JP2017078010A - 有機物の無機化による植物栽培方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 発酵していない有機物を微生物の力で分解し、植物の栄養源とするものであり、土耕のみならず、水耕栽培にも用いることが出来る肥料もしくは添加剤を提供する。【解決手段】 タンパク質を分解する枯草菌、およびその産物であるアンモニアを分解する硝化菌を添加することによって、生育に必須な窒素源を供給することを特徴とし、タンパク質源に豆乳を用いることで植物の生育に必要な栄養源を同時に提供することを特徴とする肥料もしくは添加剤。【選択図】図2
Description
本発明は、有機物を細菌により無機物に変換させ、植物の効果的な肥料とする方法に関する。
自然界の土壌中にある有機物は、数多くの微生物により段階的に分解を受け、無機物になる。有機物としては、枯れ草、落ち葉、倒木、落下果実などの植物性のものであったり、動物の死骸、排泄物など動物由来のものがある。有機物のうち、高分子のタンパク質や脂肪などは、土壌に存在する微生物に利用され、代謝の過程を経て分解される。特に、タンパク質は植物の根から放出される酵素(プロテアーゼ)によって分解を受けることもある。タンパク質が分解されると、アミノ酸を経て速やかにアンモニア(アンモニア態窒素)に変化する。生成されたアンモニア態窒素はそのまま植物に吸収される場合もあるが、さらに微生物によって酸化され、亜硝酸態窒素を通過して硝酸態窒素にまで進み、これが植物に吸収される。
タンパク質をアミノ酸を経由してアンモニア態窒素まで分解する微生物に「枯草菌」がある。自然界に多く存在するが、納豆菌は同じ仲間であり、日本人は安全無害な発酵微生物として古くから利用して来た。
一方、アンモニア態窒素から硝酸態窒素への変化を促す微生物群を「硝化菌」と言う。またこの変化を窒素の無機化と言う。
タンパク質をアミノ酸を経由してアンモニア態窒素まで分解する微生物に「枯草菌」がある。自然界に多く存在するが、納豆菌は同じ仲間であり、日本人は安全無害な発酵微生物として古くから利用して来た。
一方、アンモニア態窒素から硝酸態窒素への変化を促す微生物群を「硝化菌」と言う。またこの変化を窒素の無機化と言う。
硝化菌はアンモニア態窒素を亜硝酸塩に酸化する「アンモニア酸化細菌」と、亜硝酸塩を硝酸塩に酸化する「亜硝酸酸化細菌」の2つの細菌群からなる。これらの細菌は二酸化炭素(CO2)を唯一の炭素源とする独立栄養細菌であり、アンモニアあるいは亜硝酸を酸化することでエネルギーを得、CO2の固定化を行なっている。それぞれの細菌の酸化反応を総計すると次のような化学式で表わされる。
亜硝酸菌のアンモニア酸化反応:NH4 ++2O2→NO2 −+2H2O+39.5kcal
硝酸菌の亜硝酸酸化反応: NO2 −+1/2O2→NO3 −+21.6kcal
亜硝酸菌のアンモニア酸化反応:NH4 ++2O2→NO2 −+2H2O+39.5kcal
硝酸菌の亜硝酸酸化反応: NO2 −+1/2O2→NO3 −+21.6kcal
淡水ではアンモニア酸化細菌に4属5種、亜硝酸酸化細菌に3属3種が発見されている。
植物は主に無機化合物を吸収し、栄養源としている。無機肥料は無機化合物で構成されており、極めて吸収しやすい形態となっている。従って、水耕栽培では無機肥料は必須の栄養源となっており、広く利用されている。
しかしながら発酵させない有機物を直接土耕あるいは水耕栽培で利用する方法はなかった。
植物は主に無機化合物を吸収し、栄養源としている。無機肥料は無機化合物で構成されており、極めて吸収しやすい形態となっている。従って、水耕栽培では無機肥料は必須の栄養源となっており、広く利用されている。
しかしながら発酵させない有機物を直接土耕あるいは水耕栽培で利用する方法はなかった。
