JPWO2017135236A1 - 耐塩性苗の育成方法及び植物の水耕栽培方法 - Google Patents

耐塩性苗の育成方法及び植物の水耕栽培方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、本来耐塩性が低い植物について、高塩濃度環境下での生育が可能な苗を効率よく育成する方法を提供する。すなわち、本発明は、種子又は球根を、塩化ナトリウム濃度が1質量%未満である環境下で、発根させる初期生育工程と、前記初期生育工程により生育させた苗の根の少なくとも一部に耐塩性付与剤を接触させる耐塩性付与処理を行う耐塩性付与工程と、前記耐塩性付与工程により耐塩性が付与された苗を、塩化ナトリウム濃度が1質量%以上である栽培用溶液で水耕栽培する栽培工程と、を有する、耐塩性苗の育成方法である。

Description

本発明は、本来耐塩性が低い植物について、高塩濃度環境下での生育が可能な苗を育成する方法、及び植物体を、塩化ナトリウム濃度が1質量%以上である栽培用溶液で水耕栽培するための方法に関する。
に関する。
近年、世界各国における人口増加による食糧生産量の増大により、大量の農業用水が必要とされ、水不足が深刻な問題となっている。地球上に最も多く存在する水資源は海水であり、海水を農業用水として利用できれば、この問題を解決できる。ただし、植物の多くは、高塩濃度下では、浸透圧による吸水阻害とナトリウムイオンによる細胞内酵素の阻害により、育成することができない。本来耐塩性の低い植物について、海水の塩濃度程度にまで耐塩性を高めることができれば、海水を用いて栽培可能となることが期待できる。
植物の耐塩性を高める方法としては、遺伝子組換え技術を用いて、塩耐性機構に関与する遺伝子を導入する方法が挙げられる。例えば、植物細胞内にオスモライト(プロリンやベタイン)を蓄積させることによって浸透圧に対する耐性を獲得している塩生植物が存在している。このオスモライトを蓄積させる遺伝子を導入した組み換え植物は、耐塩性を獲得していることが報告されている。また、ナトリウムイオンに対しては、SOS1遺伝子が活性化することにより排出を促していることが知られており、この遺伝子を導入した組み換え植物が研究されている。
遺伝子組換え技術を使用せずに植物の耐塩性を高める方法としては、植物体への耐塩性付与効果を有する薬剤や微生物を植物体に投与する方法が検討されてきている。耐塩性付与効果を有する薬剤としては、例えば、ピロロキノリンキノン(例えば、特許文献1参照。)や植物ホルモンのストリゴラクトン等が知られている。また、耐塩性付与効果を有する微生物としては、例えば、パエニバチルス・フクイネンシス(Paenibacillus fukuinensis)(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
近年、土の代わりに植物に必要な栄養成分を含む水溶液( 以下、「栽培用溶液」という) を用いて作物を栽培する水耕栽培が注目されている。水耕栽培では、土を使用しないために害虫の発生リスクが小さく、生産管理が比較的容易である上に、農作物の栽培に適した土壌がない場所でも農作物を収穫できるという利点がある。また、栽培条件を制御することによって、従来よりもより栄養価や商品品質に優れた農作物を栽培することも可能である。
例えば、特許文献3には、アマランサスの葉の生育過程において有効量の金属塩を含む水溶液と接触させて水耕栽培することにより、適度な塩ストレスを与えて葉の細胞内におけるクロロフィル含有量を減少させ、相対的にベタシアニン含有量を増加させることにより、赤色の発色を増強させた彩り野菜としての商品価値の高い葉菜用アマランサスを栽培する方法が開示されている。また、特許文献4には、硝酸塩、リン酸塩などの化学肥料の代わりに、0.1〜0.3質量%の塩化ナトリウムを含む水溶液を液肥として用いた水耕栽培により、賞味期間が長く、より高品質なかいわれ大根を栽培する方法が開示されている。
水耕栽培では、土壌細菌による汚染リスクは低いものの、栽培用溶液に対して充分な水質管理がなされないと、藻類やコケ類が過剰増殖する場合がある。藻類等の過剰増殖により、栽培用溶液中の溶存酸素が減少し、目的の植物の生育が阻害されてしまう。また、水耕栽培では、一度病原菌が混入すると、栽培用溶液を介して広く拡散してしまう結果、土壌栽培よりも被害が大きくなる。このため、水耕栽培においては、クリーン環境で行う植物工場を除き、藻類やコケ類、病原菌等の繁殖を抑えるために、一般的に農薬が使用されている。使用される農薬としては、環境に対する影響を考慮し、化学合成農薬よりも微生物等が産生する天然の防除剤の方が好ましいとされている(例えば、特許文献5参照。)。
特許第5013326号公報 特開2013−75881号公報 特開2011−217656号公報 特開2001−320991号公報 国際公開第2004/100660号
遺伝子改変植物は、安全性への懸念等の問題もあるため、食糧植物としては、消費者心理の点から、遺伝子組換え技術を使用せずに耐塩性が高められたもののほうが好ましい。しかし、耐塩性付与効果を有する薬剤や微生物により処理した場合に、全ての植物体において耐塩性が獲得できるわけではなく、耐塩性が付与された植物体の獲得効率が問題となる。特に、農作物の栽培においては、効率よく植物体へ耐塩性を付与することが重要である。
本発明は、本来耐塩性が低い植物について、高塩濃度環境下での生育が可能な苗を効率よく育成する方法、及び植物体を、塩化ナトリウム濃度が1質量%以上である栽培用溶液で、水耕栽培するための方法を提供することを目的とする。
[1] 本発明の第一の態様に係る耐塩性苗の育成方法は、種子又は球根を、塩化ナトリウム濃度が1質量%未満である環境下で、発根させる初期生育工程と、前記初期生育工程により生育させた苗の根の少なくとも一部に耐塩性付与剤を接触させる耐塩性付与処理を行う耐塩性付与工程と、前記耐塩性付与工程により耐塩性が付与された苗を、塩化ナトリウム濃度が1質量%以上である栽培用溶液で水耕栽培する栽培工程と、を有する。
