JPWO2019065693A1 - 内燃機関 - Google Patents

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Abstract

内燃機関は、クランクケース(33b)と、アウターレース(74a)でクランクケース(33b)の軸受孔(47)に挿入される転がり軸受(48)と、転がり軸受(48)のインナーレース(74b)に嵌め込まれて、クランクケース(33b)に回転自在に支持されるクランクシャフト(46)と、クランクケース(33b)に配置されてクランクシャフト(46)の軸方向に延びる案内路(77a)に変位自在に案内されて、前端にいくにつれてアウターレース(74a)から遠ざかる楔面(76)でアウターレース(74a)に接触するプッシュプラグ(75)と、クランクケース(33)に案内路(77a)に同軸のねじ溝(79)でねじ込まれ、前進方向にプッシュプラグ(75)に弾性力に基づく駆動力を作用する弾性体(78)を保持する保持部材(77)とを備える。

Description

本発明は、内燃機関に関し、特に、クランクケースと、アウターレースでクランクケースの軸受孔に嵌め込まれる転がり軸受と、転がり軸受のインナーレースに嵌め込まれて、クランクケースに回転自在に支持されるクランクシャフトと、クランクシャフトの軸方向に変位自在にクランクケースに案内されて、前端にいくにつれてアウターレースから遠ざかる楔面でアウターレースに接触するプッシュプラグと、前進方向にプッシュプラグに弾性力に基づく駆動力を作用する弾性体とを備える内燃機関に関する。
特許文献1は、クランクシャフトの軸方向に変位自在にクランクケースに案内されて、前端にいくにつれてアウターレースから遠ざかる楔面でアウターレースに接触するプッシュプラグを備える内燃機関を開示する。クランクケースの外面には、前進方向にプッシュプラグに弾性力を付与するコイルばねを保持するばねセットプレートが固定される。軸受孔に対して軸受のアウターレースが径方向に縮小しても、楔面の前進に応じて楔面はアウターレースの外周に接触し続けることができる。アウターレースはプッシュプラグによりクランクシャフトに押し付けられる。こうして軸受孔に対してアウターレースのがたつきは防止される。
日本特開2005−106160号公報
ばねセットプレートは、クランクケースの外面に重ねられてボルトでクランクケースに締結される基部と、基部からクランクジャーナルに向かって延びて、プッシュプラグの前進方向にコイルばねを押さえ込む押さえ板と、押さえ板からさらにクランクジャーナルに向かって延びて、ボルトの軸心回りに押さえ板の回転を阻止する回転止めとを備える。組み立てにあたって、クランクケースにプッシュプラグおよびコイルばねは挿入され、ばねセットプレートの保持でコイルばねの抜けが防止された状態で、ばねセットプレートの基部がクランクケースにボルトで締結されるので、部品の保持その他で面倒な組立作業が要求される。また、ばねセットプレートが大型化するので、プッシュプラグの配置は制約され、内燃機関は大型化してしまう。
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、転がり軸受のがたつきを防止しつつレイアウト効率を高めたプッシュプラグを有する内燃機関を提供することを目的とする。
本発明の第1側面によれば、クランクケースと、アウターレースで前記クランクケースの軸受孔に挿入される転がり軸受と、前記転がり軸受のインナーレースに嵌め込まれて、前記クランクケースに回転自在に支持されるクランクシャフトと、外面に形成されるねじ溝の働きで前記クランクケースにねじ込まれる筒体と、前記クランクシャフトの軸方向に変位自在に前記筒体に案内されて、前端にいくにつれて前記アウターレースから遠ざかる楔面で前記アウターレースに接触するプッシュプラグと、前記筒体に収容されて、前進方向に前記プッシュプラグに弾性力に基づく駆動力を作用する弾性体とを備える内燃機関が提供される。
第2側面によれば、第1側面の構成に加えて、前記筒体には、エンジンオイルを含む空間と前記筒体内の空間とを接続する連通孔が設けられる。
