JPWO2018194042A1 - ベーンポンプ - Google Patents
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Abstract
Description
そのため、ロータが回転を開始すると(ベーンポンプが始動すると)、ロータの回転に伴ってベーンはベーン溝内に再度収容された後、ベーン溝に一旦収まったベーンが再度ロータから飛び出すまでには一定の時間を要する。
その結果、ベーンがロータよりも外周に飛び出すまでポンプとして作用をしない(圧力が発生しない)ので、ベーンポンプの始動に遅れが生じる。
ところが、冬季などの低温雰囲気になると、油の粘度が高くなり、ベーンと油との粘性抵抗も大きくなるので、結果としてロータからのベーンの飛び出しが遅くなり、暖かい雰囲気の場合に比べて所望の圧力が発生するまでに時間を要する。
この場合、特許文献1に開示されたベーンポンプでは吐出圧が1水準であるため、油の圧力を高圧および低圧の2水準に分ける分配用バルブ等の別個の機器がさらに必要になる。
ここで、複数のベーンは、それぞれベーン溝に嵌め込まれた状態でカムリング側に向けて、出入り可能に装着されている。
第1サイドプレートの第2背圧溝は、この孔部を介してポンプカバーに設けた凹部および第1サイドプレートから形成される高圧室と連結する構成にもできる。
さらに、第1背圧溝の溝深さを第3背圧溝へ近づくにつれて深くしても構わない。
加えて、油の粘性が最も低下する極低温(−30℃以下)の雰囲気であってもベーンポンプの始動を速やかに行えるという効果を奏する。
2 ポンプボディ
3 カムリング
4 ロータ
5 ベーン溝
6 ベーン
7 第1サイドプレート
8 第2サイドプレート
9 シャフト
10 ポンプカバー
20 ポンプボディの凹部
30 吸込口
40,41 吐出口
50,51 第1サイドプレートの孔部
60,61 高圧室
70,71 第1サイドプレートの背圧溝
70A,71A 第1サイドプレートの第1背圧溝
70B,71B 第1サイドプレートの第2背圧溝
70C,71C 第1サイドプレートの第3背圧溝
72 第1サイドプレートの第1吸込ポート
73 第1サイドプレートの第2吸込ポート
76 第1サイドプレートの第1吐出ポート
77 第1サイドプレートの第2吐出ポート
80,81 第2サイドプレートの背圧溝
80A,81A 第2サイドプレートの第1背圧溝
80B,81B 第2サイドプレートの第2背圧溝
80C,81C 第2サイドプレートの第3背圧溝
82 第2サイドプレートの第1吸込ポート
83 第2サイドプレートの第2吸込ポート
86 第2サイドプレートの第1貯留溝
87 第2サイドプレートの第2貯留溝
100,101 ポンプカバーの凹部
200 性能試験装置
210 オイルパン
220 モータ
230 回転計
240 圧力バルブ
250 圧力変換機
261〜264 油路
270 恒温室
la〜lc 第1サイドプレートの第1ないし第3背圧溝の溝長さ
fa〜fc 第2サイドプレートの第1ないし第3背圧溝の溝長さ
O1 第1サイドプレートの仮想中心
O2 第2サイドプレートの仮想中心
図1は、本発明の実施形態の一例であるベーンポンプ1の断面図、図2は図1におけるベーンポンプ1のX−X線断面図、図3は図1におけるベーンポンプ1のY−Y線断面図をそれぞれ示す。
ポンプボディ2に設けられた1箇所の吸込口30より油をベーンポンプ1内部に吸入し、ポンプカバー10に設けられた2箇所の吐出口40,41からベーンポンプ1内部の油を排出(吐出)する。
また、ベーンポンプ1には図1に示すようにロータ4の中央の穴部とポンプカバー10の中央に設けられた穴部とを貫通する形態でシャフト9が取り付けられている。
ロータ4の外周面には複数のベーン溝5,5が放射状に設けられていて、各ベーン溝5,5には複数のベーン6,6がそれぞれロータ4の径方向に出入り可能な状態ではめ込まれている。
それぞれのベーン6は、ロータ4の回転に伴い、カムリング3の内側に沿って、このカムリングに向けて出入りしながら回転移動する。
図1ないし図3に示すように、カムリング3およびロータ4の一端面側であって吐出口40,41から近い位置に第1サイドプレート7を配置し、カムリング3およびロータ4の他端面側であって吸込口30から近い位置に第2サイドプレート8をそれぞれ配置する。
吸込口30からベーンポンプ1内部へ流入した油が高圧室60,61にて加圧された状態で吐出口40,41の方向へ送られる。