[2] 前記[1]の耐塩性苗の育成方法においては、前記耐塩性付与工程後、又は前記栽培工程において、枯死した苗を除去する除去工程を有することが好ましい。
[3] 前記[1]又は[2]の耐塩性苗の育成方法においては、前記耐塩性付与工程を、前記種子又は球根が発芽した後に行うことが好ましい。
[4] 前記[1]〜[3]のいずれかの耐塩性苗の育成方法においては、前記初期生育工程において、種子又は球根の発根を、塩化ナトリウム濃度が0.5質量%以下である環境下で行うことが好ましい。
[5] 前記[1]〜[3]のいずれかの耐塩性苗の育成方法においては、前記初期生育工程において、種子又は球根の発根を、塩化ナトリウム濃度が0質量%である環境下で行うことが好ましい。
[6] 前記[1]〜[5]のいずれかの耐塩性苗の育成方法においては、前記栽培用溶液が、さらに、0.5質量%以下の塩化マグネシウムを含有することが好ましい。
[7] 前記[1]〜[6]のいずれかの耐塩性苗の育成方法においては、前記塩性付与処理が、耐塩性付与剤を含有し、かつ塩化ナトリウム濃度が1質量%以上である処理用溶液に、前記苗の根の少なくとも一部を浸漬させる処理であることが好ましい。
[8] 前記[1]〜[7]のいずれかの耐塩性苗の育成方法においては、前記耐塩性付与剤が、1種類又は2種類以上の微生物であることが好ましい。
[9] 本発明の第二の態様に係る植物の水耕栽培方法は、前記[1]〜[8]のいずれかの耐塩性苗の育成方法により育成した耐塩性苗を、塩化ナトリウム濃度が1質量%以上である栽培用溶液で水耕栽培する栽培工程を有する。
[10] 前記[9]の植物の水耕栽培方法においては、前記栽培工程を、屋外開放型の栽培用槽で行うことが好ましい。
[11] 前記[9]又は[10]の植物の水耕栽培方法においては、前記栽培用溶液の塩濃度が2.5質量%以上であることが好ましい。
[12] 前記[9]〜[11]のいずれかの植物の水耕栽培方法においては、前記栽培用溶液が、さらに、0.5質量%以下の塩化マグネシウムを含有することが好ましい。
[13] 前記[9]又は[10]の植物の水耕栽培方法においては、前記栽培用溶液の50質量%以上が海水であることが好ましい。
[14] 前記[9]〜[13]のいずれかの植物の水耕栽培方法においては、前記栽培工程において、さらに、前記栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度を継続的又は断続的に測定するモニタリング工程と、前記モニタリング工程において、前記栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度が所定の上限閾値を超えていた場合に、前記栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度を1質量%以上でありかつ前記上限閾値以下の濃度に調整する調整工程と、を有することが好ましい。
[15] 前記[14]の植物の水耕栽培方法においては、前記調整工程において、前記栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度の調整を、前記栽培用溶液に、1種又は2種以上の希釈用溶液を混合させて行い、前記希釈用溶液の塩化ナトリウム濃度が1質量%未満であることが好ましい。
[16] 前記[14]又は[15]の植物の水耕栽培方法においては、前記上限閾値が3.5質量%であることが好ましい。
本発明に係る耐塩性苗の育成方法により、耐塩性付与効果を有する薬剤や微生物を用いて、元々耐塩性が低い植物体を、塩化ナトリウム濃度が1質量%以上の栽培用溶液で栽培することが可能な苗を効率よく育成することができる。
また、本発明に係る植物の水耕栽培方法により、植物体を、塩化ナトリウム濃度が1質量%以上の栽培用溶液を用いるという高塩環境下で水耕栽培することができる。
<耐塩性苗の育成方法>
本発明に係る耐塩性苗の育成方法(以下、単に「本発明に係る育成方法」ということがある。)は、種子又は球根を、塩化ナトリウム濃度が1質量%未満である環境下で、発根させる初期生育工程と、前記初期生育工程により生育させた苗の根の少なくとも一部に耐塩性付与剤を接触させる耐塩性付与処理を行う耐塩性付与工程と、前記耐塩性付与工程により耐塩性が付与された苗を、塩化ナトリウム濃度が1質量%以上である栽培用溶液で水耕栽培する栽培工程と、を有する。本来耐塩性の低い植物体に、耐塩性付与剤で処理することによって耐塩性を付与し、塩化ナトリウム濃度が1質量%以上という非常に塩濃度の高い環境下で栽培可能とするための苗を育成する方法である。生育の初期段階の植物体は、充分に生育した植物体よりもストレスに対する耐性が低く、環境ストレスの影響を受けやすい。特に、発根や発芽の工程は、塩濃度に非常に敏感である。このため、種子や球根の段階から高塩濃度環境下で生育させた場合には、高い塩ストレスにより、耐塩性処理を施しても耐塩性を獲得できずに枯死してしまう植物体が多い。これに対して、本発明に係る育成方法では、生育の初期段階では低塩濃度環境下で生育させ、ある程度生育させた後に耐塩性付与処理を行う。これにより、耐塩性付与処理によって耐塩性が付与される植物体の割合を顕著に増大させることができ、高塩濃度環境下で栽培することが可能な苗を効率よく育成することができる。
本発明に係る育成方法では、初期生育工程として、植物体を、少なくとも発根が完了するまでは、塩化ナトリウム濃度が1質量%未満である環境下で生育させる。「少なくとも発根が完了する」とは、種子又は球根から根の少なくとも一部が露出した状態に至ることを意味する。初期生育工程において種子等を生育させる環境の塩化ナトリウム濃度は、1質量%未満であればよく、好ましくは、苗を育成する植物体と同じ品種の植物が正常に生育可能な塩濃度以下である。なお、「正常に生育可能な環境」とは、複数の植物体を生育させた場合の生育率が80%以上である環境を意味する。本発明に係る育成方法において初期生育工程を行う環境の塩化ナトリウム濃度としては、0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%であってもよい。
