JP2009204044A - クランクシャフトの支持構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】ボールベアリングの外輪およびクランクケース間に、外輪の周方向少なくとも1箇所を支持孔の内面から離反させる側に付勢するベアリング付勢手段が設けられるクランクシャフトの支持構造において、ボールベアリングの外輪に加わるスラスト方向の力を小さく抑えつつ、簡単な構造で組付作業を容易とする。
【解決手段】ベアリング付勢手段103が、クランクシャフト45の軸線と斜めに交差する平面に沿う第1傾斜面107が形成される第1くさび部材104と、外輪47bの外周に当接するとともに第1傾斜面107に摺接する第2傾斜面108が形成される第2くさび部材105と、第1傾斜面107から第2傾斜面108に押圧力が及ぶようにして第1くさび部材104をクランクシャフト45の軸線と平行な方向に付勢する弾発部材106とで構成される。
【選択図】 図4

Description

本発明は、クランクシャフトが、クランクケースに設けられる支持孔に外輪を嵌合せしめるボールベアリングを介して前記クランクケースに回転自在に支承されるクランクシャフトの支持構造に関し、特に、ボールベアリングの外輪およびクランクケース間に、外輪の周方向少なくとも1箇所を支持孔の内面から離反させる側に付勢するベアリング付勢手段が設けられるクランクシャフトの支持構造の改良に関する。
クランクシャフトには、シリンダボア内を往復摺動するピストンと、該ピストンの頂部を臨ませる燃焼室での爆発とにより、シリンダ軸線に沿う方向の力が作用するものであり、ボールベアリングの外輪外面および支持孔の内面間の間隙の分だけクランクシャフトが暴れて所謂クランク打音が発生することがある。特に、エンジンの熱間時には、ボールベアリングの外輪およびクランクケースの熱膨張率の差から上記間隙が増大し、クランク打音が生じ易くなる。このようなクランク打音の発生を防止するために、クランクケースの支持孔にボールベアリングの外輪を圧入することも考えられるが、支持孔の加工精度を高める必要があるだけでなく、ボールベアリングの組付けに時間、技術および設備が必要となり、結果的にコスト増大を招くことになる。そこで支持孔の周方向に間隔をあけた複数箇所でボールベアリングの外輪およびクランクケース間に、外輪を支持孔の内面から離反させる側に弾性的に押圧するベアリング付勢手段がそれぞれ設けられるようにして、コストの増大を回避しつつクランク打音の発生を安定して抑え得るようにしたものが、特許文献1で知られている。
特開2004−116705号公報
上記特許文献1には、軸方向に付勢されたくさびの傾斜した押圧面がボールベアリングの外輪の一端外周に当接されるように構成されたベアリング付勢手段と、ボールベアリングの外輪外周に当接する押圧ピンが支持孔の半径方向内方に弾発付勢されつつ支持孔の周方向複数個所でその半径方向に沿う摺動を可能としてクランクケースに嵌合されるように構成されたベアリング付勢手段とが開示されている。
しかるに前者のベアリング付勢手段では、ボールベアリングの外輪がスラスト方向の力を受けるため外輪の小径化が困難となる。また後者のベアリング付勢手段では、外輪にスラスト方向の力が作用することはないものの、構造が複雑であり、組付け作業が煩雑となってしまう。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ボールベアリングの外輪に加わるスラスト方向の力を小さく抑えつつ、簡単な構造で組付け作業を容易としたベアリング付勢手段を備えるクランクシャフトの支持構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、クランクシャフトおよびクランクケース間に、該クランクケースに設けられる支持孔に外輪を嵌合せしめるボールベアリングが介装され、該ボールベアリングの前記外輪および前記クランクケース間に、前記外輪の周方向少なくとも1箇所を前記支持孔の内面から離反させる側に付勢するベアリング付勢手段が設けられるクランクシャフトの支持構造において、前記ベアリング付勢手段が、前記クランクシャフトの軸線と平行な方向への移動を可能とするものの前記外輪の半径