JP5786996B1 - 離型フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】回路基板を製造する際に加熱プレス時のマージンが広く、基板表面への追従性、加熱プレス時における接着剤の流れ出し及びフィルム端部での中間樹脂のはみ出しの抑制、しわを生じない程の耐熱性、および離型性がバランスよく満たすことができる離型フィルムを提供すること。【解決手段】本発明の離型フィルムは、ポリエステルを30wt.%以上含む材料で構成されているクッション層と、その少なくとも一方の面に設けられた離型層とを含む離型フィルムであって、厚さ120μm、幅4mm、長さ20mmの離型フィルムを、動的粘弾性測定装置で、引っ張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/minで測定したときの190℃における貯蔵弾性率が5.0?106[Pa]〜5.0?107[Pa]である。【選択図】図1

Description

本発明は、離型性に優れ、基板表面への追従性に優れ、熱プレス成型時のはみ出しを抑制できる、成形性の良い離型フィルムに関する。
離型フィルムとしては、たとえば、以下のものがある。
特許文献1、2には、クッション層としてポリオレフィン系樹脂を使用した離型フィルムが開示されている。しかしながら、クッション層としてポリオレフィン系樹脂を使用した場合、離型性と追従性、中間層のはみ出し量抑制を両立することが困難といった問題があった。
特開2011−62919号公報 特開2008−105319号公報
特許文献1および2に記載の離型フィルムを使用した場合、加熱プレスのマージンが狭く、プレス条件を変更すると、フィルム端部での中間樹脂のはみ出しが生じることがあった。このような場合、当該離型フィルムを剥離した後に、離型フィルムの一部が汚染物として残り、良好な成型品が得られないという課題がある。
上記事情に鑑みて、本発明は、加熱プレス時のマージンが広く、基板表面への追従性、熱プレス時における接着剤の流れ出し及びフィルム端部での中間樹脂のはみ出しの抑制、しわが生じない程度の耐熱性、および離型性をバランスよく満たすことができる離型フィルムを提供するものである。
このような目的は、下記(1)〜()の本発明により達成される。
(1) ポリエステルを30wt%以上含む材料で構成されているクッション層と、その少なくとも一方の面に設けられた離型層とを含む離型フィルムであって、
厚さ120μm、幅4mm、長さ20mmの離型フィルムを、動的粘弾性測定装置で、引っ張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/minで測定したときの190℃における貯蔵弾性率が、5.0×10[Pa]〜5.0×10[Pa]であり、さらに、
前記クッション層を、厚さ100μm、幅4mm、長さ20mmのフィルムとし、動的粘弾性測定装置で、引っ張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/minで測定したときの50℃〜130℃の貯蔵弾性率の最小値をA[Pa]、該最小値Aの測定温度をT ℃とし、
100℃〜160℃の貯蔵弾性率の最大値をB[Pa]、該最大値Bの測定温度をT ℃としたとき、
A<B、かつT <0.9T を満たすことを特徴とする離型フィルム。
) 前記ポリエステルが、非晶性ポリエステルおよび結晶性ポリエステルの2種を含む上記()に記載の離型フィルム。
) 前記クッション層中の非晶性ポリエステルは、1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレートである上記()に記載の離型フィルム。
) 前記クッション層中の結晶性ポリエステルは、ポリブチレンテレフタレートである上記()または上記()に記載の離型フィルム。
) 前記クッション層中の前記非晶性ポリエステルの含有量をX[wt%]とし、前記結晶性ポリエステルの含有量をY[wt%]としたとき、
X:Y=50:50〜90:10を満たす上記()ないし上記()のいずれかに記載の離型フィルム。
) 前記離型層の構成材料は、ポリエステルを含む上記(1)ないし上記()のいずれかに記載の離型フィルム。
) 前記クッション層の厚さをt[μm]、前記離型層の合計厚さをt[μm]としたとき、
/t=0.08〜1である上記(1)ないし上記()のいずれかに記載の離型フィルム。
本発明によれば、離型性に優れ、基板表面への追従性に優れ、熱プレス成型時のはみ出しを抑制することができる、成形性の良い離型フィルムを提供することができる。
本発明の離型フィルムの実施形態の断面図である。 本発明の離型フィルムの製造装置の一例を示す図である。 本発明のクッション層の貯蔵弾性率測定結果を示す図である。
