JPWO2018235839A1 - 近赤外線吸収繊維とその製造方法、およびこれを用いた繊維製品 - Google Patents

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Abstract

太陽光などからの近赤外線を効率良く吸収し、優れた保温性を有する繊維、および当該繊維を用いた繊維製品を提供する。繊維の内部に近赤外線吸収特性を有する超微粒子を含有する近赤外線吸収繊維であって、前記近赤外線吸収特性を有する超微粒子は、複合タングステン酸化物超微粒子であり、前記複合タングステン酸化物超微粒子は、シリコン粉末標準試料(NIST製、640c)の(220)面のXRDピーク強度の値を1としたとき、XRDピークトップ強度の比の値が0.13以上である複合タングステン酸化物超微粒子である近赤外線吸収繊維および当該繊維を用いた繊維製品を提供する。

Description

本発明は、太陽光などからの赤外線を吸収する材料を含有させた近赤外線吸収繊維とその製造方法、および当該繊維を加工してなる保温性の高い繊維製品に関する。
保温効果を高めた防寒衣料やインテリア、レジャー用品が様々に考案され、実用化されてきた。当該保温効果を高める方法には、大別して2通りの方法ある。第一の方法は、例えば前記防寒衣料において織り編みの構造を制御したり、用いられる繊維を中空や多孔質にしたりするなどして当該防寒衣料における空気層を物理的に多くし、人体から発生する熱の放散性を減少させて保温性を維持する方法である。第二の方法は、例えば前記防寒衣料において、衣料全体または当該防寒衣料を構成する繊維ヘ化学的・物理的な加工を施して、人体から発生する熱を再び人体へ向けて輻射したり、当該防寒衣料が受けた太陽光の一部を熱に変換するなどの積極的な方法により熱を蓄熱し、保温性を向上させる方法である。
上述した第一の方法として、衣料中の空気層を多くする、生地を厚くする、目を細かくする、あるいは色を濃くするといった方法が採られてきた。例えば、セーターなどの冬期に用いられる衣料がそれである。また、例えば、冬期のスポーツ向け衣料によく用いられてきた衣料には、表地と裏地の間に中綿が入れられ、当該中綿の空気層の厚みで保温性を維持している。しかし、中綿が入れられると、衣料が重くかさばるために、動き易さを要求されるスポーツ向けでは不具合を生じていた。これら不具合を解消するために、近年では、上述した第二の方法である内部で発生する熱や、外部からの熱を積極的に有効利用する方法がとられ始めている。
当該第二の方法を実施する方法の一つとして、アルミニウムやチタンなどの金属を衣料の裏地などに蒸着し、体内から出る放射熱を当該金属蒸着面で反射することで、積極的に熱の発散を防ぐ方法などが知られている。しかし、これらの方法では衣料に金属を蒸着加工するのにかなりのコストがかかるばかりか、蒸着むらの発生等により歩留まりが悪くなり、結果的に製品自体の価格アップにつながっていた。
また、当該第二の方法を実施する他の方法として、アルミナ系、ジルコニア系、マグネシア系などのセラミック粒子を繊維そのものに混練して、これらの無機微粒子が持つ遠赤外線放射効果や光を熱に変える効果を利用する方法、即ち積極的に外部のエネルギーを取り入れる方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、熱伝導率が0.3kcal/m・sec・℃以上の金属、金属イオンの少なくとも1種を含有させた近赤外線放射特性を有するシリカまたは硫酸バリウム等の無機微粒子を調製し、当該無機微粒子の1種または2種以上を含有した近赤外線放射性繊維を製造し、当該繊維を用いて保温性を向上させる技術が記載されている。
特許文献2には、繊維中に、当該繊維重量に対して0.1〜20重量%の光吸収熱変換能と遠赤外線放射能力とを有するセラミック微粒子と、酸化アルミニウム微粒子とを、含有せしめて当該繊維に優れた保温性を発揮させることが記載されている。
特許文献3には、アミノ化合物からなる赤外線吸収剤、必要に応じて用いられる紫外線吸収剤及び各種安定剤を含むバインダー樹脂を分散、固着させてなる赤外線吸収加工繊維製品が提案されている。
特許文献4には、直接染料、反応染料、ナフトール染料、バット染料の中から選定される、近赤外線領域の吸収が黒色染料よりも大きい特性を持つ染料と、他の染料とを組み合わせて染色することにより、近赤外線を吸収する(波長750〜1500nmの近赤外線の範囲内で、生地の分光反射率が65%以下である。)セルロース系繊維構造物を得る近赤外線吸収加工方法が提案されている。
特許文献5および特許文献6において、本発明者らは、可視光の透過率が高くかつ反射率が低いにも拘わらず、近赤外領域の光の透過率が低くかつ反射率が高い材料として6ホウ化物およびタングステン酸化物微粒子および複合タングステン酸化物微粒子を選択し、これらの微粒子を近赤外線吸収成分として含有させた繊維、およびその繊維を加工して得られる繊維製品を提案している。
特開平11−279830号公報 特開平5−239716号公報 特開平8−3870号公報 特開平9−291463号公報 特開2005−9024号公報 特開2006−132042号公報
金属等を含有させた近赤外線放射特性を有するシリカ等の無機微粒子を調製し、当該無機微粒子を含有した近赤外線放射性繊維を製造した場合、当該無機微粒子の繊維に対する添加量が多いことから、繊維の比重が高くなるため衣服が重くなったり、溶融紡糸中に均一に分散させることが極めて困難になったりする等の問題点があった。また、アルミニウムやチタン等の金属粉末を、固着や蒸着加工等により繊維ヘ付着させて、輻射反射効果を持たせ保温性を向上させる技術も知られている。しかし、固着や蒸着加工による繊維の色の変化が大きく用途が限定されたり、蒸着加工に伴うコストアップ、蒸着加工前の準備工程における布帛の微妙な取扱いによる蒸着斑の発生や、洗濯あるいは着用時の摩擦に起因する蒸着金属の脱落による保温性能の低下等種々の問題があった。
繊維中に、セラミック微粒子と、酸化アルミニウム微粒子とを含有せしめる方法では、用いている赤外線吸収剤が有機材料もしくは黒色染料等のため、熱や湿度による劣化が著しく、耐候性に劣るという問題を有している。さらに、前記材料を付与することで濃色に着色されるため、淡色の製品には使用できず、使用可能分野が限定されるという欠点があった。
6ホウ化物微粒子を含有させた繊維の場合、保温性を持たせる実用的な繊維製品とするには、より高い近赤外線吸収特性が求められ、当該繊維においても、近赤外線吸収特性の改善の余地を有していた。
出願人の検討によると、例えば特許文献6にて開示された方法で製造したタングステン酸化物微粒子または複合タングステン酸化物微粒子は、その結晶性が低い為、当該複合タングステン酸化物微粒子を含有させた繊維の近赤外線吸収特性は、十分なものではなかった。
本発明は、これらの課題を解決するために為されたものであり、太陽光などからの近赤外線を効率良く吸収し、優れた保温性を有する近赤外線吸収繊維とその製造方法、および当該繊維を用いた繊維製品を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意研究を行った。そして、複合タングステン酸化物超微粒子のX線回折(本発明において「XRD」と記載する場合がある。)パターンにおいて、ピークトップ強度の比の値が所定の値である複合タングステン酸化物超微粒子を知見した。具体的には、シリコン粉末標準試料(NIST製、640c)の(220)面に係るXRDピーク強度の値を1としたときの、前記複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークトップ強度の比の値が0.13以上である複合タングステン酸化物超微粒子である。
当該複合タングステン酸化物超微粒子は、可視光領域で透明性があり、結晶性が高いことによって優れた近赤外線吸収特性を有していた。そして、当該複合タングステン酸化物超微粒子を含む分散液を高い生産性をもって製造可能な、汎用性のある複合タングステン酸化物超微粒子であった。
そして当該複合タングステン酸化物超微粒子を適宜な媒体中に分散させ、当該分散物を繊維の表面および/または内部に含有させた繊維は、従来の技術に係る近赤外線吸収繊維と比較して、光の干渉効果を用いずとも、太陽光線、特に近赤外線領域の光をより効率良く吸収し、同時に可視光領域の光を透過させることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上述の課題を解決する為の第1の発明は、
繊維の内部に近赤外線吸収特性を有する超微粒子を含有する近赤外線吸収繊維であって、
前記近赤外線吸収特性を有する超微粒子は、複合タングステン酸化物超微粒子であり、
前記複合タングステン酸化物超微粒子は、シリコン粉末標準試料(NIST製、640c)の(220)面のXRDピーク強度の値を1としたとき、XRDピークトップ強度の比の値が0.13以上である複合タングステン酸化物超微粒子である、ことを特徴とする近赤外線吸収繊維である。
第2の発明は、
前記複合タングステン酸化物超微粒子が一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物超微粒子である、ことを特徴とする第1の発明に記載の近赤外線吸収繊維である。
第3の発明は、
前記複合タングステン酸化物超微粒子の結晶子径が1nm以上200nm以下である、ことを特徴とする第1または第2の発明に記載の近赤外線吸収繊維である。
第4の発明は、
前記複合タングステン酸化物超微粒子が六方晶の結晶構造を含む、ことを特徴とする第1から第3の発明のいずれかに記載の近赤外線吸収繊維である。
第5の発明は、
前記複合タングステン酸化物超微粒子の揮発成分の含有率が2.5質量%以下である、ことを特徴とする第1から第4の発明のいずれかに記載の近赤外線吸収繊維である。
第6の発明は、
前記複合タングステン酸化物超微粒子の含有量が、前記繊維の固形分に対して0.001質量%以上80質量%以下である、ことを特徴とする第1から第5の発明のいずれかに記載の近赤外線吸収繊維である。
第7の発明は、
第1から第6の発明のいずれかに記載の近赤外線吸収繊維の表面および/または内部ヘ、さらに遠赤外線放射物質の微粒子を含有させた繊維であって、
前記遠赤外線放射物質の微粒子の含有量が、前記繊維の固形分に対して0.001質量%以上80質量%以下である、ことを特徴とする近赤外線吸収繊維である。
第8の発明は、
前記繊維が合成繊維、半合成繊維、天然繊維、再生繊維、無機繊維、またはこれらの繊維の混紡、合糸、混繊による混合糸のいずれか1種以上から選択される繊維である、ことを特徴とする第1から第7の発明のいずれかに記載の近赤外線吸収繊維である。
第9の発明は、
前記合成繊維がポリウレタン繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリエーテルエステル系繊維から選択されるいずれか1種以上の合成繊維である、ことを特徴とする第8の発明に記載の近赤外線吸収繊維である。
第10の発明は、
前記半合成繊維がセルロース系繊維、タンパク質系繊維、塩化ゴム、塩酸ゴムから選択されるいずれか1種以上の半合成繊維である、ことを特徴とする第8または第9の発明に記載の近赤外線吸収繊維である。
第11の発明は、
前記天然繊維が植物繊維、動物繊維、鉱物繊維から選択されるいずれか1種以上の天然繊維である、ことを特徴とする第8から第10の発明のいずれかに記載の近赤外線吸収繊維である。
第12の発明は、
前記再生繊維が、セルロース系繊維、タンパク質系繊維、アルギン繊維、ゴム繊維、キチン繊維、マンナン繊維から選択されるいずれか1種以上の再生繊維である、ことを特徴とする第8から第11の発明のいずれかに記載の近赤外線吸収繊維である。
第13の発明は、
前記無機繊維が金属繊維、炭素繊維、けい酸塩繊維から選択されるいずれか1種以上の無機繊維である、ことを特徴とする第8から第12の発明のいずれかに記載の近赤外線吸収繊維である。
第14の発明は、
前記複合タングステン酸化物超微粒子の表面が、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムから選択されるいずれか1種類以上の元素を含む化合物で被覆されてなる、ことを特徴とする第1から第13の発明のいずれかに記載の近赤外線吸収繊維である。
第15の発明は、
前記化合物が酸化物である、ことを特徴とする第14の発明に記載の近赤外線吸収繊維である。
第16の発明は、
第1から第15の発明のいずれかに記載の近赤外線吸収繊維が加工されてなる、ことを特徴とする繊維製品である。
第17の発明は、
近赤外線吸収特性を有する超微粒子を含有する近赤外線吸収繊維の製造方法であって、
前記近赤外線吸収特性を有する超微粒子は、複合タングステン酸化物超微粒子であり、
前記複合タングステン酸化物粒子を、そのXRDピークトップ強度の比の値が、シリコン粉末標準試料(NIST製、640c)の(220)面のXRDピーク強度の値を1としたとき、0.13以上となるように焼成して得、
前記XRDピークトップ強度の比の値を0.13以上に保ちながら、前記得られた複合タングステン酸化物粒子を繊維に含有させる、ことを特徴とする近赤外線吸収繊維の製造方法である。
本発明に係る近赤外線吸収繊維は、近赤外線吸収成分として複合タングステン酸化物超微粒子を含有させた繊維であって、太陽光線、特に近赤外線領域の光をより効率良く吸収し、同時に可視光領域の光を透過させることで、優れた保温性を発揮する繊維である。そして、本発明に係る繊維を用いた繊維製品は、その優れた近赤外線吸収特性から、保温性を必要とする防寒用衣料、スポーツ用衣料、ストッキング、カーテン等の繊維製品やその他、産業用繊維資材等の種々の用途に使用することができる。
本発明に用いられる高周波プラズマ反応装置の概念図である。 実施例1に係る粉砕前微粒子のX線回折パターンである。
本発明に係る近赤外線吸収繊維を実施するための形態について、[1]複合タングステン酸化物超微粒子、[2]近赤外線吸収繊維、の順に説明する。
[1]複合タングステン酸化物超微粒子
本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子について、[a]複合タングステン酸化物超微粒子の特性、[b]複合タングステン酸化物超微粒子の合成方法、[c]複合タングステン酸化物超微粒子の揮発成分とその乾燥処理方法、[d]複合タングステン酸化物超微粒子分散液、の順で説明する。
[a]複合タングステン酸化物超微粒子の特性
本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子は近赤外線吸収特性を有し、シリコン粉末標準試料(NIST製、640c)の(220)面に係るXRDピーク強度の値を1としたときの、前記複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークトップ強度の比の値が0.13以上のものである。
以下、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子の特性について、(1)XRDピークトップ強度の比、(2)組成、(3)結晶構造、(4)BET比表面積、(5)分散粒子径、(6)揮発成分、(7)表面被覆、(8)まとめ、の順で詳細に説明する。
(1)XRDピークトップ強度の比
上述した複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークトップ強度の測定には、粉末X線回折法を用いる。このとき、複合タングステン酸化物超微粒子の試料間において、測定結果に客観的な定量性を持たせるため、標準試料を定めて、当該標準試料のピーク強度を測定し、当該標準試料のピーク強度に対する当該超微粒子試料のXRDピークトップ強度の比の値をもって、各超微粒子試料のXRDピークトップ強度を測定したものである。
