JPWO2019066067A1 - ナス科植物中のセリン含有量の制御方法、ナス科植物、及びナス科植物の栽培方法の判別方法 - Google Patents

ナス科植物中のセリン含有量の制御方法、ナス科植物、及びナス科植物の栽培方法の判別方法 Download PDF

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Abstract

塩化ナトリウムを含む栽培用溶液を用いたナス科植物栽培において、前記栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度と前記栽培用溶液での栽培日数のいずれかもしくは両方を調節することを含む、ナス科植物中のセリン含有量の制御方法。

Description

本発明は、ナス科植物中のセリン含有量の制御方法、ナス科植物、及びナス科植物の栽培方法の判別方法に関する。
本願は、2017年9月29日に、日本に出願された特願2017−189563号、2017年9月29日に、日本に出願された特願2017−189564号、及び2017年9月29日に、日本に出願された特願2017−189736号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
近年、世の中として健康に気を使う人が増加しており、例えばアミノ酸などの機能性成分を多く含む食品が求められている。特許文献1には、抗ストレス作用が知られるGABAの含有量を増やすためにトマト処理物を乳酸菌で発酵することで、GABA高含有のトマト由来の食品の製造方法が開示されている。
しかしながら、機能性成分としてGABA以外にも多くの成分が存在しており、広くその他の機能性成分も摂取したいという世の中の健康志向ニーズに対応するためには、その他の機能性成分と食品の組み合わせを開発する必要がある。
例えば、セリンには、一般的に睡眠の質を改善する効果を有することが知られており、ストレス等の多い現代社会においてその有効性が謳われている。また、セリンには、脳機能を改善する効果があることが知られており、アルツハイマー病のリスクを低減する可能性(非特許文献1)も示唆されている。
トマトの栽培方法として、土耕栽培の他、水耕栽培が知られている。
特許文献2には、トマトを塩化ナトリウムを含む栽培用溶液で水耕栽培する方法が提案されている。特許文献2の方法によれば、高糖度のトマトを生産することができる。しかし、収穫されたトマトから、栽培方法を判別することは困難であった。
食味の向上、及び栄養価の向上を目的として、植物中のアミノ酸含有量を増加させる方法が提案されている。特許文献3は、遺伝子組み換え技術を用いてアミノ酸含有量を制御する方法について提案している。しかし、遺伝子組み換え植物には懸念があるため、遺伝子組み換え技術を使用せずに、セリン等のアミノ酸含有量を制御できる方法が望まれている。
特許第4757569号 特開平10−271924号公報 特表2003−509055号公報
Metcalf et al., Neurotox Res. 2018, 33(1), p.213-221.
上記のような問題に鑑み、本発明は、ナス科植物中のセリン含有量の制御方法を提供することを目的とする。
また、機能性成分としてアミノ酸、好ましくはセリンを多く含有したナス科植物を提供することを目的とする。
また、本発明は、ナス科植物の栽培方法の判別方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を有する。
[1] 塩化ナトリウムを含む栽培用溶液を用いたナス科植物栽培において、前記栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度と前記栽培用溶液での栽培日数のいずれかもしくは両方を調節することを含む、ナス科植物中のセリン含有量の制御方法。
[2] 前記栽培が水耕栽培であることを特徴とする、[1]に記載のナス科植物中のセリン含有量の制御方法。
[3] 前記栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度が1質量%以上である、[1]又は[2]に記載のナス科植物中のセリン含有量の制御方法。
[4] 前記栽培用溶液での栽培日数が全栽培期間の1/2以上である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のナス科植物中のセリン含有量の制御方法。
[5] 前記ナス科植物がトマトである、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のナス科植物中のセリン含有量の制御方法。
[6] セリンの含有量が、総アミノ酸含有量100mol%に対し、8mol%以上である、ナス科植物。
[7] 総アミノ酸含有量が、可食部100gに対し、300mg以上である、[6]に記載のナス科植物。
[8] セリンの含有量が、可食部100gに対し、30mg以上である、[5]または[7]に記載のナス科植物。
[9]トマトである、[6]〜[8]のいずれか一項に記載のナス科植物。
[10] 1質量%以上の塩化ナトリウムを含む栽培用溶液で水耕栽培されたナス科植物であるか否かを判別するナス科植物の栽培方法の判別方法であって、
ナス科植物の可食部100g中の各アミノ酸含有量(mg)を測定すること、
前記各アミノ酸含有量から、前記ナス科植物の可食部100g中の総アミノ酸含有量α(mg)を算出すること、
総アミノ酸含有量100mol%に対するセリン含有量β(mol%)を算出すること、及び、
前記総アミノ酸含有量αが所定の値α以上であり、且つ前記セリン含有量βが所定の値β以上である場合に、前記ナス科植物が、1質量%以上の塩化ナトリウムを含む栽培用溶液で水耕栽培されたと判別すること、を含む、ナス科植物の栽培方法の判別方法。
[11] 前記所定の値αが300mgであり、
前記所定の値βが8mol%である、[10]に記載のナス科植物の栽培方法の判別方法。
[12] 前記ナス科植物がトマトである、[10]または[11」に記載のナス科植物の栽培方法の判別方法。
本発明によれば、ナス科植物中のセリン含有量の制御方法を提供することができる。
本発明によれば、従来と比較し機能性成分として各種アミノ酸成分が高濃度に含有されるナス科植物を得ることが出来る。また従来のナス科植物と比較し、全アミノ酸の中でもセリン濃度の高いナス科植物を得ることが出来る。これにより特にセリンを効率的に摂取可能なナス科植物が得られる。
本発明によれば、ナス科植物の栽培方法の判別方法を提供することができる。
塩化ナトリウム濃度とセリン含有量(mg/可食部100g)との関係を表すグラフである。 塩化ナトリウム濃度とセリン含有量(mol%/総アミノ酸100mol%)との関係を表すグラフである。
≪ナス科植物中のセリン含有量の制御方法≫
本発明のナス科植物中のセリン含有量の制御方法は、塩化ナトリウムを含む栽培用溶液を用いたナス科植物の栽培において、栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度又は栽培用溶液での栽培日数を調節することを含む。
本発明のナス科植物中のセリン含有量の制御方法は、栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度を調節すること、及び栽培用溶液での栽培日数を調節すること、の両方を含んでいてもよい。
ナス科(Solanaceae)とは、双子葉植物綱キク亜綱ナス目の科の一つであり、約90属を含む大きな群である。本発明に係るナス科植物は、食用の植物であることが好ましい。ナス科植物の例としては、ナス(Solanum melongena)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、ペピーノ(Solanum muricatum Aiton)、及びトマト (Solanum lycopersicum)等のナス属の植物;トウガラシ(ピーマン、パプリカ)(Capsicum annuum)、ロコト(Capsicum pubescens)、ウルピカ(Capsicum cardenasii)、アヒ・アマリージョ(Capsicum baccatum)、ハバネロ(Capsicum chinense)、及びキダチトウガラシ(Capsicum frutescens)等のトウガラシ属の植物;ホオズキ(Physalis alkekengi var. franchetii)、オオブドウホオズキ(トマティージョ(Tomatillo))(Physalis ixocarpa)等のホオズキ属の植物;及びクコ(Lycium rhombifolium)等のクコ属の植物を挙げることができる。これらのうち、トマトであることが好ましい。
前記栽培方法は、水耕栽培であることが好ましい。水耕栽培であると、溶液中の塩化ナトリウム濃度の制御が容易であるためナス科植物に吸収させる塩化ナトリウムの量を調整しやすいことや、土壌に比べ溶液中に存在する病原菌やウィルス種類、量が少ないため感染リスクが低い等の利点がある。特に、後述するナス科植物の製造方法により栽培することが好ましい。
栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度は、下限としては、1質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましく,2.0質量%以上がさらに好ましく,2.5質量%以上が特に好ましい。上限としては4.0質量%以下が好ましく、3.5質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下がさらに好ましい。具体的には、栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度は、1〜4.0質量%が好ましく、1〜3.5質量%がより好ましく、1〜3.0質量%がよりに好ましく、2〜3.0質量%がさらに好ましい。栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度が上記範囲内であると、ナス科植物中のアミノ酸成分量、濃度を高めることができ、食味の向上や健康機能性を向上するための食品を提供できる。また、ナス科植物中の塩濃度を高められるため、日持ち向上効果が得られる。
栽培用溶液での栽培日数は、長いほど好ましく、上記栽培日数の下限としては、全栽培期間の1/3以上が好ましく、1/2以上がより好ましく、2/3以上がより好ましく、9/13以上がより好ましく、10/13以上がさらに好ましい。なお、前記栽培用溶液による栽培は、収穫前に終了し、前記栽培用溶液を用いない栽培、前記栽培溶液から所定の成分を除いた溶液(例えば塩化ナトリウムを除いた溶液)、もしくは前記栽培溶液を希釈した栽培に切り替えてもよい(例えば、前記栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度よりも低い養液による栽培に切り替えてもよい)が、収穫の直前まで行うことが最も好ましい。
