JPWO2019035357A1 - ポリエステルコポリマーおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、ヤング率が低く、かつ引っ張り強度が高い生分解性・生体吸収性ポリマーを提供することを課題とする。当該課題を解決するための本発明は、2種類のエステル結合形成性モノマー残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーであって、2種類のエステル結合形成性モノマーをそれぞれ「モノマーA」、「モノマーB」とした場合に、下記(1)および(2)を満たすポリエステルコポリマーである。(1)下記式R=[AB]/(2[A][B])×100[A]:ポリエステルコポリマー中の、モノマーA残基のモル分率[B]:ポリエステルコポリマー中の、モノマーB残基のモル分率[AB]:ポリエステルコポリマー中の、モノマーA残基とモノマーB残基が隣り合った構造(A−B、およびB−A)のモル分率で表されるR値が0.45以上0.99以下である。(2)モノマーA残基またはモノマーB残基の少なくとも一方の結晶化率が14%未満である。

Description

本発明は、ポリエステルコポリマーおよびその製造方法、とりわけ、生分解性または生体吸収性を発現し得るポリエステルコポリマーに関する。
ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトンあるいはこれらの共重合体に代表される、エステル結合形成性モノマーから製造されるポリエステルは、生分解性あるいは生体吸収性ポリマーとして注目され、例えば、縫合糸等の医用材料、医薬、農薬、肥料等の徐放性材料等、多方面に利用されている。更に、生分解性汎用プラスチックとして容器やフィルム等の包装材料としても期待されている。
しかし、一般に、エステル結合形成性モノマーから製造される生分解性ポリエステルや生体吸収性ポリエステルは脆弱である。そのため、機械的特性を改善して実用に耐える強度や成形性を有する生分解性ポリマーを得る目的で、高分子量のポリマーや各種コポリマーの開発が試みられている。
例えば、特許文献1には、従来は重縮合により行われていたポリ乳酸やポリグリコール酸の合成において、より高分子量のポリマーを得るため、乳酸、グリコール酸からまずラクチド、グリコリドを製造し、これらを開環重合して合成する方法が開示されている。
また、結晶性が高いため硬くて脆いポリ乳酸と、他の運動性の高いポリマーとを組み合わせた新たなマルチブロックコポリマーを開発する試みも数多くなされている。例えば、非特許文献1には、ラクチドとヘキサンジオールとを反応させて得られるポリ乳酸ベースのポリマーと、両末端が水酸基のポリカプロラクトンとを連結させて得られるマルチブロックコポリマーが記載されている。特許文献2には、両末端に水酸基を備えるポリ乳酸からなる第1ブロックと、ポリ乳酸よりも運動性の高いポリマーからなる第2ブロックとを有することによって、生分解性を損なうことなく機械的特性がより改善されたマルチブロックコポリマーも開示されている。
特許第3161729号明細書 特開2006−183042号公報
OjuJeon,etal.,Macromolecules2003,36,5585−5592
特許文献2や非特許文献1に記載のマルチブロックコポリマーは、単純なポリ乳酸等のホモポリマーに比べて優れた機械強度を有する。一方において、再生医療用の足場材料や人工血管など、医療分野の生体吸収性ポリマーの場合、生体組織に類似した柔らかい特性が求められる場合もある。加えて、現在工業的に使用されているエラストマーの多くは非生分解性であり、廃棄後、環境に蓄積することが大きな問題となっている。そのため、エラストマーを生分解性にすることには大きな意義がある。すなわち、低ヤング率の生分解性・生体吸収性ポリマーが求められている。
しかし、柔らかくとも、成形性に劣っていたり破断し易かったりすると、産業的に利用することが極めて難しい。そこで、柔らかくも且つ破断が起こりにくい特性、つまり、ヤング率が低く、かつ引っ張り強度が高い生分解性・生体吸収性ポリマーが求められている。しかし、従来知られている生分解性・生体吸収性ポリエステルでこれらの特性を両立することは困難であった。
本発明は、この問題点を解決する新規ポリエステルコポリマーを提供することを課題とする。
上記課題を解決するための本発明は、2種類のエステル結合形成性モノマー残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーであって、前記2種類のエステル結合形成性モノマーをそれぞれ「モノマーA」、「モノマーB」とした場合に、下記(1)および(2)を満たすポリエステルコポリマーである。
(1)下記式
R=[AB]/(2[A][B])×100
[A]:ポリエステルコポリマー中の、モノマーA残基のモル分率
[B]:ポリエステルコポリマー中の、モノマーB残基のモル分率
[AB]:ポリエステルコポリマー中の、モノマーA残基とモノマーB残基が隣り合った構造(A−B、およびB−A)のモル分率
で表されるR値が0.45以上0.99以下である。
(2)モノマーA残基またはモノマーB残基の少なくとも一方の結晶化率が14%未満である。
本発明により、低ヤング率かつ高引っ張り強度を有し、かつ生分解性や生体吸収性を発現し得る、医療用途やエラストマー用途に適したポリエステルコポリマーを得ることができる。
実施例1、2、3で合成したポリエステルコポリマーを引張試験することにより得られた伸度−応力曲線である。 比較例1で合成したポリエステルコポリマーを引張試験することにより得られた伸度−応力曲線である。 比較例2で合成したポリエステルコポリマーを引張試験することにより得られた伸度−応力曲線である。 比較例3、4で合成したポリエステルコポリマーを引張試験することにより得られた伸度−応力曲線である。 実施例8で合成したポリエステルコポリマーを引張試験することにより得られた伸度−応力曲線である。
<ポリエステルコポリマー>
本発明のポリエステルコポリマーは、2種類のエステル結合形成性モノマー残基を主構成単位とするコポリマーである。本明細書においては、当該2種類のエステル結合形成性モノマーを、それぞれ「モノマーA」、「モノマーB」と表現することがある。
「エステル結合形成性モノマー」とは、重合後、モノマー単位がエステル結合で連結しているポリマー、すなわちポリエステルを生じるモノマーを言う。
エステル結合形成性モノマーとしては、ヒドロキシカルボン酸を用いることが好ましい。また、ヒドロキシカルボン酸のヒドロキシ基とカルボキシル基が分子内脱水縮合した環状化合物であるラクトンや、2分子のヒドロキシカルボン酸の互いのヒドロキシ基とカルボキシル基が脱水縮合した環状化合物であるラクチドも好ましく用いることができる。
ヒドロキシカルボン酸としては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を用いることが特に好ましい。脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸等が挙げられ、特に、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸が好ましい。
乳酸としては、−乳酸、−乳酸、及びそれらの混合体を用いることができるが、得られるポリマーの物性や生体適合性の面からは、−乳酸を用いることが好ましい。モノマーとして混合体を用いる場合、体の含有率が85%以上であることが好ましく、95%以上である方がより好ましい。