ここで標準試料は、当業界にて普遍性のあるシリコン粉末標準試料(NIST製、640c)を使用することとし、複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークと重なり合わない、前記シリコン粉末標準試料における(220)面を基準とした。
さらに客観的な定量性を担保するため、その他の測定条件も常に一定にすることとした。
具体的には、深さ1.0mmの試料ホルダーへ、X線回折測定の際における公知の操作によって超微粒子試料を充填する。具体的には、超微粒子試料において優先方位(結晶の配向)が生じるのを回避する為、ランダム且つ徐々に充填し、尚且つムラなく出来るだけ密に充填することが好ましい。
X線源として、陽極のターゲット材質がCuであるX線管球を45kV/40mAの出力設定で使用し、ステップスキャンモード(ステップサイズ:0.0165°(2θ)および計数時間:0.022m秒/ステップ)のθ−2θの粉末X線回折法で測定することとしたものである。
このとき、X線管球の使用時間によってXRDピーク強度は変化するので、X線管球の使用時間は試料間で殆ど同じであることが望ましい。客観的な定量性を確保するため、X線管球使用時間の試料間の差は、最大でもX線管球の予測寿命の20分の1以下に収めることが必要である。より望ましい測定方法として、複合タングステン酸化物超微粒子のX線回折パターンの測定毎に、シリコン粉末標準試料の測定を実施して、前記XRDピークトップ強度の比を算出する方法が挙げられる。本発明ではこの測定方法を用いた。市販のX線装置のX線管球予測寿命は数千時間以上で且つ1試料当たりの測定時間は数時間以下のものが殆どであるため、上述の望ましい測定方法を実施することで、X線管球使用時間によるXRDピークトップ強度の比への影響を無視できるほど小さくすることが出来る。
また、X線管球の温度を一定とするため、X線管球用の冷却水温度も一定とすることが望ましい。
なお、複合タングステン酸化物超微粒子のX線回折パターンは、複合タングステン酸化物の粉体試料を構成する多数の複合タングステン酸化物超微粒子のX線回折パターンである。また、複合タングステン酸化物超微粒子分散液を得る為に、後述する解砕、粉砕または分散された後の複合タングステン酸化物超微粒子のX線回折パターンである。そして、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子やその分散液に含まれる複合タングステン酸化物超微粒子のX線回折パターンは、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散体のX線回折パターンにおいても維持されている。
XRDピークトップ強度は、X線回折パターンにおいて最もピークカウントが高い2θにおけるピーク強度である。そして、六方晶のCs複合タングステン酸化物やRb複合タングステン酸化物では、X線回折パターンにおけるピークカウントの2θは、25°〜31°の範囲に出現する。
上述した複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークトップ強度は、当該超微粒子の結晶性と密接な関係があり、さらには当該超微粒子における自由電子密度と密接な関係がある。本発明者らは、当該XRDピークトップ強度が、当該複合タングステン酸化物超微粒子の近赤外線吸収特性に大きく影響を及ぼすことを知見したものである。具体的には、当該XRDピークトップ強度比の値が0.13以上をとることにより、当該超微粒子における自由電子密度が担保され、所望の近赤外線吸収特性が得られることを知見したものである。尚、当該XRDピークトップ強度比の値は0.13以上であれば良く、0.7以下であることが好ましい。
前記複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークトップ強度について、異なる観点からも説明する。
前記複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークトップ比の値が0.13以上であることは、異相が殆ど含まれていない結晶性の良い複合タングステン酸化物超微粒子が得られていることを表す。即ち、得られる複合タングステン酸化物超微粒子がアモルファス(非晶質)化していないと考えられる。この結果、可視光を透過する有機溶媒などの液体媒体や、可視光を透過する樹脂などの固体媒体へ、当該異相が殆ど含まれていない複合タングステン酸化物超微粒子を分散させることにより、近赤外線吸収特性が十分得られると考えられる。
尚、本発明において「異相」とは、複合タングステン酸化物以外の化合物の相をいう。また、XRDピークトップ強度を測定する際に得られるX線回折パターンを解析することで、複合タングステン酸化物超微粒子の結晶構造や結晶子径を求めることが出来る。
(2)組成
本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子は、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表記される、複合タングステン酸化物超微粒子であることが好ましい。
当該一般式MxWyOzで示される複合タングステン酸化物超微粒子について説明する。
一般式MxWyOz中のM元素、x、y、zおよびその結晶構造は、複合タングステン酸化物超微粒子の自由電子密度と密接な関係があり、近赤外線吸収特性に大きな影響を及ぼす。
一般に、三酸化タングステン(WO)中には有効な自由電子が存在しないため近赤外線吸収特性が低い。
ここで本発明者らは、当該タングステン酸化物へ、M元素(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybの内から選択される1種以上の元素)を添加して複合タングステン酸化物とすることで、当該複合タングステン酸化物中に自由電子が生成され、近赤外線領域に自由電子由来の吸収特性が発現し、波長1000nm付近の近赤外線吸収材料として有効なものとなり、且つ、当該複合タングステン酸化物は化学的に安定な状態を保ち、耐候性に優れた近赤外線吸収材料として有効なものとなることを知見したものである。さらに、M元素は、Cs、Rb、K、Tl,Ba、Cu、Al、Mn、Inが好ましいこと、なかでも、M元素がCs、Rbであると、当該複合タングステン酸化物が六方晶構造を取り易くなる。この結果、可視光線を透過し、近赤外線を吸収することから、後述する理由により特に好ましいことも知見したものである。
ここで、M元素の添加量を示すxの値についての本発明者らの知見を説明する。
x/yの値が0.001以上であれば、十分な量の自由電子が生成され目的とする近赤外線吸収特性を得ることが出来る。そして、M元素の添加量が多いほど、自由電子の供給量が増加し、近赤外線吸収特性も上昇するが、x/yの値が1程度で当該効果も飽和する。また、x/yの値が1以下であれば、複合タングステン超微粒子に不純物相が生成されるのを回避できるので好ましい。
次に、酸素量の制御を示すzの値についての本発明者らの知見を説明する。
一般式MxWyOzで示される複合タングステン酸化物超微粒子において、z/yの値は、2.0<z/y≦3.0であることが好ましく、より好ましくは2.2≦z/y≦3.0であり、さらに好ましくは2.6≦z/y≦3.0、最も好ましくは2.7≦z/y≦3.0である。このz/yの値が2.0以上であれば、当該複合タングステン酸化物中に目的以外であるWOの結晶相が現れるのを回避することが出来ると伴に、材料としての化学的安定性を得ることが出来るので、有効な赤外線吸収材料として適用できるためである。一方、このz/yの値が3.0以下であれば、当該タングステン酸化物中に必要とされる量の自由電子が生成され、効率よい赤外線吸収材料となる。
(3)結晶構造
本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子は、六方晶以外に、正方晶、立方晶のタングステンブロンズの構造をとるが、いずれの構造をとるときも近赤外線吸収材料として有効である。しかしながら、当該複合タングステン酸化物微超粒子がとる結晶構造によって、近赤外線領域の吸収位置が変化する傾向がある。即ち、近赤外線領域の吸収位置は、立方晶よりも正方晶のときが長波長側に移動し、六方晶のときは正方晶のときよりも、さらに長波長側へ移動する傾向がある。また、当該吸収位置の変動に付随して、可視光線領域の吸収は六方晶が最も少なく、次に正方晶であり、立方晶はこの中では最も大きい。
以上の知見から、可視光領域の光をより透過させ、近赤外線領域の光をより吸収する用途には、六方晶のタングステンブロンズを用いることが最も好ましい。複合タングステン酸化物超微粒子が六方晶の結晶構造を有する場合、当該微粒子の可視光領域の透過が向上し、近赤外領域の吸収が向上する。
即ち、複合タングステン酸化物において、XRDピークトップ強度比の値が上述した所定値を満たし、六方晶のタングステンブロンズであれば、優れた光学的特性が発揮される。また、複合タングステン酸化物超微粒子が、斜方晶の結晶構造をとっている場合や、マグネリ相と呼ばれるWO2.72と同様の単斜晶の結晶構造をとっている場合も、赤外線吸収に優れ、近外線吸収材料として有効なことがある。
以上の知見より、六方晶の結晶構造を有する複合タングステン酸化物超微粒子が均一な結晶構造を有するとき、添加M元素の添加量は、x/yの値で0.2以上0.5以下が好ましく、更に好ましくは0.29≦x/y≦0.39である。理論的にはz/y=3の時、x/yの値が0.33となることで、添加M元素が六角形の空隙の全てに配置されると考えられる。典型的な例としてはCs0.33WO、Cs0.03Rb0.30WO、Rb0.33WO、K0.33WO、Ba0.33WOなどを挙げることができる。
さらに、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子においては、アモルファス相の体積比率が50%以下である単結晶であることが好ましい。
複合タングステン酸化物超微粒子が、アモルファス相の体積比率50%以下である単結晶であると、XRDピークトップ強度を維持しながら結晶子径を200nm以下にすることが出来る。複合タングステン酸化物超微粒子の結晶子径を200nm以下とすることで、その分散粒子径を、1nm以上200nm以下、さらに好ましくは10nm以上200nm以下とすることが出来る。
即ち、複合タングステン超微粒子において、アモルファス相の体積比率50%以下である単結晶であると、当該複合タングステン超微粒子のXRDピークトップ強度比の値が0.13以上となり、近赤外線吸収特性が十分に発現され好ましい。
一方、近赤外線吸収特性の観点から当該複合タングステン酸化物超微粒子の結晶子径は、10nm以上であることが好ましい。そして、複合タングステン酸化物超微粒子の結晶子径が200nm以下10nm以上であることが、より好ましい。結晶子径が200nm以下10nm以上の範囲であれば、XRDピークトップ強度比の値が0.13を超え、さらに優れた近赤外線吸収特性が発揮されるからである。
尚、後述する解砕、粉砕または分散された後の複合タングステン酸化物超微粒子分散液中の複合タングステン酸化物超微粒子のX線回折パターンは、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散液中の揮発成分を除去して得られた複合タングステン酸化物超微粒子のX線回折パターンや、前記分散液から得られる分散体中に含まれる複合タングステン酸化物超微粒子のX線回折パターンにおいても維持される。
結果的に、複合タングステン酸化物超微粒子分散液や該分散液から得られる複合タングステン超微粒子分散体中の複合タングステン酸化物超微粒子のXRDパターン、XRDピークトップ強度、結晶子径など結晶の状態が、本発明で用いることができる複合タングステン酸化物超微粒子の結晶の状態であれば、本発明の効果は発揮される。
尚、複合タングステン酸化物超微粒子が単結晶であることは、透過型電子顕微鏡等の電子顕微鏡像において、各微粒子内部に結晶粒界が観察されず、一様な格子縞のみが観察されることから確認することができる。また、複合タングステン酸化物超微粒子においてアモルファス相の体積比率が50%以下であることは、同じく透過型電子顕微鏡像において、粒子全体に一様な格子縞が観察され、格子縞が不明瞭な箇所が殆ど観察されないことから確認することができる。アモルファス相は粒子外周部に存在する場合が多いので、粒子外周部に着目することで、アモルファス相の体積比率を算出可能な場合が多い。例えば、真球状の複合タングステン酸化物超微粒子において、格子縞が不明瞭なアモルファス相が当該粒子外周部に層状に存在する場合、その粒子径の10%以下の厚さであれば、当該複合タングステン酸化物超微粒子におけるアモルファス相の体積比率は、50%以下である。
一方、複合タングステン酸化物超微粒子が、複合タングステン酸化物超微粒子分散体を構成する塗布膜、塗布膜に所定の操作を施して当該塗布膜の樹脂を硬化させた膜(本発明において「硬化膜」と記載する場合がある。)、樹脂等の内部で分散している場合、当該分散している複合タングステン酸化物超微粒子の平均粒子径から結晶子径を引いた差が20%以下であれば、当該複合タングステン酸化物超微粒子は、アモルファス相の体積比率50%以下の単結晶であると言え、実質的に単結晶である。
ここで、複合タングステン酸化物超微粒子の平均粒子径は、複合タングステン酸化物超微粒子分散体の透過型電子顕微鏡像から画像処理装置を用いて複合タングステン酸化物超微粒子100個の粒子径を測定し、その平均値を算出することで求めることが出来る。そして、複合タングステン酸化物超微粒子分散体に分散された複合タングステン酸化物超微粒子の平均粒子径と結晶子径との差が20%以下になるように、複合タングステン酸化物超微粒子の合成工程、粉砕工程、分散工程を、製造設備に応じて適宜調整すればよい。
(4)BET比表面積
上述した複合タングステン酸化物超微粒子のBET比表面積は、当該超微粒子の粒度分布に密接な関係があるが、それと共に、当該超微粒子を原料とする近赤外線吸収分散液の生産性や、当該超微粒子自体の近赤外線吸収特性や光着色を抑制する耐光性に大きく影響する。
当該超微粒子のBET比表面積が小さいことは、該超微粒子の結晶子径が大きいことを表している。よって、当該超微粒子のBET比表面積が所定値以上であれば、可視光領域で透明性があり、上述のブルーヘイズ現象を抑制できる近赤外線吸収分散液を製造するために、媒体攪拌ミルで長時間超微粒子を粉砕して微細化する必要が無く、前記近赤外線吸収分散液の生産性向上を実現できる。
一方、当該超微粒子のBET比表面積が所定値以下、例えば、200m/g以下であることは、粒子形状が真球状と仮定したときのBET粒径が2nm以上になることを示しており、近赤外線吸収特性に寄与しない結晶子径1nm未満の超微粒子が殆ど存在していないことを意味している。よって、超微粒子のBET比表面積が所定値以下である場合は、その超微粒子の近赤外線吸収特性や耐光性が担保される。
尤も、超微粒子のBET比表面積が200m/g以下であることに加え、上述したXRDピークトップ強度の値が所定値以上である場合に、近赤外線吸収特性に寄与しない結晶子径1nm未満の超微粒子が殆ど存在せず、結晶性の良い超微粒子が存在することになるので、超微粒子の近赤外線吸収特性や耐光性が担保されると考えられる。
上述した複合タングステン酸化物超微粒子のBET比表面積の測定には、吸着に用いるガスとして、窒素ガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガスなどが使用される。尤も、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子のように、測定試料が粉体で、比表面積が0.1m/g以上の場合は、比較的取扱いが容易で低コストな窒素ガスを使用することが望ましい。複合タングステン酸化物超微粒子のBET比表面積は、30.0m/g以上120.0m/g以下とするのが良く、より好ましくは、30.0m/g以上90.0m/g以下、さらに好ましくは35.0m/g以上70.0m/g以下とするのが良い。複合タングステン酸化物超微粒子のBET比表面積は、複合タングステン酸化物超微粒子分散液を得る際の粉砕分散前後においても、上述の値であることが望ましい。
