本発明の実施の形態に係わる乗員保護装置10は図1、図2に示すように、前方の障害物までの距離を検出するための前方ミリ波レーダー12、前側方の障害物までの距離を検出するための前側方ミリ波レーダー14、前方を撮影する前方ステレオカメラ20、後方の障害物までの距離を検出するための後方ミリ波レーダー16、後側方の障害物までの距離を検出するための後側方ミリ波レーダー18、後方を撮影する後方ステレオカメラ22、前方の衝突を検知する前方衝突検知センサ24、後方の衝突を検知する後方衝突検知センサ26、側方の衝突を検知する側方衝突検知センサ、路面状態を検知する路面状態センサ30、周囲の環境を検知する周囲環境センサ及び衝突判断ECU(Electronic Control Unit)34を備え、それぞれバス54に接続されている。前方ミリ波レーダー12、前側方ミリ波レーダー14、前方ステレオカメラ20、後方ミリ波レーダー16、後側方ミリ波レーダー18、後方ステレオカメラ22は、移動体周辺を監視して、監視結果を衝突判断ECU34に出力する。前方衝突検知センサ24、後方衝突検知センサ26、側方衝突検知センサ28は外部から移動体へ加わる衝撃を検知して、検知結果を衝突判断ECU34に出力する。路面状態センサ30、周囲環境センサ32は移動体周辺の環境状態を監視して、監視結果を衝突判断ECUに出力する。
前方ミリ波レーダー12は、例えば、フロントグリル中央付近に設けられ、前側方ミリ波レーダー14は、バンパ内の車幅方向両端付近等に設けられ、それぞれ移動体前方や前側方にミリ波を出射することで対象物から反射してきた電波を受信し、伝搬時間やドップラー効果によって生じる周波数差などを基に対象物までの距離や自車との相対速度等を測定するために設けられている。また、後方ミリ波レーダー16及び後側方ミリ波レーダー18はリアバンパー等に設けられ、それぞれ移動体後方や後側方にミリ波を出射することで対象物から反射してきた電波を受信し、伝搬時間やドップラー効果によって生じる周波数差などを基に対象物までの距離や自車との相対速度等を測定するために設けられている。
前方ステレオカメラ20と後方ステレオカメラ22は遠赤外線カメラや単眼カメラ等で構成され、ウインドシールドガラス上方の中央付近に設けられ、移動体前方を撮影して、周辺の障害物を検出すると共に、障害物までの距離を測定するために設けられている。また、前方ステレオカメラ20と後方ステレオカメラ22は360°撮影できる全天球型カメラでもよく、移動体内の乗員の姿勢を検出することができる。なお、前方ステレオカメラ20と後方ステレオカメラ22は省略した構成としてもよい。
衝突判断ECU34は図2に示すように、前方の障害物までの距離を検出するための前方ミリ波レーダー12、前側方の障害物までの距離を検出するための前側方ミリ波レーダー14、前方を撮影する前方ステレオカメラ20、後方の障害物までの距離を検出するための後方ミリ波レーダー16、後側方の障害物までの距離を検出するための後側方ミリ波レーダー18、後方を撮影する後方ステレオカメラ22、前方の衝突を検知する前方衝突検知センサ24、後方の衝突を検知する後方衝突検知センサ26、側方の衝突を検知する側方衝突検知センサ28、路面状態センサ30、周囲環境センサ32が接続されたバス54に接続されている。外部からの衝撃検知または移動体周辺を監視して、検知結果を衝突判断ECU34に入力し、各検出結果を取得して衝突予測を行う。衝突予測については既知の各種技術を適用することができるので、詳細な説明を省略する。
路面状態センサ30は、路面状態判別技術のCAIS(Contact Area Information Sensing)により、路面と接しているタイヤからの接地面の情報を収集するセンシング技術である。タイヤの接地面内部にセンサが設けられ、加速度の状態から路面状態やタイヤ摩耗状態、空気圧を判別する。各種路面の状態に対するタイヤの摩擦係数μは乾いたアスファルトで0.7、氷では0.07である。路面状態の把握により、移動体の衝突時間を精度よく計測することができる。
周囲環境センサ32は、風向き、気温、湿度、気圧、標高などの外部環境をセンサで検知する。例えば、風向きや風速等による移動体が受ける外力を衝突時間に反映し、移動体の衝突時間を精度よく計測することができる。
前方衝突検知センサ24、後方衝突検知センサ26、側方衝突検知センサ28は前方ミリ波レーダー12、前側方ミリ波レーダー14、前方ステレオカメラ20、後方ミリ波レーダー16、後側方ミリ波レーダー18、後方ステレオカメラ22で衝突判断できない突発した状況時の衝撃を検知するために設けられている。
本発明の実施の形態に係わる乗員保護装置10は、衝突判断ECU34によって衝突が予測された場合に、緊急状態を回避するための回避手段や、乗員を保護するための各種乗員保護手段を制御する乗員保護制御ECU36を更に備えてバス54に接続されている。
乗員保護制御ECU36による乗員保護手段の制御としては、本実施形態では図2に示すように、衝突予測時の制御としては、シート角度検出センサ46でシートバック64の傾斜角度を検出し、シートアクチュエータ48で目標角度(目標角度範囲)内に調整するシート制御とシートベルト70を巻き取り、乗員の姿勢制御及び前方移動を抑制するためのシートベルト制御を行う。回避手段時の制御としては衝突予測時にブレーキを制御して衝突を回避するブレーキ制御を行う。
詳細には、乗員保護制御ECU36には、シートバック64の傾斜角度を検出するシート角度検出センサ46、傾斜角度が変更可能なシートバック64、シートクッション66、オットマン68を駆動するためのシートアクチュエータ48、シートベルト70を巻き取るためのプリテンショナアクチュエータ50、及びブレーキを駆動するためのブレーキアクチュエータ52が接続されている。
乗員保護制御ECU36は、衝突判断ECU34によって衝突が予測され、シート角度検出センサ46の検出結果からシートバック64、シートクッション66、オットマン68が目標角度外(目標角度範囲内でもよい)の場合に、図3に示すように、シートアクチュエータ48を作動してリクライニングアジャスタ74へ伝達し、シートバック64、シートクッション66、オットマン68が目標角度になるように制御すると共に、プリテンショナアクチュエータ50を作動してシートベルト70を巻き取るように制御することによって乗員を保護する。なお、シートバック64の目標角度は0°(移動体の床に対して並行)〜90°、シートクッション66の目標角度は0°(移動体の床に対して並行)〜90°、オットマン68の目標角度は0°(移動体の床に対して垂直)〜180°の範囲で、適宜に調整される。
