JPWO2019088180A1 - 粉末状組成物 - Google Patents

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Abstract

本発明は、水分、油分をバランス良く含み、かさつきを抑える効果が高い製剤でありながら、みずみずしい感触となじみの良さをあわせもち、また外観は粉末状でありながら、肌に塗布すると液化し、きしみ感がなく使用性に優れた粉末状組成物を提供することを目的とする。本発明の粉末状組成物は、(a)フッ素処理水酸化アルミニウム被覆平板状粉体と、(b)20mN/m以上の表面張力値を有する油性成分、(c)45mN/m以上65mN/m以下の表面張力値を有する水性成分を含有し、塗擦により液化することを特徴とする。さらに、本発明の粉末状組成物は、前記(b)成分の配合量は1〜50質量%であり、(b)成分と(c)成分の配合比が1:10〜3:1であることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、粉末状形態でありながら使用時の塗擦によって液化する粉末状組成物に関する。
塗擦により液化する粉末状組成物は、液状成分を撥水性・撥油性の高い粉体で包み込む構造を有する基剤からなり、外観は粉末状でありながら、使用時に皮膚へ塗擦すると液化するという特徴を有する。このような粉末状組成物は、含まれる液状成分の性質に応じた使用感が得られるとともに、製品の製造および運搬においても安定性が得られ、携帯にも適するため、化粧品分野において好ましく用いられている。
例えば、さっぱりした使用感を得ることを目的として水性成分と疎水化粉体を粉末化した基剤(特許文献1および2)や、しっとりとした使用感を得ることを目的として油性成分とフッ素処理粉体を粉末化した基剤(特許文献3および4)がある。しかしながら、前者は、乾燥後に皮膚のきしみが感じられるため、乾燥肌の消費者には適さないといった問題点があり、後者は、みずみずしい感触がないために、若年層の消費者には適さないといった問題点があった。
前記の問題点を解決するために、水と油の両方を含み、外観は粉末状でありながら、使用時に塗擦すると液化する粉末状化粧料が開発されている(特許文献5、6、7)。しかしながら、特許文献5に記載の基剤は、構成成分である疎水化(シリコーン処理)シリカの撥水性・撥油性が低いために、水相の表面張力を低下させるような多価アルコールや疎水化シリカとなじみのよい油分を少量しか配合することができないため、保湿効果やきしみ感の低減は十分でなかった。また、特許文献6に記載の基剤は、粉体の配合量が多いか、あるいは流動油とシリコーンワックスの配合量が多い基剤しか調製できず、水相が少ないので、みずみずしさと保湿性を満足するものではなかった。また、油分が固化されているために液化感が少なく、基剤の特徴が十分に活かせていなかった。特許文献7に記載の基剤は、界面活性剤を必須成分として含むため、撥水性・撥油性の高い粉体を用いているにもかかわらず、皮膚に塗布するとその効果は失われてしまう。また、界面活性剤が有する刺激性や合成界面活性剤の環境への負担を避け、安心安全嗜好の高い消費者にとっては、価値が低いものとなってしまう。さらに、粉体の含有量が水・油などの液体相の量に対して多い場合は、肌がかさつくため好ましくないと感じる消費者も少なくない。
特開2000−264813 特開2000−247823 特開2003−81733 特許第5922287号 特開平5−65212 特開2006−117646 特開2001−158716
本発明は、水分、油分をバランス良く含み、しっとりとした使用感で肌のかさつきを抑える効果が高い化粧料でありながら、みずみずしい感触となじみの良さをあわせもち、また外観は粉末状でありながら、肌に塗布すると液化し、きしみ感がなく使用性に優れた粉末状組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、フッ素処理水酸化アルミニウム被覆平板状粉体と、特定の油性成分と、特定の水性成分とを配合することによって、前記目的を達成する新規な特性を有する粉末状組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(a)フッ素処理水酸化アルミニウム被覆平板状粉体と、(b)20mN/m以上の表面張力値を有する油性成分と、(c)45mN/m以上65mN/m以下の表面張力値を有する水性成分とを含有する粉末状組成物に関する。さらに、本発明の粉末状組成物は、前記(b)成分の配合量が1〜50質量%であり、(b)成分と(c)成分の配合比が1:10〜3:1であることを特徴とする。
