JP2021145919A - 筒状の成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】神経組織が脱落したり、再生を阻害する細胞が侵入することの無い、神経再生誘導チューブに好適に適用可能な成形体を提供する。【解決手段】筒状の医療用成形体であって、両端の内径の異なる筒状の成形体により、神経組織端端部に好適な内径のチューブ端部で接続することができ、中枢側から抹消側に伸びるにつれて細くなっていく神経組織に対して隙間無く接続され、神経の脱落を抑制することや接続時の操作性が簡便になる。【選択図】図4
Description
本発明は、筒状の成形体に関する。
人体の組織に欠損や障害が生じた場合において、その治療のために本来の組織の代替や支持を目的として、人体に無害な材料を用いて作成された成形体を移植するインプラント治療が行われている。内部が中空である筒状の成形体はインプラント治療でよく用いられている形状であり、組織を囲って保護したり、中空部に薬剤を充填して徐放したり、血管や神経の様に従来管状体の組織の代替としたりと、様々な医療用途で用いられている。神経再生を誘導して治療する筒状の成形体として、神経再生誘導チューブが知られている。神経再生誘導チューブを用いることによって、神経再生の障害となる結合組織が損傷部位に侵入することが抑制される。
図1は、従来の神経再生誘導チューブの使用例を説明する図である。図1に示す神経再生誘導チューブ300には、一端側に神経細胞200およびシュワン細胞210が配置される。神経再生誘導チューブ300では、内部においてシュワン細胞211が増殖する。この増殖したシュワン細胞211の内部を、軸索201が延びていく。この間、神経再生誘導チューブ300により結合組織の進入が抑制されることにより、軸索201が伸長しようとする経路が阻害されることが抑制される。このようにして、神経再生誘導チューブ300を用いた神経再生が進んでいく。
ところで、神経再生チューブはチューブ内で再生する神経を保護するため、チューブの強度を向上させる形状が研究されてきた。例えば特許文献1では複数本の有機高分子繊維から形成される糸条を、組角度が50°〜87.5°になるようにして編組した組紐の単層構造からなる管状体が報告されている。
神経再生誘導チューブは用いる部位に合わせて、チューブ径が選ばれているが、太さは一様なチューブしか存在しない。しかし、神経組織は中枢側から抹消側に伸びるにつれて細くなっていくことが知られている。長い距離の神経を再生させるためにチューブを用いた場合に、チューブの両端に接続する組織の太さが大きく異なり、末梢側の接続部においては、隙間が生じるため、神経組織が脱落したり、再生を阻害する細胞が侵入したりするので隙間を補填する作業が必要である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、両端の内径の異なる筒状の成形体により、太さが異なる組織への接続を容易にすることができ、神経再生誘導チューブに好適に適用可能な成形体を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明にかかる神経再生誘導チューブは、以下である。
(1) 筒状の医療用成形体であって、一方の端の内径が、他方の端の内径よりも大きいことを特徴とする、成形体。
(2) 前記成形体の一方の端の内径と他方の端の内径の差が、20mm以下である、前記(1)に記載の成形体。
(3) 生体吸収性ポリエステルを含む、前記(1)または(2)に記載の成形体。
(4) 前記(1)〜(3)のいずれかに記載の成形体を含む、神経再生誘導チューブ。
(1) 筒状の医療用成形体であって、一方の端の内径が、他方の端の内径よりも大きいことを特徴とする、成形体。
(2) 前記成形体の一方の端の内径と他方の端の内径の差が、20mm以下である、前記(1)に記載の成形体。
(3) 生体吸収性ポリエステルを含む、前記(1)または(2)に記載の成形体。
(4) 前記(1)〜(3)のいずれかに記載の成形体を含む、神経再生誘導チューブ。
本発明の筒状の成形体によれば、両端の内径の異なる筒状の成形体により、神経組織端端部に好適な内径のチューブ端部で接続することができ、神経の脱落を抑制することや接続時の操作性が簡便になるという効果を奏する。
以下、本発明を実施するための形態を図面とともに詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではないが、当業者には容易に理解されるように、本実施の形態の記載中の定義や、好ましい態様、バリエーションについての記載は、同時に上位概念としての本発明の成形体の説明と解釈し得るものである。また、以下の説明において参照する各図は、本発明の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、および位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。すなわち、本発明は各図で例示された形状、大きさ、および位置関係のみに限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
本発明は、筒状の医療用成形体であって、一方の端の内径が、他方の端の内径よりも大きいことを特徴とする、成形体である。前記の特徴を有するならば、一方の端と他方の端以外の部分(以下、途中部と記す)については、その内径の大きさは特に限定されず、つまり途中部においては内径の増減があってもよい。
本発明の成形体は、一方の端の内径が、他方の端の内径よりも大きくなっていれば、1つの筒状体のみで構成されていてもよいし、複数の筒状体が連結された構成であってもよい。
1つの筒状体のみで構成された本発明の成形体においては、一方の端から他方の端に向かって連続的に内径を変化させた1つの筒状体のみで構成されていてもよい。また1つの筒状体のみで構成された別の本発明の成形体の態様としては、一方の端と他方の端以外の部分、つまり途中部のある特定の場所のみで、内径を変化させることで、一方の端の内径を、他方の端の内径よりも大きくさせてもよい。
また複数の筒状体が連結された構成の本発明の成形体は、二つの筒状体が連結された連結部を有する成形体であって、両端部に内径の異なる筒状体が連結された成形体であってもよい。さらに前記連結部において、一方の筒状体Aの内径Aが、一方の筒状体Bの外径Bよりも大きく、筒状体Aの内側に筒状体Bが挿入しうるように連結部が構成されていることを特徴とする、筒状の成形体、であることがより好ましい。
本発明の成形体は、二つの筒状体が連結された連結部を有することが好ましい。つまり本発明の成形体は、少なくとも二つの筒状体を有し、さらにそれらの筒状体で形成される少なくとも1つの連結部を有するが、筒状体の数は2つに限定されるものではなく、連結部の数も1つに限定されるものではない。つまり本発明の成形体は、筒状体の数や連結部の数は特に限定されるものではなく、例えば、3つの筒状体及び2つの連結部を有していても構わない。
連結部の好ましい態様では、一方の筒状体Aの内径Aが、他方の筒状体Bの外径Bよりも大きく、筒状体Aの内側に筒状体Bが挿入しうるように構成されている。つまり連結部は、2つの筒状体が連結して構成されている部分であり、この連結部では、成形体の両端から押し込んだ場合に、筒状体Aの内側に筒状体Bが挿入しうるように構成されている。そのため連結部は、その状態によって、筒状体Aの内側に筒状体Bが挿入していてもよいし、挿入していなくてもよい。なお、連結部においては、二つの筒状体が連結されているが、連結部では筒状体Aの内径Aを有する側の端部の中に、筒状体Bの外径Bを有する側の端部が、挿入しうるように構成されているため、筒状体Aの内径Aを有する側の端部と筒状体Bの外径Bを有する側の端部とで、連結部が構成されている。
また本発明の成形体は、その形状が筒状である。本発明の成形体の好ましい態様では、2つの筒状体、並びに、筒状体Aの内側に筒状体Bが挿入しうるような連結部を少なくとも有するので、その結果、本発明の成形体の形状は筒状となる。
また本発明の成形体は、複数の筒状体、並びに、前記筒状体を連結する連結層を有することが好ましい。そして本発明の成形体は、筒状体及び連結層が接しており、連結層が、図4に示す連結部の断面図の様に筒状体の外側に配置されている態様や、図5に示す連結部の断面図の様に筒状体及び連結層が接しており、連結層が、筒状体の内側に配置されている態様や、さらに図6に示す連結部の断面図の様に、筒状体及び連結層が接しており、連結層が、筒状体Aの内側及び筒状体Bの外側に配置されている態様が好ましい。一方の筒状体Aの内径Aが、他方の筒状体Bの外径Bよりも大きく、さらにそれらの筒状体を連結するための連結層が存在することで、連結部において筒状体Aの内側に筒状体Bが挿入しうる態様とすることができる。