栽培日数の上限については、特に制限はなく、好ましくは全栽培期間の7/8以下であってもよく、より好ましくは9/10以下であってもよく、さらに好ましくは12/13以下であってもよいが、全栽培期間(1/1)であることが最も好ましい。即ち、栽培用溶液での栽培日数の範囲としては、全栽培期間の1/3〜1/1が好ましく、1/2〜1/1がより好ましく、2/3〜1/1がより好ましく、9/13〜1/1がより好ましく、10/13〜1/1がさらに好ましい。
栽培日数が上記下限値以上であると、ナス科植物中のアミノ酸成分量、濃度、特にセリンの量、濃度を高めることができ、食味の向上や健康機能性を向上するための食品を提供できる。また、ナス科植物中の塩濃度を高められるため、日持ち向上効果が得られる。
なお、全栽培日数とは、発芽後からナス科植物の果実を収穫するまでの日数を意味する。ただし、後述する「耐塩性付与処理」を行う場合、全栽培期間とは植物に耐塩性付与剤を接触させることを開始した直後からナス科植物の果実を収穫するまでの日数を意味する。
ナス科植物がトマトである場合、トマトの果熟の程度は、トマト表面の赤色又は桃色の着色の程度(面積%)で分類でき、例えば、緑熟期(着色なし)、催色期(〜70%着色)、成熟期(71〜90%着色)、完熟期(91〜100%着色)を経て、過熟期となる。本発明では、成熟期又は完熟期のトマトの可食部におけるセリン含有量が制御されることが好ましい。
なお、本明細書において、可食部とは、収穫されたトマト等の果実から、ヘタ(咢)及び果柄の部分を除いた部分のことを指し、果実は加工されていない生の果実である。ただし、ジャガイモの場合、可食部は塊茎である。
本明細書におけるアミノ酸は、遊離アミノ酸のことである。
アミノ酸量は公知の方法により測定できる。例えば、市販のアミノ酸自動分析機を用いることができ、アミノ酸自動分析法又は高速液体クロマトグラフ法により求めることができる。
なお、本発明に係るナス科植物は遺伝子組み換え植物ではないことが好ましい。
本発明では、栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度又は栽培用溶液での栽培日数を調節することにより、ナス科植物中のセリン含有量を制御することができる。
まず、栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度又は栽培日数を変更した複数の栽培条件の下、ナス科植物を栽培する。
続いて、上記栽培条件で栽培したナス科植物の可食部100gにおける各アミノ酸含有量を測定する。ここで、「各アミノ酸含有量」とは、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、イソロイシン、アラニン、リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、メチオニン、バリン、グリシン、プロリン、スレオニン、トリプトファン、及びシスチンの各含有量である。
各アミノ酸含有量をmolに換算し、合計して総アミノ酸含有量(mol)を算出する。さらに、総アミノ酸含有量100mol%に対するセリン含有量(mol%)を算出する。横軸にセリン含有量、縦軸に栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度をプロットし、検量線(1)を作成する。
さらに、横軸にセリン含有量、縦軸に栽培日数をプロットし、検量線(2)を作成する。
検量線(1)から、栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度をどの程度に設定すれば、セリン含有量がどれくらいになるかを推定することができる。
検量線(2)から、栽培日数をどの程度に設定すれば、セリン含有量がどれくらいになるかを推定することができる。
よって、所望のセリン含有量となるように、栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度又は栽培に日数を調節することにより、ナス科植物中のセリン含有量を制御することができる。
ナス科植物の塩化ナトリウム暴露量は、下記式(1)で求められる。
塩化ナトリウム暴露量=[栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度(質量%)]×[栽培用溶液での栽培日数(日)]・・・(1)
塩化ナトリウム暴露量を調節することにより、ナス科植物中のセリン含有量を制御することができる。
まず、栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度や栽培日数を変更した複数の栽培条件の下、ナス科植物を栽培する。
続いて、上記栽培条件で栽培したナス科植物の可食部100gにおける各アミノ酸含有量を測定する。
各アミノ酸含有量をmolに換算し、合計して総アミノ酸含有量(mol)を算出する。さらに、総アミノ酸含有量100mol%に対するセリン含有量(mol%)を算出する。横軸にセリン含有量、縦軸に塩化ナトリウム暴露量をプロットし、検量線(3)を作成する。
検量線(3)から、塩化ナトリウム暴露量をどの程度に設定すれば、セリン含有量がどれくらいになるかを推定することができる。よって、所望のセリン含有量となるように、塩化ナトリウム暴露量を調節することにより、ナス科植物中のセリン含有量を制御することができる。
本発明により、ナス科植物の可食部100gあたりに含まれる総アミノ酸含有量は、下限値としては、300mg以上に制御されることが好ましく、350mg以上に制御されることがより好ましく、400mg以上に制御されることがより好ましく、450mg以上に制御されることがより好ましく、500mg以上に制御されることがより好ましく、750mg以上に制御されることがより好ましく、1000mg以上に制御されることがさらに好ましい。上限値としては、高い程好ましいが、例えば2000mg以下に制御されることが好ましく、1500mg以下に制御されることがより好ましく,1250mg以下に制御されることがより好ましく、1200mg以下に制御されることがより好ましく、1150mg以下に制御されることがより好ましく、1100mg以下に制御されることがより好ましく、1050mg以下に制御されることがより好ましい。具体的には、ナス科植物の可食部100gあたりに含まれる総アミノ酸含有量は、300〜2000mgが好ましく、350〜1500mgがより好ましく、400〜1250mgがさらに好ましく、450〜1200mgが特に好ましい。本明細書において「総アミノ酸含有量」とは、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、イソロイシン、アラニン、リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、メチオニン、バリン、グリシン、プロリン、スレオニン、トリプトファン、及びシスチンの含有量の合計を意味する。
セリンには、睡眠の質を改善したり、脳機能を改善する効果がある。
本発明により、総アミノ酸含有量100mol%に対するセリンの量は、8mol%以上に制御されることが好ましい。セリン含有量を制御して、所望の量のセリンを含有するナス科植物を生産できる。
≪ナス科植物≫
本発明のナス科植物は、セリンの含有量が、総アミノ酸含有量100mol%に対し、8mol%以上である。ナス科植物の種類については上述した通りである。
前記アミノ酸含有量の値に関し、ナス科植物がトマトである場合、上述した成熟期又は完熟期におけるトマトの可食部が前記規定を満たすことが好ましい。
本明細書において「アミノ酸」とは、遊離アミノ酸のことである。具体的には、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、イソロイシン、アラニン、リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、メチオニン、バリン、グリシン、プロリン、スレオニン、トリプトファン、及びシスチンである。
アミノ酸量は上述の通り公知の方法により測定できる。
本発明に係るナス科植物がトマト(Solanum lycopersicum)である場合、その具体的な種類や品種は、特に限定されないが、例えば大玉トマト、中玉トマト、小玉トマト、イタリアン、ブラック、グリーン、フルーツトマトなどが挙げられる。
大玉トマトとしては、桃太郎、ファーストなどが挙げられる。中玉トマトとしては、フルティカ、レッドオーレなどが挙げられる。小玉トマトとしては、アイコ、千果、マイクロトマトなどが挙げられる。なお、本発明に係るトマトは遺伝子組み換え植物であっても良いが、食用であるために国や法制度によっては遺伝子組み換えではないことが好ましい。
ナス科植物(例えばトマトの果実)の可食部に含まれるナトリウムの量は、ナス科植物の可食部の総質量に対し、下限としては、0.10質量%以上が好ましく、0.15質量%以上であることがより好ましい。上限としては、0.5質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがさらに好ましい。具体的には、ナス科植物(例えばトマトの果実)の可食部に含まれるナトリウムの量は、0.10〜0.5質量%が好ましく、0.15〜0.4質量%がより好ましい。ナトリウムの量が上記範囲内であると、ナス科植物の風味向上や、日持ちが向上する。
本願発明によれば、従来に比して各種アミノ酸濃度が高いナス科植物を得ることが出来る。また、各種アミノ酸が高濃度化した中でも、総アミノ酸含有量に対してセリン濃度の高いナス科植物が得られる。セリンは後述の通り睡眠の質改善効果等を有し、ストレス等の多い現代社会においてその有効性が謳われている。
本願発明によれば、人為的な改変等をせずとも、特定の成分を多く含む食品を天然野菜の形で得ることが出来る。また、特定のアミノ酸の含有が多いため、特定アミノ酸を多く含むサプリメント等の食品の開発において濃縮を少なくできる、不要にできるなどの利点が得られる。
セリンには、睡眠の質改善や、うつ病や脳機能を改善する効果がある。
総アミノ酸含有量100mol%に対するセリンの量は、下限としては、5.0mol%以上であり、8.0mol%以上が好ましく、8.5mol%以上がより好ましく、8.8mol%以上がより好ましく、9.0mol%以上がさらに好ましい。上限としては、高い程好ましいが、たとえば30.0mol%以下が好ましく,20.0mol%以下がより好ましく,15.0mol%以下がより好ましく,14.0mol%以下がより好ましく,13.5mol%以下がより好ましく,13.0mol%以下がさらに好ましい。具体的には、アミノ酸含有量100mol%に対するセリンの量は、5.0〜30.0mol%が好ましく、8.0〜20.0mol%がより好ましく、8.5〜15.0mol%がさらに好ましく、8.5〜14.0mol%がさらに好ましく、8.5〜13.5mol%が特に好ましい。
グルタミン酸には、うまみを向上する効果や、疲労回復効果がある。
総アミノ酸含有量100mol%に対するグルタミン酸の量は、下限としては、50.0mol%以上であることが好ましく、60.0mol%以上であることがより好ましく、62.0mol%以上であることがさらに好ましい。上限としては、高い程好ましいが、たとえば65.0mol%以下であることが好ましく、63.0mol%以下であることがより好ましい。具体的には、総アミノ酸含有量100mol%に対するグルタミン酸の量は、50.0〜65.0mol%が好ましく、50.0〜63.0mol%がより好ましい。