本発明の粉末状組成物は、外観は粉末状でありながら、肌に塗布すると液化する性質を有し、水分と油分をバランス良く含むので、肌のかさつきが抑制されるとともにきしみ感がなく、良好な使用感を得ることができる。また、十分な撥水性・撥油性を有するので、スキンケアのみならず、汗や皮脂などで落ちにくいメーキャップ化粧料にも活用することができる。さらに、安定した粉体状形態を有するので、製造および運搬適性に優れる。
以下、本発明の化粧料を構成する各成分について詳述する。
(a)フッ素処理水酸化アルミニウム被覆平板状粉体
本発明に用いられる(a)フッ素処理水酸化アルミニウム被覆平板状粉体(以下、単に「(a)成分」と称する場合がある)は、セリサイト、マイカなどの平板状粉体の表面に水酸化アルミニウムを析出させ、さらにフッ素基を付与して撥水性・撥油性をもたせるようにしたものを広く意味する。
被処理粉体としては、使用性(きしみ感のなさ、皮膚のかさつきのなさ、等)および衝撃に対する安定性の点から、粘土鉱物粉体が好ましく用いられる。粘土鉱物粉体は天然、合成のいずれのものも任意に用いることができる。粘土鉱物粉体としては、タルク(含水ケイ酸マグネシウム;3MgO・4SiO・HO)、カオリン(含水ケイ酸アルミニウム;Al・2SiO・2HO)、無水ケイ酸(SiO)、サポナイト(含水ケイ酸アルミニウムマグネシウム;SiO・Al・MgO、水の混合物)、セリサイト(微結晶含水ケイ酸アルミニウムカリウム;KO・3Al・6SiO、2HO)、マイカ(含水ケイ酸アルミニウムカリウム;KAl・AlSi10(OH))等が挙げられる。好ましくは、タルク、カオリン、無水ケイ酸、サポナイト、セリサイト、マイカの中から選ばれる1種または2種以上である粘土鉱物が用いられる。これら粘土鉱物を用いることにより、粉末状形態を維持しつつ、(b)成分をより高配合することができ、使用性(きしみ感のなさ、皮膚のかさつきのなさ、等)のより一層の向上を図ることができる。
なお、被処理粉体成分として、例えば、粘土鉱物を酸化チタン等でコーティングした酸化チタンセリサイトに例示される複合顔料も用いることができる。
被処理粉体の形状については、少ない粉体量で油分を効率よく粉体状化することができるという点から板状のものが好ましく用いられる。
本発明では、前記フッ素処理を施す前に、水酸化アルミニウムの析出処理を施しておく。このように水酸化アルミニウム析出処理した後に、フッ素処理することにより、フッ素化合物の被覆形成を安定に、効率よく進行させ、撥水性・撥油性により優れたフッ素処理粉末を製造することができる。また、水酸化アルミニウム被覆処理後にフッ素化処理した粉体を用いた場合、衝撃安定性(耐衝撃性)が著しく高められる。また肌などへの密着性向上効果にも優れる。
粉体表面への水酸化アルミニウム析出処理は、例えば、粉体に水を加えてスラリー状とし、ここに、前記アルミニウムのイオン性の強い水溶性化合物、例えば塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム等の水溶液を添加し、粉体表面にこれらの化合物を吸着させておく。次いで酸またはアルカリ溶液を加えて、粉体表面に吸着しているこれらの化合物を加水分解あるいは置換反応を起こさせ、前記金属水酸化物または金属塩の水和物、一部脱水物、無水物を生成させる。
粉体を被覆する前記金属水酸化物または金属塩の水和物、一部脱水物、無水物は少ないほど好ましく、粉体に対してこれらを生成させる金属化合物量として1〜30質量%が好ましい。1質量%未満では金属処理による効果を十分に奏することが難しく、一方、30質量%超では嵩高くなり粉体本来の機能が阻害される傾向がみられる。
次いで、前記の、表面を金属処理した粉体に、フッ素化合物に水を加えてエマルジョン状態にしたものを徐々に加え、酸または高温静置によってエマルジョンを破壊することにより、前記金属水酸化物または金属塩の水和物、一部脱水物、無水物によって被覆された粉体をさらにフッ素化合物で被覆することができる。
本発明のフッ素処理粉体には、(i)フッ素基を有する分子で粉体表面の一部ないしは全部を処理した処理粉体、(ii)フッ素基を含む高分子粉体等が例示されるが、これら例示に限定されるものではない。