本発明の成形体は、成形体の一方の端の内径が、成形体の他方の端の内径よりも大きいことが特徴である。このようにすることで、本発明の成形体を神経再生誘導チューブとして用いる場合に、太さが異なる端部を有する組織を本成形体に接続するさい、接続部で緩みやたるみが無くなり、接続の脱落を抑制することができる。そしてこのような態様においては、成形体の一方の端の内径と他方の端の内径の差が、20mm以下であることが好ましい。なお、成形体の一方の端の内径と他方の端の内径の差の下限は特に限定されないが、内径の差がない態様、つまり0mm以上であることが好ましい。
本発明の成形体は、神経再生誘導チューブなどの医療器具として用いる場合、生体内外に留置されるものであるため、圧迫、屈折や湾曲などの変形によって外力が成形体加わることが想定される。そのため、筒状体内部を圧迫から保護するためには、筒状体のヤング率が6.3MPa以上であることが好ましい。留置箇所周辺に骨などの硬組織がある場合を想定すると、筒状体のヤング率は10MPa以上とするのがさらに好ましい。また、連結層のヤング率が6.3MPa未満であることが好ましい。このようにすることで、屈折や湾曲などの変形に対して柔軟性を発揮して追随して変形することが可能となり、成形体のキンク発生を抑制することができ、筒状体内の組織を保護することが出来るため、成形体を構成する連結層のヤング率は、6.3MPa未満であることが好ましい。他方、連結層のヤング率が低すぎる場合は連結強度が不十分となり、屈折や湾曲時に筒状の成形体の乖離が生じたり、連結部においてつぶれやキンクが発生したりするため、連結層のヤング率は特に限定されないものの、1MPa以上が好ましい。
本発明の成形体は、医療器具、特には神経再生誘導チューブに好適に用いることができる。そこで本発明の成形体を構成する層や筒状体を構成する素材などの詳細は、以下において、本発明の成形体を用いた神経再生誘導チューブを用いて説明する。
(実施の形態)
本発明の実施の形態にかかる神経再生誘導チューブについて、筒状体A、外径Bが筒状体Aの内径Aよりも小さい筒状体B、及び筒状体Aと筒状体Bとを連結する連結層Cで構成される。
本発明の実施の形態にかかる神経再生誘導チューブについて、筒状体A、外径Bが筒状体Aの内径Aよりも小さい筒状体B、及び筒状体Aと筒状体Bとを連結する連結層Cで構成される。
筒状体Aの内径Aは、筒状体Aの短軸の垂直断面の内円の直径である。また、筒状体Bの外径Bは、筒状体Bの短軸の垂直断面の外円の直径である。
連結層Cは、筒状体Aと筒状体Bのそれぞれの外面に接したり(筒状体及び連結層が、接しており、連結層が、筒状体の外側に配置されている態様)、筒状体Aと筒状体Bのそれぞれの内面と接したり(筒状体及び連結層が、接しており、連結層が、筒状体の内側に配置されている態様)、筒状体Aの内面と筒状体Bの外面に接したりすることで、筒状体Aと筒状体Bが離れないよう連結させている。
連結部の隙間から繊維組織または細胞が侵入しないよう、連結層Cは連結部全てを覆うことが好ましく、筒状の成形体の全部を覆っていることがより好ましい。
筒状の成形体の長軸に対する圧力を緩衝するため、筒状の成形体に含まれる連結部は1個以上が好ましく、筒状の成形体の両端の内径を同じにするならば偶数個、両端の内径に差をつけるならば奇数個が好ましく、チューブの耐久度が低下する観点から連結部は100個以下が好ましい。
本発明は、筒状の成形体の長軸に対して圧力が発生した場合、筒状体Bが筒状体Aに挿入されることで、圧力を緩衝できる仕組みである。筒状Bが筒状体Aに挿入されている長さをX、筒状体Aの挿入されていない長さをY、筒状体Bの挿入していない長さをZとする。筒状体中の筒状体Bと筒状体Aとの中心にズレが生じて、筒状体Bが筒状体Aに挿入されないことを防ぐために、Xは0より大きいことが好ましい。また、筒状体A内を筒状体Bが移動する部分が緩衝領域となるため、各連結部におけるYとZの小さい方の値の総和が、筒状の成形体の長さの5%以上であることが好ましく、Y=Zの時に最大となるため、50%以下が好ましい。
本発明の筒状体の一つの長さは特に限定されず、一様であっても良く、異なる長さの筒状体を用いてもよい。筒状の成形体の湾曲時に柔軟さを発揮し、キンク発生を抑制する観点から、筒状体の長さは1cm以下が好ましく、連結層による連結強度を強める観点から1mm以上が好ましい。
本発明の筒状の成形体の内径は特に限定されないが、使用する部位に合わせて選択するのが好ましく、例えば神経再生誘導チューブならば、20mm〜0.5mmが好ましい。また両端の内径は同じであることに限定されず、両端の内径に差があることで、中枢側と抹消側で太さの違う神経を接続させるのが容易であり、細い抹消側の神経が脱落するのを抑制することができる。本発明の成形体の一方の端の内径と他方の端の内径の差、つまり両端の内径の差は、0mm以上20mm以下であることが好ましい。
強度が高い筒状の成形体ほど、本発明の形態を取ることで突出事故を抑制できるので、本発明の成形体に用いる筒状体のヤング率は6.3MPa以上であることが好ましい。筒状の成形体の柔軟性は、連結層Cによって発揮されるため、連結層Cのヤング率は6.3MPa未満であることが好ましい。筒状体のヤング率は筒状の成形体から該当する部分を切り出して後述する引っ張り試験によって測定することができる。連結層Cのヤング率は筒状の成形体をそのまま引っ張り試験することで測定できる。
本発明の成形体は、圧力を緩衝する際筒状体Aが筒状体Bに挿入され、全長が縮むことになるため、圧力緩衝後に元の長さに自発的に復元することが望ましい。そのため連結層Cには復元性を持つ材料を用いることが好ましい。復元性は後述の測定例5のように仕事量保存率を求めることで定量的に評価することができる。仕事量保存率とは、成形体の最も長さのある方向に引張り応力を加えて、初期長に対して100%の引張ひずみを生じさせる操作を繰り返した際の、初回操作の仕事量に対する10回目の操作の仕事量の割合であり、具体的には後述する測定例5に記載の方法により算出できるものである。連結層Cに用いる材料の仕事量保存率が100%に近いほど、圧力緩衝後に成形体が複長しやすい。筋肉の近位に用いる成形体は頻繁に変形を受けるため、本発明の成形体は仕事量保存率が55%以上であり、関節など屈折や湾曲によって頻繁に大きな変形が起きる部位に用いる筒状体の仕事量保存率は60%以上が好ましい。
引張強さは、成形体の耐破断強度に直結する因子である。筋肉の膨張や収縮等の変形によって外力を受ける部位に用いることを想定すると、成形体の引張強さは5MPa以上であることが好ましく、屈折や湾曲などのより激しい変形が生じる部位に用いる筒状体では、引張強さは20MPa以上であることが好ましい。
破断伸度は成形体の耐破断強度を示す因子である。筋肉の膨張や収縮、振動等によって外力を受ける部位に用いることを想定すると、成形体の破断伸度は、200%以上が好ましく、屈折や湾曲などのより激しい変形が生じる部位に用いる筒状体では、破断伸度は500%以上であることがより好ましく、関節など屈折や湾曲によって特に大きな変形が起きる部位用いる筒状体では、破断伸度は1000%以上であることがさらに好ましい。なお、破断伸度は、JIS K6251(2010)に従って測定した値(JIS中では「切断時伸び」と表記される)であり、具体的には後述する測定例3に記載の引張試験により測定するものとする。
また、本発明の成形体は、生体内外に留置して用いられるものであるため、筋肉や関節の動きよって繰り返し力を受け、変形と復元を繰り返すことが想定される。そのため、本成形体は繰り返す変形に対して耐久性が要求される。耐久性は前記仕事保存率を測定する際に発生した永久歪みを測定することで定量的に評価することができる。筋肉の近位に用いる筒状体は頻繁に変形を受けるため、成形体は永久歪みが20%以下であり、関節など屈折や湾曲によって頻繁に大きな変形が起きる部位に用いる筒状体の永久歪みは15%以下が好ましい。
本発明の成形体は、生体吸収性ポリエステルを含むことにより各々の用途において必要とされる程度の生体吸収性が発現する限り、その配合率は限定されないが、一般的には生体吸収性ポリエステルを50重量%以上含むことが好ましく、80重量%以上含むことがより好ましい。生体に適用した際に完全に消失することが求められる場合には、生体吸収性ポリエステルのみからなることが好ましく、さらに、連結層Cにおいて要求される物性、すなわち、高い復元性と耐久性を発現することにより、生体追従性に優れた成形体とするため、以下に説明するような生体吸収性ポリエステルを上記程度に含むことが好ましい。
本発明の成形体は、生体吸収性ポリエステルを含むことが好ましい。さらに本発明の成形体を構成する筒状体は、生体吸収性ポリエステルを含むことが好ましく、本発明の成形体を構成する連結層は、後述する(A)及び(B)を満たす、ヒドロキシカルボン酸残基及びラクトン残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーを含むことが好ましく、後述する(C)及び(D)を満たす、ジラクチド/ε−カプロラクトン共重合体を含むことがより好ましい。