アスパラギン酸には、疲労回復効果がある。
総アミノ酸含有量100mol%に対するアスパラギン酸の量は、下限としては、9.0mol%以上であることが好ましく、9.5mol%以上であることがより好ましく、10.5mol%以上であることがさらに好ましい。上限としては、高い程好ましいが、たとえば13.0mol%以下であることが好ましい。具体的には、総アミノ酸含有量100mol%に対するアスパラギン酸の量は、9.0〜13.0mol%が好ましい。
アルギニンには、免疫機能向上効果や、血管拡張効果がある。
総アミノ酸含有量100mol%に対するアルギニンの量は、下限としては、0.5mol%以上であることが好ましく、0.6mol%以上であることがより好ましい。上限としては、高い程好ましいが、たとえば1.8mol%以下であることが好ましく、1.5mol%以下であることがより好ましい。具体的には、総アミノ酸含有量100mol%に対するアルギニンの量は、0.5〜1.8mol%が好ましい。
イソロイシンには、血管拡張効果、成長促進効果、筋力強化効果、疲労回復効果がある。
総アミノ酸含有量100mol%に対するイソロイシンの量は、下限としては、0.9mol%以上であることが好ましく、1.0mol%以上であることがより好ましく、1.2mol%以上であることがさらに好ましく、1.5mol%以上であることが特に好ましい。上限としては、高い程好ましいが、たとえば2.80mol%以下であることが好ましく、1.58mol%以下であることがより好ましい。具体的には、総アミノ酸含有量100mol%に対するイソロイシンの量は、0.9〜2.80mol%が好ましい。
アラニンには、免疫機能向上効果、肝臓の活性向上効果がある。
総アミノ酸含有量100mol%に対するアラニンの量は、下限としては、0.4mol%以上であることが好ましく、0.5mol%以上であることがより好ましく、0.6mol%以上であることがより好ましく、0.7mol%以上であることがさらに好ましい。上限としては、高い程好ましいが、たとえば2.0mol%以下であることが好ましく、1.5mol%以下であることがより好ましい。具体的には、総アミノ酸含有量100mol%に対するアラニンの量は、0.4〜2.0mol%が好ましく、0.5〜2.0mol%がより好ましい。
リジンには、体組織修復効果、ウィルス抑制効果がある。
総アミノ酸含有量100mol%に対するリジンの量は、下限としては、0.6mol%以上であることが好ましく、0.7mol%以上であることがより好ましく、0.9mol%以上であることがさらに好ましく、1.4mol%以上であることが特に好ましい。上限としては、高い程好ましいが、たとえば2.00mol%以下であることが好ましく、1.9mol%以下であることがより好ましい。具体的には、総アミノ酸含有量100mol%に対するリジンの量は、0.6〜2.00mol%が好ましい。
ヒスチジンには、白血球・赤血球形成効果、食欲抑制効果がある。
総アミノ酸含有量100mol%に対するヒスチジンの量は、下限としては、1.0mol%以上であることが好ましく、1.2mol%以上であることがより好ましく、1.4mol%以上であることがさらに好ましく、1.7mol%以上であることが特に好ましい。上限としては、高い程好ましいが、たとえば2.5mol%以下であることが好ましく、2.2mol%以下であることがより好ましい。具体的には、総アミノ酸含有量100mol%に対するヒスチジンの量は、1.0〜2.5mol%が好ましい。
フェニルアラニンには、鎮痛効果、抗うつ効果、記憶力向上効果がある。
総アミノ酸含有量100mol%に対するフェニルアラニンの量は、下限としては、0.5mol%以上であることが好ましく、0.75mol%以上であることがより好ましく、1.2mol%以上であることがより好ましく、1.9mol%以上であることがさらに好ましい。上限としては、高い程好ましいが、たとえば2.5mol%以下であることが好ましく、2.0mol%以下であることがより好ましい。具体的には、総アミノ酸含有量100mol%に対するフェニルアラニンの量は、0.5〜2.5mol%が好ましい。
チロシンには、集中力向上効果がある。
総アミノ酸含有量100mol%に対するチロシンの量は、下限としては、0.1mol%以上であることが好ましく、0.4mol%以上であることがより好ましく、0.6mol%以上であることがさらに好ましい。上限としては、高い程好ましいが、たとえば0.8mol%以下であることが好ましく、0.7mol%以下であることがより好ましい。具体的には、総アミノ酸含有量100mol%に対するチロシンの量は、0.1〜0.8mol%が好ましい。
ロイシンには、筋力強化効果、肝機能向上効果がある。
総アミノ酸含有量100mol%に対するロイシンの量は、下限としては、0.4mol%以上であることが好ましく、0.6mol%以上であることがより好ましく、0.75mol%以上であることがより好ましい。上限としては、高い程好ましいが、たとえば1.2mol%以下であることが好ましく、1.0mol%以下であることがより好ましく、0.9mol%以下であることがより好ましい。具体的には、総アミノ酸含有量100mol%に対するロイシンの量は、0.4〜1.2mol%が好ましく、0.4〜1.0mol%がより好ましく、0.4〜0.9mol%がさらに好ましい。
メチオニンには、アレルギー反応抑制効果、抗うつ効果、肝臓・腎臓機能改善効果がある。
総アミノ酸含有量100mol%に対するメチオニンの量は、下限としては、0.1mol%以上であることが好ましく、0.2mol%以上であることがより好ましく、0.3mol%以上であることがより好ましい。上限としては、高い程好ましいが、たとえば0.4mol%以下であることが好ましい。具体的には、総アミノ酸含有量100mol%に対するメチオニンの量は、0.1〜0.4mol%が好ましい。
バリンには、成長促進効果、肝機能向上効果がある。
総アミノ酸含有量100mol%に対するバリンの量は、下限としては、0.4mol%以上であることが好ましく、0.5mol%以上であることがより好ましく、0.8mol%以上であることがより好ましく、1.0mol%以上であることがより好ましい。上限としては、高い程好ましいが、たとえば1.2mol%以下であることが好ましく、1.0mol%以下であることがより好ましい。具体的には、総アミノ酸含有量100mol%に対するバリンの量は、0.4〜1.2mol%が好ましく、0.4〜1.0mol%がより好ましい。
グリシンには、睡眠の質を向上する効果がある。
総アミノ酸含有量100mol%に対するグリシンの量は、下限としては、0.5mol%以上であることが好ましく、0.6mol%以上であることがより好ましく、0.7mol%以上であることがより好ましく、0.8mol%以上であることがより好ましい。上限としては、高い程好ましいが、たとえば1.8mol%以下であることが好ましく、1.5mol%以下であることがより好ましい。具体的には、総アミノ酸含有量100mol%に対するグリシンの量は、0.5〜1.8mol%が好ましい。
プロリンには、関節痛改善効果、美肌効果、保湿効果がある。
総アミノ酸含有量100mol%に対するプロリンの量は、下限としては、1.0mol%以上であることが好ましく、2.0mol%以上であることがより好ましく、5.0mol%以上であることがより好ましく、9.0mol%以上であることがより好ましい。上限としては、高い程好ましいが、たとえば15.0mol%以下であることが好ましく、11.0mol%以下であることがより好ましい。具体的には、総アミノ酸含有量100mol%に対するプロリンの量は、1.0〜15.0mol%が好ましく、2.0〜11.0mol%がより好ましい。
スレオニンには、成長促進効果、肝機能改善効果がある。
総アミノ酸含有量100mol%に対するスレオニンの量は、下限としては、2.0mol%以上であることが好ましく、2.2mol%以上であることがより好ましく、2.5mol%以上であることがより好ましい。上限としては、高い程好ましいが、たとえば3.0mol%以下であることが好ましい。具体的には、総アミノ酸含有量100mol%に対するスレオニンの量は、2.0〜3.0mol%が好ましい。
トリプトファンには、精神安定効果、鎮痛効果、安眠効果がある。
総アミノ酸含有量100mol%に対するトリプトファンの量は、下限としては、0.1mol%以上であることが好ましく、0.2mol%以上であることがより好ましい。上限としては、高い程好ましいが、たとえば0.4mol%以下であることが好ましい。具体的には、総アミノ酸含有量100mol%に対するトリプトファンの量は、0.1〜0.4mol%が好ましい。
ナス科植物の可食部100gあたりに含まれるセリンの量は、30mg以上であることが好ましく、30〜300mgであることが好ましく、40〜250mgであることがより好ましく、70〜200mgであることがさらに好ましく、90〜150mgであることが特に好ましい。
ナス科植物の可食部100gあたりに含まれるグルタミン酸の量は、200mg以上であることが好ましく、200〜2000mgであることが好ましく、300〜800mgであることがより好ましく、400〜700mgであることがさらに好ましく、500〜600mgであることが特に好ましい。
ナス科植物の可食部100gあたりに含まれるアスパラギン酸の量は、50mg以上であることが好ましく、50〜300mgであることが好ましく、70〜200mgであることがより好ましく、85〜180mgであることがさらに好ましく、100〜150mgであることが特に好ましい。
ナス科植物の可食部100gあたりに含まれるアルギニンの量は、6mg以上であることが好ましく、6〜150mgであることが好ましく、10〜150mgであることがより好ましく、15〜100mgであることがさらに好ましく、20〜50mgであることが特に好ましい。
ナス科植物の可食部100gあたりに含まれるイソロイシンの量は、7mg以上であることが好ましく、7〜100mgであることが好ましく、10〜80mgであることがより好ましく、13〜50mgであることがさらに好ましく、15〜30mgであることが特に好ましい。
ナス科植物の可食部100gあたりに含まれるアラニンの量は、8mg以上であることが好ましく、8〜200mgであることが好ましく、20〜150mgであることがより好ましく、40〜100mgであることがさらに好ましく、50〜80mgであることが特に好ましい。
ナス科植物の可食部100gあたりに含まれるリジンの量は、10mg以上であることが好ましく、10〜100mgであることが好ましく、15〜50mgであることがより好ましく、20〜30mgであることがさらに好ましい。
ナス科植物の可食部100gあたりに含まれるヒスチジンの量は、10mg以上であることが好ましく、10〜100mgであることが好ましく、15〜80mgであることがより好ましく、20〜60mgであることがさらに好ましい。
ナス科植物の可食部100gあたりに含まれるフェニルアラニンの量は、20mg以上であることが好ましく、20〜100mgであることが好ましく、23〜80mgであることがより好ましく、25〜60mgであることがさらに好ましい。