本発明の離型フィルムについて、添付図面に示す実施形態を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の離型フィルム10の実施形態を示す断面図である。本発明の離型フィルム10は、図1に示すように、クッション層1と、その一方の面側に設けられた離型層2と、その他方の面側に設けられた離型層3とを有している。図示の実施形態では、クッション層1の両面に、離型層2、3がそれぞれ接合されている。
なお、図1は本発明の一例を示しており、離型層2または離型層3のいずれか一方は省略されていてもよい。
(クッション層)
クッション層1について詳細に説明する。クッション層1は、離型フィルム10の離型層2(または3)を隣接する対象物表面の間隙に埋め込むためのクッション機能を備えている。また、クッション層1を有する離型フィルム10とすることで、加熱プレスする際に離型フィルム10を配置した対象物全体にかかる圧力が均一となるようにすることができる。さらに、フレキシブル回路基板を製造する場合には、外観の仕上がり(特にしわの発生を低減)を優れたものとすることができる。
クッション層1は、ポリエステルを30wt%以上含む材料で構成されているのが好ましい。クッション層1中にポリエステルを30wt%以上含むことで、離型フィルム10として使用する場合に、ポリエステルは耐熱性が高いことから、プレス時のクッション層1の構成材料のはみ出しが少なく、熱板への汚染が少ないという利点がある。一般的に、ポリオレフィンは耐熱性が低いため、クッション層1にポリオレフィンを使用する場合、プレス時の溶融によるクッション層1の構成材料のはみ出しによって、プレス時に用いる熱板への付着が生じ、熱板の汚染が起こる。しかし、ポリエステルを30wt%含むことにより、上記の問題を防ぐことができる。
クッション層1を構成する材料中のポリエステルの含有量は、30wt%以上であるのが好ましく、50wt%以上であるのがより好ましく、特に80wt%以上であるのが好ましい。これにより、前述したクッション層1の構成材料のはみ出しによる前記熱板の汚染を効果的に抑制することができる。クッション層1の構成材料中、ポリエステルが30wt%未満の場合、耐熱性が低下し、プレス時のクッション層1のはみ出しの抑制効果が低下する恐れがある。
前記ポリエステルは、酸成分としてテレフタル酸等の2価の酸またはエステル形成能を持つ誘導体を用い、グリコール成分として炭素数2〜10のグリコール、2価のアルコールまたはエステル形成能を有する誘導体を用いて得ることが出来るポリエステルをいう。
前記ポリエステルは、非晶性ポリエステルおよび結晶性ポリエステルの2種を含む材料で構成されていることが好ましい。クッション層1が非晶性ポリエステルと結晶性ポリエステルの2種を含む材料で構成されていることによって、非晶性ポリエステルはプレス温度で貯蔵弾性率が低下し、対象物に対する追従性に優れる特性を示し、また、結晶性ポリエステルはプレス温度で結晶化することにより、貯蔵弾性率が上昇し、離型する際の離型を軽くすることができる。このように、結晶性ポリエステルおよび非晶性ポリエステルを含むことで、追従性と軽剥離を両立することができるという利点がある。
前記非晶性ポリエステルは、具体的には、1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレートとは、ポリエチレンテレフタレートのエチレングリコールをシクロヘキサンジメタノールで置換した構造であり、エチレングリコールとシクロヘキサンジメタノールの比率は、エチレングリコールをα、シクロヘキサンジメタノールをβとしたとき、α:β=10:90〜90:10が好ましく、α:β=30:70〜70:30がより好ましい。これにより、プレス温度での貯蔵弾性率を効果的に低下することができる。また、エチレングリコール比率が前記範囲内であると、適切な結晶性を示すことによりクッション層の追従性が良好になる。一方で、シクロヘキサンジメタノール比率が前記範囲内であると適切な耐熱性を示すことにより、離型フィルム10として耐熱性を有することができる。
前記結晶性ポリエステルは、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートのようなポリアルキレンテレフタレート、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートのような共重合体が挙げられるが、これらの中でもポリブチレンテレフタレートが好ましい。ポリブチレンテレフタレートは、結晶化速度が比較的速いことから、プレス中に十分に結晶化を起こすことができ、フィルムの貯蔵弾性率の上昇に寄与する。これによりフィルムの剛性が上昇し、離型する際の離型を軽くすること(離型性を向上すること)ができる。