前記(i)において、フッ素基を有する分子としては、特に限定されるものでないが、例えば、下記一般式(I)で表されるペルフルオロアルキルリン酸エステル・ジエタノールアミン塩、下記一般式(II)で表されるペルフルオロアルキルシラン、下記一般式(III)で表されるペルフルオロアルキルエチルアクリレート共重合体等が挙げられる。
(式中nは5〜20の整数を示し、mは1または2を示す。)
(式中aは1〜12の整数を示し、bは1〜5の整数を示し、Xはハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基を示す。)
(式中cは1〜12の整数を示し、dは5〜20の整数を示し、Yはポリエチレングリコールやシリコーン鎖、アクリル基等を含むアルキル共重合体を示す。)
また、ペルフルオロポリエーテルジアルキルリン酸およびその塩、ペルフルオロポリエーテルジアルキル硫酸塩およびその塩、ペルフルオロポリエーテルジアルキルカルボン酸およびその塩等に代表されるペルフルオロポリエーテル基を有する化合物も用いることができる。ここで「ペルフルオロポリエーテル基」とは、ペルフルオロアルキレンまたはペルフルオロアルキルと結合している酸素原子が少なくとも2以上有する基を意味し、分子量が300〜7000程度のものが撥油性・撥水性の点から好ましい。
フッ素化処理の方法は、特に限定されるものでないが、例えば次のような方法が挙げられる。すなわち、被処理粉体の水分散液に、フッ素化合物水溶液を徐々に添加した後、塩酸水溶液を加えて酸性に調整し、2時間程度熟成した後、濾過、乾燥、粉砕して、フッ素処理粉体を得る。
なお、粉体表面にフッ素基を付与して撥水性・撥油性をもたせるよう表面処理がされていれば、本発明効果を損なわない範囲において、その他の非フッ素基、例えばアルキル基やシリコーン基、親水基をさらに付加するような処理が施されていてもよい。
フッ素処理に用いられるフッ素化合物もまた粉体に対して1〜30質量%が好ましい。1質量%未満ではフッ素化合物の被覆形成が不十分で撥水性・撥油性を発現させるのが難しく、一方、30質量%超では嵩高くなり粉体本来の機能が阻害される傾向がみられる。
また、前記(ii)に示す粉体自体がフッ素基を含有する高分子粉体としては、例えばポリテトラフルオロエチレン粉体等が挙げられる。
本発明において、(a)成分の配合量は、組成物全量に対して10〜65質量%程度であり、さらには20〜60質量%程度、よりさらには30〜50質量%程度であることが好ましい。配合量が10質量%未満であると液状成分を粉末化できず、65質量%を超えるときしみを強く感じ、使用感が劣る。
本発明に用いられる(a)フッ素処理水酸化アルミニウム被覆平板状粉体としては、PF、PFXまたはFHS処理したセリサイト、合成マイカ、天然マイカ、酸化チタン、タルク、窒化ホウ素、ヒドロキシアパタイト(板状HAP−SC、太平化学産業社製)、ヒドロキシアパタイト被覆マイカ(アパミクロンMA10Y25S、積水化成品工業社製)、酸化チタン被覆マイカ、硫酸バリウム・酸化チタン被覆マイカ(Low Laster Pigment、メルク社製)、硫酸バリウム(板状硫酸バリウムHM、堺化学工業社製)、酸化チタン被覆マイカ(ティミロンスーパーレッド(メルク社製)、フラメンコレッド(BASF社製))等が挙げられる。
また、(a)成分以外の粉末成分を含む場合、全粉末成分に対する(a)成分の配合割合は50〜100質量%が好ましい。
(b)20mN/m以上の表面張力値を有する油性成分
本発明の(b)20mN/m以上の表面張力値を有する油性成分(以下、単に「(b)成分」と称する場合がある)は、1種または2種以上の油性成分からなり、油性成分全体の表面張力値が20mN/m以上(対大気)のものを指す。また、21mN/m以上、23mN/m以上、あるいは25mN/m以上の表面張力値を有する油性成分がより好ましい。(b)成分の表面張力値が20mN/m未満であると、(b)成分が粉末に容易に濡れるために、(b)成分を良好な粉末状形態とすることができない。
なお、「(b)成分の表面張力値」とは、液状をなす(b)成分全体の表面張力を、表面張力測定装置DCAT(英弘精機社製)を用いたウィルヘルミプレート法により測定した値をいう。(b)成分全体としての表面張力値が前記範囲を満足する限りにおいて、(b)成分の構成成分としての各油性成分が表面張力値20mN/m未満のものであっても用いることができる。したがって(b)成分には、固形、半固形、液状等、任意の性状の油性成分を含みうる。また(b)成分は均一溶解系のみならず、油分中に油分が分散する分散系も含む。