ここで、生体吸収性とは、生体内外に留置された後、加水分解反応や酵素反応によって自然に分解し、その分解物が代謝または排泄されることによって消失する性質である。このような生体吸収性ポリエステルとしては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸(D、L、DL体)、ポリε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシブチレート吉草酸、ポリオルソエステル、ポリヒドロキシバレリル酸、ポリヒドロキシヘキサン酸、ポリヒドロキシブタン酸、ポリコハク酸ブチレン、ポリブチレンサクシネート、ポリテレフタール酸トリメチレン、ポリヒドロキシアルカノエート、およびこれらの共重合体からなる群より選択されるポリエステルが挙げられる。なかでも、本発明の筒状体は、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸の共重合体、ポリグリコール酸とポリε−カプロラクトンとの共重合体、のいずれかを含むことがさらに好ましい。
好ましい態様において、本発明の成形体は、生体吸収性ポリエステルとして、ヒドロキシカルボン酸残基およびラクトン残基から選択されるモノマー残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーを含み、より好ましい態様において、ヒドロキシカルボン酸残基およびラクトン残基の2種類のモノマー残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーを含む。ラクトンとは、ヒドロキシカルボン酸のヒドロキシ基とカルボキシル基が分子内脱水縮合した環状化合物である。
ここで、あるモノマー残基を「主構成単位」とする、とは、当該モノマー残基が、その他のモノマー残基を含めたポリマー全体の残基数の50モル%以上であることを意味する。また、2種類のモノマー残基を「主構成単位」とする、とは、当該2種類のモノマー残基数の和が、その他のモノマー残基を含めたポリマー全体の残基数の50モル%以上であり、かつ2種類のそれぞれの残基が、ポリマー全体の残基数の20モル%以上であることを意味する。
例えば、ヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基とを主構成単位とする、とは、ヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基の残基数の和が、ポリマー全体の残基数の50モル%以上であり、かつヒドロキシカルボン酸残基がポリマー全体の残基数の20モル%以上であり、かつラクトン残基がポリマー全体の残基数の20モル%以上であることを意味する。各モノマー残基のモル分率は、核磁気共鳴(NMR)測定により、それぞれの残基に由来するシグナルの面積値より決定できる。例えば、ヒドロキシカルボン酸残基が乳酸残基、ラクトン残基がカプロラクトン残基である場合には、後述する測定例2に記載の方法で測定することができる。
ヒドロキシカルボン酸残基を形成するためのモノマーとしては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸が特に好ましい。脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸等が挙げられ、特に、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸が好ましい。乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸、及びそれらの混合体を用いることができるが、得られるポリマーの物性や生体適合性の面からは乳酸を用いることが好ましく、特にL−乳酸を用いることがより好ましい。モノマーとして混合体を用いる場合、L体の含有率が85%以上であることが好ましく、95%以上である方がより好ましい。
ヒドロキシカルボン酸残基を形成するためのモノマーとして、2分子のヒドロキシカルボン酸の互いのヒドロキシ基とカルボキシル基が脱水縮合した環状化合物であるラクチドを用いてもよい。ラクチドとしては、乳酸2分子が脱水縮合したジラクチドや、グリコール酸2分子が脱水縮合したグリコリド、テトラメチルグリコリドを用いることができる。
ラクトン残基を形成するためのモノマーとしては、ε−カプロラクトン、ジオキセパノン、エチレンオキザラート、ジオキサノン、1、4−ジオキサン−2、3−ジオン、β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ピバロラクトンが挙げられる。
また、以上例示したモノマーの誘導体を用いることもできる。
なお、本明細書において、ポリエステルコポリマーに含まれる「モノマー残基」とは、原則として、当該モノマーを含む重合原液から得られたポリエステルコポリマーの化学構造中における、当該モノマーに由来する化学構造の反復単位を言う。例えば、乳酸(CH3CH(OH)COOH)と、カプロラクトン(ε−カプロラクトン:下記式)
とを重合して乳酸とカプロラクトンのコポリマーとした場合、下記式で表される単位
が乳酸モノマー残基であり、下記式で表される単位がカプロラクトンモノマー残基である。
なお、例外として、モノマーとしてラクチド等の2量体を用いる場合には、「モノマー残基」は当該2量体に由来する2回繰り返し構造のうちの1つを意味するものとする。例えば、ジラクチド(L−(−)−ラクチド:下記式)
とカプロラクトンとを重合した場合、コポリマーの化学構造には、ジラクチド残基として上記式(R1)に示される構造が2回繰り返された構造が形成されるが、この場合にはそのうち1つの乳酸単位を「モノマー残基」と捉え、ジラクチドに由来して「モノマー残基」、すなわち乳酸残基が2つ形成されたと考えるものとする。
本発明に用いる生体吸収性ポリエステルの重量平均分子量は、ポリマー鎖が絡み合うことによる引張強さの向上効果を得るために、好ましくは10万以上である。上限は特に限定されないが、粘度の上昇による製造方法の問題および成形性の低下の点を考えると、好ましくは160万以下であり、より好ましくは80万以下、更に好ましくは40万以下である。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により求めることができ、具体的には後述する測定例1に記載の方法で求めるものとする。
以下、本発明において特に好ましい生体吸収性ポリエステルである、ヒドロキシカルボン酸残基およびラクトン残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーについて説明する。
当該ポリエステルコポリマーにおいて、ヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基の和は、前述の定義から、その他のモノマー残基を含めたポリマー全体の50モル%以上であり、75モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。また、ヒドロキシカルボン酸残基およびラクトン残基は、同じく前述の定義からそれぞれ20モル%以上であり、30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましい。ヒドロキシカルボン酸残基およびラクトン残基の和がポリマー全体の100%である、すなわちヒドロキシカルボン酸残基およびラクトン残基のみからなるポリマーは、特に好ましい態様として挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基のモル比は、一方が過剰に存在するとホモポリマー様の性質に近づくことから、好ましくは7/3から3/7であり、より好ましくは6/4から4/6である。
また、ヒドロキシカルボン酸およびラクトンと共重合し得る別のモノマーを更に共重合させることもでき、リンカーとして機能するモノマーを共重合させることは好ましい態様である。リンカーとして機能するモノマーとしては、主構成単位を構成するヒドロキシカルボン酸とは別のヒドロキシカルボン酸や、ジアルコール、ジカルボン酸、アミノ酸、ジアミン、ジイソシアネート、ジエポキシド等が挙げられる。なお、本明細書においては、ヒドロキシカルボン酸およびラクトン以外のモノマー単位を構成単位に含むことにより、一部にエステル結合以外の結合で連結された構成単位を含むコポリマーも含めて「ポリエステルコポリマー」と表記するものとする。