ナス科植物の可食部100gあたりに含まれるチロシンの量は、7mg以上であることが好ましく、7〜100mgであることがより好ましく、9〜50mgであることがさらに好ましい。
ナス科植物の可食部100gあたりに含まれるロイシンの量は、7mg以上であることが好ましく、7〜100mgであることがより好ましく、7〜50mgであることがさらに好ましい。
ナス科植物の可食部100gあたりに含まれるメチオニンの量は、2mg以上であることが好ましく、2〜100mgであることがより好ましく、2〜50mgであることがさらに好ましい。
ナス科植物の可食部100gあたりに含まれるバリンの量は、7mg以上であることが好ましく、7〜100mgであることがより好ましく、7〜50mgであることがさらに好ましい。
ナス科植物の可食部100gあたりに含まれるグリシンの量は、2mg以上であることが好ましく、2〜100mgであることが好ましく、5〜50mgであることがより好ましく、7〜30mgであることがさらに好ましい。
ナス科植物の可食部100gあたりに含まれるプロリンの量は、50mg以下であることが好ましく、1〜50mgであることが好ましく、5〜40mgであることがより好ましく、10〜30mgであることがさらに好ましい。
ナス科植物の可食部100gあたりに含まれるスレオニンの量は、10mg以上であることが好ましく、10〜100mgであることが好ましく、15〜80mgであることがより好ましく、23〜50mgであることがさらに好ましい。
ナス科植物の可食部100gあたりに含まれるトリプトファンの量は、2mg以上であることが好ましく、2〜50mgであることがより好ましい。
上記アミノ酸成分を含有するナス科植物を食すことで、各種アミノ酸の効果を期待できるとともに、栄養素として1日の不足摂取量を補うことも可能である。また、ナス科植物を濃縮、加工食品として利用することもできる。
≪ナス科植物の製造方法≫
本発明に係るナス科植物の製造方法は、ナス科植物の根の少なくとも一部に耐塩性付与剤を接触させる耐塩性付与処理を行う耐塩性付与工程と、前記耐塩性付与工程により耐塩性が付与された前記ナス科植物を、塩化ナトリウム濃度が1質量%以上である栽培用溶液で水耕栽培する栽培工程と、を有する。耐塩性付与工程は、本来耐塩性の低いナス科植物に、耐塩性付与剤で処理することによって耐塩性を付与し、塩化ナトリウム濃度が1質量%以上という非常に塩濃度の高い環境下で栽培可能とするための工程である。耐塩性が付与されたナス科植物は、続く栽培工程によって、塩化ナトリウム濃度が1質量%以上である栽培用溶液で水耕栽培できる。
耐塩性付与工程および栽培工程を行うことにより、アミノ酸含有量や風味、健康機能性等が向上したナス科植物を製造することができる。
生育の初期段階のナス科植物は、充分に生育したナス科植物よりもストレスに対する耐性が低く、環境ストレスの影響を受けやすい。特に、発根や発芽の工程は、塩濃度に非常に敏感である。このため、種子や球根の段階から高塩濃度環境下で生育させた場合には、高い塩ストレスにより、耐塩性処理を施しても耐塩性を獲得できずに枯死してしまうナス科植物が多い。本発明に係るナス科植物の製造方法では、生育の初期段階では低塩濃度環境下で生育させ、ある程度生育させた後に耐塩性付与処理を行うことが好ましい。これにより、耐塩性付与処理によって耐塩性が付与されるナス科植物の割合を顕著に増大させることができ、高塩濃度環境下で栽培することが可能な苗を効率よく育成することができる。また耐塩性付与剤を無駄にしない、耐塩性付与失敗による栽培のやり直しの工数、コスト削減効果などが得られる。
ナス科植物の耐塩性処理を施し、耐塩性を獲得させるためには、幼苗を発芽後少なくとも1週間、好ましくは2週間、より好ましくは3週間程度生育させた後に耐塩性付与工程を行うことが好ましい。
本願発明に係る耐塩性付与剤は、水や溶媒などの溶液に溶解される。前記溶液はさらに塩化ナトリウムを含有することができる。
本願発明に係る耐塩性付与剤は、土壌や水耕栽培溶液中に散布されることができる。耐塩性付与剤と植物の接触効率を高めるために、植物の少なくとも一部に直接接触させることが好ましい。
植物とは苗であっても良いし、その根であっても良い。特に水耕栽培においては、耐塩性付与剤を栽培溶液に直接散布すると、耐塩性付与剤が希釈されること、水流によって植物への付与がしにくいなどの点から、耐塩性付与剤を効果的に作用させるために耐塩性付与剤を根の少なくとも一部に直接作用させることが好ましい。苗は水耕栽培ベットや土壌に定植された苗に耐塩性付与剤を接触させても良いし、根の少なくとも一部に耐塩性付与剤を接触させた後に定植しても良い。
本発明に係るナス科植物の製造方法では、初期生育工程として、ナス科植物を、少なくとも発根及び発芽が完了するまでは、塩化ナトリウム濃度が1質量%未満である環境下で生育させる工程を有することが好ましい。初期生育工程において種子等を生育させる環境の塩化ナトリウム濃度は、1質量%未満であればよく、好ましくは、苗を育成するナス科植物と同じ品種の植物が正常に生育可能な塩濃度以下であることが好ましい。なお、「正常に生育可能な環境」とは、複数のナス科植物を生育させた場合の生育率が80%以上である環境を意味する。本発明に係るナス科植物の製造方法において初期生育工程を行う環境の塩化ナトリウム濃度としては、0〜0.5質量%であることが好ましく、0〜0.3質量%であることがより好ましく、0〜0.1質量%であることがさらに好ましい。
初期生育工程は、種子又は球根に給水させる水(初期生育用溶液)として、塩化ナトリウム濃度が1質量%未満の水溶液を用いる以外は、種子等を発芽及び発根させるための一般的な方法により行うことができる。具体的には、種子又は球根を、発芽・発根が可能な温度環境下で、初期生育用溶液に接する状態に置くことにより、発芽及び発根させる。例えば、適切な温度環境下に置いた種子等に、定期的に初期生育用溶液を散布させてもよく、種子等を、適切な温度環境下で、表面の少なくとも一部は空気に触れており、その他の部分が初期生育用溶液に接触している状態に置いてもよい。例えば、初期生育用溶液を含む支持用担体の表面に置くことにより、種子等を初期生育用溶液に部分的に接触させることができる。また、水深が種子等の高さより低くなるように容器に溜めた初期生育用溶液に、種子等を置くことによっても、種子等を初期生育用溶液に部分的に接触させることができる。
支持用担体としては、内部に含有する初期生育用溶液が担体表面に置かれた種子等に給水可能な程度の多孔質性を有するものであればよいが、発根した後、幼苗の根が支持用担体を貫通可能な程度の多孔質性を有するものが好ましい。種子等から発芽・発根させたナス科植物を、茎や葉が支持用担体の上方に伸び、根が支持用担体の下方に伸びるように生育させることにより、支持用担体に支持させた状態で生育させることができる。例えば、栽培工程で行う水耕栽培に使用される栽培用槽に設置可能な栽培用ポットの内部に保持させた支持用担体の表面に種子等を置いて発芽・発根させ、支持用担体の下方に根を伸ばし、支持用担体を貫通するようにナス科植物を生育させた場合には、当該栽培用ポット内に保持された状態でナス科植物が支持されているため、当該栽培用ポットをそのまま栽培用槽に設置することによって、幼苗期以降も生育させることができる。
このような多孔質性を有する支持用担体としては、例えば、ゲル状物質であってもよく、繊維状物質であってもよく、粒状又は礫状の物質であってもよい。ゲル状物質としては、寒天、アガロース、ゲランガム、アルギン酸等の高分子多糖類、アクリル樹脂等の吸水性樹脂等が挙げられる。繊維状物質としては、不繊布、綿、紙、ロックウール、グラスウール等が挙げられる。粒状又は礫状の物質としては、木材チップ、バーク、軽石、バーミキュライト、砂等が挙げられる。
初期生育工程の後、耐塩性付与工程として、生育させた苗の根の少なくとも一部に耐塩性付与剤を接触させる耐塩性付与処理を行うことができる。発芽・発根後に直ちに耐塩性付与処理を行ってもよいが、生育するほど塩ストレスに対する耐性も高くなる。このため、幼苗を、発芽後少なくとも1週間、好ましくは3週間程度生育させた後に耐塩性付与工程を行うことが好ましい。
耐塩性付与処理は、耐塩性付与剤を含有する水溶液(処理用溶液)に、苗の根の少なくとも一部を浸漬させることにより行うことができる。処理用溶液の塩化ナトリウム濃度は、特に限定されるものではなく、耐塩性付与効率が充分となるように、使用する耐塩性付与剤の種類やナス科植物の種類に応じて適宜調節することができる。例えば、初期生育用溶液に耐塩性付与剤を混合させたものを処理用溶液としてもよく、栽培工程で用いる栽培用溶液に耐塩性付与剤を混合させたものを処理用溶液としてもよく、塩類組成が初期生育用溶液と栽培用溶液のいずれとも異なる溶液を処理用溶液としてもよい。本発明において用いられる処理用溶液の塩化ナトリウム濃度としては、1質量%以上が好ましく、栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度と同じ濃度がより好ましい。
本発明において用いられる耐塩性付与剤は、1種または2種以上の薬剤であってもよく、微生物であってもよく、微生物の培養上清であってもよく、またそれらの組み合わせであっても良い。当該薬剤としては、例えば、ピロロキノリンキノン(特許5013326号公報参照。)やヒストンデアセチラーゼ阻害化合物(特開2016−69380号公報参照)、ストリゴラクトン等、が挙げられる。また、微生物としては、例えば、Plant, Cell and Environment, (2009) 32, 1682−1694や特開2013−75881号公報等に記載されているものが挙げられる。微生物の具体例としては, アゾスピリラム属(Azospirillum)、シュードモナス属、エンテロバクター属、アクロモバクター属、エロモナス属、バチルス属、バリオボラックス属、バークホルデリア属、セラチア属、マイコバクテリウム属、パエニバチルス属等が挙げられる。さらに具体的には、アゾスピリラム・ブラシレンス(Azospirillum brasilense)、シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、アゾスピリラム(Azospirillum)、アクロモバクター・ピエチャウディー(Achromobacter piechaudii)、エロモナス・ハイドロフィラ/キャビエ(Aeromonas hydrophila/caviae)、バチルス・インソリタス(Bacillus insolitus)、バリオボラックス・パラドクス(Variovorax paradoxus)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、バークホルデリア・フィトフィルマンス(Burkholderia phytofirmans)、エロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、セラチア・リケファシエンス(Serratia liquefaciens)、セラチア・プロテアマキュランス(Serratia proteamaculans)、バチルス・ポリミキサ(Bacillus polymyxa)、マイコバクテリウム・フレイ(Mycobacterium phlei)、シュードモナス・アルカリゲネス(Pseudomonas alcaligenes)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、パエニバチルス・フクイネンシス(Paenibacillus fukuinensis)等が挙げられる。これらのうち、アゾスピリラム・ブラシレンス(Azospirillum brasilense)、シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、アゾスピリラム(Azospirillum)、アクロモバクター・ピエチャウディー(Achromobacter piechaudii)、エロモナス・ハイドロフィラ/キャビエ(Aeromonas hydrophila/caviae)、バチルス・インソリタス(Bacillus insolitus)、及びパエニバチルス・フクイネンシス(Paenibacillus fukuinensis)が好ましく、アクロモバクター・ピエチャウディー(Achromobacter piechaudii)及びパエニバチルス・フクイネンシス(Paenibacillus fukuinensis)がより好ましい。