また、乗員保護制御ECU36は、衝突が予測された場合に、衝突を回避するためにブレーキアクチュエータ52を制御することによって緊急状態を回避する。ブレーキアクチュエータ52の制御(ブレーキ制御)としては、例えば、衝突対象を回避するように自動的にブレーキを制御するようにしてもよいし、乗員の操作を補助して制動力を上げるようにブレーキを制御するようにしてもよい。
なお、シートは、図示しないスイッチ等によってシートの状態変更が指示された場合にスイッチの操作状態に応じて、シートアクチュエータ48を駆動して、リクライニング角度の調整や他のアクチュエータを駆動して、シートスライド等のシートの各種状態を変更する。
本発明の実施の形態に係わる乗員保護装置10は、衝突が予測された場合に、乗員保護制御ECU36によって上述のように回避手段や乗員保護手段等の乗員保護機能を制御するが、各アクチュエータを作動させるための電力を確保する必要がある。
そこで、本実施の形態では、各アクチュエータへ供給する電力を制御する電源制御ECU38を備えてバス54に接続されている。
電源制御ECU38には、電源制御セレクタ40が接続され、電源制御セレクタ40には移動体を駆動するためのモータジェネレータ42、及びバッテリー44が接続されている。
電源制御セレクタ40は、モータジェネレータ42や各種アクチュエータ(シートアクチュエータ48、プリテンショナアクチュエータ50、及びブレーキアクチュエータ52等)への電力の供給や、モータジェネレータ42によって発電された電力をバッテリー44や各種アクチュエータへの供給を電源制御ECU38の制御によって切り替えるようになっている。
本実施の形態では、電源制御ECU38は、衝突予測されていない通常の走行時には、一般的なハイブリッド自動車や電気自動車と同様に、バッテリー44による電力でモータジェネレータ42を駆動して走行を行うように制御する。また、乗員によってブレーキ操作が行われた場合には、モータジェネレータ42を発電機として機能させることによって回生電力を発生させ、該回生電力がバッテリー44やブレーキアクチュエータ52へ供給されるように、電源制御セレクタ40を制御する。
一方、衝突判断ECU34によって衝突が予測された場合(衝突予測時間が所定時間t1未満となった場合)には、電源制御ECU38は、モータジェネレータ42を発電機として機能させて回生電力を発生させ、該回生電力が各種アクチュエータ(シートアクチュエータ48、プリテンショナアクチュエータ50、及びブレーキアクチュエータ52等)に供給されるように、電源制御セレクタ40を制御する。すなわち、衝突等の緊急状態の際には、通常ブレーキを使用するので、モータジェネレータ42の発電抵抗により回生ブレーキを機能させて、緊急状態に応じたモータジェネレータ42の回生エネルギーを利用することで、回避手段や乗員保護手段等の乗員保護機能を作動させるために必要な電力を効率的に確保して供給することができる。
シート装置60は、シートバック64、シートクッション66、オットマン68の駆動制御を行うためのシート制御ECU80、及びシートバック64、シートクッション66、オットマン68の傾斜角度を調整するためのシートアクチュエータ48を備えている。
シート制御ECU80は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースを有するマイクロコンピュータ82を備えており、シートアクチュエータ48は、低駆動力アクチュエータ100及び高駆動力アクチュエータ102を備えている。なお、シート角度検出センサ46は、例えば、低駆動力アクチュエータ100の回転数や回転位置等をホール素子等のセンサを用いて検出することにより、シートバック64の傾斜角度を検出してもよい。
マイクロコンピュータ82には、電源回路90、移動体情報入力回路86、スイッチ入力回路88、駆動回路92、電流モニタ回路94、及びセンサ入力回路96が接続されている。
電源回路90は、電源制御セレクタ40を介してバッテリー44に接続されており、バッテリー44の電力をシート装置60の各部へ供給する。
移動体情報入力回路86は、移動体の各種制御を行うための乗員保護制御ECU36が接続されており、各種乗員保護制御ECU36との通信が可能とされている。
スイッチ入力回路88は、移動体用シートのシートバック64やシートスライド等の調整を操作指示するためのシート操作スイッチ84に接続されている。シート操作スイッチ84は、例えば、移動体用シートの側面やドアトリム等に設けられ、シートバック64のリクライニング調整やシートスライド等の調整を操作指示するためのスイッチが設けられている。
駆動回路92には、シートアクチュエータ48を駆動するための低駆動力アクチュエータ100及び高駆動力アクチュエータ102が接続されており、駆動回路92によって低駆動力アクチュエータ100及び高駆動力アクチュエータ102が駆動される。
低駆動力アクチュエータ100は電気モータであり、通常時はシートバック64、シートクッション66、オットマン68のリクライニング調整に使用し、緊急時は衝突するまでに乗員を衝撃吸収に備えられる適正な傾斜角度及び適正な動作速度に調整する。低駆動力アクチュエータ100は繰り返し使用可能な動力源であればよく、電気モータの他には高張力ばね、空気ばね、圧縮ガスシリンダーでもよい。
高駆動力アクチュエータ102は緊急時のみ使用され、低駆動力アクチュエータよりも大きな駆動力が求められる場合に低駆動力アクチュエータ100を補助するために用いる。高駆動力アクチュエータ102は高圧ボンベや火工品等のガス発生器でもよく、これら2つを併用してもよい。
本実施形態は図5に示したように、動力伝達部材124は球体形状の金属部材(ボール)、樹脂により構成される。通常時は、大ギア108とピニオンギア136は干渉しないようにカバー116によって位置決めされている。
大ギア108の外歯120は最初のボール(動力伝達部材124)のみを係合可能な谷間と、二番目以降のボール(動力伝達部材124)を2つずつ係合可能な谷間とを有するように形成されている。また、大ギア108は円環状に形成されており、内周部にピニオンギア136の外歯120と係合可能な内歯122が形成されている。
パイプ126内には複数のボール(動力伝達部材124)が充填されており、通常時は大ギア108の外歯120によって移動しないように支持されている。カバー116の内側には、側壁に沿ってボール(動力伝達部材124)が大ギア108の外周を移動できるように通路134が形成されている。そして、この通路134の終端部に第1ストッパ130が固定されている。第1ストッパ130は、例えば、樹脂部材により形成されており、弾性変形又は塑性変形によって、射出されたボール(動力伝達部材124)の運動エネルギーを吸収可能な強度を有している。