方向に沿う移動が規制されるようにして前記クランクケースに支承されるとともに前記クランクシャフトの軸線と斜めに交差する平面に沿う第1傾斜面が形成される第1くさび部材と、前記外輪の半径方向に沿う移動を可能とするものの前記クランクシャフトの軸線と平行な方向への移動が規制されるようにして前記外輪の外周に当接するとともに前記第1傾斜面に摺接する第2傾斜面が形成される第2くさび部材と、第1傾斜面から第2傾斜面に押圧力が及ぶようにして第1くさび部材をクランクシャフトの軸線と平行な方向に付勢する弾発力を発揮すべく第1くさび部材および前記クランクケース間に設けられる弾発部材とで構成されることを特徴とする。
また請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、第2くさび部材の前記外輪への当接部が、前記外輪の外周に面接触するように円弧状に形成されることを特徴とする。
さらに請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明の構成に加えて、前記クランクケースには、前記弾発部材で付勢される第1くさび部材の軸方向移動と同一方向への第2くさび部材の軸方向移動を規制するようにして第2くさび部材に当接する平坦な規制面が形成され、該規制面への第2くさび部材の当接部が、前記規制面側に膨らんだ球面状に形成されることを特徴とする。
請求項1記載の発明によれば、ベアリング付勢手段は、クランクシャフトの軸線と平行な方向への移動を可能とするものの外輪の半径方向に沿う移動が規制される第1くさび部材と、外輪の半径方向に沿う移動を可能とするもののクランクシャフトの軸線と平行な方向への移動が規制される第2くさび部材と、第1くさび部材およびクランクケース間に設けられる弾発部材とで構成されており、構造が簡単であり、組付け性にも優れている。しかも第1および第2くさび部材には、クランクシャフトの軸線と斜めに交差する平面に沿う第1および第2傾斜面が相互に接触するようにしてそれぞれ形成され、弾発部材は、第1傾斜面から第2傾斜面に押圧力が及ぶようにして第1くさび部材をクランクシャフトの軸線と平行な方向に付勢するので、ボールベアリングの外輪に作用する力は、第2くさび部材から半径方向内方に向けてのラジアル方向の押圧力が大半であり、前記外輪に加わるスラスト方向の力を小さくすることができる。
また請求項2記載の発明によれば、第2くさび部材が外輪の外周に面接触するので、摩耗に対する耐久性の向上を図ることができる。
さらに請求項3記載の発明によれば、弾発部材で付勢される第1くさび部材の軸方向移動と同一方向への第2くさび部材の軸方向移動を規制する平坦な規制面がクランクケースに形成され、その規制面への第2くさび部材の当接部が規制面側に膨らんだ球面状に形成されるので、外輪の半径方向内方に向けて第2くさび部材を押圧する付勢力に対する抵抗となる第2くさび部材および前記規制面間のフリクションを低減することができる。
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
図1〜図6は本発明の一実施例を示すものであり、図1はスクータ型自動二輪車の左側面図、図2は図1の2−2線拡大断面図、図3は図2の要部拡大図、図4は図3の4矢示部拡大図、図5は図4の5−5線断面図、図6は図4の6−6線断面図である。
先ず図1において、スクータ型自動二輪車の車体フレーム15は、前輪WFを軸支するフロントフォーク16ならびに該フロントフォーク16に連結される操向ハンドル17を操向可能に支承するヘッドパイプ18と、該ヘッドパイプ18から後下がりに延びるダウンチューブ19と、ダウンチューブ19の下部両側に前端が固着されて後方に延びる左右一対のロアフレームパイプ20…と、ロアフレームパイプ20…の後端に一体に連なる左右一対のリヤフレームパイプ21…とを備え、リヤフレームパイプ21は、ロアフレームパイプ20の後端から後上がりに延びる傾斜部21aと、傾斜部21aの後端からほぼ水平にして後方に延びる水平部21bとから成り、両リヤフレームパイプ21…の後部は相互に連結される。
