JP2021192779A - ステント - Google Patents

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泰祐 古川
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Abstract

【課題】生体追随性に優れた合併症の少ない、より安全性の高い生体吸収性ステントを提供する。【解決手段】生体吸収性ポリエステルを含み、式(1)で定義される復元性が80%以上のステント。復元性(%)=((L0×2−L1)/L0)×100 式(1)L0:初期長L1:ステントの最も長さのある方向に引張り応力を加えて、初期長に対して100%の引張ひずみを生じさせる操作を10回繰り返した後の長さ【選択図】なし

Description

本発明は、生分解性または生体吸収性を発現し得るポリエステルを含むステントに関する。
ステントは、径方向に拡張可能なインプラント医療機器であり、様々な体腔または脈管(例えば血管系、食道、胃腸管、大腸および小腸、胆管、膵管、肺管、尿管、鼻腔および気管など)の内側に移植される。体腔または脈管が狭窄した場合、内腔を確保するためにステントが狭窄部分に留置される。このようなステントは、体腔または脈管に長期にわたって留置されるものや、予め所定の期間のみ内腔の開通性を維持した後に体内から回収されて除去されるものがあり、例えば、非特許文献1において議論されている。これらの場合、金属ステントとは対照的に、体腔内または脈管内でのステントの存在を限られた期間とするために、高分子材料、特に生体吸収性の高分子材料を用いて治療したいというニーズがある。
このような生体吸収性材の高分子材料として、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリジオキサン、あるいはこれらの共重合体である生体吸収性ポリエステルが注目されている。
例えば、特許文献1や2には、ポリ乳酸やポリカプロラクトンからなる生体吸収性ステントが開示されているが、生体吸収性ステントを開発する際に克服すべき課題は多く残されている。
特許第6017617号公報 特許第6505438号公報
YueqiZhu、etal.,MaterialsToday2017、 20、516−529
体腔内または脈管内の動きによって屈曲、延伸、圧迫など複数の物理作用が働く環境の中でステントとして機能することを可能とするため、高い生体追従性を有する生体吸収性ステントが求められている。しかし、特許文献1や2、非特許文献1に記載の生体吸収性ステントは、硬質であるがゆえに生体追随性に乏しく、留置箇所から移動、脱落したり、却って周辺組織を傷つけたりする場合があった。
そこで本発明は、生体吸収性ポリエステルを含み、かつ生体追随性に優れたステントを提供することを課題とする。
上記課題を解決するための本発明は、以下である。
生体吸収性ポリエステルを含み、式(1)で定義される復元性が80%以上のステント。
復元性(%)=((L×2−L)/L)×100 式(1)
:初期長
:ステントの最も長さのある方向に引張り応力を加えて、初期長に対して100%の引張ひずみを生じさせる操作を10回繰り返した後の長さ
本発明のステントを用いることで、合併症の少ないより安全性の高いステントを提供することができる。
本発明のステントは、生体吸収性ポリエステルを含み、式(1)で定義される、復元性が80%以上であるステントである。
復元性(%)=((L×2−L)/L)×100 式(1)
:初期長
:ステントの最も長さのある方向に引張り応力を加えて、初期長に対して100%の引張ひずみを生じさせる操作を10回繰り返した後の長さ
具体的には、後述する測定例3に記載の引張試験により測定するものとする。

本発明のステントは、JIS K6251(2017)に従った測定によるヤング率が0.1MPa以上15MPa以下であることが好ましい。この測定方法は、後述する測定例3に記載のとおりである。ステントは、様々な体腔または脈管に留置されるものであるため、ステントのヤング率が高すぎると、屈折や湾曲などの変形によって外力がステントに加わった場合に、留置箇所周辺の組織を圧迫、擦傷、穿刺などして傷つける可能性がある。そのため、ステントのヤング率は、15MPa以下とするのが好ましい。一方、ステントのヤング率が低すぎると、屈折や湾曲などの変形によって外力がステントに加わると形状を維持できなくなるため、ヤング率は0.1MPa以上が好ましく、0.5MPa以上がより好ましく、1.0MPa以上であることがさらにより好ましい。
本発明のステントは、JIS K6251(2017)に従った測定による引張強さが5MPa以上であることが好ましい。この測定方法は、後述する測定例3に記載のとおりである。引張強さは、ステントの耐破断強度に直結する因子である。そのためステントの引張強さは5MPa以上であることが好ましく、屈折や湾曲などのより激しい変形が生じる部位に用いるステントでは、引張強さは20MPa以上であることが好ましい。ステントの引張強さは大きいほど好ましく、特に上限はないが、現実的には500MPa程度が上限と考えられる。
本発明のステントは、JIS K6251(2017)に従った測定による破断伸度が200%以上であることが好ましい。この測定方法は、後述する測定例3に記載のとおりである。破断伸度はステントの耐破断強度を示す因子である。体腔内または脈管内の動きによって屈曲、延伸、圧迫など複数の物理作用が働く環境の中で用いることを想定すると、ステントの破断伸度は、200%以上が好ましく、より激しい変形が生じる部位に用いるステントでは、破断伸度は500%以上であることがより好ましく、1000%以上であることがさらにより好ましい。ステントの破断伸度は大きいほど好ましく、特に上限はないが、現実的には2500%程度が上限と考えられる。

また、本発明のステントは、様々な体腔または脈管に留置して用いられるものであるため、体腔内または脈管内の動きによって屈曲、延伸、圧迫など複数の物理作用を受けて変形しても、元の形状に戻る復元性を持つことが必要である。そのため本発明のステントは、以下の式(1)で定義される復元性が80%以上であることが重要である。なお復元性は、後述の測定例3のように下記式(1)から定量的に評価することができる。
復元性(%)=((L×2−L)/L)×100 式(1)
:初期長
:ステントの最も長さのある方向に引張り応力を加えて、初期長に対して100%の引張ひずみを生じさせる操作を10回繰り返した後の長さ
ステントの復元性が100%に近いほど、ステントが果たすべき機能が変形によって失われにくいことを示す。ステントは、体腔内または脈管内の動きによって屈曲、延伸、圧迫など複数の物理作用を受けるため、本発明のステントは復元性が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらにより好ましい。ステントの復元性は大きいほど好ましく、その上限は100%である。