本発明の目的は、有機物であるタンパク質を分解し、植物が利用出来る硝酸態窒素にまで分解する微生物群を利用し、タンパク質を直接水耕栽培に肥料として用いる条件を見いだし、安全かつ効率の良い有機水耕栽培方法を提供することである。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、枯草菌および硝化菌を併用することにより、上記の問題を解決できるとの知見を得た。
本発明は、この知見に基づいて、
1.枯草菌および硝化菌混合物を、有機肥料あるいは有機物に添加し、土壌肥料の活性化剤、栽培養液、あるいは水耕栽培液肥として利用することを特徴とする、肥料もしくは添加剤、
2.植物果汁あるいはポリフェノール類を、請求項1に記載の肥料もしくは肥料添加剤に添加し、抗酸化作用を強化することを特徴とする、1に記載の肥料もしくは添加剤、
3.枯草菌が、納豆に利用されるBacillus subtilis var.nattoであることを特徴とする、1および2のそれぞれに記載の肥料もしくは肥料添加剤、
4.硝化菌混合物が、アンモニア酸化菌であるNitrosomonas、Nitrosospira、Nitrosococcus、およびNitrosolobusのうちいずれか、あるいはそれらの不特定な組み合せによるもの、および亜硝酸酸化菌であるNitrobacter、Nitrospina、あるいはNitrococcusのうちいずれか、あるいはそれらの不特定な組み合せによるものとで構成されることを特徴とする、1〜3のそれぞれに記載の肥料もしくは肥料添加剤、
5.有機肥料が、堆肥、ぼかし肥料などの他、完熟していない肥料を含むものであり、この窒素態1gに対し、枯草菌および硝化菌混合物をそれぞれ湿重量で0.001〜0.01gの割合で添加し、土壌もしくは養液栽培液肥として用いることを特徴とする、1〜4のそれぞれに記載の肥料もしくは肥料添加剤、
6.有機物が、植物あるいは動物の粉砕物、あるいは抽出液、もしくは動物の排泄物であり、この窒素態1gに対し、枯草菌および硝化菌混合物をそれぞれ湿重量で0.001〜0.01gの割合で添加し、これらを直接土壌もしくは養液栽培液肥として用いることを特徴とする、1〜5のそれぞれに記載の肥料もしくは肥料添加剤、
7.有機物が豆乳であり、水1Lに対し、豆乳を2〜3mL、好ましくは2.5mL、にがり(0.95%)を1〜2mL、好ましくは1.6mL、およびリン酸緩衝液を2〜8mM、好ましくは5mMになるように添加し、場合により石灰石、果汁を添加し、これに枯草菌および硝化菌混合物をそれぞれ湿重量で0.001〜0.01gの割合で添加したものを水耕栽培液肥として用いることを特徴とする、1〜6のそれぞれに記載の肥料もしくは肥料添加剤、
8.豆乳および枯草菌を7に記載された割合で混合し、また硝化菌をそれぞれ必要量取り、それぞれを等量の1〜2%アルギン酸溶液と混合し、該溶液を1%塩化カルシウム溶液に滴下して豆乳−枯草菌、硝化菌のアルギンビーズとし、これらをにがり、リン酸緩衝液とともに水耕栽培液肥として用いることを特徴とする、1〜7のそれぞれに記載の肥料もしくは肥料添加剤、
9.豆乳および枯草菌を7に記載された割合で混合し、また硝化菌をそれぞれ必要量取り、それぞれを一定の大きさのゼラチンなどのカプセルに封入し、これらをにがり、リン酸緩衝液とともに水耕栽培液肥として用いることを特徴とする、1〜8のそれぞれに記載の肥料もしくは肥料添加剤、
を提供する。
本発明は、この知見に基づいて、
1.枯草菌および硝化菌混合物を、有機肥料あるいは有機物に添加し、土壌肥料の活性化剤、栽培養液、あるいは水耕栽培液肥として利用することを特徴とする、肥料もしくは添加剤、
2.植物果汁あるいはポリフェノール類を、請求項1に記載の肥料もしくは肥料添加剤に添加し、抗酸化作用を強化することを特徴とする、1に記載の肥料もしくは添加剤、