(5)分散粒子径
複合タングステン酸化物超微粒子の分散粒子径は、200nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは、分散粒子径は、200nm以下10nm以上である。複合タングステン酸化物超微粒子の分散粒子径が、200nm以下であることが好ましいことは、複合タングステン酸化物超微粒子分散液中の複合タングステン酸化物超微粒子においても同様である。分散粒子径が200nm以下であれば後の紡糸や延伸などの繊維化工程時でフィルターへの目塞がりや糸切れ等の可紡性を回避できる。また、たとえ紡糸を行なうことができても、延伸工程で糸切れ等の問題が生じ、しかも、紡糸原料中に粒子が均一に混合、分散しにくくなる場合もあるので、当該観点からも分散粒子径は200nm以下であることが好ましい。
一方、複合タングステン酸化物超微粒子を含有した衣料等繊維資材の染色性等の意匠性を考慮すると、当該超微粒子は、透明性を保持したまま近赤外線の効率良い吸収を行なうことが必要となる。本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子を含有する近赤外線吸収成分は、近赤外線領域、特に、波長900〜2200nm付近の光を大きく吸収するため、その透過色調は青色系から緑色系となる物が多い。ここで、当該超微粒子の分散粒子径を200nmよりも小さくすれば、衣料等繊維資材において複合タングステン酸化物超微粒子に起因する着色が生じ難くなる。そこで、着色の回避を重視する場合には、複合タングステン酸化物超微粒子の分散粒子径を150nm以下、さらに好ましくは100nm以下とする。一方、分散粒子径が1nm以上であれば、工業的な製造は容易である。
(6)揮発成分
上述した複合タングステン酸化物超微粒子は、加熱により揮発する成分(本発明において「揮発成分」と記載する場合がある。)を含む場合がある。当該揮発成分とは、複合タングステン酸化物超微粒子が、保管雰囲気や大気中に暴露された際や、合成工程途中において吸着する成分のことである。ここで、当該揮発成分の具体例としては、水である場合や、後述する分散液の溶媒である場合があり、例えば150℃、またはそれ以下の加熱により、当該複合タングステン酸化物超微粒子から揮発する成分である。
複合タングステン酸化物超微粒子における揮発成分とその含有率とは、当該超微粒子を大気等に暴露した際に吸着される水分量や、当該超微粒子の乾燥工程における溶媒残存量と関係している。そして、当該揮発成分とその含有率は、当該超微粒子を樹脂等に分散させる際の分散性に対して、大きく影響する場合がある。
例えば、後述する近赤外線吸収分散体に使用する樹脂と、当該超微粒子に吸着されている揮発成分との相溶性が悪い場合であって、さらに当該超微粒子において当該揮発成分含有量が多い場合、製造される近赤外線吸収分散体のヘイズ発生(透明性悪化)の原因となる可能性がある。また、製造される当該近赤外線吸収分散体が、長期間室外に設置され太陽光や風雨に暴露されたときに、複合タングステン酸化物超微粒子が近赤外線吸収分散体外へと脱離したり、膜の剥がれが生じたりする可能性がある。即ち、当該超微粒子と樹脂との相溶性悪化は、製造される当該近赤外線吸収分散体の劣化の原因となる。つまり、揮発成分を大量に含む複合タングステン酸化物超微粒子は、分散系に用いられる分散媒との相性によって、当該超微粒子の分散が良好であるか否かが、左右される可能性が有るということを意味する。従って、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子において揮発成分含有率が所定量以下であれば、広い汎用性が発揮される。
本発明者らの検討によれば、複合タングステン酸化物超微粒子において、揮発成分の含有率が2.5質量%以下であれば、当該超微粒子は殆どの分散系に用いられる分散媒に対して分散可能であり、汎用性のある複合タングステン酸化物超微粒子となることを知見した。
一方、当該揮発成分の含有率の下限には、特に制限はないことも知見した。
この結果、揮発成分の含有率が2.5質量%以下である超微粒子が過度に二次凝集していない場合であれば、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサーなどの混合機、及びバンバリーミキサー、ニーダー、ロール、一軸押出機、二軸押出機などの混練機で均一に混合(溶融混合も含む)する方法を用いて、当該超微粒子を樹脂等に分散可能となる。
複合タングステン酸化物超微粒子における揮発成分の含有率は、熱分析により測定できる。具体的には、複合タングステン酸化物超微粒子が熱分解する温度より低く、且つ、揮発成分が揮発するよりも高い温度に、複合タングステン酸化物超微粒子試料を保持して重量減少を測定すればよい。また、揮発成分を特定する場合は、ガス質量分析を併用すればよい。
(7)表面被覆
複合タングステン酸化物超微粒子の耐候性を向上させるために、複合タングステン酸化物超微粒子の表面をケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムから選択される1種類以上の元素を含む化合物で被覆することも好ましい。これらの化合物は基本的に透明であり、添加することで複合タングステン酸化物超微粒子の可視光透過率を低下させることがないため、繊維の意匠性を損なうことがない。また、これらの化合物は酸化物であることが好ましい。これらの化合物の酸化物は遠赤外線放射能力が高く、近赤外線吸収材料である複合タングステン酸化物超微粒子が吸収したエネルギーを受け取り、当該エネルギーを中・遠赤外線波長の熱エネルギーに転換、放射する能力を有している。よって、これらの化合物の酸化物は、繊維の保温効果にも有効となる。
(8)まとめ
以上、詳細に説明した、複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークトップ強度の値やBET比表面積は、所定の製造条件によって制御可能である。具体的には、熱プラズマ法や固相反応法などで該超微粒子が生成される際の温度(焼成温度)、生成時間(焼成時間)、生成雰囲気(焼成雰囲気)、前駆体原料の形態、生成後のアニール処理、不純物元素のドープなどの製造条件の適宜な設定によって制御可能である。一方、複合タングステン酸化物超微粒子の揮発成分の含有率は、当該超微粒子の保存方法や保存雰囲気、当該超微粒子分散液を乾燥させる際の温度、乾燥時間、乾燥方法などの製造条件の適宜な設定によって制御可能である。尚、複合タングステン酸化物超微粒子の揮発成分の含有率は、複合タングステン酸化物超微粒子の結晶構造や、後述する熱プラズマ法や固相反応等の合成方法に依存しない。
[b]複合タングステン酸化物超微粒子の合成方法
本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子の合成方法について説明する。
本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子の合成方法としては、熱プラズマ中にタングステン化合物出発原料を投入する熱プラズマ法や、タングステン化合物出発原料を還元性ガス雰囲気中で熱処理する固相反応法が挙げられる。熱プラズマ法や固相反応法で合成された複合タングステン酸化物超微粒子は、分散処理または粉砕・分散処理される。
以下、(1)熱プラズマ法、(2)固相反応法、(3)合成された複合タングステン酸化物超微粒子、の順に説明する。
(1)熱プラズマ法
熱プラズマ法について(i)熱プラズマ法に用いる原料、(ii)熱プラズマ法とその条件、の順に説明する。
(i)熱プラズマ法に用いる原料
本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子を熱プラズマ法で合成する際には、タングステン化合物と、M元素化合物との混合粉体を原料として用いることができる。
タングステン化合物としては、タングステン酸(HWO)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン、アルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加して加水分解した後溶媒を蒸発させたタングステンの水和物、から選ばれる1種以上であることが好ましい。
また、M元素化合物としては、M元素の酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、炭酸塩、から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
上述したタングステン化合物と上述したM元素化合物とを含む水溶液とを、M元素とW元素の比が、MxWyOz(但し、Mは前記M元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1.0、2.0<z/y≦3.0)のM元素とW元素の比となるように湿式混合する。そして、得られた混合液を乾燥することによって、M元素化合物とタングステン化合物との混合粉体が得られる、そして、当該混合粉体は、熱プラズマ法の原料とすることが出来る。
また、当該混合粉体を、不活性ガス単独または不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下にて、1段階目の焼成によって得られる複合タングステン酸化物を、熱プラズマ法の原料とすることもできる。他にも、1段階目で不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下で焼成し、当該1段階目の焼成物を、2段階目にて不活性ガス雰囲気下で焼成する、という2段階の焼成によって得られる複合タングステン酸化物を、熱プラズマ法の原料とすることも出来る。
(ii)熱プラズマ法とその条件
本発明で用いる熱プラズマとして、例えば、直流アークプラズマ、高周波プラズマ、マイクロ波プラズマ、低周波交流プラズマ、のいずれか、または、これらのプラズマの重畳したもの、または、直流プラズマに磁場を印加した電気的な方法により生成するプラズマ、大出力レーザーの照射により生成するプラズマ、大出力電子ビームやイオンビームにより生成するプラズマ、が適用出来る。尤も、いずれの熱プラズマを用いるにしても、10000〜15000Kの高温部を有する熱プラズマであり、特に、超微粒子の生成時間を制御できるプラズマであることが好ましい。
当該高温部を有する熱プラズマ中に供給された原料は、当該高温部において瞬時に蒸発する。そして、当該蒸発した原料は、プラズマ尾炎部に至る過程で凝縮し、プラズマ火炎外で急冷凝固されて、複合タングステン酸化物超微粒子を生成する。
高周波プラズマ反応装置を用いる場合を例として、図1を参照しながら合成方法について説明する。
先ず、真空排気装置により、水冷石英二重管内と反応容器6内とで構成される反応系内を、約0.1Pa(約0.001Torr)まで真空引きする。反応系内を真空引きした後、今度は、当該反応系内をアルゴンガスで満たし、1気圧のアルゴンガス流通系とする。
その後、反応容器内にプラズマガスとして、アルゴンガス、アルゴンとヘリウムの混合ガス(Ar−He混合ガス)、またはアルゴンと窒素の混合ガス(Ar−N混合ガス)から選択されるいずれかのガスを30〜45L/minの流量で導入する。一方、プラズマ領域のすぐ外側に流すシースガスとして、Ar−He混合ガスを60〜70L/minの流量で導入する。
そして、高周波コイル2に交流電流をかけて、高周波電磁場(周波数4MHz)により熱プラズマを発生させる。このとき、高周波電力は30〜40kWとする。
さらに、原料粉末供給ノズル5より、前記合成方法で得たM元素化合物とタングステン化合物との混合粉体、または、複合タングステン酸化物を、ガス供給装置から供給する6〜98L/minのアルゴンガスをキャリアガスとして、供給速度25〜50g/minの割合で,熱プラズマ中に導入して所定時間反応を行う。反応後、生成した複合タングステン酸化物超微粒子は,フィルター8に堆積するので、これを回収する。
キャリアガス流量と原料供給速度は、超微粒子の生成時間に大きく影響する。そこで、キャリアガス流量を6L/min以上9L/min以下とし、原料供給速度を25〜50g/minとするのが好ましい。
また、プラズマガス流量を30L/min以上45L/min以下、シースガス流量を60L/min以上70L/min以下とすることが好ましい。プラズマガスは10000〜15000Kの高温部を有する熱プラズマ領域を保つ機能があり、シースガスは反応容器内における石英トーチの内壁面を冷やし、石英トーチの溶融を防止する機能がある。それと同時に、プラズマガスとシースガスはプラズマ領域の形状に影響を及ぼすため、それらのガスの流量はプラズマ領域の形状制御に重要なパラメータとなる。プラズマガスとシースガス流量を上げるほどプラズマ領域の形状がガスの流れ方向に延び、プラズマ尾炎部の温度勾配が緩やかなるので、生成される超微粒子の生成時間を長くし、結晶性の良い超微粒子を生成できるようになる。これにより、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークトップ強度比の値を所望の値とすることが出来る。逆に、プラズマガスとシースガス流量を下げるほどプラズマ領域の形状がガスの流れ方向に縮み、プラズマ尾炎部の温度勾配が急になるので、生成される超微粒子の生成時間を短くし、BET比表面積の大きい超微粒子を生成できるようになる。これにより本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークトップ強度の比の値を所定の値に設定することが出来る。
熱プラズマ法で合成し得られる複合タングステン酸化物が、その結晶子径が200nmを超える場合や、熱プラズマ法で合成し得られる複合タングステン酸化物から得られる複合タングステン酸化物超微粒子分散液中の複合タングステン酸化物の分散粒子径が200nmを超える場合は、後述する、粉砕・分散処理を行うことができる。熱プラズマ法で複合タングステン酸化物を合成する場合は、そのプラズマ条件や、その後の粉砕・分散処理条件を適宜選択して、XRDピークトップ強度比の値が0.13以上となるようして、複合タングステン酸化物超微粒子分散液の被膜の複合タングステン酸化物超微粒子分散体の複合タングステン酸化物超微粒子の平均粒子径と結晶子径の差が20%以下となるようにすれば、本発明の効果が発揮される。
(2)固相反応法
固相反応法について(i)固相反応法に用いる原料、(ii)固相反応法における焼成とその条件、の順に説明する。
(i)固相反応法に用いる原料
本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子を固相反応法で合成する際には、原料としてタングステン化合物およびM元素化合物を用いる。
タングステン化合物は、タングステン酸(HWO)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン、アルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加して加水分解した後、溶媒を蒸発させたタングステンの水和物、から選ばれる1種以上であることが好ましい。
また、より好ましい実施形態である一般式MxWyOz(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、Baから選択される1種類以上の元素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で示される複合タングステン酸化物超微粒子の原料の製造に用いるM元素化合物には、M元素の酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、炭酸塩、から選ばれる1種以上であることが好ましい。