本発明のステントは、生体吸収性ポリエステルを含む。本発明のステントは、生体吸収性ポリエステルを含みさえすれば、その含有量は限定されないが、ステント全体100重量%に対して生体吸収性ポリエステルを50重量%以上含むことが好ましく、80重量%以上含むことがより好ましい。生体に適用した際に完全に消失することが求められる場合には、生体吸収性ポリエステルのみからなる、つまりステント100重量%に対して生体吸収性ポリエステルを100重量%含むことが特に好ましく、さらに、本発明において要求される80%以上の復元性を有する生体吸収性に優れたステント、すなわち、高い引張強さを維持しつつ低いヤング率を発現することにより、生体追従性に優れたステントとするため、以下に説明するような生体吸収性ポリエステルを上記程度に含むことが好ましい。
ここで、生体吸収性とは、生体内外に留置された後、加水分解反応や酵素反応によって自然に分解し、その分解物が代謝または排泄されることによって消失する性質である。このような生体吸収性ポリエステルとしては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸(D、L、DL体)、ポリε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシブチレート吉草酸、ポリオルソエステル、ポリヒドロキシバレリル酸、ポリヒドロキシヘキサン酸、ポリヒドロキシブタン酸、ポリコハク酸ブチレン、ポリブチレンサクシネート、ポリテレフタール酸トリメチレン、ポリヒドロキシアルカノエート、およびこれらの共重合体からなる群より選択されるポリエステルが挙げられる。なかでも、本発明のステントは、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸の共重合体、ポリグリコール酸とポリε−カプロラクトンとの共重合体、のいずれかを含むことがさらに好ましい。
本発明のステント中の生体吸収性ポリエステルのより好ましい態様は、生体吸収性ポリエステルが、2種類のエステル結合形成性モノマー残基を主構成単位とするポリエステルコポリマー(以下、このような生体吸収性ポリエステルが2種類のエステル結合形成性モノマー残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーについて、単に「本発明のポリエステルコポリマー」と記す。)を含み、前記エステル結合性モノマーをモノマーA、モノマーBとすると、モノマーA及びモノマーBが、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸、カプロラクトン、ジオキセパノン、エチレンオキザラート、ジオキサノン、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン、トリメチレンカーボネート、β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、ジラクチド、グリコリド、及びテトラメチルグリコリドからなる群より選ばれる化合物であることが好ましい。以下、これについて説明する。

本発明のポリエステルコポリマーの含有量は、ステント中の生体吸収性ポリエステル100重量%中に、50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、95重量%以上であることがさらに好ましく、100重量%であることが特に好ましい。このような含有量とすることで、体腔内または脈管内の動きによって屈曲、延伸、圧迫など複数の物理作用を受けて変形しても、元の形状に戻る復元性を持つことができる。
「エステル結合形成性モノマー」とは、重合後、モノマー単位がエステル結合で連結しているポリマー、すなわちポリエステルを生じるモノマーを言う。
エステル結合形成性モノマーとしては、ヒドロキシカルボン酸を用いることが好ましい。また、ヒドロキシカルボン酸のヒドロキシ基とカルボキシル基が分子内脱水縮合した環状化合物であるラクトンや、2分子のヒドロキシカルボン酸の互いのヒドロキシ基とカルボキシル基が脱水縮合した環状化合物であるラクチドも好ましく用いることができる。
ヒドロキシカルボン酸としては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を用いることが特に好ましい。脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸等が挙げられ、特に、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸が好ましい。
乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸、及びそれらの混合体を用いることができるが、得られるポリマーの物性や生体適合性の面からは、L−乳酸を用いることが好ましい。モノマーとして混合体を用いる場合、L体の含有率が85%以上であることが好ましく、95%以上である方がより好ましい。
ラクトンとしては、カプロラクトン、ジオキセパノン、エチレンオキザラート、ジオキサノン、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン、トリメチレンカーボネート、β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ピバロラクトン等を用いることができ、特にカプロラクトン、δ−バレロラクトンが好ましい。
ラクチドとしては、乳酸2分子が脱水縮合したジラクチドや、グリコール酸2分子が脱水縮合したグリコリド、テトラメチルグリコリドを用いることができる。
エステル結合形成性モノマーとしては、以上例示したモノマーの誘導体を用いることもできる。
これらのなかでも本発明は、モノマーA及びモノマーBが、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸、カプロラクトン、ジオキセパノン、エチレンオキザラート、ジオキサノン、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン、トリメチレンカーボネート、β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、ジラクチド、グリコリド、及びテトラメチルグリコリドからなる群より選ばれる化合物であることがより好ましい。そしてモノマーAは、乳酸又はグリコール酸であることが特に好ましく、モノマーBは、カプロラクトン又はδ−バレロラクトンであることが特に好ましい。

本明細書中では、2種類のエステル結合性モノマーのうち、そのモノマー残基のみで構成されるホモポリマーの結晶性が高いものをモノマーA、結晶性の低いものをモノマーBとする。ホモポリマーの結晶性は、次のように示差走査熱量計(DSC)を用いて測定することができる。
ホモポリマーをアルミニウムPANに採取し、示差走査熱量計(EXTAR 6000;セイコーインスツル株式会社製)でDSC法により下記の条件Aで測定し、融解熱を算出する。単位重量当たりの融解熱が高いほど、結晶性が高いことを意味する。例えばポリ乳酸の単位重量当たりの融解熱を上記方法で求めると、93J/gである。
(条件A)
機器名:EXSTAR 6000(セイコーインスツル株式会社製)
温度条件:25℃→250℃(10℃/min)
標準物質:α−アルミナ

本発明においては、生体吸収性ポリエステルが2種類のエステル結合形成性モノマー残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーであって、エステル結合性モノマーをモノマーA、モノマーBとした場合、モノマーA残基とモノマーB残基の結晶化率がともに14%未満であることが好ましい。当該結晶化率が14%未満であれば、ヤング率の上昇が抑えられ、ステントに適したポリエステルコポリマーを得ることができる。モノマーA残基とモノマーB残基結晶化率は10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
ここで言うモノマー残基の結晶化率とは、あるモノマー残基のみからなるホモポリマーの単位重量当たりの融解熱と本発明のポリエステルコポリマー中の当該モノマー残基の重量分率の積に対する、本発明のポリエステルコポリマー中の当該モノマー残基の単位重量当たりの融解熱の割合である。すなわち、モノマーA残基の結晶化率とは、モノマーAのみからなるホモポリマーの単位重量あたりの融解熱と本発明のポリエステルコポリマー中のモノマーA残基の重量分率の積に対する、ポリエステルコポリマー中のモノマーA残基の単位重量当たりの融解熱の割合である。モノマーA残基およびモノマーB残基の結晶化率は、それぞれ本発明のポリエステルコポリマーのモノマーA残基もしくはモノマーB残基の中で結晶構造を形成している割合を示す。
特に、モノマーA残基が乳酸残基、モノマーB残基がカプロラクトン残基である場合には、乳酸残基、カプロラクトン残基の結晶化率は14%未満であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。結晶化率は、具体的に下記の方法で求めるものとする。
ポリエステルコポリマーを濃度が5重量%になるようにクロロホルムに溶解させ、その溶液を“テフロン(登録商標)”製シャーレ上に移して、常圧、室温下で1昼夜乾燥させる。これを減圧乾燥させて、ポリエステルコポリマーフィルムを得た。得られたポリエステルコポリマーフィルムをアルミナPANに採取し、示差走査熱量計でDSC法により下記の条件で測定し、温度条件(D)から(E)の測定結果から融解熱を算出する。結晶化率は下記式から算出する。
乳酸残基の結晶化率=(ポリエステルコポリマーの乳酸残基の単位重量当たりの融解熱)/{(乳酸残基のみからなるホモポリマーの単位重量当たり融解熱)×(ポリエステルコポリマー中の乳酸残基の重量分率)}×100(%)
カプロラクトン残基の結晶化率=(ポリエステルコポリマーのカプロラクトン残基の単位重量当たりの融解熱)/{(カプロラクトン残基のみからなるホモポリマーの単位重量当たり融解熱)×(ポリエステルコポリマー中のカプロラクトン残基の重量分率)}×100(%)
機器名:EXSTAR 6000(セイコーインスツル株式会社製)
温度条件:(A)25℃→(B)250℃(10℃/min)→(C)250℃(5min)→(D)−70℃(10℃/min)→(E)250℃(10℃/min)→(F)250℃(5min)→(G)25℃(100℃/min)
標準物質:アルミナ