車体フレーム15における両ロアフレームパイプ20…および両リヤフレームパイプ21…の一体連設部にはブラケット22が設けられており、このブラケット22にはパワーユニットPの前部がリンク機構23を介して上下に揺動可能に支承されており、該パワーユニットPの後部右側に配置される後輪WRがパワーユニットPの後部に軸支される。また前記両リヤフレームパイプ21…のうち左側のリヤフレームパイプ21の後部およびパワーユニットPの後部間にはリヤクッションユニット24が設けられる。
パワーユニットPの前方で両ロアフレームパイプ20…間には、それらのロアフレームパイプ20…で支持される燃料タンク25が配置され、前記パワーユニットPの上方には収納ボックス26が配置され、該収納ボックス26は前記リヤフレームパイプ21…で支持される。
車体フレーム15は、合成樹脂製の車体カバー27で覆われるものであり、この車体カバー27は、運転者の足の前方を覆うレッグシールド28と、ライダーの足を載せるべくレッグシールド28の下部に連なって燃料タンク25を覆うステップフロア29と、ステップフロア29に連なって車体後部を両側から覆うサイドカバー30とを備え、サイドカバー30上には、収納ボックス26を上方から開閉可能として覆うタンデム型の乗車用シート31が設けられる。
図2において、パワーユニットPは、後輪WRの前方に配置される強制空冷式単気筒の4サイクルであるOHC型の内燃機関Eと、該内燃機関Eおよび前記後輪WR間に設けられる伝動装置Tとで構成される。
前記内燃機関Eの機関本体34は、後輪WRの回転軸線と平行な回転軸線を有するクランクシャフト45を回転自在に支承するクランクケース35と、前記クランクシャフト45に連結されるピストン41を摺動自在に嵌合せしめるシリンダボア40を有して前記クランクケース35に結合されるシリンダブロック36と、クランクケース35と反対側でシリンダブロック36に結合されるシリンダヘッド37と、シリンダブロック36と反対側でシリンダヘッド37に結合されるヘッドカバー38とで構成される。
前記シリンダブロック36、前記シリンダヘッド37および前記ヘッドカバー38は、車体フレーム15の両リヤフレームパイプ21…間に配置され、前記シリンダブロック36は、シリンダボア40の軸線をほぼ水平となるまでわずかに前上がりに傾斜させてクランクケース35に結合される。
シリンダブロック36およびシリンダヘッド37間にはピストン41の頂部を臨ませる燃焼室42が形成され、前記ピストン41は、コネクティングロッド43およびクランクピン44を介してクランクシャフト45に連結される。
クランクケース35は、前記シリンダボア40の軸線を含むとともに前記クランクシャフト45の軸線に直交する平面で結合される一対のケース半体35a,35bから成り、クランクシャフト45は両ケース半体35a,35bで回転自在に支承される。而してクランクシャフト45および一方のケース半体35a間にはボールベアリング47が介装され、クランクシャフト45および他方のケース半体35b間にはボールベアリング48が介装される。
シリンダヘッド37の上部側面には前記燃焼室42に通じ得る吸気ポート(図示せず)が設けられ、シリンダヘッド37の下部側面には前記燃焼室42に通じ得る排気ポート(図示せず)が設けられる。
図1で示すように、シリンダヘッド37の上部側面には、後輪WRの左側でパワーユニットPの上方に配置されるエアクリーナ49と、該エアクリーナ49に上流端が接続される気化器50とを含む吸気装置51が前記吸気ポートに連なるようにして接続され、シリンダヘッド37の下部側面には、前記排気ポートに通じる排気管52の上流端が接続され、この排気管52の下流端は後輪WRの右側に配置される排気マフラー53に接続される。また燃焼室42に臨む点火プラグ54(図2参照)が、自動二輪車の進行方向前方を向いた状態でシリンダヘッド37の右側の側面に取付けられる。
前記シリンダヘッド37には、前記吸気ポートおよび前記排気ポートをそれぞれ開閉する吸気弁(図示せず)および排気弁(図示せず)が開閉作動可能に配設されており、シリンダヘッド37およびヘッドカバー38間には、前記吸気弁および排気弁を開閉駆動する動弁機構55が収容される。この動弁機構55が備えるカムシャフト56には、前記クランクシャフト45の回転動力がカムチェーン57を備える調時伝動機構58を介して1/2の減速比で伝達されるものであり、カムチェーン57は、シリンダブロック36、シリンダヘッド37およびヘッドカバー38にわたって形成されたカムチェーン室59内に走行可能に収納される。