第3側面によれば、第2側面の構成に加えて、内燃機関は、前記クランクケースに固定されて、カムチェーンを収容して前記エンジンオイルを含むカムチェーン室から変速機室を隔て、前記筒体の後端に向き合う平面を区画するセパレーターと、前記筒体の前記後端に形成される前記連通孔に向かって前記平面から突出する突起とを備える。
第4側面によれば、第3側面の構成に加えて、内燃機関は、前記カムチェーン室内に配置され、前記セパレーターに向き合わせられる位置で前記カムチェーンの軌道の外側に位置するオイルポンプを備え、前記筒体は、前記カムチェーン室内に配置され、前記セパレーターに向き合わせられる位置で前記カムチェーンの軌道の内側に配置される。
本発明の第5側面によれば、クランクケースと、アウターレースで前記クランクケースの軸受孔に挿入される転がり軸受と、前記転がり軸受のインナーレースに嵌め込まれて、前記クランクケースに回転自在に支持されるクランクシャフトと、前記クランクケースに配置されて前記クランクシャフトの軸方向に延びる案内路に変位自在に案内されて、前端にいくにつれて前記アウターレースから遠ざかる楔面で前記アウターレースに接触するプッシュプラグと、前記クランクケースまたは前記クランクケースに固定される部材に、前記案内路に同軸のねじ溝でねじ込まれ、前進方向に前記プッシュプラグに弾性力に基づく駆動力を作用する弾性体を保持する保持部材とを備える内燃機関が提供される。
第6側面によれば、第5側面の構成に加えて、前記クランクケースには、前記案内路を形成する筒体が一体に形成され、前記保持部材は、前記筒体から軸方向に離れた位置で、前記クランクケースに固定される前記部材にねじ込まれる。
第7側面によれば、第5または第6側面の構成に加えて、前記案内路は、前記アウターレースの外周面に向き合う内壁面を有し、前記プッシュプラグには当該内壁面に接する外面が形成される。
第8側面によれば、第5〜第7側面のいずれか1の構成に加えて、内燃機関は、前記転がり軸受の外側で前記クランクケースから突出する前記クランクシャフトに巻き掛けられるカムチェーンを備える。
第9側面によれば、第8側面の構成に加えて、内燃機関は、前記転がり軸受の外側で前記クランクケースから突出する前記クランクシャフトに連結されるベルト式無断変速機を備える。
第1側面によれば、プッシュプラグには前進方向に駆動力が作用するので、楔面の前進に応じて楔面はアウターレースの外周に接触し続けることができる。こうして軸受孔に対してアウターレースのがたつきは防止される。プッシュプラグは、クランクケースにねじ込まれる筒体内に収容されるので、筒体のねじ締めだけでプッシュプラグは所定の位置に装着されることができる。内燃機関の組み立ては効率化される。加えて、部品は筒体内に集約されるので、プッシュプラグおよび関連部品の配置スペースが縮小されることができる。
第2側面によれば、プッシュプラグの変位にあたって筒体とプッシュプラグとの接触域にはエンジンオイルが導入されることができる。プッシュプラグは円滑に変位することができる。
第3側面によれば、カムチェーン室に面する平面に沿って流れるエンジンオイルは突起に当たって向きを変え連通孔に向かって流れる。こうして筒体内へのエンジンオイルの導入は促進される。
第4側面によれば、プッシュプラグおよびオイルポンプはカムチェーン室内で相互に干渉せずに効率的に配置されることができる。
第5側面によれば、プッシュプラグには前進方向に駆動力が作用するので、楔面の前進に応じて楔面はアウターレースの外周に接触し続けることができる。楔面はアウターレースの径方向にアウターレースを駆動することから、軸受孔に対してアウターレースのがたつきは防止される。保持部材は、プッシュプラグの案内路に同軸のねじ溝でねじ込まれることから、プッシュプラグおよび関連部品の配置スペースが縮小され、レイアウト効率は向上することができる。
第6側面によれば、クランクケースに直接に案内路が形成されるので、ねじ溝に関係なく案内路には十分な長さが確保されることができる。特に、案内路は少なくともアウターレースの端面まで延びることができ、アウターレースの径方向にプッシュプラグに作用する荷重は案内路の内壁で十分に受け止められる。プッシュプラグの耐久性は高められることができる。
第7側面によれば、アウターレースの径方向外方でプッシュプラグは案内路の内壁面に接するので、アウターレースの径方向にプッシュプラグに作用する荷重は確実に案内路の内壁で支持される。こうしてプッシュプラグの耐久性は高められることができる。