図4は図1に示す第1サイドプレート7のロータ4側から見た平面図、図5は図1に示す第1サイドプレート7の反ロータ4側(ポンプカバー10側)から見た平面図を示す。
そして、ロータ4から出た油を2箇所の吐出口40,41の方向へ送る第1吐出ポート76および第2吐出ポート77もロータ4側に配置される第1サイドプレート7の端面に形成されている。
各背圧溝70,71は、大きく分けて第1背圧溝70A,71A、第2背圧溝70B,71Bおよび第3背圧溝70C,71Cから形成されている。
第1サイドプレート7の端面に設けられた背圧溝70の拡大図を図6に示す。
また、第1背圧溝70Aの溝深さ(第1サイドプレート7の表面から溝底までの距離)は、第3背圧溝70Cへ近づくにつれて徐々に深くなっている。
また、第2背圧溝70Bの溝長さlbは、図6に示すように第1背圧溝70Aの溝長さlaよりも短い。
さらに、第2背圧溝70Bには第1サイドプレート7の両面(ロータ4側とポンプカバー10側)をつなぐ孔部50を備えている。
第3背圧溝70Cの溝長さlcは第1ないし第3背圧溝70A〜70Cの中で最も短い。
また、第3背圧溝70Cの溝幅は、第1ないし第3背圧溝70A〜70Cの中で最も狭い。
ここで、第3背圧溝70Cは、油が第1背圧溝70Aから第2背圧溝70Bに移動する際に、その流れを絞り込むためのものである。
その1つの手段として、第3背圧溝70Cの溝幅を他より狭くしたものである。
よって、一旦流量を絞り込むことができれば、他の手段でもよい。
つまり、第1吐出ポート76および第2吐出ポート77は、前述の孔部50,51と同様に第1サイドプレート7の両面(ロータ4側とポンプカバー10側)を貫通する形態で第1サイドプレート7に設けられている。
図7は図1に示す第2サイドプレート8のロータ4側から見た平面図、図8は図1に示す第2サイドプレート8の反ロータ4側(吸込口30側)から見た平面図をそれぞれ示す。
ロータ4側に配置される第2サイドプレート8の端面には、図7に示すようにベーンポンプ1内部の油を一定量貯留する第1貯留溝86および第2貯留溝87が形成されている。
各背圧溝80,81は第1背圧溝80A,81A、第2背圧溝80B,81Bおよび第3背圧溝80C,81Cから形成されている。図7に示す第2サイドプレート8の背圧溝80の拡大図を図9に示す。
また、第1背圧溝80Aの溝深さ(第2サイドプレート8の表面から溝底までの距離)は、第3背圧溝80Cへ近づくにつれて徐々に深くなっている。
また、第2背圧溝80Bの溝長さfbは、第1背圧溝80Aの溝長さfaよりも短い。
第3背圧溝80Cの溝長さfcは、第1ないし第3背圧溝80A〜80Cの中で最も短い。
また、第3背圧溝80Cの溝幅は、第1ないし第3背圧溝80A〜80Cの中で最も狭い。
本発明のベーンポンプ1は、図2および図3に示すシャフト9が回転することでロータ4が回転し、複数のベーン6,6がそれぞれベーン溝5,5に沿って出入りしながら回転移動することで、吸込口30から油を吸入して吐出口40,41から油を排出する。
すなわち、ベーン溝5からロータ4側への油の移動がベーン6をロータ4の外側へ飛び出す方向の作用として働く。
このとき、ロータ4の周囲に存在する油もロータ4のベーン溝5内に入り込む。
ベーン溝5内に入り込んだ油は、ロータ4の両側に配置されている2枚のサイドプレート(第1サイドプレート7、第2サイドプレート8)の背圧溝に集約される。
ここでシャフト9の回転が図2の紙面上で反時計周りの場合、第1背圧溝70Aにある油は、複数のベーン6,6がロータ4のベーン溝5内に収容されるため、その圧力によって第2背圧溝70Bの方向へ移動する。
そのため、第1背圧溝70A内に集約された油の移動は、第2背圧溝70Bの方向へ移動するまでに第3背圧溝70Cによって一旦絞り込まれる。
その結果、第1背圧溝70A内に集約された油の大部分はロータ4のベーン溝5の方向へ移動し、ベーン溝5へ移動しなかった残りの油のみが第3背圧溝70Cを通過して第2背圧溝70Bへ移動する。
また、第2サイドプレート8の背圧溝80,81に集約された油の移動についても同様である。
結果として、ベーンポンプの始動時における油圧の発生を速やかに行うことができる。
特に、2箇所の吐出口40,41側に設置された第1サイドプレート7の第2背圧溝70B,71Bには上述したようにロータ4側から反ロータ4側(ポンプカバー10側)につながる孔部50,51がそれぞれ設けられている。
