JPWO2018211666A1 - 電動パワーステアリング装置および電動パワーステアリングの制御方法 - Google Patents

電動パワーステアリング装置および電動パワーステアリングの制御方法 Download PDF

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Abstract

運転者の操舵トルクを検出する操舵トルク検出部と、運転者の操舵力をアシストするモータと、前記モータの回転速度の推定値である推定速度を算出する推定速度演算部と、前記操舵トルクに基づいて前記推定速度を補正する推定速度補正部と、補正後の推定速度を積分して前記モータの推定角を算出する推定角演算部と、前記推定角に基づいて前記モータに電力を供給する電力供給部と、を備え、前記推定速度補正部は、前記操舵トルクの微分値から運転者の操舵の周波数成分を除去した値に基づく判定用信号と前記操舵トルクと前記推定速度とが同符号のとき、前記推定速度を補正する、電動パワーステアリング装置を提供する。

Description

この発明は、回転角センサを用いることなく、モータの回転角を推定することのできる電動パワーステアリング装置および電動パワーステアリングの制御方法に関するものである。
従来の電動パワーステアリング装置には、特許文献1や特許文献2のように、モータの回転角を推定し、センサで検出した回転角の代わりに推定した角度信号(以下、推定角)を用いたセンサレス制御を行うものがある。また、電動パワーステアリング装置に限らず、特許文献3のような推定角を用いたセンサレス制御によってモータを駆動する制御装置が数多く存在する。
上記のような推定角を用いたセンサレス制御では、モータの回転角と推定角との差異(以下、推定誤差)が生じると、モータが所望のトルクを発生することができないため、モータトルクが変動し、振動が生じる。そのため、推定角を用いたセンサレス制御を行う電動パワーステアリング装置にあっては、推定誤差によって生じるトルク変動により、運転者が操舵しづらくなるという問題がある。推定誤差が発生する要因は、推定角の演算式においてパラメータとして設定するモータの抵抗値やインダクタンスなどの誤差(以下、パラメータ誤差)や、推定遅れなど、推定方法によって様々である。
このような問題に対し、特許文献1では、推定角である制御角とモータトルクとの間に負の相関があるとき、推定角の変化量に相当する加算角すなわち推定速度の制限値を小さく変更することで、制御角である推定角の補正を行っている。例えば、加算角すなわち推定速度の符号と操舵トルクの微分値の符号が同符号のとき、制御角とモータトルクとの間に負の相関があるとして制御角すなわち推定角の補正を行っている。
特開2010‐213550号公報 特許第5837230号明細書 特許第4672236号明細書
以下では、右方向の操舵に対応した操舵トルクの符号およびモータの回転速度の符号を正として説明する。上記の特許文献1の補正方法では、加算角すなわち推定速度の符号と操舵トルクの微分値の符号が同符号のときに加算角すなわち推定速度を補正し、推定角の推定誤差を小さくできる。しかし、運転者が通常の切増し操舵を行ったときでも、操舵トルクは増加、モータの回転角も増加となる。この際、操舵トルクが増加すると操舵トルクの微分値は正となり、モータの回転角が増加するとモータの回転速度および推定速度は正となる。このため、この補正方法では、通常の操舵でも補正の条件を満たす。すなわち、本来は補正の必要のない場合に誤って制限することで、誤差が拡大してしまうという課題があった。この課題は、検出した操舵トルクに含まれる運転者の操舵の周波数成分とモータのトルクおよび回転角による周波数成分を区別できないことが要因である。
電動パワーステアリング装置では、トーションバーの上側であるステアリングホイール側の角度とトーションバーの下側であるモータ側の角度とのねじれ量によって、運転者の操舵トルクを検出している。従って、検出した操舵トルクは、操舵角の周波数成分、すなわち、運転者の操舵の周波数成分だけでなく、モータの回転角の周波数成分、すなわち、モータのトルクの周波数成分も含む。そのため、検出した操舵トルクに含まれる運転者の操舵の周波数成分を除去することで、運転者の操舵の周波数成分よりも高い周波数成分のモータのトルクの減少を精度良くとらえる必要があった。
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、推定速度の補正を精度良く行うことで、推定角の推定誤差によって生じるトルク変動を抑制し、振動の小さい安定的なセンサレス制御を行える電動パワーステアリング装置およびその制御方法を得ることを目的としている。
この発明は、運転者の操舵トルクを検出する操舵トルク検出部と、運転者の操舵力をアシストするモータと、前記モータの回転速度の推定値である推定速度を算出する推定速度演算部と、前記操舵トルクに基づいて前記推定速度を補正する推定速度補正部と、補正後の推定速度を積分して前記モータの推定角を算出する推定角演算部と、前記推定角に基づいて前記モータに電力を供給する電力供給部と、を備え、前記推定速度補正部は、前記操舵トルクの微分値から運転者の操舵の周波数成分を除去した値に基づく判定用信号と前記操舵トルクと前記推定速度とが同符号のとき、前記推定速度を補正する、電動パワーステアリング装置等にある。
この発明では、推定速度の補正を精度良く行うことで、推定角の推定誤差によって生じるトルク変動を抑制し、振動の小さい安定的なセンサレス制御を行える電動パワーステアリング装置およびその制御方法を提供できる。
この発明の一実施の形態による電動パワーステアリング装置の一例の概略構成図である。 この発明の一実施の形態による電動パワーステアリング装置のECUの機能ブロック図である。 この発明の実施の形態1による推定速度補正部および推定角演算部の構成の一例を示す機能ブロック図である。 推定速度の誤差に起因したトルク変動が生じた場合の各ファクタの変化の一例を示す図である。 この発明の実施の形態1によるフィルタLj(s)およびフィルタHj(s)のゲイン特性の一例を示す図である。 この発明の実施の形態1による補正判定部の処理における、推定速度と操舵トルクと判定用信号とが同符号であることを判定する処理の一例を示したフローチャートである。 この発明の実施の形態1による補正判定部の処理における、補正解除条件による判定と時間経過による判定の処理の一例を示したフローチャートである。 この発明の実施の形態1における各フラグの時間的変化の一例を示したタイムチャートである。 この発明の実施の形態1による補正実行部の処理の一例を示したフローチャートである。 この発明の実施の形態1の変形例による補正判定部の処理における、補正解除条件による判定と時間経過による判定の処理の一例を示したフローチャートである。 この発明の実施の形態1の変形例における各フラグの時間的変化の一例を示したタイムチャートである。 この発明の実施の形態2による推定速度補正部および推定角演算部の構成の一例を示す機能ブロック図である。 この発明の実施の形態2による補正実行部の処理の一例を示したフローチャートである。 この発明の実施の形態3による推定速度補正部および推定角演算部の構成の一例を示す機能ブロック図である。 この発明の実施の形態3による補正判定部の処理における、推定速度と操舵トルクと判定用信号とが同符号であることを判定する処理の一例を示したフローチャートである。 この発明の実施の形態3の変形例によるフィルタHc(s)とフィルタLc(s)のゲイン特性の一例を示した図である。 この発明による電動パワーステアリング装置の制御部分のハードウェア構成の一例を示す概略図である。 この発明の実施の形態1〜3の変形例による操舵トルクに基づく推定方法で推定速度ωを演算する場合の推定速度補正部および推定角演算部の構成の一例を示す機能ブロック図である。
この発明によれば、操舵トルクの微分値から運転者の操舵の周波数成分を除去した値に基づく判定用信号と操舵トルクと推定速度とが同符号のとき、推定速度および推定角に推定誤差が生じていることが判定できる。
まず、操舵トルクの符号と操舵トルクの微分値の符号から運転者の操舵の方向と操舵トルクの増減がわかるので、操舵トルクの符号と操舵トルクの微分値の符号とが同符号であれば、操舵トルクの大きさが増加していることを判定することができる。例えば、操舵トルクの符号と操舵トルクの微分値の符号がともに正なら、右操舵中に操舵トルクの大きさが増加していることを判定できる。
さらに、操舵トルクの微分値から運転者の操舵の周波数成分を除去した判定用信号の符号と推定速度の符号が同符号なら、推定速度の誤差により推定角の誤差が増加することでモータのトルクが減少し、操舵トルクが増加していると判定できる。これは、操舵トルクの微分値とモータの回転速度との間に相関があり、運転者の操舵の周波数よりも高い周波数帯域においては正負の符号が逆になることを利用している。すなわち、同符号であれば、推定速度に誤差があることが判定できる。加えて、操舵トルクの微分値から運転者の操舵の周波数成分を除去した値を判定用信号とすることで、検出した操舵トルクに含まれるモータのトルクの変化を抽出することができるので、検出した操舵トルクの増加が運転者の力の増加によるものか、モータのトルクの減少によるものかを区別して判定できる。
上記判定によって推定角の誤差が増加していることが判定できるので、推定速度を補正することで推定角の誤差を小さくすることができる。推定角の誤差を小さくできるので、推定角の誤差によって生じるトルク変動を抑制することができ、振動の小さい安定的なセンサレス制御を行える電動パワーステアリング装置およびその制御方法を提供できる。
以下、この発明による電動パワーステアリング装置およびその制御方法を各実施の形態に従って図面を用いて説明する。なお、各実施の形態において、同一もしくは相当部分は同一符号で示し、また重複する説明は省略する。
実施の形態1.
