JP2012216732A - 薄膜太陽電池基板の製造方法および薄膜太陽電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光電変換効率、信頼性および生産性に優れた薄膜太陽電池を実現可能な薄膜太陽電池基板の製造方法および薄膜太陽電池の製造方法を得る。
【解決手段】導電性材料からなり表面に凹凸形状を有する電極層を基板上に備える薄膜太陽電池基板の製造方法であって、前記基板上に導電性材料膜を成膜して前記電極層を形成する第1工程と、前記電極層上に複数の粒子を分散配置する第2工程と、前記粒子をマスクとして前記電極層の表面と前記粒子とを等方的にエッチングすることにより前記電極層の表面に第1凹凸部を形成する第3工程と、前記第1凹凸部における凹部のエッチングレートが前記第1凹凸部における凸部のエッチングレートよりも低くなる条件で前記電極層の表面をウエットエッチングすることにより、前記第1凹凸部よりも小さい第2凹凸部を前記第1凹凸部における凸部の表面に形成する第4工程と、を含む。
【選択図】図1−2
【解決手段】導電性材料からなり表面に凹凸形状を有する電極層を基板上に備える薄膜太陽電池基板の製造方法であって、前記基板上に導電性材料膜を成膜して前記電極層を形成する第1工程と、前記電極層上に複数の粒子を分散配置する第2工程と、前記粒子をマスクとして前記電極層の表面と前記粒子とを等方的にエッチングすることにより前記電極層の表面に第1凹凸部を形成する第3工程と、前記第1凹凸部における凹部のエッチングレートが前記第1凹凸部における凸部のエッチングレートよりも低くなる条件で前記電極層の表面をウエットエッチングすることにより、前記第1凹凸部よりも小さい第2凹凸部を前記第1凹凸部における凸部の表面に形成する第4工程と、を含む。
【選択図】図1−2
Description
本発明は、薄膜太陽電池基板の製造方法および薄膜太陽電池の製造方法に関する。
現在、透光性絶縁基板側から光を入射する薄膜太陽電池では、光閉じ込め技術として、透光性絶縁基板上に形成した透明導電膜表面に凹凸構造を形成する方法が用いられている。この凹凸構造を形成する光閉じこめ技術は、光反射率の低減、光散乱効果により、薄膜太陽電池の光変換効率が向上することが一般的に知られている。より詳細に説明すると、透光性絶縁基板側から入射してきた光は、凹凸構造を有する透明導電膜と光電変換層との界面で散乱された後に光電変換層に入射するため、光電変換層に概ね斜めに入射する。そして、光電変換層に斜めに光が入射することにより光の実質的な光路が延びて光の吸収が増大するため、薄膜太陽電池の光電変換特性が向上して出力電流が増加する。
従来、凹凸構造を形成する透明導電膜としては、酸化錫(SnO2)膜がよく知られている。一般的に、SnO2膜に形成する凹凸構造は、熱CVD法により数10〜数100nm径の結晶粒を膜表面に成長させることにより形成される。しかし、このSnO2膜の表面に良好な光閉じこめ効果を有する凹凸構造を形成するためには、500℃〜600℃の高温プロセスが必要であり、また1μm程度の膜厚を要することから、製造コストが増大する要因の1つとなっている。このため近年は、プラズマ耐性に優れ、資源の豊富さという観点から、SnO2に変わる材料として酸化亜鉛(ZnO)が普及しつつある。
しかし、ZnO膜の場合は、CVD法を用いて表面に良好な光閉じこめ効果を有する凹凸構造を形成するためには、2μm程度の膜厚を要するという問題があった。そこで、ZnO膜を低温形成で薄膜化した場合であっても良好な光閉じこめ効果を有する凹凸構造の形成方法として、ガラス基板上にスパッタリング法により透明導電膜を形成し、酸によりエッチングすることで表面に凹凸構造を形成する技術が報告されている。この方法により、太陽電池装置のコスト低減が期待されている。
また、薄膜太陽電池用の基板に凹凸をつけるために、透明電極層自体に凹凸を形成するのではなく、ガラス基体の表面に凹凸のある下地層を設け、その上に透明電極層を形成する手法が、特許文献1や特許文献2に開示されている。例えば特許文献1の方法によれば、ガラス基体の上に、平均粒径が0.1〜1.0μmの絶縁性微粒子とバインダーとからなる凹凸を有する下地層を形成し、その上に透明電極層を堆積することで、絶縁性微粒子により微細な凹凸がガラス基板上に形成され、透明電極層自体には特に凹凸を形成する必要がない。