つまり、第1サイドプレート7の第2背圧溝70B,71B内の油は、それぞれの孔部50,51および高圧室60,61を経由して、2箇所の吐出口40,41から排出される。
それにより1台で高圧および低圧の2種類の圧油を供給することができる。
本性能試験は、本発明に係るベーンポンプ(以下、「本発明品」という)および従来のベーンポンプ(以下、「従来品」という)を用いて極低温(−30℃)の雰囲気におけるベーンポンプの始動性能を確認する目的で行った。
本性能試験に用いた性能試験装置200の全体構成を図10に示す。
これに対して、従来品は図4に示す第1サイドプレート7および図7に示す第2サイドプレート8の第3背圧溝70C,71C,80C,81Cを設けずに、第1背圧溝70A,71A,80A,81Aおよび第2背圧溝70B,71B,80B,81Bが一体となった背圧溝の形態を有する(第1および第2)サイドプレートを用いた。
他の構成部品については、本発明品と同じものとした。
モータ220のシャフトが回転することでオイルパン210の油が油路261を介してベーンポンプ201に吸い込まれる。
モータ220のシャフトの回転数は、シャフトに設置されている回転計230によって計測することができる。
この圧力バルブ240の開閉度によって性能試験装置200の油の圧力(油圧)が調整される。
圧力バルブ240から出た油は、油路264を介して最終的にオイルパン210へ戻される。
図10に示す性能試験装置200の恒温室270内の温度を25℃に設定した状態でモータ220を回転させて、ベーンポンプ201へ油を供給する。
同時に圧力バルブ240によりベーンポンプ201からの油の圧力(吐出圧)を1.8MPaに設定する。
その後、恒温室270内の温度を−30℃に変更して、ベーンポンプ201等の機材一式をその状態で8時間保持する。
その後、モータ220の回転数を200rpmから1800rpmへ変更する。
本性能試験では、モータ220を200rpmにて起動させてから約12秒間におけるベーンポンプ201から吐出される油の圧力(吐出圧)の変化を圧力変換機250および図示しない計測機器を用いて経時的に測定した。
本発明品を用いた性能試験の結果(グラフ)を図11、従来品を用いた性能試験の結果(グラフ)を図12にそれぞれ示す。
なお、両図面の横軸はモータが起動を開始する時間を起点として(0秒として)表している。
その後、モータの回転数を200rpmから1800rpmに変更した。
ベーンポンプによる油の昇圧が確認されてから約0.6秒後に油の圧力は最高値(約4.2MPa)に達して(図11に示すA3区間)、その後に油の圧力は約1.7MPaまで下がり、その圧力を維持したことが確認された。
ベーンポンプによる油の昇圧が確認されてから約0.2秒後(図12に示すB3区間)に油の圧力は最高値(約5MPa)に達して、その後は本発明品の性能試験結果と同様に油の圧力は約1.7MPaまで下がり、その圧力を維持した。
Claims (3)
- 少なくとも、吸込口を有するポンプボディと、前記ポンプボディの凹部に収容されているカムリングと、前記カムリング内に収容されていて外周面に複数のベーン溝が放射状に形成されているロータと、前記複数のベーン溝に嵌め込まれている複数のベーンと、前記カムリングの一端面側であって吐出口側に配置されている第1サイドプレートと、前記カムリングの他端面側であって前記吸込口側に配置されている第2サイドプレートと、2箇所の前記吐出口を有し前記ポンプボディの凹部の開口部分を覆うポンプカバーと、を備えるベーンポンプであって、
前記第1および第2サイドプレートの前記ロータ側には互いに独立した一対の背圧溝が形成されており、
前記背圧溝は、第1背圧溝と、
前記第1背圧溝よりも溝長さが短い第2背圧溝と、
前記第1背圧溝と前記第2背圧溝とを連結し、前記第1背圧溝および前記第2背圧溝よりも溝幅が狭い第3背圧溝と、を有している
ことを特徴とするベーンポンプ。 - 前記第1サイドプレートの第2背圧溝は、前記第1サイドプレートの前記ロータ側から前記ロータの反対側へ貫通する孔部を有しており、
前記孔部を介して前記ポンプカバーに設けられた凹部と前記第1サイドプレートから形成される高圧室につながっていることを特徴とする請求項1に記載のベーンポンプ。 - 前記第1背圧溝の溝深さは、前記第3背圧溝へ近づくにつれて深くなっていることを特徴とする請求項1または2に記載のベーンポンプ。
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