初期生育工程は、種子又は球根に給水させる水(初期生育用溶液)として、塩化ナトリウム濃度が1質量%未満の水溶液を用いる以外は、種子等を発芽及び発根させるための一般的な方法により行うことができる。具体的には、種子又は球根を、発芽・発根が可能な温度環境下で、初期生育用溶液に接する状態に置くことにより、発根及び発芽させる。例えば、適切な温度環境下に置いた種子等に、定期的に初期生育用溶液を散布させてもよく、種子等を、適切な温度環境下で、表面の少なくとも一部は空気に触れており、その他の部分が初期生育用溶液に接触している状態に置いてもよい。例えば、初期生育用溶液を含む支持用担体の表面に置くことにより、種子等を初期生育用溶液に部分的に接触させることができる。また、水深が種子等の高さより低くなるように容器に溜めた初期生育用溶液に、種子等を置くことによっても、種子等を初期生育用溶液に部分的に接触させることができる。
支持用担体としては、内部に含有する初期生育用溶液が担体表面に置かれた種子等に給水可能な程度の多孔質性を有するものであればよいが、発根した後、幼苗の根が支持用担体を貫通可能な程度の多孔質性を有するものが好ましい。種子等から発芽・発根させた植物体を、茎や葉が支持用担体の上方に伸び、根が支持用担体の下方に伸びるように、支持用担体に支持させた状態で生育させることができる。例えば、栽培工程で行う水耕栽培に使用される栽培用槽に設置可能な栽培用ポットの内部に保持させた支持用担体の表面に種子等を置いて発芽・発根させ、支持用担体の下方に根を伸ばし、支持用担体を貫通するように植物体を生育させた場合には、当該栽培用ポット内に保持された状態で植物体が支持されているため、当該栽培用ポットをそのまま栽培用槽に設置することによって、幼苗期以降も生育させることができる。
このような多孔質性を有する支持用担体としては、例えば、ゲル状物質であってもよく、繊維状物質であってもよく、粒状又は礫状の物質であってもよい。ゲル状物質としては、寒天、アガロース、ゲランガム、アルギン酸等の高分子多糖類、アクリル樹脂等の吸水性樹脂等が挙げられる。繊維状物質としては、不繊布、綿、紙、ロックウール、グラスウール等が挙げられる。粒状又は礫状の物質としては、木材チップ、バーク、軽石、バーミキュライト、砂等が挙げられる。
初期生育工程の後、耐塩性付与工程として、生育させた苗の根の少なくとも一部に耐塩性付与剤を接触させる耐塩性付与処理を行う。発根後に直ちに耐塩性付与処理を行ってもよいが、生育するほど塩ストレスに対する耐性も高くなる。このため、発芽した後に耐塩性付与工程を行うことが好ましく、幼苗を、発芽後少なくとも1週間、好ましくは3週間程度生育させた後に耐塩性付与工程を行うことがより好ましい。
耐塩性付与処理は、耐塩性付与剤を含有する水溶液(処理用溶液)に、苗の根の少なくとも一部を浸漬させることにより行うことができる。処理用溶液の塩化ナトリウム濃度は、特に限定されるものではなく、耐塩性付与効率が充分となるように、使用する耐塩性付与剤の種類や植物体の種類に応じて適宜調節することができる。例えば、初期生育用溶液に耐塩性付与剤を混合させたものを処理用溶液としてもよく、栽培工程で用いる栽培用溶液に耐塩性付与剤を混合させたものを処理用溶液としてもよく、塩類組成が初期生育用溶液と栽培用溶液のいずれとも異なる溶液を処理用溶液としてもよい。本発明において用いられる処理用溶液は、耐塩性付与剤を含有していればよく、その塩化ナトリウム濃度は、0.01〜0.3質量%程度と低くてもよいが、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度と同じ濃度であることがさらに好ましい。
本発明において用いられる耐塩性付与剤は、薬剤であってもよく、微生物であってもよく、微生物の培養上清であってもよい。当該薬剤としては、例えば、ピロロキノリンキノン(特許文献1参照。)やストリゴラクトン等が挙げられる。また、微生物としては、例えば、パエニバチルス・フクイネンシス(特許文献2参照。)等が挙げられる。耐塩性付与剤としては、1種類の微生物からなるものであってもよく、2種類以上の微生物の混合物であってもよい。
処理用溶液中の耐塩性付与剤の濃度は、耐塩性付与剤の種類、植物体の種類や生育段階等を考慮して適宜調整される。処理用溶液中の耐塩性付与剤の濃度が低すぎる場合には、処理用溶液で耐塩性付与剤が植物体の根に接触する機会が少なくなり、耐塩性付与効果が不充分となるおそれがある。一方で、耐塩性付与剤の種類によっては、過剰摂取により植物体の生育に却って悪影響を及ぼすおそれもある。そこで、充分な耐塩性付与効果を得るための処理用溶液中の耐塩性付与剤の濃度は、実験的に求めることができる。例えば、耐塩性付与剤が微生物の場合、処理用溶液における当該微生物の濃度を10CFU/mL以上とすることにより、充分な耐塩性付与効果を得ることができる。
1回の耐塩性付与処理時間、すなわち、植物体の根の少なくとも一部を処理用溶液に浸漬させる時間は、植物体の種類や用いられる耐塩性付与剤の種類によって適宜調節される。例えば、耐塩性付与処理時間としては、1時間以上が好ましく、18時間以上がより好ましく、1日間以上がさらに好ましく、1〜7日間がよりさらに好ましい。植物体の根を処理用溶液に浸漬させた状態で1時間以上栽培することにより、処理用溶液中の耐塩性付与剤が植物体の根に接触する機会が充分となり、耐塩性が付与されやすくなる。
初期生育工程において、苗を、栽培用ポットの内部に保持された支持用担体に支持された状態で生育させた場合には、支持用担体の下方から伸びた根が処理用溶液に接するように、処理用溶液が収容された処理用槽に当該栽培用ポットを設置することによって、耐塩性付与処理を行うこともできる。例えば、栽培用ポットをはめ込む貫通孔が1又は2以上あり、かつ処理用溶液の水面上に浮かべたフロートを利用し、当該フロートに栽培用ポットをはめ込むことによって、根を処理用溶液に接触させることができる。なお、栽培用ポットはフロートの貫通孔に脱着可能にはめ込まれていてもよく、フロートの貫通孔から外れないように固定されていてもよく、フロートと栽培用ポットが一体成型されたものであってもよい。処理用溶液の水面上に浮かべるフロートの素材としては、後記の栽培用溶液の水面上に浮かべるフロートと同様のものが用いられる。
