JP2004276442A - 成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】表層剥離や粉落ちの問題がない、リサイクル性と帯電防止性に優れたオレフィン系重合体からなる中空構造を有する成形体を提供する。
【解決手段】表面の少なくとも一部に帯電防止層(C)を有し、該帯電防止層(C)が中空構造を有する層(E)に積層されてなる成形体であって、帯電防止層(C)がオレフィン系重合体(A)100重量部および高分子型帯電防止剤(B)1〜200重量部を含有する厚さd(μm)の層であり、中空構造である層(E)が、オレフィン系重合体(D)からなる空隙率φ(体積%)以上である厚さL(μm)の層であって、d、Lおよびφが以下の式1〜3を満たすことを特徴とする成形体。
5≦d≦100 (式1)
1000≦L (式2)
0.1≦(100d/(L(1−0.01φ)))≦30 (式3)
【選択図】 図2
【解決手段】表面の少なくとも一部に帯電防止層(C)を有し、該帯電防止層(C)が中空構造を有する層(E)に積層されてなる成形体であって、帯電防止層(C)がオレフィン系重合体(A)100重量部および高分子型帯電防止剤(B)1〜200重量部を含有する厚さd(μm)の層であり、中空構造である層(E)が、オレフィン系重合体(D)からなる空隙率φ(体積%)以上である厚さL(μm)の層であって、d、Lおよびφが以下の式1〜3を満たすことを特徴とする成形体。
5≦d≦100 (式1)
1000≦L (式2)
0.1≦(100d/(L(1−0.01φ)))≦30 (式3)
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電防止性能を有し、リサイクル性に優れた中空構造を有する成形体に関する。さらに、成形体がシート状物の場合、真空・圧空成形、プレス成形などの2次成形を経た2次成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
オレフィン系重合体からなる成形体は、安価で成形が容易であり、さらにリサイクル性にも優れることから、非常に幅広い分野で使用されている。またオレフィン系重合体からなる、発泡体や段ボール形状のような中空構造を有する成形体は、軽量でクッション感に優れ、重量あたりの剛性が高いことから、看板や容器等に利用されている。
しかしながらオレフィン系重合体は帯電性が高いため、オレフィン系重合体からなる成形体および中空構造を有する成形体は、帯電防止性能を要求される用途では使用することができなかった。このためオレフィン系重合体用の帯電防止剤が数多く開発されてきた。このような帯電防止剤としては、ポリエーテルエステルアミド系の高分子型帯電防止剤が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平1−163234号公報
【0004】
しかしながらこのような帯電防止剤をオレフィン系重合体からなる中空構造を有する成形体に適用した場合には、帯電防止剤が中空の壁面にもブリードするために、中空構造を有さない成形体の場合と比較すると成形体表面における帯電防止剤濃度が低下し、帯電防止性能に劣るという問題があった。帯電防止剤の添加量を増加させれば帯電防止性能を向上させることはできるが、リサイクル性が大幅に低下する、または2次成形性に劣るという問題があった。
リサイクル性を改善する目的で、中空構造を有する成形体に帯電防止剤を含有させた層を積層した積層体がある。しかしながらこのような積層体は、帯電防止性は発現するものの、該帯電防止剤含有層が中空構造を有する成形体から剥離したり(表層剥離)、帯電防止剤含有層表面が摩擦によりぽろぽろと脱落する(粉落ち)といった問題があった。さらに、このような成形体がシートの場合、真空・圧空成形やプレス成形などの2次成形が必要とされる場合が多く、上述の表層剥離や粉落ちはこの2次成形時に更に悪化する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、表層剥離や粉落ちの問題がない、リサイクル性と帯電防止性に優れたオレフィン系重合体からなる中空構造を有する成形体を提供すること、さらには、その成形体のなかでも上述の2次成形性に優れたシートおよび該シート状物をプレス成形およびまたは真空・圧空成形する2次成形体の製造方法、該製造方法によって得られた2次成形体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、表面の少なくとも一部に帯電防止層(C)を有し、該帯電防止層(C)が中空構造を有する層(E)に積層されてなる成形体であって、帯電防止層(C)がオレフィン系重合体(A)100重量部および高分子型帯電防止剤(B)1〜200重量部を含有する厚さd(μm)の層であり、中空構造である層(E)が、オレフィン系重合体(D)からなる空隙率φ(体積%)以上である厚さL(μm)の層であって、d、Lおよびφが以下の式1〜3を満たす成形体である。
5≦d≦100 (式1)
1000≦L (式2)
0.1≦(100d/(L(1−0.01φ)))≦30 (式3)
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の帯電防止層(C)を構成するオレフィン系重合体(A)としては、公知のオレフィン系重合体を使用することができ、例えば、プロピレンホモポリマー、プロピレンと他のα−オレフィン(例えば、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等)の一種類以上とのランダム共重合又はブロック共重合体などのプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、中低圧法低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体(エチレンと他のα−オレフィン例えば、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等の一種類以上とのランダム共重合又はブロック共重合体)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体などのエチレンと不飽和化合物との共重合体等のエチレン系樹脂、変性ポリオレフィン等が挙げられる。なかでもプロピレン系樹脂が好ましく、プロピレンホモポリマー、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体のいずれかであることがより好ましい。またこれらのプロピレン系樹脂は単独で用いられても複数で用いられてもよい。
プロピレン系樹脂は、メルトフローレート(MFR)が0.5〜150g/10分、さらには1〜50g/10分、特に4〜20g/10分であることが好ましい。メルトフローレートは、JIS−K6758(温度230℃、荷重2.16kgf)に準じて測定することができる。メルトフローレートが0.5未満の場合には、薄く均一な帯電防止層を形成することが困難となり、成形体の外観不良や帯電防止性が低下する傾向があり、150を越える場合には、最表層の粉落ちが生じる傾向がある。
【0008】
本発明の帯電防止層(C)は、変性ポリオレフィンを含有することが好ましい。変性ポリオレフィンを含有することによって、表層剥離や粉落ちがより発生しにくくなる。
使用する変性ポリオレフィンは、重量平均分子量が1000〜50000、好ましくは20000〜40000であり、酸価または水酸基価が5〜150、好ましくは30〜80であることが好ましい。このような変性低分子量ポリプロピレンは、例えば特開平3−62804号公報記載の方法で製造することができる。使用する変性ポリオレフィンは1種でもよく、複数を併用してもよい。
帯電防止層(C)における変性ポリオレフィンの含有量は、オレフィン系重合体(A)中1〜30重量%であることが好ましく、さらに好ましくは5〜20重量%である。
【0009】