本発明に係る耐塩性付与剤は、配列番号1で表される塩基配列を含む16S rDNAを有するシュードモナス・コルガータ(Pseudomonas corrugata) PP001-SRDAAT株であってもよい。シュードモナス・コルガータ PP001-SRDAAT株は、2018年9月26日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に、受託番号NITE AP−02788として国際寄託されている。PP001-SRDAAT株はPseudomonas corrugata strain E60 16S ribosomal RNA gene, partial sequence(アクセッション番号:HQ407237.1)と16S rDNAの配列同一性が99%でありPseudomonas corrugataの新規株である。
処理用溶液中の耐塩性付与剤の濃度は、耐塩性付与剤の種類、ナス科植物の種類や栽培溶液の塩濃度、生育段階等を考慮して適宜調整される。処理用溶液中の耐塩性付与剤の濃度が低すぎる場合には、処理用溶液で耐塩性付与剤がナス科植物の根に接触する機会が少なくなり、耐塩性付与効果が不充分となるおそれがある。一方で、耐塩性付与剤の種類によっては、過剰摂取によりナス科植物の生育に却って悪影響を及ぼすおそれもある。そこで、充分な耐塩性付与効果を得るための処理用溶液中の耐塩性付与剤の濃度は、実験的に求めることができる。例えば、耐塩性付与剤が微生物の場合、処理用溶液における当該微生物の濃度を10CFU/mL以上とすることにより、充分な耐塩性付与効果を得ることができる。耐塩性付与剤が微生物の場合、処理用溶液における当該微生物の濃度は、10CFU/mL以上とすることが好ましく、10CFU/mL以上とすることがより好ましい。耐塩性付与剤が微生物の場合、処理用溶液における当該微生物の濃度の上限は、特に限定されないが、例えば、1013CFU/mL以下とすることにより、処理用溶液の水質を良好に維持することができる。処理用溶液における当該微生物の濃度の上限は、1012CFU/mL以下とすることが好ましく、1011CFU/mL以下とすることがより好ましく、1010CFU/mL以下とすることがさらに好ましく、10CFU/mL以下とすることが特に好ましい。処理用溶液における当該微生物の濃度の範囲としては、10〜1013CFU/mL等とすることができ、10〜1012CFU/mLとすることが好ましく、10〜1011CFU/mLとすることがより好ましく、10〜1010CFU/mLとすることがさらに好ましく、10〜10CFU/mLとすることが特に好ましい。
耐塩性付与材が微生物である場合、その培養、分離回収方法など各種条件は既知の情報を利用することが出来る。
本発明に係るナス科植物の耐塩性向上方法は、植物体のPERK13(Proline−rich extensin−like receptor kinase 13)の機能を抑制又は阻害しても良い。PERK13は植物体内へのナトリウムイオンの流入の制御に関与する蛋白質である。
本発明は、ナス科植物に関するものであるが、耐塩性向上方法が植物のPERK13の機能を抑制又は阻害する場合、耐塩性を向上させる植物体としては、元々ゲノムDNA中にPERK13遺伝子又はそのホモログ遺伝子を有している植物であれば特に限定されるものではなく、被子植物であってもよく、裸子植物であってもよく、シダ類やコケ類であってもよい。また、単子葉植物であってもよく、双子葉植物であってもよい。具体的には、イネ、トウモロコシ、モロコシ、コムギ、オオムギ、ライムギ、ヒエ、アワ等のイネ科の植物;トマト、ナス、パプリカ、ピーマン、ジャガイモ、タバコ、トウガラシ等のナス科の植物;シロイヌナズナ、セイヨウアブラナ、ナズナ、ダイコン、キャベツ、紫キャベツ、メキャベツ(プチヴェール)、ハクサイ、チンゲンサイ、ケール、クレソン、小松菜、ブロッコリー、カリフラワー、カブ、ワサビ、マスタード等のアブラナ科の植物;キュウリ、ニガウリ、カボチャ、メロン、スイカ、等のウリ科の植物;ブドウ等のブドウ科の植物;レモン、オレンジ、ネーブルオレンジ、グレープフルーツ、ミカン、ライム、スダチ、ユズ、シイクワシャー、タンカン等のミカン科の植物;リンゴ、サクラ、ウメ、モモ、イチゴ、ビワ、アンズ、プラム(スモモ)、プルーン、アーモンド、ナシ、洋ナシ、ラズベリー、ブラックベリー、カシス、クランベリー、ブルーベリー等のバラ科の植物;ダイズ、インゲンマメ、エンドウマメ、ソラマメ、エダマメ、リョクトウ、ヒヨコマメ等のマメ科の植物;ハス(レンコン)等のハス科の植物;ゴマ等のゴマ科の植物;ホウレンソウ、ビート、テンサイ、キヌア、ヒユ、アマランサス、ケイトウ等のアカザ科の植物;ナツメヤシ、アブラヤシ、ココヤシ、アサイー等のヤシ科の植物;バナナ、バショウ、マニラアサ等のバショウ科の植物;ワタ、オクラ等のアオイ科の植物;ユーカリ等のフトモモ科の植物;フウチョウソウ、セイヨウフウチョウソウ等のフウチョウソウ科の植物等が挙げられる。
ナス科植物の耐塩機構としては、PERK13に加え、その他既知の耐塩機構を介した耐塩性付与材を組み合わせても良い。
1回の耐塩性付与処理時間、すなわち、ナス科植物の根の少なくとも一部を処理用溶液と接触させる時間は、ナス科植物の種類や用いられる耐塩性付与剤の種類によって適宜調節される。例えば、耐塩性付与処理時間としては、1時間以上が好ましく、3時間以上がより好ましく、6時間以上がより好ましく、12時間以上がより好ましく、18時間以上がより好ましく、1日間以上がさらに好ましく、1〜7日間がよりさらに好ましい。ナス科植物の根を処理用溶液に浸漬させた状態で1時間以上栽培することにより、処理用溶液中の耐塩性付与剤がナス科植物の根に接触する機会が充分となり、耐塩性が付与されやすくなる。
初期生育工程において、苗を、栽培用ポットの内部に保持された支持用担体に支持された状態で生育させた場合には、支持用担体の下方から伸びた根が処理用溶液に接するように、処理用溶液が収容された処理用槽に当該栽培用ポットを設置することによって、耐塩性付与処理を行うこともできる。例えば、栽培用ポットをはめ込む貫通孔が1又は2以上あり、かつ処理用溶液の水面上に浮かべたフロートを利用し、当該フロートに栽培用ポットをはめ込むことによって、根を処理用溶液に接触させることができる。なお、栽培用ポットはフロートの貫通孔に脱着可能にはめ込まれていてもよく、フロートの貫通孔から外れないように固定されていてもよく、フロートと栽培用ポットが一体成型されたものであってもよい。処理用溶液の水面上に浮かべるフロートの素材としては、後記の栽培用溶液の水面上に浮かべるフロートと同様のものが用いられる。
耐塩性付与処理に用いる処理用溶液の量が多くなるほど、多量の耐塩性付与剤が必要になる。そこで、処理用溶液の量を、栽培用ポットの底面から伸びたナス科植物の根が接触するために必要充分な量にまで低減させることにより、1回の耐塩性付与処理に必要な耐塩性付与剤の量を抑えることができる。ただし、処理用溶液の量が少なすぎる場合には、ナス科植物の根に充分な量の耐塩性付与剤が接触できないおそれがあるため、処理用槽1個当たり、1個の栽培用ポットをはめ込むプレートのみが設置されている場合、当該処理用槽に収容された処理用溶液は、少なくとも5mLであることが好ましい。
耐塩性付与工程により耐塩性が付与された苗は、その後、塩化ナトリウム濃度が1質量%以上である栽培用溶液で水耕栽培する。
本発明において、栽培工程における栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度は、1質量%以上であればよく、栽培するナス科植物の耐塩性に応じて適宜調節することができる。本発明において用いられる栽培用溶液としては、塩化ナトリウム濃度が、1〜4質量%であることが好ましく、1.5〜3.8質量%であることがより好ましく、2〜3.5質量%であることがさらに好ましく、2.5〜3.3質量%であることが特に好ましい。
本発明において用いられる栽培用溶液としては、塩化ナトリウムに加えて塩化マグネシウムを含むことが好ましく、0.5質量%以下の塩化マグネシウムを含有することがより好ましく、0.1〜0.5質量%の塩化マグネシウムを含有することがさらに好ましい。
本発明において用いられる栽培用溶液は、塩化ナトリウムや塩化マグネシウム以外にも、ナス科植物の生育に必要な各種栄養成分を含有していることが好ましい。当該栄養成分は、栽培するナス科植物の種類に応じて適宜調整することができる。特に、窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄、鉄、マンガン、銅、モリブデン、ホウ素等のナス科植物の生育に必要な元素を塩類として含有していることが好ましい。その他、ナス科植物の種類によっては、アルミニウムや珪素等の元素を塩類として含有する場合もある。また、ナス科植物の生育段階に応じて栽培用溶液の組成を変更してもよい。
本発明において用いられる栽培用溶液としては、例えば、市販されている液肥に塩化ナトリウムをはじめとする不足の塩類を添加した溶液や、市販されている濃縮された液肥を、水に代えて海水で希釈した溶液を用いることができる。また、海水に、リン等の不足の塩類を適宜添加した溶液を用いることもできる。
本発明において、栽培工程における水耕栽培は、栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度を1質量%以上にする以外は、一般的な水耕栽培方法によって行うことができる。当該栽培工程は、比較的多量の栽培用溶液を栽培用槽にためる湛液型水耕法で行ってもよく、緩やかな傾斜を持つ平面上に培養液を少量ずつ流下させる薄膜水耕法で行ってもよい。
湛液型水耕法の場合、栽培用槽内の栽培用溶液の交換方法は、循環して利用する循環式であってもよく、栽培用槽内で一定期間利用した後にそのまま排液にする非循環式であってもよい。循環式の場合、栽培用溶液は栽培用溶液調製槽内で調製された後、ポンプ等により栽培用槽へ投入され、栽培用槽から再び栽培用溶液調製槽へと回収され、栄養成分等が調製される。
