
8b 第2集電電極
8bc 接続部
8bl 電極層
10 太陽電池素子
10bs,100bs 裏面
10fs,100fs 前面
Ar1 第1領域
Ar2 第2領域
CH1 孔部
CP1 中央部
D1 第1距離
D2 第2距離
D3 第3距離
D4 第4距離
OP1 外周部
SC1 内部空間
d4 径

Claims (5)

  1. 半導体基板と、
    該半導体基板の第1面の上に位置しているパッシベーション層と、
    該パッシベーション層の上に位置している保護層と、
    該保護層の上に位置している、ガラス成分を含む電極層と、を備え、
    前記保護層は、前記電極層側の面に位置している複数の凸状部を有し、
    該複数の凸状部は、それぞれ前記電極層側において前記ガラス成分が内部空間に位置している凹状部分を有する、太陽電池素子。
  2. 請求項1に記載の太陽電池素子であって、
    前記パッシベーション層および前記保護層は、該パッシベーション層および該保護層を貫通している状態でそれぞれ位置している複数の孔部を有し、
    前記太陽電池素子は、
    前記複数の孔部においてそれぞれ前記電極層と前記半導体基板とを電気的に接続している状態で位置している複数の接続部と、
    複数の前記凹状部分と、を備え、
    該複数の凹状部分のうちの隣り合う凹状部分同士の第1距離は、前記複数の凸状部のうちの隣り合う凸状部同士の第2距離および前記複数の接続部のうちの隣り合う接続部同士の第3距離の何れよりも短い、太陽電池素子。
  3. 請求項1または請求項2に記載の太陽電池素子であって、
    前記保護層は、前記電極層側の面に位置し、前記複数の凸状部とは異なる非凸状部を有し、
    該非凸状部は、それぞれ前記電極層側において前記ガラス成分が内部空間に位置している凹状部分を有する、太陽電池素子。
  4. 請求項1から請求項3の何れか1つの請求項に記載の太陽電池素子であって、
    前記保護層は、前記電極層側から前記保護層および前記半導体基板を平面透視した場合に、前記太陽電池素子の外周部側に位置している第1領域と、前記太陽電池素子の中央部側に位置している第2領域と、を有しており、
    前記第1領域に存在している前記凹状部分の単位面積当たりの数が、前記第2領域に存在している前記凹状部分の前記単位面積当たりの数よりも多い、太陽電池素子。
  5. 請求項1から請求項4の何れか1つの請求項に記載の太陽電池素子であって、
    前記保護層は、該保護層の内部に位置している複数の空隙部を有する、太陽電池素子。
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