3.枯草菌が、納豆に利用されるBacillus subtilis var.nattoであることを特徴とする、1および2のそれぞれに記載の肥料もしくは肥料添加剤、
4.硝化菌混合物が、アンモニア酸化菌であるNitrosomonas、Nitrosospira、Nitrosococcus、およびNitrosolobusのうちいずれか、あるいはそれらの不特定な組み合せによるもの、および亜硝酸酸化菌であるNitrobacter、Nitrospina、あるいはNitrococcusのうちいずれか、あるいはそれらの不特定な組み合せによるものとで構成されることを特徴とする、1〜3のそれぞれに記載の肥料もしくは肥料添加剤、
5.有機肥料が、堆肥、ぼかし肥料などの他、完熟していない肥料を含むものであり、この窒素態1gに対し、枯草菌および硝化菌混合物をそれぞれ湿重量で0.001〜0.01gの割合で添加し、土壌もしくは養液栽培液肥として用いることを特徴とする、1〜4のそれぞれに記載の肥料もしくは肥料添加剤、
6.有機物が、植物あるいは動物の粉砕物、あるいは抽出液、もしくは動物の排泄物であり、この窒素態1gに対し、枯草菌および硝化菌混合物をそれぞれ湿重量で0.001〜0.01gの割合で添加し、これらを直接土壌もしくは養液栽培液肥として用いることを特徴とする、1〜5のそれぞれに記載の肥料もしくは肥料添加剤、
7.有機物が豆乳であり、水1Lに対し、豆乳を2〜3mL、好ましくは2.5mL、にがり(0.95%)を1〜2mL、好ましくは1.6mL、およびリン酸緩衝液を2〜8mM、好ましくは5mMになるように添加し、場合により石灰石、果汁を添加し、これに枯草菌および硝化菌混合物をそれぞれ湿重量で0.001〜0.01gの割合で添加したものを水耕栽培液肥として用いることを特徴とする、1〜6のそれぞれに記載の肥料もしくは肥料添加剤、
8.豆乳および枯草菌を7に記載された割合で混合し、また硝化菌をそれぞれ必要量取り、それぞれを等量の1〜2%アルギン酸溶液と混合し、該溶液を1%塩化カルシウム溶液に滴下して豆乳−枯草菌、硝化菌のアルギンビーズとし、これらをにがり、リン酸緩衝液とともに水耕栽培液肥として用いることを特徴とする、1〜7のそれぞれに記載の肥料もしくは肥料添加剤、
9.豆乳および枯草菌を7に記載された割合で混合し、また硝化菌をそれぞれ必要量取り、それぞれを一定の大きさのゼラチンなどのカプセルに封入し、これらをにがり、リン酸緩衝液とともに水耕栽培液肥として用いることを特徴とする、1〜8のそれぞれに記載の肥料もしくは肥料添加剤、
を提供する。
本発明者は、アンモニアを分解する硝化菌の活性化条件を見出していた(特許文献1)。硝化菌は土壌中にも多く存在し、植物の栽培に大きく貢献していることはよく知られている。また堆肥の製造においても重要な働きをすることも知られている。しかしながら、農業において自然に増殖する硝化菌の働きは知られていても、積極的に利用することはなかった。栽培残渣は、刈り取り後に、土に漉き込み、天然の微生物の働きでこれを分解させ、土壌の肥料とすることもよく行なわれている。しかし、自然界の微生物の活性はそれらの至適条件下で繁殖している訳ではないので、活性は小さく、分解には長時間を要する。従って、高分子のたんぱく質を分解させるために、枯草菌を併用することを考案した。枯草菌は、たんぱく質からアミノ酸を経由し、アンモニアまで分解する。硝化菌はそれを受けて、アンモニアから硝酸態まで分解し、これを植物に受け渡すことが出来る。枯草菌は土壌中で優勢になると、他のバクテリアの増殖を抑制する効果があり、特に酵母菌は大きく阻害される。このことは、有機物を分解する他の雑菌の増殖が阻害され、腐りにくいことを示している。