図3を併せて参照して、クランクケース35の外方でクランクシャフト45の一端部には、発電機65のアウターロータ66が固定されており、該アウターロータ66で囲繞されるステータ67はクランクケース35に固定される。この発電機65よりも外方でクランクシャフト45には冷却ファン68が固定される。この冷却ファン68は、前記発電機65のアウターロータ66に締結される基部68aの外周部に複数の羽根68b,68b…が一体に設けられて成るものである。
機関本体34のうち、クランクケース35の一部、シリンダブロック36およびシリンダヘッド37はシュラウド70で覆われており、機関本体34およびシュラウド70間に形成される冷却風通路71を、冷却ファン68から吐出される強制空冷用の空気が流通する。しかもシリンダブロック36およびシリンダヘッド37の外面には、前記冷却風通路71を流れる冷却空気による効率的な冷却を可能とするために複数の冷却フィン36a…,37a…がそれぞれ突設される。
前記シュラウウド70は、シリンダブロック36およびシリンダヘッド37を協働して覆うようにして相互に結合される上下一対の上部および下部カバー部材72,73と、クランクケース35の一部を覆って前記両カバー部材72,73に結合されるファンカバー74とで構成され、上部カバー部材72、下部カバー部材73およびファンカバー74は、それぞれ合成樹脂により形成される。
ファンカバー74は、クランクケース35の一部であるケース半体35aおよび冷却ファン68を覆うようにしてケース半体35aに締結されるとともに上部および下部カバー部材72,73に締結される。
このファンカバー74には、前記冷却ファン68側に向けて外部から空気を吸引するための吸引口75を形成する吸引筒76が、冷却ファン68にその外方で対応するようにして設けられており、吸引口76にはルーバー77が設けられる。
クランクケース35には、自動二輪車の走行方向前方を向いた状態で後輪WRの左側方に延出される伝動ケース80が連結される。この伝動ケース80は、前記クランクケース35のケース半体35bに一体に連設されて後方に延設されるケース主体81と、該ケース主体81との間に変速機室84を形成してケース主体81に左側から締結される左側カバー82と、前記ケース主体81との間にギヤ室85を形成してケース主体81の右側後部に締結される右側カバー83とで構成され、後輪WRの車軸86は、ケース主体81の後部および右側カバー83に回転自在に支承される。
伝動装置Tは、変速機室84に収容されるVベルト式の無段変速機87と、該無段変速機87および車軸86間に設けられて前記ギヤ室85に収容される減速ギヤ機構88とで構成される。
無段変速機87は、クランクケース35の外方でクランクシャフト45の他端部に連結されるドライブプーリ89と、クランクシャフト45と平行な軸線を有してケース主体81の後部および右側カバー83に回転自在に支承される被動軸90に遠心クラッチ91を介して装着されるドリブンプーリ92と、ドライブプーリ89およびドリブンプーリ92に巻掛けられる無端状のVベルト93とを備える従来周知のものである。
而してドライブプーリ89は、クランクシャフト45に固着されたランププレート94および該ドライブプーリ89間に浮動状態で収容される複数のウエイトローラ95が、クランクシャフト45の回転数増大に応じてクランクシャフト45の半径方向外方に移動するのに応じて、Vベルト93への接触半径を大きくするように作動する。
一方、ドリブンプーリ92は、ドライブプーリ89へのVベルト93の接触半径が大きくなるにつれて、該Vベルト93の接触半径が小さくなるように作動し、それによりクランクシャフト45および被動軸90間でのクランクシャフト45の回転に応じた無段変速が行なわれることになる。
減速ギヤ機構88は、被動軸90および車軸87間に設けられてギヤ室85に収納されるものであり、無段変速機87における被動軸90の回転動力が減速ギヤ機構88で減速されて後輪WRの車軸86に伝達される。