また、Si、Al、Zrから選ばれる1種以上の不純物元素を含有する化合物(本発明において「不純物元素化合物」と記載する場合がある。)を、原料として含んでもよい。当該不純物元素化合物は、後の焼成工程において複合タングステン化合物と反応せず、複合タングステン酸化物の結晶成長を抑制して、結晶の粗大化を防ぐ働きをするものである。不純物元素を含む化合物は、酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、炭酸塩、から選ばれる1種以上であることが好ましく、粒径が500nm以下のコロイダルシリカやコロイダルアルミナが特に好ましい。
前記タングステン化合物と、前記M元素化合物を含む水溶液とを、M元素とW元素の比が、MxWyOz(但し、Mは前記M元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1.0、2.0<z/y≦3.0)のM元素とW元素の比となるように湿式混合する。不純物元素化合物を原料として含有させる場合は、不純物元素化合物が0.5質量%以下になるように湿式混合する。そして、得られた混合液を乾燥することによって、M元素化合物とタングステン化合物との混合粉体、もしくは不純物元素化合物を含むM元素化合物とタングステン化合物との混合粉体が得られる。
(ii)固相反応法における焼成とその条件
当該湿式混合で製造したM元素化合物とタングステン化合物との混合粉体、もしくは不純物元素化合物を含むM元素化合物とタングステン化合物との混合粉体を、不活性ガス単独または不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下、1段階で焼成する。このとき、焼成温度は複合タングステン酸化物超微粒子が結晶化し始める温度に近いことが好ましく、具体的には焼成温度が1000℃以下であることが好ましく、800℃以下であることがより好ましく、800℃以下500℃以上の温度範囲がさらに好ましい。この焼成温度の制御により、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークトップ強度の比の値を所定の値に設定することが出来る。
尤も、当該複合タングステン酸化物超微粒子の合成において、前記タングステン化合物に替えて、三酸化タングステンを用いても良い。
(3)合成された複合タングステン酸化物超微粒子
熱プラズマ法や固相反応法による合成法で得られた複合タングステン酸化物超微粒子を用いて、後述する複合タングステン酸化物超微粒子分散液を作製した場合、当該分散液に含有されている超微粒子の分散粒子径が、200nmを超える場合は、後述する複合タングステン酸化物超微粒子分散液を製造する工程において、粉砕・分散処理すればよい。そして、粉砕・分散処理を経て得られた複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークトップ強度の比の値が、本発明の範囲を実現できていれば、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子やその分散液から得られる複合タングステン酸化物超微粒子分散体は、優れた近赤外線吸収特性を実現できるのである。
[c]複合タングステン酸化物超微粒子の揮発成分とその乾燥処理方法
上述したように、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子は、揮発成分を含む場合があるが、当該揮発成分の含有率は2.5質量%以下であることが好ましい。しかし、複合タングステン酸化物超微粒子が大気中に暴露されるなどして、揮発成分の含有率が2.5質量%を超えた場合は、乾燥処理により当該揮発成分の含有率を低減させることが出来る。
具体的には、上述の方法で合成された複合タングステン酸化物を、粉砕・分散処理して微粒化し、複合タングステン酸化物超微粒子分散液を製造する工程(粉砕・分散処理工程)と、製造された複合タングステン酸化物超微粒子分散液を乾燥処理して溶媒を除去する工程(乾燥工程)とを経ることで、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子を製造することができる。
粉砕分散工程に関しては、後述する「[d]複合タングステン酸化物超微粒子分散液」の項目で詳細に記述するため、ここでは乾燥処理の工程について説明する。
当該乾燥処理の工程は、後述する粉砕分散工程で得られる複合タングステン酸化物超微粒子分散液を、乾燥処理して当該分散液中の揮発成分を除去し、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子を得るものである。
乾燥処理の設備としては、加熱および/または減圧が可能で、当該超微粒子の混合や回収がし易いという観点から、大気乾燥機、万能混合機、リボン式混合機、真空流動乾燥機、振動流動乾燥機、凍結乾燥機、リボコーン、ロータリーキルン、噴霧乾燥機、パルコン乾燥機、等が好ましいが、これらに限定されない。
以下、その一例として、(1)大気乾燥機による乾燥処理、(2)真空流動乾燥機による乾燥処理、(3)噴霧乾燥機による乾燥処理、について説明する。以下、それぞれの乾燥処理について順に説明する。
(1)大気乾燥機による乾燥処理
後述する方法で得られた複合タングステン酸化物超微粒子分散液を、大気乾燥機によって乾燥処理して当該分散液中の揮発成分を除去する処理方法である。この場合、複合タングステン酸化物超微粒子から当該揮発成分が揮発するよりも高い温度であって、元素Mが脱離しない温度で乾燥処理することが望ましく、150℃以下であることが望ましい。
当該大気乾燥機により、乾燥処理して製造した複合タングステン酸化物超微粒子は、弱い二次凝集体となっている。この状態でも、当該複合タングステン酸化物超微粒子を樹脂等に分散させることは可能であるが、より分散し易くするために、当該超微粒子を擂潰機等によって解砕することも好ましい一例である。
(2)真空流動乾燥機による乾燥処理
真空流動乾燥機による乾燥処理を行うことで、複合タングステン酸化物超微粒子分散液中の揮発成分を除去する処理方法である。当該真空流動乾燥機では、減圧雰囲気下で乾燥と解砕の処理を同時に行うため、乾燥速度が速い上に、上述した大気乾燥機での乾燥処理品に見られるような凝集体を形成しない。また、減圧雰囲気下での乾燥のため、比較的低温でも揮発成分を除去することができ、残存する揮発成分量も限りなく少なくすることができる。
乾燥温度は複合タングステン酸化物超微粒子から元素Mが脱離しない温度で乾燥処理することが望ましく、当該揮発成分が揮発するよりも高い温度であって、150℃以下であることが望ましい。
(3)噴霧乾燥機による乾燥処理
噴霧乾燥機による乾燥処理を行うことで、複合タングステン酸化物超微粒子分散液の揮発成分を除去する処理方法である。当該噴霧乾燥機では、乾燥処理における揮発成分除去の際に、揮発成分の表面力に起因する二次凝集が発生しにくく、解砕処理を施さずとも比較的二次凝集していない複合タングステン酸化物超微粒子が得られる。
上述した(1)〜(3)に係る乾燥処理を施した複合タングステン酸化物超微粒子を、適宜な方法で樹脂等に分散させることで、高い可視光透過率と、近赤外線吸収機能の発現による低い日射透過率を有しながら、ヘイズ値が低いという光学特性を有する近赤外線吸収材料微粒子分散体である複合タングステン酸化物超微粒子分散体を形成することができる。
[d]複合タングステン酸化物超微粒子分散液
近赤外線吸収繊維を製造する為の、複合タングステン酸化物超微粒子分散液について説明する。
複合タングステン酸化物超微粒子分散液は、前記合成方法で得られた複合タングステン酸化物超微粒子と、水、有機溶媒、液状樹脂、プラスチック用の液状可塑剤、高分子単量体またはこれらの混合物から選択される混合スラリーの液状媒体、および適量の分散剤、カップリング剤、界面活性剤等を、媒体攪拌ミルで粉砕、分散させたものである。
そして、当該溶媒中における当該微粒子の分散状態が良好で、その分散粒子径が1〜200nmであることを特徴とする。また、該複合タングステン酸化物超微粒子分散液に含有されている複合タングステン酸化物超微粒子の含有量が、0.01質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
以下、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散液について、(1)溶媒、(2)分散剤、(3)分散方法、(4)分散粒子径、(5)バインダー、その他の添加剤、の順に説明する。
(1)溶媒
複合タングステン酸化物超微粒子分散液に用いられる液状溶媒は特に限定されるものではなく、複合タングステン酸化物超微粒子分散液の塗布条件、塗布環境、および、適宜添加される無機バインダーや樹脂バインダーなどに合わせて適宜選択すればよい。例えば、液状溶媒は、水、有機溶媒、油脂、液状樹脂、媒体樹脂用の液状可塑剤、高分子単量体、または、これらの混合物などである。
ここで、有機溶媒としては、アルコール系、ケトン系、炭化水素系、グリコール系、水系など、種々のものを選択することが可能である。具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤;3−メチル−メトキシ−プロピオネートなどのエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体;フォルムアミド、N−メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;エチレンクロライド、クロルベンゼンなどが使用可能である。そして、これらの有機溶媒中でも、特に、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸n−ブチルなどが好ましい。
油脂としては、植物油脂または植物由来油脂が好ましい。植物油としては、アマニ油、ヒマワリ油、桐油、エノ油等の乾性油、ゴマ油、綿実油、菜種油、大豆油、米糠油、ケシ油等の半乾性油、オリーブ油、ヤシ油、パーム油、脱水ヒマシ油等の不乾性油が用いられる。植物油由来の化合物としては、植物油の脂肪酸とモノアルコールを直接エステル反応させた脂肪酸モノエステル、エーテル類などが用いられる。また、市販の石油系溶剤も油脂として用いることができ、アイソパーE、エクソールHexane、エクソールHeptane、エクソールE、エクソールD30、エクソールD40、エクソールD60、エクソールD80、エクソールD95、エクソールD110、エクソールD130(以上、エクソンモービル製)等を挙げることができる。
媒体樹脂用の液状可塑剤としては、有機酸エステル系やリン酸エステル系等に代表される、公知の液状可塑剤を用いることができる。
ここで、液状可塑剤としては、例えば一価アルコールと有機酸エステルとの化合物である可塑剤や、多価アルコール有機酸エステル化合物等のエステル系である可塑剤、有機リン酸系可塑剤等のリン酸系である可塑剤が挙げられ、いずれも室温で液状であるものが好ましい。なかでも、多価アルコールと脂肪酸から合成されたエステル化合物である可塑剤が好ましい。
多価アルコールと脂肪酸から合成されたエステル化合物は特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)、デシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られた、グリコール系エステル化合物が挙げられる。また、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールと、前記一塩基性有機とのエステル化合物等も挙げられる。
なかでも、トリエチレングリコールジヘキサネート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−オクタネート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノネート等のトリエチレングリコールの脂肪酸エステルが好適である。
また、高分子単量体とは重合等により高分子を形成する単量体であるが、本発明で用いる好ましい高分子単量体としては、メチルメタクリレート単量体、アクレリート単量体やスチレン樹脂単量体などが挙げられる。
以上、説明した液状溶媒は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、必要に応じて、これらの液状溶媒へ酸やアルカリを添加してpH調整してもよい。
(2)分散剤
さらに、当該複合タングステン酸化物超微粒子分散液中における複合タングステン酸化物超微粒子の分散安定性を一層向上させ、再凝集による分散粒子径の粗大化を回避するために、各種の分散剤、界面活性剤、カップリング剤などの添加も好ましい。当該分散剤、カップリング剤、界面活性剤は用途に合わせて選定可能であるが、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、または、エポキシ基を官能基として有するものであることが好ましい。これらの官能基は、複合タングステン酸化物超微粒子の表面に吸着して凝集を防ぎ、赤外線吸収膜中においても本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子を均一に分散させる効果を持つ。これらの官能基のいずれかを分子中にもつ高分子系分散剤がさらに望ましい。
市販の分散剤における好ましい具体例としては、日本ルーブリゾール(株)製SOLSPERSE3000、SOLSPERSE9000、SOLSPERSE11200、SOLSPERSE13000、SOLSPERSE13240、SOLSPERSE13650、SOLSPERSE13940、SOLSPERSE16000、SOLSPERSE17000、SOLSPERSE18000、SOLSPERSE20000、SOLSPERSE21000、SOLSPERSE24000SC、SOLSPERSE24000GR、SOLSPERSE26000、SOLSPERSE27000、SOLSPERSE28000、SOLSPERSE31845、SOLSPERSE32000、SOLSPERSE32500、SOLSPERSE32550、SOLSPERSE32600、SOLSPERSE33000、SOLSPERSE33500、SOLSPERSE34750、SOLSPERSE35100、SOLSPERSE35200、SOLSPERSE36600、SOLSPERSE37500、SOLSPERSE38500、SOLSPERSE39000、SOLSPERSE41000、SOLSPERSE41090、SOLSPERSE53095、SOLSPERSE55000、SOLSPERSE56000、SOLSPERSE76500等;
ビックケミー・ジャパン(株)製Disperbyk−101、Disperbyk−103、Disperbyk−107、Disperbyk−108、Disperbyk−109、Disperbyk−110、Disperbyk−111、Disperbyk−112、Disperbyk−116、Disperbyk−130、Disperbyk−140、Disperbyk−142、Disperbyk−145、Disperbyk−154、Disperbyk−161、Disperbyk−162、Disperbyk−163、Disperbyk−164、Disperbyk−165、Disperbyk−166、Disperbyk−167、Disperbyk−168、Disperbyk−170、Disperbyk−171、Disperbyk−174、Disperbyk−180、Disperbyk−181、Disperbyk−182、Disperbyk−183、Disperbyk−184、Disperbyk−185、Disperbyk−190、Disperbyk−2000、Disperbyk−2001、Disperbyk−2020、Disperbyk−2025、Disperbyk−2050、Disperbyk−2070、Disperbyk−2095、Disperbyk−2150、Disperbyk−2155、Anti−Terra−U、Anti−Terra−203、Anti−Terra−204、BYK−P104、BYK−P104S、BYK−220S、BYK−6919等;