近年、農業用地の不足、土壌の疲弊、農業後継者の不足等の理由から水耕栽培が着目され、小規模あるいは大規模に行なわれている。大規模の場合には植物工場として、播種、育成、収穫とも自動化されているものも多い。すべて管理下に置かれており、外界との接触も制限されているので害虫も発生しにくく、農薬の使用は基本的に必要がない。しかしながら、水耕栽培の養液は無機肥料が用いられており、人工的な組成で構成されている。有機栽培されている土耕栽培の植物では、有機肥料や天然由来の多くのミネラルが養分として与えられており、水耕栽培の養液には不足している物質が多くあると考えられている。従って、水耕栽培青果物は土耕栽培青果物と比較して、明らかに質が異なることが指摘されている。
「硝化および脱窒作用の活性化物質」 特願2010−159127
近年、農業用地の不足、土壌の疲弊、農業後継者の不足等の理由から水耕栽培が着目され、小規模あるいは大規模に行なわれている。大規模の場合には植物工場として、播種、育成、収穫とも自動化されているものも多い。すべて管理下に置かれており、外界との接触も制限されているので害虫も発生しにくく、農薬の使用は基本的に必要がない。しかしながら、水耕栽培の養液は無機肥料が用いられており、人工的な組成で構成されている。有機栽培されている土耕栽培の植物では、有機肥料や天然由来の多くのミネラルが養分として与えられており、水耕栽培の養液には不足している物質が多くあると考えられている。従って、水耕栽培青果物は土耕栽培青果物と比較して、明らかに質が異なることが指摘されている。
次に、本発明の実施例及び比較例について説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。すなわち、本発明の技術思想に基づく、他の例又は変形は、当然本発明に包含されるものである。
[有機物に対する枯草菌および硝化菌の作用]
枯草菌が有機物を分解してアンモニアになり、これを受けて硝化菌が植物にとって重要な硝酸まで変化させる過程を、有機物に豆乳あるいは大豆粉を用いて検証した。大豆の抽出物である豆乳あるいは大豆粉は植物の生育に必要な栄養素を全て含み、植物由来の栄養素が植物に与えるのは理に叶っている。三角フラスコに豆乳を17mL採り、水で200mLに希釈したもの、あるいは大豆粉2gを200mLの水に溶かしたものそれぞれ用意し、湿重量で0.2g(160μLの培養液)の枯草菌をそれぞれに添加し、エアポンプで通気しながら25℃で一週間培養した。豆乳の分解を観るために、たんぱく質、アンモニア態窒素をそれぞれ測定して比較した。結果は図1に示してある。なお、枯草菌はLB培地で一夜培養したものを用いた。
図1に示したように、タンパク質が分解され、分解と呼応してアンモニア量が増加することが示された。
さらに、たんぱく質が分解されていく過程をペーパークロマトグラフィーで観察した。それぞれの試料を、ろ紙に2μLずつ乾燥させながら10回、総計20μLを添加し、展開液にはフェノール:水が80g:20gのものを使った。展開後はろ紙を乾燥し、0.2%ニンヒドリン液を噴霧して加熱し、発色させた。その結果、開始時にはたんぱく質が原点に留まっていたが、時間とともにたんぱく質が消失し、易動度(Rf)が0.2〜0.9、特に0.26、0.57のスポットが現われ、これらも一週間後には消失した。つまり、たんぱく質が分解を受け、アミノ酸を経由してアンモニアまで分解されたことを示していた。すなわち枯草菌によって有機物が短時間のうちに分解出来ることが示された。
枯草菌が有機物を分解してアンモニアになり、これを受けて硝化菌が植物にとって重要な硝酸まで変化させる過程を、有機物に豆乳あるいは大豆粉を用いて検証した。大豆の抽出物である豆乳あるいは大豆粉は植物の生育に必要な栄養素を全て含み、植物由来の栄養素が植物に与えるのは理に叶っている。三角フラスコに豆乳を17mL採り、水で200mLに希釈したもの、あるいは大豆粉2gを200mLの水に溶かしたものそれぞれ用意し、湿重量で0.2g(160μLの培養液)の枯草菌をそれぞれに添加し、エアポンプで通気しながら25℃で一週間培養した。豆乳の分解を観るために、たんぱく質、アンモニア態窒素をそれぞれ測定して比較した。結果は図1に示してある。なお、枯草菌はLB培地で一夜培養したものを用いた。