しかしながら、上述した特許文献1の技術にはいつかの問題が残されている。すわなち、特許文献1、2では、絶縁性微粒子の分散が不均一になり、例えば微粒子が付いてない領域が発生することで光の吸収量が減少し、出力電流の低下を招き、基板全体としての薄膜光電変換効率が低下するという問題があった。
これらの方法でヘイズ率を高く、例えば20%以上にしようとすると、下地層で凹凸を大きくする必要がある。その結果、絶縁性微粒子の粒径を大きくする必要が生じるが、大きな絶縁性微粒子を用いた場合には、垂直に近い角度を有する面が存在し、特に結晶の配向性が重要視される微結晶シリコン膜の段差被覆性(カバレッジ)や結晶の配向性が悪化し、基板全体としての平均の光電変換効率が低下し、薄膜太陽電池そのものの信頼性および歩留まりが低下する可能性がある、という問題が生じることが判った。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、光電変換効率、信頼性および生産性に優れた薄膜太陽電池を実現可能な薄膜太陽電池基板の製造方法および薄膜太陽電池の製造方法を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる薄膜太陽電池基板の製造方法は、導電性材料からなり表面に凹凸形状を有する電極層を基板上に備える薄膜太陽電池基板の製造方法であって、前記基板上に導電性材料膜を成膜して前記電極層を形成する第1工程と、前記電極層上に複数の粒子を分散配置する第2工程と、前記粒子をマスクとして前記電極層の表面と前記粒子とを等方的にエッチングすることにより前記電極層の表面に第1凹凸部を形成する第3工程と、前記第1凹凸部における凹部のエッチングレートが前記第1凹凸部における凸部のエッチングレートよりも低くなる条件で前記電極層の表面をウエットエッチングすることにより、前記第1凹凸部よりも小さい第2凹凸部を前記第1凹凸部における凸部の表面に形成する第4工程と、を含む。
本発明によれば、透明電極層の表面の全面に凹凸を安定して形成することができるため、光電変換効率、信頼性および生産性に優れた薄膜太陽電池を得ることができる、という効果を奏する。
以下に、本発明にかかる太陽電池基板の製造方法および薄膜太陽電池の製造方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す図面においては、理解の容易のため、各部材の縮尺が実際とは異なる場合がある。各図面間においても同様である。
実施の形態
図1−1は、本発明の実施の形態にかかる薄膜太陽電池である薄膜太陽電池モジュール(以下、モジュールと呼ぶ)100の概略構成を示す平面図である。図1−2は、モジュール100を構成する薄膜太陽電池セル(以下、セルと呼ぶ場合がある)10の短手向における断面構造を説明するための図であり、図1−1の線分A−A’方向における要部断面図である。
図1−1は、本発明の実施の形態にかかる薄膜太陽電池である薄膜太陽電池モジュール(以下、モジュールと呼ぶ)100の概略構成を示す平面図である。図1−2は、モジュール100を構成する薄膜太陽電池セル(以下、セルと呼ぶ場合がある)10の短手向における断面構造を説明するための図であり、図1−1の線分A−A’方向における要部断面図である。
図1−1および図1−2に示すように、実施の形態1にかかるモジュール100は、透光性絶縁基板1上に形成された短冊状(矩形状)のセル10を複数備え、これらのセル10が電気的に直列に接続された構造を有する。セル10は、図1−2に示すように透光性絶縁基板1、透光性絶縁基板1上に形成されて第1の電極層となる透明電極層2、透明電極層2上に形成される光電変換層4、光電変換層4上に形成され第2の電極層となる裏面電極層5が順次積層された構造を有する。このように構成された本実施の形態にかかるモジュール100はスーパーストレート型の太陽電池である。