この発明の一実施の形態による電動パワーステアリング装置の一例を示した概略構成図を図1に示す。図1において、電動パワーステアリング装置には、ステアリングホイール101と、ステアリングシャフト103と、ラック・ピニオンギヤ105と、車輪104と、運転者の操舵力を補助するモータ1と、モータを駆動する電力を供給するためのECU(電子制御ユニット)2と、運転者の操舵トルクを検出するトルクセンサ102が設けられている。
図1において、図示しない運転者からステアリングホイール101に加えられた操舵トルクは、トルクセンサ102のトーションバー、ステアリングシャフト103を通り、ラック・ピニオンギヤ105を介してラックに伝達され、車輪104を転舵させる。
図2は、図1のECUの機能ブロック図である。モータ1は、ECU2内の電力供給部3から供給される電力により、出力としてモータトルクTmを発生する。モータトルクTmは、ステアリングシャフト103に伝達され、操舵時に運転者が加える操舵トルクを軽減する。モータ1は、例えば、永久磁石同期電動機や誘導電動機など、一般に良く知られたものを用いればよい。実施の形態1では、三相交流の永久磁石同期電動機とする。
電力供給部3は、インバータ31と座標変換部32と電圧指令演算部33と電流検出器34と電流指令演算部35で構成され、推定角θに基づいてモータ1に電力を供給する。
なお電流検出器34およびインバータ31はモータ1側に設けられている場合があり、この場合には、ECU2は図2の一点鎖線Aから左側の部分の構成を備える。
電流指令演算部35は、d軸電流指令id*およびq軸電流指令iq*を演算する。d軸電流指令id*およびq軸電流指令iq*は、モータ1の出力であるモータトルクTmに関する指令値である。d軸電流指令id*およびq軸電流指令iq*の演算方法は特に限定しないが、ここでは、d軸電流指令id*は0とし、q軸電流指令iq*は操舵トルクTrqに応じて決定する。d軸電流指令id*はモータ1の回転速度に応じて決定してもよい。モータ1の回転速度に相当する値として、例えば、後述する推定速度ωgに基づいて決定しても良い。
電圧指令演算部33は、d軸電流指令id*およびq軸電流指令iq*と、d軸検出電流idおよびq軸検出電流iqが各軸成分において一致するように、d軸電圧指令vd*およびq軸電圧指令vq*を生成する。ここでは、検出電流をフィードバックする構成としているが、検出電流を用いずにフィードフォワードで電圧指令を算出してもよい。
電流検出器34は、モータ1の各相に流れる電流として、u相検出電流iu、v相検出電流ivおよびw相検出電流iwを検出する。ここでは、3相電流を検出しているが、一部の相の電流を検出せずに検出相の電流から推定してもよい。
座標変換部32は、d軸電圧指令vd*およびq軸電圧指令vq*を推定角θに基づいて座標変換することで、u相電圧指令vu*、v相電圧指令vv*およびw相電圧指令vw*を生成する。さらに、座標変換部32は、u相検出電流iu、v相検出電流ivおよびw相検出電流iwを推定角θに基づいて座標変換することでd軸検出電流idおよびq軸検出電流iqを生成する。
インバータ31は、u相電圧指令vu*、v相電圧指令vv*およびw相電圧指令vw*に基づいた三相交流電圧を電力としてモータ1に印加することで、モータトルクTmを発生させる。
推定速度演算部4は、モータの回転速度ωeを推定し、推定した値を推定速度ωとして出力する。推定速度ωの演算方法は特に限定しないが、一例として、特許文献3のように、誘起電圧を利用して推定する構成について説明する。この推定方法では、誘起電圧がモータの回転速度すなわち回転角の微分に比例することを利用する。
vd*:d軸電圧指令
vq*:q軸電圧指令
id:d軸検出電流
iq:q軸検出電流
を入力として、以下の式(1)から(5)のオブザーバを構成して推定速度ωを演算する。
Figure 2018211666
ここで、ωおよびωr0は推定速度、id0はd軸推定電流、iq0はq軸推定電流、pdr0は推定磁束、edはd軸偏差、eqはq軸偏差、Rはモータの抵抗値、Ldはモータのd軸インダクタンス、Lqはモータのq軸インダクタンスである。また、sはラプラス変換の微分演算子、kp、ki、g11、g12、g21、g22、g31、g32、g41、g42は、推定角θを演算するためのフィードバックゲイン、e01,e02,e03,e04は演算の中間変数である。この推定方法では、モータの抵抗値RやインダクタンスLd、Lqをパラメータとして設定するため、パラメータ誤差によって推定速度ωおよび推定角θに推定誤差Δω、Δθが生じる。
図3は、モータの推定角θを演算する推定速度補正部5および推定角演算部6の構成の一例を示す機能ブロック図である。推定速度補正部5では、推定速度演算部4で演算した推定速度ωを操舵トルクTrqに基づいて補正する。そして、推定角演算部6で、補正後の推定速度ωgを積分して推定角θを演算する。
推定速度補正部5は、操舵トルクTrqの微分値Tdから運転者の操舵の周波数成分を除去した値に基づく判定用信号Tdjと、操舵トルクTrqと、推定速度ωと、が同符号であることを判定する補正判定部51と、推定速度ωと補正判定部51の出力である補正フラグFcp、Fcmに基づいて、推定速度ωの補正を行う補正実行部52とを備える。
ここで、推定速度補正部5の詳細を説明する前に、この発明の課題である推定速度および推定角の誤差によるトルク変動について説明する。図4は、推定速度の誤差に起因したトルク変動が生じた場合の各ファクタの変化の一例である。上段から、
(a)検出した操舵トルクTrq、
(b)操舵トルクの微分値Td、
(c)モータの回転速度ωe、
(d)モータの回転角θe、
(e)回転角の推定誤差Δθ、
(f)モータのトルクTm
を示している。
また、(c)(d)においてモータの回転速度ωeおよびモータの回転角θeは実線で実際の値、破線で推定速度ω、推定角θの値をプロットしており、(e)において推定誤差Δθは、実際の回転角θeと推定角θとの差分Δθ=θe−θをプロットしている。ここでは、時刻t1の時点で推定速度ωを一定値に固定し、推定速度ωが実際の回転速度ωeよりも大きくなるような誤差をわかりやすく再現している。例えば、推定速度ωの演算異常が発生すると、このように推定速度ωが一定値に固定することがある。
時刻t1で推定速度ωが回転速度ωeよりも大きくなっている。これにともない、推定角θは、実際の回転角θeから次第に離れていくため、推定誤差Δθの大きさが増大する。推定誤差Δθの大きさが増大するとモータトルクTmは減少していき、推定誤差Δθの大きさが90degを超えるとモータトルクTmは所望のアシスト方向とは逆方向になる。モータトルクTmが減少することにともない、操舵トルクTrqは増大するため、操舵トルクTrqの微分値Tdが正方向に増大している。推定誤差Δθの値は、−180degから180degの範囲をとるので、負方向に増大して−180degを超えると180degに折り返し、次第に推定誤差Δθが減少する方向になる。推定誤差Δθが減少すると、モータトルクTmの方向が所望のアシスト方向になってアシスト量が増大していく。アシスト量の増大にともない、操舵トルクTrqも減少する。このようにモータトルクTmがトルクの変動を繰り返すことで振動が発生するため、運転者が運転し辛くなる。なお、ここでは推定速度ωが一定値に固定する場合を示したが、一定値に固定するような推定速度ωの誤差に限らず、例えば、演算に用いるパラメータの誤差などで推定速度ωに誤差が生じた場合でも、モータトルクTmに同様のトルク変動が発生する。
推定速度補正部5内の補正判定部51の入力信号について説明する。補正判定部51では、まず、判定に用いる操舵トルクTjと操舵トルクの微分値から演算した判定用信号Tdjが同符号であることを判定することで、操舵トルクが増大していることを判定する。
単に操舵トルクTrqの増加を判定するだけならば、検出した操舵トルクTrqと操舵トルクの微分値Tdをそのまま使って、符号の判定をしてもよい。本実施の形態1では、より精度良く補正の必要性を判定するため、操舵トルクTrqおよび操舵トルクの微分値Tdにそれぞれフィルタ処理を行う。特に、操舵トルクの微分値Tdをそのまま使うだけでは、操舵トルクTrqの増加が運転者の操舵によるものなのか、モータ1のトルクTmの減少によるものなのかを判定することができないという前述の課題が生じる。そのため、操舵トルクの微分値Tdに対するフィルタ処理によって運転者の操舵の周波数成分を除去することが、先行例にはない大きな意味を持つ。
判定に用いる操舵トルクである判定用操舵トルクTjは、検出した操舵トルクTrqをそのまま使ってもよいが、ここでは検出した操舵トルクTrqに第1のフィルタ(Lj(s))502でローパスフィルタ処理を行い、下式(6)で算出した値を使う。ローパスフィルタ処理によって通常の運転者の操舵の周波数よりも高い周波数成分を除去することで、モータのトルクTmの変化によって操舵トルクTrqが振動的な応答になっても、平均的に正負どちらの方向であるかを判定することができるという追加の効果を得られる。なお、ローパスフィルタ処理でなくても、移動平均フィルタによる平均化処理でも同様の効果が得られるが、ローパスフィルタの方が着目したい周波数成分に対するフィルタ設計が容易であるという利点がある。
Figure 2018211666
ローパスフィルタLj(s)は、下式(7)の一次ローパスフィルタとする。一般に、運転者が操舵可能な周波数は3Hz程度以下である。また、例えばレーンチェンジ時の操舵周波数は、0.2Hz付近であり、通常はこのような低周波の操舵を行うケースが多い。そこで、ローパスフィルタLj(s)のカットオフ周波数ωljは、通常の運転者の操舵の周波数よりも高い周波数成分を除去するため、3Hzで設定する。