第8側面によれば、カムチェーンが配置される側にプッシュプラグを配置することで、カムチェーンでクランクシャフトが引っ張られる際に生じるクランク打音を効果的に抑制することができる。
第9側面によれば、ベルト式無段変速機が配置される側にプッシュプラグを配置することで、ベルト式無段変速機のベルトで引っ張られる際に生じるクランク打音を効果的に抑制することができる。
図1は本発明の一実施形態に係る自動二輪車の全体像を概略的に示す側面図である。(第1の実施の形態) 図2は図1の2−2線に沿った拡大断面図である。 図3は図2の一部拡大図であってプッシュプラグの構造を概略的に示す図である。(第1の実施の形態) 図4は内燃機関の拡大左側面図であってセパレーターの拡大平面図である。(第1の実施の形態) 図5はクランクケースの拡大左側面図であってオイルポンプの構成を概略的に示す図である。(第1の実施の形態) 図6は第2実施形態に係る内燃機関の拡大部分断面図である。(第2の実施の形態)
31…内燃機関
31a…内燃機関
33…クランクケース
46…クランクシャフト
47…軸受孔
48…転がり軸受
56…カムチェーン
64…ベルト式無段変速機
71…固定される部材(セパレーター)
74a…アウターレース
75…プッシュプラグ
76…楔面
77…保持部材(筒体)
78…弾性体(コイルばね)
79…ねじ溝
91…案内路
91a…内壁面(領域)
92…プッシュプラグ
92a…外面
93…筒体(円筒体)
94…楔面
95…保持部材(ボルト部材)
95a…ねじ溝
97…弾性体(コイルばね)
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。なお、以下の説明では、前後、上下および左右の各方向は自動二輪車に搭乗した乗員から見た方向をいう。
第1の実施の形態
図1は鞍乗り型車両の一実施形態に係るスクーター型自動二輪車を概略的に示す。自動二輪車11は車体フレーム12および車体カバー13を備える。車体フレーム12は、その前端のヘッドパイプ14と、前端でヘッドパイプ14に結合されるメインフレーム15と、メインフレーム15の後部に結合されて車幅方向に延びるクロスパイプ16と、該クロスパイプ16の両端部に前端部がそれぞれ接続されて車両前後方向に延びる左右一対のリアフレーム17とを備える。ヘッドパイプ14には、車軸18回りに回転自在に前輪WFを支持するフロントフォーク19と操向ハンドル21とが操向可能に支持される。
車体カバー13は車体フレーム12に装着される。車体カバー13にはリアフレーム17の上方で乗員シート22が搭載される。車体カバー13は、ヘッドパイプ14を前方から覆うフロントカバー23と、フロントカバー23から連続するレッグシールド24と、レッグシールド24の下端から連続して、乗員シート22および前輪WFの間でメインフレーム15の上方に配置されるステップフロア25とを備える。
リアフレーム17の下方の空間にはユニットスイング式の駆動ユニット26が配置される。駆動ユニット26は、リアフレーム17の前端に結合されるブラケット27に、リンク28を介して上下方向に揺動自在に連結される。駆動ユニット26の後端には車軸29回りで回転自在に後輪WRが支持される。駆動ユニット26は単気筒のユニットスイングエンジン(以下「内燃機関」という)31を備える。
内燃機関31は、回転軸線32回りで回転自在にクランクシャフトを支持するクランクケース33と、クランクケース33に結合されるシリンダーブロック34と、シリンダーブロック34に結合されるシリンダーヘッド35と、シリンダーヘッド35に結合されるヘッドカバー36とを備える。シリンダーヘッド35には吸気装置37および排気装置38が接続される。吸気装置37は、エアクリーナーと、エアクリーナーおよびシリンダーヘッド35の間に配置されるスロットルボディとを備える。シリンダーヘッド35の上部側壁には燃料噴射弁が取り付けられる。排気装置38は、シリンダーヘッド35の下部側壁から内燃機関31の下方を通って後方に延びる排気管と、排気管の下流端に接続される排気マフラーとを備える。
図2に示されるように、第1実施形態に係る内燃機関31ではシリンダーブロック34にシリンダーボア41が区画される。シリンダーボア41にはシリンダー軸線Cに沿ってスライド自在にピストン42が嵌め込まれる。シリンダー軸線Cはわずかに前上がりに傾斜する。