図1に示したように、タンパク質が分解され、分解と呼応してアンモニア量が増加することが示された。
さらに、たんぱく質が分解されていく過程をペーパークロマトグラフィーで観察した。それぞれの試料を、ろ紙に2μLずつ乾燥させながら10回、総計20μLを添加し、展開液にはフェノール:水が80g:20gのものを使った。展開後はろ紙を乾燥し、0.2%ニンヒドリン液を噴霧して加熱し、発色させた。その結果、開始時にはたんぱく質が原点に留まっていたが、時間とともにたんぱく質が消失し、易動度(Rf)が0.2〜0.9、特に0.26、0.57のスポットが現われ、これらも一週間後には消失した。つまり、たんぱく質が分解を受け、アミノ酸を経由してアンモニアまで分解されたことを示していた。すなわち枯草菌によって有機物が短時間のうちに分解出来ることが示された。
[枯草菌と硝化菌による有機物の分解]
次に、豆乳および大豆粉を枯草菌で分解したものを、さらに硝化菌によって分解し、植物が吸収出来る硝酸態窒素まで分解出来るかどうかを検討した。実施例1と同様な組成の中に硝化菌を添加し、一定時間ごとにタンパク質、アンモニア態窒素、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素を測定した。硝化菌は特許文献1で示した方法で調製したものを用い、湿重量で0.02μg/mLのものを1mL添加した。結果は図2に示してある。
図2に示したように、タンパク質分解が進むに連れ、一時的にアンモニア態窒素量が上昇するが、硝化菌の活性により、亜硝酸態窒素を通過して、硝酸態窒素が増加することが示された。このことにより、枯草菌と硝化菌が協調して有機物が硝酸態窒素まで効率よく分解されることが実証された。
次に、豆乳および大豆粉を枯草菌で分解したものを、さらに硝化菌によって分解し、植物が吸収出来る硝酸態窒素まで分解出来るかどうかを検討した。実施例1と同様な組成の中に硝化菌を添加し、一定時間ごとにタンパク質、アンモニア態窒素、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素を測定した。硝化菌は特許文献1で示した方法で調製したものを用い、湿重量で0.02μg/mLのものを1mL添加した。結果は図2に示してある。
図2に示したように、タンパク質分解が進むに連れ、一時的にアンモニア態窒素量が上昇するが、硝化菌の活性により、亜硝酸態窒素を通過して、硝酸態窒素が増加することが示された。このことにより、枯草菌と硝化菌が協調して有機物が硝酸態窒素まで効率よく分解されることが実証された。
[豆乳による水耕栽培の例]
たんぱく質源として豆乳を用い水耕栽培を検討した。また、豆乳を与えるとpHが酸性に傾くため、リン酸緩衝液を添加した。成分は表1に示してある。この溶液に枯草菌および硝化菌を実施例2のように添加し、ロックウールに播種し、発芽させたミツバを用いた。
水耕栽培装置は、図3のように設定し、エアポンプで通気をしながら蛍光灯下で培養を行なった。培養の比較対照として、同じ装置に市販の水耕栽培用液肥を用いて栽培を行なった。培養後2週間のミツバには生育に大きな違いが生じた。市販の水耕栽培溶液を用いた対照は、色が薄く、葉も柔らかかったが、豆乳を用いた方では、色が濃く、しっかりした葉が形成されていた。これを評価するため、それぞれの葉をアセトンで抽出してクロロフィル(aおよびb)を測定した。結果は図4の通りである。明らかに豆乳を用いた方がクロロフィルaおよびbの量が多いことが判明した。経験的に、これに様々な果汁を添加することで、さらに生育が良くなることを見出している。これは、栽培のストレスを軽減させるような抗酸化物質であるポリフェノールの含有によるものと考えれた。