ラクトンとしては、カプロラクトン、ジオキセパノン、エチレンオキザラート、ジオキサノン、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン、β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ピバロラクトン等を用いることができる。
ラクチドとしては、乳酸2分子が脱水縮合したジラクチドや、グリコール酸2分子が脱水縮合したグリコリド、テトラメチルグリコリドを用いることができる。
エステル結合形成性モノマーとしては、以上例示したモノマーの誘導体を用いることもできる。
本明細書において、「モノマー残基」とは、原則として、当該モノマーを含む2種以上のモノマーを重合して得られたコポリマーの化学構造中における、当該モノマーに由来する化学構造の反復単位を言う。例えば、乳酸(CHCH(OH)COOH)と、カプロラクトン(ε-カプロラクトン:下記式)
Figure 2019035357
とを重合して乳酸とカプロラクトンのコポリマーとした場合、
Figure 2019035357
が乳酸モノマー残基であり、下記式で表される単位がカプロラクトンモノマー残基である。
Figure 2019035357
なお、例外として、モノマーとしてラクチド等の2量体を用いる場合には、「モノマー残基」は当該2量体に由来する2回繰り返し構造のうちの1つを意味するものとする。例えば、ジラクチド(−(−)−ラクチド:下記式)
Figure 2019035357
とカプロラクトンとを重合した場合、コポリマーの化学構造には、ジラクチド残基として上記式(R1)に示される構造が2回繰り返された構造が形成されるが、この場合にはそのうち1つの乳酸単位を「モノマー残基」と捉え、ジラクチドに由来して「モノマー残基」、すなわち乳酸残基が2つ形成されたと考えるものとする。
2種類のモノマー残基を「主構成単位」とする、とは、当該2種類のモノマー残基数の和が、その他のモノマー残基を含めたポリマー全体の50モル%以上であり、かつそれぞれの残基が、ポリマー全体の20モル%以上であることを意味する。例えば、モノマーA残基とモノマーB残基とを主構成単位とする、とは、モノマーA残基とモノマーB残基の残基数の和が、ポリマー全体の50モル%以上であり、かつモノマーA残基がポリマー全体の20モル%以上であり、かつモノマーB残基がポリマー全体の20モル%以上であることを意味する。ここで、モノマーA残基、モノマーB残基、その他の残基のモル分率は、核磁気共鳴(NMR)測定により、それぞれの残基に由来するシグナルの面積値より決定できる。例えば、モノマーA残基が乳酸残基、モノマーB残基がカプロラクトン残基である場合には、後述する測定例2に記載の方法で測定することができる。
モノマーA残基とモノマーB残基の和は、前述の定義から、その他のモノマー残基を含めたポリマー全体の50モル%以上であり、75モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。また、モノマーA残基およびモノマーB残基は、同じく前述の定義からそれぞれ20モル%以上であり、30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましい。モノマーA残基およびモノマーB残基の和がポリマー全体の100%である、すなわちモノマーAおよびモノマーBのみからなるポリマーは、特に好ましい態様として挙げられる。
本発明のポリエステルコポリマーにおいて、モノマーA残基とモノマーB残基のモル比は、一方のモノマーが過剰に存在するとホモポリマー様の性質に近づくことから、好ましくは7/3から3/7であり、より好ましくは6/4から4/6である。
なお、本発明の効果を損なわない限りにおいて、主構成単位を構成する2種類のエステル結合形成性モノマーと共重合し得る別のモノマーを更に共重合させることもできる。このようなモノマーとしては、前述のエステル結合形成性モノマーのうちのさらに別のものを用いることができる。
また、リンカーとして機能するモノマーを共重合させることも好ましい態様である。リンカーとして機能するモノマーとしては、主構成単位を構成する2種類のエステル結合形成性モノマーとは別のヒドロキシカルボン酸や、ジアルコール、ジカルボン酸、アミノ酸、ジアミン、ジイソシアネート、ジエポキシド等が挙げられる。
なお、本明細書においては、エステル結合形成性モノマー以外のモノマーを構成単位に含むことにより、一部にエステル結合以外の結合で連結された構成単位を含むコポリマーも含めて「ポリエステルコポリマー」と表記するものとする。
本発明のポリエステルコポリマーは、生分解性あるいは生体吸収性を有することが好ましい。当業者は、上記例示したモノマーを適宜組み合わせ、また本発明に規定する範囲内においてモノマーの量比を調整することにより、用途に応じて適当な生分解性あるいは生体吸収性を発現するコポリマーを合成することができるであろう。
本発明のポリエステルコポリマーは、前述の2種類のエステル結合形成性モノマーを等モルで共重合させた場合の初期重合速度が相対的に大きいモノマーを「モノマーA」、小さいモノマーを「モノマーB」として、それらを等モルで共重合させた場合の初期重合速度をそれぞれV、Vとしたとき、1.1≦V/V≦40を満たすものであることが好ましい。
ここで、V、Vは以下の方法で求められる。モノマーAとモノマーBを等モル混合し、必要に応じて溶媒、触媒を添加し、最終的に合成された、あるいは合成しようとするポリエステルコポリマーにおける後述するR値と誤差10%の範囲内で同じR値になるように温度等の条件を調整し重合反応を開始する。重合中の試料から定期的にサンプリングを行い、モノマーAとモノマーBの残量を測定する。残量は、例えば、クロマトグラフィーや核磁気共鳴(NMR)測定で測定する。仕込み量から残量を差し引くことで、重合反応に供されたモノマー量が求められる。サンプリング時間に対して重合反応に供されたモノマー量をプロットすると、その曲線の初期勾配がV、Vである。
このようなモノマーAとモノマーBとを反応させると、重合初期においてモノマーAが重合中のポリマー末端に結合する確率が高い。一方、モノマーAが消費され反応液中の濃度が減少する重合後期においては、モノマーBが重合中のポリマー末端に結合する確率が高くなる。その結果、一方の末端からモノマーA残基の割合が徐々に減少するグラジエントポリマーが得られる。このようなグラジエントポリマーは、結晶性が低くなり、ヤング率上昇も抑えられる。こうしたグラジエント構造が形成されやすくするため、V/Vは、1.3以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。一方、モノマーAとモノマーBの重合速度の差が大きすぎると、モノマーAのみが重合した後にモノマーBが重合したブロックポリマーに近い構造となり、結晶性が高くなってヤング率の上昇を招く場合があることから、V/Vは30以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましく、10以下であることが一層好ましい。
このようなモノマーAとモノマーBの好ましい組み合わせとしては、ジラクチドとe-カプロラクトン、グリコリドとe-カプロラクトン、グリコリドとジラクチド、ジラクチドとジオキセパノン、エチレンオキザラートとジラクチド、ジラクチドとδ-バレロラクトン、グリコリドとδ-バレロラクトンが挙げられる。
本発明において、モノマーA残基としては乳酸残基、モノマーB残基としてはカプロラクトン残基であることが特に好ましい態様として挙げられる。
(1)R値
本発明のポリエステルコポリマーは、前述の2種類のエステル結合形成性モノマーをそれぞれ「モノマーA」、「モノマーB」とした場合に下記式で表されるR値が0.45以上0.99以下である。
R値=[AB]/(2[A][B])×100
[A]:ポリエステルコポリマー中の、モノマーA残基のモル分率