本明細書において、「モノマー残基」とは、原則として、当該モノマーを含む2種以上のモノマーを重合して得られたコポリマーの化学構造中における、当該モノマーに由来する化学構造の反復単位を言う。例えば、乳酸(CHCH(OH)COOH)と、カプロラクトン(ε-カプロラクトン:下記式)
Figure 2021192779
とを重合して、乳酸とカプロラクトンのコポリマーとした場合、
Figure 2021192779
が乳酸モノマー残基であり、下記式で表される単位がカプロラクトンモノマー残基である。
Figure 2021192779
なお、例外として、モノマーとしてラクチド等の2量体を用いる場合には、「モノマー残基」は当該2量体に由来する2回繰り返し構造のうちの1つを意味するものとする。例えば、ジラクチド(L−(−)−ラクチド:下記式)
Figure 2021192779
とカプロラクトンとを重合した場合、コポリマーの化学構造には、ジラクチド残基として上記式(R1)に示される構造が2回繰り返された構造が形成されるが、この場合にはそのうち1つの乳酸単位を「モノマー残基」と捉え、ジラクチドに由来して「モノマー残基」、すなわち乳酸残基が2つ形成されたと考えるものとする。
生体吸収性ポリエステルが2種類のエステル結合形成性モノマー残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーである場合、2種類のモノマー残基を「主構成単位」とする、とは、当該2種類のモノマー残基数の和が、その他のモノマー残基を含めたポリマー全体に含まれる全てのモノマー残基数の和を100%とした場合に50モル%以上であり、かつそれぞれの残基が、ポリマー全体に含まれる全てのモノマー残基数の和を100%とした場合に20モル%以上であることを意味する。例えば、モノマーA残基とモノマーB残基とを主構成単位とする、とは、モノマーA残基とモノマーB残基の残基数の和が、ポリマー全体に含まれる全てのモノマー残基数の和を100%とした場合に50モル%以上であり、かつモノマーA残基が20モル%以上であり、かつモノマーB残基が20モル%以上であることを意味する。ここで、モノマーA残基、モノマーB残基、その他の残基のモル分率は、核磁気共鳴(NMR)測定により、それぞれの残基に由来するシグナルの面積値より決定できる。例えば、モノマーA残基が乳酸残基、モノマーB残基がカプロラクトン残基である場合には、後述する測定例1に記載の方法で測定することができる。
モノマーA残基とモノマーB残基の和は、前述の定義から、その他のモノマー残基を含めたポリマー全体に含まれる全てのモノマー残基数の和を100%とした場合に50モル%以上であり、75モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。また、モノマーA残基およびモノマーB残基は、同じく前述の定義からそれぞれ20モル%以上であり、30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましい。モノマーA残基およびモノマーB残基の和がポリマー全体の100%である、すなわちモノマーAおよびモノマーBのみからなるポリマーは、特に好ましい態様として挙げられる。
なお、本発明の効果を損なわない限りにおいて、主構成単位を構成する2種類のエステル結合形成性モノマーと共重合し得る別のモノマーを更に共重合させることもできる。このようなモノマーとしては、前述のエステル結合形成性モノマーのうちのさらに別のものを用いることができる。
また、リンカーとして機能するモノマーを共重合させることも好ましい態様である。リンカーとして機能するモノマーとしては、主構成単位を構成する2種類のエステル結合形成性モノマーとは別のヒドロキシカルボン酸や、ジアルコール、ジカルボン酸、アミノ酸、ジアミン、ジイソシアネート、ジエポキシド等が挙げられる。
なお、本明細書においては、エステル結合形成性モノマー以外のモノマーを構成単位に含むことにより、一部にエステル結合以外の結合で連結された構成単位を含むコポリマーも含めて「ポリエステルコポリマー」と表記するものとする。
本発明のポリエステルコポリマーは、生分解性あるいは生体吸収性を有することが好ましい。当業者は、上記例示したモノマーを適宜組み合わせ、また本発明に規定する範囲内においてモノマーの量比を調整することにより、用途に応じて適当な生分解性あるいは生体吸収性を発現するコポリマーを合成することができるであろう。
本発明のポリエステルコポリマーにおいて、モノマーA残基とモノマーB残基のモル比は、一方のモノマーが過剰に存在するとホモポリマー様の性質に近づくことから、モノマーA残基と前記モノマーB残基の全モル数100%に対する、モノマーA残基のモル比率が20〜80%であることが好ましく、30〜70%がより好ましく、40〜60%がさらに好ましい。

本発明のステントは、そこに含まれる生体吸収性ポリエステルが2種類のエステル結合形成性モノマー残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーであって、エステル結合形成性モノマーをモノマーA、モノマーBとした場合、ポリエステルコポリマーは、下記式で表されるR値が0.45以上0.85以下であることが好ましい。
R=[AB]/(2[A][B])×100
[A]:ポリエステルコポリマー中の、モノマーA残基のモル分率(%)
[B]:ポリエステルコポリマー中の、モノマーB残基のモル分率(%)
[AB]:ポリエステルコポリマー中の、モノマーA残基とモノマーB残基が隣り合った構造(A−B、およびB−A)のモル分率(%)
R値は、2種類のエステル結合形成性モノマー残基、すなわちモノマーA残基およびモノマーB残基を主構成単位とするコポリマーにおける、モノマー残基の配列のランダム性を示す指標として用いられる。例えば、完全にモノマー配列がランダムなランダムコポリマーでは、R値は1となる。また、ブロックコポリマーではR値は0〜0.44である。
R値は核磁気共鳴(NMR)測定によって、隣り合う二つのモノマーの組み合わせ(A−A、B−B、A−B、B−A)の割合を定量することで決定でき、具体的には後述する測定例1に記載の方法で測定するものとする。
高い生体追従性を達成するためには、R値が0.45以上0.85以下であることが好ましく、0.50以上0.85以下であることがより好ましい。