たんぱく質源として豆乳を用い水耕栽培を検討した。また、豆乳を与えるとpHが酸性に傾くため、リン酸緩衝液を添加した。成分は表1に示してある。この溶液に枯草菌および硝化菌を実施例2のように添加し、ロックウールに播種し、発芽させたミツバを用いた。
[農耕地でのほうれん草への施肥効果]
土壌にはそれぞれ多くの肥料を施肥し、十分な活力を潜在的に維持しているのが普通である。特に堆肥など、有機物を大量に含んでいる。このような土壌に対し、枯草菌や硝化菌を与えた場合に植物の生育にどのような効果があるかどうかを検証した。
ほうれん草は温室内で栽培していたものに対し、一定区画の範囲のみ水やりの代わりに、枯草菌および硝化菌を水Lに溶いたものを週に一度、4週に渡り施肥した。収穫前1週間前にほうれん草の丈、重量、成分比較を行なった。結果は表2に示してある。対照には枯草菌、硝化菌を与えていないものを用いた。
施肥した方は背丈の伸びも早く、成分的には、表から明らかなように、糖度が高く、ビタミンCの含有量も高く、また、シュウ酸の量も少なかった。シュウ酸が少ないことはほうれん草のえぐみが無いことで、生で食しても旨味が感じられた。
土壌にはそれぞれ多くの肥料を施肥し、十分な活力を潜在的に維持しているのが普通である。特に堆肥など、有機物を大量に含んでいる。このような土壌に対し、枯草菌や硝化菌を与えた場合に植物の生育にどのような効果があるかどうかを検証した。
ほうれん草は温室内で栽培していたものに対し、一定区画の範囲のみ水やりの代わりに、枯草菌および硝化菌を水Lに溶いたものを週に一度、4週に渡り施肥した。収穫前1週間前にほうれん草の丈、重量、成分比較を行なった。結果は表2に示してある。対照には枯草菌、硝化菌を与えていないものを用いた。
[農耕地でのタマネギへの施肥効果]
次に、タマネギの育苗時に枯草菌や硝化菌を与えた場合にその後の生育に効果があるかどうかを検証した。有効細菌群は主に根圏にバイオフィルムを形成し、必要な栄養素を効率よく吸収することが知られている。
タマネギの苗が5〜7cm程度に生育した時に、枯草菌および硝化菌を水に入れ、これを土が濡れる程度に与えた。水やりは週一回、4度に渡って行ない、十分生育後、畑に定植を行なった。その後は天水のみとし、他の無施肥のタマネギと同様に生育させた。無施肥のタマネギの直径が約10cmになった時、タマネギを抜き、施肥、無施肥のものとで比較を行なった。
タマネギの葉は無施肥のものでは、枯れて萎れていたのに対し、施肥のものではまだ枯れておらず、葉も長かった。葉を切った時に、施肥したものでは切り口から水分が溢れ出たのに対し、無施肥のものでは見られなかった。タマネギの内容成分の比較結果は図5に示してある。無施肥のタマネギと比較して、ビタミンCが非常に高い数値を示している。若干糖度も高い傾向があった。
根圏を硝化菌、脱窒菌の量が最少であっても活性化を受けると、十分な作用を行なうことが可能であることが実証された。
次に、タマネギの育苗時に枯草菌や硝化菌を与えた場合にその後の生育に効果があるかどうかを検証した。有効細菌群は主に根圏にバイオフィルムを形成し、必要な栄養素を効率よく吸収することが知られている。
タマネギの苗が5〜7cm程度に生育した時に、枯草菌および硝化菌を水に入れ、これを土が濡れる程度に与えた。水やりは週一回、4度に渡って行ない、十分生育後、畑に定植を行なった。その後は天水のみとし、他の無施肥のタマネギと同様に生育させた。無施肥のタマネギの直径が約10cmになった時、タマネギを抜き、施肥、無施肥のものとで比較を行なった。