また、透明電極層2の表面には、テクスチャー構造としてホールおよび高低差の異なる大きな凹凸A1と微細な凹凸C1からなる凹凸形状が形成されている。すなわち、透明電極層2の表面には、部分的に高低差の異なる凹凸形状(テクスチャー構造)が形成されている。大きな凹凸A1の大きさは1〜2μm程度である。ここで、大きな凹凸A1の大きさは、原子間力顕微鏡により10μm角の領域にわたる表面凹凸形状の測定により、表面には周期的に形成された突起凸が観察できる。凹凸A1の大きさは、表面形状波形から凸の周期の平均から求めた値により定義される。
つぎに、上記のように構成された実施の形態にかかるモジュール100の製造方法について図2−1〜図2−10を参照して説明する。図2−1〜図2−10は、本実施の形態にかかるモジュール100の製造工程の一例を説明するための断面図である。
まず、透光性絶縁基板1を用意する。ここでは、透光性絶縁基板1として無アルカリガラス基板を用いて以下説明する。また、透光性絶縁基板1として安価な青板ガラス基板を用いてもよいが、ナトリウムなどのアルカリ金属が含まれているガラス基板を用いる場合は、ガラス基板からのアルカリ金属成分の拡散を防止するための拡散防止膜を形成する。拡散防止層としては、PCVD法やスパッタリング法により、SiO2膜を100nm以下程度形成するのがよい。上記拡散防止膜は、反射防止膜としての機能を有する構造として、必要に応じて設けてもよい。また、透光性絶縁基板1と透明電極層2との間に形成する拡散防止膜は酸化膜に限られるものではない。
次に、透光性絶縁基板1上に第1の電極層となる透明電極層2として、アルミニウム(Al)を数wt%ドーパントとして含む膜厚1μm程度の酸化亜鉛(ZnO)をスパッタリング法で形成する(図2−1)。本実施の形態では透明電極層2としてAlドーパントした酸化亜鉛(ZnO)膜を用いるが、透明電極層2はこれに限定されることなく、ドーパントとしてアルミニウム、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ホウ素(B)、イットリウム(Y)、シリコン(Si)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)から選択した少なくとも1種類以上の元素を用いた酸化亜鉛(ZnO)膜またはこれらを積層して形成した透明導電膜であってもよく、光透過性と導電性を有している透明導電膜であればよい。また、酸化亜鉛(ZnO)膜以外に、酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)の何れかを主成分とする材料からなる膜を使用しても良い。また、上述した例では、スパッタ法により透明電極層2を形成しているが、真空蒸着法,イオンプレーティング法などの物理的方法や、スプレー法,ディップ法,CVD法などの化学的方法を用いることができる。
次に、たとえば酸化亜鉛(ZnO)からなる平均粒径0.5μm程度の微粒子3aを水に分散させて透明電極層2上に均一に配置する(図2−2)。なお、この微粒子3aは、後述する第1のエッチング工程でエッチング除去されればその他の金属からなる微粒子であってもよく、粒子サイズも一般的に用いられる10μm以下のものを用いることができる。また、微粒子3aを配置する方法としては、微粒子3aを分散させた水を霧状に噴霧する方法や、微粒子3aを溶剤に混入させて塗布する方法などを用いることができるが、これら以外の方法を用いて透明電極層2上に微粒子3aを配置させてもよい。この際、透明電極層2と微粒子3aとの密着性が弱い場合には、加熱処理を行うとよい。
次に、第1のエッチング工程を実施する。第1のエッチング工程では、第1のエッチングとして、透明電極層2上に配置された酸化亜鉛(ZnO)の微粒子3aをマスクにして、透明電極層2の表面を等方的にエッチング(等方性エッチング)する。この第1のエッチング工程において、透明電極層2と微粒子3aとは同時にエッチングされ、微粒子3aは完全にエッチングされて無くなり、透明電極層2の表面には、大きな凹凸A1(第1凹凸部)が形成される(図2−3)。