(b)成分としては、好ましくは、例えば流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素油、液状ラノリン、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ペンタエリスリトール、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、セチル−2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸、アセトグリセライド、パルミチン酸−2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソプロピル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セパチン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸−2−ヘキシルデシル、パルミチン酸−2−ヘキシルデシル、アジピン酸−2−ヘキシルデシル、セバチル酸ジイソプロピル、コハク酸−2−エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル、2エチルヘキサン酸エチル等の極性油分や、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール類、ホホバオイル、オリーブオイル、ナッツ油、ベニバナ油、大豆油等の植物油等が挙げられる。これらの中でも、特に好ましくは、表面張力値が比較的大きい流動パラフィンや、ホホバ油等の植物性油分である。
表面張力値の小さいジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状シリコーン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン等のシリコーン油や、「フォンブリン(登録商標)」シリーズ(ソルベイ社製)に代表される炭化フッ素油も、(b)成分全体としての表面張力値が20mN/m以上となる範囲において、少量であれば用いることができる。これら表面張力値の小さいシリコーン油や炭化フッ素油を大量に配合した場合、表面張力値が小さくなりすぎ、油性成分を十分に粉末状化できないことがある。
(b)成分は、肌上で溶解するように、融点が37℃程度以下あるいは常温で液状の油性成分が好ましいが、少量であればワックスやロウなどの固形油分を配合することもできる。ワックスやロウとしては、パーム硬化油、硬化ヒマシ油、ワセリン等の半固形状の油性成分や、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバロウ、キャンデリアロウなどが挙げられる。しかし、固形油分の配合量が多すぎると、塗布した際の液化感が低減するのであまり好ましくない。
(b)成分の配合量は、組成物全量に対して1〜50質量%であり、さらには3〜40質量%、よりさらには5〜35質量%であることが好ましい。(b)成分の配合量が1質量%未満であると肌へのなじみや保湿効果を十分発揮することができず、粉末のきしみも多く感じるおそれがある。一方、配合量が50質量%を超えると、油っぽい感触になり、使用感が劣る。
(c)45mN/m以上65mN/m以下の表面張力値を有する水性成分
本発明に用いられる(c)45mN/m以上65mN/m以下の表面張力値を有する水性成分(以下、単に「(c)成分」と称する場合がある)は、化粧料に一般的に配合される品質の蒸留水、イオン交換水、精製水に各種保湿剤や薬剤等を溶解した水性成分であって、表面張力値が45mN/m以上65mN/m以下、好ましくは47mN/m以上65mN/m以下の水性成分を指す。ここで、「(c)成分の表面張力値」とは、液状をなす(c)成分全体の表面張力を、表面張力測定装置DCAT(英弘精機社製)を用いたウィルヘルミプレート法により測定した値をいう。(c)成分全体としての表面張力値が前記範囲を満足する限りにおいて、(c)成分の構成成分としての各水性成分が前記表面張力値の範囲を満たさないものであっても用いることができる。
