JPWO2019087979A1 - 熱可塑性樹脂フィルム及びインクジェット用紙 - Google Patents

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Abstract

水性顔料インクに対して優れた印刷適性を有する熱可塑性樹脂フィルム及びインクジェット用紙を提供する。熱可塑性樹脂フィルムは、基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面上に多孔質層と、を有し、前記多孔質層の単位面積あたりの吸水量が0.1g/m2以下であり、前記多孔質層上に表面張力が30mN/mの第1液体を滴下して5分間放置した場合に前記第1液体が浸透し、かつ前記多孔質層上に表面張力が44mN/mの第2液体を滴下して5分間放置した場合に前記第2液体が浸透しない。

Description

本発明は、熱可塑性樹脂フィルム及びインクジェット用紙に関する。
インクジェット方式の印刷には、水性インク、油性インク、紫外線硬化型インク等の各種インクが使用されている。インクは、用紙に浸透するか、用紙の表面で硬化することによって、インクが用紙に定着する。用紙としては、従来の繊維質の用紙だけでなく、熱可塑性樹脂フィルムが、画像を鮮やかに印刷できるインクジェット用紙として用いられている。
水性インクに適したインクジェット用紙としては、二軸延伸樹脂フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この二軸延伸樹脂フィルムは、比較的低分子の水溶性カチオン系界面活性剤で表面処理した無機微細粉末を含有することで高い透水度を示し、水性インクが浸透しやすくなっている。
また、少なくとも一方の表面に吸水層を有し、当該吸水層が、水溶性カチオンポリマーで表面処理した後、水溶性アニオン系界面活性剤で表面処理して親水性を付与した無機微細粉末を含有することで、吸水性を示す樹脂延伸フィルムも開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
印刷適性を高めるため、最表面にインクとの親和性が高いコート層を設けたインクジェット用紙もある。例えば、水性インクが浸透しやすい多孔構造を有する吸水層上に、印刷適性を向上させる受像層を設けたインクジェット記録用紙も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。また、多孔質層を表面処理することにより、多孔質層上にインクとの親和性を高める塗工層を設けたインクジェット印刷用樹脂フィルムも提案されている(例えば、特許文献4参照。)
しかしながら、従来のインクジェット用紙は、いずれもインクだけでなく水との親和性が高い。そのため、水性染料インクのように水とともに染料がフィルムに浸透している場合は、印刷後に水がかかると染料がフィルムから滲み出てしまうことがある。これに対し、水性顔料インクは、水性染料インクに比べて耐水性に優れるが、フィルム上に印刷したとき、フィルム中に水分のみが浸透し、顔料はフィルムの表面に残って堆積するため、擦れによって脱落しやすい。
また、水性顔料インクは、インクジェットヘッドの目詰まり防止等の目的で溶剤を含有することが一般的であり、インクの吸収速度及び濡れ広がり方が、水とは異なっている。インクの吸収速度が遅いと、多色印刷の場合には各色のインクが混じり合って滲みが生じやすく、フィルム同士を重ねたときにも他のフィルムにインクが移りやすい。また、インクの濡れ広がりが大きすぎる場合にも、滲みとして観察されやすくなる。
特開2012−092213号公報 特開2014−080025号公報 特開2017−124531号公報 特開2011−131416号公報
本発明は、水性顔料インクに対して優れた印刷適性を有する熱可塑性樹脂フィルム及びインクジェット用紙を提供することを目的とする。
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、吸水量が少なく、特定の表面張力の液体に対して一定の浸透性を示す多孔質層によって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の1つの側面によれば、
(1)基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の面上に多孔質層と、を有し、
前記多孔質層の単位面積あたりの吸水量が、0.1g/m以下であり、
前記多孔質層上に表面張力が30mN/mの第1液体を滴下して5分間放置した場合に前記第1液体が浸透し、かつ前記多孔質層上に表面張力が44mN/mの第2液体を滴下して5分間放置した場合に前記第2液体が浸透しない、
ことを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムが提供される。
本発明の他の側面によれば、
(2)基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の面上に多孔質層と、を有する熱可塑性樹脂フィルムであって、
前記多孔質層が、熱可塑性樹脂と、表面をカチオン性ポリマーにより被覆されている無機フィラーの30〜70質量%とを含有する層であり、
前記無機フィラーの平均粒子径が0.3〜5μmであり、
前記多孔質層の単位面積あたりの吸水量が0.1g/m以下である
ことを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムが提供される。
本発明の他の側面によれば、
(3)基材層、多孔質層、及びコート層をこの順に有する熱可塑性樹脂フィルムであって、
前記多孔質層が、熱可塑性樹脂と、表面をカチオン性ポリマーにより被覆されている無機フィラーの30〜70質量%とを含有する層であり、
前記無機フィラーの平均粒子径が0.3〜5μmであり、
前記コート層がカチオン性ポリマーを含有する
ことを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムが提供される。
(4)前記多孔質層が、多層であり、
前記多孔質層の最外層が、熱可塑性樹脂と、表面をカチオン性ポリマーにより被覆されている無機フィラーの30〜70質量%とを含有する層であり、
前記最外層に隣接する層が、熱可塑性樹脂と、表面をアニオン性親水化剤により被覆されている無機フィラーとを含有する層であることが好ましい。
本発明の他の側面によれば、
(5)(3)又は(4)の熱可塑性樹脂フィルムを含むインクジェット用紙が提供される。
本発明によれば、水性顔料インクに対して優れた印刷適性を有する熱可塑性樹脂フィルム及びインクジェット用紙を提供することができる。
本発明の一実施の形態の熱可塑性樹脂フィルムの構成を示す断面図である。 本発明の一実施の形態の熱可塑性樹脂フィルムの構成を示す断面図である。
以下、本発明の熱可塑性樹脂フィルム及びインクジェット用紙の詳細を説明するが、以下に説明する構成は、本発明の一実施態様としての一例(代表例)であり、本発明は説明した内容に限定されない。
以下の説明において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、「(メタ)アクリレート」の記載は、アクリレートとメタクリレートの両方を示す。(メタ)アクリル酸誘導体等の記載についても同様である。
[熱可塑性樹脂フィルム]