前記ポリエステルは、非晶性ポリエステルの含有量をX[wt%]とし、結晶性ポリエステルの含有量をY[wt%]としたとき、X:Y=50:50〜90:10を満たすことが好ましい。非晶性ポリエステルと結晶性ポリエステルの比率が前記範囲内に含まれていると、加熱プレス時に追従性良く、はみ出し量が少なく、加熱プレス後の離型フィルム剥離工程における剥離を軽くすることができる。前記範囲外であると、他の条件によっては、追従性と軽剥離を両立できる効果が低下するおそれがある。
クッション層1には、後述する貯蔵弾性率を調整するためにポリエステル以外の樹脂を含んでいてもよい。このような樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のαオレフィン系重合体、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、メチルペンテン等を共重合成分として有するαオレフィン系共重合体、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド等のエンジニアリングプラスチック系樹脂が挙げられ、これらを単独あるいは複数併用してもよい。これらの中でもαオレフィン系重合体が好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられる。
クッション層1には、前記樹脂以外の添加物、例えば、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、染料および顔料等の着色剤、安定剤等の添加剤、フッ素樹脂、シリコンゴム等の耐衝撃性付与剤、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク等の無機充填剤を含有させてもよい。
(離型層)
離型層2および3について詳細に説明する。離型層2および3は、それぞれ、成型品表面との離型性を保持するものである。また、当該離型フィルム10を配置する対象物に凹凸がある場合、対象物の形状に応じて離型層2または3が追従することができることから、パターン追従性の機能も備えている。離型フィルム10を配置する対象物側に離型層2または3が面していれば良いことから、離型層2または3のいずれか一方は、省略されていても良い。
離型層2および3の構成材料は、それぞれ、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)のようなポリオレフィン、シンジオタクチックポリスチレンのようなポリスチレン、フッ素樹脂のようなフッソ系樹脂から選ばれる1種または2種以上を含んでいる。これらの中でも耐熱性が高いことから、ポリエステルを含んでいるのが好ましい。このポリエステルは、耐熱性がより高いことから、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。耐熱性が高いことにより、離型する際の離型を軽くすること(離型性を向上すること)ができる。
離型層2および3の構成材料は、同じであっても異なっていても良いが、代替性を有することから、同じ材料または同質材料で構成されていることが好ましい。また、離型層2と離型層3の厚さは、同じでも異なっていてもよい。
離型層2および3には、前記樹脂以外の添加物、例えば、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、染料および顔料等着色剤、安定剤等の添加剤、フッ素樹脂、シリコンゴム等の耐衝撃付与剤、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク等の無機充填剤を含有させてもよい。
本発明の離型フィルム10は、このようなクッション層1と離型層2または3、あるいはクッション層1と離型層2および3を含んでいる。これにより、離型性に優れ、熱プレス成型時のはみ出しを抑制でき、成形性の良い離型フィルム10を得ることができる。
(離型フィルムの厚さ)
離型フィルム10の全体の厚さは、特に限定されないが、50〜150μmが好ましく、特に100〜130μmが好ましい。厚さが前記範囲内であると、加熱プレス時の追従性と、加熱プレス後の離型フィルム離型工程における剥離のバランスに優れる。
クッション層1の厚さは、特に限定されないが、25〜113μmが好ましく、特に50〜98μmが好ましい。厚さが前記範囲内であると、加熱プレス時のはみ出しを抑制することができる。厚さが前記上限値を超えると離型性を向上する効果が低下する場合があり、前記下限値を下まわると追従性を向上する効果が低減する場合がある。