伝動ケース80における左側カバー82にはキック軸97が回転自在に支承されており、該キック軸97の外端にキックペダル98(図1参照)が設けられる。また前記左側カバー82の内面側で、キック軸97およびクランクシャフト45間には、キックペダル98の踏込み操作に応じたキック軸97の動力をクランクシャフト45に伝達可能としたキック式始動装置99が設けられる。
図3に注目して、クランクシャフト45およびクランクケース35間に介装されるボールベアリング47,48は、それらの内輪47a,48aにクランクシャフト45を圧入することにより、クランクシャフト45の軸線方向に沿う位置を定めて該クランクシャフト45に相対移動不能に組付けられる。一方、クランクケース35の両ケース半体35a,35bには、前記ボールベアリング47,48の外輪47a,48aを嵌合せしめる支持孔101,102が設けられる。
ところでクランクシャフト45には、シリンダボア40内を往復摺動するピストン41と、該ピストン41の頂部を臨ませる燃焼室42での爆発とにより、シリンダ軸線に沿う方向の力が作用するものであり、ボールベアリング47,48における外輪47b,48bの外面および支持孔101,102の内面間の間隙の分だけクランクシャフト45が暴れる可能性がある。しかるにこの実施例では、クランクケース35の外方でクランクシャフト45の他端部すなわち左端部には無段変速機87のドライブプーリ89が装着されている。このためクランクシャフト45には、クランクケース35のケース半体35bにボールベアリング48を介して支持される部分を支点としてクランクシャフト45を傾かせる方向の力F(図2および図3参照)が無段変速機87側から作用することになり、クランクケース35におけるケース半体35aおよびクランクシャフト45間に介装されているボールベアリング47の支持孔101内でのがたつきを抑えることで、ボールベアリング48の支持孔102内でのがたつきも抑えられることになる。
そこで前記ボールベアリング47の外輪47bおよびクランクケース35のケース半体35a間に、前記外輪47bの周方向少なくとも1箇所、この実施例では1箇所を支持孔101の内面から離反させる側に付勢するベアリング付勢手段103が設けられる。そしてベアリング付勢手段103は、クランクシャフト45の傾きによって生じた隙間を埋めるように、Vベルト93が延出する側(後側)で、ボールベアリング47の外輪47bおよびクランクケース35のケース半体35a間に配置される。
図4および図5において、ベアリング付勢手段103は、クランクシャフト45の軸線と斜めに交差する平面に沿う第1傾斜面107が形成される第1くさび部材104と、ボールベアリング47の外輪47bの外周に当接するとともに前記第1傾斜面107に摺接する第2傾斜面108が形成される第2くさび部材105と、第1くさび部材104およびクランクケース35間に設けられる弾発部材としてのコイルばね106を備える。
クランクケース35のケース半体35aには、一端を外方に開放するとともに他端を平坦な規制面110で閉じた有底の収容孔109が、その前記規制面110寄りの部分が支持孔101の一部と重なることによってボールベアリング47の外輪47bの一部を収容孔109の前記規制面110寄りの部分に臨ませるようにして、クランクシャフト45の軸線と平行に設けられており、この収容孔109内に、第1および第2くさび部材104,105が収容される。
第1くさび部材104は前記収容孔109に摺動可能に嵌合されており、クランクシャフト45の軸線と平行な方向への移動を可能とするものの前記外輪47bの半径方向に沿う移動が規制されるようにしてクランクケース35のケース半体35aに支承されることになる。
第2くさび部材105は、第2傾斜面108を第1傾斜面107に摺接させるとともに収容孔109の閉塞端の前記規制面110に摺接するようにして収容孔109に収容されるものであり、第2くさび部材105の外径は、第2くさび部材105の外周および収容孔109の内周間に間隙が生じるように収容孔109の内径よりも小さく設定される。したがって第2くさび部材105は、外輪47bの半径方向に沿う方向でのわずかな移動を可能とするものの、クランクシャフト45の軸線と平行な方向への移動は、前記第1くさび部材104および前記規制面110間に挟まれることで規制されることになる。