シリンダーヘッド35には燃焼室43が区画される。燃焼室43はシリンダーボア41から連続する。ピストン42はシリンダーヘッド35に向き合ってシリンダーヘッド35との間に燃焼室43を仕切る。燃焼室43には吸気装置37を経て混合気が導入される。燃焼室43内の排ガスは排気装置38を経て排出される。燃焼室43の膨張および収縮に応じてピストン42は往復運動する。
クランクケース33は第1ケース半体33aおよび第2ケース半体33bに分割される。第1ケース半体33aには回転軸線32に同軸に軸受孔44が区画される。軸受孔44には転がり軸受45が嵌め込まれる。転がり軸受45にクランクシャフト46の第1ジャーナル46aは嵌め込まれる。こうしてクランクシャフト46は回転軸線32回りに回転自在に第1ケース半体33aに連結される。第2ケース半体33bには軸受孔47が区画される。軸受孔47には転がり軸受48が挿入される。転がり軸受48にクランクシャフト46の第2ジャーナル46bは嵌め込まれる。こうしてクランクシャフト46は回転軸線32回りに回転自在に第2ケース半体33bに組み付けられる。
第1ケース半体33aおよび第2ケース半体33bは協働でクランク室49を区画する。クランク室49にクランクシャフト46のクランクが収容される。クランクにはコンロッド51を介してピストン42が連結される。クランクの働きでピストン42の線形運動はクランクシャフト46の回転運動に変換される。
内燃機関31は動弁機構52を備える。動弁機構52は、クランクケース33の外側でクランクシャフト46に固定される駆動スプロケット53と、クランクシャフト46の回転軸線32に平行な軸線回りに回転自在にシリンダーヘッド35に支持されるカムシャフト54と、カムシャフト54に固定される被動スプロケット55と、駆動スプロケット53および被動スプロケット55に巻き掛けられるカムチェーン56とを備える。カムチェーン56はクランクシャフト46の回転動力をカムシャフト54に伝達する。カムシャフト54には吸気弁または排気弁のロッカーアーム57に接触するカム58が形成される。カムシャフト54の回転に応じて吸気弁および排気弁の開閉は引き起こされる。
クランクケース33の第2ケース半体33bにカムチェーン室61が設けられる。カムチェーン室61内に動弁機構52の駆動スプロケット53や被動スプロケット55、カムチェーン56は収容される。カムチェーン室61内の空間にはエンジンオイルが導入される。エンジンオイルはカムチェーン室61内で動弁機構52の潤滑に用いられる。すなわち、カムチェーン室61の空間はエンジンオイルを含む。
内燃機関31には伝動装置62が接続される。伝動装置62は、変速機室63aを区画する伝動ケース63と、変速機室63a内に収容されて、クランクシャフト46から伝達される回転動力を無段階に変速する電子制御Vベルト式無段変速機(以下「変速機」という)64を備える。伝動ケース63内では、駆動軸としてのクランクシャフト46に取り付けられる駆動プーリー65と、減速ギア機構66を介して後輪WRの車軸29に接続される従動軸67に取り付けられる従動プーリー68とにVベルト69が巻き掛けられる。Vベルト69の働きでクランクシャフト46の回転動力は従動軸67に伝達される。従動軸67の回転動力は減速されて後輪WRの車軸29に伝達される。
駆動プーリー65は、クランクシャフト46に固定される固定シーブ65aと、固定シーブ65aに向き合わせられながらクランクシャフト46の軸方向に移動可能にクランクシャフト46に支持される可動シーブ65bとを備える。固定シーブ65aおよび可動シーブ65bの間にVベルト69は挟まれる。同様に、従動プーリー68は、従動軸67に同軸に装着される固定シーブ68aと、固定シーブ68aに向き合わせられながら、従動軸67に同軸に装着される可動シーブ68bとを備える。固定シーブ68aおよび可動シーブ68bの間にVベルト69は挟まれる。駆動プーリー65ではベルト巻き掛け径は可変に電子制御される。駆動プーリー65のベルト巻き掛け径の変化に応じて従動プーリー68のベルト巻き掛け径は変化する。こうしてクランクシャフト46から従動軸67への伝達比は無段階で変更される。