耐塩性付与処理に用いる処理用溶液の量が多くなるほど、多量の耐塩性付与剤が必要になる。そこで、処理用溶液の量を、栽培用ポットの底面から伸びた植物体の根が接触するために必要充分な量にまで低減させることにより、1回の耐塩性付与処理に必要な耐塩性付与剤の量を抑えることができる。ただし、処理用溶液の量が少なすぎる場合には、植物体の根に充分な量の耐塩性付与剤が接触できないおそれがあるため、処理用槽1個当たり、1個の栽培用ポットをはめ込むプレートのみが設置されている場合、当該処理用槽に収容された処理用溶液は、少なくとも5mLであることが好ましい。
耐塩性付与工程により耐塩性が付与された苗は、その後、塩化ナトリウム濃度が1質量%以上である栽培用溶液で水耕栽培される。
耐塩性付与工程後の栽培工程における栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度は、1質量%以上であればよく、栽培する植物体の耐塩性に応じて適宜調節することができる。本発明において用いられる栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度としては、1.5質量%以上が好ましく、2.0質量%以上がより好ましく、2.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、本発明において用いられる栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度としては、4質量%以下であることが好ましく、3.8質量%以下であることがより好ましく、3.5質量%以下であることがさらに好ましい。中でも、本発明において用いられる栽培用溶液としては、塩化ナトリウム濃度が、1〜4質量%であることが好ましく、1.5〜3.8質量%であることがより好ましく、2〜3.5質量%あることがさらに好ましい。
本発明において用いられる栽培用溶液としては、塩化ナトリウムに加えて塩化マグネシウムを含むことが好ましく、0.5質量%以下の塩化マグネシウムを含有することがより好ましく、0.1〜0.5質量%の塩化マグネシウムを含有することがさらに好ましい。
本発明において用いられる栽培用溶液は、塩化ナトリウムや塩化マグネシウム以外にも、植物体の生育に必要な各種栄養成分を含有していることが好ましい。当該栄養成分は、栽培する植物体の種類に応じて適宜調整することができる。特に、窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄、鉄、マンガン、銅、モリブデン、ホウ素等の植物体の生育に必要な元素を塩類として含有していることが好ましい。その他、植物体の種類によっては、アルミニウムや珪素等の元素を塩類として含有する場合もある。また、植物体の生育段階に応じて栽培用溶液の組成を変更してもよい。
本発明において用いられる栽培用溶液としては、例えば、市販されている液肥に塩化ナトリウムをはじめとする不足の塩類を添加した溶液や、市販されている濃縮された液肥を、水に代えて海水で希釈した溶液を用いることができる。また、海水に、リン等の不足の塩類を適宜添加した溶液を用いることもできる。本発明において用いられる栽培用溶液としては、海水を50質量%以上含有する溶液が好ましく、80質量%以上含有する溶液がより好ましく、海水に、不足の成分を適宜添加した溶液がさらに好ましい。
本発明において、栽培工程における水耕栽培は、栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度を1質量%以上にする以外は、一般的な水耕栽培方法によって行うことができる。当該栽培工程は、比較的多量の栽培用溶液を栽培用槽にためる湛液型水耕法で行ってもよく、緩やかな傾斜を持つ平面上に培養液を少量ずつ流下させる薄膜水耕法で行ってもよい。
湛液型水耕法の場合、栽培用槽内の栽培用溶液の交換方法は、循環して利用する循環式であってもよく、栽培用槽内で一定期間利用した後にそのまま排液にする非循環式であってもよい。循環式の場合、栽培用溶液は栽培用溶液調製槽内で調製された後、ポンプ等により栽培用槽へ投入され、栽培用槽から再び栽培用溶液調製槽へと回収され、栄養成分等が調製される。
湛液型水耕法は、例えば、栽培用溶液を収容する栽培用槽と、植物体を収容する栽培用ポットと、栽培用ポットをはめ込む貫通孔が1又は2以上あり、かつ栽培用溶液の水面上に浮かべるフロートと、を備える水耕栽培装置を用いて行うことができる。栽培用ポットはフロートの貫通孔に脱着可能にはめ込まれていてもよく、フロートの貫通孔から外れないように固定されていてもよく、フロートと栽培用ポットが一体成型されたものであってもよい。栽培用槽は、室内に設置されていてもよく、屋外に設置されていてもよい。
循環式水耕栽培装置の場合には、栽培用槽は、栽培用溶液を注入する給水孔と、栽培用溶液を排水する排水孔を備えている。非循環式水耕栽培装置の場合には、栽培用槽は、給水孔と排水孔の両方を備えていてもよく、給水と排水の両方を行う給排水孔を備えていてもよい。栽培用槽への栽培用溶液の給排水は、ポンプとバルブで制御される。
栽培用ポットは、少なくとも上面と下面に開口部を備えており、支持用担体を保持可能な容器であり、一般的には、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂素材のものが使用される。栽培用ポットに保持させる支持用担体としては、前述のものが利用できる。
フロートは、植物体を栽培している状態の栽培用ポットを貫通孔にはめ込んだ状態で栽培用用水の水面に浮かぶ素材で形成されている。当該素材としては、例えば、発泡スチロール、発泡ポリプロピレン等の発泡性樹脂が挙げられる。栽培用ポットをフロートにはめ込むことにより、栽培用溶液の量の多寡にかかわらず、栽培用ポットは必ず栽培用溶液の水面に位置し、栽培溶液が少量の場合でも植物体の根が栽培用溶液に必ず接することができる。