[B]:ポリエステルコポリマー中の、モノマーB残基のモル分率
[AB]:ポリエステルコポリマー中の、モノマーA残基とモノマーB残基が隣り合った構造(A−B、およびB−A)のモル分率
R値は、2種類のエステル結合形成性モノマー残基、すなわちモノマーA残基およびモノマーB残基を主構成単位とするコポリマーにおける、モノマー残基の配列のランダム性を示す指標として用いられる。例えば、完全にモノマー配列がランダムなランダムコポリマーでは、R値は1となる。また、ブロックコポリマーではR値は0〜0.44である。
R値は核磁気共鳴(NMR)測定によって、隣り合う二つのモノマーの組み合わせ(A−A、B−B、A−B、B−A)の割合を定量することで決定でき、具体的には後述する測定例2に記載の方法で測定するものとする。R値が0.45未満であると、結晶性が高く、コポリマーの成形品は硬くなりヤング率が上昇する。一方、R値が0.99を超えると、コポリマー成形品は柔らかくなりすぎ粘着性を示すようになり、取扱性が低下する。同様の観点から、本発明において、ポリエステルコポリマーのR値は0.50以上であることが好ましく、また0.80以下であることが好ましい。
(2)結晶化率
ポリマーの結晶性は、その機械強度に大きな影響を与えることが知られている。一般に、低結晶性のポリマーは低ヤング率を示すため、柔軟性を得るためには結晶性が低いことが望ましい。ポリマーの結晶化率は、示差走査熱量(DSC)測定により融解熱から求められる。
本発明においては、モノマーA残基またはモノマーB残基の少なくとも一方の結晶化率が14%未満である。当該結晶化率が14%未満であれば、ヤング率の上昇が抑えられ、医療材料やエラストマー用途に適したポリエステルコポリマーを得ることができる。モノマーA残基および/またはモノマーB残基結晶化率は10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
ここで言うモノマー残基の結晶化率とは、あるモノマー残基のみからなるホモポリマーの単位重量当たりの融解熱と本発明のポリエステルコポリマー中の当該モノマー残基の重量分率の積に対する、本発明のポリエステルコポリマー中の当該モノマー残基単位重量当たりの融解熱の割合である。すなわち、モノマーA残基の結晶化率とは、モノマーAのみからなるホモポリマーの単位重量あたりの融解熱と本発明のポリエステルコポリマー中のモノマーA残基の重量分率の積に対する、ポリエステルコポリマー中のモノマーA残基単位重量当たりの融解熱の割合である。モノマーA残基およびモノマーB残基の結晶化率は、それぞれ本発明のポリエステルコポリマーのモノマーA残基もしくはモノマーB残基の中で結晶構造を形成している割合を示す。
特に、モノマーA残基が乳酸残基、モノマーB残基がカプロラクトン残基である場合には、乳酸残基の結晶化率は14%未満であり、10%以下であることがより好ましい。結晶化率は、具体的には後述する測定例4に記載の方法で求めるものとする。
本発明のポリエステルコポリマーの重量平均分子量は、ポリマー鎖が絡み合うことによる引っ張り強度の向上効果を得るために、好ましくは6万以上である。上限は特に限定されないが、粘度の上昇による製造方法の問題および成形性の低下の点を考えると、好ましくは160万以下であり、より好ましくは80万以下、更に好ましくは40万以下である。
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により求めることができ、具体的には後述する測定例1に記載の方法で求めるものとする。
前述の通り、柔軟性を得るためにはポリマーは低結晶性であることが望ましい。ポリマーA残基が乳酸残基、ポリマーB残基がカプロラクトン残基であるポリエステルコポリマーの場合、ポリエステルコポリマーを溶媒キャストフィルム法によりフィルム状に成形し、X線回折(XRD)により測定したポリ乳酸α晶の結晶子サイズは24nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。また、同様にポリカプロラクトンの結晶子サイズは30nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。これらの結晶子サイズは、具体的には後述する測定例5に記載の方法により測定するものとする。
本発明のポリエステルコポリマーのヤング率は、好ましくは6.3MPa以下、より好ましくは3.6MPa以下である。ヤング率は、低すぎると成形物が形状を保てないため、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上、さらに好ましくは1.0MPa以上である。本発明のポリエステルコポリマーの最大点応力は5MPa以上であることが好ましく、より好ましくは20MPa以上である。本発明のポリエステルコポリマーの破断伸度は、好ましくは200%以上であり、より好ましくは500%以上であり、更に好ましくは1000%以上である。高い破断伸度を有すると、伸長など変形を加えられた際に破壊することがないため好ましい。ヤング率、最大点応力および破断伸度はJIS K6251(2010)に従って求めた値であり、具体的には後述する測定例3の方法により測定するものとする。
<ポリエステルコポリマーの製造方法>
本発明のポリエステルコポリマーは、一例として、2種類のエステル結合形成性モノマーであるモノマーAおよびモノマーBを、重合完了時においてモノマーA残基とモノマーB残基の和が全残基の50モル%以上、かつモノマーA残基とモノマーB残基がそれぞれ全残基の20モル%以上となるよう配合して重合させるマクロマー合成工程;
前記マクロマー合成工程で得られたマクロマー同士を連結するか、あるいは前記マクロマー合成工程で得られたマクロマー溶液に前記モノマーAおよび前記モノマーBを追添加することによりマルチ化するマルチ化工程;
を有するポリエステルコポリマーの製造方法により製造することができる。
〔マクロマー合成工程〕
マクロマー合成工程では、モノマーAとモノマーBを、理論上重合完了時においてモノマーA残基とモノマーB残基の和が全残基の50モル%以上、かつモノマーA残基とモノマーB残基がそれぞれ全残基の20モル%以上となるよう配合して重合を行う。これにより、モノマーA残基とモノマーB残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーが得られるが、本製造方法においてはさらに後述するマルチ化工程を行うため、本明細書においては、本工程により得られるポリエステルコポリマーを「マクロマー」と表現する。
エステル結合形成性モノマーとしては、前述のものと同様のものを用いることができ、好ましい組み合わせ等についても前述の記載に準じる。
2種類のエステル結合形成性モノマー残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーを構成するモノマー残基の分布のランダム性は、重合時のモノマーの反応性の違いにより変化する。すなわち、重合時に、当該2種類のモノマーのうち、一方のモノマーの後に、同じモノマーと他方のモノマーが同確率で結合すれば、モノマー残基が完全にランダムに分布したランダムコポリマーが得られる。しかし、一方のモノマーの後にいずれかのモノマーが結合し易い傾向がある場合は、モノマー残基の分布に偏りのあるグラジエントコポリマーが得られる。得られたグラジエントコポリマーは、その分子鎖にそって重合開始末端から重合終了末端にかけてモノマー残基の組成が連続的に変化している。