離型層2と離型層3の厚さは、特に限定されないが、合計の厚さが、5〜70μmが好ましく、10〜60μmが好ましい。合計の厚さが前記範囲内であると離型性に優れる。厚さが前記上限値を超えると、追従性を向上する効果が低下する場合があり、厚さが前記下限値を下まわると、プレス時に離型層2または3の構成材料が基板表面に付着してしまう場合がある。
クッション層1の厚さをt、離型層2と離型層3を合計した厚さをtとしたとき、これらの比率は特に限定はされないが、t/t=0.08〜1を満たしていることが好ましく、t/t=0.5〜0.98を満たしていることがより好ましい。厚さの比率が前記範囲内であると、特にボイドの発生を効果的に抑制することできる。厚さの比率が前記比率の上限値を超えると、追従性を向上する効果が低減する場合があり、厚さの比率が前記下限値を下まわると、離型性を向上する効果が低下する場合がある。
(離型フィルムの特性)
このような離型フィルム10を、厚さ120μm、幅4mm、長さ20mmの形状とし、動的粘弾性測定装置で、引っ張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/minで測定したときの190℃における貯蔵弾性率は、5.0×10[Pa]〜5.0×10[Pa]である。離型フィルム10が前記貯蔵弾性率の範囲内である場合、熱成型時に離型フィルム10を適度に変形することができることから、回路パターンなどの基板上の凹凸形状への追従性が良好となる。前記貯蔵弾性率の下限値を下まわると、熱成型時に変形が生じ、はみ出し量が多くなる傾向を示す。また、前記貯蔵弾性率の上限値を超えると、前記基板上の凹凸形状への追従性が低下する。
(クッション層の特性)
このようなクッション層1を、厚さ100μm、幅4mm、長さ20mmの形状とし、動的粘弾性測定装置で、引っ張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/minで測定したときの50℃〜130℃の貯蔵弾性率の最小値をA[Pa]、該最小値Aの測定温度をT℃とし、100℃〜160℃の貯蔵弾性率の最大値をB[Pa]、該最大値Bの測定温度をT℃としたとき、A<B、かつT<0.9Tを満たしていることが好ましい。
図3に一例として、1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート80wt%とポリブチレンテレフタレート20wt%を含むクッション層の貯蔵弾性率変化を示す。50℃〜130℃の貯蔵弾性率の最小値Aは、3.0×10[Pa](測定温度Tは114℃)であり、100℃〜160℃の貯蔵弾性率の最大値Bは7.4×10[Pa](測定温度Tは145℃)であり、A<BかつT<0.9Tを満たしている。50℃〜130℃の貯蔵弾性率の低下により、熱プレス時の追従性が良好となり、100℃〜160℃の貯蔵弾性率の上昇により、クッション層の剛性が増加し、離型する際の剥離を軽くすることができる。また、T<0.9Tを満たしていることから、熱プレス時の追従性と離型する際の剥離が軽くなるとともに、後述するカバーレイフィルムの接着剤(カバーレイ接着剤)のしみ出しを抑制することができる。
クッション層が前記条件を満たすことにより、50℃〜130℃の温度範囲で貯蔵弾性率の低下が生じ、熱プレス時の追従性が良好であり、かつカバーレイフィルムの接着剤のしみ出しを抑制することができる。また、100℃〜160℃の温度範囲で貯蔵弾性率の上昇により、クッション層の剛性が増加し、離型する際の剥離が軽くなる。貯蔵弾性率が前記範囲内にあることで、しみ出しの抑制と離型する際の剥離を軽くすることができる。前記A<Bの条件を満たさない場合、50℃〜130℃で貯蔵弾性率が高く、100℃〜160℃で貯蔵弾性率の低下が生じるため、熱プレス時の追従性を向上する効果が低下し、離型する際の剥離を軽くする効果が低下する場合がある。また、前記T<0.9Tの条件を満たさない場合、50℃〜130℃の温度範囲と100℃〜160℃の温度範囲内で貯蔵弾性率の変化が小さいことから、熱プレス時の追従性を向上する効果が低下し、離型する際の剥離を軽くする効果が低下する場合がある。
(製造方法)
以下、製造方法の一例を効果とあわせて説明する。離型フィルム10の製造方法は、特に限定されず、例えば、クッション層1と離型層2とを、またはクッション層1と離型層2と離型層3とを、別々に製造してからラミネーター等により接合して離型フィルム10を得てもよいが、クッション層1と離型層2とを、またはクッション層1と離型層2と離型層3とを例えば空冷式または水冷式共押出インフレーション法、共押出Tダイ法で製膜する方法で離型フィルム10を得る方法が好ましい。
また、クッション層1と離型層2とを、またはクッション層1と離型層2と離型層3とをそのまま接合しても良いし、接着層を介して接合しても良い。