本発明で用いられる高分子型帯電防止剤(B)とは、少なくとも2以上の繰り返し単位を有する帯電防止剤であり、例として特開平1−163234号公報に示されるようなポリエーテルエステルアミド系化合物や特開2001−278985号公報に示されるような特定のブロック共重合型帯電防止剤等があげられる。とりわけ特開2001−278985号公報の化学式1〜3で表されるような、オレフィン系モノマーが重合されてなるオレフィン系ブロックと、親水性モノマーが重合されてなる親水系ブロックとが繰り返し交互に結合した構造を有する帯電防止剤が好ましく用いられる。また高分子型帯電防止剤は、融点が120〜160℃であることが好ましい。融点が120℃未満の場合、樹脂層(C)が剥離しやすくなる傾向があり、160℃を越えると帯電防止性が低下する傾向がある。
【0010】
本発明の帯電防止層(C)は、オレフィン系重合体(A)100重量部に対し、高分子型帯電防止剤(B)の配合量は1〜200重量部、好ましくは5〜100重量部、特に10〜80重量部、である。後述する2次成形性の面からさらに好ましくは10〜40重量部である。高分子型帯電防止剤(B)の量が上記範囲未満では、帯電防止性能を発現することができず、200重量部を越えると表面剥離や粉落ちが発生しやすい。
【0011】
帯電防止層(C)中には、本発明の効果を損なわない範囲で種々の目的に応じて、各種添加剤を任意な量、任意な種類、配合してもよい。添加剤としては、例えば酸化防止剤、中和剤、滑剤、核剤、シリカや有機架橋微粒子等の充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、離型剤、難燃剤等が挙げられる。
また帯電防止層(C)中に、本発明の効果を損なわない範囲でオレフィン系重合体(A)および高分子型帯電防止剤(B)に該当しない樹脂成分を含んでいてもよい。
【0012】
本発明の帯電防止層(C)は、オレフィン系重合体(A)および高分子型帯電防止剤(B)、さらに必要に応じて上記したような各種添加剤等を含有した樹脂組成物を成形することにより得ることができる。樹脂組成物の製造方法としては特に限定はなく、公知の方法が用いられる。
例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール混練機、リボンブレンダー、ブラベンダー、ニーダー及びバンバリーミキサー等の公知の混合機を用いて各成分を混合、あるいは混練することによって製造することができる。混合または混練時の各成分の添加順序は特に限定されるものではなく、例えば、オレフィン系重合体(A)および高分子型帯電防止剤(B)を一括でブレンドし混練する方法、高分子型帯電防止剤(B)と少量のオレフィン系重合体(A)とをブレンドし混練した後、残りのオレフィン系重合体(A)を添加して混練する方法、高分子型帯電防止剤(B)と他の添加剤等とを予めブレンドし混練した後、オレフィン系重合体(A)を添加して混練する方法等が挙げられる。
【0013】
帯電防止層(C)の形成方法としては特に限定はなく、公知の方法が用いられる。例えば、帯電防止層(C)を形成する樹脂組成物をインフレーション法、Tダイ法などの押出成形やカレンダー成形などによりフィルム状の帯電防止層(C)を形成することができる。
【0014】
本発明の成形体における中空構造を有する層(E)は、オレフィン系重合体(D)からなる。オレフィン系重合体(D)としては、オレフィン系重合体(A)として例示したものと同様のオレフィン系重合体を用いることができる。また本発明の成形体を粉砕したものを再生原料として、オレフィン系重合体(D)として用いてもよい。再生原料をオレフィン系重合体(D)として用いることにより、成形体断面にも帯電防止性を発現させることが可能となる。再生原料を用いる場合には、オレフィン系重合体(D)中50重量%以下、さらには30重量%以下であることが、成形体の機械的強度や成形性の面から好ましい。
本発明の成形体から得られた再生原料をオレフィン系重合体(D)として用いる場合には、該成形体を構成する全ての層の主成分が同種のオレフィン系樹脂であることが好ましい。
このようなリサイクル性の観点から、中空構造を有する層(E)に用いられるオレフィン系重合体(D)や帯電防止層(C)に用いられるオレフィン系重合体(A)は、非架橋かつ熱可塑性であることが好ましい。
【0015】
オレフィン系重合体(A)と同様にオレフィン系重合体(D)にも、本発明の特性を阻害しない範囲内で公知の種々の添加剤や樹脂を任意に添加することができ、その混合または混練方法も前述の方法と同様の公知の方法を用いることができる。
【0016】
本発明における空隙率とは、中空構造を有する層(E)中に占める中空部分の体積百分率を指す。空隙率が高い程、軽量でクッション性を有する。
中空構造を有する層(E)は空隙率が30%以上あればその構造は特に限定されるものではない。空隙率は100%未満であればよいが、空隙率が高すぎると強度が低下する傾向があるため、空隙率95%以下が好ましく、後述する2次成形の観点から60%〜90%であることがより好ましい。
中空構造を有する層(E)の構造は、例えば特公昭38−4185号公報、特公昭38−17182号公報などに記載のダンボール状の中空体、特開平6−212007号公報、特開2001−139711号公報などに記載の発泡体や、不織布、多孔質状のものなどがあげられる。中空構造を有する層(E)は、帯電防止層(C)が積層された段階で中空部を少なくとも一部分に有していればよい。
【0017】
中空構造を有する層(E)の形成方法に特に限定はなく、公知の方法が用いられる。例えば、中空構造を有する層(E)を形成する樹脂組成物を用いてインフレーション法、Tダイ法などの押出成形、異型押出成形、射出成形、ブロー成形、回転成形などによってフィルム状、シート状、ダンボール状などの中空構造を有する層(E)を形成することができる。
【0018】
中空構造を有する層(E)が平行する一対のライナー部とそれに垂直または斜めの複数のリブからなるシート状、すなわちダンボール状の場合には、例えば特公昭38−4185号公報、特公昭38−17182号公報などに記載された異形押出による方法などにより形成することができる。リブ部とライナー部の量比は重量比で0.1〜10の範囲がそりを抑制する観点から好ましい。
【0019】
中空構造を有する層(E)が発泡体の場合には、例えば特開平6−212007号公報、特開2001−139711号公報などに記載された、オレフィン系重合体(D)と化学発泡剤や物理発泡剤、さらに必要に応じて発泡助剤や気泡造核剤を配合したものを溶融混練して押出成形し発泡させる方法などにより形成することができる。
【0020】
本発明の成形体は、表面の少なくとも一部に帯電防止層(C)を有し、該帯電防止層(C)が中空構造を有する層(E)に積層されてなる成形体である。本発明の成形体は、その表面全てが帯電防止層(C)であってもよいが、用途に応じて帯電防止性能が必要とされる部分だけが帯電防止層(C)であってもよい。
【0021】
本発明の成形体は、中空構造を有する層(E)の厚みをL(μm)該中空構造を有する層(E)に積層された帯電防止層(C)の厚みをd(μm)、中空構造を有する層(E)の空隙率Φ(体積%)としたとき、以下の式1〜3をともに満たすものである。
5≦d≦100 (式1)
1000≦L (式2)
0.1≦(100d/(L(1−0.01Φ)))≦30 (式3)
【0022】
帯電防止層(C)の厚みdは、リサイクル性と強度の観点から5〜100μmであり、好ましくは5〜80μm、さらに好ましくは10〜50μmである。
中空構造を有する層(E)の厚みLは1000μm以上であり、その上限は特にないが、成形体がシート状物であり、後工程でプレス成形や真空・圧空成形などを行なう場合には、10000μm以下であることが好ましく、3000〜6000μmであることがより好ましい。
【0023】
さらに本発明の成形体は、d、L、φの関係が式3を満たす成形体である。
100d/(L(1−0.01Φ))=pとすると、pは、中空構造を有する層(E)の空隙部分を除いた体積あたりの帯電防止層(C)の体積比率を示すものである。比率pが0.1よりも小さい場合には、帯電防止性を有する樹脂層(C)が成形体全体に比して少なすぎるため、帯電防止性能が十分でない。また後述する理由により、表層剥離や粉落ちが生じる。一方比率pが30よりも大きい場合には、成形体中における帯電防止層(C)の占める割合が多すぎるため、リサイクル性に劣るものとなる。
帯電防止性能、表層剥離、粉落ちのやリサイクル性の観点から、比率pは10以下、さらには0.5〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。