タマネギの葉は無施肥のものでは、枯れて萎れていたのに対し、施肥のものではまだ枯れておらず、葉も長かった。葉を切った時に、施肥したものでは切り口から水分が溢れ出たのに対し、無施肥のものでは見られなかった。タマネギの内容成分の比較結果は図5に示してある。無施肥のタマネギと比較して、ビタミンCが非常に高い数値を示している。若干糖度も高い傾向があった。
根圏を硝化菌、脱窒菌の量が最少であっても活性化を受けると、十分な作用を行なうことが可能であることが実証された。
本発明の肥料もしくは肥料添加剤は、短時間で有機物を分解し、アンモニアを介して硝酸態窒素まで分解することが出来る。また用いた微生物群のうち枯草菌は納豆など食品に使用され、また硝化菌は土壌中にも、またヒト体内にも見出される細菌であり、病原性は報告されていない安全なものである。これらの微生物を組み合わせることにより、あらゆる有機物が利用出来るため、経済性も高く、高品質の植物の育成に利用することが可能である。
〔図1〕横軸は時間(日)を、縦軸はタンパク質の濃度(mg/L)を示す。△ :アンモニア態窒素、 ○ :タンパク質をそれぞれ表わす。
〔図2〕横軸は時間(時)を、縦軸はA.アンモニア態窒素、B.亜硝酸態窒素、C.硝酸態窒素、およびD.タンパク質をそれぞれ示す。それぞれ4回別々の実験を行なった結果を、異なった記号で示している。
〔図3〕1:植物、2:エアポンプ、3:培養液、4:泡を発生させるための発泡石をそれぞれ示してる。
〔図4〕横軸はクロロフィル濃度を示す。□:市販水耕栽培溶液を用いたもの、■:豆乳とバクテリアを用いたものをそれぞれ示す。
〔図5〕横軸はそれぞれの濃度を示す。□:無施肥の対照、■:豆乳とバクテリアを用いたもの、をそれぞれ表わす。
〔図2〕横軸は時間(時)を、縦軸はA.アンモニア態窒素、B.亜硝酸態窒素、C.硝酸態窒素、およびD.タンパク質をそれぞれ示す。それぞれ4回別々の実験を行なった結果を、異なった記号で示している。
〔図3〕1:植物、2:エアポンプ、3:培養液、4:泡を発生させるための発泡石をそれぞれ示してる。
〔図4〕横軸はクロロフィル濃度を示す。□:市販水耕栽培溶液を用いたもの、■:豆乳とバクテリアを用いたものをそれぞれ示す。
〔図5〕横軸はそれぞれの濃度を示す。□:無施肥の対照、■:豆乳とバクテリアを用いたもの、をそれぞれ表わす。
Claims (9)
- 枯草菌および硝化菌混合物を、有機肥料あるいは有機物に添加し、土壌肥料の活性化剤、栽培養液、あるいは水耕栽培液肥として利用することを特徴とする、肥料もしくは添加剤
- 植物果汁あるいはポリフェノール類を、請求項1に記載の肥料もしくは肥料添加剤に添加し、抗酸化作用を強化することを特徴とする、請求項1に記載の肥料もしくは添加剤
- 枯草菌が、納豆に利用されるBacillus subtilis var.nattoであることを特徴とする、1および2のそれぞれに記載の肥料もしくは肥料添加剤、
- 硝化菌混合物が、アンモニア酸化菌であるNitrosomonas、Nitrosospira、Nitrosococcus、およびNitrosolobusのうちいずれか、あるいはそれらの不特定な組み合せによるもの、および亜硝酸酸化菌であるNitrobacter、Nitrospina、あるいはNitrococcusのうちいずれか、あるいはそれらの不特定な組み合せによるものとで構成されることを特徴とする、請求項1〜3のそれぞれに記載の肥料もしくは肥料添加剤
- 有機肥料が、堆肥、ぼかし肥料などの他、完熟していない肥料を含むものであり、この窒素態1gに対し、枯草菌および硝化菌混合物をそれぞれ湿重量で0.001〜0.01gの割合で添加し、土壌もしくは養液栽培液肥として用いることを特徴とする、請求項1〜4のそれぞれに記載の肥料もしくは肥料添加剤
- 有機物が、植物あるいは動物の粉砕物、あるいは抽出液、もしくは動物の排泄物であり、この窒素態1gに対し、枯草菌および硝化菌混合物をそれぞれ湿重量で0.001〜0.01gの割合で添加し、これらを直接土壌もしくは養液栽培液肥として用いることを特徴とする、請求項1〜5のそれぞれに記載の肥料もしくは肥料添加剤