本発明のポリエステルコポリマーの重量平均分子量は、結晶変化率を好適な範囲に制御するため、100,000〜1,000,000が好ましく120,000〜750,000がより好ましく、150,000〜500,000がさらに好ましい。ポリエステルコポリマーの重量平均分子量は、例えば測定例2に記載の方法で測定することができる。
本発明のポリエステルコポリマーは、一例として、2種類のエステル結合形成性モノマーであるモノマーAおよびモノマーBを、重合完了時においてモノマーA残基とモノマーB残基の和が全残基の50モル%以上、かつモノマーA残基とモノマーB残基がそれぞれ全残基の20モル%以上となるよう配合して重合させるマクロマー合成工程;
前記マクロマー合成工程で得られたマクロマー同士を連結するか、あるいは前記マクロマー合成工程で得られたマクロマー溶液に前記モノマーAおよび前記モノマーBを追添加することによりマルチ化するマルチ化工程;
を有するポリエステルコポリマーの製造方法により製造することができる。
〔マクロマー合成工程〕
マクロマー合成工程では、モノマーAとモノマーBを、理論上重合完了時においてモノマーA残基とモノマーB残基の和が全残基の50モル%以上、かつモノマーA残基とモノマーB残基がそれぞれ全残基の20モル%以上となるよう配合して重合を行う。これにより、モノマーA残基とモノマーB残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーが得られるが、本製造方法においてはさらに後述するマルチ化工程を行うため、本明細書においては、本工程により得られるポリエステルコポリマーを「マクロマー」と表現する。
エステル結合形成性モノマーとしては、前述のものと同様のものを用いることができ、好ましい組み合わせ等についても前述の記載に準じる。
2種類のエステル結合形成性モノマー残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーを構成するモノマー残基の分布のランダム性は、重合時のモノマーの反応性の違いにより変化する。すなわち、重合時に、当該2種類のモノマーのうち、一方のモノマーの後に、同じモノマーと他方のモノマーが同確率で結合すれば、モノマー残基が完全にランダムに分布したコポリマーが得られる。しかし、一方のモノマーの後にいずれかのモノマーが結合し易い傾向がある場合は、モノマー残基の分布に偏りのあるグラジエントコポリマーが得られる。得られたグラジエントコポリマーは、その分子鎖にそって重合開始末端から重合終了末端にかけてモノマー残基の組成が連続的に変化している。
ここで、モノマーAをモノマーBよりも初期重合速度が大きいモノマーであるとすると、マクロマー合成工程においてモノマーAとモノマーBとを共重合させた場合、モノマーAの後にモノマーAが結合し易い。そのため、合成されたマクロマーにおいては、重合開始末端から重合終了末端にかけてモノマーA単位の割合が徐々に減少する組成勾配をなすグラジエント構造が形成される。すなわち、本工程で得られるマクロマーは、モノマーAとモノマーBとの初期重合速度差により、モノマーA残基とモノマーB残基とが骨格中で組成勾配をなすグラジエント構造を有するマクロマーとなる。すなわち、初期重合速度の異なるモノマーAとモノマーBを本工程で用いることにより、骨格中で組成勾配をなすグラジエント構造を有するマクロマーを得ることができる。このようなマクロマーを、本明細書においては「グラジエントマクロマー」と呼ぶ場合がある。
マクロマー合成工程においては、このようなグラジエント構造を実現するために、開始末端から一方向に起こる重合反応によりマクロマーを合成することが望ましい。このような合成反応としては、開環重合、リビング重合を利用することが好ましい例として挙げられる。
本工程で得られるマクロマーは、最終的に前述のR値を満たすポリエステルコポリマーを製造しやすくするため、ポリエステルコポリマーと同様のR値を有するもの、すなわち、下記式
R=[AB]/(2[A][B])×100
[A]:マクロマー中の、モノマーA残基のモル分率(%)
[B]:マクロマー中の、モノマーB残基のモル分率(%)
[AB]:マクロマー中の、モノマーA残基とモノマーB残基が隣り合った構造(A−B、およびB−A)のモル分率(%)
で表されるR値が0.45以上0.85以下であることが好ましい。
マクロマー合成工程で合成されるマクロマーの重量平均分子量は、好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上である。また、結晶性を抑え柔軟性を保つためには150,000以下であることが好ましく、100,000以下であることがより好ましい。
〔マルチ化工程〕
マルチ化工程では、マクロマー合成工程で得られたマクロマー同士を連結するか、あるいはマクロマー合成工程で得られたマクロマー溶液にモノマーAおよびモノマーBを追添加することによりマルチ化する。本工程においては、一のマクロマー合成工程で得られたマクロマー同士を連結してもよいし、二以上のマクロマー合成工程で得られた複数のマクロマーを連結してもよい。なお、「マルチ化」とは、これらのいずれかの方法で、モノマーA残基とモノマーB残基とが骨格中で組成勾配を有するグラジエント構造を有する分子鎖が複数繰り返される構造を形成することを意味する。
マルチ化するマクロマー単位の数は2以上であれば良いが、連結数が多いと分子鎖の絡み合いによる引っ張り強度の向上効果が出ることから、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、6以上であることがさらに好ましい。一方、結果的にポリエステルコポリマーの分子量が過度に増大すると、粘度上昇により成形性に悪影響を及ぼす懸念があるため、マクロマー単位の数は80以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。
マクロマー単位の連結数は、マルチ化行程において使用する触媒や反応時間によって調整することができる。マクロマー同士を連結させてマルチ化を行う場合、マクロマー単位の数は、最終的に得られたポリエステルコポリマーの重量平均分子量を、マクロマーの重量平均分子量で除して求めることができる。
本発明のポリエステルコポリマーは、マクロマー単位が直線状に連結した直鎖状ポリマーでも良いし、分岐して連結した分岐鎖状ポリマーであっても良い。
直鎖状のポリエステルコポリマーは、例えば、グラジエントマクロマーの両末端に同様のグラジエントマクロマーを1分子ずつ、末端同士を介して結合させてゆくことで合成できる。
グラジエントマクロマーがヒドロキシル基とカルボキシル基を各末端に有する場合は、末端同士を縮合剤により縮合させることで、マルチ化したポリエステルコポリマーが得られる。縮合剤としては、p−トルエンスルホン酸4,4−ジメチルアミノピリジニウム、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド、塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’−カルボニルジイミダゾール、1,1’−カルボニルジ(1,2,4−トリアゾール)、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウム=クロリドn水和物、トリフルオロメタンスルホン酸(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−(2−オクトキシ−2−オキソエチル)ジメチルアンモニウム、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロリン酸塩、(7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩、クロロトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロリン酸塩、ブロモトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩、3−(ジエトキシホスホリルオキシ)−1,2,3−ベンゾトリアジン−4(3H)−オン、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩、O−(N−スクシンイミジル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩、O−(N−スクシンイミジル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩、O−(3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン−3−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩、S−(1−オキシド−2−ピリジル)−N,N,N’,N’−テトラメチルチウロニウムテトラフルオロホウ酸塩、O−[2−オキソ−1(2H)−ピリジル]−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩、{{[(1−シアノ−2−エトキシ−2−オキソエチリデン)アミノ]オキシ}−4−モルホリノメチレン}ジメチルアンモニウムヘキサフルオロリン酸塩、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロリン酸塩、1−(クロロ−1−ピロリジニルメチレン)ピロリジニウムヘキサフルオロリン酸塩、2−フルオロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロリン酸塩、フルオロ−N,N,N’,N’−テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロリン酸塩等が使用可能である。