【0024】
d、L、φが上記の関係を満たすような構造の成形体とすることにより、表層剥離や粉落ちの生じない成形体とすることができるが、その理由は以下に示すとおりであると考えられる。
【0025】
中空構造を有する層(E)に、貼合や共押出で帯電防止層(C)を積層する場合には、中空構造を有する層(E)の表面が一旦加熱され、積層後、冷却される。しかしながら、このとき層(E)の表面温度は冷却過程での時間経過と共に不均一となり易い。これは中空構造を有する層(E)の表面付近の中空構造に分布があるためであると考えられる。たとえば図1に示すように、中空構造を有する層(E)が上下の2枚の平行なライナー部とそれに垂直または斜めの複数のリブからなる構造であって、ライナー表面に帯電防止層(C)を共押出成形法で形成する場合には、ライナー直下が中空の部分とリブの部分とでは、リブ部分の冷却が遅くなる。このため、ライナー表面に設けられた帯電防止層(C)の冷却速度も、中空部分の上であるか、ライナー部分の上であるかによって異なることとなる。早く冷却固化する部分と遅れて固化する部分で残留応力が発生し、その結果、帯電防止層(C)の表層剥離や粉落ちといった現象が生じると考えられる。中空構造を有する層(E)が発泡体の場合も同様に考えられる。本発明のd、L、φ、あるいはpの範囲は、この残留応力の緩和に役立っていると思われるのである。また、高分子帯電防止剤(B)、とりわけ特開2001−278985号公報の化学式1〜3で表されるような、オレフィン系モノマーが重合されてなるオレフィン系ブロックと、親水性モノマーが重合されてなる親水系ブロックとが繰り返し交互に結合した構造を有する帯電防止剤の場合、その界面活性効果が(C)と(E)の界面の歪みの緩和にも役立っている可能性がある。
【0026】
中空構造を有する層(E)に帯電防止層(C)を積層する方法については特に限定はないが、予め製造した中空構造を有する層(E)および帯電防止層(C)を貼合する方法や、中空構造を有する層(E)および帯電防止層(C)を共押出して積層する方法などがある。
【0027】
予め製造した中空構造を有する層(E)および帯電防止層(C)を貼合する方法としては、公知の方法が用いられ特に限定はない。例えば、接着剤により貼合する方法や、熱融着により貼合する方法などがあげられる。
接着剤を用いる場合には、帯電防止層(C)および/または中空構造を有する層(E)の貼合面に接着剤を塗布し、両者を圧着することにより貼合する。
接着剤のかわりに溶融樹脂により貼合する方法でもよい。このような方法としては、特開平8−25603号公報に記載の方法などがあげられる。
熱融着により貼合する場合には、帯電防止層(C)と中空構造を有する層(E)の融点が近いことが好ましく、かつ各層を構成するオレフィン系重合体がプロピレン系樹脂であることがさらに好ましい。帯電防止層(C)および中空構造を有する層(E)の貼合面を熱風や輻射線などにより加熱溶融させたのち圧着することにより、貼合することができる。帯電防止層(C)および中空構造を有する層(E)の貼合面に、接着層を予め積層しておいたものを熱融着により貼合してもよい。
【0028】
また、多層押出成型機や多層射出成型機等の多層成形機を用いて、中空構造を有する層(E)に帯電防止層(C)を積層してもよい。
【0029】
本発明の成形体は、該成形体表面の一部に位置する帯電防止層(C)、該帯電防止層が積層された中空構造を有する層(E)以外の層(他の層(F))を含んでいてもよい。
他の層(F)は、その位置、層数、構造および構成する材料などに特に限定されるものではない。他の層(F)としては、例えばその構成する材料として樹脂、紙、無機物、金属などを用いることができ、その構造としては織布、不織布、編布、シート、フィルム、発泡体、網状物などを用いることができる。他の層(F)は、帯電防止層(C)や中空構造を有する層(E)と予め貼合されていたり、共押出法などにより積層されていてもよい。
他の層(F)は、(C)および(E)以外の帯電防止層や中空構造を有する層であってもよい。このような場合には、(C)以外の帯電防止層は必ずしも中空構造を有する層に積層されている必要はない。本発明の目的を損しない範囲で、(C)と(E)の間に(F)があってもよい。
【0030】
本発明の成形体の形状は特に限定されるものではないが、該成形体がシートである場合には、優れた2次成形性を有し、表層剥離や粉落ちの抑制された2次成形品を得ることができる。
【0031】
本発明のシートに行なうプレス成形、真空・圧空成形を行なうことにより、2次成形体を製造することができる。また、特開平11−333880号公報や特開2001−121561号公報に開示された手法のように、プレス成形や真空・圧空成形を射出成形と組み合わせて、補強用のリブや他部材との連結機能を有するボス、クリップ、フックなどの各種機能性部材を有する2次成形体とすることもできる。また、本発明の2次成形性に優れたシートおよびそれを用いてなる2次成形体において、特に以下の構成が好適である。
【0032】
第一に、形態として、中空構造を有する層(E)が発泡体であるものが、シート状物として面内の異方性が少なく好ましい。プレス成形や真空・圧空成形時にシート状物を熱で軟化させる際に、シート状物面内の異方性が強いと方向によって軟化の程度が変化するため、得られる2次成形品に歪みが残り、保管時に変形するなどして、好ましくない。
【0033】
第二に高分子型帯電防止剤(B)として、オレフィン系モノマーが重合されてなるオレフィン系ブロックと、親水性モノマーが重合されてなる親水系ブロックとが繰り返し交互に結合した構造を有するもの、が好ましい。理由は定かではないが、オレフィン系ブロック部分を分子中に有することで、2次成形の際の伸長変形に対して、中空構造を有する層(E)と帯電防止層(C)の界面剥離を抑制する効果があると考えられる。
【0034】
高分子型帯電防止剤(B)の配合量としては、オレフィン系重合体(A)100重量部あたり、2次成形性の面からは、5〜50重量部が好ましく、さらに10〜40重量部が好ましい。好ましい範囲の下限を下回ると、2次成形後の帯電防止性が劣ったり、2次成形時の熱変形でむらを生じ易い。上限を上回ると2次成形時の熱変形で帯電防止層(B)の破れをを生じ易く、表層剥離や粉落ちを引き起こす。
オレフィン系重合体(A)(D)がプロピレン系樹脂である場合には、上記高分子型帯電防止剤(B)の融点が160℃以下であることがさらに好ましい。融点が160℃より高いと2次成形時、シート状物を軟化し伸長させるときに中空構造を有する層(E)と帯電防止層(C)の界面が剥離しやすく、表層剥離や粉落ちを生じ易い。
【0035】
第三にd、L、φ、pが特定の範囲で2次成形性はさらに向上する。
帯電防止層(C)の厚みdにおいて、2次成形性の面からは、10〜50(μm)の場合が好ましく用いられる。好ましい範囲の下限を下回ると2次成形時の伸びが不十分でむらを生じ易い。上限の100(μm)以上の場合、リサイクル性の低下が著しくなるうえ、中空構造を有する層の中空部分の不均一性に由来して、2次成形時に表面剥離を生じ易く好ましくない(図2)。
さらに、中空構造を有する層(E)の厚みL(μm)は、10000(μm)以下が、特に3000〜6000(μm)の範囲が2次成形性の面から好ましい。100(μm)未満の場合には、2次成形時に変形してしまう可能性があり好ましくない。10000(μm)以上の場合、2次成形時に形状がきれいにできず、凹部でしわを生じ易く、その部位の周辺に粉落ちが発生しやすい。好ましい範囲の下限を下回ると成形時の伸びの大きい部分の中空構造がつぶれ易く、その周囲に表層剥離を生じやすくなり好ましくない。
空隙率φは、2次成形の観点から30%〜95%が好ましく、特に60%〜90%であることがより好ましい。95%を上回ると成形時の伸びの大きい部分の中空構造がつぶれ易くその周囲に表層剥離を生じやすくなり好ましくない。
pについて、2次成形の観点から、0.5〜30が好ましく、1〜10がより好ましい。pが0.5を下回ると2次成形時に帯電防止層(C)の一部に欠損を生じやすく、表層剥離をもたらし易い。一方、30を超えると成形時の伸びの大きい部分の中空構造がつぶれ易くその周囲に表層剥離を生じやすくなり好ましくない。
【0036】