この第1のエッチング工程としては、酸性またはアルカリ性のエッチング液等で処理する化学的方法、透明電極層2の表面にイオンやプラズマ等を照射する物理的方法等の種々の方法が挙げられる。なお、上記方法は、単独で行ってもよいし、2種以上を組み合わせて行ってもよい。エッチング液としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、酢酸および蟻酸のいずれか1つ以上を含む薬液を用いることができる。
本実施の形態では、第1のエッチング工程として、酸によるウエットエッチング法を採用する。例えば透明電極層2上に微粒子3aを分散配置した透光性絶縁基板1を1wt%以下の塩酸(HCl)水溶液中に30秒間浸し、その後、透光性絶縁基板1を純水洗浄し、乾燥する。この第1のエッチング工程により、透明電極層2には膜厚と同等以上の直径を有する大きいサイズの凹部が透明電極層2内に形成される。このため、透明電極層2では、このサイズと同程度の波長の光が通過する際に、散乱や回折を生じる。その結果、太陽光うちの比較的長い波長0.5μm〜1.5μmの光の光電変換効率の向上効果が得られる。
しかしながら、透明電極層2上に微粒子3aを分散させる場合は、分散条件を最適化しても微粒子3aの間隔を均一に配置することは難しく、粒子間隔が不均一な領域A2が発生することがある(図2−4)。
透明電極層2のエッチングの面内均一性は、透明電極層2上に分散されてエッチングマスクとなる微粒子3aの分散均一性に依存する。このため、粒子間隔が不均一な領域A2が発生した場合は、特に微粒子3aの分散密度が高い部分のエッチング量が低下し、大きな凹凸A1が形成されていないエッチング不足領域A3が形成されることがある(図2−5)。
このような大きな凹凸A1が形成されていない透明電極層2の表面に(エッチング不足領域A3)にシリコンを材料とする光電変換層を積層した場合は、透明電極層2と光電変換層との密着力が低下することで光電変換層の膜剥がれの発生や界面における反射光ロスが増加し、太陽電池の特性、信頼性および歩留まりを低下させる。このことから、透明電極層2の表面には、全面に凹凸が形成されていることが好ましく、本発明では後述する第2のエッチング工程を実施することで、透明電極層2の全面に凹凸を形成し、太陽電池の特性、信頼性および歩留まりを向上させる。
第2のエッチング工程としては、第1のエッチング工程と同様に酸によるウエットエッチング法を採用する。エッチング液としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、酢酸および蟻酸のいずれか1つ以上を含む薬液を用いることができる。しかし、第1のエッチング工程後に第2のエッチング工程を連続的に実施した場合は、図3に示すように大きな凹凸A1がエッチングされ、急峻な形状の凹部A4が形成される。この急峻な形状の凹部A4部分は、シリコン層の被覆性が悪く、段差により短絡を引き起こすことがある。
そこで、本発明では、エッチング不足領域A3に凹凸を形成する方法として、第2のエッチング工程において大きな凹凸A1のエッチングレートを低下させるエッチング阻害層3bを透明電極層2の表面に形成する(図2−6)。このエッチング阻害層3bの材料としては、アルコール、界面活性剤、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等を主成分とする有機系液体を用いることができる。
このような液体のエッチング阻害層3bは、以下で説明する第2のエッチング工程でエッチング液中に拡散するが、その流動性によって第1のエッチング工程で形成された大きな凹凸A1の凹部に厚く溜まる。また、エッチング阻害層3bが固体からなる場合に比べて、不要となった際の除去が容易である。本実施の形態では、スプレーを用いて、霧状に噴霧する方法により液体のエッチング阻害層3bを透明電極層2の表面に形成する。