Figure 2018211666
但し
s:ラプラス変換の微分演算子
である。
判定用信号Tdjは、操舵トルクTrqとモータの回転角θeとの関係性を利用して設定する。トルクセンサ102は、トーションバーの上側であるステアリングホイール側の角度とトーションバーの下側であるモータ側の角度とのねじれ量から操舵トルクTrqを検出する。
トーションバーの剛性をKsとすると、操舵トルクTrqとモータの回転角θeの関係は、
θh:操舵角
Pm:モータ1の極対数
Gn:モータ1とステアリングシャフト103の間のギア比
を用いて、下式(8)で表せる。
Figure 2018211666
ここで、操舵角θhは、運転者の操舵の周波数に依存する。そのため、電動パワーステアリング装置の主共振周波数よりも高い周波数帯域に着目すると、下式(9)のように近似できる。操舵トルクTrqとモータの回転角θeの比を表す換算ゲインkは、下式(10)となる。通常、振動は、共振周波数以上で生じるのでこの換算ゲインに依って、精度よく振動成分を抽出できる。なお、操舵周波数と共振周波数の間では、誤差が生じるが、通常振動は生じないので問題ない。必要であれば、角度からトルクの逆モデルを用いることでさらに高精度な関係性が得られる。
Figure 2018211666
さらに、上式(9)を微分すると、下式(11)となる。
Figure 2018211666
上式(11)より、操舵トルクの微分値Tdとモータ1の回転速度ωeとの間には相関があり、操舵トルクの微分値Tdの符号とモータの回転速度ωeの符号は逆になることが分かる。判定用信号Tdjは、この関係を利用して設定する。
前述のように、上式(11)の近似式は、運転者の操舵の周波数よりも高い周波数に着目したものである。そのため、判定用信号Tdjは次の式(12)のように、検出した操舵トルクTrqを微分演算部(s)501で微分し、第2のフィルタHj(s)503により運転者の操舵の周波数よりも高い周波数成分を抽出して算出する。
Figure 2018211666
但し
s:ラプラス変換の微分演算子
である。
ここでは、フィルタHj(s)を、下式(13)の1次ハイパスフィルタとする。ハイパスフィルタHj(s)のカットオフ周波数ωhjは、通常の運転者の操舵の周波数よりも高い周波数成分を抽出するため、3Hzで設定する。図5の(a)はフィルタHj(s)のゲイン特性の一例、(b)はフィルタLj(s)のゲイン特性の一例を示すボード線図である。
Figure 2018211666
上記の構成により、操舵トルクと操舵トルクの微分値が同符号なら、すなわち、判定用操舵トルクTjと判定用信号Tdjが同符号なら、操舵トルクの大きさが増加していることを判定できる。さらに、上式(11)の関係性より、通常、操舵トルクの微分値Tdとモータの回転速度ωeは逆符号になることを利用して、推定速度ωの補正の必要性を判定する。具体的には、操舵トルクの微分値Tdに相当する判定用信号Tdjとモータの回転速度ωeに相当する推定速度ωが同符号なら、推定速度ωの誤差により推定角θの誤差Δθが増加することでモータのトルクTmが減少し、操舵トルクTrqの大きさが増加していると判定できる。判定用信号Tdjは、上式(11)の関係を利用し、実際の回転速度ωeに相当する値としているため、補正の必要性を精度よく判定できる。さらに、判定用信号Tdjは、操舵トルクの微分値Tdから運転者の操舵の周波数成分を除去した値とすることで、操舵トルクTrqの増加が運転者の力の増加によるものか、モータのトルクTmの減少によるものかを区別して判定できる。
次に、補正判定部51の処理について説明する。
図6は、補正判定部51の処理を示したフローチャートであり、推定速度ωと判定用の操舵トルクTjと判定用信号Tdjが同符号であることを判定する処理の一例を示したものである。推定速度ωが正の値のとき(すなわちステップS11pがYESのとき)、操舵トルクTjが正の値、かつ、判定用信号Tdjが正の値であれば、3つの信号が同符号であり、判定条件が成立する。ここで、判定用信号Tdjは正の値であることを判定できればよいが、本実施の形態1ではモータトルクTmの変化をより精度良く判定するため、正の閾値α1よりも大きいことを判定する。これにより、判定用信号Tdjが大きく変化した、すなわち、モータトルクTmが大きく変化したことが判定でき、補正の必要性があることがわかる。
操舵トルクTjが正の値、かつ、判定用信号Tdjが正の閾値α1よりも大きいとき(すなわちステップS12pがYESのとき)、第1正側フラグF1pをON(F1p=1)にし、第1負側フラグF1mはOFF(F1m=0)にする(ステップS13)。
一方、推定速度ωが負の値のとき(すなわちステップS11pがNOでステップS11mがYESのとき)、操舵トルクTjが負の値、かつ、判定用信号Tdjが負の値であることを判定する。このとき、判定用信号Tdjは、負の閾値−α1よりも小さいことを判定することで、モータトルクTmが大きく変化したことを判定する。操舵トルクTjが負の値、かつ、判定用信号Tdjが負の閾値−α1よりも小さいとき、第1負側フラグF1mをON(F1m=1)にし、第1正側フラグF1pはOFF(F1p=0)にする(ステップS15)。
上記以外のとき(すなわちステップS11m、S12p、S12mのいずれかがNOのとき)、第1フラグF1p、F1mはOFF(F1p=0、F1m=0)にする(ステップS14)。
図7は、補正判定部51の処理を示したフローチャートであり、補正解除条件による判定と時間経過による判定の処理の一例を示したものである。この処理では、図6の処理ステップS13またはS15で一度ONとなったフラグを保持する。
以下では、処理ステップS13で第1正側フラグF1pがONになったときの説明をする。
まず、第1正側フラグF1pがON(F1p=1)であることを判定する(ステップS19)。第1正側フラグF1pがONのとき(すなわちステップS19がYESのとき)、第2正側フラグF2pをON(F2p=1)にする(ステップS21)。一方、第1正側フラグF1pがOFFのとき(すなわちステップS19がNOのとき)には、第2正側フラグF2pは前回値を保持する(ステップS22)。なお、第2正側フラグF2pの初期状態はOFF(F2p=0)とする。
次に、第2正側フラグF2p(F2p=1)がONであることを判定する(ステップS23)。第2正側フラグF2pがONのとき(すなわちステップS23がYESのとき)、さらに保持判定用信号Tcが正の閾値α2よりも大きいことを判定する(ステップS24)。
ここで、保持判定用信号Tcについて説明する。操舵トルクTrqの微分値Tdが小さくなるということは、モータトルクTmの減少が解消されたことを示しており、すなわち、推定角θの推定誤差Δθが減少したことを示している。そのため、推定角θの推定誤差Δθが減少するまで補正を継続するためには、操舵トルク微分値Tdが小さくなることを判定すればよい。そこで、操舵トルク微分値Tdに基づく補正解除条件を設定し、補正解除条件を満たすまで補正を継続する。補正解除条件としては、保持判定用信号Tcが閾値α2よりも大きいことを設定する。すなわち、保持判定用信号Tcが閾値α2以下の間は補正を継続する。
保持判定用信号Tcは、操舵トルク微分値Tdに基づく値であればよい。ここでは、保持判定用信号Tcとして、操舵トルク微分値Tdから運転者の操舵の周波数成分を除去した判定用信号Tdjを使用することで、操舵トルク微分値Tdに含まれるモータトルクTmの変化の情報をさらに精度良く判定する。
閾値α2については、α2<α1として設定すれば、補正開始時よりも推定角θの誤差によるモータのトルクTmの減少を抑制できたことが判定できるので、補正の効果が現れるまで推定速度ωの補正を継続できる。また、α2=α1として設定した場合でも、この補正解除条件を満たすまで推定速度ωを継続することができるという効果が得られる。例えば、振動により一時的に判定用の操舵トルクTjが負になり、第1正側フラグF1pがOFFとなった場合でも、補正解除条件を満たすまでは第2正側フラグF2pが保持できるので推定速度ωの補正が継続できる。
保持判定用信号Tcが閾値α2よりも大きいとき(すなわちステップS24がYESのとき)、第3正側フラグをON(F3p=1)にし、カウンタcntpを0にリセットする(ステップS31)。その後、処理ステップS33に進む。保持判定用信号Tcが閾値α2以下のとき(すなわちステップS24がNOのとき)、第2正側フラグをOFF(F2p=0)にして(ステップS25)、第3正側フラグF3pは前回値を保持する(ステップS32)。その後、処理ステップS33に進む。
一方、第2正側フラグがOFF(F2p=0)のとき(すなわちステップS23がNOのとき)には、第3正側フラグF3pは前回値を保持する(ステップS32)。その後、処理ステップS33に進む。
なお、第3正側フラグF3pの初期状態はOFF(F3p=0)とし、カウンタcntpの初期値は0とする。
上記の通り、操舵トルクの微分値Tdに基づく保持判定用信号Tcを用いた補正解除条件を設定することにより、補正解除条件を満たすまで、すなわち、保持判定用信号Tcが閾値α2よりも大きい間、推定速度ωの補正を継続する。推定角θの誤差Δθの増減は操舵トルクTrqに現れるため、操舵トルクの微分値Tdから補正の効果が現れたかどうかを判断することができるので、補正の効果が現れるまで補正を継続することができる。