- 有機物が豆乳であり、水1Lに対し、豆乳を2〜3mL、好ましくは2.5mL、にがり(0.95%)を1〜2mL、好ましくは1.6mL、およびリン酸緩衝液を2〜8mM、好ましくは5mMになるように添加し、場合により石灰石、果汁を添加し、これに枯草菌および硝化菌混合物をそれぞれ湿重量で0.001〜0.01gの割合で添加したものを水耕栽培液肥として用いることを特徴とする、請求項1〜6のそれぞれに記載の肥料もしくは肥料添加剤
- 豆乳および枯草菌を7に記載された割合で混合し、また硝化菌をそれぞれ必要量取り、それぞれを等量の1〜2%アルギン酸溶液と混合し、該溶液を1%塩化カルシウム溶液に滴下して豆乳−枯草菌、硝化菌のアルギンビーズとし、これらをにがり、リン酸緩衝液とともに水耕栽培液肥として用いることを特徴とする、請求項1〜7のそれぞれに記載の肥料もしくは肥料添加剤
- 豆乳および枯草菌を7に記載された割合で混合し、また硝化菌をそれぞれ必要量取り、それぞれを一定の大きさのゼラチンなどのカプセルに封入し、これらをにがり、リン酸緩衝液とともに水耕栽培液肥として用いることを特徴とする、1〜8のそれぞれに記載の肥料もしくは肥料添加剤
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JP2015222491A JP2017078010A (ja) | 2015-10-20 | 2015-10-20 | 有機物の無機化による植物栽培方法 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2015222491A JP2017078010A (ja) | 2015-10-20 | 2015-10-20 | 有機物の無機化による植物栽培方法 |
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ID=58665231
Family Applications (1)
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JP (1) | JP2017078010A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020048429A (ja) * | 2018-09-21 | 2020-04-02 | 松本工業株式会社 | 人間排泄物からの硝酸化養液製造方法 |
JP2021065188A (ja) * | 2019-10-28 | 2021-04-30 | フルハシEpo株式会社 | 植物栽培用養液の製造方法及び植物栽培方法 |
WO2022215387A1 (ja) * | 2021-04-08 | 2022-10-13 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 | 水耕栽培方法 |
-
2015
- 2015-10-20 JP JP2015222491A patent/JP2017078010A/ja active Pending
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JP2020048429A (ja) * | 2018-09-21 | 2020-04-02 | 松本工業株式会社 | 人間排泄物からの硝酸化養液製造方法 |
JP2021065188A (ja) * | 2019-10-28 | 2021-04-30 | フルハシEpo株式会社 | 植物栽培用養液の製造方法及び植物栽培方法 |
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