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、基材層と、基材層の少なくとも一方の面上に多孔質層と、を有する。多孔質層は1層のみであってもよいが、本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、多孔質層を多層構造として、基材層上に複数の多孔質層を有することもできる。多孔質層が多層構造であると、各層で特性を異ならせて様々な機能を発揮させることができ、好ましい。
図1は、本発明の一実施の形態として、多層構造の多孔質層を有する熱可塑性樹脂フィルムの構成を示す。
図1に示すように、熱可塑性樹脂フィルム1は、基材層Aと、基材層Aの一方の面上に2つの多孔質層B1及びB2と、を有することが好ましい。
[基材層]
基材層は、熱可塑性樹脂フィルムに強度(コシ)を付与することができる。基材層としては、機械的強度に優れた熱可塑性樹脂を好ましく使用することができる。
(熱可塑性樹脂)
基材層に使用できる熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、これらの混合樹脂等が挙げられる。なかでも、耐水性及び耐溶剤性の観点からは、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。また、多孔質層と同じ種類の熱可塑性樹脂であると、多孔質層との接着性に優れ、熱可塑性樹脂フィルムの耐久性が向上することから、好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等を好ましく使用できる。
ポリプロピレン樹脂としては、例えばプロピレンを単独重合させたアイソタクティックホモポリプロピレン、シンジオタクティックホモポリプロピレン等のプロピレン単独重合体、プロピレンを主体とし、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン等を共重合させたプロピレン共重合体等が挙げられる。プロピレン共重合体は、2元系でも3元系以上の多元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
ポリエチレン樹脂としては、例えば高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖線状低密度ポリエチレン、エチレン等を主体とし、プロピレン、ブテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、4−メチルペンテン−1等のα−オレフィンを共重合させた共重合体、マレイン酸変性エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体の金属塩(金属は亜鉛、アルミニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム等)、エチレン−環状オレフィン共重合体、マレイン酸変性ポリエチレン等が挙げられる。
上記ポリオレフィン系樹脂のなかでも、成形性及びコストの観点からは、プロピレン単独重合体又は高密度ポリエチレンが好ましい。
上記熱可塑性樹脂のうち、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(その他の成分)
基材層である熱可塑性樹脂フィルムは、必要に応じて公知の添加剤を任意に含むことができる。添加剤としては、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、無機フィラーの分散剤、結晶核剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、脂肪酸アミド等のスリップ剤、染料、顔料、離型剤、難燃剤等の公知の助剤が挙げられる。
屋外での耐久性を高める観点からは、基材層は、酸化防止剤、光安定剤等を含むことが好ましい。
酸化防止剤としては、立体障害フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。
光安定剤としては、立体障害アミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系光安定剤、ベンゾフェノン系光安定剤等が挙げられる。
酸化防止剤及び光安定剤の含有量は、基材層である熱可塑性樹脂フィルムの質量に対して、0.001〜1質量%の範囲内で使用することが好ましい。
基材層は、強度を損なわない程度に、フィラーを含有することができる。また、基材層は、無延伸フィルムであってもよいし、強度を高める観点から延伸フィルムであってもよい。基材層として、フィラーを含有する熱可塑性樹脂の延伸フィルムを使用することにより、基材層の剛度、白色度及び不透明度を目的に応じて調整することができる。フィラーとしては、後述する多孔質層で挙げる無機フィラーを使用できる。基材層と多孔質層の無機フィラーは同種のものであっても、異種のものであってもよい。
基材層の厚さは、多孔質層の厚さと熱可塑性樹脂フィルムの用途又は目的に応じて適宜決定することができる。通常、基材層の厚さは、十分なコシを得る観点から、15μm以上であることが好ましく、20μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましい。また、基材層の厚さは、400μm以下であることが好ましく、300μm以下がより好ましく、200μm以下がさらに好ましい。
[多孔質層]
多孔質層は、インクジェット方式の印刷が可能な層である。多孔質層は、単位面積あたりの吸水量が、0.1g/m以下である。また、多孔質層は、多孔質層上に表面張力が30mN/mの第1液体を滴下して5分間放置したときには第1液体が浸透し、かつ多孔質層上に表面張力が44mN/mの第2液体を滴下して5分間放置したときには第2液体が浸透しない、という浸透性を有する。JIS R3257:1999に準拠して測定される多孔質層の表面の水の静的接触角としては、115度以上が好ましく、120度以上がより好ましく、125度以上がさらに好ましい。水の静的接触角は通常170度以下である。
このような多孔質層では、表面張力が高い水がほとんど浸透しない一方で、インクジェットヘッドの目詰まり防止等のために添加する水溶性有機溶剤によって、表面張力が通常30〜42mN/mの範囲にある水性顔料インクは浸透する。水性顔料インクが多孔質層中に速やかに浸透することから、複数色の水性顔料インクを重ねてもインクが混じることがなく、多色印刷を行ったときの滲みが少ない。インクの浸透性が良好な多孔質層は、インクの乾燥性に優れるため、フィルム上に他の用紙を重ねたときのインク移りを減らすことができる。浸透後は多孔質層内部の孔に顔料成分が留まることから、耐擦過性に優れた熱可塑性樹脂フィルムが得られる。
また、表面張力が30mN/mの第1液体を滴下して5分間放置した場合に第1液体が過剰にぬれ広がる浸透性を有する多孔質層は、水性顔料インクのドットが過剰に拡大し、インクジェット画像の鮮鋭性が低下する原因になると推定される。本発明の浸透性を示す多孔質層は、インクの過剰な濡れ広がりを抑えることが可能な点も、滲みが少ない要因の1つと考えられる。経験的には、第1液体を5分間放置した表面の液滴を拭き取った後の液跡の広がりの最も外側を円で近似したとき、近似円の直径が5cm以下であることが好ましい。
なお、基材層のいずれか一方の面上に複数の多孔質層を有する場合は、複数の多孔質層のうち、少なくとも最表面に位置する多孔質層の吸水量と浸透性が上記条件を満たせばよい。