処理ステップS33では、第3正側フラグがONであることを判定する。第3正側フラグがONのとき(すなわちステップS33がYESのとき)、カウンタcntpをインクリメントし(ステップS34)、処理ステップS35に進む。一方、第3正側フラグがOFFのとき(すなわちステップS33がNOのとき)、正側補正フラグFcpはOFF(Fcp=0)とする(ステップS40)。
処理ステップS35では、カウンタcntpが閾値Cthよりも小さいことを判定する。カウンタcntpが閾値Cthよりも小さいとき(すなわちステップS35がYESのとき)、正側補正フラグFcpはON(Fcp=1)とする(ステップS41)。一方、カウンタcntpが閾値Cthに達したとき(すなわちステップS35がNOのとき)、第3正側フラグF3pをOFF(F3p=0)としてカウンタcntpを0にリセットする(ステップS36)。処理ステップS36の後、正側補正フラグFcpはOFF(Fcp=0)とする(ステップS40)。補正判定部51は、処理ステップS41、または処理ステップS40により決定した正側補正フラグFcpを出力する。
上記の通り、カウンタcntpが閾値Cthよりも小さい間、すなわち、閾値Cthで指定した予め定められた設定時間が経過するまで推定速度ωの補正を継続するよう構成したことで、瞬時的な補正ではなく、補正の効果が十分現れるまで補正を実施できる。
なお、補正判定部51について、第1負側フラグF1mがONになったときの処理は、主にステップS24の処理が異なる。ステップS24では、保持判定用信号Tcが負の閾値−α2よりも小さいことを判定する。それ以外の処理では、各変数の添え字をpからmに変えて同様の処理を行い、負側補正フラグFcmを出力する。
図8は、この発明の実施の形態1における各フラグの時間的変化の一例を示したタイムチャートである。上から保持判定用信号Tc、第1正側フラグF1p、第2正側フラグF2p、第3正側フラグF3p、カウンタcntp、正側補正フラグFcpを示す。
上述の図7を使って説明した処理にしたがって、保持判定用信号Tcおよび第1正側フラグF1pに基づいて正側補正フラグFcpを決定する。時刻t11で第1正側フラグF1pがONとなると、処理ステップS21によって第2正側フラグF2pがONとなる。第1正側フラグF1pがONであれば、言うまでもなく、保持判定用信号TcがTc>α2を満たすので、処理ステップS31によって第3正側フラグF3pがONとなる。さらに、第3正側フラグF3pがONなので、処理ステップS34によってカウンタcntpがインクリメントされてcntp=1となる。カウンタcntpがcntp<Cthなので、処理ステップS41によって正側補正フラグFcpがONとなる。
次に、時刻t12に第1正側フラグF1pがOFFとなった場合を考える。第1正側フラグF1pがOFFとなっても、処理ステップS22によって第2正側フラグF2pは前回値が保持されてONのままとなる。時刻t12では、保持判定用信号TcがTc>α2を満たすので、処理ステップS31によって、第3正側フラグF3pがONのままとなり、カウンタcntpはリセットされてcntp=0となる。第3正側フラグF3pがONなので、処理ステップS34によってカウンタcntpがインクリメントされてcntp=1となる。カウンタcntpがcntp<Cthを満たすので、処理ステップS41によって正側補正フラグFcpはONのままとなる。
時刻t13に保持判定用信号TcがTc≦α2となると、処理ステップS25によって第2正側フラグF2pはOFFとなる。また、処理ステップS32によって第3正側フラグF3pは前回値が保持されてONのままとなる。第3正側フラグF3pがONなので、処理ステップS34によってカウンタcntpがインクリメントされる。このとき、
処理ステップS31によるカウンタcntpのリセットが行われていないので、カウンタcntpが徐徐に増加していく。カウンタcntpがcntp<Cthを満たすので、処理ステップS41によって正側補正フラグFcpがONのままとなる。
時刻t14にカウンタcntpが閾値Cthに達すると、処理ステップS36によって第3正側フラグフラグF3pはOFFとなり、カウンタcntpはリセットされる。さらに、処理ステップS40によって正側補正フラグFcpがOFFとなる。
図9は、補正実行部52の処理の一例を示したフローチャートである。補正実行部52は、補正判定部51の出力である正側補正フラグFcpまたは負側補正フラグFcmがON(Fcp=1またはFcm=1)のとき(すなわちステップS51がYESのとき)、推定速度ωを0に補正して補正後の推定速度ωg=0とする(ステップS52)。それ以外のとき(すなわちステップS51がNOのとき)、推定速度ωを使用し、補正後の推定速度ωg=ωを出力する(ステップS53)。推定角演算部6では、補正後の推定速度ωgを積分して、推定角θを演算する。
以上、この発明の実施の形態1によれば、運転者の操舵トルクを検出する操舵トルク検出部と、運転者の操舵力をアシストするモータと、前記モータの回転速度の推定値である推定速度を算出する推定速度演算部と、前記操舵トルクに基づいて前記推定速度を補正する推定速度補正部と、補正後の推定速度を積分して前記モータの推定角を算出する推定角演算部と、前記推定角に基づいて前記モータに電力を供給する電力供給部と、を備え、前記推定速度補正部は、前記操舵トルクの微分値から運転者の操舵の周波数成分を除去した値に基づく判定用信号と前記操舵トルクと前記推定速度とが同符号のとき、前記推定速度を補正する、電動パワーステアリング装置が構成できる。
この構成では、操舵トルクの微分値Tdから運転者の操舵の周波数成分を除去した値に基づく判定用信号Tdjと操舵トルクTrqと推定速度ωとが同符号のとき、推定速度ωおよび推定角θに推定誤差Δω、Δθが生じていることが判定できる。
まず、操舵トルクTrqの符号と操舵トルクの微分値Tdの符号から運転者の操舵の方向と操舵トルクの増減がわかるので、操舵トルクTrqの符号と操舵トルクの微分値Tdの符号とが同符号であれば、操舵トルクTrqの大きさが増加していることを判定することができる。例えば、操舵トルクTrqの符号と操舵トルクの微分値Tdの符号がともに正なら、右操舵中に操舵トルクTrqの大きさが増加していることを判定できる。
さらに、操舵トルクの微分値Tdから運転者の操舵の周波数成分を除去した判定用信号Tdjの符号と推定速度ωの符号が同符号なら、推定速度ωの誤差により推定角θの誤差Δθが増加することでモータトルクTmが減少し、操舵トルクTrqが増加していると判定できる。これは、操舵トルクの微分値Tdとモータの回転速度ωeとの間に相関があり、運転者の操舵の周波数よりも高い周波数帯域においては正負の符号が逆になることを利用している。すなわち、同符号であれば、推定速度ωに誤差があることが判定できる。加えて、操舵トルクの微分値Tdから運転者の操舵の周波数成分を除去した値を判定用信号Tdjとすることで、検出した操舵トルクTrqに含まれるモータトルクTmの変化を抽出することができるので、検出した操舵トルクTrqの増加が運転者の力の増加によるものか、モータトルクTmの減少によるものかを区別して判定できる。
上記判定によって推定角θの誤差Δθが増加していることが判定できるので、推定速度ωを補正することで推定角θの誤差Δθを小さくすることができる。推定角の誤差Δθを小さくできるので、推定角の誤差Δθによって生じるトルク変動を抑制することができ、振動の小さい安定的なセンサレス制御を行える電動パワーステアリング装置を提供できる。
さらに、推定速度補正部5は、判定用信号Tdjの大きさすなわち絶対値が閾値以上のとき、推定速度ωを補正するよう構成した。判定用信号Tdjの大きさすなわち絶対値が閾値以上であることを判定することで、推定誤差Δθによって操舵トルクTrqが大きく変化したことを判定することができるので、判定の精度が向上する。
推定速度補正部5は、正側補正フラグFcpまたは負側補正フラグFcmがONとなったとき、推定速度ωを0に補正するよう構成した。補正フラグFcp、FcmがONとなったとき、推定速度ωは実際の回転速度ωeと逆方向になっているので、推定速度ωを零とすることで、誤った推定速度ωを積分して推定角θの誤差Δθが拡大することを防止できる。
さらに、設定時間が経過するまで補正を継続することで、瞬時的な補正ではなく、補正の効果が十分現れるまで補正できる。
さらに、推定角θに含まれる推定誤差Δθの増減は、モータトルクTmが変動することで操舵トルクTrqに現れるため、操舵トルクの微分値Tdに基づく補正解除条件を満たすまで推定速度ωの補正を継続するよう構成したことで、操舵トルクの微分値Tdから補正の効果が現れたかどうかを判断することができる。よって、補正の効果が現れるまで補正を継続することができる。
なお、補正判定部51でのフラグ保持の処理は、例えば、以下のように組み替えてもよい。図10は、補正解除条件による判定と時間経過による判定の変形例を示したフローチャートである。その場合、補正解除条件による判定と時間経過による判定が下記のように処理が変わる。
まず、第1正側フラグF1pがON(F1p=1)であることを判定する(ステップS19)。第1正側フラグF1pがON(F1p=1)のとき(すなわちステップS19がYESのとき)、第3正側フラグをON(F3p=1)にし、カウンタcntpを0にリセットする(ステップS31)。その後、処理ステップS33に進む。一方、第1正側フラグF1pがOFF(F1p=0)のとき(すなわちステップS19がNOのとき)、第3正側フラグF3pは前回値を保持する(ステップS32)。その後、処理ステップS33に進む。