また、重合反応がリビング性を有する場合、すなわち重合物の末端から連続して重合反応を開始しうる場合には、重合反応が終了した後のグラジエントマクロマー溶液にモノマーAおよびモノマーBを追添加する操作を繰り返すことで、マルチ化することができる。
あるいは、グラジエントマクロマー同士は、ポリマーの力学的特性に影響を与えない範囲においてリンカーを介してマルチ化しても良い。特に、複数のカルボキシル基および/または複数のヒドロキシ基を有するリンカー、例えば2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸を使用すると、リンカーが分岐点となった分岐鎖状のポリエステルコポリマーを合成することができる。
以上のような製造方法により得られるポリエステルコポリマーは、モノマーA残基とモノマーB残基とが、骨格中で組成勾配を有するマクロマー単位が2つ以上連結した構造のコポリマーとなり、これは本発明のポリエステルコポリマーの好ましい態様である。本明細書においては、このような構造を便宜的に「マルチグラジエント」、マルチグラジエント構造を有するコポリマーを「マルチグラジエントコポリマー」と記載する場合がある。
つまり本発明のポリエステルコポリマーはマルチグラジエントコポリマーであることが好ましく、マルチグラジエントコポリマーとしては、モノマーA残基と前記モノマーB残基とが骨格中で組成勾配をなすグラジエント構造を有するマクロマー単位が2つ以上連結した構造を有することが好ましく、3つ以上連結した構造を有することがより好ましい。また、モノマーA残基と前記モノマーB残基とが骨格中で組成勾配をなすグラジエント構造を有するマクロマー単位の連結数の上限としては、80以下であることが好ましく、40以下がより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。
前述の通り、モノマーA残基が乳酸残基、モノマーB残基がカプロラクトン残基であるポリエステルコポリマーは、本発明の特に好ましい態様である。このようなポリエステルコポリマーは、下記のような製造方法により好ましく製造される。
まず、マクロマー合成工程において、触媒の存在下にてジラクチドとε−カプロラクトンを重合させる。ジラクチド、ε−カプロラクトン単量体は、使用前に不純物を取り除くために、好ましくは精製される。ジラクチドの精製は、たとえばナトリウムによって乾燥されたトルエンからの再結晶で可能である。ε−カプロラクトンは、たとえばCaHからN雰囲気下で減圧蒸留によって精製される。
乳酸残基とカプロラクトン残基とを有するマクロマー合成工程の触媒としては、通常のゲルマニウム系、チタン系、アンチモン系、スズ系触媒等のポリエステルの重合触媒が使用可能である。このようなポリエステルの重合触媒の具体例としては、オクチル酸スズ、三フッ化アンチモン、亜鉛粉末、酸化ジブチルスズ、シュウ酸スズが挙げられる。触媒の反応系への添加方法は特に限定されるものではないが、好ましくは原料仕込み時に原料中に分散させた状態で、あるいは減圧開始時に分散処理した状態で添加する方法である。触媒の使用量は使用するモノマーの全量に対して金属原子換算で0.01〜3重量%、より好ましくは0.05〜1.5重量%である。
乳酸残基とカプロラクトン残基とを有するマクロマーは、ジラクチド、カプロラクトンおよび触媒を、撹拌機を備えた反応容器に入れ、120〜250℃、窒素気流下で反応させることにより得ることができる。水を助開始剤として使用する場合は、重合反応に先立って、90℃付近で助触媒反応を行うことが好ましい。反応時間としては2時間以上、好ましくは4時間以上、更には重合度を上げるためにはより長時間例えば8時間以上が好ましい。ただし、長時間反応を行いすぎるとポリマーの着色の問題が生じるため、3〜30時間が好ましい。
次に、マルチ化工程において、乳酸残基とカプロラクトン残基とを有するグラジエントマクロマーの末端同士を縮合反応により連結し、マルチ化する。縮合反応の反応温度は10〜100℃が好ましく、更に好ましくは20〜50℃である。反応時間としては1日以上、更に好ましくは2日以上が好ましい。ただし、長時間反応を行いすぎるとポリマーの着色の問題が生じるため、2〜4日が好ましい。
本発明のポリエステルコポリマーは、マクロマー単位が2つ以上連結した構造を有する、ポリエステルコポリマーであって、モノマーA又はモノマーBにおいて、初期重合速度の速い方の速度をV、初期重合速度の遅い方の速度をVとした場合に、マクロマー単位は、1.1≦V/V≦40を満たすモノマーA残基及びモノマーB残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーであることが好ましい。1.1≦V/V≦40を満たすモノマーA残基及びモノマーB残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーからなるマクロマー単位を2つ以上連結した構造の本発明のポリエステルコポリマーとすることにより、グラジエント構造のマクロマー単位とすることができ、結果として本発明のポリエステルコポリマーがマルチグラジエント構造となるために好ましい。
本明細書中でマクロマーとは、上述のマクロマー合成工程で得られるポリエステルコポリマーを指し、マクロマー合成工程の後に上述のマルチ化工程に用いるためのポリエステルコポリマーであるため、マクロマーと表現する。マクロマー単位とは、ポリエステルコポリマーの分子鎖中において、1つのマクロモノマーからなる部分を指す。例えば、マクロマーが2つ連結してポリエステルコポリマーを形成している場合、そのポリエステルコポリマーはマクロマー単位が2つ連結した構造を有するポリエステルコポリマーである。
また、マクロマー単位における2種類のモノマー残基を「主構成単位」とする、とは、当該2種類のモノマー残基数の和が、その他のモノマー残基を含めたマクロマー単位全体に含まれる全てのモノマー残基数の和を100%とした場合に50モル%以上であり、かつそれぞれの残基が、マクロマー単位全体に含まれる全てのモノマー残基数の和を100%とした場合に20モル%以上であることを意味する。例えば、モノマーA残基とモノマーB残基とを主構成単位とする、とは、モノマーA残基とモノマーB残基の残基数の和が、マクロマー単位全体に含まれる全てのモノマー残基数の和を100%とした場合に50モル%以上であり、かつモノマーA残基が20モル%以上であり、かつモノマーB残基が20モル%以上であることを意味する。ここで、モノマーA残基、モノマーB残基、その他の残基のモル分率は、核磁気共鳴(NMR)測定により、それぞれの残基に由来するシグナルの面積値より決定できる。例えば、モノマーA残基が乳酸残基、モノマーB残基がカプロラクトン残基である場合には、後述する測定例1に記載の方法で測定することができる。
ここで、モノマーA又はモノマーBにおいて、初期重合速度の速い方の速度であるV、初期重合速度の遅い方の速度であるVは、以下の方法で求められる。モノマーAとモノマーBを等モル混合し、必要に応じて溶媒、触媒を添加し、最終的に合成された、あるいは合成しようとするポリエステルコポリマーにおける後述するR値と誤差10%の範囲内で同じR値になるように温度等の条件を調整し重合反応を開始する。重合中の試料から定期的にサンプリングを行い、モノマーAとモノマーBの残量を測定する。残量は、例えば、クロマトグラフィーや核磁気共鳴(NMR)測定で測定する。仕込み量から残量を差し引くことで、重合反応に供されたモノマー量が求められる。サンプリング時間に対して重合反応に供されたモノマー量をプロットすると、その曲線の初期勾配がV、Vである。
このようなモノマーAとモノマーBとを反応させると、重合初期においてモノマーAが重合中のポリマー末端に結合する確率が高い。一方、モノマーAが消費され反応液中の濃度が減少する重合後期においては、モノマーBが重合中のポリマー末端に結合する確率が高くなる。その結果、一方の末端からモノマーA残基の割合が徐々に減少するグラジエントポリマーが得られる。このようなグラジエントポリマーは、結晶性が低くなり、ヤング率上昇も抑えられる。こうしたグラジエント構造が形成されやすくするため、V/Vは、1.3以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。一方、モノマーAとモノマーBの重合速度の差が大きすぎると、モノマーAのみが重合した後にモノマーBが重合したブロックポリマーに近い構造となり、結晶性が高くなってヤング率の上昇を招く場合があることから、V/Vは30以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましく、10以下であることが一層好ましい。
このようなモノマーAとモノマーBの好ましい組み合わせとしては、ジラクチドとε−カプロラクトン、グリコリドとε−カプロラクトン、グリコリドとジラクチド、ジラクチドとジオキセパノン、エチレンオキザラートとジラクチド、ジラクチドとδ-バレロラクトン、グリコリドとδ-バレロラクトンが挙げられる。