BASFジャパン(株)社製 EFKA4008、EFKA4046、EFKA4047、EFKA4015、EFKA4020、EFKA4050、EFKA4055、EFKA4060、EFKA4080、EFKA4300、EFKA4330、EFKA4400、EFKA4401、EFKA4402、EFKA4403、EFKA4500、EFKA4510、EFKA4530、EFKA4550、EFKA4560、EFKA4585、EFKA4800、EFKA5220、EFKA6230、JONCRYL67、JONCRYL678、JONCRYL586、JONCRYL611、JONCRYL680、JONCRYL682、JONCRYL690、JONCRYL819、JONCRYL−JDX5050等;
味の素ファインテクノ(株)製アジスパーPB−711、アジスパーPB−821、アジスパーPB−822等が挙げられる。
(3)分散方法
複合タングステン酸化物超微粒子の分散液への分散方法は、当該微粒子を分散液中において、凝集させることなく均一に分散できる方法であれば特に限定されない。当該分散方法として、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、超音波ホモジナイザーなどの装置を用いた粉砕・分散処理方法が挙げられる。その中でも、ビーズ、ボール、オタワサンドといった媒体メディアを用いる、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー等の媒体攪拌ミルで粉砕、分散させることは、所望とする分散粒子径に要する時間が短いことから好ましい。
媒体攪拌ミルを用いた粉砕・分散処理によって、複合タングステン酸化物超微粒子の分散液中への分散と同時に、複合タングステン酸化物超微粒子同士の衝突や媒体メディアの該超微粒子への衝突などによる微粒子化も進行し、複合タングステン酸化物超微粒子をより微粒子化して分散させることができる(即ち、粉砕・分散処理される。)。
このとき、当該複合タングステン酸化物超微粒子の粉砕・分散において、シリコン粉末標準試料(NIST製、640c)の(220)面のXRDピーク強度の値を1としたとき、当該複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークトップ強度の比の値が0.13以上を担保出来るように、粉砕・分散の工程条件を設定する。当該設定により、当該複合タングステン酸化物超微粒子を含有する近赤外線吸収繊維が優れた光学的特性を発揮する。
複合タングステン酸化物超微粒子を可塑剤へ分散させる際、所望により、さらに120℃以下の沸点を有する有機溶剤を添加することも好ましい構成である。
120℃以下の沸点を有する有機溶剤として、具体的にはトルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、イソプロピルアルコール、エタノールが挙げられる。尤も、沸点が120℃以下で近赤外線吸収機能を発揮する微粒子を均一に分散可能なものであれば、任意に選択できる。但し、当該有機溶剤を添加した場合は、分散完了後に乾燥工程を実施し、近赤外線吸収超微粒子分散体の一例として後述する近赤外線吸収用中間膜中に残留する有機溶剤を5質量%以下とすることが好ましい。
(4)分散粒子径
複合タングステン酸化物超微粒子の分散粒子径が、1〜200nmであれば、幾何学散乱またはミー散乱によって波長380nm〜780nmの可視光線領域の光を散乱することがないので、曇り(ヘイズ)が減少し、可視光透過率の増加を図ることが出来るので好ましい。さらに、レイリー散乱領域では、散乱光は粒子径の6乗に比例して低減するため、分散粒子径の減少に伴い散乱が低減し透明性が向上する。そこで、分散粒子径が200nm以下となると散乱光は非常に少なくなり、ブルーヘイズ現象を抑制できるため、より透明性が増すことになり好ましい。
ここで、複合タングステン酸化物超微粒子分散液中における、当該複合タングステン酸化物超微粒子の分散粒子径について簡単に説明する。複合タングステン酸化物超微粒子の分散粒子径とは、溶媒中に分散している複合タングステン酸化物超微粒子の単体粒子や、当該複合タングステン酸化物超微粒子が凝集した凝集粒子の粒子径を意味するものであり、市販されている種々の粒度分布計で測定することができる。例えば、当該複合タングステン酸化物超微粒子分散液のサンプルを採取し、当該サンプルを、動的光散乱法を原理とした大塚電子株式会社製ELS−8000を用いて測定することができる。
また、前記の合成方法で得られる複合タングステン酸化物超微粒子の含有量が0.01質量%以上80質量%以下である複合タングステン酸化物超微粒子分散液は、液安定性に優れる。適切な液状媒体や、分散剤、カップリング剤、界面活性剤を選択した場合は、温度40℃の恒温槽に入れたときでも6ヶ月以上分散液のゲル化や粒子の沈降が発生せず、分散粒子径を1〜200nmの範囲に維持できる。
尚、複合タングステン酸化物超微粒子分散液の分散粒子径と、近赤外線吸収繊維を構成する糸等に分散された複合タングステン酸化物超微粒子の平均粒子径とが異なる場合がある。これは、複合タングステン酸化物超微粒子分散液中では複合タングステン酸化物超微粒子が凝集している場合がある、一方、当該複合タングステン酸化物超微粒子分散液を用いて、近赤外線吸収繊維を構成する糸等が製造・加工される際に、複合タングステン酸化物超微粒子の凝集が解されるからである。
(5)バインダー、その他の添加剤
当該複合タングステン酸化物超微粒子分散液には、適宜、樹脂バインダーから選ばれる1種以上を含有させることができる。当該複合タングステン酸化物超微粒子分散液に含有させる樹脂バインダーの種類は特に限定されるものではないが、樹脂バインダーとしては、近赤外線吸収繊維の原料ポリマーもちろん、原料ポリマーとの相溶等を考慮してアクリル樹脂などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂などが適用できる。
また、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散体の近赤外線吸収特性を向上させるために、本発明に係る分散液へ一般式XBm(但し、Xはアルカリ土類元素、またはイットリウムを含む希土類元素から選ばれた金属元素、4≦m≦6.3)で表されるホウ化物、ATOおよびITO等の近赤外線吸収超微粒子を、所望に応じて適宜添加することも好ましい構成である。なお、このときの添加割合は、所望とする近赤外線吸収特性に応じて適宜選択すればよい。
また、複合タングステン酸化物超微粒子分散体の色調を調整する為に、カーボンブラックや弁柄等の公知の無機顔料や公知の有機顔料も添加できる。
複合タングステン酸化物超微粒子分散液には、公知の紫外線吸収剤や有機物の公知の赤外線吸収材やリン系の着色防止剤を添加してもよい。
更には、遠赤外線を放射する能力を有する微粒子を添加してもよい。例えば、ZrO、SiO、TiO、Al、MnO、MgO、Fe、CuO等の金属酸化物、ZrC、SiC、TiC等の炭化物、ZrN、Si、AlN等の窒化物等を挙げることができる。
[2]近赤外線吸収繊維
本発明に係る近赤外線吸収繊維について説明する。
近赤外線吸収繊維は、前記の合成方法で得られた複合タングステン酸化物超微粒子を適宜な媒体中に分散させて、当該分散物を繊維の表面および/または内部に含有させたものである。
そして、複合タングステン酸化物超微粒子の含有量が、繊維の固形分に対して0.001質量%以上80質量%以下であることを特徴とする。
以下、本発明に係る近赤外線吸収繊維について、(1)繊維、(2)繊維中への超微粒子分散方法、(3)添加剤、の順に説明する。
(1)繊維
本発明に使用される繊維は、用途に応じて各種選択可能であり、合成繊維、半合成繊維、天然繊維、再生繊維、無機繊維、または、これらの混紡、合糸、混繊等による混合糸のいずれを使用してもかまわない。さらに、複合タングステン酸化物超微粒子を簡便な方法で繊維内に含有させることや保温持続性を考慮すると、合成繊維が好ましい。
本発明に使用される合成繊維は、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリエーテルエステル系繊維等が挙げられる。
例えば、ポリアミド系繊維として、ナイロン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン610、ナイロン612、芳香族ナイロン、アラミド等が挙げられる。
また例えば、アクリル系繊維として、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−塩化ビニル共重合体、モダクリル等が挙げられる。
また例えば、ポリエステル系繊維として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
また例えば、ポリオレフィン系繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。
また例えば、ポリビニルアルコール系繊維として、ビニロン等が挙げられる。
また例えば、ポリ塩化ビニリデン系繊維として、ビニリデン等が挙げられる。
また例えば、ポリ塩化ビニル系繊維として、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
また例えば、ポリエーテルエステル系繊維として、レクセ、サクセス等が挙げられる。
本発明に使用される繊維が半合成繊維である場合は、例えば、セルロース系繊維、タンパク質系繊維、塩化ゴム、塩酸ゴム等が挙げられる。
また例えば、セルロース系繊維として、アセテート、トリアセテート、酸化アセテート等が挙げられる。
また例えば、タンパク質繊維として、プロミックス等が挙げられる。
本発明に使用される繊維が天然繊維である場合は、例えば、植物繊維、動物繊維、鉱物繊維等が挙げられる。
また例えば、植物繊維としては、綿、カポック、亜麻、大麻、黄麻、マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻、羅布麻、やし、いぐさ、麦わら等が挙げられる。
また例えば、動物繊維として、羊毛、やぎ毛、モヘヤ、カシミヤ、アルパカ、アンゴラ、キャメル、ビキューナ等のウール、シルク、ダウン、フェザー等が挙げられる。
また例えば、鉱物繊維として、石綿、アスベスト等が挙げられる。
本発明に使用される繊維が再生繊維である場合は、例えば、セルロース系繊維、タンパク質系繊維、アルギン繊維、ゴム繊維、キチン繊維、マンナン繊維等が挙げられる。
また例えば、セルロース系繊維として、レーヨン、ビスコースレーヨン、キュプラ、ポリノジック、銅アンモニアレーヨン等が挙げられる。
また例えば、タンパク質系繊維として、カゼイン繊維、落花生タンパク繊維、とうもろこしタンパク繊維、大豆タンパク繊維、再生絹糸等が挙げられる。
本発明に使用される繊維が無機繊維である場合は、例えば、金属繊維、炭素繊維、けい酸塩繊維等が挙げられる。
また例えば、金属繊維として、金属繊維、金糸、銀糸、耐熱合金繊維等が挙げられる。
また例えば、けい酸塩繊維として、ガラス繊維、鉱さい繊維、岩石繊維等が挙げられる。
本発明に係る繊維の断面形状は、特に限定されないが、例えば、円形、三角形、中空状、偏平状、Y型、星型、芯鞘型等が挙げられる。繊維の表面および/または内部への超微粒子の含有は、種々の形状で可能であり、例えば、芯鞘型の場合、超微粒子を繊維の芯部に含有しても、鞘部に含有してもかまわない。また、本発明の繊維の形状は、フィラメント(長繊維)であっても、ステープル(短繊維)であってもかまわない。
(2)繊維中への超微粒子分散方法
本発明に係る繊維の表面および/または内部へ、複合タングステン酸化物超微粒子を均一に含有させる方法は特に限定されない。例えば、(a)合成繊維の原料ポリマーへ、複合タングステン酸化物超微粒子を直接混合して紡糸する方法、(b)あらかじめ原料ポリマーの一部へ前記複合タングステン酸化物超微粒子を高濃度に含有せしめたマスターバッチを製造し、これを紡糸時に所定の濃度に希釈調整してから紡糸する方法、(c)前記複合タングステン酸化物超微粒子を、あらかじめ原料モノマーまたはオリゴマー溶液中に均一に分散させておき、この分散溶液を用いて目的とする原料ポリマーを合成すると同時に、当該複合タングステン酸化物超微粒子を均一に原料ポリマー中に分散せしめた後、紡糸する方法、(d)あらかじめ紡糸して得られた繊維の表面へ、前記複合タングステン酸化物超微粒子を、結合剤などを用いて付着させる方法などが挙げられる。
ここで、(b)で説明した、マスターバッチを製造し、これを紡糸時に希釈調整してから紡糸する方法の好ましい例について、さらに詳細に説明する。
前記マスターバッチの製造方法は特に限定されないが、例えば、複合タングステン酸化物超微粒子分散液と、熱可塑性樹脂の粉粒体またはペレットと、必要に応じて他の添加剤とを、リボブレンダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の混合機、およびバンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニーダールーダー、一軸押出機、二軸押出機等の混練機を使用して溶剤を除去しながら均一に溶融混合することで、熱可塑性樹脂に超微粒子を均一に分散した混合物としてマスターバッチを調製することができる。
さらに、複合タングステン酸化物超微粒子分散液を調製後、当該分散液の溶剤を公知の方法で除去し、得られた粉末と、熱可塑性樹脂の粉粒体またはペレットと、必要に応じて他の添加剤と、を均一に溶融混合し、熱可塑性樹脂に当該超微粒子を均一に分散した混合物を製造することもできる。この他、複合タングステン酸化物超微粒子の粉末を、直接、熱可塑性樹脂へ添加し、均一に溶融混合する方法を用いることもできる。
上述した方法により得られた複合タングステン酸化物超微粒子と、熱可塑性樹脂との混合物を、ペント式一軸もしくは二軸の押出機で混練し、ペレット状に加工することにより、近赤外線吸収成分含有マスターバッチを得ることができる。
ここで、上述した本発明に使用される繊維に複合タングステン酸化物超微粒子を均一に含有させる(a)〜(d)の方法について、具体的に例を挙げて説明する。
(a)の方法:例えば、繊維としてポリエステル繊維を用いる場合、熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットに複合タングステン酸化物超微粒子分散液を添加し、ブレンダーで均一に混合した後、溶媒を除去する。当該溶媒を除去した混合物を二軸押出機で溶融混練し、複合タングステン酸化物超微粒子含有マスターバッチを得る。この複合タングステン酸化物超微粒子含有マスターバッチと、超微粒子無添加のポリエチレンテレフタレートよりなるマスターバッチの目的量とを、樹脂の溶融温度付近で溶融混合し公知の方法にしたがって紡糸する。
(b)の方法:予め調製しておいた複合タングステン酸化物超微粒子含有マスターバッチを用いる以外は、(a)と同様にして、複合タングステン酸化物超微粒子含有マスターバッチと、超微粒子無添加のポリエチレンテレフタレートよりなるマスターバッチの目的量とを、樹脂の溶融温度付近で溶融混合し公知の方法にしたがって紡糸する。
(c)の方法:例えば、繊維としてウレタン繊維を用いる場合、複合タングステン酸化物超微粒子を含有した高分子ジオールと有機ジイソシアネートとを、二軸押出機内で反応させてイソシアネート基末端プレポリマーを合成した後、ここへ鎖伸長剤を反応させてポリウレタン溶液(原料ポリマー)を製造する。当該ポリウレタン溶液を公知の方法にしたがって紡糸する。