(c)成分の表面張力値が45mN/mより小さい場合には、衝撃により容易に転相(粉体が液体の中に分散された状態)し、空気を含むペースト状になり、(a)成分で安定に粉末化するのが難しくなる。65mN/mを超える場合には、組成物を肌上に塗擦した際の肌へのなじみが悪くなる。
(c)成分の配合量は、組成物全量に対して15〜70質量%であり、さらには15〜65質量%、よりさらには20〜60質量%であることが好ましい。(c)成分の配合量が15質量%未満であるとみずみずしさが失われる。一方、70質量%を超えるとしっとり感がなく、好ましくない。
水相に混合し、表面張力を適切な値とする物質としては、低級アルコール、多価アルコール、糖アルコール、ポリプロピレングリコール・ポリエチレングリコール共重合体ジメチルエーテル等がある。
低級アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、2価アルコール(例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等);3価アルコール(例えば、グリセリン等);4価アルコール(例えば、1,2,6−ヘキサントリオール等のペンタエリスリトール等);5価アルコール(例えば、キシリトール等);多価アルコール重合体(例えば、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等)等が挙げられる。特にポリエチレングリコールとしては平均分子量10万以下、具体的にはポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール4000等が好ましく用いられる。
また、糖アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール等);ポリエチレングリコール誘導体(例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジオレエート、ポリエチレングリコールジアセテート等);ポリプロピレングリコール・ポリエチレングリコール共重合体ジメチルエーテル(例えば、ポリプロピレングリコール(2モル)・ポリエチレングリコール(9モル)共重合体ジメチルエーテル、ポリプロピレングリコール(7モル)・ポリエチレングリコール(14モル)共重合体ジメチルエーテル、ポリオキシエチレン(14モル)ポリプロピレン(7モル)ランダム共重合体等);アルキルベンゾエート(例えば、コハク酸ジエトキシエチル、マロン酸ジエトキシエチル等)、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリン(例えば、ポリオキシエチレン(9モル)プロピオン酸グリセリン、ポリオキシエチレン(9モル)カプリン酸グリセリン等)、2価のカルボン酸ジネオペンチル(例えば、コハク酸ジネオペンチル、グルタル酸ジネオペンチル等)等も挙げられる。
(b)成分と(c)成分の配合比は、1:10〜3:1であることが好ましい。(b)成分の配合比が高すぎるとあぶらっぽい感触になり好ましくない。また(c)成分の配合比が高すぎると、しっとりした感触が得られず、好ましくない。
本発明の粉末状組成物は、界面活性剤を実質的に含まなくてもよい。本発明の粉末状組成物は、界面活性剤を配合しなくとも比較的多くの油分を配合することができる。組成物中に界面活性剤が存在する場合には、粉体に由来する撥水性および撥油性の効果が低くなる場合がある。
製造方法
本発明の粉末状組成物は、(a)成分に油相である(b)成分を噴霧混合したのち、続けて(c)成分を噴霧する工程により調製される。なお、油相および水相の噴霧はどちらが先でもよい。
なお、本発明の粉末状組成物には、前記(a)成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲において、粉末成分として、フッ素処理を施していない粉末や、薬剤等を粉末のまま配合してもよい。
また、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常の化粧料に用いられる各種の任意成分、例えば、香料、各種粉末、油溶性薬剤成分等を配合することができる。これら任意成分のうちビタミンA等の油溶性ビタミンおよびその誘導体、ステロール類、天然および合成の香料、紫外線吸収剤や水に難溶性の物質は油性成分中に配合し、水溶性の物質は水性成分中に配合してもよい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、配合量は全量に対する質量%を表す。