パイプ126内に収容されたボール(動力伝達部材124)の最後尾に第2ストッパ132が配置されており、第2ストッパ132の後方側にピストン128を配置し、パイプ126の終端部には高駆動力アクチュエータ102が配置されている。
移動体の衝突時には移動体に設置されたセンサから高駆動力アクチュエータ102に高速作動信号要求が送信され、高駆動力アクチュエータ102から高圧ガスがパイプ126内に噴出される。この高圧ガスによって、ピストン128はパイプ126の内面に密着して高圧ガスの漏洩を防止しながらパイプ126内を摺動する。そして、ピストン128の摺動によって、第2ストッパ132及びボール(動力伝達部材124)が押圧され、パイプ126内を移動する。
パイプ126から押し出された最初のボール(動力伝達部材124)は、大ギア108の外歯120に係合しつつ大ギア108を押圧し、大ギア108はピニオンギア136に向かって移動する。その結果、大ギア108の内歯122とピニオンギア136の外歯120とが係合し、大ギア108の回転によってピニオンギア136を回転させることができ、スプールを回転させることができる。
高駆動力アクチュエータ102から供給される高圧ガスによって、ボール(動力伝達部材124)は順次パイプ126から放出され、大ギア108を回転させた後、大ギア108の係合から離脱して通路134に沿って移動する。通路134の終端部に到達したボール(動力伝達部材124)は第1ストッパ130に接触する。このとき、第2ストッパ132はパイプ126から放出されない位置に留まっている。
第1ストッパ130に接触したボール(動力伝達部材124)は高圧ガスによって押圧されているが、第1ストッパ130の弾性変形又は塑性変形によってボール(動力伝達部材124)の運動エネルギーが吸収される。第1ストッパ130は、ボール(動力伝達部材124)によって押圧され、弾性変形又は塑性変形しながらボール(動力伝達部材124)の運動エネルギーを吸収する。したがって、ボール(動力伝達部材124)を第1ストッパ130に接触させることによって、ボール(動力伝達部材124)の速度を減速させることができる。
第1ストッパ130の変形分だけボール(動力伝達部材124)は第2ストッパ132及びピストン128が移動し、第2ストッパ132が大ギア108に噛み込むこととなる。第2ストッパ132は金属部材又は樹脂部材により形成されており、大ギア108に噛み込んで大ギア108の回転を阻止可能な強度を有している。なお、第2ストッパ132が大ギア108に噛み込んだときに、第2ストッパ132がパイプ126から放出されないように、ボール(動力伝達部材124)の個数及び第2ストッパ132の長さが調整されている。
上述した本実施形態に係る高駆動力アクチュエータ102によれば、ボール(動力伝達部材124)の前方(上流側)に第1ストッパ130を配置し、ボール(動力伝達部材124)の後方(下流側)に第2ストッパ132を配置したことにより、通路134の終端部と射出されたボール(動力伝達部材124)との間に第1ストッパ130を挟み込むことができ、ボール(動力伝達部材124)の運動エネルギーを第1ストッパ130により一次的に吸収することができる。また、通路134と大ギア108との間に第2ストッパ132を噛み込ませることによって、第2ストッパ132のパイプ126からの放出を抑制し、ガスの外部環境への放出を抑制することができる。なお、姿勢制御バッグ72へガスを供給させるために高圧ガスを外部環境の姿勢制御バッグ72へ放出してもよい。
特に、本実施形態では、第1ストッパ130によりボール(動力伝達部材124)の運動エネルギーを低減した状態で第2ストッパ132を作用させることができ、射出されたボール(動力伝達部材124)の運動エネルギーを効果的に低減することができるとともに、第2ストッパ132に求められる強度等の設計条件を緩和することもできる。
なお、動力伝達部材124はロッド形状の樹脂部材(樹脂ロッド)であってもよい。この場合、第1ストッパ130の強度を樹脂ロッドよりも低くしておけば、第1ストッパ130を変形させることができ、第1ストッパ130の強度を樹脂ロッドよりも高くしておけば、樹脂ロッドを変形させることができ、いずれにせよ動力伝達部材124(樹脂ロッド)の運動エネルギーを低減することができる。
高駆動力アクチュエータ102が作動する際の高圧ガスはガスチューブ112を通って、姿勢制御バッグ72の膨張に使用する。姿勢制御バッグ72は移動体の乗員が横向きに横たわる状態やうつ伏せ状態の場合など、乗員が衝撃吸収に備えられる適正な姿勢ではないときに、高圧ガスによるシートバック64が起き上がる力と姿勢制御バッグ72の膨張力で乗員が衝突時の衝撃吸収に備えられる体制に整えることができる。高圧ガスは高駆動力アクチュエータ102で放出されるガスが望ましいが、高圧ボンベや火工品等のガス発生器を新たに設けて高圧ガスを供給することでもよい。また、これら2つを併用してもよい。
ガスチューブ112は高駆動力アクチュエータ102と姿勢制御バッグ72と接続されている。高駆動力アクチュエータ102の高圧ガスを姿勢制御バッグ72へ供給することで姿勢制御バッグ72を膨張させることができる。ガスチューブ112は中空チューブであり、内部に金属や吸熱化合物、フィルタを配置することで、ガスの冷却機能やスラグ捕集機能を設けてもよい。
姿勢制御バッグ72の内部には支持部材が設けられている。支持部材を姿勢制御バッグ72内で伸長させることで、初期状態で折り畳まれて収縮した姿勢制御バッグ72を膨張させることが可能となる。また、吸入管で外気が姿勢制御バッグ72内に導入されることで、姿勢制御バッグ72の展開および膨張をさらに加速させることができる。そして、膨張を始めた姿勢制御バッグ72の内部空間は外気に対して負圧になるため、外気が外気吸入口から姿勢制御バッグ72内に流入し、姿勢制御バッグ72はさらに膨張する。このように、本実施形態によれば、姿勢制御バッグ72を膨張させる多量の高圧ガスや火工品等のガス発生器が不要となるので、シート装置の重量増加を抑制することができ、軽量化を図ることができる。
姿勢制御バッグ72は乗員を衝撃吸収に備えられる姿勢へ整えるために、シートバック64、シートクッション66、オットマン68の内部又は外部に設けてもよい。
また、姿勢制御バッグ72は、シートバック64、シートクッション66、オットマン68、シートベルト70と連動して、乗員を姿勢制御してもよい。また、姿勢制御バッグ72へガスを供給するガス発生器は高駆動力アクチュエータ102とは別に設けてもよい。