処理ステップS33では、第3正側フラグがON(F3p=1)であることを判定する。第3正側フラグがON(F3p=1)のとき(すなわちステップS33がYESのとき)、カウンタcntpをインクリメントし(ステップS34)、処理ステップS35に進む。一方、第3正側フラグがOFF(F1p=0)のとき(すなわちステップS33がNOのとき)、正側補正フラグFcpはOFF(Fcp=0)とする(ステップS40)。
処理ステップS35では、カウンタcntpが閾値Cthよりも小さいことを判定する。カウンタcntpが閾値Cthよりも小さいとき(すなわちステップS35がYESのとき)、処理ステップS24の判定に進む。一方、カウンタcntpが閾値Cthに達したとき(すなわちステップS35がNOのとき)、第3正側フラグF3pをOFF(F3p=0)にしてカウンタcntpを0にリセット(ステップS36)した後、正側補正フラグFcpはOFF(Fcp=0)とする(ステップS40)。
処理ステップS24では、保持判定用信号Tcが閾値α2よりも大きいことを判定する。保持判定用信号Tcが閾値α2よりも大きいとき(すなわちステップS24がYESのとき)、正側補正フラグFcpをON(F3p=1)にする(ステップS41)。
一方、保持判定用信号Tcが閾値α2以下のとき(すなわちステップS24がNOのとき)、第3正側フラグF3pをOFF(F3p=0)にしてカウンタcntpを0にリセット(ステップS36)した後、正側補正フラグFcpはOFF(Fcp=0)とする(ステップS40)。
上記のように構成した場合にも、次の効果が得られる。
・操舵トルクの微分値Tdに基づく保持判定用信号Tcを用いた補正解除条件を設定することにより、補正解除条件を満たすまで、すなわち、保持判定用信号Tcが閾値α2よりも大きい間、推定速度ωの補正を継続する。推定角の誤差Δθの増減は操舵トルクTrqに現れるため、操舵トルクの微分値Tdから補正の効果が現れたかどうかを判断することができるので、補正の効果が現れるまで補正を継続することができる。
・カウンタcntpが閾値Cthよりも小さい間、すなわち、閾値Cthで指定した設定時間が経過するまで推定速度ωの補正を継続するよう構成したことで、瞬時的な補正ではなく、補正の効果が十分現れるまで補正を実施できる。
さらに、処理ステップS24の保持判定用信号Tcに基づいて補正を継続するか否かを判定する処理を後に実行することで、補正を継続中、すなわち、第3正側フラグF3pをONに保持している間でも、保持判定用信号Tcによる補正解除条件を満たせば、速やかにフラグをOFFとして補正を停止できる。そのため、たとえ閾値Cthで指定した設定時間を必要以上に長く設定したとしても、補正を継続したことで不必要な補正が生じて悪影響を与える可能性が低減できるという追加の効果も得られる。
図11は、この発明の実施の形態1の変形例における各フラグの時間的変化の一例を示したタイムチャートである。上から保持判定用信号Tc、第1正側フラグF1p、第2正側フラグF2p、第3正側フラグF3p、カウンタcntp、正側補正フラグFcpを示す。上述の図10を使って説明した処理にしたがって、保持判定用信号Tcおよび第1正側フラグF1pに基づいて正側補正フラグFcpを決定する。時刻t21で第1正側フラグF1pがONとなると、処理ステップS31によって第3正側フラグF3pがONとなる。さらに、カウンタcntpがリセットされて一度cntp=0となった後、第3正側フラグF3pがONなので、処理ステップS34によってカウンタcntpがインクリメントされてcntp=1となる。カウンタcntpがcntp<Cthであり、かつ、保持判定用信号TcがTc>α2を満たすので、処理ステップS41によって正側補正フラグFcpがONとなる。第1正側フラグF1pがONであれば、言うまでもなく、保持判定用信号TcがTc>α2を満たす。
次に、時刻t22に第1正側フラグF1pがOFFとなった場合を考える。第1正側フラグF1pがOFFとなっても、処理ステップS32によって第3正側フラグF3pは前回値が保持されてONのままとなる。ただし、カウンタcntpはリセットされない。第3正側フラグF3pがONなので、処理ステップS34によってカウンタcntpがインクリメントされる。このとき、カウンタcntpはリセットされていないので、徐徐に増加していく。カウンタcntpがcntp<Cthであり、かつ、保持判定用信号TcがTc>α2の間は、正側補正フラグFcpがONのままとなる。
その後、時刻t23に保持判定用信号TcがTc≦α2となると、処理ステップS36によって第3正側フラグF3pはOFFとなり、カウンタcntpはリセットされる。さらに、処理ステップS40によって正側補正フラグFcpがOFFとなる。このとき、図10を使って説明した構成は、カウンタcntpが閾値Cthに達していなくても、保持判定用信号TcがTc≦α2となると正側補正フラグFcpがOFFとなる点が特徴であり、この点が図7を用いて説明した構成と異なっている。
なお、図7および図10は補正判定部51のそれぞれ一例であり、本実施の形態のように図6と分離したフローに限定するものでは無く、同様に正側補正フラグFcpおよび負側補正フラグFcmを決定するものであれば同様の効果を得られることはいうまでも無い。
実施の形態2.
本実施の形態2は、前述の実施の形態1と推定速度補正部5の構成が異なり、他は実施の形態1と同じである。具体的には、推定速度補正部5内の補正実行部52の処理と、補正用信号演算部53を備える点が実施の形態1と異なる。図12は、この発明の実施の形態2によるモータの制御角である推定角θを演算する、推定速度補正部5および推定角演算部6の構成の一例を示す機能ブロック図である。補正用信号演算部53は、操舵トルクの微分値(s・Trq=Td)に換算ゲインを乗算して求めた値を補正用信号ωcとして演算する。さらに、補正実行部52では、正側補正フラグFcpまたは負側補正フラグFcmがONのときに推定速度ωを補正する値が実施の形態1と異なり、補正用信号ωcによって推定速度ωを補正する。
前述の通り、上式(11)の近似式からわかるように、操舵トルクの微分値Tdとモータの回転速度ωeとの間には相関がある。そのため、この相関を利用して推定速度ωを補正する。すなわち、操舵トルクの微分値(s・Trq=Td)に換算ゲインkを乗算して求めた補正用信号ωcによって推定速度ωを補正する。
補正用信号ωcは、下式(14)のように、操舵トルクの微分値(s・Trq)に上式(10)の換算ゲインkを乗算することで算出する。さらに、下式(14)では、運転者の操舵の周波数成分を除去するフィルタHc(s)を付与することで、より精度良くモータの回転速度ωeに相当する信号を得ることができる。ここでは、フィルタHc(s)を下式(15)の一次ハイパスフィルタで設定する。カットオフ周波数ωhcは、運転者の操舵の周波数成分を除去するよう設定すればよい。例えば3Hzで設定すると、図5の(a)に示したフィルタHj(s)と同じ特性になり、運転者の操舵の周波数成分を除去できる。
Figure 2018211666
実施の形態2では、正側補正フラグFcpがONのとき、推定速度ωが実際の回転速度ωeよりも大きくなっていると判定し、推定速度ωを小さく補正する。例えば、補正用信号ωcによって上限値を制限することで、推定速度ωを小さく補正することができる。
図13は、実施の形態2による補正実行部52の処理の一例を示したフローチャートである。補正実行部52は、補正判定部51の出力である正側補正フラグFcpがON(Fcp=1)のとき(すなわちステップS61がYESのとき)には処理ステップS63に進み、正側補正フラグFcpがOFF(Fcp=0)のとき(すなわちステップS61がNOのとき)には処理ステップS62に進む。
処理ステップS63では、推定速度ωが後述の補正用信号ωcよりも大きいことを判定し、推定速度ωgの上限値を制限する。ω>ωcのとき(すなわち処理ステップS63がYESのとき)、推定速度ωの上限値が制限され、補正後の推定速度ωg=ωcを出力する(ステップS65)。これにより、補正後の推定速度ωgを小さく補正できる。一方、ω≦ωcのとき(すなわち処理ステップS63がNOのとき)、推定速度ωをそのまま用いて補正後の推定速度ωg=ωを出力する(ステップS66)。
処理ステップS62では、負側補正フラグFcmがON(Fcm=1)のとき(すなわちステップS62がYESのとき)には処理ステップS64に進み、負側補正フラグFcmがOFF(Fcm=0)のとき(すなわちステップS62がNOのとき)には、正側補正フラグFcpおよび負側補正フラグFcmがOFFなので、前述の処理ステップS66で補正後の推定速度ωg=ωを出力する。
処理ステップS64では、推定速度ωが後述の補正用信号ωcよりも小さいことを判定し、推定速度ωの下限値を制限する。ω<ωcのとき(すなわち処理ステップS64がYESのとき)、推定速度ωの下限値が制限され、補正後の推定速度ωg=ωcを出力する(ステップS67)。これにより、補正後の推定速度ωgを大きく補正できる。一方、ω≧ωcのとき(すなわち処理ステップS64がNOのとき)、推定速度ωをそのまま用いて補正後の推定速度ωg=ωを出力する(ステップS66)。
上記の通り、推定速度補正部5は、操舵トルクの微分値Tdに換算ゲインkを乗算した補正用信号ωcによって推定速度ωを補正するよう構成した。これにより、モータの回転速度ωeと操舵トルクの微分値Tdとの相関を利用して、より精度の良い補正が実施できる。その他、実施の形態1と同じ構成の部分は、実施の形態1と同様の効果を得られる。
実施の形態3.