上記吸水量は、JIS P8140:1998に準拠して測定される。上記吸水量は、0.05g/m以下であることが好ましく、測定上の値として0.0g/mであってもよい。
また、上記浸透性は、第1液体及び第2液体を測定対象の表面上にそれぞれ20μL滴下して、5分間放置した後の液跡の広がりによって判断する。具体的には、5分間放置した表面の液滴を拭き取った後の液跡の広がりの最も外側を円で近似し、近似円の直径が2cm以上であれば浸透したと判断し、2cm未満であれば浸透しないと判断する。
多孔質層は、熱可塑性樹脂と、カチオン性ポリマーにより表面処理された無機フィラーを30〜70質量%含有する熱可塑性樹脂フィルムであると、無機フィラーによって、表面に開口を有し、内部に空孔を有する多孔質層の形成が容易になり、上記吸水量及び浸透性を示す多孔質層の形成が容易になる。
多孔質層と基材層との密着性を高める観点からは、カチオン性ポリマーにより表面処理された無機フィラーを含有する多孔質層と基材層との間に、基材層に隣接し、吸水量が0.1g/m以下の吸水性を有しない多孔質層が、さらに設けられることが好ましい。
多孔質層が多層構造を有し、基材層の一方の面上に複数の多孔質層を有する場合、すなわち基材層と上記吸水量及び浸透性を示す多孔質層との間に、さらに1以上の多孔質層を有する場合、上記吸水量及び浸透性の発現が容易になることから、基材層上の複数の多孔質層のうち、最外層、すなわち基材層と反対側の最表面に位置する多孔質層が、その表面をカチオン性ポリマーにより被覆されている(カチオン性ポリマーによって表面処理された)無機フィラーを30〜70質量%含有する熱可塑性樹脂フィルムである。当該最外層(最表面に位置する多孔質層)に隣接する内側の多孔質層は、その表面をアニオン性親水化剤により被覆されている(アニオン性親水化剤によって表面処理された)無機フィラーを含有する熱可塑性樹脂フィルムであることが好ましい。なお、アニオン性親水化剤によって表面処理された無機フィラーは、最表面にアニオン性親水化剤の表面処理層を有するのであれば、カチオン性ポリマーによって表面処理した後、アニオン性親水化剤によって表面処理された無機フィラーであってもよい。
基材層と反対側の最表面に位置する多孔質層が、その表面をカチオン性ポリマーにより被覆されている無機フィラーを含有することによって、アニオン性である色材を多孔質層の表面より層内部に吸着する効果が発現し、インクジェット画像の濃度を高めたり、鮮鋭度を高めたりすることができる。一方、最表面の多孔質層に隣接する多孔質層が、その表面をアニオン性親水化剤により被覆されている無機フィラーを含有することによって、水溶性有機溶剤が多孔質層の深部まで浸透する結果、色材と水溶性有機溶剤とを分離する効果が発現し、インクの乾燥性及び色材の定着性を向上させることができる。
多層構造の多孔質層と基材層との密着性を高める観点からは、アニオン性親水化剤により被覆されている無機フィラーを含有する多孔質層と基材層との間に、基材層に隣接し、吸水性を有しない、すなわち吸水量が0.1g/m以下の多孔質層が、さらに設けられることが好ましい。
(熱可塑性樹脂)
多孔質層に使用できる熱可塑性樹脂としては、基材層で挙げた上記熱可塑性樹脂を使用することができる。なかでも、十分な強度を得る観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂がより好ましい。
耐擦過性を向上させる観点からは、ポリプロピレン樹脂と、当該ポリプロピレン樹脂より融点が低い樹脂を併用することが好ましい。多孔質層の十分な強度が得られやすいポリプロプレン樹脂に、ポリプロピレン樹脂よりも溶融しやすい樹脂を併用して延伸することにより、顔料成分を留めやすいフィブリル状の多孔質層の形成が容易になる。また、無機フィラーの含有量が同じであっても、多孔質層の空孔率が増加することから、インクの吸液量を増加させることができる。
多孔質層中のポリプロピレン樹脂の含有量は、20〜70質量%であることが好ましい。この範囲内であれば、ポリプロピレン樹脂を非溶融状態で延伸しやすく、多孔質層の十分な強度が得られやすい。
また、多孔質層中のポリプロピレン樹脂の融点より低い融点を持つ樹脂の含有量は、5〜30質量%であることが好ましい。この範囲内であれば、ポリプロピレン樹脂より融点が低い樹脂を溶融状態で延伸しやすく、フィブリル状の多孔質層の形成が容易になって耐擦過性を向上させやすい。
ポリプロピレン樹脂より低い融点を持つ樹脂のなかでも、延伸安定性があり、多孔質層表面にフィブリル構造を形成しやすいことから、ポリエチレン系樹脂が好ましく、高密度ポリエチレン又は低密度ポリエチレンがより好ましい。
ポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂を併用する場合、優れた強度及び耐擦過性を両立する観点からは、多孔質層中のポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂の含有比(ポリプロピレン樹脂:ポリエチレン樹脂)が、1:2〜2:1であることが好ましい。
(無機フィラー)
多孔質層に使用できる無機フィラーとしては、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレイ、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、ゼオライト、マイカ、ガラスファイバー、中空ガラスビーズ等が挙げられる。なかでも、重質炭酸カルシウム、焼成クレイ、珪藻土等は、安価で熱可塑性樹脂フィルムの延伸によって多くの空孔を形成しやすく、空孔率の調整が容易であることから、好ましい。特に、重質炭酸カルシウム又は軽質炭酸カルシウムは、その平均粒子径又は粒度分布を空孔形成しやすい範囲に調整しやすいことから、好ましい。上記無機フィラーのうち、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
多孔質層に用いる無機フィラーの平均粒子径は、空孔形成性の観点から、0.3〜5μmであることが好ましく、0.5〜2μmであることがより好ましい。無機フィラーの平均粒子径が0.3μm以上であれば多孔質層を多孔として水性顔料インクの浸透性を高めやすい。無機フィラーの平均粒子径が5μm以下であれば粗大な空孔の形成を抑えてインクジェット印刷画像の鮮明性を高めやすい。
多孔質層中の無機フィラーの含有量は、多孔質層を多孔として水性顔料インクに対する上記浸透性及び吸水量を得る観点から、30〜70質量%であることが好ましく、40〜68質量%がより好ましく、50〜65質量%がさらに好ましい。無機フィラーの含有量が30質量%以上であれば多孔化による水性顔料インクの浸透性を高めて滲み又は乾燥性を改善しやすい。無機フィラーの含有量が70質量%以下であれば多孔質層の安定な延伸成形を実施しやすい。
上記のように多孔質層中の無機フィラーとして表面をカチオン性ポリマーで被覆した無機フィラーを用い、さらに用いる無機フィラーの平均粒子径と配合量を特定の範囲とすることで、多孔質層を多孔とし、水のように表面張力が高い液体は通過(浸透)しにくく、インク(有機溶剤)のように表面張力が低い液体は通過(浸透)しやすい多孔質層を、さらには浸透したインキ成分中のアニオン性の色材を吸着しやすい多孔質層を、実現できる。
(カチオン性ポリマー)