また、姿勢制御バッグ72は、乗員を衝撃吸収に備えられる姿勢へ整えるために、移動体に配置されたカメラまたはセンサ、シート装置に配置されたセンサで乗員の姿勢状態を検知し、衝撃検知または衝撃予測検知した際に、これらの検知結果に基づいて、乗員を適切に姿勢制御するものであってもよい。また、シートベルト70は乗員を固定するために必須ではなく、姿勢制御バッグ72で乗員を挟み込み固定してもよい。
低駆動力アクチュエータ100及び高駆動力アクチュエータ102は、シートバック64、シートクッション66、オットマン68を可動してシートバック64、シートクッション66、オットマン68の傾斜角度を調整するためのリクライニングアジャスタ74を駆動する。詳細には、低駆動力アクチュエータ100及び高駆動力アクチュエータ102は図4に示すように、並列配置されると共に、ギアボックス110に連結され、低駆動力アクチュエータ100及び高駆動力アクチュエータ102を駆動制御することによってリクライニングアジャスタ74を駆動してシート装置60のシートバック64、シートクッション66、オットマン68の傾斜角度を調整するようになっている。ギアボックス110は、低駆動力アクチュエータ100の回転軸に設けられた所定歯数の小ギア106と高駆動力アクチュエータ102の回転軸に設けられた小ギア106より大きい(所定歯数より多い歯数)大ギア108とを備えており、低駆動力アクチュエータ100及び高駆動力アクチュエータ102は、小ギア106、大ギア108が歯合することによって連結されている。そして、低駆動力アクチュエータ100の回転軸がリクライニングアジャスタ74に連結されている。
電流モニタ回路94は、駆動回路92から低駆動力アクチュエータ100及び高駆動力アクチュエータ102へ供給される電流を検出し、検出結果をマイクロコンピュータ82へ出力する。マイクロコンピュータ82は、電流モニタ回路94の検出結果を用いて低駆動力アクチュエータ100及び高駆動力アクチュエータ102の回転速度を制御する。
センサ入力回路96には、シートアクチュエータ48のシート角度検出センサ46が接続されており、シート角度検出センサ46の検出結果をマイクロコンピュータ82へ出力する。
一方、移動体情報入力回路86に接続された乗員保護制御ECU36としては、本実施の形態では、衝突等の危険状況を予測する衝突判断ECU34が接続されている。
以上のように構成されたシート装置60では、衝突判断ECU34によって衝突検知した場合に、シートバック64、シートクッション66、オットマン68の角度が予め定めた傾斜角度になるように調整を行うようにしている。これによって衝突等の緊急時に乗員を適正姿勢にすることができ、シートベルトやエアバッグ装置などの乗員保護装置により的確に乗員を保護することができる。
具体的には、衝突判断ECU34によって衝突検知した場合には、シートバック64、シートクッション66、オットマン68の高速作動要求をシート制御ECU80に出力する。そして、シート制御ECU80は、駆動回路92を制御して通常のシート調整時(シート操作スイッチ84の操作によるシート調整時)よりも高速でシートバック64、シートクッション66、オットマン68の調整を行うように制御する。
本実施の形態では、低駆動力アクチュエータ100のみの駆動により第1速度(低速)でシートバック64、シートクッション66、オットマン68の傾斜角度を調整し、低駆動力アクチュエータ100及び高駆動力アクチュエータ102を共に駆動することでギアボックス110によって動作速度を加速して第1速度より速い第2速度(高速)でシートバック64、シートクッション66、オットマン68の傾斜角度を調整する。なお、本実施の形態では、低駆動力アクチュエータ100及び高駆動力アクチュエータ102を共に駆動する際には、低駆動力アクチュエータ100で動作速度を制御する。
すなわち、シート装置60は、シート操作スイッチ71が操作されてシートバック64、シートクッション66、オットマン68の傾斜角度の調整が操作指示された場合には、シート制御ECU80は、駆動回路92を制御して低駆動力アクチュエータ100を駆動してシートバック64、シートクッション66、オットマン68の調整を行い、衝突判断ECU34によって衝突が検知された場合には、シート制御ECU80が、駆動回路92を制御して低駆動力アクチュエータ100及び高駆動力アクチュエータ102を共に駆動してシートバック64、シートクッション66、オットマン68の調整を行う。
上述のように構成された本発明の実施の形態に係わるシート装置60のシート制御ECU80で行われる処理の流れの一例を示す。図7は、本発明の実施の形態に係わるシート装置60のシート制御ECU80で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
まず、ステップ200では、シート操作スイッチ84がスイッチオフからオンになったか否かがマイクロコンピュータ82によって判定される。該判定は、乗員によってシート操作スイッチ84が操作されてシートバック64の調整を操作指示したと判定し、該判定でステップ202またはステップ206へ移行し、否定された場合にはステップ210へ移行する。
ステップ202またはステップ206では、アップ指示またはダウン指示かをマイクロコンピュータ82によって判定される。すなわち、シートバック64を起こす方向(アップ側)へ調整する操作指示または倒す方向(ダウン側)へ調整する操作指示がシート操作スイッチ84によって行われたかを判定し、該判定によりステップ204またはステップ208へ移行する。
ステップ204では、アップ側へ低駆動力アクチュエータ100だけが作動されて、ステップ100に戻って上述の処理が繰り返される。すなわち、マイクロコンピュータ82が駆動回路92を制御することによって、低駆動力アクチュエータ100だけをアップ側へ作動する。これによって、低駆動力アクチュエータ100の駆動力がそのままリクライニングアジャスタ74に伝達されて、シートバック64がアップ側へ移動される。
また、ステップ208では、ダウン側へ低駆動力アクチュエータ100だけが作動されて、ステップ200に戻って上述の処理が繰り返される。すなわち、マイクロコンピュータ82が駆動回路92を制御することによって、低駆動力アクチュエータ100だけをダウン側へ作動する。これによって、低駆動力アクチュエータ100の駆動力がそのままリクライニングアジャスタ74に伝達されて、シートバック64がダウン側へ移動される。