栽培用槽に浮かべるフロートは、1枚であってもよく、2枚以上であってもよい。栽培用槽が屋外に設置されている場合には、栽培用溶液の水面からの蒸散を抑制するために、栽培用溶液の水面の大部分を覆うようにフロートを設置することが好ましい。
湛液型水耕法の場合、使用する水耕栽培装置は、栽培用溶液の溶存酸素量を一定量以上に保つための酸素供給手段を備えていることが好ましい。当該酸素供給手段としては、例えば、エアーポンプやエアーサッカー等が挙げられる。栽培用槽内にエアーポンプを設置することにより、酸素を含む空気を栽培用槽内の栽培用溶液に直接供給することができる。エアーサッカーを用いる場合には、栽培用溶液を予めエアーサッカー等に通過させて空気を混入させた後に栽培用槽に投入することができる。
また、水耕栽培に適したpHは植物の種類ごとに違うものの、一般的にpH5.5〜6.5程度であるが、栽培期間が長くなるにつれ、栽培用溶液のpHは高くなる傾向にある。このため、長期間安定して水耕栽培を行うために、使用する水耕栽培装置は、栽培用溶液のpHを経時的に測定し、必要に応じてpHを所定の範囲内に調整するために酸物質を投与するpH制御手段を備えていることが好ましい。pH調整に用いられる酸物質としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。
本発明に係る育成方法において、耐塩性付与工程と栽培工程は、同じ栽培用槽で行ってもよく、耐塩性付与工程は処理用溶液を収容した処理用槽で行い、処理後の苗を、栽培用溶液を収容した栽培用槽に移設してもよい。
初期生育工程において、苗を、栽培用ポットの内部に保持された支持用担体に支持された状態で生育させた後、耐塩性付与処理を処理用槽内で行う場合には、苗は、栽培用ポットを処理用槽のフロートから外し、栽培用槽内に収容された栽培用溶液の水面に浮かべられたフロートの貫通孔にはめ込んでもよく、栽培用ポットが埋め込まれたフロートを、処理用槽から栽培用槽内の栽培用溶液の水面上に浮かべてもよい。栽培用ポット又はフロートを処理用槽から栽培用槽へ移動させる移動手段は、特に限定されず、例えば、水流を利用した移動手段やコンベアでの移動等で行うことができる。処理用槽1個当たり、複数の栽培用ポットが設置される場合には、処理用溶液のよどみを防止し、かつ酸欠を防止するために、エアーポンプによるバブリング処理を行うことが好ましい。
耐塩性付与処理を栽培用槽内で行う場合には、まず、栽培用槽に処理用溶液を収容して、フロートにはめ込まれた栽培用ポットの下方に伸びた根を処理用溶液に接触させて耐塩性付与処理を行う。耐塩性付与剤の濃度勾配を防止するために、処理用溶液は給排水量を少なくする又は給排水処理を行わない条件で、植物体の根と接触させることが好ましい。ただし、給排水量が少ない場合や給排水を行わない場合には、栽培用槽内によどみが生じてしまい、植物体自体に悪影響を及ぼすおそれがある。そこで、エアーポンプによるバブリング処理によって処理用溶液を適宜撹拌することが好ましい。
耐塩性付与処理後、栽培用槽内の処理用溶液を排水し、次いで予め別の槽において調製した栽培用溶液を栽培用槽内に給水した後、通常の給排水条件で給排水を行うことにより、栽培工程を開始する。耐塩性付与剤が微生物等のようにそれ自身を過剰摂取させたとしても植物体にさほど悪影響を与えない物質の場合には、処理用溶液を排水することなくそのまま栽培用溶液を給水し、通常の給排水条件で給排水を開始してもよい。
耐塩性の付与が不充分であった苗は、栽培工程において一定期間、高塩濃度環境下で栽培すると、枯死する。枯死した植物は腐敗の原因になり、栽培用溶液において雑菌等が繁殖する原因となる。栽培用溶液の汚染によってせっかく耐塩性が付与された苗も病害等により枯死してしまうおそれもある。このため、塩性付与工程後又は栽培工程中においては、枯死した苗を除去する除去工程を有することが好ましい。特に、耐塩性付与工程を塩化ナトリウム濃度が1質量%以上である処理用溶液を用いて行った場合には、耐塩性付与工程後、栽培工程開始前に行うことが好ましい。農作物の栽培においては、枯死した苗を栽培用槽から除去することによって、実際の栽培地における歩留りを向上させることができる。
また、耐塩性付与処理開始後、高塩濃度環境下で一定期間生育させた場合に枯死せず生育している苗は、耐塩性付与剤によって確実に耐塩性が改善された植物体であると確認できる。そして、枯死した苗を除去することにより、本発明において育成された耐塩性苗について、耐塩性苗としての品質保証を得ることもできる。
本発明に係る育成方法により耐塩性を付与する苗の植物種は特に限定されるものではなく、被子植物であってもよく、裸子植物であってもよく、シダ類やコケ類であってもよい。また、単子葉植物であってもよく、双子葉植物であってもよい。具体的には、イネ、トウモロコシ、モロコシ、コムギ、オオムギ、ライムギ、ヒエ、アワ等のイネ科の植物;トマト、ナス、パプリカ、ピーマン、ジャガイモ、タバコ等のナス科の植物;シロイヌナズナ、セイヨウアブラナ、ナズナ、ダイコン、キャベツ、紫キャベツ、メキャベツ(プチヴェール)、ハクサイ、チンゲンサイ、ケール、クレソン、小松菜、ブロッコリー、カリフラワー、カブ、ワサビ、マスタード等のアブラナ科の植物;キュウリ、ニガウリ、カボチャ、メロン、スイカ、等のウリ科の植物;ブドウ等のブドウ科の植物;レモン、オレンジ、ネーブルオレンジ、グレープフルーツ、ミカン、ライム、スダチ、ユズ、シイクワシャー、タンカン等のミカン科の植物;リンゴ、サクラ、ウメ、モモ、イチゴ、ビワ、アンズ、プラム(スモモ)、プルーン、アーモンド、ナシ、洋ナシ、イチゴ、ラズベリー、ブラックベリー、カシス、クランベリー、ブルーベリー等のバラ科の植物;ダイズ、インゲンマメ、エンドウマメ、ソラマメ、エダマメ、リョクトウ、ヒヨコマメ等のマメ科の植物;ハス(レンコン)等のハス科の植物;ゴマ等のゴマ科の植物;ホウレンソウ、ビート、テンサイ、キヌア、ヒユ、アマランサス、ケイトウ等のアカザ科の植物;ナツメヤシ、アブラヤシ、ココヤシ、アサイー等のヤシ科の植物;バナナ、バショウ、マニラアサ等のバショウ科の植物;ワタ、オクラ等のアオイ科の植物;ユーカリ等のフトモモ科の植物;フウチョウソウ 、セイヨウフウチョウソウ等のフウチョウソウ科の植物等が挙げられる。