本実施の形態3は、前述の実施の形態1、2と推定速度補正部5の構成が異なり、他は実施の形態1、2と同じである。具体的には、推定速度補正部5内の補正実行部52の処理と、補正用信号演算部53の出力である補正用信号ωcの演算方法が異なる。図14は、この発明の実施の形態3によるモータの制御角である推定角θを演算する、推定速度補正部5および推定角演算部6の構成の一例を示す機能ブロック図である。
補正用信号ωcは、下式(16)のように、第1補正用信号ω1と第2補正用信号ω2との和によって算出する。第1補正用信号ω1は、実施の形態2で示した上式(14)と同様に、操舵トルクの微分値(s・Trq=Td)からフィルタHc(s)により運転者の操舵の周波数成分を除去した値に換算ゲインkを乗算し、下式(17)で算出する。また、第2補正用信号ω2は、下式(18)で推定速度ωからフィルタLc(s)により運転者の操舵の周波数成分を抽出して算出する。フィルタLc(s)は、フィルタHc(s)に基づいて下式(19)で設定する。これにより、元の信号から運転者の操舵の周波数成分よりも高い周波数の成分を除き、運転者の操舵の周波数成分を抽出することができる。
Figure 2018211666
さらに、上式(19)でフィルタLc(s)を設定すると、フィルタHc(s)とフィルタLc(s)を足すと1になることから、元の入力信号が復元できる。すなわち、推定速度ωに誤差がない場合には、第1補正用信号ω1と第2補正用信号ω2との和によって、元の推定速度が復元できるという追加の効果が得られる。
このように、モータの回転速度ωeの基本成分となる運転者の操舵の周波数成分は推定速度ωから算出し、運転者の操舵の周波数成分よりも高い周波数成分は操舵トルクの微分値Tdから算出するよう構成したことで、実際の回転速度ωeに相当する信号として補正用信号ωcを算出できる。なお、上式(18)では、第2補正用信号ωc2の演算には推定速度ωを用いたが、補正後の推定速度ωgを用いても同様の効果が得られる。
本実施の形態3の補正用信号演算部53では、推定速度ωと判定用の操舵トルクTjと判定用信号Tdjとが同符号であることを判定する前述の実施の形態1に示した構成に加え、推定速度ωの符号と判定用速度ωjの符号が逆符号であることも判定する。
ここでは、判定用信号である判定用速度ωjとして用いる信号は、演算簡易化のため、操舵トルクの微分値から演算した上式(16)の補正用信号ωcを用いる。すなわち判定用速度ωj=補正用信号ωcとする。判定用速度ωjは、実際の回転速度に相当する信号として算出した値で、推定速度ωの演算方法と異なる方法で演算した値ならばよく、補正用信号ωcとは別の方法で演算してもよい。
図15は、実施の形態3の補正判定部51における推定速度ωと判定用操舵トルクTjと判定用信号Tdjとが同符号であることを判定するフローチャートである。処理ステップS71p、S71mでは、推定速度ωの符号と判定用速度ωjの符号が逆符号であることを判定する。推定速度ωの符号と実際の回転速度ωeに相当する信号として算出した判定用信号ωcの符号が逆符号であるということは、推定速度ωの誤差が大きいことを示しており、補正の必要があることを示している。
処理ステップS71pでは、推定速度ωが正の値かつ判定用速度ωjが負の値のとき(すなわちステップS71pがYESのとき)処理ステップS12pに進み、それ以外のとき(すなわちステップS71pがNOのとき)処理ステップS71mに進む。
処理ステップS71mでは、推定速度ωが負の値かつ判定用速度ωjが正の値のとき(すなわちステップS71mがYESのとき)処理ステップS12mに進み、それ以外のとき(すなわちステップS71mがNOのとき)処理ステップS14に進む。
処理ステップS12pでは、判定用の操舵トルクTjが正の値、かつ、判定用信号Tdjが正の値であることを判定する。ここで、判定用信号Tdjは正の値であることを判定できればよいが、本実施の形態3ではモータのトルクTmの変化をより精度良く判定するため、正の閾値α1よりも大きいことを判定する。これにより、判定用信号Tdjが大きく変化した、すなわち、モータのトルクTmが大きく変化したことが判定でき、補正の必要があることがわかる。判定用の操舵トルクTjが正の値、かつ、判定用信号Tdjが正の閾値α1よりも大きいとき(すなわちステップS12pがYESのとき)、第1正側フラグF1pをON(F1p=1)にし、第1負側フラグF1mはOFF(F1m=0)にする(ステップS13)。このとき、推定速度ωと判定用の操舵トルクTjと判定用信号Tdjとが正の値で同符号であり、加えて、推定速度ωの符号と判定用速度ωjの符号とが逆符号であるので、補正の必要があると判定できる。一方、判定用の操舵トルクTjが正の値、かつ、判定用信号Tdjが正の閾値α1よりも大きいという条件を満たさないとき(すなわちステップS12pがNOのとき)、処理ステップS14に進む。
処理ステップS12mでは、判定用の操舵トルクTjが負の値、かつ、判定用信号Tdjが負の値であることを判定する。このとき、判定用信号Tdjは、負の閾値−α1よりも小さいことを判定することで、モータのトルクTmが大きく変化したことを判定する。判定用の操舵トルクTjが負の値、かつ、判定用信号Tdjが負の閾値−α1よりも小さいとき(すなわちステップS12mがYESのとき)、第1負側フラグF1mをON(F1m=1)にし、第1正側フラグF1pはOFF(F1p=0)にする(ステップS15)。このとき、推定速度ωと判定用の操舵トルクTjと判定用信号Tdjとが負の値で同符号であり、加えて、推定速度ωの符号と判定用速度ωjの符号とが逆符号であるので、補正の必要があると判定できる。一方、判定用の操舵トルクTjが負の値、かつ、判定用信号Tdjが負の閾値−α1よりも小さいという条件を満たさないとき(すなわちステップS12mがNOのとき)、処理ステップS14に進む。
処理ステップS14では、第1正側フラグF1p、第1負側F1mはOFF(F1p=0、F1m=0)とする(ステップS14)。
この後の処理については、上記の第1正側フラグF1p、第1負側F1mに基づいて、実施の形態2と同様に推定速度ωの補正を行い、補正後の推定速度ωgを算出する。
上記構成により、推定速度補正部5は、操舵トルクの微分値s・Trqから演算した第1補正用信号ωc1と、推定速度ωから演算した第2補正用信号ωc2との和ωc1+ωc2=ωcによって推定速度ωを補正するよう構成した。さらに、第1補正用信号ωc1は、操舵トルクの微分値s・TrqからフィルタHc(s)により運転者の操舵の周波数成分を除去した値に換算ゲインkを乗算して算出し、第2補正用信号は、推定速度ωからフィルタLc(s)により運転者の操舵の周波数成分を抽出して算出するよう構成した。この構成では、モータの回転速度ωeは操舵トルクの微分値s・Trqと相関があることを利用しているため、実際の回転速度ωeに相当する値を得ることができる。さらに、この第1補正用信号ωc1と第2補正用信号ωc2との和で算出した補正用信号ωcにより、推定速度ωを補正することで、精度の良い補正が実施できる。
なお、本実施の形態3では、推定速度ωの符号と補正用信号ωcの符号とが逆符号のときに推定速度ωの補正が必要であると判定したが、この条件を他の条件としてもよい。例えば、推定速度ωと補正用信号ωcの差が予め定めた設定値α3よりも大きいとき、すなわち、|ω−ωc|>α3のときに補正の必要があると判定してもよい。この場合にも、推定速度ωには誤差があることがわかり、補正の必要があると言える。
その他、下記のように実施の形態1から3を変更してもよい。
上記の実施の形態1から3では、推定速度ωの演算は、特許文献3のように誘起電圧を利用して推定する方法としたが、特に推定方法を限定するものではない。推定速度ωの演算方法と判定用信号Tdjの演算方法が異なっていれば、誘起電圧を利用して推定する方法に限らず、他の方法で推定速度ωを演算しても、所望の補正が実現できる。例えば、特許文献2のように、トルクセンサにより検出した操舵トルクに基づく推定方法でもよい。特許文献2の推定方法では、モータ1に高周波トルクTmhfを発生させ、トルクセンサ102で検出する操舵トルクTrqに現れる応答に基づいて角度相当信号θtを演算する。推定速度ωは、角度相当信号θtを一度微分して求める。図18は、操舵トルクに基づく推定方法で推定速度ωを演算する場合の推定速度補正部5および推定角演算部6の構成の一例を示す機能ブロック図である。角度相当信号演算部41で操舵トルクTrqに基づいて角度相当信号θtを演算し、微分演算部42で角度相当信号θtを一度微分して推定速度ωを求める。その後に推定速度ωに対して推定速度補正部5の処理を実施し、補正後の推定速度ωgを積分して推定角θを演算すればよい。
高周波トルクTmhfは、下式(20)のd軸電流指令id*およびq軸電流指令iq*を与えることで発生させる。d軸電流指令id*は、d軸基本電流指令id0*にd軸高周波電流指令Aidを加算して得られる。また、q軸電流指令iq*は、q軸基本電流指令iq0*にq軸高周波電流指令Aiqを加算して得られる。d軸基本電流指令id0*は、例えば、モータの回転速度ωeに応じて決定する。また、q軸基本電流指令iq0*は、例えば、操舵トルクTrqに応じて決定する。d軸高周波電流指令Aidおよびq軸高周波電流指令Aiqは、振幅A、周波数wwの余弦波および正弦波で与える。余弦波および正弦波は、時間tの関数とする。
Figure 2018211666
以下では、簡単に説明するために、d軸基本電流指令id0*、q軸基本電流指令iq0*を0とする。モータの出力トルクTmは、q軸電流指令iq*におよそ比例して得られる。そのため、上式(20)に基づいてモータ1に電力を供給することで、推定誤差Δθがない場合には、下式(21)のように、q軸高周波電流指令Aiqに比例した高周波トルクTmhfが発生する。ここで、Ktはモータの出力トルクの比例定数である。