また本発明のステントは、前述のとおり生体吸収性ポリエステルとして、2種類のエステル結合形成性モノマー残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーを含むことが好ましいが、さらに生体吸収性ポリエステルとしてホモポリマーを含むことも好ましい。つまり本発明のステントは、生体吸収性ポリエステルとして、2種類のエステル結合形成性モノマー残基を主構成単位とするポリエステルコポリマー、並びに、ホモポリマーの両方を含むことも好ましい態様である。
2種類のエステル結合形成性モノマー残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーとは別にさらに生体吸収性ポリエステルを含む場合に好適なホモポリマーは、特に限定されないが、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリジオキサノン、及びこれらの混合物からなる群より選ばれるホモポリマーであることが好ましい。
なお、本発明のステントが生体吸収性ポリエステルとして2種類のエステル結合形成性モノマー残基を主構成単位とするポリエステルコポリマー並びにホモポリマーの両方を含む態様の場合、復元性を維持するために、ホモポリマーのステント中の含有量は、生体吸収性ポリエステル100重量%中に50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましく、その下限は特に限定されないが、5重量%以上であることが好ましい。

このような生体吸収性ポリエステルを用いて、溶融成形法、溶媒成形法、電解紡糸法または3Dプリンターによる成形法を用いて成形加工することで、本発明のステントを作製することができる。
溶融成形法とは、ポリマーを加熱して溶融させ、鋳型や押出成形機、プレス機などを用いて成形する方法であり、繊維状、フィルム状、チューブ状などに成形してステントを作製することができる。例えばφ1mmの口金をセットした押出成形機内で200℃まで本発明に記載のコポリマーを加熱し、押し出すことでポリマーを糸状に成形することができ、その繊維を織り加工や編み加工することでステントを作製することができる。
溶媒成形法とは、ポリマーを溶媒に溶解させ、鋳型や凝固浴に注入し、溶媒と溶質を分離することで成形する方法であり、繊維状、フィルム状、チューブ状などに成形してステントを作製することができる。溶媒成形法の例としてはクロロホルムに20%溶解させたポリマー溶液に、φ0.5〜20mmの棒を浸漬させた後引き上げ、溶媒の揮発を待ってから再度浸漬させることを5〜50回程度繰り返し、最後に芯となる棒を引き抜くことでチューブ状のステントに成型することができる。
電解紡糸法とは、紡糸ノズル内のポリマー溶液に高電圧を加えることにより、直径が数ナノメートルのナノファイバーからなる繊維構造体を生成することができる技術であり、紡糸時間によって繊維構造体の厚みを所望の範囲に調整することができる。例えば、円柱状のコレクターを回転させながらポリマー繊維を集積した後、コレクターを繊維構造体から引き抜くことにより、チューブ状の繊維構造体であるステントを作製することができる。
また、このような生体吸収性ポリエステルを3Dプリンター用のインク材料とすることで、オーダーメード型のステントを作製することができる。
さらに、本発明のステントの厚みは、0.2mm以上2mm以下であることが好ましく、0.25mm以上1.5mm以下であることがより好ましい。厚みをこのように制御することで、合併症の少ないより安全性の高いステントを提供できる。なお、ステントの厚みは、「(ステントの外径−ステントの内径)/2」、により求めることができる。
また、本発明のステントは、薬剤を担持もしくは吸着させることによって、薬剤溶出ステントとして用いることも可能である。
本発明のステントは、様々な体腔または脈管(例えば血管系、食道、胃腸管、大腸および小腸、胆管、膵管、肺管、尿管、鼻腔および気管など)の狭窄した部位に移植して内腔を確保する用途に適用できるが、これらに限定されるものではない。なお、本発明のステントは、生体吸収性ポリエステルを含むことから生分解性を有しながら復元性が高く、さらに薬剤溶出ステントとして用いることが可能なため、血管系、気管、鼻腔などに留置するステントに用いることが特に好適である。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(測定例1:核磁気共鳴(NMR)による各残基のモル分率およびR値の測定)
精製したポリエステルコポリマーを重クロロホルムに溶解し、H−NMRにより測定してポリエステルコポリマー中の乳酸モノマー残基及びカプロラクトンモノマー残基の比率をそれぞれ算出した。また、Hホモスピンデカップリング法により、乳酸のメチン基(5.10ppm付近)、カプロラクトンのαメチレン基(2.35ppm付近)、εメチレン基(4.10ppm付近)について、隣り合うモノマー残基が乳酸もしくはカプロラクトンに由来するシグナルで分離し、それぞれのピーク面積を定量した。ε−カプロラクトンの代わりにδ−バレロラクトンを用いた場合、同様に乳酸のメチン基(5.10ppm付近)、バレロラクトンのαメチレン基(2.35ppm付近)、δメチレン基(4.10ppm付近)について、隣り合うモノマー残基が乳酸もしくはバレロラクトンに由来するシグナルで分離し、それぞれのピーク面積を定量した。
それぞれのピーク面積比から、式1の[AB]を計算しR値を算出した。ここで、[AB]は乳酸残基とカプロラクトン残基もしくはバレロラクトン残基が隣り合った構造のモル分率であり、具体的にはA−A、A−B、B−A、B−Bの総数に対するA−B、B−Aの数の割合である。結果を表1に示す。
機器名:JNM−ECZ400R(日本電子株式会社製)
Hホモスピンデカップリング照射位置:1.66ppm
溶媒:重クロロホルム
測定温度:室温
(測定例2:ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量の測定)
機器名:Prominence(株式会社島津製作所製)
移動相:クロロホルム(HPLC用)(和光純薬工業株式会社製)
流速:1mL/min
カラム:TSKgel GMHHR−M(φ7.8mmX300mm;東ソー株式会社製)
検出器:UV(254nm)、RI
カラム、検出器温度:35℃
標準物質:ポリスチレン
精製したポリエステルコポリマーをクロロホルムに溶解し、0.45μmのシリンジフィルター(DISMIC−13HP;ADVANTEC社製)を通過させて不純物等を除去した後にGPCにより測定して、ポリエステルコポリマーの重量平均分子量を算出した。結果を表1に示す。
(測定例3:引張り試験)
各実施例・比較例で作製したステント(厚み0.25mm)を50mm×5mmに切り出し、テンシロン万能試験機RTM−100(株式会社オリエンテック製)でJIS K6251(2017)に従い、下記の条件で引張試験を測定し、破断伸度、引張強さを算出した。また、ひずみに対して応力をプロットしたグラフにおいて、応力の発生開始から5点のデータから近似できる1次式の傾きをヤング率として算出した。
また試験片に標線をつける場合には、適切なマーカを用いて、2本の標線を試験片につけた。標線をつける際には、試験片は引っ張られていない状態とし、試験片の平行部分に対して直角に、かつ、試験片の中央から等距離に、正確、かつ、鮮明に付けた。
機器名:EZ−1kNLX(島津アクセス製)
試験前の標線間距離:10mm
つかみ具間距離:10mm(標線の位置をつかんだ)
引張速度:500mm/min
ロードセル:1kN
試験回数:5回
さらに復元性は、500mm/minの引張速度で、試験前のつかみ具間距離に対して100%の引張ひずみを生じさせた(操作1)。そして操作1の後、ただちに(すなわち形状保持時間を0秒として)、500mm/minの速度で引張ひずみを緩和させて、つかみ具間距離を10mmに戻した(操作2)。操作2の後、ただちに(すなわち形状保持時間を0秒として)、前述の操作1及び操作2を再度行った。これを繰り返し、操作1及び操作2を合計で10回行った後、得られたLの値を用いて、下式から復元性を求めた。結果を表1に示す。
復元性(%)=((L×2−L)/L)×100
:初期長(試験前の標線間距離)
:ステントの最も長さのある方向に引張り応力を加えて、初期長に対して100%の引張ひずみを生じさせる操作を10回繰り返した後の長さ(試験後の標線間距離)
<実施例1>
50.0gのL−ラクチド(PURASORB L;PURAC社製)と、39.6gのεーカプロラクトン(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)とを、モノマーとして、0.46gのヒドロキシピバル酸を開始剤として、セパラブルフラスコに採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、5.8mLのトルエン(超脱水)(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)に溶解した触媒である0.27gのオクチル酸スズ(II)(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)を加え、140℃で9.5時間反応させ、粗コポリマーを得た。
得られた粗コポリマーを200mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある3000mLのヘキサンに滴下して、沈殿物を得た。沈殿物を50℃で減圧乾燥してマクロマーを得た。
当該マクロマー50gと、触媒である2.9gのp−トルエンスルホン酸4,4−ジメチルアミノピリジニウム(合成品)と、1.2gの4,4−ジメチルアミノピリジン(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)を採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、200mLのジクロロメタン(脱水)(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)に溶解し、縮合剤である2.4mLのジイソプロピルカルボジイミド(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)を添加し、室温で終夜縮合重合させた。
反応混合物を220mLのクロロホルムで希釈し、470mLの0.5M塩酸を添加した後30分間攪拌し、デカンテーションで水層を除去した。その後470mLのイオン交換水を加え、10分間攪拌し、デカンテーションで水層を除去する工程を除去した水層のpHが7になるまで繰り返した。残った有機層を攪拌状態にある2200mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この沈殿物を50℃で減圧乾燥して実施例1の精製ポリエステルコポリマーを得た。
また、精製ポリエステルコポリマーを減圧乾燥し、濃度が20重量%となるようにクロロホルムに溶解させた。ポリビニルアルコール(シグマアドリッチ社)の10重量%水溶液を調整し、φ6mmの金属棒を浸漬させて表面をPVAでコーティングした。PVAコーティングされた金属棒の先端を前記の精製ポリエステルコポリマー溶液に浸してから取り出し、10分間ドラフト内で乾燥するために静置した。その後コポリマー溶液への浸漬と乾燥を10回以上繰り返し、最後は一晩ドラフト内で静置した。ポリマーの乾燥後40℃に設定した水浴に金属棒を5分間浸してから、金属棒を引き抜き、チューブ状(内径:6mm、厚み:0.25mm、長さ:50mm)の成形体であるステントを得た。
<実施例2>
60.0gのL−ラクチド(PURASORB L;PURAC社製)と、31.7gのεーカプロラクトン(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)とを、モノマーとして、0.46gのヒドロキシピバル酸を開始剤として、セパラブルフラスコに採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、5.8mLのトルエン(超脱水)(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)に溶解した触媒である0.27gのオクチル酸スズ(II)(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)を加え、140℃で9.5時間反応させ、粗コポリマーを得た。