前記クランクケース35のケース半体35aには、前記収容孔109の開口端に一部を液密に嵌合せしめる蓋部材111が当接されており、該蓋部材111をケース半体35aとの間に挟んで固定する押さえ部材113がクランクケース35のケース半体35aにボルト114で締結される。一方、収容孔109内で第1くさび部材104には平板状のばね受け部材112が当接されており、そのばね受け部材112および前記蓋部材111間に前記コイルばね106が縮設されており、第1くさび部材104は、第1傾斜面107から第2傾斜面108に押圧力が及ぶようにしてクランクシャフト45の軸線と平行な方向に前記コイルばね106で付勢されることになる。また第1くさび部材104には、前記ばね受け部材112を貫通して前記蓋部材111側に延びるガイド軸104aが同軸かつ一体に連結されており、コイルばね106はガイド軸104aを囲繞するようにして前記蓋部材111およびばね受け部材112間に縮設される。
而してコイルばね106によってクランクシャフト45の軸線に沿う方向で第1くさび部材104に作用する弾発付勢力は、第1および第2くさび部材104,105がクランクシャフト45の軸線と斜めに交差する平面に沿う第1および第2傾斜面107,108で相互に接触していることによって、第2くさび部材105をボールベアリング47の半径方向内方に付勢することになるのであるが、第1および第2傾斜面107,108の接触面積を大きくとって第2くさび部材105をボールベアリング47の半径方向内方に付勢する力を大きくするために、前記平面がクランクシャフト45の軸線となす角度は極力小さく設定される。
ボールベアリング47の外輪47bへの第2くさび部材105の当接部105aは、図5で示すように、外輪47bの外周に面接触するようにその外周に沿って円弧状に形成されている。また前記規制面110への第2くさび部材105の当接部105bは、図4および図6で示すように、規制面110側に膨らんだ球面状に形成される。
次にこの実施例の作用について説明すると、クランクシャフト45およびクランクケース35間に介装される一対のボールベアリング47,48のうちボールベアリング47の外輪47bは、クランクケース35のケース半体35aに設けられる支持孔101に嵌合されており、該ボールベアリング47の外輪47bおよび前記ケース半体35a間に、外輪47bの周方向少なくとも1箇所(この実施例では1個所)を支持孔101の内面から離反させる側に付勢するベアリング付勢手段103が設けられ、このベアリング付勢手段103が、クランクシャフト45の軸線と平行な方向への移動を可能とするものの外輪47bの半径方向に沿う移動が規制されるようにしてクランクケース35に支承されるとともにクランクシャフト45の軸線と斜めに交差する平面に沿う第1傾斜面107が形成される第1くさび部材104と、外輪47bの半径方向に沿う移動を可能とするもののクランクシャフト45の軸線と平行な方向への移動が規制されるようにして外輪47bの外周に当接するとともに第1傾斜面107に摺接する第2傾斜面108が形成される第2くさび部材105と、第1傾斜面107から第2傾斜面108に押圧力が及ぶようにして第1くさび部材104をクランクシャフト45の軸線と平行な方向に付勢する弾発力を発揮すべく第1くさび部材104およびクランクケース35間に設けられるコイルばね106とで構成されている。
このようなベアリング付勢手段103は、構造が簡単であり、ボールベアリングの外輪外周に当接する押圧ピンが支持孔の半径方向内方に弾発付勢されつつ支持孔の周方向複数個所でクランクケースに嵌合されるように構成されたものと比べると、組付け性にも優れている。しかも第1および第2くさび部材104,105には、クランクシャフト45の軸線と斜めに交差する平面に沿う第1および第2傾斜面107,108が相互に接触するようにしてそれぞれ形成され、コイルばね106は、第1傾斜面107から第2傾斜面108に押圧力が及ぶようにして第1くさび部材104をクランクシャフト45の軸線と平行な方向に付勢するので、ボールベアリング47の外輪47bに作用する力は、第2くさび部材105から半径方向内方に向けてのラジアル方向の押圧力が大半であり、前記外輪47bに加わるスラスト方向の力を小さくすることができる。