一方、ステップ210では、シート操作スイッチ84がスイッチオンからオフになったか否かがマイクロコンピュータ82によって判定される。該判定は、ステップ204〜208によってシートバック64の調整が開始されて、シート操作スイッチ84のスイッチ操作が終了したか否かを判定し、該判定が肯定された場合にはステップ212へ移行し、否定された場合にはステップ214へ移行する。
ステップ212では、ステップ104またはステップ106で低駆動力アクチュエータ100が作動されているので、低駆動力アクチュエータ100の作動が停止されてステップ200に戻って上述の処理が繰り返される。すなわち、マイクロコンピュータ82が駆動回路92を制御して低駆動力アクチュエータ100の作動を停止する。
また、ステップ214では、高速作動要求があるか否か判定される。該判定は、衝突判断ECU34によって衝突が検知されて、シートバック64の高速作動要求が移動体情報入力回路86を介して入力されたか否かをマイクロコンピュータ82が判定し、該判定が肯定された場合にはステップ216へ移行し、否定された場合にはステップ200に戻って上述の処理が繰り返される。なお、シート角度検出センサ46の検出結果はセンサ入力回路96を介して取得して、シート角度検出センサ46の検出結果からシートバック64の傾斜角度が予め定めた目標角度(目標角度範囲でもよい)の場合には、高速作動要求が行われてもステップ216以降の処理を行わずにステップ200に戻って上述の処理を繰り返すものとする。
ステップ216では、低駆動力アクチュエータ100及び高駆動力アクチュエータ102が作動開始されてステップ218へ移行する。すなわち、マイクロコンピュータ82が駆動回路92を制御することで低駆動力アクチュエータ100及び高駆動力アクチュエータ102の駆動を開始することになる。並列配置された低駆動力アクチュエータ100及び高駆動力アクチュエータ102の双方の駆動力がギアボックス110を介してリクライニングアジャスタ74に伝達されて、シートバック64が予め定めた目標角度範囲に調整開始される。このとき、低駆動力アクチュエータ100の回転軸に設けられた小ギア106より、高駆動力アクチュエータ102の回転軸に設けられた大ギア108の方が大きいため、リクライニングアジャスタ74に連結された低駆動力アクチュエータ100の回転速度が高駆動力アクチュエータ102及びギアボックス110によって加速されるので、低駆動力アクチュエータ100のみでリクライニングアジャスタ74を駆動する場合よりも高速にリクライニングアジャスタ74を駆動してシートバック64の調整を行うことができる。
続いてステップ218では、シートバック64の調整の停止条件を満たしたか否かマイクロコンピュータ82によって判定される。該判定は、例えば、シート角度検出センサ46の検出結果を乗員保護制御ECU36に介してシート制御ECU80が取得して、シートバック64の角度が予め定めた目標角度(目標角度範囲)になったか否かを判定したり、シートバック64の作動を開始してから予め定めた時間が経過したか否か等を判定したり、挟み込みなどによりモータ負荷が予め定めた負荷以上となったか否かを判定したり、衝突判断ECU34によって検知された衝突の状況が回避されたか否か等を判定し、判定が肯定されるまで待機してステップ218へ移行する。
停止条件の判定が肯定されると、ステップ220へ移行し、低駆動力アクチュエータ100及び高駆動力アクチュエータ102の作動が停止されてステップ200に戻って上述の処理が繰り返される。
このように、本実施の形態では、シート操作スイッチ84によってシートバック64の傾斜角度の調整が指示された場合には、低駆動力アクチュエータ100を作動してシートバック64の傾斜角度を調整し、衝突判断ECU34によって衝突の状況が検知された場合には、並列配置された低駆動力アクチュエータ100及び高駆動力アクチュエータ102を駆動することによって、シート操作スイッチ84の操作によってシートバック64を調整するよりも高速でシートバック64を調整することができる。
また、低駆動力アクチュエータ100及び高駆動力アクチュエータ102を並列配置して、ギアボックス110を介して低駆動力アクチュエータ100及び高駆動力アクチュエータ102とを連結するだけで、シートバック64の調整速度を変化させることができるので、特殊な機構を必要とすることなく、シートバック64の調整速度を可変することができる。
さらに、高速作動時には、低駆動力アクチュエータ100を駆動してシートバック64の傾斜角度を調整するので、1つのモータの駆動でシートバック64を調整できる。
すなわち、シートバック64の緊急作動(衝突が検知された場合の作動)時には、通常作動(シート操作スイッチ84の操作による作動)時より多くのエネルギーが必要となり、アクチュエータを体格アップして高いトルクで作動する必要がある反面、通常作動時には低速で作動させるため、緊急作動時より多くのエネルギーを必要としない。このため、通常作動時と緊急作動時の両立が困難であったが、上述のように複数のアクチュエータを並列配置してギアボックス110を設けるだけで、新たにアクチュエータを設計することなく通常作動と緊急作動を両立することができる。
なお、上記の実施形態では、シート可動部の一例としてシートバック64の傾斜角度を変更するリクライニング機構を一例として説明したが、これに限る物ではなく、例えば、移動体用シートを前後方向にスライドして位置調整を行うスライド機構を適用するようにしてもよいし、移動体用シートの他の可動部に適用するようにしてもよい。
また、上記の実施形態では、低駆動力アクチュエータ100の回転軸に小ギア106を設けると共に、高駆動力アクチュエータ102の回転軸に小ギア106より大きい大ギア108を設けて、各ギア106、108が歯合することによって2つのアクチュエータを連結すると共に、低駆動力アクチュエータ100の回転軸をリクライニングアジャスタ74に直接連結するようにしたギアボックス110を用いたが、これに限るものではなく、例えば、リクライニングアジャスタ74に連結したギアボックス110を更に設けて各ギアを歯合するようにして各アクチュエータの駆動力をギアボックス110に伝達するように構成した別のギアボックス110としてもよいし、他のギアの組み合わせを適用したギアボックス110を適用するようにしてもよいし、或いは、ベルト及びローラの組み合わせを用いて駆動力の伝達を行うものを適用するようにしてもよい。
また、上記の実施形態では、低駆動力アクチュエータ100及び高駆動力アクチュエータ102を並列配置するようにしたが、これに限るものではなく、例えば、図4において、高駆動力アクチュエータ102をリクライニングアジャスタ74側に配置するようにしてもよい。