なかでも共押出Tダイ法で製膜する方法が各層の厚さ制御に優れる点で特に好ましい。共押出Tダイ法では、クッション層1と離型層2とを、またはクッション層1と離型層2と離型層3とを同時に押し出すことにより離型フィルム10を製造する。なお共押出Tダイ法では、ダイス510を通過した溶融物Mは、図2に示すように、第1ロール530に誘導されると共にタッチロール520によって第1ロール530に固定化され、第1ロール530から脱離するまでの間に第1ロール530により冷却され、離型フィルム200となる。その後、その離型フィルム200は、第2ロール540によりフィルム送り方向(図2の矢印参照)下流側に送られ、最終的に巻取ロール(図示せず)に巻き取られる。なお、このとき、フィルムの結晶化を防ぐため、第1ロール530の温度は20〜50℃であるのが好ましく、タッチロール520の温度は20〜50℃であるのが好ましい。第1ロールに対する第2ロールの周速比は0.990〜0.998であるのが好ましい。第1ロール、タッチロールを前記温度とし、溶融物Mを急冷することにより、離型フィルム200の結晶化を防ぐことができる。
なお、上記では、溶融物Mを第1ロール530に固定するのは、タッチロール520を使う場合を例にして説明したが、タッチロール520に変えてエアナイフを使用してエアーで第1ロール530に固定することもできる。
この急冷条件が離型フィルム10の特性と密接に関係しており、急冷速度が、50℃/秒〜60℃/秒の範囲内であると、離型フィルム200の結晶化を防ぐことができる。これにより、離型フィルム10に含まれる樹脂が離型フィルム10として使用できる適切な柔軟性を付与することが可能となる。その結果、加熱プレス時の良好な追従性、はみ出し量の低減、および加熱プレス後の離型フィルム剥離工程における剥離を軽くすることができる離型フィルム10を得ることができる。
急冷速度が50℃/秒〜60℃/秒の範囲内で製造した離型フィルム10の、前記条件で測定した離型フィルム10の貯蔵弾性率は、5.0×10[Pa]〜5.0×10[Pa]となる。急冷速度が前記上限値以下であることで過度な結晶化上昇を防ぎ、貯蔵弾性率の上昇を防ぐことができる。また、急冷速度が前記下限値以上であることで過度な結晶化低下を防ぎ、貯蔵弾性率の低下を防ぐことができる。その結果、離型フィルム10を使用するときに、熱プレス成形に耐えうる耐熱性を発現することができ、熱プレス時の加熱温度によって離型フィルム10が柔らかくなり、良好な追従性を示し、さらには、はみ出し量の低減、および加熱プレス後の離型フィルム剥離工程における剥離を軽くすることができる。
急冷速度が50℃/秒〜60℃/秒の範囲内で製造したクッション層1の、前記条件で測定したクッション層1の貯蔵弾性率は、50℃〜130℃の貯蔵弾性率の最小値をA[Pa]、該最小値Aの測定温度をT℃とし、100℃〜160℃の貯蔵弾性率の最大値をB[Pa]、該最大値Bの測定温度をT℃としたとき、A<B、かつT<0.9Tを満たしていることが好ましい。
急冷速度が前記上限値以下であることで過度な結晶化上昇を防ぎ、クッション層1の貯蔵弾性率はA<Bを示している。これにより、50℃〜130℃の温度範囲では貯蔵弾性率の低下が生じ、熱プレス時の追従性が良好となる。また、100℃〜160℃の温度範囲では貯蔵弾性率の上昇により、クッション層1の剛性が増加し、離型する際の剥離が軽くなる(離型性が向上する)。
また、急冷速度が前記下限値以上であることで過度な結晶化低下を防ぎ、A<B、かつT<0.9Tを満たしていることが好ましい。これにより、50℃〜130℃の温度範囲での貯蔵弾性率の低下が生じ、熱プレス時の追従性が良好であり、かつ接着剤のしみ出しを抑制することができる。100℃〜160℃の温度範囲では貯蔵弾性率の上昇により、クッション層1の剛性が増加し、離型する際の剥離が軽くなる(離型性が向上する)。さらには、過度な結晶化低下を防ぐことから、AとBのそれぞれの貯蔵弾性率を示す温度がT<0.9Tを満たしていることが好ましく、熱プレス時の追従性と離型する際の剥離が軽くなるとともに、接着材のしみ出しを抑制することができる。
<αTで表わされる係数αは、α=0.9が好ましく、α=0.85がより好ましく、α=0.8が特に好ましい。これにより、貯蔵弾性率が低下する温度Tと貯蔵弾性率が上昇する温度Tの温度差がより顕著になり、離型フィルム10を使用するときの使用温度のマージンをより広くすることができる。
離型フィルム10の使用方法は、具体的には、回路が露出したフレキシブルフィルム(以下「回路露出フィルム」と称する)に接着剤を介してカバーレイフィルム(以下「CLフィルム」と称する)を加熱プレスにより接着してフレキシブルプリント回路基板(以下「FPC」と称する)を作製する際の離型フィルム10として用いられる。