上述のように、付着する液体によって浸透性が異なるフィルムを実現し、かつアニオン性の色材を吸着する目的から、無機フィラーとしてその最表面をカチオン化した無機フィラーを用いる。無機フィラーの表面を被覆するカチオン性材料は、ポリマー系の材料、すなわちカチオン性ポリマーであることが好ましい。ポリマー系材料であれば、成形以降にカチオン性材料が多孔質層表面に浸み出しにくく、表面張力が44mN/mの第2液体を滴下して5分間放置した場合に第2液体が浸透しない、という浸透性を発現しやすい。
ポリマー系材料であるカチオン性ポリマーとしては、例えば窒素含有(メタ)アクリル系共重合体、エチレンイミン系重合体、第3級アミン構造、第4級アミン構造又はホスホニウム塩構造を有する水溶性ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子を変性によりカチオン化したビニル系ポリマー等が挙げられ、これらのうちの1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、第3級アミン構造又は第4級アミン構造の3級以上の高級アミン構造を有するカチオン性ポリマーが、好ましい。3級以上の高級アミン構造であれば、単純に無機フィラーの表面を親水化するのではなく、吸水量が0.1g/m以下と少なく、30mN/mの表面張力の第1液体は浸透して44mN/mの表面張力の第2液体は浸透しないという、特定の浸透性の発現が容易になる。
(アニオン性親水化剤)
アニオン性親水化剤としては、例えばスルホ基、カルボキシ基等を有する界面活性剤等が挙げられる。具体的には、特開平10−212367号公報に記載されたスルホン酸基を有する界面活性剤が挙げられる。
カチオン性ポリマー又はアニオン性親水化剤により表面を被覆した(表面処理された)無機フィラーとしては、市販品を使用することもできる。市販品としては、例えばAFE−Z、AFF−95、AFF−Z(ファイマテック社製)等を挙げることができる。
カチオン性ポリマー又はアニオン性親水化剤は、多孔質層中に1〜2質量%の割合で含有することが好ましく、1〜1.5質量%がより好ましい。カチオン性ポリマー又はアニオン性親水化剤の含有量を調整することで、多孔質層の吸水量及び浸透性を調整することができる。
表面処理の方法は特に限定されず、例えば無機フィラーの原料を湿式粉砕する際に、カチオン性ポリマー又はアニオン性親水化剤の水溶液を導入することにより、行うことができる。これにより、表面処理された無機フィラー、すなわちカチオン性ポリマー又はアニオン性親水化剤を含有する表面処理層を表面に有する無機フィラーを得ることができる。併用の場合は、カチオン性ポリマーを用いた表面処理と、アニオン性親水化剤を用いた表面処理と、を順次行えばよい。
吸水量が0.1g/m以下の吸水性と、多孔質層上に表面張力が44mN/mの第2液体を滴下して5分間放置した場合に第2液体が浸透しない浸透性と、を発現しやすくするには、基材層と反対側の最表面に位置する多孔質層中の表面処理された無機フィラーが、カチオン性を示すことが好ましい。そのためには、表面処理剤として比較的分子量が高いカチオン性ポリマーのみを使用し、アニオン性親水化剤を使用することなく、表面処理された無機フィラーを使用することが好ましい。ここで、カチオン性ポリマーの分子量は20,000〜200,000が好ましく、30,000〜100,000がより好ましい。分子量が当該範囲の下限値以上であると、表面の親水性が低くなり、第2液体が浸透しにくくなる傾向がある。分子量が当該範囲の上限値以下であると、カチオン性ポリマーによって表面処理された無機フィラーが凝集しにくくなり、均一な空隙ができやすく、多孔質層表面の欠陥を減らすことができる。
(分散剤)
多孔質層は、無機フィラーの分散性を良化する観点から、分散剤を含有することができる。
分散剤としては、例えば酸変性ポリオレフィン、シラノール変性ポリオレフィン等が挙げられ、市販品も使用できる。分散剤の市販品としては、ユーメックス1001(三洋化成社製、マレイン酸変性ポリプロピレン)等が挙げられる。
多孔質層中の分散剤の含有量は、十分な分散性が得られやすいことから、0.01質量%以上であることが好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、分散剤の含有量は、無機フィラーの凝集を回避しやすいことから、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
多孔質層の厚さ(多層構造を有する多孔質層の場合は各多孔質層を合計した全厚)は、水性顔料インクを浸透させる領域を十分に確保する観点から、1μm以上であることが好ましく、3μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましい。また、多孔質層の厚さは、熱可塑性樹脂フィルムが過剰に厚くなることを避ける観点から、100μm以下であることが好ましく、70μm以下がより好ましく、60μm以下がさらに好ましい。
複数の多孔質層を設ける場合は、最表面に位置する多孔質層の厚さは、十分な浸透性が得やすいことから、複数の多孔質層全体の1〜60%の厚さとすることが好ましい。なかでも、下限は2%以上が好ましく、3%以上がより好ましく、上限は55%以下が好ましく、50%以下がより好ましい。なお、最表面に位置する多孔質層が、カチオン性ポリマーで表面処理されたカチオン性無機フィラーを含有する層で、最表面に隣接する多孔質層が、アニオン性親水化剤で表面処理されたアニオン性無機フィラーを含有する層の場合、最表面に位置する層の厚さは、複数の多孔質層全体の10%以下が好ましい。
(空孔率)
多孔質層の空孔率は、インク吸収速度及び多孔質層の機械強度を調整することが容易になることから、25〜50%であることが好ましい。
空孔率は、フィラーの平均粒子径、フィラーを含有する熱可塑性樹脂フィルムの組成、例えばポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂との比率、延伸温度、延伸倍率等の延伸条件によって調整することができる。
空孔率の測定方法は、電子顕微鏡で観察した多孔質層の断面の一定領域において、空孔が占める面積の比率より求めることができる。具体的には、測定対象のフィルムの任意の一部を切り取り、エポキシ樹脂で包埋して固化させた後、ミクロトームを用いて測定対象のフィルムの面方向に垂直に切断し、その切断面が観察面となるように観察試料台に貼り付ける。観察面に金又は金−パラジウム等を蒸着し、電子顕微鏡にて観察しやすい任意の倍率(例えば、500倍〜3000倍の拡大倍率)において多孔質層の空孔を観察し、観察した領域を画像データとして取り込む。得られた画像データに対して画像解析装置にて画像処理を行い、多孔質層の一定領域における空孔部分の面積率(%)を求めて、空孔率(%)とする。この場合、任意の10箇所以上の観察における測定値を平均して、空孔率とすることができる。
(坪量)
多孔質層の坪量は、インク吸収容積が得やすいことから、3g/m以上であることが好ましく、6g/m以上がより好ましく、8g/m以上がさらに好ましく、10g/m以上が特に好ましい。また、多孔質層は基材層に比べ機械強度が低いことから、坪量は、50g/m以下が好ましく、40g/m以下がより好ましく、30g/m以下がさらに好ましい。
また、表面処理によってカチオン性を有する無機フィラーを含有する多孔質層と、表面処理によってアニオン性を有する無機フィラーを含有する多孔質層との坪量比率は、1:99〜3:1が好ましく、2:99〜1:9がより好ましい。坪量比率がこの範囲であると、アニオン性の色材とインクの溶剤成分との分離が容易になるため好ましい。