(d)の方法:例えば、天然繊維の表面に複合タングステン酸化物超微粒子を付着させるためには、まず複合タングステン酸化物超微粒子と、アクリル・エポキシ・ウレタン・ポリエステルから選ばれた少なくとも1種のバインダー樹脂と、水などの溶媒と、を混合した処理液を調製する。次に、調製された処理液に当該天然繊維を浸漬させるか、調製された処理液をパディング、印刷またはスプレー等により当該天然繊維へ含浸させ、乾燥することで、当該天然繊維に複合タングステン酸化物超微粒子を付着させることができる。そして当該(d)の方法は、上述した天然繊維の他、半合成繊維、再生繊維、無機繊維、または、これらの混紡、合糸、混繊等のいずれにも適用することができる。
尚、上述の(a)〜(d)の方法の実施の際、前記複合タングステン酸化物超微粒子の分散方法は、複合タングステン酸化物超微粒子を液体中に均一分散させることができる方法であればいかなる方法でもよく、例えば、媒体攪拌ミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散などの方法が好適に適用できる。
そして当該複合タングステン酸化物超微粒子の分散において、シリコン粉末標準試料(NIST製、640c)の(220)面のXRDピーク強度の値を1としたとき、当該複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークトップ強度の比の値が0.13以上を担保出来るように、分散の工程条件を設定する。このようにすることで、本発明に係る近赤外線吸収繊維が優れた光学的特性を発揮する。
また、前記複合タングステン酸化物超微粒子の分散媒は特に限定されるものではなく、混合する繊維に合わせて選択可能であり、例えば、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、芳香族化合物などの一般的な各種有機溶媒や、水が使用可能である。
更に、前記複合タングステン酸化物超微粒子を当該繊維やその原料となるポリマーに付着、混合させる際には、複合タングステン酸化物超微粒子の分散液を、繊維やその原料となるポリマーに直接混合してもかまわない。また必要に応じて、複合タングステン酸化物超微粒子の分散液に酸やアルカリを添加してpHを調整しても良いし、超微粒子の分散安定性を一層向上させるために、各種の界面活性剤、カップリング剤などを添加することも好ましい。
ここで、複合タングステン酸化物超微粒子の含有量について説明する。本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子の単位重量あたりの近赤外線吸収能力は非常に高いので、ITOやATOと比較して、4〜10分の1程度の使用量でその効果を発揮する。具体的には、繊維の表面および/または内部に含有される、複合タングステン酸化物超微粒子の含有量は、繊維の固形分に対して0.001質量%〜80質量%の間で使用されることが好ましい。さらに、微粒子添加後の繊維の重量や原料コストを考慮した場合は、0.005質量%〜50質量%の間で選択することが好ましい。0.001質量%以上の使用量であれば、生地が薄くても十分な近赤外線吸収効果を得ることができ、80質量%以下であれば、紡糸工程でフィルターへの目塞がりや糸切れ等による可紡性の低下を回避でき、50質量%以下であれば、さらに好ましい。また、超微粒子の添加量が少なくてすむので、繊維の物性を損なうことがない。
(3)添加剤
また、本発明に係る繊維へは、当該繊維の性能を損なわない範囲内で、目的に応じて、酸化防止剤、難燃剤、消臭剤、防虫剤、抗菌剤、紫外線吸収剤等を含有させて使用することができる。
更に、本発明に係る近赤外線吸収材料に加え、遠赤外線を放射する能力を有する遠赤外線放射物質の微粒子が繊維の表面および/または内部に含有されていてもよい。例えば、ZrO、SiO、TiO、Al、MnO、MgO、Fe、CuO等の金属酸化物、ZrC、SiC、TiC等の炭化物、ZrN、Si、AlN等の窒化物等を挙げることができる。
本発明に係る近赤外線吸収材料である複合タングステン酸化物超微粒子は、波長0.3〜3 μmの太陽光エネルギーを吸収する性質を持っており、特に波長0.9〜2.2 μm付近の近赤外領域を選択的に吸収して、熱に変換、もしくは再輻射する。一方、遠赤外線放射物質の微粒子は、近赤外線吸収材料である複合タングステン酸化物超微粒子が吸収したエネルギーを受け取り、当該エネルギーを中・遠赤外線波長の熱エネルギーに転換、放射する能力を有している。例えば、ZrO微粒子は、このエネルギーを波長2〜20μmの熱エネルギーに転換、放射する。従って、当該遠赤外線を放射する能力を有する微粒子が、複合タングステン酸化物超微粒子が遠赤外線を放射する微粒子と繊維内や表面で共存することにより、近赤外線吸収材料に吸収された太陽光エネルギーが繊維内部・表面で効率良く消費され、より効果的な保温がなされる。
また、遠赤外線放射物質の微粒子の繊維表面および/または内部中の含有量は、繊維の固形分に対して0.001質量%〜80質量%の間であることが好ましい。0.001質量%以上の使用量であれば生地が薄くても十分な熱エネルギー放射効果を得ることができ、80質量%以下であれば紡糸工程でフィルターへの目塞がりや糸切れ等により可紡性が低下するのを回避することができる。
以上説明したように、本発明に係る近赤外線吸収繊維は、近赤外線吸収成分として複合タングステン酸化物超微粒子を均一に繊維に含有させ、更には、遠赤外線を放射する微粒子をも均一に繊維に含有させることにより、前記微粒子の少量の含有で太陽光などからの近赤外線を効率良く吸収し、複合タングステン酸化物超微粒子の添加量が少なくても保温性に優れた繊維を提供することを可能とした。また、耐候性が良く透明性に優れ低コストであり、複合タングステン酸化物超微粒子の添加量が少ないため、繊維製品の意匠性を損なうことがなく、強度や伸度などの繊維の基本的な物性を損なうことも回避できた。この結果、本発明に係る繊維は、保温性を必要とする防寒用衣料、スポーツ用衣料、ストッキング、カーテン等の繊維製品やその他産業用繊維製品等の種々の用途に使用することができる。
以下、実施例を参照しながら本発明を具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
尚、実施例および比較例における分散液や塗布膜の光学特性は、分光光度計(日立製作所株式会社製 U−4100)を用いて測定し、可視光透過率と日射透過率とは、JISR3106に従って算出した。また、分散粒子径は、動的光散乱法に基づく粒径測定装置(大塚電子株式会社製 ELS−8000)により測定した平均値をもって示した。
また、実施例および比較例における揮発成分の含有率は、島津製作所株式会社製、水分計;MOC63uを用い、測定試料を測定開始1分間で室温から温度125℃まで昇温させ、温度125℃で9分間保持した。そして、測定開始から10分間後における測定試料の重量減少率を揮発成分の含有率とした。近赤線吸収材料微粒子分散体中や、日射吸収用中間膜中に分散された複合タングステン酸化物超微粒子の平均粒子径は、当該分散体や中間膜の断面の透過型電子顕微鏡像を観察することによって測定した。透過型電子顕微鏡像は、透過型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 HF−2200)を用いて観察した。当該透過型電子顕微鏡像を画像処理装置にて処理し、複合タングステン酸化物超微粒子100個の粒子径を測定して、その平均値を平均粒子径とした。X線回折パターンは、粉末X線回折装置(スペクトリス株式会社PANalytical製X‘Pert−PRO/MPD)を用いて粉末X線回折法(θ―2θ法)により測定した。また、客観的な定量性を確保するため、複合タングステン酸化物超微粒子のX線回折パターンの測定毎に、シリコン粉末標準試料のX線回折パターンの測定を実施して、都度ピーク強度の比を算出した。
[実施例1]
水0.330kgにCsCO0.216kgを溶解し、これをHWO1.000kgに添加して十分攪拌した後、乾燥し、狙いの組成であるCs0.33WO混合粉体を得た。
次に、図1にて説明した高周波プラズマ反応装置を用い、真空排気装置により反応系内を約0.1Pa(約0.001Torr)まで真空引きした後、アルゴンガスで完全に置換して1気圧の流通系とした。その後、反応容器内にプラズマガスとしてアルゴンガスを30L/minの流量で導入し、シースガスとしてシースガス供給口より螺旋状にアルゴンガス55L/minとヘリウムガス5L/minの流量で導入した。そして、高周波プラズマ発生用の水冷銅コイルに高周波電力を印加し、高周波プラズマを発生させた。このとき、10000〜15000Kの高温部を有している熱プラズマを発生させるため、高周波電力は40kWとした。
こうして、高周波プラズマを発生させた後、キャリアガスとして、アルゴンガスをガス供給装置から9L/minの流量で供給しながら、前記混合粉体を50g/minの割合で熱プラズマ中に供給した。
その結果、混合粉体は熱プラズマ中にて瞬時に蒸発し、プラズマ尾炎部に至る過程で急冷凝固して超微粒化した。当該生成した超微粒子は、回収フィルターに堆積した。
当該堆積した超微粒子を回収し、粉末X線回折装置(スペクトリス株式会社PANalytical製 X‘Pert−PRO/MPD)を用いて粉末X線回折法(θ―2θ法)によりX線回折パターンを測定した。
得られた超微粒子のX線回折パターンを図2に示す。相の同定を行った結果、得られた超微粒子は六方晶Cs0.33WO単相と同定された。さらに当該X線回折パターンを用いて、リートベルト解析法による結晶構造解析を行ったところ、得られた超微粒子の結晶子径は18.8nmであった。さらに得られた超微粒子のX線回折パターンのピークトップ強度の値は4200カウントであった。
得られた超微粒子の組成を、ICP発光分析法により調べた。その結果、Cs濃度が13.6質量%、W濃度が65.3質量%であり、Cs/Wのモル比は0.29であった。CsとW以外の残部は酸素であり、1質量%以上含有されるその他不純物元素は存在していないことを確認した。
得られた超微粒子のBET比表面積を、BET比表面積測定装置(株式会社Mountech製 HMmodel−1208)を用いて測定したところ、60.0m/gであった。尚、BET比表面積の測定には純度99.9%の窒素ガスを使用した。
また、実施例1に係る複合タングステン酸化物超微粒子における揮発成分の含有率を測定したところ1.6質量%であった。
得られた複合タングステン酸化物超微粒子を10重量部と、トルエン80重量部と、官能基としてアミンを含有する基を有するアクリル系高分子分散剤(アミン価48mgKOH/g、分解温度250℃のアクリル系分散剤)(以下、「分散剤a」と記載する。)10重量部を混合し、3kgのスラリーを調製した。このスラリーをビーズと共に媒体攪拌ミルに投入し、0.5時間粉砕分散処理を行った。尚、媒体攪拌ミルは横型円筒形のアニュラータイプ(アシザワ株式会社製)を使用し、ベッセル内壁とローター(回転攪拌部)の材質はジルコニアとした。また、ビーズには、直径0.1mmのYSZ(Yttria-Stabilized Zirconia:イットリア安定化ジルコニア)製のビーズを使用した。ローターの回転速度は14rpm/秒とし、スラリー流量0.5kg/minにて粉砕分散処理を行い、実施例1に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散液を得た。
当該製造条件を表1に示す。また、表1には、後述する実施例2〜13の製造条件についても併せて記載する。
実施例1に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散液に含まれる複合タングステン酸化物超微粒子、すなわち粉砕分散処理後の複合タングステン酸化物超微粒子のX線回折パターンのピークトップ強度の値は3000カウント、ピーク位置は2θ=27.8°であった。
一方、シリコン粉末標準試料(NIST製 640c)を準備し、当該シリコン粉末標準試料における(220)面を基準としたピーク強度の値を測定したところ、19800カウントであった。
従って、当該標準試料のピーク強度の値を1としたときの、実施例1に係る粉砕分散処理後の複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピーク強度の比の値は0.15であることが判明した。
また、実施例1に係る粉砕分散処理後の複合タングステン酸化物超微粒子の結晶子径は16.9nmであった。
さらに、実施例1に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散液の分散粒子径を、動的光散乱法に基づく粒径測定装置を用いて測定したところ、70nmであった。尚、粒径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドは、トルエンを用いて測定し、溶媒屈折率は1.50とした。
実施例1に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散液から、スプレードライヤーを用いてトルエンを除去し、実施例1に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散粉を得た。
当該結果を表3に示す。また、表3には、後述する実施例2〜13の結果についても併せて記載する。
得られた複合タングステン酸化物超微粒子分散粉を、熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットに添加し、ブレンダーで均一に混合した後、当該混合物を二軸押出機で溶融混練して押し出し、当該押出されたストランドをペレット状にカットし、近赤外線吸収成分である複合タングステン酸化物超微粒子を80質量%含有するマスターバッチを得た。
得られたマスターバッチと、同じ方法で調製した複合タングステン酸化物超微粒子を添加していないポリエチレンテレフタレートのマスターバッチとを、重量比1:1で混合し、複合タングステン酸化物超微粒子を40質量%含有した実施例1に係る混合マスターバッチを得た。
実施例1に係る混合マスターバッチを溶融紡糸し、続いて延伸を行ない、実施例1に係るポリエステルマルチフィラメント糸を製造した。当該時点における複合タングステン酸化物超微粒子の平均粒径を、透過型電子顕微鏡像を用いた画像処理装置によって算出したところ、17nmであり、上述した結晶子径16.9nmとほぼ同値であった。
得られたポリエステルマルチフィラメント糸を切断してポリエステルステープルを作製し、これを用いて紡績糸を製造した。そして、この紡績糸を用いて保温性を有する実施例1に係るニット製品を得た。(ここで、作製されたニット製品試料の日射反射率は8%となるように調整した。尚、当該ニット製品試料における日射反射率の8%への調整は、後述する実施例および比較例の全てで行った。)
作製されたニット製品の分光特性を、日立製作所製の分光光度計を用いて波長200〜2100nmの光の透過率および反射率により測定し、JIS A5759に従って日射吸収率を算出した。当該日射吸収率は、日射吸収率(%)=100%−日射透過率(%)−日射反射率(%)から算出した。算出された日射吸収率は、51.0%であった。
当該結果を表5に示す。また、表5には、後述する実施例2〜28および比較例1〜4で得られた結果についても併せて記載する。
次に、作製されたニット製品の生地裏面の温度上昇効果を、以下のようにして測定した。
20℃、60%RH環境下において、太陽光線近似スペクトルランプ(セリック(株)製ソーラーシミュレータXL−03E50改)を、当該ニット製品の生地から30cmの距離より照射し、一定時間毎(0秒、30秒、60秒、180秒、360秒、600秒)の、当該生地裏面の温度を放射温度計(ミノルタ(株)製HT−11)にて測定した。