図3を併せて参照し、クランクケース33の第2ケース半体33bにはセパレーター71が固定される。セパレーター71はクランクケース33の第2ケース半体33bに形成される開口59を塞ぐ。セパレーター71の外周にはシール部材72が装着される。セパレーター71はカムチェーン室61から変速機室63aを隔てる。クランクシャフト46はセパレーター71を貫通してカムチェーン室61から変速機室63aに突出する。クランクシャフト46とセパレーター71との間にはオイルシール73が装着される。カムチェーン室61から変速機室63aに向かってエンジンオイルの進入は阻止される。
転がり軸受48は、第2ケース半体33bの軸受孔47に挿入されるアウターレース74aと、アウターレース74aの内側でクランクシャフト46に固定されるインナーレース74bと、アウターレース74aおよびインナーレース74bの間に配置される複数のボール74cとを備える。クランクシャフト46はインナーレース74bの内側に圧入される。クランクケース33には、クランクケース33に配置されてクランクシャフト46の軸方向に延びる案内路77aに変位自在に案内されるプッシュプラグ75が支持される。プッシュプラグ75は、前端にいくにつれてアウターレース74aから遠ざかる楔面76でアウターレース74aの外周に接触する。
クランクケース33には、プッシュプラグ75と同軸に円柱空間の案内路77aを形成する筒体77が案内路77aと同軸のねじ溝79でねじ込まれる。ねじ溝79は筒体77の外面に刻まれる。クランクケース33にはねじ溝付きの貫通孔81が形成される。筒体77はクランクケース33に対して相対変位不能に固定される。
プッシュプラグ75は、円筒形状の本体75aと、本体75aから前方に連続し前方に向かって先細るテーパー体75bとを備える。テーパー体75bの外面は楔面76を形成する。プッシュプラグ75の本体75aは案内路77aの内壁面をスライドする。こうしてプッシュプラグ75の変位は案内路77aで案内される。案内路77aは前端で開放される。したがって、プッシュプラグ75のテーパー体75bは案内路77aから前方に突出する。
筒体77は、前進方向にプッシュプラグ75に弾性力に基づく駆動力を作用するコイルばね(弾性体)78を保持する。コイルばね78は筒体77内に収容される。筒体77では案内路77aの後端は閉塞される。閉塞端の壁とプッシュプラグ75との間にコイルばね78が挟まれる。楔面76の働きで、クランクシャフト46の軸方向に沿ったプッシュプラグ75の駆動力は転がり軸受48の径方向に変換されて転がり軸受48のアウターレース74aに作用する。
セパレーター71には、プッシュプラグ75の閉塞端に向き合う平面71aが区画される。平面71aはクランクシャフト46の回転軸線32に直交する平面内に広がる。プッシュプラグ75の閉塞端の壁にはカムチェーン室61と筒体77内の空間とを接続する連通孔82が形成される。平面71aには連通孔82に向かって突出する突起83が形成される。突起83は例えば円錐形状であればよい。突起83は連通孔82に同軸に配置される。
図4に示されるように、セパレーター71は2本のボルト84a、84bでクランクケース33に固定される。セパレーター71は円形の輪郭を有する。ボルト84a、84bはセパレーター71の1直径線上に軸線を有する。セパレーター71に対してクランクシャフト46の回転軸線32は上方に偏心して配置される。2本のボルト84a、84bは、セパレーター71の輪郭の内側に配置される。
図5に示されるように、セパレーター71の輪郭の内側で、カムチェーン室61内にはオイルポンプ85が配置される。オイルポンプ85は、セパレーター71に向き合わせられる位置でカムチェーン56の軌道の外側に位置する。オイルポンプ85はクランクケース33の外面に固定される。オイルポンプ85のローター85aには被駆動ギア86が結合される。被駆動ギア86はクランクシャフト46に固定の駆動ギア87に噛み合う。こうしてクランクシャフト46の回転に応じてオイルポンプ85からエンジンオイルは吐き出される。筒体77は、セパレーター71に向き合わせられる位置でカムチェーン56の軌道の内側に配置される。
クランクシャフト46の組み付けにあたって、予め第1ケース半体33aの軸受孔44に転がり軸受45は嵌め込まれる。転がり軸受45のアウターレースは圧入される。第2ケース半体33b側の転がり軸受48はクランクシャフト46の第2ジャーナル46bに装着される。第2ジャーナル46bは転がり軸受48のインナーレース74bに圧入される。