Figure 2018211666
一方、推定誤差Δθがある場合には、下式(22)のように、q軸高周波電流Aiqと高周波トルクTmhfには位相差Δθqが生じる。よって、q軸高周波電流Aiqと高周波トルクTmhfとの位相差Δθqは、推定誤差Δθの情報を有する信号である。
Figure 2018211666
角度相当信号θtは、位相差Δθqが推定誤差Δθの情報を有することを利用して演算できる。高周波トルクTmhfはトルクセンサ102で検出する操舵トルクTrqに反映されるので、位相差Δθqは操舵トルクTrqに基づいて算出できる。角度相当信号θtの演算は、操舵トルクTrqに基づいて算出した位相差Δθqが小さくなるように、下式(23)(24)で示すフィードバック制御によって行う。
Figure 2018211666
ここで、kpp、kiiは角度相当信号θtを演算するためのフィードバックゲインである。
この推定方法の場合、例えば、推定遅れが推定誤差Δθの要因となる。この推定方法では、操舵トルクTrqに基づいて演算した角度相当信号θtを微分して推定速度ωを算出しているが、判定用信号Tdjの演算とは異なる方法である。したがって、この推定方法であっても、判定用信号Tdjに基づいて補正を行うか否かの判定をすることで、推定誤差Δθを低減することができ、推定誤差Δθによって生じるトルク変動を抑制できる。
ただし、実施の形態2または3の場合、補正用信号ωcについても、推定速度ωとは異なる演算方法で算出することが補正の効果を得る条件である。
上記の実施の形態2または3では、正側補正フラグFcpがONのとき、推定速度ωの上限値を制限する構成としたが、推定速度ωの値によらず、補正後の推定速度ωgをωg=ωcとしてもよい。この構成でも、補正用信号ωcは実際の回転速度ωeに相当する値となっているため、推定誤差Δθを低減できる。
上記の実施の形態2または3では、上式(14)で算出する補正用信号ωc、または、上式(16)から(18)で算出する補正用信号ωcについて、換算ゲインkを上式(10)よりも大きく設定してもよい。これにより、補正後の推定速度ωgの大きさを大きくすることで、推定角θを実際の回転角に速く近付けることができ、推定角θの誤差を低減できる。
さらに、換算ゲインkを最初は大きめに設定し、時間とともに漸減してもよい。これにより、最初は補正後の推定速度ωgの大きさを大きくすることで推定角θを実際の回転角θeに近付け、時間とともに漸減することで実際の回転速度ωeと同等の値で推定速度ωを補正することができる。
本実施の形態1から3におけるフィルタHj(s)、Hc(s)、Lj(s)、Lc(s)は、下記のように変更してもよい。
(1)フィルタのカットオフ周波数の変更例
上記実施の形態のフィルタHj(s)、Hc(s)では、運転者の操舵の周波数よりも高い周波数として、カットオフ周波数ωhj、ωhcを3Hzで設定したが、振動成分を抽出することができれば良く、カットオフ周波数ωhj、ωhcは3Hzに限らない。例えば、30Hzの振動が生じるのであれば、30Hzの振動を抽出できるよう、カットオフ周波数ωhjとωhcを10Hzで設定してもよい。また、カットオフ周波数ωhj、ωhcは必ずしも同一である必要はなく、例えば、ωhjを3Hz、ωhcを5Hzで設定してもよい。この場合でも、3Hzと5Hzは近傍の周波数であるため、同様の周波数成分が抽出できる。
(2)フィルタの構成の変更例1
前述のフィルタHj(s)とHc(s)は同一のフィルタで設定したが、運転者の操舵の周波数成分を除去できれば良く、必ずしも同一である必要はない。例えば、カットオフ周波数ωhj,ωhcは同じで、フィルタHj(s)は1次のハイパスフィルタとし、フィルタHc(s)は2次のハイパスフィルタとしてもよい。また、フィルタHj(s)は1次ハイパスフィルタとし、フィルタHc(s)は1次ハイパスフィルタにセンサノイズ除去のための1次ローパスフィルタを追加したもので設定してもよい。これらの場合にも、フィルタHj(s)、Hc(s)により抽出できる主な周波数成分は、同様の周波数成分となる。
同様に、フィルタLj(s)とLc(s)についても、運転者の操舵の周波数成分を抽出できれば良く、必ずしも同一である必要はない。
(3)フィルタの構成の変更例2
フィルタHc(s)とLc(s)は、ハイパスフィルタとローパスフィルタの組合せに限らず、例えば、次式(25)のようなバンドパスフィルタとバンドエリミネーションフィルタの組合せとして設定してもよい。
Figure 2018211666
ここで、
s:ラプラス変換の微分演算子、
kb:比例ゲイン、
ωb:フィルタ角周波数、
ζ:フィルタ減衰係数
である。
一般的に、電動パワーステアリング装置では、モータ1の出力トルクからトルクセンサ102で検出する操舵トルクTrqまでの伝達特性において、数10Hz程度以上の高い周波数帯域でのゲインは小さくなる。そのため、数10Hz程度以上の高い周波数成分の推定誤差Δθによって生じる振動は小さいので、操舵への影響は小さく無視してもよい。
そこで、バンドパスフィルタとして設定するフィルタHc(s)は、例えば、振動が大きい50Hz以下の周波数帯域を通過帯域とする。さらに、フィルタHc(s)は、通常の運転者の操舵の周波数よりも高い周波数成分として、3Hz以上の周波数帯域を通過帯域とする。図16は、実施の形態3の変形例によるフィルタHc(s)とフィルタLc(s)のゲイン特性の一例を示したボード線図である。フィルタHc(s)の通過帯域を運転者の操舵の周波数より高い周波数で設定したため、上記式(25)のフィルタLc(s)により抽出する周波数成分は運転者の操舵の周波数成分を含む。
さらに、このようなバンドパスフィルタでフィルタHc(s)を設定した場合、前述の実施の形態3の効果に加えて、振動の大きな周波数に狙いを定めた的確な補正が実施できるという追加の効果も得られる。また、トルクセンサ102のセンサノイズや検出遅れがあるので、これらの影響をバンドパスフィルタにより除去できる。
なお、フィルタHj(s),Lj(s)についても運転者の操舵の周波数成分を含むか否かについて同様のことが言えるため、同じようにバンドパスフィルタとバンドエリミネーションフィルタの組合せとして設定してもよい。
また、図2のECU2の、電力供給部3の座標変換部32、電圧指令演算部33、電流指令演算部35、および推定速度演算部4、推定速度補正部5、推定角演算部6、からなる制御部分は、別々の制御回路で構成してもよく、また1つの制御回路でまとめて構成してもよい。
この点に関し、これらの機能を実現する処理回路は、専用のハードウェアであっても、メモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSPともいう)であっても構成可能である。
図17の(a)はこれらの機能をハードウェアで構成した場合、(b)はソフトウェアで構成した場合の、ハードウェア構成を概略的に示す。
上記各部の機能を図17の(a)に示すハードウェアで構成した場合、処理回路1000は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらを組み合わせたものが該当する。上記各部の機能それぞれを処理回路で実現してもよいし、各部の機能をまとめて処理回路で実現してもよい。
上記各部の機能を図17の(b)に示すCPUで構成した場合、上記各部の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアやファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ2100に格納される。処理回路であるプロセッサ2000は、メモリ2100に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。これらのプログラムは、上記各部の手順や方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。ここで、メモリ2100とは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EPROM、EEPROM等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリや、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等が該当する。
なお、上記各部の機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
また処理に必要な各種情報は、ハードウェア構成の場合は回路に予め設定され、またソフトウェア構成の場合にはメモリに予め記憶させておく。
なおこの発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、これらの可能な組み合わせを全て含む。
以上のようにこの発明では、運転者の操舵トルク(Trq)を検出する操舵トルク検出部(102)と、運転者の操舵力をアシストするモータ(1)と、前記モータの回転速度の推定値である推定速度(ω)を算出する推定速度演算部(4)と、前記操舵トルク(Trq)に基づいて前記推定速度(ω)を補正する推定速度補正部(5)と、補正後の推定速度(ωg)を積分して前記モータの推定角(θ)を算出する推定角演算部(6)と、前記推定角(θ)に基づいて前記モータに電力を供給する電力供給部(3)と、を備え、前記推定速度補正部(5)は、前記操舵トルクの微分値(Td、s・Trq)から運転者の操舵の周波数成分を除去(Hj(s))した値に基づく判定用信号(Tdj)と前記操舵トルク(Trq)と前記推定速度(ω)とが同符号のとき、前記推定速度(ω)を補正する、電動パワーステアリング装置とした。