当該結果を表6に示す。また、表6には、後述する実施例2〜28および比較例1〜4で得られた結果についても併せて記載する。
[実施例2〜6]
キャリアガス流量、プラズマガス流量、シースガス流量、原料供給速度を変更したこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例2〜6に係る複合タングステン酸化物超微粒子と複合タングステン酸化物超微粒子分散液を製造した。変更したキャリアガス流量条件と原料供給速度条件、およびその他の条件を表1に記載する。実施例2〜6に係る複合タングステン酸化物超微粒子と複合タングステン酸化物超微粒子分散液に対して、実施例1と同様の評価を実施した。
当該製造条件および評価結果を表1、3に示す。
また、実施例2〜6に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2〜6に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散粉と混合マスターバッチとポリエステルマルチフィラメント糸とニット製品とを得て評価した。
当該評価結果を表5、6に示す。
[実施例7]
実施例1に記載のCsCOとHWOとの混合粉体を、窒素ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下、800℃で焼成したCs0.33WOで表される複合タングステン酸化物に変更して、高周波プラズマ反応装置に投入する原料として用いた。それ以外は実施例1と同様の方法で実施例7に係る複合タングステン酸化物超微粒子と複合タングステン酸化物超微粒子分散液を製造した。得られた超微粒子とその分散液に対して、実施例1と同様の評価を実施した。
当該製造条件および評価結果を表1、3に示す。
また、実施例7に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例7に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散粉と混合マスターバッチとポリエステルマルチフィラメント糸とニット製品とを得て評価した。
当該評価結果を表5、6に示す。
[実施例8]
キャリアガス流量と原料供給速度を変更したこと以外は、実施例7と同様の操作をすることで、実施例8に係る複合タングステン酸化物超微粒子と複合タングステン酸化物超微粒子分散液を製造した。得られた超微粒子とその分散液に対して、実施例1と同様の評価を実施した。
当該製造条件および評価結果を表1、3に示す。
また、実施例8に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例8に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散粉とマスターバッチとポリエステルマルチフィラメント糸とニット製品とを得て評価した。
当該評価結果を表5、6に示す。
[実施例9〜13]
水0.330kgにRbCO0.148kgを溶解し、これをHWO1.000kgに添加して十分攪拌した後、乾燥し、狙いの組成であるRb0.32WOの実施例9に係る混合粉体を得た。
水0.330kgにKCO0.375kgを溶解し、これをHWO1.000kgに添加して十分攪拌した後、乾燥し、狙いの組成であるK0.27WOの実施例10に係る混合粉体を得た。
水0.330kgにTlNO0.320kgを溶解し、これをHWO1.000kgに添加して十分攪拌した後、乾燥し、狙いの組成であるTl0.19WOの実施例11に係る混合粉体を得た。
水0.330kgにBaCO0.111kgを溶解し、これをHWO1.000kgに添加して十分攪拌した後、乾燥し、狙いの組成であるBa0.14WOの実施例12に係る混合粉体を得た。
水0.330kgにKCO0.0663kgとCsCO0.0978kgを溶解し、これをHWO1.000kgに添加して十分攪拌した後、乾燥し、狙いの組成であるK0.24Cs0.15WOの実施例13に係る混合粉体を得た。
前記実施例9〜13に係る混合粉体を高周波熱プラズマ反応装置に投入する原料として用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例9〜13に係る複合タングステン酸化物超微粒子と複合タングステン酸化物超微粒子分散液を製造した。得られた超微粒子とその分散液に対して、実施例1と同様の評価を実施した。
当該製造条件および評価結果を表1、3に示す。
また、実施例9〜13に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例9〜13に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散粉と混合マスターバッチとポリエステルマルチフィラメント糸とニット製品とを得て評価した。
当該評価結果を表5、6に示す。
[実施例14]
水16.5gにCsCO10.8gを溶解し、当該溶液をHWO50gに添加して十分攪拌した後、乾燥した。当該乾燥物へNガスをキャリアーとした2%Hガスを供給しながら加熱し、800℃の温度で30分間焼成した。その後、Nガス雰囲気下800℃で90分間焼成する固相法にて実施例14に係る複合タングステン酸化物を得た。
当該製造条件を表2に示す。また、表2には、後述する実施例15〜28、比較例1〜4の製造条件についても併せて記載する。
これ以外は実施例1と同様にして、実施例14に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散液を製造した。但し、媒体攪拌ミルによる粉砕・分散処理時間は2時間とした。得られた超微粒子とその分散液に対して、実施例1と同様に評価した。
得られた超微粒子のX線回折パターンを測定し相の同定を行った結果、得られた超微粒子は六方晶Cs0.33WO単相と同定された。
当該結果を表4に示す。また、表4には、後述する実施例15〜28、比較例1〜4の製造条件についても併せて記載する。
また、実施例14に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例14に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散粉と混合マスターバッチとポリエステルマルチフィラメント糸とニット製品とを得て評価した。
当該評価結果を表5、6に示す。
[実施例15]
水0.330kgにCsCO0.216kgを溶解し、得られた溶液をHWO1.000kgに添加して十分攪拌した後、乾燥して乾燥物を得た。Nガスをキャリアーとした5%Hガスを供給しながら当該乾燥物を加熱し、800℃の温度で1時間焼成した。その後、さらにNガス雰囲気下800℃で2時間焼成する固相反応法を実施して、実施例15に係る複合タングステン酸化物を得た。
得られた実施例15に係る複合タングステン酸化物10重量部と、水90重量部とを混合し、約3kgのスラリーを調製した。尚、このスラリーには、分散剤を添加していない。このスラリーをビーズと共に媒体攪拌ミルに投入し、2時間粉砕分散処理を行った。尚、媒体攪拌ミルは横型円筒形のアニュラータイプ(アシザワ株式会社製)を使用し、ベッセル内壁とローター(回転攪拌部)の材質はジルコニアとした。また、ビーズには、直径0.1mmのYSZ(Yttria−Stabilized Zirconia:イットリア安定化ジルコニア)製のビーズを使用した。ローターの回転速度は14rpm/秒とし、スラリー流量0.5kg/minにて粉砕分散処理を行い、実施例15に係る複合タングステン酸化物超微粒子水分散液を得た。
実施例15に係る複合タングステン酸化物超微粒子の水分散液の分散粒子径を測定したところ、70nmであった。尚、分散粒子径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドは水で測定し、溶媒屈折率は1.33とした。
次に、得られた複合タングステン酸化物超微粒子分散液約3kgを大気乾燥機で乾燥処理して、実施例15に係る複合タングステン酸化物超微粒子を得た。尚、大気乾燥機には、恒温オーブン(エスペック株式会社製 SPH−201型)を使用し、乾燥温度は70℃、乾燥時間は96時間とした。
当該製造条件を表2に示す。
実施例15に係る複合タングステン酸化物超微粒子のX線回折パターンを測定し、相の同定を行った結果、得られた超微粒子は、六方晶Cs0.33WO単相と同定された。また、得られた超微粒子のX線回折パターンのピークトップ強度の値は4200カウントであり、ピーク位置は2θ=27.8°であり、結晶子径は23.7nmであった。一方、シリコン粉末標準試料(NIST製、640c)を準備し、当該シリコン粉末標準試料における(220)面を基準としたピーク強度の値を測定したところ、19800カウントであった。従って、当該標準試料のピーク強度の値を1としたときの、実施例15に係る粉砕分散処理後の複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピーク強度の比の値は0.21であることが判明した。
得られた実施例15に係る複合タングステン酸化物超微粒子の組成を、ICP発光分析法により調べた。その結果、Cs濃度が15.2質量%、W濃度が64.6質量%であり、Cs/Wのモル比は0.33であった。CsとW以外の残部は酸素であった。そして、その他の不純物元素であって1質量%以上含有されるものは、存在していないことも確認された。
粉砕して得られた実施例15に係る複合タングステン酸化物超微粒子のBET比表面積を測定したところ、42.6m/gであった。
また、実施例15に係る複合タングステン酸化物超微粒子の揮発成分の含有率を測定したところ2.2質量%であった。
得られた複合タングステン酸化物超微粒子10重量部を、溶媒のトルエン80重量部と分散剤a10重量部に分散させて50gの分散液を作製し、当該分散液の分散粒子径を測定したところ80nmであった。尚、分散粒子径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、トルエンで希釈して測定し、溶媒屈折率は1.50とした。
当該結果を表4に示す。
実施例15に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散液から、スプレードライヤーを用いてトルエンを除去し、実施例15に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散粉を得た。
得られた複合タングステン酸化物超微粒子分散粉を、熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットに添加し、ブレンダーで均一に混合した後、当該混合物を二軸押出機で溶融混練して押し出し、当該押出されたストランドをペレット状にカットし、近赤外線吸収成分である複合タングステン酸化物超微粒子を80質量%含有するマスターバッチを得た。
得られたマスターバッチと、同じ方法で調製した複合タングステン酸化物超微粒子を添加していないポリエチレンテレフタレートのマスターバッチとを、重量比1:1で混合し、複合タングステン酸化物超微粒子を40質量%含有した実施例15に係る混合マスターバッチを得た。
実施例15に係る混合マスターバッチを溶融紡糸し、続いて延伸を行ない、実施例15に係るポリエステルマルチフィラメント糸を製造した。当該時点における複合タングステン酸化物超微粒子の平均粒径を、透過型電子顕微鏡像を用いた画像処理装置によって算出したところ、23nmであり、上述した結晶子径23.7nmとほぼ同値であった。
得られたポリエステルマルチフィラメント糸を切断してポリエステルステープルを作製し、これを用いて紡績糸を製造した。そして、この紡績糸を用いて保温性を有する実施例15に係るニット製品を得た。
作製されたニット製品の分光特性を、日立製作所製の分光光度計を用いて波長200〜2100nmの光の透過率および反射率により測定し、JIS A5759に従って日射吸収率を算出した。当該日射吸収率は、日射吸収率(%)=100%−日射透過率(%)−日射反射率(%)から算出した。算出された日射吸収率は、52.3%であった。
当該結果を表5に示す。
次に、作製されたニット製品の生地裏面の温度上昇効果を、以下のようにして測定した。
20℃、60%RH環境下において、太陽光線近似スペクトルランプ(セリック(株)製ソーラーシミュレータXL−03E50改)を、当該ニット製品の生地から30cmの距離より照射し、一定時間毎(0秒、30秒、60秒、180秒、360秒、600秒)の、当該生地裏面の温度を放射温度計(ミノルタ(株)製HT−11)にて測定した。
当該結果を表6に示す。
[実施例16]
大気乾燥機による乾燥処理を、真空攪拌擂潰機による真空乾燥処理に変更した以外は実施例15と同様にして、実施例16に係る複合タングステン酸化物超微粒子と複合タングステン酸化物超微粒子分散液と複合タングステン酸化物超微粒子分散粉と混合マスターバッチとポリエステルマルチフィラメント糸とニット製品とを製造して評価した。
当該製造条件と評価結果とを表2、4、5、6に示す。
尚、真空攪拌擂潰機は石川式攪拌擂潰機24P型(田島化学機械株式会社製)を使用し、真空乾燥処理における乾燥温度は80℃、乾燥時間は32時間、混練ミキサーの回転周波数は40Hz、真空容器内の圧力は0.001MPa以下とした。
[実施例17]
大気乾燥機による乾燥処理を、噴霧乾燥機による噴霧乾燥処理に変更した以外は実施例15と同様にして、実施例17に係る複合タングステン酸化物超微粒子と複合タングステン酸化物超微粒子分散液と複合タングステン酸化物超微粒子分散粉と混合マスターバッチとポリエステルマルチフィラメント糸とニット製品とを製造して評価した。
当該製造条件と評価結果とを表2、4、5、6に示す。
尚、噴霧乾燥機は噴霧乾燥機ODL−20型(大川原化工機株式会社製)を使用した。
[実施例18〜20]
媒体攪拌ミルによる粉砕分散処理時間を1時間に変更した以外は、実施例15〜17と同様の方法で実施例18〜20に係る複合タングステン酸化物超微粒子と複合タングステン酸化物超微粒子分散液と複合タングステン酸化物超微粒子分散粉と混合マスターバッチとポリエステルマルチフィラメント糸とニット製品とを製造して評価した。
当該製造条件と評価結果とを表2、4、5、6に示す。
[実施例21〜23]
複合タングステン酸化物超微粒子分散液の調製の際、複合タングステン酸化物10重量部と、溶媒としてプロピレングリコールモノエチルエーテル90重量部とを混合したこと以外は、上述した実施例15〜17と同様の合成製造方法により、実施例21〜23に係る複合タングステン酸化物超微粒子と複合タングステン酸化物超微粒子分散液と複合タングステン酸化物超微粒子分散粉と混合マスターバッチとポリエステルマルチフィラメント糸とニット製品とを製造して評価した。
当該製造条件と評価結果とを表2、4、5、6に示す。
[実施例24]
実施例1に係る方法と同様にして複合タングステン酸化物超微粒子を得た。その後、得られた超微粒子10重量と、トルエン80重量部と、分散剤a10重量部とを混合し、50gのスラリーを調製した。このスラリーへ、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製 US−600TCVP)によって0.5時間分散処理を行い、実施例24に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散液を得、さらに実施例1と同様の方法により複合タングステン酸化物超微粒子分散粉と混合マスターバッチとポリエステルマルチフィラメント糸とニット製品とを製造して評価した。
当該製造条件と評価結果とを表2、4、5、6に示す。
[実施例25]