続いて第1ケース半体33aの転がり軸受45に第1ジャーナル46aを嵌め込む。第1ジャーナル46aは転がり軸受45のインナーレースに圧入される。圧入にあたってインナーレースは外側から軸方向に支持される。インナーレースの変位が規制されることから、第1ジャーナル46aの圧入は実現されることができる。
最後に、第2ジャーナル46b上の転がり軸受48は第2ケース半体33bの軸受孔47に挿入される。第2ケース半体33bは転がり軸受48に緩く嵌め合わせられる。第1ケース半体33aに第2ケース半体33bは結合される。その後、クランクケース33に筒体77はねじ込まれる。筒体77内には予めプッシュプラグ75およびコイルばね78が挿入される。第2ケース半体33bの軸受孔47に対して転がり軸受48のがたつきは防止される。
次に本実施形態の作用を説明する。本実施形態ではプッシュプラグ75に前進方向に駆動力が作用するので、軸受孔47に対して軸受48のアウターレース74aが径方向に小さくても、楔面76の前進に応じて楔面76はアウターレース74aの外周に接触し続けることができる。こうして軸受孔47に対してアウターレース74aのがたつきは防止される。プッシュプラグ75は、クランクケース33にねじ込まれる筒体77内に収容されるので、筒体77のねじ締めだけでプッシュプラグ75は所定の位置に装着されることができる。内燃機関31の組み立ては効率化される。加えて、プッシュプラグ75およびコイルばね78は筒体77内に集約されるので、プッシュプラグ75および関連部品の配置スペースが縮小されることができる。
筒体77には、エンジンオイルを含むカムチェーン室61と筒体77内の空間とを接続する連通孔82が設けられる。プッシュプラグ75の変位にあたって筒体77とプッシュプラグ75との接触域にはエンジンオイルが導入されることができる。プッシュプラグ75は円滑に変位することができる。
本実施形態では、セパレーター71の平面71aに、筒体77の後端に形成される連通孔82に向かって平面71aから突出する突起83が形成される。カムチェーン室61に面する平面71aに沿って流れるエンジンオイルは突起83に当たって向きを変え連通孔82に向かって流れる。こうして筒体77内へのエンジンオイルの導入は促進される。
内燃機関31は、カムチェーン室61内に配置され、セパレーター71に向き合わせられる位置でカムチェーン56の軌道の外側に位置するオイルポンプ85を備える。その一方で、筒体77は、カムチェーン室61内に配置され、セパレーター71に向き合わせられる位置でカムチェーン56の軌道の内側に配置される。プッシュプラグ75およびオイルポンプ85はカムチェーン室61内で相互に干渉せずに効率的に配置されることができる。
第2の実施の形態
図6は第2実施形態に係る内燃機関31aの拡大部分断面を示す。なお、第1実施形態に係る内燃機関31と同様な構造に関して詳細な説明は割愛される。同一の参照符号は同様な構造を示すものとする。第2実施形態では、クランクケース33の第2ケース半体33bに穿たれる案内路91にクランクシャフト46の軸方向に変位自在にプッシュプラグ92が案内される。クランクケース33の第2ケース半体33bには円柱空間の案内路91を形成する円筒体93が一体に形成される。案内路91は、クランクシャフト46の軸方向に軸受孔47に進入し、案内路91の内壁面は、アウターレース74aの外周面に向き合う領域91a(図では点線で仕切られる)を有する。案内路91は先端でクランク室49に開放される。
プッシュプラグ92は、全長にわたって円筒面の外周を有し、前端には、周方向に部分的に、前端にいくにつれてアウターレース74aから遠ざかる楔面94を有する。プッシュプラグ92は楔面94でアウターレース74aの外周に接触する。軸受孔47の径方向に楔面94よりも外側でプッシュプラグ92には案内路91の領域91aに接する外面92aが形成される。プッシュプラグ92外周は案内路91の内壁面をスライドする。
クランクケース33の筒体93から軸方向に離れた位置で、クランクケース33に固定されるセパレーター71には、案内路91に同軸のねじ溝95aでボルト部材(保持部材)95がねじ込まれる。セパレーター71には案内路91に同軸にねじ溝付きの貫通孔96が形成される。ボルト部材95はクランクケース33に対して相対変位不能に固定される。