湛液型水耕法は、例えば、栽培用溶液を収容する栽培用槽と、ナス科植物を収容する栽培用ポットと、栽培用ポットをはめ込む貫通孔が1又は2以上あり、かつ栽培用溶液の水面上に浮かべるフロートと、を備える水耕栽培装置を用いて行うことができる。栽培用ポットはフロートの貫通孔に脱着可能にはめ込まれていてもよく、フロートの貫通孔から外れないように固定されていてもよく、フロートと栽培用ポットが一体成型されたものであってもよい。栽培用槽は、室内に設置されていてもよく、屋外に設置されていてもよい。
循環式水耕栽培装置の場合には、栽培用槽は、栽培用溶液を注入する給水孔と、栽培用溶液を排水する排水孔を備えている。非循環式水耕栽培装置の場合には、栽培用槽は、給水孔と排水孔の両方を備えていてもよく、給水と排水の両方を行う給排水孔を備えていてもよい。栽培用槽への栽培用溶液の給排水は、ポンプとバルブで制御される。
栽培用ポットは、少なくとも上面と下面に開口部を備えており、支持用担体を保持可能な容器であり、一般的には、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂素材のものが使用される。栽培用ポットに保持させる支持用担体としては、前述のものが利用できる。
フロートは、ナス科植物を栽培している状態の栽培用ポットを貫通孔にはめ込んだ状態で栽培用用水の水面に浮かぶ素材で形成されている。当該素材としては、例えば、発泡スチロール、発泡ポリプロピレン等の発泡性樹脂が挙げられる。栽培用ポットをフロートにはめ込むことにより、栽培用溶液の量の多寡にかかわらず、栽培用ポットは必ず栽培用溶液の水面に位置し、栽培用溶液が少量の場合でもナス科植物の根が栽培用溶液に必ず接することができる。
栽培用槽に浮かべるフロートは、1枚であってもよく、2枚以上であってもよい。栽培用槽が屋外に設置されている場合には、栽培用溶液の水面からの蒸散を抑制するために、栽培用溶液の水面の大部分を覆うようにフロートを設置することが好ましい。
湛液型水耕法の場合、使用する水耕栽培装置は、栽培用溶液の溶存酸素量を一定量以上に保つための酸素供給手段を備えていることが好ましい。当該酸素供給手段としては、例えば、エアーポンプやエアーサッカー等が挙げられる。栽培用槽内にエアーポンプを設置することにより、酸素を含む空気を栽培用槽内の栽培用溶液に直接供給することができる。エアーサッカーを用いる場合には、栽培用溶液を予めエアーサッカー等に通過させて空気を混入させた後に栽培用槽に投入することができる。
また、水耕栽培に適したpHは植物の種類ごとに違うものの、一般的にpH5.5〜6.5程度であるが、栽培期間が長くなるにつれ、栽培用溶液のpHは高くなる傾向にある。このため、長期間安定して水耕栽培を行うために、使用する水耕栽培装置は、栽培用溶液のpHを経時的に測定し、必要に応じてpHを所定の範囲内に調整するために酸物質を投与するpH制御手段を備えていることが好ましい。pH調整に用いられる酸物質としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。
本発明に係るナス科植物の製造方法において、耐塩性付与工程と栽培工程は、同じ栽培用槽で行ってもよく、耐塩性付与工程は処理用溶液を収容した処理用槽で行い、処理後の苗を、栽培用溶液を収容した栽培用槽に移設してもよい。
初期生育工程において、苗を、栽培用ポットの内部に保持された支持用担体に支持された状態で生育させた後、耐塩性付与処理を処理用槽内で行う場合には、苗は、栽培用ポットを処理用槽のフロートから外し、栽培用槽内に収容された栽培用溶液の水面に浮かべられたフロートの貫通孔にはめ込んでもよく、栽培用ポットが埋め込まれたフロートを、処理用槽から栽培用槽内の栽培用溶液の水面上に浮かべてもよい。栽培用ポット又はフロートを処理用槽から栽培用槽へ移動させる移動手段は、特に限定されず、例えば、水流を利用した移動手段やコンベアでの移動等で行うことができる。処理用槽1個当たり、複数の栽培用ポットが設置される場合には、処理用溶液のよどみを防止し、かつ酸欠を防止するために、エアーポンプによるバブリング処理を行うことが好ましい。
耐塩性付与処理を栽培用槽内で行う場合には、まず、栽培用槽に処理用溶液を収容して、フロートにはめ込まれた栽培用ポットの下方に伸びた根を処理用溶液に接触させて耐塩性付与処理を行う。耐塩性付与剤の濃度勾配を防止するために、処理用溶液は給排水量を少なくする又は給排水処理を行わない条件で、ナス科植物の根と接触させることが好ましい。
ただし、給排水量が少ない場合や給排水を行わない場合には、栽培用槽内によどみが生じてしまい、ナス科植物自体に悪影響を及ぼすおそれがある。そこで、エアーポンプによるバブリング処理によって処理用溶液を適宜撹拌することが好ましい。
耐塩性付与処理後、栽培用槽内の処理用溶液を排水し、次いで予め別の槽において調製した栽培用溶液を栽培用槽内に給水した後、通常の給排水条件で給排水を行うことにより、栽培工程を開始する。耐塩性付与剤が微生物等のようにそれ自身を過剰摂取させたとしてもナス科植物にさほど悪影響を与えない物質の場合には、処理用溶液を排水することなくそのまま栽培用溶液を給水し、通常の給排水条件で給排水を開始してもよい。
塩化ナトリウム濃度が1質量%以上である栽培用溶液(以下、「高塩濃度環境下」ということがある。)での栽培は、必ずしも、耐塩性付与処理後の栽培期間の全期間にわたって行う必要はない。例えば、耐塩性付与処理後の任意の期間のみ、高塩濃度環境下での栽培を行うようにしてもよい。この場合、高塩濃度環境下での栽培は、耐塩性付与処理の直後の一定期間に行うことが好ましい。耐塩性付与処理の直後の任意の期間に、高塩濃度環境下で栽培することにより、耐塩性付与処理で付与された耐塩性が維持され、植物体の日持ちが向上すると考えられる。高塩濃度環境下での栽培の期間(即ち、上記栽培用溶液での栽培日数)は、特に限定されないが、例えば、耐塩性付与処理の直後から、栽培期間の全期間の3分の1程度の期間まで、2分の1程度の期間まで、3分の2程度の期間まで等とすることができる。より具体的には、上記栽培日数の下限としては、全栽培期間の1/3以上が好ましく、1/2以上がより好ましく、2/3以上がより好ましく、9/13以上がより好ましく、10/13以上がさらに好ましい。本願発明にかかる効果を得る観点からは、高塩濃度環境下での栽培期間が長いほど好ましく、耐塩性付与処理の直後から、栽培期間の全期間(全栽培期間)にわたって、高塩濃度環境下での栽培を行うことが好ましい。早期に植物に塩ストレスを付与するために、耐塩性付与剤を植物に接触させた直後から塩化ナトリウムを含有する溶液に切り替えても良いし、少しでも植物に耐塩性が付与された時点から塩化ナトリウム含有溶液に切り替えることもできる。
なお、前記栽培用溶液による栽培は、収穫前に終了し、前記栽培用溶液を用いない栽培、前記栽培溶液から所定の成分を除いた溶液(例えば塩化ナトリウムを除いた溶液)、もしくは前記栽培溶液を希釈した栽培に切り替えてもよい(例えば、前記栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度よりも低い養液による栽培に切り替えてもよい)が、収穫の直前まで行うことが最も好ましい。
栽培日数の上限については、特に制限はなく、好ましくは全栽培期間の7/8以下であってもよく、より好ましくは9/10以下であってもよく、さらに好ましくは12/13以下であってもよいが、全栽培期間(1/1)であることが最も好ましい。即ち、栽培用溶液での栽培日数の範囲としては、全栽培期間の1/3〜1/1が好ましく、1/2〜1/1がより好ましく、2/3〜1/1がより好ましく、9/13〜1/1がより好ましく、10/13〜1/1がさらに好ましい。
なお、全栽培日数とは、全栽培期間とは植物に耐塩性付与剤を接触させることを開始した直後からナス科植物の果実を収穫するまでの日数を意味する。
耐塩性の付与が不充分であった苗は、栽培工程において一定期間、高塩濃度環境下で栽培すると、枯死する。枯死した植物は腐敗の原因になり、栽培用溶液において雑菌等が繁殖する原因となる。栽培用溶液の汚染によってせっかく耐塩性が付与された苗も病害等により枯死してしまうおそれもある。このため、耐塩性付与工程後又は栽培工程中においては、枯死した苗を除去する除去工程を有することが好ましい。特に、耐塩性付与工程を塩化ナトリウム濃度が1質量%以上である処理用溶液を用いて行った場合には、耐塩性付与工程後、栽培工程開始前に行うことが好ましい。農作物の栽培においては、枯死した苗を栽培用槽から除去することによって、実際の栽培地における歩留りを向上させることができる。
また、耐塩性付与処理開始後、高塩濃度環境下で一定期間生育させた場合に枯死せず生育している苗は、耐塩性付与剤によって確実に耐塩性が改善されたナス科植物であると確認できる。そして、枯死した苗を除去することにより、本発明において育成された耐塩性苗について、耐塩性苗としての品質保証を得ることもできる。
栽培工程は、栽培用槽が室内に設置された室内型で行われてもよく、栽培用槽が屋外に設置された屋外開放型であってもよい。
本発明に係るナス科植物の製造方法は、収穫されたナス科植物から、前記ナス科植物の可食部に係るアミノ酸濃度に関する前記値を満たすナス科植物を選抜する選抜工程を、更に有してもよい。
本発明に係るナス科植物の製造方法においては、栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度を高めると、総アミノ酸含有量やセリン含有量を高めることができる。よって、本発明に係るナス科植物は、栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度と栽培日数とを調節して、可食部に含まれる総アミノ酸含有量やセリン含有量を調節することができる。
特に、前記栽培工程において、上記したナス科植物中のセリン含有量の制御方法によって、セリン含有量を調節することが好ましい。これにより、セリン含有量を容易かつ確実に所望の値とすることができる。
本願の発明に係るナス科植物によれば、自然食品である野菜を食べながら機能性成分を多く摂取することが可能である。本願発明によれば、ナス科植物は多種類のアミノ酸を高濃度に含有するため、複数の機能や、単一の機能であっても高活性を期待でき、また複数の機構で当該活性を高めることが期待できる。例えば、本願に係るナス科植物が、睡眠改善作用を有するセリンを高濃度に含有する。また同じく睡眠改善作用を有するグリシンを有する場合、複数の機構を介した睡眠改善作用が期待できる。グリシンは、興奮性神経伝達調節物質としてNMDA受容体(NMDAR)に作用し、睡眠を改善することが示唆されている。セリンは、GABA受容体を介したメカニズムであることが示唆されている。つまり、同じ睡眠向上との効果であっても、多種類の成分を含有することで、複数の機構から相乗的な効果が期待できる。
ナス科植物に含有される各種アミノ酸は、量、濃度が多いほど高い効果を発揮する。ナス科植物に含有される量、濃度が多いほど、少ないナス科植物で多量に摂取が可能であるため、本願発明のナス科植物によれば摂取すべきナス科植物の個数を減らすことができる。
本願の発明に係るナス科植物により、機能性成分を多く含むナス科植物を得られる。遺伝子組み換え野菜は、場合によっては各国法規制や組み換え野菜が持つイメージ等により利用し難いことがあるが、本願の構成によれば、遺伝子組み換えを利用せずとも、機能性成分の豊富なナス科植物が得られる。