複数の多孔質層を有する場合は、インクを吸収する各多孔質層が上記坪量の条件を満たすことが好ましい。
上記坪量は、多孔質層の密度と厚さから求めることができる。
多孔質層の坪量は、多孔質層の厚さ、無機フィラーの含有量、平均粒子径、無機フィラーを含有する熱可塑性樹脂フィルムの延伸条件、例えば延伸温度、延伸倍率等によって調整することができる。
(表面の開口率)
多孔質層の表面の開口率は、45〜95%が好ましい。
上記範囲内であれば、水性顔料インクを多孔質層中に浸透させやすい。また、顔料を多孔質層の空孔に留めやすく、熱可塑性樹脂フィルムの耐擦過性を高めやすい。
(表面の開口の平均径)
多孔質層の開口の平均径は、長径として0.5〜5μm、短径として0.1〜1μmが好ましい。
上記範囲内であれば、水性顔料インクを多孔質層中に浸透させやすい。また、顔料を多孔質層の空孔に留めやすく、熱可塑性樹脂フィルムの耐擦過性を高めやすい。
本発明の好ましい態様では、多孔質層が延伸される際、あたかも溶けたチーズが伸びるような挙動を示し、フィブリル状の多孔質層が得られる。
[熱可塑性樹脂フィルムの製造方法]
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は特に限定されず、通常の方法により製造することができる。例えば、基材層を構成する熱可塑性樹脂フィルムを形成した後、多孔質層を積層してもよい。フィルムの成形方法としては、例えばスクリュー型押出機に接続された単層又は多層のTダイ、Iダイ等により、溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、インフレーション成形等が挙げられる。また、フィードブロック、マルチマニホールドを使用した多層ダイス方式、複数のダイスを使用する押出しラミネーション方式等の通常の手法を使用して、基材層と多孔質層のフィルム成形と積層を並行して行うこともできる。
基材層の熱可塑性樹脂フィルムは、多孔質層を積層する前に延伸することもできるし、積層後に延伸することもできる。多孔質層は薄いため、単層での延伸成形ではなく、基材層に積層後、延伸することが好ましい。なかでも、基材層が二軸延伸層であると、機械強度を高くすることができるため好ましい。また、多孔質層が一軸延伸層であることが、フィブリル状の表面を形成しやすく、顔料インクジェット印刷後の耐擦過性を向上させることができるため、好ましい。基材層が二軸延伸層であり、多孔質層が一軸延伸層であるとさらに好ましい。
延伸方法としては、例えばロール群の周速差を利用した縦延伸法、テンターオーブンを利用した横延伸法、これらを組み合わせた逐次二軸延伸法、圧延法、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時二軸延伸法、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸法等が挙げられる。また、スクリュー型押出機に接続された円形ダイを使用して溶融樹脂をチューブ状に押し出し成形した後、これに空気を吹き込む同時二軸延伸(インフレーション成形)法等も使用できる。
延伸を実施するときの延伸温度は、使用する熱可塑性樹脂が非晶性樹脂の場合、当該熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上の範囲であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合の延伸温度は、当該熱可塑性樹脂の非結晶部分のガラス転移点以上であって、かつ当該熱可塑性樹脂の結晶部分の融点以下の範囲内であることが好ましく、熱可塑性樹脂の融点よりも2〜60℃低い温度が好ましい。具体的には、プロピレン単独重合体(融点155〜167℃)の場合は100〜164℃の延伸温度が好ましく、高密度ポリエチレン(融点121〜134℃)の場合は70〜133℃の延伸温度が好ましい。
延伸速度は、特に限定されるものではないが、安定した延伸成形の観点から、20〜350m/分の範囲内であることが好ましい。
また、延伸倍率についても、使用する熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定することができる。 例えば、プロピレン単独重合体又はプロピレン共重合体を使用する場合、一方向に延伸する場合の延伸倍率は、通常、下限が約1.2倍以上、好ましくは2倍以上であり、上限が12倍以下、好ましくは10倍以下である。一方、二軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で通常、下限が1.5倍以上、好ましくは4倍以上であり、上限が60倍以下、好ましくは50倍以下である。その他の熱可塑性樹脂フィルムを一方向に延伸する場合は、延伸倍率は、通常、上限が1.2倍以上、好ましくは2倍以上であり、下限が10倍以下、好ましくは5倍以下である。二軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で通常、下限が1.5倍以上、好ましくは4倍以上であり、上限が20倍以下、好ましくは12倍以下である。
上記延伸倍率の範囲内であれば、目的の空孔率及び坪量が得られやすく、不透明性が向上しやすい。また、熱可塑性樹脂フィルムの破断が起きにくく、安定した延伸成形ができる傾向がある。
[コート層を有する熱可塑性樹脂フィルム]
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、上記多孔質層上に、カチオン性ポリマーを含有するコート層をさらに設け得る。すなわち、コート層を有する本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、基材層、多孔質層及びコート層をこの順に有する。コート層を有する本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、インクジェット用紙として特に有用である。
図2は、本発明の一実施形態である熱可塑性樹脂フィルムの構成を示す断面図である。
図2に示すように、熱可塑性樹脂フィルム2は、基材層Aと、基材層Aの一方の面上に2つの多孔質層B1及びB2と、多孔質層B2上にコート層Cと、を有する。
(コート層)
コート層は、多孔質層の表面の全部又は一部を覆う薄い被膜であり、上述した多孔質層の吸水量及び浸透性を維持することができる。すなわち、コート層は多孔質層と同じ浸透性を示し、コート層上に表面張力が30mN/mの第1液体を滴下して5分間放置した場合に第1液体が浸透し、かつコート層上に表面張力が44mN/mの第2液体を滴下して5分間放置した場合に第2液体が浸透しない。コート層は、カチオン性ポリマーを含有し、多孔質層よりもインクとの親和性が高いため、多孔質層の空孔へのインクの移動を容易にする。インクを速やかに多孔質層に吸収させることができるため、印刷適性をより向上させることができる。
(カチオン性ポリマー)