ボルト部材(保持部材)95は、先端に、前進方向にプッシュプラグ92に弾性力に基づく駆動力を作用するコイルばね(弾性体)97を保持する。ボルト部材95の先端にはコイルばね97に差し込まれる軸体98が形成される。コイルばね97はボルト部材95の先端とプッシュプラグ92との間に挟まれる。プッシュプラグ92の後端にはコイルばね97を収容する有底穴99が形成される。楔面94の働きで、クランクシャフト46の軸方向に沿ったプッシュプラグ92の駆動力は転がり軸受48の径方向に変換されて転がり軸受48のアウターレース74aに作用する。案内路91はカムチェーン室61で開放されることから、案内路91の内壁面とプッシュプラグ92との接触域にはエンジンオイルが導入されることができる。
本実施形態では、クランクシャフト46の組み付けにあたって、第1ケース半体33aに第2ケース半体33bが結合されると、クランクケース33の案内路91にプッシュプラグ92は挿入される。プッシュプラグ92の有底穴99には予めコイルばね97が差し込まれる。
クランクケース33の開口59にセパレーター71が取り付けられると、セパレーター71の貫通孔96にボルト部材95はねじ込まれる。セパレーター71の貫通孔96と案内路91とは同軸に配置されることから、ボルト部材95の軸体98はコイルばね97の内側に差し込まれる。ボルト部材95とプッシュプラグ92との間でコイルばね97は収縮し、プッシュプラグ92にはコイルばね97の弾性力に基づき前進方向に駆動力が作用する。
次に本実施形態の作用を説明する。本実施形態ではプッシュプラグ92に前進方向に駆動力が作用するので、軸受孔47に対して軸受48のアウターレース74aが径方向に小さくても、楔面94の前進に応じて楔面94はアウターレース74aの外周に接触し続けることができる。こうして軸受孔47に対してアウターレース74aのがたつきは防止される。ボルト部材95は、プッシュプラグ92の案内路91に同軸のねじ溝95aでねじ込まれることから、プッシュプラグ92および関連部品の配置スペースが縮小され、レイアウト効率は向上することができる。
本実施形態に係る内燃機関31aでは、クランクケース33に案内路91を形成する円筒体93が一体に形成され、ボルト部材95は、円筒体93から軸方向に離れた位置で、クランクケース33に固定されるセパレーター71にねじ込まれる。こうしてクランクケース33に直接に案内路91が形成されるので、ねじ溝に関係なく案内路91には十分な長さが確保される。特に、案内路91は少なくともアウターレース74aの端面まで延びることができ、アウターレース74aの径方向にプッシュプラグ92に作用する荷重は案内路91の内壁面で十分に受け止められる。プッシュプラグ92の耐久性は高められることができる。
本実施形態では、案内路91の内壁面は、アウターレース74aの外周面に向き合う領域91aを有し、プッシュプラグ92には当該領域91aに接する外面92aが形成される。こうしてアウターレース74aの径方向外方でプッシュプラグ92は案内路91の内壁面に接するので、アウターレース74aの径方向にプッシュプラグ92に作用する荷重は確実に案内路91の内壁で支持される。プッシュプラグ92の耐久性は高められることができる。
内燃機関31aは、転がり軸受48の外側でクランクケース33から突出するクランクシャフト46に巻き掛けられるカムチェーン56を備える。こうしてカムチェーン56が配置される側にプッシュプラグ92を配置することで、カムチェーン56でクランクシャフト46が引っ張られる際に生じるクランク打音を効果的に抑制することができる。
内燃機関31aは、転がり軸受48の外側でクランクケース33から突出するクランクシャフト46に連結される変速機64を備える。クランクシャフト46には変速機64の駆動プーリー65が取り付けられる。こうして変速機64が配置される側にプッシュプラグ92を配置することで、変速機64のVベルト69で引っ張られる際に生じるクランク打音を効果的に抑制することができる。

Claims (9)

  1. クランクケース(33)と、