そして、第2のエッチング工程では、エッチング阻害層3bを形成した透光性絶縁基板1を第1のエッチング工程と同様に1wt%以下の塩酸(HCl)水溶液中に30秒間浸し、その後、透光性絶縁基板1を純水洗浄し、乾燥する。エッチング阻害層3bの層厚が厚い大きな凹凸A1の凹部ではエッチング液がエッチング阻害層3bと入れ替わることで透明電極層2の表面のエッチングが行われる。このため、大きな凹凸A1の凹部では実際にエッチングが開始する時間が大きな凹凸A1の凸部やエッチング不足領域A3に比べて遅くなる。そして、エッチングの時間をエッチング液がエッチング阻害層3bと入れ替わる程度の時間に調整する。これにより、第1のエッチング工程で形成された大きな凹凸A1のエッチングはほとんど進行しない。一方、このエッチング工程により、第1のエッチング工程で形成された、エッチングが不十分なエッチング不足領域A3の表面には微細な凹凸C1(第2凹凸部)が形成される(図2−7)。微細な凹凸C1の大きさは0.3〜1μm程度である。ここで、微細な凹凸C1は、原子間力顕微鏡により10μm角の領域にわたる表面凹凸形状の測定により、表面には周期的に形成された突起凸が観察できる。凹凸C1の大きさは、表面形状波形から凸の周期の平均から求めた値により定義される。
この第2のエッチング工程でのエッチングレートは、エッチング阻害層3bの層厚に依存する。エッチング阻害層3bの層厚の厚い大きな凹凸A1の凹部では、エッチングレートが大きく低下することで、エッチング不足領域A3とのエッチング選択性が得られる。このため、急峻な形状の凹部の形成が抑制され、積層形成されるシリコン層(光電変換層4)の被覆性向上効果が得られる。また、エッチング不足領域A3に微細な凹凸C1が形成されることで透明電極層2とシリコン層(光電変換層4)との密着力が向上し、膜剥がれの発生抑制や界面における反射光ロスの低減が図れ、太陽電池の特性、歩留まりおよび信頼性が向上する。
次に、透明電極層2の一部を透光性絶縁基板1の短手方向と略平行な方向のストライプ状に切断・除去して、透明電極層2を短冊状にパターニングし、複数の透明電極層2に分離する。透明電極層2のパターニングは、レーザスクライブ法により、透光性絶縁基板1の短手方向と略平行な方向に延在して透光性絶縁基板1に達するストライプ状の第1の溝B1を形成することで行う(図2−8)。なお、このように透光性絶縁基板1上に基板面内で互いに分離された複数の透明電極層2を得るには、写真製版などで形成したレジストマスクを用いてエッチングする方法や、メタルマスクを用いた蒸着法などの方法でも可能である。
次に、透明電極層2上に例えばPIN接合を有する光電変換層4をプラズマCVD法により形成する。本実施の形態では、光電変換層4として、透明電極層2側からp型の微結晶シリコン膜(μc−Si膜)、真性(i型)の微結晶シリコン膜(μc−Si膜)、n型の微結晶シリコン膜(μc−Si膜)を順次積層形成する(図2−9)。
次に、このようにして形成された光電変換層4に、透明電極層2と同様にレーザスクライブによってパターニングを施す。すなわち、光電変換層4の一部を透光性絶縁基板1の短手方向と略平行な方向のストライプ状に切断・除去して、光電変換層4を短冊状にパターニングし、分離する。光電変換層4のパターニングは、レーザスクライブ法により、第1の溝B1と異なる箇所に、透光性絶縁基板1の短手方向と略平行な方向に延在して透明電極層2に達するストライプ状の第2の溝B2を形成することで行う。第2の溝B2の形成後、第2の溝B2内に付着している飛散物を高圧水洗浄、メガソニック洗浄、あるいはブラシ洗浄により除去する。
次に、光電変換層4上および第2の溝B2内に、第2の電極層となる裏面電極層5をスパッタリング法により形成する。本実施の形態では、膜厚200nmの純銀または銀合金(Ag Alloy)膜を形成する。また、裏面電極層5の成膜方法として、CVD法やスプレー法などの他の成膜方法を用いてもよい。なお、光電変換層4のシリコンへの金属拡散を防止するために、裏面電極層5と光電変換層4との間に、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)等を主成分とする材料からなる膜の酸化物を設け留ことが好ましい。