上記の内容を満たすような構成のシート状物が2次成形性に優れており、結果として表層剥離や粉落ちの生じにくい品質に優れる2次成形体を得ることができる。その理由は以下に示すとおりであると考えられる。
【0037】
本発明の成形体であるシート状物をプレス成形や真空・圧空成形する場合、第一に予熱によるシート状物の軟化工程を、第二に型による押し付けによる賦形工程を、第三に冷却し型から脱型して、2次成形体を得るという工程を経る。ここで特に第二と第三の工程で層(E)の表面温度は冷却され時間経過と共に不均一となり易い。これは中空構造を有する層(E)の表面付近の中空構造に分布があるためであると考えられる。たとえば図2に示すように、中空構造を有する層(E)が発泡体であってその表面に帯電防止層(C)を有する場合には、中空の部分(発泡部分)と中実の部分とでは、冷却速度が異なる。このため、帯電防止層(C)の冷却速度も、中空部分の上であるか、中実部分の上であるかによって異なることとなる。早く冷却固化する部分と遅れて固化する部分で残留応力が発生し、その結果、帯電防止層(C)の表層剥離や粉落ちといった現象が生じると考えられる。特に2次成形時にシート状物の変形の度合いが大きい場合、中空部分が引き伸ばされ、上記効果が強調され易い。
本発明のd、L、φ、あるいはpの範囲は、この残留応力の緩和に役立っていると思われるのである。また、高分子帯電防止剤(B)、とりわけ特開2001−278985号公報の化学式1〜3で表されるような、オレフィン系モノマーが重合されてなるオレフィン系ブロックと、親水性モノマーが重合されてなる親水系ブロックとが繰り返し交互に結合した構造を有する帯電防止剤の場合、その界面活性効果が(C)と(E)の界面の歪みの緩和にも役立っている可能性がある。
【0038】
本発明の成形体の用途には特に限定はなく、帯電によるほこり付着や放電による内容物破損が問題となるような、帯電防止性能が求められるあらゆる用途に使用することができる。また本発明の成形体は、その貼り合わせ面に埃など異物が付着しにくいという特性があるため、異種材料との貼合・接着が必要な用途にも好適に用いられる。これら特性を生かした具体例として、家電・OA機器・ゲーム機器・事務機器用のハウジング製品、文具、おもちゃ、床材用・床養生用シート、マット、自動車部品、ICトレイ、通い函、棚板、看板、化粧板、風呂蓋などが挙げられる。
【0039】
【発明の効果】
本発明の成形体は、表層剥離や粉落ちの問題がない、リサイクル性と帯電防止性に優れたオレフィン系重合体からなる中空構造を有する成形体である。
【0040】
【実施例】
本発明を実施例及び比較例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例及び比較例に限定されるものではない。
【0041】
[I] 評価方法
(1)帯電防止性
東亜電波社製 超絶縁計SM−8210、平板用電極SME8310を使用し、23℃、相対湿度50%RH、印加電圧500Vの条件下で、10秒間印加電圧をかけたのち、1分後の抵抗値(表面抵抗率)を測定した。
(2)表層剥離性
帯電防止層(C)にセロハンテープ(積水化学工業製)を貼り、該セロハンテープを剥がしたときに帯電防止層(C)がテープとともに剥がれるかどうかで判定する。剥がれる場合には×、剥がれない場合には○とした。
(3)粉落ち性
帯電防止層(C)面を指で擦ったときの、粉の付き具合で判定する。3回で擦って粉が付着した場合には×、10回で付着した場合には△、20回以上擦っても付着しない場合には○とした。
(4)リサイクル性
中空構造を有する層(E)を構成するオレフィン系重合体(D)のうちの23重量%として、先に製造した本発明の成形体を粉砕、再生処理して得られたペレットを用いて成形体を成形し、得られた成形体の外観を目視確認する。外観不良のものは×、外観不良はほとんどないが再生ペレット無のものと外観が異なるものは△、再生ペレット有無で変化なしのものは○とした。
【0042】
[実施例1]
中空構造を有する層(E)を構成するオレフィン系重合体(D)としてプロピレン系樹脂(住友化学工業(株)製 商品名 住友ノーブレン AS171G)100重量部を用い、帯電防止層(C)を構成するオレフィン系重合体(A)としてプロピレン系樹脂(住友化学工業(株)製 商品名 住友ノーブレン AS171G)100重量部および酸変性低分子量ポリプロピレン(重量平均分子量30000、酸価 約52、三洋化成工業株式会社製 商品名 ユーメックス1010)8重量部、高分子型帯電防止剤(B)としてポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体(三洋化成工業(株)製 商品名 ペレスタット300)15重量部をドライブレンドしたもの用いた。
平行リブ構造とその上下にライナー構造を有する中空構造を有する層(E)と、ライナーの外側に各1層を設けることのできる構造を有する2種3層異形ダイスを用いて、中空構造を有する層(E)の両側に帯電防止層(C)が積層されてなる成形体を共押出成形により製造した。
得られた成形体は厚さ5mm、帯電防止層(C)の厚さdは25μm、中空構造を有する層(E)の厚さLは4950μm、リブとリブの間隔4mm、目付け(単位面積当たりの重量)1000g/m2であった。表面抵抗率は3.7×1010Ω/□、粉落ち性は○、表面剥離性は○であった。
該成形体を粉砕して再ペレット化したものをオレフィン系重合体(D)として用いて製造した成形体は、リサイクル性○であった。
【0043】
[実施例2]
中空構造を有する層(E)としては、オレフィン系重合体(D)としてプロピレン系樹脂(住友化学工業(株)製 商品名 住友ノーブレン EL80F1)50重量部およびプロピレン系樹脂(住友化学工業(株)製 商品名 住友ノーブレン AW191A)50重量部を用い、さらに珪藻土1重量部を配合した樹脂組成物を使用した。
帯電防止層(C)を構成するオレフィン系重合体(A)としてプロピレン系樹脂(住友化学工業(株)製 商品名 住友ノーブレン AW191A)100重量部、高分子型帯電防止剤(B)としてポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体(三洋化成工業(株)製 商品名 ペレスタット300)20重量部をドライブレンドしたもの用いた。
マルチマニホールド式の2種3層ダイスを備えた炭酸ガス発泡シート押出機を用いて、中空構造を有する層(E)を構成する樹脂組成物を溶融混練したものに炭酸ガスを注入して中空構造を有する層(E)を形成し、該中空構造を有する層(E)の両側に帯電防止層(C)が積層されてなるシート状成形体を共押出成形により製造した。
得られた成形体は厚さ4mm、帯電防止層(C)の厚さdは30μm、中空構造を有する層(E)の厚さLは3940μm、空隙率φは66%であった。表面抵抗率は5.4×1010Ω/□、粉落ち性は○、表面剥離性は○であった。
該成形体を粉砕して再ペレット化したものをオレフィン系重合体(D)として用いて製造した成形体は、リサイクル性○であった。
【0044】
[比較例1]
高分子型帯電防止剤(B)の替わりに低分子の帯電防止剤であるグリセリン脂肪酸エステル系帯電防止剤(丸菱油化(株)製 商品名 デノン2220)を用いた以外は実施例1と同様にして成形体を製造した。表層には著しいむらが発生し外観不良の著しいものであった。表面抵抗率は1016Ω/□以上、粉落ち性は×、表面剥離性は×と劣ったものであった(リサイクル性評価はせず)。
【図面の簡単な説明】
【図1】中空構造を有する層(E)に帯電防止層(C)を貼合する工程の1例を示す図
【図2】本発明の成形体断面の1例を示す図(中空構造を有する層が段ボール形状の場合)
【図3】本発明の成形体断面の1例を示す図(中空構造を有する層が発泡体の場合)
【図4】本発明の2次成形体断面の1例を示す図(中空構造を有する層が発泡体の場合)
【図5】図4の破線囲み部分の拡大図
【符号の簡単な説明】
1:帯電防止層(C)
2:中空構造を有する層(E)
3:成形体
4:リブ
5:ライナー
6:中空部
7:リブ上に位置するライナーと帯電防止層(C)との界面
8:中空部上に位置するライナーと帯電防止層(C)との界面
9:樹脂部
10:2次成形体の帯電防止層(C)近傍が中空(発泡部分)の箇所
11:2次成形体の帯電防止層(C)近傍が中実の箇所