本発明の離型フィルム10を使用するときの加熱プレスは、Hot−HotプレスとCold−Hotプレスの条件でプレスすることができる。Hot−Hotプレスは、熱板を高温に保持してプレスをするプレス方法であり、Cold−Hotプレスは、室温でプレスし、プレスしながら熱板を室温から高温に挙げていくプレス方法である。特に限定されないが、例えば、Hot−Hotプレスは、熱板を190℃に保持し、圧力60kg/cmで2分プレスする。Cold−Hotプレスは、特に限定されないが、例えば、室温(25℃)で圧力60kg/cmでプレスを行い、25℃から170℃まで15分掛けて昇温し、170℃で35分間保持し、50分掛けて室温(25℃)まで降温する。
本発明の離型フィルム10を使用する際は、Hot−HotプレスとCold−Hotプレスのどちらのプレス方法でも使用できるが、Hot−Hotプレス時に、特に優れた特性を示す。プレス温度は、150〜220℃が好ましく、160〜200℃が特に好ましい。プレス圧力は、40〜120kg/cmが好ましく、50〜100kg/cmが特に好ましい。プレスする時間は特に限定されないが、1〜5分が好ましく、2〜3分が特に好ましい。プレス温度が前記範囲内であると、CLフィルム接着材の接着性不良や、離型フィルム10からの中間層のはみ出しによる汚染、冷却後に離型フィルム10が張り付いてしまうといった問題を抑制することができる。また、プレス圧力が前記範囲内であると、離型フィルム10の追従性が悪くなる問題や離型フィルム10からの中間層のはみ出しによる汚染を抑制することができる。また、プレス時間が前記範囲内であると、離型フィルム10からの中間層のはみ出しによる汚染、離型フィルム10の追従性が悪くなる問題やCLフィルム接着剤の接着性不良を抑制することができる。
前述した貯蔵弾性率の測定装置は、特に限定されないが、DMA7100(日立ハイテクサイエンス社製)、DMS7100(エスエスアイ・ナノテクノロジー社製)、DMS6100(エスエスアイ・ナノテクノロジー社製)等の動的粘弾性測定装置を使用して測定しても良い。
本実施形態の離型フィルム10では、クッション層1、離型層2および離型層3の3層で構成されているもの、または、クッション層1および離型層2(または3)の2層で構成されているものを示したが、本発明はこれに限定されず、クッション層1、離型層2または3のいずれかの層に隣接して別の層、例えば、接着層、ガスバリア層等の層が1層以上存在していてもよい。すなわち、離型フィルム10の層数は、例えば、4層、5層、6層等、4層以上の構成であってもよい。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)クッション層1の原料
ポリブチレンテレフタレート:品番1100−211S、(CHANG CHUN PLASTICS CO.,LTD.製)
1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合体ポリエチレンテレフタレート:品番SKYGREEN PETG S2008、(SKchemicals.)製
(2)離型層2、離型層3の原料
ポリブチレンテレフタレート:品番1100−211S、(CHANG CHUN PLASTICS CO.,LTD.製)
(3)離型フィルムの製造方法
3台の押出機にそれぞれ表1に示すクッション層1、離型層2、離型層3の樹脂を供給し、三層マルチマニホールドダイより共押出して離型フィルムを作製した。図2に示す装置を用いてフィルムを作製した際の、タッチロール520および第1ロール530の温度を表1記載の温度とし、第1ロール530に対する第2ロール540の周速比は0.998であった。
クッション層1と離型層2の2層の場合は、2台の押出機にそれぞれ表1に示すクッション層1、離型層2の樹脂を供給し、二層マルチマニホールドダイより共押出して、クッション層1、離型層2、離型層3の樹脂を供給した場合と同様にして離型フィルムを作製した。タッチロール、第1ロールの温度は表1記載の温度とし、第1ロール530に対する第2ロール540の周速比は0.998であった。
(実施例1)
前記(3)の離型フィルムの製造方法に従い、表1に示すクッション層1、離型層2、離型層3の原料、タッチロール温度条件に従い離型フィルムを作製した。各層の厚さを表1に示す。また、表1に示すクッション層1の原料を用いて、押出Tダイ法により単層ダイスを用いてクッション層1用原料を単層で押し出して単層フィルムを得た。
(実施例2)
表1に示す実施例2の原料、条件に従い実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。各層の厚さを表1に示す。また、表1に示すクッション層1の原料を用いて、実施例1と同様にして単層フィルムを得た。
(実施例3)
表1に示す実施例3の原料、条件に従い実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。各層の厚さを表1に示す。また、表1に示すクッション層1の原料を用いて、実施例1と同様にして単層フィルムを得た。