ここで、モノマーAをモノマーBよりも初期重合速度が大きいモノマーであるとすると、マクロマー合成工程においてモノマーAとモノマーBとを共重合させた場合、モノマーAの後にモノマーAが結合し易い。そのため、合成されたマクロマーにおいては、重合開始末端から重合終了末端にかけてモノマーA単位の割合が徐々に減少するグラジエント構造が形成される。すなわち、本工程で得られるマクロマーは、モノマーAとモノマーBとの初期重合速度差により、モノマーA残基とモノマーB残基とが骨格中で組成勾配をなすグラジエント構造を有するマクロマーとなる。このようなマクロマーを、本明細書においては「グラジエントマクロマー」と呼ぶ場合がある。
マクロマー合成工程においては、このようなグラジエント構造を実現するために、開始末端から一方向に起こる重合反応によりマクロマーを合成することが望ましい。このような合成反応としては、開環重合、リビング重合を利用することが好ましい例として挙げられる。
本工程で得られるマクロマーは、最終的に上記(1)に示すR値を満たすポリエステルコポリマーを製造しやすくするため、上記(1)に記載したポリエステルコポリマーと同様のR値を有するもの、すなわち、下記式
R値=[AB]/(2[A][B])×100
[A]:マクロマー中の、モノマーA残基のモル分率
[B]:マクロマー中の、モノマーB残基のモル分率
[AB]:マクロマー中の、モノマーA残基とモノマーB残基が隣り合った構造(A−B、およびB−A)のモル分率
で表されるR値が0.45以上0.99以下であることが好ましく、0.50以上0.80以下であることがより好ましい。
また同様に、本工程で得られるマクロマーは、最終的に上記(2)に示すモノマーA残基またはモノマーB残基の結晶化率を有するポリエステルコポリマーを製造しやすくするため、上記(2)に記載したモノマー残基の結晶化率を有するもの、すなわち、モノマーA残基またはモノマーB残基の少なくとも一方の結晶化率が14%未満であるものであることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
マクロマー合成工程で合成されるマクロマーの重量平均分子量は、好ましくは1万以上、より好ましくは2万以上である。また、結晶性を抑え柔軟性を保つためには15万以下であることが好ましく、10万以下であることがより好ましい。
〔マルチ化工程〕
マルチ化工程では、マクロマー合成工程で得られたマクロマー同士を連結するか、あるいはマクロマー合成工程で得られたマクロマー溶液にモノマーAおよびモノマーBを追添加することによりマルチ化する。本工程においては、一のマクロマー合成工程で得られたマクロマー同士を連結してもよいし、二以上のマクロマー合成工程で得られた複数のマクロマーを連結してもよい。なお、「マルチ化」とは、これらのいずれかの方法で、モノマーA残基とモノマーB残基とが骨格中で組成勾配を有するグラジエント構造を有する分子鎖が複数繰り返される構造を形成することを意味する。
マルチ化するマクロマー単位の数は2以上であれば良いが、連結数が多いと分子鎖の絡み合いによる引っ張り強度の向上効果が出ることから、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、6以上であることがさらに好ましい。一方、結果的にポリエステルコポリマーの分子量が過度に増大すると、粘度上昇により成形性に悪影響を及ぼす懸念があるため、マクロマー単位の数は80以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。
マクロマー単位の連結数は、マルチ化行程において使用する触媒や反応時間によって調整することができる。マクロマー同士を連結させてマルチ化を行う場合、マクロマー単位の数は、最終的に得られたポリエステルコポリマーの重量平均分子量を、マクロマーの重量平均分子量で除して求めることができる。
本発明のポリエステルコポリマーは、マクロマー単位が直線状に連結した直鎖状ポリマーでも良いし、分岐して連結した分岐鎖状ポリマーであっても良い。
直鎖状のポリエステルコポリマーは、例えば、グラジエントマクロマーの両末端に同様のグラジエントマクロマーを1分子ずつ、末端同士を介して結合させてゆくことで合成できる。
グラジエントマクロマーがヒドロキシル基とカルボキシル基を各末端に有する場合は、末端同士を縮合剤により縮合させることで、マルチ化したポリエステルコポリマーが得られる。縮合剤としては、p−トルエンスルホン酸4,4−ジメチルアミノピリジニウム、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド、塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’−カルボニルジイミダゾール、1,1’−カルボニルジ(1,2,4−トリアゾール)、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウム=クロリドn水和物、トリフルオロメタンスルホン酸(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−(2−オクトキシ−2−オキソエチル)ジメチルアンモニウム、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロリン酸塩、(7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩、クロロトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロリン酸塩、ブロモトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩、3−(ジエトキシホスホリルオキシ)−1,2,3−ベンゾトリアジン−4(3H)−オン、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩、O−(N−スクシンイミジル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩、O−(N−スクシンイミジル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩、O−(3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン−3−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩、S−(1−オキシド−2−ピリジル)−N,N,N’,N’−テトラメチルチウロニウムテトラフルオロホウ酸塩、O−[2−オキソ−1(2H)−ピリジル]−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩、{{[(1−シアノ−2−エトキシ−2−オキソエチリデン)アミノ]オキシ}−4−モルホリノメチレン}ジメチルアンモニウムヘキサフルオロリン酸塩、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロリン酸塩、1−(クロロ−1−ピロリジニルメチレン)ピロリジニウムヘキサフルオロリン酸塩、2−フルオロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロリン酸塩、フルオロ−N,N,N’,N’−テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロリン酸塩等が使用可能である。
また、重合反応がリビング性を有する場合、すなわち重合物の末端から連続して重合反応を開始しうる場合には、重合反応が終了した後のグラジエントマクロマー溶液にモノマーAおよびモノマーBを追添加する操作を繰り返すことで、マルチ化することができる。