    アウターレース(74a)で前記クランクケース(33)の軸受孔(47)に挿入される転がり軸受(48)と、
    前記転がり軸受(48)のインナーレース(74b)に嵌め込まれて、前記クランクケース(33)に回転自在に支持されるクランクシャフト(46)と、
    外面に形成されるねじ溝(79)の働きで前記クランクケース(33)にねじ込まれる筒体(77)と、
    前記クランクシャフト(46)の軸方向に変位自在に前記筒体(77)に案内されて、前端にいくにつれて前記アウターレース(74a)から遠ざかる楔面(76)で前記アウターレース(74a)に接触するプッシュプラグ(75)と、
    前記筒体(77)に収容されて、前進方向に前記プッシュプラグ(75)に弾性力に基づく駆動力を作用する弾性体(78)と、
    を備えることを特徴とする内燃機関。
  2. 請求項1に記載の内燃機関において、前記筒体(77)には、エンジンオイルを含む空間(61)と前記筒体(77)内の空間とを接続する連通孔(82)が設けられることを特徴とする内燃機関。
  3. 請求項2に記載の内燃機関において、
    前記クランクケース(33)に固定されて、カムチェーン(56)を収容して前記エンジンオイルを含むカムチェーン室(61)から変速機室(63a)を隔て、前記筒体(77)の後端に向き合う平面(71a)を区画するセパレーター(71)と、
    前記筒体(77)の前記後端に形成される前記連通孔(82)に向かって前記平面(71a)から突出する突起(83)と、
    を備えることを特徴とする内燃機関。
  4. 請求項3に記載の内燃機関において、前記カムチェーン室(61)内に配置され、前記セパレーター(71)に向き合わせられる位置で前記カムチェーン(56)の軌道の外側に位置するオイルポンプ(85)を備え、前記筒体(77)は、前記カムチェーン室(61)内に配置され、前記セパレーター(71)に向き合わせられる位置で前記カムチェーン(56)の軌道の内側に配置されることを特徴とする内燃機関。
  5. クランクケース(33)と、
    アウターレース(74a)で前記クランクケース(33)の軸受孔(47)に挿入される転がり軸受(48)と、
    前記転がり軸受(48)のインナーレース(74b)に嵌め込まれて、前記クランクケース(33)に回転自在に支持されるクランクシャフト(46)と、
    前記クランクケース(33)に配置されて前記クランクシャフト(46)の軸方向に延びる案内路(77a;91)に変位自在に案内されて、前端にいくにつれて前記アウターレース(74a)から遠ざかる楔面(76;94)で前記アウターレース(74a)に接触するプッシュプラグ(75;92)と、
    前記クランクケース(33)または前記クランクケース(33)に固定される部材(71)に、前記案内路(77a)に同軸のねじ溝(79;95a)でねじ込まれ、前進方向に前記プッシュプラグ(75;92)に弾性力に基づく駆動力を作用する弾性体(78;97)を保持する保持部材(77;95)と、
    を備えることを特徴とする内燃機関。
  6. 請求項5に記載の内燃機関において、前記クランクケース(33)には、前記案内路(91)を形成する筒体(93)が一体に形成され、前記保持部材(95)は、前記筒体(93)から軸方向に離れた位置で、前記クランクケース(33)に固定される前記部材(71)にねじ込まれることを特徴とする内燃機関。
  7. 請求項5または6に記載の内燃機関において、前記案内路(91)は、前記アウターレース(74a)の外周面に向き合う内壁面(91a)を有し、前記プッシュプラグ(92)には当該内壁面(91a)に接する外面(92a)が形成されることを特徴とする内燃機関。
  8. 請求項5〜7のいずれか1項に記載の内燃機関において、前記転がり軸受(48)の外側で前記クランクケース(33)から突出する前記クランクシャフト(46)に巻き掛けられるカムチェーン(56)を備えることを特徴とする内燃機関。
  9. 請求項8に記載の内燃機関において、前記転がり軸受(48)の外側で前記クランクケース(33)から突出する前記クランクシャフト(46)に連結されるベルト式無断変速機(64)を備えることを特徴とする内燃機関。
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