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電防止性能を有し、リサイクル性に優れた中空構造を有する成形体に関する。さらに、成形体がシート状物の場合、真空・圧空成形、プレス成形などの2次成形を経た2次成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
オレフィン系重合体からなる成形体は、安価で成形が容易であり、さらにリサイクル性にも優れることから、非常に幅広い分野で使用されている。またオレフィン系重合体からなる、発泡体や段ボール形状のような中空構造を有する成形体は、軽量でクッション感に優れ、重量あたりの剛性が高いことから、看板や容器等に利用されている。
しかしながらオレフィン系重合体は帯電性が高いため、オレフィン系重合体からなる成形体および中空構造を有する成形体は、帯電防止性能を要求される用途では使用することができなかった。このためオレフィン系重合体用の帯電防止剤が数多く開発されてきた。このような帯電防止剤としては、ポリエーテルエステルアミド系の高分子型帯電防止剤が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平1−163234号公報
【0004】
しかしながらこのような帯電防止剤をオレフィン系重合体からなる中空構造を有する成形体に適用した場合には、帯電防止剤が中空の壁面にもブリードするために、中空構造を有さない成形体の場合と比較すると成形体表面における帯電防止剤濃度が低下し、帯電防止性能に劣るという問題があった。帯電防止剤の添加量を増加させれば帯電防止性能を向上させることはできるが、リサイクル性が大幅に低下する、または2次成形性に劣るという問題があった。
リサイクル性を改善する目的で、中空構造を有する成形体に帯電防止剤を含有させた層を積層した積層体がある。しかしながらこのような積層体は、帯電防止性は発現するものの、該帯電防止剤含有層が中空構造を有する成形体から剥離したり(表層剥離)、帯電防止剤含有層表面が摩擦によりぽろぽろと脱落する(粉落ち)といった問題があった。さらに、このような成形体がシートの場合、真空・圧空成形やプレス成形などの2次成形が必要とされる場合が多く、上述の表層剥離や粉落ちはこの2次成形時に更に悪化する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、表層剥離や粉落ちの問題がない、リサイクル性と帯電防止性に優れたオレフィン系重合体からなる中空構造を有する成形体を提供すること、さらには、その成形体のなかでも上述の2次成形性に優れたシートおよび該シート状物をプレス成形およびまたは真空・圧空成形する2次成形体の製造方法、該製造方法によって得られた2次成形体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、表面の少なくとも一部に帯電防止層(C)を有し、該帯電防止層(C)が中空構造を有する層(E)に積層されてなる成形体であって、帯電防止層(C)がオレフィン系重合体(A)100重量部および高分子型帯電防止剤(B)1〜200重量部を含有する厚さd(μm)の層であり、中空構造である層(E)が、オレフィン系重合体(D)からなる空隙率φ(体積%)以上である厚さL(μm)の層であって、d、Lおよびφが以下の式1〜3を満たす成形体である。
5≦d≦100 (式1)
1000≦L (式2)
0.1≦(100d/(L(1−0.01φ)))≦30 (式3)
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の帯電防止層(C)を構成するオレフィン系重合体(A)としては、公知のオレフィン系重合体を使用することができ、例えば、プロピレンホモポリマー、プロピレンと他のα−オレフィン(例えば、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等)の一種類以上とのランダム共重合又はブロック共重合体などのプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、中低圧法低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体(エチレンと他のα−オレフィン例えば、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等の一種類以上とのランダム共重合又はブロック共重合体)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体などのエチレンと不飽和化合物との共重合体等のエチレン系樹脂、変性ポリオレフィン等が挙げられる。なかでもプロピレン系樹脂が好ましく、プロピレンホモポリマー、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体のいずれかであることがより好ましい。またこれらのプロピレン系樹脂は単独で用いられても複数で用いられてもよい。
プロピレン系樹脂は、メルトフローレート(MFR)が0.5〜150g/10分、さらには1〜50g/10分、特に4〜20g/10分であることが好ましい。メルトフローレートは、JIS−K6758(温度230℃、荷重2.16kgf)に準じて測定することができる。メルトフローレートが0.5未満の場合には、薄く均一な帯電防止層を形成することが困難となり、成形体の外観不良や帯電防止性が低下する傾向があり、150を越える場合には、最表層の粉落ちが生じる傾向がある。
【0008】
本発明の帯電防止層(C)は、変性ポリオレフィンを含有することが好ましい。変性ポリオレフィンを含有することによって、表層剥離や粉落ちがより発生しにくくなる。
使用する変性ポリオレフィンは、重量平均分子量が1000〜50000、好ましくは20000〜40000であり、酸価または水酸基価が5〜150、好ましくは30〜80であることが好ましい。このような変性低分子量ポリプロピレンは、例えば特開平3−62804号公報記載の方法で製造することができる。使用する変性ポリオレフィンは1種でもよく、複数を併用してもよい。
帯電防止層(C)における変性ポリオレフィンの含有量は、オレフィン系重合体(A)中1〜30重量%であることが好ましく、さらに好ましくは5〜20重量%である。
【0009】
本発明で用いられる高分子型帯電防止剤(B)とは、少なくとも2以上の繰り返し単位を有する帯電防止剤であり、例として特開平1−163234号公報に示されるようなポリエーテルエステルアミド系化合物や特開2001−278985号公報に示されるような特定のブロック共重合型帯電防止剤等があげられる。とりわけ特開2001−278985号公報の化学式1〜3で表されるような、オレフィン系モノマーが重合されてなるオレフィン系ブロックと、親水性モノマーが重合されてなる親水系ブロックとが繰り返し交互に結合した構造を有する帯電防止剤が好ましく用いられる。また高分子型帯電防止剤は、融点が120〜160℃であることが好ましい。融点が120℃未満の場合、樹脂層(C)が剥離しやすくなる傾向があり、160℃を越えると帯電防止性が低下する傾向がある。
【0010】
本発明の帯電防止層(C)は、オレフィン系重合体(A)100重量部に対し、高分子型帯電防止剤(B)の配合量は1〜200重量部、好ましくは5〜100重量部、特に10〜80重量部、である。後述する2次成形性の面からさらに好ましくは10〜40重量部である。高分子型帯電防止剤(B)の量が上記範囲未満では、帯電防止性能を発現することができず、200重量部を越えると表面剥離や粉落ちが発生しやすい。
【0011】
帯電防止層(C)中には、本発明の効果を損なわない範囲で種々の目的に応じて、各種添加剤を任意な量、任意な種類、配合してもよい。添加剤としては、例えば酸化防止剤、中和剤、滑剤、核剤、シリカや有機架橋微粒子等の充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、離型剤、難燃剤等が挙げられる。
また帯電防止層(C)中に、本発明の効果を損なわない範囲でオレフィン系重合体(A)および高分子型帯電防止剤(B)に該当しない樹脂成分を含んでいてもよい。
【0012】