また、運転者の操舵力をアシストするモータ(1)の回転速度の推定値である推定速度(ω)を算出することと、検出した運転者の操舵トルク(Trq)に基づいて前記推定速度(ω)を補正することと、補正後の推定速度(ωg)を積分して前記モータの推定角(θ)を算出することと、前記推定角(θ)に基づいて前記モータに電力を供給することと、を備え、前記操舵トルクの微分値(Td、s・Trq)から運転者の操舵の周波数成分を除去(Hj(s))した値に基づく判定用信号(Tdj)と前記操舵トルク(Trq)と前記推定速度(ω)とが同符号のとき、前記推定速度(ω)を補正する、電動パワーステアリング装置の制御方法とした。
これにより、操舵トルクの微分値から運転者の操舵の周波数成分を除去した値に基づく判定用信号と操舵トルクと推定速度とが同符号のとき、推定速度および推定角に推定誤差が生じていることが判定できる。
操舵トルクの符号と操舵トルクの微分値の符号から運転者の操舵の方向と操舵トルクの増減がわかるので、操舵トルクの符号と操舵トルクの微分値の符号とが同符号であれば、操舵トルクの大きさが増加していることを判定することができる。
さらに、操舵トルクの微分値から運転者の操舵の周波数成分を除去した判定用信号の符号と推定速度の符号が同符号なら、推定速度の誤差により推定角の誤差が増加することでモータのトルクが減少し、操舵トルクが増加していると判定できる。これは、操舵トルクの微分値とモータの回転速度との間に相関があり、運転者の操舵の周波数よりも高い周波数帯域においては正負の符号が逆になることを利用している。すなわち、同符号であれば、推定速度に誤差があることが判定できる。加えて、操舵トルクの微分値から運転者の操舵の周波数成分を除去した値を判定用信号とすることで、検出した操舵トルクに含まれるモータのトルクの変化を抽出することができるので、検出した操舵トルクの増加が運転者の力の増加によるものか、モータのトルクの減少によるものかを区別して判定できる。
上記判定によって推定角の誤差が増加していることが判定できるので、推定速度を補正することで推定角の誤差を小さくすることができる。推定角の誤差を小さくできるので、推定角の誤差によって生じるトルク変動を抑制することができ、振動の小さい安定的なセンサレス制御を行える電動パワーステアリング装置を提供できる。
また、前記推定速度補正部(5)は、前記操舵トルクの微分値(Td、s・Trq)から運転者の操舵の周波数成分を除去(Hj(s))した値に基づく前記判定用信号(Tdj)と前記操舵トルク(Trq)と前記推定速度(ω)とが同符号で、かつ、前記判定用信号(Tdj)の大きさが設定閾値より大きいとき、前記推定速度(ω)を補正する。
これにより、判定用信号の大きさが予め設定された閾値より大きいことを判定することで、推定誤差によって操舵トルクが大きく変化したことを判定することができるので、判定の精度が向上する。
また、前記推定速度補正部(5)は、前記推定速度(ω)を零に補正する。
これにより、補正条件を満たすとき、推定速度には誤差があり、推定速度が実際の速度よりも大きくなっているので、推定速度を零とすることで、誤った推定速度を積分して推定角の誤差が拡大することを防止できる。
また、前記推定速度補正部(5)は、前記操舵トルクの微分値(Td、s・Trq)に換算ゲイン(k)を乗算した補正用信号(ωc)によって前記推定速度(ω)を補正する。
これにより、モータの回転速度は操舵トルクの微分値と相関があるため、この相関を利用して、より精度の良い補正が実施できる。
また、前記推定速度補正部(5)は、前記操舵トルクの微分値(Td、s・Trq)から演算した第1補正用信号(ωc1)と前記推定速度(ω)から演算した第2補正用信号(ωc2)の和(ωc)によって前記推定速度(ω)を補正する。
これにより、推定速度の基本成分は利用しつつ、振動に起因する周波数成分の推定誤差を操舵トルクから演算した値に基づいて補正できるので、より精度の良い補正が実施できる。
また、前記第1補正用信号(ωc1)は、前記操舵トルクの微分値(Td、s・Trq)から運転者の操舵の周波数成分を除去(Hc(s))した値に換算ゲイン(k)を乗算して算出し、前記第2補正用信号(ωc2)は、前記推定速度(ω)から運転者の操舵の周波数成分を抽出(Lc(s))して算出する。
これにより、推定速度の基本成分は利用しつつ、振動に起因する瞬時的に変化した推定誤差を操舵トルクから演算した値に基づいて補正できる。さらに、モータの回転速度は操舵トルクの微分値と相関があるため、より精度の良い補正が実施できる。
また前記推定速度補正部(5)は、前記操舵トルクの微分値(Td、s・Trq)から運転者の操舵の周波数成分を除去(Hj(s))した値に基づく前記判定用信号(Tdj)と前記操舵トルク(Trq)と前記推定速度(ω)とが同符号のとき、設定時間が経過するまで前記推定速度(ω)を補正する。
これにより、補正を予め定められた設定時間が経過するまで継続することで、瞬時的な補正ではなく、補正の効果が十分現れるまで補正できる。
また、前記推定速度補正部(5)は、前記操舵トルクの微分値(Td、s・Trq)から運転者の操舵の周波数成分を除去(Hj(s))した値に基づく前記判定用信号(Tdj)と前記操舵トルク(Trq)と前記推定速度(ω)とが同符号のとき、前記操舵トルクの微分値(Td、s・Trq)に基づく補正解除条件を満たすまで、前記推定速度(ω)を補正する。
これにより、推定誤差の増減は操舵トルクに現れるため、操舵トルクの微分値から補正の効果が現れたかどうかを判断することができる。よって、補正の効果が現れるまで補正を継続することができる。
産業上の利用の可能性
この発明の電動パワーステアリング装置および電動パワーステアリングの制御方法は、多くの機種の電動パワーステアリング装置に適用可能である。
1 モータ、2 ECU、3 電力供給部、4 推定速度演算部、5 推定速度補正部、6 推定角演算部、31 インバータ、32 座標変換部、33 電圧指令演算部、34 電流検出器、35 電流指令演算部、41 角度相当信号演算部、42 微分演算部、51 補正判定部、52 補正実行部、53 補正用信号演算部、101 ステアリングホイール、102 トルクセンサ、103 ステアリングシャフト、104 車輪、105 ラック・ピニオンギヤ、1000 処理回路、2000 プロセッサ、2100 メモリ。

Claims (9)

  1. 運転者の操舵トルクを検出する操舵トルク検出部と、
    運転者の操舵力をアシストするモータと、
    前記モータの回転速度の推定値である推定速度を算出する推定速度演算部と、
    前記操舵トルクに基づいて前記推定速度を補正する推定速度補正部と、
    補正後の推定速度を積分して前記モータの推定角を算出する推定角演算部と、
    前記推定角に基づいて前記モータに電力を供給する電力供給部と、
    を備え、
    前記推定速度補正部は、前記操舵トルクの微分値から運転者の操舵の周波数成分を除去した値に基づく判定用信号と前記操舵トルクと前記推定速度とが同符号のとき、前記推定速度を補正する、
    電動パワーステアリング装置。
  2. 前記推定速度補正部は、前記操舵トルクの微分値から運転者の操舵の周波数成分を除去した値に基づく前記判定用信号と前記操舵トルクと前記推定速度とが同符号で、かつ、前記判定用信号の大きさが設定閾値より大きいとき、前記推定速度を補正する、請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
  3. 前記推定速度補正部は、前記推定速度を零に補正する、請求項1または2に記載の電動パワーステアリング装置。
  4. 前記推定速度補正部は、前記操舵トルクの微分値に換算ゲインを乗算した補正用信号によって前記推定速度を補正する、請求項1または2に記載の電動パワーステアリング装置。
  5. 前記推定速度補正部は、前記操舵トルクの微分値から演算した第1補正用信号と前記推定速度から演算した第2補正用信号の和によって前記推定速度を補正する、請求項1または2に記載の電動パワーステアリング装置。
  6. 前記第1補正用信号は、前記操舵トルクの微分値から運転者の操舵の周波数成分を除去した値に換算ゲインを乗算して算出し、
    前記第2補正用信号は、前記推定速度から運転者の操舵の周波数成分を抽出して算出する、請求項5に記載の電動パワーステアリング装置。
  7. 前記推定速度補正部は、前記操舵トルクの微分値から運転者の操舵の周波数成分を除去した値に基づく前記判定用信号と前記操舵トルクと前記推定速度とが同符号のとき、設定時間が経過するまで前記推定速度を補正する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
  8. 前記推定速度補正部は、前記操舵トルクの微分値から運転者の操舵の周波数成分を除去した値に基づく前記判定用信号と前記操舵トルクと前記推定速度とが同符号のとき、前記操舵トルクの微分値に基づく補正解除条件を満たすまで、前記推定速度を補正する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
  9. 運転者の操舵力をアシストするモータの回転速度の推定値である推定速度を算出することと、
    検出した運転者の操舵トルクに基づいて前記推定速度を補正することと、
    補正後の推定速度を積分して前記モータの推定角を算出することと、
    前記推定角に基づいて前記モータに電力を供給することと、
    を備え、
    前記操舵トルクの微分値から運転者の操舵の周波数成分を除去した値に基づく判定用信号と前記操舵トルクと前記推定速度とが同符号のとき、前記推定速度を補正する、
    電動パワーステアリング装置の制御方法。
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