(実施例4)
表1に示す実施例4の原料、条件に従い実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。各層の厚さを表1に示す。また、表1に示すクッション層1の原料を用いて、実施例1と同様にして単層フィルムを得た。
(実施例5)
表1に示す実施例5の原料、条件に従い実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。各層の厚さを表1に示す。また、表1に示すクッション層1の原料を用いて、実施例1と同様にして単層フィルムを得た。
(実施例6)
表1に示す実施例6の原料、条件に従い実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。各層の厚さを表1に示す。また、表1に示すクッション層1の原料を用いて、実施例1と同様にして単層フィルムを得た。
(実施例7)
表1に示す実施例7の原料、条件に従い実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。各層の厚さを表1に示す。また、表1に示すクッション層1の原料を用いて、実施例1と同様にして単層フィルムを得た。
(実施例8)
表1に示す実施例8の原料、条件に従い実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。各層の厚さを表1に示す。また、表1に示すクッション層1の原料を用いて、実施例1と同様にして単層フィルムを得た。
(実施例9)
表1に示す実施例9の原料、条件に従い実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。各層の厚さを表1に示す。また、表1に示すクッション層1の原料を用いて、実施例1と同様にして単層フィルムを得た。
(比較例1)
表1に示す比較例1の原料、条件に従い実施例1と同様と同様にして離型フィルムを作製した。各層の厚さを表1に示す。また、表1に示すクッション層1の原料を用いて、実施例1と同様にして単層フィルムを得た。
(比較例2)
表1に示す比較例2の原料、条件に従い実施例1と同様と同様にして離型フィルムを作製した。各層の厚さを表1に示す。また、表1に示すクッション層1の原料を用いて、実施例1と同様にして単層フィルムを得た。
(比較例3)
表1に示す比較例3の原料、条件に従い実施例1と同様と同様にして離型フィルムを作製した。各層の厚さを表1に示す。また、表1に示すクッション層1の原料を用いて、実施例1と同様にして単層フィルムを得た。
(比較例4)
表1に示す比較例4の原料、条件に従い実施例1と同様と同様にして離型フィルムを作製した。各層の厚さを表1に示す。また、表1に示すクッション層1の原料を用いて、実施例1と同様にして単層フィルムを得た。
<評価項目>
各実施例、比較例で製造した離型フィルム、単層フィルムについて、以下に示す方法で特性を評価した。
(離型フィルムの貯蔵弾性率)
作製した離型フィルムを幅4mm、長さ20mmに切断してテストピースを作製し、このテストピースに対し、次のようにして貯蔵弾性率の測定を行った。動的粘弾性測定装置DMS6100(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いて、引っ張りモード(荷重:100mN)、周波数1Hz、昇温速度5℃/minで30℃から200℃まで昇温し、190℃での貯蔵弾性率の値を測定した。測定結果を表1に示す。
(単層フィルムの貯蔵弾性率)
各実施例、比較例で作製した単層フィルムを幅4mm、長さ20mmに切断してテストピースを作製し、このテストピースに対し、次のようにして貯蔵弾性率の測定を行った。離型フィルムの貯蔵弾性率の測定条件と同様の測定条件で貯蔵弾性率を測定し、50℃〜130℃の貯蔵弾性率の最小値と、100℃〜160℃の貯蔵弾性率の最大値を測定した。測定結果を表1に示す。
(離型性)
各実施例および各比較例で得られた離型フィルムを用いて、L/Sが100/100μmの電気配線が形成された絶縁基板(FPC)上にカバーレイフィルムをプレスラミネートした。プレスラミネートでは、ステンレス鋼板、ゴムクッション、フッ素樹脂シート、離型フィルム、カバーレイフィルム、FPC、離型フィルム、フッ素樹脂シート、ゴムクッション、ステンレス鋼の順で各部材を重ね、195℃、2分、6MPaで熱プレスを行い、プレスした。これにより、FPC上にカバーレイフィルムをプレスラミネートしたサンプルを得た。
引っ張り試験機(エーアンドデイ社製Force gauge AD−4932A−50N)を用いて、180°方向に約1000mm/分の速度で、離型面とサンプルの剥離力を測定した。測定はプレス直後に実施し、以下の基準に基づいて離型性を評価した。評価結果を表1に示す。