また、上記実施形態に係るシート装置60は、図8〜図19に示したシート装置であってもよい。以下、各図を用いて、上記実施形態に係るシート装置60の変形例について詳細に説明する。なお、下記の各変形例において、下二桁が同じ部位の符号を付した部位については、上記実施形態と同様の部位であるので、説明を省略することがある。また、図示していない上記実施形態と同様の部位についても、説明を省略することがある。
(変形例1)
本変形例に係るシート装置160は、図8(a)のシートバック164を乗員Hの後方側へ傾斜した状態において、乗員保護制御ECUによって、衝突が予測された際、または、移動体の衝突が検知された際、図8(b)の状態にシート装置160の形態を変化させる点は同様だが、シート装置160の形態を変化させた際、別の姿勢制御バッグ装置を展開する点で、上記実施形態と異なっている。以下、具体的に説明する。
シート装置160は、図8(b)および図9(a)、(b)に示したように、シートバック164の頭頂部に設けられた姿勢制御バッグ装置111と、シートバック164の中央両側部に設けられた姿勢制御バッグ装置113、115と、を備えている。
姿勢制御バッグ装置111は、作動前には折り畳まれてシートバック164の内部又は外部に設けられている姿勢制御バッグ111aと、姿勢制御バッグ111aの内部又は外部にガスを供給可能なガス発生器(図示せず)と、を備えている。このガス発生器は、高圧ボンベまたは火工品等のガス発生器でもよく、これら2つを併用してもよい。以下の変形例でも同様である。
このような姿勢制御バッグ装置111は、乗員保護制御ECUによって、衝突が予測された際、または、移動体の衝突が検知された際、シートアクチュエータによって、図8(a)の状態のシートバック164のロックを解除して、図8(b)の状態になるまでシートバック164の傾斜角度を制御する。そして、シートバック164の傾斜角度をロック後、図9(a)に示したように、姿勢制御バッグ111aをシートバック164の頭頂部から外部へ放出し、点線矢印方向に伸びるように展開させる。図8(b)および図9(b)に示したように、姿勢制御バッグ111aが完全に展開した場合、乗員Hの頭部の姿勢制御および保護を行うことができる。
姿勢制御バッグ装置113、115のそれぞれは、上記実施形態の姿勢制御バッグ72と同様の構成および機能を有した姿勢制御バッグ113a、115aを備えている。
上記構成のシート装置160によれば、上記実施形態と同様の効果を奏するだけでなく、より乗員を保護することができる。
なお、シート装置160における各姿勢制御バッグの展開タイミングだが、傾斜しているシートバック164が起き上がってから展開してもいいが、傾斜しているシートバック164を起き上げ中に展開するか、各姿勢制御バッグを展開してから傾斜しているシートバック164を起き上げる方が好ましい。各姿勢制御バッグの展開後にシートバック164が起き上がる場合、乗員の姿勢位置を姿勢制御バッグで固定することで、シートバック164が起き上げ中に乗員が前方へ移動することを抑制することができる。また、シート装置160は、最初から図9(a)の状態で乗員Hが脚を伸ばした状態で座っている状態の場合でも、本変形例と同様に、各姿勢制御バッグを展開するとともに、オットマン168を下部へ下ろす動作をすることができるようにしてもよい。
(変形例2)
本変形例に係るシート装置260は、図10に示したように、オットマン268の先端部に設けられた足止め部271を備えている点で、上記実施形態と異なっている。
足止め部271は、乗員H1の足裏が当接される部位であり、衝突による減速時において、乗員H1自身が足で踏ん張ることで、座席の前方へ自身が移動することを防止できる。
なお、足止め部271は、通常時はオットマンに格納され、乗員保護制御ECUによって、衝突が予測された際、または、移動体の衝突が検知された際、オットマンの先端部から突き出して図10の状態になる突出機構を備えたものであってもよい。また、足止め部271は、乗員保護制御ECUによって、衝突が予測された際、または、移動体の衝突が検知された際、フラットになっているオットマン268の先端部のみが例えば90°回動し、図10の状態になる回動機構を備えたものであってもよい。足止め部271は衝突時に乗員が足下へ移動することを抑制する。足止め部271はオットマンがフラットになっているときに、突出機構から突き出ることが好ましく、オットマンが下方又は上方へ倒れている状態で突き出してもよい。
(変形例3)
本変形例に係るシート装置360は、図11(a)に示したように、押上げ部367を角部366aに有したシートクッション366を備えている点で、上記実施形態と異なっている。
押上げ部367は、図11(b)に示したように、作動時に角部366aを上部側に押し上げる押上げ部材367aを有している。この押上げ部材367aは、たとえば、エアバッグまたは後述するテレスコピック機構と同様のものであり、ガス発生器などの作動によって発生したガス圧によって、膨張または伸長するものである。
上記構成のシート装置360は、乗員保護制御ECUによって、衝突が予測された際、または、移動体の衝突が検知された際、押上げ部材367aが角部366aを上部側に押し上げることによって乗員H2の膝裏あたりを押し上げる。これにより、乗員H2の膝を屈曲させ、膝裏側を押し上げられた角部366aに引っ掛ける状態することができるので、乗員保護制御ECUによって、衝突が予測された際、または、移動体の衝突が検知された際、乗員H2が足下側へ移動することを防止することができる。
(変形例4)
本変形例に係るシート装置460は、図12(a)のシートバック464を乗員Hの後方側へ傾斜した状態において、乗員保護制御ECUによって、衝突が予測された際、または、移動体の衝突が検知された際、図12(b)の状態にシート装置460の形態を変化させる点は同様だが、シート装置460の形態を変化させる際、ダンパー式アクチュエータ475を用いる点で、上記実施形態と異なっている。
ダンパー式アクチュエータ475は、ガス発生器475aと、外筒475b1、中筒475b2、内筒475b3を有したテレスコピック機構475bとを備えたものであり、通常時は、図12(a)及び(b)に示したように、外筒475b1の内部に、中筒475b2、内筒475b3は格納されている。作動後のダンパー式アクチュエータ475は、図12(b)に示したように、ガス発生器475aで発生したガス圧によって図12(b)矢印方向に伸長し、シートバック464の背部を押すものとなっている。