コート層に使用できるカチオン性ポリマーとしては、通常の水性染料用又は水性顔料用のインクジェット印刷に使用される定着剤を使用することができる。定着剤は、上記無機フィラーの表面処理剤として挙げたカチオン性ポリマーと同様の化合物を含む。定着剤は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、水性顔料インクとの親和性を高める観点から、1級〜3級アミンの塩又は4級アンモニウム塩をカチオン基として含むポリマーが好ましい。このようなポリマーとしては、窒素含有(メタ)アクリル系共重合体をカチオン化剤により第4級化した窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー又は第4級アンモニウム塩構造を有するカチオン性ポリマー、アリルアミン共重合体の塩、ジアリルアミン共重合体の塩、ジアリルジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。ここで、塩のアニオン基は酸の残基であって、有機酸としては酢酸、クエン酸、乳酸等が挙げられ、無機酸としては塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。これらのなかでも、無機酸の残基が好ましく、塩化物イオンが特に好ましい。
コート層は、水に上記カチオン性ポリマーを溶解させた塗工液を、多孔質層上に塗工し、必要に応じて乾燥することにより、設けることができる。塗工により、コート層を多孔質層の表面を覆う薄膜として形成することができる。塗工液には、コート層の機能を阻害しない範囲で、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン等の水溶性の溶剤を使用してもよい。塗工には、ダイコーター、ロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、リバースコーター、エアーナイフコーター、サイズプレスコーター等の塗工装置を使用することもできるし、塗工液中に浸漬することで塗工してもよい。
コート層の塗工量は、固形分換算で、0.05〜1.5g/mであることが好ましい。塗工量が0.05g/m以上であると、水性顔料インクの定着性が発現しやすい。また、塗工量が1.5g/m以下であると、多孔質層の開口が埋没しにくく、耐擦過性が向上しやすい。
コート層には、本発明の効果を損なわない限り、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防黴剤等の添加剤を配合してもよい。コート層に配合する添加剤の量は、コート層の質量基準で0.01〜3%が好ましい。
[インクジェット用紙]
本発明のインクジェット用紙は、上述したコート層を有する本発明の熱可塑性樹脂フィルムを含む。本発明のインクジェット用紙は、コート層を有する本発明の熱可塑性樹脂フィルムのみの単層構造であってもよいし、多層構造であって少なくとも最外層に本発明のコート層を有する熱可塑性樹脂フィルムが用いられていてもよい。
[熱可塑性樹脂フィルム及びインクジェット用紙への印刷]
本発明の熱可塑性樹脂フィルム及びインクジェット用紙は、インクジェット適性を有し、多孔質層上又はコート層上に、写真、図形、文字、パターン等の各種情報をインクジェット方式で印刷することができる。印刷には、水性インクジェット、溶剤系インクジェット、紫外線硬化型インクジェット等の各種インクジェット用インクを使用可能である。なかでも、本発明の熱可塑性樹脂フィルム及びインクジェット用紙は、水性顔料インクに対する印刷適性に優れ、多色印刷時にも滲みが少なく、色鮮やかで鮮鋭性の高いインクジェット印刷が可能である。なお、インクジェット印刷以外にも、水性及び油性のサインペン、蛍光マーカー、鉛筆等による記録が可能である。
[水性顔料インク]
水性顔料インクは、例えば水、顔料、分散剤、水溶性有機溶剤、界面活性剤等を含有する。
インクの総質量(100質量%)に対する各成分の含有量は、通常、顔料が0.2〜10質量%程度、分散剤が1.5〜15質量%程度、水溶性有機溶剤が5〜40質量%程度、界面活性剤が0.5〜2質量%程度である。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその技術的思想の範囲を超えない限り、下記実施例の記述に限定されるものではない。
なお、実施例中の「部」、「%」等の記載は、断りのない限り、質量基準の記載を意味する。
下記実施例及び比較例の熱可塑性樹脂フィルムの製造に使用する樹脂組成物として、表1に示す材料を用いて、表2に示す配合比率(質量部)で混合して、樹脂組成物a〜hを用意した。表2中の略号は、表1に記載の略号と同じである。
Figure 2019087979
Figure 2019087979
[実施例1]
(基材層(縦一軸延伸フィルム)の製造)
プロピレン単独重合体PP−2(商品名:ノバテック PP MA3H、日本ポリプロ社製)15質量部、プロピレン単独重合体PP−3(商品名:ノバテック PP FY6H、日本ポリプロ社製)59.5質量部、高密度ポリエチレンPE−1(商品名:ノバテックHD HJ590N、日本ポリエチレン社製)9.5質量部、重質炭酸カルシウム粉末F−3(商品名:ソフトン 1800、備北粉化工業社製)16質量部、及び分散剤としてオレイン酸D−3(商品名:ルナック O−V、花王社製)0.1質量部を配合し、ミキサーで撹拌混合して、樹脂組成物gを得た。
上記樹脂組成物gを250℃に設定した押出機で溶融混練した後、ダイスからシート状に押出し、冷却装置にて70℃まで冷却して単層無延伸フィルムを得た。この無延伸フィルムを145℃に再加熱した後、ロール間の周速差を利用して縦方向に5倍に延伸し、縦一軸延伸フィルムを得た。
(多孔質層(3層延伸フィルム)の製造)
プロピレン単独重合体PP−1(商品名:PM900C、サンアロマー社製)16質量部、高密度ポリエチレンPE−1(商品名:ノバテックHD HJ590N、日本ポリエチレン社製)20質量部、表面処理重質炭酸カルシウム粉末F−1(商品名:AFF−95、ファイマテック社製)62質量部、二酸化チタン粉末F−5(商品名:タイペーク CR−60、石原産業社製)0.5質量部、及びマレイン酸変性ポリプロピレンD−1(商品名:モディック P908、三菱化学社製)2.0質量部を配合し、ミキサーで撹拌混合して、樹脂組成物aを得た。
別に、プロピレン単独重合体PP−2(商品名:ノバテック PP MA3H、日本ポリプロ社製)30質量部、プロピレン単独重合体PP−3(商品名:ノバテック PP FY6H、日本ポリプロ社製)20質量部、高密度ポリエチレンPE−1(商品名:ノバテックHD HJ590N、日本ポリエチレン社製)4.5質量部、重質炭酸カルシウム粉末F−3(商品名:ソフトン 1800、備北粉化工業社製)45質量部、及び二酸化チタン粉末F−5(商品名:タイペーク CR−60、石原産業社製)0.5質量部を配合し、ミキサーで撹拌混合して、樹脂組成物hを得た。
上記樹脂組成物a及び樹脂組成物hを、それぞれ250℃に設定した2台の押出機を用いて溶融混練した後、共押出ダイスに供給した。次いで共押出ダイス内で2種の樹脂組成物a及びhを積層して、これをシート状に押出し、上記縦一軸延伸フィルムの片面に、樹脂組成物h由来のフィルムが縦一軸延伸フィルムに接して、樹脂組成物a由来のフィルムが外側となるように、積層して、3層構造の積層体を得た。
得られた積層体を、オーブンを用いて160℃に再加熱した後、テンター延伸機を用いて横方向に9倍延伸した。次いで170℃で熱処理し、二軸延伸層/一軸延伸層/一軸延伸層の3層構造を有する延伸フィルムを得て、実施例1の熱可塑性樹脂フィルムとした。実施例1の熱可塑性樹脂フィルムにおいて、樹脂組成物g由来の二軸延伸層が基材層であり、樹脂組成物h及びa由来の各一軸延伸層が多孔質層である。