得られた粗コポリマーを200mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある3000mLのヘキサンに滴下して、沈殿物を得た。沈殿物を50℃で減圧乾燥してマクロマーを得た。
当該マクロマー50gと、触媒である2.1gのp−トルエンスルホン酸4,4−ジメチルアミノピリジニウム(合成品)と、0.87gの4,4−ジメチルアミノピリジン(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)を採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、200mLのジクロロメタン(脱水)(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)に溶解し、縮合剤である1.7mLのジイソプロピルカルボジイミド(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)を添加し、室温で終夜縮合重合させた。
反応混合物を220mLのクロロホルムで希釈し、470mLの0.5M塩酸を添加した後30分間攪拌し、デカンテーションで水層を除去した。その後470mLのイオン交換水を加え、10分間攪拌し、デカンテーションで水層を除去する工程を除去した水層のpHが7になるまで繰り返した。残った有機層を攪拌状態にある2200mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この沈殿物を50℃で減圧乾燥して実施例2の精製ポリエステルコポリマーを得た。
また、実施例1と同様にしてチューブ状の成形体であるステントを得た。
<実施例3>
ヒドロキシピバル酸の量を0.45g、粗コポリマーを得るための反応温度を150℃、p−トルエンスルホン酸4,4−ジメチルアミノピリジニウムの量を2.1g、4,4−ジメチルアミノピリジンの量を0.87g、ジイソプロピルカルボジイミドの量を1.7mLに変更した以外は、実施例1と同様の方法で合成を行い、実施例3の精製ポリエステルコポリマーを得た。
また、実施例1と同様にしてチューブ状の成形体であるステントを得た。
<実施例4>
50.0gのL−ラクチド(PURASORB L;PURAC社製)と、38.5mLのεーカプロラクトン(和光純薬工業株式会社製)とを、モノマーとしてセパラブルフラスコに採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、14.5mLのトルエン(超脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解した触媒である0.81gのオクチル酸スズ(II)(和光純薬工業株式会社製)、助開始剤としてイオン交換水をモノマー/助開始剤比が142.9となるよう添加し、90℃で、1時間助触媒反応を行ったあと、150℃で、6時間、共重合反応させて、粗コポリマーを得た。
得られた粗コポリマーを100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1400mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を3回繰り返し、沈殿物を70℃で減圧乾燥してマクロマーを得た。
当該マクロマー30gと、触媒である0.28gのp−トルエンスルホン酸4、4−ジメチルアミノピリジニウム(合成品)と、0.10gの4、4−ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業株式会社製)を採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、30%となるようジクロロメタン(脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解し、5mLのジクロロメタンに溶解した縮合剤である0.47gのアミレン(東京化成工業社製)を添加し、室温で2日間縮合重合させた。
反応混合物に30mLのクロロホルムを添加し、攪拌状態にある500mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この沈殿物を50mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある500mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を2回繰り返し、沈殿物を50℃で減圧乾燥して実施例4の精製ポリエステルコポリマーを得た。
また、実施例1と同様にしてチューブ状の成形体であるステントを得た。
<比較例1>
50.0gのL−ラクチド(PURASORB L;PURAC社製)と、39.6gのεーカプロラクトン(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)とを、モノマーとして、0.036gのオクタノールを開始剤として、セパラブルフラスコに採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、5.8mLのトルエン(超脱水)(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)に溶解した触媒である0.27gのオクチル酸スズ(II)(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)を加え、140℃で24時間反応させ、粗コポリマーを得た。
得られた粗コポリマーを200mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある3000mLのヘキサンに滴下して、沈殿物を得た。沈殿物を50℃で減圧乾燥して比較例1のポリエステルコポリマーを得た。
また、実施例1と同様にしてチューブ状の成形体であるステントを得た。
<比較例2>
p−トルエンスルホン酸4,4−ジメチルアミノピリジニウムの量を1.5g、ジイソプロピルカルボジイミドの量を1.2mLに変更した以外は、実施例1と同様の方法で合成を行い、比較例2の精製ポリエステルコポリマーを得た。
また、実施例1と同様にしてチューブ状の成形体であるステントを得た。
<比較例3>
100.0gのL−ラクチド(PURASORB L;PURAC社製)を、モノマーとして、0.46gのヒドロキシピバル酸を開始剤として、セパラブルフラスコに採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、5.8mLのトルエン(超脱水)(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)に溶解した触媒である0.27gのオクチル酸スズ(II)(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)を加え、140℃で9.5時間反応させ、粗コポリマーを得た。
得られた粗コポリマーを200mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある3000mLのヘキサンに滴下して、沈殿物を得た。沈殿物を50℃で減圧乾燥してPLAマクロマーを得た。
さらに79.2gのεーカプロラクトン(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)を、モノマーとして、0.46gのヒドロキシピバル酸を開始剤として、セパラブルフラスコに採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、5.8mLのトルエン(超脱水)(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)に溶解した触媒である0.27gのオクチル酸スズ(II)(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)を加え、140℃で9.5時間反応させ、粗コポリマーを得た。
得られた粗コポリマーを200mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある3000mLのヘキサンに滴下して、沈殿物を得た。沈殿物を50℃で減圧乾燥してPCLマクロマーを得た。
PLAマクロマー27.9gと、PCLマクロマー22.1gと、触媒である2.9gのp−トルエンスルホン酸4,4−ジメチルアミノピリジニウム(合成品)と、1.2gの4,4−ジメチルアミノピリジン(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)を採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、200mLのジクロロメタン(脱水)(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)に溶解し、縮合剤である2.4mLのジイソプロピルカルボジイミド(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)を添加し、室温で終夜縮合重合させた。
反応混合物を220mLのクロロホルムで希釈し、470mLの0.5M塩酸を添加した後30分間攪拌し、デカンテーションで水層を除去した。その後470mLのイオン交換水を加え、10分間攪拌し、デカンテーションで水層を除去する工程を除去した水層のpHが7になるまで繰り返した。残った有機層を攪拌状態にある2200mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この沈殿物を50℃で減圧乾燥して比較例3の精製ポリエステルコポリマーを得た。
また、実施例1と同様にしてチューブ状の成形体であるステントを得た。
<比較例4>
ポリ乳酸であるPDLLA(株式会社ビーエムジー)を購入し、実施例1と同様にしてチューブ状の成形体であるステントを得た。
<比較例5>
ポリカプロラクトンであるPolycaprolactone(900288, シグマアドリッチ社)を購入し、実施例1と同様にしてチューブ状の成形体であるステントを得た。
<比較例6>
50.0gのL−ラクチド(PURASORB L;PURAC社製)を、モノマーとしてセパラブルフラスコに採取した。これをアルゴン雰囲気下とし、14.5mLのトルエン(超脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解した触媒である0.81gのオクチル酸スズ(II)(和光純薬工業株式会社製)を添加、150℃で3時間重合反応させた。これに、38.5mLのεーカプロラクトン(和光純薬工業株式会社製)を添加し、150℃で6時間重合反応させ、粗コポリマーを得た。
得られた粗コポリマーを100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1400mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を3回繰り返し、沈殿物を70℃で減圧乾燥して比較例6の精製ポリエステルコポリマーを得た。
また、実施例1と同様にしてチューブ状の成形体であるステントを得た。
<実施例5>
50mLスクリュー管に、実施例3で得られたポリエステルコポリマーを900mg、ポリ乳酸(Nature3D社製)を100mg加え、クロロホルム(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)20mLに溶解し、常圧、室温下で1昼夜乾燥させた。これを50℃で一昼夜減圧乾燥させて、実施例5のポリマー組成物を得た。また、実施例1と同様にしてチューブ状(内径:6mm、厚み:0.25mm、長さ:50mm)の成形体であるステントを得た。
<実施例6>
ポリエステルコポリマーの量を700mg、ポリ乳酸の量を300mgに変更した以外は、実施例5と同様の方法で操作を行い、実施例6のポリマー組成物を得た。また、実施例1と同様にしてチューブ状(内径:6mm、厚み:0.25mm、長さ:50mm)の成形体であるステントを得た。