本願の発明に係るナス科植物によれば、機能性に加え、呈味にも優れるナス科植物を提供できる。機能性成分に加え、例えばうまみ成分として知られるグルタミン酸等を豊富に含んでいてもよいため、様々な機能性成分を美味しく摂取することが可能である。
≪ナス科植物の栽培方法の判別方法≫
本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法は、ナス科植物の可食部100g中の各アミノ酸含有量(mg)を測定すること(各アミノ酸含有量測定工程)、各アミノ酸含有量から、ナス科植物の可食部100g中の総アミノ酸含有量α(mg)を算出すること(総アミノ酸含有量算出工程)、総アミノ酸含有量100mol%に対するセリン含有量β(mol%)を算出すること(セリン含有量算出工程)、及び、総アミノ酸含有量αが所定の値α以上であり、且つセリン含有量βが所定の値β以上である場合に、ナス科植物が、1質量%以上の塩化ナトリウムを含む栽培用溶液で水耕栽培されたと判別すること(栽培方法判別工程)、を含む。
<各アミノ酸含有量測定工程>
各アミノ酸含有量測定工程では、ナス科植物の果実の可食部100g中の各アミノ酸含有量を求める。
測定される各アミノ酸、及びアミノ酸量の測定方法は上述した通りである。
また、トマトの果熟の程度やナス科植物の種類についても、上記した通りである。
<総アミノ酸含有量算出工程>
総アミノ酸含有量算出工程では、上記<各アミノ酸含有量測定工程>で測定されたアミノ酸の含有量を合計することにより、総アミノ酸含有量を算出する。
また、各アミノ酸含有量をmolに変換して合計し、総アミノ酸含有量(mol)を算出する。
本明細書において「総アミノ酸含有量」とは、上記した通りである。
<セリン含有量算出工程>
セリン含有量算出工程では、上記<総アミノ酸含有量算出工程>で算出された総アミノ酸含有量を100mol%としたときの、セリンの含有量(mol%)を算出する。
<栽培方法判別工程>
栽培方法判別工程では、上記<総アミノ酸含有量算出工程>で算出された総アミノ酸含有量αが所定の値α以上であり、且つ上記<セリン含有量算出工程>で算出されたセリン含有量βが所定の値β以上である場合に、ナス科植物が、1質量%以上の塩化ナトリウムを含む栽培用溶液で水耕栽培されたと判別する。
前記所定の値αは、300mgであることが好ましく、400mgであることがよりこのましい。
前記所定の値βは、8mol%であることが好ましく、8.5mol%であることがより好ましい。
本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法においては、総アミノ酸含有量100mol%に対するグルタミン酸含有量(mol%)を算出すること(グルタミン酸含有量算出工程)、及び前記グルタミン酸含有量が所定の値β以上であることを確認すること(グルタミン酸含有量確認工程)を含んでいてもよい。本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法が、グルタミン酸含有量確認工程を有することにより、ナス科植物の栽培方法をより正確に判別することができる。
本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法においては、総アミノ酸含有量100mol%に対するアスパラギン酸含有量(mol%)を算出すること(アスパラギン酸含有量算出工程)、及び前記アスパラギン酸含有量が所定の値β以上であることを確認すること(アスパラギン酸含有量確認工程)を含んでいてもよい。本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法が、アスパラギン酸含有量確認工程を有することにより、ナス科植物の栽培方法をより正確に判別することができる。
本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法においては、総アミノ酸含有量100mol%に対するアルギニン含有量(mol%)を算出すること(アルギニン含有量算出工程)、及び前記アルギニン含有量が所定の値β以上であることを確認すること(アルギニン含有量確認工程)を含んでいてもよい。本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法が、アルギニン含有量確認工程を有することにより、ナス科植物の栽培方法をより正確に判別することができる。
本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法においては、総アミノ酸含有量100mol%に対するイソロイシン含有量(mol%)を算出すること(イソロイシン含有量算出工程)、及び前記イソロイシン含有量が所定の値β以上であることを確認すること(イソロイシン含有量確認工程)を含んでいてもよい。本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法が、イソロイシン含有量確認工程を有することにより、ナス科植物の栽培方法をより正確に判別することができる。
本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法においては、総アミノ酸含有量100mol%に対するアラニン含有量(mol%)を算出すること(アラニン含有量算出工程)、及び前記アラニン含有量が所定の値β以上であることを確認すること(アラニン含有量確認工程)を含んでいてもよい。本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法が、アラニン含有量確認工程を有することにより、ナス科植物の栽培方法をより正確に判別することができる。
本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法においては、総アミノ酸含有量100mol%に対するリジン含有量(mol%)を算出すること(リジン含有量算出工程)、及び前記リジン含有量が所定の値β以上であることを確認すること(リジン含有量確認工程)を含んでいてもよい。本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法が、リジン含有量確認工程を有することにより、ナス科植物の栽培方法をより正確に判別することができる。
本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法においては、総アミノ酸含有量100mol%に対するヒスチジン含有量(mol%)を算出すること(ヒスチジン含有量算出工程)、及び前記ヒスチジン含有量が所定の値β以上であることを確認すること(ヒスチジン含有量確認工程)を含んでいてもよい。本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法が、ヒスチジン含有量確認工程を有することにより、ナス科植物の栽培方法をより正確に判別することができる。
本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法においては、総アミノ酸含有量100mol%に対するフェニルアラニン含有量(mol%)を算出すること(フェニルアラニン含有量算出工程)、及び前記フェニルアラニン含有量が所定の値β以上であることを確認すること(フェニルアラニン含有量確認工程)を含んでいてもよい。本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法が、フェニルアラニン含有量確認工程を有することにより、ナス科植物の栽培方法をより正確に判別することができる。
本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法においては、総アミノ酸含有量100mol%に対するチロシン含有量(mol%)を算出すること(チロシン含有量算出工程)、及び前記チロシン含有量が所定の値β以上であることを確認すること(チロシン含有量確認工程)を含んでいてもよい。本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法が、チロシン含有量確認工程を有することにより、ナス科植物の栽培方法をより正確に判別することができる。
本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法においては、総アミノ酸含有量100mol%に対するロイシン含有量(mol%)を算出すること(ロイシン含有量算出工程)、及び前記ロイシン含有量が所定の値β以上であることを確認すること(ロイシン含有量確認工程)を含んでいてもよい。本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法が、ロイシン含有量確認工程を有することにより、ナス科植物の栽培方法をより正確に判別することができる。
本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法においては、総アミノ酸含有量100mol%に対するメチオニン含有量(mol%)を算出すること(メチオニン含有量算出工程)、及び前記メチオニン含有量が所定の値β以上であることを確認すること(メチオニン含有量確認工程)を含んでいてもよい。本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法が、メチオニン含有量確認工程を有することにより、ナス科植物の栽培方法をより正確に判別することができる。
本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法においては、総アミノ酸含有量100mol%に対するバリン含有量(mol%)を算出すること(バリン含有量算出工程)、及び前記バリン含有量が所定の値β以上であることを確認すること(バリン含有量確認工程)を含んでいてもよい。本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法が、バリン含有量確認工程を有することにより、ナス科植物の栽培方法をより正確に判別することができる。
本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法においては、総アミノ酸含有量100mol%に対するグリシン含有量(mol%)を算出すること(グリシン含有量算出工程)、及び前記グリシン含有量が所定の値β以上であることを確認すること(グリシン含有量確認工程)を含んでいてもよい。本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法が、グリシン含有量確認工程を有することにより、ナス科植物の栽培方法をより正確に判別することができる。
本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法においては、総アミノ酸含有量100mol%に対するプロリン含有量(mol%)を算出すること(プロリン含有量算出工程)、及び前記プロリン含有量が所定の値β以上であることを確認すること(プロリン含有量確認工程)を含んでいてもよい。本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法が、プロリン含有量確認工程を有することにより、ナス科植物の栽培方法をより正確に判別することができる。