◎:1.0N以下
○:1.0N超1.5N未満
×:1.5N以上
(追従性:仕上がり外観しわ)
JPCA規格の「7.5.7.2項しわ」に準じて測定した。評価結果を表1に示す。
○:しわ発生率 2.0%未満
×:しわ発生率 2.0%以上
(クッション層のはみ出し量)
クッション層のはみ出し量として、離型フィルム端面はみ出し量を測定した。前記離型性の評価で使用したプレス後離型フィルムを、離型フィルム端面はみ出し長さ(フィルム4方向端面からの樹脂がはみ出した最大長さを測定)により評価した。はみ出し長さ3mm未満を合格とした。
◎:はみ出し長さ 1mm未満
○:はみ出し長さ 1mm以上3mm未満
×:はみ出し長さ 3mm以上
(カバーレイ接着剤のしみ出し量)
回路基板にカバーレイの接着剤のしみ出しがあるか否かを「JPCA規格の7.5.3.6項のカバーレイの接着剤の流れおよびカバーコートのにじみ」に準拠し、回路端子部へのしみ出し量を評価した。しみ出し量が1.50μm未満を合格とした。評価結果を表1に示す。
◎:しみ出し量 100μm未満
○:しみ出し量 100μm以上150μm未満
×:しみ出し量 150μm以上
(成形性)
成形性は、「JPCA規格の7.5.3.3項の気泡」に準じて目視にて評価した。各符号は、以下の通りである。評価サンプル数を各n=100として評価を行い、サンプル表面にボイドが確認されたものの数が評価サンプル数の2%未満のものを合格とした。評価結果を表1に示す。
○:ボイド発生率 2.0%未満
×:ボイド発生率 2.0%以上
Figure 0005786996
表1からわかるように、実施例1〜9は、いずれも、離型フィルムの貯蔵弾性率が5.0×10[Pa]〜5.0×10[Pa]であることから、離型性や追従性がよく、クッション層のはみ出し量やカバーレイ接着剤のしみ出し量が少なく、さらには、ボイドの発生量も少なく、成形性にも優れていた。
これに対し、比較例1、2、4は、貯蔵弾性率が上限値を超えていることで、追従性が低下し、さらには、カバーレイ接着剤のしみ出し量が多い。
比較例3は、貯蔵弾性率が下限値を下まわっていることで、離型性が低下し、さらには成形性も低下した。
1 クッション層
2 離型層
3 離型層
10 離型フィルム
200 離型フィルム
510 ダイス
520 タッチロール
530 第1ロール
540 第2ロール

Claims (7)

  1. ポリエステルを30wt%以上含む材料で構成されているクッション層と、その少なくとも一方の面に設けられた離型層とを含む離型フィルムであって、
    厚さ120μm、幅4mm、長さ20mmの離型フィルムを、動的粘弾性測定装置で、引っ張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/minで測定したときの190℃における貯蔵弾性率が、5.0×10[Pa]〜5.0×10[Pa]であり、さらに、
    前記クッション層を、厚さ100μm、幅4mm、長さ20mmのフィルムとし、動的粘弾性測定装置で、引っ張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/minで測定したときの50℃〜130℃の貯蔵弾性率の最小値をA[Pa]、該最小値Aの測定温度をT ℃とし、
    100℃〜160℃の貯蔵弾性率の最大値をB[Pa]、該最大値Bの測定温度をT ℃としたとき、
    A<B、かつT <0.9T を満たすことを特徴とする離型フィルム。
  2. 前記ポリエステルが、非晶性ポリエステルおよび結晶性ポリエステルの2種を含む請求項に記載の離型フィルム。
  3. 前記クッション層中の非晶性ポリエステルは、1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレートである請求項に記載の離型フィルム。
  4. 前記クッション層中の結晶性ポリエステルは、ポリブチレンテレフタレートである請求項またはに記載の離型フィルム。
  5. 前記クッション層中の前記非晶性ポリエステルの含有量をX[wt%]とし、前記結晶性ポリエステルの含有量をY[wt%]としたとき、
    X:Y=50:50〜90:10を満たす請求項ないしのいずれかに記載の離型フィルム。
  6. 前記離型層の構成材料は、ポリエステルを含む請求項1ないしのいずれかに記載の離型フィルム。
  7. 前記クッション層の厚さをt[μm]、前記離型層の合計厚さをt[μm]としたとき、
    /t=0.08〜1である請求項1ないしのいずれかに記載の離型フィルム。
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