またボールベアリング47の外輪47bへの第2くさび部材105の当接部105aが外輪47bの外周に面接触するように円弧状に形成されるので、摩耗に対する耐久性の向上を図ることができる。
しかもコイルばね106で付勢される第1くさび部材104の軸方向移動と同一方向への第2くさび部材105の軸方向移動を規制する平坦な規制面110がクランクケース35に形成されており、その規制面110への第2くさび部材105の当接部105bが規制面110側に膨らんだ球面状に形成されるので、前記外輪47bの半径方向内方に向けて第2くさび部材105を押圧する付勢力に対する抵抗となる第2くさび部材105および前記規制面110間のフリクションを低減することができる。
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
たとえば上記実施例では自動二輪車に搭載された内燃機関Eについて説明したが、本発明は、自動二輪車用の内燃機関Eに限らず、内燃機関に関連して広く実施することができる。
スクータ型自動二輪車の左側面図である。 図1の2−2線拡大断面図である。 図2の要部拡大図である。 図3の4矢示部拡大図である。 図4の5−5線断面図である。 図4の6−6線断面図である。
符号の説明
35・・・クランクケース
45・・・クランクシャフト
47・・・ボールベアリング
47b・・・ボールベアリングの外輪
101・・・支持孔
103・・・ベアリング付勢手段
104・・・第1くさび部材
105・・・第2くさび部材
105a・・・第2くさび部材の外輪への当接部
105b・・・第2くさび部材の規制面への当接部
106・・・弾発部材であるコイルばね
107・・・第1傾斜面
108・・・第2傾斜面
110・・・規制面

Claims (3)

  1. クランクシャフト(45)およびクランクケース(35)間に、該クランクケース(35)に設けられる支持孔(101)に外輪(47b)を嵌合せしめるボールベアリング(47)が介装され、該ボールベアリング(47)の前記外輪(47b)および前記クランクケース(35)間に、前記外輪(47b)の周方向少なくとも1箇所を前記支持孔(101)の内面から離反させる側に付勢するベアリング付勢手段(103)が設けられるクランクシャフトの支持構造において、前記ベアリング付勢手段(103)が、前記クランクシャフト(45)の軸線と平行な方向への移動を可能とするものの前記外輪(47b)の半径方向に沿う移動が規制されるようにして前記クランクケース(35)に支承されるとともに前記クランクシャフト(45)の軸線と斜めに交差する平面に沿う第1傾斜面(107)が形成される第1くさび部材(104)と、前記外輪(47b)の半径方向に沿う移動を可能とするものの前記クランクシャフト(45)の軸線と平行な方向への移動が規制されるようにして前記外輪(47b)の外周に当接するとともに前記第1傾斜面(107)に摺接する第2傾斜面(108)が形成される第2くさび部材(105)と、第1傾斜面(107)から第2傾斜面(108)に押圧力が及ぶようにして第1くさび部材(104)をクランクシャフト(45)の軸線と平行な方向に付勢する弾発力を発揮すべく第1くさび部材(104)および前記クランクケース(35)間に設けられる弾発部材(106)とで構成されることを特徴とするクランクシャフトの支持構造。
  2. 第2くさび部材(105)の前記外輪(47b)への当接部(105a)が、前記外輪(47b)の外周に面接触するように円弧状に形成されることを特徴とする請求項1記載のクランクシャフトの支持構造。
  3. 前記クランクケース(35)には、前記弾発部材(106)で付勢される第1くさび部材(104)の軸方向移動と同一方向への第2くさび部材(105)の軸方向移動を規制するようにして第2くさび部材(105)に当接する平坦な規制面(110)が形成され、該規制面(110)への第2くさび部材(105)の当接部(105b)が、前記規制面(110)側に膨らんだ球面状に形成されることを特徴とする請求項1または2記載のクランクシャフトの支持構造。
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