上記構成のシート装置460は、乗員保護制御ECUによって、衝突が予測された際、または、移動体の衝突が検知された際、シートアクチュエータ448によって、図12(a)の状態のシートバック464のロックを解除する。そして、ガス発生器475aで発生したガス圧によって、テレスコピック機構475bを図12(b)矢印方向に伸長させ、シートバック464の背部を押して、たとえば、シートバック464の傾斜角度を図12(b)の状態にする。このとき、シートバック464の傾斜角度が所定角度以上にならないように、当たり止めを設けておいてもよい。その後、シートアクチュエータ448によって、シートバック464の傾斜角度が変わらないようにロックする。
上記構成のシート装置460によれば、上記実施形態と同様の効果を奏するだけでなく、より迅速に乗員を保護することができる。
なお、ダンパー式アクチュエータ475は、テレスコピック機構475bの代わりに、油圧などを用いたシリンダ構造のものを用いてもよい。また、本変形例では、ダンパー式アクチュエータをシートバック464の外部に設けたが、この代わりに、シートバック内部に設け、作動時にシートバック464から外部の移動体の床方向へ飛び出すように構成したものであってもよい。これにより、作動時にダンパー式アクチュエータの先端部が移動体の床を押すことによる反発力で、シートバックを起き上がらせることができる。
(変形例5)
本変形例に係るシート装置560は、図13(a)のシートバック564を乗員Hの後方側へ傾斜した状態において、乗員保護制御ECUによって、衝突が予測された際、または、移動体の衝突が検知された際、図13(b)の状態にシート装置560の形態を変化させる点は同様だが、シート装置560の形態を変化させる際、エアバッグ式アクチュエータ577を用いる点で、上記実施形態と異なっている。
エアバッグ式アクチュエータ577は、ガス発生器577aと、ガス発生器577aの作動により発生したガスが内部に流入することによって膨張するエアバッグ577bと、を備えている。
ガス発生器577a作動前のエアバッグ577bは、図13(a)に示したように、折り畳まれており、ガス発生器577aの作動後に、図13(b)に示したように膨張展開する。
上記構成のシート装置560は、乗員保護制御ECUによって、衝突が予測された際、または、移動体の衝突が検知された際、シートアクチュエータ548によって、図13(a)の状態のシートバック564のロックを解除する。そして、ガス発生器577aで発生したガス圧によってエアバッグ577bを膨張させ、シートバック564の背部を押して、たとえば、シートバック564の傾斜角度を図13(b)の状態にする。このとき、シートバック564の傾斜角度が所定角度以上にならないように、当たり止めを設けておいてもよい。その後、シートアクチュエータ548によって、シートバック564の傾斜角度が変わらないようにロックする。
上記構成のシート装置560によれば、上記実施形態と同様の効果を奏するだけでなく、より迅速に乗員を保護することができる。
また、本変形例では、エアバッグ式アクチュエータをシートバック564の外部に設けたが、この代わりに、シートバック内部に設け、作動時にシートバック564から外部の移動体の床方向へ飛び出すように構成したものであってもよい。これにより、作動時にエアバッグ式アクチュエータの膨張したエアバッグが移動体の床を押すことによる反発力で、シートバックを起き上がらせることができる。
(変形例6)
図14に示したように、本変形例に係るシート装置660は、上記実施形態における姿勢制御バッグに関する変形例であって、シートバック664の頭頂部の両側部内部に設けられた姿勢制御バッグ装置611、613を備えている。
姿勢制御バッグ装置611、613のそれぞれは、ガス発生器(図示せず)で発生したガス圧により膨張可能な姿勢制御バッグ611a、613aを有している。
姿勢制御バッグ611a、613aは、ガス発生器(図示せず)の作動後、膨張しつつシートバック664頭頂部から図14紙面の左右方向に沿って外部に放出され、図14(a)の点線矢印方向に膨張展開して、図14(b)に示した位置に配置される。すなわち、乗員保護制御ECUによって、衝突が予測された際、または、移動体の衝突が検知された際、ガス発生器が作動して発生したガスの圧力により膨張展開した姿勢制御バッグ611a、613aのそれぞれは、乗員の頭部、肩部、腰部を乗員の両側部から覆って、乗員の姿勢を制御するとともに保護する。
上記構成のシート装置660によれば、上記実施形態の姿勢制御バッグと同様の効果を奏することができる。
(変形例7)
図15に示したように、本変形例に係るシート装置760は、上記実施形態における姿勢制御バッグに関する変形例であって、シートバック764の頭頂部の両側部内部に設けられた姿勢制御バッグ装置711、713と、シートバック764の両側部内部に設けられた姿勢制御バッグ装置715、717と、を備えている。
姿勢制御バッグ装置711、713は、ガス発生器(図示せず)で発生したガス圧により膨張可能な姿勢制御バッグ711a、713aを有している。姿勢制御バッグ711a、713aは、ガス発生器(図示せず)の作動後、膨張しつつシートバック764頭頂部から図15紙面の左右方向に沿って外部に放出され、図15(a)の点線矢印方向に膨張展開して、図15(b)に示した位置(乗員の頭部および肩部付近)に配置される。
姿勢制御バッグ装置715、717は、ガス発生器(図示せず)で発生したガス圧により膨張可能な姿勢制御バッグ715a、717aを有している。
姿勢制御バッグ715a、717aは、ガス発生器(図示せず)の作動後、膨張しつつシートバック764から外部(図15紙面手前側)に放出され、図15(a)の点線矢印方向に膨張展開して、図15(b)に示した位置(乗員の腕部付近、腰部付近)に配置される。すなわち、乗員保護制御ECUによって、衝突が予測された際、または、移動体の衝突が検知された際、膨張展開した姿勢制御バッグ711a、713a、715a、717aのそれぞれは、乗員の頭部、肩部、腕部、腰部を乗員の両側部から覆って、乗員の姿勢を制御するとともに保護する。
上記構成のシート装置760によれば、上記実施形態の姿勢制御バッグと同様の効果を奏することができる。
(変形例8)
図16に示したように、本変形例に係るシート装置860は、上記実施形態における姿勢制御バッグに関する変形例であって、シートバック864の頭頂部の両側部内部に設けられた姿勢制御バッグ装置811、813と、シートバック864下部の両側部内部に設けられた姿勢制御バッグ装置815、817と、を備えている。