あるいは、グラジエントマクロマー同士は、ポリマーの力学的特性に影響を与えない範囲においてリンカーを介してマルチ化しても良い。特に、複数のカルボキシル基および/または複数のヒドロキシ基を有するリンカー、例えば2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸を使用すると、リンカーが分岐点となった分岐鎖状のポリエステルコポリマーを合成することができる。
以上のような製造方法により得られるポリエステルコポリマーは、モノマーA残基とモノマーB残基とが骨格中で組成勾配を有するマクロマー単位が2つ以上連結した構造のコポリマーとなり、これは本発明のポリエステルコポリマーの好ましい態様である。本明細書においては、このような構造を便宜的に「マルチグラジエント」、マルチグラジエント構造を有するコポリマーを「マルチグラジエントコポリマー」と記載する場合がある。マルチグラジエントコポリマーとしては、モノマーA残基と前記モノマーB残基とが骨格中で組成勾配をなすグラジエント構造を有するマクロマー単位が2つ以上連結した構造を有することが好ましく、3つ以上連結した構造を有することが好ましい。
前述の通り、モノマーA残基が乳酸残基、モノマーB残基がカプロラクトン残基であるポリエステルコポリマーは、本発明の特に好ましい態様である。このようなポリエステルコポリマーは、下記のような製造方法により好ましく製造される。
まず、マクロマー合成工程において、触媒の存在下にてジラクチドとε−カプロラクトンを重合させる。ジラクチド、ε−カプロラクトン単量体は、使用前に不純物を取り除くために、好ましくは精製される。ジラクチドの精製は、たとえばナトリウムによって乾燥されたトルエンからの再結晶で可能である。ε−カプロラクトンは、たとえばCaHからN雰囲気下で減圧蒸留によって精製される。
ジラクチドとε−カプロラクトンの反応性は文献(D.W.Grijpmaetal.PolymerBulletin25,335,341)に記されているように大きく異なり、ジラクチドモノマーの方がε−カプロラクトンよりも初期重合速度が大きい。ジラクチドのVは、反応率(%)で示すと3.6%/hであり、ε−カプロラクトンのVは、0.88%/hであり、V/Vは4.1となる。そのため、ジラクチドとε−カプロラクトンを共重合して得られるマクロマーはグラジエントマクロマーとなる。
乳酸残基とカプロラクトン残基とを有するマクロマー合成工程の触媒としては、通常のゲルマニウム系、チタン系、アンチモン系、スズ系触媒等のポリエステルの重合触媒が使用可能である。このようなポリエステルの重合触媒の具体例としては、オクチル酸スズ、三フッ化アンチモン、亜鉛粉末、酸化ジブチルスズ、シュウ酸スズが挙げられる。触媒の反応系への添加方法は特に限定されるものではないが、好ましくは原料仕込み時に原料中に分散させた状態で、あるいは減圧開始時に分散処理した状態で添加する方法である。触媒の使用量は使用するモノマーの全量に対して金属原子換算で0.01〜3重量%、より好ましくは0.05〜1.5重量%である。
乳酸残基とカプロラクトン残基とを有するマクロマーは、ジラクチド、カプロラクトンおよび触媒を、撹拌機を備えた反応容器に入れ、150〜250℃、窒素気流下で反応させることにより得ることができる。水を助開始剤として使用する場合は、重合反応に先立って、90℃付近で助触媒反応を行うことが好ましい。反応時間としては2時間以上、好ましくは4時間以上、更には重合度を上げるためにはより長時間例えば8時間以上が好ましい。ただし、長時間反応を行いすぎるとポリマーの着色の問題が生じるため、3〜12時間が好ましい。
次に、マルチ化工程において、乳酸残基とカプロラクトン残基とを有するグラジエントマクロマーの末端同士を縮合反応により連結し、マルチ化する。縮合反応の反応温度は10〜100℃が好ましく、更に好ましくは20〜50℃である。反応時間としては1日以上、更に好ましくは2日以上が好ましい。ただし、長時間反応を行いすぎるとポリマーの着色の問題が生じるため、2〜4日が好ましい。
以下、具体的に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はそれらの実施例に限定的に解釈されるべきでなく、本発明の概念に接した当業者が想到し、実施可能であると観念するであろうあらゆる技術的思想およびその具体的態様が本発明に含まれるものとして理解されるべきものである。
[測定例1:ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量の測定]
機器名:Prominence(株式会社島津製作所製)
移動相:クロロホルム(HPLC用)(和光純薬工業株式会社製)
流速:1mL/min
カラム:TSKgel GMHHR−M(φ7.8mmX300mm;東ソー株式会社製)
検出器:UV(254nm)、RI
カラム、検出器温度:35℃
標準物質:ポリスチレン
精製したコポリマーをクロロホルムに溶解し、0.45μmのシリンジフィルター(DISMIC−13HP;ADVANTEC社製)を通過させて不純物等を除去した後にGPCにより測定して、コポリマーの重量平均分子量を算出した。結果を表2に示す。
[測定例2:核磁気共鳴(NMR)による各残基のモル分率およびR値の測定]
精製したコポリマーを重クロロホルムに溶解し、H−NMRにより測定してコポリマー中の乳酸モノマー残基及びカプロラクトンモノマー残基の比率をそれぞれ算出した。また、Hホモスピンデカップリング法により、乳酸のメチン基(5.10ppm付近)、カプロラクトンのαメチレン基(2.35ppm付近)、εメチレン基(4.10ppm付近)について、隣り合うモノマー残基が乳酸もしくはカプロラクトンに由来するシグナルで分離し、それぞれのピーク面積を定量した。ε−カプロラクトンの代わりにδ−バレロラクトンを用いた実施例8の精製コポリマーの場合、同様に乳酸のメチン基(5.10ppm付近)、バレロラクトンのαメチレン基(2.35ppm付近)、δメチレン基(4.10ppm付近)について、隣り合うモノマー残基が乳酸もしくはバレロラクトンに由来するシグナルで分離し、それぞれのピーク面積を定量した。それぞれの面積比から式1の[AB]を計算しR値を算出した。ここで、[AB]は乳酸残基とカプロラクトン残基もしくはバレロラクトン残基が隣り合った構造のモル分率であり、具体的にはA−A、A−B、B−A、B−Bの総数に対するA−B、B−Aの数の割合である。
機器名:JNM−EX270(日本電子株式会社製)
Hホモスピンデカップリング照射位置:1.66ppm
溶媒:重クロロホルム
測定温度:室温
[測定例3:引張試験]
精製コポリマーを減圧乾燥し、これを濃度が5重量%になるようにクロロホルムに溶解させ、その溶液をポリテトラフルオロエチレン製シャーレ上に移して、常圧、室温下で1昼夜乾燥させた。これを減圧乾燥させて、コポリマーフィルムを得た。
得られたコポリマーフィルム(厚さ約0.1mm)を短冊状(50mm×5mm)に切り出し、テンシロン万能試験機RTM−100(株式会社オリエンテック製)でJIS K6251(2010)に従い下記の条件で引張試験を測定し、ヤング率および最大点応力および破断伸度を算出した。結果を表2に示す。
機器名:テンシロン万能引張試験機RTM−100(株式会社オリエンテック製)
初期長:10mm
引張速度:500mm/min
ロードセル:50N
試験回数:5回
[測定例4:示差走査熱量(DSC)による乳酸残基の結晶化率の測定]
精製コポリマーを減圧乾燥し、これを濃度が5重量%になるようにクロロホルムに溶解させ、その溶液をポリテトラフルオロエチレン製シャーレ上に移して、常圧、室温下で1昼夜乾燥させた。これを減圧乾燥させて、コポリマーフィルムを得た。得られたコポリマーフィルムをアルミナPANに採取し、示差走査熱量計でDSC法により下記の条件で測定し、温度条件(D)から(E)の測定結果から融解熱を算出した。結晶化率は下記式から算出した。結果を表2に示す。