本発明の帯電防止層(C)は、オレフィン系重合体(A)および高分子型帯電防止剤(B)、さらに必要に応じて上記したような各種添加剤等を含有した樹脂組成物を成形することにより得ることができる。樹脂組成物の製造方法としては特に限定はなく、公知の方法が用いられる。
例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール混練機、リボンブレンダー、ブラベンダー、ニーダー及びバンバリーミキサー等の公知の混合機を用いて各成分を混合、あるいは混練することによって製造することができる。混合または混練時の各成分の添加順序は特に限定されるものではなく、例えば、オレフィン系重合体(A)および高分子型帯電防止剤(B)を一括でブレンドし混練する方法、高分子型帯電防止剤(B)と少量のオレフィン系重合体(A)とをブレンドし混練した後、残りのオレフィン系重合体(A)を添加して混練する方法、高分子型帯電防止剤(B)と他の添加剤等とを予めブレンドし混練した後、オレフィン系重合体(A)を添加して混練する方法等が挙げられる。
【0013】
帯電防止層(C)の形成方法としては特に限定はなく、公知の方法が用いられる。例えば、帯電防止層(C)を形成する樹脂組成物をインフレーション法、Tダイ法などの押出成形やカレンダー成形などによりフィルム状の帯電防止層(C)を形成することができる。
【0014】
本発明の成形体における中空構造を有する層(E)は、オレフィン系重合体(D)からなる。オレフィン系重合体(D)としては、オレフィン系重合体(A)として例示したものと同様のオレフィン系重合体を用いることができる。また本発明の成形体を粉砕したものを再生原料として、オレフィン系重合体(D)として用いてもよい。再生原料をオレフィン系重合体(D)として用いることにより、成形体断面にも帯電防止性を発現させることが可能となる。再生原料を用いる場合には、オレフィン系重合体(D)中50重量%以下、さらには30重量%以下であることが、成形体の機械的強度や成形性の面から好ましい。
本発明の成形体から得られた再生原料をオレフィン系重合体(D)として用いる場合には、該成形体を構成する全ての層の主成分が同種のオレフィン系樹脂であることが好ましい。
このようなリサイクル性の観点から、中空構造を有する層(E)に用いられるオレフィン系重合体(D)や帯電防止層(C)に用いられるオレフィン系重合体(A)は、非架橋かつ熱可塑性であることが好ましい。
【0015】
オレフィン系重合体(A)と同様にオレフィン系重合体(D)にも、本発明の特性を阻害しない範囲内で公知の種々の添加剤や樹脂を任意に添加することができ、その混合または混練方法も前述の方法と同様の公知の方法を用いることができる。
【0016】
本発明における空隙率とは、中空構造を有する層(E)中に占める中空部分の体積百分率を指す。空隙率が高い程、軽量でクッション性を有する。
中空構造を有する層(E)は空隙率が30%以上あればその構造は特に限定されるものではない。空隙率は100%未満であればよいが、空隙率が高すぎると強度が低下する傾向があるため、空隙率95%以下が好ましく、後述する2次成形の観点から60%〜90%であることがより好ましい。
中空構造を有する層(E)の構造は、例えば特公昭38−4185号公報、特公昭38−17182号公報などに記載のダンボール状の中空体、特開平6−212007号公報、特開2001−139711号公報などに記載の発泡体や、不織布、多孔質状のものなどがあげられる。中空構造を有する層(E)は、帯電防止層(C)が積層された段階で中空部を少なくとも一部分に有していればよい。
【0017】
中空構造を有する層(E)の形成方法に特に限定はなく、公知の方法が用いられる。例えば、中空構造を有する層(E)を形成する樹脂組成物を用いてインフレーション法、Tダイ法などの押出成形、異型押出成形、射出成形、ブロー成形、回転成形などによってフィルム状、シート状、ダンボール状などの中空構造を有する層(E)を形成することができる。
【0018】
中空構造を有する層(E)が平行する一対のライナー部とそれに垂直または斜めの複数のリブからなるシート状、すなわちダンボール状の場合には、例えば特公昭38−4185号公報、特公昭38−17182号公報などに記載された異形押出による方法などにより形成することができる。リブ部とライナー部の量比は重量比で0.1〜10の範囲がそりを抑制する観点から好ましい。
【0019】
中空構造を有する層(E)が発泡体の場合には、例えば特開平6−212007号公報、特開2001−139711号公報などに記載された、オレフィン系重合体(D)と化学発泡剤や物理発泡剤、さらに必要に応じて発泡助剤や気泡造核剤を配合したものを溶融混練して押出成形し発泡させる方法などにより形成することができる。
【0020】
本発明の成形体は、表面の少なくとも一部に帯電防止層(C)を有し、該帯電防止層(C)が中空構造を有する層(E)に積層されてなる成形体である。本発明の成形体は、その表面全てが帯電防止層(C)であってもよいが、用途に応じて帯電防止性能が必要とされる部分だけが帯電防止層(C)であってもよい。
【0021】
本発明の成形体は、中空構造を有する層(E)の厚みをL(μm)該中空構造を有する層(E)に積層された帯電防止層(C)の厚みをd(μm)、中空構造を有する層(E)の空隙率Φ(体積%)としたとき、以下の式1〜3をともに満たすものである。
5≦d≦100 (式1)
1000≦L (式2)
0.1≦(100d/(L(1−0.01Φ)))≦30 (式3)
【0022】
帯電防止層(C)の厚みdは、リサイクル性と強度の観点から5〜100μmであり、好ましくは5〜80μm、さらに好ましくは10〜50μmである。
中空構造を有する層(E)の厚みLは1000μm以上であり、その上限は特にないが、成形体がシート状物であり、後工程でプレス成形や真空・圧空成形などを行なう場合には、10000μm以下であることが好ましく、3000〜6000μmであることがより好ましい。
【0023】
さらに本発明の成形体は、d、L、φの関係が式3を満たす成形体である。
100d/(L(1−0.01Φ))=pとすると、pは、中空構造を有する層(E)の空隙部分を除いた体積あたりの帯電防止層(C)の体積比率を示すものである。比率pが0.1よりも小さい場合には、帯電防止性を有する樹脂層(C)が成形体全体に比して少なすぎるため、帯電防止性能が十分でない。また後述する理由により、表層剥離や粉落ちが生じる。一方比率pが30よりも大きい場合には、成形体中における帯電防止層(C)の占める割合が多すぎるため、リサイクル性に劣るものとなる。
帯電防止性能、表層剥離、粉落ちのやリサイクル性の観点から、比率pは10以下、さらには0.5〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。
【0024】
d、L、φが上記の関係を満たすような構造の成形体とすることにより、表層剥離や粉落ちの生じない成形体とすることができるが、その理由は以下に示すとおりであると考えられる。
【0025】
中空構造を有する層(E)に、貼合や共押出で帯電防止層(C)を積層する場合には、中空構造を有する層(E)の表面が一旦加熱され、積層後、冷却される。しかしながら、このとき層(E)の表面温度は冷却過程での時間経過と共に不均一となり易い。これは中空構造を有する層(E)の表面付近の中空構造に分布があるためであると考えられる。たとえば図1に示すように、中空構造を有する層(E)が上下の2枚の平行なライナー部とそれに垂直または斜めの複数のリブからなる構造であって、ライナー表面に帯電防止層(C)を共押出成形法で形成する場合には、ライナー直下が中空の部分とリブの部分とでは、リブ部分の冷却が遅くなる。このため、ライナー表面に設けられた帯電防止層(C)の冷却速度も、中空部分の上であるか、ライナー部分の上であるかによって異なることとなる。早く冷却固化する部分と遅れて固化する部分で残留応力が発生し、その結果、帯電防止層(C)の表層剥離や粉落ちといった現象が生じると考えられる。中空構造を有する層(E)が発泡体の場合も同様に考えられる。本発明のd、L、φ、あるいはpの範囲は、この残留応力の緩和に役立っていると思われるのである。また、高分子帯電防止剤(B)、とりわけ特開2001−278985号公報の化学式1〜3で表されるような、オレフィン系モノマーが重合されてなるオレフィン系ブロックと、親水性モノマーが重合されてなる親水系ブロックとが繰り返し交互に結合した構造を有する帯電防止剤の場合、その界面活性効果が(C)と(E)の界面の歪みの緩和にも役立っている可能性がある。