また、本発明に係る育成方法により耐塩性を付与する苗は、当該育成方法により所望の塩濃度に対する耐塩性を付与し得る植物体であればよく、天然の植物体であってもよく、遺伝子組換え技術等により改変された植物体であってもよい。改変された植物体としては、遺伝子改変等により耐塩性以外の特性が改善された植物体が好ましいが、不充分ながら耐塩性が付与された植物体であってもよい。
本発明に係る育成方法により耐塩性が付与された苗は、従来の栽培方法によって育成された苗と同様に、様々な環境下での栽培に供することができる。例えば、土壌栽培に供してもよく、水耕栽培に供してもよい。各種栽培方法は、常法により行うことができる。本発明に係る育成方法により育成された苗は、その後の栽培を、耐塩性が付与されていることから、塩化ナトリウム濃度が1質量%以上である環境下で行われることが好ましく、塩化ナトリウム濃度が1質量%以上である栽培用溶液で水耕栽培されるがより好ましい。
<植物の水耕栽培方法>
本発明に係る植物の水耕栽培方法(以下、単に「本発明に係る水耕栽培方法」ということがある。)は、前記育成方法により育成した耐塩性苗を、塩化ナトリウム濃度が1質量%以上である栽培用溶液で水耕栽培する栽培工程を有する。
一般的な藻類やコケ類、病原菌において、良好に生育可能な塩濃度は0.01〜0.3質量%程度であり、その多くは0.5質量%以上の塩濃度では増殖できない。本発明に係る水耕栽培方法では、栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度を、ほとんどの藻類やコケ類、病原菌が増殖できないほど高くすることにより、これらに対する防除用農薬を使用することなく、藻類等の発生を防止しながら水耕栽培することができる。つまり、本発明に係る水耕栽培方法により、自然環境に配慮した、農薬等の使用を抑えた水耕栽培が可能になる。
本発明において、栽培工程における水耕栽培は、栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度を1質量%以上にする以外は、一般的な水耕栽培方法によって行うことができる。当該栽培工程は、比較的多量の栽培用溶液を栽培用槽にためる湛液型水耕法で行ってもよく、緩やかな傾斜を持つ平面上に培養液を少量ずつ流下させる薄膜水耕法で行ってもよい。具体的には、本発明に係る育成方法における栽培工程と同様にして行うことができる。
農作物の水耕栽培においては、開放型の水耕栽培設備を用いるなどのように、環境制御が不要な設備で行うほうが、より低コストで実施できるため好ましい。しかしながら、一般的に、屋外開放型の栽培用槽では、藻類やコケ類、病原菌の栽培用溶液への混入を防止するために、防除用農薬の使用は不可欠であった。これに対して、本発明に係る水耕栽培方法では、栽培用溶液の塩濃度を高くするだけで、農薬等の使用を抑え、安全に自然環境に配慮した屋外水耕栽培を行うことができる。このように、本発明に係る水耕栽培方法では、藻類等の発生が効果的に抑制されているため、栽培工程を屋外開放型の栽培用槽で行うことも好ましい。
例えば屋外開放型の水耕栽培設備を用いた場合には、温度や湿度が制御された環境下での水耕栽培に比べて、栽培用溶液からの蒸発量や栽培されている植物体からの蒸散量が多く、栽培用溶液の塩濃度が徐々に高濃度化してしまう場合がある。そこで、本発明に係る水耕栽培方法においては、前記栽培工程において、さらに、前記栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度を継続的又は断続的に測定するモニタリング工程と、前記モニタリング工程において、前記栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度が所定の上限閾値を超えていた場合に、前記栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度を1質量%以上でありかつ前記上限閾値以下の濃度に調整する調整工程と、を有することが好ましい。温度や湿度が制御されていない環境下で水耕栽培を行う場合には、栽培用溶液の蒸発や植物体からの蒸散により栽培用溶液の塩濃度が高濃度化する。高塩濃度の栽培用溶液で水耕栽培する場合には、低塩濃度の栽培用溶液での水耕栽培時よりも、栽培用溶液の高塩濃度化が植物体に与える影響が大きく、植物体が耐えられる塩濃度の上限を超えてしまい、枯死してしまう。栽培工程において、栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度をモニタリングし、植物体が生存可能な濃度範囲に制御することによって、温度や湿度が制御されていない水耕栽培設備を用いた場合であっても、栽培用溶液が過度に高塩濃度化することが防止され、植物体を、塩化ナトリウム濃度が1質量%以上の栽培用溶液を用いるという高塩環境下で長期間安定して水耕栽培することができる。
モニタリング工程として、栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度を継続的又は断続的に測定する。例えば、栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度の測定は、少量の栽培用溶液をサンプリングし、このサンプリングした栽培用溶液中の塩化ナトリウム濃度を測定することにより行うことができる。つまり、本発明に係る水耕栽培方法において用いられる水耕栽培装置は、継続的又は断続的に少量の栽培用溶液を採取する手段と、採取された栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度を測定する手段とを備えることが好ましい。
栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度の測定は、電位差滴定法、沈殿滴定法、イオン電極法、炎光光度法等のような、塩化物イオン濃度やナトリウムイオン濃度を測定するための公知の方法の中から適宜選択して行うことができる。これらの方法は、常法により行うことができる。