結晶化率=(ポリエステルコポリマーの乳酸残基単位重量当たりの融解熱)/{(乳酸残基のみからなるホモポリマーの単位重量当たり融解熱)×(ポリエステルコポリマー中の乳酸残基の重量分率)}×100
機器名:EXSTAR 6000(セイコーインスツル株式会社製)
温度条件:(A)25℃→(B)250℃(10℃/min)→(C)250℃(5min)→(D)−70℃(10℃/min)→(E)250℃(10℃/min)→(F)250℃(5min)→(G)25℃(100℃/min)
標準物質:アルミナ
[測定例5:X線回折(XRD)による結晶子サイズの測定]
精製コポリマーを減圧乾燥し、これを濃度が5重量%になるようにクロロホルムに溶解させ、その溶液をポリテトラフルオロエチレン製シャーレ上に移し、常圧、室温下で1昼夜乾燥させた。これを減圧乾燥させ、コポリマーフィルムを得た。
コポリマーフィルムを約1cm角に切断してSi無反射板上に設置し、フィルム法線方向にスキャンし、反射2θ-θスキャン法により広角X線回折を測定した。広角X線回折測定で得られた2θ-θ強度データから、ピーク分離して各ピークの半値幅からScherrerの式を用いて、結晶子サイズ(nm)を算出した。結晶子サイズの各ポリマー間比較は、ポリ乳酸α晶(100もしくは200)およびポリカプロラクトン結晶(2θ=約21°)で行った。
測定条件を以下に示す。
(1)X線回折装置:Bruker AXS社製 D8 ADVANCE(封入管型)
X線源:CuKα線
(グラファイト湾曲結晶モノクロメータ使用)
出 力:40kV、40mA
スリット系:DS=0.3o
検出器:LynxEye(高速検出器)
(2)スキャン方式:2θ-θ連続スキャン
(3)測定範囲(2θ):5〜40o
(4)ステップ幅(2θ):0.017o
(5)スキャン速度:0.5秒/ステップ
(6)半値幅の補正値:0.13
Scherrerの式
Figure 2019035357
ここで、λ:入射X 線波長(= 0.15418nm)、βe:回折ピークの半値幅(o)、βo:半値幅の補正値(= 0.13 o)、K:Scherrer 定数(= 0.9)である。
[実施例1]
50.0gの−ラクチド(PURASORB L;PURAC社製)と、38.5mLのεーカプロラクトン(和光純薬工業株式会社製)とを、モノマーとしてセパラブルフラスコに採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、14.5mLのトルエン(超脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解した触媒である0.81gのオクチル酸スズ(II)(和光純薬工業株式会社製)、助開始剤としてイオン交換水を表1のモノマー/助開始剤比となるよう添加し、表1の「温度1」記載の温度、「時間1」記載の温度で助触媒反応を行った後、「温度2」記載の温度で、「時間2」記載の時間、共重合反応させて、粗コポリマーを得た。
得られた粗コポリマーを100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1400mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を3回繰り返し、沈殿物を70℃で減圧乾燥してマクロマーを得た。
当該マクロマー65gと、触媒である2.4gのp−トルエンスルホン酸4,4−ジメチルアミノピリジニウム(合成品)と、0.86gの4,4−ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業株式会社製)を採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、表1の濃度となるようジクロロメタン(脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解し、40mLのジクロロメタンに溶解した縮合剤である12gのジシクロヘキシルカルボジイミド(シグマアルドリッチ社製)を添加し、室温で2日間縮合重合させた。
反応混合物に250mLのクロロホルムを添加し、攪拌状態にある4000mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この沈殿物を400mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある4000mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を2回繰り返し、沈殿物として精製ポリエステルコポリマーを得た。
[実施例2、3、6、7]
50.0gの−ラクチド(PURASORB L;PURAC社製)と、38.5mLのεーカプロラクトン(和光純薬工業株式会社製)とを、モノマーとしてセパラブルフラスコに採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、14.5mLのトルエン(超脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解した触媒である0.81gのオクチル酸スズ(II)(和光純薬工業株式会社製)、助開始剤としてイオン交換水を表1のモノマー/助開始剤比となるよう添加し、表1の「温度1」記載の温度、「時間1」記載の温度で助触媒反応を行ったあと、「温度2」記載の温度で、「時間2」記載の時間、共重合反応させて、粗コポリマーを得た。
得られた粗コポリマーを100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1400mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を3回繰り返し、沈殿物を70℃で減圧乾燥してマクロマーを得た。
当該マクロマー7.5gと、触媒である0.28gのp−トルエンスルホン酸4,4−ジメチルアミノピリジニウム(合成品)と、0.10gの4,4−ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業株式会社製)を採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、表1の濃度となるようジクロロメタン(脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解し、5mLのジクロロメタンに溶解した縮合剤である1.38gのジシクロヘキシルカルボジイミド(シグマアルドリッチ社製)を添加し、室温で2日間縮合重合させた。
反応混合物に30mLのクロロホルムを添加し、攪拌状態にある500mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この沈殿物を50mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある500mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を2回繰り返し、沈殿物として精製ポリエステルコポリマーを得た。
[実施例4]
50.0gの−ラクチド(PURASORB L;PURAC社製)と、38.5mLのεーカプロラクトン(和光純薬工業株式会社製)とを、モノマーとしてセパラブルフラスコに採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、14.5mLのトルエン(超脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解した触媒である0.81gのオクチル酸スズ(II)(和光純薬工業株式会社製)、助開始剤としてイオン交換水を表1のモノマー/助開始剤比となるよう添加し、表1の「温度1」記載の温度、「時間1」記載の温度で助触媒反応を行ったあと、「温度2」記載の温度で、「時間2」記載の時間、共重合反応させて、粗コポリマーを得た。