当該ポリエステルコポリマーは、ヒドロキシカルボン酸残基を形成するモノマー(「モノマーA」とする)とラクトン残基を形成するモノマー(「モノマーB」とする)を等モルで共重合させた場合の各モノマーの初期重合速度をそれぞれVA、VBとしたとき、1.1≦VA/VB≦40を満たすものであることが好ましい。
ここで、VA、VBは以下の方法で求められる。モノマーAとモノマーBを等モル混合し、必要に応じて溶媒、触媒を添加し、最終的に合成された、あるいは合成しようとするポリエステルコポリマーにおける後述するR値と誤差10%の範囲内で同じR値になるように温度等の条件を調整し重合反応を開始する。重合中の試料から定期的にサンプリングを行い、モノマーAとモノマーBの残量を測定する。残量は、例えば、クロマトグラフィーや核磁気共鳴(NMR)測定で測定する。仕込み量から残量を差し引くことで、重合反応に供されたモノマー量が求められる。サンプリング時間に対して重合反応に供されたモノマー量をプロットすると、その曲線の初期勾配がVA、VBである。
このようなモノマーAとモノマーBとを反応させると、重合初期においてモノマーAが重合中のポリマー末端に結合する確率が高い。一方、モノマーAが消費され反応液中の濃度が減少する重合後期においては、モノマーBが重合中のポリマー末端に結合する確率が高くなる。その結果、一方の末端からモノマーA残基の割合が徐々に減少するグラジエントポリマーが得られる。このようなグラジエントポリマーは、結晶性が低くなり、ヤング率上昇も抑えられる。こうしたグラジエント構造が形成されやすくするため、VA/VBは、1.3以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。一方、モノマーAとモノマーBの重合速度の差が大きすぎると、モノマーAのみが重合した後にモノマーBが重合したブロックポリマーに近い構造となり、結晶性が高くなってヤング率の上昇を招く場合があることから、VA/VBは30以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましく、10以下であることが一層好ましい。
このようなモノマーAとモノマーBの好ましい組み合わせとしては、ジラクチドとε−カプロラクトン、グリコリドとε−カプロラクトン、ジラクチドとジオキセパノン、ジラクチドとδ−バレロラクトン、グリコリドとδ−バレロラクトンが挙げられる。
また、本発明の成形体は、連結層が、ヒドロキシカルボン酸残基及びラクトン残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーを含み、当該ポリエステルコポリマーは、下記式(A)及び(B)を満たすことが好ましい。ポリエステルコポリマー中のモル分率は、ポリエステルコポリマーを構成するモノマー残基全体100%に対する百分率である。
(A)R値が0.45以上0.99以下である。
R値=[AB]/(2[A][B])×100
[A]:ポリエステルコポリマー中の、ヒドロキシカルボン酸残基のモル分率(%)
[B]:ポリエステルコポリマー中の、ラクトン残基のモル分率(%)
[AB]:ポリエステルコポリマー中の、ヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基が隣り合った構造(A−B、およびB−A)のモル分率(%)
(B)ヒドロキシカルボン酸残基またはラクトン残基の少なくとも一方の結晶化率が14%未満である
R値は、2種類のモノマー残基、すなわちヒドロキシカルボン酸残基およびラクトン残基を主構成単位とするコポリマーにおける、モノマー残基の配列のランダム性を示す指標として用いられる。例えば、完全にモノマー配列がランダムなランダムコポリマーでは、R値は1となる。また、ブロックコポリマーではR値は0〜0.44である。
[A]:ポリエステルコポリマー中の、ヒドロキシカルボン酸残基のモル分率(%)
[B]:ポリエステルコポリマー中の、ラクトン残基のモル分率(%)
[AB]:ポリエステルコポリマー中の、ヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基が隣り合った構造(A−B、およびB−A)のモル分率(%)
(B)ヒドロキシカルボン酸残基またはラクトン残基の少なくとも一方の結晶化率が14%未満である
R値は、2種類のモノマー残基、すなわちヒドロキシカルボン酸残基およびラクトン残基を主構成単位とするコポリマーにおける、モノマー残基の配列のランダム性を示す指標として用いられる。例えば、完全にモノマー配列がランダムなランダムコポリマーでは、R値は1となる。また、ブロックコポリマーではR値は0〜0.44である。
R値は核磁気共鳴(NMR)測定によって、隣り合う二つのモノマーの組み合わせ(A−A、B−B、A−B、B−A)の割合を定量することで決定でき、具体的には後述する測定例2に記載の方法で測定するものとする。R値が0.45未満であると、結晶性が高く、コポリマーの成形体は硬くなりヤング率が上昇する。一方、R値が0.99を超えると、コポリマー成形体は柔らかくなりすぎ粘着性を示すようになり、取扱性が低下する。同様の観点から、本発明で用いるポリエステルコポリマーのR値は0.50以上であることが好ましく、また0.80以下であることが好ましい。
また、ポリマーの結晶性は、成形体の機械強度に大きな影響を与えることが知られている。一般に、低結晶性のポリマーは低ヤング率を示すため、柔軟性を得るためには結晶性が低いことが望ましい。ポリマーの結晶化率は、示差走査熱量(DSC)測定により融解熱から求められる。
当該ポリエステルコポリマーにおいては、ヒドロキシカルボン酸残基またはラクトン残基の少なくとも一方の結晶化率が14%未満であることが好ましい。当該結晶化率が14%未満であれば、ヤング率の上昇が抑えられ、筒状体に適したポリエステルコポリマーを得ることができる。ヒドロキシカルボン酸残基および/またはラクトン残基の結晶化率は10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。
ここで言うモノマー残基の結晶化率とは、あるモノマー残基のみからなるホモポリマーの単位重量当たりの融解熱と、当該ポリエステルコポリマー中の当該モノマー残基の重量分率の積に対する、当該ポリエステルコポリマー中の当該モノマー残基単位重量当たりの融解熱の割合である。すなわち、ヒドロキシカルボン酸残基の結晶化率とは、そのヒドロキシカルボン酸のみからなるホモポリマーの単位重量あたりの融解熱とポリエステルコポリマー中のそのヒドロキシカルボン酸残基の重量分率の積に対する、ポリエステルコポリマー中のそのヒドロキシカルボン酸残基単位重量当たりの融解熱の割合である。ヒドロキシカルボン酸残基およびラクトン残基の結晶化率は、それぞれポリエステルコポリマーのヒドロキシカルボン酸残基もしくはラクトン残基の中で結晶構造を形成している割合を示す。結晶化率は、具体的には後述する測定例4に記載の方法で求めるものとする。
さらに、本発明は体内に留置して用いるため、臨床的安全性の実績が高い生体吸収性ポリエステルコポリマーであることが好ましく、すなわち、連結層が、ジラクチド/ε−カプロラクトン共重合体を含み、当該ジラクチド/ε−カプロラクトン共重合体が、下記(C)および(D)を満たすことが好ましい。ジラクチド/ε−カプロラクトン共重合体中のモル分率は、ジラクチド/ε−カプロラクトン共重合体をジラクチド残基およびε―カプロラクトン残基の全体100%に対する百分率である。
(C)R値が0.45以上0.99以下である。
R値=[AB]/(2[A][B])×100
[A]:ジラクチド/ε−カプロラクトン共重合体中の、ジラクチド残基のモル分率(%)
[B]:ジラクチド/ε−カプロラクトン共重合体中の、ε−カプロラクトン残基のモル分率(%)
[AB]:ジラクチド/ε−カプロラクトン共重合体中の、ジラクチド残基とε−カプロラクトン残基が隣り合った構造(A−B、およびB−A)のモル分率(%)
(D)ジラクチド残基またはε−カプロラクトン残基の少なくとも一方の結晶化率が14%未満である。
[A]:ジラクチド/ε−カプロラクトン共重合体中の、ジラクチド残基のモル分率(%)
[B]:ジラクチド/ε−カプロラクトン共重合体中の、ε−カプロラクトン残基のモル分率(%)
[AB]:ジラクチド/ε−カプロラクトン共重合体中の、ジラクチド残基とε−カプロラクトン残基が隣り合った構造(A−B、およびB−A)のモル分率(%)
(D)ジラクチド残基またはε−カプロラクトン残基の少なくとも一方の結晶化率が14%未満である。
上記のようなポリエステルコポリマーは、一例として、ヒドロキシカルボン酸残基を形成するモノマーAおよびラクトン残基を形成するモノマーBを、重合完了時においてヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基の和が全残基の50モル%以上、かつヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基がそれぞれ全残基の20モル%以上となるよう配合して重合させるマクロマー合成工程;