モニタリング工程において行う栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度の測定は、栽培用溶液の塩化ナトリウム自体の濃度の測定に代えて、塩化ナトリウム濃度と相関性が高く、塩化ナトリウム濃度の変動の指標となり得る他の物性値を測定してもよい。つまり、栽培工程において用いられる水耕栽培装置は、栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度を測定する手段に代えて、塩化ナトリウム濃度と相関性の高い他の物性値を測定する手段を有していてもよい。例えば、水溶液の塩化ナトリウム濃度は、電気導電率と相関性がある。温度が一定の場合には、塩化ナトリウム濃度が高くなるほど、電気導電率も高くなる。そこで、サンプリングした栽培用溶液の温度を所定の温度に調整した後、電気導電率を測定し、得られた測定値から栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度の変動をモニタリングすることができる。電気導電率の測定は、電気導電率計を用いて常法により行うことができる。
本発明に係る水耕栽培方法がモニタリング工程を備える場合には、栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度の上限閾値を予め決定しておくことが好ましい。例えば、当該上限閾値を、3.5質量%とすることができる。また、当該上限閾値は、栽培する植物体の生育率と塩化ナトリウム濃度の関係から適宜決定することができる。なお、植物体の生育率と塩化ナトリウム濃度の関係は、実験的に求めることができる。本発明に係る水耕栽培方法においては、栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度の上限閾値を、栽培する植物体の生育率が70%以上である濃度にすることが好ましく、生育率が80%以上である濃度にすることがより好ましく、生育率が90%以上である濃度にすることがさらに好ましい。
栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度が所定の上限閾値を超えていた場合には、調整工程として、栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度を1質量%以上でありかつ前記上限閾値以下の濃度に調整することが好ましい。つまり、本発明に係る水耕栽培方法において用いられる水耕栽培装置は、栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度を調整する手段を備えることが好ましい。
栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度の調整は、栽培用溶液に、塩化ナトリウム濃度の低い水溶液(希釈用溶液)を混合させることにより行うことができる。栽培用溶液に混合する希釈用溶液は1種類であってもよく、2種以上の希釈用溶液を栽培用溶液に混合してもよい。例えば、水等の塩化ナトリウム濃度が測定限界値未満である希釈用溶液と、塩化ナトリウム濃度が0.3質量%以下である希釈用溶液を準備し、両者の栽培用溶液に添加する量を適宜調整することによって、栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度を効率よく所定の上限閾値以下に調整することができる。希釈用溶液の混合により栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度を調整する場合、本発明において用いられる水耕栽培装置は、希釈用溶液を収容する希釈用溶液槽と、希釈用溶液槽から栽培用槽へ給水する給水管等の給水手段を備えることが好ましい。
栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度を調整する手段としては、栽培用溶液から塩化ナトリウムを除去する脱塩手段や、栽培用槽や植物体から蒸発した水分を回収し、この回収された水分を栽培用溶液に混合する手段であってもよい。栽培用溶液の脱塩方法としては、イオン交換膜を利用した電気透析法(ED法)等の公知の脱塩方法の中から適宜選択して行うことができる。また、蒸発水分を回収して栽培用溶液に混合する手段としては、例えば、栽培用槽に、栽培用溶液の液面の大部分を覆う蓋を設置する方法が挙げられる。当該蓋は、植物体の生育を阻害しないように設置することが好ましい。
本発明に係る水耕栽培方法においては、栽培工程中に、耐塩性付与処理を行ってもよい。長期間の栽培により、幼苗に対して行った耐塩性付与処理の効果が減弱する場合があるが、栽培期間中の植物体に対して、1又は複数回、耐塩性付与処理を行うことにより、耐塩性付与効果が維持され、長期間安定的に高塩環境下で栽培することができる。耐塩性付与処理は、本発明に係る育成方法における耐塩性付与処理と同様にして行うことができる。
なお、本発明に係る育成方法により耐塩性が付与された苗に代えて、遺伝子組換え技術等の他の手段により耐塩性を付与された植物体を用いた場合でも、同様にして高塩濃度環境下で水耕栽培することができる。遺伝子組換え技術により、耐塩性が高められた形質転換植物としては、例えば、植物細胞内にオスモライト(プロリンやベタイン)を蓄積させることによって浸透圧に対する耐性を獲得している塩生植物が挙げられる。このオスモライトを蓄積させる遺伝子を導入した組み換え植物は、耐塩性を獲得していることが報告されている。また、ナトリウムイオンに対しては、SOS1遺伝子が活性化することにより排出を促していることが知られており、この遺伝子を導入した組み換え植物が研究されている。
以下、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
[実施例1]
<種子の準備>