熱可塑性樹脂としてナイロン6樹脂ペレットを使用した以外は、実施例1と同様の方法で、複合タングステン酸化物超微粒子を30質量%含有したナイロン6のマスターバッチを調製し、同じ方法で調製した複合タングステン酸化物超微粒子を添加していないナイロン6のマスターバッチと重量比1:1で混合し、複合タングステン酸化物超微粒子を15質量%含有した実施例25に係る混合マスターバッチを得た。
実施例25に係る混合マスターバッチを溶融紡糸し、続いて延伸を行ない、ナイロンマルチフィラメント糸を製造した。得られたマルチフィラメント糸を切断してナイロンステープルを作製し、これを用いて紡績糸を製造した。この紡績糸を用いて保温性を有するナイロン繊維製品を製造した。製造した混合マスターバッチとナイロンマルチフィラメント糸とナイロン繊維製品を、実施例1と同様の方法で評価した。
当該製造条件と評価結果とを表2、4、5、6に示す。
[実施例26]
熱可塑性樹脂としてアクリル樹脂ペレットを使用した以外は、実施例1と同様の方法で、複合タングステン酸化物超微粒子を50質量%含有したポリアクリロニトリルのマスターバッチを作製し、同じ方法で調製した複合タングステン酸化物超微粒子を添加していないポリアクリロニトリルのマスターバッチと重量比1:1で混合し複合タングステン酸化物超微粒子を25質量%含有した実施例26に係る混合マスターバッチを得た。
実施例26に係る混合マスターバッチを紡糸し、続いて延伸を行ない、アクリルマルチフィラメント糸を製造した。得られたマルチフィラメント糸を切断してアクリルステープルを作製し、これを用いて紡績糸を製造した。この紡績糸を用いて保温性を有するアクリル繊維製品を製造した。製造した混合マスターバッチとアクリルマルチフィラメント糸とアクリル繊維製品を、実施例1と同様の方法で評価した。
当該製造条件と評価結果とを表2、4、5、6に示す。
[実施例27]
実施例1に係る複合タングステン酸化物超微粒子を30質量%含有したポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTG2000)と、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートとを反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを調製した。次に、当該プレポリマーへ、鎖伸長剤として、1,4−ブタンジオールと3−メチル−1,5−ペンタンジオールを反応させて重合を行ない、熱可塑性ポリウレタン溶液を製造した。
得られた熱可塑性ポリウレタン溶液を紡糸原液として紡糸し、続いて当該紡糸の延伸を行ない、ポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維を用いて保温性を有するウレタン繊維製品を製造した。製造したポリウレタン弾性繊維とウレタン繊維製品を、実施例1と同様の方法で評価した。
当該製造条件と評価結果とを表2、4、5、6に示す。
[実施例28]
実施例1に係る方法と同様にして複合タングステン酸化物超微粒子を得た。その後、得られた超微粒子10重量と、平均粒径30nmのZrO微粒子5重量部と、トルエン70重量部と、分散剤a15重量部とを混合し、3kgのスラリーを調製した。このスラリーに対し、実施例1と同様の粉砕分散処理を施し、実施例28に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散液を得、さらに実施例1と同様の方法により複合タングステン酸化物超微粒子分散粉と混合マスターバッチとポリエステルマルチフィラメント糸とニット製品とを製造して評価した。
当該製造条件と評価結果とを表2、4、5、6に示す。
[比較例1および2]
キャリアガス流量、プラズマガス流量、シースガス流量、原料供給速度を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、比較例1、2に係る複合タングステン酸化物超微粒子と複合タングステン酸化物超微粒子分散液と複合タングステン酸化物超微粒子分散粉と混合マスターバッチとポリエステルマルチフィラメント糸とニット製品とを製造して評価した。
当該製造条件と評価結果とを表2、4、5、6に示す。
[比較例3]
5000〜10000Kの高温部を有している熱プラズマを発生させるために、高周波電力は15kWとした以外は、実施例1と同様の方法により、比較例3に係る複合タングステン酸化物超微粒子と複合タングステン酸化物超微粒子分散液と複合タングステン酸化物超微粒子分散粉と混合マスターバッチとポリエステルマルチフィラメント糸とニット製品とを製造して評価した。
当該製造条件と評価結果とを表2、4、5、6に示す。
[比較例4]
実施例15に係る複合タングステン酸化物超微粒子水分散液を2時間の粉砕分散処理時間で得るところを、20時間の粉砕分散処理とした以外は、実施例15と同様の操作を行って、比較例4に係る複合タングステン酸化物超微粒子水分散液を得た。比較例4に係る複合タングステン酸化物超微粒子水分散液の分散粒子径を測定したところ、120nmであった。尚、分散粒子径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドは水で測定し、溶媒屈折率は1.33とした。
当該結果を表2に示す。
比較例4に係る複合タングステン酸化物超微粒子のX線回折パターンを測定し、相の同定を行った結果、得られた超微粒子は、六方晶Cs0.33WO単相と同定された。また、得られた超微粒子のX線回折パターンのピークトップ強度の値は1300カウント、ピーク位置は2θ=27.8°であり、結晶子径は8.1nmであった。一方、シリコン粉末標準試料(NIST製、640c)を準備し、当該シリコン粉末標準試料における(220)面を基準としたピーク強度の値を測定したところ、19800カウントであった。従って、当該標準試料のピーク強度の値を1としたときの、実施例1に係る粉砕分散処理後の複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピーク強度の比の値は0.07であることが判明した。
粉砕して得られた比較例4に係る複合タングステン酸化物超微粒子のBET比表面積を測定したところ、102.8m/gであった。
また、比較例4に係る複合タングステン酸化物超微粒子の揮発成分の含有率を測定したところ2.2質量%であった。
得られた複合タングステン酸化物超微粒子10重量部を、トルエン80重量部と分散剤a10重量部に分散させて、比較例4に係る50gの複合タングステン酸化物超微粒子分散液を得た。そして当該複合タングステン酸化物超微粒子分散液の分散粒子径を測定したところ、120nmであった。尚、分散粒子径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。尚、バックグラウンドはトルエンで測定し、溶媒屈折率は1.50とした。
当該結果を表4に示す。
比較例4に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散液から、スプレードライヤーを用いてトルエンを除去し、比較例4に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散粉を得た。
得られた複合タングステン酸化物超微粒子分散粉を、熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットに添加し、ブレンダーで均一に混合した後、当該混合物を二軸押出機で溶融混練して押し出し、当該押出されたストランドをペレット状にカットし、近赤外線吸収成分である複合タングステン酸化物超微粒子を80質量%含有するマスターバッチを得た。
得られたマスターバッチと、同じ方法で調製した複合タングステン酸化物超微粒子を添加していないポリエチレンテレフタレートのマスターバッチとを、重量比1:1で混合し、複合タングステン酸化物超微粒子を40質量%含有した比較例4に係る混合マスターバッチを得た。
比較例4に係る混合マスターバッチを溶融紡糸し、続いて延伸を行ない、比較例4に係るポリエステルマルチフィラメント糸を製造した。当該時点における複合タングステン酸化物超微粒子の平均粒径を、透過型電子顕微鏡像を用いた画像処理装置によって算出したところ、120nmであり、上述した結晶子径8.1nmよりも大幅に大きい値を示した。
得られたポリエステルマルチフィラメント糸を切断してポリエステルステープルを作製し、これを用いて紡績糸を製造した。そして、この紡績糸を用いて保温性を有する比較例4に係るニット製品を得た。
作製されたニット製品の分光特性を、日立製作所製の分光光度計を用いて波長200〜2100nmの光の透過率および反射率により測定し、JIS A5759に従って日射吸収率を算出した。当該日射吸収率は、日射吸収率(%)=100%−日射透過率(%)−日射反射率(%)から算出した。算出された日射吸収率は、43.3%であった。
当該結果を表5に示す。
次に、作製されたニット製品の生地裏面の温度上昇効果を、以下のようにして測定した。
20℃、60%RH環境下において、太陽光線近似スペクトルランプ(セリック(株)製ソーラーシミュレータXL−03E50改)を、当該ニット製品の生地から30cmの距離より照射し、一定時間毎(0秒、30秒、60秒、180秒、360秒、600秒)の、当該生地裏面の温度を放射温度計(ミノルタ(株)製HT−11)にて測定した。
当該結果を表6に示す。
[まとめ]
表3、4から明らかなように、実施例1〜28に係るフィラメント糸に含まれる複合タングステン酸化物超微粒子は、シリコン粉末標準試料(NIST製、640c)(220)面のXRDピーク強度の値に対する前期複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークトップ強度の比が0.13以上であり、結晶子径が1nm以上の複合タングステン酸化物超微粒子であった。ここで、実施例において、フィラメント糸中の複合タングステン酸化物超微粒子の平均粒子径と結晶子径とはほぼ同じであることから、用いている複合タングステン酸化物超微粒子はアモルファス相の体積比率が50%以下である単結晶の複合タングステン酸化物超微粒子であると考えられる。
一方、比較例1、2、4において、フィラメント糸中の複合タングステン酸化物超微粒子の平均粒子径は結晶子径よりも大きく、単結晶ではないと考えられる。また、比較例3においては異相(WOとW)が発生していた。
そして、当該実施例に係る複合タングステン酸化物超微粒子を用いて製造されたフィラメント糸は、表5に示すように優れた近赤外線吸収特性を発揮した。また、当該実施例に係る各繊維製品の生地裏面温度は、比較例と比較すると、表6に示すように平均で6℃以上も高くなり、保温性に優れることが判明した。





1 熱プラズマ
2 高周波コイル
3 シースガス供給ノズル
4 プラズマガス供給ノズル
5 原料粉末供給ノズル
6 反応容器
7 吸引管
8 フィルター

Claims (17)

  1. 繊維の内部に近赤外線吸収特性を有する超微粒子を含有する近赤外線吸収繊維であって、
    前記近赤外線吸収特性を有する超微粒子は、複合タングステン酸化物超微粒子であり、
    前記複合タングステン酸化物超微粒子は、シリコン粉末標準試料(NIST製、640c)の(220)面のXRDピーク強度の値を1としたとき、XRDピークトップ強度の比の値が0.13以上である複合タングステン酸化物超微粒子である、ことを特徴とする近赤外線吸収繊維。
  2. 前記複合タングステン酸化物超微粒子が一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物超微粒子である、ことを特徴とする請求項1に記載の近赤外線吸収繊維。
  3. 前記複合タングステン酸化物超微粒子の結晶子径が1nm以上200nm以下である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外線吸収繊維。
  4. 前記複合タングステン酸化物超微粒子が六方晶の結晶構造を含む、ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の近赤外線吸収繊維。
  5. 前記複合タングステン酸化物超微粒子の揮発成分の含有率が2.5質量%以下である、ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の近赤外線吸収繊維。
  6. 前記複合タングステン酸化物超微粒子の含有量が、前記繊維の固形分に対して0.001質量%以上80質量%以下である、ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の近赤外線吸収繊維。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載の近赤外線吸収繊維の表面および/または内部ヘ、さらに遠赤外線放射物質の微粒子を含有させた繊維であって、
    前記遠赤外線放射物質の微粒子の含有量が、前記繊維の固形分に対して0.001質量%以上80質量%以下である、ことを特徴とする近赤外線吸収繊維。
  8. 前記繊維が合成繊維、半合成繊維、天然繊維、再生繊維、無機繊維、またはこれらの繊維の混紡、合糸、混繊による混合糸のいずれか1種以上から選択される繊維である、ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の近赤外線吸収繊維。
  9. 前記合成繊維がポリウレタン繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリエーテルエステル系繊維から選択されるいずれか1種以上の合成繊維である、ことを特徴とする請求項8に記載の近赤外線吸収繊維。
  10. 前記半合成繊維がセルロース系繊維、タンパク質系繊維、塩化ゴム、塩酸ゴムから選択されるいずれか1種以上の半合成繊維である、ことを特徴とする請求項8または9に記載の近赤外線吸収繊維。
  11. 前記天然繊維が植物繊維、動物繊維、鉱物繊維から選択されるいずれか1種以上の天然繊維である、ことを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の近赤外線吸収繊維。
  12. 前記再生繊維が、セルロース系繊維、タンパク質系繊維、アルギン繊維、ゴム繊維、キチン繊維、マンナン繊維から選択されるいずれか1種以上の再生繊維である、ことを特徴とする請求項8から11のいずれかに記載の近赤外線吸収繊維。
  13. 前記無機繊維が金属繊維、炭素繊維、けい酸塩繊維から選択されるいずれか1種以上の無機繊維である、ことを特徴とする請求項8から12のいずれかに記載の近赤外線吸収繊維。
  14. 前記複合タングステン酸化物超微粒子の表面が、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムから選択されるいずれか1種類以上の元素を含む化合物で被覆されてなる、ことを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の近赤外線吸収繊維。
  15. 前記化合物が酸化物である、ことを特徴とする請求項14に記載の近赤外線吸収繊維。
  16. 請求項1から15のいずれかに記載の近赤外線吸収繊維が加工されてなる、ことを特徴とする繊維製品。
  17. 近赤外線吸収特性を有する超微粒子を含有する近赤外線吸収繊維の製造方法であって、
    前記近赤外線吸収特性を有する超微粒子は、複合タングステン酸化物超微粒子であり、
    前記複合タングステン酸化物粒子を、そのXRDピークトップ強度の比の値が、シリコン粉末標準試料(NIST製、640c)の(220)面のXRDピーク強度の値を1としたとき、0.13以上となるように焼成して得、
    前記XRDピークトップ強度の比の値を0.13以上に保ちながら、前記得られた複合タングステン酸化物粒子を繊維に含有させる、ことを特徴とする近赤外線吸収繊維の製造方法。
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