【0026】
中空構造を有する層(E)に帯電防止層(C)を積層する方法については特に限定はないが、予め製造した中空構造を有する層(E)および帯電防止層(C)を貼合する方法や、中空構造を有する層(E)および帯電防止層(C)を共押出して積層する方法などがある。
【0027】
予め製造した中空構造を有する層(E)および帯電防止層(C)を貼合する方法としては、公知の方法が用いられ特に限定はない。例えば、接着剤により貼合する方法や、熱融着により貼合する方法などがあげられる。
接着剤を用いる場合には、帯電防止層(C)および/または中空構造を有する層(E)の貼合面に接着剤を塗布し、両者を圧着することにより貼合する。
接着剤のかわりに溶融樹脂により貼合する方法でもよい。このような方法としては、特開平8−25603号公報に記載の方法などがあげられる。
熱融着により貼合する場合には、帯電防止層(C)と中空構造を有する層(E)の融点が近いことが好ましく、かつ各層を構成するオレフィン系重合体がプロピレン系樹脂であることがさらに好ましい。帯電防止層(C)および中空構造を有する層(E)の貼合面を熱風や輻射線などにより加熱溶融させたのち圧着することにより、貼合することができる。帯電防止層(C)および中空構造を有する層(E)の貼合面に、接着層を予め積層しておいたものを熱融着により貼合してもよい。
【0028】
また、多層押出成型機や多層射出成型機等の多層成形機を用いて、中空構造を有する層(E)に帯電防止層(C)を積層してもよい。
【0029】
本発明の成形体は、該成形体表面の一部に位置する帯電防止層(C)、該帯電防止層が積層された中空構造を有する層(E)以外の層(他の層(F))を含んでいてもよい。
他の層(F)は、その位置、層数、構造および構成する材料などに特に限定されるものではない。他の層(F)としては、例えばその構成する材料として樹脂、紙、無機物、金属などを用いることができ、その構造としては織布、不織布、編布、シート、フィルム、発泡体、網状物などを用いることができる。他の層(F)は、帯電防止層(C)や中空構造を有する層(E)と予め貼合されていたり、共押出法などにより積層されていてもよい。
他の層(F)は、(C)および(E)以外の帯電防止層や中空構造を有する層であってもよい。このような場合には、(C)以外の帯電防止層は必ずしも中空構造を有する層に積層されている必要はない。本発明の目的を損しない範囲で、(C)と(E)の間に(F)があってもよい。
【0030】
本発明の成形体の形状は特に限定されるものではないが、該成形体がシートである場合には、優れた2次成形性を有し、表層剥離や粉落ちの抑制された2次成形品を得ることができる。
【0031】
本発明のシートに行なうプレス成形、真空・圧空成形を行なうことにより、2次成形体を製造することができる。また、特開平11−333880号公報や特開2001−121561号公報に開示された手法のように、プレス成形や真空・圧空成形を射出成形と組み合わせて、補強用のリブや他部材との連結機能を有するボス、クリップ、フックなどの各種機能性部材を有する2次成形体とすることもできる。また、本発明の2次成形性に優れたシートおよびそれを用いてなる2次成形体において、特に以下の構成が好適である。
【0032】
第一に、形態として、中空構造を有する層(E)が発泡体であるものが、シート状物として面内の異方性が少なく好ましい。プレス成形や真空・圧空成形時にシート状物を熱で軟化させる際に、シート状物面内の異方性が強いと方向によって軟化の程度が変化するため、得られる2次成形品に歪みが残り、保管時に変形するなどして、好ましくない。
【0033】
第二に高分子型帯電防止剤(B)として、オレフィン系モノマーが重合されてなるオレフィン系ブロックと、親水性モノマーが重合されてなる親水系ブロックとが繰り返し交互に結合した構造を有するもの、が好ましい。理由は定かではないが、オレフィン系ブロック部分を分子中に有することで、2次成形の際の伸長変形に対して、中空構造を有する層(E)と帯電防止層(C)の界面剥離を抑制する効果があると考えられる。
【0034】
高分子型帯電防止剤(B)の配合量としては、オレフィン系重合体(A)100重量部あたり、2次成形性の面からは、5〜50重量部が好ましく、さらに10〜40重量部が好ましい。好ましい範囲の下限を下回ると、2次成形後の帯電防止性が劣ったり、2次成形時の熱変形でむらを生じ易い。上限を上回ると2次成形時の熱変形で帯電防止層(B)の破れをを生じ易く、表層剥離や粉落ちを引き起こす。
オレフィン系重合体(A)(D)がプロピレン系樹脂である場合には、上記高分子型帯電防止剤(B)の融点が160℃以下であることがさらに好ましい。融点が160℃より高いと2次成形時、シート状物を軟化し伸長させるときに中空構造を有する層(E)と帯電防止層(C)の界面が剥離しやすく、表層剥離や粉落ちを生じ易い。
【0035】
第三にd、L、φ、pが特定の範囲で2次成形性はさらに向上する。
帯電防止層(C)の厚みdにおいて、2次成形性の面からは、10〜50(μm)の場合が好ましく用いられる。好ましい範囲の下限を下回ると2次成形時の伸びが不十分でむらを生じ易い。上限の100(μm)以上の場合、リサイクル性の低下が著しくなるうえ、中空構造を有する層の中空部分の不均一性に由来して、2次成形時に表面剥離を生じ易く好ましくない(図2)。
さらに、中空構造を有する層(E)の厚みL(μm)は、10000(μm)以下が、特に3000〜6000(μm)の範囲が2次成形性の面から好ましい。100(μm)未満の場合には、2次成形時に変形してしまう可能性があり好ましくない。10000(μm)以上の場合、2次成形時に形状がきれいにできず、凹部でしわを生じ易く、その部位の周辺に粉落ちが発生しやすい。好ましい範囲の下限を下回ると成形時の伸びの大きい部分の中空構造がつぶれ易く、その周囲に表層剥離を生じやすくなり好ましくない。
空隙率φは、2次成形の観点から30%〜95%が好ましく、特に60%〜90%であることがより好ましい。95%を上回ると成形時の伸びの大きい部分の中空構造がつぶれ易くその周囲に表層剥離を生じやすくなり好ましくない。
pについて、2次成形の観点から、0.5〜30が好ましく、1〜10がより好ましい。pが0.5を下回ると2次成形時に帯電防止層(C)の一部に欠損を生じやすく、表層剥離をもたらし易い。一方、30を超えると成形時の伸びの大きい部分の中空構造がつぶれ易くその周囲に表層剥離を生じやすくなり好ましくない。
【0036】
上記の内容を満たすような構成のシート状物が2次成形性に優れており、結果として表層剥離や粉落ちの生じにくい品質に優れる2次成形体を得ることができる。その理由は以下に示すとおりであると考えられる。
【0037】
本発明の成形体であるシート状物をプレス成形や真空・圧空成形する場合、第一に予熱によるシート状物の軟化工程を、第二に型による押し付けによる賦形工程を、第三に冷却し型から脱型して、2次成形体を得るという工程を経る。ここで特に第二と第三の工程で層(E)の表面温度は冷却され時間経過と共に不均一となり易い。これは中空構造を有する層(E)の表面付近の中空構造に分布があるためであると考えられる。たとえば図2に示すように、中空構造を有する層(E)が発泡体であってその表面に帯電防止層(C)を有する場合には、中空の部分(発泡部分)と中実の部分とでは、冷却速度が異なる。このため、帯電防止層(C)の冷却速度も、中空部分の上であるか、中実部分の上であるかによって異なることとなる。早く冷却固化する部分と遅れて固化する部分で残留応力が発生し、その結果、帯電防止層(C)の表層剥離や粉落ちといった現象が生じると考えられる。特に2次成形時にシート状物の変形の度合いが大きい場合、中空部分が引き伸ばされ、上記効果が強調され易い。
本発明のd、L、φ、あるいはpの範囲は、この残留応力の緩和に役立っていると思われるのである。また、高分子帯電防止剤(B)、とりわけ特開2001−278985号公報の化学式1〜3で表されるような、オレフィン系モノマーが重合されてなるオレフィン系ブロックと、親水性モノマーが重合されてなる親水系ブロックとが繰り返し交互に結合した構造を有する帯電防止剤の場合、その界面活性効果が(C)と(E)の界面の歪みの緩和にも役立っている可能性がある。