マクロマー合成工程で得られたマクロマー同士を連結するか、あるいはマクロマー合成工程で得られたマクロマー溶液にヒドロキシカルボン酸およびラクトンを追添加することによりマルチ化するマルチ化工程;
を有する合成方法により製造することができる。
マクロマー合成工程では、ヒドロキシカルボン酸残基を形成するモノマーAおよびラクトン残基を形成するモノマーBを、理論上重合完了時においてヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基の和が全残基の50モル%以上、かつヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基がそれぞれ全残基の20モル%以上となるよう配合して重合を行う。これにより、ヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーが得られるが、本製造方法においてはさらに後述するマルチ化工程を行うため、本明細書においては、本工程により得られるポリエステルコポリマーを「マクロマー」と表現する。
ヒドロキシカルボン酸残基およびラクトン残基の分布のランダム性は、重合時のモノマーの反応性の違いにより変化する。すなわち、重合時に、当該2種類のモノマーのうち、一方のモノマーの後に、同じモノマーと他方のモノマーが同確率で結合すれば、モノマー残基が完全にランダムに分布したランダムコポリマーが得られる。しかし、一方のモノマーの後にいずれかのモノマーが結合し易い傾向がある場合は、モノマー残基の分布に偏りのあるグラジエントコポリマーが得られる。得られたグラジエントコポリマーは、その分子鎖にそって重合開始末端から重合終了末端にかけてモノマー残基の組成が連続的に変化している。
ここで、一般にヒドロキシカルボン酸はラクトンよりも初期重合速度が大きいモノマーであるため、マクロマー合成工程においてヒドロキシカルボン酸とラクトンとを共重合させた場合、ヒドロキシカルボン酸の後にヒドロキシカルボン酸が結合し易い。そのため、合成されたマクロマーにおいては、重合開始末端から重合終了末端にかけてヒドロキシカルボン酸単位の割合が徐々に減少するグラジエント構造が形成される。すなわち、本工程で得られるマクロマーは、ヒドロキシカルボン酸とラクトンとの初期重合速度差により、ヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基とが骨格中で組成勾配をなすグラジエント構造を有するマクロマーとなる。このようなマクロマーを、本明細書においては「グラジエントマクロマー」と呼ぶ場合がある。
マクロマー合成工程においては、このようなグラジエント構造を実現するために、開始末端から一方向に起こる重合反応によりマクロマーを合成することが望ましい。このような合成反応としては、開環重合、リビング重合を利用することが好ましい例として挙げられる。
本工程で得られるマクロマーは、最終的に上記(A)に示すR値を満たすポリエステルコポリマーを製造しやすくするため、上記(A)に記載したポリエステルコポリマーと同様のR値を有するもの、すなわち、下記式
R値=[AB]/(2[A][B])×100
[A]:マクロマー中の、ヒドロキシカルボン酸残基のモル分率(%)
[B]:マクロマー中の、ラクトン残基のモル分率(%)
[AB]:マクロマー中の、ヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基が隣り合った構造(A−B、およびB−A)のモル分率(%)
で表されるR値が0.45以上0.99以下であることが好ましく、0.50以上0.80以下であることがより好ましい。
R値=[AB]/(2[A][B])×100
[A]:マクロマー中の、ヒドロキシカルボン酸残基のモル分率(%)
[B]:マクロマー中の、ラクトン残基のモル分率(%)
[AB]:マクロマー中の、ヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基が隣り合った構造(A−B、およびB−A)のモル分率(%)
で表されるR値が0.45以上0.99以下であることが好ましく、0.50以上0.80以下であることがより好ましい。
また同様に、本工程で得られるマクロマーは、最終的に上記(B)に示すヒドロキシカルボン酸残基またはラクトン残基の結晶化率を有するポリエステルコポリマーを製造しやすくするため、上記(B)に記載したモノマー残基の結晶化率を有するもの、すなわち、ヒドロキシカルボン酸残基またはラクトン残基の少なくとも一方の結晶化率が14%未満であるものであることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
マクロマー合成工程で合成されるマクロマーの重量平均分子量は、好ましくは1万以上、より好ましくは2万以上である。また、結晶性を抑え柔軟性を保つためには15万以下であることが好ましく、10万以下であることがより好ましい。
マルチ化工程では、マクロマー合成工程で得られたマクロマー同士を連結するか、あるいはマクロマー合成工程で得られたマクロマー溶液にヒドロキシカルボン酸およびラクトンを追添加することによりマルチ化する。本工程においては、一のマクロマー合成工程で得られたマクロマー同士を連結してもよいし、二以上のマクロマー合成工程で得られた複数のマクロマーを連結してもよい。なお、「マルチ化」とは、これらのいずれかの方法で、ヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基とが骨格中で組成勾配を有するグラジエント構造を有する分子鎖が複数繰り返される構造を形成することを意味する。
マルチ化するマクロマー単位の数は2以上であれば良いが、連結数が多いと分子鎖の絡み合いによる引張強さの向上効果が出ることから、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、6以上であることがさらに好ましい。一方、結果的にポリエステルコポリマーの分子量が過度に増大すると、粘度上昇により成形性に悪影響を及ぼす懸念があるため、マクロマー単位の数は80以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。
マクロマー単位の連結数は、マルチ化行程において使用する触媒や反応時間によって調整することができる。マクロマー同士を連結させてマルチ化を行う場合、マクロマー単位の数は、最終的に得られたポリエステルコポリマーの重量平均分子量を、マクロマーの重量平均分子量で除して求めることができる。
ポリエステルコポリマーは、マクロマー単位が直線状に連結した直鎖状ポリマーでも良いし、分岐して連結した分岐鎖状ポリマーであっても良い。
直鎖状のポリエステルコポリマーは、例えば、グラジエントマクロマーの両末端に同様のグラジエントマクロマーを1分子ずつ、末端同士を介して結合させてゆくことで合成できる。
グラジエントマクロマーがヒドロキシル基とカルボキシル基を各末端に有する場合は、末端同士を縮合剤により縮合させることで、マルチ化したポリエステルコポリマーが得られる。縮合剤としては、p−トルエンスルホン酸4、4−ジメチルアミノピリジニウム、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド、塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、N、N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N、N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N、N’−カルボニルジイミダゾール、1、1’−カルボニルジ(1、2、4−トリアゾール)、4−(4、6−ジメトキシ−1、3、5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウム=クロリドn水和物、トリフルオロメタンスルホン酸(4、6−ジメトキシ−1、3、5−トリアジン−2−イル)−(2−オクトキシ−2−オキソエチル)ジメチルアンモニウム、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロリン酸塩、(7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩、クロロトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロリン酸塩、ブロモトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩、3−(ジエトキシホスホリルオキシ)−1、2、3−ベンゾトリアジン−4(3H)−オン、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N、N、N’、N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N、N、N’、N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩、O−(N−スクシンイミジル)−N、N、N’、N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩、O−(N−スクシンイミジル)−N、N、N’、N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩、O−(3、4−ジヒドロ−4−オキソ−1、2、3−ベンゾトリアジン−3−イル)−N、N、N’、N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩、S−(1−オキシド−2−ピリジル)−N、N、N’、N’−テトラメチルチウロニウムテトラフルオロホウ酸塩、O−[2−オキソ−1(2H)−ピリジル]−N、N、N’、N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩、{{[(1−シアノ−2−エトキシ−2−オキソエチリデン)アミノ]オキシ}−4−モルホリノメチレン}ジメチルアンモニウムヘキサフルオロリン酸塩、2−クロロ−1、3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロリン酸塩、1−(クロロ−1−ピロリジニルメチレン)ピロリジニウムヘキサフルオロリン酸塩、2−フルオロ−1、3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロリン酸塩、フルオロ−N、N、N’、N’−テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロリン酸塩等が使用可能である。
また、重合反応がリビング性を有する場合、すなわち重合物の末端から連続して重合反応を開始しうる場合には、重合反応が終了した後のグラジエントマクロマー溶液にヒドロキシカルボン酸およびラクトンを追添加する操作を繰り返すことで、マルチ化することができる。
あるいは、グラジエントマクロマー同士は、ポリマーの力学的特性に影響を与えない範囲においてリンカーを介してマルチ化しても良い。特に、複数のカルボキシル基および/または複数のヒドロキシ基を有するリンカー、例えば2、2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸を使用すると、リンカーが分岐点となった分岐鎖状のポリエステルコポリマーを合成することができる。
以上のような製造方法により得られるポリエステルコポリマーは、ヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基とが骨格中で組成勾配を有するマクロマー単位が2つ以上連結した構造のコポリマーとなる。本明細書においては、このような構造を便宜的に「マルチグラジエント」、マルチグラジエント構造を有するコポリマーを「マルチグラジエントコポリマー」と記載する場合がある。マルチグラジエントコポリマーとしては、ヒドロキシカルボン酸残基と前記ラクトン残基とが骨格中で組成勾配をなすグラジエント構造を有するマクロマー単位が2つ以上連結した構造を有することが好ましく、3つ以上連結した構造を有することが好ましい。
前述の通り、ヒドロキシカルボン酸残基が乳酸残基、ラクトン残基がカプロラクトン残基またはバレロラクトン残基であるポリエステルコポリマーは、筒状体に適用するために特に好ましい態様である。このようなポリエステルコポリマーは、下記のような製造方法により好ましく製造される。
まず、マクロマー合成工程において、触媒の存在下にてジラクチドとε−カプロラクトン(またはバレロラクトン。以下同じ)を重合させる。ジラクチド、ε−カプロラクトン単量体は、使用前に不純物を取り除くために、好ましくは精製される。ジラクチドの精製は、たとえばナトリウムによって乾燥されたトルエンからの再結晶で可能である。ε−カプロラクトンは、たとえばCaH2からN2雰囲気下で減圧蒸留によって精製される。
ジラクチドとε−カプロラクトンの反応性は文献(D.W.Grijpmaetal.PolymerBulletin25、335、341)に記されているように大きく異なり、ジラクチドモノマーの方がε−カプロラクトンよりも初期重合速度が大きい。ジラクチドのVAは、反応率(%)で示すと3.6%/hであり、ε−カプロラクトンのVBは、0.88%/hであり、VA/VBは4.1となる。そのため、ジラクチドとε−カプロラクトンを共重合して得られるマクロマーはグラジエントマクロマーとなる。
乳酸残基とカプロラクトン残基とを有するマクロマー合成工程の触媒としては、通常のゲルマニウム系、チタン系、アンチモン系、スズ系触媒等のポリエステルの重合触媒が使用可能である。このようなポリエステルの重合触媒の具体例としては、オクチル酸スズ、三フッ化アンチモン、亜鉛粉末、酸化ジブチルスズ、シュウ酸スズが挙げられる。触媒の反応系への添加方法は特に限定されるものではないが、好ましくは原料仕込み時に原料中に分散させた状態で、あるいは減圧開始時に分散処理した状態で添加する方法である。触媒の使用量は使用するモノマーの全量に対して金属原子換算で0.01〜3重量%、より好ましくは0.05〜1.5重量%である。
乳酸残基とカプロラクトン残基とを有するマクロマーは、ジラクチド、カプロラクトンおよび触媒を、撹拌機を備えた反応容器に入れ、150〜250℃、窒素気流下で反応させることにより得ることができる。水を助開始剤として使用する場合は、重合反応に先立って、90℃付近で助触媒反応を行うことが好ましい。反応時間としては2時間以上、好ましくは4時間以上、更には重合度を上げるためにはより長時間例えば8時間以上が好ましい。ただし、長時間反応を行いすぎるとポリマーの着色の問題が生じるため、3〜12時間が好ましい。
次に、マルチ化工程において、乳酸残基とカプロラクトン残基とを有するグラジエントマクロマーの末端同士を縮合反応により連結し、マルチ化する。縮合反応の反応温度は10〜100℃が好ましく、更に好ましくは20〜50℃である。反応時間としては1日以上、更に好ましくは2日以上が好ましい。ただし、長時間反応を行いすぎるとポリマーの着色の問題が生じるため、2〜4日が好ましい。
このようなポリエステルを用いで、溶融成形法または溶媒成形法を用いて筒状の形状に成形加工することができる。溶融成形法とは、ポリマーを加熱して溶融させ、鋳型や押出成形機、プレス機などを用いて成形する方法である。例えばφ0.5〜4mmの芯入り口金をセットした押出成形機内で200℃まで本発明に記載のコポリマーを加熱し、押し出すことでポリマーを筒状に成形することができる。溶媒成形法とはポリマーを溶媒に溶解させ、鋳型や凝固浴に注入し、溶媒と溶質を分離することで成形する方法である。溶媒成形法の例としてはクロロホルムに20%溶解させたポリマー溶液に、φ0.5〜4mmの棒を浸漬させた後引き上げ、溶媒の揮発を待ってから再度浸漬させることを5〜10回程度繰り返し、最後に芯となる棒を引き抜くことで筒状に成型することができる。いずれの方法でも、成型した内径が異なる筒状体の小さい筒状体を大きい筒状体に一部挿入した状態で、外層または内層全体を本明細書記載の連結層に好ましい素材でさらに塗布することで二つの筒状体を連結することができ、本発明を得ることが出来る。得られた成形体は断裂した神経の両末端に装着させることで、神経再生を保護する神経再生誘導チューブとして用いることができる。
以下、具体的に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はそれらの実施例に限定的に解釈されるべきでなく、本発明の概念に接した当業者が想到し、実施可能であると観念するであろうあらゆる技術的思想およびその具体的態様が本発明に含まれるものとして理解されるべきものである。
[測定例1:ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量の測定]
機器名:Prominence(株式会社島津製作所製)
移動相:クロロホルム(HPLC用)(和光純薬工業株式会社製)
流速:1mL/min
カラム:TSKgel GMHHR−M(φ7.8mmX300mm;東ソー株式会社製)
検出器:UV(254nm)、RI
カラム、検出器温度:35℃
標準物質:ポリスチレン
精製後のポリマーをクロロホルムに溶解し、0.45μmのシリンジフィルター(DISMIC−13HP;ADVANTEC社製)を通過させて不純物等を除去した後にGPCにより測定して、コポリマーの重量平均分子量を算出した。