得られた粗コポリマーを100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1400mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を3回繰り返し、沈殿物を70℃で減圧乾燥してマクロマーを得た。
当該マクロマー30gと、触媒である1.12gのp−トルエンスルホン酸4,4−ジメチルアミノピリジニウム(合成品)と、0.40gの4,4−ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業株式会社製)を採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、表1の濃度となるようジクロロメタン(脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解し、20mLのジクロロメタンに溶解した縮合剤である5.52gのジシクロヘキシルカルボジイミド(シグマアルドリッチ社製)を添加し、室温で2日間縮合重合させた。
反応混合物に120mLのクロロホルムを添加し、攪拌状態にある2000mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この沈殿物を200mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある2000mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を2回繰り返し、沈殿物として精製ポリエステルコポリマーを得た。
[実施例5]
助開始剤(リンカー)として2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸を表1のモノマー/助開始剤比となるよう添加し、助触媒反応を行わずに150℃で6時間共重合反応させた以外は実施例2、3と同様にして、精製ポリエステルコポリマーを得た。
[比較例1:グラジエントポリマーの製造法]
50.0gの−ラクチド(PURASORB L;PURAC社製)と、38.5mLのεーカプロラクトン(和光純薬工業株式会社製)とを、モノマーとしてセパラブルフラスコに採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、14.5mLのトルエン(超脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解した触媒である0.81gのオクチル酸スズ(II)(和光純薬工業株式会社製)を添加、「温度2」記載の温度、「時間2」記載の温度で共重合反応させて、粗コポリマーを得た。
得られた粗コポリマーを100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1400mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を3回繰り返し、沈殿物としてグラジエントコポリマーを得た。これを70℃で減圧乾燥した。
[比較例2:ブロックコポリマーの製造法]
50.0gの−ラクチド(PURASORB L;PURAC社製)を、モノマーとしてセパラブルフラスコに採取した。これをアルゴン雰囲気下とし、14.5mLのトルエン(超脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解した触媒である0.81gのオクチル酸スズ(II)(和光純薬工業株式会社製)を添加、温度2記載の温度、時間2記載の温度で重合反応させた。これに、38.5mLのεーカプロラクトン(和光純薬工業株式会社製)を添加し、さらに表1の「温度3」記載の温度、「時間3」記載の温度で重合反応させ、粗コポリマーを得た。
得られた粗コポリマーを100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1400mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を3回繰り返し、沈殿物を70℃で減圧乾燥してブロックコポリマーを得た。
[比較例3、4:マルチブロックコポリマーの製造法]
50.0gの−ラクチド(PURASORB L;PURAC社製)をモノマーとしてセパラブルフラスコに採取した。これをアルゴン雰囲気下とし、14.5mLのトルエン(超脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解した触媒である0.81gのオクチル酸スズ(II)(和光純薬工業株式会社製)、助開始剤としてイオン交換水を表1のモノマー/助開始剤比となるよう添加し、表1の「温度1」記載の温度、「時間1」記載の温度で助触媒反応を行ったあと、「温度2」記載の温度、「時間2」記載の温度で重合反応させた。
これに、38.5mLのεーカプロラクトン(和光純薬工業株式会社製)を添加し、さらに表1の「温度3」記載の温度、「時間3」記載の温度で重合反応させ、粗コポリマーを得た。
得られた粗コポリマーを100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1400mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を3回繰り返し、沈殿物を70℃で減圧乾燥して精製コポリマーを得た。
当該精製コポリマー7.5gと、触媒である0.28gのp−トルエンスルホン酸4,4−ジメチルアミノピリジニウム(合成品)と、0.10gの4,4−ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業株式会社製)を採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、表1の濃度となるようジクロロメタン(脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解し、5mLのジクロロメタンに溶解した縮合剤である1.38gのジシクロヘキシルカルボジイミド(シグマアルドリッチ社製)を添加し、室温で2日間縮合重合させた。
反応混合物に30mLのクロロホルムを添加し、攪拌状態にある500mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この沈殿物を50mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある500mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を2回繰り返し、沈殿物すなわち精製コポリマーを得た。
各実施例、比較例の製造条件を表1に、製造した各コポリマーの構成および各種評価結果表2に示す。
Figure 2019035357
Figure 2019035357
実施例1、2、3で製造したマルチグラジエントコポリマーを引張試験することにより得られた伸度−応力曲線を図1に示す。
比較例1で製造したグラジエントコポリマーを引張試験することにより得られた伸度−応力曲線を図2に示す。
比較例2で製造したブロックコポリマーを引張試験することにより得られた伸度−応力曲線を図3に示す。
比較例3、4で製造したマルチブロックコポリマーを引張試験することにより得られた伸度−応力曲線を図4に示す。
[実施例8]