実施例1の熱可塑性樹脂フィルムの厚さは80μmであった。そのうち、樹脂組成物g由来の基材層の厚さは58μm、坪量は46g/mであった。樹脂組成物h由来の多孔質層の厚さは10.2μm、坪量は10.0g/mであった。樹脂組成物a由来の多孔質層の厚さは11.8μm、坪量は10.0g/m、多孔質層表面の水接触角は131度であった。
[水接触角]
実施例1で得られた熱可塑性樹脂フィルムの多孔質層表面における水の接触角は、自動接触角計(商品名:DM−301、協和界面科学社製)を用いて、JIS R3257:1999に記載の方法に従い、温度23℃、相対湿度50%の条件下で測定した。測定は3回行い、各回の平均値を測定値とした。
[実施例2、3、比較例1〜4]
実施例1において、多孔質層の外層とした樹脂組成物aを、表3に示す樹脂組成物b〜fに変更して使用したこと、及び押出機の吐出量を変更して表3に示す厚さ及び坪量に変更したことで、多孔質層を得た以外は、実施例1と同様に操作して、実施例2、3及び比較例1〜4の各熱可塑性樹脂フィルムを得た。各熱可塑性樹脂フィルムは、二軸延伸層/一軸延伸層/一軸延伸層の3層構造を有する3層延伸フィルムであった。各熱可塑性樹脂フィルムにおいて、二軸延伸層が基材層、各一軸延伸層が多孔質層である。
[実施例4]
実施例1の基材層(縦一軸延伸フィルム)の製造と同様の操作をして縦一軸延伸フィルムを得た。
別に、表1に記載の材料を表2に記載の配合比率で配合し、ミキサーで撹拌混合して、樹脂組成物a、樹脂組成物d、及び樹脂組成物hをそれぞれ得た。
上記樹脂組成物a、樹脂組成物d、及び樹脂組成物hを、それぞれ250℃に設定した3台の押出機を用いて個別に溶融混練した後、共押出ダイスに供給した。次いで共押出ダイス内で3種の樹脂組成物a、d、及びhを積層して、これをシート状に押出し、上記縦一軸延伸フィルムの片面に、樹脂組成物h由来のフィルムが縦一軸延伸フィルムに接して、樹脂組成物a由来のフィルムが外側となるように、積層して、4層構造の積層体を得た。
得られた積層体を、オーブンを用いて160℃に再加熱した後、テンター延伸機を用いて横方向に9倍延伸した。170℃で熱処理して、樹脂組成物g/樹脂組成物h/樹脂組成物d/樹脂組成物aの積層体からなる、二軸延伸層/一軸延伸層/一軸延伸層/一軸延伸層の4層延伸フィルムを得て、実施例4の熱可塑性樹脂フィルムとした。
実施例4の熱可塑性樹脂フィルムにおいて、樹脂組成物g由来の二軸延伸層が基材層であり、樹脂組成物h、d及びaに由来する各一軸延伸層が多孔質層である。
実施例4の熱可塑性樹脂フィルムの厚さは80μmであった。そのうち、樹脂組成物h由来の多孔質層の厚みは10.2μm、坪量は10.0g/mであった。樹脂組成物d由来の多孔質層の厚さは5.8μm、坪量は5.1g/mであった。樹脂組成物a由来の多孔質層の厚さは6.0μm、坪量は5.0g/mであった。基材層は、実施例1と同様に、厚さが58μm、坪量が46g/mであった。
[実施例5、6]
実施例1において、押出機の吐出量を変更して、樹脂組成物aからなる多孔質層の外層を表3に示す厚さ及び坪量に変更したこと以外は、実施例1と同様に操作して、実施例5及び6の各熱可塑性樹脂フィルムを得た。
各実施例、比較例で得た熱可塑性樹脂フィルムの多孔質層の樹脂組成物、厚み、及び坪量を表3に示す。なお、各熱可塑性樹脂フィルムの基材層は、実施例1と同様に、何れも厚さが58μmであり、坪量が46g/mであった。
また、実施例1と同様にして比較例1において水接触角を測定したところ、比較例1の樹脂組成物d由来の多孔質層表面の水接触角は98.4度であった。
[実施例11]
実施例1の熱可塑性樹脂フィルムの多孔質層側の表面に、水で希釈したカチオン性ポリマー(商品名:パピオゲン P−105、センカ社製、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライドと、商品名:サフトマー ST−3200、三菱ケミカル社製、4級化アクリル系共重合体との固形分比1:1の混合物)の塗工液を塗工した。塗工には、#4のメイヤーバーを用いた。塗工後に105℃の熱風乾燥器で乾燥してカチオン性ポリマーの被膜とし、これをコート層として、コート層を有する熱可塑性樹脂フィルムを得た。カチオン性ポリマーの塗工量は、乾燥前の質量と塗工液中のカチオン性ポリマーの濃度から算出したところ、固形分換算で0.13g/mであった。
[実施例12及び13]
実施例11において塗工液中のカチオン性ポリマーの濃度を上げ、かつメイヤーバーの番手を大きな番手に変更することによって、カチオン性ポリマーの塗工量を増やしたこと以外は、実施例11と同様にして実施例12及び13の各熱可塑性樹脂フィルムを得た。カチオン性ポリマーの塗工量は、固形分換算で、実施例12が1.4g/mであり、実施例13が1.6g/mであった。
各実施例及び比較例の熱可塑性樹脂フィルムについて、下記の評価を行った。
[吸水量]
各実施例及び各比較例の熱可塑性樹脂フィルムの最表面の多孔質層(一軸延伸層)の吸水量を測定した。吸水量は、コッブ法(JIS P8140:1998)に準拠して、コッブサイズ測定器(熊谷理機工業社製)を使用して120秒間接触した後、吸水量を測定することにより求めた。3点測定したデータの平均値を吸水量とした。
[浸透性]
各実施例及び比較例の熱可塑性樹脂フィルムを、温度23℃、相対湿度50%の環境下で多孔質層側が上方となるように、水平な卓状に静置した。
次いで表面張力が30N/mの第1液体として市販のぬれ張力試験用混合液(和光純薬社製、ぬれ張力試験用混合液 No.30.0)を用い、同液の20μLをマイクロシリンジで液滴とし、フィルムの上方1cmから滴下した。5分間放置後、滴下後の表面からティッシュペーパーで同液を拭き取り、ぬれ張力試験用混合液跡の広がりの最も外側を円で近似し、その円の直径が2cm以上の場合は第1液体が浸透し、2cm未満の場合は第1液体が浸透しないと判断した。なお、多孔質層上にコート層を有する実施例11〜13の熱可塑性樹脂フィルムでは、コート層側の上方から第1液体を滴下した。
次に、表面張力が44N/mの第2液体として市販のぬれ張力試験用混合液(和光純薬社製、ぬれ張力試験用混合液 No.44.0)を用い、同液の20μLをマイクロシリンジで液滴とし、フィルムの上方1cmから滴下した。5分間放置後、滴下後の表面からティッシュペーパーで同液を拭き取り、ぬれ張力試験用混合液跡の広がりの最も外側を円で近似し、その円の直径が2cm以上の場合は第2液体が浸透し、2cm未満の場合は第2液体が浸透しないと判断した。なお、多孔質層上にコート層を有する実施例11〜13の熱可塑性樹脂フィルムでは、コート層側の上方から第2液体を滴下した。
[インクジェット印刷の適性評価]
各実施例及び各比較例の熱可塑性樹脂フィルムの多孔質層側又はコート層側の表面に、JIS X9201:2001(高精細カラーディジタル標準画像(CMYK/SCID))のN5の絵柄をインクジェット方式で印刷した。印刷には、水性顔料インクジェットプリンタ(形式名: TM−C3500、セイコーエプソン社製)と、当該プリンタ標準のシアン、マゼンタ、イエロー及び黒の水性顔料インク(型番:SJIC22)を用いた。
(インクの滲み)
インクジェットプリンタで印刷した画像を、印刷直後に目視で観察するとともに、画像のドットを実体顕微鏡で観察し、次の通りに滲みを判定した。
A(優秀):滲みが全く見られない