裏面電極層5の形成後、レーザによって半導体層(光電変換層4)とともに金属層を局所的に吹き飛ばすことによって複数の単位素子(発電領域)に対応させて分離する。すなわち、裏面電極層5および光電変換層4の一部を透光性絶縁基板1の短手方向と略平行な方向のストライプ状に切断・除去して第1の溝Bおよび第2の溝B2とは異なる箇所に透明電極層2に達するストライプ状の第3の溝B3を形成し、短冊状にパターニングして複数のセル10に分離する(図2−10)。
なお、反射率の高い裏面電極層5にレーザを直接吸収させるのは困難なので、光電変換層4にレーザ光エネルギーを吸収させて、半導体層とともに裏面電極層5を局所的に吹き飛ばすことによって複数の単位素子(発電領域)、すなわち複数のセル10に対応させて分離される。
以上により、図1−1、図1−2に示すようなセル10を有するモジュール100が完成する。なお、第1のエッチング工程において図2−3に示すように透明電極層2の表面の全面に大きな凹凸A1が均一に形成できている場合は、図4に示すように大きな凹凸A1の凸部の上部に微細な凹凸C1が形成される。
上記のようにして作製した微結晶シリコン薄膜太陽電池を実施例の薄膜太陽電池とする。また、比較例1として、透光性絶縁基板1に透明電極層2を形成した後、従来のウエットエッチングにより該透明電極層2の表面に凹凸形状を形成したこと以外、上記と同様にして微結晶シリコン薄膜太陽電池を作製した。この微結晶シリコン薄膜太陽電池を比較例1の薄膜太陽電池とする。
そして、これらの微結晶シリコン薄膜太陽電池に対して、ソーラーシミュレーターを用いてそれぞれAM(エア・マス)=1.5、100mW/cm2の光を透光性絶縁基板1側から入射し、25℃で短絡電流(mA/cm2)を測定して、太陽電池としての特性を評価した。その結果、比較例1の微結晶シリコン薄膜太陽電池の短絡電流が21.5mA/cm2であるのに対して、実施例の微結晶シリコン薄膜太陽電池の短絡電流は24.5mA/cm2であり、実施例の微結晶シリコン薄膜太陽電池は、比較例1の微結晶シリコン薄膜太陽電池に比べて短絡電流(mA/cm2)が略10%以上も改善されていることが認められる。
すなわち、透光性絶縁基板1側から入射してきた光は、大きな凹凸A1および微細な凹凸C1を有する透明電極層2と光電変換層4との界面で散乱されて光電変換層4に入射するため、光電変換層4に概ね斜めに入射する。そして、光電変換層4に斜めに光が入射することにより、光の実質的な光路が延びて光の吸収が増大するため、薄膜太陽電池の光電変換特性が向上して出力電流が増加する。なお、上記においては、光電変換層4に結晶質シリコンが使用されていたが、非晶質シリコン、非晶質シリコンゲルマニウム、非晶質シリコンカーバイド等の非晶質シリコン系の半導体と、これらの非晶質シリコンと結晶質シリコンを積層させたタンデム型の薄膜太陽電池とすることもできる。
また、比較例2として、透光性絶縁基板1に透明電極層2を形成した後、第1のエッチング工程のみを実施して透明電極層2の表面に凹凸形状を形成したこと以外、実施例と同様にして微結晶シリコン薄膜太陽電池を作製した。この微結晶シリコン薄膜太陽電池を比較例2の薄膜太陽電池とする。
図5は、実施例、比較例1および比較例2の微結晶シリコン薄膜太陽電池における透明電極層2の形成後のヘイズ率(拡散透過率/全光透過率)×100(%)を示した特性図である。ここでヘイズ率とは、光の拡散する度合いを表す数値である。図5よりわかるように、実施例の微結晶シリコン薄膜太陽電池の透明電極層2は、波長が長くなってもヘイズ率の低下が少なく、光の散乱効果の減少が少ない。一方、図5よりわかるように、比較例1の微結晶シリコン薄膜太陽電池の透明電極層では、波長が長くなるにつれてヘイズ率が大きく減少し、光の散乱効果の減少が大きい。また、比較例2の微結晶シリコン薄膜太陽電池の透明電極層では、波長が長くなるにつれてヘイズ率が減少し、光の散乱効果の減少が大きい。
実施例の微結晶シリコン薄膜太陽電池では、凹凸サイズと同程度の波長の光が通過する際に、散乱や回折を生じる効果が大きくなったものと思われる。すなわち、実施例の微結晶シリコン薄膜太陽電池では、比較例1では発電に寄与していない太陽光を使用して発電を行うことが可能となり、光電変換効率の向上が図られた薄膜太陽電池が実現されていると言える。