機器名:Prominence(株式会社島津製作所製)
移動相:クロロホルム(HPLC用)(和光純薬工業株式会社製)
流速:1mL/min
カラム:TSKgel GMHHR−M(φ7.8mmX300mm;東ソー株式会社製)
検出器:UV(254nm)、RI
カラム、検出器温度:35℃
標準物質:ポリスチレン
精製後のポリマーをクロロホルムに溶解し、0.45μmのシリンジフィルター(DISMIC−13HP;ADVANTEC社製)を通過させて不純物等を除去した後にGPCにより測定して、コポリマーの重量平均分子量を算出した。
[測定例2:核磁気共鳴(NMR)による各残基のモル分率およびR値の測定]
精製したコポリマーを重クロロホルムに溶解し、1H−NMRにより測定してコポリマー中の乳酸モノマー残基及びカプロラクトンモノマー残基の比率をそれぞれ算出した。また、1Hホモスピンデカップリング法により、乳酸のメチレン基(5.10ppm付近)、カプロラクトンのαメチレン基(2.35ppm付近)、εメチレン基(4.10ppm付近)について、隣り合うモノマー残基が乳酸もしくはカプロラクトンに由来するシグナルで分離し、それぞれのピーク面積を定量した。それぞれのピーク面積比から[A]、[B]、[AB]を計算し、R値を算出した。
機器名:JNM−EX270(日本電子株式会社製)
1Hホモスピンデカップリング照射位置:1.66ppm
溶媒:重クロロホルム
測定温度:室温。
精製したコポリマーを重クロロホルムに溶解し、1H−NMRにより測定してコポリマー中の乳酸モノマー残基及びカプロラクトンモノマー残基の比率をそれぞれ算出した。また、1Hホモスピンデカップリング法により、乳酸のメチレン基(5.10ppm付近)、カプロラクトンのαメチレン基(2.35ppm付近)、εメチレン基(4.10ppm付近)について、隣り合うモノマー残基が乳酸もしくはカプロラクトンに由来するシグナルで分離し、それぞれのピーク面積を定量した。それぞれのピーク面積比から[A]、[B]、[AB]を計算し、R値を算出した。
機器名:JNM−EX270(日本電子株式会社製)
1Hホモスピンデカップリング照射位置:1.66ppm
溶媒:重クロロホルム
測定温度:室温。
[測定例3:引張試験]
ポリマーを減圧乾燥し、これを濃度が5重量%になるようにクロロホルムに溶解させ、その溶液をテフロン製シャーレ上に移して、常圧、室温下で1昼夜乾燥させた。これを減圧乾燥させて、コポリマーフィルムを得た。
ポリマーを減圧乾燥し、これを濃度が5重量%になるようにクロロホルムに溶解させ、その溶液をテフロン製シャーレ上に移して、常圧、室温下で1昼夜乾燥させた。これを減圧乾燥させて、コポリマーフィルムを得た。
乾燥したフィルム(厚さ約0.1mm)を50mm×5mmに切り出し、卓上引張試験機(SHIMAZU社製 EZ−LX)でJIS K6251(2010)に従い、下記の条件で引張試験を測定し、破断伸度、引張強さを算出した。さらに、変位に対して応力をプロットしたグラフにおいて、応力の発生開始から5点のデータから近似できる1次式の傾きをヤング率として算出した。
機器名:卓上引張試験機(SHIMAZU社製 EZ−LX)
初期長:10mm
引張速度:500mm/min
ロードセル:1kN
試験回数:5回。
機器名:卓上引張試験機(SHIMAZU社製 EZ−LX)
初期長:10mm
引張速度:500mm/min
ロードセル:1kN
試験回数:5回。
[測定例4:示差走査熱量(DSC)による乳酸残基の結晶化率の測定]
精製後のポリマーを減圧乾燥し、これを濃度が5重量%になるようにクロロホルムに溶解させ、その溶液をテフロン製シャーレ上に移して、常圧、室温下で1昼夜乾燥させた。これを減圧乾燥させて、コポリマーフィルムを得た。
精製後のポリマーを減圧乾燥し、これを濃度が5重量%になるようにクロロホルムに溶解させ、その溶液をテフロン製シャーレ上に移して、常圧、室温下で1昼夜乾燥させた。これを減圧乾燥させて、コポリマーフィルムを得た。
得られたコポリマーフィルムをアルミナPANに採取し、示差走査熱量計でDSC法により下記の条件で測定し、温度条件(D)から(E)の測定結果から融解熱を算出した。結晶化率は下記式から算出した。
結晶化率=(ポリエステルコポリマーの乳酸残基単位重量当たりの融解熱)/{(乳酸残基のみからなるホモポリマーの単位重量当たり融解熱)×(ポリエステルコポリマー中の乳酸残基の重量分率)}×100
機器名:EXSTAR 6000(セイコーインスツル株式会社製)
温度条件:(A)25℃→(B)250℃(10℃/min)→(C)250℃(5min)→(D)−70℃(10℃/min)→(E)250℃(10℃/min)→(F)250℃(5min)→(G)25℃(100℃/min)
標準物質:アルミナ。
機器名:EXSTAR 6000(セイコーインスツル株式会社製)
温度条件:(A)25℃→(B)250℃(10℃/min)→(C)250℃(5min)→(D)−70℃(10℃/min)→(E)250℃(10℃/min)→(F)250℃(5min)→(G)25℃(100℃/min)
標準物質:アルミナ。
[測定例5:仕事量保存率および永久歪みの測定]
精製後のポリマーを減圧乾燥し、これを濃度が5重量%になるようにクロロホルムに溶解させ、その溶液をテフロン製シャーレ上に移して、常圧、室温下で1昼夜乾燥させた。これを減圧乾燥させて、コポリマーフィルムを得た。
精製後のポリマーを減圧乾燥し、これを濃度が5重量%になるようにクロロホルムに溶解させ、その溶液をテフロン製シャーレ上に移して、常圧、室温下で1昼夜乾燥させた。これを減圧乾燥させて、コポリマーフィルムを得た。
フィルム(厚さ約0.1mm)を短冊状(50mm×5mm)に切り出し、卓上引張試験機(SHIMAZU社製 EZ−LX)で下記の条件でフィルムを10回伸縮させながら、引張応力と変位の変化を記録する。フィルムの形状ではない成形体の場合には例えばクロロホルムなど、成形体を溶解できる溶媒に溶解させたのち、前記記載のサイズのフィルム成形後に測定を行う。
機器名:卓上引張試験機(SHIMAZU社製 EZ−LX)
初期長(L0):10mm
引張長(L):10mm
初期長(L0)と引張長(L)が同じ長さなので、100%の引張ひずみを生じさせることになる。
保持時間:1s
引張速度:500mm/min
復元速度:500mm/min
ロードセル:1kN
変位(X1,X2,・・・)に対する応力が(N1,N2,・・・)の時、100%の引張ひずみを生じさせる仕事量(W)は変位−応力曲線下部の面積に相等し、下記の式により算出される。
W=ΣNn(Xn−Xn−1)ただし X0=0とする。
初回のWをW1、10回目のWをW10としたとき、仕事量保存率=W10/W1×100となる。初回の変位−応力曲線は点線、10回目の応力曲線は実線で示しており、斜線部の面積が保存された仕事量である。
機器名:卓上引張試験機(SHIMAZU社製 EZ−LX)
初期長(L0):10mm
引張長(L):10mm
初期長(L0)と引張長(L)が同じ長さなので、100%の引張ひずみを生じさせることになる。
保持時間:1s
引張速度:500mm/min
復元速度:500mm/min
ロードセル:1kN
変位(X1,X2,・・・)に対する応力が(N1,N2,・・・)の時、100%の引張ひずみを生じさせる仕事量(W)は変位−応力曲線下部の面積に相等し、下記の式により算出される。
W=ΣNn(Xn−Xn−1)ただし X0=0とする。
初回のWをW1、10回目のWをW10としたとき、仕事量保存率=W10/W1×100となる。初回の変位−応力曲線は点線、10回目の応力曲線は実線で示しており、斜線部の面積が保存された仕事量である。
仕事保存率測定後再度同じ引張速度で伸長させ引張応力と変位の変化を記録し、応力が発生した変位量をL1とする。10回目の変位−応力曲線がX軸から上昇した位置における変位量である。永久歪みは下記式により計算できる。
永久歪み(%)=L1/L0×100。
永久歪み(%)=L1/L0×100。
[測定例6:突出抵抗の測定]
作成した各成形体を20mmの長さに切りそろえ、卓上引張試験機(SHIMAZU社製 EZ−LX)に直立の状態でセットし、下記条件で圧縮し、圧縮応力を測定した。
初乖離長:3mm
圧縮距離:10mm
圧縮速度:500mm/min
ロードセル:1kN
<実施例1>