本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法においては、総アミノ酸含有量100mol%に対するスレオニン含有量(mol%)を算出すること(スレオニン含有量算出工程)、及び前記スレオニン含有量が所定の値β以上であることを確認すること(スレオニン含有量確認工程)を含んでいてもよい。本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法が、スレオニン含有量確認工程を有することにより、ナス科植物の栽培方法をより正確に判別することができる。
本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法においては、総アミノ酸含有量100mol%に対するトリプトファン含有量(mol%)を算出すること(トリプトファン含有量算出工程)、及び前記トリプトファン含有量が所定の値β以上であることを確認すること(トリプトファン含有量確認工程)を含んでいてもよい。本発明のナス科植物の栽培方法の判別方法が、トリプトファン含有量確認工程を有することにより、ナス科植物の栽培方法をより正確に判別することができる。
≪ナス科植物の栽培方法≫
本発明により判別されるナス科植物の栽培方法としては、上述した≪ナス科植物の製造方法≫と同様の方法が挙げられる。
≪塩化ナトリウム暴露量推定方法≫
上記総アミノ酸含有量α、セリン含有量βから、ナス科植物の塩化ナトリウム暴露量を推定することができる。
まず、栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度を変更した複数の栽培条件の下、ナス科植物を栽培する。
栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度、及び栽培用溶液での栽培日数から、下記式(1)により塩化ナトリウム暴露量を算出する。
塩化ナトリウム暴露量=[栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度(質量%)]×[栽培用溶液での栽培日数(日)]・・・(1)
続いて、上記栽培条件で栽培したナス科植物の可食部100gにおける各アミノ酸含有量を測定し、総アミノ酸含有量(mg)を算出する。
横軸に総アミノ酸含有量、縦軸に塩化ナトリウム暴露量をプロットし、検量線(1)を作成する。
さらに、総アミノ酸含有量100mol%に対するセリン含有量(mol%)を算出する。
横軸にセリン含有量、縦軸に塩化ナトリウム暴露量をプロットし、検量線(2)を作成する。
栽培方法が不明なナス科植物について、総アミノ酸含有量α、及びセリン含有量βを求め、それぞれ検量線(1)及び(2)から塩化ナトリウム暴露量を推定する。
以下、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
[実施例1]
トマト(甘福)の種の表面を、次亜塩素酸にて滅菌した後、十分に水(淡水)を含ませたスポンジ上に播種した。発芽後、2週間生育させた苗に対して、環境に慣らすために徐々に湿度を下げて自然環境で1週間生育させた。この苗を水耕栽培ベットに定植し、更に数日間生育させた。
Plant, Cell and Environment, (2009) 32, 1682−1694に記載されている微生物を培養し、遠心分離することで微生物のペレットを得た。
上記で得たペレット状の微生物を培養液に再懸濁したものを処理用溶液とし、植物の根と微生物が接触する時間を12時間設けることで耐塩化を行った。
次いで、水耕栽培ベットの水槽を、栽培用溶液(塩化ナトリウム濃度1質量%)で満たし、温室内で水耕栽培を10週間行った。なお、実施例で使用した栽培用溶液は、水耕栽培に必要な各種栄養素を添加したものを用いた。
[実施例2]
塩水の塩化ナトリウム濃度を2質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にトマトを栽培した。
[実施例3]
塩水の塩化ナトリウム濃度を3質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にトマトを栽培した。
[比較例1]
塩水を淡水に変更したこと以外は、実施例1と同様にトマトを栽培した。
実施例1〜3及び比較例1で栽培したトマトから収穫されたトマトの果実の可食部に含まれるアミノ酸の量を計測した。結果を表1に示す。表1中、「mg/100g」は可食部100g中のアミノ酸の含有量を表す。「mol」は、アミノ酸のモル数を表す。「mol%」は、総アミノ酸含有量100mol%に対する各アミノ酸の含有量(mol%)を表す。
また、図1に塩化ナトリウム濃度とセリン含有量(mg/可食部100g)との関係を表すグラフを示す。図2に塩化ナトリウム濃度とセリン含有量(mol%/総アミノ酸100mol%)との関係を表すグラフを示す。
また、実施例1〜3及び比較例1で栽培したトマトから収穫されたトマトの果実の可食部に含まれるナトリウムの量を計測した。各例において、複数のトマトの果実についてナトリウム量を測定し、平均値を算出した。ナトリウムの量(平均値)は、トマトの果実の可食部の総質量に対し、実施例1では、0.24質量%、実施例2では0.39質量%、比較例1では、0.073質量%であった。
<評価>
実施例および比較例で得られたトマトを各々四分の一カットしたものを、栽培条件を伏せた状態で6名で食べた。実施例1〜3と比較例1とを含む合計4種類のトマトから、全員が比較例1のトマトを特定できた。塩化ナトリウム濃度1質量%、2質量%、3質量%で栽培した実施例1〜3のトマトは、全員が比較例1のトマトと異なるとの印象を持った。特に3質量%のトマトは風味がはっきりしているとの印象を得た。
Figure 2019066067
実施例1〜3で栽培されたトマトの果実は、比較例1で栽培されたトマトの果実と比較すると、総アミノ酸含有量が多いことが判った。また、実施例1〜3で栽培されたトマトの果実の方が、比較例1で栽培されたトマトの果実よりもセリン含有量が多いことが判った。
実施例1〜4の結果から、栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度が増えるとともに、セリン含有量も増加することが判った。栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度とセリン含有量はほぼ比例関係にあった。また、栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度と、トマト中の総アミノ酸含有量に対するセリン含有量(mol%)もまた比例関係にあった。このことから、栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度を調節することにより、セリン含有量を制御できることが判った。
(トマトの栽培方法の判別方法)
実施例1〜3及び比較例1で栽培したトマトから収穫されたトマトの果実の可食部に含まれる各アミノ酸の含有量を測定した。測定した各アミノ酸の含有量を合計して総アミノ酸含有量を算出した。
また、各アミノ酸の含有量をmolに変換して合計し、セリン含有量(mol%)を算出した。
実施例1〜3で栽培したトマトから収穫されたトマトの果実の可食部に含まれる総アミノ酸含有量はいずれも300mg以上であった。また、セリン含有量はいずれも8mol%以上であった。
比較例1で栽培したトマトから収穫されたトマトの果実の可食部に含まれる総アミノ酸含有量は300mg未満であった。また、セリン含有量は8mol%未満であった。
このことから、総アミノ酸含有量が所定の値(ここでは300mg)以上であり、且つセリン含有量が所定の値(ここでは8mol%)以上であった。このことから、実施例1〜3で栽培したトマトは、1質量%以上の塩化ナトリウムを含む栽培用溶液で水耕栽培されたトマトであると判別した。
本発明によれば、従来と比較し機能性成分として各種アミノ酸成分が高濃度に含有されるナス科植物を得ることが出来る。また従来ナス科植物と比較し、全アミノ酸の中でもセリン濃度の高いナス科植物を得ることが出来る。これにより特にセリンを効率的に摂取可能なナス科植物が得られる。本発明によれば、ナス科植物の栽培方法の判別方法を提供することができる。本発明によれば、ナス科植物中のセリン含有量の制御方法を提供することができる。

Claims (12)

  1. 塩化ナトリウムを含む栽培用溶液を用いたナス科植物栽培において、前記栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度と前記栽培用溶液での栽培日数のいずれかもしくは両方を調節することを含む、ナス科植物中のセリン含有量の制御方法。
  2. 前記栽培が水耕栽培であることを特徴とする、請求項1に記載のナス科植物中のセリン含有量の制御方法。
  3. 前記栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度が1質量%以上である、請求項1又は2に記載のナス科植物中のセリン含有量の制御方法。
  4. 前記栽培用溶液での栽培日数が全栽培期間の1/2以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のナス科植物中のセリン含有量の制御方法。
  5. 前記ナス科植物がトマトである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のナス科植物中のセリン含有量の制御方法。
  6. セリンの含有量が、総アミノ酸含有量100mol%に対し、8mol%以上である、ナス科植物。
  7. 総アミノ酸含有量が、可食部100gに対し、300mg以上である、請求項6に記載のナス科植物。
  8. セリンの含有量が、可食部100gに対し、30mg以上である、請求項5または7に記載のナス科植物。
  9. トマトである、請求項6〜8のいずれか一項に記載のナス科植物。
  10. 1質量%以上の塩化ナトリウムを含む栽培用溶液で水耕栽培されたナス科植物であるか否かを判別するナス科植物の栽培方法の判別方法であって、
    ナス科植物の可食部100g中の各アミノ酸含有量(mg)を測定すること、
    前記各アミノ酸含有量から、前記ナス科植物の可食部100g中の総アミノ酸含有量α(mg)を算出すること、
    総アミノ酸含有量100mol%に対するセリン含有量β(mol%)を算出すること、及び、
    前記総アミノ酸含有量αが所定の値α以上であり、且つ前記セリン含有量βが所定の値β以上である場合に、前記ナス科植物が、1質量%以上の塩化ナトリウムを含む栽培用溶液で水耕栽培されたと判別すること、を含む、ナス科植物の栽培方法の判別方法。
  11. 前記所定の値αが300mgであり、
    前記所定の値βが8mol%である、請求項8に記載のナス科植物の栽培方法の判別方法。
  12. 前記ナス科植物がトマトである、請求項10または11に記載のナス科植物の栽培方法の判別方法。
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