実施例に先立ち、本発明で用いた試験法および評価法を説明する。
[使用性(きしみ感のなさ)]
各実施例品、比較例品の使用性(きしみ感のなさ)を、パネラー(50名)の実使用試験によって下記の基準に従って判定、評価した。
(判定基準)
著効:きしまない
有効:わずかにきしむが、使用上問題のない程度である
やや有効:ややきしむ
無効:著しくきしむ
(評価)
A:著効、有効、およびやや有効の評価をした被験者が80%以上
B:著効、有効、およびやや有効の評価をした被験者が50〜80%未満
C:著効、有効、およびやや有効の評価をした被験者が30〜50%未満
D:著効、有効、およびやや有効の評価をした被験者が30%未満
[使用性(なじみのよさ、みずみずしさ)]
各実施例品、比較例品の使用性(なじみのよさ、みずみずしさ)を、パネラー(50名)の実使用試験によって下記の基準に従って判定、評価した。
(判定基準:なじみのよさ)
著効:肌へのなじみがよい
有効:肌へのなじみがややよい
やや有効:あまり肌になじまない
無効:肌へのなじみが悪い
(判定基準:みずみずしさ)
著効:みずみずしい
有効:ややみずみずしい
やや有効:あまりみずみずしくない
無効:全くみずみずしくない
(評価)
A:著効、有効、およびやや有効の評価をした被験者が80%以上
B:著効、有効、およびやや有効の評価をした被験者が50〜80%未満
C:著効、有効、およびやや有効の評価をした被験者が30〜50%未満
D:著効、有効、およびやや有効の評価をした被験者が30%未満
[かさつき抑制効果]
各実施例品、比較例品のかさつき抑制効果を、パネラー(50名)の3日間実使用試験によって下記の基準に従って判定、評価した。
(判定基準)
著効:非常にかさつきが抑制された
有効:ややかさつきが抑制された
やや有効:ややかさつきが抑制されたがあまり変化ない
無効:かさつきが悪化した
(評価)
A:著効、有効、およびやや有効の評価をした被験者が80%以上
B:著効、有効、およびやや有効の評価をした被験者が50〜80%未満
C:著効、有効、およびやや有効の評価をした被験者が30〜50%未満
D:著効、有効、およびやや有効の評価をした被験者が30%未満
[耐水性効果]
紫外線吸収剤を含む基剤を調製し、PMMAプレートに一定量を塗布し、UVスペクトルを測定した。このプレートを水洗し1分後にUVスペクトルを測定し、水洗前を1としたときのスペクトルの積分値の比を算出した。
[表面張力値の測定]
白金製のウィルヘルミプレートを用い、表面張力測定装置DCAT(英弘精機社製)にて表面張力値を測定した。
[耐衝撃性]
調製した基剤1gを30mlの樹脂容器に入れ、ペイントシェーカーで振とうさせ、ペースト状態になるまでの時間を測定した。ペースト状態になるまでの時間が長いほど耐衝撃性が高いことを示す。
[輸送テスト]
調製した基剤3gを30mlの樹脂容器に入れ、約30cm×20cm×10cmのダンボール箱にパッキンなしで10個を入れ、東京−大阪間をトラック便で往復輸送した。1個以上ペースト状になっていた場合には、不合格(不良)とした。
(実施例1、比較例1、2)
下記表1に示す組成で粉末状化粧料を調製した。前記試験方法により、各化粧料について粉末化の可否、使用性(きしみ感のなさ、みずみずしさ、なじみのよさ)、耐水性、ペーストになるまでの時間(耐衝撃性)、輸送テストを評価した。なお、表1中のフッ素処理マイカは「EPF MICA S」(大東化成工業社製)を用い、フッ素処理合成酸化チタンは「FSA−3 TiO2 CR−50」(大東化成工業社製)を用い、シリコーン処理タルクは「SA−タルク JA−13R」(三好化成工業社製)と「SA−タルク JA−46R」(三好化成工業社製)を混合して用いた。
(製法)
(4)〜(5)を混合、溶解した油相を(1)〜(3)の粉体にスプレーし、混合、撹拌したのち、(6)〜(7)を混合した水相をさらにスプレーし、混合、攪拌、容器に充填した。
表1の結果より明らかなように、(a)成分として、平版状でないフッ素化処理粉末を主として配合した場合(比較例1)およびシリコーン処理粉末を主として配合した場合(比較例2)には、化粧料を粉末化することができなかった。一方、本願発明の(a)成分を用いた場合(実施例1)には、化粧料を粉末化することが可能であり、使用性および耐水性に優れ、耐衝撃性や輸送テストで表される安定性にも優れていた。