姿勢制御バッグ装置811、813は、ガス発生器(図示せず)で発生したガス圧により膨張可能な姿勢制御バッグ811a、813aを有している。姿勢制御バッグ811a、813aは、ガス発生器(図示せず)の作動後、膨張しつつシートバック864頭頂部から図16紙面の左右方向に沿って外部に放出され、図16(a)の点線矢印方向に膨張展開して、図16(b)に示した位置(乗員の頭部および肩部付近)に配置される。
姿勢制御バッグ装置815、817は、ガス発生器(図示せず)で発生したガス圧により膨張可能な姿勢制御バッグ815a、817aを有している。姿勢制御バッグ815a、817aは、ガス発生器(図示せず)の作動後、膨張しつつシートバック864から外部(図16紙面手前側)に放出され、図16(a)の点線矢印方向に膨張展開して、図16(b)に示した位置(乗員の腰部付近)に配置される。
すなわち、乗員保護制御ECUによって、衝突が予測された際、または、移動体の衝突が検知された際、膨張展開した姿勢制御バッグ811a、813a、815a、817aのそれぞれは、乗員の頭部、肩部、腰部を乗員の両側部から覆って、乗員の姿勢を制御するとともに保護する。
上記構成のシート装置860によれば、上記実施形態の姿勢制御バッグと同様の効果を奏することができる。
(変形例9)
図17に示したように、本変形例に係るシート装置960は、上記実施形態における姿勢制御バッグに関する変形例であって、シートバック964の頭頂部の両側部内部に設けられた姿勢制御バッグ装置911、913と、シートバック964中央の両側部内部に設けられた姿勢制御バッグ装置915、917と、シートバック964下部の両側部内部に設けられた姿勢制御バッグ装置919、921と、を備えている。
姿勢制御バッグ装置911、913は、ガス発生器(図示せず)で発生したガス圧により膨張可能な姿勢制御バッグ911a、913aを有している。姿勢制御バッグ911a、913aは、ガス発生器(図示せず)の作動後、膨張しつつシートバック964頭頂部から図17紙面の左右方向に沿って外部に放出され、図17(a)の点線矢印方向に膨張展開して、図17(b)に示した位置(乗員の頭部および肩部付近)に配置される。
姿勢制御バッグ装置915、917は、ガス発生器(図示せず)で発生したガス圧により膨張可能な姿勢制御バッグ915a、917aを有している。姿勢制御バッグ915a、917aは、ガス発生器(図示せず)の作動後、膨張しつつシートバック964から外部(図17紙面手前側)に放出され、図17(a)の点線矢印方向に膨張展開して、図17(b)に示した位置(乗員の腕部付近)に配置される。
姿勢制御バッグ装置919、921は、ガス発生器(図示せず)で発生したガス圧により膨張可能な姿勢制御バッグ919a、921aを有している。姿勢制御バッグ919a、921aは、ガス発生器(図示せず)の作動後、膨張しつつシートバック964から外部(図17紙面手前側)に放出され、図17(a)の点線矢印方向に膨張展開して、図17(b)に示した位置(乗員の腰部付近)に配置される。
すなわち、乗員保護制御ECUによって、衝突が予測された際、または、移動体の衝突が検知された際、膨張展開した姿勢制御バッグ911a、913a、915a、917a、919a、921aのそれぞれは、乗員の頭部、肩部、腰部を乗員の両側部から覆って、乗員の姿勢を制御するとともに保護する。
上記構成のシート装置960によれば、上記実施形態の姿勢制御バッグと同様の効果を奏することができる。
なお、上記変形例6〜9においては、乗員の頭部と肩部とを同時に姿勢制御し保護する姿勢制御バッグ装置が一部に用いられたものであったが、これらの変形例として、頭部用、肩部用それぞれ独立した姿勢制御バッグ装置を設けてもよい。なぜなら、乗員の頭部と、この頭部以外の乗員の胴体とは、別々に動くことが多いため、また、頭部、胴体それぞれの衝突時の前荷重も異なるため、頭部専用、肩部専用など、各部専用の姿勢制御バッグ装置を適宜設けることが好ましいためである。
(変形例10)
図18に示したように、本変形例に係るシート装置1060は、上記実施形態における姿勢制御バッグに関する変形例であって、シートバック1064の頭頂部の両側部内部に設けられた姿勢制御バッグ装置1011、1013を備えている。
姿勢制御バッグ装置1011は、ガス発生器(図示せず)で発生したガス圧により膨張可能な姿勢制御バッグ1011aと、姿勢制御バッグ1011aの先端部に設けられた締結用部材1011bと、を有している。また、姿勢制御バッグ装置1013は、ガス発生器(図示せず)で発生したガス圧により膨張可能な姿勢制御バッグ1013aと、姿勢制御バッグ1013aの先端部に設けられた締結用部材1013bと、を有している。
姿勢制御バッグ1011a、1013aは、ガス発生器(図示せず)の作動後、膨張しつつシートバック1064頭頂部から図18紙面の左右方向に沿って外部に放出され、図18(a)の点線矢印方向に膨張展開して、図18(b)に示した位置(乗員の頭部周囲)に配置される。姿勢制御バッグ1011a、1013aは乗員の頭部が前方移動することを抑制するだけではなく、ウインドシールドガラスの飛散から頭部を保護するために、頭部全体を覆うことが好ましい。
締結用部材1011b、1013bは、姿勢制御バッグ1011a、1013aの膨張後に、先端部同士を締結(接続して固定)するための部材であり、たとえば、マジックテープ(登録商標)、磁石(ネオジウムなど)、電磁石などが挙げられる。締結用部材により、シートバック64の起き上がり時又は移動体の衝突時に乗員の頭部が前方移動することを抑制する。また、姿勢制御バッグ1011a、1013aの乗員側にクッション部を設け、乗員の頭部の衝撃を低減してもよい。
乗員保護制御ECUによって、衝突が予測された際、または、移動体の衝突が検知された際、膨張展開した姿勢制御バッグ1011a、1013aのそれぞれは、乗員の頭部を乗員の両側部から覆って、乗員の頭部の姿勢を制御するとともに保護する。
上記構成のシート装置960によれば、乗員保護制御ECUによって、衝突が予測された際、または、移動体の衝突が検知された際、乗員の頭部の前方移動を抑止することができるとともに、上記変形例1の姿勢制御バッグと同様の効果を奏することができる。
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態および変形例に限定されるものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および変形例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。