実施例1〜4及び比較例1〜6で得られたポリマーとステントの各種測定結果を表1に示す。
同様に実施例5及び6について、表2に示す。
Figure 2021192779
なお、表中のモノマーA残基比率とは、モノマーA残基とモノマーB残基の全モル数100%に対する、モノマーA残基のモル比率を示す。
Figure 2021192779
本発明のステントは、様々な体腔または脈管(例えば血管系、食道、胃腸管、大腸および小腸、胆管、膵管、肺管、尿管、鼻腔および気管など)の狭窄した部位に移植して内腔を確保する用途に適用できるが、これらに限定されるものではない。

Claims (13)

  1. 生体吸収性ポリエステルを含み、式(1)で定義される復元性が80%以上のステント。
    復元性(%)=((L×2−L)/L)×100 式(1)
    :初期長
    :ステントの最も長さのある方向に引張り応力を加えて、初期長に対して100%の引張ひずみを生じさせる操作を10回繰り返した後の長さ
  2. 前記生体吸収性ポリエステルを50重量%以上含む、請求項1に記載のステント。
  3. 前記生体吸収性ポリエステルとして、2種類のエステル結合形成性モノマー残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーを含み、
    前記エステル結合性モノマーをモノマーA、モノマーBとすると、モノマーA及びモノマーBが、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸、カプロラクトン、ジオキセパノン、エチレンオキザラート、ジオキサノン、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン、トリメチレンカーボネート、β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、ジラクチド、グリコリド、及びテトラメチルグリコリドからなる群より選ばれる化合物である、請求項1または2のいずれかに記載のステント。
  4. 前記ポリエステルコポリマーの下記式で表されるR値が0.45以上0.85以下である、請求項3に記載のステント。
    R=[AB]/(2[A][B])×100
    [A]:ポリエステルコポリマー中の、モノマーA残基のモル分率(%)
    [B]:ポリエステルコポリマー中の、モノマーB残基のモル分率(%)
    [AB]:ポリエステルコポリマー中の、モノマーA残基とモノマーB残基が隣り合った構造(A−B、およびB−A)のモル分率(%)
  5. 前記ポリエステルコポリマーが、マクロマー単位が2つ以上連結した構造を有する、ポリエステルコポリマーであって、
    前記モノマーA又は前記モノマーBにおいて、初期重合速度の速い方の速度をV、初期重合速度の遅い方の速度をVとした場合に、前記マクロマー単位は、1.1≦V/V≦40を満たすモノマーA残基及びモノマーB残基を主構成単位とする、請求項3または4のいずれかに記載のステント。
  6. 前記モノマーAが、乳酸又はグリコール酸である、請求項3〜5のいずれかに記載のステント。
  7. 前記モノマーBが、カプロラクトン又はδ−バレロラクトンである、請求項3〜6のいずれかに記載のステント。
  8. 前記ポリエステルコポリマーの重量平均分子量が100,000〜1,000,000である、請求項3〜7のいずれかに記載のステント。
  9. 前記生体吸収性ポリエステルとして、さらにホモポリマーを含む、請求項3〜8のいずれかに記載のステント。
  10. 前記ホモポリマーが、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリジオキサノン、及びこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれかである、請求項9に記載のステント
  11. 前記ステントの厚みが0.2mm以上2mm以下である、請求項1〜10のいずれかに記載のステント。
  12. JIS K6251(2017)に従った測定によるヤング率が0.1MPa以上15MPa以下であり、かつ、JIS K6251(2017)に従った測定による引張強さが5MPa以上である、請求項1〜11のいずれかに記載のステント。
  13. JIS K6251(2017)に従った測定による破断伸度が200%以上である、請求項1〜12のいずれかに記載のステント。
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