【0038】
本発明の成形体の用途には特に限定はなく、帯電によるほこり付着や放電による内容物破損が問題となるような、帯電防止性能が求められるあらゆる用途に使用することができる。また本発明の成形体は、その貼り合わせ面に埃など異物が付着しにくいという特性があるため、異種材料との貼合・接着が必要な用途にも好適に用いられる。これら特性を生かした具体例として、家電・OA機器・ゲーム機器・事務機器用のハウジング製品、文具、おもちゃ、床材用・床養生用シート、マット、自動車部品、ICトレイ、通い函、棚板、看板、化粧板、風呂蓋などが挙げられる。
【0039】
【発明の効果】
本発明の成形体は、表層剥離や粉落ちの問題がない、リサイクル性と帯電防止性に優れたオレフィン系重合体からなる中空構造を有する成形体である。
【0040】
【実施例】
本発明を実施例及び比較例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例及び比較例に限定されるものではない。
【0041】
[I] 評価方法
(1)帯電防止性
東亜電波社製 超絶縁計SM−8210、平板用電極SME8310を使用し、23℃、相対湿度50%RH、印加電圧500Vの条件下で、10秒間印加電圧をかけたのち、1分後の抵抗値(表面抵抗率)を測定した。
(2)表層剥離性
帯電防止層(C)にセロハンテープ(積水化学工業製)を貼り、該セロハンテープを剥がしたときに帯電防止層(C)がテープとともに剥がれるかどうかで判定する。剥がれる場合には×、剥がれない場合には○とした。
(3)粉落ち性
帯電防止層(C)面を指で擦ったときの、粉の付き具合で判定する。3回で擦って粉が付着した場合には×、10回で付着した場合には△、20回以上擦っても付着しない場合には○とした。
(4)リサイクル性
中空構造を有する層(E)を構成するオレフィン系重合体(D)のうちの23重量%として、先に製造した本発明の成形体を粉砕、再生処理して得られたペレットを用いて成形体を成形し、得られた成形体の外観を目視確認する。外観不良のものは×、外観不良はほとんどないが再生ペレット無のものと外観が異なるものは△、再生ペレット有無で変化なしのものは○とした。
【0042】
[実施例1]
中空構造を有する層(E)を構成するオレフィン系重合体(D)としてプロピレン系樹脂(住友化学工業(株)製 商品名 住友ノーブレン AS171G)100重量部を用い、帯電防止層(C)を構成するオレフィン系重合体(A)としてプロピレン系樹脂(住友化学工業(株)製 商品名 住友ノーブレン AS171G)100重量部および酸変性低分子量ポリプロピレン(重量平均分子量30000、酸価 約52、三洋化成工業株式会社製 商品名 ユーメックス1010)8重量部、高分子型帯電防止剤(B)としてポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体(三洋化成工業(株)製 商品名 ペレスタット300)15重量部をドライブレンドしたもの用いた。
平行リブ構造とその上下にライナー構造を有する中空構造を有する層(E)と、ライナーの外側に各1層を設けることのできる構造を有する2種3層異形ダイスを用いて、中空構造を有する層(E)の両側に帯電防止層(C)が積層されてなる成形体を共押出成形により製造した。
得られた成形体は厚さ5mm、帯電防止層(C)の厚さdは25μm、中空構造を有する層(E)の厚さLは4950μm、リブとリブの間隔4mm、目付け(単位面積当たりの重量)1000g/m2であった。表面抵抗率は3.7×1010Ω/□、粉落ち性は○、表面剥離性は○であった。
該成形体を粉砕して再ペレット化したものをオレフィン系重合体(D)として用いて製造した成形体は、リサイクル性○であった。
【0043】
[実施例2]
中空構造を有する層(E)としては、オレフィン系重合体(D)としてプロピレン系樹脂(住友化学工業(株)製 商品名 住友ノーブレン EL80F1)50重量部およびプロピレン系樹脂(住友化学工業(株)製 商品名 住友ノーブレン AW191A)50重量部を用い、さらに珪藻土1重量部を配合した樹脂組成物を使用した。
帯電防止層(C)を構成するオレフィン系重合体(A)としてプロピレン系樹脂(住友化学工業(株)製 商品名 住友ノーブレン AW191A)100重量部、高分子型帯電防止剤(B)としてポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体(三洋化成工業(株)製 商品名 ペレスタット300)20重量部をドライブレンドしたもの用いた。
マルチマニホールド式の2種3層ダイスを備えた炭酸ガス発泡シート押出機を用いて、中空構造を有する層(E)を構成する樹脂組成物を溶融混練したものに炭酸ガスを注入して中空構造を有する層(E)を形成し、該中空構造を有する層(E)の両側に帯電防止層(C)が積層されてなるシート状成形体を共押出成形により製造した。
得られた成形体は厚さ4mm、帯電防止層(C)の厚さdは30μm、中空構造を有する層(E)の厚さLは3940μm、空隙率φは66%であった。表面抵抗率は5.4×1010Ω/□、粉落ち性は○、表面剥離性は○であった。
該成形体を粉砕して再ペレット化したものをオレフィン系重合体(D)として用いて製造した成形体は、リサイクル性○であった。
【0044】
[比較例1]
高分子型帯電防止剤(B)の替わりに低分子の帯電防止剤であるグリセリン脂肪酸エステル系帯電防止剤(丸菱油化(株)製 商品名 デノン2220)を用いた以外は実施例1と同様にして成形体を製造した。表層には著しいむらが発生し外観不良の著しいものであった。表面抵抗率は1016Ω/□以上、粉落ち性は×、表面剥離性は×と劣ったものであった(リサイクル性評価はせず)。
【図面の簡単な説明】
【図1】中空構造を有する層(E)に帯電防止層(C)を貼合する工程の1例を示す図
【図2】本発明の成形体断面の1例を示す図(中空構造を有する層が段ボール形状の場合)
【図3】本発明の成形体断面の1例を示す図(中空構造を有する層が発泡体の場合)
【図4】本発明の2次成形体断面の1例を示す図(中空構造を有する層が発泡体の場合)
【図5】図4の破線囲み部分の拡大図
【符号の簡単な説明】
1:帯電防止層(C)
2:中空構造を有する層(E)
3:成形体
4:リブ
5:ライナー
6:中空部
7:リブ上に位置するライナーと帯電防止層(C)との界面
8:中空部上に位置するライナーと帯電防止層(C)との界面
9:樹脂部
10:2次成形体の帯電防止層(C)近傍が中空(発泡部分)の箇所
11:2次成形体の帯電防止層(C)近傍が中実の箇所
Claims (6)
- 表面の少なくとも一部に帯電防止層(C)を有し、該帯電防止層(C)が中空構造を有する層(E)に積層されてなる成形体であって、帯電防止層(C)がオレフィン系重合体(A)100重量部および高分子型帯電防止剤(B)1〜200重量部を含有する厚さd(μm)の層であり、中空構造である層(E)が、オレフィン系重合体(D)からなる空隙率φ(体積%)以上である厚さL(μm)の層であって、d、Lおよびφが以下の式1〜3を満たすことを特徴とする成形体。
5≦d≦100 (式1)
1000≦L (式2)
0.1≦(100d/(L(1−0.01φ)))≦30 (式3) - オレフィン系重合体(A)、オレフィン系重合体(D)の少なくとも一方がプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の成形体。
- 高分子型帯電防止剤(B)が、オレフィン系モノマーが重合されてなるオレフィン系ブロックと、親水性モノマーが重合されてなる親水系ブロックとが繰り返し交互に結合した構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の成形体。
- 成形体がシートであることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の成形体。
- 請求項4に記載のシートをプレス成形およびまたは真空・圧空成形することを特徴とする2次成形体の製造方法。
- 請求項5に記載の製造方法によって得られた2次成形体。
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