シロイヌナズナの種子(Col−0)は、LEHLE社(Round Rock, TX, USA)より購入した。種子は、1%次亜塩素酸に浸漬させた状態で1分間撹拌をすることによって表面を滅菌した後、遠心分離処理により次亜塩素酸を除いた。次亜塩素酸処理後の種子は、滅菌水にて3回水洗した後、初期生育工程開始まで、4℃で24時間暗所にて保存した。
<塩化ナトリウム濃度が1質量%未満の環境下で発芽・発根させる初期生育工程>
まず、スクロース含有MS培地(MS培地に0.5%(w/v)スクロースを加えた液体培地)を収容した一の栽培用容器に、スクロース含有MS培地で膨潤させたアガロースゲルが充填されたポットを複数個、底面はスクロース含有MS培地に浸っているが天面は浸っていない状態となるように設置した。なお、スクロース含有MS培地は塩化ナトリウムを含有していない。このポットの上部に、ポット1個当たり1個の種子を播種し、25℃、明期16時間と暗期8時間の長日条件のインキュベーター内で14日間育成した。
<耐塩性付与工程>
14日間の水耕栽培後に、当該ポットの底面を浸したスクロース含有MS培地に、塩化ナトリウムの最終濃度が1質量%となるように滅菌済の5M 塩化ナトリウム水溶液を添加し、さらに100μLの微生物懸濁液を添加した。その後、当該ポットを14日間振とう培養した。
<枯死した苗を除去する除去工程>
耐塩性付与工程終了時点では、3.1%の植物体が死んでおり、15.6%の植物体が死にかけていたが、残り(81.3%)の植物体は生存していた。また、死んだ植物体は、いずれも枯れる際に白い葉となっていた。死んだ植物体及び死にかけている植物体を除去した。
<塩化ナトリウム濃度が1質量%以上の栽培用溶液で水耕栽培する栽培工程>
枯死した苗を除去した後、当該栽培用容器から溶液を排出した後、前記スクロース含有MS培地に、塩化ナトリウムの最終濃度が3.0質量%となるように滅菌済の5M 塩化ナトリウム水溶液を添加した溶液を給水し、25℃、明期16時間と暗期8時間の長日条件のインキュベーター内で14日間育成した。

Claims (16)

  1. 種子又は球根を、塩化ナトリウム濃度が1質量%未満である環境下で、発根させる初期生育工程と、
    前記初期生育工程により生育させた苗の根の少なくとも一部に耐塩性付与剤を接触させる耐塩性付与処理を行う耐塩性付与工程と、
    前記耐塩性付与工程により耐塩性が付与された苗を、塩化ナトリウム濃度が1質量%以上である栽培用溶液で水耕栽培する栽培工程と、
    を有する、耐塩性苗の育成方法。
  2. 前記耐塩性付与工程後、又は前記栽培工程において、枯死した苗を除去する除去工程を有する、請求項1に記載の耐塩性苗の育成方法。
  3. 前記耐塩性付与工程を、前記種子又は球根が発芽した後に行う、請求項1又は2に記載の耐塩性苗の育成方法。
  4. 前記初期生育工程において、種子又は球根の発根を、塩化ナトリウム濃度が0.5質量%以下である環境下で行う、請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐塩性苗の育成方法。
  5. 前記初期生育工程において、種子又は球根の発根を、塩化ナトリウム濃度が0質量%である環境下で行う、請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐塩性苗の育成方法。
  6. 前記栽培用溶液が、さらに、0.5質量%以下の塩化マグネシウムを含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の耐塩性苗の育成方法。
  7. 前記塩性付与処理が、耐塩性付与剤を含有し、かつ塩化ナトリウム濃度が1質量%以上である処理用溶液に、前記苗の根の少なくとも一部を浸漬させる処理である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の耐塩性苗の育成方法。
  8. 前記耐塩性付与剤が、1種類又は2種類以上の微生物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の耐塩性苗の育成方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の耐塩性苗の育成方法により育成した耐塩性苗を、塩化ナトリウム濃度が1質量%以上である栽培用溶液で水耕栽培する栽培工程を有する、植物の水耕栽培方法。
  10. 前記栽培工程を、屋外開放型の栽培用槽で行う、請求項9に記載の植物の水耕栽培方法。
  11. 前記栽培用溶液の塩濃度が2.5質量%以上である、請求項9又は10に記載の植物の水耕栽培方法。
  12. 前記栽培用溶液が、さらに、0.5質量%以下の塩化マグネシウムを含有する、請求項9〜11のいずれか一項に記載の植物の水耕栽培方法。
  13. 前記栽培用溶液の50質量%以上が海水である、請求項9又は10に記載の植物の水耕栽培方法。
  14. 前記栽培工程において、さらに、
    前記栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度を継続的又は断続的に測定するモニタリング工程と、
    前記モニタリング工程において、前記栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度が所定の上限閾値を超えていた場合に、前記栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度を1質量%以上でありかつ前記上限閾値以下の濃度に調整する調整工程と、
    を有する、請求項9〜13のいずれか一項に記載の植物の水耕栽培方法。
  15. 前記調整工程において、前記栽培用溶液の塩化ナトリウム濃度の調整を、前記栽培用溶液に、1種又は2種以上の希釈用溶液を混合させて行い、前記希釈用溶液の塩化ナトリウム濃度が1質量%未満である、請求項14に記載の植物の水耕栽培方法。
  16. 前記上限閾値が3.5質量%である、請求項14又は15に記載の植物の水耕栽培方法。
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