ポリ乳酸(PURASORB P20;PURAC社製)を濃度が20重量%となるようにクロロホルムに溶解させた。ポリビニルアルコール(シグマアドリッチ社)の10重量%水溶液を調整し、φ4mm及びφ2mmの金属棒を浸漬させて表面をPVAでコーティングした。PVAコーティングされた金属棒の先端を前記の精製ポリエステルコポリマー溶液に浸してから取り出し、10分間ドラフト内で乾燥するために静置した。その後コポリマー溶液への浸漬と乾燥を5回繰り返し、最後は一晩ドラフト内で静置した。乾燥後外径測定機(LS−9000 キーエンス社製)を用いて、それぞれの金属棒に付着したポリマーの外径を測定した結果、φ4.20μmとφ2.23μmであった。その後、40℃に設定した水浴に金属棒を5分間浸してから、金属棒を引き抜き、内径の異なる筒状体(外径4.20mm×内径4mm×全長50mm,外径2.23mm×内径2mm×全長50mm)を得た。また、測定例3に記載のフィルムの代わりに、作成した筒状体を初期長10mmとなるよう試験機にセットし、同じ条件で引っ張り試験を実施した結果、筒状体のヤング率はそれぞれ、筒状体A(外径4.20mm×内径4mm×全長50mm)が334MPa、筒状体B(外径2.23mm×内径2mm×全長50mm)が358MPaであった。
作成した各成形体を20mmの長さに切りそろえ、卓上引張試験機(SHIMAZU社製 EZ−LX)に直立の状態でセットし、下記条件で圧縮し、圧縮応力を測定した。
初乖離長:3mm
圧縮距離:10mm
圧縮速度:500mm/min
ロードセル:1kN
<実施例1>
ポリ乳酸(PURASORB P20;PURAC社製)を濃度が20重量%となるようにクロロホルムに溶解させた。ポリビニルアルコール(シグマアドリッチ社)の10重量%水溶液を調整し、φ4mm及びφ2mmの金属棒を浸漬させて表面をPVAでコーティングした。PVAコーティングされた金属棒の先端を前記の精製ポリエステルコポリマー溶液に浸してから取り出し、10分間ドラフト内で乾燥するために静置した。その後コポリマー溶液への浸漬と乾燥を5回繰り返し、最後は一晩ドラフト内で静置した。乾燥後外径測定機(LS−9000 キーエンス社製)を用いて、それぞれの金属棒に付着したポリマーの外径を測定した結果、φ4.20μmとφ2.23μmであった。その後、40℃に設定した水浴に金属棒を5分間浸してから、金属棒を引き抜き、内径の異なる筒状体(外径4.20mm×内径4mm×全長50mm,外径2.23mm×内径2mm×全長50mm)を得た。また、測定例3に記載のフィルムの代わりに、作成した筒状体を初期長10mmとなるよう試験機にセットし、同じ条件で引っ張り試験を実施した結果、筒状体のヤング率はそれぞれ、筒状体A(外径4.20mm×内径4mm×全長50mm)が334MPa、筒状体B(外径2.23mm×内径2mm×全長50mm)が358MPaであった。
さらに、内径2mmの筒状体を内径4mmの筒状体に挿入した状態で保持し、下記で示す連結層用のポリマーを、外側から挿入部を覆うように塗布し連結させた、一晩真空乾燥させ、2つの筒状体及び連結部を有する筒状の成形体を得た。
得られた筒状の成形体の連結部を中心に両端を切断し、全長を20mmに調整し、圧縮抵抗を測定した。図2に示すように圧縮距離に対して急激な圧力上昇が無いことから圧縮抵抗を緩衝していることがわかる。
連結層用のポリマーは次の様に合成した。50.0gのL−ラクチド(PURASORB L;PURAC社製)と、38.5mLのεーカプロラクトン(和光純薬工業株式会社製)とを、モノマーとしてセパラブルフラスコに採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、14.5mLのトルエン(超脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解した触媒である0.81gのオクチル酸スズ(II)(和光純薬工業株式会社製)、助開始剤としてイオン交換水をモノマー/助開始剤比が142.9となるよう添加し、90℃で、1時間助触媒反応を行ったあと、150℃で、6時間、共重合反応させて、粗コポリマーを得た。
得られた粗コポリマーを100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1400mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を3回繰り返し、沈殿物を70℃で減圧乾燥してマクロマーを得た。
当該マクロマー7.5gと、触媒である0.28gのp−トルエンスルホン酸4、4−ジメチルアミノピリジニウム(合成品)と、0.10gの4、4−ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業株式会社製)を採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、30%となるようジクロロメタン(脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解し、5mLのジクロロメタンに溶解した縮合剤である0.47gのアミレン(東京化成工業社製)を添加し、室温で2日間縮合重合させた。
反応混合物に30mLのクロロホルムを添加し、攪拌状態にある15mMとなるよう酢酸を添加した500mLのヘキサンに滴下して、沈殿物を得た。この沈殿物を50mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある500mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を2回繰り返し、沈殿物として精製ポリエステルコポリマーを得た。
測定例1〜5に記載の方法で得られた精製ポリエステルコポリマーを測定した結果、重量平均分子量は240,000、R値は0.60、結晶化率は0%、ヤング率は2.98MPa、引っ張り強さは33.7MPa、破断伸度は1032%、仕事保存率は57.5%、永久歪み20%であった。
実施例1の成形体は、内径の異なる筒状体(φ4mm、φ2mm)を用いて製造したため、一方の端の内径が、他方の端の内径よりも大きく、しかし、成形体の一方の端の内径と他方の端の内径の差が、20mm以下であった。
<比較例1>
実施例1と同様にφ4mmのみの筒状の成形体を作成し、連結層用のポリマーを塗布した筒状体を作成し、20mmの長さに調整し、圧縮抵抗を測定した。圧縮後直ぐに圧力が急上昇し、圧縮抵抗が緩和されていないことがわかる。
実施例1と同様にφ4mmのみの筒状の成形体を作成し、連結層用のポリマーを塗布した筒状体を作成し、20mmの長さに調整し、圧縮抵抗を測定した。圧縮後直ぐに圧力が急上昇し、圧縮抵抗が緩和されていないことがわかる。
本発明の筒状の成形体は、両端の内径の異なることにより、神経組織端端部に好適な内径のチューブ端部で接続することができ、従って、本発明は、神経の脱落を抑制することができることから、神経再生誘導チューブなどに好適に用いることができる。
201 軸索
211 シュワン細胞
211 シュワン細胞
Claims (4)
- 筒状の医療用成形体であって、一方の端の内径が、他方の端の内径よりも大きいことを特徴とする、成形体。
- 前記成形体の一方の端の内径と他方の端の内径の差が、20mm以下である、請求項1に記載の成形体。
- 生体吸収性ポリエステルを含む、請求項1または2に記載の成形体。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の成形体を含む、神経再生誘導チューブ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020049015A JP2021145919A (ja) | 2020-03-19 | 2020-03-19 | 筒状の成形体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020049015A JP2021145919A (ja) | 2020-03-19 | 2020-03-19 | 筒状の成形体 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2021145919A true JP2021145919A (ja) | 2021-09-27 |
Family
ID=77849971
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2020049015A Pending JP2021145919A (ja) | 2020-03-19 | 2020-03-19 | 筒状の成形体 |
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Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2021145919A (ja) |
-
2020
- 2020-03-19 JP JP2020049015A patent/JP2021145919A/ja active Pending
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