25.0gの−ラクチド(PURASORB L;PURAC社製)と、15.6mLのδ−バレロラクトン(東京化成工業株式会社製)とを、モノマーとしてセパラブルフラスコに採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、7.25mLのトルエン(超脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解した触媒である0.14gのオクチル酸スズ(II)(和光純薬工業株式会社製)、助開始剤としてイオン交換水を45μL添加し、90℃で1時間、助触媒反応を行った後、130℃で24時間、共重合反応させて、粗コポリマーを得た。
得られた粗コポリマーを50mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある700mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を3回繰り返し、沈殿物を60℃で減圧乾燥してマクロマーを得た。
当該マクロマー7.54gと、触媒である0.28gのp−トルエンスルホン酸4,4−ジメチルアミノピリジニウム(合成品)と、0.12gの4,4−ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業株式会社製)を採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、25mLジクロロメタン(脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解し、5mLのジクロロメタンに溶解した縮合剤である1.41gのジシクロヘキシルカルボジイミド(シグマアルドリッチ社製)を添加し、室温で2日間縮合重合させた。
反応混合物に20mLのクロロホルムを添加し、攪拌状態にある500mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この沈殿物を30mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある400mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を2回繰り返し、沈殿物として精製ポリエステルコポリマーを得た。
実施例8で製造したマルチブロックコポリマーを引張試験することにより得られた伸度−応力曲線を図5に、各種評価結果を表3に示す。
Figure 2019035357
本発明のポリエステルコポリマーの具体的な用途としては、繊維では不織布等また容器としては使い捨てのトイレタリー製品や化粧品、フィルムとして包装用フィルム、農業用マルチフィルム、テープ類等の利用が考えられる。他にも医療用途として、縫合糸、人工骨、人工皮膚、創傷被覆材、マイクロカプセル等のDDS分野、組織や臓器の再生用足場材料などが考えられる。さらに、その他トナーや熱転写用インキのバインダー等の利用が考えられるが、これらに限定されるものではない。

Claims (15)

  1. 2種類のエステル結合形成性モノマー残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーであって、前記2種類のエステル結合形成性モノマーをそれぞれ「モノマーA」、「モノマーB」とした場合に、下記(1)および(2)を満たすポリエステルコポリマー。
    (1)下記式
    R=[AB]/(2[A][B])×100
    [A]:ポリエステルコポリマー中の、モノマーA残基のモル分率
    [B]:ポリエステルコポリマー中の、モノマーB残基のモル分率
    [AB]:ポリエステルコポリマー中の、モノマーA残基とモノマーB残基が隣り合った構造(A−B、およびB−A)のモル分率
    で表されるR値が0.45以上0.99以下である。
    (2)モノマーA残基またはモノマーB残基の少なくとも一方の結晶化率が14%未満である。
  2. 前記モノマーAおよび前記モノマーBを等モルで共重合させた場合の初期重合速度が相対的に大きいモノマーを「モノマーA」、小さいモノマーを「モノマーB」として、それらを等モルで共重合させた場合の初期重合速度をそれぞれV、Vとしたとき、1.1≦V/V≦40を満たす、請求項1に記載のポリエステルコポリマー。
  3. 前記モノマーA残基と前記モノマーB残基とが骨格中で組成勾配をなすグラジエント構造を有するマクロマー単位が2つ以上連結した構造を有する、請求項1または2に記載のポリエステルコポリマー。
  4. 重量平均分子量が60,000以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルコポリマー。
  5. 前記2種類のエステル結合形成性モノマーが、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンおよびラクチドからなる群より選択される化合物である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルコポリマー。
  6. 前記モノマーA残基が乳酸残基、前記モノマーB残基がカプロラクトン残基またはバレロラクトン残基である、請求項5に記載のポリエステルコポリマー。
  7. ポリ乳酸α晶の結晶子サイズが24nm以下である、請求項6に記載のポリエステルコポリマー。
  8. ポリカプロラクトンの結晶子サイズが30nm以下である、請求項6または7に記載のポリエステルコポリマー。
  9. 生分解性または生体吸収性を有する、請求項1〜8のいずれかに記載のポリエステルコポリマー。
  10. ヤング率が6.3MPa以下であり、かつ最大点応力が5MPa以上である、請求項1〜9のいずれかに記載のポリエステルコポリマー。
  11. 2種類のエステル結合形成性モノマーであるモノマーAおよびモノマーBを、重合完了時においてモノマーA残基とモノマーB残基の和が全残基の50モル%以上、かつモノマーA残基とモノマーB残基がそれぞれ全残基の20モル%以上となるよう配合して重合させるマクロマー合成工程;
    前記マクロマー合成工程で得られたマクロマー同士を連結するか、あるいは前記マクロマー合成工程で得られたマクロマー溶液に前記モノマーAおよび前記モノマーBを追添加することによりマルチ化するマルチ化工程;
    を有するポリエステルコポリマーの製造方法。
  12. 前記マクロマー合成工程で得られるマクロマーの、下記式
    R=[AB]/(2[A][B])×100
    [A]:マクロマー中の、モノマーA残基のモル分率
    [B]:マクロマー中の、モノマーB残基のモル分率
    [AB]:マクロマー中の、モノマーA残基とモノマーB残基が隣り合った構造(A−B、およびB−A)のモル分率
    で表されるR値が0.45以上0.99以下である、請求項11に記載のポリエステルコポリマーの製造方法。
  13. 前記マクロマー合成工程で得られるマクロマーの、モノマーA残基またはモノマーB残基の少なくとも一方の結晶化率が14%未満である、請求項11または12に記載のポリエステルコポリマーの製造方法。
  14. 前記2種類のエステル結合形成性モノマーが、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンおよびラクチドからなる群より選択される化合物である、請求項11〜13のいずれかに記載のポリエステルコポリマーの製造方法。
  15. 前記モノマーA残基が乳酸残基、前記モノマーB残基がカプロラクトン残基またはバレロラクトン残基である、請求項14に記載のポリエステルコポリマーの製造方法。
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