(実施例2、3、比較例3〜6)
下記表2に示す組成で粉末状化粧料を調製した。前記試験方法により、各化粧料について使用性(きしみ感のなさ、みずみずしさ、なじみのよさ)、かさつき抑制効果、ペーストになるまでの時間(耐衝撃性)、輸送テストを評価した。なお、表2中のフッ素処理セリサイトは、「PF−10 AL−10 セリサイトFSE」(大東化成工業社製)を用いた。
(製法)
(2)〜(4)を混合し、溶解した油相を(1)の粉体にスプレーし、混合および撹拌したのち、(5)〜(9)を混合した水相をさらにスプレーし、混合および攪拌して、容器に充填した。なお、流動パラフィン((b)成分)の表面張力値は29.5mN/mであった。
表2の結果より明らかなように、水相の表面張力値が45mN/m未満である場合(比較例3)にはかさつき抑制の効果が低く、ペーストになるまでの時間および輸送テストで表される安定性評価がいずれも劣っており、水相の表面張力値が65mN/mを超える場合(比較例4)には、肌へのなじみやかさつき抑制の効果が低かった。また、水相の表面張力値が45mN/m以上65mN/m以下であっても、(b)油性成分の配合量が少ない場合(比較例5)には使用性が劣り、(c)水性成分の配合量が少ない場合(比較例6)には、みずみずしさやなじみのよさに欠け、輸送安定性もやや劣っていた。一方、水相の表面張力値を45mN/m以上65mN/m以下とし、かつ(b)および(c)成分の配合量を好ましい範囲に調整すると、使用感および安定性が良好な化粧料が得られた(実施例2、3)。
(実施例4、5)
下記表3に示す組成を用いて、日焼け止め効果を有するスキンケアパウダー(実施例4)およびデコルテ用ボディーパウダー(実施例5)を調製した。なお、表3中のフッ素処理タルクおよびフッ素処理酸化チタンは、それぞれタルクと微粒子酸化チタンに水酸化アルミニウムを処理した上から、ペルフルオロアルキルリン酸エステルセリサイト表面に処理した、PFX−10シリーズ(いずれも大東化成工業社製)を用いた。
(製法)
(6)〜(9)を混合し、溶解した水相を(1)および(2)の粉体にスプレーし、混合および撹拌したのち、(3)〜(5)を混合した油相をさらにスプレーし、混合および攪拌して、容器に充填した。
表3の結果より明らかなように、いずれの化粧料も使用感触に優れ、耐水性に優れた。
(実施例6)
下記表4に示す組成を用いて、パウダリーファンデーションを調製した。なお、表4中のフッ素処理酸化チタンは、水酸化アルミニウムを処理した酸化チタンにペルフルオロアルキルリン酸エステルを表面に処理した「PFX−5酸化チタン」(大東化成工業社製)を用いた。
(製法)
均一混合した(1)〜(5)に均一溶解した(6)および(7)を噴霧し、混合および攪拌した。さらに均一溶解した(8)〜(11)を噴霧し、混合および攪拌して、容器に充填した。
表4の結果より明らかなように、パウダリーファンデーションでありながら、肌上で液状に変化し、みずみずしくなじみのよい感触を有していた。

Claims (5)

  1. (a)フッ素処理水酸化アルミニウム被覆平板状粉体、
    (b)1〜50質量%の20mN/m以上の表面張力値を有する油性成分、
    (c)45mN/m以上65mN/m以下の表面張力値を有する水性成分
    を含有し、かつ、(b)成分と(c)成分の配合比が1:10〜3:1であり、塗擦により液化することを特徴とする粉末状組成物。
  2. (a)成分の粉体が、タルク、カオリン、無水ケイ酸、サポナイト、セリサイト、マイカの中から選ばれる1種または2種以上である、請求項1に記載の粉末状組成物。
  3. (a)成分を10〜65質量%含有する、請求項1または2に記載の粉末状組成物。
  4. (c)成分を15〜70質量%含有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の粉末状組成物。
  5. (a)成分に(b)成分を噴霧する工程、および、前記工程で調製された粉体に(c)成分を噴霧する工程、あるいは、
    (a)成分に(c)成分を噴霧する工程、および、前記工程で調製された粉体に(b)成分を噴霧する工程、
    を含む、請求項1に記載の粉末状組成物の製造方法。
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