また、実施例の微結晶シリコン薄膜太陽電池では、透明電極層2の表面の全面に凹凸を形成することができるため、比較例2よりも良好なヘイズ率が得られ、光の有効活用が実現されていると考えられる。
上述した実施の形態によれば、透明電極層2の表面の全面に凹凸を安定して形成することができるため、良好な光閉じこめ効果が得られる。また、透明電極層2の表面の凹凸に起因した光電変換層4の結晶質半導体膜(微結晶シリコン膜)の段差被覆性(カバレッジ)や結晶の配向性の劣化を防止して、光電変換効率の低下を防止することができる。これにより、良好な光閉じこめ効果を有するとともに光散乱用のテクスチャー構造に起因した信頼性、歩留まり、光電変換特性の低下が防止され、信頼性、生産性および光電変換特性に優れた長期使用の可能な薄膜太陽電池を作製することができる。
以上のように、本発明にかかる薄膜太陽電池基板の製造方法は、光電変換効率、信頼性および生産性に優れた薄膜太陽電池の実現に有用である。
1 透光性絶縁基板
2 透明電極層
3a 微粒子
3b エッチング阻害層
4 光電変換層
5 裏面電極層
10 薄膜太陽電池セル(セル)
100 薄膜太陽電池モジュール(モジュール)
A1 大きな凹凸
A2 粒子間隔が不均一な領域
A3 エッチング不足領域
A4 急峻な形状の凹部
B1 第1の溝
B2 第2の溝
B3 第3の溝
C1 微細な凹凸
2 透明電極層
3a 微粒子
3b エッチング阻害層
4 光電変換層
5 裏面電極層
10 薄膜太陽電池セル(セル)
100 薄膜太陽電池モジュール(モジュール)
A1 大きな凹凸
A2 粒子間隔が不均一な領域
A3 エッチング不足領域
A4 急峻な形状の凹部
B1 第1の溝
B2 第2の溝
B3 第3の溝
C1 微細な凹凸
Claims (5)
- 導電性材料からなり表面に凹凸形状を有する電極層を基板上に備える薄膜太陽電池基板の製造方法であって、
前記基板上に導電性材料膜を成膜して前記電極層を形成する第1工程と、
前記電極層上に複数の粒子を分散配置する第2工程と、
前記粒子をマスクとして前記電極層の表面と前記粒子とを等方的にエッチングすることにより前記電極層の表面に第1凹凸部を形成する第3工程と、
前記第1凹凸部における凹部のエッチングレートが前記第1凹凸部における凸部のエッチングレートよりも低くなる条件で前記電極層の表面をウエットエッチングすることにより、前記第1凹凸部よりも小さい第2凹凸部を前記第1凹凸部における凸部の表面に形成する第4工程と、
を含むことを特徴とする薄膜太陽電池基板の製造方法。 - 前記第4工程は、
前記電極層上に前記第1凹凸部における凹部のエッチングレートを前記第1凹凸部における凸部のエッチングレートよりも低下させるエッチング阻害層を形成する工程と、
前記エッチング阻害層が形成された状態で前記電極層の表面をウエットエッチングする工程と、
を含むこと特徴とする請求項1に記載の薄膜太陽電池基板の製造方法。 - 前記導電性材料膜が酸化亜鉛を主体とする膜であり、
前記エッチング阻害層が、アルコール、界面活性剤またはヘキサメチルジシラザンを主成分とする有機系液体からなり、
前記第3工程および前記第4工程では、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、酢酸および蟻酸のいずれか1つ以上を含むエッチング液として用いてウエットエッチングを行うこと、
を含むこと特徴とする請求項2に記載の薄膜太陽電池基板の製造方法。 - 請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法で前記薄膜太陽電池基板を形成する工程と、
前記薄膜太陽電池基板の前記電極層上に光電変換を行う結晶質半導体層を含む光電変換ユニットを形成する工程と、
前記光電変換ユニット上に前記電極層と対を成す他の電極層を形成する工程と、
を含むこと、
を特徴とする薄膜太陽電池の製造方法。 - 前記結晶質半導体層が結晶シリコン系薄膜からなること、
を特徴とする請求項4に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
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