B(良好):濃度が高い部分の境界にわずかに滲みが見られる
C(可):線の輪郭が太くなるか、不明瞭になり、所々に滲みが見られる
D(不可):画像全体に滲みが見られる
(インクの乾燥性)
インクジェットプリンタで印刷した直後の印刷画像上のインクの状態を目視で観察し、かつ印刷直後の印刷画像上にティッシュペーパーを押し当てて、次の通りインクの乾燥性を判定した。
A(優秀):表面にインクが液体として視認できず、紙を軽く押し当ててもインクが紙に全く転写しない
B(良好):表面にインクが液体として視認できないが、紙を押し当てると高濃度の画像部分においてインクが紙に転写する
C(可):表面にインクが液体として視認できないが、紙を押し当てると画像全体のインクが紙に転写する
D(不可):表面にインクが液体として視認できる
(耐擦過性)
各実施例及び各比較例の熱可塑性樹脂フィルムを用いてインクジェットプリンタで印刷した画像部分を、印刷から1日後に30mm×120mmのサイズに切り取って学振形染色摩擦堅ろう度試験機(商品名「摩擦試験機II形」、スガ試験器社製)に取り付けた。JIS L0849:2004(摩擦に対する染色堅ろう度試験方法)に準拠し、白綿布(金巾3号)を取り付けた荷重215gの錘で印刷した画像部分の表面を100回摩擦試験し、ドライ条件での耐擦過性評価を行った。その後、画像部分のインクの剥離具合を下記基準で目視評価した。
また別に、上記評価において、20μLの純水を浸みこませた白綿布(金巾3号)を取り付けた荷重215gの錘で印刷した画像部分の表面を100回摩擦試験し、ウエット条件での耐擦過性評価を行った。その後、画像部分のインクの剥離具合を下記基準で目視評価した。
A(優秀):擦った画像部分の95%以上が残存した
B(良好):擦った画像部分の90%以上、95%未満が残存した
C(可):擦った画像部分の80%以上、90%未満が残存した
D(不可):擦った画像部分の残存率が80%未満であった
下記表3及び表4に、上記評価結果をまとめて示す。
Figure 2019087979
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実施例1〜6は、いずれも、基材層の少なくとも一方の面に設けた多孔質層の吸水量が0.1g/m以下であり、表面張力30mN/mの第1液体が浸透するとともに、表面張力44mN/mの第2液体が浸透しないという浸透性を示す熱可塑性樹脂フィルムであった。なかでも、実施例1と実施例2の対比から、多孔質層を構成する組成物中にポリエチレンを適量含む多孔質層を有する熱可塑性樹脂フィルムは、インクジェットの印刷適性(滲み、インク乾燥性、及び印刷耐擦過性)が良好であったが、これは空孔のサイズが比較的大きく、空孔率が比較的大きいとともに多孔質層の表面がフィブリル構造を作りやすいことから、インクがフィルム内部に浸透しやすいためと考えられる。
実施例4は、基材層上に3層の多孔質層を有し、3層のうち、表面をカチオン性ポリマーにより被覆された無機フィラーを含有する多孔質層が最外層に位置し、この最外層に、表面をアニオン性親水化剤により被覆された無機フィラーを含有する多孔質層が隣接する構成であり、実施例1と同様に良好なインクジェット印刷適性を示すことがわかる。
また、実施例1と実施例5、6との対比から、多孔質層の坪量が大きい方が、インクジェット適性が良好であることがわかる。
一方、比較例1〜3は、いずれも、基材層の少なくとも一方の面に設けた多孔質層の最外層に、カチオン性ポリマーによる表面処理の後、アニオン性親水化剤による表面処理を行った無機フィラー(表面をアニオン性親水化剤により被覆された無機フィラー)を使用する、従来技術の熱可塑性樹脂フィルムであるが、吸水量が大きく、第1液体及び第2液体が両方とも浸透しており、このような浸透性では水性顔料インクジェット印刷に対する優れた適性が得られないことがわかる。
また、比較例4は高級脂肪酸等による表面処理を行った無機フィラーを使用する、従来技術の熱可塑性樹脂フィルムであるが、第1液体及び第2液体が両方とも浸透せず(どのような液体も浸透性がほぼ無く)、水性顔料インクジェット印刷に対する優れた適性も得られなかった。
実施例11〜13は、いずれも熱可塑性樹脂フィルムの多孔質層上にカチオン性ポリマーを塗工してコート層を設けることによって、水性顔料インクの定着性が向上し、滲み及びインク乾燥性がさらに向上しており、インクジェット用紙として非常に好適であることを示す例である。
実施例11〜13を対比すると、塗工量が少ない方が、耐擦過性が上昇しており、塗工量に適正な範囲があることがわかる。これは、コート層となるカチオン性ポリマーが適正な塗工量であれば、カチオン性ポリマーによって多孔質層表面のフィブリル構造が埋没しにくいためと推察される。
本出願は、2017年10月31日に出願された日本特許出願である特願2017−210648号に基づく優先権を主張し、当該日本特許出願のすべての記載内容を援用する。
本発明の熱可塑性樹脂フィルム及びインクジェット用紙は、水性顔料インクを使用したときの滲みが少なく、インク乾燥性及び耐擦過性に優れることから、名刺、チラシ、ウィンドウフィルム、POP、ポスター等として幅広い用途に利用することができる。
1 熱可塑性樹脂フィルム
2 熱可塑性樹脂フィルム
A 基材層
B1、B2 多孔質層
C コート層

Claims (5)

  1. 基材層と、
    前記基材層の少なくとも一方の面上に多孔質層と、を有し、
    前記多孔質層の単位面積あたりの吸水量が、0.1g/m以下であり、
    前記多孔質層上に表面張力が30mN/mの第1液体を滴下して5分間放置した場合に前記第1液体が浸透し、かつ前記多孔質層上に表面張力が44mN/mの第2液体を滴下して5分間放置した場合に前記第2液体が浸透しない、
    ことを特徴とする熱可塑性樹脂フィルム。
  2. 基材層と、
    前記基材層の少なくとも一方の面上に多孔質層と、を有する熱可塑性樹脂フィルムであって、
    前記多孔質層が、熱可塑性樹脂と、表面をカチオン性ポリマーにより被覆されている無機フィラーの30〜70質量%とを含有する層であり、
    前記無機フィラーの平均粒子径が0.3〜5μmであり、
    前記多孔質層の単位面積あたりの吸水量が0.1g/m以下である
    ことを特徴とする熱可塑性樹脂フィルム。
  3. 基材層、多孔質層、及びコート層をこの順に有する熱可塑性樹脂フィルムであって、
    前記多孔質層が、熱可塑性樹脂と、表面をカチオン性ポリマーにより被覆されている無機フィラーの30〜70質量%とを含有する層であり、
    前記無機フィラーの平均粒子径が0.3〜5μmであり、
    前記コート層がカチオン性ポリマーを含有する
    ことを特徴とする熱可塑性樹脂フィルム。
  4. 前記多孔質層が、多層であり、
    前記多孔質層の最外層が、熱可塑性樹脂と、表面をカチオン性ポリマーにより被覆されている無機フィラーの30〜70質量%とを含有する層であり、
    前記最外層に隣接する層が、熱可塑性樹脂と、表面をアニオン性親水化剤により被覆されている無機フィラーとを含有する層である、
    ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  5. 請求項3又は4に記載の熱可塑性樹脂フィルムを含むインクジェット用紙。
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